1.差別的取扱の理由付けの多様性
- (東室長)直接差別、間接差別、合理的配慮といった類型の守備範囲や相互関係の前に、それぞれの類型で問題になる点を議論したい。まず直接差別の論点として、差別的取り扱いの理由づけの多様性について9つの事例を出したが、個々の事例ごとに差別の理由の正解を求めることが目的ではない。障害差別の場合、評価する人がどこに注目するかで結論が異なるので、評価が分かれる点について意見があれば述べて頂きたい。
2.差別的取扱の「理由」と「障害」の関係
次に、多様な差別の理由をどの範囲まで差別禁止の対象にするかについては、ほとんどの委員ができる限り広く取り込むべきだという意見だった。その方法については、障害を社会モデルの視点で捉えれば「障害を理由にした差別」という規定で広く対象にできるが、今回は障害を機能障害に限定した場合、どうなるかだ。これについては、「障害を理由とする」という規定でも障害以外の事由は除外されないとの意見があった一方、「障害に関して」「基づく」「起因する」等の規定の仕方が適当だという意見等もあった。立法に当たっては禁止される対象を明確化する必要がある。
- (棟居部会長)議論を誘発するために質問の出題意図を伺いたい。
- (東室長)差別問題については、これまで正面から議論してこなかった。特に障害分野の差別については、公的なところで議論するのは初めてだ。共通認識がない状態から出発しなければならないため、自由に議論をして頂きたい。ただし、憲法の基本的な価値と障害の問題がどのように関係するのかを押さえた上で議論をして頂きたい。
- (棟居部会長)差別的取り扱いの理由として東室長が事前の論点の中で挙げている、機能障害、能力障害、障害者そのものが忌避されている、障害者の置かれている社会状況の4点が障害者差別の問題の特殊性だ。
- (発言)直接差別と間接差別の定義が委員の間でコンセンサスを得られていないので、その議論をして欲しい。委員の中でも間接差別について、障害を要件としない差別のことだという意見や、他の理由によって結果的に障害のある人が排除されることだとする意見があるが、どう違うのか。また、結果として差別となるものを間接差別だと説明する人がいるが、権利条約2条で書かれているのは、意図した結果であろうとなかろうと、結果的に差別を生み出す限り主観を問題にしないということではないか。諸外国の立法で差別を分類しているのは、類型によって立証や罰則、強制の仕方が違うからだが、それと直接差別や間接差別がどのように結びつくのか、教えて欲しい。
- (東室長)わからないから、みんなで議論しようとしている。各国の法制度は、歴史的な状況を反映しているため、規定の仕方は統一されていない。ここでは、共通認識を作りながら、議論を積み上げていくという作業が必要だ。
- (発言)千葉県で差別をなくす条例をつくった。差別とは何かについて県民に募集した所、約800の事例が集まり、これらを分析した。そのほとんどが悪意のある差別ではなく、理解不足等によるものだった。このような分からないものに対する恐れや警戒感に対し、規制やペナルティを突きつけるとどうなるか。むしろ、曖昧なまま慣れてもらうというソフトなアプローチの方が良い交流になる。中には確信的な悪意のある差別があり、国がつくる法律はこれを主要なターゲットにするのだろう。自治体の条例については、同じ生活圏域で暮らしていくのでソフトなアプローチで理解を促すのが良いが、国レベルは強制力が伴うものが必要だ。
- (発言)世間は厳しく不条理だから、ある程度相手に合わせ、自分を主張してはいけないと言われて育てられたが、これは障害者が差別されることの裏返しだ。きちんとした人権的なアプローチが必要だ。
- (棟居部会長)我々は、障害者等の多様な人間とうまくやるという教育を受けてきていない。千葉での約800の事例のほとんどが理解不足だったということは、教育の問題でもある。
3.直接差別とされる行為をどう捉えるか
- (東室長)直接差別は異別取扱いか、不利益処分か。憲法は異別取扱い禁止による機会の均等を確保しているが、これは障害者にとっては未だに達成されるべき課題である。異別取扱い禁止を原則にすると、異別取扱いを求める合理的配慮とは逆の方向性になる。つまり、原則として直接差別を禁止するが、例外として合理的配慮をするという関係になる。しかし、合理的配慮が機会の均等を実質化する点を考えると、同じ方向性にあると捉えることもできる。直接差別において差別かどうかのメルクマールを不利益処分か否かにすると、地域社会から分離されたシステムや手段であっても、本人の利益のためならば合理的配慮だという主張がまかり通る。機会均等を実質的に確保する手段として合理的配慮をとらえないと、守備範囲自体があいまいになり、権利性も損なわれる恐れがある。委員の意見は、不利益取扱いを重点にするべきだという考え方と、逆に異別取扱いに重点を置く考え方、双方とも含むべきといった3通りに分かれていた。更に議論を深めて欲しい。
- (発言)私は、両方だという立場だが、異別取扱いを重視したいと考えている。異別取扱いにより障害者が再生産されていく構造があるからだ。私は養護学校に行ったが、地域の学校と交流の際、障害者の自分を認識し、卑屈になっていた。障害のある人は他の所に行った方が良いという議論自体が悲しい。しかし一方で、同じ仲間と交流する権利もあり、色々な選択肢が用意されるべきだ。
- (発言)憲法14条がありながら、なぜ差別禁止法が必要なのか。憲法14条は法の下の平等で同一取扱いが原則だが、同一取扱いだけでは実質的な平等が保障されないため、何等かの合理的な取扱いもあり得ると調整されてきた。この中で、障害がある人、マイノリティの人たちに対する差別について混乱が生じた。同一取扱いが原則でなければならない。異別取扱いは、本人が求めた場合のみに限るべきだ。異別取扱いを強制されて、結果として分離されることがあったという歴史的な経緯を共通に認識すべきだ。
- (発言)障害者権利条約2条は、区別することもいけないとしている。善意だろうが悪意だろうが、区別によって精神的な苦痛がもたらされるならば、条約はこれを認めていないことになる。これを念頭に置いて、国内の立法をすることが大事だ。
- (東室長)選択権が奪われること自体が非常に大きな不利益であると、国民の意識で当たり前であれば、異別取扱いと不利益処分は区別する意味がない。しかし、選択が権利として保障されていない時には、機会均等、異別取扱いが不利益かどうかは同一には議論できない。それが、欧米との差だろう。
- (発言)東室長は選択権の問題としてまとめたが、私の発言の趣旨はそうではない。同一取扱いが原則で、異別取扱いは本人が求める場合に限り合理的配慮等として行うということだ。
- (東室長)「本人が求める場合」を選択権の話だと解釈した。異別取扱い禁止と不利益処分をつなぐ中間項として、選択権があるのではないか。
- (棟居部会長)異別取扱いを禁止した後に機会均等で競争の世界に打って出るという選択もあれば、同じグループで囲ってもらって構わないという選択もある。その両方が開かれている必要がある。
- (発言)聴覚障害の人のグループが交流し文化を継承する運動があるが、それを含めてインクルージョンだ。異別取扱い禁止といってすべてごちゃ混ぜにするのではなく、自分の求める仲間や所属したいグループに入る選択を可能にし、活動の機会を保障して欲しい。
4.その他、直接差別において、議論すべき点
- (東室長)委員から様々な問題提起を頂いた。欠格条項については、総論の議論の後に議論をしたい。精神障害は各論で議論する。就職の問題は、雇用のところで議論する。差別の例外つまり正当化事由については総論で議論する。公共交通機関における問題は各論で議論する。
- (発言)直接差別を法律の要件に落とし込むと、次のようになるのではないか。まず直接差別が問題になるのは、相手方が障害者以外の者には「要件T1が備わるときはRをする」というルール甲に従って行動する場合に、障害者が要件T1を備えているのにRをしない時ではないか。ポイントはルール甲に従っていない場合に差別が問題になるのかだ(相手方が婚姻を求めてきて、それを拒絶した場合など。)。次に問題となるのは、阻却要件、つまり合理的な理由があれば差別を理由とする請求が認められない場合である。これは、相手方が「要件T2が備わるときはRをしない」という例外ルール乙に従って行動しており、障害者が要件T2を備えている場合に考えられる。これによると、障害者は異別取扱いが行われたことを証明すれば、差別を理由とする訴えが認められ、相手方は、当該異別取扱いは障害を理由とする差別ではないことの証明責任を課せられる。次に、例外ルール乙が認められる場合でも、障害者であれば要件T2を備えることになるときは、例外ルール乙の正当性が問題になり、免責は認められないのではないか。その場合は、一方で、相手方がルール乙を採用することによって得られる利益の大きさとルールを採用しないときに生じる弊害の重大性、他方で、障害者がRを受けられることの利益の大きさとRを受けられないことで生じる弊害の重大性が比較衡量されるのではないか。
- (棟居部会長)差別すること自体がルールだと言って活動している団体に対し、この考え方は無力ではないか。また、商売などでは個別のリスク等を検討するのは面倒なので一律に排除するのが安上がりだといった経験則が広く見られるが、利益衡量はそういう意味ではないと言っていけるか。
- (発言)(一つ目の質問に対して)障害者に対する異別取扱いが行われれば原則として差別になるが、障害を理由とする差別ではないと示せれば、差別の請求が退けられる構造になっている。障害を理由とする差別ではないことを示す際に「例外ルールでやっている」と言えば、差別がまかり通るという指摘だが、例外ルールによらなければならない正当な理由が付加されなければ免責されない。(二つ目の質問に対して)次に、差別の正当な理由はないとするのも1つの方法だ。しかし障害者差別禁止法は幅広い差別を対象にするため、考えられる理由は千差万別で、それらを衡量できないとなると裁判で使えないので、一定の衡量に基づく判断ができるようにしておく必要がある。
- (発言)直接差別で阻却事由は許されるのか。比較衡量は差別禁止の中であり得るのか。差別による利益が大きくともこれを禁止すべきというのが差別禁止の出発点ではないか。差別禁止体系における正当化理由は、どういう価値観に基づく基準なのか。
- (発言)差別だと主張する時に、阻却要件が存在しないことを主張する人が言わなければいけない。この立証責任の分配が適切かどうかは慎重な検討を要するとの主張だが、阻却要件を実体要件に入れてとらえているのか。
- (発言)(直接差別と阻却要件について)直接差別の類型として、障害を名指しして差別行為をしている場合、能力ないし機能障害を理由として差別をしている場合、障害者を忌避しているものが挙がっていた。障害者を忌避している場合は、阻却要件を満たすことはできないだろう。能力障害又は機能障害を理由とする場合は、例外ルールがあることは示せるだろうが、正当化理由が必要になるだろう。障害を理由として障害のある人に差別的な行動をする場合は、他と区別しているというよりは、障害者の人格を侵害している可能性がある。最後の質問は、実体要件を構成要件と理解しているようだが、実体要件でも原則ルールと例外ルールがあり、原則ルールは成立要件であり請求原因事実に当たる。例外ルールは、抗弁事実にあたると考える。成立要件、阻却要件という言葉は、請求原因と抗弁に対応している。相手方に例外ルールがあり、それが正当であることについて証明責任を課せられるという形になっている。しかし、それで良いかどうかについては、さらに検討する必要がある。
- (発言)抗弁になるが証明責任の分配は慎重にするということが分からない。
- (発言)抗弁として構成するならこうなると示したが、そうではないという考え方もあるだろう。障害者側が証明責任を負うべき事実、つまり請求原因として挙げていくべき事実として構成する考え方もある。どちらの構成でいくべきかについて、なお検討が必要だということだ。
- (発言)精神障害のある人には免許は取らせないという欠格条項があるとする。当事者が免許を取れなかったことで裁判を提起する場合、原告は免許を取らせないという規定の違法性を争うが、先ほどの構成で言うと、免許を取らせないのはむしろ例外ルールに該当する。原告は試験に受かる能力があるのに免許を取れなかったことを証明するが、被告は法律に精神障害者には免許を取らせないルールが規定してあり、それに従って免許を与えなかったという抗弁になる。その次に、免許を取らせないという規定に合理性がないという構成になる。
- (発言)能力があると証明された人には免許を与えることになっているのに、障害者には与えない場合は、それで差別の成立要件を満たす。精神病だから免許を与えないというのは理由にならないので、与えないと判断する別のルールがあり、それが障害者にあてはまることを示す必要がある。更に、そのルールを適用すると障害者すべてに与えないことになれば、これを正当化する理由を更に示す必要がある。以上のような構造になる。
- (発言)例外ルールは、すべての人たちに当てはまるものか。
- (発言)そのとおりだ。障害を理由としない例外ルールに従って行動していることを示して初めて、障害者の請求から免れることができる。ただそのルールによって、障害者が常に例外になるときには、間接差別と同じ構造になるため、正当化理由を更につけ加えないといけない。
- (発言)相手方が特別なルールによらず自由に判断する行為(婚姻や養子縁組をする場合等)は差別が問題にならないとあるが、仮定の比較対象を設定して、もし自分が障害者でなかったら相手はこうしたはずだという比較の仕方もあるのではないか。
- (発言)「ルールに従って行動していること」に加えて「又は、行動すべきであること」としている。これは、仮定的な場合にこうするだろうということを示すためだった。
【第2、間接差別について】
*上記のテーマでヒアリングを行いました。ヒアリングについては議事要録を作成しないこととしておりますので、内容の確認は議事録をご覧下さい。
1.間接差別という差別類型の必要性
- (東室長)事務局から5つの具体例を示し、間接差別の問題になるか事前に意見を伺ったところ、多くの委員は間接差別の問題だとしているが、中には合理的配慮との関連性を指摘している意見があった。また一般採用試験の受験や採用の要件として、活字印刷物の判読、電話対応、面談が可能であること、試験申込書・受験票の記入は自書であることを課すのは直接差別だとの意見もあり、規定や基準が障害そのものに関わるのか、表面的には中立的な規定と見るかによって、意見が分かれた。
次に、合理的配慮を提供しない場合を差別の類型に取り込めば、間接差別という類型を設ける必要があるのかについては、多くの委員は設ける必要があるという意見だった。理由は、間接差別では相手方は障害の存在を知っている必要はないが合理的配慮では知っているので両者は異なる概念であるという意見、規定の限定的適用により解決できる場合がありその際は合理的配慮は考える必要はないという意見、規定や基準を撤廃すれば良い場合は間接差別とした方が良いという意見等があった。
- (発言)資料を2点提出した。一つ目は障害者の職場状況についてのアンケート調査の結果で、障害者が必要とする労働条件が整備されていないことがわかる。新しいシステムが導入されたために従来確保されていた音声読み取り等のバリアフリー機能が失われる等、間接差別と思われる事例もあった。二つ目は自治体が障害者を採用する際の応募要件について調査したものだ。一般枠の採用試験では、20%の自治体が試験の申込書、受験票の記入を自筆としてとしている等の結果だった。また、体力試験を実施する151自治体のうち障害者にはその一部または全部を免除するのは9自治体、面接を実施している346自治体のうち聴覚に障害がある場合に手話通訳又は音声文字通訳等を配置しているのは5自治体だった。
- (発言)間接差別について、迷っている。採用試験等の要件に申込書等の記入が自書であることを入れるのは障害を名指ししていないが、障害を理由とせずに自書できない人はいるのか。表現としては中立性に見えるが、障害に対する直接的な制限と考えられる。それを間接差別と分類するのか。
2.間接差別における差別とは何か
- (東室長)男女雇用機会均等法では省令で限定列挙された事由だけを適用対象としているが、障害者の間接差別では限定すべきではないというものが主な意見だった。その理由としては、間接差別は規定、基準、慣行等が差別的に機能することを明らかにするのであり、意図的に限定すると間接差別の禁止規定の意義に反する等の意見があった。次に、間接差別では不利益か否かの判断に他の者との比較という手段が採用されるが、誰と誰を比較するのかについて伺ったところ、多くの委員は障害のある人とない人を比較するという意見だったが、この点は検討の必要がある。女性差別の場合は女性と男性それぞれの平均的な状況を比較するが、障害は数が少ないので平均を採ることに意味があるのか。また比較する場合、障害以外の要素は同じ条件であることが望ましいので、最終的には障害のあるAさんと、障害がないと仮定したAさんを比較することにはならないか。
- (発言)間接差別が問題になるのは、相手方が「要件T3が備わるときはRをする」というルール丙に従って行動する場合に、ルール丙の要件T3を障害者が備えることができないときではないか。そして要件は、<1>相手方がルール丙に従って行動していること、<2>障害者Xと同等の障害を持つ者は通常ルール丙の要件T3を満たすことができないこと、<3>相手方が障害者Xに対してRをしなかったこと、になるのではないか。
相手方がルール丙を採用することを正当化する理由があるときは、差別を理由とする請求は認められず、比較衡量が問題になる。すなわち、一方で、相手方がルールを採用することで得られる利益の大きさ及びそのルールを採用しない時に生ずる弊害の重大性と、他方で、当該障害者Xにとって相手方からRが受けられることで得られる利益の大きさ及び障害者Xにとって相手方からRを受けられないことによって生ずる弊害の重大性を衡量することになる。
その上で、合理的配慮が要請されるのは上記の要件<1><2>を満たす場合で、相手方に対して障害者Xがルール丙の要件T3を満たしたのと同じ状態にするために規範命令が出される。
間接差別と合理的配慮の欠如は要件<1><2>は重なるが、要件<3>と合理的配慮をしなかったということとでは違ってくる。間接差別の方が立証は容易だが、合理的配慮は求められるべき合理的配慮を特定した上で、その不履行を立証しないといけない。間接差別の場合は、先ほどのルール丙を採用することに正当な理由があるときは差別を理由とする請求は否定されるが、合理的配慮の欠如の場合はルール丙を前提にした上で合理的配慮が欠けているということなので、正当な理由は問題にならない。以上から、この二つは違う類型として位置付けるべきではないか。
- (発言)間接差別は常に合理的配慮で収束するのか。合理的配慮を持ち込めない場合が、あるだろう。合理的配慮を特定するのは難しい。個人事務所と大企業で補助者を付けるというのは違う。そういう点からも、間接差別の問題と合理的配慮を重ねない方がよいと思う。
- (発言)間接差別と合理的配慮の欠如は違う場合があるのではないかという指摘の通り、合理的配慮がそもそもできない場合には両者は交錯しない。両者が重なるのは、合理的配慮を特定できる場合になる。次に、合理的配慮は財力によって要求できる程度が違う可能性があるという指摘だが、その通りだ。合理的配慮を特定する際の衡量要因となる。しかし、間接差別で問題になるのは、ルールを採用していることの当否だ。財力の問題ではない。したがって、間接差別と合理的配慮の欠如は、差別類型としては異なると思うが、どうか。
- (棟居部会長)間接差別には、直接差別のように露骨に差別はしていないが結果は直接差別と変わらないことの発見という側面がある。しかし、業務上の必要性を立証することになると、この発見の意味がなくなるのではないか。
- (発言)車いす使用者で公共交通機関が利用困難な場合の通勤方法について所管課に確認した所、移動サービスの利用等具体的な通勤手段は制限しないが、交通費は一般の規定同様、時間及び費用面で効率的な公共交通機関を使う時の費用を支給するとのことだった。つまり、その他の方法で通勤する場合、それに伴う費用は自費での対応になるということだ。また、民間企業等では、聴覚に障害がある職員が出席する会議での手話通訳について、会議は職場の秘密条項を協議する場なので、部外者である手話通訳等を入れることは困難とする実態もある。
- (発言)以前は採用に関して障害を理由として差別することは当たり前だったが、今は少なくなっている。差別禁止法が実施される時に、障害を直接は理由にしない間接差別がひどくなるのではと心配しており、法律を作る際にもこの点を重視するべきだ。合理的配慮に安易に期待しない方がよい。特例子会社は障害者のためというが、実態はそのような配慮をしたことで、障害者がそこから脱却できず、社会の中で活躍できる場面を失う恐れがある。合理的配慮は必要だがそれに過大な期待をするのではなく、差別禁止法を成果あるものにする必要がある。
- (発言)差別をされた際にクレームを出すと、相手方は「差別をするつもりはない」「危険性がある」等と言い、違う理由で排除する。このような、差別する意図はない中立を装う差別問題の解決が必要だ。合理的配慮は、障害者が一般社会の人と同じ場で仕事をし、学ぶ環境をつくるためのものなので、必要だ。
- (東室長)合理的配慮の意義づけで上記2つの意見は対立するように見えるが、そうではない。「合理的配慮に安易に期待しない方がよい」という発言の趣旨は、特例子会社は合理的配慮ではなく間接差別的なものだということだと理解した。
- (発言)間接差別の中で、誰と比較して不利益を被っているかを判断するのか。ある中小企業で、障害を持っている人は20代、30代で、それ以外の人は40代、50代となると、比較のしようがない。その場合は、同規模又は同職種等のデータを使う事になるのかもしれないが、本当に使えるか。比較できない場合を想定しなければならないだろう。
- (棟居部会長)合理的配慮については個別的に考えざるを得ない。すると、その人での比較になるのではないか。