○ 小川議長 定刻になりましたので、これより「第16回障がい者制度改革推進会議」を開催します。
委員の出欠状況です。本日は、堂本委員が御欠席、その他の委員は御出席です。
会議の公開は、これまでと同様といたします。
進行上の時間配分については、後ほど、東室長より報告があります。
本日の会議は、17時までを予定しております。
それでは、これより先の進行については、藤井議長代理より、よろしくお願いいたします。
○ 藤井議長代理 それでは、藤井がこれから先の議事を進めてまいります。
まず、先月末、6月29日に第2回障がい者制度改革推進本部が開催されました。これに小川議長、私、藤井議長代理、東担当室長らが出席いたしました。この場で小川議長より、第1次意見について、菅総理に対して手交がなされました。
まずは、このときの手交の様子を小川議長から報告していただきます。
小川さん、よろしくお願いします。
○ 小川議長 先日、29日に第2回障がい者制度改革推進本部が官邸において開催されました。本部長であります菅総理を始め、国務大臣等の方々が御出席なされる中、推進会議並びに総合福祉部会の皆様の声を届けるという立場から、私と藤井議長代理が出席をさせていただきました。
その中で、冒頭、6月7日の第14回推進会議でとりまとめました第1次意見を、菅本部長にお渡しし、併せて総合福祉部会でとりまとめをされました当面の課題についても、本部に提出をさせていただきました。
その際に、私から、菅本部長には、推進会議からの意見書を受け止め、その趣旨に沿って、政府の対処方針を決定いただき、着実かつ大胆に制度改革を進めていだたくよう、お願いをいたしました。
これに対して、菅本部長からは、まず、私ども推進会議の取組みに対するお礼と敬意のごあいさつをいただきました。そして、支え合いのネットワークから、だれ一人として排除されることのない、一人ひとりを包摂する社会の実現が大変重要なことであるという考えを示されました。
その上で、推進本部においては、第1次意見を最大限尊重して、政府の対処方針をとりまとめたい。また、これからも推進会議の皆様に、精力的な御審議をお願いしたいというお話をいただきました。その後、審議がなされ、第1次意見を最大限に尊重した政府の対処方針がとりまとめられました。
藤井議長代理からは、第1次意見を基に、政府の対処方針をとりまとめていただいたことへの感謝を述べ、総合福祉部会でとりまとめられた当面の課題についても、配慮をお願いするとともに、更に第2次意見のとりまとめに対して、引き続き御理解と御協力をいただくよう、お願いをいたしました。
最後に、荒井担当大臣からも、閣僚の皆様に対して、制度改革が着実に実を結ぶよう、御協力をお願いしたいとの御発言がありました。
以上、当日、お願いいたしました御報告とさせていただきます。
以上でございます。
○ 藤井議長代理 私も出席させていただきまして、一言感想といたしましては、たった15分ほどだったのですが、川端文科大臣、長妻厚労大臣等、4人の本部員から大変熱心な発言があった。その上で、私はこういうふうに言ったんです。
この1次意見というのは、我々の宝物です。これはダイヤモンドの原石のようなもので、どう磨くかということは、まさにこれからの各大臣、本部のお力にかかっているんですということをお願いいたしました。
その上で、この推進会議の特徴として、当事者が過半数ということを申し上げながら、Nothing about us without us、私たち抜きに私たちのことを決めないでという権利条約の制定過程のフレーズを述べ、これは日本版なんですよということも申し上げました。
終わったらすぐ菅総理が来られまして、もう一回あのフレーズを言ってほしいというものだから、また言って、「us」が2回つくんですねということをおっしゃっていて、いい言葉ですねと言って帰って行かれたんです。
本当はもっとたくさん行けばよかったんですが、精いっぱい代表として意見、意思を述べたつもりであります。
それから、今、言われたように、総合福祉部会でまとめられて、推進会議で再度まとめた総合福祉法の制定以前に早急に対応を要する課題の整理についても、長妻厚労大臣の所管ではありますけれどもということを断わって、是非配慮を賜りたいということも言っておきました。
以上で、第1次意見の手交式の様子等の報告は終わりにいたします。
それでは、本日、第16回の進め方の概略につきまして、東室長よりお願いします。
○ 東室長 担当室長の東です。こんにちは。
まず冒頭に、資料の一部に誤りがございますので、御報告します。
今日はお手元に資料1~6に続いて、参考資料というものが配付されております。閣議決定に関する資料ですが、それの資料番号が「第16回(平成22年7月22日)」となっておりますが、これは「12日」の誤りです。間違ったものと正しいものとごっちゃになっているかと思いますけれども、お分かりになりますか。横書きの表みたいなものの右下の方に、「障がい者制度改革推進会議」と書いてあって、その下に「第16回」で日付が打ってありますが、その日付で間違っているものがありますので、御訂正ください。
今日は、司法へのアクセス、虐待防止、児童の権利に関する条約に基づき日本から提出された報告の審査について、障害のある女性という4つのテーマを取り上げて、ヒアリングなどを通じて議論を深めていきたいと思っております。
いつものように、2回の休息を挟んで、3つのコーナーに分けます。
第1のコーナーは40分で、司法へのアクセスについてのヒアリングです。
大石弁護士より、知的障害者に関わった刑事事件の事例等について御報告をいただき、議論をいたします。
第2のコーナーは60分で、虐待防止に関わるヒアリングです。
池原弁護士より精神医療関係、黒岩弁護士より学校関係について御報告をいただき、議論いたしたいと思っております。
第3のコーナーは60分で、2つのテーマを取り上げます。
前半の35分は児童の権利に関する条約に基づき日本から提出された報告の審査についてというテーマで、平野裕二さんより御報告をしていただき、議論いたします。
後半の25分は障害のある女性につきまして議論します。
その後、最後になりますけれども、何点か御報告があります。
以上です。
○ 藤井議長代理 第1コーナーは、これから13時50分をめどに進行してまいります。今、ありましたように、今日も3つに分かれてやりますけれども、後半の方で大事な報告が幾つかあります。この報告にも時間を取りますので、是非進行には協力を願って、予定どおり進められますようによろしくお願いいたします。
それでは、第1コーナーですが、司法へのアクセスで、大石剛一郎弁護士をお招きしました。テーマとしましては、知的障害者の刑事事件の事例等に関してであります。
では、大石さん、情報提供をお願いいたします。
○ 大石氏 大石です。よろしくお願いします。
私は、知的障害とか自閉症、発達障害のある人の事件、被害者になる事件、加害者になる事件、両方を比較的多く担当している弁護士です。今日は、特に加害者になる事件について御報告させていただきたいと思います。
資料1は、宇都宮事件を題材にしたレジュメをつくりました。
この宇都宮事件というのは、重度の知的障害者が強盗のぬれぎぬを着せられて、運よく真犯人が見つかって、無罪になったという事件です。事件自体は、2004~2005年で、2005年にはもう判決が出て、強盗については無罪という話になりました。
私は、この事件の刑事事件は担当していません。刑事事件の後の、こんな捜査はどうなんだということで、警察とか検察庁とかを訴える国家賠償法の損害賠償請求事件を担当しました。その中でいろいろ刑事事件の中の捜査の問題性とか、そういうものをいろいろ調査して、裁判所に訴えた。裁判所もこの国家賠償法の損害賠償請求事件について、私たちの言い分を認めて、やはり相当よくない捜査だったと。捜査の裁量の範囲を越えているだろうという判断を下してくれました。
では、なぜ真犯人ではないのに強盗ということで起訴されたのかというと、宇都宮事件の本人をAさんと言いますが、Aさんが自白したからです。普通、常識的にやっていないことについて自白するということは、考えづらいことがあると思います。また、警察も検察も、基本的にそういうことを前提に捜査をします。それで、自白したのだからということで、それに乗っかって捜査を続けて起訴したと。
ところが、判決直前になって、本人がやっていないんだと言ったと。普通は判決直前になって、やっていないと言ったからといって、裁判の判決が出ないということはないないんですが、このときの裁判官は非常に勘のいい人で、知的障害は相当重い感じだし、もう少し本人の知的障害のことについて調べてみましょう、訴訟をそのように進めましょうと話をした。その結果、延期をしていた間に真犯人がたまたま出てきたということなんです。
では、なぜ自白したのかというと、一言で言えば、こうしたんだろう、お前がやったんだろう、そのときはこういう気持ちだったんだろう、これが目的だったんだろうという誘導尋問ですね。これが非常にきつくて、それで何だかよくわからないけれども、うんと答えるということが繰り返されて、でも警察とか検察がつくる調書の中では、私はあのときこういう気持ちで、こういう目的でやりましたというストーリーが調書になる。そういう調書ができて、それに乗っかって、事件が組み立てられていたという形です。
これは割と典型的な形で、ある意味、障害があっても、なくても、また、客観的な証拠と合致していれば、それはそれでいいだろうという形で進められてしまうことが多いです。そもそも知的障害、発達障害のある人については、やはり意思表示に特徴がある。自分の言い分をきちんと認められるべく強く主張していくというところに弱さがあるので、そこに配慮をし、注意をして本人の話を聞かないと、事実をちゃんと聞きとることができないということが、ある意味特徴だと思うんですが、そこがおざなりになっているというのが現状です。
レジュメの中段より少し下に「知的障害のある人の意思表示」を書きました。これは発達障害がある人にも共通していますが、7つほど思いついたことを挙げました。どの知的障害がある人にも全部同じようにそれがあるということではないです。それぞれ個性によって強弱はありますけれども、こういうことに気をつけなければいけない、こういう特徴があるという印象を持っていることをピックアップしてみました。
1つ目は、迎合的になりやすい。そうだろうと言われると、そうですねと言う。相手の話に合わせる癖がある。そういうふうにしないと、なかなか世間を渡ってこられなかったという歴史もあったりして、そのようになってしまいがちな人が結構いる。
2つ目は、それに似ていますけれども、誘導にかかりやすい。整然としたストーリーをしゃべれない場合が多いので、整然としたストーリーをずっと紹介されて、こういうことではないのかと言われると、そうですねと答える。そういう傾向が結構強い。
3つ目は、NOと言い通せない。知的障害のある人でも、最初はNOと言っている場合も結構あるんです。これは知的障害がなくても、自分はやっていないと事件の最初は言うということはよくあることなので、警察としては、それとの区別はなかなかつきづらいかもしれないけれども、知的障害のある人の場合は、それについて、そんなことないだろう、ふざけるなとか、少し脅しをかける、あるいはちょっとおだてるようなことをやっていくと、「はい」と答えた方がいいのかなと。「はい」と答えないと怖いなというところで、「はい」と言ってしまい、NOと言い通せない特徴があります。
4つ目は、時間・場所の特定が困難なことが多い。これは被害に遭った場合でも同じなので、なかなかそこで被害を特定できなくて苦労することもあるんですが、加害者のときも同じように、自分がやった時間とか場所とかについて、特定することが困難なことが多いです。なので、逆に言うと、随分事件から時間が経っているのに、時間とか場所を明確に話す場合には、相当気をつけなければいけないです。それは裏をちゃんと取らなければいけない。何かの思い込みかもしれないし、何か別のことと錯覚している場合もよくあるので、そこはちゃんと裏を取らなければいけないです。
5つ目は、先ほどのストーリーを立てるのが難しいという話と似ていますが、論理的に筋道の立った説明は苦手です。こうこうこうだからこうなった。こうこうこう思ったからこうした。こういう目的だからこんな方法をとった。そのようなきれいな筋道の立った説明が実は苦手で、何を見た、どうした、こうしたという話は、初期だったら割とクリアーに出るかもしれないけれども、筋道立った説明というのは、難しいことが結構ある。なので、私たちが調書を見る場合に、そういう論理的に筋道立った説明の調書になっている場合には、これはどうなんだろうかと。本当に本人が行ったのだろうか。裏はちゃんと取れているのだろうかということをかなり気にします。
6つ目は、今の話にも通じますけれども、どうしてそうしたのか。なぜ、その理由は何なのか。この説明が非常に難しいです。でも、犯罪を説明する場合には、この説明は絶対重要で、その人が犯人かどうかということの判断には、すごく重きが置かれることだと思います。けれども、実際には、その理由を説明するのが苦手なので、そう簡単にすっと理由の説明ができるのは、むしろ疑ってかからなければいけない。あるいはそういう調書の内容になっている場合には、その真実性について疑わなければいけないという特徴があると思います。
7つ目は、思い込み・思いつきと事実自体の記憶の区別が困難になってしまう場合が多い。これは例えば最初に取り調べを受ける。やっていないと言う。そんなことないだろう。こういうものがあるんだからやったんだろうと。やりました。どういう目的でやったんだ。よくわかりません。こういう目的ではないのか。そうです、そういう目的です。では、こういう目的でやったんだなという過程で、これを取り調べでは何度も何度も繰り返されるわけです。そのように繰り返されたことが、事実とは違った思い込みだったりすることもあるんですが、それが記憶に張り付いてしまって、本当は当日何をやったか覚えていないとか、当日は全然違うことをしていたとかいう事実と、後から刷り込まれた思い込みと、どちらが本当なのかとか、どこまでが事実で、どこまでが記憶で、どこまでが思い込みなのかということの区別がつかなくなってしまう場合が多いという特徴があります。
最後の特徴が非常に重要で、つまり、先ほども言いましたけれども、捜査の初期に、捜査官が考える恐らくこうだろうというストーリーが張り付けられてしまうと、もうそこで事実の記憶との区別がつかなくなってきてしまって、あるいは事実の記憶が後ろに追いやられてしまって、もう表にそれが出てこない。出てくるのは、捜査の過程で張り付けられたストーリーだけという形になる。そうすると、もうあとは何度やっても自白するばかりの事件になってしまう。これが現状だと思います。
今、言ったような人たちの特徴というのは、別に捜査のときだけに現れるわけではなくて、私たちが弁護人として接見に行って、本人から話を聞く。実際はどういうことがあったのか、やったのか、やっていないのか、目的は何なのかとか、そういう質問をいろいろするわけですけれども、そのときにも同じようにそういう特徴が出てきます。なので、私たちはこういう特徴があるので、本人の口からぽんと出たことをそのままそうですかと思えばいいということは、到底考えません。やはり、こちらが誘導していないかとか、場所とか時間が妙に特定されているけれども、これは本当に客観的な証拠と合っているのかどうかとか、理由とか論理がそもそもこの人がそういうことを組み立てられるタイプの人なのかどうかとか、そういうことをいろいろな角度から時間をかけてたたきます。たたいて、その結果、こういうことなのかなと思ったところで弁護をするというのが大体やり方だと思うんですが、初期の段階で捜査側のストーリーで汚染されてしまうと、たたいてもそのストーリーしか出てこない。そのうちどんどん時間が経って、もともとの事実自体の記憶が薄れてしまう。そもそもその日に本当にその犯罪をやっていないとすれば、その日は別に特別な日ではないわけですから、その日の記憶というのは、むしろ残っていない方が普通なわけで、特に時間が経ってしまえば、10月何日に何をやっていましたかということがわかるはずがないわけです。そうすると、早い段階でその日、本当はどうだったのかということを、ちゃんと本人が話しやすい状況で、話しやすい質問の仕方で、話しやすい環境設定で話してもらわないと、事実が出てこないです。そのぐらい事情聴取というのは非常に難しいのですが、結構そこは本人がそう言ったから、本人がイエスと言ったから、本人が自白したからということで、どんどん流れてしまう。
では、どうすればいいかというところですが、まず最低限、捜査の最初から、本人はどう言っていたのか。どんな質問にどう答えたのか。どんな誘導尋問にどう答えたか。でも、その反対側からの誘導にはどう答えたか。どんなふうにその人の話が確かめられていったのかということが表に出る、捜査の可視化とよく言われますけれども、そういう捜査のシーンを全部ビデオに撮って出してもらうと、それは非常に手がかりになると思います。
それから、そもそもだれがどういう聞き方をするかということが非常に重要なので、やはり今、言ったような、これは私の経験上の思いつきですけれども、こういう特徴があるので、よく気をつけて聞き方を工夫する。ぽんと言葉が出たからといって、それだけで乗っかっていかない。ちゃんと客観証拠、裏を取りながら、時間とか場所とかも押さえながら、あるいは理由とかについても、本当にそういうことが言えるのかどうかを確かめながら進める。そのような捜査の手法をしてもらう。そういうルールにする。あるいはそのように進められるように立会人をつける。本人が話しやすいような人を補助者に置いて話を聞く。あるいは弁護人が立ち会う権利を認める。いろいろそのような手法はあるし、ケースによって違うとは思うんですけれども、そのような配慮を初期の段階ですることが非常に重要だと思います。
この宇都宮事件について言うと、結果、冤罪事件なので、当たり前といえば当たり前ですが、そういうことが全然なされていなかった。むしろ、強盗事件が多発していたこともあって、あせって、自白したんだからということで乗っかって、どんどんその自白に捜査側でお肉をつけて、起訴してしまったという事件です。だから、民事の損害賠償事件で、本人のAさんの話、自白調書にたくさんいろいろ出てくるわけです。それが客観的な物証とかと合っているのかどうか。その物証と合っているかどうかの裏付け捜査をしたかどうかという質問を繰り返し、繰り返し、30、50としましたけれども、ことごとくやっていないということです。何でやっていないかというと、本人がやったと言っているんだからという話でした。
極めつけは、実況見分。現場引き当たりといって、強盗の犯行をやったところに、本人に案内させて、要するに捜査官が案内するのではなくて、本人にどこでやったのか連れて行ってくれと言って、そこでやったように再現してくれという実況見分をやっているんですが、それもきれいに、私はここにこのようにやって来て、包丁を出して、どうしましたという実況見分の調書になっているわけです。でも、実際には冤罪事件でやっていないわけですから、Aさんがその現場に自発的に、私がここでやりましたということで連れて行くわけがないんです。やっていないんだから、その日、そこに行っていないし、そういうことはしていないわけです。だから、その現場に連れて行ってと言って、連れて行けるはずがないのに、連れて行っている。これは誘導しなければ絶対に連れて行けない、連れて行かないはずなのに、実際にはそうなっている。しかも、民事裁判では、確かに本人が誘導したんだと、自発的に連れて行ったんだと言い張るんです。ということは、やはり捜査を焦って、そこで少し誘導しましたと。そこは本人が言っているので、確実だろうと思ってやりましたと言うんだったらともかく、冤罪であることがはっきりしているのにもかかわらず、そこで本人がやってもいないところに連れて行きましたと言い張る。こういう姿勢でやっている限りは、とてもではないけれども、事情聴取のときに誘導しないとか、きちんと配慮するということが、やりますとか、それは捜査規範で決まっていますからやっていますということは、とても信用できないという状況だと思います。
なので、やはりシステムとして、捜査の最初からきちんとどういうふうに聞いたのか。だれがどんな聞き方をしたのか。そのときに本人がどう答えたのかということをきちんと表に出すという制度にしてもらわないと、ちゃんと事実が表に出ていかないと強く思っています。
以上です。
○ 藤井議長代理 それでは、大変短い時間で情報提供、あるいは問題提起をしていただきました。50分までの時間はそう多くないんですけれども、今の情報提供に対しまして、質問、意見はございますか。特に終わりの方ですね。システムとして、捜査の早い段階で、こういう問題が表面化できるようにはどうするのかということを言われましたので、こういうことを中心に、少し質疑を深めていきましょうか。御発言がある方は、どうぞ手を挙げてください。
では、清原委員、大谷委員、長瀬委員の順番でいきます。
○ 清原委員 ありがとうございます。情報提供に感謝いたします。
冤罪というのは、被疑者になってしまった人にとって、勿論大いなる人権侵害でございますが、同時に、真犯人を発見することに対してブレーキがかかってしまうという意味で、大変あってはならないことだと認識しています。
そんな中で、先ほど、もし被疑者にいわゆる知的障害のある方の場合であれば、特に初期の段階の供述というものが尊重されなければならないということでありますとか、立会人あるいは弁護人の立会いが冤罪を防ぐのには大変重要であるという御指摘がありました。公的弁護の観点から、初期の段階からの弁護人の立会いというのは、それなりに進んでいくと思われますけれども、ただ一方で、障害に対する理解が、すべての弁護人の方にあるとも限りませんので、さらなる弁護人の方の研修ということも必要だと思います。併せて、捜査関係者、司法関係者全般に、今、御報告されたような経験を通じて、共有すべきことがあるのではないかということを痛感いたしました。
この間の取組みの中から、捜査関係者、弁護人、あるいはもし告訴された場合には、その流れのプロセスで、裁判官でありますとか、検察官でありますとか、多様な人が同様に障害に関する正しい認識を持たなければいけないと思います。その具体的な手立てとか仕組みについて、更にもう少し踏み込んだ御提案があれば、お聞かせいただければ幸いです。
以上です。ありがとうございました。
○ 藤井議長代理 では、もう一方ぐらい言ってから、お答えいただきましょう。
では、大谷委員、時間が余りないので、質問、意見を端的にお願いいたします。
○ 大谷委員 大谷です。質問です。
趣旨は一緒だと思いますが、レジュメに、本人の真意の表示を有効・適正に支援できる人が不可欠であるということが再三出てきます。問題はこの有効・適切に支援できる人をどこでどう確保し、あるいは養成、育成するべきかということだろうと思います。
この推進会議でも、例として不適切かもしれませんけれども、土本さんに対して、元氏さんが非常によく支援してくださっています。このような関係を常時配置できるような支援体制は、具体的にどのようなことが想定されるのかということについても御意見を伺わせていただければと思いました。
以上です。
○ 藤井議長代理 では、今、関係するお二方から、弁護人、司法関係者の研修、あるいは御本人を支援する仕組みがシステムとしてどうなったらいいのかということなんですが、大石さんからまず見解をいただけますか。
○ 大石氏 まず、つまり何か事件があったらそこに駆けつける、障害の特徴についていろいろ素養があるから、しかもその事件用にトレーニングしているからという人を養成して、それで事件が起きたら、その人をそこに派遣するということは、余り考えていないです。
なぜかというと、知的障害とか発達障害といっても、やはり一人ひとり全然違うので、弁護人の側にも基本的な理解は必要だと思うんですが、実際に本人からお話を聞くというときには、生活の中で支援をしている人でないと、その支援者という意味では役割を果たせないと思います。なので、そのための支援者を特別に養成するということは、余り発想として考えていないです。
ただ、弁護士も、検察官も、裁判官も、警察官も、知的障害、発達障害というのはどういう傾向があるとか、その人がどうかということとは別に、共通にどんな傾向があるから、どういうところに気をつけなければいけないという程度のトレーニングはしなければいけないとは思います。その上で、できれば生活の中でちゃんと支援してくれる人がいる方が容疑者になった場合には、その人が立ち会えるようにする。弁護人も立ち会えるようにするという形を考えています。なおかつ、できたら、できるだけ最初からちゃんと全部捜査過程が表に出るようにビデオを撮っておくという作業ですね。そのように思っています。
○ 藤井議長代理 では、もう少しいきましょう。
長瀬委員と久松委員の順番でまいります。長瀬委員、お願いします。
○ 長瀬委員 ありがとうございます。また、大石弁護士、御説明どうもありがとうございました。
社会モデルとも関連する知的障害者の暮らしづらさというのを作り出してしまっている私たちの社会の在り方、特に知的障害がある方たちが、普段から正直に、率直にわからないと言えないような社会の在り方というのを感じさせられましたし、また、自白を重視するなど、日本の司法の仕組み全体としての問題というのが、特に知的障害のある人に集中的に不利益をもたらしているのではないかと思いました。
質問ですけれども、いただいた資料の中に、2006年3月1日付で、日本弁護士連合会の会長の方から検事総長に警告書が出されています。8ページです。その3つ目の段落のところで「<1>被疑者、被告人に対する取調べについては、可及的すみやかに、その全過程を録画もしくは録音すべきであるが、とりわけ知的障害を有すると疑われる者に対する取調べにおいては、直ちにその全過程の録画もしくは録音を行うこと」とあります。これは日弁連の会長さんから出されているのですが、全面的な可視化が間違いなく望ましいと思うのですけれども、この知的障害者と疑われる場合だけということは、現実的に可能なのかどうか、もしその辺について御意見があれば伺いたいと思います。お願いします。
○ 藤井議長代理 それでは、久松さんお願いします。
○ 久松委員 ろうあ連盟の久松です。御説明いただきまして、ありがとうございます。また、大石先生の取組みに対して、心から敬意を表します。
1ページ目の「知的障害のある人の意思表示」についてお聞きしたいと思います。
特徴について7つ書いてありますが、私自身、この説明の仕方はもう少し丁寧さが必要かなと思います。まず、3番目までの「迎合的になりやすい」「誘導にかかりやすい」「NOと言い通せない」という、知的障害者の特性という説明の仕方は、もうちょっと背景、場面について、説明が必要であり、知的障害者に限らず、障害を持つ弱い立場の人たちみんなに言えることではないかと思いますので、この3つを頭に持ってくることに抵抗を感じます。
話すことが難しいとか、苦手であるとか、聞くことが苦手であるとか、理解することが苦手であるというのは、そういう状況としてはあると思います。この迎合的になりやすいとか、誘導にかかりやすいとか、NOと言い通せないというのは、私たち聞こえない者もよく言われることですので、これについてもうちょっと弁護団とか、研修をするときにも注意をして、丁寧な説明が必要かと思うのです。その辺りを議論するときに、どういった状況だったのかということをお聞きしたいと思います。
○ 藤井議長代理 今の長瀬委員からは、可視化の問題に関わって、知的障害者等の分離、あるいは先行させることが可能なんだろうかという問いと、7つの特徴に気をつけることについて、更にもう少しこの辺は検討の余地があってもいいのではないかということですが、この辺のところで大石さんからお答えいただけますか。
○ 大石氏 1つ目の質問については、知的障害、発達障害のある人だけ特別にそういう法律制度ができるのかどうか。それはそういう知的障害、発達障害のある人の意思表示を捜査機関が犯しやすいという問題意識が物すごく強くならないと難しいだろうと思います。そこは本当に冤罪の温床で、大なり小なり、全部冤罪か、一部冤罪かということも含めて言うと、かなりストーリーがつくられてしまっていることが危機感として、捜査機関の方に強くなれば、特別法でもつくってもらいたいというぐらいには思っています。それが本当に可能なのかどうかというのはわからないですが、それがあってもいいぐらい、当たり前にコミュニケーション、意思表示ができる、当たり前に捜査に耐えられるという観念は捨ててもらわないとだめだろうとは思っています。
2つ目の質問、御意見については、私が弁護とか、捜査機関から見てとかいうことでの思いつきで書いている文章なので、非常に荒っぽい表現ではあります。そういう意味では、そういうふうに言われる本人はどう思うかということも配慮なしに書いています。そういう意味では、御指摘のとおりだと思います。
逆に言うと、普通の弁護士も、警察官も、検察官も、裁判官も、こういう表現とか、こういうとらえ方で見ているという話だと思うので、それはきちんと制度化するとか、どういうところに注意するとかということをきちんと整理するときには、是非配慮した形で整理をしていただければとは思います。
○ 藤井議長代理 大石弁護士は、ずっと可視化問題を取り組んでいらっしゃるので、少し踏みこんで、例えばどこまでこれは到達しているのか。全く到達していないのか。多少進んでいるのかという辺りで、もし御報告できればいかがでしょうか。
○ 大石氏 今、やっている知的障害のある人が被疑者になっている事件で、検察側からビデオテープが提出されたという事件はあります。でも、中身は何かというと、散々取調べが終わった後の調書の確認の場面をビデオで延々と数時間撮っていて、そういうビデオが3つぐらいでてきて、それは先ほどの説明でいうと、もうストーリーが張り付けられていて、こういうことですね、こういう調書になっていますね、そこについてよく読んで聞かせてもらいましたね、その上で署名・捺印しますねという場面をビデオで撮っているだけなんです。それを称して可視化の一部と言っているので、それでは何の役にも立たない。現状ではそうだと思います。
○ 藤井議長代理 時間がまいりました。これで終わります。
時間が来たので終わりますけれども、土本さんと関口さんのお二人、簡単にお願いします。
では、土本さんからお願いします。
○ 土本委員 知的障害と言われている本人なんですけれども、警察とか刑事とか、説明されないで、いきなり来て逮捕される部分が大きいし、何も説明されない部分がいっぱいある。どうして捕まったのだろうかという事件とか、仲間のことを聞いたりするときに、説明されていない部分、強引に連れ出されて、不安になって、いっぱいいっぱいになって、どうしようもない状況になって、だれに支援してほしいとか、その時点で余裕がなくなるというのがある。自分もそうですけれども、仲間もそういう感覚で、研修というか、警察もそういう知的障害と言われている人たちとか、ほかの人たちの理解をしていくべきではないかと思います。
以上です。
○ 藤井議長代理 では、関口さんどうぞ。
○ 関口委員 アメリカで体験したことですけれども、私は事件ででっち上げをされました。誣告ですね。False Accusationというのをやられました。最初の裁判を受けたときに、精神科医がこういうことをやりましたと、ぺらぺらとあまりに早口でよく聞き取れなかったんですけれども、要するにやったこと、やったことというのは、私はやっていないわけですから、完全にでっち上げなんですが、それを事実であるかのごとく精神科医が裁判長に説明しているんです。医療観察法は、多分事実認定については、同じように裁判長ところにも、こうやりましたということを先に言ってしまっているので、日本でも同じようなシステムになっているのではないかと思っています。
私はDismissということで、棄却ですから無罪で帰ってきましたけれども、そういう手続き的な面で差別があるのではないかと思っています。
○ 藤井議長代理 大石さん、特に今のお二人へのコメントはありますか。
○ 大石氏 やはり、本人が抵抗していますとか、本人がNOと言っていますというところ以外に、きちんと手続きを踏むというところで守っていかないと、守り切れないだろうと思うんです。本人は動揺しているし、本人は手続きの中でも全然意見を聞かれない状態に置かれるとか、そういう状況にされる危険があるので、だからこそ、やはり手続きをきちんと整備する。それをちゃんと踏んでいくことが大事なんだろうと思います。
○ 藤井議長代理 本会議体は、制度改革ということが本務であります。ですから、司法関係者のセンスとか、弁護人の個人技とか、そこに活路を求めるのではなくて、いかに仕組みにしていくのか。だから、先ほど言われた7つの共通点なども、今、大石さんから言われたのは、是非これをもっとブラッシュアップして、これを1つの仕組みにしていくという点などにも意見があればということも出ていました。今日はそのような問題提起を受けて、きちんと我々のことを考えると、今日は時間がないので読みあげませんけれども、権利条約では、第13条にポイントが書かれております。是非このことを参考にしてまた考えていきたいし、大石弁護士にも、今後とも協力をお願いしたいと思いますので、大石さんに拍手を送って終わりにします。(拍手)
これから15分弱になりますが、14時5分まで休憩に入って、第2コーナーの方に入ります。
では、休憩に入ります。
(休憩)
○ 藤井議長代理 それでは、第2コーナーに入りますので、構成員の方は着席をお願いします。よろしいですか。
第2コーナーは、虐待防止に関するヒアリングであります。お二方の弁護士さんをお招きしました。お一方は、精神医療と虐待防止の関係をめぐって池原毅和弁護士です。もう一方は、学校教育現場と虐待防止をめぐって黒岩海映弁護士です。
おのおの15分ちょっとで大変短いんですが、御発題いただきまして、お二方が終わった段階で、多分20分ちょっとの質疑時間をとりますので、また質問の方を出していただきます。
最初に、池原弁護士から、精神医療と虐待防止をめぐってのお話をお願いいたします。
○ 池原氏 御紹介いただきました弁護士の池原です。15分間ぐらいで、ごくかいつまんでお話をしたいと思います。資料は、お手元にお配りしている資料2「虐待防止について」で、下の方に「池原毅和氏提出資料」と書いてあるものです。この4ページ以降に、1950年代から現在まで、精神科病院でどんな虐待やそれに関連した違法行為が行われてきているのかということが一覧表にしてまとめてあります。
御承知かと思いますが、現在ある精神保健福祉法という法律の基になっている法律は、精神衛生法という法律がありましたが、これは1950年に制定されていまして、この表は1954年から事件をピックアップしていることになります。かなり網羅的に拾い上げてあると思います。
病院名については、性質上消してありますけれども、実際には病院名も特定できていて、事件の内容は大体資料で特定できることになっています。
これを通覧してみますと、大きく幾つかに類型化できると思います。1ページに戻りますけれども、典型的な虐待の事案というものと、この表自体は虐待を焦点に当ててまとめたものではなくて、さまざまな違法行為や権利侵害についてまとめていますので、関連する権利侵害事件と大きく2つに分けることができます。
虐待としては、しばしば見られるのは暴行。ただ暴行といっても、ちょっとしたけがをするという程度ではなくて、亡くなっているという事例が幾つもあります。バットで殴られたとか、蹴られたということで、患者さんが亡くなっているという事件があって、単なる刑法犯罪でいう暴行という軽いものではありません。
それから、性的いやがらせ、さまざまな労働搾取というか、使役ですね。不当に患者さんを働かせて、あるいは無資格でレントゲンを撮らせたりとかということも起こっている。それから、違法な行動制限。精神科病院では、一定の要件を満たしている場合には、隔離室に入れたり、身体拘束をすることが許容されていますけれども、それ自体も権利条約の観点からして正しいのかという問題がありますが、仮に法律の定めているものを前提としても、その法律に違反するような行動制限がたくさん行われているということがあります。
更に、この事例集の中には含めていませんけれども、むしろ最近問題になっているのは、薬物の過剰投与ですね。つまり、向精神薬をたくさん使うことによって、保護室には入れていないけれども、実際上自由に行動ができない、自由に判断ができないという状態に陥らされている人たちもいるということも無視できない問題だと思います。
関連する事案としては、火災による死傷事故というのがかなり起こっている。これは虐待と見るべきかどうかという問題がありますけれども、その背景にある原因というのは、看護師等の人員配置が精神科病院では非常に乏しい。人手の少ないところで医療を行っているので、こういう危機が発生したときに適切な安全確保ができないということが構造的に存在していると言えます。
院内感染という問題もありまして、これも虐待とは余り縁のなさそうな感じがしますけれども、過剰収容であるとか、あるいはやはり職員不足という環境的な条件が非常に劣悪であるために、院内感染が容易に起こりやすいということがあって、虐待として典型的にとらえる問題ではないかもしれませんが、これも無視できない大きな問題であると思います。
それから、実は精神科特例という特例があって、精神科の単科病院では、現在でも例えば医師の数は一般病院の3分の1でいいという形になっているわけですが、更に水増しをしているということが起こっている。
更に、患者さんの障害年金等の金銭を横領したり、あるいは労働を搾取したりということが起こったり、最近特にここ10年間ぐらいで特徴的なのは、患者さんの個人情報の流出という問題もあります。これは電子化されたデータがさまざまな理由で紛失したり、あるいは流出したりしてしまうという問題がある。
それから、向精神薬の横流し、不正利用ということが起こっているということです。
この精神衛生法は、先ほど申し上げましたように、1950年に制定されたわけですが、1984年の宇都宮病院事件という病院の中で起こっている重大な人権侵害事件を契機にしまして、精神保健法という、今ある精神保健福祉法の前身になる法律ですけれども、そういう内容に改定されて、このときに国際的な非難を日本は受けました。つまり、先進国の中でこんな人権侵害を起こしているのかという非難を受けて、精神衛生法の中に抜本的な人権保障規定を入れようということで、精神保健法をつくったわけです。その柱になっているのが指定医制度であるとか、あるいは行動制限についての規定を設けることとか、精神医療審査会の設置をしたり、都道府県知事や厚生労働大臣、当時は厚生大臣ですけれども、その報告徴収権とか、あるいは改善命令の規定などが取り入れられたということで、一応、制度的にはある程度近代的な、人権を保障しつつ、医療を行うというシステムは整ってはきたんですけれども、表を見ていただいてもおわかりのとおり、実際にはその後も虐待的な事件というのは減少していない。相変わらず続いている。それで現在まで至っているということであります。
それでは、その虐待等の問題にどんな構造的な問題があるのかということについて、少し考えておく必要があると思いますが、決してこの虐待的な事件は精神科病院の中で偶発的に起こっているものではなくて、構造的な原因があると考えられる。
その1つは、昭和55年以降、入院者の数が30万人を超えまして、この30万人を超えた数字というのは、いまだにほとんど減っていないんです。病床を減らさなければいけないということは、ずっと20年来叫ばれていますが、ほんの数千人、1万人ちょっと減ったかもしれませんが、微々たる減少であって、抜本的に大量な入院者が存在するという現象は変わっていない。
更に重要なのは、この30万人を超える入院者の中の4割以上の人が5年以上入院している人だということで、非常に長期入院の方が多いということです。
ちなみにOECD諸国の2005年の統計によると、精神科病院での平均在院日数というのは18.1日。20日を切っているわけですけれども、日本の場合は現在でも298.4日。1年はやっと切っていますが、まだ約300日近い。ですから、15倍ぐらいの違いがあるということになるわけです。
更に特殊なのは、任意入院といって、本来は自分の意志で入院しているはずの人が、終日閉鎖病棟で処遇されている。かぎがかかっていて、鉄格子がついているところに処遇されていて、自由に外に出られないという状態の人が40%を超えている。
つまり、こういう大量で長期の入院者が存在していて、しかもそれが自由を奪われた閉鎖的な空間に閉じ込められているという構造が前提にあって、虐待あるいは不当な権利侵害というのが多発している。後を絶たないということを見落とすことはできないということです。
2番目に重要なのは、精神医療審査会の機能不全という問題があります。先ほど申し上げましたように、これは1984年の宇都宮病院事件後の法改正で設けられた人権保障のためのシステムなんですが、これが期待したほどは機能していないということがあります。例えば医療保護入院8万7,000人余りのうちで、定期病状報告というのを行います。この医療保護入院という強制入院をさせられている人については、定期的に本当に入院を継続する必要があるのかどうかということをチェックすることになっているわけです。しかし、その8万7,000人を超える入院者に対して、入院形態が医療保護入院ではなくて、むしろ自発的な入院に切り替えてもいいのではないかとか、あるいは退院させてもいいのではないかという事例が4件とか3件という数字なんです。これは比率にすると0.004%とか、0.003%と、ほとんどないに等しいような数字になっている。
措置入院の場合には、若干機能が高いように見えますが、それでも他の処遇への移行が適当であるとされているのが0.08%という数字で、ほとんど活発に機能しているようには見えないわけです。
ところが一方では、ここでも御議論いただいたかもしれませんが、先ほどの30万人を超える入院者のうちの7万人とか10万人という人たちは社会的入院者である。つまり、入院をしておく必要がほとんど基本的にない人なんです。それなのに、この精神医療審査会の審査では、入院をしている必要性がありませんよという判断がほとんど出ていないという現象をどう理解したらいいのか。本来であれば、もっと高率に、この人たちは社会的入院者なんだから退院させるべきだという判断が医療審査会において出てよさそうなものですけれども、全くそれが出てこないということは、残念ながら、この精神医療審査会が活発に有効に機能しているということは、データとしては認めることができないだろうということになると思います。
3番目は、患者の権利擁護制度がないということです。特にこの精神医療審査会への退院請求とか処遇改善請求という権利擁護制度は設けたんですけれども、患者さんがそれをするときに、例えば弁護士に依頼する権利があるかというと、依頼はできるんですけれども、公費でそれを賄うというシステムがないので、実際には依頼することは困難です。あるいは積極的に弁護士会や弁護士とのコンタクトをつけてあげるという援助システムもないので、結局は弁護士を依頼して、精神医療審査会に退院請求や処遇改善請求の申立てをする人はかなり少ないですね。したがって、医療審査会の機能も低くなってしまう。これはそういうシステムを準備している大阪とか福岡での審査結果と、それがない地域での審査結果を比べてみますと、大阪や福岡は非常に機能が高いんです。ですから、患者の権利擁護制度というのがいかに重要かということが、こうした地域差によってもよくわかると思います。
それから、行政からの改善命令というのがありまして、これは1つの有効な手段ではあるはずなんですが、安田病院事件というのが大阪で起こったことがあります。これについては、大阪弁護士会の里見弁護士が非常に精力的に活動されました。ただ、彼の事件についての報告を読むと、結局弁護士として人権侵害を救済するためのいろいろな努力をして、すべてが終わるころになって、やっと行政が動き始めた。だから、この改善命令というのが、なかなか有効には、あるいは迅速には機能していないという現実があるということになります。
権利条約との関係で非常に重要なのは、モニタリングシステムが欠けているということです。今、申し上げたような医療審査会の定期審査とか、あるいは行政による報告徴収権というのは、モニタリングのイシューにはなり得るんですけれども、しかし実際には、過去の経験から見て、それが有効に機能しているとは到底言えないということがあります。
ですから、そういう意味でいうと、ほとんど有効に機能するモニタリング機関はないし、更にもう一つ、条約との関係で考えると、結局は行政機関が行う。つまりそれは、措置入院権限を持っている都道府県知事とか、あるいは入院システムそのものを運用している厚生労働省がモニタリングというか、改善命令を出したり、報告徴収をするということになりますので、条約が求めている独立の機関によるモニタリングということにはならないだろうということになります。
こうした点で、やはり現行の精神保健福祉法では、全く虐待防止のためのモニタリングとしては不十分であるということが言えるだろうと思います。
あと、資料の方で、実は民間の精神科病院協会の団体の意見として、10ページです。精神保健福祉法には、非常に高度に透明度の高いモニタリングシステム、あるいは権利擁護システムがあるので、精神科病院については、虐待防止のための特別な法適用をする必要はないという見解が述べられていますけれども、これは今、申し上げたような実際の宇都宮病院事件以降の法改正にもかかわらず、結果的に虐待は全く減っていない。そして、医療審査会の機能は十分に果たされているとはとても言えないという経験的な事実に照らしてみると、到底それを認めることはできないと私は考えていまして、是非虐待防止法について、精神科病院についてもこれを適用する。むしろ、精神科病院にこそ、まず特に適用する必要があると私は思っておりまして、皆様のお力をいただければと思います。
どうもありがとうございます。
○ 藤井議長代理 それでは、関係する点が多いと思われますので、先ほど進行上の点で言いましたとおり、黒岩弁護士から御発言いただいて、併せて質疑、意見を進行してまいります。
では、黒岩さん、よろしくお願いします。
○ 黒岩氏 弁護士の黒岩海映と申します。
平成15年に起きました、千葉県浦安市立小学校の特殊学級での教師による女児に対するわいせつ事件というのがありまして、浦安事件と呼んでいるんですけれども、これの弁護団をやってきました関係と、日弁連で虐待防止への意見書というのを2008年に出しておりましたが、そこにおいても学校における虐待の部分を担当していました関係で、今日は学校における虐待についてお話させていただきたいと思います。
まず、浦安事件の中身から入ろうと思います。資料の24ページ、新聞記事になります。この新聞記事に、ちょうど簡単な時系列がございますので、こちらを御参照いただきたいと思います。
この事件は、2003年4月に、新しくできた公立小学校に特殊学級ができまして、それも先進的な、いろんな発達障害、軽度の子を集めた先進的な取組みをするモデル校だという宣伝で、地域の障害のある子どもたちが集められて、特殊学級が始まりました。
ところが、そこに入った小学校6先生の中度から軽度ぐらいの知的障害の女の子が、ゴールデンウィーク前後から、大好きだったスカートをはかなくなる、あるいはお風呂が大嫌いだったのに、家に帰ってくるなり、まずシャワーを浴びるという行動を示し始めました。それから、夜中にうなされては、トイレに流されたら死ぬとか聞いたりしたんです。
6月の終わりに、頭をぶたれる体罰というのを、ちょうどこのお子さんの妹が目撃したというのが最初で、その後、7月4日に、学校から帰ってくるなり、先生におっぱいをぎゅうされたと子どもがお母さんに訴えました。その辺からどんどん被害が明るみになっていったという事件でした。
学校の対応が物すごく悪くて、加害者の教員とか、周りの補助教員に状況を聞いて、そんなことないと言われると、その事実はないという報告を親にするだけなんです。そういう学校の対応に業を煮やして、その年の11月の終わりには、警察に被害届を出し、刑事告訴をしています。
そうしましたら、私は水戸事件という企業における知的障害者虐待の弁護団もやっていたんですけれども、その平成8年、9年の水戸事件のころとは比べ物にならないくらい、当時の浦安の警察が熱心に捜査をしてくれたんです。よくこの事件でここまでやってくれたというぐらい熱心に捜査をし、翌年2月には、加害教諭が逮捕されています。被害児童は2名ということで、逮捕、起訴されたんですが、その次の年の4月に一審で無罪判決が出てしまいました。検察が控訴したんですけれども、翌年2月にやはり無罪で確定してしまったという事件でした。その年、2006年5月に民事で提訴しまして、この弁護団の一員として私が活動してまいりました。
2008年12月24日に一審判決が出て、このお子さんの性被害というのは、先ほどおっぱいぎゅうのことしか言わなかったんですけれども、その翌週には、先生がズボンのチャックをおろすんだよ。パンツを引っ張って手を入れるんだよということも言いだしました。それから、夏から秋にかけて、それ以外にも、椅子に座ろうとすると、そこに手を置いていて触るとか、プールに行くときに着替える部屋で胸を触られるとか、本当に数え切れないぐらいの性的及び身体的虐待の被害申告があったんですね。そのたくさんの被害の中の、ごくわずかな3点だけ一審で認められて、それ以外は全部排斥されました。
それで控訴審に舞台が移りまして、つい最近、2010年3月24日に高裁の判決が出まして、ここでやっと、こちらが一番核心的な被害だと思っている辺りが認められたんです。およそすべての被害とは言えないんですけれども、ただ、やはり一番重い性被害の部分というのをしっかり認めてくれた判決が出て、ようやくこの6年間にわたる戦いに幕を下ろすことができたという経緯になっております。
判決の内容などを詳しく御紹介する時間がないんですけれども、21ページから判決要旨を載せております。これはちょっと失敗で、裁判所がつくった判決要旨で、裁判は公開されているので、個人名が出てもいいのかもしれないんですけれども、個人名が出ていますので、取扱注意でお願いしたいと思っております。
この判決要旨の3枚目、23ページの最後のところだけ御紹介したいと思います。
最後、6という項目です。被控訴人というのが被害児童のことなんですけれども、被控訴人は、本来は尊敬すべき教師から暴行行為や虐待行為を受けたものであり、障害児を受け入れているところから特段の配慮を要すべき特殊学級において、状況理解能力の劣る被控訴人に対してした補助参加人、この補助参加人というのが加害者の教師です。補助参加人の行為を許し難いというべきであって、被控訴人の精神的苦痛に対する慰謝料の金額としては300万円が相当である。
一審では、わずか3点の被害を認めて、慰謝料が50万円だったんです。おっぱいぎゅうの事実と、身体的暴行2つの合計3点だったんです。それが、性被害が多く認められた結果、慰謝料が300万円に増額されました。被害者の家族は、涙を流してよろこんだ判決になりました。
ところが、資料の26ページになります。
浦安事件では、合計4つの判決が出ているんです。刑事の一審、二審、民事の一審、二審。この許し難いと言ってくれたのは、民事の二審が初めてなんですね。刑事は2回とも無罪だったわけです。やっと民事で大方の被害が認められたにもかかわらず、この「『朝日新聞』 2010年4月13日 ちば版」で「わいせつ訴訟」「浦安市『謝罪しない』」「被害者支援市民ら抗議」という見出しがあるんですけれども、浦安市がいまだに謝罪をしません。無罪判決を尊重すると。民事の高裁判決が最後の事実審だから、仕方なく上告はしないけれども、無罪判決を尊重するんだと。我々は当時調査を尽くしており、それ以上の事実は、当時我々として確認できなかったというプレスリリースをしているんです。これで被害者家族は本当に煮えくり返るという気持ちになっていまして、二次被害、三次被害が甚だしいという状態になっております。
この事件をやる中で、一体公立の学校、特にこの件は小学校なんですけれども、学校における身体的虐待、性的虐待というのは、どのように防止策が打たれているのか。万が一起きてしまったときに、どういう手当、発見、救済のシステムがあるのか調べてみました。結論から言いますと、それが全くないということがわかりました。
レジュメの方にいきますけれども、1ページです。時間がないので、1ページから丁寧に説明できないんですが、この1ページにつきましては、皆さん既に御承知かと思いますが、我々日弁連は、家庭、学校、企業、施設、病院、本当は刑事拘禁施設もなんですが、こういう場を虐待の起きやすい場として設定しまして、障害のある人はこのいずれの場においても非常に多くの虐待を受けている。それにもかかわらず手当がないという問題認識で、それをわかりやすく○×の表にしています。
2ページ「II 学校における虐待の実態」です。
まず、体罰ですけれども、これは一応、学校教育法上、体罰は当然だめだと書いてあります。文科省や都道府県なども、体罰はだめですよという通知は出していますし、当然、通り一遍の研修などもやっておりますが、体罰を理由とする懲戒処分の数というのは、一向に減っておりません。
今日はわいせつ、性被害の方に重きを置いて御説明したいんですけれども、わいせつ行為の方を見たいと思います。
まず、セクシュアル・ハラスメントの対策の歴史から御説明させてください。
日本では、まず1989年に、日本で初めてのセクハラ裁判と言われる福岡セクハラ裁判が提起されまして、この年の流行語大賞に「セクハラ」という言葉が選ばれているぐらいなんです。この年から日本のセクハラという問題が認識されるようになったと言っていいと思います。
それ以後、多数の判例が形成されて、十数年間で100例あるいは200例と言われています。この判例は、私自身がある文献データで100例の判例を調べたところ、勝訴率が何と85%。密室で行われる性被害ですから、非常に立証が難しいにもかかわらず、セクシュアル・ハラスメントの判例というのは、非常にいい内容のものが多いです。一般の感覚よりもずっといい内容です。
どういう内容かというと、企業がセクシュアル・ハラスメントの苦情処理体制の整備、研修ということをしっかり行って、しっかり防止策を行う義務があるということをはっきり言っています。また、事後的にも、調査する義務、被害者を保護する義務、加害者を処分する義務があるということが、判例上、明確にされています。こうした判例の流れを受けて、1999年、企業におけるセクシュアル・ハラスメントが男女雇用機会均等法上しっかり定義されました。この同じ時期に、文科省においても、訓令の形でセクハラ規定が置かれるに至りました。文科省ですので、国立大学などに適用される規範ということです。
これを受けて、平成15年度に行われた調査では、国立大学の99%がセクハラ相談窓口を設置しています。それから、都道府県や政令指定都市においても、近年ほぼ100%がセクハラ規定を置くに至っています。
先ほど言いました約100例の判例というのも、実は3分の1が大学におけるセクシュアル・ハラスメントなんです。だから、教育機関というのは、もともとセクシュアル・ハラスメント、性被害の起きやすい場所です。
一応、注意的に言っておきますと、セクシュアル・ハラスメントというのは、ちょっとお尻を触るとか、君かわいいねとか、結婚しているのと聞くという軽度のものから、強制わいせつ、強姦という刑法上の犯罪に至る行為まで広く含む概念ですし、判例になっているものは、むしろ重たい内容のセクハラが多いです。ですので、性的虐待という、今、お話している場なんですけれども、セクシュアル・ハラスメントという概念と完全にかぶっておりますので、その点は御理解いただきたいと思います。
レジュメに戻りますけれども、都道府県、政令指定都市で一応のセクハラ規定が整っているんですが、市区町村においては独自のセクハラ規定を持たないところがまだ多いと思われます。これについての全国的な調査の結果が見当たらないものですから、数値を示すことができないんですが、浦安事件のころ、ホームページで検索して一生懸命調べても、やはりやっと幾つか見つかるという程度です。でも、それでやっと見つかっても、市区町村の教育委員会が定めるセクハラ規定が、対象とするのが教職員間のセクハラだけだったりするんですね。教職員から子どもに対するセクハラを全くカバーしていないようなセクハラ規定しかなかったんです。そういう状態でした。それにもかかわらず、小中学校というのは、当然大部分が市区町村立なわけです。
3ページ、文科省が毎年、懲戒処分の中身を公表しております。この中でわいせつ行為等が原因の懲戒処分を受けた教育職員の数を平成13年から一番最近発表されているのが平成20年なんですが、この数値を挙げてみますと、平成10年代の前半に数値が上がって、150~200の間の数値でほとんど高水準で維持されているという状態で、この数値の公表だけは、毎年まじめに文科省はしているんですけれども、それに対する抜本的な対策を取っている様子というのは、残念ながらありません。
もう少し中身を見ますと、自治体もそれぞれ検索すると、かなり頑張ってやっているなと思われるところから、やっていないところまでいろいろあるんですが、まず大分県です。平成15年、大分県教育委員会の報告書の中の数値を見てみます。これは県内の小中学校と今でいう特別支援学校すべてが対象ですが、スクールセクハラの担当者設置率、小学校で33.2%、中学校で74%、高等学校で100%、盲聾養護学校で73.3%です。
スクールセクハラの担当委員会設置率、小学校が33.2%、中学校が52.7%、高等学校が54.7%、盲聾養護学校が13.3%です。
これ以外にも調査項目はあったんですが、全般的にいいますと、小学校、盲聾養護学校の対策がほかと比較して遅れています。
次に千葉県です。千葉県は、他に先駆けて、平成16年から独自のスクールセクハラ実態調査を行っていて、これがホームページで公表されています。この場合、県立学校に限られているので、対象が高等学校と特別支援学校のみです。
平成16年ごろまでは、高等学校と特別支援学校のスクールセクハラ被害率に2倍もの開きがありまして、特別支援学校の方が被害率は高かったんです。それがその後の推移で、差がほとんどなくなってはいました。しかし、もう少しいろんな調査項目を見てみると、セクハラ相談員の周知率、どれだけ生徒一人ひとりがセクハラ相談員の存在を知っているかというところを見てみると、平成21年度で高等学校が45.6%に対し、特別支援学校が27%という大きな開きがあります。
つまり、相談員を置けばいいというわけではないんすね。これを4人に3人が知らないわけです。そういう状態がある。しかも、高等学校の周知率が年々増加しているのに対して、特別支援学校では全く増加がない、同じ数値で推移しています。
その次ですが、平成18年か19年から、記名で調査をしているんです。つまり、名前を書いて、自分はセクハラ被害を受けたと言っている生徒たちがいるわけです。それにもかかわらず、このセクハラを受けたと記入した生徒本人と面談し、事情を聞いたとする回答が、高等学校で74.8%に対し、特別支援学校が48.3%にとどまっている。本人に事情を聞かなかった理由についてのアンケート項目まではないんですけれども、なぜ聞かないのか非常に不思議です。
こうした数字を総合的に評価しますと、特別支援学校に通う障害のある子どもたちに対するスクールセクハラの防止策及び事後対応策は、高等学校におけるよりも格段に遅れていると言えると思います。
時間がないんですが、もう少し言わせてください。
次に、レジュメで言うと4ページの頭、資料で言うと12ページになります。「親・支援者から見た障害者虐待あるいは不適切な対応に関する実態調査」というのが今年の3月、でき立てのほやほやなんですけれども、公表されております。これは非常に面白いので、また全体をよく後で見ていただいたらいいと思います。
まず、虐待を受けた場面というのは、学校がトップなんです。場所も学校の中や教室となっています。
15ページ、だれにされましたかというのは、担任教員が断トツトップです。その次は、担任以外の教員となっています。
16ページ、その虐待や不適切な対応を解決しましたかという質問に対し、解決できているという人が23.3%いるんですが、ほぼ解決したが納得できないが24.5%、解決していないがしようがないが43.1%ということで、約7割が不満を残したまま放置されています。
次の調査は面白いんですが、17ページ、だれが相談に乗り、頼りになりましたかというのは、家族がトップで133件、次は担任・教員が2位で104件、次は障害のある子の親が94件。この3つです。4つ目が校長・園長の50ということで、断トツにこの4項目の回答が多いんですけれども、それに比べますと、教育委員会が8、児童相談所5、障害福祉課11ということで、いわゆる公の機関が全く頼りにされていないということでございます。
更に重ねて。
○ 新谷委員 済みません、もう少しゆっくりしゃべっていただけますか。ほとんど内容がわからないんです。
○ 黒岩氏 申し訳ございません。
資料の18ページ、今後相談したい、頼りにしたいと思うのはだれですかという質問に対しても、1位は家族122人、2位は障害がある子の親で105人、3位は育成会・親の会で94人。
ということで、要するに障害のある子の親とか教員とか育成会は、非常に身近で、かつ障害について理解してくれるようなところでなければ、親たちが頼りにしていないということがよくわかるんです。
時間がないので、レジュメに戻ります。
4ページの上の5項目です。これも水戸事件のころに集めた海外の文献だったんですけれども、オーストラリアで行われた犯罪の被害率の調査の結果によりますと、知的障害のある人の障害のない人に比べての被害率というのは、強盗で12.7倍、強姦で10.7倍という数値が出ております。
こうしたことから言えるのは、より幼かったり、障害があったり、より障害が重かったりする人ほど被害に遭う率は高い。それにもかかわらず、そういった方たちほど、全く保護の網から漏れているということになると思います。
その後で「III 対策の必要な局面」です。
<1>予防、発見、救済、処罰、被害回復の5段階に分けて、しっかりした対策が必要です。
<2>は浦安事件で最も苦労した点なんですけれども、立証の困難、特に知的障害のある人とか子どもは立証が非常に難しいです。立証の困難を克服するためのシステムが必要。
<3>権利条約の16条では、虐待防止について定められていますが、わざわざこの中で虐待防止についての監視が必要だということを言っております。特に密室化しやすい、障害のある人に対する虐待について、ほかの権利条約にはないんですけれども、監視が必要だということをあえて条約で言っていますので、この点も是非対策に含められるべきかと思います。
時間が過ぎてしまい、申し訳ございません。以上です。
○ 藤井議長代理 今、御両人とも、大変実証的といいますか、実態を裏付けられたお話をいただきました。
これから質問をお受けしますが、まず、池原さんの情報提供あるいは問題提起であった精神医療と虐待との関係ですね。これに関して発言をしたい方は挙手をいただけますか。
では、一旦お二方、また3人で順番にいきますので、後でまた順番にいきますので、後でまた黒岩さんへの御発言を伺います。
北野委員と委員、順番にお願いできますか。
○ 北野委員 先に北野の方から言います。
池原先生の話の中で、我が国の精神医療審査会等の現在の極めて問題の多いシステムというのを踏まえてといいますか、それを超えて、今後我が国の精神病院での虐待等を防止するために最も有効な制度・政策であると先生が思われるものを少し教えていただければと思います。
以上です。
○ 藤井議長代理 では、委員どうぞ。
○ 精神障害者の家族会のでございます。
池原先生、御説明ありがとうございました。私どもも虐待防止法に精神の病院が入っていないということを強く訴えていかなくてはいけないと思っております。
先ほど、審査会の機能不全というお話がありまして、またこの数字を見て本当に驚くんですけれども、社会的入院に関しまして、先生にお考えをお聞きしたいと思います。
現在、社会的入院の退院先、受入先というのは、家族にほとんど多くされているということで、家族の負担が今、大きい。家族の人権侵害にもなるのではないかと言われるように、大変な責務を負わされております。その受け皿がないがために、なかなか社会的入院の解消も進んでいかないという事実もあるかと思いまして、精神障害者の地域での受け皿づくりですね,ひとり暮らしするために、どのような体制があったらいいかお聞かせいただければと思っております。
以上です。
○ 藤井議長代理 それでは、お二方からで、まず北野委員からは、端的に探究していますので、決定的な、あるいは決め手での施策を2つ、3つ挙げてもらえないかということですね。
委員からは、先ほどの御説明の中で、虐待の温床の1つとして社会的入院問題が挙げられる。今、お話のあった社会的入院問題の温床、背景として、その家族の受入れが難しいとか、あるいは社会資源に乏しさがある。社会的入院問題は踏み込まないと、虐待防止は難しいだろうということで、そこら辺の考え方を聞きたいということなので、池原さんお願いできますか。
○ 池原氏 難しい御質問をいただいて、なかなか魔法の杖みたいな方法があるわけではないですけれども、まず、北野先生からの御質問で、では有効な虐待防止の方法はどうなんだろうかということですが、先ほどの私の御説明からの流れでいうと、まず前提として、長期で大量で閉鎖的な入院というシステムを抜本的に変える必要がある。逆に言うと、入院は必要最小限度の短期なもので、しかも施設は開放的なもので、入院は自発的なものであるということがベースになる必要があると思います。これは全く今のシステムは逆なわけです。任意入院というシステムはありますけれども、例えば退院が制限されるとか、場合によれば、退院したいといったときに、医療保護入院に切り変えて、強制入院に切り替えれば、退院は阻止できるわけです。
つまり、精神保健福祉法が準備している入院システムというのは、結果的には現在に至るまで、長期で閉鎖的で強制的なシステムだと。これを変えないと、どうしても密室では虐待が起こるということは、当然経験上明らかなわけですね。あるいは拷問的な現象が起こるということは言えるので、まずここを変えないと、幾ら権利擁護システムをつくっても、24時間張り付いている権利擁護システムというのはあり得ないわけですから、ここのペースを変えることがまず必要だということになると思います。その上で、そうしたある程度開かれた、短期的な環境の中での入院者に対する権利擁護というのをシステムとしてつくるとすれば、この制度改革推進会議もそうですけれども、何より障害当事者の人が判断者の中に含まれる必要がある。今までの精神医療審査会というのは、基本的には医学モデルです。つまり、5人いる委員の中の3人が医者がもともとの姿だったわけです。最近は、お医者さんの数を少し相対的に減らしましょうということになっていますが、メンバーは医者か法律家。法律家も裁判官であったり、検察官も含む法律家です。弁護士とは限りません。それから、PSWの方とかが入る。どちらかというと、サービス提供者側が中心となったシステムなわけです。だから、こういう中では、本当に患者さんが病院の中でどんな苦しい思いをしているのかということは、なかなか反映されにくい。だから、判断者自体の中にピアとしての、つまり精神障害の方、あるいは自らが入院した体験を持っている方が本当は過半数含まれる必要があるだろうと思います。
ただ、判断機関があるだけでは、精神医療問題あるいは虐待問題の前提にあるのは、なかなか自発的、積極的に権利侵害を訴えられない、悲鳴を上げられないということがあります。だから、そこの権利侵害が起こっている現象の中にだれかが介入していくといいますか、立ち入っていく必要があって、つまり病院の中にアドボケートが日常的に自由に入っていけるという条件が必要。そのアドボケートというのも、例えば障害当事者の人と専門家である法律家、弁護士のような者がペアを組んで、どこでも自由に病院に立ち入ることができる。もし患者さんが訴えたいと言えば、すぐにそれを審査機関に結びつけることができる。そんなことまでできたら、恐らく虐待現象は相当減っていくだろうとは考えられます。
ただ、注意的に申し上げると、再三申し上げましたが、ベースとしての入院の在り方ということを変えないと、幾ら権利擁護機関をつくっても、もともと抜本的な解決にならないということがあるのではないかと思います。
それから、さんの御指摘で、社会的入院というのも、ある意味では虐待と言ってもいいわけですね。言わば自由を奪われる必要のない人、社会でほかの人と同じような人生を享受できるはずの人を特定の閉鎖的な施設に長期間閉じ込めておくということですから、これは虐待と言って差し支えないような話です。それをどうやって解決するのかというと、これは相当いろいろなシステムが必要です。恐らく、今までの精神保健福祉法というのは、ここでも議論があったかもしれませんけれども、保護者制度といって、同居の身内を中心とした家族集団が精神障害の人を支えていかなければいけないというシステムをベースにしてつくり上げられているわけです。つまり、精神保健福祉法という法律自体が、第一次的に精神障害のある人を支援する義務があるのは家族である保護者だよということになっているので、更にそこに輪をかけて、日本の広範な扶養義務者、あるいは扶養義務の責任の重さということも加わって、さっぱり社会的な支援ということに広がっていかないわけです。そういうところでしばしば悲惨な家族内での事件とか事故が起こったりすることがあるわけですね。
そういうことからすると、これもつまり、家族というものを完全に排除する必要はないかもしれないけれども、成人に達した精神障害の人を支援するシステムというのは、基本的には社会が共同で負うべきものであって、特定の家族に負担を課すべき問題ではないのだということが、まずベースになければならない。その上で必要なサービスというのは、十分な所得保障であったり、生活の場としての住む場を提供することであったり、あるいは福祉的なサービスですね。衣食住に関係するようなホームヘルプサービスで提供されるようなサービスが張り付いていることとか、あるいは医療との関係では、訪問看護みたいなものが積極的に行われて、自宅にいながら、1人での生活ができながら、いろいろな支援を組み合わせて生活ができていくということが恐らく必要になるのではないかと思います。
雑駁なモデルですけれども、お答えするとするとそんな感じかなということになります。
○ 藤井議長代理 関口さん、松井さん、順番に行きます。
まず、関口委員。
○ 関口委員 私も強制入院させられたときに、両腕に注射をされて、気がついて見たら、便所穴1つの保護室という状態です。同じ病院でもって、特段何をしたというわけでもないのに、いきなり看護師3人に飛びかかられて、そのまま保護室に引きずり込まれたという経験をしています。
いずれも、私に対してインフォームドコンセントはないんです。つまり、あなたをこういう理由で保護室に入れますよとか、あなたはこういう理由で入院ですよということはなかったわけです。これは基本的には、医療基本法の問題でもって解決していただきたい。つまり、医療を受けるというときに、原則任意入院であるならば、精神科の入院であろうと医療が必要なんだからということを最低事後的にでも説明していただかないと、最初、目が覚めたとき、私はここが刑務所なのか何なのかわかりませんでした。
次に、まさに足立政務官も言っていたことですけれども、精神保健福祉法があるから人権が守られているんだとか、医療観察法があるから人権が守られているんだ。裁判所があるから人権が守られているんだという倒錯した議論はやめてほしいです。少なくとも、精神保健福祉法に関しては、こころの健康政策推進会議の事務局長の西田さんという方も、人権保護に関してはざる法だということは完全に認めております。
ざる法だとするならば、先ほどの意見とも重なりますけれども、どうしたらいいかといったときに、我々当事者は、判断する側には回りたくありません。つまり、あなたは入院していなさいとか、あなたは出た方がいいよとか、仲間を裁くという立場には身を置きたくないんです。ただ、だけれども、我々は仲間として、仲間が言ってきたら、即座に寄り添って助けるということをしたいんですよ。そのための財源の措置。必要とあれば、私はそういう叫びを挙げた人に対して、国選弁護士というか、国費で弁護士費用を出すというぐらいのことをやってもいいと思っています。精神病院というのは、非常に拘禁度が高くて、虐待の起こりやすい場所です。現にほかの病院に私が入院していたときに、右足の小指から点滴をされました。医学的にはほかのやり方もあったと思うんですけれども、やられてみればわかりますが、拘束されて、右足の小指から点滴されると痛いです。ほとんど拷問です。数日間その状態が続きました。母親が心配して横で見ていました。こんなことを許しておいていいとは到底思えないんです。それを医療だと言って許せるということは信じ難い。ほかの方法があるはずだし、あるいは痛み止めを与えるということがあっていいはず。あれを経験しているから、私はどんな拷問にも耐えられると思っているんですけれども、痛みと意識の混濁があれして、本当にすごい拷問です。
こういう状態をぬけぬけと精神保健福祉法があるから、人権が守られているとかいうようなことを言うのは絶対にやめてほしい。これが公、厚生労働省が言って、厚生労働政務官が言っているわけですから、勘弁してほしい。冗談じゃない。
以上です。
○ 藤井議長代理 意見として伺います。後でもしコメントがあったら、池原さんから伺います。
では、松井さんどうぞ。
○ 松井委員 精神科特例に関係するのかもわかりませんが、一般の医療であれば、入院期間が長期になればなるほど医療費が削減されて、長期にならないようになっている。ところが、精神科の場合、それこそ何年経ってもそうした減額措置が講じられていないように思われるが、そこの理屈がどういうことなのかということが1つ。
それから、先ほど精神病院の中で搾取があるということですけれども、もともと精神科においても作業療法ということで、かなり前から積極的に取り入れてやっているところはあると思います。その一方で病院の中で人手が足りないために、それを補うための労働力として入院患者が使われているという実態があるのでしょうか。作業療法というのは、当然医療の一環ですから、診療報酬が出るはずなんですね。もし作業療法と称して、実際には労働に従事させて、マンパワー不足を補っているとすると、これはまさに搾取なんですね。そこをチェックすることはできないのかという点が1つです。
○ 藤井議長代理 長期入院になった場合に、普通一般診療課目の場合には、どんどん医療経営上、医療経済上、それができなくなる仕組みがある。しかし、精神科は長期でもそれが続けられるというのはどういうことなのかということですね。それは院内作業と称して搾取が行われている実態を防止する仕組みはできないのか、実態はどうなのかということなんですが、関口さんの意見と松井さんの御質問に簡単にお答えいただけますか。
○ 池原氏 さすがに難しい御質問が多くて大変ですけれども、まず、関口さんの裁く側に回りたくないというのは、非常によくわかります。ですので、考えてみると、先ほど余り裁判所的なイメージで考えるよりも、お互いに共同して問題を解決していくような、ここでも議論が出たかもしれませんけれども、支援を受けた自己決定の自己決定支援の一環として何かピアの方が関われるといいかなと思います。つまり、例えば入院そのものが結果的には必要な現象があったとしても、そのことを御本人が了解できるような、お互いにどこに問題があって、どうしたらいいのかということを同じ歩調でピアの方々が考えていただいて、あるいは入院ではない方法がその中で選択できるかもしれないし、ある程度納得して、今は一週間ちょっと病院で休もうかなという選択になることもあるかもしれない。そのような関わりができるといいのかもしれません。
だから、精神医療審査会の中に当事者を半分入れろとかという単純な主張にはしない方がいいのかなと教えていただいたように思います。
松井先生の御質問ですけれども、これは私自身が十分な知識を持っていないので、正確なお答えにならないかもしれませんが、1つは、医療費が余り長期化しても減らないという前提には、例えばかつては結核の療養であったり、あるいは精神障害そのものも、言わば慢性疾患としてとらえられていて、基本的には長期継続的な療養が必要であるという認識があって、したがって、一定期間治療が終われば、標準的に例えば3か月で出られるはずだとかという設定がなかなかされにくいということが背景にあるのではないかと思います。
厚生労働省の認識として、恐らく慢性疾患的な類型として理解しているのかなと思います。これはある種の想像ですので、正確なお答えとは言えないかもしれませんが、そんなふうに考えると理解できるかと思います。
作業療法については、どちらかというと事件化しているのは、作業療法というよりは、作業療法と称して、例えばレントゲン技師の資格がないのにレントゲンを撮らせていたりとか、あるいは勿論看護師とか准看護師の資格がないのに看護師の仕事をさせていたりとかいう状況が最も典型的なもので、これともともと明らかに違法な搾取ということになるだろうと思います。
私自身が聞いて、若干微妙だなと思ったのは、例えば園芸とか農耕を作業療法としてさせる。そうすると、そこから収穫物があるわけですけれども、収穫物を売れば当然お金になる。では、そのお金はだれのものになるのかということになると、病院によっては、例えば売れたお金をためてレク費としてみんなで使いましょうというやり方をしてみたり、あるいは個々の患者さんに還元したり、あるいはどこに入っていってしまったのかわからないようなお金になるということがあって、最後の事例は明らかな搾取になると思うんですね。言わば病院側の収益に回されてしまうということだと思います。
レク費に充てるというのは、搾取なのかどうかというのは、若干微妙かもしれませんが、基本は恐らく労働の対価として、成果物については適正なお金が本人に払われるということが必要なのではないかと思うんですけれども、どうもそこがあくまでもリハビリテーションとしてやっているので、労働ではないからお金は払いませんという逆の説明のされ方がして、あいまい化しているというのが問題なんだろうと思うんです。
ですから、もしそこを虐待的に定義するとすれば、やはり一定の成果物については本人に還元されなければならないとか、何か基準は設定する必要があるのかなと思いますが、今すぐにどういう基準がいいかということは申し上げにくいかなと思います。
○ 藤井議長代理 それでは、まだ本当はあろうかと思うんですが、時間がないので、黒岩さんへの質問をしたい方は挙手をお願いできますか。
では、中西さん、大谷さん、土本さんの順番で発言をいただきます。
中西委員、お願いします。
○ 中西委員 中西由起子です。お話ありがとうございました。
対策として幾つか書かれています。この中でやはり先ほどの池原さんのお話からも出たような当事者の参加に関して言えば、例えば聞き取りのスキルとか発見とか、予防に関しての教育とかで、学校の例が幾つか出ていますが、出向くとか、そこで一緒に参加するということが可能な方策の1つとしてあるので、今後何かお話になるときに、当事者の参加も強調していただけたらと思います。
ただ、予防に関しては、現在の特別支援教育というような閉ざされた部屋の中で行われているので、弱い者に対して特定の少人数だけを対象に行うということは、犯罪につながりやすいです。やはり根本的にはインクルーシブ教育の方向でいけば、この防止にかなり役立つのではないかと考えています。
現実に、障害当事者の人たちは、周りの環境が限られているがために、自分で声を発するということがなかなかないので、そういう意味からは、当事者のモデルの人たちがこういうふうに自分の主張を訴えていくという形での教育が重要だと思います。
以上です。
○ 藤井議長代理 それでは、大谷さんどうぞ。
○ 大谷委員 大谷です。予防のところで伺いたいのですが、私はもう20年も前に、大分で訪問教育で女児のわいせつ被害の事件に関わったことがあります。いまだにこのようなケースが後を絶たないのかということに、暗澹たる気持ちで聞いていたのですが、密室のない相互監視体制、特に特別支援学校、あるいは訪問教育ということで、家庭における教育も学校教育の一環として行われているということもある。それを具体的にどのように相互監視していくのかということを黒岩さんがお考えになっているのか、もう一回聞かせていただきたい。
併せて、市区町村に対しても、文科省によるチェックを及ぼして、ナショナル・ミニマムの維持とおっしゃられているんですけれども、具体的にどのようなイメージなのか。
それから、救済も、転校、その他の措置として、被害者が望む場合に限ると括弧内に記載されていますが、被害者を転校させる場合に、特別支援学校と普通学校との間の転校というのは、かなり難しいですが、そういうことも含めて、どのような救済を考えておられるのかも含めて御意見を伺いたいと思いました。
以上です。
○ 藤井議長代理 3点質問が出てまいりました。
それでは、土本さんまで行きましょうか。土本さん、御発言をお願いします。
○ 土本委員 幼児教育というか、障害と言われている者ですけれども、やはりぬるいのではないかということです。やはり監視だけではなくて、厳しく法律で罰するべきではないかと思います。幾ら転校されても、自分たちが受けた傷とかは、拭えない、取れないし、その場を変えただけでは済まされない問題ではないかと思います。やはりそういう実例が出ているのに、そんな簡単なものではないということで、ちゃんと法律で罰するべきではないかと思います。
以上です。
○ 藤井議長代理 では、黒岩さん、今のお三方へのお答え、コメントをいただけますか。
○ 黒岩氏 ありがとうございます。まず、当事者参加というのは、本当におっしゃるとおり重要だと思います。時間がなくて全然お話できなかったんですけれども、本当におっしゃるとおり、障害のあるお子さんと家族が被害を訴える、声を挙げるというのは非常にしにくい状況があります。ですので、この方たちが一言で言ったら、エンパワーメントですね。声を挙げてもいいんだよという教育は非常に重要だと思っています。
大谷先生の御質問とも重なるんですけれども、どうしても密室を全くつくらないということができないんですね。恐らくインクルーシブ教育になっても、今、いろんな発達障害、いろんな個別の障害が出てきていて、発達障害でもディスレクシアとか読み書きの障害があるとか、自閉症とか、高機能の個別指導というのも重要になってくるので、この件でも被害児童と担任が最後の方は毎日ほとんど個別指導だったんですね。完全密室の中でこの教師と毎日過ごしていたという状況があるので、そこに及ぼす監視の目というのは、いろんな制度が考えられるものの、その制度の目をくぐることができちゃうと思うんです。そうしたら、やはりその子どもにいろんな意味での性教育ですね。あなたのこういうところの体を触られたら、それは嫌なことだと言っていいし、すぐにお母さんとか先生に言ってねということをきちんとわかるように教えれば、本人が声を挙げるし、本人が声を挙げたときに最初に受け止めるのは家族である場合が多いです。この家族が、特に性被害の場合はそれを受け止められないんですね。やはりそんなことはあってほしくないし、なかったことにしたい。あなた何を言っているの、あなたが何か悪いことしたのではないの、気のせいではないのと葬り去られる例は非常に多いようですので、そういった当事者のエンパワーメントにおいて、当事者参加という形の教育システムというのは、非常に重要だろうと思っています。
あと、大谷先生の件で、相互監視体制というのは、例えば虐待というのは、起きないことが一番大事だと思いますし、起きてしまったら、特に性被害というのは、魂の殺人と言われるんですけれども、サバイバーの人の話を聞けば、絶対に被害を受ける前の状態に戻れないと言いますね。だから、起きないことが一番大事だとは思っております。
虐待に行く前に、よく施設虐待の例でも言われますが、兆候があるんですね。その兆候をチェックしていく。学校では、勿論学校関係者。それから何らかの形で医療機関にかかる場合が多いわけなので、今、障害の有無にかかわらず、児童虐待に関しては、こういう骨折の仕方をしているときに揺すぶって起きた骨折だとか、児童虐待の被害の類型が医学的にも認知をされていて、全部とは言いませんけれども、医療機関にかなり周知されてきている。こういう障害者虐待の医学的な研究というのも進めてほしいなと思っているんですが、虐待の第一発見者になりやすい人が、障害ということと、障害者の受けやすい虐待の類型というものをよく知っていることが重要なのではないかと思っています。
それから、先ほどは説明できなかったんですけれども、虐待とか事件というと、それを申告するのに躊躇があるんですが、もうちょっと事故とか、あるいは不適切対応という方が申告しやすかったりしますね。当事者もそうですし、ここに挙げる事故報告とかですね。事故報告の段階で徹底させる。浦安事件でも、事故報告が全然ちゃんとなっていないんですね。
それから、○○学園という施設虐待の事件もやったことがあるんですけれども、相当ひどいけがをしていたり、たばこの火で押し付けられたけがとかもあるんですが、事故報告もそもそもされていない。その事故報告の段階から、しっかり兆候をキャッチするとか、そういう前段階、兆候からキャッチする体制をつくるというのが予防策の中での重要な点ではないかなとひとつ思っています。
それから、ナショナル・ミニマムというところは、わかりにくかったと思うんですけれども、言いたかったのは、市区町村立の小中学校について、その対策が市区町村に任されている結果、何も対策がされていないという現状がありますので、これに対してどうやってレベルの底上げができるのかと考えて、文科省と書いたところに大谷先生が引っかかられるのではないかと後から思ったんですけれども、何らかの国家機関、国家レベルの最低レベルというものをきっちりつくって、市区町村にお任せではなく、これに関しては地方分権ではなく、しっかり国家で最低レベルというのを築き上げるという対策が必要ではないかという意識で書いています。
転校、その他の措置というのは、非常によくあるセクハラ、いじめの対策として、被害者をその場所からどかすんですね。これは原則的にはあってはならないことだと思っています。加害者がそこからどかされるべきです。ただし、被害者がこの教室に入りたくない、この学校に行きたくないんだという場合に転校を認める必要があると思いまして、あえてこの被害者が望む場合に限るという括弧付きで書きました。
特別支援学校から普通学校への転校が難しいという御指摘には、済みません、私は詳しくないんですけれども、インクルーシブ教育を目指すということで、この推進会議で議論をなされている以上、体罰やわいせつを理由に特別支援学校から普通学校への転校の希望があったら、当然それはされるべきことだと思っております。済みません、お答えになっていないかもしれません。
それから、土本さんの監視だけではなく、罰するべきという議論は、本当のそのとおりだと思っています。先ほど説明で割愛したのは、この加害者は逮捕されましたら、家宅捜索で児童ポルノが多数押収されました。インターネット上、児童ポルノをダウンロードしてはCD-ROMに納めていたというものが出てきていて、そこに出てきている少女を襲ったり、わいせつ行為をするのと同じ形のことを実際の児童にやっているんですよ。ちょうどこの裁判をやっているころ、児童ポルノの所持というのは、まだ犯罪になっていませんでした。それを犯罪化する法案などの議論まではあったんですね。でも、個人的には本当にそれを犯罪にしてほしいとこの事件を通して思ったんですけれども、そこまでは仮に難しくても、この判決では、刑事でも民事でも、この加害教師に幼児性愛傾向があるということは完全に認定されているんですね。この言葉についても議論があるんですけれども、よく小児性愛とか言われるあれですが、子どもに性欲が向くという傾向がある。児童ポルノを家で持っていた。そういう人に関しては、刑法上の罰が不可能であっても、教員免許をはく奪してほしいんですね。
個人的な見解で申し訳ないんですけれども、アメリカなどでは、かつて子どもに性的な犯罪行為をしたような人というのは、今後子どもに関わる職に就かないようにという対策があるそうですので、制度としてはあり得ない話ではないと思っています。
○ 藤井議長代理 もう時間がオーバーしています。
私の方から最後に、さきの国会で成立を見なかった障害者虐待防止法、恐らく早晩また法案が出ると思うんです。したがって、池原弁護士、黒岩弁護士から、最後になりますけれども、さきの障害者虐待防止法のどこに問題があって、また出てくるであろう今度の法案は、何を付与すべきなのか。この辺を簡単にコメントをいただいて、終わろうと思います。
では、池原弁護士からお願いできますか。
○ 池原氏 ありがとうございます。
私は、特に精神科病院との関係でいうと、大前提としての虐待が発生しやすい状況とか構造を変えるというところをもう少し、これは虐待防止法そのものでやるべきかどうかはわからないんですけれども、手を入れなければいけないだろうということ。
それから、先ほど来出ています、言わばモニタリングのシステムを当事者参加ができるような形できっちりとつくり上げるということが非常に重要だろうと思います。
それから、ちょっとだけ気になったことを申し上げますと、私は虐待を刑事罰化するということには反対ではないんですけれども、注意をしなければいけないのは、もう議論されているかもしれませんが、刑事罰を与えるというときの構成要件の明確性といって、ある程度虐待のコンセプトを区切らなくてはいけなくなるわけです。だから、かなりフォーカスを当てた虐待だけが刑事罰の対象になるということになる可能性があります。だけれども、虐待が象徴している権利侵害というのは、かなり裾野の広いものなので、もうちょっと別の言い方をすると、起こった虐待とか、起こり得る虐待に対する対策の在り方等との対応で、虐待の概念の広さ、狭さというのを決めていく必要があると思います。刑事罰の対象になるような虐待は、非常に強度のきっちりした概念に基づく虐待である必要があるけれども、損害賠償とか資格はく奪だとか、あるいは事前の防止だとかというのは、もうちょっと裾野の広い、ぼやっとした虐待の概念でもいいのかもしれません。そこをある程度二重の基準みたいにしておいた方がいいのではないかなと思いました。
○ 藤井議長代理 では同じく、黒岩さんからお願いできますか。
○ 黒岩氏 まず、虐待全般にわたることとして、本当は今日も強調してお話したかったのは、やはり立証の困難は常に障害者虐待にまとわりつくので、これを克服するための対策について、もっともっと議論をしていただきたいなと思っています。
それから、特に学校に関しては、やはり児童虐待防止法が既にありますので、子どもについては、児童の方で一括してという議論はきっとあるんですけれども、やはり今回改めて自分自身が調べて思ったのは、障害ということに特化した、専門性のある機関が絶対必要だと思います。障害当事者、家族は、やはり障害についてわかってくれている人かな、この人はとよく見てから相談を持っていきます。だから、この調査にあるように、教育委員会も児童相談所も障害福祉課も全然頼りにされていない実態が現にあるわけです。ですので、仮に既存の機関を使うとしても、専門性のある専門部署をつくることは絶対に必要ではないかと思っています。
以上です。
○ 藤井議長代理 権利侵害の最も凝縮系の1つである虐待は、やはりこの会議体では、ここら辺を解決しないと、一体何の会議体かとなりますので、やはり今後ともこの点については重視をしておく。物事を主張できない人、主張しづらい人に集積化しているというのは、問題の根源であるわけですから、引き続きまた検討していきたいと思っております。
では、お二方の拍手を送って終わります。どうもありがとうございました。(拍手)
少し時間をオーバーしているんですが、ちょっと短縮して、15時半まで休憩して、再開いたします。
では、休憩に入ります。
(休憩)
○ 藤井議長代理 それでは、再開します。10分遅れで第3コーナーが始まります。このコーナーは、障害児に関することなんですが、児童の権利に関する条約に基づき日本から提案された報告の審査について情報提供いただきます。情報提供者は、平野裕二さんでございます。それでは、平野さん、15分間ほどでございますが、まず冒頭発言をお願いいたします。
○ 平野氏 御紹介いただきました、平野裕二でございます。今日は、子どもの権利条約NGOレポート連絡会議という肩書で来ておりますけれども、この20年来、子どもの権利条約の普及促進活動、とりわけ子どもの権利条約がそれぞれの国できちんと実施されているかどうかをチェックするために、子どもの権利委員会という委員会が設けられておりますけれども、その委員会の活動を主としてフォローしてまいりました。
お手元に、資料4といたしまして「児童の権利に関する条約に基づき日本から提出された報告の審査について」という資料があります。表紙をめくっていただきますと「障害のある子どもに関する国連・子どもの権利委員会の勧告」という資料がございますので、まずはこれにのっとって簡単にお話をしてまいります。
御承知のとおり、子どもの権利条約を批准している国は、子どもの権利委員会という委員会に対しまして定期的に報告書を提出しなければいけないことになっております。最初の報告書は、批准してから2年以内、その後の報告書は5年ごととなっております。これは障害者権利条約についても、同じような報告制度が設けられておりますけれども、この報告制度に基づきまして子どもの権利委員会は活動しております。
子どもの権利条約におきましては、まず第2条、これは差別の禁止に関する規定でありますけれども、そこで障害に基づく子どもに対する差別が禁止されております。
第23条におきまして、障害のある子どもの権利についての独立の条項が置かれております。
主として、以上申し上げました2つの条文、そのほかにも幾つか関連する条文がありますけれども、それらの条文に基づきまして子どもの権利委員会は障害のある子どもの権利についても審査の中で取り上げてきております。
日本は、これまで3回、この子どもの権利委員会の審査を受けてまいりました。直近の審査が、つい先般、5月27日、28日にかけて行われましたけれども、その都度障害のある子どもの権利保障に関する勧告が出されております。
お手元の資料の資料1といいますのが、これまでの1回目、2回目、3回目の審査におきまして、障害児についてどのような勧告が委員会から出されてきたかということをまとめたものでございます。
まず第1回目の方から見てまいりますけれども、第1回目の総括所見、これは外務省などは最終見解と訳しておりますけれども、私どもでは総括所見と表現しております。これは同じものです。
この1回目の審査が終わった後に、1998年、第1回目の委員会の勧告が採択されました。そこでは、まずデータの問題です。障害のある子どもについてのデータというのが、必ずしも十分に収集されていないという指摘が、パラグラフの9でありますけれども行われております。
パラグラフ13、14におきましては、障害のある子どもに対する差別の問題。特にパラグラフ14におきましては、法律で出生、言語、障害との関わりで条約が掲げるすべての事由に基づく差別から子どもが保護されていない、法律上、差別から保護されていないという勧告が出されています。
パラグラフ20、41におきまして、障害のある子どもに関する全般的な勧告が行われております。20でありますけれども、こうした障害のある子どもが教育に効果的にアクセスすることを確保し、その社会への全面的インクルージョンを促進するために締約国、日本が取った措置が不十分である。このような懸念を表明いたしまして、それに対応する勧告でありますけれども、パラグラフ41で、特に最後の2行のところです、障害を持った子どもに対する差別を減らし、彼らの社会へのインクルージョンを奨励するための意識啓発キャンペーンを構想しなさいという勧告が行われているわけです。
2回目の審査が2004年に行われまして、そこでも障害のある子どもについての勧告が幾つか出されております。引き続き差別の問題について、パラグラフ24、25におきまして、障害のあることに対する社会的差別が依然として根強く残っている、そのような差別をなくしていくために、特に教育と意識啓発キャンペーンを通じて、あらゆる人への積極的措置を取るべきであるという勧告が行われています。
障害のある子どもにつきましては、パラグラフ43、44で指摘が行われておりますけれども、44におきましては、具体的に(a)(b)(c)の3つの勧告が行われております。
(a)は、障害児に影響を及ぼすあらゆる政策を国際基準に照らして見直しなさい、なおかつ、障害児自身、関連のNGOと連携しながら見直しなさいという、政策の再検討に関する勧告が行われております。
(b)は、教育、レクリエーション、文化的活動への障害児の一層の統合を促進しなさい。このように、障害のある子どもの統合、特に教育やレクリエーション、文化的活動における統合が促されております。教育につきましては、子どもの権利条約では28条、29条で規定されておりますけれども、それと同時に31条におきましてレクリエーション、文化的活動についての子どもの権利が定められておりますので、これはそのような条文を念頭に置いた勧告であります。
(c)といたしまして、障害児のための特別な教育及びサービスに配分される人的、財政的資源を増やすことという勧告が行われております。ここで、障害児のための特別な教育及びサービスという表現が用いられておりますけれども、これは委員会の一般的な見解に照らして、それからその直前の(b)の勧告に照らしても、障害児の統合、インクルージョンを前提とした特別な教育、サービスということでありまして、決して障害のある子どもを隔離して特別な対応をしなさいというふうに求めているわけではないと理解するのが適当であろうかと思います。
第2回目の審査におきましては、以上のような勧告が子どもの権利委員会から行われました。
そして、いよいよ今年5月27日~28日にかけて行われた第3回目の審査でありますけれども、まずデータ収集について、第1回目と同様に指摘が行われています。パラグラフ21でありますけれども、特に障害のある子どもの就学率等に関するデータというのが、日本には存在しないのではないかという指摘が行われています。
差別の禁止につきましても、1回目、2回目の審査と同様に、引き続き障害児に対する社会的差別が根強く残っているのではないかと指摘されました。なおかつ、今回は、パラグラフ34の(a)におきまして、包括的な反差別法を制定しなさいという新たな勧告も行われております。
2回目の審査のときには、例えば婚外子差別に関わる法律を廃止しなさいという勧告が行われておりましたけれども、今回のような形で反差別法、包括的な差別禁止法を制定するように、子どもの権利委員会が求めたのは今回が初めてであります。従来よりも差別に対するより強力な対応が求められたといってよかろうかと思います。
(b)におきましては、現実に起きている差別をなくしていくための意識啓発キャンペーン、それから人権教育、このような対応を取るように求められております。
その次に、障害のある子どもについての全般的な勧告が行われておりますけれども、これがパラグラフ58、59になります。今からごらんいただければおわかりいただけるかと思いますけれども、1回目の審査、2回目の審査のときと比べて、相当に詳しい、なおかつ、具体的な内容になっていることが御理解いただけようかと思います。
まず58のところで、障害の権利保障の状況に関する委員会の見解が示されているわけですけれども、日本がこれまで障害児を支援するために取ってきた措置、学校における交流学習を含む社会参加の促進のための措置、こうした取組みにつきましては、留意する形で一定の評価をされております。ただ、にもかかわらず、根深い差別が今でも存在している。それから、障害のある子どものための措置が注意深く監視されていない。このようなことについて懸念が表明をされております。
更には、必要な設備、便益を用意するための政治的意思と財源が欠けていることによって、障害児による教育へのアクセスが引き続き制約されている。このような懸念が表明されているわけです。財源と同時に政治的意思という言葉が用いられていることに御注意願えればと思いますけれども、要するに日本政府として障害のある子どもの教育、とりわけ障害児を対象としたインクルーシブな教育を進めていこうという政治的意思が希薄なのではないか、このような委員会の見解が言外に含まれていると考えてよかろうかと思います。
こうした認識を踏まえまして、パラグラフ59で、(a)~(i)まで9項目にわたる勧告が行われております。
(a)は法改正、それから、障害のある子どもの権利保障に関する監視システムの確立に関わる勧告であります。要するに、日本政府からは第3回報告書等におきましても、例えば障害児の養護学校、養護学級への就学数等についてのデータはこれまでも提出されておりましたけれども、例えば普通学級に自らの意思で通っている障害のある子どもについて、必ずしも日本政府がきちんとしたフォローアップをしていないのではないかという認識が、こうした勧告が行われた背景にございます。
(b)ですけれども、これはコミュニティーを基盤とするサービスを提供するべきであるという勧告です。とりわけ障害のある子どものインクルージョンと参加を確保することに焦点を当てた、コミュニティーを基盤とするサービスを提供していきなさいと。
(c)ですけれども、ここでは引き続き障害のある子どもに対する差別をなくしていくための取組みが勧告されております。
更に2行目でありますけれども、障害児の社会へのインクルージョンを奨励すること。
そして3点目、意見を聞かれる子ども及びその親の権利の尊重を促進することを目的とした意識啓発キャンペーンを実施しなさい、と。意識啓発キャンペーンにつきましては、これまでも特に障害児に対する差別の解消という観点から勧告が行われておりますけれども、ここの(c)におきましては、特に子どもが意見を聞かれる権利、子どもと親が意見を聞かれる権利についても意識啓発キャンペーンが求められております。これは、子どもの権利条約の12条を前提とした勧告です。
ここでは、意見を聞かれる子ども及びその親の権利と書かれておりますけれども、子どもの権利条約の12条と申しますのは、意見を聞くと同時に、その子どもが表明した意見を正当に尊重しなさい、そのような義務を課した条文であることに注意していただければと思います。したがいましてここでは、意見を聞かれる子ども及びその親の権利といいますのは、言い換えれば障害のある子どもとその親が表明した意見を正当に尊重される権利も含まれると理解していただければと思います。
(d)は資源配分の問題です。障害児のためのプログラムやサービスに対して、十分な人的資源と財源を提供するために、あらゆる努力を行いなさい、と。
(e)におきまして、教育に関する勧告が行われておりますけれども、これもこれまでの1回目、2回目の審査のときの勧告よりも一層具体的なものになっております。
1つには、障害のある子どものインクルーシブ教育のために必要な便益を学校に備えなさい、と。言い換えれば、学校の受け入れ体制が整っていない、少なくとも物理的な受け入れ体制が整っていないという理由で障害のある子どもを普通学校に受け入れないということは、基本的には認められないと委員会は言っているわけです。そのようなインクルーシブ教育のための体制を整えるとともに、障害児が希望する学校を選択する。あるいはその障害児の最善の利益に従って普通学校と特別支援学校との間で移行できることを確保すること。インクルーシブ教育を前提としながら、子どもの最善の利益に応じて普通学校と特別支援学校との間の行き来をより容易にできるようにしなさいという勧告も行われております。
(f)は、NGOに対する支援です。
(g)は、障害のある子どもに関わっている専門的な職員に対する研修を強化しなさい、と。
(h)と(i)は、障害のある子どもの権利に関わる国際文書について。
(h)におきましては、基準規則と障害のある子どもの権利に関する子どもの権利委員会の一般的意見9号を考慮しなさいという勧告が行われております。この一般的意見9号につきましては、お手元の資料の5ページ以降に含まれておりますので、後ほど御参照いただければと思います。
(i)は、障害者権利条約の批准、既に署名はしておりますので、それを批准しなさいという勧告であります。
今回の3回目の審査におきましては、もう一点、子どもたちのメンタルヘルスの問題に若干焦点が当てられまして、その過程で注意欠陥多動性障害、いわゆるADHDの問題についても指摘が行われております。パラグラフ60の最後の方でありますけれども、このADHDというのが主として薬物によって治療されるべき生理的障害とみなされていて、社会的な決定要因が正当に考慮されていないのではないか。言い換えればADHDというのは、そういう薬物によって治療される病気という側面と同時に、社会的背景によって生じてきているところもあるのではないかという委員会の理解がここに反映されております。パラグラフ61におきましては、そういう認識を前提といたしまして、ADHDの診断数の推移を監視しなさい、と。これは3~5行目です。更には、ADHDに関する調査研究が製薬産業とは独立に実施されることを確保するようにという勧告も行われております。
以上のように、1回目、2回目の審査のときと比べると、非常に詳細かつ具体的な勧告が行われているわけです。こうした勧告が行われる背景となりました、審査のときのやりとりにつきましては、お手元の資料の4ページ目に紹介しております。実際の審査の場では、時間が非常に限られていたこともありまして、それほど詳細な議論は、障害のある子どもの権利については行われておりませんけれども、その他委員会の手元にある情報などを踏まえて、以上のような勧告が出されたということでございます。
これらの勧告でありますけれども、厳密な意味での法的な拘束力はございません。裁判所の判決のようなものではありませんので、子どもの権利委員会がこのように言っているから、それはすべて守らなければいけないかといいますと、そういう性質のものではございません。ただし、子どもの権利委員会というのは、子どもの権利条約の実施状況を監視するために設けられております専門機関でございますので、その見解は相応の権威を持って受け取る必要があります。したがいまして、この委員会の勧告を誠実に検討した上で、実現するべき点については実現をしていく。実現できないと政府が考えるのであれば、なぜ実現できないのかという理由をきちんと委員会に対して明らかにする。このような対応が必要になりますので、今後この子どもの権利委員会の勧告をどのように受け止めるかということにつきまして、政府、NGO等で議論していく必要があろうかと思います。この勧告の実施状況につきましては、この次の報告書、提出期限が2016年、6年後の5月21日ということになっておりますけれども、そこにこれらの勧告をどのように受け止め、どのように実施してきたのかということについて報告をすることが求められている次第でございます。
ちょっと時間をオーバーいたしましたけれども、以上をもって報告とさせていただきます。
○ 藤井議長代理 障害児に関しては、大変大事なことだし、また障害者権利条約の我が国での批准がいずれそう遠くない時期にと考えられますが、これとも関係がある話なので、大変興味深く聞かせていただきました。
まず討論に入る前に事実関係を伺っておきたいんですが、平野さん、日本政府が提出した日付、何月何日に提出をして、審査がいつ行われて、勧告がいつ返ってきたのか、もし今わかれば教えていただけますか。
○ 平野氏 これも資料として提出しておけばよかったんですが、報告書が提出されましたのが2008年、2年前の4月28日でございます。審査が行われたのが、今年、2010年5月27日、28日です。それ以前に追加情報という形で、今年の4月でありますけれども、日本政府から追加の、委員会から提出されました事前質問表というものが2月に日本政府に対して送られておりますけれども、それに対する文書回答が4月に提出されております。それで審査が5月27日、28日に行われたと。勧告が採択、公表されましたのが今年の6月11日でございます。
○ 藤井議長代理 では、以上のようなことを踏まえて、質問、意見がございましたら、挙手してほしいんですが、いかがでしょうか。
今度は、尾上さん、中西さん、松井さんの順番でいきます。
尾上さん、よろしくどうぞ。
○ 尾上委員 詳細な報告をいただき、ありがとうございました。尾上です。過去3回の経過を見まして、今回の分が障害のある子どもに関する記述が非常に分量的にも多いし、かつ、中身に立ち入ったかなり詳細なものになっていると感想を持ちました。その点について、これまで子どもの権利条約に関わってこられた立場から、なぜ今回これほど詳細になっているのかということをお聞きしたいのが1点です。
もう一点は、特に今回出されている意見、先ほどの政治的な意思ということとも関係してですけれども、特に(c)項や(e)項では、子ども及びその親の意見を聞かれる権利を正当に尊重するという、御存じのとおり2007年の法律改正で、意見を聞くということは法律上書かれているんですが、必ずしも正当に尊重されるようにはなってないんです。その点も含めて、この項目は非常に大きい意味があると思いますのと、それとともに(e)項ですけれども、障害のある子どものインクルーシブ教育のために必要な便益を学校に備えるとともに、障害のある子どもが希望する学校を選択できるようにするということで、まさに私ども第一次意見書で障害の有無にかかわらず、すべての子どもは地域の小中学校に就学し、かつ、通常の学級に在籍することを原則とし、加えて本人、保護者が望む場合やろう者等の場合、特別支援学校を選べるというように、権利条約上からもこういった仕組みに変えていくことが、インクルーシブ教育という点から必要ではないか。
それが、私ども推進会議の問題認識なんですけれども、この子どもの権利条約で言われている(e)項の障害のある子どものインクルーシブ教育のために必要な便益を備える。そのインクルーシブ教育というものの中身ですね。私どもの推進会議の理解と同じと考えていいかどうか。その点をもう少しお聞かせ願えればと思います。
以上2点です。
○ 藤井議長代理 障害児分野が多く盛り込まれた背景は何かありますかということと、このインクルーシブのとらえ方ですね。
後で一括してお答えいただきますので、中西委員、お願いします。
○ 中西委員 平野さんに、すごく素晴らしい働きをしてなさったということを、ジュネーブの関係者から聞いて、まずお礼を申し上げたいと思います。特に障害者の権利に関して、今回すごく大きなインパクトがあったということを聞きましたが、報告を拝見して、ジュネーブの方たちの言っていらっしゃる意味がよくわかりました。このような勧告は、今、法的な拘束力がないとおっしゃっていられましたが、しかし、こういうものが公に何回も何回も出ることによって、これが外圧となり、プレッシャーとなって、国内の運動の力となることはたしかであると考えています。
今回、ジュネーブの権利関係の方たちが障害分野でのロビーングはうまくいったということの背景は何があったのかちょっと知りたいし、今後、権利条約が採択されたときの活動の参考になると思うので、それをお聞かせていただきたいと思います。
○ 藤井議長代理 松井委員、どうぞ。
○ 松井委員 松井でございます。ありがとうございます。通常、政府からの報告に加えて、シャドーレポートというか、NGOからもレポートを出すことになっていますね。日本のNGOとしてもシャドーレポートは定期的にきちんと出されているのかどうかについて伺いたい。
それから、政府から報告を出す前にNGOとの協議の場はあるのかどうか、そこも教えていただきたいと思います。
障害者権利委員会の場合は、批准国が80か国になったので18名で構成されることになりますけれども、子どもの権利委員会の場合の構成メンバーは何人ぐらいから成っていて、これは日本から委員に立候補するなり、委員に入れる働きかけは行われているのかどうか、そこも併せて教えていただきたいと思います。
○ 藤井議長代理 それでは、平野さん、お願いします。
○ 平野氏 御質問ありがとうございます。御質問の順番にというよりも、これまでの経緯を踏まえまして、少し時系列でお答えをしたいと思います。
まず、報告書の作成過程です。松井さんからの御質問でございますけれども、政府が報告書を提出する前にNGOと意見交換を持つ機会があったかということでございますけれども、これは意見交換の機会はありました。ずっとこの子どもの権利条約の問題に取り組んできた、主だった団体が2つの、いわゆるNGO連合、あるいはNGOの協議体のようなものを作成しております。その1つが私が所属している子どもの権利条約NGOレポート連絡会議でありますけれども、その2つのNGO連合体、それから、日本弁護士連合会、その3団体との意見交換会が2回行われました。
そのほかに、一般からの意見募集、それを踏まえての意見交換会がやはり2回行われております。子どもの権利条約の第3回目の報告書の作成過程で、計4回の意見交換会が行われております。
ただ、そこで出されたNGOからの意見というのが最終的に政府が提出しました報告書に十分に反映されているかといいますと、これは否定的に答えざるを得ない。少なくとも私どもの目からするとNGOの提言、意見はほとんど反映されていない報告書の内容になっております。
ちょっと余談になるかもしれませんけれども、このところ子どもの権利条約に限らず、そのほかの人権条約につきましても、いわゆる保守派というのが適当かどうかわかりませんけれども、こういう人権という問題について非常に批判的な勢力が存在いたします。そういう人たちが、そういう意見交換会の場に押しかけてきて、少々議論を混乱させるという状況も生じてきておりますので、今後、政府と市民との意見交換会をどのように持っていくことが適切なのかということについては、今後も検討していかなければならないだろうと思っております。
それから、シャドーレポートを出しているかという松井さんの御質問でございますけれども、出しております。シャドーレポートと言ったり、オルタナティブレポートと言ったり、カウンターレポートと言ったり、私どもは比較的中立的なニュアンスということで、NGOレポートと表現しておりますけれども、政府と異なる見解から日本の子どもたちの実態を委員会に伝える、このような取組みは、先ほど申し上げました3つの団体を中心として、1回目、2回目、3回目、いずれの場合にも行われております。
先ほど申し上げました3つの団体は、いずれも特定の分野に偏るのではなくて、子どもの権利条約でカバーされている主だった領域を総合的に網羅して、それぞれの権利がどの程度保障されているかということを検証して、それを国内で共有した上で子どもの権利委員会に提出する。その辺りを意識しながら取組みを行ってきておりますけれども、そのような情報は子どもの権利委員会には提出されております。委員会もそのような情報をかなり活用しながら審査を行っているということを申し上げます。
そのようなNGOから提出された情報を基にして、委員会というのは審査を行うわけですけれども、今回、第3回目の審査におきましては、中西さんからも御説明いただきましたように、障害のある子どもの権利保障のために取り組んでいる当事者団体が実際にジュネーブに行きまして、ロビイングを行っております。具体的には、障害児を普通学校へ・全国連絡会の関係の方たちが4人ジュネーブに行きました。
今回、特筆すべきなのは、障害のある子ども、大阪の定時制高校に通っている重度障害の女の子ですけれども、その子が車いすでジュネーブに行って、非常に熱心に傍聴し、なおかつ、委員会に対する働きかけも大変活発に行っていた。恐らくそのようなこともあって、尾上さんからの御質問と関連いたしますけれども、今回のような非常に詳細な勧告が出されることになったのではないかと考えております。
今までの1回目、2回目の審査で出してきた勧告が、必ずしも日本政府によって十分に受け止められて来なかった、十分に実施されて来なかったということに対する委員会の反応という見方もできますけれども、直接のきっかけとしては、やはり当事者が直接ジュネーブに行って委員に対して活発なロビイングを行ったということが大きかったのではないかと思っております。
それから、子どもの権利委員会が考えておりますインクルーシブ教育というものと、こちらの推進会議の方で考えているインクルーシブ教育というのが同じものかということでございますけれども、私の方で今の段階で同じであると申し上げることはできませんが、委員会が考えるインクルーシブ教育については、お手元の一般的意見の22~24ページ、特に23ページ目の一番下のところで、パラグラフ番号でいいますと66以降でありますけれども、ここで、委員会としてインクルーシブ教育というものをどのようにとらえているかという、委員会としての見解が比較的詳しく書かれておりますので、これをごらんいただいて、推進会議が考えるインクルーシブ教育の中身とどのぐらい共通しており、違っているとすればどこが違っているかということについて御検討いただければと思います。
子どもの権利委員会も、サラマンカ宣言を始めとしまして、これまで国際的に積み重ねられてきたインクルーシブ教育の考え方を踏まえて議論をしておりますので、恐らくそう違うところはないのではないかと考えております。
松井さんから御質問のありました、子どもの権利委員会の構成でありますけれども、委員の人数は18人でございます。当初、子どもの権利条約が発効した時点では10人でありましたけれども、その後条約を批准する国の数が非常に増えて、処理しなければいけない報告書も膨大になってきたということで、途中で条約が改正されまして、現在は18人になっております。
今のところ日本政府が子どもの権利委員会に委員を推薦した、あるいは推薦するという動きはございません。NGOの方からも、特に積極的には日本人を委員にするべきだという働きかけは行っておりません。ですので、しばらくは日本人が子どもの権利委員会の委員になることはないのではないかと思っております。
以上でございます。
○ 藤井議長代理 大変丁寧にお答えいただきました。時間が参りましたので、これで平野さんの情報提供を受けた上での質疑、論議はおしまいにいたします。平野さんに拍手をお願いいたします。どうもありがとうございました。(拍手)
それでは、ここは休憩なしで、引き続き今度は障害を持つ女性の分野に関わって、まずあらかじめ委員から意見交換をいただいております。これの概要を、東室長からお伝えいただいた上で、少し論議をしますので、東さんからお願いできますか。
○ 東室長 東です。障害のある女性について、現行の関連する施策、または新たな施策への具体的な提案を募集しましたところ、多数の委員から御意見がございました。時間がありませんので、詳細については書面を参照していただきたいと思っておりますが、一応10ぐらいの分野に分類できる御意見だったと思っております。
1が、総論に関わる分野。
2が、性と生殖の権利。生み育てる権利と申しますか、そういう分野。
3が、政策決定プロセスへの参画に関わる分野。
4が、エンパワーメント、自尊心とか自尊感情の維持とか回復、そういうものも含むと思いますが、そういうことに関わる分野。
5が、虐待防止に関わる分野。
6が、介助に関わる分野。
7が、労働・雇用に関わる分野。
8が、建物利用に関わる分野。
9が、統計データで関わる分野。
10が、国際協力に関わる分野。
大体この10分野ぐらいに意見がわたっていると思います。
主だった点だけ御紹介申し上げますと、総論に関わる分野としては、障害のある女性が二重の意味で差別を受ける状態にあること。そういうことを、障害者基本法とか差別禁止法の総論で明記すべきであるといった御意見。障害者基本法において女性条項を設け、女性の権利性を明確にすべきであるといった御意見。
差別禁止法や男女雇用機会均等法において、障害女性に対する差別を禁止すべきであるといった御意見。
障害女性が直面する問題や課題について、障害女性の声を聞いて明らかにするとともに、どのような解決策が望ましいか、整理体系化することが必要であるといった御意見などがございました。
次に、性と生殖に関する権利に関わる分野ですが、これらの権利の明文化が必要であるといった御意見。強制不妊手術の実態調査に基づく謝罪と補償を行うべきであるといった御意見。
結婚、出産、育児、親としての社会参加に対する支援を行うべきであるといった御意見。
障害を理由とする親権剥奪を禁止すべきであるといった御意見などがありました。
次に、政策決定プロセスへの参画に関わる分野の御意見ですが、障害者に関わる公的な審議会などの会議体の構成は、障害者が過半数であるべきであり、その半数は女性であるべきであるといった御意見。
クォーター制などの参画の仕組みと方策が必要であるといった御意見。
障害関連団体の幹部の一定以上、例えば3割以上を女性障害者が占めるよう、期限を設けて義務づけるといった御意見などがございました。
次に、エンパワーメントに関する分野ですが、まず、同姓による介助の義務づけ、異性介助の禁止ということです。これについての御意見。
女性障害者に対するエンパワーメントのための施策推進が必要であるといった御意見。
自己の性に対する肯定的態度や感情を育成する教育の実施といった御意見がございました。
また、虐待防止に関わる分野につきましては、虐待防止法にジェンダーを意識した規定を盛り込むべきであるといった御意見。DV被害に対応する公的機関の対応や在り方を検討すべきといった御意見。
学校での虐待防止の観点から、ジェンダーバランスを考慮した教員の配置や、性被害防止の教育を実施すべきであるという御意見。
DV防止法の被害者支援の中に規定している留意事項に、障害を配慮した記載があるが、これに実効性を持たせるべきであるといった御意見などがございました。
次に介助に関わる分野ですが、重度全身性障害者のうち、女性の場合、家族介護が期待できないので、施設入所の傾向が強いことを踏まえ、女性が重度全身性障害者であっても他人による介護制度を推進すべきであるといった御意見。
介助は、日常動作の支援ではなく、社会参加の支援として考えるべきであるといった御意見。
前に既に触れた点ではありますが、この分野の課題でもある異性介護の禁止とか、子育て支援が必要であるといった御意見がありました。
次に、労働・雇用に関わる分野ですが、女性障害者の就業割合における格差、または賃金その他の労働条件の格差を是正し、社会保障、貧困削減計画へのアクセスを保障すべきだという御意見。
男女雇用機会均等法における女性障害者の位置づけを明確にすべきであるといった御意見がありました。
建物利用、特に車いす、トイレの利用に関わる分野につきまして、女性障害者が車いすを使う場合の問題を検討し、女性障害者に利用可能で、かつ、清潔なトイレを設置すべきという御意見。障害者用トイレも男女を区別して設置すべきであるという御意見がございました。
次に統計データに関わる分野ですが、モニタリング活動や障害者のデータにおいて、男女別データの開示を義務づけるべきであり、女性問題が把握できるようなデータの整備が求められるといった御意見がありました。
最後に国際協力ですが、ここに関する分野については、例えば国際協力における障害のある女性への重点援助計画の策定として、UNESCAP2012年インチョン会議における重点施策として、障害のある女性の問題への積極的な参加と協力が必要であるとか、国際援助機関における職員の研修、ジェンダー及び障害の主流化の積極的な推進。国際援助の立案・計画から実施・評価、すべての段階まで障害女性の参加枠を設置するとか。障害分野の国際協力プロジェクトでの受益者、特に研修における参加者の半数の女性の割り振りなどの提案がございました。
なお、そのほかに、内閣府男女共同参画局で、現在、第3次基本計画策定に向けて動きがございます。それについて、中間整理案というものが出されておりますけれども、これについて中西委員の方から詳細な御意見が出されております。詳しくは書面をごらんいただければと思います。
以上です。
○ 藤井議長代理 それでは、そう多くは時間を取れませんけれども、大変大事なことなので、権利条約の第6条の関係する内容ですが、特に御意見がある方は挙手していただけますか。
中西委員、中島委員、大濱委員、勝又委員の順番でいきます。時間が大分過ぎていますので、少し短めに協力していただけますか。
中西委員からお願いします。
○ 中西委員 中西由起子です。前回、女性障害者に関して討議をしてほしいとお願いしたところ、早速取り入れていただいて、ありがとうございます。準備期間が短かったので、ほかの委員から余り御意見がないかと思ったのですが、このように皆様問題に気づいてらっしゃるということは、うれしく思いました。
ここの私の意見ですけれども、私の方は、例えばDPI(女性障害者ネットワーク)と多くの方たちの意見を中心にまとめたものです。ほかの方たちの御意見も出て、本当は私の意見も、皆様の御意見の中で書いていらっしゃるような、個別の経験をもう少し入れたかったのですが、時間的なこととか枚数の制約があって、ここでは割愛させていただきました。すごくさまざまな問題があるということは事実で、私の個人的な経験も本当は入れたかったのですが、なかなか入れらなかったのは残念に思っています。
今後このように女性障害者に関して、皆様の関心を強めていただくためには、折に触れて女性障害者という言葉が文書の中に出て来なければいけないと思います。DPIの国際会議で、かなり女性問題に厳しい委員がいるときには、必ず障害を持つ人という表記だけではなくて、詳細な部分の記述にわたっては障害を持つ男女という書き方をしています。男女というより、むしろ障害を持つ女性・男性ということで女性を最初にして、次に男性という形でみんなの注意を喚起して今まできました。
これはやはり、ちょうど今タイミングとして、7月2日の国連総会で、新しいUN WOMANという特別機関の設立が承認されて、やはりWOMANであるということ、女性であるということを前面に押し出すことの必要性がいまだに言われています。この推進会議の文書でも全部とは言いませんので、何か詳細な議論とか機会があるごとに、単に障害者と記述するよりも障害を持つ男女ということで、「者」の部分を女性・男性と区切って表記していただけたら、また討議していただけたらうれしく思います。
以上です。
○ 藤井議長代理 それでは、中島委員、お願いします。
間違えたようなので、門川委員、お願いします。
○ 門川委員 ありがとうございます。門川です。今回の障害のある女性というテーマでの意見ですけれども、私の方から主に現実問題として具体例を少し提起させていただきたいと思ったことが1つありまして、発言をしたいと思います。
今、鉄道問題などをみますと、女性専用車両というのがありまして、これは私たち、特に男性の障害者にとっては困ることもあるんですね。女性問題は、これまで差別の対象にされてきましたし抑圧もされてきましたから、権利条約の第6条に女性問題が取り上げられているというのは、大変画期的なことであると思いますが、今、言ったように、これが女性専用車両などでは今度は男性が困るかと。例えば視覚障害であったり盲ろうである障害者が、ガイドヘルパーを利用して電車に乗ろうとします。ガイドヘルパーが女性の場合、女性車両に乗りたい場合もあるでしょうし、また逆にガイドを利用する障害者が女性の場合、ガイドヘルパーが男性の場合、つまり異性の場合、どちらの車両に乗ったらよいのかという問題があるでしょうし、更に言うと単独歩行している障害者もいて、そういう人も気が付いたら女性車両に乗っていて、周りからじろじろ見られて困ったとか、いろんな問題があります。それについては社会的にも問題になっているということもあって、今後議論の1つとして取り上げていただきたいと思っています。
以上、よろしくお願いします。
○ 藤井議長代理 それでは、大濱委員、お願いします。
○ 大濱委員 脊損連合会の大濱です。この女性の障害者の問題は、女性であるがゆえに障害者の場合、かなり問題がある。今回、私なりに情報収集をしましたが、かなりそれぞれ問題がありました。
具体的な問題としまして、実際に非障害者の男性と結婚して子どもを産んだ女性の場合、かなり重度の膠原病ですので、自分で授乳もできないとき、介護者をそこで使えるかとかと言うと使えない。そういう問題が出てきて、実際に地域で暮らすことができなくて、実家に戻らざるを得ない状況になったり。
あと、ALSの場合などもそうですが、女性の場合はかなり問題がある。ドクターから介護が非常に大変ですが大丈夫ですかと言われる。特に、家族の方に、あなたの御主人に介護できますかということが指摘される。女性の場合、御主人に多大な負担がかかることに悩み、やはり呼吸器を付けるということについても躊躇せざるを得ない状況が生じ、そういう問題で呼吸器を付けないで死を選択するという問題があります。
ですから、この女性の障害者の問題については、別途きちんと、どういう問題があるのか調査する必要が改めてあるのかなということを今、感じております。
以上です。
○ 藤井議長代理 勝又委員、お願いします。
○ 勝又委員 ありがとうございます。勝又です。私の意見は、8ページから5つ書いてございますけれども、この中で2つ目の割当制について、少し補足したいと思います。
割当制といいますのは、障害者の政策に関連する、例えば国とか地方自治体が招集する委員会等に、障害当事者の委員を半分入れる。その半分を女性にするという提案でございます。
また、それだけではなくて、いわゆる各障害団体の幹部、そこにある一定以上の女性を入れるということについても、期限を設けて割当制として実行していくということを提案しております。
これはなぜかといいますと、現在まで、男女共同参画会議で、同じように国や地方自治体の委員会に対して、一定以上の割合を女性にするようにという指導を何年もしてまいりましたけれども、例えば委員会によってはさまざまな団体の長が役職指定として任命されることがございます。それによって、例えば「私どもの団体には女性の長はおりません」から、女性を出すことはできませんということで、結果的にその委員会に女性がゼロということが頻繁に起きております。
この障害者の問題について、もし女性をしっかりした形で入れていくのならば、障害者団体自らが、自分たちの中にいる女性をエンパワーすることで、結果的にさまざまな委員会での女性の数を増やしていくことになります。まずは、例えば、この障がい者制度改革推進会議におきましては、当初から女性構成員を半数、ジェンダーバランスをとるために入れたというお話がありましたけれども、現実のところ女性は入れていますけれども、女性障害者のプレゼンスは非常に低いという実態です。女性障害者として、この委員会に出る人を増やすということも、現実の問題として重要でございまして、これから何年かこの会議が続く間に、例えば私に代わって女性障害者の当事者がこの委員に入っていくということを積極的にしていくことも、この委員会で考えていく必要があります。実際にエンパワーメントしていく割当制を方法としてとり入れていくことを提案したいと思います。
○ 藤井議長代理 それでは、大変大事なことで、今、4人の方の発言はいずれもこの短い時間では探求しかねますし、今後また深めていくと。中西委員からは、表記上、表現上、やはりもっと細心の注意を含めて考えていくべき。また、門川委員からは、少し問題の角度は違ったけれども、そこからまた新しい課題を、女性専用電車等の例があって、どうするのか。大濱委員から、そもそも特に重い女性障害者の実態の把握からまず始めるべきだろうと。勝又委員からは、割当、そして隗より始めよで、今、伺っていまして、少し耳が痛かったのは、JDFの団体は、そういえばさんぐらいかなということを思って聞いていたんですが、そして当委員会自体もやはり男女バランス、ジェンダーバランスをどうするのかということが問われている。このことは、無言のうちに問われてくるんだということも今、出ていたと思います。
加えて、今後、今、東室長からは、男女共同参画局の第3次基本計画の中間整理案が出るんだけれども、こういったことへの影響、また出た後の影響も考えておくべきということがありましたが、少しこれに加えて、他のいろんな審議会、委員会へ男女、特に女性障害者の問題、課題も触れていく、あるいはそれを超えて全体の審議会、委員会ももっともっと絡んでいくということもありますので、少しこれも補足してもらってから、このコーナーを終わりたいと思うんですが、東さん、いかがですか。
○ 東室長 中西委員の意見を見ますと、男女共同参画局の基本的方向についての中間整理案に対する御意見がかなり詳細に書いてありましたので、そこに向けて推進会議としての、ある程度の意見のとりまとめのようなものが必要なのかなという感じを持ちました。これにつきましては、共同して、どうするこうするということはできませんので、作業チームのような形である程度まとめていただいたものを推進会議で話し合って検討していくような方向ができるか、できないか、そういうことを含めて検討すべきではないかと思っているところです。
大体以上です。
○ 藤井議長代理 それでは、以上で第3コーナー、先ほどのジュネーブの報告、今の女性のある女性の分野についての議論をおしまいにします。これ以降、大変大事な報告事項が4点プラスα続きますので、次のコーナーに移ってまいります。
まず、第1点目は、第一次意見と閣議決定の関係についての報告に関して、東室長の方からお願いいたします。
○ 東室長 東です。委員の方から、第一次意見と閣議決定の文書では、若干表現が違う部分があるのではないかという御指摘を受けております。例えば労働・雇用の部分とか国際協力の部分、この2つの分野において言葉が少し違うのではないかということが言われております。
今日お手元に、参考資料ということで、閣議決定の文書が配付されていると思いますので、そこで言えば、まず4ページを開けていただければ、労働及び雇用の部分が書いてあります。労働・雇用につきましては、○が6つほどありますけれども、1番目と2番目の期間の点につきまして、第一次意見では平成24年度内にという表現だったと思います。それは、2も同じですけれども、閣議決定では「24年度内を目途に」という言葉が入っております。2番も「目途に」という言葉が入っております。それは、どうしてそうなったのかという御意見でしたけれども、それにつきましては、お手元にはないと思いますが第一次意見の差別禁止法につきましては、24年度内を目途にという形で、差別禁止法自体の期限はそのように第一次意見では成っていたところなんです。ですので、この1と2は、5番目のことも同じなんですが、差別禁止の時期と合わせるということで、この「目途に」という形で統一しているところであります。
それと国際協力ですが、8ページ目を開けていただけますか。国際協力の上の段です。障害者の地位の向上に資する政府開発援助の在り方について、政府開発援助大綱への障害者の明示的な位置づけの要否を含めとなっております。これが、第一次意見では、要否という形ではなくて位置づけの在り方を含めという文言になっていたと思います。これがこのように変わっているわけですが、これにつきましては、外務省との調整の結果、現行の政府開発援助大綱においても、社会的弱者の中に障害者が含まれている、その含まれているという解釈については争えないと。今後、障害者の明記が必要かどうかについては、障害者以外の社会的弱者とのバランスも考慮しつつ、検討する必要があるという理由から、表現を若干改めたものと思っております。
その下の部分についても若干変更があります。第一次意見では、更に積極的に貢献するという文言だったんですが、それが「引き続き積極的に貢献する」という形に変わっております。これにつきましても、外務省としてもこれまで積極的に貢献してきたところであるので、これを踏まえて今後とも引き続き貢献していくということで、これについても表現を若干改めていることになります。
以上が大体の御説明です。
○ 藤井議長代理 よろしゅうございますか。特に松井さん意見ありますか。どうぞ。
○ 松井委員 松井です。ありがとうございます。私から指摘させていただいたことですが、東さんからの説明としては理解できるんですけれども、閣議決定の方が実は拘束力が強いので、第一次意見の文言が修正されているということは、それだけトーンダウンになっているイメージが強いんです。
いや、そうではない、基本的に第一次意見で了解されたことは、表現が多少違うかもしれないけれども、そこは実質的には変わらないということの確認をさせていただきたいということで問題提起をさせていただいたんです。そこをお願いしたいと思います。
○ 藤井議長代理 それでは、東さんから、どうぞ。
○ 東室長 東です。おっしゃるとおりで、実質的な中身が変わっているということであれば、このような形にはなってないと思います。表現、ニュアンスはいろいろありますけれども、例えば引き続き検討するという部分についての結論は変わっておりません。そういうことで、実質的な変更はないと考えているところです。
○ 藤井議長代理 東さんや統括官や参事官が最前線で各省庁と渡り合って、松井さんがおっしゃるとおり、やはりトーンダウンという印象があるんですね。しかし、実質は変わってないという気持ちで担当者としてはいると。また、第二次意見に向かっては、そんなことをまた注意しながらと思っております。
この件はこれでおしまいにして、次にまいります。次は「障害」の表記に関する作業チームをつくるという点で、金調査官から提案をお願いします。
○ 金調査官 金です。配付資料の6を見ていただきたいと思います。資料6のところで「『障害』の表記に関する作業チームの設置について(案)」となっております。推進会議で法令上の「障害」の表記の見直しについて、この間取り上げてきた経過を踏まえて、担当室の方で作業チームの設置についての案をまとめさせていただきました。
まず、作業チームの役割と構成についてということですが、作業チームの役割としては、親会議、推進会議ですが、推進会議が「障害」の表記について議論をしやすくするために、検討事項の整理を行うことが役割としております。
関係者からのヒアリングなどを中心に行うことで考えているんですが、その「表記」の案などに関するプラス面とマイナス面を整理して、推進会議で検討ができるようにする。そういった検討資料の作成が主な役割になるかと思います。
作業チームのメンバーとしては、5人ほどを考えさせていただいておりまして、メンバーとしては、担当室の方では、委員、佐藤委員、中島委員、中西委員、委員の5名の方に作業チームのメンバーをお願いさせていただいているところです。5人の委員の方には、御了解の返事を現時点ではいただいております。
次の「作業チームの進め方について」でありますが、関連分野の有識者や「障害」の表記問題に積極的に発言している関係者などからのヒアリングを中心に進めていくと考えております。特に関連分野の有識者ということで、広い枠でメディア関係、放送協会、新聞協会、または作家協会(日本ペンクラブなど)ということで、そういった有識者からのヒアリングなどもいいのではないかと。あとは主に障害関係団体で、「障害」の表記問題に積極的に発言している団体または関係者などになるかと思います。
ヒアリングの持ち方についてでありますが、作業チームによるヒアリングとして行わせていただきたいということで、ヒアリングの内容を整理した上で推進会議に報告をしてお諮りをした上で、推進会議ではそのヒアリングで明らかになった論点について検討をしていただくということで考えております。
最後に大まかなスケジュールということですが、ヒアリングを9月中旬から10月中旬にかけて行いまして、10月下旬ぐらいにとりまとめの作業に入る。そして11月中旬には、とりまとめた内容を推進会議に報告として上げて、一定の議論を行った上で意見をとりまとめて、その内容を年内に予定している第二次意見に反映できるようにしていきたいということで考えておるところです。
以上が「障害」の表記に関する作業チームの設置についての案ということで御説明をさせていただきます。
○ 藤井議長代理 推進会議としては、総合福祉部会やら、また、秋の早い時期から差別禁止法部会とか、同様のものが出てきます。この「障害」の表記に関しても、チームをつくって推進会議で議論する事前準備をしようということなので、今、名前が挙がった方を含めて何かございますか。
中西委員、どうぞ。
○ 中西委員 これで2つ目の部会になるのですけれども。
○ 藤井議長代理 これは作業チームになります。
○ 中西委員 作業チームになるのですが、部会とか作業チームとか、さまざまなものがこれからもずっとつくられていって、討議とかまとめとかが行われていくと思うんですが、例えば総合福祉部会の方は、一応ウェブで討議の内容等が出ていますが、私たちが仕事をそちらに委託したという意味では、今、コメントすべき段階ではないと思いますが、例えばちょっとした、1回の会議ごとの報告をこちらでするとか、中間報告とか、そういうものがあっていいと思うんですが、いかがでしょうか。
○ 藤井議長代理 それは、どういう部会でも作業チームでもということですね。
○ 中西委員 そうです。
○ 藤井議長代理 一般化して、こことの還流というか、それは東さんの方からお願いします。
○ 東室長 作業チームは単独でということではなくて、この推進会議の進行を助けてもらうというのが基本的な役目ですので、ここに報告がない形で何事が決まるということは基本的にはあり得ません。ですので、当然中間報告なり、時期を見ながら上げていく形になります。
○ 藤井議長代理 部会も勿論同じですね。
○ 東室長 今のは部会の話ではなくて作業チームですね。
○ 藤井議長代理 彼女は部会も含めての話だから。
○ 東室長 総合福祉部会とこの推進会議との関係ですか。
○ 藤井議長代理 その中間で、ちゃんと還流があった方がいいのではないかという意見だと思います。
○ 東室長 勿論、推進会議の下に部会があるわけですから、先ほどの当面の課題につきましても、ここを経由して本部に上がっている関係があるわけです。ですから、部会と作業チームでは、位置づけは随分違いますけれども、情報保障とか、そういう面では推進会議と同じような形でやっております。けれども、勿論、作業チームはこの下に開かれるものであります。
要するに、別個にすべてが進むということではありません。
○ 藤井議長代理 中西さんも今の趣旨はわかりますね。
○ 中西委員 整理すると、部会の方は、つまり私たちは、意見を聞きたければウェブから取って、そして作業チームに関してはここにちゃんとした時々の報告が上がるという意味と取ってよろしいんでしょうか。
○ 藤井議長代理 東さん、どうぞ。
○ 東室長 具体的な手段としては、そういう形で情報が提供されるということはそのとおりだと思います。
○ 藤井議長代理 いずれにしても、有機的にここの親会議体が全体を掌握して、そして全体の発展に、絶えずここがイニシアティブを取ると。作業チームと部会とは少し性格が違うということは、今日のお話でわかっていただけると思いますので、極力ここにちゃんと持ち込まれると。
では、今の「障害」の表記に関する作業チームの件は、よろしいですね。
(「はい」と声あり)
○ 藤井議長代理 次に、地方フォーラムに関して、東さんからお願いします。
○ 東室長 東です。地方フォーラムに関しましては、現在、JDFに協力を依頼しながら準備を始めている段階です。いつごろ開いてもらいたいという希望があるのかとか、希望をJDFの方でとりまとめていただいて、推進会議としてどういう御協力ができるのかというところを打ち合わせしながら進めていこうとしている段階です。
それと先週、構成員の皆様に地方フォーラムへの出席の可否のメールを送らさせていただきました。それに関しては、14名の委員の方から基調報告とかシンポジストとか、いつでも参加できますという御意見が上がってきております。よろしくお願いしたいと思っております。
ただ、だれに、どこに、いつ、行ってもらうかというところまでは、今後、確定していくことになりますので、現在としては、そういう状況であるということだけの御報告です。
以上です。
○ 藤井議長代理 これも大変大事なことで、第一次意見は出ましたけれども、これが全国化、あるいは社会化ということが問われていると思いますので、もう既にいろんな反応は出ていますので、14人に加えてほかの方ももしよければ出していただくと。そして、地方フォーラムを開催するということで、これもよろしゅうございますね。
(「はい」と声あり)
○ 藤井議長代理 それでは、次の報告事項ですが、わかりやすい第一次意見の作成チーム、共同座長の長瀬さんと土本さんのお二人なんですが、まず長瀬さんの方から発言いただけますか。
○ 長瀬委員 長瀬です。ありがとうございます。今日の9時半から、わかりやすいチームを開催しましたので、報告いたします。
出席は、土本さん、支援者の元氏さん、北野さん、私、あと遅れて育成会の室津さん、そして事務局の方から成冨さんに御出席をいただきました。
前回、報告がありましたように、今日の作業チームの会合では、目次案について各自持ち寄って、どういう感じにし、全体的なイメージを共有していく作業を行いました。
たたき台としましては、第一次意見の概要、担当室でつくっていただいた1枚紙ですけれども、あれを基本的なたたき台とするということで合意がありました。ただ、多少付け加える点としましては、この推進本部や推進会議というのがどういう役割を持っているのか、また、権利条約の批准ですとか、そういうこともねらっているという部分を付け加えるということです。ただ、基本的にはこの第一次意見の概要をたたき台とするということで、委員は意見の合意をみています。
全体の長さですけれども、十数ページ程度、余り長いとかえってごらんいただけないということもありますので、十数ページ程度です。イラストは最小必要限です。スケジュールなのですが、先ほど東室長からお話のあった、秋の地域フォーラムなどに間に合わせられるようだったら間に合わせたい。ぎりぎり何が何でもそれに合わせるということではありませんが、できるだけ早い方がいいだろうということで話をしています。
今日のメンバーの会合の後、早速東室長に御相談申し上げまして、やはりきちんとしたものをこの推進会議から出すということを考えますと、やはり予算面も発生してきますので、数百万ということはありませんが。また、担当室のスタッフの支援体制についても、これからいろいろ検討していただけるということで、お話を伺っています。
今後の予定としましては、次回の7月26日の推進会議までに、各委員がそれぞれ分担する部分について、たたき台の案を持ち寄って、26日の推進会議の前にもう一度次の作業チームの開催をします。
土本さんには、基本的にできるだけ全体のジャッジといいますか、お目付け役といいますか、ちゃんとこれでわかるかどうかというところを担当していただきます。また、最終的な段階になりましたら、ここには参加されてない知的障害の方たちのいろいろな意見をモニターなり、コメントしていただく、そういった機会も考えるということで話をしています。
最終期にできたものは、冊子として印刷、配付すると同時に、ホームページにも掲載をして、情報バリアフリーという観点からも冊子体以外のさまざまなメディアへの変換が可能という形にして、ホームページからのダウンロードも可能という形で、今日、話をしました。
補足は、共同座長の土本さんにお願いできれば幸いです。
○ 藤井議長代理 それでは、土本さん、補足をお願いします。
○ 土本委員 補足というか、午前中、時間をかけて話し合ってきました。つくるのには、やはりよりよいものをつくりたいということで、カラーでいきたいと思っています。先ほど長瀬さんが言ったように、予算のことも含めてなので、限りなくよりよいものをつくりたいと思っています。
仲間たちに、1回つくり上げたときに見てもらって、ここがいいよ、ここは要らないとか、そういうことを仲間たちからの意見を聞いてから、本格的につくり上げていきたいと思っています。
以上です。
○ 藤井議長代理 お金のこともあるので、これはまた相談事だと思うので、極力わかりやすく、見やすくということだと思いますので、大事なことは事前に少し幅の広い障害を当事者から見てもらおうと、モニタリングを受けようということだと思いますので、その辺も議題にしてください。
この件はこれでよろしゅうございますか。どうぞ。
○ 竹下委員 竹下ですけれども、その際は、わかりやすくということの中に、弱視の方、または高齢障害者のことも念頭において、文字のポイントないし大きさも念頭に置いておいてください。
以上です。
○ 藤井議長代理 そういう面で、まさに幅の広い配慮ということでお願いします。
東さん、どうぞ。
○ 東室長 東です。今日、予算の話とかをいただきましたので、事務局としても実現できるように検討していきたいと思いますけれども、潤沢に予算があるという現状ではございませんので、そこら辺も考慮していただければと思います。
以上です。
○ 藤井議長代理 東さんとしては、少し牽制を入れないといけないでしょうね。気持ちはわかりますけれども、頑張ってもらいたいと思います。
そうしましたら、本当はこれで次回のスケジュールにいって終わるんですが、お手元に先ほど休憩時間に、議長の了解を得てペーパーが2枚ほど回っています。これに関して、議長団の方としては発言を認めることになりましたので、土本委員、大谷委員の順番で御発言をよろしくお願いします。
○ 土本委員 土本です。文科省に対しての意見書を出しているんですけれども、これを読みますか。
○ 藤井議長代理 私も竹下委員も目が見えませんから、そう長くなければ読んでください。
○ 土本委員 長くはないです。ちょっと突っかかりはあるんですけれども、読みます。
文科省に対して怒りを持っている。今年の1月から始まった障がい者制度改革推進会議がしてきたことに対して、文科省は推進会議そのものを無視をし、勝手にやるつもりか、文科省のいいように変える、都合のいい委員を勝手に決められることは卑怯だし、今まで差別、分け隔て、社会的排除をし続けていることを何の恥とも思ってない。障害者と言われている仲間たちは、教育を受けるというのか、選ばれた人だけが教育を受けることがなく、だれであっても教育を受けていくことではないか。自分たちが受けてきた差別、分け隔てられた教育をこれからの仲間たちに繰り返すことがないようにやっていくべきである。だれの制度だ。文科省の制度ではない。自分たちにとっての制度であるべきだ。(拍手)
○ 藤井議長代理 この文書はこれでいいですね。
門川さんもわかりましたか。いいですか。
続きまして、大谷委員、お願いします。
○ 大谷委員 7月9日に有志として15名で文科大臣あてに要望書を提出しました。実は7月20日に、中央教育審議会初等中等教育分科会の中に特別支援教育の在り方に関する特別委員会の設置についてということで、委員会が設けられるということが急遽わかりましたので、何とかこの7月12日に間に合わせて有志であっても意見を提出したいと思いましたので、7月9日、連絡ができる範囲で連絡をさせていただいて、要望書を提出いたしました。
急な要請だったにもかかわらず、15名の方が快くこの内容で意見を一致できたことを、私はとてもうれしく思っています。
2つのことを要望しました。とにかく私たちは第一次意見で、閣議決定されたこの内容を文科省が審議するということであるならば、私たち、もしくは担当室と連携してもらいたいということが第一の要求です。そして、連携するということであるならば、私たちの中から委員を、私たちで推薦させていただきたいということを、大きく2つ要望させていただきました。
理由は、そこに述べたとおりです。既に今日第1回の会議が開かれて、もう始まるということが決定されていますので、急遽、この会に私たちの第一次意見をとにかく反映してもらえるよう、私たちと連携し、私たちの意見をそこに反映してくれる委員を、是非とも推薦していただきたいと思っております。以上、急な要請で本当に申し訳ないのですが、この推進会議全体で諮っていただいて、15名だけの要求ではなく、我々全体の意見であるということを確認していただけたらと強く思っております。
以上です。
○ 藤井議長代理 大事なことなので、これに関して少し意見を聞きましょう。意見のある方、いらっしゃいますか。
遠藤委員、久松委員の順番でお願いします。
○ 遠藤オブザーバー 御趣旨をお伺いしたいのです。急遽、文科省における会議の設置を踏まえての対応ということですが、そもそも第一次意見をまとめるに当たって、連携の在り方をどうするのかということについては、十分詰め切れていないまま来ていると認識いたしております。
第一次意見にないものについては、年末にとりまとめるであろう第二次意見の中にまとめていくという方向性についても理解しています。
そして、今後、このように何か必要があるたびに、全会一致という形で対応していくことになると、第二次意見の中身との整合性について、もし大谷委員が中心としておまとめいただいているのだとすれば教えていただきたく思います。
○ 藤井議長代理 まず、先に手が挙がった久松さんの意見を含めて議論しましょう。
久松委員、お願いします。
○ 久松委員 全日本ろうあ連盟の久松です。今日、正式に文部科学省の中教審の中にある特別支援教育の在り方に関する特別委員会で審議をするというお話を聞きました。私たちろうあ連盟からも委員を出してほしいという打診、依頼をいただきました。昨日の理事会で審議しまして、私、久松が文科省の特別委員会に出席するということで正式に決まりまして、朝、連絡をさせていただいたところです。
そのことについてですけれども、1つ提案があります。文科省との関係について、十分コミュニケーションが取れていないということがあります。今回、大谷委員からお話がありましたように、この文書はもう出されたということですね。
○ 大谷委員 9日に出しました。
○ 久松委員 わかりました。
ほかにも15名の名前もあり、私の名前は入っていませんが、名前に入っていない立場で、この推進会議のメンバーの皆さんの意見をまとめた形で要望を出すということが必要ではないかと思っておりますので、改めて提案したいと思います。
どういう内容についてかということですが、4つございます。
障がい者制度改革推進会議について、他との連携についてですが、十分内容が審議されないということで、本来であればこの推進会議の場で文科省の方たちから説明をいただきたかったと思っておりますが、今回は説明がなかったということですので、次回の推進会議の場で是非説明していただきたいと思っています。
文科省の特別委員会とこの推進会議との連携を取るということを要望したいことが1つです。
2番目に、私も情報保障が必要な当事者という立場ですので、この特別委員会の場でも情報保障を始めとする合理的配慮が必要ではないかということを要望いたします。
3番目に、今、制度改革推進会議は、相当制度改革について関心を持つ方がたくさんいらっしゃいますので、情報公開をしています。インターネットによる手話通訳、また字幕を付けて、傍聴席にも情報保障をして、大変関心を持たれています。また、厚生労働省の総合福祉部会でも同じようなやり方で情報の公開をしております。
ですので、文科省での障害者教育に対する審議会の場についても、多くの関心が寄せられていますので、情報公開を是非していただきたい。
それにつきまして、手話通訳、また字幕は当然のことですけれども、是非お願いしたいと思っています。
4番目に、私やほかのメンバーもそうだと思うのですが、制度改革推進会議の日程と重なる可能性もありますので、日程が重ならないような形でやっていただきたいということを、是非ともお願いしたいと思っております。
この4点を中心に、皆さんの御意見、また意思統一をして文科省に要望を出したいと思っています。その提案を今回させていただきますので、皆さんの御意見をいただいて、改めて皆さんにメールでも御意見を賜りたいと思います。
以上です。
○ 藤井議長代理 今日、余り延長しては困るということを言われていますので、もう間もなく終わりにしますので、大谷委員への御質問があったので、まずお答えいただけますか。
○ 大谷委員 質問の趣旨がちょっと不明だったのですが、基本的に全会一致で求めたというのは、少なくとも私たち15名の意思が一致しましたので、今日ここで諮っていただければという趣旨でお願いしました。
それから、これから我々が審議する障害者基本法の中での内容、それは第二次意見の中に出てくると思うのですが、私が危惧するのは、中教審の中で立ち上げられた特別委員会の審議事項が、第一次意見において我々が閣議決定していただいた内容をここで審議するということになっているのです。とするならば、我々の認識と中教審に設けられた特別委員会の認識が大きく食い違うことのないように、連携し、強調していくということが既に問われているのだろうと思います。
そこが食い違っていかないためには、ここで審議した内容を適切に中教審の特別委員会に持ち込んでいただける委員を、この委員会の中で推薦させていただきたいということを私は要求したいし、その15人の意見が一致したところだろうと思っています。
これで答えになったかどうかわからないのですが、私の認識は以上のとおりです。
○ 藤井議長代理 遠藤委員、よろしいですか。
○ 遠藤オブザーバー 簡単に言います。連携の仕方については、何度か委員の方から御質問があり、どういう形の連携を取ればいいのかということについては十分議論が詰まっていないのではないかと思っております。
例えば、事務局の方からの御説明では、関係会合が各省庁の中にあるのだとすれば、あるタイミングで、合同で会議を持つことも一例として挙がっていたかと思います。ですから、十分議論が深まっていないことに対し、今日のような形でいきなりペーパーを出されて、それに御同意くださいというやり方そのものについては、これまでの審議会の進め方からすると、いかがなものかと思っておりましたので、冒頭に御質問をさせていただいたということであります。
○ 藤井議長代理 この流れで言うと、どうしましょうか。困ったときは、大久保さん、意見をお願いします。
○ 大久保委員 大久保です。今、御意見があったとおり、各省庁の審議会等との連携の在り方について、具体的な詰めというか、その辺のところはしっかり議論してこなかったというのは、確かにあると思います。
ただし、かたちの上で、推進会議は推進本部の下にあって、いわゆる政府の機関ですね。それと文部科学省も政府であるわけですね。ということであれば、当然本部の下に連携調整というか、そういったかたちは取っていくことが必要ではないか。そういう気持ちで事前の調整とか情報交換という中で連携していく。当然審議会等は、法律に基づいてある機関でしょうから、位置づけ等が違う部分もあるでしょうけれども、やはり政府の中で、それこそ政府一元化ではないですけれども、その中で調整を取ってしかるべきかなと思います。
以上です。
○ 藤井議長代理 それでは、この扱いはどうしましょうか。
山崎委員、お願いします。
○ 山崎委員 ありがとうございます。山崎です。少し整理させていただきたいと思います。遠藤委員がおっしゃっている話は、ごもっともでございます。具体的には、労政審議会あるいは地域主権戦略会議というものが、私どもの会議が設置される前に既に設置されていた。当然そちらが先行されているわけですから、そこでの仕事と私どもの仕事が重なり、調整を要する場合には、私どもの方から申し入れをするのがもののどおりだろうと思っております。
実は今般話題になっている中央教育審議会、これは本体自体は非常に古うございまして、私どもよりはるかにはるかに前からあったわけです。その下にある初等中等教育分科会自体も、かなり前からあったと承知しております。ただし、今般、話題になっている、今日できたと伝えられております特別支援教育の在り方に関する特別委員会というのは、実は今日できたわけでございます。ですから、これはものの順序で先にできている方が偉いとか、そうではないというわけではございませんが、1つ整理すべきことは、その前後関係が1つあるというのは現実的な事実でございます。
2番目には、私どもの会議自体が、内閣総理大臣を本部長とし、全閣僚をメンバーとする障がい者制度改革推進本部の下に置かれた会議である。中央教育審議会自体は、勿論、文部科学省が所管されるものであろうと私は認識しております。ただし、文部科学大臣自体も本部の一メンバーでございます。したがいまして、そのメンバーである文科大臣の下で中央教育審議会があり、その下に分科会があり、その下に本日特別委員会が設置されたという順番でございますから、当然ながら中央教育審議会の本日設置された特別委員会のそもそも設置について、あるいはそこで何を今後議論するかについては、私どもの上にある本部を通じて、私どもの会議、あるいはその会議を所掌されている推進会議室と事前の実質的、形式的な調整があって、私はしかるべきである。これもまた常識論であると思うんです。
ですから、私どもの15名の一部のメンバーが、当初から考えているのは、多分、今、私が申し上げた2点に集約できると思います。今後は、新しくできた特別委員会が、どのような行動をされるか。これは、私どもの会議の成り行きとも極めて重大な関わりがあるし、第二次意見とも直接に関わってまいりますので、今後はやはり推進室を中心に、東室長を中心に実質的な両者の関係の調整を図っていただいて、両者の存在と両者における集中的な、前向きな議論が今後の日本におけるインクルーシブ教育、条約の趣旨を踏まえたものにより近づく方向に両者を動かす調整を是非、東室長さんを中心にお願いしたいと思っております。
以上です。
○ 藤井議長代理 関口さん、関係の発言ですね。どうぞ。
○ 関口委員 山崎さんが大体おっしゃられたことですけれども、つまり文部科学省も厚生労働省も、この推進本部が立ち上がる去年の12月8日よりずっと前からあるんですね。そうしたときに、この推進会議というのが内閣府の中に設置されていて、本部の下にあって、その構成員がいるということになっていますので、では構成員一同として出すということは、行政が行政にちょっかいをかけるのかという話なのか、そうではないということなのかということなんですけれども、私はこの会議に参加しているメンバー全員が、やはり推進会議をもう少し尊重してほしい。そこの議論をちゃんと聞いた上で物事を進めてほしい。ましてや一切の情報もなく、抜き打ちでもって3人のメンバーに声をかけて、それで推進会議のメンバーも入っていますからというようなことは、推進会議の全員がそういうやり方は到底認められないということを意思表示するんだと思うので、これは推進会議という一種の行政機構の一環としてあるものとしてではなくて、推進会議のメンバーが持っている心情として、そういうことでは推進本部ができた意味がないではないかということを一致して言っていくべきなんだろうと思っています。そういう案件だと思います。
というのは、これと同じようなことは厚生労働省でも起こりかねないわけで、そうしたときに、いちいち総理大臣のところまでさかのぼって推進本部から厚生労働大臣にいってという話ではなくて、私たち推進会議が実質的に議論して、それを推進本部に上げていくという立場なものですから、やはり構成員全員が私たちが議論していることを無視しないでくれということを言っていくという意味合いだと思っています。
○ 藤井議長代理 ではこの辺で、東さんから、これに関する見解がございましたら、いかがでしょうか。
その前に、森さん、どうぞ。
○ 森委員 森です。この問題につきましては、今、皆さんからお話が出たとおりだと思いますが、そもそも障がい者制度改革推進法というものにちゃんと位置づけてくださいと、以前、私は要望しました。それに対して、やりましょうという福島瑞穂大臣のお話もいただいた経緯があります。それは、こういう審議会と推進会議の関係がどうなるかという問題を大変危惧していたからです。
この問題は、違う省庁から法的な根拠に基づいた審議会が同じように審議を開始したならば、これは我々が行っている推進会議とのあり方が大変難しいというよりも、存在意義を疑われる形になる可能性があるかもしれないということです。
そういう面からいって、今回はいろいろとお話が出ているようでございますし、既に審議会は出発したということもあります。やはりここで考えなければならないのは、日本の障害者の代表という立場で我々は考え、議論していることを、そういう我々の意見とすり合わせるような形で、東室長さんは大変だと思いますが、その辺をうまく調整しながらやっていただくと同時に、この第一次意見にも出ておりますが、制度改革推進体制の法制化を図るべきであると思います。これは、今回の審議会との調整問題をも含んでいると理解しておりますので、その辺も含めて、今後他の省庁から同じような問題が出たとき、同じような対応ができるような形にしておいていただければよろしいのではないかと思います。
それと同時に、例えば私に審議会の委員として出てくださいといったときに、推進会議と違う意見が出たときに、私自身はどういう回答をすればいいかなと、恐らく悩むと思います。そういう面から言っても、やはりこの推進会議の第一次意見をきちんと尊重するようなお話をしていただきたい。
以上です。
○ 藤井議長代理 それでは、最後に久松委員、お願いします。
○ 久松委員 ろうあ連盟の久松です。発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。
今度の特別委員会の会議は、7月20日に開催されます。正式な連絡はまだいただいておりませんけれども、1回目の会議は7月20日に開催と聞いています。私が特に皆さんにお願いしたいことは、担当室に当然のことながら連絡調整をお願いしたいのですけれども、皆さんがこの推進会議を尊重してほしいという気持ちをお持ちならば、そういう気持ちを示していただいて皆さんでまとめていただくことが必要ではないかと思います。
ですから、担当室に任せるということではなくて、皆さんの気持ちを表すことが必要ですので、皆さんの気持ちを持って文書を出す方法はいかがでしょうかという提案です。それに異議がなければ、私が文案を皆さんにメールをいたします。また、私はろうあ連盟の立場ですけれども、制度改革推進会議のメンバーの1人でもありますので、皆さんが一生懸命まとめた第一次意見、また次に第二次意見をまとめる形になりますので、それに沿って特別委員会の場で制度改革推進会議の意見を尊重して意見を出していくように努めていくつもりでおります。
以上です。
○ 藤井議長代理 それでは、この件はこのようにさせていただきます。おっしゃったように、もう大分人選も詰まっていると。ただ、やはりみんなの気持ちとして、今度の方法はいかがしたものかということも含めて、文書を久松さんが起案して、もし可能だったら名前を連ねて出していきたい。
ただ、もう一方、山崎委員がおっしゃったように、そうは言っても動いていく中で、担当室の方でも少し調整機能を発揮して、内実としてより有機的につながっていくことも一方で必要だろうということ。この辺の両面から、その中には森さんが御発言になった、今後起こり得ることもありますので、どうするか、設置法という話もありました。
とりあえず、久松さんの方で文案をとりまとめて、先ほどいった4つを基調にして、皆さん方にお配りしたい。これは、担当室を超えて、この委員全体の主体的判断でいいのではないかと思いますので、これは是非やってください。
その上で、東さんの方からコメントがあったらお出しいただけますか。
○ 東室長 東です。第一次意見に基づいて、御存じのように閣議決定が出たわけですけれども、文科省としてはその閣議決定に基づいて、特別支援教育の在り方に関する特別委員会を設置するという流れになったのだろうと思います。そのこと自体は、きちっとそこで検討する機関を設置したということは、批准に向けての大きな方向性を示していただいたと思っているところです。
ただ、その過程において、特に従前からある審議会ではありませんので、新規でつくる場合に、なぜもう少し会議のメンバーに全体としてお声をかけなかったのかという御意見は十分わかるところであります。
ですので、文書としてまとめられるということになりましたけれども、推進会議の担当室としても、今日の様子を向こうに伝え、今後の連携調整を図っていこうと考えているところです。
以上です。
○ 藤井議長代理 先ほど遠藤委員がおっしゃったことで大事なことは、今後ともこういうことでいちいち文書出すのも何かおかしな話で、これは私の方で議長代理としては越権というか、少し踏み込み過ぎかもわかりませんけれども、やはり今後、荒井担当大臣、または泉政務官等で、関係省庁と交わる機会の多いときに、何かそういう話をしていただいて、そして全体としてこの推進会議を尊重していただいたり、あるいは無用な混乱を防ぐということを、そういう場での発言として、全省庁に伝わるように、こんなことも是非こういう場で要望させていただこうと思っています。
本件については、そういうことで今後連絡等がいきますけれども、その上でまた考えるようにさせていただきます。
では、以上をもちまして、少し時間をオーバーしましたけれども、本日予定した議案と報告事項は終わりますので、小川議長の方にマイクをお返しします。
○ 小川議長 本日は、長い時間の御討議、お疲れ様でございました。ここで東室長より、今後の予定を含め、報告すべき事項があれば、簡潔に御説明をお願いいたします。
室長、お願いします。
○ 東室長 東です。次回は、第17回になりますけれども、7月26日月曜日です。議題としましては、文部科学省及び教育関係団体等からのヒアリング及び意見交換を予定しております。
以上です。
○ 小川議長 ありがとうございました。
それでは、これをもちまして、本日の会議を終了いたします。この後、この場所で記者会見を行いますので、本日はお忙しい中お集まりをいただきまして、誠にありがとうございました。御苦労様でございました。
○ 東室長 済みません。事務局からですけれども、お手元にあるペットボトル類を、飲みかけのまま置いていかれると、非常に後片付けが大変なんです。ですので、全部飲んでいただくか、余っている分については持って帰られるかしていただければと思っておりますので、よろしく御協力のほどお願いします。