(東室長)現行の障害者基本計画(以下、基本計画)は、平成15年度から平成24年度が計画期間なので、次の基本計画を策定する必要がある。新しく設置される障害者政策委員会(以下、政策委員会)で、詳細は検討されるが、先行して準備の議論をしたい。現行の基本計画の内容をどのように評価し、新たにどのような要素が必要かを検討する必要がある。
国連では1975年に障害者の権利宣言が採択され、1981年を国際障害者年、1983年~1992年を国連障害者の十年と定めた。これを受け、日本では1982年に障害者対策に関する長期計画が、1993年には心身障害者対策基本法の改正により成立した障害者基本法に基づく10年の新長期計画が策定された。現行の基本計画は2002年に策定された2012年までの計画だ。これらの計画は10年の期間を前期と後期に分け、数値目標を掲げた重点施策実施5か年計画を定めている。次の新しい計画は政策委員会の意見を踏まえて策定されることになる。
現行の基本計画は「はじめに」「I基本的な方針」「II重点的に取り組むべき課題」「III分野別施策の基本的方向」「IV推進体制等」の5つで構成されている。
「はじめに」では、これまでの経緯を振り返り、前の計画がリハビリテーションとノーマライゼーションを理念としたことを継承すると述べている。
「I基本的な方針」では、計画の考え方と各分野に共通する横断的視点を示している。横断的視点には<1>社会のバリアフリー化の推進、<2>利用者本位の支援、<3>障害の特性を踏まえた施策の展開、<4>総合的かつ効果的な施策の推進をあげている。
「II重点的に取り組むべき課題」としては、<1>活動し参加する力の向上(福祉用具等の研究開発やITの利用等)、<2>活動し参加する基盤の整備(住宅等の基盤整備、家族支援、経済的自立への支援等)、<3>精神障害者施策の総合的な取組、<4>アジア太平洋地域における域内協力の強化をあげている。
以上を理解する上で次の2つの視点が重要だ。一つは、障害者権利条約(以下、権利条約)や昨年6月の閣議決定、今年改正された障害者基本法等を踏まえ、新しい基本計画が今後の10年で達成しようとする課題や基本方向をどう設定するかという視点だ。このような視点から、現行基本計画を吟味する必要がある。二つ目は、障害者基本法に基づく政策委員会が実施状況をどのように監視するかという視点だ。監視に当たっては、各省庁や地方公共団体のより具体的な計画とそれに基づく取組みを把握して調査、審議を行う必要がある。だから、各省庁や地方公共団体の計画や取組みに影響を与える基本計画の記述は重要だ。