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障がい者制度改革推進会議 差別禁止部会(第8回)
議事録
○棟居部会長 それでは、定刻になりましたので、これより第8回「障がい者制度改革推進会議差別禁止部会」を開催させていただきます。
差別禁止部会は一般傍聴者の方にも公開いたします。また、会議の模様はインターネットを通じても幅広く情報提供いたします。
なお、御発言に際してのお願いとして、発言を求めるときは、まず挙手いただき、指名を受けた後、御自身のお名前を述べられてから、可能な限りゆっくりと御発言いただくようお願いします。
本日の会議は18時までを予定しております。
それでは、東室長から委員、オブザーバー及び専門協力員の出席状況と資料説明をお願いします。
○東室長 どうもこんにちは。担当室長の東です。
まず最初の内閣府共生社会政策担当の審議官が異動により交代しておりますので、御紹介申し上げます。
前任の岡田審議官から伊奈川審議官に代わりました。御報告いたします。
それでは、伊奈川審議官、ごあいさつをお願いします。
○伊奈川審議官 皆様、こんにちは。8月22日付で共生社会の担当審議官になりました伊奈川でございます。よろしくお願いいたします。
○東室長 よろしくお願いします。ありがとうございました。
それでは、本日の出席状況をお知らせいたします。本日は川内委員、山本委員、遠藤オブザーバーが御欠席でございます。小島委員が5時半に退席される予定でございます。その他の委員、オブザーバー、専門協力委員で遅れている方もいらっしゃいますが、出席の御予定です。
本日の議事は15分の休憩を2回取ることとし、3つのコーナーに分けて行います。
第1のコーナーは60分で、差別の類型論をめぐる論点に関しまして、これまでの議論を踏まえ、フリートークで深めていきたいと思っているところでございます。
第2のコーナーは70分で、ヒアリングでございます。欠格条項に関して、障害者欠格条項をなくす会事務局長の臼井様にレクチャーをしていただき、その後、議論をしたいと思っております。
続きまして、第3のコーナーですが、これも70分でヒアリングを行います。条例に基づく救済に関して、千葉県健康福祉部障害福祉課長の横山様にレクチャーをしていただきまして、その後、議論をいたしたいと思っています。
以上が今日の予定でございます。
次に資料の確認をさせていただきます。議事次第、座席表に続きまして、資料1が臼井氏提出の「欠格事由に関して」でございます。
資料2が横山氏提出の「条例に基づく救済に関して」でございます。
また、委員の皆様には本日の議論の参考資料として、第5回の部会で提出しております参考資料3「各国差別禁止法における障害(者)の定義比較表」並びに第6回の部会で提出しております参考資料「各国差別禁止法における差別の一般的定義比較表」を再度配布させていただいております。
なお、平成22年度内閣府委託報告書である「障害のある児童生徒の就学形態に関する国際比較調査報告書」及び「同調査翻訳資料集」のとりまとめが完成しましたので、本日委員の皆様には配布させていただいております。今後の検討の御参考にしていただければと存じているところでございます。
以上、お手元にございますでしょうか。御確認ください。
○棟居部会長 ありがとうございます。
それでは、議事に入らせていただきます。第1のコーナーは60分で、差別の類型論をめぐる論点に関して、これまでの議論を踏まえ、フリートークで進めて深めていきたいと思います。
まず最初に東担当室長から、これまでの議論を整理してコメントをいただきます。
○東室長 担当室の東です。
第5回から障害の定義から始まりまして、差別の類型論を議論してまいりました。直接差別、間接差別、関連差別、合理的配慮の否定という順番で議論をして、最後にこれは類型の関係といいますか、まとめた形での議論、並びに正当化事由、例外事由についての在り方、立証責任の分配という問題を議論してまいりました。かなり細かい形で論点を出させていただきましたので、本当に多様な意見をいただいているところであります。
外国法制も論理的にきちんと組み立てられているというよりも、各国の政治的な状況とか歴史的な状況とか、いろんなものを反映しておりますので、理屈だけできちんと説明できるかというと、必ずしもそうでもない部分もあると思うんですね。しかしながら、現状として各国法制度がそうなっているということについては、現実的な重みも感じます。そういう中で、障害者の権利条約でも示された方向性を踏まえて、どう日本でまとめていくかという議論をしているわけです。
できれば本年度の年度末くらいには一定の中間まとめみたいなものができればなという希望を持っておりますが、先ほど言いましたように、かなり多様な意見をいただいているところで、現状においては残念ながら、まとめるという作業は甚だ困難な状況にあるわけですね。学会の議論であれば、それで済むのでしょうけれども、ここの審議会は一定のまとめといいますか、結論を出して、立法作業につなげていくということが大きな使命であるわけです。ですので、意見は意見として、いろんな理論的な問題もありましょうが、具体的な形でまとめていくという作業が求められていくというふうに思っております。ですので、本来的には前回までで総論的な話は終わりにできるかなと思っておりましたけれども、意見の状況を見ると、もう少し続けてまとめていく必要があるのかなと思っております。
そこで今日はこれまでの議論を踏まえて、フリートークをしていただければと思っております。ただ、また前回の続きというわけではありませんので、まとめる方向で意見を出していただければなと思っています。差別禁止法をまずどんなふうにイメージするかということですけれども、大ざっぱに言えば総論的な部分があって各論部分。各論もどういう分野を規定するかというのはいろいろ御議論があるでしょうけれども、全部を規定するというのはほぼ無理でしょうから、総論に返って、総論から判断するという事例も出てくるわけですから、各論では足りない部分を総論できちんと押さえていくという、総論と各論の関係もあると思っています。
その上で、特に行政的な救済の手続をどうするかというのが3つ目の柱としてあるわけですね。ただ、この分野につきましては、人権救済法案のゆくえとも関連していきますし、既存の救済制度、例えば労働分野においてはいろんなものがありますね。そういうものとどうリンクをしていくかということも関係しておるわけです。いずれにせよ、総論、各論、救済部分について一定のまとめをしていくということが求められております。そういう中にあって、今日は特に総論部分について、どうお考えになるのか。皆さんで考えていただきたいと思います。
ちなみに条約は、差別禁止については第5条で書いてありますけれども、定義関係につきましては第2条で差別とは何かということが書いてあります。合理的配慮もその差別の定義に入っておりますけれども、合理的配慮につきましては別立てで定義を設けているところです。ですので、全く一本だけで全部の差別の類型を規定するというのは、権利条約上でもやっていないというところです。他方、イギリスの一番新しい法制度では、この前も議論をしましたけれども、4つの類型を設けているわけですね。
こういう状況の中にあって、日本ではどうしていくか、大枠どう考えるか。いろんな御意見はあろうかと思いますけれども、大体こういうパターン、こういうパターン、こういうパターンが要るのではないかぐらいの形で御意見がまとまっていけばと思っているところです。
担当室としては、以上でございます。
○棟居部会長 どうもありがとうございました。
今の私なりに要点筆記というか、大事なところを触れさせていただくと、いきなり各論に入るより前に、まず総論で一定の方向性を固めておく必要があると。それに対して今までの議論ではまだ方向性が出てきていないと。総論がなぜ大事かというと、各論に際しても総論は一定の基準になるというのと同時に、各論でも書き切れない漏れが出てきます。それを最終的に立法化した後、裁判で裁判所がどういうふうに判断をしていくかというときに、結局、総論でのこの原理原則ですね。考え方、これが出ていないと個別のケースの判断ができないだろうという技術的な理由もあって、総論についてちゃんと詰めておく必要があるという、こういう理解でよろしいですか。
ということで、決して哲学論争をもう一回やらせてあげますとおっしゃっておるのではなくて、非常にこれは技術的に大事だということのようです。ただ、だからと言って哲学抜きの総論ではまたかえって個別の解決はできないという非常に難しい問題がある。
それとこれも確認ですが、今日で最後というわけでも必ずしもないですね。ということで、フリートークということなんですけれども、15時5分くらいまでの時間を予定しておるんですが、手持ち資料というんですか、お手元で横長の英文がまず目に付く。これが第6回の参考資料でございまして、「各国差別禁止法における差別の一般的定義比較表」というものでございます。今、言及されました条約における定義はこの最初のページに書かれておるところであります。
それから、イギリス法に言及されましたが、これは5ページを見ていただくと、2010年平等法、ここで直接差別という13条があり、次の6ページを見ていただくと間接差別、それから、障害に起因する差別と19条、15条とありますが、済みません、東さん確認ですけれども、4つの類型とおっしゃったのは、具体的にはイギリス法のどこをおっしゃったんですか。先ほど4つとおっしゃいませんでしたか。
○東室長 第6回の参考資料の11ページを見ていただくと…、ちょっと待ってください。これはオーストリアですね。ごめんなさい。
○棟居部会長 とりあえずイギリスのは先ほどの辺を見ておくということで、これはあくまで注意喚起というか、記憶喚起というか、今までのいろんな立法例を協力者の方々の御協力を得まして見てきた中で、かなりまとまっておるもの、詳しいものとして、この2010年のイギリス平等法というものが我々にとってはかなり有効なサンプルかなというので、今、挙げられておると思います。
ただ、いきなりこれをこちらで丸飲みというか、一番進んでおるようなのでまねをすればいいかというと、逆にうまく使いこなせないという可能性もありますので、イギリスはイギリスで95年の障害者差別禁止法といったものの経験を踏まえて、ようやくここまで来ておるわけですから、日本で立法化を初めてするというときに、一番進んでおるものが一番いいのかどうかというのも、これは我々としてはそういう現実的なことも考えなければいかぬだろうとは思います。どうも要らぬことをいろいろ申し上げました。
では、そのようなお手元の資料を参考にされながら、フリートークということでお願いします。なお、くれぐれも議論が同時に発生されないように、お一人ずつゆっくりとお願いします。
太田委員、どうぞ。
○太田委員 太田修平でございます。
前回、差別の定義、差別の類型について話し合いました。なぜ差別の類型が必要かといえば、差別禁止法でいう法律がより実効性を持たせる、そういう目的で類型が必要だと認識しています。同じ意味で、今、座長や室長がおっしゃったように、具体的な差別に出会ったときに、悔しいな、これは不当な行為だと思ったときに、救済機関とか裁判所に訴えることができる。そして、自分の正当性あるいは差別を受けたという不当性を訴え、権利を回復、救済、場合によっては補償といったものを勝ち取るという意味の実効性の担保ということも重要だと思います。
そう考えたときに、私たち障害者は日常的にいろんな場面で差別を受けているわけです。障害を持っているということで、労働条件を低く、悪くされたり、あるいは地域で生活をしたいと本音のところでは思っているにもかかわらず、施設を行政がすすめるので、施設や病院という地域生活が隔離された場に否応なしに入れられて、そこで一生を過ごさねばならない。そういったときに、何かおかしい、悔しい、これは違うのではないかと思っても、法律的に訴えるすべが今はないに等しい状況にあるわけです。
例えば、交通機関でエレベーターがあるにもかかわらず、利用時間を制限されて、例えば朝7時から夜11時までという利用時間が制限される。多くの人々は始発から終電まで乗れるにもかかわらず、車いすの利用者はエレベーターが使える以外の時間に使おうとしたら、これは規則だからだめですと言われたとき、それを法律的に訴えられるすべを今はない状況にあります。
私が言いたいのは、悔しい、何かおかしい、納得できないといったときに、訴え出ることができる、簡単に訴えられる法律制度があったらいい。そのための差別の類型をしてほしいなと、そういう目的に沿って、本当に障害者が悔しい、おかしい、と思ったときに、役立てる法律をつくる、類型があってほしいと思います。
○棟居部会長 ありがとうございました。
今の、私の言葉を交えて、私の理解を確認させていただくと、福祉の問題として障害者に対する施策をしていると、これはエスカレーターは7時から11時までと。福祉だからそれぐらいでいいではないかと。そんなに朝早くとか夜、終電とか車いすの人は乗らない方がいいですよとか、そういうよけいなおせっかいもあって、福祉的な観点からは、もう時間が短くていい。あるいは福祉はお金がかかる、政策の問題だから時間を短くしていいと。だけど、それを太田さんは、これはもう差別の問題であって、権利侵害の問題なんだと。そこがまずわかってもらえない、非常に悔しいということをおっしゃっていて、これはもう原点の話をされていると私は思いました。
差別の定義の問題、実効性の問題。この実効性ということを特に言われたんだけれども、結局、福祉だとどこまでのサービスをするか。決してこの障害者の側から主張できないわけですね。あくまでこれは政策の問題だ、お金がかかる話だと。今年はここまで、10年後にはもっとよくなるかもしれませんという話になる。それに対して、これは権利の問題なんだと。今回、我々がやっている差別禁止の立法のためのこういう話し合いは、あくまでこの福祉ではなくて権利の問題として、この差別をとらえていくと。それを出発点にしているんだというのを太田さんは強く確認したいという理解でよろしいですか。
○太田委員 ありがとうございます。
それと同時にそういう視点に立って、差別の類型化をやってほしいと思っています。
○棟居部会長 学校の問題、病院の問題、すべて福祉という観点からはちゃんと整備されているではないかと。何も不満がないはずだと、こうなるんだけれども、権利という観点からは、そもそも隔離をされていることがおかしいという理解ですね。
済みません。1時間もあっという間に過ぎそうです。どんどん行きたいので、また後でどうぞ。
では、山崎委員、お願いします。
○山崎委員 山崎です。
今、太田委員が発言された後半の御趣旨のことを実は私も申し上げたいと思っていました。先ほど部会長が恐らく前半の太田委員の御発言については要約を御紹介いただいたと思うんですが、私が伺った範囲ではもう一つあって、それは障害者差別禁止法をつくる場合、勿論、行政救済とか、この法を適用することで司法救済は可能になるわけですが、簡易迅速といいますか、簡単に安く気軽に相談、救済に持ち込めるような権利委員会のようなものが必要ではないかという御趣旨の発言もされていたのではないかと私は理解しています。
それが仮に正しいとすれば、実は私も同感でございまして、ここから先は東室長さんにお尋ねなんですが、先ほどこれまでの議論のとりまとめの御説明の中で、総論とか各論と整理して御説明になったんですが、その各論の中に例えば権利条約の33条2項を国内実施するための、例えば障害者権利委員会のような規定はほかの法律でなくて、我々がここで議論をしている差別禁止法の中に盛り込むという形で我々は議論を進めるという前提なのか。あるいは救済機関の設置法についてはまた別枠で考えるという方向なのか。
これまで私はここの席にいて、その辺りがよくつかめなかったので、教えていただければ幸いです。
○棟居部会長 東室長、お願いします。
○東室長 担当室長の東です。
それは私の決めることはではなくて、皆さんが考えて決めていただければと思っております。ただ、これまでの議論の経緯からすると、要するに人権救済法案が法務省管轄で議論が進行しているところであります。その中身について詳しく知っているわけではありませんが、包括的にあらゆる事例を含み得るような形のものが提案されていると思います。ですので、そちらの法案ができるということであれば、実体規定はこちらでつくって、手続はそちらに任せるという役割分担的な形になろうかなとは思うのですが、そちらの話が進行しなければ、差別禁止法の中に行政救済のシステムを盛り込んでいくということが求められると思っているところです。
ただ、既に先ほども言いましたように、労働分野などでは個別の救済システムがありますので、そういう個別の分野で既存のものがあれば、そこに救済システムをお願いすると、担当していただくというような在り方もあるのではなかろうかと思っていますが、基本的には人権救済法案ができない限りにおいては、ここでそういう救済のシステムをつくるというふうになろうかとは思っております。
以上です。
○棟居部会長 ありがとうございました。
山崎委員、お願いします。
○山崎委員 山崎です。
ありがとうございます。基本的にはおっしゃるとおりだと思うんですが、この前、8月2日に法務大臣政務三役が一定の基本方針を出されて、少し一歩前進かなという印象は持っているんですが、恐らく早くて来年の通常国会でないと法案は出てこないのではなかと、個人的には推測しています。この臨時国会で出る可能性は否定はできないんですが、その辺りの私どもの部会としてのどの段階でこの法案の方に救済機関のことを委ねてよろしいと判断するか。その辺りの判断の時期というのは、なかなか難しいかなと思うんですね。
私が察するに、先ほどの室長さんのお話ですと、今年度末にある程度の骨格をこの禁止法案について示したいというお話でしたので、そういうふうに考えますと、例えば来年の年が改まって、例えば通常国会に法案が出る動きがないとか、そういう事態になった場合には、少しこちらの方で独自に障害者権利委員会のことも考えた方がいいのかなと個人的には思っております。
以上です。
○棟居部会長 ありがとうございました。
権利救済の仕組みをつくっても、その利用自体がまた新たな壁になると。例えば物理的にもそこの目の前に大きな階段があるとか、それから非常に専門用語ばかりで使いづらいというか、結局どなたかの手を借りなければいけない。こういう我々はあくまでこの障害者のための簡易迅速な権利救済というのを念頭に置かなければいけないので、人権救済法が仮に成立しても、これは健常者にとっては使いやすいかもしれないけれども、障害者にとってはどうなんだという、そこのチェックというのは当然しなければいかぬと思います。これは勿論どういう前後関係になるかということもあるかと思います。
ほかにいかがでしょうか。ちょっとの差で多分ですね、川島委員にはちょっと待っていただきまして、池原委員、お願いします。
○池原委員 済みません、池原です。お先に失礼します。
ちょっと議論が戻ってしまうんですけれども、前回の特に類型化の議論について、いろいろと振り返ってみたいなと思ったんですが、大きく分けると類型化を示した方がいいのだという考え方と、いや、まだ類型化を示すのは早過ぎるのではないかという考え方がどうもあったように見受けられて、類型化というのは具体的に言うと、間接とか直接とかという差別の類型のことですけれども、その類型化をあえて明示することについて消極的な意見というのは、その実質的な理由はどうもまだ類型化についてのコンセンサスが十分に得られていない、あるいは概念がきっちり固まり切っていないような段階で無理に実定法、条文に言葉を落としていくと、逆にその類型化に足を縛られて、類型と類型の間にいわゆる隙間が生じて、そこに本当は禁止しなければいけない事柄なのに、類型に当たらないから差別になりません、みたいな逆の作用が生じないだろうか。あるいは現段階では余り想定していないけれども、将来、全く考えていないような差別事象が起こったときに、仮に直接とか間接という差別類型だけですべてをカバーできるんだろうかという辺りに一定の危惧感が示されていたのかなと思いました。
他方、その類型化が必要だという考え方に立つ立場は、例えば権利条約の差別の定義だけでは必ずしも一読して、なるほど、これが差別化とわかるほど明確ではないし、かなりその解釈に幅を生じるので、将来的に裁判所で条文が解釈された場合だとか、あるいは行政庁が条文を使う場合、あるいは民間の企業が使う場合に、さまざまな裁量の解釈の余地を残し過ぎてしまって、そのことによって結果的に差別禁止法の規範的な力というか、差別をなくしていくという効果が損なわれることになるのではないかという辺りに逆の危惧感が示されていると私自身は読み取りました。
これは全くの個人的な意見で、せっかくのフリー討論なので議論していただけるといいかなと思うんですけれども、例えば一つの考え方として言うと、確かに類型を示すことによって、逆に類型から外れる差別について対処できなくなるのではないかという考え方には一定の意味があると思うので、しかも将来どういう現象が起こるかということをここですべて想定するのは不可能ですから、そういう意味で言うと、技術的に言うと例えば権利条約もそんな規定ぶりになっていると思いますけれども、一定の差別についての定義を示した上で、この差別というのは直接差別とか間接差別とかあるいは関連差別も入れるか入れないかという議論がありますが、そういうものを含むのだという、つまり類型を一応示すけれども、この類型が言わば限定列挙的な類型ではなくて、あくまでも差別の主要な類型を示しているにすぎないんですよというような、例えば言葉にしてみると、日本の法律で含むという言い方が一般的に使われるかどうかわかりませんけれども、そういう書き方をするとか、あるいは比較的ありそうなのは本文に差別の定義を示して、その後に1号差別は直接差別であると、2号差別は間接差別であると、3号差別は例えば関連差別とか、あるいは4号差別が合理的配慮義務違反であるとか、そして、5号にその他一切の形態の差別をというような最後の補充規定を置くことによって、つまり類型化を示すことによって、隙間差別といいますか、救済されない事例が発生することを立法技術的に防ぐことができるとすれば、ここでやったその類型化についての積極論とか消極論というのは、ある程度克服できるのかなという印象というか、考えを持ちました。
それから、もう一つは、もしそれが肯定されるとすれば、今、申し上げたような例えば1号差別から4号差別までとか、1号差別から3号差別までというのが具体的な類型化された列挙類型になるわけですけれども、それぞれ直接差別とか間接差別というのは、定義的に言ったら何なんだという辺りについては、まだちょっと議論が十分に尽くされていなくて、それぞれの委員の間での見解の相違とか、理解の違いがあるように見受けられるんですね。これはまだもう少し議論をしないと、どういうことがいいのかというのは、なかなか難しいように思います。
ただ、実質的に大事なことが、私が見るところでは2つぐらいあって、1つは法律というのは憲法でもそうですけれども、どうしてもその例外というのを全く認めないというのは、なかなか難しい場合がある。あるいは例外をどれぐらい緩く認めるかということが実際はどれぐらいしっかりした保障をしていくかということと表裏一体な関係にあるわけですね。そういう目で見ていくと、直接差別類型についてはもう例外は認めないんだと。つまり直接差別に当たれば、すべて違法な差別であって、それはもう日本の社会では直接差別という現象は許しませんという非常に厳格な立場に立つ見解の方とか、それから、もう少し例外はある程度、限定だけれども、認められるけれども、かなり厳しいですよという考え方の方もいらっしゃるし、例外については直接差別か間接差別かについては、余りその類型によって例外の違いはないという考え方もあるように見受けられるんですが、個人的に見るとせっかく類型化をするんだから、類型ごとに例外的な許容要件というんですか、いわゆる正当化事由と比較側に立つ人たちが抗弁として、いや、確かに異別取扱いをしているけれども、あるいは不利益がちょっと発生しているかもしれないが、それは私たちにもそれなりの正当な理由があるんですよという見解をどのぐらいのレベルで許すかという問題ですね。それがもう少し類型ごとにある程度分類されると、すっきりするのかなと。言わば例外的な許容要件の厳しさをどうするかという問題があると思います。
大ざっぱに言うと、どうも直接差別についてはもう例外なしか、あるいは極めて厳しいという立場に立つ。それ以外の間接差別とか、あるいはもし関連差別を認める立場の人も直接差別以外については比較的緩やかな基準に立つと。緩やかと言ってもそんなに緩いわけではないんですけれども、というふうになっていて、合理的配慮については過度の負担を課す場合は例外的に配慮しなくてもいいというようなところについては、おおむね見解は一致していると思います。
ですから、もう一つは例外的な許容要件のところで直接、間接、関連については、それぞれどれくらいの厳しさ、あるいは底抜けにならないような、言わば例外がゆるゆるになってしまうと保障はないのと等しいことになってしまうので、どうしたらその司法判断とか、あるいは一般企業の現場での判断がゆるゆるにならないような基準を立てられるかというのが一つ大きなところで、これは参考としては、国によっては比例原則というのを取っていたり、あるいはアメリカ法的にはLRAという基準を使ったりということがあるようで、そんなことを考えたらどうかなと思いました。
それが類型化の1点目の、つまり許容要件を類型ごとにどう考えるのかということが一つの柱かなと思うんです。もう一つの柱は比較的似ていますけれども、原告の立証責任をどれぐらい軽減するかというところですね。つまり原告側がどこまで立証したら勝てるのかというか、差別が許されない差別として、言わば勝訴判決にたどり着けるのかというところがあって、これもある程度類型ごとに何を結局まず、難しく言うと請求原因として設定しなければいけないのか。あるいは抗弁が出てきたときに、更にそれに対する反論としての再抗弁ができるのかという辺りも、これもまた類型ごとに考える問題なのかなという印象を受けまして、もし皆さんの方で今、申し上げたようなことについて、いろいろ御意見をいただけると少し議論をまとめていけるのかなと思ったりしています。どうもありがとうございました。
○棟居部会長 ありがとうございました。
今のも私なりに集約させていただくと、類型論そのものがよろしくないという意見もあるけれども、これは類型論について、それ以外のものを認めないという何か排他的な前提があると。しかし、池原委員は類型というのはあくまで例示列挙という言葉を使うことがありますけれども、限定列挙ではないと。その主要なものをカテゴリーとして挙げるというふうに考えれば、決して排他的なものではないんだから、要するに類型論というのは大事だと。なぜ大事かということについて、積極的に2点言われまして、2点はなかなか区別がしにくい面もあるんだけれども、許容要件、正当化事由について類型ごとに濃淡が分かれてくると。
あるいは原告の立証責任も類型ごとに分けて考えていくと。こういう非常に技術的な取っかかりとして、類型論というのは意味があるということでよろしいですか。今、最後に池原委員はこの点を最後に踏まえて議論をしてほしいと議論を投げ返されたんだけれども、しかし、こちらはこちらで別の糸口を提案したいという委員もおられると思いますので、どう跳ね返ってくるか、まだちょっと待ってください。
では、お待たせしました。川島委員、お願いします。
○川島委員 ありがとうございます。
総論と各論に分けて、今回は総論の議論を一部するという趣旨ですので、総論に当たって簡潔に5点挙げたいと思います。まず差別禁止法の趣旨目的ですね。何のために差別禁止法をつくるかというところの議論。ここら辺はもう一度考えないといけないと思います。
1つのアプローチは障害のある人というマイノリティーのためにあると。他方で障害はだれしもが持ち得る人間の特徴であるという観点から、これは一部のマイノリティーのための方ではなくて、むしろ人間にとって普遍的な法なんだというアプローチ。これも一つ考えられるわけです。そのような何のためにあるのかというところで、国民の合意を得るという観点からも、こういう考え方、整理というのは必要かと思います。
2点目は、差別禁止法の機能限界ですね。位置づけといってもいいんですけれども、差別禁止法に過度な期待をする方々も一部いらっしゃると思いますけれども、一般的な意味で、しかし、基本的には差別禁止法の限界というものをしっかりと理解しなくてはいけない。もしくは障害者法体系、つまり社会サービス等を含めた障害者法体系における差別禁止法の位置づけというのも総論でしっかりと認識しないといけない。これが2点目。
3点目は障害の定義ですね。概念と言ってもいいんですけれども、この点についてもしばしば誤解があって、障害学というディサビリティ・スタディーズという学問分野が出てきて、障害というのはバリアー、社会的障壁によって生じる障害者の不利のことを障害と言うんだというような定義もありますけれども、我々は法律をつくっているわけですので、法律学的定義と障害学的定義というものをしっかりとここで分けて考えなければいけない。
4点目が差別ですね。差別とは何かということで、これは池原委員がおっしゃられたとおり、いろいろな論点があると思うんですけれども、これは東室長もおっしゃられたとおり、イギリスとかアメリカとかその他さまざまな国の差別禁止法は歴史があるわけで、それをそのままうのみにできない。しかも、アメリカの人に聞けば、アメリカの障害差別禁止法ADAみたいなものはまねをするなという忠告は受けますし、オーストラリアに行けばオーストラリアの人は、オーストラリアのような差別禁止法はつくらないようにと。それぞれ自分たちの国にいる人たちは、自分に身近な経験を持って、自分たちの反省を生かしたもの、いいものをつくってくれと言うわけです。すなわち各国の実定法を見た上で、それに対する批判というものをしっかりと認識した上で議論しなくては、これは余り意味がない。これが差別類型論についても言えるということです。
類型論についてはもう一点だけ言いますと、何のために何を明らかにするために類型をするのかというところで、挙証責任やそういった観点から類型が必要だと言いますけれども、その挙証責任のレベルから手続的な面から類型をするというのは筋が通っておりまして、これは当然理解できるんですけれども、むしろそれが持ち得る弊害がもしかしたらあるのではないかという点も今後検討しなくてはいけない。
最後に5点目として、総論としては一般的にどのような対象領域、どのような分野で差別を禁止するかという議論もしなくてはいけないんですけれども、それで各論に委ねるというところですね。例えば各論では教育や雇用やサービス分野とかいろいろあるんですけれども、それぞれ固有の論理というものがやはり、教育なら教育、雇用なら雇用、サービスならサービスとあるわけですね。その固有の論点を踏まえた各論の議論に委ねていくという形になるのではないか。
以上です。ありがとうございます。
○棟居部会長 どうもありがとうございました。
今、川島さんがおっしゃったのは、直ちに皆さんにその反論とか議論をいただこうというよりは、全体の方向性をと。特に一番最後におっしゃった各論それぞれのフィールドごとの特徴という、つまり今、余り総論でがちがちに逆に縛るのもよろしくないのではないかということかなと思うんですけれども、つまり総論、総論の議論もほどほどにしておいて、各論なりの領域ごとの議論が大事だよという御指摘かと思いました。
ほかにいかがでしょうか。松井先生、お願いします。
○松井委員 松井です。
さっきの川島さんの発言でちょっと川島さんにお聞きしたいんですけれども、私は前回いなかったので、さきほど池原さんが前回の議論をよく整理していただいたと思いますが、池原さんがおっしゃったような、いわゆる類型化することのメリットを強調されたと思いますけれども、川島さんはそれに対してかなり懐疑的な発言ではなかったかというふうに思うんですが、そこはいわゆる類型化することのデメリットはどういうふうに考えていらっしゃるのか、教えていただきたいと思いますが、よろしくお願いします。
○棟居部会長 川島委員、どうぞ。
○川島委員 類型化自体は、つまり差別とは何かというものを考える際に、いわゆる直接差別という従来型のものではなくて、合理的配慮も入るんだよというふうな差別概念を明確にすると。それをもって差別を禁止するという差別の禁止というものを万全にするという観点からは、差別概念を明確にするという次元では類型は必要だと思うんです。しかし、それが挙証責任とかと結び付くと、つまり間接差別に類型化されると、それは許される差別になりやすくて、直接差別に入ると許されない差別になるやすいというような技術論に入ってきて、むしろそういうような技術論自体を一回、諸国の判例も見て、疑って検討しなくてはいけないのかなと。そこら辺は実は私も不勉強なので、今、疑問を投げかけている段階ということです。
○棟居部会長 大谷委員、先にお願いします。
○大谷委員 済みません、大谷です。
私も先回欠席をしたので議論に付いていけていないところがあるかもしれません。差別の類型に関してはやはり必要だと思います。ただし、正直に言って、その差別類型に当たるかどうかということを抽象的に議論するということに、私はさほど余り意味を感じていない。具体的に場面場面で異なることはあるし、重なるところも多々出てくるのではなかろうかと思うんですね。
ですから、法律として直接、間接、そして合理的配慮の存在ということを明記した法律が必要であるけれども、この差別はこれに該当するということを抽象的に議論をすることはどうなのかなと思っていますので、例えば私は意味があるとしたら、技術論と川島さんがおっしゃいましたけれども、挙証責任、立証責任とのバランスの関係で非常にそこは大きな意味が出てくるということがあって、初めて大きな意味が出てくるんだろうと思っています。
直接差別というのは具体的に障害を理由に、障害があるということを明記された形で差別される。例えば異別取扱いが、私は教育の方だけで整理させてもらうと、障害があることを理由に特別支援学校が強制される。普通学校から排除された。これなどは典型的な異別取扱い分離ということになりますので、もう直接差別だろうと思うんですね。このようなときには、要するに正当化理由は厳格な基準の下に、それがもう本当に合理的な理由があるということを教育機関側が立証できない限りは、もうすべて差別が推定されるという取扱いになるのではないかと思っているんです。
ただし、その後の間接差別と合理的配慮の不存在に関しては、どちらがどう類型に入るのかということに関しては、よくどちらなのかと思うのは、例えばすべてのカリキュラムを履修できなければならないという条件を付けられて、入学条件が決められた。これは障害を直接の理由にはしていないけれども、ある種の障害の方にとってみたら、体育、音楽等の履修は非常に困難であるということになりますから、類型化していくと、履修条件を付けられるということが間接差別類型に当たるというようなことにもなりかねない。
もう一つ言えば、医療的ケアが必要な子は普通学校に入れない。これは障害を起因とした医療的ケアということを理由に普通学校に入れないという非常に個別性のあるところですから、それを関連差別と言うのかどうかわかりませんけれども、ある種、起因とした差別となる。
でも、それらのことに関しては、合理的配慮の不存在が差別なんだということが新たな類型として意識されたときには、例えば医療的ケアに関しては、普通学校で医療的ケアを合理的配慮として要求する。それが不存在なんだから、それはこの子にとっての就学を実現するためには不可欠な配慮なのだから、そのことがないことが差別だと主張さえしてしまえば、合理的配慮の不存在と関連差別ともしくは間接差別も何かダブってくると思うんです。
ですから、主張する側がどれを使うのかということになってどのことをその相手方に抗弁を求めるかによって、変わってくるかもしれないという意味においては、幅はたくさんあった方がいいから、こういう差別がたくさんありますという、差別類型がここにありますということをある種あった上で、そして、抗弁ができるだけ少ないものを、差別を主張する方側が選べるような形にしてもらえれば、私はいいのではないかと思っています。非常に実務的な考え方かもしれませんけれども、必ずしも私は技術論ではないと思っていますので、そこのところを提案させてもらいたいなと思いました。
以上です。
○棟居部会長 ありがとうございました。
今、先ほどの川島さんの技術論という御指摘、これは私なども専門は法律かどうかよくわからないような専門なので、ややもすれば同じような感覚を持っているんですけれども、立証責任とか類型とかいうと、ところてん式にもう答えが決まってしまうと。何か事案ごとの特徴とか、先ほどの太田さんの言葉を借りると、悔しいというか、そういう気持ち、感情をどこで抱くことになってしまうのか。どの点が問題なのかという一番肝心のところが裁判の場合に出てこなくて、技術論でただ自動販売機みたいに答えが出るというのはおかしいというか、大体無理ではないかという懸念というか、不安というのが法律家以外のサイドからはよく出ますね。
それに対して大谷委員がおっしゃったのは、この立証責任とか類型とかいうのは議論の取っかかりなんだと。むしろさっき選ぶということをおっしゃったけれども、これはその事案ごと、例えば医療ケアを学校に要求するのか、それともそれはもうよけいなお世話で、絶えず親が付いていて、発作が起きたらすぐに病院に連れていくから、とにかく普通学校に入れろという、そこのねらいなのか。これは恐らく千差万別ですね。
そういういろんな思いを裁判で実現をしていく上で立証責任とか類型とか、そういうのがある方が議論の取っかかりになるんだという、幅もあるしという。ですから、技術論というのがそんなにがちがちの血も涙もない技術論というのではないんだという御指摘。そこは法律家がそうおっしゃっているんだから、そうなんだろうと。うまく血も涙もあるように運用できるという、類型論とか立証責任でうまくやれると、こういうことなんですね。
ほかの論点。では、伊東副部会長、お願いします。
○伊東副部会長 法律学者の皆さんの御意見になかなか付いていけなくて苦労をしております。基本的なことを申し上げますが、差別禁止法は、障害のある人の基本的な人権、生存権、生活権を確保し、守ることが目的だと思います。そもそも我が国においては、障害ある人の基本的な人権が確保されるべきということが意識されない、前提とされないまま今日に至ったのではないでしょうか。
差別禁止法はそれを社会全体が明確に確認し、同じ国民として障害のある人たちにも同じく基本的人権があり、侵害された場合には救済する、そのための法律的な規範となる大きな役割を担うのだと思います。障害のある人にとって基本的人権、生存権、生活権などが確保されていないこととはどういうことなのか、実際の差別とはどういうことなのかについて、この場ではまだ曖昧であり、差別の内容、程度、などについては不明確になっており、差別とは何かをできるだけ国民の共通認識にするためにも類型化は慎重にしかし、明確にしなければならない。
差別禁止法により、何をもって違反行為とするのか。差別禁止法の最大の目的は、禁止法を必要としない社会をつくることであると考えます。社会の理念を高めていくことことができる法律であって欲しいと考えます。
そこで調整機関を強化するとか、調整機関の運用のあり方をどうするのか、といったこともあわせて考えながら、法律づくりをめざす。それが無くて法律をつくり、違反行為には罰則を課す、あるいは救済する、といった他の法律と同様な運用ではなく、差別禁止法の理念を社会に浸透させることができる、強いアクションを起こせる調整機関をつくり、強化する、といったことを前提にし、そのシステムや運用についても構想も持ちながら法律を作るということが大事ではないでしょうか。
○棟居部会長 ありがとうございました。
社会を変えるというのが目標で、そのためには逆にこの法的な手続以外の調整機関による実効的救済というのか、まさに調整を通じて和解していく。つまり差別をしていた側が差別していたんだと。それは悪いことだということを深く理解できるような、そういう場が必要だということで、いい例かどうかわかりませんが、たばこをだめだと言うのも20年ぐらい前だと、何をうるさいことを言っているんだというような全く逆ですね。しかし、今日からすれば、たばこは単にマナーがとか自己規律がとかいうだけではなくて、周りにおる人に対して何か有害なことを平気でやっているという全く違う評価になっておるわけで、結局これは啓蒙的な意味合いが大きいということを多分御指摘になったんだと思います。
ですから、気が付けば、そこからはしなくなる。ああなんだ、今までとんでもないことをしていたんだなと。差別していた側が感づく。まずそこも大事ではないかという御指摘ですかね。ありがとうございました。
1時間どうやって引っ張ろうかと思っていたんですが、もう少し時間があるんですけれども、あと5分ほどしかございません。浅倉委員の前に、実は竹下副部会長は先ほど黙っていただいているという負い目がございまして、よろしいでしょうか。
では、竹下副部会長、お願いします。
○竹下副部会長 私はこの類型論というのは、議論することに全く反対をするつもりもないし、それ自体に価値があることだと思うんです。一言にして言えば、それは障害の構造を理解したり、障害というものの市民に対する理解を広げるときの材料として、私は何も異論はないんです。ただ、挙証責任との関係で議論することは、端的に言うけれども、本末転倒だと思います。それが1点目です。
2番目に本来、その類型化という議論なり総論の議論というのは、各論を理解したり、各論を規定するときに必要なはずなんです。川島さんが言ったと思うけれども、各論の議論を並行してやるか、あるいは総論の議論を結論ではない形でいったん整理をしておいて、各論で議論をして、もう一回総論に戻るという作業をしないと、私は結論は出ないと思います。
そうでないと、教育であろうが労働であろうが地域生活であろうが、差別で何が許されないかという議論をするときに、まさか類型のAに当たるから、Bに当たるから、Cに当たるからだめだという議論にはならないのであって、そうなるとすれば間違いなく、これもまた本末転倒なんです。
伊東さん、あるいは太田君が言うように、あくまでも差別禁止の目的は、まさに人権侵害をなくするということに尽きるわけですから、そこから見て許されない差別事象があったときに、それを理解するための手助けとしての類型化でなければならないはずですから、そこがひっくり返らないように議論を持っていく必要があるのではないかと思っています。
○棟居部会長 ありがとうございました。
では、浅倉委員、お願いします。
○浅倉委員 ありがとうございます。浅倉です。
今の竹下先生がおっしゃったことに異論があるわけではありません。つまり、何が違法な差別に当たるのかということを議論することが、類型化の議論の根底になければいけないというのは、おっしゃるとおりだと思っています。
ただ、私は性差別の問題にずっと関わってきたものですから、その歴史的な経緯を見る必要があると思っています。かつては、不法行為や公序違反という議論しかありませんでした。しかし男女雇用機会均等法ができました。しかしその法律も、当初は、今で言う直接差別に当たる概念しかなかったものですから、禁止される差別の幅は狭いものでした。それが、法改正によって、間接差別概念が登場し、ようやく間接差別の議論が出てきた、というふうに展開をしてきています。
ですので、皆さんが議論されるときには、障害に関する国際条約だけではなくて、日本の法に関しても参照されると思いますが、その際、ぜひ男女雇用機会均等法の発展過程と条文の仕組みというものも参考にしていただきたいなと思っています。
均等法は御存じのように、性別を理由とする差別の禁止を5条、6条で掲げております。これは性別を理由とする直接差別を禁止する条文と言ってよいと思います。そして、間接差別については、7条で、「性別以外の事由を要件とする措置」という言い方をして禁止しています。すなわち、均等法は、直接差別、間接差別の禁止規定を既に持っている法律です。
したがってこれに合わせて、障害者に関する差別については、合理的配慮を加えるという国際的な動向を採用する必要があると同時に、間接差別の禁止もぜひ加えていただきたい。それによって、差別の類型化そのものを通じて、何が差別になるのかということの認識を広める契機にもなるのだと思います。
○棟居部会長 類型化にも歴史の積み上げみたいなものがあると。その時間順というのは実は均等法で我が国でもたどってきたと。そういう目の前のサンプルを是非参考にすべきだという貴重な御指摘で、ちょうど時間になりました。まだいろいろとあるかと思いますが、室長、お願いします。
○東室長 何が差別であるのか、その判断基準をどうつくるかという話であるわけですけれども、今日かなり議論をしていただいて、整理ができたと思うんですね。ただ、まとめるにはもう少し議論が必要だと思いますので、引き続き1時間ぐらいの枠で議論を続けていければなと思っております。
ただ、今日まで話してきていただいた上で、次回はどういう形で議論をするかという点については、いろいろと部会長とも話して、何人かで類型論に基づくたたき台みたいな具体的なものを出して、その上で議論をした方がより実質的な議論ができるのではないかということも話しております。次回は自薦、他薦構いませんので御協力を得ながら、たたき台のたたき台みたいな、議論のための案みたいなものが出せればなと思っておりますが、いかがでしょうか。
○棟居部会長 私が質問をするのも何ですが、個人としてこういう私案というのを独自にお出しいただくということも含めて考えてよろしいですか。
○東室長 それぞれ出すとなるとまた大変でしょうから、一応、担当室案というだけの話ではなくて、何人か私も言いたいという方がいらっしゃれば集まっていただいて、議論のためのたたき台みたいな形を出した上で議論をした方がいいのかなと思っています。
○棟居部会長 では、そういうたたき台に対して御意見をいただくという格好で、双方向を深めるということで、わかりました。どうも済みません。こちらの意思の合致が少しあいまいでした。
どうもありがとうございました。以上で第1コーナーを終わらせていただきます。ここで15分の休憩を取らせていただきます。再開は15時20分とスケジュール上はなっておるんですが、今から15分足すともう少しそれを回るという辺りでお集まりください。
(休憩)
○棟居部会長 では、まだお戻りでない委員もおられますけれども、予定の時間になりましたので、再開をさせていただきます。
第2のコーナーは70分でヒアリングであります。欠格条項に関して、障害者欠格条項をなくす会事務局長の臼井久実子様に30分程度でレクチャーをしていただき、その後40分程度の議論を予定しております。
では、臼井様、お願いします。
○臼井氏 臼井です。
報告の機会をいただきありがとうございます。私は耳を聞こえず、文字通訳を読みながら議論に参加します。スライドとお手元の資料は同じですが、途中で少し追加するものもあります。ごらんいただきながらお話しをしていきます。
欠格条項については、約20年前に、地域の障害者団体で活動する中で、障害者は法律であれもこれもだめとされているという声があって調べ始めました。障害者欠格条項をなくす会は、障害別や障害の有無を超えて1999年に発足、その当時から、欠格条項を撤廃していく上で権利条約と差別禁止法が両論になると話し合っていました。今、日本でその両輪を組み上げていく段階に来ていて、昨年の推進会議でも「欠格条項は、言わば、公認された差別」として議論をされました。
差別禁止法をつくることは、既存の法制度にある差別をなくしていくこと、奪われた権利を回復できるものにすることと切り離せない関係にあります。その観点から、これまでの取組みを基に報告します。是非、皆様に考えてほしいのは、「欠格条項を残したまま、権利条約を批准できますか」という問いです。それを考えながらお聞きいただければと思います。よろしくお願いします。
障害者権利条約において、欠格条項に特に関わるのは第4条です。差別禁止法に求めたいことは、締結国の一般的義務を示す第4条の「(b)障害者に対する差別となる既存の法律、規則、慣習及び慣行を修正し、又は廃止するためのすべての適当な措置(立法を含む。)をとること」を遵守できる法律にすることです。
図がありますが、障害者欠格条項とは、主に障害を理由に国が法律で権利を制限するものと定義できます。図解は権利条約の「法律・規則」と「慣習・慣行」という言葉を使って障害者欠格条項を表したものです。古くからの障害者観によって法律条文に記載された欠格条項が、社会の障害者観、慣習・慣行にも影響をしてきて、差別偏見を固定化し、障害者を無権利にする構造をつくってきたと言えます。
次に、欠格条項がなぜ問題なのか、欠格条項のためにどのような権利の侵害があるのか、3人の方の経験を挙げます。写真の早瀬久美さんは1998年、薬剤師国家試験を受験し合格しました。しかし、聴覚障害を理由に、免許交付申請を却下されました。あきらめずに発言を続け、合格から4年目にようやく、改正薬剤師法の施行と同時に、免許を手にしました。現在、大学付属病院で薬剤師として勤務しながら、「医療の手話」の本づくりなど、各方面で活躍しています。早瀬さんに続いて薬剤師になった人や薬学部に進んだ人もいます。
次の方です。介助者を付けて民間賃貸で1人で暮らしてきた車いすの男性の経験です。彼は公営住宅に申し込もうとした最初、施設に入所した方がいいとか、なぜ親と暮らさないのかと用紙も渡されませんでした。粘り強く申しこんで、受け取ったのは、「障害が重度だから施設入所が適当」という通知書でした。公営住宅法施行令に介護が必要な人の単身入居を強く制限する欠格条項があったからです。
次へ行きます。この写真は知的障害のある女性が、「二十歳からずっと選挙に行っていました。また行きたいです」と発言をしている場面です。彼女は成年後見制度を利用するようになったことで、欠かさず投票してきた選挙権を失いました。公職選挙法11条が成年被後見人に参政権を認めない欠格条項を設けているためです。選挙権の回復を求めて今年、東京地裁に提訴しています。
この3人のように欠格条項、言わば公認された差別によって、社会で生きていく基本的な権利を脅かされてきた人が無数にいます。少なくともこの3人の経験は、欠格条項がなければ起きなかったことです。そのことを踏まえて議論してほしいと思います。
では、ここから経過と現在の課題を見ていきます。63制度は1999年に国が省庁の集約を基に、障害者欠格条項見直しの対象としたものです。読み上げは省略しますが、書いてあることについてごらんください。講座などで欠格条項の現状のお話をすると、よく「63制度についてはほぼ欠格条項がなくなっているものだと思っていた」と言われます。実際は逆で、今も63制度のうち8割が相対的欠格条項を残しています。
表がありますが、障害を理由とした権利制限は、63制度だけではなく、「持っている資格を取り消す、取り消すことがある」「資格や免許に限らない権利の制限」など広い範囲にあります。障害を理由とした権利制限がある法律は、私たちの調べでは443に上ります。
「4つの障壁」という言葉が書いてあります。「4つの障壁」という言葉は御存じだと思います。1993年にスタートした「障害者対策に関する新長期計画」で、物理・文化情報・意識・法制度の障壁の除去が掲げられ、改正障害者基本法にも引き継がれています。
1番目の物理的な障壁は、不十分ながらも、駅にエレベーターを付ける等、除去が進んできました。
2番目の文化情報の障壁は、改正障害者基本法で言語に手話を明記するなど前進がありますが、現状は手話も点字も提供は十分でなく、筆記通訳や音声パソコンなどは認知も低いです。
3番目の意識の障壁は、例えば「障害者にやらせると危ないのではないか」とか、「人の助けを借りずに一人で何でもできることが自立」という見方など、今も根強いですが、このような見方をしたままの制度に比べれば、一般の人々の意識の方が変化しています。
そして、4番目の障壁が法制度の障壁です。欠格条項などの法制度の障壁の除去は、新長期計画の中で見直し対象となりながら、立ち遅れていたため、1999年に欠格条項を見直していく政府方針がつくられ、一定の見直しは進みました。しかし、法制度の障壁の除去は、現在も4つの障壁の中でも最も遅れています。
次に、法律条文に沿ってみていきます。まず古い方の条文です。要約すると、「目が見えない者、耳が聞こえない者または口がきけない者には、免許を与えない。精神病者には免許を与えないことがある」となります。医療分野では医師法が最初に制定されて、その欠格条項が後からできた法律、例えば看護師とか薬剤師などにコピーされていったため、どれも同じような条文でした。
次に、現在の条文を見ます。これが2001年に改正された現在に至る医師法などの条文です。法律で「心身の障害により業務を適正に行うことができない者」に「免許を与えないことがある」としています。「心身の障害」は施行規則で規定しており、全体としてはいろいろなことが書いてありますが、「視覚・聴覚・言語・精神の障害者には免許を与えないことがある」という意味になります。
なぜこのような心身の障害を理由とする欠格条項があくまでも残されたのでしょうか。パブリック・コメントへの回答の中にその一つの答えがありました。2001年に試案という形でパブリック・コメントを求められました。当会は、「業務を適正に行えないことは、障害の有無とは関係なく、あり得ること。なぜここに『心身の障害により』という言葉を入れようとするのか」とパブリック・コメントを出しました。
それに対する回答はこのスライドに書いてあるとおりですが、「心身の障害により」と書かなければ、心身の障害を原因とするもの以外まで含まれることになるから、ということでした。あくまでも「心身の障害」を理由とした欠格条項を残すという強い意思がうかがわれます。
もう一つ次のスライドに、障害者欠格条項を設ける理由について、1998年に各省庁が総理府に出した回答を見ましょう。4つほど書いていますが、1つ目は、介護が必要な人は自立生活など無理だろう。医療従事者に視覚や聴覚の障害があれば、患者やほかの従事者と連絡連携ができないだろう。障害や病気のある人が自動車を運転することは著しい危険を生じさせるだろう。精神病者は判断力、自制力に欠けて、他人の生命や財産を侵害するおそれがあるから。こういうものが並べられていました。ここには社会モデルの見方は全くなく、典型的な医学モデル、個人モデルです。特にこの当時からも問題になったのですが、精神病者への差別偏見が露骨ですね。
99年から2000年にかけて各省庁と交渉のたびに、なぜこのような欠格条項を設けているのか、理由を聞きました。常に「障害者にはできない、危ない、ミスをするだろう、だから欠格条項を外すことができない」といった答えが帰ってきました。結局どこまでも「障害がある」ということと「できない」や「危険」ということをイコールで結び付けている見方であり、言わば差別偏見としか言いようがないものでした。理由について客観的なデータが示されたこともありません。
ここで1つ聴覚障害の例を挙げます。資料はありませんので、口頭です。自動車運転において、聴覚障害と事故が関係あるかどうか、警察庁の委託で調査や実験が行われました。その中で、障害が理由で事故率が高いといった結果は出ませんでした。何より、同時に諸外国の制度も調査されましたが、どの国も自家用車は聴力に関係なく運転できるものになっています。それにもかかわらず、日本の制度は今も聴覚障害者の運転を制限しています。
人が等しくもつ権利をどうしても制限しなければならないという場合、制限を受ける本人も納得するような具体的な理由が必要です。しかし、それが示されたことはなかったのです。
私たちは、障害者を欠格とする理由について合理性があるか問いただしてきました。その中でしばしば、「支援する制度や環境がまだ整っていないから、制限が必要」という言葉が返ってきました。これも口頭で言いますが、例えば公営住宅に知的障害者も精神障害者も単身で入居できる制度に改めるように交渉したときに、「地方公共団体に援助者を派遣できる制度がまだない」と消極的でした。2005年には三障害とも単身入居が可能な法制度になりましたが、そこまでに長い年月を要しました。
このように制度や環境が制限理由に持ち出されるとき、合理的配慮を提供しなければ平等な扱いにならない、という認識は完全に欠けています。合理的配慮を提供しないことは差別だと明確にすることは、欠格条項をはじめ障害を理由とする権利制限を廃止し、合理的配慮が提供されるようにしていく上でも必要です。
欠格条項を問い返していく中で、本質的な業務が議論になりました。例えば医師にもいろいろあって、臨床医なら本質的な業務は診断でしょう。薬事審などでも、薬剤師の場合はどうかと議論されました。各分野でそうした議論が初めてきちんとされたこと、本質的な業務を、合理的配慮と重なりますが、必要に応じて補助者や補助手段を使って、あるいは適切な治療を受けながら、その人が遂行できるなら免許を与えるという議論がされたことは大きな変化でした。
そうした変化も伴いましたが、見直し結果は先ほども述べたように、相対的欠格条項が残されて、半端な門戸開放になったことが言えます。63制度以外にも多くの権利制限があることは、やはり根が深い問題です。根ごと除去していくには、差別禁止法と権利条約の両輪がそろうことが必要だと思っています。
最後に、差別禁止法に求めるものを3枚のスライドにしています。これまでにさまざまな外国の人に、日本の障害者欠格条項について話すと、なぜ法律がそのような権利制限をするのかと、言っていることが理解されませんでした。この違いというのは、日本に差別禁止法がないことも大きく関わっているのでしょう。
したがって、日本で初めてつくる障害者差別禁止法に求められるのは、障害者差別禁止の法理に基づく法整備の要を持つこと、障害を理由に差別するような法制度を除去することはもとより、合理的配慮を提供しないことも差別と明確にすることです。これまで欠格条項は障害者の社会参加を阻み、合理的配慮の確立を妨げてきた。欠格条項は、障害を理由にした権利制限であり、根本的な考え方から改め、一掃することが求められています。
ここに書いてあるように、差別禁止法に必ず入れる必要があるのは、法整備の差別廃止と合理的配慮の確立に必要な規定です。冒頭に申し上げた障害者権利条約第4条が規定する「障害者に対する差別となる既存の法律、規則」に欠格条項は該当しており、これらを「修正し、又は廃止する」ことを差別禁止法の中に明記すること。政府や地方公共団体が既存の法律や規則や条例などの差別を調査して情報公開し、差別を修正し、または廃止することを義務づける規定を設けること、合理的配慮を提供しないことも差別であることを明記することです。
ここで1つ実例を挙げると、スライドの27番をお願いします。これは直前につくりましたので、お手元の資料にはありません。現在、地方公共団体の中に、公営住宅について、「ひとりで食事やトイレができない人は申し込めない」とか、「居宅支援事業がある市町村以外は申し込めない」としているものを出しているところが幾つかあります。これらは、従来の公営住宅法施行令からも逸脱してしまって、明らかに後退です。後退させないように地方公共団体に移管された後のフォローアップ調査と対処が必要です。
昨年9月に、障がい者制度改革推進会議の住宅に関するヒアリングでも、国土交通省から、公営住宅の今後についてフォローアップしますと明言されていました。これは本当に一部にすぎなくて、現にこのような問題があり、国は勿論、地方公共団体においても制度が障害ゆえの差別を新たに設けないように、既存のものは除去できるようにすること。そのために調査、情報公開、修正廃止を義務づける条文を差別禁止法に設けることが必要です。この辺りは部会で是非、具体的に検討をお願いします。
最後の1枚に行きます。障害者欠格条項のある法律では、異議申立てできる条文もない、問答無用の門前払いの制度が長年続いてきました。2001年に意見の聴取がありましたが、これが異議申立てに当たるかというと、力は弱いと思います。それだけにあらゆる面で、苦情や異議の申立てから権利回復につながる条文と仕組みを確立することが必要です。
スライドの26番を見てください。「日々届いている声」というタイトルで、一番最後の声にあるように、専門学校などが受入れをしてくれない、入学を辞退するように学校から求められるということが毎年のようにどこかであります。障害を理由とする入学拒否が跡を絶たない現状です。もし学校や試験実施者や免許権者、雇用主などが「これは障害を理由とする差別ではない」とする場合は、それを具体的に立証できなければ正当と認めないという立証責任の転換が求められていると思います。
今日の前半のお話にもありましたように、行政救済、司法救済とともに併せて、申請しやすい制度が望まれています。相談や苦情や異議申立てを受けて審査する機関に、差別禁止、権利擁護のために障害当事者を配置することなど、エンバワメントという面からも、法の趣旨が生かされるようにすることが必要です。そのように考えてきました。
最初に出させていただきました、「欠格条項を残したまま、障害者権利条約を批准できますか」という問いについて、私の答えは「できない」ということです。皆様はどうお考えになりましたでしょうか。
これで私の報告を終わります。ありがとうございました。(拍手)
○棟居部会長 臼井さん、どうもありがとうございました。
それでは、今の御報告を踏まえまして、議論に移りたいと思います。質問という格好でも結構です。もし質問という形で御発言をされたい方は、初めにお願いします。よろしいですか。
では、どの角度からでも御議論をください。場合によって、また臼井さんに少し発言を求めたりもいたします。
では、川島さん、いかがですか。特に御発言はありませんか。では、また後ほどお願いします。
太田委員、お願いします。
○太田委員 臼井さん、ありがとうございました。臼井さんの発表の趣旨、権利条約が言わば、欠格事由というものが日本の障害者を差別するための慣行制度に当たると思います。その立場で発言させていただきたいと思います。
私自身、いろいろ悩んで、いろんな状況を想定して、欠格条項というものを本当にすべてなくせるのかどうかという疑問を持ったこともあるし、今も考えることがままあります。しかし、それを考えたときに、おい待てよと。障害者と障害のない人、いわゆる健常者と呼ばれる人たちに、どこまでが境目があるんだろうと。どこからどこまでが障害者でどこからが障害のない人なんだろうという問題に突き当たってしまいます。
今、私たちが使っている障害者という言葉は、大体において障害者基本法や福祉法などで言われる障害者という言葉で、つまり、支援が必要という意味も込められた障害者なのだと思います。にもかかわらず、就職とか学校とか住まいとかになると、障害者認定をされているだけで、いろんな制限が加えられてしまう悲しい運命を持っている。常にそれがつきまとってしまう。可能性を奪っていることだと思います。
やはり可能性を奪わない、フラットに考える、偏見を持たずに、その人の適性とか能力を考える社会が今、求められていると思います。その意味で、障害と認定されている人を支援するどころか差別してしまっていると認識しますので、臼井さんの発表におおむね賛成です。
以上です。
○棟居部会長 ありがとうございました。
障害という認定をされると可能性を奪われると。つまり障害のない人と障害のある人の境目というのは、可能性の残された人と可能性を奪われた人の違いということですね。しかも、それは非常に人為的に引かれた線なわけですね。ありがとうございました。また後で御発言ください。
今、太田委員は臼井さんの御報告におおむね賛成とおっしゃいましたが、川島委員、お願いします。質問ということですか。どうぞ。
○川島委員 ありがとうございます。
臼井さんのレジュメというか、配布資料の7ページ目、スライドの14番目だと思うんですけれども、「欠格の理由には根拠がある?」というページがあると思います。ここで一番下のところに、「人が等しく持つ権利をどうしても制限しなければならないという場合、制限を受ける本人も納得するような具体的理由が必要である」と書かれておりますが、例えば臼井さんが、いわゆる納得できるような理由というものがある場合もあると。こういう場合は欠格も致し方ないのではないかというものは、実際にあるのでしょうか。もしあれば、それを教えてください。
○棟居部会長 臼井さん、お願いします。
○臼井氏 臼井です。
今の川島さんの御質問については、私は非常に個別的なことだと思っているんです。つまり法律で視覚障害者は免許を与えないことがあるとか、そういう書き方ではなく、視覚障害のあるAさんがこういう状況においてこういうことをするのは確かに危険であるから、それについては制限はやむを得ない場合があると。それを本人も個別のアセスメントで納得をして、それに従うということはあり得ると思うんです。よくお話になることとしては、視覚障害はあって、視覚障害というよりはロービジョンと言えると思いますが、車の運転をしていく場合に、夜になるとやはり視野が狭くなったり見えにくいと。この人については夜間の運転は避けるのが適当だと。そういう個別的な場合ですね。
私はそれは法律で免許証に書き込まなくてはならぬとか、そういうものなのかどうか疑問に思っています。その人が夜間の運転をするのは確かに避けた方がよい。それを本人も納得するということで合意されるものは、それはあり得ると思います。欠格条項というのは、先ほど太田さんも言われましたが、障害者という何か一つの像があるんです。視覚障害者はこうであるとか、精神障害者はこうであるとか、そういう像に従って一律的に免許を制限するとか、行為を制限するとか、そういうものです。
ですが、本当に障害者も一人一人違いますし、いろんな場合が無数にあり得る。ですから、ほかの国では既に実施されていますが、自動車運転にしても、その人はどういう環境で運転ができるのかということを個別アセスメントで具体的にできます。そういうことが前提にあって、やむを得ず制限されている場合はあると思います。それは法律の欠格条項で書くこととは、私は思わないです。
○棟居部会長 ありがとうございました。
まず個別アセスメントを要求できると。個別アセスメントが必要だという。一般的な欠格条項ではなくて、個別の事情を配慮するべきだという御指摘ですね。ありがとうございました。
私が質問をするのは割り込みになるので、先ほど西村さんの手が挙がったんですか。
では、お願いします。
○西村委員 西村です。
質問が1点と意見を1点、発言させていただきます。
心身の故障により業務を遂行することができなくなった場合には分限(解雇)することができるという人事院の通知に基づき、多くの地方自治体が同様の規定を持っています。
一方、重度の障害を持った地方公務員は、分限ではなくて、自主退職という形で、辞めている実態があります。
そこで、質問ですが、臼井さんの資料の13ページには「日々届いている声」の中で、働く中で病気や障害を持ったために免許を取り上げられるのではないかという声が届いているという項目がございます。これにつきまして、具体的な事例等々があれば、教えていただきたいと思っています。
次に意見ですが、3ページに「欠格条項が奪ってきたもの」ということで、上段に公営住宅の申し込みに当たりまして、出てきた要件が載っています。実は私事ですけれども、今年の11月1日から東京に異動することになりまして、現在、マンションを探しています。この間15軒ほど回ったのですが、ここで示されている項目の半分以上ほぼ7割から8割が、住宅の状況から困難でした。例えば便所や入浴については、住宅の構造上、車いすで使用するにはほぼ不可能というものが大多数でした。しかし、そのままでは不可能な住宅でもドアを外せば大丈夫というものもありました。入口の出入りも段差があるために入れないものもあれば、段差がないために入れるものもありました。
以上の状況から、この欠格条項の視点を考え直さなければならないと思います。先般の国会で障害者基本法が成立し、その国会質疑の中で障害の特性に関して、従来、障害者が失ってしまった機能障害、目が見えない、耳が聞こえない、歩くことができないということが障害の特性と言われてきていましたが、そういった機能障害があることによって社会生活が制限をされている要因や状況もきちんととらえていくこと。そして、それを改善することが基本法の考え方であると国会答弁で示されています。
臼井さんからは、この欠格条項がきちんと見直されなければ、権利条約を批准すべきではないという趣旨の発言がありましたが、まさに医学モデルから社会モデルへ転換する視点から、これらの項目を見直すことが必要であるという意見も申し上げて、先ほどの質問に対するご回答を頂戴できればと思っています。
以上です。
○棟居部会長 ありがとうございました。
では、大谷委員、お願いします。
○大谷委員 本当に不勉強で、質問で申し訳ないんですけれども、6ページ、11番。現行の相対的欠格条項の条文が例示されているんですけれども、これは相対的欠格条項とされていますが、第1号で要するに与えないことがあるということが相対的となっているようですが、規則の方で厚生労働省令で定めるものとなっているんです。この厚生労働省令で定めるものというのは、具体的にどのようなものになっているのか。その例示がないのかなと思います。もしこれがある種、障害の種類と程度でもう規定されているということになると、この厚生労働省令で定めるものはもうできないものとすると決め付けているんですね。だから、どこが相対的欠格条項なのかなと思えてしまうので、条文の読み方として、厚生労働省令で定めるものはどんな定め方がされているのか、教えていただきたいと思います。
私としては正直驚きなんですけれども、法制度のバリアフリー化を重点課題にという形で、4点が5ページの9番に例示されています。差別とかそういうものを問題にするときには、まずは法制度の障壁から除去する。最後に意識の障壁が何とか乗り越えられたかなというのは、いろいろな差別類型などそうなんだろうと思うんですけれども、この障害者の問題にあっては法制度の障壁が一番遅れているということが御指摘されているんですが、本当はあってはならない。今日も第1クールで最初に議論をしたように、もし欠格条項が障害の種類と程度を特定して、もう排除するということであれば、ある種、直接差別類型に該当するということにもなりますので、そこのところを少し整理させていただけたらと思います。
もう一つ、差別禁止法を制定するときに、こういうふうに関連法令が多々出てくると思われます。差別禁止法と抵触する法令が。そうしたときに、差別禁止法を制定するときにはそこも整理して、欠格条項を持っているところのすべての見直し等々を全部やるということをかなり本格的に意識していただかないと。これは全体を直していくのは非常に膨大な作業になると思われます。
ですから、とても重要なことでありますので、全体法令を見直すということも含めて、差別禁止法を制定していくんだということで、最初のところで川島さんが、逆に差別禁止法を制定することの意味、目的は全体法令の見直しも含めてやるんだというようなことを我々部会が意識するのかどうかも少し検討させてもらいたいなと思いました。
以上です。
○棟居部会長 ありがとうございました。
今の御発言あるいは先ほど来のものに臼井さん、何かコメントをされますか。
○臼井氏 御質問をいただいたので、これについて。
○棟居部会長 では、お答えください。
○臼井氏 先に西村さんからいただいた御質問についてです。資料の13ページの働く中で病気や障害を持ったので免許を取り上げられるのではないかという事例があるが、どんな事例かという御質問でした。これはよく届いているのは、看護師さんの場合です。看護師さんで働く中で非常に厳しい勤務条件とかさまざまなことが重なって、途中で障害や病気を持たれる方が割合多くおられます。そのときに例えば障害者手帳を申請しようかと思うんだけれども、そうすると欠格条項の対象になってしまうのではないかという心配をされて、連絡をして来られる方が割合おられます。例としてはそのようなことです。ほかもたくさんあります。
大谷さんからいただいた御質問で、厚生労働省令で定めるということという読み方ですけれども、資料の6ページの上の方のスライドです。「心身の障害により医師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの」というのは、医師法施行規則の第1条がそれに当たります。これ以上のことは医師法規則の中に書いてあるわけではないんです。「視覚、聴覚、音声機能若しくは言語機能又は精神の機能の障害により医師の業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者」と相対的欠格条項に該当するとみなした人については、免許を与えないことがあるという。その上の1号の4条につながるわけです。
これ以上何か障害の程度とか病気の種類とか書いてあるわけではないんですが、大谷さんがおっしゃったとおり、幾ら「免許を与えないことがある」と言われても、今、勉強をしようとする人やこれから目指そうとする人は、免許を与えられない可能性が高いと思われます。学校の方も受け入れて大丈夫なのかと、初めからそういう気持ちを持って接することが多いわけです。ですから、絶対的欠格条項で免許を与えないと書いてあったり、相対的欠格条項で免許を与えないことがあると書いてあったり、書き方は違うし中身も確かに違うのですが、これのもたらす社会への効果というのは、そんなに大した違いはないと言っていいところがあります。先ほど言われたように、直接的差別の類型になると私は考えています。障害者を対象として、このような制限を課すということでは共通しているからです。
○棟居部会長 臼井さん、ありがとうございました。
松井委員、お願いします。
○松井委員 ありがとうございます。
15ページに障害者等にかかる欠格事由の適正化を図るための医師法の法律がありますけれども、その修正の第2条で、政府はこの法律の施行後5年をめどにして見直すということになっていますが、これは臼井さんの方でこの点はフォローというか、確認されていますか。この5年後の見直しがどういうふうになされたのかという。
○棟居部会長 臼井さん、お願いします。
○臼井氏 臼井です。
15ページの附則のところです。5年後をめどにこの法律を見直していくという附則が付いたんですが、これが全面的に発動することはありませんでした。部分的に道路交通法であるとか、公営住宅に知的・重身が単身入居できるようになるなど、そういう変化はありましたけれども、全体を見直すということには至らなかったんです。そのために今に至るまで引きずってしまっているということがありますし、だからこそ今の時期に差別禁止法をつくっていくということの中で考えていくことが必要な課題です。
○棟居部会長 ありがとうございました。
野沢委員、お願いします。
○野沢委員 意見でもよろしいですか。
○棟居部会長 結構です。
○野沢委員 3ページの下の成年後見の事例について、私から御意見を言わせていただきたいんですけれども、この方は私のよく知っている人で、お父さんが高齢の方で、彼女の娘さんの権利を自分は3回踏みにじってしまった、守れなかったと言うんです。1回目は就学猶予がまだある時代で学校に行かせられなかったと。2回目は会社を首になってしまったと。経営が悪いからしようがないと言われたけれども、この娘さんが首になった後に新規の採用をこの会社がしていたと。今回は3回目だと言うんです。今回は自分が後見人になった。そのせいで選挙権を奪われてしまったということで、お父さんは高齢でこのままでは死ぬに死に切れないと。これまで従順に生きてきたけれども、最後に国家に反逆をさせていただくと言って裁判を起こした方なんです。
私はこの成年後見を考えるときに、本当に一番根本的な矛盾ではないのかなと思っています。この成年後見法を変えるためには国会議員の方に理解してもらわなければいけないし、こういうことに理解のある国会議員を選びたいわけですね。その選ぶ権利そのものから排除されているということで、今日、臼井さんがいろいろ事例とか問題提起をしていただきましたけれども、医師法についても道路交通法にしても薬剤師法にしても、それを変えるためには国会で変えなければいけない。なのに、その国会議員を選ぶ一番根本的なところから、そういう権利を奪われてしまっているということで、この問題というのは一番象徴的ではないかと思います。
もう一つ言わせていただくと、こういう後見制度を使わなければいいのか。しかも後見制度というのは判断能力が不十分な方を守るための制度なのに、逆に一番大事な権利を奪ってしまっているという、ここでもまた二重、三重の矛盾があると思います。実際に後見制度を使っていない方でも実際に投票所に行ったら、ぴょんぴょん飛び跳ねているから追い返されてしまったということが時々私の耳に入ってきます。大問題だから教えてくれと言って行くと、事を荒立てたくないのでという方で、まだ直接話を聞いたことがないんですけれども、いろいろ関係者の間ではそういうことは割とあるんだみたいなことを言われていて、この辺りを一番どれが優先ということはないのかもしれませんけれども、知的障害とか発達障害の方の意見はなかなか出にくいし、こういう場でもなくて、表に出にくいからこそ、私は言わせていただきたいなと思いました。
せっかく障害者基本法の改正で、選挙のところでとてもいい改正の条文をしていただいて、ただ、あれは投票所におけるバリアフリーのことが定められていますけれども、物理的なものだけではなくて、情報とか例えば発達障害の人の中に文字がとても読みにくいという方。しゃべっていると普通なんですが、読みにくい、書けないという方もいらっしゃったりして、その辺の工夫次第でマークシートだってイラストだってボタンだって、あるいは写真を使ったり、いろんな工夫ができるにもかかわらず、そういうことがされていないということを是非この機会に訴えたいなと思って一言言わせていただきました。
以上です。
○棟居部会長 ありがとうございました。
東室長、御質問ということでお願いします。
○東室長 臼井さんの説明資料の4ページの上に93年に見直しの対象が63制度あって、そのうち51制度はいまだ相対的欠格という形で残っているという御説明がありましたけれども、この残っている相対的欠格条項自体の合理性といいますか、臼井さんの個人的見解でも構いませんけれども、これは残す必要があるのかないのか。率直にどう思われるかということをお聞きしたいと思います。
その上で、どうしても残さざるを得ないというものについては、例えば合理的配慮をした上ででも、そういうことができないというような、そういうふうに変えるべきという方向で考えられているのかどうなのか。その2点について御意見を聞かせていただければと思います。
○棟居部会長 臼井さん、お願いします。
○臼井氏 臼井です。
残っている51制度の合理性をどう考えるかということです。先ほど申し上げたように、結局これも障害者を一括りにして、視覚機能の障害と言おうと聴覚機能の障害と言おうと、そういうふうに一括りで判断しようという、そこからして無理がある。土台からして間違っていると思います。ですから、こういうものはとにかく全部なくしてほしい。合理的配慮は勿論、欠格条項があってもなくても必要なことで、欠格条項はないけれども、合理的配慮が欠けていることも世の中にはたくさんあります。それは関連はしていますけれども、また別の問題でもあります。
先ほど申し上げたように、直接的差別の類型に入ると思いますので、こういうものはとにかくなくして、欠格条項がなかったとしても、障害者にとっては困難は幾らでもあります。それをどう突破できるのかということを支えていくような社会にしてほしいということです。
○棟居部会長 済みません、合理的配慮という場合に今まで我々が合理的配慮と言ってきたのは、この差別する側に対して、される側が一定の給付なりアクションを要求するという合理的配慮で、これをそのまま当てはめますと国や自治体に対して、だめだ、だめだと言うのではなくて、障害者が県営住宅に住めるような、そういう施設を県が用意しなさいと。そういう意味の合理的配慮になるんですが、何かもつと別のつまり障害者の側で例えばボランティアが昼間に来るんだと。そういう個別の事情を踏まえて入居を認めてほしいという、こういう合理的配慮というものも臼井さんはお考えなんでしょうか。素朴な質問なんですけれども。
○臼井氏 個別の事情を踏まえて、その人自身は何を選ぶのかということを基準に考えるべきことだと思います。
○棟居部会長 それと一定程度ボランティアとか障害者本人の負担で何かサポートが自分で用意できると。だから、こういう事情を踏まえて、一律にだめだというのではなくて、認めなさいという。これは個別の話し合いということですね。
○臼井氏 住宅について言えば、居宅支援事業というサービスが市町村でないと申し込めないと。そういう公営住宅の制度を今つくっているところがあります。そういうものではなくて、勿論、居宅支援事業はどこでもだれでも利用できるようにしなければいけません。けれども、ここも一つの大きな思い込みがあると思うんですが、知的障害の人や精神障害の人がひとり暮らしをするときに、必ず絶対に見守りとか援助が必要なのかというと、それも人によって違うわけです。いわゆるボランティアであるとか友人、知人が通ってくることでできる。自分はそれが合っているんだという人だっているわけです。だから、居宅支援事業だけに限るなということを言ってきたわけなんですが、今、地方の方でそれが崩れてしまっています。本当にその人が何をどうしたいのかということをよく話し合えるような制度にしないと意味がないと思います。
○棟居部会長 どうもありがとうございました。
あと5分ほどと考えております。池原委員、どうぞ。
○池原委員 池原です。
大変参考になることをいろいろと教えていただいて、私が一つ思っていることを申し上げたいんですけれども、特に相対的欠格という形態が今、一番多くなっていて、この中でも例えば6ページのスライドの11を見ると、一応規定ぶりとしてはこの医師法施行規則を見ると、これこれの障害により、「精神の機能の障害により」プラス「適切に行うことができない者」という規定ぶりになっていて、要するに障害があるというだけ排除しているわけではないけれども、その障害に基づいて、例えば個別的に判断をしたときに、この人の場合は適切に行うことができないから免許を与えませんねというような規定ぶりになっているものが多いように見受けられるんです。
特に例えば道路交通法などもかつては絶対的欠格になっていましたけれども、精神障害があるからというだけでは確かに排除されないんだけれども、例えば幻覚、妄想を伴う障害があって、適切な運転を行うことができないとか、道路交通の安全に支障を来す者というような規定のされ方。ちょっと不正確ですけれども、されているんですね。
そこで2つほど問題があると思っているんですけれども、1つはこの欠格条項の規定の仕方は相対的であれ絶対的であれ、いずれも事前規制なんですね。つまり実際に仕事をやらせてみるとか、運転をしてもいいとかいう実際にやってみて、やはりできませんでしたねということではなくて、もうやる前にそもそもできるかできないかを判定してしまう。つまりある種の将来予測をして、多分この人は将来できないから、あるいはやらせれば危険だからということで、入口でシャットアウトするという方法になっていて、それはやる業務とか行為の内容によっては、実際に失敗してしまったら取り返しが付かないようなことが起こるとすると事前規制の必要性も高くなるんですけれども、基本的にはやってみなければわからないことではないかと。一体その一定の障害があるときに幾ら個別的に判定をしても、将来できるかできないかとか、何か困ったことが起こるか起こらないかということは、本当はだれにも正確には判定できないはずになっているんですね。
だけれども、この欠格条項的なものというのは、そういうある種の将来予測が可能であるかのように前提として判定をする。これはどんなに個別化しても、やはり将来予測というファクターが入ってくる限りにおいては、極めて不正確なものになってしまう。あるいは非常に強度の規制になるというところに一つの大きな問題があると思います。
もう一つの問題は、現行でもそうなんですけれども、では、その実態としてだれが将来予測をしているのかというところなんですが、それがほとんどの場合は医師の判断に委ねられているわけですね。例えば運転免許にしても精神障害、例えば統合失調症があって、幻覚・妄想を伴う病気であって、自動車運転が安全なのか安全でないのかということを精神科医が判断することになっている。しかし、精神科医は病気のことはよくわかるかもしれないけれども、もしかしたら運転免許を持っていない精神科医もいるかもしれないし、つまり私が申し上げたいことは一定の作業とか業務について、別に医師が専門家であるわけではないので、これを医師の判断に委ねてしまうということが実際にはできないことを判定させているし、もう一つは我々の立場からすれば、非常に医学モデル的な判断者なわけですね。まさに医者が判断するわけですから。
そういう意味で言うと、この欠格条項については基本的になくすべきものだと思うけれども、その中で非常に大事なのは、相対的欠格にある程度緩められたとしても、結果的には将来予測をした上での判定であるということ。したがって、どんなに個別化しても極めて不明確なものになるということと、その判定が基本的には医学に委ねられているというところにもう一つの大きな問題があるなと私は思っております。海外のアセスメントで、もしお医者さんでない者が判定するとか、あるいはその判定の在り方というのがもうちょっと合理的なものがあれば、教えていただければと思います。
○棟居部会長 どうもありがとうございました。
池原委員、最後の御質問のところだけワンセンテンスでおっしゃっていただいて、そこだけお答えいただくと。
○池原委員 障害があることによって、あることができるとか、実際にやらせてみたら、将来できるかできなかを現時点で判定することは極めて困難だと思うけれども、しかも、それを医師が行うということも極めて困難だと思うけれども、海外でアセスメントをして、あなたの場合は一定の業務とか仕事は無理ですと、仮にそういうシステムがあるとすると、そのアセスメントはどういう職種の人がどういう方法でしているのですかということです。
○棟居部会長 ありがとうございました。
臼井さん、お願いします。
○臼井氏 臼井です。
海外のアセスメントについては、カナダで裁判から発展した事例やオーストラリアとか出ているのですが、それにどういう人が関わっているのかまでは、私が見た資料ではわかりませんでした。ですので、調べてわかったことがあれば、是非ここに出したいです。
○棟居部会長 どうもありがとうございました。
では、場合によっては後日、資料をお願いするということで、ちょうど時間になりましたが、伊東副部会長、お願いします。
○伊東副部会長 今、池原先生がおっしゃったことで、医者あるいは医学という立場からの判断が必ずしも、基準があって、同じ答えになる、と想定しておられるとすれば、それは誤解だと思います。
私も六十数年の人生で、いろいろな差別を受けました。しかし「差別」は、状況は同じでも、行為を行なった側と受けた側の両当事者の意識と判断で差別かどうか、どの程度のことか、とても違ってきます。差別は1件であっても人により、痛みの程度は大きな幅があります。
○棟居部会長 医学の判断、それ自体の問題もあるけれども、現実には医者がこう言っているからというのを理由にして、しかし、判断権者がかなりケース・バイ・ケースと言えば聞こえがいいけれども、本人の偏見を込めた判断をしていると。それがむしろ実態なんだという御指摘ですね。
では、ほぼ時間になりましたが、最後にもし今日の質問あるいは議論を踏まえて、臼井さんから特に言い残したことがありましたらコメントをいただいて、このセクションを終わりたいと思います。
○臼井氏 1つだけお伝えしたいことがあります。私自身にも思い込みがあるということです。アメリカでグライダーの免許を取った人に話を聞きました。その人は生まれつき片目が見えなかったんです。アメリカでは片目が見えなくてもグライダーの免許は取れます。私たちが子どものときから持ってきた常識のようなものでは、片目が見えないと遠近感とかそういうものがわからないと思ってきたと思います。でも、この人は子どものときから片目でずっと生活をしてきて、十分に見ることができて、グライダーの免許を是非日本で取りたかった。でも、アメリカに行って取らなければ取れなかった。そして、今、日本にいるんだけれども、アメリカのライセンスは持っていても、日本の空は飛べない。これを何とかしてもらいたいというお話を聞いています。
私自身も含めて、いろんな思い込みが子どものときからあったりしますし、可能性は幾らでもある。それこそ思いもよらないところにもある。そういうものをあらかじめ法律で予測するとか、制限するということはなしにする。そこが出発点ではないかと思います。
○棟居部会長 臼井さん、どうもありがとうございました。(拍手)
以上で第2コーナーを終了します。ここで15分間の休憩を取ります。再開は16時50分とさせていただきます。
(休憩)
○棟居部会長 そろそろ時間になりましたので、再開いたします。
第3のコーナーも70分でございます。ヒアリングを予定しております。条例に基づく救済に関して、千葉県健康福祉部障害者福祉課長の横山正博様に30分程度でレクチャーをしていただき、その後40分程度の議論。時間が押しておりますので、実際は35分くらいしか取れないかと思いますが、35分程度の議論を予定しております。
それでは、横山様、お願いします。
○横山氏 御紹介いただきました千葉県庁の障害福祉課の横山でございます。
本日はこのような場で千葉県の障害者条例の取組みについて御報告させていただく機会をいただきまして、本当にありがとうございました。短い時間ですので要領よくお話をさせていただきたいと思います。
今日の私の話ですが、まず初めに千葉県の条例づくりの制定の経過について、簡単にコメントをさせていただいた上で、条例の概要について少し御説明をさせていただきます。その後に千葉県におけるこの条例施行後の相談活動の状況について御説明をさせていただきたいと思っております。なお、相談活動の状況につきましては、お手元の資料には相談件数等についての御説明ということになりますが、資料としては用意してございませんけれども、何点かの事例についても御紹介できればと考えておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
それでは、まず千葉県の条例づくりの制定の経過について触れさせていただきますが、資料の順番が前後いたしますが、参考といたしまして、資料の7ページにこの条例制定の経過について、整理をしたペーパーを用意してございますので、こちらをごらんいただければと思います。
千葉県の障害者条例はこの条例づくり取組みでございますけれども、平成16年度を初年度といたします第3次になります千葉県の障害者計画の策定の作業の中で、委員の皆さんから提案をされ、その計画中に盛り込まれた施策の一つでございます。この計画を発表する際に堂本前知事が千葉県障害者地域生活づくり宣言という宣言を行った中のその重点的に取り組む施策の一つとして条例づくりが取り上げられたということもありまして、具体的な条例づくりがスタートしたという経過がございます。
この条例づくりでございますが、資料にありますとおり平成16年9月にまず最初の取組みとして、障害者差別に当たると思われる事例の募集を行いました。この事例募集では800件の事例が集まり、そして、この事例に基づいて、これを分析するための議論の場として、障害者差別をなくすための研究会を17年1月に発足いたしました。
この研究会は同年12月までに20回ほど開催いたしましたが、これと併せて障害者差別をなくすためのタウンミーティングを県内各地で実施いたしました。大小さまざまなタウンミーティングが開催されましたが、都合32回の開催を県の事務局としては記録をしてございます。いよいよ17年12月に差別をなくすための研究会の報告がまとまり、県といたしまして、この条例案を18年2月の県議会に提案をいたしました。18年2月定例県議会においてはさまざまな御意見がありまして、更に関係者の意見を聞く必要があるという理由で継続審査になりました。
次の6月議会でございますが、堂本前知事として条例案の一部修正を表明するという姿勢を議会に表明いたしましたが、修正を行うのであれば一旦条例は撤回すべきという意見が強く、18年7月3日に知事は条例案を撤回、廃案となりました。そのときに同時に知事は議会に対して、この議論の継続と研究会からの意見の聴取を強く申し入れ、これが受け入れられまして、議論は継続となり、18年7月から非公式の意見交換の場として常任委員会協議会が開催され、全会派の参加の下で議論が継続されました。また、この協議会では、障害者差別をなくすための研究会、こちらの委員でもいらっしゃる野沢座長から意見を聴取していただくなどの協議会も開催いただきました。
その中で、県の方からもたたき台を出しつつ、各会派からの意見が寄せられ、そして18年9月議会に新たな条例案として、障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例案を県として提案をした次第でございます。その結果、18年10月にこの条例は可決成立し、翌19年7月からこの条例が施行されたという状況になってございます。
以上が条例づくりの制定の経過でございます。
続いて、条例の概要について御説明をさせていただきます。条例の特徴について4点ほどポイントを挙げてみました。
1つは今、申し上げましたように、この条例が県の当局の方からということではなく、県民の皆さんの方から発案され、当事者、家族が主体的に議論に参加し、そして成立に至るまで撤回、廃案というような状況の中においても、社会にその必要性を訴えて成立に至ったという経過があるということ。これが一番の特徴ではないかと思います。また、考え方として、これは後ほど触れさせていただきますが、差別をする側、される側という対立構造を克服して、すべての人にとって暮らしやすい社会をつくるという基本理念に立っているということ。
それから、何が差別か具体的に明らかにした上で、罰則を設けずに話し合い解決を基本とした地域の相談活動と知事の附属機関による重層的な事案救済の仕組みを定めているということでございます。また、差別に関して言えば、特に合理的な配慮の欠如を差別として規定しているということになります。
それだけではなくて、制度や習慣が背景にある課題に対応するための議論の場ですとか、あるいは障害者差別解消のために頑張っている人を応援するという仕組みを併せて定めているというような4点ほど特徴を挙げさせていただいております。
次に「2 目的・基本理念」のところでございます。この条例は障害のある人に対する理解を広げ、差別をなくす取組みについての施策を定める。その結果、障害のある人もない人も共に暮らしやすい社会の実現を図るというところを目的とした条例であることでございます。基本理念としては、まずすべての障害のある人が障害を理由として差別を受けずに個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしく地域で暮らす権利を有するとした上で、第2項として障害のある人に対する差別をなくす取組みは、差別の多くが誤解や偏見、その他の理解不足から生じているということを踏まえて、障害のある人に対する理解を広げる取組みと一体的に行わなければならないということ。
そして、ここが千葉県条例の非常に特徴のあるところですが、3条の3項として、その取組みはさまざまな立場の県民がそれぞれの立場を理解し、あい協力することにより、すべての人がその人の状況に応じて暮らしやすい社会をつくるべきことを旨として行わなければならないとしているところです。
この3項目の考え方でございますけれども、これはまさに千葉県の条例づくりの研究会の中で非常に重視された考え方でございます。研究会の中では、社会にはさまざまな差別が存在し、また、長い人生の中では例えば出産後にベビーカーを押してラッシュアワーの電車に乗ったときに、社会から排除されたような気持ちになったというふうに、だれもが自分の責任でない事柄で生きにくさや暮らしにくさを経験することがあるということ、こうして考えると、だれもが差別する側にもされる側にもなり得るということ。こういった中で障害のことをよく知らない人でも、このような視点で考えることで差別の問題を自分自身の問題として感じることができるのではないかという意見がございまして、このような議論の中で、基本理念に関する研究会の考え方が形成されていったように思います。そういう意味で千葉県の条例は、ユニバーサルな社会を思考する性格の強いものということが言えるのではないかと考えている次第です。
次に2ページ目「3 『障害』の定義」についてでございます。千葉県の条例においては、障害については障害者基本法をベースとして身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、これは障害者基本法が改正されて若干変わってきていますけれども、精神保健福祉法や発達障害者支援法に規定する発達障害、または高次脳機能障害があることによって、継続的に日常生活、社会生活において相当な制限を受ける状態と定義しています。
ここで1つコメントをさせていただきたいと思いますが、このように千葉県条例は障害者基本法をベースにした整理をしておりますが、18年2月に提案した条例では、心身の状態が疾病、変調、障害その他の事情に伴い、その時々の社会環境において求められる能力、機能に達しないことにより、個人が日常生活、社会生活において継続的に制限を受ける状態というような形で、いわゆる社会モデルをベースとした定義を置いておりました。しかしながら、この点については県議会の議論におきまして、「障害の概念を拡大し、条例の対象者が不明確になるのではないか」などの指摘がありまして、このような条文になったという経過がございます。
次に「4 差別の定義」でございます。千葉県条例では障害を理由とした不利益取扱い、合理的な配慮に基づく措置の欠如を差別としているところでございます。不利益取扱いについては参考に示したとおり、条文の中身については細かい説明は割愛いたしますが、福祉サービス、医療、商品及びサービスの提供、労働者の雇用、教育、建物及び公共交通機関、不動産の取引、情報の提供というような8分野にわたる15行為をこの不利益取扱いとして定めているところでございます。
実は、オリジナルの18年2月条例では、障害者差別を定義として規定をしてございませんでした。なくすべき差別という形で具体的な各条に規定を置いておりましたが、議会の御意見もありまして、差別を定義するというような形になる中で、いわゆるその他の不利益な取扱いというようなバスケットクローズ規定と言われるものが削除されたというような経過がございました。それから、合理的な配慮に基づく措置の欠如ということをこの条例では差別と定義をしたところでございます。
不利益取扱いによる差別に関して言うと、1点だけコメントをさせていただきますと、教育における不利益取扱いについての条文について、少しコメントをさせていただきます。18年2月に提案した条例案についてはいろいろな御意見があって、いろいろなポイントで修正が行われましたが、とりわけこの不利益取り扱いによる差別に関する規定について、内容が大きく修正されたのが教育にかかる条文でございます。18年2月の条例案では、第1項はほとんど変わらないんですが、特に第2項で障害を理由として、本人、保護者が希望しない学校への入学を強いること。それから、3項として、障害を理由として、本人または保護者に過重な人的負担、物的負担または経済的負担を強いることを教育における不利益取扱いと規定しておりましたが、これらについては現行の就学指導の在り方に抵触するおそれがあるというような御意見があり、現場を混乱させる可能性があるという理由で、このような現行の条文になったといういきさつがございます。
次のページに進めさせていただきます。「5 差別の禁止と適用除外」。このように何が差別に当たるかということを定義した上で、千葉県条例では第8条において何人も障害のある人に対する差別をしてはならないとして定めるとともに、不利益取扱いをしないこと。合理的な配慮に基づく措置を行うことが社会通念上、相当と認められる範囲を超えた人的、物的、経済的負担、その他過重な負担になる場合は適用を除外するというような形で条文を整理してございます。概念的に整理すると、行ってもいい差別があるというふうな形になってしまうので、これは条例の設計上は一つ課題として残ったところでございます。ただ、差別を定義せざるを得なくなったということの中で、このような条例設計になっているという点を御理解いただければと思います。
6番目は救済の仕組み、システムです。千葉県の障害者条例では、先ほど冒頭に説明をしたとおり、第三者が間に入って話し合いを通じて問題解決を図る仕組みを基本スキームとしてございます。具体的には身近な地域で相談活動に当たる地域相談員。その相談員への助言や事実調査などを行う広域専門指導員といった専門職の職員で相談活動に当たっています。
下の方を見ていただけると、広域専門指導員については県内の16の障害保健福祉圏域ごとに1名を配置してございます。また、その選任に当たっては市町村から推薦のあった候補者について調整委員会の意見を聞き、知事が委嘱するというような形になっています。この点については、実は条例が成立したときの附帯決議の中で中立公正を担保する必要性があるという中で、このような附帯決議事項を遵守する形で、このような取扱いとしているところでございます。
地域相談員については、身体・知的障害者相談員がその業務の一部として、この地域相談員の業務に当たるとされております。また、身体・知的だけではなくて、その他の相談員、精神障害のある方々の支援をされている方々や、人権擁護委員さん、不動産関係、例えば業界関係の方々ですね。こういった方々にその他の相談員として協力をいただいており、トータルで637名の方々に現時点で御協力をいただいています。
条例のスキームの中では、調整委員会という知事の附属機関が重要な役割を担っています。4ページになりますけれども、千葉県障害のある人の相談に関する調整委員会という委員会がございます。この委員会については知事の附属機関として設置されているものでございますが、障害のある人が8名、各分野の専門家9名、県議会3名、計20名という構成になっています。委員は委員会運営の中立・公正の確保の点から、各分野ごとに多くの関係者が加盟する団体や関係機関と調整の上、選任を行ってございます。この点も附帯決議の中で求められている事項でございます。
その事務局でございますが、私ども県障害福祉課の6名の専任職員を配置してございます。この6名の専任職員は地域の相談活動のケースマネジメント等の事務も含めて、調整委員会の事務局事務を担当しております。
調整委員会の開催状況でございますけれども、19年7月に条例が施行されてから、大体年間4回ないし3回開始されています。具体的な審議事項としては、個別事案の審査をするわけでございますけれども、これまで事案解決のための助言斡旋の申立ては3件ございましたが、いずれの事案も対象事案とされずに地域での相談活動の継続ということでの対応となっております。
具体的にどのような申立てがあったかということに関してですが、3件のうち1件は実を言うと条例施行前の事案ということもあって、審議が困難であったということになりますが、その他の2つの事案については、1つはヘルパーが緊急時にアンビューバックを使用できるよう知事が必要な措置を講じないのは、合理的な配慮に基づく措置を行わないことに該当するという申立て。
もう一つは、障害福祉サービスの中での重度訪問介護の報酬単価と介護保険法による介護保険サービスの報酬単価を同一にするよう知事が措置を講じないのは合理的な配慮に基づく措置を行わないことに該当するというようなものでございました。
これらの2件でございますが、基本的にこの合理的な配慮に基づく措置は個別の障害のある人の事例としての申立てが前提となる中で、これらの事案については制度そのものの改善要求という申立者の強い考えがあったこともあり、合理的な配慮に基づく措置はサービスの具体的な義務のある者がサービスを提供する際に合理的な配慮をしないという場合を想定していることを前提として、いずれの事案も調整委員会に諮った上で、対象事案とならないということを御本人に回答しています。
この条例では悪質な事案については知事が是正勧告を行う。調整委員会からの進言に基づいて知事が勧告を行うというような、それが最終的な担保の救済の仕組みになっておりますけれども、条例案においては、この罰則規定についてはいろいろな御議論がありました。研究会の中でも非常にいろいろな議論があって、罰則が必要であるという御意見もあったんですけれども、基本的に県が最初に行った差別事例の募集の中でも多くが誤解や偏見から生じているということや、なかなか今まで何が差別に当たるのかということが明らかにされていない中で、その必要性について、社会的合意が未だに形成されていないということ。罰則を設ける場合は更に差別の範囲を限定的にする必要があるということや、何よりも罰則を恐れて障害のある人との接触を避けたり、反感を強めたりといった副作用も懸念されるということもあり、この条例の中では罰則を設けないというような考え方に立った条例設計がされているところです。
また、こうした考え方に基づいて、千葉県の障害者条例の相談活動も展開されています。18年の2月条例案では悪質事案については公表規定がございましたが、県議会の議論の中では、公表は制裁性が強く、やはり障害者と健常者の間に新たな溝をつくってしまうおそれがあるという指摘もありまして、公表規定自体もこの成立した条例案の中では削除されたという経過がございました。
そのほかにこの条例では7番、8番に書きましたが、障害者用駐車専用スペースのマナーの問題ですとか、目や耳の不自由な方に情報提供する場合の配慮の仕方など、制度や習慣、慣行などが背景にあって、構造的に繰り返されるような問題について、解決に向けた取組みを話し合う議論の場として、障害のある方は事業者、県など関係者で構成する推進会議という会議を設置しております。その成果を広く県内に発信しているなどの取組みを進めています。
取組みの例としてはいろいろな取組みをしていますが、1例をこちらに載せてありますので、後で御参照いただければと思います。また、何と言ってもこの条例が罰則によらずに、すべての人に暮らしやすい社会を目指すのだという基本理念に立つとして、差別に対する取組みに頑張っている人を応援する仕組みというものも定めております。21年度、取組み事例を募集したところ、136件の募集がありまして、優れた取組み13件を選考いたしました。障害のある方のミュージカルの取組みをやっていらっしゃる方々。これを第1位として認証したというような取組みもございましたことを御紹介したと思います。これらについては県のホームページ等でも紹介しているところでございます。
次は相談活動の状況についてでございます。19年7月に条例が施行されてから、この23年3月までの相談件数は1,022件でございました。福祉サービスがこのうち218件と最も多くて、労働者の雇用がその次に続きまして142件でございます。その次に建物・公共交通が122件と多くなってございます。一方、少ないのは情報の提供が33件、不動産取引が34件、教育が64件という状況になっております。
どんな障害種別の方から相談が寄せられたかという整理でございますが、精神障害の方からの相談が320件という形で非常に多くなっております。続いて身体障害のうち肢体不自由の方が234件、知的障害が164件という順番で続いています。
5ページ、取扱い件数から見た相談分野と障害種別をクロスして見たときに、相談分野から見ますと、福祉サービスの218件の中で、これはいろいろな方々からの相談が寄せられているわけですが、福祉サービスについては精神障害や知的障害のある方。肢体不自由の方の相談が多くなっています。
労働者の雇用分野142件に関しては、あるいは医療76件については、精神障害のある方の相談が最も多く、教育の64件については発達障害や知的障害のある方。建物・公共交通の利用122件については、肢体不自由のある方や視覚障害のある方の相談が多いという傾向が見て取れます。
障害種別の方から見ますと、身体障害のある方の相談418件については、建物・公共交通が97件、福祉サービス79件ということで、特に肢体不自由のある方の相談が非常に多くなっております。知的相談のある方の相談164件については、福祉サービスが50件と最も多く、その他が52件ということで、これらについては虐待を受けた場合の相談や隣家の家族からの差別的な言動に関する相談なども含まれております。
精神障害のある方の相談320件については、多い順に福祉サービス、労働者の雇用、医療という状況になっています。知的障害の場合と同様に、その他も多く、家族や隣人が障害を理解してくれないとか、差別的発言を受けたというような、こうした理不尽な思いを受け止めているというケースも非常に多くあります。
また、虐待が疑われるケースもございますけれども、これは知的障害のある方と異なって、本人から相談をされている場合が多く、その虐待者が家族という形で相談を受けるケースが多くなってございます。発達障害の65件については、教育の分野が多いという状況でございます。
4は省略して、5の対応別の活動です。1,022件は相談の件数でございます。活動頻度になりますと、この10倍程度の活動を行っています。1件当たり11回程度の相談活動の統計となっております。この1,022件のうちの985件が23年度までに一応終結という形になっていますが、終結した985件のうち、助言・調整を行った事案が326件。これは相手方に働きかけて合意形成の取組みを進めているものが326件あったということです。関係機関につないだ事案が177件で18%、情報提供を行ったものが200件20.3%、傾聴でとどめたものが28.6%ということでございます。
これは年々見てまいりますと、19年度が助言・調整、要は相手方に働きかけていったケースが21.6%であったものが、22年度では37.7%という状況になっておりますので、相談活動の定着に伴って、相手方との間に入った調整活動の頻度が高くなってきているという状況にございます。
駆け足で御説明を申し上げましたが、相談活動を通じて感じていることについて、何点かお話ができればと思います。
まず、第三者による事案解決についての有効性について、感じていることでございます。相談事例といたしまして、皆様の御議論の中でもいろいろ出てくるような話題なのかもしれませんが、電動車いすの相談者からの相談で、買い物のときに自分で商品を取って買い物に入れることができないため、商品を買い物かごに入れてもらえるようにお願いしたところ、介助を断られたという事例でございます。この店舗はセルフサービスが前提だという状況の中でこのような取扱いになっていたわけですが、条例の趣旨や相談者の心情をお伝えしたところ、社内で検討をしていただき、介助をするという形になったというケースがございました。
また、視覚障害のある方の相談で、病院に友人の見舞いに行ったところ、盲導犬を受付のところで待たされて、これは盲導犬ユーザーの方からの相談ですが、相談者は看護師さんに手を引かれて病室まで行ったと。是非、盲導犬の同伴を病室まで認めてほしいまた、待合室などでも待たされているときに、盲導犬をかわいいと言って人だかりができて触られたりするけれども、そうした理解も深めてほしいという相談がございました。こういった相談についても病院に対して条例や補助犬法の説明や盲導犬を受け入れている病院等の具体的な対応やビデオ等を情報提供するなどしていただき、病院側で盲導犬受入れのマニュアルを作成して、職員の周知を図っていただけたというケースがございました。
そのほかにも建物・公共交通機関では電動車いすを利用してバスに乗ろうとしたところ、運転手に危ないから1人で乗車しないでほしいと言われたケース。このケースでは通所施設の利用者さんに対する乗車拒否のケースだったものですから、営業所長さんが施設を訪問して利用者さんたちとの意見交換をしていただいて、そうしたものを踏まえて、すべての運転手に対して研修会を行うなどといった取組みを進めていただいたという事例がございます。
このように条例の相談活動においては、双方の意思疎通を図ることで、一定の成果が上がっているということは間違いないことだと思っております。また、合理的配慮に関しては、話し合い解決を目指す相談活動の中で、どこまで対応してもらえるかというところがポイントになってきています。社会通念上、相当と認める範囲がどこなのかというラインを引いて、それを求めていくという活動よりも、どこまでこの事業所において対応していただけるか。そのために粘り強く働きかけるという取組みを進めております。そうした相談活動が1つの事案について10回、20回という相談活動に表れていると御理解をいただければと思います。
教育に関する条文に関して、先ほど大きく修正されてしまったと申し上げましたけれども、やはり条文にかかわらず、さまざまな相談が寄せられていることも事実です。例えば発達障害のあるお子さんの親御さんからの相談で、子どもさんがクラスに適応できずに、また生徒から障害について理解をされないので、学校に行きたがらないということで、学校側に理解を求めたい。特に子どもの特性に合った適切な対応をしてほしいというような事例もございました。
この相談については、相談活動の中で学校側も実はクラスの生徒とお子さんとの関わりに相当苦慮しているという状況もあきらかになりまして、広域専門指導員はたまたま教育分野の専門家であったということもあり、福祉授業の講師となって、生徒に関わり方ですとか、あるいはこうした児童と一緒に学んでいくことの大切さなどをお伝えいたしました。
また、教職員と一緒に発達障害に関わる勉強会なども行い、その理解を深め、児童への配慮についての意見交換や発達障害者支援センターの支援へとつなげていくというような活動も行ったわけでございます。こうした事例を通じて、やはり福祉教育の重要性あるいは学校現場との一体的な取組みを進めるということが重要だと感じた次第でございます。
相談を社会的な取組みへとつなげていくということが重要だと感じた事例もあります。推進会議のお話をしましたけれども、視覚障害のある方の相談でATMに振込機能が付いていないので銀行に介助を依頼したけれども、断られてしまった。窓口で振り込むと手数料が高くになるので納得できないという相談でございます。これは調査委員会の事務局の方で各銀行の方にいろいろと事情聴取をいたしました。そうすると、個人の暗証番号の入力等が困難な事情でATMの介助がなかなか難しいということや、機械についてもATMに振込機能を導入するというのがなかなか難しいという事情があることがわかりました。
そこでこの問題については、金融機関に働きかけましたところ、県内の銀行3行で協議いただいて、当事者を交えた実地確認を行って、各行の代筆の手続を整理いただいたり、手数料はATMと同じにするという取組みを進めていただいたという取組みがございました。
このように社会的な障壁の解消ですとか、そのための合理的な配慮に基づく措置の実現については、やはり当事者の皆様と関係者が共同して取組みを進めるということが重要だと感じております。これからの条例の相談活動においても、こういった取組みを少しでも増やしていきたいと思っています。
その一方でポツの2つ目でございますけれども、公職選挙法にかかる例えば政見放送、経歴放送の意思規定で、知事選挙の政見放送に手話通訳や字幕を付けることが認められていないけれども、差別ではないかなどといった相談も寄せられています。
また、雇用に関するケースでも交通事故の後遺症での職種変更や障害者枠への採用区分の転換を会社に求めたんだけれども、なかなか取り合ってもらえないというケースもありましたが、雇用に関して言えば、一たび解雇されてしまった事案への対応というのは、やはり条例の相談活動の中でも非常に難しいものがございます。
合理的な配慮については、可能な限りアクセシビリティーの基準というものを明らかにしていくということが重要なのかなと思いますし、また、そのための関係法令の整備を是非行っていただきたいと思っております。
虐待ケースを通じてしみじみ感じることですが、例えば千葉県の障害者条例の中では、約1割弱のケースで虐待が疑われるケースがございます。千葉県の障害者条例では虐待の禁止等も含めて規定しており、こういった虐待についても相談活動を行っているところでございますが、例えば、知的障害のある方のお姉さんからの相談で、両親がお亡くなりになって、お兄さんと同居している障害のある妹がお兄さんからどうやら暴力、暴言を受けているというような相談があり、そのための支援を求められたケースもございました。
こういったケースでは、関係者会議を開催して支援計画をつくり、本人の入所施設利用へとつなげるとか、あるいは家族支援まで含めた生活支援というものを行っているケースも非常に多く存在しております。特にこのような虐待事例では、福祉サービスだけではなく、さまざまな社会資源の利用などが必要になってくるわけでございまして、差別の事案の救済においても、差別事象の背景にある相談者が抱える問題の解決を図っていくことが非常に重要なポイントになってくると日常の相談活動の中で感じてございます。
千葉県のポツの4つ目でございますけれども、ここは重要なポイントになりますが、相談活動の中で傾聴を重視して本人の気持ちに寄り添った相談支援を行い、また相手方の事情も十分確認をした上で、十分な両者の意思疎通を図り、何らかの合意形成を図ることに注力をしてございます。事案の調整が困難なケースについては、調整委員会への申立てを進めるわけでございますが、こうした複数回にわたる地域での相談活動もあり、先ほども申し上げましたとおり、これまでのところ、調整委員会への申立てを希望するケースが非常に少ないという現状がございます。
この条例の対象事案解決の仕組み、救済のシステムでございますが、議会審議の経過の中で特に公正・中立ということが重視された結果、県が直接業務を行うということとされ、どちらかというと公的な紛争処理の仕組みとしての色合いが強くなったと感じております。
その一方で、この救済の仕組みとしては代弁者としての役割も重要だと感じておりまして、そういった意味でエンパワーの視点も重視しなければいけないなと思います。そうした中で今、地域相談員、身体・知的の相談員さんを始めとした地域相談員の活動を活性化させるということも千葉県の中では非常に大きな課題となっているところでございます。
説明の方は少し時間を超過して申し訳ございませんでしたが、千葉県で条例ができましてから、北海道、岩手、熊本県、さいたま市など相次いで条例が成立いたしました。地方からも条例の施行を通じまして、現場の実情を情報発信し、この差別禁止法制の制定に向けた国内の議論を喚起するお手伝いができればと考えております。
以上でございます。ありがとうございました。(拍手)
○棟居部会長 横山様、どうもありがとうございました。
それでは、議論に移りたいと思います。議論の時間は約30分ほどでございます。議論と言いますか、先ほどと同様にまず御質問という形の御発言がございましたら、御質問から受けたいと思います。いかがでしょうか。
竹下副部会長、お願いします。
○竹下副部会長 2~3質問をお願いしたいんですけれども。非常に日本でも先駆的な条例をつくったということで、私たちは高く評価していますし、その運用が今後どういう実を上げていくかということに興味を持っているわけです。そこで実績の報告があったんですが、この間の相談や持ち込まれた事案を通じて、条例の言わば弱点あるいは条例そのものの見直しが必要ではないかという点はなかったかどうか。事例解決のためにという視点から、もし現時点で議論をされていることがあれば教えてください。
2番目には、千葉県条例のよさはまさにつくり上げるときから、障害者も含めて地域のまさに県民一体となった論議の末の条例ということで、まさに地方自治のよさが如実に表れているわけですけれども、そうであればあるほど住民の人たちにこの間の運用についてフィードバックといいますか、そういう声を聞く機会というものは、どういう形で持っておられるのかということについてもお願いしたい。最近の地方行政でよく言われる評価とその評価における住民参加という点から、その後の条例に基づく運用についてもどういう形になっているかお教えいただければありがたいと思います。
以上です
○棟居部会長 横山様、お願いします。
○横山氏 ありがとうございます。条例の弱点ということなのかもしれませんけれども、いわゆる権利侵害性について、客観的なメルクマールをどのような形で考えていくかということが非常に手薄な部分なのかなと思います。不利益取扱いについて具体的な規定を定めておりますけれども、具体的な相談事例としては、ぴったり類型に当てはまるものがすべてではなくて、さまざまな場面における相談が寄せられています。そういった中で多くの相談活動が合理的な配慮に基づく措置に欠如に関しての相談活動が中心になってきているのかなと思っています。基本的に対象事案に対しては、先ほど御説明したとおり、一つひとつ問題解決にむけた活動をしていますが、規範としてそれに違反しているのだということについては、客観的なメルクマールをつくっていくということは必要になってくるかなと。ただ、これについてはそういう意味で法制化に条例としても大変期待をしているところがあるということでございます。
今まで感じてきたところで、虐待防止法が成立したということは非常に大きかったと思っています。条例の相談活動というのはいわゆるソフトランディングを目指した相談活動になっていますし、調整委員会自体が条例を読んでいただけるとわかるのですが、虐待ケースを対象事案とはしていないこともあり、調整委員会の審議の中では虐待ケースは審議対象外になっています。
したがって、この条例の相談活動の中では条例の広域専門指導員を中心としたさまざまな地域資源のコーディネート等で対応を図ってまいりましたが、そういう意味で今回虐待防止法ができたというのは、我々にとってみれば大変大きな法制化がかなったなと思っています。
フィードバックの関係については、これは県条例としても非常に大きな課題になってきていると思っています。この間、私どもは毎年毎年活動報告書などを作成して、年々の活動を通じて感じてきた課題ですとか、事例についても御紹介をしてきてまいりましたが、こうした事例を広く県民の皆さんに知っていただくことが非常に大きな課題だと思っています。この報告書自体を県民の皆さんと共有するという意味では、条例づくりに関わった皆さんについては、事例を共有していく機会をつくることはできますが、広く県民の皆さんにこれを発信していくのが大きな課題になってくるかなと思います。
今日の前半の議論にも関連するかもしれませんが、間接差別、直接差別、類型に関して考えたときに、どういう事柄がこうしたものに該当するんだろうかということを広く国民の皆さんが認識していただくというところから始めていくということが重要だと思っておりますので、事例については個人情報の問題が非常に大きいものですから、これを事例が蓄積する中で類型化して、広く県民の皆さんに紹介していくという取組みをこれからも進めていきたいと考えています。
以上でございます。
○棟居部会長 横山さん、ありがとうございました。
ほかに御質問。相澤協力員、お願いします。
○相澤専門協力員 御報告を大変興味深く聞かせていただきました。今日の一番最初の総論的な議論と照らし合わせながら聞いていたんですけれども、まず差別の定義については、ご報告によれば、差別は、「障害を理由とした不利益取扱い」及び「合理的な配慮に基づく措置の欠如」と定義しているとのことでした。そして、「(障害を理由とした)不利益取扱い」の方に関しては、障害を直接理由としたとか、間接的に理由としたとかいうことはどうも入っておらず、単に「不利益取扱い」とされていると理解したんですけれども、直接・間接という類型化をしていなかったことによって、今までトラブルが生じたというような御経験があったのかどうか。その辺を教えていただきたいというのが1点目です。
それから、今日総論に関する議論の際に、救済機関というのがとても重要な意味を持つのかなと思って聞いておりました。その点、千葉県の条例もいろいろ工夫をなされているのだなと思って聞いていたんですけれども、地域相談員という方々はどういう人が選ばれているのか。どういう御経歴であったり、御自身が障害をお持ちなのか、そうでないのか、あるいは何か専門的な知識を有する方なのか。そうではないのか。もし専門的な知識がない人がなりたいと言った場合に、事前に研修会みたいなことをして、かなり専門性を高めてから相談員になるという措置を取っていらっしゃるのか、こういった点についてもお聞きしたいと思いました。また、地域相談員はかなり人数が多いなという印象を受けたんですけれども、この人数で人手不足なのか。それとも余り気味なのか。スタッフの人員数というのも大切だと思うので、その辺も教えていただきたいと思いました。
3点目は、行政的な紛争の解決ということに取り組んでおられるようですけれども、こうした紛争解決手段では解決に至らず、あるいは当事者には不満が残って、裁判に発展したというようなケースが今まであったのかどうか。その辺も教えていただけたらと思います。
以上です。
○棟居部会長 どうもありがとうございました。
横山さん、お答えをお願いできますでしょうか。
○横山氏 ありがとうございます。類型化に関して言いますと、そのこと自体が問題になったということは今までございませんでした。そもそも論として、この不利益取扱いと合理的配慮の欠如という整理で行こうということとされたのは、県民の皆さんにとってわかりやすい整理はどういう整理だろうかというところに発想がありますので、そういう意味で要は不利益な取扱いと合理的な配慮に基づく措置をどこまで理解してもらえるか非常に難しかったことからこの2つの類型でという整理をいたしました。何点か御紹介いたしましたけれども、相談の中では障害のある方が心の中にあるさまざまな理不尽な思いとか、それまでの生活の中で感じてきたいろいろな思いとか、そういったものを含まれた相談ですので、その中からむしろ権利侵害みたいなものを丁寧に解きほぐしていくというところから実は相談活動は始まっているということや、その中での差別のとらえ方をむしろ我々事務局の方で整理をしているというのが実情だと御理解いただければ、ありがたいかなと思います。
2つ目の地域相談員の話でございますが、先ほど説明を省略してしまいましたが、5ページの4を見ていただけるとおわかりいただけるかと思いますが、広域専門指導員、県内16地域に配置した広域専門指導員の相談活動が約半数を占めているんです。ですので、専らこの16人の方々が活発に活動しているという現状があります。身体・知的障害者相談員は法律に基づく相談員制度ということで、この方々は基本的に本人がお断りしない場合には、すべての方に身体・知的障害者相談員をお引き受けいただける方にはお願いしているという現状がございますので、全体会としては年に1回、各地域地域では広域専門指導員が中心となった、身体・知的障害相談員等の地域相談員を対象として研修会を複数回やるというような研修計画でスキルアップを図っているという状況でございます。
不満の問題については、調整委員会になかなか上がってきていないということもあって、相談活動の中であきらめも含めて何らかの形で終結してしまっているという現状がございます。ただ。それが本人にとってよいのか悪いのかという問題は、また別にあると私なりには考えておりまして、そのためのアドボケートというんでしょうか。そうした寄り添った相談活動というのを相談の在り方としてこれから考えていかなくてはいけないのではないかと思います。いわゆる公的機関がやる紛争処理のシステムとは違う、権利擁護性のある相談活動を考えていかなくてはいけないというのがこれからの私どもの課題ととらえています。
以上でございます。
○棟居部会長 横山さん、ありがとうございました。
山崎委員、お願いします。
○山崎委員 山崎です。事実関係について、4点ほど簡単にお伺いします。
1点目は4ページの一番上のウのところに書いてある事務局の6名の方々なんですが、この中には何らかの障害当事者の方がいらっしゃるかというのが1点目です。
2点目は3ページ目の下の方、先ほどの相澤さんの御質問とも被るんですが、地域相談員が637名ということで、これは人口からいうと約1万人に1人くらいになりますね。先ほど16地域ということをおっしゃっといたので、各地域あるいは市町村に均等に人口比で配分されているんだろうと思うんですが、そういう理解でよいかどうか。更に言うと、その地域で地域相談員あるいは16名の広域専門相談員の方々がどなたかということは、市町村の広報などで周知されているのかどうかというのが2点目です。
3点目は、6ページになりますが、IIIの直前にある延べ10,933回の件数をこなされているということで、これは千葉市の県庁で全部統括されているのか、あるいは地区ごとで処理されたものを合わせるとこの数になるのかという実態を教えていただきたいと思います。
最後は推進会議のことですが、これも私は大変よい仕組みだと思うんですが、ここの推進会議に場合によっては県あるいは県議会に対する政策提言等、そういった機能を想定されているのか。また想定されているとして、実際にそういう提言を受けたことがあるのか。
以上4点をお尋ねいたします。
○棟居部会長 お答えをお願いします。
○横山氏 まず第1点目、6名のうちの当事者はという御質問ですが、当事者は含まれてございません。ただ、広域専門指導員の中には、人数がすぐには思い出せないんですけれども、当事者が入っているという状況があります。
2つ目の地域相談員について、身体・知的の相談員は基本的に数が割り当てられていますので、具体的な人数は、今、お答えできませんが、定率に従ってそれぞれの障害種別ごとに数が決まっていると御理解いただければと思います。
市町村の広報はこの相談窓口に関して県としても行っていますし、そのためのパンフレットやリーフレットを使って市町村にお知らせしております。また、特に条例の制定当初は市町村広報なども使って、あるいは全戸に自治会の回覧用紙を使って配布をするなどの周知を行いました。継続的にこれは続けていかなければいけない課題かなと思っております。
10,993回の相談活動でございますが、これは全16圏域、県内全体の広域専門指導員が相談活動をしている中でのトータルでございます。詳細を申し上げますと、広域専門指導員の相談活動のケースマネジメントをすべて県障害福祉課で統括しておりますので、広域専門指導員が一回一回の相談活動について迷いがある部分や、具体的な相手方への調整をどんなプランでやるか、こういうことは県の障害福祉課の担当室の方と相談をしながら進めているという、そんな相談マネジメントを行っております。
推進会議については、個別の事案について、その事案の中から見えてくる課題については、調整委員会の方から政策提言をしていくというシステムを取っております。その中で政策として解決すべきものとしては政策として、むしろ社会全体の取組みとしても取組みを進めるべきものについては推進会議で議論をして、民間の皆さんの御協力をいただきながら、先ほどの銀行のATMの例でございますけれども、あのような取組みを進めていこうという条例の設計と運用になっております。
以上でございます。
○棟居部会長 ありがとうございました。
西村委員、お願いします。
○西村委員 西村です。貴重な御報告をありがとうございました。
1点のみ質問がございます。先ほど虐待防止法についてのコメントがありましたが、この間の相談活動とそこでの実践を通じて、今ここで差別禁止法について議論していますが、国が定める差別禁止法に横山さんの立場から、どういったものを求めたいのか。具体的なものがあれば、教えていただきたいと思っています。
以上です。
○棟居部会長 横山さん、お願いします。
○横山氏 非常に広範な議論になっていると思うんですけれども、基本的に大事にしなくてはいけないことは、当事者の方々がどのような理不尽な思いをしているかというところに原点を見出すということだと。そこに尽きるんだろうと思います。そういった中で現実を丁寧に整理していく中で、皆さんの御審議の中でよい法律ができればと思っています。条例のスタートのときのキーワードは、理不尽な理由でつらく悲しい思いをしている人はいないかいうところからスタートしていますが、そうした制度の枠組みなどにとらわれずに、当事者の思いを原点にスタートする中で、実効性のあるものができ上がってくればと思っております。本当に感想みたいな形になってしまって申し訳ありませんが、以上でございます。
○棟居部会長 ありがとうございました。
浅倉委員、お願いします。
○浅倉委員 浅倉です。
2点だけ質問したいと思います。1つは、3ページの「5 差別の禁止と適用除外(第8条)」のところで御報告を受けたことについてですが、この条文のまずいところは、行ってもよい差別ができてしまったとおっしゃったことについて、もう少しご説明をお願いしたいと思います。
もう一つは、その下の図で「差別をしたとされる人」すなわち関係者の中で、公的機関と私人の割合が、どういう割合であったのかということをおわかりになれば教えていただきたいと思います。
○棟居部会長 ありがとうございました。
横山さん、お願いします。
○横山氏 8条の規定は従前の18年度2月に出した条例が大幅に修正を余儀なくされ、そして、差別を定義したことから、このような条例の設計が必要になったという状況にございますが、基本的にこのような形の中で、具体的に運用レベルで何か問題になったということは、今のところはございません。
ただ、可能であれば、このような条例の設計ではなくて、元のような形でなくすべき差別として、一つひとつ条文を整理しておいた方がよかったかなと思っているというような状況でございます。
もう一点は関係者のところですけれども、割合については今、手元に数字がございませんが、差別をしたとされる者になるには、当然行政機関が相手になる場面もあります。ただ、ざっくりとした印象で言えば、数として行政が対象となるケースというのは、割合としては少ないと御理解をいただければと思います。
○棟居部会長 ありがとうございました。
松井委員、お願いします。
○松井委員 ありがとうございます。松井です。
2つお聞きしたいんですけれども、1つは広域専門指導員にかなり相談が集中しておりますが、これは障害保健福祉圏域に1名ずつ配置になっていますが、これはその圏域の方が対象になるんでしょうか。あるいは圏域を問わず、だれでも構わないということになっているのかどうかということですね。そういう意味でこの16名という人数で十分対応できる人数なのか。あるいは足りないのか。その辺はどう考えていらっしゃるのかということ。
5ページの終結した事案が985と書いてございますけれども、助言調整を行った事案は基本的に問題が解決したと理解していいのでしょうか。そこはどういうふうになっているかということをお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。
○棟居部会長 ありがとうございました。
横山さん、お願いします。
○横山氏 16圏域の広域専門指導員については、結論から言うと、どなたがどこの広域専門指導員に相談をしても構わないということになっています。ただ、地元の地域に相談しやすい場所があるということが重要ですので、障害保健福祉圏域という形で担当部署を決めていますが、隣の圏域の住民からの相談を受けないということはございません。
助言調整の件数ですが、これについては助言調整を行った事案ですので、この中には当然のことながらうまくいったもの、うまくいかなかったものもございます。ただ、その内訳件数については、今日は整理をして持ってきておりませんので、御容赦いただければと思っております。
○松井委員 人数は足りているのかどうか。
○横山氏 16人に関して言うと、障害保健福祉圏域はおおむね人口割りで大体設定されているんですが、そうは言っても千葉県の北西部と南部の方で随分と事情が違います。ですので、北西部の方は結構大忙しになっていますけれども、南部の方はどちらかというと件数は少ないということ。結論から言って、数として16人というのは、足りないということはないと申し上げることができるかと思います。
○棟居部会長 私からもお聞きしたいんですが、これは勿論、障害者の方のところに出かけていくわけですね。それで面談をすると。その16人が一応担当のエリアがあるけれども、しかし、ほかの方もやっていいという場合、結構な長距離を移動して会いにいくといったような、しかも何回もということもあるということでしょうか。
○横山氏 広域専門指導員についてはそうした出張のための予算とか、こういったものも措置をしてございますので、頻回にアウトリーチでの相談活動をしていると。それが基本で、電話相談で終わるということはほとんどないと御理解をいただければと思います。
○棟居部会長 ありがとうございました。
もう時間が大分来ておりますけれども、もし御質問がなければ、お名前が出ました野沢委員にコメントをいただければと思います。お願いします。
○野沢委員 野沢です。
今の横山さんのに補足しますと、千葉県は差別をなくす条例だけではなくて、その前に中核地域支援センターへという、あらゆる障害、子ども、お年寄り、すべての相談を受けなさいという、24時間365日ワンストップで受けなさいとなって、それ相当頑張って機能をしているんですね。
相当難しい、いろんなのがここにかかってもおかしくないような事例はいっぱい寄せられていて、そういうものを可能にしているので16人で足りないところはないと言われたと思うんです。私もこの研究会の座長として、ずっと横山さんたちと一緒に取組んできて、せっかく横山さんに来ていただいているので、是非ひとつ皆さんに知っていただきたいことをお話ししたいと思うんです。
合理的配慮は物すごく奥が深いなと思っていて、特に知的精神の人たちなどに対する合理的配慮はどういうものなんだろうと私は今でもわからないんですけれども、あるときこういう会議の場に傍聴する人の中でやじを飛ばす人が出てきたんです。それはすごく耳触りな嫌なやじを飛ばすわけです。みんな議論ができなくなってしまって、一体どうするんだと。どうも精神障害の方らしいんですね。でも、別にどんな障害の人だって傍聴していいということになっているけれども、議論を妨害するのはだめではないかと。出ていってもらおうではないかみたいな話になって、本当にそれでいいのかなとなって、わからなかったんです。
そのときに横山さんがその方とほかの静かな別室でじっくりと長い間話していただいて、実は彼もやじを飛ばすことによって迷惑をかける意図はないけれども、どうしてもこういう表現形態になってしまうということらしいのです。それを横山さんが我々との間で通訳していただいて、それからうまく調整を図っていますね。
もしもそのときに、幾ら障害者だってやじを飛ばして妨害するのはだめだと、その差別をなくすための研究会の場でそういう決定をしていたら、本当によかったのかなと。すごく大事なことを間違ってしまいやしなかったかなという思いがずっと今でもどきっとするようなことであって、その辺りのことを救っていただいたのは、当時、副課長だった横山さんだったということ。このエピソードはすごく深いものがあるような気がします。これらを是非考えていければということを思っています。
それと千葉県の条例と我々がつくろうとしている法律とは随分違うと思いますし、今、改めて説明していただいて、すごくいいものがあったなというのと、まだまだ足りないものがあったなといろいろ思い起こしたんですけれども、どうやってそれを条例までつくっていくか。その過程においては、随分参考になるところがいっぱいあるなと思うので、少しそこを最後にお話したいです。
私らは研究会をやっているときは、すごく楽しかったです。いろんな勉強にもなりました。ただ、これを形にしていく上で、県庁各課との調整がすごく難しいんです。政策法務課という国で言えば法制局でしょうかね。そことの調整などはすごく難しくて、あとは関係団体ですね。経済界とか教育界とか、いろいろな異論があったし、懸念もされていたし、そことのあれが難しくて、最後に議会ですね。
恐らく差別禁止法をつくろうというときに、同じような段階を踏むんだろうと思うんですけれども、そのときにどうやって乗り切ってきたのかというのをここで話し始めるとあと2時間くらいかかってしまうので要点だけ言いますと、1つは何と言っても政治主導が一貫していて、ぶれなかったということだと思います。当時、堂本知事がずっといて、だれに何と言われようと、とにかくこの条例を最優先でつくるんだという姿勢を見せた。それで県庁内が一丸となれたということだと思います。
もう一つは、こういう場に毎回毎回県庁各課の担当者が20~30人傍聴してくれました。これは障害福祉課だけの所管ではなくて、我々すべてのところにそれぞれ関わってくるんだということを知っていただいたのと、あとはこういう議論の深まりをリアルタイムで共有してくれたということはとても大きくて、その後議会でもさんざんもめたときに、我々と一緒になってスクラムを組んでくれたのは県庁内の各課の方でした。そういうせっかくのプロセスを共有することみたいなものはとても重要だと思っていて、大臣は今どなたでしたか。是非リーダーシップを発揮していただいて、各省庁にせめて傍聴に来てくれというようなことをやっていただければと思います。
あと我々研究会の方も官民一緒にやろうということで、いろんな政策法務課とのすり合わせも我々なども一緒になってやりました。32回に及ぶタウンミーティングはすべて県庁の担当者と我々の中のだれかが一緒に行ってやりました。それと議会対策までやりました。もうこれは散々な目に遭いまして、横山さんはいかに大変だったかと思いますけれども、それを一緒に最後までやれたということが大きかったと思います。
もう一つは、そうは言え、妥協していく中で当時描いていたものとは随分現実的なものになっていくわけです。そのときに当然ここに出ている代表以外の団体の中から、何だこんなものはという異論は出るわけです。そこが一番厳しかったですけれども、真剣に説得しましたし、議論もしましたし、それで怒られて愛想を尽かされてしまったケースもありますけれども、そういうことを一生懸命やったことが県の方や議会の方たちからも信頼を得ることができたのではないかと思いました。
蛇足ですけれども、何か今後の参考になればと思って言わせていただきました。ありがとうございました。
○棟居部会長 どうもありがとうございました。
それでは、時間も迫っておりますので、以上で第3コーナーを終わらせていただきます。ヒアリングに御協力いただきました臼井さん、横山さんには心から感謝申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
これで本日の議事は終了いたしました。
太田委員、どうぞ。
○太田委員 今日のヒアリングはとてもすばらしいヒアリングで、とてもわかりやすく勉強なりました。是非これからも議論を続けていくに当たって、現場や当事者側の意見聴取をしながら、わかりやすい議論としてください。お願いします。
○棟居部会長 ありがとうございました。
現場の方からの御意見を拝聴というのは、非常に理論だけの議論を地に足を付けさせるという意味で大事なんだなと私も自覚できた次第です。ということで本日の議事を終了させていただきます。
それでは、最後に東室長から次回の予定等について報告をお願いします。
○東室長 どうも御苦労様でした。担当室の東です。
次回は第9回となります。日時は10月14日金曜日14時から18時の予定です。それ以降は一応、第10回が11月11日金曜日、第11回が12月9日金曜日ということになっております。
次回9回は先ほども申しましたけれども、総論の続きについて若干時間を取るということのほかに、本格的に各論の分野の議論に移っていきたいと思っています。今、考えているのは労働の分野になるかなと思っていますが、もう少し時間をいただいた上で具体的にどんな形でやるのか、メール等で報告させていただきたいと思っています。
以上です。どうもありがとうございました。
○棟居部会長 ありがとうございます。
本日の差別禁止部会の概要につきまして、この後、記者会見において私と東室長から説明させていただきます。
本日はお忙しい中をお集まりいただき、ありがとうございました。
以上です。