(報告書の説明)就労合同作業チームは6回の会合を行い、基本法に関連する内容、総合福祉法に関連する内容、雇用促進法に関連する内容について検討をした。障害者基本法に盛り込むべき内容として「労働の権利の保障と苦情に対する救済制度の整備」「労働施策と福祉施策が一体的に展開できる障害者就労制度の整備と労働保護法の適用」「多様な就業の場の創出及び必要な仕事の確保」等、6点を提案している。
総合福祉法の関連では、自立支援法に基づく就労関係事業を、就労を中心とした「就労系事業」と、作業活動や社会参加活動を中心とした「作業・活動系事業」に再編するとしている。前者を障害者雇用促進法と総合福祉法のどちらに位置づけるべきかについては、従事する障害者の労働者性を確保するという目標からすると障害者雇用促進法に位置付けるのが望ましいが、当面は総合福祉法に位置付け、期限を定めて見直しをすると提案している。就労系事業に関する試行事業を提案しており、その検証結果を踏まえてこの事業の見直しをすべきである。作業・活動系事業は総合福祉法に位置付けるとしている。
就労系事業については委員の中に次のような意見がある。即ち、箕面市が実施しておりそこで働く人たちに最低賃金を保障し労働者性を確保する社会的雇用、滋賀県や札幌市が実施しておりそこで働く障害者等に労働法を適用するという社会的事業所、セルプ協や日本障害者協議会が提案しており賃金補てんの下で労働法を適用する社会支援雇用の3つだ。社会的雇用と社会支援雇用は似ている所がある。社会的事業所は障害者だけではなく就労に困難を抱えるあらゆる人たちを対象にし、賃金補てんではなく適切な仕事の確保により労働者性や賃金を保障するとしている。これらについて試行事業で検証することとしている。就労系事業については、基本的に労働法を適用するべきであると提案している。
就労系事業で就労する障害者の賃金を妥当な水準に引き上げるために、適切な仕事を安定確保することは大事である。賃金補てんをすれば済むということではなく、仕事を確保し仕事を通して収入を増やしていくために、官公需の優先発注制度、総合入札制度、民間企業からの仕事確保のため雇用率制度とリンクしたみなし雇用制度の導入、発注促進のための税制上の優遇措置、共同受注窓口の整備や共同での生産性向上の取組み等が必要だろう。
自立支援法の下でも、事業所に所属しながら企業や公的機関で就労する施設外就労という仕組みがある。これは職業準備性を高めるという意味で有効なので、受け入れる企業等でもみなし雇用としてカウントできるようにする必要がある。ただ、今の1.8%という法定雇用率のままでは、施設外就労によって本来雇用につなげるべきものがつながらないことが想定されるので、雇用率の引き上げも併せて検討する必要がある。
就労系事業で就労する障害者に対する利用料負担について、自立支援法の下では就労継続支援A型や就労移行支援事業等でも利用料があるが、これは無しにすべきと提案している。
雇用促進法に関して、雇用率制度は雇用の量を規制しているが、雇用の質を高めるために合理的配慮や職場における差別の禁止等が取り上げられるべきだ。また雇用促進法の対象範囲はあらゆる種類の障害者に広げるとともに、就業上必要な支援を明らかにするための総合的なアセスメントの仕組みをつくる必要があると提案している。
雇用率制度及び納付金制度の在り方については、対象を障害者権利条約に基づきあらゆる障害を持つ人たちに広げると同時に、納付金の額や助成金の給付手続等も見直しが必要だ。
職場における合理的配慮の提供については、企業等の取組みの経済的・技術的支援を制度化すると同時に、苦情申立等の救済措置等についても併せて検討すべきだ。
今後の検討課題として、現在の福祉的就労の場で働く人たちの労働者性を確保し、最低賃金以上を支払えるようにするために、試行事業を提案している。これについては先述のように3つの考え方があり、これらの有効性を検証することで、制度化に当たっての課題を整理すると提案している。今のこの機会を逃しては、何十年も続いてきた福祉的就労制度を見直すことはできないので、見直しにつなげるための取組みが是非とも必要である。
賃金補てんと現在の所得保障制度との調整について議論しなければならない。6月の閣議決定でも、公的年金制度の抜本的見直しと併せて障害者の所得保障について見直すとされている。
実態調査に関して、全国民の中での障害者の経済的活動や生活実態を明らかにする基礎資料の整備を提案している。これまでの実態調査等では、手帳を持っている人や雇用されている人のみが対象だった。制度の谷間にある人たちも含め、障害を持つ人たち全体の生活や経済活動の実態を把握するために、全国消費実態調査や国民生活基礎調査等の国の基幹統計調査に障害に関する項目を入れるべきである。これにより国民の中での障害者の位置づけが明確になる。
障害者に関する労働施策と福祉施策を一体的に展開するための体制整備や、地方自治体での雇用・就労・福祉・年金などに係るワンストップの相談窓口の設置も提案している。最近幾つかの市が独自でワンストップサービスを実践しているとのことなので、注目していきたい。
以上の提案を実現するための検討体制づくりについて、推進会議の下に就労部会または就労検討チームを設置し、試行事業の検証等検討課題について議論を深めて結論を得ることを提案している。障害者基本法に基づく障害者政策委員会が設置されれば、その中で検討するべきだ。
就労系事業について3つの考え方があり、総合福祉法の中にどう位置付けるかが問題になる。この点については、早急に作業チームの中で検討したい。
総合福祉部会への第2期作業チームからの報告書に対して、厚生労働省からのコメントが出ている。この就労合同チームが提案していることについて、難しい問題があることはわかるが、お互いに知恵を出し合い、いかに問題を解決するのかという視点のコメントが欲しかった。