○ 小川議長 定刻になりましたので、これより第17回「障がい者制度改革推進会議」を開催させていただきます。
本日の委員の出欠状況でございますが、清原委員が御欠席、その他の委員は出席でございます。中島委員が16時半に退席となります。
会議の公開はこれまでと同様といたします。
進行上の時間配分については、後ほど東室長より報告があります。
本日の会議は17時までを予定しております。
それでは、これより先の進行については、藤井議長代理にお願いします。よろしくお願いいたします。
○ 藤井議長代理 議長代理の藤井でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、まず最初に本日の全体のスケジュールを東担当室長よりお話いただきます。
どうぞよろしくお願いします。
○ 東室長 こんにちは。担当室長の東です。
今回は教育をテーマに取り上げまして、文部科学省及び教育関係の団体の皆さんのヒアリングを通じて議論を深めていきたいと思っております。今回は10団体の皆様に御協力いただきます。
全体としましては、いつものように2回の休憩を挟んで3つのコーナーに分けます。
第1のコーナーは60分を予定しております。最初に文部科学省から冒頭発言を5分ほどいただいた後、団体の皆さんへのヒアリングに移りたいと思っております。第1コーナーでは全国特別支援学校長会、全国盲学校長会、全国聾学校長会、全国特別支援学校肢体不自由教育校長会、全国特別支援学校知的障害教育校長会の皆様から25分で意見を表明していただき、その後30分ほどの質疑応答とします。
第2のコーナーは65分を予定しております。最初に全国連合小学校長会、全日本中学校長会、全国特別支援学級設置学校長協会の3団体から20分で意見を表明していただきます。次に全国コーディネーター研究会から20分で御意見をいただき、その後まとめて25分の質疑応答といたします。
第3のコーナーは60分を予定しております。最初に全国特別支援教育推進連盟より20分で御意見をいただき、次に文部科学省から10分で総括的な御発言をいただき、その後まとめて30分の質疑応答とします。
最後に何点か御報告事項がございます。
一応以上が本日の予定です。
○ 藤井議長代理 それでは、今のスケジュールに沿いまして、今から14時10分ほどまでが第1コーナーであります。第1コーナーの冒頭に文科省の特別支援教育課の斎藤尚樹課長よりお話があった後、今、言われましたように5つの団体から御報告いたします。
それでは、斎藤課長、どうぞよろしくお願いいたします。
○ 斎藤課長 座ったままで失礼いたします。文部科学省の特別支援教育課の斎藤でございます。先週から夏風邪を引いておりまして、声の調子が悪いことをお許しください。
皆様御承知のとおり、特別支援教育、障害のあるお子さんへの教育につきましては、平成19年から子どもたちの自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ちまして、子ども一人一人の教育的ニーズを把握し、適切な指導、支援を行う新たな制度としての特別支援教育がスタートしたところでございます。現在までに都道府県あるいは市町村、更に各学校における特別支援教育の体制整備は一定程度進んでございます。
しかしながら、特別支援教育の理念の実現という観点からは教育体制の更なる整備のほかに障害のある子どもたちの将来を見通し、一人一人の教育的ニーズに応じた計画的かつ適切な指導、支援を行うことなど、現在進めております特別支援教育の更なる質的あるいは量的な充実を図っていくことが重要な課題となっております。
この会議でもずっと御議論いただいております障害者権利条約の批准に向けた国内法令の整備等につきましては、当方からもこれまでの会議の場、あるいは追加での意見書の提出等を通じて、いろいろ意見を申し上げ、更に説明を申し上げてきたところでございます。その結果、本年6月の制度改革推進会議の第一次意見を踏まえまして、6月29日に閣議決定が行われたわけですけれども、その中で教育分野につきましては障害者権利条約のインクルーシブ教育システム構築の理念を踏まえ、体制面、財政面も含めた教育制度の在り方について、22年度内に制度改革の基本的方向性についての結論を得るべく検討を行うという方向性が示されたところでございます。
これを踏まえまして、文部科学省におきましては、早速本年7月12日の中央教育審議会の初等中等教育分科会におきまして、特別委員会の設置を決定いたしました。この特別委員会では学校・教育行政の関係者に加えまして、障害当事者を含む幅広い関係者あるいは有識者の皆様に御参画をいただきまして、制度改革については高等教育あるいは生涯学習の分野の課題も勿論あるわけではございますけれども、主として初等中等教育分野における諸課題について、専門的見地から御審議を深めていただくということで、早速去る7月20日から検討を開始したところでございます。
この委員会につきましては、後ほどまた時間をいただきまして、検討課題や今後の検討の見通しなどを御紹介したいと思いますが、この委員会における審議、検討に際しまして、推進会議側からのいろいろな御意見、御要望もいただいております。政務三役とも協議の上でありますが、例えば障害当事者あるいは関係団体始め多様な御意見を伺うヒアリングの場を設けるなどいたしまして、今後のこの委員会の審議、検討に反映をし、かつ推進会議側との連携を図っていければと考えております。
文科省といたしましては、この委員会における審議状況あるいは推進会議との連携等も踏まえながら、子どもの能力を可能な最大限度まで発達させるという観点から、体制面、財政面の裏づけも含めまして、実態に即した検討を行い、障害のある子どもにとって最善、最適な制度改革がなされるように取り組んでいく所存でございます。
本日は貴重なお時間をいただいておりますので、我々文科省と同時に学校関係者、これは特別支援学校あるいは特別支援学級という特別支援教育の中心的な担い手のみならず、まさにインクルーシブ教育システムという観点から、小学校、中学校の代表の校長先生方にもおいでいただいております。また、第2コマ目以降では学校教育の中で現場のコーディネーターとして、小・中学校における障害のあるお子さんへの教育支援に最前線で従事されている先生方の研究会にも意見表明をいただく予定にしております。さらに、最後のコマでは親御さん、PTAあるいは親の会の代表からなります全国特別支援教育推進連盟からの意見表明のお時間もいただいているところでございまして、それぞれについて実りのある意見交換をさせていただければ、これを今後の中教審の特別委員会における審議、検討に生かしてまいりたいと考えております。
あと、細かい点につきまして幾つか事前の御質問等もいただいておりますが、これにつきましては3コマ目のお話の中で御紹介させていただければと思っております。よろしくお願いいたします。
○ 藤井議長代理 斎藤課長、どうもありがとうございました。
今から団体からお話をいただきますが、その前に、今、出ていましたけれども、6月29日の第一次意見を閣議決定した部分があります。短いので、まず最初に2項目を読みながらと思っていますので、第一次意見がもし手元にあったら御準備ください。よろしくお願いします。
○ 介助者 (2)教育。
1つ目の○、障害のある子どもが障害のない子どもとともに教育を受けるという障害者権利条約のインクルーシブ教育システム構築の理念を踏まえ、体制面、財政面も含めた教育制度の在り方について、平成22年度内に障害者基本法の改正にもかかわる制度改革の基本的方向性についての結論を得るべく検討を行う。
2つ目の○、手話、点字等による教育、発達障害、知的障害等の子どもの特性に応じた教育を実現するため、手話に通じたろう者を含む教員や点字に通じた視覚障害者を含む教員等の確保や教員の専門性向上のための具体的方策の検討の在り方について、平成24年内を目途にその基本的方向性についての結論を得る。
○ 藤井議長代理 それでは、5団体でありますが、全国特別支援学校長会の尾崎祐三さん、全国盲学校長会の澤田晋さん、全国聾学校長会の鈴木茂樹さん、全国特別支援学校肢体不自由教育校長会事務局長の田村康二朗さん、最後に全国特別支援学校知的障害教育校長会事務局長の横倉久さんからお話をいただきます。田村さんと横倉さんは事務局長さんでございます。時間の配分はお任せしますが、この5人の方々に今から25分間でお話をいただきます。その後30分間程度でありますけれども、質疑、意見交換を交わし合うという段取りで進めてまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○ 尾崎氏 全国特別支援学校長会会長の尾崎でございます。
本会は全国1,000校、11万人の幼児、児童、生徒が在籍する特別支援学校の校長を会員としています。
4月26日に引き続き、第17回障がい者制度改革推進会議において意見を述べる機会をいただき、ありがとうございます。総論として、日本独自のインクルーシブ教育システムの実現というテーマで3点、具体的な検討課題について10点にわたって意見を述べたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
まず総論の日本独自のインクルーシブ教育システムの実現についての1点目ですが、インクルーシブ教育システムと特別支援教育の関わりについて全特長の意見を述べさせていただきます。特別支援教育は学校教育法の一部改正のあった平成19年以降、新たな特別支援教育制度の枠組みができました。その枠組みの下、障害のある幼児、児童、生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組みを支援するという視点に立ち、幼児、児童、生徒一人ひとりの教育的ニーズを把握し、持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善または克服するため、適切な指導及び必要な支援を行う教育として着実に成果を上げてきました。
この特別支援教育の範囲は従来の特別支援学校、特別支援学級から広がり、小学校、中学校の通常の学級、幼稚園、高等学校にまで及んでいます。その中心が特別支援学校です。一人ひとりの教育ニーズにきめ細かく対応する特別支援教育は、障害のある幼児、児童、生徒への教育にとどまらず、障害の有無やその他の個々の違いを認識しつつ、さまざまな人々が生き生きと活躍できる共生社会の形成の基礎となるものであり、日本の現在及び将来の社会にとっては重要な意味を持っています。
インクルーシブ教育システムを発展させるためには、学校だけではなく地域社会における障害のある児童、生徒の支援の在り方を着実に整備していくことが課題であると考えています。そこでは特別支援学校の地域支援が大きな役割を果たすと考えています。
次に総論の2点目ですけれども、財政基盤を整えたインクルーシブ教育の制度設計を実現することが重要であるということです。インクルーシブ教育システムについては、子どもの能力を可能な最大限度まで発達させるとの権利条約の趣旨を踏まえれば、理念や制度論のみを議論するのではなく、必要な人的体制や施設設備などの物的条件の整備や環境の整備、教育課程の在り方の検討などの条件整備を進めることを前提として議論、検討すべきだと考えます。今後は受け入れる側の通常の学校の条件整備の方向を示すことが非常に重要だと思います。
総論の3点目ですが、この議論の進化と国民的理解に向けた努力が必要であると考えています。本校長会は特別支援学校も含めたすべての学校での共生社会の実現を目指す教育をインクルーシブ教育システムととらえています。したがって、障害者の共生社会への参画や一人ひとりの社会自立を実現するには、財政的な考え方や仕組みを整備していくための計画を作成し、国民の理解を得ながら実施することが必要だと思います。
次に具体的な検討課題について、簡潔に10点述べたいと思います。
1点目は、特別支援学校の地域への配置についてです。第一次意見では、特別支援学校は本人が生活する地域にないことも多いという御指摘がありました。現在の特別支援学校の状況は、特別支援学校の教育を希望する保護者が増え、知的障害を中心として児童、生徒も増加しています。地域社会における児童、生徒の生活を充実させる観点からも、特別支援学校の増設を積極的に促進することが必要であると考えます。これにつきまして、全特長の評議員の校長先生からは、全部の区市町村に特別支援学校を設置するのが望ましいという意見も出ています。
2点目は、障害のある児童、生徒の学籍の考え方についてです。障害のある児童、生徒が通常の学級に在籍することを原則とすると、特別支援学校や特別支援学級の設置の根拠がなくなり、特別支援学校や特別支援学級の専門性のある教員の確保や障害に合わせた教育環境の整備が計画的にできなくなるおそれがあります。慎重な検討が必要だと考えます。
また、本人、保護者が望む場合にのみ特別支援学校や特別支援学級に就学できるとする考え方をとる場合は、就学前における医療、福祉関係機関による療育相談、支援、教育関係機関による教育相談活動を充実するなど、乳幼児期から就学時までの一貫した相談支援体制を確立することを前提とすべきだと考えます。
3点目は、就学相談や就学決定の在り方についてです。これまで述べてきたように、障害のある幼児、児童、生徒にとっては、保護者の理解の下、幼児期から学校卒業後まで一貫した教育的支援が必要です。就学期においては、専門家や関係者の多面的な観察、助言を生かして就学先を判断できるような就学相談の充実とともに、これまでより一層個別の教育支援計画作成プロセスへの保護者の参画を進め、結果として保護者の意向を十分に尊重し、設置者が決定する仕組みをつくり、実際の指導、支援の在り方が決定できるようにすることが重要です。保護者の意見が最大限尊重できるようにするためにも、就学先の決定の際は保護者、学校設置者の合意形成を重視できる形が望ましいと考えます。
そのために保護者、学校、学校設置者3者の合意を調整するための機関は、指導の専門性と客観、公正な見識を持ち合わせる構成員にする必要があります。また3者の合意を調整する機関を設置する場合は、各地でモデル事業を行い、その機能についての研究を行い、その先行事例を含め照会ができる取組みが必要です。
4点目は、特別支援学校の教育における児童、生徒ニーズに合わせた教育内容の充実についてです。そのためには、まず障害のある児童、生徒一人ひとりの障害の状態や教育的ニーズにきめ細かく対応するための専門的な知識と経験を有する教員が配置されていること、そして、児童、生徒が十分に教育を受けるために障害の特性に応じた必要な施設、設備があること、更に児童、生徒が使用するための障害に配慮された教材が整っていることなどは欠かすことができないと考えます。
5点目は、特別支援学校を選択した場合の地域とのつながりについてです。特別支援学校を選択した児童、生徒にとっても地域社会での生活が重要です。現在、各学校においては、それぞれの学校の教育課程を尊重しながら、交流及び共同学習が行われています。双方の子どもたちの教育的ニーズに対応した内容、方法を十分に検討し、早期から組織的、計画的、継続的に実施することなど一層の効果的な実施に向けた取組みを推進しています。
6点目は、進路指導の充実と就労の支援についてです。特別支援教育においては、共生社会の実現に向けて障害のある児童、生徒の一人ひとりが勤労観、職業観を身につけ、主体的に社会参加、自立が実現できるように、小学校段階からのキャリア教育、職業教育を充実することがとても重要であると考えています。
7点目は、教員等の確保と専門性の担保と人材育成についてです。障害のある児童、生徒の障害の状態は多様なので、一人ひとりの障害に対応できる専門的な知識を有する教員の配置を欠かすことができません。しかし、専門性の高い教員は特別支援学校、特別支援学級においても不足しており、また通常の学級に在籍する発達障害のある児童、生徒も年々増加の一途をたどっており、必要な人的措置が追いつかない状況です。研修により専門性の向上に努めることが必要ですし、研修体制の充実や特別支援教育に関する研究、研修センターの整備も必要です。
8点目は、地域の小学校、中学校等を支援するための特別支援教育のセンター的機能の拡張についてです。特別支援学校においては、これまで蓄積してきた専門的な知識や技能を生かし、地域における特別支援教育のセンターとしての機能の充実を図ってきました。このような取組みは着実に成果を上げ、多くの特別支援学校の保護者、PTA関係者からも自立と社会参加に向けた教育支援の実績、成果を高く評価する声が聞かれます。
9点目は、就学先の学校における合理的配慮についてです。教員の加配や施設設備の整備などの合理的配慮に基づく条件整備は、児童、生徒の就学前に整えておく必要があります。条件整備がなされる前に就学することになると、保護者の多大な負担がそのまま就学先に課せられ、未整備な側面がすべて合理的配慮を欠くと解釈されるおそれがあるだけでなく、その間、十分な教育を受けられなくなりますので、条件整備を先行させながら、教育環境が整った学校から実施する制度設計が必要です。
視覚や聴覚に障害のある児童、生徒への合理的配慮については、点字、手話等さまざまなコミュニケーション手段の保障及び早期からの教育が必要です。更に視覚や聴覚の障害に配慮した学習環境を整えることが必要です。視覚障害、聴覚障害の児童、生徒にとって同じ学習方法で学ぶための一定程度の集団の確保が重要であり、専門的指導、支援のための設備、機器、点字ブロック、集団補聴システム、校内文字表示盤等の整備が大切です。
肢体不自由や病弱のある児童、生徒への合理的配慮については、医療的ケアを必要とすることもあり、それに応じた対応が必要です。またバリアフリー環境の整備を進めるとともに、外部の専門家、理学療法士や心理の専門家などとの連携を図り、身体や病気の状態に応じた専門的な指導が大切です。また、病弱教育では病状に応じた配慮だけでなく、入院前にいた学校、前籍校とのつながりを確保できるようテレビ会議システム等の機器を整備することも重要です。
医療的ケアを必要とする子どもたちにとっては、安心して通学できる環境が整った特別支援学校でなければ、生命の保障すらなりません。現実を直視した議論を進めていくことが大切だと思います。
知的障害のある児童、生徒への合理的配慮については、一人ひとりの障害の状態等に合わせたきめ細かいオーダーメイドの教育課程が必要です。進路別、学年縦割りの指導、少人数、個別指導、ソーシャルスキルの獲得のための指導などです。指導内容、方法を工夫することが重要であり、これを支える教員の専門性が大切です。
最後に第一次意見の中で述べられています虐待防止の中の虐待行為者の範囲についてです。学校においては人権教育を積極的に進めており、児童、生徒の障害についての理解、啓発活動も積極的に行っています。また、学校には障害や環境の不適応が要因となって精神的に不安的になり、突発的な行動をする児童、生徒もいます。そのようなときは体を押さえるなど行動を抑制することも必要ですが、その場合、外から見れば虐待なのかどうか区別がつきません。虐待行為者の範囲に学校が入れられることにより、虐待行為者を見られることをおそれ適切な対応をしなくなるおそれもあります。
また、障害のある、なしにかかわらず、児童、生徒への虐待はあってはならないことなので、障害のあるものを対象とする虐待防止の虐待行為者の範囲から学校を外すことを強く要望します。
私からは以上です。
引き続き、障害種別の専門性の確保の観点から意見を述べさせていただきます。
○ 藤井議長代理 ただいま14分経過していますので、残り11分でお願いいたします。
○ 澤田氏 全国盲学校長会会長、東京都立文京盲学校校長の澤田でございます。よろしくお願いいたします。
3点申し上げます。
まず盲学校における点字指導等の視覚障害教育の専門性についてですが、視覚障害のある幼児、児童、生徒は周りの状況の把握が難しく、聴覚、触覚等を活用した教育が必要です。盲学校では教員が創意工夫を凝らして開発した教材を使用するなど、指導内容、方法の専門性を高めて、幼児、児童、生徒一人ひとりに応じた教育を行っています。触って学ぶ教材を十分に活用した指導や視覚に頼らない理科実験等、盲学校だからできる学習も多くあります。そのため教員の点字指導力等の視覚障害教育の専門性を向上させる研修を大切にしています。特に新規採用教員等への研修を年度当初に集中的に行い、すべての教員が点字指導の適格性を有するようにしています。盲学校は132年の歴史の中で、先達が視覚障害教育の専門性を築いてきましたが、この専門性を継承し、更に充実、発展させるようにしています。
点字は視覚障害を有する幼児、児童、生徒にとって大変重要なコミュニケーション手段です。盲学校では教員のみならず、寄宿舎指導員、実習助手も点字についての適格性を有するようにしています。また、教員による研修会を通して点字習得に努めている保護者も多くいます。
施設、設備においても、点字、活字双方向の変換ソフト、音声読み上げソフト等や点字プリンター、点字ディスプレイ等の情報機器を充実させて、学習成果が高まるように教育環境を整備しています。
次に盲学校における早期教育の重要性についてですが、幼児期や小学校段階の全盲及び弱視の幼児、児童には、概念形成や行動の基礎を育成していくことが将来の学習や自立のために特に重要です。教育には適時性というものがあり、大きくなってからでは身につかないことが多くあります。また、安心して学べる環境が必要です。環境が整えられている盲学校であれば、この基礎づくりの教育が適切にできます。盲学校では白杖を使った歩行の指導を行っていますが、単に白杖の使い方を学ぶだけではなく、幼少時から安全な環境で積極的に歩くことに取組み、方向感覚と必要な能力を身につけていくようにしています。
最後に盲学校で専門性の高い教育を受けながら、地域で学び、地域で生きるということについて申し上げます。盲学校においては交流及び共同学習が盛んです。盲学校で専門性の高い教育を受けながら、居住地域の小学校、中学校で大勢の児童、生徒と共に学び成果を上げている例も多くあります。
また、高等部卒業後の進路では、理療師を目指して盲学校専攻科に進学する生徒のほかに、最近では盲学校で専門性のある教育を受けた後、大学進学や企業就労を希望する生徒、保護者が増加し、それぞれの希望を実現しています。卒業生は盲学校で一人ひとりに応じた手厚い専門性の高い教育を受けることにより、基礎的な力を身につけ、またその能力、個性を伸ばして社会自立、社会参加を成し遂げています。そして、さまざまな分野で社会貢献を果たしています。
視覚障害のある幼児、児童、生徒の能力を伸ばし、社会自立、社会参加を果たす教育を行うためには、盲学校が最も適した人的及び物的な教育環境を有しています。盲学校が点字指導を始めとする専門的な教育を今後とも提供する必要があります。障害のある人もない人も共に生きるというノーマライゼーション社会の実現に盲学校が果たしている役割は大きく、視覚障害のある幼児、児童、生徒の就学先として確保される必要があります。
以上でございます。
○ 鈴木氏 全国聾学校長会会長の鈴木です。
全国聾学校長会として一言申し上げます。聴覚障害教育では豊かな表現力や言語力を身につけ、自らコミュニケーションしていくこと、最終的に就労し自立していく生徒を育成することが求められています。
まず聴覚活用が不十分な子どもに対しては、手話による教育が主になります。精神的な安定を図り、基礎学力や社会性を培うためにも子ども同士が互いにコミュニケーションできる環境を確保することが大切で、基本的な方向にはこの内容が入っているので評価できます。
また、手話言語を学習する権利を保障すること、手話について適格性を有する教員を確保すること、教育におけるあらゆる形態様式のコミュニケーションを保障するという考え方についても異論はありません。ただ、子どもの聞こえや障害の程度には幅があります。補聴器を使用して教師の話を聞く者、人工内耳を装用している者、聴覚障害以外を併発する者、聾学校普通学級に在籍し発達障害があると言われている者などさまざまな子どもがいます。基本的な方向は聴力や障害の程度に幅があるにもかかわらず、聴覚障害のある子どもすべてをろう者としてとらえ、コミュニケーション手段を手話に限定しています。
情報保障の面から考えてみるとき、手話を使う者も聴覚を活用する者も同等に扱うことが望ましいと考えます。
次に聴覚障害のある子どもと通常の子どもを統合して教育したり、分離して教育するという考え方はともに必要で、保護者の選択に任せるという点も評価できます。基本的な方向に出てくる専門性は、あたかも手話ができればよしとするものです。全人格的な発達を促すためには、コミュニケーション手段以外にも言語指導、聴覚活用、教科指導、職業教育など聴覚障害教育の専門性を担保する必要があります。
手話通訳者や要約筆記者の確保等の記述は一部評価できますが、要約筆記者を配置するということは国語力があって、文章が読めるということが前提です。手話通訳者にしても、自立に向かった力をつけていくのは子ども自身なので、学校教育の段階で第三者を介すということが必ずしも最良の方法ではないと考えます。最も大切なことは、聞こえないということによる不便さを勇気を出して周りに伝えていく力の育成です。
以上、現在までに培ってきた聴覚障害教育の専門性を担保しながら、本改革を進めていくようにお願いいたします。
○ 田村氏 次に全国特別支援学校肢体不自由教育校長会を代表いたしまして、事務局長である東京都立八王子東特別支援学校校長田村より意見を述べさせていただきます。
肢体不自由特別支援学校の現在に至る経過に目を向けますと、障害の重度化、重複化等に伴って医療的ケア体制の構築や個に応じた教育環境の構築及び通学手段の確保等が不可欠であり、こうした状況に対応し条件整備を進めながら克服してきた経過があります。
共生社会を目指すインクルーシブ教育システムの推進については本会の目指すところですが、現在の肢体不自由特別支援学校に在籍する児童、生徒に対し、適切な教育を行うためには次のような教育環境や教育条件の整備について十分に検討する必要があります。
1つ目として、医療的ケア体制についてです。医療的ケアとして注入、吸引、導尿等のケアがあり、学校教育を行う上では不可欠です。現在では多数の児童、生徒について医療的ケアを欠かすことができない肢体不自由特別支援学校の実態があるとともに、小・中学校の教職員が現状のまま医療的ケアを行おうとするならば、その実施体制や安全の確保については詳細に検討する必要があります。
また、小・中学校において医療的ケアを支援、実施する常勤看護師及び教職員に医療的ケア研修を実施するために、指導、助言、育成、相談支援を担う専門医の配置が必要となってきます。
重症心身障害の児童、生徒の医療に関する専門医や看護師の確保も必要となってまいります。
更に保健室要員の確保も不可欠です。
次に個々の児童、生徒の実態に応じた教育環境の総合整備についてです。例えばトイレですけれども、町の公園などで見かける障害者用のトイレではほとんど用をなしません。車いす対応の便器、児童、生徒それぞれのサイズにあった寝台、シャワー、手すりなどさまざまなものが必要です。また、車いす、電動車いす使用者用のスロープやエレベーターもそれぞれの学校に設置するなど、移動のバリアフリー設備の整備が前提となります。
2番目として、個の実態に応じた自立活動に関する専門性ある人材、PT、OT、ST他の確保とそうした自立活動を行うための施設、設備が必要です。
個に応じた学習用備品、医療用備品も不可欠です。
そして、個別の指導計画、個別の教育支援計画を用意する必要があります。
給食のことですけれども、個々の摂食機能に応じた給食、例えば4段階の形態食、初期食、中期食、後期食、普通食などを用意した上で、個々が有する機能に応じた摂食指導を行うためには、専門的職歴を有する栄養士や給食委託業者などが必要になってまいります。現状では非常に厳しいものがあります。
3番目として、通学手段の確保です。通学時に自力で通学が困難な児童、生徒の通学手段を確保する必要があります。例えば乗降スタッフを配したスクールバスやタクシーあるいは通学支援ヘルパーなどです。
更に課外活動、校外遠足、修学旅行、移動教室などにおけるリフト付きバス等の交通手段の確保、引率に加わってもらう医師、看護師等の確保が必要となります。
4番目として、訪問教育対象児童、生徒への対応です。在宅及び入院加療中の児童、生徒に対し、教育面において知識、経験の高い教員を確保し教育の機会を確保する必要があります。また、学校でスクーリングを行う際の児童、生徒の交通手段の確保についても考える必要があります。
5番目として、肢体不自由のある児童、生徒すべてに対する教育の機会均等についてです。例えば肢体不自由という単一障害であるなどの一部の児童、生徒のみがインクルーシブ教育の対象とはならない教育制度の設計が不可欠です。例えば小学校内で医療的ケア対象の児童の保護者だけが日々付き添いの負担を負うようなことがないようにするなど、他の健常な児童、生徒の保護者の負担と負担量が同程度となるように種々の支援が十分に用意されている必要があります。
6番目として、後期中等教育(高等学校等)への進学への対応についてです。現在、高等学校の制度設計上、単位取得者でなければ上級学年への進級が認められていません。仮に障害の有無や程度にかかわらず小・中学校に就学するとなった場合、中学校の教育を終える肢体不自由のある生徒に対し、高校進学時に高等学校教育での単位履修を可能とするためには、障害に対応した教育内容、方法、学校環境、支援体制を整備しておく必要があります。
最後になりますが、肢体不自由のある児童、生徒に関して対応が必要と考えられる内容について述べましたが、近年、特別支援教育制度への移行に伴い、以前に比べて特別支援学校は大きく変化してきています。児童、生徒の障害、疾病の状況も変化してきています。是非学校現場をつぶさに見ていただき、児童、生徒や多くの保護者の声を聞き取るなど、現状を踏まえた上で改善の方向性を明瞭にさせていくことが真のインクルーシブ教育のシステム構築につながると確信しています。
肢体不自由特別支援学校からの意見は以上でございますが、続きまして、病弱特別支援学校の意見についても、私田村から述べさせていただきます。
病弱教育特別支援学校に在籍している子どもたちは、医療の管理下でなければ教育を受けられない子どもたちです。子どもたちの疾病や病状は多様であり、一人一人の病状や教育的ニーズに応じた支援が求められています。
また、最近は医療技術の進展や医療制度の変化により子どもたちの入院期間が短くなり、何回も入退院を繰り返すことが多くなりました。そのため地域の学校と病弱教育特別支援学校の間で転出入を繰り返す子どもたちが多くなってきています。このような現状を踏まえ、病弱特別支援学校としての意見を述べます。
最も述べたいことについてですが、1つは学籍についてです。子どもたち一人一人の教育を保障するためには地域の学校と病弱教育特別支援学校が連携し、継続的な指導をしていく必要があります。それゆえ地域の学校と病弱教育特別支援学校の両方に学籍を付与する、または病弱教育特別支援学校に学籍を移動させなくても、学籍を移動させた場合と同等の教職員の確保や必要な学校の施設設備等の予算が確保できるような制度とすることが重要です。このことは病弱教育特別支援学校における喫緊の課題と考えます。
このようなことから、病気のための特別な教育的支援が必要な子どもたちに教育を保障する制度とするため、学籍の一元化については慎重に制度設計をしていただきたいと考えています。
そのほか、在籍児童、生徒の心理的な課題あるいは重症心身障害児の対応、医療と教育の連携、病弱特別支援学校のこれからの課題については、時間の関係で意見を述べるのは省略しますが、意見書の中に詳しく述べましたので、是非ごらんいただきたいと考えております。以上でございます。
○ 藤井議長代理 時間は大分オーバーしていますが、もう一方残っていらっしゃいますので、もう一方が終えてから質疑に入りますので、よろしくお願いします。
○ 横倉氏 それでは、まとめて短時間でお話をさせていただきます。
私は全国特別支援学校知的障害教育校長会事務局長の横倉と申します。東京都立田園調布特別支援学校の校長でございます。
全国には620校を超える知的障害の特別支援学校がございます。10万人を超える子どもたちが在籍しています。
ここでは2点についてお話をさせていただきます。知的障害の特別支援学校の在籍者増による狭隘化、つまり過密化、過大化と発達障害のある児童、生徒への対応等の課題であります。2点目は、幼稚園、小・中学校、高等学校からの支援ニーズの増大とそれに応える人的配置等の課題の2点についてお話をさせていただきます。
まず1点目でございますが、知的障害の特別支援学校の在籍者数は増加の一途をたどっています。例えば平成10年には5万4,000人が全国の知的障害の特別支援学校に在籍しておりました。平成21年度の在籍者数は10万人を超えてございます。この十数年間の間に4万6,000人を超える幼児、児童、生徒が増えています。中でも高等部の増加が著しいこと、知的障害の程度が軽度の生徒が増えていること、発達障害の生徒の顕著な増加も指摘されています。本年7月8日、東京都教育委員会が東京都特別支援教育推進計画骨子案をまとめました。この骨子案によれば、今後10年間、平成32年まで増加の傾向は続いていくということです。
本会の平成21年度全国調査によれば、在籍者増のために各知的障害の特別支援学校では3,000教室分の特別教室を普通教室に転用したり、あるいは教室をパーテーションで区切って普通教室として使用したり施設設備の課題や教員の配置、専門性の維持、向上、自閉症のある幼児、児童、生徒への対応、教育課程、指導体制等多くの面で課題となっています。
また、知的障害の特別支援学校には改正学校教育法、新学習指導要領において、地域における特別支援教育のセンターとしての機能を充実させることと規定されました。また、幼稚園、小・中学校、高等学校の要請に応じて、障害のある幼児、児童、生徒のための個別指導計画や個別の教育支援計画の作成などの支援に努めることとされています。
知的障害の特別支援学校の幼稚園、小・中学校、高等学校への支援の状況については、平成21年度の本会の全国調査によれば9万6,000件の支援要請を受けています。平成20年度に比べて1万7,000件の増加でございます。今後インクルーシブ教育システム構築の中心的な役割を担うことが期待されている特別支援教育コーディネーターを各校で指名するわけですが、1,759名が全国で指名されています。1校当たり3.2名でした。コーディネーターの指名の状況ですが、授業を持たない専任のコーディネーターがわずか16%であります。それから、授業を軽減してコーディネーターの任に当たっている教員が46%、授業の軽減なしで普通の教員と同じように授業を持ちながらコーディネーターの任に当たっている教員が38%でございます。特別支援学校の特別支援教育コーディネーターが他の教師と同じように授業を持ちながら幼、小・中、高等学校の支援に当たる役割を担っているなど、厳しい状況が続いています。今後とも支援要請が増加傾向にあることが予想されます。新たな人的な配置等、制度的な対応が課題となっています。
私どもはこうした一刻の猶予もない課題を一つひとつ解決することを通じて、初めて共生社会の実現が可能になるんだと考えています。厳しい財政状況を理由にこうした課題をそのままにして制度改革が行われるようなことがあれば、知的障害のある幼児、児童、生徒の教育に重大な影響、弊害が生じるのではないかと危惧しています。私たちはこうした基本的な課題を一つひとつ解決していくこと、改善の方向性を明瞭化させていく営為こそが真のインクルーシブ教育システムの構築の近道になるものであると確信しています。
ありがとうございました。
○ 藤井議長代理 5人の報告者、どうもありがとうございました。
これから約20分間ちょっとになりますけれども、今の5人の方々への質問、意見交換をさせていただきます。なお、今日は第2コーナー、第3コーナーともどもやはり教育に関して、最後は総括的な質疑を交わしますので、とりあえずこのコーナーは5人の方々への質問、意見とさせていただきます。
まず発言をしたい方は挙手をいただけますか。何人いらっしゃいますか。いっぱい挙がるんですね。7人の方ですね。まず最初に3人の方から順番にお話をいただきます。新谷委員、竹下委員、大谷委員の順番で、あとは後半にいただきます。
新谷委員、よろしくお願いします。
○ 新谷委員 全難聴の新谷です。トップバッターで失礼します。
先日、東京の聾学校の見学に行ったんですけれども、そこの聾学校の中では普通の学校のような知徳、徳育、体育の授業にプラスして、日本語の教育を非常に熱心にやっておられて感銘を受けました。手話を使っての授業は当然やっておられますけれども、残存聴力の活用ということで、先生方はFMの発信機を持って、生徒さんは受信機で受けながらやっているというで、すべてのクラスがそれがあったので、非常に安心しました。障害者権利条約が聴覚障害児教育というふうに言わないで、聾児教育と言ってしまったために、聴覚障害児の問題イコール手話の問題というように非常に狭くとらえられている。それは障害者団体の中でもそうなんですけれども、聾学校の現場ではそうではなくて、きちっと日本語教育というものを大切にとらえて、実践されているので非常に感銘を受けました。
私たち中途失聴難聴者にとっての課題について聾学校はきちっとやっておられる。だけれども、ほとんどの難聴の子どもたちが通常教育、通常学級におられる。この問題の解決はこれからいろんな議論が始まって、国立特別支援教育何とか研究所が軽度、中度難聴児の教育の在り方についての研究を始められるというので、その成果を待っていたいと思います。
聾学校の先生に聞くのはちょっと筋違いかもわかりませんけれども、現在の通常学級で定期的な残存聴力の検査をやるということは難しいんでしょうか。聾学校に聞きますと、定期的な聴力検査というものはいろんな資格問題があってできない。だけれども、長期の休みがあったら、休み明けには必ず生徒さんには聴力測定をやって、聴力レベルのチェックはしているというお話があったので、通常学級でこういうことが実行できないのかどうか。私はこれはやればできるのではないかと思います。
それから、通常学級の場合ノートテイカーとかいろいろありますけれども、そういう問題とは別にちょっと聴力に問題のある生徒さんが見つかったら、先生方がFMのマイクを持って、聴力の困っている生徒さんはFMの受信機を持ってやれば、それほどの費用をかけないで、その生徒さんの残存聴力を活用する授業が可能だと思うんですけれども、そういうことの可能性について聾学校の専門知識をお持ちの方、校長先生もおられますので、御意見をいただければと思います。
以上です。
○ 藤井議長代理 多くの発言をとりたいと思っていますので、発言者はできるだけ端的にお願いいたします。
竹下委員、どうぞ。
○ 竹下委員 竹下です。短くします。
まず1点目、専門性と強調されたと思うんですが、現実には総合支援学校が設置されてきていることが理解できませんので、この点についての御説明をお願いします。併せて専門性との関係でいいますと、澤田校長から盲学校ないし視覚特別支援学校の専門性の強調があったかと思うんですが、全国的には盲学校単独校が廃止されて統合化、併設化が進んでいるのをどうお考えになっているのか。これが1点目の質問です。
2点目は、盲学校あるいは視覚特別支援学校に限っての質問になるかと思うんですが、点字を習得している教員については調査すらされていないということになっている。盲学校の先生は非常に短期間でしか赴任していない現実からすれば、心理面での専門性や点字指導における専門性は十分と言えるとお考えかどうかお聞きしたいのが2点目です。
最後ですが、例えば視覚障害や他の障害者について統合教育が実施された場合に、それがどういう弊害をもたらすとお考えなのか。具体的に指摘できるものがあれば教えてください。以上です。
○ 藤井議長代理 1点目については澤田先生に対してですか。
○ 竹下委員 1点目は文科省に対してです。
○ 藤井議長代理 斎藤課長ですね。
○ 竹下委員 2点目は盲学校の先生に対してです。
○ 藤井議長代理 澤田先生でいいんですね。
○ 竹下委員 3点目はどなたでも結構です。
○ 藤井議長代理 わかりました。
大谷委員、お願いします。
○ 大谷委員 大谷です。たくさんのことを聞きたいのですが、端的にします。
○ 藤井議長代理 的を得たものをお願いします。
○ 大谷委員 まずこれは尾崎さんに聞きます。日本独自のインクルーシブ教育と主張されておりますが、現行教育システムが原則分離のまま特別支援となっておりますけれども、日本独自ということは統合しないで特別支援をすると考えてよろしいですか。これが第1点です。
それから、尾崎さんに同じく聞きますけれども、学籍について一元化すると特別支援学校設置の根拠がなくなると御主張されていますが、特別支援学校への就学を否定しているわけではありませんので、これは杞憂ではないかと思います。あるいは立法的に解決できることであると考えています。例えば特別支援学校を支援籍として位置づけて、そこに予算配分すれば済むと考えていますけれども、それについて御意見を伺いたいと思います。
尾崎さんにですが、本人、保護者が望む場合だけ特別支援学校に就学できるとするようなときには、乳幼児から一貫した相談支援体制を確立することが前提であると述べておられますけれども、これは地域の学校に就学する場合にも乳幼児からの一貫した相談支援体制が必要だと思います。なぜ殊更に、特別支援学校を選択した場合にこれが前提となるのかお聞かせ願いたいと思います。
やはり尾崎さんに伺いたいと思います。就学の在り方、決定の在り方なのですけれども、3者の合意によって決定する必要があるという御主張をされています。そして、我々の意見も3者で合意する必要があるとなっています。我々というのは、この推進会議の意見も3者で合意する必要があると主張しております。そうすると、保護者の合意なくしては決定されないと理解していいのでしょうか。
それから、3者の合意を調整する機関を提案されていますが、これも同じく我々の第一次意見の認識の中で第三者機関による調整を主張しておりますけれども、これと同じことを主張されているのかどうかがちょっと読み取れないので、この点に関して説明していただきたいと思います。
併せて客観、公正な見識を持った方の調整が必要だと主張されておりますけれども、この場合の客観、公正な見識とはインクルーシブ教育の方向性を持った権利条約が要求する見識と理解していいでしょうか。また、当事者の参加を我々は要求しておりますけれども、これを否定する趣旨があるのかどうかもお聞かせ願いたいと思います。
今度は横倉さんにお聞きしたいと思います。支援学校を増設するべきであるという意見が多数ある。その理由として、希望者が増えているということを挙げておられますけれども、これは通常学級、学校への就学及びそこでの支援が現実に保障されていないからということではないのでしょうか。その点の認識をお聞かせ願いたいと思います。
加えて横倉さんにお願いしたいのですけれども、知的障害の就学では、生活する力、生活中心の教育がメインであると明確に述べておられますが、それは私も同感であります。まさにそれであるならば、地域の学校でともに生きる中でこそ生活する力、生活中心の教育が現実に生きてくるのではないかと思っております。
最後に田村さんにお聞きしたいと思います。病弱者の子どもに対しては二重籍あるいは学籍を地域の学校に残したまま、学籍を移動しなくても特別支援学校と同等の支援が得られる方法が喫緊の課題だと述べておられますけれども、私もまさにその方向を追求するべきだと思っております。ただし、田村さんはこれを一元化することに慎重とするべきだという意見を述べておられます。私は一元化した上、地域の学校に学籍を残したまま特別支援をするべきだという主張をしておりますけれども、それがこれと矛盾するとお考えになっている理由をお聞かせ願いたいと思います。
併せて、同じ田村さんの肢体不自由教育校長会では、訪問教育として述べておられることが若干、病弱者での意見と矛盾するのか、抵触するのかわかりませんけれども、それと同旨の発言なのかどうか確認させていただきたいと思います。
最後に尾崎さんに虐待のところだけ聞き漏らしました。
○ 藤井議長代理 大谷さん、大分オーバーしています。
○ 大谷委員 ごめんなさい。虐待についてはどなたか聞いてください。
○ 藤井議長代理 虐待はまた後であります。
○ 大谷委員 そうですか。以上です。ごめんなさい。
○ 藤井議長代理 今のは大分ルール違反ですね。
新谷委員から質問があった件が1点、今の大谷委員から2つあったので、併せて3点について横倉さんからお答えいただけますか。
○ 横倉氏 私からでよろしいですか。
まず知的障害の特別支援学校の在籍者数の増大のところでございますが、これは要因としていろいろ考えられ、国立特別支援教育総合研究所等でも研究をしているところでございますが、なかなかこれという分析なり調査の結果、理由というものは出ておりません。ただ、例えば、これまで私どもが個別の教育指導計画あるいは支援計画、そういったものに依拠して指導を行って、教育の成果を挙げそれらが認められてきた部分もあるんだろうと思います。それから、就労でありますとか、社会への卒業後の移行でありますとか、そういう部分で課題はありつつも成果を挙げそれらが認められてきた。そういうところから、在籍者数の増加という現象が出てきた。そういう様に思っています。特別支援学校知的障害教育校の増設ということは、ただ単にそれを主張しているわけではなくて、現在、置かれている各知的障害の特別支援学校の教育条件、例えば、特別教室がなかったり、あるいは普通教室にどんどん転用されていくといった状況を踏まえて、そこの改善をお願いしているところでございます。そういう様に御理解いただければと存じます。
それから、生活中心の教育でございますが、これはまさしく知的障害の特別支援学校がずっと取り組んできた教育の中身及びテーマでございまして、実際生活の中で子どもたちが生き生きと生活をしていく、力をつけて卒業していくことをねらって教育活動が展開されるわけで、通常の教育の中身と同じような手法で教育活動を展開していくということでは、教育的な効果がなかなか得られないというこれまでの経験を踏まえて展開をされてきています。今後ともそういった子どもたちの様子、実態を踏まえて、障害等の行動特性等を踏まえた指導を展開していく必要があると思っています。
以上です。
○ 藤井議長代理 済みません。私が間違えました。新谷さんの御質問に鈴木さんお答えいただけますか。
○ 鈴木氏 難聴者への配慮ということで2点あったと思います。
まず聴力検査の問題なんですけれども、聾学校では自立活動の担当教諭が聴力測定室で聴力測定を行うということです。通常の学校には測定室がありませんので、センター的機能を果たす聾学校に来ていただければ、測定は可能だということです。
2番目の残存聴力を生かすためのFM補聴器とかその使用についてはどうかという話だと思いますが、私はそのとおり、是非通常の学校でもそういうことをやっていただければいいと思っています。ただ、予算的にそれが可能かどうかというのはまた別な問題として必要なことだろうという具合に考えております。
以上です。
○ 藤井議長代理 竹下委員は3つありましたが、まず斎藤課長から1点目のお答えをいただけますか。
○ 斎藤課長 文部科学省特別支援教育課の斎藤でございます。
竹下委員の御質問へのお答えの前に、今、鈴木校長からお話をした難聴のお子さんに対する指導支援、通常学級における在籍生への支援も含めてということだと思いますが、私から若干補足させていただきます。
まず通常学級の在籍する難聴等のお子さんについては、通級による指導の対象になっておりまして、最新の21年度のデータで申し上げれば、難聴その他のお子さんが全国で2,118名通級指導の対象になっております。この指導の中には、聾学校における専門的な指導、支援のノウハウとか蓄積、あるいは人的なリソースを生かした対応もされているところでありまして、例えば聴力の測定等を含めて更に専門的な指導の充実に努めていく必要があると考えてございます。
もう一点、特別支援教育総合研究所での調査、研究について言及がございました。特別支援総合研究所におきましては、22年度からスタートいたしました新しい研究テーマとして、「軽度・中等度難聴児に対する指導と支援の在り方に関する研究」というテーマを立てております。その中で例えば聴覚学習のプログラムとかコミュニケーション力、学力、言語力の育成の在り方、自己理解を含めた心理的課題等のテーマについて検討して、望ましい支援、指導の在り方を2年間の研究テーマとしてまとめていくことを考えております。この研究に当たっては、今、現場の課題とか、教員、保護者からのヒアリング等も含めていろんな研究を計画しておりまして、通常の学級における難聴のお子さんへの指導、支援にもこの研究成果が生かせると考えてございます。
それから、竹下委員から視覚障害の特別支援学校について、実際には総合支援学校という形で複数の障害種へ対応する学校が増えているという御指摘がございました。今、最新のデータを参照しますと、21年度の数字として視覚障害のお子さんを専ら対象としている学校の数は、全国で68校でございます。生徒さんの数にして3,400人余りということですが、実際には平成19年度からの制度改正に伴いまして、重度重複の障害のお子さんへの対応ということも視野に入れまして、従来の盲学校、聾学校、養護学校を障害種別を超えた特別支援学校という形に一本化しておりまして、これに伴って幾つかの自治体においては、在籍する児童、生徒さんの数の減少等も踏まえて、複数障害に対応するより大きな特別支援学校の中に統合するというケースも出てきていると承知しております。その辺りの実際の学校の統廃合や整理の計画につきましては、自治体ごとの判断、事情により行われているものでございますけれども、国として特別な基準なり規制をしてゴーサインを出したり、ストップをかけたりということではございません。
いずれにしても、視覚障害のお子さんをより大きな特別支援学校に受け入れる際においては、やはり教員の専門性の担保を重要な課題として認識して、しっかり対応していく必要があると考えておりまして、そのためには、今、ちょうど中教審で議論されておりますような教員養成の在り方も勿論関係ございますし、更にはこれからの現職教員の研修の在り方、そういった新しい動きも踏まえて更に見直し、強化をしていく必要があると考えております。以上です。
○ 藤井議長代理 それでは、澤田さんお願いできますか。
○ 澤田氏 今の課長のお話を受けまして、竹下委員から私はどう考えるかということでしたので、お答えさせていただきます。ちょっと施策に関わることなので答えにくい質問ではありますが、私の考えるところということで申し上げさせていただきます。
総合種というか併置の学校ですが、こういうふうに考えております。まず盲学校は1県1校のところが大部分ですから、そういうところはやはり視覚障害教育に特化した学校が望ましいと思っています。専門性の維持あるいは小・中・高等学校への視覚障害教育のセンターとしての役割を果たすためには特化した学校がいいのではないかと思っております。
それから、1県1校以外のところ、東京などもそうですけれども、そういうところはこういうふうに考えております。1つは併置が可能となった理由は、種別の違うそれぞれの教育のよさを生かすということですから、その理念に沿った併置ということであれば、そういうケースも考えられると思っております。
もう一つ、盲学校は居住地のすぐ近くに学校があるというわけではございませんので、例えば居住地のすぐ近くに知的障害の特別支援学校があって、そこに視覚障害の部門もあるとなれば、居住地の近くで視覚障害教育を受けられる。ですから、そういう形であればいいと思っております。いずれにしろ、視覚障害教育の専門性がきちんと確保されることが必要であると思っております。
もう一点、専門性ですけれども。異動が非常に激しくて、教員がしょっちゅう変わっているのに専門性が確保できるのかというご質問ですが。これは確かに校長としては非常に苦労しているところであります。異動のサイクルが大分早くなっていますので、とにかく専門性を確保するということで、例えばこういうふうにしております。実は今日ここへ来る前にも文京盲学校で全国の各学校の中心となる先生方を対象に点字の研修会を開催しています。その先生方から各学校の先生方にお伝えいただくという研修をしております。点字等に関する研修を各学校では年度当初に集中的に実施して、人事異動による転入者についても専門性を確保するようにしております。
以上でございます。
○ 藤井議長代理 澤田さん、もう一つ竹下さんの最後の御質問で、インクルーシブ教育、統合教育は普通学校、通常学級では専門性を含めてできないのかということ。つまり、専門性は普通学級あるいは通常学級の中ではできないのかということなんですが、これも併せてお答えいただけませんか。
○ 澤田氏 それについては2点考えております。
実は私どもの学校は高等部の学校ですから、小学生、中学生のときに通常の学級で教育を受けた生徒が大勢おります。その中で感じるのは、やはり専門の教育です。特に点字等はもっと早い段階から盲学校へ来て教育を受けていれば、しっかり点字等の力を身につけることができたのに、残念だということがよくあることです。
もう一つ、通常の学級で学んできた生徒はそれぞれ小・中学校でも先生方は非常に配慮してやっていただいているのですけれども、やはりうまくいかなくて、それは学習だけではなくて心の問題でも傷ついてきたという生徒もおります。ですから、その辺は盲学校で小さいときからしっかり教育を受けていた方がいいと考えております。ただ、集団ということは大事ですから、先ほど申し上げましたように、小・中学校での共同学習も大事にしながら専門の教育をしっかり受けることが大事だと思っております。
以上です。
○ 藤井議長代理 いろんな御意見があろうかと思いますが、まずざっとお答えいただきましょう。尾崎さんには7つぐらい細かくありましたので、かいつまんでお答えいただけますか。
○ 尾崎氏 時間がありませんので、かいつまんでお答えします。全特長の尾崎でございます。
まず最初に日本独自のインクルーシブ教育の全特長が持っているイメージは、どんな障害の重い子も学校教育の対象になっている。生命維持装置が外せない子でさえも学校は訪問教育をして、教育の対象にしています。そこで社会との接点を持っているということがあります。そういうことが1つです。
それから、障害の専門性のある教員のいる学校あるいは集団にある学校に教育を受ける。その中で能力を最大限に生かす教育をしているということも特別支援学校の役割ということが2点目です。
3点目としては、現在の特別支援教育体制では発達障害も含めて小・中学校の通常学校に在籍している人にも特別支援教育を行っていく。その支援を特別支援学校はしているということで、そういう意味で日本独自のインクルーシブ教育システムが形づくられてきているのではないかと私どもは考えております。
学籍のことですが、これを議論すると大変なので1つだけ言います。学校は12月、1月に入学相談等をしまして、来年学校に何人生徒が入ってくるのか。それによって学級数が決まり、学級数が決まることによって先生の数が決まり、先生の数が決まることによって教育活動の計画ができ、教育活動の計画ができたことによって初めて教育内容についての実行ができるというシステムになっています。そういうシステムの中で学籍のないということになると、どこを起点にそういう教育計画を立てたらいいのか全く見通しがつかなくなるということだけ申し上げます。
それから、本人、保護者が望む場合にのみ特別支援学校や特別支援学級に就学できるとする考えをとるとお話したことに関することですが、私は特別支援学校や特別支援学級に入ってくれば、その子たちなりの個別の教育支援計画、地域生活の支援も含めたものを総合的に支援することができます。そうではなくて、通常の学級に入った場合はなかなか総合的な支援が受けられない。保護者の支援も必要だと思いますし、そういう場合があるので、通常の学級に入る場合は特に医療、福祉関係機関との療育相談支援とか就学した後の支援をどういうふうにしていくのか。そういうところをきちっと考えるべきではないかという趣旨でお話を申し上げました。
第三者の合意についてですが、第三者機関というのは通常の学級にいる場合でも特別支援学校にいる場合でも同じで、その子にとって最大限に能力を伸ばせる教育がされているのか。そして、必要な支援が従前に受けられているのかどうか。今、その子の状態がどうであるか。それを医療関係、福祉関係また教育関係者も含めたところで話し合って、その子にとって一番いい教育環境とは何かを考える機関だと考えております。
大ざっぱで済みませんが、以上にさせていただきます。
○ 藤井議長代理 これは大変大事な内容を含んでいますので、質問者でどうしてもこれはもう一度ということはございますか。新谷さん、竹下さん、大谷さんには再質問を認めますが、いかがでしょうか。
大谷さん、先にいきましょう。端的に発言してくださいね。
○ 大谷委員 後ろからいきます。客観、公正な見識を持ち合わせた構成員が必要と第三者調整機関を述べているんですが、客観、公正な見識ということの意味を聞いたんです。本人のためということはわかるんですけれども、インクルーシブ教育の方向性を持った権利条約の理念ということに関してお考えはないですか。当事者もそういうことに参加するということに関してお考えはありませんかということについてもお答えをいただきたいと思います。
○ 藤井議長代理 これに関しては、尾崎さんお願いできますか。
○ 尾崎氏 インクルーシブの教育をどういうふうにとらえるのかというのは議論があるところです。特別支援学校においてもインクルーシブ教育のシステムの一環であると我々は考えておりまして、そこでやられることは交流及び共同学習をどういうふうに進めていくのか。そして、通常学級あるいは地域生活とのつながりを特別支援学校ではどういうふうに進めていかなければいけないのか。そういうことについての協議はこれからも関係機関と併せてやっていかなければいけないし、共同学習の場の確保、そして、そのことに対する理解を求めることは学校としてやっていかなければいけない。そこの助言をいただくのがそういう機関だと考えております。
○ 藤井議長代理 それから、当事者参加の関係はどうですか。
○ 尾崎氏 当然当事者もそこでどういうことを学びたいのかという意見はしかるべきですし、我々の個別の教育支援計画の中にインクルーシブ教育システムということであれば、その中のどういうところで、どういうことを学びたいのか当事者自身も意見を言って、その調整をしていかなければいけないだろうと考えております。
○ 藤井議長代理 斎藤課長、どうぞ。
○ 斎藤課長 今、尾崎会長からお答えした幾つかの事項は、どれも大変重要な事項だと思っております。例えば客観、公正な合意形成、調整の在り方は勿論ですし、学籍の問題につきましてもいろいろ重要な御指摘がございました。これらについては、今日の御議論の内容も、中教審のこれからの委員会での審議、検討にも是非生かしていきたいと考えております。
若干の補足を申し上げますと、特に学籍の問題について、現在の学校教育制度の下では、例えば通常の学級において一部特別な指導を受ける通級指導の担当教員というのは、通常の学級の教員の配置とは別に加算される形で配置をされています。それと同時に、特別支援学級に在籍する生徒の多くは、交流及び共同学習をやっておりますが、その共同学習の時間が幾らあったとしても、やはり特別支援学級の先生と交流先の学級の先生は一種の二重配置になっております。つまり、これは見方を変えると一種の二重の学籍ともいっていいような仕組みでありますが、学籍をとにかくどちらかに整理していこうということを徹底していきますと、恐らく教員の数は減ってしまうおそれがあると思っております。ですので、そこはうまく制度設計をして、できるだけ特別の指導、支援を行う体制と通常の学級双方に一種の学籍が置けるような仕組みができれば一番いいわけでありまして、是非そういった方向を含めて検討、整理をしていくべきだと考えております。
それから、第三者の合意につきまして、合意がなされない段階でどういう調整をするかという視点も大事ですが、より重要なのは、やはりそういった紛争が起こらないように、できるだけ就学相談の段階で保護者と学校と教育行政3者の合意ができればいいわけであります。
そのためには、以前のヒアリングの際にお答えした回答書にも記述してございますけれども、例えば今後の就学プロセスの改革の在り方、方向性の一例として、より早期からの相談支援を行うと同時に、就学委員会に障害当事者や障害当事者団体の地域支部、親の会など多様なメンバーに参画いただいたり、意見を反映していく仕組みを入れていくことも重要だと考えておりまして、そういった視点についてもこれから中教審における審議、検討の中でしっかり踏まえて議論していきたいと考えております。
以上です。
○ 藤井議長代理 斎藤課長にはまた最後のコーナーで少し時間をとってありますので、その部分に集中して使っていただきましょう。
新谷さん、そのほかにどうしてもありますか。
○ 新谷委員 重大論点ではないので申し訳ないんですけれども、先ほど聾学校に来れば聴力検査をするというお話がありました。それはわかるんですけれども、文部科学省にお伺いしたんです。民間の医療機関とか補聴器販売店などいろんなところで聴力検査ができます。そこで早期発見、要するに聴力の問題のある生徒さんを発見するというのが聴覚障害児教育すべての原点だと思います。そういう意味で、もう少し体制として工夫の余地があると思います。幾らでも工夫の余地はあると思うんですけれども、前向きな回答はいただけないですか。
○ 藤井議長代理 お答えはありますか。
○ 斎藤課長 先ほど聾学校からお答えしたとおりでありますけれども、とにかく文科省のシステムの中で、学校教育の中で早期から難聴のお子さんの指導、支援に対応するとしますと、一義的には就学前の検診であるとか、あるいはより早期の段階で聾学校の相談教室に訪ねて来られたお子さんが狭い意味での対象になるわけです。
ただ、聴力についてはより早期からいろいろな検査なり検診を通じてわかるわけですので、例えば1歳半検診であるとか3歳時検診、5歳児検診があります。これは教育行政の側というよりは保健医療行政の立場で、各自治体によって義務づけをしているところとそうでないところがございますけれども、それぞれの早期からの検診の仕組みはあるわけであります。ですから、そういうところと聾学校を始めとした教育機関がより連携を深めることによって、例えば聾学校の相談教室を早く訪ねてもらうとか、あるいは聾学校が近くにない場合でも通常学校の難聴のお子さんに対する指導教室の相談を何とか受けてもらうとか、いろんなやり方がそれぞれの地域によってあると思いますので、それぞれのリソースを大事にしながら、早期からの指導、支援につなげられるように、ここは文科省としても是非厚生労働省と連携を深めていくべきところだと思っております。各地域にも連携のための協議会というものがございますので、そういった協議会の関係と話をする機会があれば、是非そういった方向についても働きかけはしていきたいと思っております。
以上です。
○ 藤井議長代理 田村さん、先ほど病弱関係のお話をなさったんですが、それについてお願いします。
○ 田村氏 まず病弱教育特別支援学校の意見の中での学籍の一元化については慎重な制度設計をということの真意ですけれども、先ほど両方に学籍を付与する。または学籍を移動させなくて小・中学校に置いたとしても、同等の教職員体制や学校設備等の教育を受けられるようにするなどということを述べました。つまり、いろんなやり方をしていかないと、単なる一元化をしただけでは、小・中学校に教育の責任を置いたとしても病院は離れているわけですので、実質的には欠席のままいってしまう。いろいろな手続をしている間に、そのお子さんは学習の空白ができてしまう。病気で苦しんでいる子どもたちに適切な教育を保障する、学習空白をつくらないような工夫を加味しながらやらないと、もしそうした場合の制度に魂が入っていかないということを申し上げたということです。
次に肢体不自由の訪問教育については矛盾があるのではないかというお尋ねですけれども、肢体不自由特別支援学校が二百数十校ありまして、1万8,000人の在籍児童、生徒がいます。この中で訪問学級籍になっているお子さんは約1,300人ですけれども、このお子さんたちは学校に通うのが難しい健康状態であったり、重い肢体不自由があります。こうしたお子さんがもし小・中学校に学籍を置いたときにいろんな面での健康維持に配慮しながら、しかも非常に障害が重い中でのそのお子さんに応じた教育を小・中学校がどのように担うのかということについて、そのお子さんに質の高い教育をきちんと用意するためには、十分に考えていく必要があるということで、矛盾するものとは考えておりません。
以上でございます。
○ 藤井議長代理 御意見はまだあるかと思うんですが、時間がきていますので、あと4人の方は後で優先して御指名しますけれども、どうしても今の5人の方がいるうちにどうしてもということに絞ってありますか。
全体のテーマはインクルーシブ教育です。この解釈に本来の大きな意味での方向性を一致できないかということをベースにしていきながら、かみ合う議論と一歩でも前に進めていくということがポイントだと思いますので、そういうことを踏まえて更にどうしてもということで、久松さんの手が挙がっています。尾上さんもそうですか。それから、関口さんもそうですか。撤回しますね。あと長瀬さんですか。後でやりますか。関口さんも後でいいですか。それは後にやります。
それでは、久松さんと尾上さんと長瀬さんと北野さんですね。わかりました。
久松さん、短めにしてください。
○ 久松委員 全日本ろうあ連盟の久松です。ルールを守ります。
質問させてください。学校の先生の数についてお聞きします。それぞれ5団体からお答えをいただきたい。各校長会が人数を把握していない場合はおおよそで構いません。例えば今の盲学校では学校の先生の数は何人いらっしゃいますか。先生の中に盲または障害を持つ当事者の先生は何人いらっしゃいますか。それと盲学校は68校ありますので、校長会のメンバーは68人いると思いますが、68人の中に障害を持つ校長先生は何人いらっしゃいますか。5年後その数は増えると思いますか。見通しについて、それぞれの団体の立場から教えていただきいと思います。
最後に斎藤課長にお聞きしたいことがあります。
○ 藤井議長代理 途中で申し訳ありませんが、斎藤課長への質問は最後のコーナーがありますので、そこにしていただけませんか。
○ 久松委員 わかりました。それでは、最後にとっておきます。
それでは、5団体の方にお答えいただきたいので、それぞれの立場でお答えいただければありがたいです。
○ 藤井議長代理 尾上さん、お願いします。
○ 尾上委員 尾上と申します。今日はどうもありがとうございました。
3点質問をしたいと思います。
1つは尾崎先生から、先ほど12月までに学籍といいますか、就学先を決定しておく必要がある、か、12月までに人員配置のメドが立たないといけないということがありました。例えば大阪府の東大阪市では10月ないし11月ぐらいに、まずは地域の校区の学校への就学通知が送られて、地域の学校に在籍をして、その上で特別支援学校を希望される方は年内中に申し出るという仕組みになっています。もしそういう仕組みならば、先ほど尾崎先生が懸念されていた問題というのはクリアーできるのかどうか。その点を1つお聞かせ願いたいのが1点です。
2点目ですけれども、澤田先生に対してです。先生の資料の中で点字指導者としての適格性を有する教員の確保というのは必要最低限である。最低限を確保しなければいけないという話でしたけれども、文科省の資料では点字を教える先生がどれだけいるのかというデータが出てきていないので、必要最低限というのは基本的に盲学校の先生は点字を教えることができるという理解でよろしいんでしょうか。それが2つ目です。
3つ目ですけれども、田村先生の肢体不自由の部分で書かれていた5番なんですが、例えば小学校内で医療的ケア対象の児童の保護者だけが付き添いの負担を負うようなことがないようにするとありました。これはまさに推進会議でもその方向を目指してきたというか、その方向でインクルーシブ教育をしていこうということで、例えばバクバクの会というところで活動されている人工呼吸器を付けたお子さんが地域の小・中学校で学ばれて、更には大学まで行かれたり、今、就労されている方などもおられます。そういったことが当たり前になっていけばいいという理解でよろしいでしょうか。
以上3点です。
○ 藤井議長代理 北野さん、どうぞ。
○ 北野委員 私も3点お願いしたいと思います。
○ 藤井議長代理 3点というのは多過ぎると思います。
○ 北野委員 最初の2点は尾崎先生よろしくお願いいたします。
1つは1ページ目のところで、インクルーシブ教育と特別支援教育というのは同じ方向を向いていると書いていらっしゃいますので、同じ方向とはどんな方向なのかを明確にお答えいただきたいと思います。
2つ目は、インクルーシブ教育というのは子どもの能力を可能な限り最大限に発達させるという権利条約の趣旨と述べておられますけれども、前にも言ったんですが、権利条約の趣旨というのは3つございまして、それは1つだけではありません。例えば次の3ページでも特別支援学校は最大限発達させるために必要であると書いてもらっていますけれども、実はそれは障害者権利条約24条1のb項だけでありまして、a項は人権及び人間の多様性の尊重を強化することと書いてありまして、つまり、ともに学び、ともに生きる多様な人々が存在する社会を形成するための一員としての人格の強化を目標にしております。あるいはc項も自由な社会に効果的に参加することを可能にすることとありまして、社会参加、社会参画を可能にする人格形成が教育の目標として明確に定められています。
ということは、もっといいますと、特別支援学校はb項のみを強調しておられるということは、そのことのみしか展開できないとしているのか。a項やc項については、特別支援学校では難しいという理解になってしまうと思うんですけれども、そこをどう考えるか御説明願いたいと思います。
○ 藤井議長代理 2点目はだれにお答えいただくんですか。
○ 北野委員 2点目も尾崎先生にお願いします。
○ 藤井議長代理 1点目も2点目も一緒ですね。
○ 北野委員 最後はどの先生でも結構なんですけれども、実は文科省の調査で平成20年度に性的虐待で176人の教員が処分を受けておられますが、そのうち特別支援学校の先生は13名いらっしゃいます。これは特別支援学級やそれ以外のものを除いてですけれども、やはり個別指導が増えて密室化している特別支援学校とか、教育の実態を踏まえてどういう対策が必要であるとお考えなのか教えていただければと思います。
○ 藤井議長代理 北野さん、先ほど私が虐待は後でと言いましたね。
○ 北野委員 どうしても校長先生、学校の先生方に聞きたいということであります。済みません。
○ 藤井議長代理 だれか代表して。
長瀬さん、どうぞ。
○ 長瀬委員 ありがとうございます。東京大学の長瀬と申します。今日はヒアリングへの御出席、本当にありがとうございます。
まず2つお伺いしたいと思います。
1つは特別支援学校長会の尾崎先生よろしくお願いいたします。先ほど大谷さんから御質問があったのでそれでカバーされたかと思ったのですが、もう少しお伺いしたいと思っています。それは日本独自のインクルーシブ教育というところです。他分野の場合ですけれども、今まで日本独自とか日本型というと余りうまくいっていないことが往々にしてありました。先ほど御説明をいただいたのですが、特にこういう国際的な人権条約について日本独自とは何かというのかということをもう少しお話をしていただきたいと思いました。先ほどのお話ですと、既に行われているのが日本独自のインクルーシブ教育システムとも受け取られたのですけれども、よろしければ日本独自という部分についてもう少しお話を伺いたいと思います。やはり普遍的な国連の障害者の権利条約というものに日本政府もインクルーシブ教育というところを含めて、最終的には合意したという経緯がございますので、日本独自の部分はどの辺にあるのか教えいただければ幸いです。
もう一点は、全国聾学校長会の鈴木先生にお伺いしたいと思います。日本の聾教育の中で今どのように明確に手話を言語として位置づけた取組みがなされているのか。この点についてお伺いしたいと思います。
130年前にイタリアのミラノの世界ろう者国際教育会議で手話ではなくて、口話法にすべしという方針が出された悪名高いミラノ宣言がありますけれども、ちょうど先週カナダのバンクーバーでまた世界ろう者教育国際会議が開かれて、130年前の手話を禁じて口話法に転じたものが誤りであったという声明が出されて非常にうれしく思いました。
日本の中でも1933年の鳩山文部大臣の訓示以来、口話という教育がなされてきたわけですけれども、それが徐々に転換してきたとはいえ、まだ十分に手話を明確に言語として位置づけた教育がなされないと伺っていますので、今どういうふうにそうした歴史や認識に立って手話を位置づけていらっしゃるのかお伺いできれば幸いです。よろしくお願いいたします。
○ 藤井議長代理 先ほどの久松さんの御質問は答えられる範囲で結構です。障害種別ごとの全国の特別支援学校の教員の数、障害を持った教員の数、また校長の数、5年後の展望ということでした。澤田さん、鈴木さん、病弱を併せて田村さん、横倉さんは知的障害教育ということで順番に御発言をお願いします。
○ 澤田氏 教員の数は文科省からお答えいただいた方がいいと思います。
校長の方ですが、全国盲学校長会は68校なのですが、大阪は校長級が2名ということで69名の会員がおりまして、その中で視覚障害のある方は4名です。その4名のうち2名の方は全盲の先生です。
以上です。
もう一つ質問があったんですけれども、それだけでよろしいんですか。
○ 藤井議長代理 教職員の中での障害を持った方の数に関して、将来5年後に向けてお考えはありますか。
○ 澤田氏 盲学校には理療師を養成する課程があります。この課程の教員は盲学校出身者がほとんどなのです。ですから、もともと視覚障害のある教員が多いという状況があります。また普通科の方にも、視覚障害、全盲の教員が私の学校では最近増えてきております。
○ 藤井議長代理 同じく鈴木さん、よろしいですか。
○ 鈴木氏 聾学校ですけれども、正確な数字はわかりません。昨年度のデータですと、教員の数は4,100名弱です。この中には養護教諭と寄宿舎指導員、実習助手などは含まれていません。それが4,100名弱です。正確な数字はまた後でお願いします。
それから、聴覚障害教員ですけれども、今年度は教諭が265名、実習助手が37名、寄宿舎指導員が43名、合計345名になっております。
以上です。
○ 藤井議長代理 田村さん、お願いします。まず肢体不自由からお願いします。
○ 田村氏 肢体不自由ですけれども、教員が1万1,000人ほどいます。校長は220~230人ですけれども、障害のある校長の数というのは、教育委員会では集計していると思いますが、私どもでは掌握していません。ただし、今年の年度初めのところで車いすの校長さんがお一人いらっしゃいました。
今後の見通しとしては、当然内部障害も含めて、障害のある方が校長職等になっていくことは増えていくと思っております。
以上です。
○ 藤井議長代理 横倉さん、お願いします。
○ 横倉氏 知的障害は教員が3万6,000名程度です。
校長の数は560名を超えます。
障害のある教職員の数ですが、本会としては把握をしていません。ただ、学校にも障がい者の法定雇用率がありますので、例えば用務主事さんでありますとか、そういうところに知的障害の特別支援学校を卒業した生徒が短期間就労しているという事例はあると聞いています。
以上です。
○ 藤井議長代理 盲学校は斎藤さんわかりますか。わからなければ後で結構です。
○ 斎藤課長 特別支援学校の教員の障害種別の内訳ですが、先ほど各校長会から御報告のあった数字は、それぞれの校長会で把握されている数字ですので、それより大きくなります。文科省の調査で出しておるものによれば、平成21年度の数字ですが、全国で本務の教員数が7万518名、兼務の教員数が3,623名であります。
内訳を順次申し上げますと、視覚障害が本務3,403名、兼務が354名です。
聴覚障害が本務4,732名、兼務が346名であります。
知的障害は一番多く、4万856名が本務教員で、兼務が1,908名です。
肢体不自由は本務教員が1万4,593名、兼務教員が764名でございます。
最後に病弱ですけれども、3,751名が本務で、兼務が202名でございます。
これは複数の障害種を担当する教員もおりまして、それぞれの障害種ごとに重複してカウントしておりますので、この内訳をすべて足しても、先ほど申し上げた本務7万518名には積み上がらないという点は御理解をいただきたいと思います。
以上です。
○ 藤井議長代理 また後で結構ですが、障害を持っている教職員の数もわかったらお願いいたします。
それでは、尾崎さんに幾つか集中していましたので、尾崎さんよろしいですか。
○ 尾崎氏 まず尾上さんからの御質問ですが、12月までに就学通知が来れば問題ないのではないかというのは全くそのとおりです。全く問題ありません。ただ、私が言いたかったのは、その時点からそれは学籍があるということになります。学籍が見込まれる人が12月までに来るということがはっきりするということで、それだと単年度では問題ないと私は思っています。
北野さんからの御質問ですが、インクルーシブと特別支援教育は同じ方向ではないかということと、権利条約の3つの目的にはどう対応していくのかという御質問です。まずインクルーシブ教育システムと3つの教育の目的の関係を特別支援教育の観点からお話します。
最初のAの自己の価値等の意識を十分に発達させ、人権、基本的自由、人間の多様性の尊重を強化させるという教育についてですが、これは特別支援教育でも行っていることだと思っております。その理由は交流及び共同学習もそうですし、また地域社会における障害のある人たちの活動の場を一緒に設けるなど学校教育だけではなくて、いろんなところでやっていることが挙げられております。
Bの能力を可能な最大限度まで発達させるについては、専門性を生かした教育を充実させているということで、そのとおりです。
Cの自由な社会に効果的に参加するということですけれども、インクルーシブ教育が目的としている共生社会の実現だということでいえば、特別支援教育も共生社会への参加、自立を目的とした教育なので同じ方向を向いていると考えています。特に特別支援学校の高等部を卒業して一般企業等に就労する生徒は増えてきておりますし、またそのことに対する一般企業等の理解、地域社会の理解もかなり増えています。それから、福祉関係機関からの支援、就労支援もたくさんいただけるようになってきております。その中で特別支援学校は就労につなげる、一般社会へつなげていく仕事をさせていただいていると考えていますので、A、B、Cとも同じ方向を向いているということでお話をさせていただきたいと思います。
長瀬委員からのお話の中で、なぜ日本独自なのかということでしたが、一全国の校長会が日本独自と言うのはちょっとおこがましかったかもしれませんが、言いたかったのは、今の特別支援学校の教育は就学猶予、免除がほとんどない全世界でもまれな日本の制度だと思います。生命維持装置が必要な児童、生徒も学校教育の範囲の中に入れて、通常教育と同じやり方でやる。やり方、方法は違いますけれども、考え方、方向性は同じ方法で対応しているということが日本独自のインクルーシブ教育システムだろうということの1つ目です。
2つ目は、特別支援学校においても地域の生活を大切にして、地域とのつながりを大切にする学校経営を学校長は、今、試行しております。それから、特別支援学校の教員は地域に対して障害者理解だけではなくて、その指導、支援についてもセンター的機能を発揮して援助をしております。ですから、特別支援学校は地域のインクルーシブ教育システムに非常に貢献していると考えるのが2点目です。
3点目、日本独自ということでいえば、学校教育、高等部教育において日本では職業教育をして、就職をさせているということです。社会参加、自立に向けての支援をしているということ、通常の学校教育のシステムの一環である高等部教育で行っているということも含めまして、日本独自のインクルーシブ教育システムではないかと私どもは考えています。
以上です。
○ 藤井議長代理 尾崎さん、大事なことなのでお聞きしますが、インクルーシブ教育という概念は、例えば日本の解釈はこうで、国連はこうですというダブルスタンダードという解釈ではないということはよろしいんですね。
○ 尾崎氏 校長会で使うときにはインクルーシブ教育ではなくて、インクルーシブ教育システムまでで言っている話です。
○ 藤井議長代理 その場合、差し支えなければ、校長会での解釈としてはどんなふうに日本語で言っているんですか。
○ 尾崎氏 先ほど言いましたように、すべての学校教育に関わることがインクルーシブ教育システムだということが1つです。そして、その中で特別支援学校の役割は、今、言ったようなインクルーシブ教育システムの中にあるということを主張しているわけです。
○ 藤井議長代理 それでは、尾上さんの質問に関係して、澤田さんと田村さん順番にお願いできますか。
○ 澤田氏 先ほどの点字の適格性を有する教員についての質問だと思いますけれども、まず結論から申し上げますと、盲学校の教員に点字の読み書きができないあるいは指導ができない教員はおりません。これは先ほど申し上げましたように、学習だけではなくて大事なコミュニケーション手段ですから、生活そのものなんです。盲学校の教員が点字が読めないとなると、生徒とコミュニケーションがとれないということになります。ですから、読み書きができない教員はおりません。教員だけではなくて、寄宿舎指導員、実習助手も点字の適格性を有するようにということで研修をしておりますから、それらの者も読み書きができます。
ただ、最近、異動のサイクルが早くなっていまして、年度当初はほかの障害種別あるいは小・中・高等学校等からの転入、新規採用の教員もいます。これらの教員が速やかに点字の読み書きができるようにするために、年度当初集中的に各学校で研修を行っております。確かに点字能力に差はありますけれども、読み書きができない教員はおりません。
○ 藤井議長代理 田村さん、お願いします。
○ 田村氏 田村です。
先ほどの医療的ケアのことなんですけれども、今、肢体不自由の特別支援学校には1万8,000人ぐらいの児童、生徒さんがいて、4,400人ぐらいが医療的ケアがあるんです。延べでいうと1万1,000人です。2種類ぐらいの医療的ケアを行っている方もいます。
こうした方が例えば小・中学校に行ったときにということでは、私どもの学校は今おおよそ生徒が100人ぐらいで、40%弱、三十何人の方が医療的ケアを行っています。ここには常勤、東京都が充実策として出した非常勤看護師の配置も含めて、学期によって違うのですが、8~9名の看護師がフルで動いています。8~9名の看護師がフルで動いて40名弱の児童、生徒の医療的ケアをしています。私は毎日それをチェックしているのですけれども、5分、10分刻みのスケジュール表の中で、下校まで医療的ケアをやりながら授業を継続させているわけです。この4,400人ぐらいの方が小・中学校に行ったときに、それぞれの学校で看護師等を配置して、きちんと体制がつくれるかということ。ここまであって初めて親の負担がないということです。
東京都では非常勤看護師制度を入れてくださったのですけれども、私の経営している学校では、親の方が以前は1日中学校に待機していました。「大変苦しかった。でも、子どもが教育を毎日受けられるということで頑張ってきたんだけれども、非常勤看護師制度が入って本当によかった。」とおっしゃってくださいます。こうしたことが制度改革の中であっても、後退することのないように十分に考えていく必要があるということで申し上げております。
以上でございます。
○ 藤井議長代理 そうしたら、先に鈴木さんから長瀬さんの質問に対してのお答えをお願いできますか。
○ 鈴木氏 手話を言語として位置づけているかということについてどうかということだと思いますが、コミュニケーション手段に関する調査研究協力者会議などでも、平成7年ぐらいから手話を子どもたちのコミュニケーション手段の1つとして取り入れていこうということで、どんどん広がっていったと思います。ただ、これは一方的なんです。どちらかといいますと、日本語対応手話といいまして、日本語にできるだけ近づけていくための手段の1つということで、それでも広がったと思います。
文部科学省から出されている資料でも、教師全員が手話をできるとか、できないとかあるんですけれども、平成14年のものと5年後のものを比べたときに、随分広がっています。その部分はかなり増えたと思います。ただ、質問の内容については、恐らく話し言葉と書き言葉ほどの違いがあるのですが、要するに日本手話を日本語としてきちっと位置づけているのかという話だと思いますので、その部分ではまだできていないと言うしかないと思っています。
ただ、これについては、初代のろうあ連盟の会長さんも日本手話を日本語に直すのは非常に大変な作業ですということを著書の中で語っておられますけれども、そのとおりです。それが今も続いているということだと思っています。
よろしいでしょうか。
○ 藤井議長代理 最後に代表して横倉さんから性的虐待へのコメントがあったらということなんですけれども、いかがでしょうか。
○ 横倉氏 特別支援学校であろうが、通常の学校であろうが性的虐待というのは教育においてあってはならないことでございます。これをもって特別支援学校がどうこうとかそういうことでは恐らくないんだろうと思います。すべての教育の場においてこういうことが行われないようなシステムづくり、体制づくりが必要なんだろうと思います。したがって、特別支援学校で特段こういうような対策あるいはシステムをということは当たらないのではないかという感想を持ちました。あくまで私見でございます。
○ 藤井議長代理 時間が50分近くオーバーしています。
門川さん、どうしてもですか。今55分オーバーしてしまっているんですけれども、だめですか。この後のコーナーではまずいですか。
○ 門川委員 1分だけお願いします。
○ 藤井議長代理 それでは、1分認めましょう。どうぞ。
○ 門川委員 門川です。
先ほど、盲学校に点字の知識のある教員についての話がありましたけれども、私自身盲学校の出身でして、盲学校には実は点字の知識のある教員が非常に少なく、いないに等しいのです。ごく一部の熱心な先生だけは非常に高度な点字の知識があります。そういうことについて誤解のないようにお願いしたいと思います。ついでですので、お話したいと思います。
○ 藤井議長代理 ついではだめです。
○ 門川委員 わかりました。以上です。
○ 藤井議長代理 今、大変大事なことをお話なさったんです。お話くださった先生方の意見と現場はどうも違うのではないか。これはまた後であれしてください。
これで一応このコーナーはおしまいにします。今から15時10分まで休憩をして、少し時間の軌道修正をします。御都合等があろうかと思うんですが、もし可能であれば今日は5時半まで30分間延長させてください。御都合の悪い方は中座、途中での退席は結構でございます。
それでは、休憩に入ります。
(休憩)
○ 藤井議長代理 それでは、再開いたしますので、着席をお願いいたします。また静粛にお願いいたします。
今日は大分時間がずれ込んだんですが、これから第2コーナーの前半で3つの団体に報告をいただきます。その後、全国コーディネーター研究会から報告をいただきます。それらを経まして質疑を交わしますけれども、次のコーナーは16時をめどにして進めてまいりますので、進行に協力をお願いします。
それでは、最初に第2コーナーの前半で3つのグループと言いましたけれども、全国連合小学校長会特別支援教育委員長の田中誠さん、全日本中学校長会生徒指導部長の小宮賢治さん、全国特別支援学級設置学校長協会副会長の高橋基之さん、大変恐縮ではあるんですけれども、恐らくペーパーを準備してもらっているんですが、併せて15分をめどに御報告願えればと思いますので、これを目安にして協力をいただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○ 田中氏 併せて15分ということで、かなり早口で発表させていただきます。
○ 藤井議長代理 済みません。それもいけないんです。実は手話とか要約の関係があるんです。
○ 田中氏 そうですよね。通訳をされている方々がいるので、早口だととてもやっていけないだろうと思います。それを15分ということですので、事前に意見書をお配りしているので、ここで発表する必要があるかどうかも含めて、今、予定されている時間とかなり変わってきておりますので、苦慮しているところでございます。一応言うことだけ言わせていただきます。
○ 藤井議長代理 どうぞよろしくお願いします。
○ 田中氏 先ほど御紹介がありました全連小の特別支援教育委員長の田中誠と申します。
意見書に書かれていることを集約いたします。全連小としての要望をまず4点申し上げます。
1点目、特別支援学校や特別支援学級の希望者が年々増加傾向にある実態を踏まえ、特別支援学校や特別支援学級の位置づけの明確化と保護者、本人のニーズ調査による必要規模の確保を図っていただきたいということが1点です。
2点目、就学先の決定に際しては、能力を可能な最大限度まで発達させるためにも専門家や関係機関の観察、助言が生かせるような仕組みの充実を図っていただきたい。また、先ほどからもお話がありました就学相談、指導に関しては、本人、保護者、学校、学校設置者の3者の合意が得られない場合には、第三者機関による調整を求めることができる仕組みとするとありますが、第三者機関は指導の専門性と客観性に公正な見識を持ち合わせた人材で構成していただきたい。これは先ほど御論議がありました内容です。
3点目、差別等の定義やその法的整備の前に、すべての学校において合理的な配慮が実現できるような計画を示していただきたい。特に通常の学級に在籍する発達障害の児童、生徒への指導には早急な人的措置が求められます。これが3点目です。
4点目、現在の特別支援学校や特別支援学級でも専門性のある教員の確保に苦慮しています。是非思い切った発想で実現可能な方策を示していただきたい。
こういう要望が4点でございます。
引き続きまして、全連小としましては、通常の学級に在籍する発達障害のある児童について、ここ数年調査をしております。この実態を是非御理解いただいて、通常の学級で発達障害のある子どもを含めての対応について御討議いただきたい。ここまで進んできた校内支援体制というものが後退しないように御配慮いただきたいという願いでございます。
それでは、実態についてです。全連小の調査としましては、全国の約2万1,000校の学校の各都道府県4%の学校に調査を依頼しました。858校に依頼して、回答が849校、回収率が98.9%です。
1番目、学校の状況ということで、通常の学級に在籍する発達障害のある児童の人数と全校児童数に対する比率です。全国の849校中775校、91.2%に8,864名の発達障害のある児童が在籍していました。調査対象全児童数29万1,335名に対する割合は3%であり、昨年度と比較すると人数で1,397名、在籍比率で0.5ポイントの増加が見られました。平成14年度に行った全国の実態調査では、通常の学級の中に在籍するLDやADHDなどの児童生徒は約68万人、全児童生徒の6.3%の割合で在籍しているという報告と比べても3.3ポイントの差があります。今回の調査と調査対象校、調査年次、質問項目や調査方法などが異なり単純には比較ができませんが、3.0%では各校が緊急に対応する必要のある発達障害のある児童の数だと考えています。一斉授業を乱すことなく、著しく学習が遅れることもなく、対人関係にも目立ったトラブルがない発達障害のある児童については、この調査には挙がってこなかったと考えております。また、特別支援学級を設置している学校と未設置校の違いを見ると、設置校の方が学校規模に関係なく発達障害のある児童が在籍する割合が高い状況が伺えました。
2番目、医師により発達障害と診断された児童は8,864名中2,599名、29.3%でした。昨年度と比較すると276名増加しています。比率では1.8ポイントの減少となりました。特別支援教育が始まり3年を迎え発達障害への認識が広がりを見せていますが、医療機関の数が増えていない現状が感じられます。個別教育支援計画の策定状況については、全児童数では8,864名中2,011名、22.7%の策定にとどまっているということがわかりました。
次に通常の学級に在籍する発達障害のある児童への教育的支援について。発達障害のある児童の指導で困っていることについて、授業に参加できない、あるいは学習についていけないというのが74.1%、友達とのトラブルが絶えないというのが65.5%、その児童の行動が原因となり学級の授業に支障が生じているが61.9%とありまして、それぞれ増加傾向で、発達障害のある児童への対応はこれまでの学校の支援体制の確立や介助員等の人的配置等が年次的に進められていますが、今回の調査結果からより一層の推進が求められると考えております。
発達障害のある児童に対する通常の学級での対応について。学級担任の個別的な配慮が最も多く6,262件、57.3%でした。また、学級担任が個別的な配慮を行っている内容は休み時間や放課後に個別指導をしているというのが503校、71.6%と最も多く、次いで教材を個に応じて作成、指導が48.6%、個に応じた家庭学習の準備が34.6%と続いていました。発達障害のある児童が在籍し、日々個別的な配慮をしている学級担任の多くが時間を確保して個別に対応しようとしていたり、教材を工夫したりして個に応じたきめの細かな指導を実施している実態から、学級担任の負担が増していることがわかります。
個別指導の指導者について。個別指導の時間を確保している学校は353校あり、そのうち加配教員が行っている学校は32.6%と最も多く、次いで指導補助員、介助員等という指導になっています。その中でも校長が指導をしているというのが13.9%、教頭が指導をしているというのが19.5%ありました。昨年度と比較してみると、ともに増加していました。各小学校では対象児童の増加により依然として人員不足の状況が続いており、一層その対応に苦慮していることが伺えます。学校運営に責任を持つ管理職がやむを得ず対応している現状があり、こうした事態が拡大していくことで本来業務に支障を生じ、学校全体の教育活動が低下することが懸念されることから、人的措置の一層の改善が必要だと考えます。
次は通常の学級に在籍する発達障害のある児童への教育を推進する上での困難点、困難を感じていることということでは、指導内容や方法がわからないというのが39.6%、次いで指導できる人材がいないが37.0%でした。困難を解決するための対応ということで、指導できる教員の増配置への要望が73.0%で一番多く、次いで指導補助員、介助員、学生支援員の配置が55.7%でした。いかに多くの学校で発達障害のある児童への対応に教員や支援員等の増配置を強く望んでいるかが明らかになりました。このように人の配置を望む傾向はそれぞれの割合に多少の変化はあるものの昨年と同様でした。
最後に就学相談について。入学後も継続的な就学相談が必要な児童の人数も2,820人で、昨年度より526名増加していました。入学後も継続的な就学相談が必要な児童の対応として、定期的に保護者との面談を継続が64.9%、校内委員会に定期的に報告し指導計画の作成、実施、評価を行うが51.7%で、保護者の理解啓発とともに児童の実態に合わせた指導の努力がなされています。特別支援学級への在籍または通級による指導による支援と補助員、介助員、支援員を配置が49.3%となって、昨年度より増加していることや巡回相談等の専門家に定期的に診断を受けて指導を実施が40.9%ということで、指導の努力が伺えます。これらの努力の成果は、適切な支援のための就学先変更について保護者の理解が得られないが昨年度と比較して33校と減少していることに表れています。就学相談が必要な児童への適切な対応のためには、発達状況に合わせた専門的指導が児童の成長につながることを保護者が理解することと、幼稚園、保育園、小学校がその指導体制を整えて取り組むことが必要だと考えます。
以上です。
○ 藤井議長代理 10分で3分の2を使われました。さて、残り5分しかないんですけれども、少しの時間のオーバーはやむを得ませんが、引き続きお願いいたします。
○ 小宮氏 全日本中学校長会の生徒指導部長を務めています小宮と申します。よろしくお願いいたします。
まず障害者制度改革の推進のための基本的な方向(第一次意見)というものがこの推進会議から6月7日出されておりますけれども、その教育に関わって推進会議の問題認識について、私も本当にそのとおりだと思っています。特に「障害の有無にかかわらず、それぞれの個性の差異と多様性が尊重され、それぞれの人格を認め合う共生社会の構築に向け、学校教育の果たす役割は大きい。人間の多様性を尊重しつつ、精神的・身体的な能力を可能な最大限度まで発達させ、自由な社会に効果的に参加するとの目的の下、障害者が差別を受けることなく、障害のない人と共に生活し、共に学ぶ教育(インクルーシブ教育)を実現することは、互いの多様性を認め合い、尊重する土壌を形成し、障害者のみならず、障害のない人にとっても生きる力をはぐくむことにつながる」と述べられています。本当にこの趣旨を学校教育の中で展開できるようにしていかなくてはいけないと思うわけですが、ただ、その中に書かれているともに学ぶ教育の実現をどういう形で保護者、当該の児童、生徒に関わって実現することが適切なのかということを確認していく必要があると思います。
平成19年度に始まりました特別支援教育は今4年目を迎えています。これは通常の学級においても特別支援教育が展開されています。先ほども話にありましたけれども、今、軽度発達障害のお子さんは増加の傾向にあります。そういうお子さんも含めて特別支援教育を進めているところです。また、特別支援学校におられるお子さん、複籍の制度等も用いて交流を深めています。特別支援学級のお子さんとの授業あるいは行事等の交流も学校によって進められているところです。こういったところももう一度見直しながら、検討していく必要があると思います。
5つの団体で出させていただいた要望書の中にも記されていますが、特に合理的な配慮という部分が私は非常に大事だと思っています。通常の学級で実施される教育内容、方法と障害のある児童、生徒のニーズに合わせた教育内容、方法との整合性や学習活動の可能性などについても十分に検討する必要があります。障害のある児童、生徒にとっても、障害のない児童、生徒にとっても、人間の多様性を尊重しつつ、精神的、身体的な能力を可能な限り発達させることを検証した上で、通常の学級での教育を実施することが重要です。教員の加配や施設設備の整備などの合理的配慮に基づく条件整備も必要なことになっていくかと思います。
いずれにいたしましても、こうしたことを十分に行った上で、子どもたちにとっていい教育環境を整えていくことが大事です。それと同時に、子どもたちが将来主体的に生きていく自立、社会参加、そうしたキャリア教育の視点も非常に重視しながら進めていく必要があろうかと思っております。
以上です。
○ 藤井議長代理 高橋さん、お願いします。
○ 高橋氏 全国特別支援学級設置学校長協会副会長の高橋基之でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
本会議の審議に当たりまして、このような機会を全国特別支援学級設置学校長協会にいただきまして、ありがとうございます。
それでは、既に4月のヒアリングの際に提出した意見書に記述されていることではございますけれども、お話をさせていただきたいと思います。
全特協は全国特別支援学級設置学校長協会の略称でございますが、各都道府県単位に全国特別支援学級設置学校長協会の連合体として47年を迎えております。現在、学校教育法に基づきまして、特別支援学級が設置されまして、全国小・中学校の約68%に特別支援学級が設置されております。学級数は約4万2,000学級、在籍児童生徒数は約13万5,000人でございます。校長のリーダーシップと教員の高い専門性によりまして、児童、生徒一人ひとりの教育ニーズに応える指導に尽力しまして、自立し社会参加できる人材育成教育を行っております。
先ほど全日中からお話がありましたが、5校長会の障害者制度改革の推進のための基本的な方向(第一次意見)素案に対する要望にお示しさせていただきましたように、私たち全特協の校長一人ひとりは、障害の有無やその他の個々の違いを認識しつつ、さまざまな人々が、差別を受けることなく、生き生きと活躍できる共生社会を目指し、特別支援教育を実践しているところです。
ところで、各都道府県では、学習指導要領に基づきまして、各学校において適切な教育活動、学習活動が実施されるよう、さまざまな資料等を作成し、教職員に周知しているところでございます。お手元の「特別支援学級におけるキャリア教育の推進」のリーフレットもその1つでございます。私たちの特別支援学級に求められる重要なことは、在籍する児童生徒、保護者や地域社会から信頼されることです。
特別支援学級は児童生徒一人ひとりが通学できる喜びを感じ、自らの夢や希望に向かい努力できる学級であること。その結果、児童生徒自身が学習活動を通して自分自身の成長が伝わること。
また、気の合う友達と遊びや生活を通して共感することができること。
担任の教師に会える喜びを感じる学級等々、特別支援学級も通常の学級も学校には通う喜びがなければならないこと。
これらのことによりまして、障害のある児童生徒は達成感や成就感を得て、学んだり、働いたりする意欲が築かれ、生きる力をはぐくまれていくと考えております。
そのためには、お示しさせていただいたリーフレットの表紙の裏の左下の記述にあるように、コミュニケーションの力をつけること、自己決定ができるようにすることなどキャリア教育の視点にたって、発達段階を踏まえながら児童生徒を育成することです。そして、職業生活のみならず、家庭生活や市民生活で自立して生活できるよう、教科学習や日常生活、学校行事、生徒会活動、さらには放課後の部活動等、自分自身の存在感を自らが確認する場面や場所を学校に用意することが必要です。
現状では、学校生活への不適用が始まる生徒がいることも現実にあり、このことは特別支援学級だけではなく通常の学級にも共通する課題です。しかし、通常の学級から特別支援学級に移り、生き生きと教育活動に取り組めるようになった児童生徒がいることは事実でございます。このような状況を見ると、重要であり、備えるべき要件は、障害のある児童生徒一人ひとりの障害を理解し、具体的な指導、支援の実践に向けた、「個別の教育支援計画」「個別の指導計画」の実践でございます。
「個別の教育支援計画」は、幼児期から学校卒業まで長期的な視点をもって支援の方法や内容をまとめ作成されるものでございます。学校教育のみならず、主治医をはじめ福祉、医療、労働などさまざまな面から個人の障害に配慮しつつ、計画が立案されるものであり、関係機関との一層の連携、協力が必要不可欠でございます。
さて、本会議は「障害者の権利に関する条約」の批准に向け検討を進められているとのことでございますが、私ども全特協や多くの教育関係者が積み上げてきた、現在の教育制度やシステムを改善、変更するには十分な時間をかけ、慎重に検討、論議することが必要と考えております。
そのためにも、教育関係者、発達障害関係団体などの専門家を交えて議論されることが障害のある児童、生徒の望ましい教育へと結び付くものだと考えております。これまでに築き上げてきた障害のある児童生徒の教育の在り方、教育の場を十分に尊重していただきたいと思います。
特別支援学級は、差別を助長する教育の場ではなく、個に応じた教育を行う場であり、個人の尊厳を保障する教育制度でございます。そのことを検証することからも、会議の委員の皆様には、特別支援学級に関わる学校視察を強く願いたいところです。
障害のある児童生徒に専門的な教育をすべてを通常の学級の中というわけではなく、よりよい教育環境の場の中で与えたいという保護者の願いが高まっています。私たち全特協は、
○ 多様なニーズに応えるための学校設備等
○ 学校の教育環境のさらなる充実
○ 設置学級担任をはじめすべての教師の専門性の向上
などの多くの課題を前に、具体的な解決への方策を提示していかなければならないと強く肝に銘じております。
今後検討される「インクルーシブ教育システム」については、その基本理念を踏まえ、国民すべてが固有の権利を享有されるためにも、単に通常の学級において教育を受けることではなく、障害のある児童、生徒一人ひとりが最適な教育を受ける権利を保障、尊重する方向で検討されることを強く望みます。
以上を申し述べて、全国特別支援学級設置学校長協会の説明、意見といたします。ありがとうございました。
○ 藤井議長代理 それでは、続きまして、全国コーディネーター研究会のお二方から報告をいただきます。野村さん、事務局長の黒川君江さん、できれば併せて15分間でと思っていますので、進行に御協力を願えればと思います。報告をお願いします。
○ 野村氏 全国コーディネーター研究会の会長をしております野村でございます。
今回、意見具申の機会を与えていただきましたことを感謝いたします。
具体的な意見につきましては、既に意見書等を出してございます。事務局長の黒川君江から与えられた時間になるべく沿うような形で説明をさせていただきます。よろしくお願いいたします。
○ 黒川氏 全国コーディネーター研究会の事務局長の黒川です。
障がい者制度改革推進会議の委員の皆様、そして、関係者の皆様におかれましては、熱心な議論、御検討をいただいておりますことに感謝申し上げます。
今、野村会長から申し上げたように意見書を出しておりますので、本日は保護者の意見を加えまして、補足説明をさせていただきたいと思います。現場の関係者の声、発達障害の関係者の声として是非お聞きいただければありがたいです。
まず支援については『子どもありき』だと思います。ですので、まず発達障害についてお話をさせていただきいと思います。発達障害については皆様御存じかと思いますが、一見、健常のお子さんと変わりなく見えますが、違いがわかりづらいところに難しさがあります。
わかっていただくために一部を強調しますが、具体的にお話いたします。例えばにぎやかな車道を皆様がお友達と会話しながら歩いていると想像してみてください。会話をしながら車道を歩いています。皆様は車の騒音も枯れ葉が歩道に落ちる音も、すれ違う人々のしゃべる声も聞こえてはいます。聞こえてはいますが、会話する相手のお友達の声に注意を向けて、その音を選択しております。自然に必要な音以外を切り捨てて会話を続けます。このコントールができないとしたらどうでしょう。重要さなく同じ意味合いで音が入ってくるとすると、これは音の反乱です。耳をふさぎたくなりますし、静かな場に逃げ行きたくなります。音について申し上げましたが、目に入ってくる刺激についても同様です。
私は、今、皆様がごらんになっていらっしゃいます。壁の色、後ろにいる先生方、机、いすなどそういった存在に惑わされず私の姿を浮き出すようにして見ておいでです。さまざまな視覚情報から私を選択して見つめております。これらが何のつながりもなく同じ条件で目に入ってくるとしたら、いかがでしょうか。教室で黒板を見ても、先生の説明を聞いても集中できないことや漢字の書き順を間違えることなども納得いたします。学習が積み上がっていきにくく、落ち着けません。
最初にお断りいたしましたが、これが発達障害というわけではなく、そういう傾向を持つということで誤解しないでください。でも、発達障害のある子は大なり小なりこうした情報の取り入れ、情報の整理、情報をインプット、アウトプットするのに困難さがあります。
音の少ない静かな個別学習室で学ぶことのうれしさ、学びやすさを実感していただけたのではないかと思います。
また、今、慣れない場所に来まして、私は大変緊張しております。これは皆様がわかっていただいていることと思います。もしかしたら、この胸の鼓動すら感じ取ってくださる方もおいでかもしれません。しかし、ADHD、高機能自閉症の子どもたちはこうした相手の気持ちの読み取り、場の雰囲気を察することが苦手です。私が教えていたA君なら、ここに来て「先生何で手が震えているの」と、大きな声で言ってしまうかもしれません。物語の読み取りはできるのに、目の前の人が恥ずかしがる様子がわからないことがあります。集団生活ではすれ違いが大きくなります。
通級指導教室の小さな集団での遊び方、関わり方の学習が求められるゆえんです。
軽度という言葉で語られますが、生きづらさは決して軽くはなく、周りに理解されない点では大変大きなハードルを抱えております。通常の学級の中で指導するにはさまざまな工夫が要ります。こうした子たちがクラスに2~3人はいることになります。理解には時間がかかります。
私たちは通常の学級での居場所づくり、特性に応じた授業を研究してまいりました。刺激を整理していくために黒板前の掲示物を少なくしました。注意、集中が続くように45分の授業を15分刻みで構成するようにしました。一斉指示の後には個別に声かけを行う、個別指導の時間の生み出し方なども考えました。学校全体でぽかぽか言葉などの言語環境を整える、友達のいいところ探しができる学級づくりなども実践し、効果的だったことを全国に発信してまいりました。こうした研究会だからこそインクルーシブの大切さを身に染みて感じております。
私たちは障害のある子どもの笑顔を求めてまいりました。その笑顔は2つの権利保障が必要だと痛感しております。1つはともに育ち合うという考え方、環境づくりです。この大切さは議論の余地のないことです。それは通常の学級の子にとっても、障害のある子にとっても必要なことであり、学校は勿論社会全体の意識改革と努力が大切になります。こうした環境がつくられることは、子どもたちや保護者の重要な権利です。
しかし、一方、忘れてはならないのは障害のある子どもたちがその子、その子の障害特性を持っているということです。先ほど発達障害については語りました。でも、発達障害に限らず障害の特性によっての困難さはそれぞれが違います。そのために一人ひとりのニーズの違いに応じた専門的できめ細かな支援を行う多様な支援の場を必要としています。このことを見逃してはならないと考えます。子どもたちはやがて社会に巣立っていきます。どの子にも社会に出て自分らしく幸せに生きていく力を育てることは、社会全体の責任です。
先ほど社会参加に向けた人格形成のお話がありました。障害のある子どもたちにとってそれはどういうことかといえば、「できる」「わかる」課題を示すこと、成就感、達成感を得て自信と意欲を持っていくことです。それによって自分自身の人格を正しく成長させていきます。子どもたちも保護者もニーズに応じた十分な指導、支援を求める最重要の権利を有しています。推進会議では前者については十分に論議されていると理解しております。
ここでは後者について2点お話をいたします。
1点目は、個々のニーズに合った多様な専門的な場の必要性です。これについては私たちの前にお話した方々が十分にお話したと思います。教育というのは計画的、意図的な営みです。そのため教育課程を基に指導し、評価し、次に改善と充実を図っていきます。現在、通常の学級の校内支援、通級指導、固定の特別支援学級、特別支援学校はそれぞれが子どもたちの特性を研究しカリキュラムづくりをしてきました。この制度の改善すべきことは多々あるかと思いますが、長年の知恵の集積であり改善と充実が図られてきた有効なものです。是非この礎を基に今後の制度改革について考えていただきたいと思います。
その意味を込めまして、保護者の烏田さんの声を皆様にお届けいたします。
「11歳、6年生の息子はやや知的な遅れを伴う自閉症です。5年生のときに通常の学級から支援級(固定の特別支援学級)に移りました。今、支援級への進路変更は大正解だったと思っています。
通常の学級に入学し、勉強に集団行動にと学校とも通級とも連携し親子で一生懸命の日々を過ごしました。しかし、3年、4年と勉強がより抽象的な事柄が多くなり、健常の子どもたちの心の発達との差異が広がるにつれ、親として考え込むことが増えました。
宿泊学習のとき引率の先生方に「生活面で何に1つ手がかからないばかりか、とてもしっかりしていた」と報告を受けました。よし、それなら支援級を選んでもよいと決意しました。息子は高機能アスペルガー症候群と違い知的な部分が弱いところがあります。しかし、息子のこの幼さは悪いことばかりではなく、人をばかにすること、悪口や打算的に物事を考える思考を持たないよさがあります。このよさを損なわないで、よりしっかりとした社会人に育てようと思いました。この長所を生かすには普通級では厳しいのです。ゆったりとした時間の中で伸びていく子ども時代が健常児より長い子なのです。足の不自由な子どもに9秒台で走れというのと同じです。
でも、人間は学習する動物だと思います。習得には時間がかかっても、毎日同じ練習を積み重ねると機敏に動けるようになるんです。野球の大好きな息子は、今、背走しながらフライを取ったり生き生きと活躍しています。見事な空間認知です。そんなことができるようになったのも、本人の楽しさと意欲を損なわない日常があるからです。知的な遅れを伴う我が子の学習の場は、せかさないのがポイントなのだとつくづく思いました。それが息子のニーズにあったカリキュラムなのです。
支援級で自信をつけ、水泳において、短距離走において、絵画において秀でる子どもさんたちが結構います。支援級は人の手もあり連絡もきめ細やかです。幼稚園より手厚いかもしれません。自信がつくと下級生の世話も積極的にします。役割も責任を持って果たします。
休み時間には通常級から遊びにきます。よく見ていると、通常級で何かにつまずいている子が来ることが多いのに気づきます。子どもは自分に似ている仲間を探し、安らぐことができる居場所を求めているんだと感じます。健常者から見た平等感と障害者から見た心地よさは違うかもしれません。
レインボーマンのラストシーンのように。このことをよくよく御考慮の上、審議を尽くし、よりよい制度づくりをしていただければ幸いです。」
さて、2点目です。就学相談についてです。障害のある子のニーズを正しく把握して、その子にとって最善の就学の場や支援の内容を早くに相談し合えることが大切です。なによりも大事なことは、子どもたちが必要な支援を受けて笑顔ですくすくと最大限に力を伸ばしていくことです。意欲も勿論です。
保護者の意見の尊重について議論が集中していますが、意見の尊重は無論のことですが、就学相談の意義についてもう一度確認しておく必要があるかと思います。保護者の杉田さんの意見をお聞きください。
「小学校6年生の我が子はアスペルガー症候群と診断されています。発達障害の子とその親にとって最も不幸なことは情報量が少ないために孤立してしまうことです。乳幼児期から何か違う、どこかおかしいと悩みつつ脳に起因する障害の複雑さゆえ的確な情報になかなかたどり着くことができず、診断を受けるまでインターネットや本をむさぼるように調べました。難しい言葉を使う一方で、ほかの園児が簡単に理解できる指示や注意がなかなか通じない我が子を周囲も理解できず、育て方やしつけが悪いと誤解されたときは、孤独で、私がいなくなればと思うことさえありました。
就学相談を経て通級指導教室にたどり着いたとき、何よりもありがたかったのは専門的教師による的確なアドバイスと教室の保護者達による情報交換でした。文字情報でない血の通う情報に出会えました。
私たちの子育ては迷いと悩みの連続です。私たちは確かな情報と相談者を心の底から求めています。区切り区切りの就学相談はたとえ自分の意にそぐわない意見であろうとも、公正な立場から客観的に資料や情報をいただくことができる貴重な機会です。親の選択権はありがたいですが、私たちにだけ任せないでください。障害をできるだけ認めたくないという感情から、情報を避けてしまい、子どもによいことを選んだつもりでも必要な支援が子どもに届かないおそれもあります。進路はとりわけ大きな選択です。地域の教育委員会は私たちの選択を客観的な立場からバックアップしてください。
私たち親自身も、今、支援会議などに勇気をふるって参加するようになりました。私たちは専門家の皆さんと同等の参画者であればいいです。保護者の意向を重視するということで、ほかの地域では就学相談を簡略化したり、ないに等しい状態になったりということも聞きます。それは私たちを権利の名の下に再び孤立させることです。私たち親は温かで情報の量と質が充実した就学相談を望みます。そして、的確な判断力と指導力、複雑な障害特性を理解できる高度な専門性を備えた優秀な人材が特別支援教育の現場には必要です。障がい者制度改革推進会議の委員及び関係各位の皆様、必要な情報と支援が私たちに的確に届くよう、この意見にも御配慮くださいますよう、よろしくお願いします。」
このように就学相談は保護者が我が子の教育的ニーズを把握する、情報を得る機会を公的に保障するものでした。同時に教育委員会や学校の設置者が地域の子どもたちの教育的ニーズや必要とする支援内容を考える、支援を具体化する責務を感じ取る機会でもありました。現在の特別支援教育では個別の教育支援計画や支援シートなどのツールを基に保護者の参画を促しています。保護者の意見の尊重は言うまでもありません。保護者だけに決定の重さを委ねるのではなく、できるだけの情報を誠実に提供し、医療や教育に関わる人たちの知見を集めて相談していく過程が必要だと思います。
今、杉田さんが危惧するような就学相談の簡略化あるいは問題があったときに対応すればいいのではないかという方向に流れることですが、就学相談は発達検査、医学問診、在籍する幼稚園、学校の状況報告、会議など大変時間もお金もかかるものです。昨今の予算状況からいえば減らしていく方向は容易にたどってしまう道かもしれません。しかし、そうすると、通常の学級に入った子どもたちが数年を経て不登校等さまざまな不適応を抱えて、親も子も傷ついて、再び相談に挙がるケースが増えることも予想されます。障害のある子には「先読みの指導」が大事です。多様な優秀な人材と的確な情報、充実した温かな相談システム、保護者の一層の参画、就学する前も後もフォローができる教育委員会が大切だと思います。
○ 藤井議長代理 黒川さん、時間を過ぎております。
○ 黒川氏 わかりました。
私どもの研究会は皆様と同様インクルーシブな教育を強く望んでおります。
最後に初鹿野さんの意見の一部をお伝えして、まとめに変えます。
「インクルージョンはすばらしい理念です。障害のある子の親ならば望まないはずはありません。でも、子どもにとって役立つものが提供されるのか否かで私たち親は判断いたします。」
以上、全国コーディネーター研究会の意見を申し述べました。
私も昨夜ストップウォッチではかりながら20分の意見をまとめました。超過したことをおわび申し上げます。失礼いたしました。
○ 藤井議長代理 ありがとうございました。
田中さん、小宮さん、高橋さんのグループ、野村さんと黒川さんからお話をいただきました。
16時が次のコーナーでありますので、先ほど発言をしていない方を優先しようと思っています。発言をしていない方で、発言したい方は挙手をいただけますか。土本さん、中西さんですね。
それでは、土本さんから御発言をいただきます。
○ 土本委員 知的の障害を持っている当事者です。質問に合っているかどうかわかりませんけれども、やはり親が中心であって、本人が置いていかれているのではないかと思いながら今の発言を聞いていました。教育でもそうだけれども、いろんな場面で親だけではなくて本人を交えて決めていかなければならないのではないかと思います。
というのは、自分も教育を受けたときに、小学校3年までは普通学級、4年から特殊学級、今は支援学級になっていると思うんですけれども、そこに移るときにも何も説明をされていない部分がありました。そういうところできちんと説明する部分が必要ではないかと思いました。いろんなとこで、1人ずつ違う教育など合ったものをやってもらいたいと思っています。
以上です。
○ 藤井議長代理 土本さん、今の発言は感想でもあったんだけれども、どなたかに後で聞いてみましょうか。
○ 土本委員 はい。
○ 藤井議長代理 だれがいいですか。黒川さんがいいですか。それとも高橋さん辺りにも聞いてみようかね。
○ 土本委員 はい。
○ 藤井議長代理 それでは、中西さんの手が挙がっていましたね。お願いします。
○ 中西委員 この御質問は本来ならば第1コーナーでした方がよかったのかと思ったんですけれども、皆様いろいろ聞きたいという要望が多いだろうと予測されたので、こちらの方に回しました。だから、どなたがということではないんです。ですから、ターゲットとされた方には申し訳ないんですが、その方にお話いただきたいと思います。
全日本中学校長会の先生がターゲットというわけではないんですが、引用として障害者権利条約のところをお話されたので、それに関連しまして、前回私どものこの会で国連の子どもの権利条約委員会の勧告が取り上げられまして、日本の報告の審査結果が出されました。御存じではないかもしれないんですけれども、これは締結国が報告したものを定期的に国連の中の子どもの権利条約委員会が審査するもので、今年の第3回目で日本が提出した所見に対する答えです。
特に59条の勧告のところで、その意義の中に障害のある子どものインクルーシブ教育のために必要な便益を学校に備えるとともに、障害のある子どもが希望する学校を選択し、またその最善の利益に従って普通学校と特別支援学校との間で移行できることを確保するとあります。これは先ほどコーディネーターの方が普通校から特別支援学校に移られたことをとてもいいとおっしゃっていて、そういう動き動きでいいと思うんですが、その反対に特別支援学校から普通学校に移ることが可能かというと、現状ではそれがなく選択の自由が阻まれていますので、先ほどおっしゃっていらっしゃった権利条約にできる限り沿ったような、教育という理念からこれをどうお考えになるか御意見を伺いたいと思いました。
○ 藤井議長代理 それでは、まずこのお二方へのお答えとして御意見を伺います。
黒川さん、親も大事だけれども、やはり当事者の声をもっと反映するようなことを考えてほしいということに関するコメントは何かございますか。
○ 黒川氏 先ほど斎藤課長からもお話がありましたけれども、今、私が申し上げましたように、的確な情報、そして優秀な相談者も含めまして、勿論親御さんも含め、当事者も含め会議に入っていただくのはよいことだと思います。ただ、小さなお子さんの場合、自分の意思の決定がなかなか難しい面があります。そのことについては、周りで配慮していく必要があるのではないかと思います。
そういう意味では、例えば小学校に上がる前の幼稚園の先生方、あるいは中学校に上がる前の小学校の先生方が本当に温かい目でその子の気持ちをくみ取ってく必要があるのではないかと思います。
○ 藤井議長代理 同じく高橋さん、いかがですか。コメントがあればお願いします。
○ 高橋氏 全特協の高橋でございます。
当事者が大事だということは私どももそのとおりだと思っております。そのためにも先ほど申し上げましたけれども、「個別の指導計画」や「個別の教育支援計画」の作成が非常に大事だと思っています。ただ、今のお話にもございましたように、客観的な形で児童生徒をとらえていく必要がございますので、そういった意味からも主治医をはじめ、先ほど申し上げましたけれども、福祉、医療、労働などのさまざまな面からの障害に配慮した部分の支援の考えを尊重しなくてはいけないと思います。
ただ、当事者がやはり実感として成長を自分はしていると感じないといけないと思いますので、その部分については指導の中でしっかりと確認をさせていきたいと思っているところでございます。
以上でございます。
○ 藤井議長代理 それでは、中西さんからの質問に対して、小宮さんよろしゅうございますか。
○ 小宮氏 通常学級の方にというお話ですので、特別支援学校からというお話があったかと思います。先ほどもちょっとお話しましたが、現在、通常学級と特別支援学校で複籍という制度を設けて交流を行っています。これは当然人の措置をしながら交流を行っているという現状があります。行事等で通常学級の子どもたちも非常に勉強にもなりますし、また特別支援学校のお子さんも通常学級のお子さんと触れ合って学習になるという場面もあります。
ただ、通常学級に日常籍を置くことはどうかということについては、現段階では相当検討しなければならない問題が多々あると思っています。早急にこれがいいです、悪いですということは言えませんけれども、多くの課題があると思っております。
以上です。
○ 藤井議長代理 たくさん発言をしたいというのはよく感じています。しかし、時間がないのと、次のコーナーが実は大変大事なコーナーであります。ここでまた斎藤課長からお話をいただきますので、そこに重点を置きます。
一旦ここで休憩に入ります。少し時間を切りますが、16時15分まで休憩して最後のコーナーに入ります。5人の方々どうもありがとうございました。
休憩に入ります。
(休憩)
○ 藤井議長代理 最後のコーナーに入りますので、着席をお願いします。また静粛にお願いいたします。
このコーナーは、最初に特別支援教育推進連盟理事長の三浦和さんと理事の佐竹京子さんから報告をいただきます。三浦先生、佐竹さん、お二方でできれば15分ぐらいでお願いいたします。努力目標です。その上で斎藤課長から総括発言をいただきます。この2グループの報告を受けまして、全体討論となります。特に先ほどからありました虐待防止の関係とか、あるいは今度中教審に置かれまして特別委員会での議論の方向と当推進会議との関係等、この辺が議論になればと思っております。
それでは、理事長の三浦和さん、佐竹さん報告をお願いいたします。
○ 三浦氏 失礼します。ただいま御紹介にあずかりました三浦でございます。
私どもの全国特別支援教育推進連盟は、その名のとおり特別支援教育の振興を充実する、推進を図ることを目的として集合した団体であります。
現在、加盟団体は意見書に紹介しております。団体の6行目の真ん中のところに「ふうあの会」と書いてありますが、これは私どもの間違えでございまして「ふうわ」という盲聾児の保護者の方々の団体でして、7月9日に加入していただきました。したがって、併せて21団体、教育関係、PTA関係を含めて保護者の親の会、卒業後の親の会の方々も皆入っている団体でございます。
当連盟は昭和39年、1964年に発足し、以後46年間就学猶予、免除をなくすことを目標に特別支援教育の理解推進事業の活動に邁進してまいりました。
本論に入りますが、2つの感想、3つの意見、1つのまとめということでお話を申し上げます。
大変素朴というか考え方ですが、全体に少し急ぎ過ぎてはいないでしょうかということでございます。平成22年当初に指摘されてから、22年度中に障害のある子どもが障害のない子どもとともに教育を受ける、インクルーシブ教育システム構築の理念を踏まえた制度改革の基本的方向というものを決めるというのですから、その内容からいっても集中した論議の積み重ねと社会全体で確実に認識し合うこと、インクルーシブ教育とは何かということを日本国全体で考えなければならない極めて重要な在り方論議なのに、なぜイの一番に他の分野以上に結論を早目に上げてしまわなければならないのかというのは、私にとってもはなはだ素朴な疑問ながら、絶えず心によぎるものでございます。
我が国の特別支援教育が重度な障害のある子どもたちに教育を掘り起こし、広め、高めてきたこと、真剣になって重度化に対応を重ねてきた道筋をこれからも大事に取り扱ってください。先ほどお話がございました肢体不自由の子どもたちの医療的ケアは、その最適な状態だと思います。
一方、都道府県にあっては特別支援教育構想の第2次から既に第3次の計画を打ち出し、その方針を説明している教育委員会もあると書いております。この面からいきましても、この辺をどのような形でこれを消化するのか。各地方が努力している点を消化しながら、どのように進めていくかについても考えていく必要があろうかと思わけでございます。
まとめますと、これまでやってきたことを私は大事にしなければならないのはないかと思うわけです。私は普段から教育の仕方、仕組みというものには、端的にいえばその子どもの個性を重視し、そのときどきのその子の適時性に着目してニーズに適切に対処し、適応する力を守り育てて自立し、社会参加することを目指すことだと思っています。インクルーシブな教育を進めるに当たっても、このことは同様のことでありましょう。
約120年以上の特殊教育から特別支援教育へと更に大きな変化が図られて4年、子どものニーズに対応することを基にした今の姿になってきたことを再認識し、改めて学校見学等を重ねていただければと思う次第です。
これが2つの感想でございます。
続きまして、3つの問題点です。私にとっての3つの問題ということで、お話をしたいと思います。
1つは何といっても学籍の一元化の問題です。これにつきましては、インクルーシブな教育を進めることが即地域の通常の学校に学籍を置くことだとする見解、また通常の学校に学籍を置くことを原則として、学籍を通常学校にしていることを第一義とするということは、逆にいえば障害のある子どもの固有のニーズや健康等への対応、保障などを第二義にするという見解ともとれます。その点を両者相まってということにするのはなかなか困難でありまして、その点はどちらかに優先することになる。
例えば通常学校への同化、優先ということであるとすれば、今、適時性として、この子どもには医療的ケアを大事にしなければならないし、集中してその管理に当たることが必要だとしても、学籍の上では第一義とすることは、果たしてその子どもにとっていいことなのでしょうか。はなはだこれも疑問と言わざるを得ない考えを持つわけでございます。
次は就学相談、指導についてであります。障害のある子どもに対する多様な支援の中で、子どもが学校に就学するということは家庭にとっても一大イベントであり、周囲の人から支援と協力を得たい機会でもあります。子ども本人にとって個性と能力が最大限に発揮されるように望むのは、親であればだれしものことであります。その事実を共有し、子どもにとってどのような教育の場と機会が望ましいかを十分に考え合うことがまずきちんとできていて、適切で懇切な就学相談と指導をできるようにすることが、この場合でいえば特に市町村教育委員会の職務であろうと私は感じるわけでございます。
就学先の決定に当たっては、これまで蓄積されてきた個別の支援計画や就学支援ノート等の就学移動時における計画をよりどころにして、これまで関わってきた人たちが、保護者を中心に協議を行うシステムをにわかづくりではなく明確な形で組織し、責任ある業務遂行ができるように、この場合はやはり就学に関する委員会をつくり、相談、指導を丁寧にすることであろうと思います。
また、就学後も継続的な相談、指導や個別の教育支援計画の定期的見直しを図ったりすることが極めて大事であります。これはときどきよく言うんですけれども、その後の実行の面についてはまだまだできていない。子どもに思わしくない変化や場に対する不慣れさが多く出るなど、就学相談、指導などを通じて決定を見た段階では気づかなかったことが状態として出てきた場合、速やかに対応して転学の措置がとるような可能性を含めた具体的な取組みを今後は必ずしなければならないと思います。
3つ目の問題は、交流及び共同学習の推進強化です。共生社会の実現を目指す障害者理解推進事業の展開が充実することと併せながら、教育上では交流及び共同学習が一層充実されて展開することが望ましいことと思います。平成16年改正による障害者基本法第14条3項に、交流及び共同学習の積極的な推進の規定がされました。そして、また今回の学習指導要領においても計画し、組織的な実施を促している。今後は何としても小学校、中学校等の教育と特別支援教育とが一体化した教育視点、観点を共有しながら、双方向で価値観、充足感、使命感を持ちつつ、居住地校交流も含めて積極的な進め方をすること。特に居住地校交流については、実施に際して人件費や人材派遣を明確にして、これについて補助していく措置を必ずとることが必要だと思う次第です。
これらをみんなまとめて、最終的に今後に関わるべき特別支援教育の推進の課題としては、先ほども話が出たことと似てしまうんですが、私はやはり日本型インクルーシブ教育システムの構築を必要とすると思うわけです。すべての子どもが地域の小・中学校に就学し、かつ通常の教室に在籍することを原則とするという考え方について全面的な否定をするわけではございません。障害者制度改革の推進に当たっての基本的な方向を打ち出されましたこの会の皆様に対して、通常の学級に在籍することを原則とすることに対して、私どもがこのことについてもっと考えてほしいと言うのも失礼なことかもしれませんけれども、今もって私としては、学籍の復元化といいますか、両方向で考えていく必要があると思います。例えば特別支援教育を受けたいんだということであれば、それはそれとして、その在籍は必ずそこに置くという形で進めるということがあってやぶさかではないかと思います。
また、盲聾児や障害の子どもたちへの教育の在り方を更にきちんと検討して、すべての子どもへの対応をする。例えば最近教わったことなんですが、盲聾の方々が学習にかかる時間が多い。コミュニケーションの問題等を含めて、1つの学習を進めるのに時間がかかることがあるので、在学年数を少し増やすことはできないのかというお話も含めていろいろな課題があるんだということをしみじみと思った次第です。
もう一つは、職業教育の振興等についてです。教育分野での人材の進展が、インクルーシブな小・中学校における教育システムによって、職業教育等を振興している知的障害の関係の入学の問題が狭くなってしまうことに対応することなども出てきはしないかと思う次第です。
もう一つ大事なことは訪問教育です。訪問教育は初めは家庭への訪問です。それから、施設への訪問、病院への訪問というふうにどんどん重度化に対応して進んできた。これは現場の発想が多いにあったんです。このことを大事にすることも必要だと思います。
以上、雑駁な意見ですが、終わりにします。
今日はこれから佐竹さんに、今、PTAでどんなことをお話になっているかということを伝えていただきいと思っています。
○ 佐竹氏 先ほどブザーが鳴りましたが、何分ほどしゃべってよろしいんでしょうか。
○ 藤井議長代理 3分なんです。
○ 佐竹氏 あと3分ですか。
○ 藤井議長代理 3分なんですが、5分ぐらいいいですよ。
○ 佐竹氏 最低6分ください。
それでは、仕切り直しまして、佐竹でございます。第1回目のヒアリングにも来させていただきまして、2回目のヒアリングに臨んでいるところでございます。ちょっとどきどきしておりますが、よろしくお願いいたします。
いろいろな御意見が出ておりますが、親の目線で少し子どもたちの状況をお話させてください。校長会の方でいろいろなデータなどの説明がございました。ですが、皆さん肢体不自由というとどんなお子さんを思い浮かべますでしょうか。よく老人の方がスタンダードな形の腰かけ型の車いすに乗っていることを想像される方が意外と多いのではないかと思います。肢体不自由校にはこういうお子さんはほとんどいません。まして、障害においては肢体不自由のみならず、自閉傾向があったり、弱視であったり、難聴であったり、1人のお子さんが多様な障害を抱えているのが現状だということを認識していただけるとありがたいと思います。
そういったことを踏まえて、ちょっとお話させてください。前回のヒアリングの後、私の方に全国の親御さんからファックス、メール等が届きました。その中の文章を紹介させていただきますが、何分にも親御さんの文章でございますので、ちょっと不適切な表現がございましても、あらかじめ御容赦いただきたいとお願いしておきます。
東北地区。通常の学校に障害を持った子どもたちを一律に就学させるという議論に大変驚き、恐怖感さえ感じた。現行の仕組みがどうして否定されるのかということを言っておられます。
中国・四国地区。現在でも多くの障害児が公立の小学校に在籍しているし、我が子も通っていた。今は特別支援学校に通っている。障害のある子に必要な教育が成長になると思っている。みんなそろえた一律の教育ではできなかったことです。
関東地区。さまざまな障害のある子どもたちは急激な環境の変化への順応を苦手とする子が多い。その点を十分に考慮して制度改革を進めていただきたい。
次は現在のさまざまな教育環境が後退し、損なわれることのないように、特別支援教育を発展させインクルーシブ教育を進めてほしい。どんなに環境を整備しても授業内容や理解力が違い、結局は同じ門をくぐるだけで別々の指導内容になることは明白です。
障害の重い医療を必要とする我が子は訪問教育の方がよかったかもしれないが、現在は特別支援学校に通学し、耳から、肌から教育を受けさせていただきありがたいと思っている。
東京からの意見です。就学相談についてなんですが、幼少期にはまだ本人は決定するだけの知識や経験を持ち合わせていないため、保護者が一番身近な支援者であり、保護する者として関わるはずです。就学の決定においては、学校、教育相談、教育委員会の総合的な判断、信頼関係の下に決定していただきたい。第一次意見案には第三機関が決めるような表現がありましたが、あくまでも教育機関を中心として相談機能を十分に発揮してほしい。
原則として、すべての子どもは地域の学校に籍を置くという学籍の一元化には共感ができない。理念先行型のインクルーシブ教育は特別な支援を必要としている児童、生徒にとって、地域の学校へ就学するということは、ついていかれないことを前提にしており、児童、生徒本人にとっても、保護者にとっても精神的に大きな負担であると思います。
小学校のときは普通校に通っていました。小学校低学年のうちはよかったが、息子はゆっくりやればできるのに、高学年になると周りのお子さんたちがやってあげるよ、大変だからいいよと何でもほかのお子さんが手を出すようになった。息子自身の自分でゆっくりとならできるのにという阻害された気持ちを持つようになった。中学進学の際には地域の中学校は設備面が充実していて、校門から教室まですべて段差もなくバリアフリーであったが、幾ら設備があっても小学校時代と同じ思いをさせてはいけないと思い、中学は特別支援学校に進学した。母の思いであるとは思いますが、ここには私が望んでいた教育があると感じているそうです。
私たち保護者はインクルーシブ理念に反対しているわけではありません。特別支援教育はインクルーシブ理念を持って政策、構築されてきた改革の1つだと思っています。ですが、保護者は大きな変革を望んでいません。結局は子どもたちに教育の空白ができるのではないか、重い障害の子には教育は要らないということにはならないか、教育条件のそろわない学校へ一方的に放り出されるのではないかと危惧していることが読み取れます。特別支援学校は小学校から高校までの一貫した教育整備がされています。現行の高等部は教育者、関係機関、保護者の努力があって、全国各地に徐々に設置されてきて現在に至っているものです。また、卒業後の就労準備、福祉施設等への移行にも影響が出るのではないかと心配しているようです。
時代とともに法律が変わり、学校の在り方を見直すということは必要だと保護者も考えていますが、多くの保護者、特にメールやファックスを寄こしてくださった皆様方の中のお考えを私なりにまとめます。私たち保護者はこう考えています、障害のある子どもを真ん中に置いて、保護者、学校、教育者、教育機関、医療、福祉等のさまざまな人材、機関のネットワークを構築して、どのような重い障害を持っていても教育の保障を崩さずに、その育成に当たられる法改正を願っています。
以上です。
○ 藤井議長代理 それでは、ここからは総括発言になりますけれども、特別支援教育課の斎藤課長より10分程度を目安にお願いできますか。お願いいたします。
○ 斎藤課長 文部科学省特別支援教育課の斎藤でございます。
これまでの3コマでは、学校団体、保護者等の団体からのさまざまな御意見を聞いていました。勿論推進会議から示された第一次意見書も重要な参照すべき資料として踏まえながら、先ほど少し触れましたが、去る7月12日の中教審の初等中等教育分科会において委員会の設置を決定いたしました。
本日お手元にお配りした資料1-1の4ページ目からになりますが、委員会設置の主な検討課題、委員名簿、今後の検討の方向性、見通しとして論点の例、検討の進め方という4種類の資料をお出ししております。
まず委員会の構成ですけれども、委員の名簿が出ております。総勢27名の委員で検討をスタートしております。
委員長は中教審の初等中等教育分科会委員でもあり、かつ中央障害者施策推進協議会のメンバーでもある英憲教授が選ばれております。委員長の指名によりまして、視覚障害者の当事者でもいらっしゃいますが、これも中央障害者施策推進協議会の会長を務めておられます石川准静岡県立大学教授に委員長代理をお願いしております。
27名のうち、通常ですと、中教審の検討体制は学校関係者あるいは教育分野の専門家がほとんどを占める例が多いですが、今回の場合には27名のうち9名が障害当事者及び関係団体、親御さんの会等の代表によって構成されております。
まず推進会議のメンバーでもいらっしゃる、全日本手をつなぐ育成会の大久保常務理事です。障害種でいいますと、知的障害が一番大きな構成母体となっております。
それから、全日本ろうあ連盟の久松事務局長。
それと、障害当事者としてもう一人お入りいただいているのが、御存じの方も多いと思いますが、乙武洋匡さんです。御自身がいわばインクルーシブ教育システムの中でずっと教育を受けてこられまして、先日まで杉並区の現職の教員も務められたということで、インクルーシブ教育を経験され、かつ教育現場にも通じた障害当事者という貴重なお立場でお入りいただくということになったものでございます。
その他、筋ジス協会、心臓病の子どもを守る会、肢体不自由のPTAからは佐竹さんにお入りいただいておりますし、自閉症のコミュニティー、それと発達障害です。発達障害の関係者は数にしますと大変多いということでございます。2コマ目にもございましたように、小・中学校、通常の学級における指導、支援の大変大きなウェイトを占めておりますし、数も増えているということから、この推進会議では十分に御議論いただけなかった面もありますが、発達障害の関係の方に複数お入りいただいておる状況でございます。
その他、関係する専門家にも入っていただいております。例えば実際に小・中学校において視覚障害のお子さんに関わってきた関係者等々にもお入りいただいておりまして、そういう意味ではいろいろな御意見なりお立場を踏まえ、しかも、教育分野に通じた方でありかつ障害当事者の立場からもいろいろな御発言がいただける方にできるだけ入っていただいたという考え方でございます。
勿論推進会議の有志の方々からもいろいろな御要望をいただきまして、もっと委員を追加すべきではないかという話もございましたけれども、最終的には委員の数が一定数以上になりますと、十分に時間をとっての議論ができないという面もございますし、限られた時間の中でできるだけ内容の伴った議論をした上でまとめをしていこうということで、政務三役とも協議をし、指示を受けまして、このような体制で委員会がスタートしております。勿論、障害当事者及び関係団体の幅広い御意見を伺うということで、第1回の委員会においても高井政務官からはいろいろなヒアリング等の形で、多様な御意見を審議、検討に是非生かしていきたいということは申し上げた次第でございます。
もう一点、この委員会の検討の方向性としては、論点の例という資料を出しておりますが、この中の2番目に就学相談・就学先決定の在り方がございます。この部分が恐らく本日の御議論の中心的なテーマであるインクルーシブ教育システムの具体化の在り方に関わる重要なポイントであると思っております。
そこでの問題意識として、1つは移行期の個別の教育支援計画を通じ、保護者の意向等を総合的に勘案し就学先を判断する。これが文科省の協力者会議で昨年提案された考え方でございます。
それと、推進会議の御意見にもございました障害の有無にかかわらず、すべての子どもが地域の小・中学校に就学し、通常の学級に在籍することを原則とする。それぞれのメリット、デメリットを議論しながら、この両者のいずれかをとるかという議論ではなくて、むしろいずれにも共通する重要な論点として次の項目がございます。
3点目として、保護者と学校・教育行政サイドの共通理解を醸成し、適切な就学先、教育支援の内容等の決定をスムーズに行うプロセスとして、どのようなことが考えられるかということで、先ほども少しございましたが、早期からの教育相談、支援、あるいは体験入学とか就学委員会への多様な委員の参画、更に重要なポイントとして、都道府県、市町村の連携といった視点を交えて検討し、A案、B案のいずれをとるかという議論ではなくて、できるだけ保護者の意向を十分に踏まえた就学先の決定ができるよりよい仕組みは何かという建設的な方向で議論、検討が進められればと期待をしているところでございます。
当然もう一つ重要な論点として、今回、第1回の委員会が既に開催をされましたけれども、委員のほとんどがインクルーシブ教育システムの理念については十分に評価をし、重要な方向であると認めております。ただ、それを具体化する際に不可欠な条件として、必要な体制・環境整備が必須であるという声が数大きく寄せられております。
これは以前意見書でお示ししたようなバリアフリー、教室の整備、教員の配置に伴うコストの問題だけではなくて、例えば3の2番目にございますような必要な教育課程上の配慮がやはり大事であり、特に知的障害のお子さんについては大変重要なポイントになります。こういった点を含めて合理的配慮あるいは支援の在り方、更には体制整備の方向性、漸進的な取組みとしての居住地校交流等の在り方、これは副次的学籍制度の在り方を含めた検討でございますが、こういった点について、自治体のさまざまな取組みがございます。進んだ取組、苦労の多い地域、それぞれございますので、そこを幅広く議論した上でよりよい制度改革の方向性について、でき得れば年内ぐらいに中間的なまとめを行うべく、早速8月の半ばごろにも第2回の会合を開催する予定にしております。
以上が中教審における検討、審議の方向性でございます。
あと、若干お時間をいただきまして、事前にいただきました御質問事項についての御回答をしたいと思います。これは紙でお出ししたものではございますけれども、ポイントのみ御紹介いたします。
今御覧いただいている資料1-1の最初の数ページでございます。たくさんの御質問がございましたけれども、いずれにしても、多くの質問は言わばインクルーシブ教育システムの在り方についての推進会議の場としてのお考え、これに対する文科省の見解でありました。これらについては、現段階でこちらから具体的な見解を示すということではなくて、今後の特別委員会の審議、検討において十分に踏まえながら議論、検討をさせていただきたいということで、大変恐縮でございますが、ここでの見解の提示は差し控えさせていただきます。幾つか個別の事実関係に関する御質問のみ回答を御紹介させていただきます。
まず1つは、前にお出しをした回答の中で、インクルーシブ教育システムの整備に伴う体制整備のコスト、想定Aと想定Bというケースについて御回答いたしましたけれども、その内訳あるいは減価償却、維持管理のコストという御質問がございました。
これにつきましては、以前にお出しした回答に基本的な条件設定を記載してございますけれども、施設、設備の整備に必要なコストの内訳として、想定A、想定Bの条件をすべて満たすための教室等の増築とかバリアフリー設備の設置に係る工事費、言わばインフラ整備のコスト、工事費の総額でございます。御指摘のあった毎年かかる維持管理費、減価償却費等、直接的費用以外の費目はこれには含まれてございません。ただ、試算につきましては、今後の中教審の検討を含めて精査が必要であると考えてございます。
もう一つは質問7-1ですけれども、これは手話による教育ができる教員、点字による教育が可能な教員についてです。
これについては先ほど既に幾つか御質問もいただいておりましたけれども、文科省が毎年調査しております特別支援学校等の免許状保有状況調査におきましては、特別支援学校の教員について、例えば担当している学級の主な障害種ごとの増加をしているということでございますが、点字による教育、盲ろうのお子さんが必要とするコミュニケーションに対応できる教員については、残念ながら現時点では把握してございません。
最後に1点のみ申し上げます。これは幾つか御質問があろうかと思いますけれども、障害者の虐待防止法に関する見解でございます。前回のこの推進会議におきまして、学校現場における実際の虐待事例、裁判になった事例につきまして御議論が行われたと承知しております。
これにつきましては、今後できるだけ慎重な議論、検討を行っていただきたいと思っている次第ですけれども、今御覧いただいている資料1-1の最後のページに虐待防止法の通報対象に学校を含めることについての懸念点を記載しております。
第1ですが、これは特に小・中学校についてですが、障害のあるお子さんと障害のないお子さん双方が在籍しており、発達障害など状態によっては明確に障害の有無の線引きをすることが難しいケースがあるということ。
それから、およそ学校においては、障害の有無に関わらず児童、生徒への虐待を防止するべきものでありまして、障害のないお子さんについての通報義務がない中で、これは障害者虐待防止ではなくて児童虐待防止のスキームによることになりますが、これについては学校の通報義務が課されておりませんので、障害のあるお子さんのみを保護対象として通報義務を課すことについては、慎重に検討すべきということでございます。
更に指導上の課題、学校における虐待行為として、いわゆる行き過ぎた指導というのは決して許されるものではございませんけれども、先ほど特別支援学校長会からのお話もございました、学校現場においての指導上の配慮あるいは安全確保上必要な措置としての行為が虐待ととらえられるのではないかという懸念の下に、できなくなるという過度の萎縮効果によるマイナスの影響が出ることがないように留意する必要があるということがございます。
最後は、議論のあるところかと思いますが、お子さん同士の虐待、例えばいじめとかけんかの場合に虐待行為というのはどういうふうにとらえるのか。例えば小・中学校において、障害のあるお子さんとないお子さんの間でのトラブル、暴力行為等があった場合の通報の在り方についても是非慎重な検討が必要だと考えておりまして、これについては問題提起をさせていただきたいと思っております。私からは以上でございます。
○ 藤井議長代理 ありがとうございました。
遠藤委員は今日遅刻だったんですが、正式に欠席をしたいという連絡がありましたので、お伝えします。
それから、土本委員は飛行機の関係でここを17時15分には退席するということですので、あらかじめこれも通告を受けています。
これから17時20分をめどに議事を進行してまいります。
まず発言をしたい方は挙手いただけますか。さて、これをどうするかということです。これが本日の司会者に課せられた最大のテーマです。インクルーシブ問題も大きいですが、今日の進行も大きいです。どうしましょうか。
まず発言をしていなかった大濱委員、勝又委員、山崎委員、森委員の順番でいきます。極力結論はこうだ、これを聞きたい、あるいはこういう意見だということで、2コメント、3コメントでお願いします。
○ 大濱委員 今日はありがとうございました。
論点のところで斎藤課長にお聞きしたいのですが、私が昨年、実際に受けた相談ですが、障害を持った自分の子どもさんが幼稚園から進学する際に、幼稚園の仲間と一緒の同じ学校に行きたい、兄弟のいる学校に行きたい。そのためにはすぐ近くの学校に行きたいのだがという相談がありました。ところが、教育委員会からあなたのお子さんは重度なので特別支援学級に行きなさい、すぐ隣の区の特別な学校に行きないという指示があった。どうしようかという相談があった。先方の親御さんが教育委員会の方に相談に行き普通学校に行くことができようになりましたが、今後この委員会の話の中でそういう方向が見えてくるのか。そういうことは可能になってくるのかどうか。それをお聞きしたいのが1点です。
それから、先ほどの虐待の話ですが、確かに知的の障害者が暴れるのはよく聞いております。私がある施設でお伺いしたところ、子どもさんが暴れた場合、無理やり押さえつけるのではなくて、職員が何人かでその子どもを抱きかかえる。そのかわり職員はそれでたたかれる。だけれども、職員の仕事として知的の障害者を黙って抱きかかえて、それが収まるまで、クールダウンするまで抱きかかえている。そういう形によって、職員と障害者の間に信頼関係が生まれていく。だから、無理やり押さえつけることはだめなのだ。知的の方がいる施設ではそういうことをかなり強調されていましたけれども、その2点についてお伺いしたいと思います。
○ 藤井議長代理 勝又委員、お願いします。
○ 勝又委員 勝又です。ありがとうございます。2点あります。
1点は、先ほどからインクルーシブ教育システムという言葉が行き交っておりまして、先ほど質問の中で「インクルーシブ教育」と同じ方向性を持っているという御回答がありましたけれども、いまひとつよくわからないので、これから特別委員会でも議論されることと思いますので、インクルーシブ教育システムの定義を文章でいただきたいということです。そうしますと、両方の中で違う方向の議論をしているのか、同じ方向の議論をしているのかということの確認ができるということで重要だと思います。
2点目は、この特別委員会には大変期待しております。そういう意味では、この会議を見ている全国の障害者の皆様期待しているところだと思いますので、この委員会の内容について、なるべく早く開示していただきたい。つまり、期待しているがゆえに私はしょっちゅうこの委員会のホームページを見ているわけですが、いつまで経っても資料も公開されない、議事次第も出してこないという形です。是非ともこの改革推進会議のホームページの下に福祉部会と同じようにリンクをはっていただきまして、そこからこの委員会の状況をつぶさに見ていきたいと思いますので、御協力をお願いしたいと思います。
以上です。
○ 藤井議長代理 山崎委員、森委員、関口委員という順番でいきますので、山崎委員お願いします。
○ 山崎委員 山崎です。ありがとうございます。
2つの点でお伺いしたいと思います。
1点目は極めて素朴な質問というか感想でございます。今日は特別支援学校教育を非常に前向きに受け止められていらっしゃる学校関係者、その他の方に多数おいでいただきまして、ありがとうございました。大変勉強になりました。ただ、前回はたしかそうでない普通学校、一般の学校にも入りたいという団体の方もいらしたと思うんですが、今日はそういう方々のお話がなかったので、私個人としてはバランスをとって物を考えたいと思っておりますので、極めて残念だという印象がございます。
2点目でございますが、日本的なインクルーシブ教育システムという言葉についてでございます。「日本的な」が付くことについては、既に御指摘がありました。私もこの点は言いたいことがいっぱいありますが、時間がかかるのでやめておきます。
インクルーシブ教育システムの定義については、今、勝又さんからも御質問がありましたが、私も是非正確な意味合いを伺いたいと思います。と申しますのは、きちんとこれを承っておかないと、これから申し上げるような邪推をしかねないからでございます。
どういう中身かと申しますと、就学相談から教育機関での教育を経て社会人として活躍いただく。この全体の流れをシステムという形で語られようとしている。前向きに受け止めれば、そのように理解しますが、他面でこれは少し違った角度からの指摘になりますが、具体的には特別支援学校、学級のような教育機関において、場合によっては権利条約の24条の1項の人間の多様性の尊重を強化するという文言が必ずしも十全に発揮できないという場面がある。余り美しい言い方ではございませんが、24条の趣旨をやや薄めるためにインクルーシブ教育ではなくてシステムという言葉を補い、全体の入口から出口までのプロセスを語るということで表現されようとしている。このようについ邪推してしまうわけでございます。これが邪推であるということを的確に口頭なり文章でお示しいただけると、大変ありがたいと思います。
以上です。
○ 藤井議長代理 勝又さんの質問と関わってきますね。
森委員、お願いします。
○ 森委員 森でございます。
私は障害者の虐待防止のところにつきましてお尋ねしたいと思います。
先ほど斎藤課長は資料1-1の一番最後のところの「障害者虐待防止法の通報義務対象施設に学校を含めることについて」という文章をお読みになりました。私はこの通知は本当に正しいのか思っておったんですが、課長がおっしゃるんですから、そうだろうと思っております。
そこで質問したいんですが、まず障害者虐待防止法について、虐待行為の範囲に学校関係者を含め、学校内における障害のある児童、生徒に対する虐待に限定して通報という法的義務を課すことは、以下の理由により適当ではなく、学校は対象施設から除外すべきと考えると書いてあります。その理由として<1><2>とございます。特に<2>でございますが、およそ学校においては、障害の有無に関わらず児童、生徒に対する虐待を防止するに当たり、障害のない児童、生徒に対する通報義務がない中でとうたってあります。
それで私はお聞きしたいんですが、児童虐待防止法に関する法律によりますと、児童虐待の早期発見などということで、第5条では学校、児童福祉施設、病院、その他児童の福祉に業務上関係のある団体云々とありまして、児童虐待を発見しやすい立場のことを自覚し、児童虐待の早期発見に努めなければならないとうたってあります。
そして、第6条でございます。これは児童虐待に係る通告でございます。第6条は虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかにこれを市町村、都道府県の設置する福祉事務所もしくは児童相談所、または児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所もしくは児童相談所に通告しなければならないとあります。これは学校は別だという話にはならないと思っております。
また、文科省が出しております「学校等における児童虐待防止に向けた取組の推進について(通知)」、18初児生第11号、平成18年6月5日で各都道府県の教育委員会担当課長殿という形で、文部科学省初等中等教育局児童生徒課長坪田眞明課長から出ている通知では、やはり同じようなことが出ているわけでございます。
虐待防止等の趣旨の徹底という形で(1)で児童虐待の早期発見などということでございまして、学校の教職員は児童虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し、児童虐待の早期発見に努めなければならないことということをうたってあります。
そして、2番目には児童虐待に向けた学校等における適切な対応として、(1)学校の教職員は職務上児童虐待を発見しやすい立場にあることを再確認し、学校生活のみならず幼児、児童、生徒の日常生活について十分な観察、注意を払わなければならないとうたってあります。
(2)で、虐待を受けた幼児、児童を発見した場合には、速やかに児童相談所または福祉事務所などへ通告すること。児童虐待の疑いがある場合には、確証がないときであっても早期発見の観点から児童相談所等の関係機関へ連絡、相談するなど、日ごろからの連携を十分に行うこと云々と書いてあるわけでございます。
1つは、この公式の文書からとすると、通報義務というのではなくて通告という言葉ではないかと思っております。児童虐待防止法のいわゆる通告ということは児童福祉法に持出ておりまして、この25条に書いてあります。児童福祉法上の第25条は、要保護児童を発見した者はこれを市町村、都道府県に設置する福祉事務所もしくは児童相談所に通告する云々と同じようなことが書いてあります。児童相談所に通告しなければならないとう義務になっているわけです。これがここに出ておるんですが、この見解が理解できないということで御教示願えれば幸いだと思います。
○ 藤井議長代理 関口委員、どうぞ。
○ 関口委員 全国精神病者集団の関口です。
まず大まかなところで言いたいんですけれども、いわゆる発達保障論みたいな形でもって分けていくと私には思えるんです。つまり、多様性というものは尊重されて、ありのままでいる自分も尊重されるというのが権利条約の趣旨でございます。ここは中障協とか中教審とは違って権利条約のためにつくられている制度改革推進会議ですので、そういう意味でいうと、いろんなスペクトラムがあったとして、それを一つひとつ片づけて、分けていくというイメージを非常に受けるんです。
それが日本的なインクルージョンなのかというと、私はそうではなくて、スペクトラムはあっていいんですけれども、それが一般の方、つまり通常の子どもたちの方に統合されていく、分けていく、分離していくということなんです。別に分離されても構わないんですけれども、分離されたものが再統合されなければ、それはインクルージョンとは呼ばないだろう。今、文科省等が言っているのは、いかに分けていくかということを言っているのであって、インクルージョンというのは分かれているいろんな多様性を持ったものがあるんですけれども、それをいかに一般化していくか。いかに同じ人間として他の者と平等に扱うかというところが条約の肝でございます。そこのところがどうもよくわからないというのが第1点でございます。
第2点は虐待のことですけれども、これも障害者であるがゆえに、つまり女性もそうですけれども、男性よりも立場が弱かったから、障害者というのは健常者より立場が弱かったからこそ障害者の権利に関する条約ができているわけですから、それに対する虐待のおそれというのはより強いわけです。それに対して、なぜ学校だけが聖域なのか。そういうことを言うんだったら、精神保健福祉法があるから病院はいいんだ、人権を守られているんだ、当たり前だ、ということと全く同じ論理ではないですか。そんな聖域を1つでもつくってはいけないということがあります。
最後に1点だけ言っておきたいんですけれども、医療的ケアと教育というのは別です。医療的ケアが必要だから教育を分けなければいけないというのは論理になりません。医療的ケアが必要な子どもが要るというのは、それは要るでしょう。だけれども、それは医療的ケアをすればいいわけであって、それと教育内容とは関係ないはずです。そこで分離しないでください。
以上です。
○ 藤井議長代理 まず意見は意見として、質問は大濱さんからありました。特に虐待に関しては、今の関口さんを含めて3人からありましたので、虐待は虐待でまとめていただきまして、その前に大濱さん、勝又さん、山崎委員から出ていましたので、まずこれをお答えいただいた上で、後半の方で虐待のことを一括してお答えいただくことにします。
堂本さん、手が挙がっていますか。私の目が見えなかったんですね。大久保さんも手が挙がっていますか。それでは、堂本さん、大久保さんといきましょう。短くお願いします。
○ 堂本委員 私は先ほどから問題になっている日本的とか日本独自のインクルージョンというのは、付けないでほしいと思います。なぜならば、言葉の持っている本質を国の名前を付けることによって変容するということは、非常に不自然なことなので、そういう言語の使い方は是非やめていただきたい、インクルージョンのもつ言葉の本質を日本でも実現していくんだという姿勢に文部科学省もきちんと立っていただきたい、というお願いでございます。
2番目、特別支援学校を私はたくさん見てきたし、先生方の御努力もたくさん見てきました。本当にすばらしい仕事をしていただいている現場がたくさんございます。そのことを全否定するわけではないのですけれども、権利条約の本質というのは差別をなくすことなんです。そうだとしたら、私はその地域の全部の子どもに平等に地域の小学校への入学の知らせをまずは出していただくということが大事だと思います。
先ほどのお話の中で、今度の特別委員会でそれも検討します、とおっしゃった。全否定してないのでほっといたしましたが、権利条約を日本が批准するのであれば、すべての子どものアイデンティティー、その子どもの存在をまず認めるべきです。どんなに重い障害を持っていようが、持ってなかろうが、1人の人間としてこの国に生を受け、ここの国に住んでいる人間の基本的人権として、私はまず地域の学校への入学の通知を出すべきだと思います。
推進委員会では当事者の皆様が御自分の経験から話されましたが、その内容が包括に、全体の意見となってこの場に出されていると思う。本当にこの場に身を置くと、そういう差別を受けていたのか、そういうふうに差別を受け止めていたのか、と思いました。ですから、当事者の方が発言しているこの会議の意味は非常に大きい。こちらも触発され、多くを学びもさせていただいた。当事者の意を汲んで、そこのところを是非とも国として大事にしていただきたい。せっかく全部否定するものではない、これから検討する、と云われたのだから、その発言を大事にしていただきたい。国連に対して日本がとるべき大事な姿勢だと思います。よろしくお願いいたします。
以上です。
○ 藤井議長代理 大久保委員、どうぞ。
○ 大久保委員 大久保です。
各論になるかどうかわかりませんけれども、ちょっと気になったところがございました。と申しますのは、全国特別支援教育推進連盟に私たちの名前も入っているので恐縮なのですけれども、私はこの文章は初めて見ました。私がうっかりしていたのかどうかわかりません。その辺のところをお含みおいた上でお聞きいただきたいと思います。
気になったところは、特別支援学校の寄宿舎についての御意見です。ここのところで、障害によっては家庭だけでは適切なしつけや生活力を身につけることが難しいということで、寄宿舎は必要だという御意見がある。そして、これは私のこれまでの理解でいくと、やはり通えないから仕方なく寄宿舎があると考えていた次第です。ですから、北海道辺りはかなり寄宿舎が多いということがあったと思います。
更に心配なのは、51ページの特別支援学校の寄宿舎についてというところで、寄宿舎に入所することを本人も親も望んでいない場合でも、寄宿舎の指導員が目的を持って指導していくうちに依存しがちな母子分離ができるということで、それなりに有効である。こういう例もあるかもしれませんけれども、基本的に子どもの育ちを考えた場合、通常は家庭不分離の原則という考え方で育ちを考えるというのが今の考え方ではないかということと、実際には教育だけでそれをやろうということでなく、地域のさまざまな支援をもって、いわゆるファミリーサポートという形でそういう環境をつくっていく。こういう基本的な考え方が中心ではないかと思っている次第です。
ということで、この辺についてはかなり気になったということで、恐縮ですが、三浦先生に一言お伺いしたいということです。
以上です。ありがとうございました。
○ 藤井議長代理 時間がきましたので、残念ながら今日はもうこれで終わりです。申し訳ありません。
まず三浦理事長から今の大久保委員へのコメント、あとは斎藤課長からいただきます。まず三浦理事長よろしゅうございますか。
○ 三浦氏 今お話をお聞きしまして、確かにここに書いてあるのはこれでいいというわけにはいきかねます。ただ、この考えのところには何があるかというと、就学をさせたいというか、特別支援学校の教育そのものを受けさせたいという思いが昔からあって、それが強く出てきた例だと思います。ですから、居住するところを移せば、それがまた寄宿舎であればということで、親身になって相談したり、親身になって指導もできるだろうし、支えにもなるだろうしという考え方が、家庭の和やかさと家庭に置いた方がはるかに子どもにとっていいのにという意見を書いた形であった例だと思います。
そういうことから考えましても、個人的には寄宿舎に入所することを第一義にする形を強烈にするということについては、そういう事例をここに出してしまったか、出さない方がよかったのではないかというのが率直な意見でございます。就学相談の結果、この肢体不自由の子どもだと通常は普通の学校に入れるのにという私どもの見解が通じないで、各地方の教育委員会で特別支援教育の方に入れてしまったということです。最近ある県でありましたけれども、経験者が見ればこれは間違っているということであって、そういう意味でここの項目については、申し訳ありませんが、そういう気持ちでいっぱいです。
反論があるかもしれませんので、隣の佐竹さんにも話を聞いてみたいと思います。
○ 藤井議長代理 時間がないので一言でお願いします。
○ 佐竹氏 反論するわけではないのですが、これをとりまとめましたときに寄宿舎は不要である、母子分離を禁止した条項の妨げであるということに対しまして、親御さんから幾つか意見が出てまいりました。確かに寄宿舎というのは目的が幾つかあると思います。通えないから寄宿舎が必要、また家庭の事情で学校に通うことができないので寄宿舎が必要な場合、もう一つにはここにあるような母子分離、それは、親が子離れできなかったり、子が親に大変依存したりという関係性において一時的に離すことで、また、そこの間に教員の先生が入ることで、うまくいくケースがあるんだという親御さんの御意見の下に作成したものでございます。
○ 藤井議長代理 いずれにしても持ち帰っていただきまして、もし表現等があれであったら、また修正していただくことにします。
それでは、斎藤課長よろしくお願いいたします。
○ 斎藤課長 たくさん御質問がありましたが、時間の制約もありますし、今日は学校の関係者もたくさん来ておりますので、幾つかのカテゴリーに分けてお答えしたいと思います。
第1は、障害者権利条約にいうところのインクルーシブ教育システム、特に日本的なということに関する定義を文書で出せというお話がございました。文科省から特に日本的なインクルーシブ教育システムということを紙でお出ししているわけではないんですけれども、あくまで我々からお出ししているいろんな見解の中で「インクルーシブ教育」ではなくて「インクルーシブ教育システム」としておりますのは、基本的には権利条約の中で、いわゆる日本語にすると一般的な教育制度です。インクルーシブ・エデュケーション・システムを日本語に置き換えたものと考えておりまして、この言葉については、権利条約の中でも各締約国は権利の完全な実現を漸進的に達成するため、自国における利用可能な手段を最大限に用いることにより措置をとる、コミットするというのが第4条に出ております。
ここにありますように、国際的に共通の定義なり概念内容があって、それをひたすらやっていくことよりは、それぞれの国において漸進的に自国におけるアベイラブルな手段を最大限に利用していくという考え方がある。つまり、それは国によって利用可能なリソースとかシステムの構成要因も違うだろうということを前提にした条約の議論があったということを踏まえてのものでございます。この条約に署名すること自体が特別支援学校の存在を否定するものでは必ずしもないんだということを前提に、例えばシステムの構成要素としては特別支援学校であるとか、特別支援学級のような仕組みも日本においては最大限に利用した上で、そのシステムの構築なり具体化を図っていくべきではないかという考え方が背景にございます。
ですから、紙でインクルーシブ教育システムの定義を出せと言われでも、現時点で明確に文書化したものをお出しすることは難しいかと思います。あえてお出しするとすれば、条約の表現をそのまま引用するしかないかもしれませんけれども、これについては今後我が国において条約の理念を具体化するにはどうするかという点を、例えば中教審の委員会における審議、検討でも十分に御議論をいただいていくべきだと思っております。
あと、委員会の進め方についてもいろいろな御指摘、御意見がございました。資料の公開等が遅いという御指摘もありました。これについては十分に受け止めて、できる限り早期の公開なりに努めていくべきだと考えております。記録上の制約もありまして、若干の時間がかかっております。
例えば1つの公開制についての努力としては、この中教審の特別委員会はプレスを含めてフルオープンで実施をしております。第1回の会議は会場の制約がございまして、一般からの傍聴の御希望は抽選方式で行いまして、希望されたけれども、傍聴できなかった方もおられたということでございます。ただ、第2回以降はなるべく広い会場を確保し、かつ推進会議なり内閣府の担当室との連携は特に重視いたしまして、できる限り数席の傍聴席を常に用意して、御議論を傍聴いただければと思ってございます。勿論委員会に御参加をいただいている委員の方を通じての情報提供もできようかと思っております。
それから、個別の委員会における論点の中で、就学相談の在り方について、大濱委員から幼稚園における就学相談で実際に教育委員会からの説得的といいますか、一方的な指導の例があるという御指摘がございました。そういった事例は保護者の理解なり、共通の理解の上に立って就学先を決められるような仕組みはどのようなものだろうか、これはどんな就学プロセスをとるかによらず大変重要なプロセスでありますので、そのための早期からの教育相談、支援、場合によっては体験入学のような機会、更には就学委員会にいろいろな声を入れることによって、大濱委員が御指摘のようなケースは少しずつ緩和されていくのではないかと期待しているところでございます。
虐待防止の件については幾つも御指摘がございました。
一番根本的な御質問としては、森委員から児童虐待防止法における規定についての引用がございました。これは確認でございますが、児童虐待防止法においては第2条に児童虐待の定義がございまして、この法律における児童虐待とは保護者がその監護する児童に対する虐待ということで定義をされております。つまり、ここでいう第5条の児童虐待の早期発見等の通告の義務というのは、あくまで保護者による虐待が学校において発見しやすいということを踏まえた規定だと理解しております。我々からお出しした学校内部における教員による虐待云々という前提がはっきり書いていなかったので、ここではあらゆる子どもに対する虐待の通報義務がないと受け止められていたとすれば、その点については舌足らずであったことをおわびしたいと思います。委員御指摘の点というのは、先日も海渡君の痛ましい虐待の事案がありましたけれども、学校においてはそういった保護者による虐待が発見しやすいということを踏まえた上で、児童相談所との連携等の取組みを最近は強化しているところでございます。それと今ここで議論すべき障害者虐待というのは、別のスキームであるということを御理解いただければと幸いでございます。
なおかつ、虐待について、弱い立場であるがゆえに守るべきであるというのは、御指摘のとおりでございます。学校現場においては、学校長による虐待防止のためのいろいろな措置というのは、昨年来提案されている議員立法の中でも責務として定められているところでございます。今後の議員立法の動向にもよりますけれども、その点はあくまでも学校長なり学校として、教員に対して、あるいは生徒に対してきちんと啓発活動や予防のための措置を講ずることはいずれにしても責務であると考えてございます。
○ 藤井議長代理 多分それぐらいだと思います。
○ 斎藤課長 もう一点、学校において集団で抱きかかえて云々という御質問がございました。これについては、特別支援学校からお答えいただくのがいいかと思います。
○ 藤井議長代理 学校はだれがお答えになりますか。尾崎さん、お願いします。
○ 尾崎氏 尾崎でございます。
大濱委員からの御質問ですが、お話のとおりです。学校でもし押さえた場合でも、最終的に無理やりは絶対にだめだ。それから、クールダウンする方向で押えていかないといけない。そして、最後はどういう状況だったのかということを説明して、とにかく落ち着いて終わるようにするというのは学校でやっていることです。
ただ、これは一般論でして、押さえ方も体だけ押えて手が離れた場合には、手でほかの子に暴力をふるったり、ガラスにぶつけたり、あるいは自傷行為をしたりということをあります。足があいていたら足を振り回す子もいますし、それは子どもによって押さえ方は様々です。ただ、基本的な方向は先ほど大濱委員から御指摘のあった方向で指導はしていますが、そのやり方等については、やはり普段からの関係をきちっと見ていないとできないものです。虐待防止法で行為者になるということが前面に出てしまいますと、そういうことの研究とか検討というものが疎かになりがちだということも含めて心配しているところでございます。
○ 藤井議長代理 まだたくさんあろうかと思うんですが、委員からの発言はこれで打ち切らせていただきます。
1つだけと言いますが、皆さん方、時間を見て物を言ってください。どうしましょうか。本当に一言ずつにしてください。
○ 尾上委員 尾上です。申し訳ありません。
先ほど斎藤課長から文科省としては、日本的なインクルーシブ教育システムという言葉は出していないという話でしたが、今日いただいた資料の6ページの「特別支援教育の在り方に関する論点(例)」の中で、まさに文科省の事務方が用意された文書の「1.総論」の2に日本的なインクルーシブ教育システムの構築を図る上で云々と出されているので、先ほど複数の委員から出されているように、今、文科省さんが考えておられる日本的なインクルーシブ教育システムとは何かを是非文書で出してください。
○ 藤井議長代理 斎藤課長、これは要望としてよろしいですね。
それから、大谷さん、どうぞ。
○ 大谷委員 すぐ終わりにします。
○ 藤井議長代理 一言にしてください。
○ 大谷委員 今、斎藤課長が漸進的なということをおっしゃいましたので、1つだけ指摘させてください。1981年、30年前に国際障害者年に当たって統合教育を入れるかどうかというときに、文科省は多額の財政負担を強いられるからできないんだと答えたのです。30年後の今、同じ答えをしているということに関しては、やはり痛切に思いを受け止めてもらいたい。急激な変革はよくないという御指摘がどなたからかありましたけれども、急激ではないのです。30年間待ったんだということは、是非指摘させていただきたいと思います。
以上です。
○ 藤井議長代理 新谷さん、どうぞ。
○ 新谷委員 新谷です。
想定A、Bの問題なんですけれども、学校選択権と関係としていろんな条件が付いていると思うんですが、学校選択権を保護者に委ねた場合には想定Aになる。教育委員会を残せば想定Bになるということで、12億ぐらいの違いを出しておられますね。学校選択権と費用試算は直接結び付かないと思うんですけれども、その合理的な根拠がよくわからないんです。
それともう一つの問題は、文部科学省が考えているインクルーシブが実現したときのトータルの教育コストがどれだけかかるのかということです。日本の教育関係の公的支出はOECDの中で非常に低いレベルにある。スウェーデンの半分とか、アメリカの5%ぐらいに対して日本は3%ということになっています。だから、想定Aは11兆だから、GDP比で2%ぐらいですね。2%ぐらいのイニシャルコストをかかれば、文部科学省としてはインクルーシブ教育が実現されるというイメージでこういう想定を出されているのか。幾ら仮定の数字といっても、文部科学省はインクルーシブについてのイメージをお持ちだと思うので、それとの関連はどういうことになっているんでしょうか。
○ 藤井議長代理 森さん、一言でお願いします。
○ 森委員 済みません。森でございます。
斎藤課長の見解は一応それとして、申し訳ございませんけれども、私もちょっと勉強させてもらうので、文書で出していただきたいと思います。よろしくお願いします。
○ 藤井議長代理 何を出していただくんですか。虐待防止に関することですか。
○ 森委員 先ほどの回答です。済みません。勉強させていただきたいと思います。
○ 藤井議長代理 そうしたら、今4人の方から出たので、今ここでお答えできるものと持ち帰るものがあると思うんですが、斎藤さんからお願いします。
○ 斎藤課長 尾上委員からの御意見は申し訳ございません。私も資料をくまなく見ておりませんで「日本的な」という表現がございました。これについては、今後の特別委員会の審議、検討の中でじっくり議論いただくべき項目でございます。大変申し訳ございませんでした。
大谷委員からの御指摘も過去の経緯を含めてこれからじっくり議論、検討をしていくべきことでございまして、財政上の事情というのは勿論あるわけですけれども、そういう制約の中でできるだけの前進を図っていくためにはどういう制度であるべきかという点も頭に置きながら議論をしていきたいと思ってございます。
想定A、Bの根拠につきまして、新谷委員から御指摘がございましたけれども、これはまだ精査が必要な部分が多々あろうかと思います。学校選択権云々については、確かに1対1対応をしている想定シナリオではないんですけれども、かなり理想に近い形で特別支援学校から小・中学校への生徒の移動が起こった場合は、例えばどういう数字があり得るかという仮の数字として以前お出ししたものですので、これについても特別委員会の審議、検討の中で更に精査をしていく必要があると思っています。
その際にOECDの教育投資云々のお話がございました。確かに諸外国との比較において、我が国においては教育投資の対GDP比が大変低い状況でございます。ただ、これも今の政府の厳しい財政状況下の議論でございますので、できるだけ現実を踏まえた財政的なシステムを含めた議論が必要だと思ってございまして、逆に財務省等の理解も必要な部分かと思っております。
森委員からの御指摘を含めて、文書でお出しできるところについては、整理をしてお出ししていきたいと思います。ありがとうございました。
○ 藤井議長代理 ありがとうございました。
この件での最後になりますが、東さんからお願いします。
○ 東室長 担当室の東です。
虐待のことに関しまして、付加的にお願いしたいと思っています。今、通報義務がないというのは、学校関係者が起こした虐待については通報義務がないという解釈だったとおっしゃったと思います。しかしながら、例えば学校教員による性的虐待というのは文科省の調査でも挙がっております。中には刑事立件された有罪になった場合もある。そういう場合も含めて通報義務というのはないのかどうか。解釈と運用がどうなのかを含めて文書で回答していただきたいと思っています。
それと、新谷さんがおっしゃっていたA案、B案に関することなんですが、第9回目の推進会議のときに文科省さんにもヒアリングをさせていただいて、その意見を基に今回再度質問書というものをつくって事前にお渡ししておりました。その質問書自体は資料1-2ということで出しておりますけれども、それに対する回答として資料1-1があるわけですが、余り回答していただけておりません。それについては非常に残念なところなんですが、少なくとも直接の回答という形ではないんですが、そこに含まれている問題意識等につきましては、中教審の下で開かれている特別委員会などでも議論していただければと思っているところです。
特にA案、B案につきましては、資料1-3ということで、実施に向けて具体的に考えるならば何年度計画みたいな形で想定すべきではないかという観点から、1、2、3という質問を再度提示しておりますので、これにつきましても、後日文書にて御回答願えればありがたいと思っているところです。
以上です。
○ 藤井議長代理 今日の次第の話はこれで終わりますけれども、私、議長をやっていまして、このままではやはりいけないと思います。文科省の特別委員会が始まっていく。推進会議の意見はこうだというダブルトラックでいったときに、恐らくこれは混乱してしまうと思います。恐らく子どもがど真ん中ということは一致できる点だと思います。それから、今すぐ事を行うということはだれも言っていない。ただ、問題は基本的方向をめぐってどう考えるのか。おっしゃるとおり漸進的、段階的を前提にします。そうすると、こういう環境をどうやって双方で変えていくか。単に相手を言い負かすとか、論じ合うということを超えて、どうやって政策的に合意形成をつくっていくのか。こういう場を重ねていくという方法もあれば、また別な手法もあるかもわかりません。あるいはたまたま今回当推進会議から委員が3人ばかり委員が出ていきますね。そことの関係で相互に連絡を取り合うということもあるかもわかりません。何か知恵を出し合って、そして、建設的な合意形成が図れるように、一歩でも前に進んでいけるように、そういう点を宿題としておのおので考えておかなければいけないと思っております。
そういうことで、今日はやや中途半端だし消化不良ではあるんだけれども、歴史的に背負ったテーマであるので、一朝一夕にこういう場で結論が出すことは難しいとわかっていました。議論をしても、まだまだギャップが大き過ぎるということで、今、私が言ったことを今後どうしていくのかということは、みんなで考えていかなければいけない。同じ政府の中の会議体、しかも、同じ障害分野の会議体で考えていくということを感想として述べさせていただきます。
次第は終わったんですが、どうしてもということで一言出ています。わかりやすい第一次意見の共同座長の土本さんが帰られたので、長瀬さんから一言ございます。長瀬さんから国際協力について一言ということなので、短い時間ですが、長瀬委員お願いします。
○ 長瀬委員 ありがとうございます。長瀬です。
本日のわかりやすい意見書をつくる作業チームからの御報告を申し上げます。
出席者は土本さん、元氏さん、北野さん、堂本さん、室津さん、成冨さん、そして、私長瀬でした。今回はオブザーバーとして門川さんも出席されました。
前回御報告しましたように、本日までにおおむね第一次意見の概要に基づいたたたき台の提出が各担当者からありました。また、前回東さんから予算が厳しいということが冊子の作成についてありましたけれども、その後、予算確保面で大変御努力をいただいて、おおむね確保できそうだということを伺いまして、大変ありがたく思っております。
実際の作業ですけれども、これから秋口までには刊行したいという目標を掲げていますので、実際の作業に当たる印刷会社についても早目に確定をしていただいて、編集内容を担当しております作業チームと協力して進めさせていただきたいと思います。
次回は8月9日、次の推進会議の午前中9時半から開催しますので、それまでに今回出されたたたき台について各メンバーからメールで意見を出し合って、可能であればですけれども、次回は読み合わせをプロジェクターも使って行う予定です。
今日の話し合いの結果としまして、でき上がったものの内容についてですけれども、読み手としては知的障害のある成人、大人を想定して、必要に応じてですが、難しい言葉や英語も使用して、全体としてわかりやすさにつながるものにしようということで話をしました。
こうした作業はメールだけでなく、実際に合って協議をしながら進めるのが経験上ベストですけれども、今回は時間が大変限られています。また8月は幸か不幸か推進会議が1回だけしかありません。そこで推進会議とは別に8月中に作業チーム独自の会合の検討もしましたけれども、遠くの北海道の土本さんや関西の北野さんの交通費等の出費は、担当室としては予算がない、今年度の作業チームのための予算はないということで了解いたしました。9月中には推進会議に作業チームとしての案を提出できるように進めていきたいと考えています。
もう一点、今日の会合で出た重要な点があります。それは作業チームへの参加に関する情報保障、支援の問題です。門川さんが今日はオブザーバーとして参加されましたけれども、指点字通訳者は実態としてボランティアでしてもらっているということでした。指点字通訳者がいないと困るのは当然ながら門川さんだけではなくて、通訳者抜きでは門川さんに私たちの話を伝えることができない、私たち作業チームのメンバーです。既に複数の作業チームが動いていますけれども、やはりこうした面での合理的配慮がなければ、我々メンバーの中でも格差が生じてしまうということは、この推進会議の趣旨からして本当に問題だと作業チームでは考えていますので、こちらについては予算がないだけでは納得できかねるところもあります。予算がない中で担当室としては最善の努力をしていただいていることは承知しておりますので、心苦しいのですが、さらなる検討をお願いしたいのと、私たちがメンバーとして何ができるのか。できることがあれば御示唆をいただきたいと思います。
以上が今日のわかりやすい作業チームで、次の国際協力についても藤井さんこのまま続けてよろしいでしょうか。
○ 藤井議長代理 少し短めにお願いします。
○ 長瀬委員 ありがとうございます。
他の省庁との連携というのは、この推進会議の課題として既に何度も指摘されておりますけれども、外務省で重要な動きがありました。6月29日付で私たちの推進本部の閣議決定とくしくも同じ日付でしたけれども、外務省のODAの在り方に関する検討の最終とりまとめが出されております。そこでは全部で大きく12項目あるのですけれども、最後の項目が政府開発援助大綱(ODA大綱)の改定ということで、今回の見直しを踏まえ、新たな理念、基本方針を反映するためODA大綱の改定に向け政府内で協議を始めたいということが岡田大臣から発表されております。
私たちの閣議決定でも、本来の私たちの第一次意見から弱まっていますけれども、ODA大綱への障害者の明示の要否を含む必要な検討を行うと推進本部の閣議決定で出ていますので、私たち推進会議として外務省のこの動きへの対応を早目に行う必要があると思います。
具体的にはこの動きについて、担当室から外務省にコンタクトをお願いする。また必要に応じて外務省を招いてヒアリングを行う等についてもお願いしたいと思います。
ありがとうございます。
○ 藤井議長代理 最後に東室長より次回の日程について報告をいただきます。
○ 東室長 次回は長瀬委員からも御発言かございましたけれども、8月9日月曜日です。8月はこれ1回ということです。今後の検討の方向ということで、それ以降の議論の仕方等も含めて議論できればと思っております。
以上です。
○ 藤井議長代理 それでは、小川議長にマイクをお返しします。
○ 小川議長 本日は長時間の御討議お疲れ様でございました。誠にありがとうございました。
それでは、これをもちまして、本日の会議を閉会といたします。御苦労様でございました。