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第7回障がい者制度改革推進会議 差別禁止部会(2011年8月12日)
議事要録


〜報告 改正障害者基本法について〜

議事 「差別」の類型論を巡る論点について(その2)


1 合理的配慮…主な書面意見(8名)

(1、合理的配慮をしないことは差別であるといった概念がなぜ必要なのか)

(1)なぜ、合理的配慮を提供しなければ差別となるのか
  • (東室長)多くの意見は、障害者が社会参加できなかったり、社会から排除されたりすることにより、障害者が不平等になっている原因は、社会のこれまでの障害者に対する配慮のなさや、無理解により生じている社会的障壁だと指摘している。その上で、合理的配慮によって、社会的な障壁を取り除かない限り、実質的な平等な取扱いがあるとは言えないから、合理的配慮をしないことは差別だと考えるべきという意見が多い。
(2)なぜ、優遇措置ととらえるべきでないのか
  • (東室長)合理的配慮の提供は障壁を除去するだけだから、市民との平等を図るための措置だから、社会のシステムが障害のある人には配慮をしない偏った状況にある中で機会の平等を実質的に確保するための条件整備・同じ土俵で平等に立てるようにするための手段・自由競争に参加させるための手段だから、という意見が多い。

(2、合理的配慮の守備範囲)

  • (東室長)障害福祉サービスの分野にも合理的配慮の概念が当てはまると考えられるという意見が若干多いが、そこまでの範囲を考えるべきではないという意見もあり、議論が必要だ。

(3、合理的配慮の内容)

  • (東室長)合理的配慮の権利条約上の定義は英語が基本なので、国内法制化する場合に、大事な要素は維持しながら日本語的にわかりやすい定義を置くべきかという点ついて、新たに定義を考える必要があるという意見が多く、その理由として、分かりやすくなければ実効性がない、条約のポイントを分かりやすく示すことが必要だ等が出されている。ただ、条約と同じ定義でよいという意見もあり、その理由としては、新たに規定することで内容があいまいになる、大事な部分が縮小する、範囲が変わる等の恐れがある等が挙げられている。

(4、Reasonable accommodationの訳語)

  • (東室長)合理的配慮とは違う言葉を提案している意見もあるが、ベストではないかもしれないが定着しているから変える必要はないという意見が多い。
  • (発言)洋服屋で車椅子のタイヤで商品が汚れるという理由で入店拒否されたことがあるが、店の外に商品を持ってくるといった小さい配慮も合理的配慮だ。車椅子タクシーを予約する時、専門の運転手がいないからと断られるが、すべての運転手が運転できるようにすれば問題は解決できる。また、新幹線は指定席しか乗れない。これは車椅子席が指定席にしかないからだが、在来線には車椅子スペースがなくても乗せており、個別的に対応すれば問題は解決する。合理的配慮には、お金がかからず簡単なものもたくさんある。少しの配慮で障害者が普通に生活できる。臨機応変さを世間に根付かせることで、機会の平等を構築することが重要だ。
  • (発言)合理的配慮は、誰もが基本的な価値を実質的に享有するために求めることができるものだ。憲法の下でも国際法の下でも、人間の尊厳、個人の自己決定、社会参加、機会の平等、差異の尊重、多様性の尊重という基本的な価値は、ほとんどの日本人が合意できるという観点に立てば、異なった扱いが正当化される。ただし、過重な負担を課すものは現実には無理なので、その場ではできないことになる。
  • (棟居部会長)機会の平等の名において、例えば英語の能力をはかるときに、文章を読ませてスピーチに置き換える試験があると、一見、みんなに開かれているようだが、事実上、一定の人(この場合、視覚障害者)が排除される。このような場合は「英語のスピーチ能力を試す上で意味がない」等と指摘し、不合理さをあぶり出すことも合理的配慮ではないか。
  • (発言)合理的配慮は、社会や国が積極的に何らかの措置を講ずることを義務づけられるため社会権に属するという議論や、国家による手出しを禁止することで自由と平等を実現する自由権に当てはまるという議論に陥るのではないか。合理的配慮を重ねなければ、例えば視覚障害者にとっては知る権利は全く奪われるため、合理的配慮はすべての基本的人権の基礎と位置づけたい。思いが至らないことを、ごめんなさいで済ませてきた文化があるが、ごめんなさいで済むことではなく、人間性を否定していることが意識されていないことに気づかせるものが合理的配慮ではないか。
  • (発言)現実に起きていることに対し、法制度を含めた現状の仕組みで足りない部分を補うために合理的配慮を差別禁止部会で議論している。障害ゆえに社会的な不利益を被っているならば、その方のスタートラインをゼロにするために、社会が合理的配慮をすることが求められる。合理的配慮をしない場合にどのような制裁が予定されるのかについても、救済の仕組みを含む差別禁止の制度を整備する上では問題になるので、合理的配慮の中身も制裁や制裁についての事実認定との関係で決まるのではないか。
  • (棟居部会長)合理的配慮については、救済の仕組みを議論しないと差別禁止にならないので、今後も議論する。
  • (発言)我々は日々生活していて、豊かな暮らしやすさを求め、科学技術の進歩や情報化などにより恩恵を受けている。ただ、機能的な特徴により恩恵を受けられない人たちがいて、我々多数派が恩恵を受けることで、恩恵を受けられない人たちの参加の機会を損なっている。恩恵を受けている側がやるべきこととして、社会的な義理、貸し借りといった概念を多数派の一般の人たちにわかっていただけるかどうかが勝負だ。自分たちはそういう義理を欠いている、貸しをつくっている、だから、排除してしまっている人たちに対して、何らかの措置が必要だと理解していただくことではないか。
  • (発言)合理的配慮をしないことは差別に当たるという理由づけの仕方は、弱い人たちを助けないといけない、又はみんな同じだから助け合おうというタイプと、各人の権利を尊重するために規制が必要だというタイプがある。後者を軸にすることが望ましいが、その場合、権利は平等にあるので、それ以上は各自の問題だという考えが出てくる。これ対しては、権利を行使するための前提条件が等しくないと何もできないから、この前提条件をそろえることが機会の平等の実質的保障となる。そして最大の問題は、一般の私人に他人の前提条件をそろえることまで義務を課すことができるかどうかだ。各個人にまで義務を課すのは権利を広げ過ぎているというリアクションが出るだろう。これへの対応は大きな問題だ。
  • (発言)私人一般まで広げられると、意味がなくなってしまうという立場だ。
  • (棟居部会長)作為、不作為は相対的だ。例えば店の真ん中の床に大きな穴が開いていたら、店のオーナーは疑問も感じず穴をふさぐだろうが、車椅子の方にとっての段差は、我々にとって穴が開いているのと同じだ。でも、そういう危険なものを放置してきて、ごめんなさいで済ましてきた。

2 禁止されるべき差別類型の特徴と関係…主な書面意見(8名)

(1)禁止されるべき差別類型の特徴や相互の関係について

(2)日本における差別禁止法として、どのような差別禁止の類型を設けるべきかについて

  • (東室長)禁止されるべき差別を類型に分けるのが望ましいのかどうかを議論してほしい。類型化することの意義として、(1)差別類型により例外事由が厳格な場合とそうでない場合があり得る場合には類型ごとに決めた方がよい、(2)類型化により差別行為の内容が明確化するため行政や司法の法解釈の幅を限定できる、(3)差別の基準を広く市民に明確化できる、という指摘があった。全体としては、類型化ではなく包括すべきという意見等4種類ほどの意見があった。
  • (発言)ヨーロッパ法における例外事由の扱いは、直接差別ではこれを原則として又は全く認めないが、間接差別では許容するという違いがあるので、連動させるならば類型の明確化が必要だ。直接差別は従来、障害に明示的に言及して差別をする類型だと理解していたが、欧州司法裁判所では障害に言及しなくとも、ある規定を適用することで障害のある人が全面的に排除される場合も直接差別とするという判例が出ている。間接差別の場合は、多数の不利益を受ける人たちは障害のある人といった、相対的な区別となる。関連差別は、イギリスでは性や人種も含めた一般的な平等法の中で、障害についてだけ規定されている。直接差別と間接差別は他の人たちと比較して不利益を受けているかが問題になるが、関連差別は不利益かどうかだけが問われている。障害の個別性は十人十色で、ある規定を適用した時に他の障害のある人には不利益ではないが、私の障害との関係では不利益だということがあり得て、これを救済するために関連差別の類型もある方がいい。
  • (棟居部会長)日本国憲法には不合理な差別の禁止と、人種や性別等に基づく差別の禁止という2つの規範がある。学説では後者を基準にして、法律等で異なる扱いをすると憲法違反の推定が働きこれは本来許されないとする考え方が強い。障害は、その人が自分で選んでいない、個人の努力でいかんともし難い、グループとして社会的に排除されるという点で人種や性別等と共通している。先ほどの直接、間接、関連差別の整理が日本で受け入れられるかという時に、欧州やイギリスの例だけでは不十分で、日本でも今までもよく似た考えをとってきたのでびっくりする話ではないといった説明が必要だ。先ほどの指摘は、憲法論での議論を別の角度から深めており、有効だ。
  • (発言)レストラン側が車椅子を理由に車椅子にのっている人の入店を拒否する場合はこれまで間接差別と理解していたが、車椅子に乗っている人はほぼ100%障害がある人だと推定できるので直接差別になるのか。
  • (発言)直接差別は例外事由が狭いので差別者側から反論される余地は少ないが、間接差別や関連差別は差別者側の正当化事由が広まるので、直接差別の方が裁判で勝つ可能性が高い。車椅子を使う人と言う場合、障害を言明していなくとも、下肢に障害のある人だけにフォーカスが当たるので直接差別だ。ただ、骨折の場合は非障害者側にも車椅子を使う事態が発生し得ると考えると、間接差別になる余地もある。身体障害がある人でないと車椅子を使わないから車椅子を使う人はレストランに入っては困るというルールをつくったら黙示的な直接差別だ。
  • (棟居部会長)障害者は多様でそれぞれ別の機能障害を抱えているので、差別する側も「車椅子が要る」と機能に着目して一見中立的な理由を言い、直接差別ではなく合理性があるとして非難を免れようとする。そこで合理的配慮が登場し「車椅子はたためるし、手伝えば乗り降りできるのにどうしてしないのか」と追い込めば、本音は障害を理由とした直接差別に戻る。直接、間接、合理的配慮は循環してつながっている。
  • (発言)訴訟は「この取扱いは私に不利益を発生させた」というところから出発する。イギリスの関連差別では、取扱いをした人が相手に障害があると知っているか、知っていることが合理的に期待できる状態が必要で、知らなかったという被告側の抗弁が成り立つと関連差別が否定される。その時、合理的配慮をしてほしいというと合理的配慮義務が相手に発生するかもしれないし、このルールは私と同じような障害のある人は全員排除されると言うと直接差別類型に移る。直接差別類型を主張したときに、少なくとも1人以上の非障害者に同じような不利益が発生している事実が証明されると、直接差別ではなくなる。だが、総じて障害のある人のグループに、このルールは結果的に不利に働いていると証明できると、間接差別になる。
  • (発言)合理的配慮は、障害以外の他の差別分野でも適用すべき。直接差別でも合理的配慮でも、相手側は自分たちの慣行を変える意味でコストがかかる。直接差別、間接差別、合理的配慮とあるときに、シンプルに考えた方がいい。現実には、それぞれの差別類型が重なり合って起こるので、裁判技術論的には「この類型にもっていけばよい」と考えるのではなく、全部統合した証明責任の枠組みを考えてはどうか。直接差別は障害に直接言及して相手を排除し、間接差別は障害に直接言及しないのに相手を排除するということで、障害と排除との関連性が問われる。合理的配慮は他の者に適用されるルールに例外を設け、その人だけ別の扱いをすることだ。関連差別は障害に直接言及していないが、障害に関連して起こる事由に基づき、ある人を排除しているので機能的には間接差別と同じ。
  • (発言)例えば学習塾の入塾試験で最低ラインよりは上だが、障害者ということを言及せずに塾側が入れないと言った場合は直接差別ではないのか。間接差別に合理的配慮を組み入れるという意見に関しては、障害者を間接的に排除するルールの設定の当否を問うのではなく、合理的配慮をせよと請求する場合は合理的配慮をしなければいけないという別のルールが出てくるので、両者は別類型とすべきではないか。
  • (棟居部会長)1点目は、障害を明言するかどうかはともかく、障害者というくくりで排除すれば直接差別という理解が一般にはあるのではないか。

3 正当化(例外)事由

(1、正当化(例外)事由…主な書面意見(7名))

  • (東室長)正当化事由を設ける必要があるのかという点について、複数の差別類型を設けるべきという意見の中では、それぞれの類型に応じて正当化事由は違い厳格さに強弱があるべきとの意見が多く、正当化事由の存在を許すべきでないという意見もある。少数だが、正当化事由の具体化は立法段階ではせず、法文の解釈に余地を残すべきとの意見もある。

(2、過度の負担か否かの判断にあたっての要素…主な書面意見(8名))

  • (東室長)多くの意見は過度の負担の基準を示すべきとしており、その指標に経済的負担を挙げている。本来すべきであった合理的配慮のための財政的手当を無視して組織や事業を立ち上げ、合理的配慮の求めがあった時に財政が立ち行かないから配慮を拒否することは許されるべきではないとの指摘があった。そういう点で、財政上、運営上の不可能性は、それがやむを得ないと認められる事情に裏付けられたものでなければならないという意見は、過度の負担に関する基本的考え方の一つだ。過度の負担についての基本的な考え方をまず議論していただきたい。なお公的支援は考慮すべきだが、ないからといって抗弁にはならないという意見が多い。

4 立証責任や推定規定…主な書面意見(7名)

  • (東室長)差別を受けたことについては差別を受けた側が立証責任を負う、正当化事由は差別をしたとされる方が立証責任を負う、という大枠では、ほとんどの意見は共通している。
  • (発言)直接差別は、障害に言及していなくても差別者側が他の人には適用するルールについて、障害者には要件を満たしているのにその効果である取扱いをしない場合も含むと考えている。その場合、障害者側は相手がどのようなルールを採用しているか、自分が障害者であること、そしてそのルールが適用されていないことを立証することになる。これに対し、差別者側が違う取扱いを正当化する理由を出す。ただし、ルールが当該障害者と同じ障害を持っている人であれば要件を満たせないという差別的な内容であれば、これを採用することを正当化する理由を更に出す必要がある。間接差別は障害に言及しないルールに従い取扱いをしないことで、ルールが当該障害者と同じ障害を持つ人であれば通常は満たすことが難しい場合をいう。差別者側はルールの採用の正当な理由を立証する必要がある。合理的配慮の不提供は、差別者側が不平等な状態を是正する措置を取るべきであること、そしてその措置をとっていないことを障害者側が立証する必要がある。合理的配慮は相手方に措置を命ずるので、相手方の権利や自由を制約することが正当化される理由が必要となり、その措置が不平等状態の是正に役立つ手段であること、必要不可欠な手段であること、是正手段が不平等状態を是正する目的と不均衡でないかどうかの3点が問題になる。3点目について、相手方の権利や自由を制約する程度が大きいほど、不平等状態を是正する目的を正当化する重要性がないと配慮は求められない。障害者側がこの衡量の評価根拠事実を立証し、相手方はその評価を阻害する事由を立証する。
  • (棟居部会長)直接差別の場合は、障害者には別ルールということか。
  • (発言)使い分けではなく、ほかの人に使っているルールを使わないだけである。
  • (棟居部会長)障害者はルールの適用から排除されているのが直接差別で、ルールを知らぬ顔してそのまま適用するのが間接差別ということか。
  • (発言)ルールの不平等な適用か、不平等なルールの設定かというのが、直接差別と間接差別との分れ目だ。
  • (棟居部会長)間接差別の場合、正当化はどういう形で表れるのか。
  • (発言)「文字を自分で書けること」いうルールは、文字を書くことに障害のある人たちは決して満たすことができないが、特定の領域でそのようなルールを採用することに正当な理由がある場合は、間接差別に当たらない。合理的配慮は、その先の問題だ。
  • (発言)直接差別、合理的配慮、間接差別等の類型ごとに説明責任を示すのではなく、包括的にどれにも適合できる証明責任や分配は考えられないか。差別類型論は、差別は何かがわかりやすくなる判断しやすくなるという意義があるが、証明責任をくっつけることの当否の整理がつかないので、お伺いしたい。
  • (東室長)最終的に法律になった場合に、条文から裁判所はどっちに立証責任があるかと解釈するので、立証責任の問題を考えた上で提案していくべき。
  • (発言)間接差別はわかりにくく、国民あるいは差別者とされる人にどう理解してもらうかが大事だ。禁止されることが分かりにくいと裁判規範性は失われるので、分かり易さが大事だ。条文上、直接差別、間接差別を分けることには反対だ。概念が分かりにくいだけでなく、それに属さない差別は許されることになる。包括的に分かりやすく規定すべき。どういう場合に正当化事由があるのか議論する中でルールや類型を考えれば分かり易い。イギリスでは法律に書かれていなくとも、解釈基準として示された要綱やガイドラインも司法判断基準となる。
  • (棟居部会長)レストランでペット持込み禁止というルールを課していると、盲導犬を伴う視覚障害者への間接差別となるが、これは直接差別と同じ不利益処遇だとも考えられる。この例で視覚障害者がレストランに裁判を起こすとしたら、どっちがどういう主張や反論していけばいいとお考えか。
  • (発言)視覚障害のある人は盲導犬を連れ得るので、一律に犬の入店を禁止するのは障害に言及しなくても間接差別になる。一方、明らかに視覚障害のある人が排除されているから直接差別とも言えるが、直接言及していないので疑似直接差別や準直接差別といった類型と言える。更に、ルール自体は維持しつつ盲導犬は例外的に入店を認めるとすると合理的配慮だ。1つの事例に差別概念が複合的に入るが、差別の機能を明確にしないと法的に分析評価できない。まず当事者間の話し合いの場を設けた上で、裁判所が合理的配慮はなされたのか、なされなかったとしたら間接差別や直接差別の意図はあったのか等、3つの差別類型全部を覆う証明分配を書き込めないか。
  • (棟居部会長)盲導犬の入店を認めると、健常者が盲導犬と気づかずに「どうして自分のペットは連れて入ってはいけないのか」とルールの例外を要求し、ルール自体が無効になるということが、盲導犬の入店を拒否する店側の言い分か。
  • (発言)抜け毛や匂いといった衛生面が盲導犬の入店を拒否する正当理由として挙げられてきた。身体障害者補助犬法では、訓練によりそうした弊害が除去されていると証明できることを前提に盲導犬に対する特別扱いを保障している。ルールが崩れることはあり得ないという前提でないとペットと盲導犬の扱いの異別性は明確にならない。
  • (棟居部会長)不衛生を理由に犬の入店禁止のルールを設けている店が、盲導犬かそうでないかに関わらず認めないというルールの厳格な一律適用にこだわる場合は正当と言えないか。
  • (発言)健康衛生面は、合理的な理由になり得る。過重な負担になっているかどうかも総合的に考えて、個別具体的なケースごとに合理的配慮があるかどうかをまず考えていく。ルール自体がおかしい場合は、ルールそのものを無効化すればよく、柔軟に考えられるのではないか。
  • (発言)裁判の入り口で原告は、あるルールや取扱いが自分固有の障害との関係で不利益を発生させていると主張する。これに対し、障害があることを知らず障害があるから不利益が発生すると思わなかったという被告側の主張が成功すれば関連差別は成立しない。次に、こういうルールは基本的に障害者だけが排除されるという原告の主張が成功すれば直接差別だが、被告側が同じルールで障害のない人にも一定の不利益が発生すると証明すると直接差別は成立しない。そして、非障害者よりも障害者により多く不利益が発生していると証明できると間接差別の入口が開き、正当化事由を被告側が証明できるかどうかという流れだ。類型論は、正当化事由の厳格さや挙証責任が被告にとって厳しいものになるかがポイントで、その場限りの総合的な判断を司法に丸投げすると差別が認められない方向が起こり得る。

5 差別の主観的要素

(1、差別の意図…主な書面意見(7名))

(2、いわば善意の差別…主な書面意見(8名))

6 差別禁止規定…主な書面意見(8名)

  • (東室長)相手方の主観的要素がどう取り扱われるかについて意見は分かれている。行為の認識と差別の意図はレベルの違う話であり、事実の認識をベースとした部分まで要らないのか、それは要るが差別を意図するまでは法律要件としては要らないのかを区分けして議論していただきたい。ただ、損害賠償と絡むときには、認識がなかった場合も過失の問題は出てくる。
  • (発言)何人も障害に基づく差別を受けないという形で、だれがだれに、どの領域で障害差別を禁止するのか明確にした方がいいが、差別には、直接差別、間接差別、合理的配慮の規定を含むと、少なくともその3つは明記すべき。ただし、現実の事象では、この差別が複合的に発生し得るし、直接差別、間接差別が区別しにくい部分があるので、証明責任の段階では、包括的な立証責任の分配を考えた方が、法的評価が楽になるし、一般の人にもわかりやすくなる。領域については、労働、教育、サービス等、現時点では、ある程度限定列挙の方がいい。
  • (発言)包括的な差別規定を設けると同時に、具体的に困っている問題に対応できるよう、この分野ではこういうことをしてはいけない、ということをはっきり書いていただきたい。
  • (発言)障害者差別禁止法で顔に傷や手術の跡があること等を障害に入れるかどうかについての議論が必要だ。現実には、このような場合に就労の場で差別される可能性がある。また、法律や規則には限界があるので、国民全体に思いやりを高めることや運用の在り方も検討する必要がある。差別が発生すればすぐ裁判か、調整や話し合いかというプロセスも考えておく必要がある。差別類型の標準がないと調整に時間がかかることを踏まえ、差別状態を早急に改善、解決する効果的なルールが必要だ。
  • (発言)障害者の多くは、表現能力、コミュニケーション能力、資力が厳しいので、障害者は差別を受けたことをもって問題の俎上に上げられるようにする、そして差別者側は差別をしていないことを証明する手続をお願いしたい。

議事 障害者差別が裁判で争われた事例について

*上記のテーマでヒアリングを行いました。ヒアリングについては議事要録を作成しないこととしておりますので、内容の確認は議事録をご覧下さい。

[以上]

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