【障害関連団体による災害救援活動の概要】
- (東室長)障害者と災害の問題は本来、障害者基本法で扱うべきだが、これまでの議論は情報保障に限定したものだったので、全体的議論が必要だ。現段階では、被災障害者の全容が明らかになっていないが、情報を共有し議論を始めることが大事だ。
救援活動を行っている障害関連団体27団体から情報提供を頂いた。これらを合計すると、調査対象の在宅障害者は9000人を超え、うち死亡と行方不明はそれぞれ100名以上、支援を必要とする人は1800人を超えている。施設関係は500か所以上を調査し、全壊が100を超え、一部損壊も250を超えている。以上の数字は正確ではないが、目安にはなると考えている。
政府の検討会が平成18年3月に作成した「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」を参考資料として配布している。その内容は避難支援についての市町村の全体計画、災害時要援護者名簿の作成、その名簿を基に個別的に支援するための個別計画等となっている。消防庁によると、全体計画は平成22年度末までに96.9%の自治体が策定済み又は策定予定、災害時要援護者名簿は88.7%、個別計画は72.7%の自治体(いずれも平成22年3月末現在)が策定中である。
被災3県の太平洋沿岸にある市町村の人口は約250万人で、死亡又は行方不明が約25000人と言われている。27団体の調査を集計すると、約9000人の在宅障害者のうち死亡が100人以上、行方不明が100人以上で、合わせると約2%となる。これらから、障害者の被害の率が一般と比べて高いのではないかと推測できる。
障害関連団体による初期の物的支援は、ガソリンや食料品等生活必需品、医薬品、医療用品、介護用品、補装具、電源確保機材等の提供だった。また、福祉や医療のサービス供給体制が被災したことから、介護職員を始め多くの人的な資源が派遣されたことがわかった。
障害者団体はそれぞれ独自に活動しているが、全体的には統一されていないから、省庁が団体を束ねる必要がある等の指摘があった。
- (発言)障害をもつ方の死亡、行方不明者について、政府が取りまとめたものがあるのか。
- (東室長)厚生労働省が恐らくデータを集めている最中だと思う。
- (藤井議長代理)障害を持たない人との比較が重要だ。障害を持たない人と障害を持つ人の被害の比較を検証して欲しい。
- (発言)各自治体は、要援護者名簿に登録されている人数はわかっている。その調査は、進んでいないのか。
- (東室長)自治体によっては甚大な被害を受けており、データが流されてしまったところもある。電話での問い合わせもはばかれるような状況だ。
- (発言)調査対象を広げるという意味で手がかりになるのは、手帳保持者よりも要援護者名簿登録者ではないか。
- (東室長)要援護者を手帳の1級〜3級等と限定している自治体もあることから、要援護者名簿が手帳所持者よりも広いとは言えないのではないか。
- (発言)要援護者名簿は手帳要件に縛られず、例えば緊急時の情報が欲しいという理由で登録することもある。だから手帳よりも広い範囲をカバーしていると考えている。
- (発言)現地調査に入った。ある自治体では、登録されている要援護者の安否確認は、済ませたと言っていたが、この登録は任意だ。精神障害の場合、手帳を持っている人が登録しているかわからない。ましてや手帳をもたない人がはるかに多く、この人たちが要援護者として登録するとは思えない。
- (東室長)行政が要援護者名簿を作成する時には、一定の基準を設けて対象者の範囲を決め、その対象に声かけをして、同意する人を掲載するという手続をとるようだ。ある市のホームページによると要援護者の対象者が約24000人で、登録に同意したのは8200人程度とあった。
- (発言)住んでいる自治体は手挙げ方式をとっている。実際に、精神障害者は手を挙げなかった。要援護者数は、障害者の実態を把握できるものではない。要援護者名簿は町会や民生委員に公表されるので、精神障害の人は手が挙げづらかったのだろう。
- (発言)福島県は全体計画を100%の自治体がつくっている。宮城、岩手も22年度末には100%の自治体が策定すると見込まれていた。単に全体計画があるかないかというデータではなく、避難所のバリアフリーの状況や福祉避難所の有無等、計画に書かれている災害時要援護者への配慮の中身を精査したデータはないか。
- (東室長)これ以上のデータは、現時点は持っていない。できれば現地に入っているところが、実際に調べて頂ければとも思う。
- (発言)全体計画について集約をした時に、消防庁が写しを集めていれば、福祉避難所について等わかるのではと期待する。
- (藤井議長代理)想定外の大きな震災ではある。要援護者名簿がどのような効果があったのか、NGOも含め情報を集めることが必要だろう。
- (発言)私の住む自治体では、NGOが災害時の要支援者になるかどうか手を挙げてくれと言い、行政とタイアップしてやっている。基礎自治体によって、要援護者名簿のつくり方や範囲が、違っている。どの自治体ではどうだったのか、検証していく必要がある。
【安否や被災状況の確認及び必要なニーズの把握】
- (東室長)委員からの事前意見の紹介。
障害者の個人情報は行政が把握しているが、一部の市町村を除き、現段階では安否確認やニーズの把握、個別支援ができる体制にはないという意見が多かった。また、行政と障害者団体との連携は、個人情報の保護がネックになりうまくいっていないという指摘があった。
委員が属している障害者団体は、入通所関係については利用者の現状を把握している。しかし、精神科病院に通院する障害者の把握は困難だとの指摘があった。在宅で訪問系サービスを受けていた障害者は把握されているようだが、サービスを受けていない障害者はほとんど把握できていないと思われる。障害関連団体に属する会員については、安否確認や被災状況をほぼ100%近く把握している団体もあるが、困難だという団体もあった。
【避難所での障害者の現状について、福祉避難所での障害者の現状について】
全身性障害者は体温調節が困難な場合があり暖房のない避難所では生活できない。排泄介助を必要とする障害者はライフラインが全く途絶えた自宅等で生活しているのではないかとの指摘がある。車いす利用者の中には入口の段差や介助体制への不安のために避難所生活をあきらめた人がいる。
聴覚障害者や難聴者の場合、補聴器がハウリングをおこし「うるさい」と言われるので寝る時だけ避難所に行く人もいる。避難所では字幕付きのテレビ放送は見られない。聞こえないので情報が届かず入浴や食事の機会を逃がすこともある。難聴の団体の会員で避難所生活をしている人はいないという調査結果から、自宅にいる人や身内に身を寄せる人が多いのではないかと指摘されている。
知的障害者が避難所で夜中に走り回るため他の住民から寝られないという不満が出た。障害児の場合、声を出さなくなった、物音を恐がる等のため避難所で暮らせないとの指摘もある。
精神障害者は避難所で周囲の物音のために睡眠がとれない。それで症状が悪化し大声を出すので「出て行って欲しい」と言われる。一般の避難所から排除され、自宅に帰ったり車の中で隠れるように暮らす人もいるのではとの指摘があった。これは発達障害者も含む話だ。
難病の方は、避難所のように底冷えする環境では生活自体が難しい。オストメイトを装着している人には、洗浄する場所もなく、理解も得られないという意見があった。寒さによる体力低下や感染症の心配のために避難所を出ざるを得なかった人もいる。
福祉避難所については、具体的な情報の提供がなかった。
【今回の災害において求められた被災障害者への支援について】
障害種別毎に必要な支援がある。障害のある女性という視点の検討も必要との指摘があった。
肢体不自由については、避難所におけるスペースの確保や人の混み合う状況での移動の保障、体温調節、トイレ、シャワー、介助者の確保等の支援が指摘されている。
視覚障害は、情報の保障、移動の確保が求められる支援として挙げられている。
聴覚障害は、情報保障についての支援で、手話や字幕をつけること、連絡先をファックスやメールですること、音声案内、避難所での文字情報の表示、壁紙、筆談等が行われている。
盲ろうについては、情報の保障と移動の確保という支援が行われている。
知的障害は、情報保障、環境の調整、避難所で障害への理解を広げる等の支援がある。
精神関係については、医薬品の入手、避難所での周囲の理解を促進するための対策、休憩できるスペース、プライバシーを考慮した支援がある。
発達障害者は、環境を調整することや避難所で理解を求める支援が挙げられている。
難病は、人工呼吸器等の電源確保、医薬品や医療器具の入手、施設の確保がある。
女性に関しては、トイレや着替え等でのプライバシーの確保、性暴力の防止対策、相談支援体制の確保、同性介助の徹底ということが挙げられている。
また、子どもに関しては、遊びや楽しみを確保することが必要だと言われている。
初期には、食料や日用品の確保、ガソリンの確保が重要だったとの指摘があった。
津波で被害を受けた地域、内陸部、原発事故による被災地等、被災状況によって異なる支援が必要になるという指摘があった。原発の被害を受けている福島では、被災は現在進行形で続いている。特に障害者の場合、一般に先立った避難、遠隔地への避難の誘導や移動手段の確保等が今後の課題になるという指摘があった。
【被災障害者にとっての被害、支援を行う上での基本的課題】
- (東室長)障害者にとっての被災について5つの類型を提案した。被害自体を類型化できれば、支援の体系を考えることができるのではないか。
1つ目は生命、身体、財産への直接的被害で、これは障害者特有ではなく被災者に共通する。次に福祉、医療のサービスを利用していた人がこれを利用できなくなること。3番目は、公的サービスを利用せずに家族や地域の支えで生活していた人がこれらの支えを失うこと。次は、支えがなくても生活していた人が環境の急激な変化によって生活できなくなること。最後に、支援の欠如が障害者を社会生活から排除する要因を生み出すこと。
この整理は妥当だとの意見があった。一方、すべての被災者に共通する困難と障害者に特有な困難に分け、後者については合理的配慮として支援を提供するという視点が大事だとの意見があった。また、ハザード別や被災中に受ける差別の類型化も必要だという意見があった。支援の状況の変化を被災前から連続してとらえることや、被災障害者の特性を高齢者と比較することが必要だという意見があった。
- (発言)災害によって差別が露骨に明らかになることがある。また、発達障害のある子どもが避難場所に入れなかった事例は、地域社会で障害が理解されていないことが災害で集団生活を余儀なくされた時に露呈したことを示している。
- (藤井議長代理)避難所では障害者に限らず、泣き声を上げる乳幼児や徘徊する認知症のお年寄りも排斥される。避難所では全員一緒でいるのがよいのか。
- (発言)避難所も1つの社会だから個別のニーズが保障されるのが理想だ。指定された避難場所にその地域の人が全員避難できる体制が保障されるべきだ。車いすの人がいればバリアフリーにする、乳幼児を抱えた人のために授乳する場所をつくるなどが必要で、そこまでできなくても、その方向性を多くの人が認識していれば良い。障害者は福祉避難所へというのはインクルーシブな方向としては不適切だ。
- (発言)被災した聞こえない人への支援で大きな課題になっているのはメンタルケアだ。新たな障害もった場合や新たなサービスを必要とする場合はどの被害の類型に当てはまるのか。
- (発言)災害によって日常の課題が顕在化する。これまでも大きな地震があり多くのことを学んできたが、それが生かされていない。次の災害が起きた時にはこのような議論をしなくて済むような提案が必要だ。その際、被害を類型化するだけではなく、多様化しているニーズに対応したサービスをどのように提供するのかという包括的な視点も重要だ。
- (発言)提案された5類型では心への影響が明確にはならない。自力で逃げられない人や在宅酸素療法を使っている人などの恐怖心は障害のない人に比べるとより強い。安心への被害を入れるべきだろう。
- (東室長)精神的被害は類型に入れるべきだ。類型化は個別の被害を明らかにするためではなく、類型ごとにどのような被害が発生するのかを想定できるようにするために作った。情報保障の問題は類型化していないが、在宅生活の支援に含まれる。類型化することで支援の方向性が見え、新たなニーズへの支援をつくることが救済や復興につながる。
- (発言)類型化について以下の7項目を提案しているので、ご検討頂きたい。<1>自分の生活や生命を守るための自己決定ができないこと <2>一般的なサービスや設備しか提供されないこと <3>合理的配慮の欠如が緊急事態にあるとして否定されること <4>環境がバリアフリーでなくなり均等な機会が得られないこと <5>他の人たちから隔離した環境に置かれること <6>既存のサービスや制度が変更されるため日常生活の維持が困難になること <7>安全な環境を自分で整えねばならないために特別な支出を余儀なくされること
- (藤井議長代理)今後は政策化が大事になる。類型化については更に議論を重ねてゆくことになる。また被害が少なかった地域もあり、その理由の検証もポイントになる。地震も津波も平等にきたが、結果としての被害は不平等だった点に障害者問題の本質がある。
- (発言)合理的配慮の欠如を緊急事態で否定されることが一番恐ろしい。これを全体の結論にすべきではないか。
【被災障害者に対する支援を行う上での基本的課題】
- (東室長)委員からの事前意見の紹介
<1>安否や被災状況の確認及び必要なニーズの把握を行う体制
被災時や緊急時を想定した体制を平時から作る、行政や障害者団体等のネットワークを構築するべきとの指摘が多い。安否確認を踏まえてニーズを把握しサービスにつなげる体制づくりが重要、安否確認や要援護者情報の扱いに当たりプライバシーの問題や本人意思の尊重をどう配慮すべきかの検討が必要、災害時要援護者名簿に基づく救援計画の策定だけでなく避難救援訓練を日ごろから実施することが重要等の意見があった。要援護者に精神障害と発達障害、難病等も加え、また手帳所持者ではなく生活上困難を抱える人を対象にすべきとの意見があった。
<2>福祉避難所や避難所の在り方
避難所が利用しにくい原因として、居住環境がバリアフリーでないこと、障害に対する社会的偏見や理解不足、手話通訳等の情報保障がないこと、難病患者等が遠慮して切迫したニーズを言えないこと、個人のプライバシー保持が問題になること等の指摘があった。福祉避難所については、一般避難所の環境を福祉避難所並に整備するべき、当事者がどちらかを選べるようにするべき、福祉避難所の所在や支援体制等の情報が周知されていない等の意見があった。
<3>従来のサービスの維持、確保について
災害後は行政の機能低下のためにボランティアやNPOを十分に活用できなかった、障害者関係団体と国等が被災地の主体的機能の低下を前提とした緊急時の対応策を策定する必要がある等の意見があった。被災地での医療支援は最優先の課題になる。非常用電源等のライフラインの確保は日頃からすべきである、保険証がなくても医療が受けられるようにする等臨機応変な対応が必要だという意見があった。
<4>新たなニーズについて
避難生活等で環境が変わりニーズが変化する場合は速やかに福祉サービスの支援量を増やせる仕組みが必要だ、その費用は国庫負担割合を増やし被災自治体の負担を軽減する必要がある、それに対応できる社会資源の整備が必要だ等の意見があった。
<5>行政と障害関連団体との連携について
行政と障害者関連団体との日常的・継続的な連携が必要、安否確認の際にNGOがPSW・看護師・保健師等守秘義務を課されている職種に同行すれば受け入れ側は抵抗感がないのではないか、行政が持つ個人情報を本人の了解の上でNGOにつなぐのが望ましい等の意見があった。
- (発言)都市の高層マンションでは、地震に伴う停電でエレベーターがストップして移動できなくなる。誰が住んでいるか、誰が要援護者なのかもわからない。避難所は決まっていても避難訓練もない。このようなことについて、平素からの検討が必要だ。少なくとも近隣に住んでいる人の確認や、いざという時の対応と協力体制の確保が必要だ。
- (発言)初動の段階で、精神科医がチームをつくって回ったのは良かった。家が流された精神障害者は避難所で暮らし、陸にいた人は在宅になるが物資が届かない。公共交通機関が使えず通院できないので、タクシー券を出す、バスを出す等の代替手段が必要だ。
- (発言)日頃から障害者団体と地域社会や社会福祉協議会等との連携が重要だが、全国組織を持つ社会福祉協議会がこの点で機能していないとの指摘の根拠は何か。
- (発言)社会福祉協議会はほとんどの市町村にあるが、聴覚障害者全体を支援する体制をつくれていない。宮城県と福島県には聴覚障害者の情報提供施設がないため、聴覚障害者団体や支援団体が苦しい中で、実態調査等を行っている。社会福祉協議会は障害者だけでなく高齢者等も支援しているため、ボランティアの受付窓口をしていても障害者支援に活かせていない。
- (藤井議長代理)社会福祉協議会に加え、民生委員、児童委員等が、どのような役割を担ったのか検証していく必要がある。問題提起として受け止めておきたい。
- (発言)今日の議論ではジェンダーが話題になっていないが、ジェンダーや障害の種別は被災者支援においても考慮されるべきだ。統計の中で女性障害者の項目は欠落しているため、今後は性別の視点に配慮した調査とするべきだ。
- (発言)今回の災害では、女性の視点が欠落している。東日本大震災復興構想会議には、障害者、女性、高齢者、子どもの視点が入っていない。
- (発言)災害救助法によって、公務員等の派遣をする場合、国が経費を90%負担するが、残り10%は被災県の負担だ。被災した県の財政が非常に厳しくなるため、国が100%負担する仕組みに変えるべきだ。
- (発言)震災が発生すると停電や通信網の遮断のために安否確認もできなくなる。行政にお願いしたいのは安否の確認方法を考えることだ。ファックス、携帯電話、パソコンも使えない中でどうするのかという課題がある。また、震災の際には支援者や家族等の人的支援が大切なので、日ごろからの関係作りも重要だ。支援活動で力を発揮したのは各県にある盲ろう当事者団体だったので、こうした団体への財政的な支援を強めてほしい。
【復旧、復興のプロセスの中で、特に大事なこと】
【その他、救援の在り方、制度、仕組みなど、大枠について】
- (東室長)委員からの事前意見の紹介
まず復興に当たっての理念として、インクルーシブなコミュニティを新たにつくるために災害復興計画策定に障害者当事者が参画するべきだ、建物だけではなく障害者の尊厳のように見えない支援も大切にすべきだ等の意見があった。次に復旧に向けての具体的な取り組みとして、相談支援やインクルーシブ教育により地域の絆を再生する、新たな精神科医療の在り方に転換する、復興構想会議と推進会議の連携等の意見があった。
「その他、救援の在り方等」については、緊急立法による支援提供と予算の確保が必要、県外避難者の状況をどう把握するのか、知的障害も含めた緊急時の情報保障の在り方、リアルタイムで字幕を表示できるような体制整備等について意見があった。
- (発言)団体としてはカンパ活動を仲間たちに呼びかけている最中だ。震災だけではないが、常に知的障害を含めて話し合って欲しい。避難訓練にも参加できるようにして、わかりやすい避難のための地図も作って欲しい。
- (発言)今後、推進会議で震災と障害者について議論する時は、被災地の障害者を招いて欲しい。それは「私たち抜きで私たちのことを決めないで」という事とも一致する。ODAをカットして震災復興のための財源を捻出したが、これは残念だ。被災地と同様の状況に置かれている途上国の人々はいるので、ODAは長期的な視点から考えるべきだ。
- (発言)推進会議が目指すインクルーシブな社会を先取りする災害復興計画であって欲しい。ニーズに基づく地域生活の資源が整備されたコミュニティづくりを進めるべきだ。そのためにはホームヘルプ事業所やグループホーム等を立ち上げる際の柔軟な対応が必要だ。復興構想会議の中に障害関係のワーキンググループをつくり検討できるようにすべきだ。また、推進会議が復興構想会議と意見交換や連携をできるようにして頂きたい。
- (発言)緊急時にテレビのリアルタイム字幕を提供するよう障害団体等が関係各方面に要望したが、NHKから「精一杯努力したので、これ以上はできない」との回答があっただけで、政府や総務省等からは返事がない。去年6月29日の閣議決定では「情報アクセス・コミュニケーション保障」の項で「放送事業者における現状の対応状況、取組の拡充に係る課題等を踏まえ、平成22年度内に、災害に関する緊急時情報等の提供について、放送事業者に対する働きかけ等の措置を検討する」とある。これを踏まえ、早急に緊急時のリアルタイム字幕を検討頂きたい。
- (発言)改革推進会議として、今回の大震災について政策提言をするべきだ。その際、事務局のまとめた被害の類型化は的確だ。従来は生命、身体や財産への直接被害と、福祉医療サービスを受けて生活してきた人がこれを利用できなくなったことによる被害が強調されてきたが、公的なサービスを受けずに家族や地域社会の支えで生きてきた障害者がこの支えを失うことで生活困難になるという被害等を類型化したことは重要だ。この被害は地域の支援や社会資源の格差の問題で、こうした観点から見れば、震災に係る福祉施設等の復旧の国庫補助の対象から訪問系サービスが除かれている点は問題だ。また、南相馬市で行政、地域住民、障害当事者が連携して必要な支援等について議論してきた仕組みを普遍化すべきだ。さらに、福島原発の20km圏内にいた人の状況について、希望する地域で希望する生活ができているのか、推進会議と内閣府が共同で追跡調査をするべきだ。
- (小川議長)この大災害を教訓として、障害者を守り障害者が安心して暮らせる体制を推進会議でまとめ、国に要望したい。
- (東室長)東日本大震災に係る障害者の実態について分からない点も多いが、今の時点で一度議論すべきだと考えた。今日の内容を多くの人と共有し、政府の政策にも反映しなければならない。再度、議論する場を設けたい。障害者基本法に基づく基本計画の改正等が予定されているため、そこへ反映できるように継続的な議論をしたい。
- (藤井議長代理)本日は中間的な議論で、継続的に議論する。震災は問題が凝縮し先鋭的に現れるが、その問題を日常の障害問題の解決にどうにつなげるのかが重要だ。復興策の基礎には障害者権利条約を据えなければならない。
【福井フォーラムの報告】
- (発言)前回準備していなかったため、福井の関係者に対し失礼だった。改めて報告する。当日は約150名の方々が出席した。このフォーラムは10団体が一緒になって計画した。これまでは団体の連携が難しかったが、このフォーラムをきっかけに連携できるようになったと伺った。特に基本法の改正に向けて、地元の国会議員を通して働きかけをすることになった。また、このフォーラムは地元紙で取り上げられ、推進会議が何を目指しているのか、理解を深めるきっかけになった。
- (発言)こうしたフォーラムを通じて、各運動団体が取り組んでいる個別課題を超えて、共通の問題を共有できた。