議事 「障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言」について 1
○(東室長)「障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言(以下、骨格提言)」は、障害者自立支援法(以下、自立支援法)を廃止した後に、制度の谷間なく、個々のニーズに基づく地域生活支援体系の整備等を内容とする障害者総合福祉法(以下、総合福祉法)を制定するため、障がい者制度改革推進会議(以下、推進会議)から総合福祉部会に検討をお願いしていたものだ。総合福祉部会では昨年4月27日の第1回から1年4か月の間に18回を重ね、8月30日に骨格提言をとりまとめていただいた。
はじめに I.障害者総合福祉法の骨格提言
(はじめに)
- (発言)骨格提言が目指すこととして、6つのポイントを示した。
【1】障害のない市民との平等と公平(一般の市民と同等の地域生活を可能にする支援の提供)
【2】谷間や空白の解消(障害の種類や程度により支援が受けられない現状を変える)
【3】格差の是正(市町村の財政力によるサービス格差をなくす等)
【4】放置できない社会問題の解決(社会的入院や地域支援がないことによる施設入所の解消)
【5】本人のニーズにあった支援サービス(ニーズをきめ細かく評価し必要な支援を提供する)
【6】安定した予算の確保(必要な財政の確保)
(I-1 法の理念・目的・範囲)
- (発言)ここでは、法律の総則部分で書き込むべきことを提起した。
「法の目的」として、次の点を盛り込むことを提言している。
1、障害者が基本的人権を享有する個人として尊重され、他の者との平等が保障されること。
2、どこで誰と生活するかの選択の機会が保障され、そのために必要な支援を受けることが障害者の基本的権利であること。
3、この基本的権利が全ての障害者に保障されること。
4、支援を提供することを国と地方公共団体の義務とすること。
5、以上によって共生社会を目指すこと。
「法の理念」として、障害者を権利の主体とすることや、医学モデルから社会モデルへの障害概念の転換等、基本的な視点を独立した条文として掲げることを提言した。
「地域で自立した生活を営む基本的権利」として基本的権利をより具体的に提言した。
1、生命の危険にさらされない権利
2、必要とする支援を受けながら、意思決定を行う権利
3、どこでだれと住むかを決める権利、そうした生活を可能にするための支援を受ける権利
4、コミュニケーションの支援を受ける権利
5、移動する権利
「国の義務」「都道府県の義務」「市町村の義務」で、こうした権利を保障するためのそれぞれの役割を義務として掲げた。
「介護保険との関係」では、総合福祉法と介護保険法は法の目的や性格が違うのでそれぞれを別個の制度として設計すべきとの、自立支援法違憲訴訟基本合意文書で示された内容を確認した。同時に、介護保険の対象年齢となった場合に、それまでの総合福祉法の支援を継続して受けられるようにし、生活に大きな変化を来さないという保障を確保する必要があるとした。
(I-2 障害(者)の範囲)
- (発言)障害がありながら必要とする支援を受けられない人が出ないように網羅的な規定が必要であることから、障害者基本法の条文を対象規定とした。ただし「上記の定義における心身の機能の障害には、慢性疾患に伴う機能障害を含むものとする」を加えた。支給決定の「『障害』の確認」では、市町村は障害者手帳がない場合でも、医師の診断書等によって障害者であることを確認できることとした。
(I-3 選択と決定(支給決定))
- (発言)支給決定の6つのプロセスを提言した。
1、当事者は市町村に支援を申請する際に、サービス利用計画を提出する。この計画は自分で作ってもよいし、家族や支援者の協力もしくは相談支援事業を利用しながら作ってもよい。
2、市町村は支援を求める者に障害があることを確認する。
3、市町村は支援ガイドラインに基づくアセスメントを行い、支給決定をする。
4、支給決定の内容と、サービス利用計画で本人が求めている支援が違う場合は、本人と市町村が協議・調整をして、市町村が支給決定をする。
5、協議が調わない場合は、第三者的な合議機関の評価審査の結果を尊重して、市町村が支給決定する。その合議機関には本人も意見を述べることができる。
6、それでも本人が納得できない場合には、都道府県に不服の申立てもできる。
支援ガイドラインは基本的な考え方を示した段階で、更に調査・検証、試行等が必要だ。
(I-4 支援(サービス)体系)
- (発言)自立支援法の介護給付、訓練等給付、地域生活支援事業を、「A.全国共通の仕組みで提供される支援」と「B.地域の実情に応じて提供される支援」に再編する。障害程度区分に基づく国庫負担基準により国の負担金の上限が決まる現行の仕組みを止め、Aは実際に市町村が要した費用の1/2を国が、1/4分を都道府県が負担する負担金事業とする。Bは、自治体が裁量を持って柔軟なメニューを展開できるように市町村独自支援とした。「A.全国共通の仕組みで提供される支援 1.就労支援」では、障害のある人の働く場を障害者就労センターとデイアクティビティセンター(作業活動支援部門)に発展させることと、多様な働き方についてのパイロット・スタディを実施した上で総合福祉法施行後3年をめどに今後の就労支援の仕組みを検討することを提言している。「2.日中活動等支援」では、文化・創作活動支援や社会参加支援等多様な社会参加活動の場としてデイアクティビティセンターを提起し、医療的ケアが必要な方の参加も踏まえた体制が必要だとした。「3.居住支援」ではグループホームとケアホームを一本化し、定員を4~5人とすることを原則とした。「4.施設入所支援」では、地域生活を基本としつつも自立支援法の下で施設入所している方が継続して支援を受けることができるようにした。施設入所支援の機能を短期入所やレスパイトを含むセーフティーネットとして明確にする一方で、地域移行の促進と10年後の再度見直し等を位置づけた。「5.個別生活支援」では、重度訪問介護の発展的継承によるパーソナルアシスタンス制度の創設を提言し、障害種別を問わず常時支援を要する人の利用を可能にするとしている。
「6.コミュニケーション支援及び通訳・介助支援」では、話す・聞く・見る・歩く等基本的権利に関わる支援をAに位置付けることで自治体間格差をなくすことと、盲ろう者向けの通訳・介助は対象者の希少性を勘案し都道府県での実施を基本にすることを提言している。その他「7.補装具・日常生活用具」、「8.相談支援」、「9.権利擁護」という体系だ。「B.地域の実情に応じて提供される支援」は、市町村で柔軟に支援を提供できるよう位置付けた。「C.支援体系を機能させるために必要な事項」では、障害の種別や程度にかかわらず地域生活が可能になるために、医療的ケアの拡充、日中活動等支援の定員緩和や通所保障、グループホームで居宅支援を利用できるようにすること等、必要な事項を記した。
- (発言)市町村独自支援に地域活動支援センターがあるが、精神の地域活動支援センターはその自治体の人しか受け入れないところが多く、当事者は選択できない。また精神障害のある人の中には、近所の支援センターに行きたくないという人もいるので、好ましくない。
- (発言)「選択と決定」の「支給決定のしくみ」に関して、従来、聴覚障害が地域生活支援事業を利用する時、サービス利用計画は提出していないが、提言ではコミュニケーション支援、通訳・介助支援、補装具・日常生活用具の申請の際に計画が必要なのか。「障害の確認」に関して、手帳以外の医師の診断書等でも確認できるようにするとのことだが、一般的な医師の診断書で市町村が障害を判定できるのか。現在の身体障害者手帳のように、障害の程度を決める実定法に触れるべきではないか。
- (発言)「はじめに」の6つのポイントに関して「【1】障害のない市民との平等と公平」は「国民」や「人々」ではなく「市民」という言葉で間違いないか。「【2】谷間や空白の解消」は、福祉制度の対象でなかった障害者も制度を利用できるようにするということか。「支援体系」の「B.地域の実情に応じて提供される支援」では福祉ホーム等が挙げられているが、地域に必要な福祉提供者の人材養成等より広く考えられるのではないか。
- (発言)聴覚障害者や視覚障害者、知的障害者等への情報提供または情報支援は、コミュニケーション支援との関係も併せて、どういう位置づけか。
- (発言)サービス利用計画は自分が望む暮らしとそのための支援を示すものなので、この法律を利用する場合には提出を義務付ける方向だが、申請後に市町村に助けてもらって作成する等申請のハードルにならないよう配慮が必要だ。障害の確認に際しては病気や機能障害そのものではなく、生活上の支障の有無やその支障を軽減する支援の必要性が主眼なので、厳密な診断書を求めるべきではないだろう。「市民」という表記については「国民」と書くと国籍がない人等を排除することになるとの議論があった。「【2】谷間や空白の解消」は、障害の種類によって支援が受けられないという問題が中心だが、制度間の谷間も念頭に置いている。情報については、「1.法の理念・目的・範囲」の「地域で自立した生活を営む基本的権利」で「4.障害者は、自ら選択する言語(手話等の非音声言語を含む)及び自ら選択するコミュニケーション手段を使用して、市民として平等に生活を営む権利を有し、そのための情報・コミュニケーション支援を受ける権利が保障される」と位置付け、「支援(サービス)体系」のコミュニケーション支援のところで「情報入手に関わる支援」を強調している。
- (発言)現行の地域活動支援センターの大部分はデイアクティビティセンターに発展する想定だが、子どもが夏休み等必要な時に利用するといった柔軟な使い方を市町村の裁量で可能にするために、市町村独自事業の一つとして地域活動支援センターを提言している。また、市町村独自事業は福祉ホームだけではなく、福祉提供者の人材養成も含め社会参加のための取組み等多様な活動を市町村が取組むことを想定している。ただ、自立支援法の地域生活支援事業の中の必須事業である相談支援、移動支援、コミュニケーション支援等は、その大部分がAに移行するというのが提言の趣旨だ。地域活動支援センターの市町村を越えた利用については、柔軟で広域的な展開が可能になるのではないか。
- (発言)情報支援とコミュニケーションを一体と考えるなら、コミュニケーションの定義が必要ではないか。一般的には、聴覚障害、視覚障害、盲ろう者だけでなく、知的障害者も含めた情報支援は、コミュニケーション支援とは別個に、重要な柱として意義づけをすべきである。
- (発言)知的障害のある人等に情報をわかりやすく伝えるための支援が必要だという議論を通じ、情報やコミュニケーションの支援は聴覚障害者や視覚障害者等の感覚系の障害者だけの問題ではないという点は、総合福祉部会での共通理解となっている。しかし、情報保障とコミュニケーション保障を整理して議論はしていないので、「情報・コミュニケーション支援」といったあいまいな表現になっている。
- (発言)障害の確認について、やはり診断書だけを受け取っても障害との関連付けがないと市町村は判定できない。何らかの判定基準を設けるという方向性だけでもないと、手帳制度と診断書の関係が曖昧になり、支援を受けられる人と受けられない人が出るという事態になるのではないか。総合福祉部会では、手帳制度、等級制度、身体障害者福祉法の別表の問題等を総合的に検討すべきという議論はなかったのか。
- (発言)手帳制度は幅広く活用されているので総合福祉部会だけで見直すわけにはいかず「今後その在り方が慎重に検討されるべきである」(III-4その他)と指摘するにとどまった。支援の対象を決める際の従来の発想を切り替える時期ではある。突発性難聴という診断名だけでなくデシベルの値があれば市町村窓口は線引きしやすいだろうが、大事なのはデシベルの値ではなく、要約筆記の支援があれば社会参加ができるという判断だ。
- (発言)コミュニケーションには、手話通訳や盲ろう者向けの通訳・介助も含む一般的な通訳が入っていることを、括弧書き等で盛り込んでいただきたい。コミュニケーションを支援するためには最低限、通訳が必要だ。情報の保障については、言葉だけではなく、文書やニュース、点字等による情報や災害のような緊急時の情報の保障も含まれる。
(I-5 地域移行)
- (発言)「I-6 地域生活の資源整備」とセットで考えている。「『地域移行』の法定化」では、地域移行の定義を「住まいを施設や病院から、単に元の家庭に戻すことではなく、障害者個々人が市民として、自ら選んだ住まいで安心して、自分らしい暮らしを実現すること」とした。そして「すべての障害者は、地域で暮らす権利を有し」と明記し「国が、社会的入院、社会的入所を早急に解消するために『地域移行』を促進することを法に明記する」とした。自立支援法でも地域移行をスローガンとしており、約1割の方の地域移行は進んだが、それを超える新規入所がある。地域移行をスローガンにとどめず、法定化することを提言した。「地域移行プログラムと地域定着支援」では、地域生活に慣れ親しむプロセスにおいて一人ひとりの状況にあわせて支援を得ながら地域移行を進めるプログラムと、地域移行後の生活を定着させるための支援を提言した。地域移行の支援をする障害当事者が入院・入所中の方々の意思や希望、不安等を聞き取りつつ支援するピアサポートの重要性も盛り込んでいる。
(I-6 地域生活の資源整備)
- (発言)この項目の中心点は「地域基盤整備10ヵ年戦略」を国が責任を持ってつくることであり、その際のポイントとして以下の3点を挙げた。
- 長期に入院・入所している障害者が地域で生活するための住まいの確保や日中活動、支援サービスの提供等社会資源整備を緊急かつ重点的に行う。
- 長時間介助を提供する社会資源を全国に整備することでサービスを使えない状態を解消する。
- ショートステイやレスパイト、医療的ケアを提供する事業所等が不足している現状を改める。
そして、国の「地域基盤整備10ヵ年戦略」に基づき、自治体の状況を加味して前後期各5年の障害福祉計画を当事者参画の下につくることとしている。現行の自立支援協議会は地域生活支援協議会として再定義し、地域の社会資源のネットワーク化と開発を当事者参画の下で行う仕掛けにすることを提言した。
(I-7 利用者負担)
- (発言)すべての人が負担している部分は障害者も負担をするが、障害に伴い必要とされる支援は原則無償にするという基本的な考え方を示した。ただし、高額な収入のある者には応能負担を求めるが、成人の場合は本人の収入に、未成年の場合には世帯主の収入に基づき判断する。複数のサービスの利用者負担の合算と、自立支援法の下での負担水準を上回らないことという条件を付けた。障害に伴う必要な支援を6つの分野に整理した。その中で、「<1>相談や制度利用のための支援」「<2>コミュニケーションのための支援」は無償、「<3>日常生活を送るための支援や補装具の支給」「<4>社会生活・活動を送るための支援」「<5>就労支援」「<6>医療・リハビリテーションの支援」は原則無償とした。障害者がガイドヘルパーの交通費や入場料を負担している現状は平等の観点から解消すべきである。また、家賃を払ったらほとんど残らないという障害者の所得の現状から、家賃負担の軽減についても提言した。
(I-8 相談支援)
- (発言)「相談支援」では福祉制度の利用に関わる相談だけではなく、生活全般にわたる継続的な相談体制の確立が必要であると提言している。相談で持ち込まれた課題について個別に支援するだけでなく、資源を作る等地域への働きかけも相談支援の役割に位置づけた。「相談支援機関の設置と果たすべき機能」では重層的な相談機関の仕組みをつくり、できるだけ身近なところで相談支援を受けることができる体制を整えることと、行政やサービス事業所からの独立性が保証される仕組みにすること等を提言した。「本人(及び家族)をエンパワメントするシステム」では一定のエリアごとにエンパワメント支援事業を整備し、ピアカウンセリングやグループ活動、自立生活プログラム等、多様な支援を受けることができるようにすることを提言した。この事業を地域の相談支援センターに併設できることとし、その機能はデイアクティビティセンターにも位置づけるとしている。「相談支援専門員の理念と役割」では相談支援専門員の基本理念を明確にし、本人を尊重して支援することを強調している。具体的な活動は、本人中心の支援計画やサービス利用計画の策定等の支援等である。「相談支援専門員の研修」では都道府県が責任を持って研修を行うとしている。研修は実務経験を重視する等実践的であるべきであり、将来的にはソーシャルワーク専門職を基礎資格にすることや障害者自身が相談支援専門員となることを促す取組みが必要だ。
- (発言)訪問系サービス利用者約12万人中、24時間介護を受けている人は300人以下で0.25%だ。権利条約を踏まえれば介護サービスに利用料があるのはおかしいが、その前に0.25%の人たちが生きていくために必要な介護サービスの時間を確保することが必要だ。これが十分に保障されていないために、年間10~20件程度の介護殺人が起こっている。また、重度の心身障害者の地域移行といっても、現在は医療や介護を提供できる基盤がない。重度の障害者を取り巻くこのような課題の解決なくして、利用者負担ゼロと言えるのか。また、可処分所得が1億円以上あるような人やその子どもが障害をもった場合でも、負担をゼロにすることが公平なのか。二十歳未満の障害児をもつ若い親たちは、大した収入がないのに負担を課せられている。アメリカやイギリスでは、自意識のある人は人間であり、自意識のない人は人間ではないという議論がある。日本でも今後そのような議論が始まる危険性があるので、推進会議でも議論をしておく必要があるのではないか。
- (発言)「I-7 利用者負担」のコミュニケーションのための支援には情報支援も含まれるか。「I-8 相談支援」で、教育、医療、その他の横断的な支援について、分野を超えて連携するためには制度設計そのものの提案が必要なので、議論していただきたい。
- (発言)「I-7 利用者負担」で、高額所得者に負担が発生する場合の所得上限はどう設定されているのか。コミュニケーションについても高額所得者には負担が発生するのか。その場合、上限はどうか。
- (発言)「I-8 相談支援」で、教育相談もワンストップ型で行うこと、関係機関と調整しつつ段階的に実施することや人材を養成すること等が提案されている。教育及び障害児の相談については障害児支援作業チームでも提案されているが、これを総合福祉法で規定するということか。特に、現在、教育委員会が教育相談を先見的に行っていることを意識した提案か。
- (発言)どういう人への支援やどういう種類のサービスを優先的に整備するべきかについての議論はなかった。第II部で、現在の日本の障害者福祉予算はGDPの約0.2%でOECD諸国の平均の約半分なので、平均並みにアップするという方向性について議論した。利用者負担を原則無償と提言することへの疑問が出されたが、障害者差別の考え方からは「お金のある人には払ってもらおう」ではなく「障害者が介助者の料金も負担するのではなく、一人分の費用すなわち他の人と同じ負担で社会参加できるようにするべきだ」という議論が出てくる。差別禁止法についての議論の中で利用者負担について考えてはどうか。
- (発言)障害ゆえに必要な支援は原則無償だが、相談支援やコミュニケーション支援は原則無償ではなく無償とすべきとしている。相談支援に関連して、「I-6 地域生活の資源整備」の「地域生活支援協議会」で、「地域生活支援協議会は、ライフステージにわたる途切れない支援体制が整備されるよう、地域における様々な社会資源と連携するものとする」と提言し、地域の課題に関して就労や子ども、住居などの部会を設ける等して地域生活を実現させるといった内容が説明されており、子どもを含め、ライフステージで空白が生まれないことを目指した。
- (発言)「利用者負担」のコミュニケーション支援には情報保障も含むが、自治体の広報や選挙の広報等の点字の情報保障を総合福祉法の支援とするかの議論は必要だ。相談支援については、児童専用の相談機関と総合福祉法の相談機関を必要に応じて両方使えるようにして、両者の役割の棲み分けについては今後議論するべきだ。利用者の権利が守られる運営が必要だ。総合福祉法の相談支援は福祉に関する相談が中心だが、そこから浮かび上がる他分野の課題をたらい回しにせず、必要な機関と連携する等総合的なスタンスが必要だとしている。
- (発言)重症心身障害児・者の福祉制度が未成熟なので入所施設以外の選択肢がないとの指摘があったが、「地域基盤整備10ヵ年戦略」等を用いてこうした状況を解消しなければならないという点を強調していただきたい。改正障害者基本法3条で「全て障害者は、可能な限り、どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され」とあるが、本人が知的障害で判断困難な場合に「可能な限り」と言うと、支援者等が勝手に判断してもよいということになってしまう。サービスをできる限り整備するという意味で「可能な限り」を理解するべきだ。
(I-9 権利擁護、I-10 報酬と人材確保)
- (発言)「I-9 権利擁護」の他に「I-4 支援(サービス)体系」にも「権利擁護」の項目を位置づけ、障害福祉計画等の中でも意識できるようにした。「第三者の訪問による権利擁護(オンブズパーソン)制度」として、第三者が自宅やグループホーム、入所施設等に訪問し、権利擁護活動を行う制度を創設するべきだとしている。「権利擁護と虐待防止」では虐待防止法や差別禁止法等他制度との関係の整理が必要だとしている。「サービスに関する苦情解決のためのサポート」で、本人の気持ちを尊重した寄り添い型の相談支援が必要であることと、苦情解決のための特別なサポート機関の設置を提案した。以上の仕組みに加え、障害者基本法に基づく地方の合議制の機関も総合福祉法のモニタリングを行う重層的な体制を提言した。「I‐10報酬と人材確保」では、障害者への支援を確保するには、支援する職員に希望と誇りのもてる賃金を払えるよう事業者への適切な報酬が必要だとしている。「報酬の支払い方式」では、日額払いと月額払いを組み合わせて事業の運営と利用者の選択を両立させることを提言している。「福祉従事者の賃金における基本的方針と水準」では、年齢別賃金センサスの全国平均賃金以下にならないようにすることを掲げている。
II 障害者総合福祉法の制定と実施への道程
(II-1 障害者自立支援法の事業体系への移行問題)
- (発言)来年3月で新体系への移行期限が終了だが、震災や原発事故等の影響で移行が難しい事業所には、従前の報酬を10割保証する等の手立てを打つべきだとしている。
(II-2 障害者総合福祉法の制定及び実施までに行うべき課題)
- (発言)「市町村及び都道府県の意見」で、総合福祉法の制定と実施に当たり市町村及び都道府県の意見を踏まえることを掲げた。「利用者負担」で、自立支援医療にも低所得者の全額公費負担を実現することと、障害福祉サービス・補装具・自立支援医療・地域生活支援事業・介護保険の利用者負担の合算を提言した。「地域での自立した暮らしのための支援の充実」では、国庫負担基準を超えてサービスを提供している自治体には、財政支援を行うとしている。「福祉・介護人材処遇改善事業助成金」では、この助成金を基本報酬に組み込むとしている。「障害者総合福祉法の策定及び実施のための調査等」では、地域移行に向けての入所・入院者の実態調査や、新たな支給決定の仕組みのための試行事業の実施を提案している。
(II-3 障害者総合福祉法の円滑な実施)
- (発言)「障害者総合福祉法を補完する基金事業」では、法体系に組み込めない事業について基金を創設して実施することを提言している。「障害者総合福祉法の体系への移行を支援するための基金事業等」では、事業者の新たな体系に円滑な移行と市町村や都道府県の体制整備のための基金事業について提言している。
(II-4 財政のあり方)
- (発言)「(1)障害福祉予算」「積算の根拠となるデータの把握」では、現在は制度の谷間にいる人の数も分からないので、積算根拠をもって予算を増やせるように実態調査をすることを提言した。「財政についての基本的な視点」で、OECD加盟国の平均並みの障害関連予算の確保、財政における地域間格差の是正、一般施策での予算化、障害関係の予算が雇用創出や障害者の就労等経済効果につながることの検証について述べている。「障害者福祉予算の漸進的な拡充」では漸進的な予算の拡充が必要だとしており、急激な予算の増額等非現実的なことを述べているのではない。「(2)支援ガイドラインに基づく協議調整による支給決定の実現可能性」では、本人の生活を支援するためのガイドラインに基づき支給決定をしている自治体を例示し、そうした自治体では重症心身障害児・者が24時間介護を受けながら地域生活をしているが、他の自治体に比べて予算に大きな差がないことを示した。「(3)長時間介助等の地域生活支援のための財源措置」では以下の2点を提言している。まず、施設入所者はその周辺の市町村での地域生活に移行することが多いが、費用の1/4を市町村が負担する仕組みなので施設周辺の市町村に負担が集中し、地域移行が一定以上は進まない傾向がある。そのため居住地の市町村の負担分を出身地の市町村と折半する仕組みを提案した。ただし、入所施設やグループホームへの入所に当たっての居住地特例は残すこととしている。次に、在宅サービスにおける国庫負担基準を廃止して、市町村が実際に負担した費用に対して国と都道府県が負担する仕組みにすることを提言した。しかし市町村の中には1/4の負担も厳しいという状況があるので、ホームヘルプの時間数によって市町村と都道府県の負担割合を調整する仕組みを提言した。
- (発言)地域移行に関して、精神科に入院中の人の約半分が65歳以上で、10年後75歳になるという高齢化の問題も考えてほしい。権利擁護に関して、診療報酬を上げるべきという日本精神科病院協会の主張に賛成だが、精神科が社会防衛的な機能も担っていることに対する評価がなく逆に減額されているから、という理由はおかしい。障害者虐待防止法の所轄はどこか。
- (発言)「障害者総合福祉法の策定及び実施のための調査等」で「新たな支給決定の仕組みのための試行事業や研究等を実施する」とあるが、部会で議論していた生活のしづらさ調査が入っているのか。5年に1度の身体障害者実態調査がなくなると聞いた。実態調査の対象は手帳保持者範囲で限定されているが、手帳制度の実態を浮かび上がらせる意味でも継続が必要だ。また、実態調査では聴覚障害者のコミュニケーション手段を継続的に聞いているが、今回の生活のしづらさ調査にはその設問がない。実態調査を実施する方向にはならないのか。
- (発言)8月30日の総合福祉部会で、骨格提言が総合福祉法に反映されているかどうかを部会でフォローしたいという話があったがどうなっているのか。提案が実現していくかどうかについて、55人の方々の努力に報いるという意味でも、フォローできる形が望ましい。
- (発言)OECDの消費税の平均は約18.5%で、日本は5%だ。推進会議としても消費税をリンクさせて議論し、どのようにして障害者福祉に回すかを議論した方がよい。
- (発言)女性障害者については「障害者総合福祉法がめざすべき6つのポイント」の【5】で出てくるだけで、視点が欠けている。今後、制度化等される中で、何らかの形で女性障害者の視点が盛り込まれるように考えなければならない。
- (東室長)権利擁護とも関連するが、障害者虐待防止法の所管は厚生労働省と伺っている。
- (発言)実態調査の件だが、手帳のない人も含めた生活のしづらさ調査について、部会のメンバーや障害団体の意見等を聞きつつ調査項目等を検討してきた。新しい調査票とこれまでの身体障害者実態調査との項目に継続性が欠けている点はやむを得ないのではないか。5年後の次回調査でどう改善するかということになる。同時に、障害者基本法の「施策の基本方針」では「障害者の性別、年齢、障害の状態及び生活の状態に応じて」施策を策定、実施すると書かれているので、今後はより総合的な実態調査を行うことやその内容について、障害者政策委員会でも議論するべきだろう。
- (発言)次の見直しまで実態調査のデータが途絶えてしまうという不安があるので、今回に限り身体障害者実態調査を継続できないのか。生活のしづらさ調査に別冊で現在継続している実態調査を付けるだけなので、コストもかからないのではないか。
- (発言)今年の予算は既に決まり、一件当たりの調査謝金もわずかな額しかなくて困っているという話も聞いた。同じ予算で、身体障害者実態調査を行うのは難しい。身体障害者手帳の有無等基礎的な調査項目があるので、最低限の継続比較はできる。
- (発言)障害者予算の財源を拡充するべきであることは55名の総意として盛り込んだが、どのようにして税収を上げるのかについては議論できなかった。消費税を上げて障害者福祉の財源に充てるべきという意見があったが、これは今後の制度改革全体の検討事項ではないか。女性障害者についての指摘があったが、「I-1法の理念・目的・範囲 地域で自立した生活を営む基本的権利」でも「・・障害者の個別の事情に最も相応しい内容でなければならない・・」とあり、「個別の事情」という形で女性障害による複合的差別を踏まえている。
- (発言)消費税のパーセンテージを単純に他国と比較するのは意味がない。国によっては逆進性を緩和する等しているので、日本の消費税は日本独特のものとしてとらえる必要がある。
議事 報告等 1
わかりやすい改正障害者基本法をつくる作業チーム
- (発言)今日、午前10時過ぎから12時過ぎまで、チーム員3名とオブザーバー1名、自分の支援者に参加してもらった。これから新しい人にも参加してほしい。
- (発言)分担してつくったたたき台を基にまとめる作業をし、全体の6分の1ぐらいが終わった。次回10月の推進会議のときにも作業チームを行うので、都合のつく方は参加をお願いしたい。完成目標は12月の障害者週間だ。11月の推進会議で、皆さんに最終的な言葉について確認をお願いするペースでつくりたい。引き続き、ご協力をお願いしたい。
議事 「障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言」について 2
III 関連する他の法律や分野との関係
(III―1 医療)
- (発言)最初の表題が「『地域における障害者の生活を支える医療』の実現に向けた理念と制度基盤の構築」だが、この「地域における障害者の生活を支える医療」が全体の合意事項だ。そのために、医療・福祉・保健が連携する制度の基盤整備が必要だ。「障害者の医療費公費負担制度の見直し」では、医療費の負担問題は、自立支援医療だけではなく難病や小児慢性疾患、重度心身障害児者助成制度等を含め、総合的に考えるべきだとした。「医療的ケアの担い手の確保」では、介護職員等や医療関連の法令と調整しつつ医療的ケアの担い手を確保することは重要だと提言した。「精神障害者に係る非自発的入院や入院中の行動制限」では、入院等に関する権利の保障が問題となった。「精神障害者に対する精神医療の質の向上」では、看護師や医師の配置や診療報酬を一般医療より少なく設定している精神科特例を改めるべきであると提言した。「保護者制度」では、現行の扶養義務者等に代わる人権擁護の仕組みが必要だとした。「障害を理由とした医療提供の拒否の禁止」では、身体疾患合併症の人が精神障害を理由に一般病院での診察を拒否されることをなくすべきだとした。
(III-2 障害児)
- (発言)8月8日に報告して以降、修正した点を報告する。「権利擁護」の説明に、児童福祉法を踏まえ、子どもが愛護されるべきであることを確認的に加えた。「療育」では、障害児に対する発達支援・育児支援・相談支援・医療支援を療育と幅広く規定した上で、説明に「思春期までの継続した療育」と書き、児童福祉法がカバーする年齢までが対象であることを明示した。「寄宿舎」では、小舎制にすることや、「手話等の習得には一定の集団形成が必要である」ということも踏まえ寄宿舎の在り方を検討するべきであることを加えた。
(III-3 労働と雇用)
- (発言)「就労系事業に関する試行事業(パイロット・スタディ)の実施」で述べている試行事業は総合福祉法の実施と同時に具体化するとしているので、詳細を詰めるために検討チームを設置する必要があるとしている。「賃金補填と所得保障制度(障害基礎年金等)のあり方の検討」では、就労支援で提案している賃金補填の導入を検討する上で、現行の所得保障制度や年金制度との調整が必要だと提言している。平成22年6月29日の閣議決定で「・・必要な所得保障の在り方について・・公的年金制度の抜本的見直しと併せて検討し、平成24年内を目途にその結論を得る」とされているので、関連付けて検討すべきだ。「障害者雇用・就労にかかる労働施策と福祉施策を一体的に展開するための体制の整備」では、「常時介助等を必要とする障害の重い人びとも、希望する場合には、その能力を生かして働けるような就労のバリエーションを検討することも重要だ。さらに、こうした関係機関ではコミュニケーションに支援が必要な障害者が利用しやすいよう、十分な配慮がなされる必要がある」を追加した。
- (発言)障害児に関して、今日は児童福祉法との関係の議論になるが、学校教育法等との関連性についても整理が必要ではないか。
- (発言)児童福祉法だけではなくて、母子保健法、学校保健法等々、乳幼児健診以降の子どもに関するすべての法律との関係が問題になる。今回の骨格提言では、一般の児童施策があって、その中に障害児に固有の支援があるという形で提案したが、文科省の特別支援教育の在り方に関する特別委員会では固有の支援についてばかり検討しているようだ。すり合わせて一つの方向性を出したい。
- (発言)精神保健福祉法は医療と保護を目的としているが、病院なら医療だけにして住まいの提供はいらない。精神科の疾患対策は社会・援護局の担当だが、医政局が担当していただきたい。このような医療合同チームで積み残した問題をどう取り扱っていくのか。
- (発言)骨格提言が法制化される過程で、厚生労働省と総合福祉部会や推進会議との意見交換等が行われるべきだが、意向あるいは予定をお聞きしたい。
- (発言)文部科学省では教育における合理的配慮の議論が行われているが、医療や障害児の作業チームで合理的配慮について議論できるか。
- (東室長)骨格提言の法制化に当たっては、総合福祉部会がフォローをできるようにしたいが、厚労省がどうするのか分からない。積み残しの課題は医療以外の分野でもあり、これらをどのように検討するのかという問題がある。新たな部会を設けるのか、推進会議で検討するのかということになるが、推進会議が政策委員会に移った後の最初の仕事は、障害者基本法に基づく基本計画の策定だ。これは幅広い議論になるので、その中で積み残しの課題を議論することができるかもしれない。合理的配慮に関しては、厚労省の障害者雇用対策課でも、就労における合理的配慮の在り方についての検討が行われている。他省庁での議論とどうすり合わせていくかという問題も含め、合理的配慮については差別禁止部会で議論することになる。
議事 報告等 2
障害者の権利条約第4回締約国会議
- (発言)9月7日から9日までニューヨークの国連本部で障害者の権利条約第4回締約国会議が開催された。パソコン筆記、文字通訳で、大スクリーンに逐次、発言内容が映されることが定着した。テーマは「可能性を引き出す環境~参加と雇用、国際協力を通じた障害者の権利条約の実現」だった。参加者は500名を超し、半分近くはNGO(非政府組織)の代表だった。権利条約の締約数が100を超し、障害問題への国際的な関心が高まっている。世界の貧困や教育に関わってミレニアム開発目標の議論が活発化しているが、来年秋の国連総会の冒頭、障害と開発に関するハイレベル会合が開催され、世界の開発目標と障害をどう結び付けるのか議論されることになっている。今年は、障がい者制度改革推進本部及び推進会議の設置、本年7月の障害者基本法の改正、条約32条にのっとった国際協力の実施について日本政府の発言があり、条約実施に向けての日本での積極的な努力を世界と共有する肯定的なものだった。最終日に、国連アジア太平洋経済社会委員会のパネリストが、アジア太平洋障害者の10年等の取組みについて触れ、日本の制度改革についても域内での条約実施の努力の例として紹介した。先週、アルゼンチンで障害と開発に関する会議が開かれ、震災と障害者について報告した。世界銀行の担当者やパラグアイやチリからの出席者が、日本の障害者分野での国際貢献を高く評価していた。基本法改正で防災が盛り込まれた点等を報告したところ、批准に向けて丁寧に時間をかけている日本のアプローチが好意的に評価された。
- (東室長)今後、障害者政策委員会に移るが、障害者基本法に基づく基本計画についての意見とりまとめが課題になる。就労や医療、障害児の問題も、その中で議論をしたい。先日の震災に関する報道で、障害者の死亡率が一般の死亡率の2倍にのぼるというデータが報告された。障害者基本法では新たに防災が取りあげられていることから、基本計画の策定に当たり再度、震災についての議論が必要だ。
- (藤井議長代理)「障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言」を、障がい者制度改革推進会議として了承したい。拍手をもって確認させていただいた。
*その後、藤井議長代理から蓮舫大臣へ提言を手交した。