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第36回障がい者制度改革推進会議(2011年10月24日)
議事要録


【議事 現行の障害者基本計画について】

  • (東室長)現行の障害者基本計画(以下、基本計画)は、平成15年度から平成24年度が計画期間なので、次の基本計画を策定する必要がある。新しく設置される障害者政策委員会(以下、政策委員会)で、詳細は検討されるが、先行して準備の議論をしたい。現行の基本計画の内容をどのように評価し、新たにどのような要素が必要かを検討する必要がある。
    国連では1975年に障害者の権利宣言が採択され、1981年を国際障害者年、1983年~1992年を国連障害者の十年と定めた。これを受け、日本では1982年に障害者対策に関する長期計画が、1993年には心身障害者対策基本法の改正により成立した障害者基本法に基づく10年の新長期計画が策定された。現行の基本計画は2002年に策定された2012年までの計画だ。これらの計画は10年の期間を前期と後期に分け、数値目標を掲げた重点施策実施5か年計画を定めている。次の新しい計画は政策委員会の意見を踏まえて策定されることになる。
    現行の基本計画は「はじめに」「I基本的な方針」「II重点的に取り組むべき課題」「III分野別施策の基本的方向」「IV推進体制等」の5つで構成されている。
    「はじめに」では、これまでの経緯を振り返り、前の計画がリハビリテーションとノーマライゼーションを理念としたことを継承すると述べている。
    「I基本的な方針」では、計画の考え方と各分野に共通する横断的視点を示している。横断的視点には<1>社会のバリアフリー化の推進、<2>利用者本位の支援、<3>障害の特性を踏まえた施策の展開、<4>総合的かつ効果的な施策の推進をあげている。
    「II重点的に取り組むべき課題」としては、<1>活動し参加する力の向上(福祉用具等の研究開発やITの利用等)、<2>活動し参加する基盤の整備(住宅等の基盤整備、家族支援、経済的自立への支援等)、<3>精神障害者施策の総合的な取組、<4>アジア太平洋地域における域内協力の強化をあげている。
    以上を理解する上で次の2つの視点が重要だ。一つは、障害者権利条約(以下、権利条約)や昨年6月の閣議決定、今年改正された障害者基本法等を踏まえ、新しい基本計画が今後の10年で達成しようとする課題や基本方向をどう設定するかという視点だ。このような視点から、現行基本計画を吟味する必要がある。二つ目は、障害者基本法に基づく政策委員会が実施状況をどのように監視するかという視点だ。監視に当たっては、各省庁や地方公共団体のより具体的な計画とそれに基づく取組みを把握して調査、審議を行う必要がある。だから、各省庁や地方公共団体の計画や取組みに影響を与える基本計画の記述は重要だ。

「はじめに」「I基本的な方針」「II重点的に取り組むべき課題」について

  • (発言)末尾の(注)に「リハビリテーション」の用語説明があり「ライフステージのすべての段階において」とあるが、障害者は死ぬまでリハビリテーションをするということか。
  • (発言)「II重点的に取り組むべき課題」で「(活動し)参加する」とあるが、何に参加するのかが書かれていない。障害者が政策決定に参加することを明確に書くべきだ。
  • (発言)基本計画の審議機関と検討の手順を教えていただきたい。障害者基本法では「選挙等における配慮」が新設されたし、地域移行について議論してきたので、新しく加えるべき項目があるが、これについての議論はどこでされるのか。
  • (東室長)新しく加えるべき項目については今日の第4コーナーで議論する。新しい基本計画は政策委員会で検討する。
  • (発言)新たな項目については、今日の第4コーナーで議論して構成についての意見を出すことはできるが、その後どのように検討されるのかが見えない。基本計画は政策委員会で検討するといっても、政策委員会はまだ設置されていない。基本計画の議論がいつ始まり、いつ確定するのかも含め、分からない。
  • (東室長)新しい項目については今日の最後に議論する。今日は大枠の話だが、新しい項目も含め基本計画については政策委員会で議論する。そのメンバーは推進会議がベースになる。基本計画を確定させる時期は決まっているので、それに間に合うよう議論する必要がある。
  • (発言)基本計画を再検討する際に、これまで基本計画に則って実施された施策等を行政自体がどう評価しているのかは、素材として重要だ。策定⇒実施⇒評価により見える点を次の策定に生かすのが一般的な政策過程だ。
  • (東室長)行政による自己評価は障害者白書にも書かれており、この点も含め詳細についての議論は来年度になる。
  • (発言)基本計画の年度毎の見直しはどのように行われ、この見直しと障害者白書の関係はどうなっているのか。今日は、現在の基本計画の項目の過不足や順番、優先順位について議論するのか、それとも個別項目の実態について議論をするのか。「II重点的に取り組むべき課題 1活動し参加する力の向上」とあり、障害者が力をつけて実施することが計画であるというように読める点等、全体構成に違和感がある。
  • (藤井議長代理)過不足については、最後に議論する。今日は現在の基本計画の評価や到達点を深めたい。
  • (東室長)基本計画の年度ごとの見直しと障害者白書の関係については、必要であれば調べて報告したい。
  • (発言)障害者基本法によると、基本計画は政策委員会の意見を聞いて政府がつくることになっている。これまでの基本計画は部門ごと各省が書いている印象で、省を超えて調整されていないのではないか。新しい基本計画は従来のつくり方ではなく、推進会議で議論してきたように幅広く省庁の枠を越えてつくるのか。
  • (東室長)基本的には政策委員会の結論をベースに閣議決定して頂くことになる。従来のように施策のリストのようなものを各省庁から出してもらい、それで決まるという一方的な形であるべきではない。ただし、ここでまとめた意見と実際の計画の間に格差が生じる状況は予想できるので、その差をどのようにして埋めるのかが課題だ。
  • (発言)現在の基本計画の「4 アジア太平洋地域における域内協力の強化」に「『びわこミレニアムフレームワーク』の推進に貢献し・・」とあるが、十年の後半でこの点が著しく弱まった。また現行の基本計画にはジェンダー、性別や女性という観点が抜けているので、「横断的視点」に盛り込む必要がある。
  • (発言)基本計画の基本方針として、障害者が社会のあらゆる活動に参加する共生社会の実現を図るという趣旨が書かれているが、どの程度参加できるようになったのかのデータが必要だ。障害者の雇用実態がどう変化したか、外出頻度は高まったか等、生活実態の変化に基づいて評価する新しい仕組みが必要だ。権利条約が採択された後の基本計画なので、障害のない市民との平等という考え方に転換する必要がある。障害のない市民と比べて、就労状況・賃金・労働条件はどうなっているのか、どのような分野が遅れているのか、スポーツ・地域生活・住宅・所得等の分野で総括し、状況を変えていけるようなモニタリングの仕組みが必要だ。
  • (発言)女性障害者について議論して頂きたい。基本計画をどのように活用すべきなのかという視点が必要だ。計画は何をどこまで進めるかという目標をもち、施策を進めるためのツールだ。政策を立案・実行する際に、このような評価や計画を役立てるよう監視が必要だ。
  • (発言)権利条約や障害者基本法から見ると、ノーマライゼーションとリハビリテーションという概念で組み立てられている基本計画は医学モデルに偏っている。多様性の尊重及びインクルージョンを基本的な概念にしなければいけない。

「III分野別施策の基本的方向」の「1啓発・広報」「2生活支援」「3生活環境」「4教育・育成」について

  • (東室長)各論は8分野があるが、まず4分野の説明をする。「1 啓発・広報」では、<1>啓発・広報活動の推進、<2>福祉教育等の推進、<3>公共サービス従事者に対する障害者理解の促進、<4>ボランティア活動の推進をあげている。「2 生活支援」では、<1>利用者本位の生活支援体制の整備、<2>在宅サービス等の充実、<3>経済的自立の支援、<4>施設サービスの再構築、<5>スポーツ、文化芸術活動の振興、<6>福祉用具の研究開発・普及促進と利用支援、<7>サービスの質の向上、<8>専門職種の養成・確保をあげている。「3 生活環境」では、<1>住宅、建築物のバリアフリー化の推進、<2>公共交通機関、歩行空間等のバリアフリー化等の推進、<3>安全な交通の確保、<4>防災、防犯対策の推進をあげている「4 教育・育成」では、<1>一貫した相談支援体制の整備、<2>専門機関の機能の充実と多様化、<3>指導力の向上と研究の推進、<4>社会的及び職業的自立の促進、<5>施設のバリアフリー化の促進をあげている。
  • (発言)現行の基本計画は2002年当時の制約を受けるため、インクルーシブの理念や差別禁止の視点が欠けている。2007年の重点施策5か年計画には「障害を理由とした不当な差別的取扱い等に対する救済措置の整備」いう形でしか、差別の視点が位置付けられていない。また、計画に基づき着実に推進したこととして障害者自立支援法の制定や学校教育法の改正があがっているが、障害者自立支援法は自立生活にマイナスの影響を与え、学校教育法はインクルーシブな教育を後退させた。これを前向きに評価するのはおかしいのではないか。数値目標をどの程度具体化したのかという資料では、特別支援教育コーディネーターの指名は70%台に達しているが、内実を点検していない。特別支援教育の推進によって分離される傾向が強まっており、抜本的な見直しが必要だ。
  • (発言)10年前に作られた現行の基本計画でも、精神障害者施策の充実、社会的入院の問題、当事者の相談支援体制等が掲げられているが、充実されていない。関係省庁がこれを評価し、何が問題なのかを踏まえて考える必要がある。このように充実されていないのは、制度が整備されていないためだ。社会的入院については、退院促進といっても地域基盤ができていない。総合福祉部会の骨格提言が地域生活支援について述べていることを充実する必要がある。
  • (発言)現行の基本計画は医療訓練モデルだ。「II重点的に取り組むべき課題 1活動し参加する力の向上」に予防、医療、リハビリテーション等と書かれており、訓練で個人の力を向上させるということにつながるので、他の市民との平等の下に社会参加する権利といった表記に変えるべきだ。「III分野別施策の基本的方向 2生活支援」について意見を述べる。利用者本位という表現は、本人主体又は本人中心という表現にして欲しい。ケアマネジメントの整備について「生活支援方策を中心に」とあるが、「本人の自己決定を中心に」等と書くべきだ。相談についてはピアカウンセリングやピアサポートを含む表現にして頂きたい。権利擁護は財産権問題を中心にせずに、権利侵害に対応するため虐待防止法を含む権利擁護システムを地域で導入することを中心に書いて欲しい。
  • (発言)「III分野別施策の基本的方向 2生活支援」に「知的障害者本人や精神障害者本人の意見が適切に示され・・当事者による政策決定プロセスへの関与等を支援することを検討する」とあり、これは評価できる。しかし内閣府ホームページによると、地方自治体のうち障害者基本計画のための委員会等を置いているのは816で、大まかにいうと身体障害者は1つの委員会に2人参加しているのに対し、知的障害者は22自治体に1人、精神障害者は14自治体に1人しかいない。どのように、参加の検討がされてきたのかを総括しなければならない。当事者が形だけ委員に入ればいいということではないが、まずは参加もできていない状況をどうにかしなければならない。
  • (発言)「II重点的に取り組むべき課題 3精神障害者施策の総合的な取組」に「精神障害者に係る保健・医療・福祉・・計画的な取組を促進する」とあるが、これでは精神障害者は施策の対象で、権利の主体になっていない。全体を通じて、ケアマネジメントという文言は何カ所かあるがセフルマネジメントがないのはいかがなものか。「III分野別施策の基本的方向 3生活環境」の公共交通機関に関わって、精神障害はJRの運賃割引の対象になっていない。
  • (発言)2004年の精神保健医療福祉の改革ビジョンで社会的入院は7.2万人だったが、資料5「重点施策実施5か年計画において数値目標が設定された主な事項の進ちょく状況」では退院可能な精神障害者は4.9万人(2007年)になっている。このようなデータは見たことがない。数値目標の設定に当たっては実態調査を行い、社会的入院が人権侵害であるという認識に立つ必要がある。訪問系サービスの提供は目標に対して半分しか伸びていないが、日中活動系サービスは既に達成している。このような数字のアウトプットではなく、地域生活が実現しているのかを考え、そのために実態調査に基づく数値目標を設定するべきだ。教育については、障害者基本法の改正を受けて、インクルーシブ教育を基本計画の見直しに入れる必要がある。「防災、防犯対策の推進」で、自力避難の困難な障害者への対応について書かれているが、東日本大震災ではどうだっただろう。どうしてあのような状況になったのか、被災地の方をお招きし、ヒアリングをし、検証して頂きたい。
  • (発言)就労については「施設サービスの再構築」と「雇用・就業」で触れられている。就労合同作業チームの報告書では労働施策と福祉施策を一体的に展開するべきで、2つに分けるのはおかしいと提言した。第一次意見の「労働及び雇用」の課題は各省がいつまでに検討すると書いているが、政策委員会と各省との関係を整理しなければ、政策委員会で検討しても各省は関知しないということになり兼ねない。
  • (発言)精神医療の分野では人権が侵害されており、基本計画のような書き方では権利条約批准に当たっての人権の視点が欠落している。「II重点的に取り組むべき課題 2生活支援」の「精神障害者施策の充実」に「条件が整えば退院可能な」とあるが、これは「入院の必要のない人は直ちに退院させる」とすべきだ。病院から地域への移行の中間に駆け込める仕組みがあれば、入院しなくてもよくなる。東日本大震災で一番困難に直面したのは、高齢者、障害者、乳幼児を連れた女性等だ。当事者しかわからない事が多いので、当事者が主体となり防災対策をつくるべきだ。
  • (発言)資料5にある退院可能精神障害者が19年度で4.9万人という数字はおかしい。訪問系サービスを522万時間にするという数値目標は重要だが、実質的に伸びていない。数字が若干伸びているのでそれでよいというだけではなく、そのことで重度障害者が地域で暮らせているのかという検証が必要だが、それがされておらず問題だ。「II重点的に取り組むべき課題2生活支援」の「住居の確保」で、重度障害者はグループホームや福祉ホームに入居すれば良いと読める箇所があるが、重度障害があっても他の者と平等になるように住む場所は本人が決めるという理念で、新たな基本計画の枠組みを作るべきだ。
  • (発言)現行の基本計画ができた時点から変わらないのは盲ろう者のことだ。現行基本計画で視聴覚障害者という言葉があるが、これは盲ろう者ではない。「II重点的に取り組むべき課題 1活動し参加する力の向上」でユニバーサルデザインについて触れているが、ユニバーサルデザイン仕様の金融機関のATMや駅の券売機は、盲ろう者は使えない。また、交通の安全という観点が重要で、ホームから転落する事故が起きていることから、可動式ホーム柵をつくることも盛り込むべきだ。新しい基本計画には、社会背景を考えつつ正しい数値目標や項目を入れるべきだ。

「III分野別施策の基本的方向」の「5雇用・就業」「6保健・医療」「7情報・コミュニケーション」「8国際協力」について

  • (東室長)「5雇用・就業」は「<1>障害者の雇用の場の拡大」では「ア障害者雇用率制度を柱とした施策の推進」「イ障害者の能力・特性に応じた職域の拡大」「ウ障害者の働きやすい多様な雇用・就業形態の促進」「エITを活用した雇用の促進」「オ障害者の雇用・就業を行う事業の活性化」「カ障害者の創業・企業等の支援」に取り組むとしている。「<2>総合的な支援施策の推進」では「ア保健福祉、教育との連携を従事した職業リハビリテーションの推進」「イ雇用への移行を進める支援策の充実」「ウ障害者の職業能力開発の充実」「エ雇用の場における障害者の人権の擁護」について適切に対応することになっている。「6保健・医療」は「<1>障害の原因となる疾病等の予防・治療」「<2>障害に対する適切な保健・医療サービスの充実」「<3>精神保健・医療施策の推進」「<4>研究開発の推進」「<5>専門職員の養成・確保」について書かれている。「7情報・コミュニケーション」については「<1>情報バリアフリー化の推進」「<2>社会参加を支援する情報通信システムの開発・普及」「<3>情報提供の充実」「<4>コミュニケーション支援体制の充実」を促進することになっている。「8国際協力」については「<1>国際協力等の推進」「<2>障害者問題に関する国際的な取組への参加」「<3>情報の提供・収集」「<4>障害者等の国際交流の支援」がある。
  • (発言)「7情報・コミュニケーション」は人間にとって基本的でベースになる領域なので、生命維持と並ぶ基本的な問題として冒頭部分に位置づけ、細かな問題を各論で書くべきだ。
  • (発言)「5雇用・就業」に関して発現する。基本方針を立てるにはまず現状をどう認識し、次にこれを改善するために何をするのかという順番だ。雇用率制度は大企業を中心にうまくいっていると厚労省は言うが、2003年と2008年の厚労省による実態調査を見ると雇用されている障害者は約50万人から約45万人に減っており、そのために何をすべきかについては現行の計画では触れられていない。実態調査によるデータから、雇用率や雇用条件等の面での障害のある人とない人のギャップを把握し、これを縮めるために何をしければいけないかを明らかにする必要がある。現行の基本計画にはこうした観点が欠落しており、次回の計画ではこの弱点を埋めて欲しい。
  • (発言)「6保健・医療」には、障害者のエンパワーメントと関係ないものも含んでいるので変えるべきだ。「8国際協力」はアジア太平洋についてのみ書かれているが、今後は世界全般を対象とするべきだ。障害者団体等の国際交流を冒頭に書くべきだ。
  • (発言)「8国際協力」について、2002年に始まった障害者権利条約の策定過程で、日本は積極的に参加した。これを引き続き発展させることが課題だ。しかし、今、開かれている国連総会で障害者問題について議論が行われているが、障害者権利条約のモニタリングをする障害者の権利委員が年2回、1週間ずつしか開かれていないため各国の報告書を審査する時間が不足していることから、2週間にしようという提案に対して、日本政府は消極的だという情報だ。またミレニアム開発目標の次の目標の議論について来年の国連総会の冒頭でハイレベルミーティングを開く動きがあるが、これについても日本政府は消極的だという情報がある。
  • (発言)尊厳死問題は今後の大きな課題だ。尊厳死は必要だと言う議論の背景にはピーター・シンガーの生命倫理の問題がある。遷延性意識障害、ALS、重症心身障害児者が増えており、この人達を無視した政策にならないよう、「6保健・医療」で担保しなければならない。
  • (発言)障害者基本法に障害児が地域の身近なところで療育等を受けられるようにとあるが、「6保健・医療」にはその視点が全く欠けている。地域の中で障害のない子どもと共に育つための療育を保障するという視点を盛り込んで頂きたい。
  • (発言)「6保健・医療」には精神障害について細かく書いているが、内容は医療モデルだ。「イ精神疾患の早期発見・治療」で精神科救急システムを確立するとあるが、人権的な視点から適正な手続がとられるかどうかが問題になる。精神医療審査会の機能の充実を促すとあるが、この審査会は全く機能しておらず、人権を担保するためには弁護士等が病院に立ち入って人権を確保できるようなシステムが必要だ。難病の方たちの生活の質の改善をどのように担保するのかも書くべきだ。今の精神科医療の状況の原因は政策のつくり方にある。ライシャワー事件の際に、これへの対応を民間病院に託したのが間違いだった。憲法で保障されている人権、自由を担保するには公的な病院で対応するべきだったが、民間に委託してしまったために人権とは別の経営の視点が入ってしまった。
  • (発言)「6保健・医療 <3>精神保健・医療施策の推進 イ精神疾患の早期発見・治療」にEMB(根拠に基づく医療)の推進と書かれているが、これはEMBが適切に行われていないことの裏返しだ。医療の分野でこのようなことがあっていいのか。精神障害者の自立及び社会参加のために精神保健福祉法を廃止し精神障害者を地域に戻した上で、医療基本法で患者の人権を保障するべきだ。
  • (発言)「5雇用・就業」では雇用のことしか書かれていないが、視覚障害者の針、きゅう、マッサージ等自営も多く、そうした人たちへの支援が欠落している。厚生労働省は、障害別雇用率を調査しても発表していないが、実態把握と問題分析のためには必要だ。「7情報・コミュニケーション」では、情報支援やコミュニケーションの保障として、内容の位置づけ、定義づけ、守備範囲が明確ではない。視覚障害者や知的障害者の問題が落ちている。

分野の構成について、「IV推進体制等」について

  • (東室長)各則は現行の基本計画では8分野だが、障害者基本法の改正によって「療育」「防災及び防犯」「消費者としての障害者」「選挙等における配慮」「司法手続きにおける配慮」「国際協力」が新設されており、これらを新たな基本計画でどう扱うか。また、療育や防災のように、現行基本計画では項目はなくても触れている部分があるものはどうするか等について議論していただきたい。「IV推進体制等」に関して、現行基本計画では「3計画の評価・管理」で、障害者施策推進本部が計画の点検、見直しを行うことが書かれているが、今後は政策委員会が監視することになる。監視、検証、実態調査等も含め、推進体制と併せて監視体制の在り方について議論して頂きたい。
  • (発言)東日本大震災の支援活動を通して感じたが、被災障害者の中には、福祉サービスを受ける権利があることを認識している人が少ない。福祉サービスを受けることは権利であることを学ぶ場についても政策の中に含めるべきだ。行政は障害者に福祉サービスについての情報提供をするだけで、福祉サービスを利用しなくても家族が守るという考え方が強い。障害者にアンケートを取ると、困っているがサービスは利用しないという回答が多い。遠慮をして、自分だけ特別なサービスを受けて良いのかと考える障害者が多い。
  • (発言)「III分野別施策の基本的方向 2生活支援」は抜本的に見直すべきだ。推進会議で重視してきたのは、障害者権利条約第19条にある地域生活の権利とインクルーシブ社会の実現なので、こうした観点から基本計画を検討していただきたい。
  • (発言)障害者基本法の改正で新設された各分野は、新しい基本計画の各則でも項目が必要だ。加えて、「分け隔てなく」のように総則に新たに加えられた原則も基本計画に反映されるべきだ。制度の谷間のない社会モデルに基づく障害定義を踏まえ基本計画での難病の扱いを見直す等、全般的な見直しが必要だ。「横断的視点」で、建物、移動、情報、制度、慣行、心理などの社会のバリアフリー化を推進するとして、障害者基本法の社会的障壁に近い考え方を示しているにもかかわらず、「II重点的に取り組むべき課題」では障害者自身の「活動し参加する力の向上」となっており、ずれている。原則に基づきどのように施策を展開していくのか、どういう方向づけをするのかを議論したい。さらに、「障害者の社会参加を阻む『欠格条項』の見直しが行われた」とあるが、欠格条項は過去の問題ではない。
  • (発言)障害のある女性について、改正障害者基本法と第二次意見を踏まえ、分野として基本計画で取り上げる必要がある。障害者自身が権利を主張することに抵抗を示し、又は権利があることを知らないため、権利条約8条「意識の向上」を受けて子どもの頃から権利の尊重について適切に伝えられるよう、「III分野別施策の基本的方向 1啓発・広報」をグレードアップする必要がある。東日本大震災を踏まえ、被災した障害者、特に放射能で汚染された福島の障害のある人たちに関する総合的な取組みを重点的な項目に入れる必要がある。
  • (発言)障害児支援を一つの分野として独立させて欲しい。総則に「差別の禁止」を設け、合理的配慮がないことは差別であると意識して頂きたい。我が国では法律ができる前に何らかの社会的認知が必要なので、基本計画で先行的にこれを盛り込んで頂きたい。
  • (発言)精神障害に関する施策が進んでいない現状、障害者基本法で精神障害が明示されなかったこと、5大疾病の中に精神疾患が入ったこと等を踏まえ、精神障害について推進会議で議論を深める機会を設けて頂きたい。
  • (発言)分野別の各論に、意思決定支援を位置づけるべきではないか。障害者基本法や総合福祉法の骨格提言でも、意思決定支援について述べられている。コミュニケーション支援とは深い関係があるのでそこに入れるか、新設が予想される成年後見等とも関連する。または、知的障害者への意思決定支援は身体障害者にとっての介護同様、地域生活上の基本的な支援なので地域生活支援に位置付けるという方法もある。
  • (発言)批准された後の障害者権利条約の扱いはどうなるのか。自由権規約を盾に、精神保健福祉法の保護入院は憲法違反でないかという裁判をしても門前払いとなり、現在は既に批准している条約が直接適用されることはない。
  • (発言)障害者基本法3条「地域社会における共生等」を基本計画にどのように反映するのか。定量的な評価は難しくとも、定性的な評価ができる文言にしないと理念だけになる。情報・コミュニケーションは聴覚障害だけの問題ではないため、高い水準で規定する必要がある。
  • (発言)現行の基本計画は縦割り行政的な色彩が強いため、わかりにくい部分がある。本人の暮らしを中心にして項目立てをする視点が必要で、その際、障害者基本法がベースになる。インクルージョンやエンパワーメントというキーワードは基本計画で使うべきだ。
  • (藤井議長代理)JDFでは家族依存からどのように抜け出すのかという問題や、障害者行政組織や政策決定の在り方について、従来から議論になっている。
  • (発言)現在の基本計画や重点施策は行政が決めることになっているが、今後は政策委員会が主体になるような政令をつくる必要がある。平成24年度で国の10年計画が終わるが、地域行政でも25年度以降の計画がどうなるのかわからないという声をきく。平成24年度に政策委員会を立ち上げ次の計画について議論するというが、地域行政はそれでは対応できない。来年3月までの間に、政策委員会の枠組みをつくる必要があるのではないか。各省庁が現在バラバラに計画を作っているが、これを来年3月までに調整する機能を現在の担当室が担えるような仕組みが必要だ。
  • (発言)障害者基本法の計画は政府が策定し、調査、審議、意見具申は障害者政策委員会が行う。そこに、本日の意見を反映していただきたい。
  • (発言)「IV推進体制等 1重点施策実施計画」については、総合福祉部会の骨格提言が提案している地域資源整備10か年戦略を中心に、前期と後期の重点実施計画を構成して頂きたい。「3計画の評価・管理」に関連して、実態調査を組み合わせて評価できる仕組みを自治体の協力のもとでできるようにすべきだ。実態に基づく政策提言は重要なので、「5調査研究、情報提供」は総論や基本的視点と同じように前の方に置くべきだ。
  • (発言)障害のない市民との比較可能な障害者実態調査のデータを得るために、国民生活基礎調査や国勢調査に障害の有無を問う設問を入れる方法があるが、国勢調査はかなりラフなため、フォローアップの調査をする必要がある。障害者福祉サービスを利用している人の支給決定は全国の市町村が把握しているので、それをデータベース化しモニターとして使うこともできる。
  • (発言)障害者に関連する法や制度、政策に関するモニタリングと政策提言を行っている組織として、アメリカでは全米障害者評議会がある。この根拠法はリハビリテーション法だ。障害の程度にかかわらず他の市民との平等を保障するために、医療・保健、住宅、雇用・就労、年金、移動保障、レクリエーション、トレーニング、早期介入と予防、教育の9分野を調べることになっている。日本の基本計画の項目にないのが住宅だ。バリアフリーの問題だけではなく、住宅政策をどうすべきかを明確に位置づけて頂きたい。全米障害者評議会の役割は、目標に近づくための勧告と毎年の報告、報告を踏まえた新しい勧告をすることが基本的な役割だ。報告の際には全国の障害者団体の意見を反映しなければならない。更にその年の重要項目について調査、報告する役割もあり、ハリケーン等の自然災害に関する詳細な報告書や政策提言が出されている。我が国でも、このような委員会が展開できるようにして頂きたい。
  • (発言)基本計画の実効性を高めるために、計画に加えて5か年計画を策定する必要がある。予算確保のためにも有効だ。条約の批准の時期をどのように考えるのか。権利条約を批准することによって、明確にモニタリング機関として政策委員会が位置づけられ、機能が明確化される。すると、基本計画の書きぶりが変ってくるかもしれない。政府としての批准の見込みや、批准にむけての国内法整備とはどの程度までを指すのか、伺いたい。
  • (発言)基本計画の実効度を高めるには、モニタリングの時に実際にどういうことが行われたかを定期的に報告させ、それに対してアドバイスする機能を障害者政策委員会の下に置くべきだ。男女共同参画会議などが参考になる。
  • (東室長)精神障害者の課題について議論して欲しいという要望があったが、雇用分野についても同じような意見を頂いている。推進会議で議論すべきか、政策委員会で行う方がよいのか決断できていない。条約の批准の時期について、質問があった。第一次意見を受けた閣議決定では、時期についてはふれていない。閣議決定された改革の行程表が基準になるが、政策委員会でも批准の時期について意見を出すことができるのではないか。

【わかりやすい改正障害者基本法作業チームからの報告】

  • (発言)わかりやすい改正障害者基本法作業チームは、第3回の作業チームの会合を札幌でもった。本日は、第4回目の作業チームの会合をもったが、改正障害者基本法について第1回目の読み合わせの段階だ。今年の障害者週間までに、作成したい。

[以上]

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