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(50音順)
全日本ろうあ連盟理事長 安藤 豊喜
全国身体障害者施設協議会副会長 伊藤 勇一
1.意識改革の重要性
2.施策体系全般の見直し
3.医療的ケアを多く要する障害者への対応
4.相談支援事業(市町村障害者生活支援事業、障害児(者)地域療育等支援事業、精神障害者地域生活支援センター)の拡充
5.介護保険制度との関係の整理
日本障害者協議会代表 河端 静子
本協議会では、新しい障害者基本計画・障害者プランは、20年後を見据えたものにしていかなければならないと考えています。
今求められているのは、格差の解消と言えます。障害の違いや地域毎のサービスの格差は厳然として大きく存在しています。差別禁止の法制化も重要な課題ですが、それ以前に、このような格差を解消していく方策が必要であり、次期計画の中に盛り込んでいくことが重要です。具体的には総合的な「障害者福祉法」の制定であり、市町村障害者計画を全市町村に策定することが求められます。身体障害者手帳などの手帳が無ければサービスが受けられない問題は改善していく必要があります。手帳の交付を受けることができない障害のある人は大勢います。そういった谷間にある人へのサービス体制を整備していくことが強く求められています。
本協議会としては、以上述べたような「格差の解消」を次期計画の重要な柱に据えながら、別紙<新たな「障害者基本計画」と「障害者プラン」の策定にむけて>のとおり、基本的な方針を明らかにし、新しい障害者基本計画や障害者プランに反映させていただきたいと考えています。重複するかもしれませんが、ポイント(項目)は次のとおりです。
なお、今後の議論の過程の中で、数値目標のあり方など具体的な事柄についても問題提起したいと考えています。
先程も述べましたように、総合的な「障害者福祉法」の制定や地域間格差の是正などは最重要課題として捉えていますが、その他本協議会として長年訴えてまいりました雇用や就労困難な人たちの所得保障制度の確立や、各種サービスを世帯単位から個人単位へと切り替えていくことの課題は、それに勝るとも劣らない重要な課題と認識しています。
21世紀における日本の障害者福祉のあり方を模索するとき、個人の尊重、あるいは個人に対する生活保障の観点は大変重要であり、障害のある人誰もがハンディを感じることなく、日本のどこで暮らしていても平等に生活できる社会を実現するための計画にしていただきたいと考えます。
(別紙)
日本障害者協議会 代表 河端 静子
日本障害者協議会として、新しい「障害者基本計画」及び「障害者プラン」の検討にあたり、以下のとおり意見を申し述べます。
本協議会としましては、21世紀にふさわしい「完全参加と平等」、ノーマライゼーションの理念を具体化・現実化させるための、20年後を見据えた計画を立てていく必要があると認識しています。
本協議会では、1998年8月に「障害者に関する総合計画提言」をまとめ、これを基本政策としています。4年経った現在、その中で指摘している事項について、まだ実現に至っていない課題が多く残されています。一方、4年という歳月は、時代の流れが急速になっている昨今、そう最近の事とはいえません。社会福祉基礎構造改革や、国レベルにおける経済・財政の「構造改革」の只中にあり、本協議会の施策も社会経済の動きに呼応し、さらに変わりいく人たちの価値観を敏感に察知した内容としていく必要があると考えています。
これからの10年で最も力を入れなければならないのは、差別禁止の法制化、あるいは障害者の権利の法制化と考えます。これはとりもなおさず「完全参加と平等」ノーマライゼーションの理念の具体化実効化なのです。そのような観点にたったとき、障害者施策のあり方を根本から問い直す必要性が認識されます。それは、“脱施設化”の目標を明確にさせ、数値的な目標を策定することです。その意味は、施設や病院での生活を余儀なくされている人たちの、地域生活を可能とさせるような、社会基盤や社会サービスの確立とその充実であり、それにむけた種々のサービスの数値目標の設定です。
さらに個の確立にむけた法整備も重要です。具体的には民法の扶養義務の範囲の見直しをはじめ、諸制度を世帯単位から個人単位へと改革していくことなどがあげられます。
少子高齢化社会が到来するなかで、障害者のみならず、誰もが安心して暮らせるセーフティーネットの確立と活力ある福祉社会の創造が今求められています。それは一人ひとりが主権者として発言し、様々な施策に関与する参加型福祉社会の実現でもあります。「社会福祉サービスは政府から自然に与えられるもの」という認識から人たちがどう脱皮していけるかについても重要なポイントです。年金や医療保険の財政問題も深刻化しており、障害者分野をはじめとする社会福祉サービスの財源のあり方についても積極的な議論が期待されます。その中には付加価値税(消費税)の税率の見直しも含まれるであろうし、サービスに対する負担のあり方の議論も避けて通れないと考えます。負担が増すことによって文化的な生活の維持が困難になるような事態は避けなければなりませんが、一方負担することによって利用者の発言権が担保されるという視点も重要です。
さらに、社会福祉サービスにおける国・自治体、企業、そしてNPOなど市民団体の役割と責任を明確化させ、連携を緊密化させる必要があります。21世紀の新しい福祉社会は全ての構成員が参加する中で、障害者が(障害がなくても)「失敗をおそれず、挑戦できる社会」であると考えます。
差別禁止の法制化(権利法)
障害を理由とする差別の禁止の法制化は急務です。労働、教育、住居、交通などあらゆる場面で、障害を理由とする差別が常態化しています。各国の立法に学びながら包括的な差別禁止の法制化、あるいは権利法の制定が必要です。
扶養義務の見直しと個人単位を基本とする法制度の整備
障害のある人たちの独立と自由を妨げている原因の大きな理由として、日本の家族主義と、それに基づく各種の制度の存在があります。とくに民法の扶養義務規定はその象徴的存在ともいえ、障害のある人たちの独立への最大の障壁ともなっています。先進欧米諸国の多くがそうであるように、子に対する親の扶養責任は、原則として子が成人に達するまでとし、それ以降については社会が共同の責任を負うという考え方に変えていく必要があります。具体的には、民法の改正、各福祉法はもとより、税法など関係する法律を、世帯単位から個人単位へと変えていくことが重要であると考えます。
市町村計画の策定
障害のある人に対する各種の支援サービスならびに現実の障害者の暮らしの在り様を見たとき、地域間格差は目に余るものがあります。介護サービス、医療、交通アクセス、そして住宅のあり方など、市町村によってその施策が大きく異なっています。
障害者自身の策定過程への参画のもと、全市町村に障害者計画が策定され、地域に根ざした障害者施策が取り組まれていくことは重要な課題です。
所得保障の確立
差別禁止法の制定や、障害者雇用施策や職業リハビリテーション施策の充実を通し、障害の種別や程度に関係なく、できるだけ多くの障害者の就労が実現されることが望ましいことはいうまでもありません。しかし、現状においては障害者にとって雇用環境は厳しく、働いて所得を得ることができない障害者が十分生活できる年金制度の確立が急がれています。家族に依存することなく、十分に生活できるだけの障害を原因とする年金制度の確立です。年金の改訂時期が2年後に迫っており、障害基礎年金の1級の水準を、生活保護の基本生計費(1類+2類)プラス障害者加算をあわせた額相当に引き上げていく必要があります。
また日本の国籍を有していないことや、学生時や主婦時に障害を持ったことによる無年金者の解消は、次期年金改訂で絶対に解決させる必要があります。
雇用
日本においては障害者雇用促進法において、障害者雇用施策がすすめられています。最大の問題は、雇用率から精神障害者が除外されていることです。一方重度障害者のダブルカウント方式は重度障害者の雇用促進に一定寄与している反面、実雇用率をわかりづらいものとさせてしまい、本来の法の主旨に照らして、その改善にむけた検討が必要です。
今後より多くの重度障害者が就労できるような施策が求められています。パソコンを使った在宅就労の普及と理解、勤務日数や勤務時間の柔軟化、専門性を発揮できるための大学教育や企業との連携なども検討されるべきです。またジョブコーチシステムや援助つき雇用に対する理解や普及も一層求められています。経済状況が厳しく労働市場の深刻化が進み、「ワークシェアリング」という言葉も飛び交っています。このことをチャンスととらえ、きちんと企業が要請する業務をこなす技能や専門性さえあれば、毎日長時間仕事をしなくてもすむ社会が到来しつつあると理解すべきです。そのような観点に立った職業リハビリテーション施策、あるいは障害者雇用施策の検討が求められています。
地域での自立生活を可能とする基盤整備
これまでは、基本的には施設の数を整備することにより、障害の重い人たちの生活問題を解決しようとするのが国の政策でした。これに対して21世紀における福祉社会の目標は、地域での自立生活であると認識しています。それは過去から現在にわたる施設が果たしてきた役割を一概に否定するものではありません。国際障害者年から20年以上の月日がたった今、ノーマライゼーションの理念を本当の意味で具体化させていかなければならないのです。誰も好んで施設や病院で暮らしている人はいないに等しいといえます。新しい障害者基本計画や障害者プランでは、施設整備にかわる様々な支援サービスの重要性をきちんと盛り込み、それらの具体的な数値目標の設定が必要です。それは20年後には現在より生活施設の数が減少可能となるような、地域社会の種々支援サービス整備の数値目標の設定です。
一方、本当に濃密な医療ケアと介護を必要としながら、制度の谷間で、放置されている障害の重い人たちの存在を見逃がすことはできません。地域での自立生活は、放置を容認するものでなければ、それを進めていくものでもありません。一人ひとりのニーズにあったサービスを可能な限り地域社会が提供できるようにしていくことです。それはケースによっては施設サービスも選択できるようにしていくことをも意味します。いずれにしても、地域での自立生活をすすめることにより、現状の施設に空きが生じることになり、施設サービスの目的や機能、対象者も必然的に変わらざるを得なくなると考えます。
「市町村障害者生活支援事業」の量的な整備等はもとより、「成年後見人制度」の質的な充実、「障害者地域権利擁護事業」の改善等は大きな課題です。「措置から契約へ」をスローガンに社会福祉基礎構造改革がすすめられていますが、契約システムの中で、とくに発言力の弱い障害者の権利をどう擁護し、しっかりしたシステムを確立させるかが重要な課題といえます。権利擁護は、障害者が地域社会で居住しているか、施設で居住しているかを問わず、きちんとしたものに整備していく必要があります。
さらに、地域での自立生活をすすめていくにあたって、住宅環境の整備を欠かすわけにはいきません。とくに公営住宅がその役割を担う必要があり、障害のある人が希望すれば入居できるよう、量的な整備を急ぐとともに、一人ひとりの障害の状況を考慮した設計も求められます。自立生活を求める多くの障害のある人たちは単身者が多く、単身者むけ住宅の整備が必要です。
介護サービスのあり方は、地域での自立生活問題の中心部分をしめます。高齢者に対する介護保険が導入され、一方、若齢の障害者に対しては支援費制度が来年度よりスタートします。現在、国は地方自治体に対して身体障害者のホームヘルプサービスについて、ホームヘルパーの派遣時間の制限を設けないように指示を出していますが、支援費制度に移行後、現状よりさらにきめこまやかに、そして必要なだけ派遣されるようにしていくことが求められます。ホームヘルパーやケアマネージャーの育成が重要になっています。また、ガイドヘルパー事業や全身性障害者介護人派遣事業は、障害の重い人たちの社会参加や社会的自立に大きく寄与しており、これらの事業の拡大や、質的な改善が求められています。いずれにしても、介護サービスを受ける人たちが、どういうかたちの介護サービスを利用するのか、自分で選択し、場合によっては様々なサービスを駆使しながら、生活できる仕組みが大切です。
介護サービスについては一定の利用費負担は必要であると考えます。その場合、利用者の負担能力とサービス内容を加味した合理的な基準が求められます。扶養義務者とくに親や兄弟の利用費負担については、障害者の独立という観点から行わないことが求められます。
高齢者に対する介護サービスは介護保険で行われていますが、介護を必要とする高齢者は高齢障害者であるという観点から、今後制度的整合性をはかっていく必要があると考えます。
精神障害者施策
本協議会は、障害種別を越えた総合的な障害者福祉法の制定を提言しています。同じ障害でありながら、身体と知的そして精神の間では施策やサービスの内容が大きく違うという矛盾を抱えています。障害種別にかかわりなく、ニーズがあればそれに対応できる施策の展開とサービス提供が重要です。
とくに精神障害者については、欠格条項の問題や措置入院制度、保護者制度の問題など、一部は解決したものもあるが、人権面で大きく不利益な立場に置かれてきました。
障害者に係る欠格条項については、63制度について見直しが行われ、その多くが終了していますが、そのほとんどに相対的欠格が残されており、当初の政府方針から大きく後退しています。根拠のない欠格条項は、人たちに誤った障害に対する認識を植え付けさせるもので、全体的な見直しが必要です。対象範囲の63制度以外にも自治体の条例などにみられるよう欠格条項と思われるものはかなりあり、それらを含めた検討作業が求められます。
また、「心神喪失者等医療観察法案」の動きも緊迫化している中、精神障害者の人権のあり方があらためて問い直されています。ひとつには、雇用、所得、住居、相談、介護等、社会環境あるいは福祉サービスの根本的な整備が求められています。精神病院の入院者の多くが、地域社会におけるサービスがないことからくる「社会的入院」であり、それを解消していくための諸サービスの整備の数値目標設定が強く求められています。
そして地域社会において気軽にかかれ、しかも充実した医療システムの確立も重要です。「精神障害者」すなわち「医療の対象者」という偏った意識を変えていくことは必要です。精神保健福祉法は改正される必要があり、とくに、「保護者制度」は精神障害者と家族の人権を著しく侵害するもので、撤廃される方向の検討が求められます。また、措置入院制度のあり方についても見直しの検討が必要です。また、精神医療の地域間格差や他の医療分野との制度的格差が厳然としてあり、とくに医師や看護師の低い配置基準を認めている「精神科特例」は廃止の方向での検討が必要です。そして他の診療科目と同様に、総合病院の中に精神科を整備していきながら、単科精神病院を減らしていくことが求められています。いずれにせよ精神科において必要な医療サービスを自己選択・自己決定のもと受けられるシステムの構築と整備が求められます。
総合的な障害者福祉法の制定をにらみながらも、精神障害者が地域社会の中であたりまえに生きていける制度の構築をめざしていくことが必要です。
医療と福祉の谷間におかれた人たちの問題
ニーズに対応した施策とサービスの必要性は、多くの障害のある人たちにとって切実な問題となっています。現行の各福祉法では包含されない「難病」の人たちや、「高次脳機能障害」などの枠組みからはみ出した人たちの医療と生活問題は深刻なものとなっています。「身体障害者手帳」などの手帳が交付されなければ、サービスの多くが受けられないという問題もあり、手帳制度の見直しも検討課題です。
そしてこれらの谷間におかれている人たちの多くが医療と福祉両方のサービスを受けなければならない状態にあるにもかかわらず、その両方から放置されている場合が少なくないことを見逃すわけにはいきません。他の障害者と同様に、ニーズに応じた各種の支援サービスが実施されるように、早急な解決がはかられる必要があります。
教育
文部科学省は「特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議」を設置し、障害関係団体や学識経験者を交えて、これからの障害児教育のあり方を議論しています。障害児教育のあり方については様々な議論があるところです。専門性の高い盲・聾・養護学校における教育にしても、地域における普通学校での教育にしても、一人ひとりのニーズや希望にあった教育が保障されるべきです。そのような観点に立ったとき、エレベーターや介助体制などハードやソフト両面の整備が求められます。専門家の育成も重要な課題となります。基本的な部分で、本人や親の学校選択権は尊重されていく必要があります。さらに、大学・大学院など高等教育における一人ひとりの障害のニーズに応じた支援システムも強く求められています。
情報・コミュニケーション
障害のある人が今日の情報化社会で暮らしていくにあたって、他の市民と同様の情報を得ることと、自らの情報を発信できることは基本的な権利です。パソコン・携帯電話などIT機器が一人ひとりの障害者の道具として活用されることが求められています。一人ひとりの障害にあったハードやソフトの開発、人的サポート体制の充実を急いでいく必要があります。また、電子投票の導入に際しては、当事者参加の検討の場をもうけ、選挙広報や手話通訳の保障、投票場のバリアフリー含め、有権者の意志と投票の秘密が守られる選挙制度づくりが重要です。
コミュニケーション問題としては、手話を言語として位置付けさせ、広く市民に普及させる必要があります。あらゆる場面で聴覚障害者などに対するコミュニケーション保障を確立していくことは重要な課題です。
バリアフリー
「ハートビル法」や「交通バリアフリー法」によって、建築物や交通機関のバリアフリーはかなり進んできています。今後これらの法律の対象範囲を拡大させ、より実効性の高いものにしていく必要があります。交通については日本のどこに行っても、他の市民と同様に不便なく交通機関を利用できるようになることを目標として、施策誘導が必要です。これらの課題については、今後事業者や自治体の責任をさらに明確化させ、違反した場合は罰則を与えることも検討する必要があります。
そして、障害を持つ当事者が建築設計の段階から、あるいは設備整備の段階から参加し、当事者自身の視点に基づいた整備をすすめていくことが大きな課題です。
補助機器・支援機器
車いすや松葉杖、補聴器など、障害者が自立生活を送るうえで、補助機器・支援機器(福祉用具)の果たす役割は大きなものがあります。これらの機器が、一人ひとりの障害に対応しより役立つものとなるよう、さまざまな器具や機械が開発され、精密度を高めていくことが求められています。これらの機器を障害者が使いこなし生活することは、自己実現の達成感という観点から格別の意味を持ちます。機器の研究開発にあたっては、障害者のニーズは何かをきちんと把握していく必要があり、当事者の参画が重要となります。また、地域に支援機器センターを充実させるなど人的支援も大切です。
補装具の交付費や修理費の補助金単価についても合理的な見直しが必要で、利用者へのサービス体制の整備等、障害者本人のための補助機器・支援機器の開発と体制の確立に向けての課題は多くあります。
国際協力
今年2002年は「アジア太平洋障害者の十年」の最終年にあたり、これを記念して「アジア太平洋障害者の十年」最終年記念フォーラムとしての国際会議が大阪府(大阪市・堺市)と北海道(札幌市)で開催されます。先般開催された国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)の総会では、日本の他、中国・韓国を含む計29カ国が共同提案国となり、更なる「十年」の延長が採択されました。アジア太平洋地域における障害のある人たちの生活状況を見るとき、戦争・飢餓・貧困などの苦しみの中に置かれている人たちが圧倒的に多く、支援や協力が重要な課題となっています。
また、国連においては「障害者権利条約」の制定にむけた取り組みが開始されています。
アジア太平洋地域の国々、そして国連加盟国などとの連携や協力関係を深め、お互いに学びあいながら、障害分野の国際的前進に努めていく必要が、日本政府及び国内の障害関係団体に求められています。
社会福祉法人 全国重症心身障害児(者)を守る会会長 北浦 雅子
地域格差の解消について
重症心身障害児(者)は、約3万5千人です。地域においては比較少数者となり残念ながら十分理解されていないため施策に格差がみられます。
今般、地方分権が推進することにより、重症心身障害児(者)が理解されず在宅のままとり残されることを懸念しております。
そうしたなかで、障害者総合福祉法制定についての意見がありますが、総合福祉法制定に当たっては、それぞれの施策の経緯、歴史を経て個別障害の特性に配慮した制度が構築されてきたことを踏まえ、少数障害児者が埋没することがないよう、また地域による格差が起こらないことを願っております。
重症心身障害児(者)の在宅支援について
(1)重症心身障害児(者)通園事業の推進
重い障害をもった人たちも、生きがいをもって日常生活を豊かに送ることができるように、障害児者の生活圏域に配慮した通園場所の設置をお願いします。
(2)ショートスティの利用施設について
重症心身障害児(者)は、医療的ケアが必要なため医療機能のある施設を対象施設として確保されたくお願いします。
重症心身障害児(者)入所施設の充実
入所施設は、医療を必要とする対象者や、在宅支援をバックアップするために欠かせないものであり、施設の適切な配置は、在宅施策を推進する上でも重要な役制を担っています。両者の連携は、地域での生活の安心を保証するものです。
医療機能を持つ障害児(者)施設に適用する医療費について
障害児(者)の特性に配慮した医療費の体系化をお願いします。
養護学校における医療的ケアの確保について
教育、福祉、医療の緊密な連携を図られたくお願いします。
肢体不自由児施設運営協議会理事 君塚 葵
肢体不自由児施設は1942年に民立でスタートし60年を経過した今日、その役割も大きく変化してきたが、一貫しているのは障害児のニーズに応じた療育による本人・家族への支援であった。この間カリエス、ポリオ、サリドマイド等を乗り越えて、我が国のリハビリテーションの創生期を担ってきた。
現在の主要テーマは脳性麻痺などの重複した中枢神経疾患にたいする、医療・療育・教育を基本とした総合的な取り組みである。さまざまな家族支援のシステムが成立しつつあるが、現場に根ざした具体的な取り組みが続けられてきた肢体不自由児施設抜きにしては考えられないのではないかというのは、第一線の児童相談所がよく把握しているところと思われる。
家族支援とくに虐待による障害について述べる前提として、肢体不自由児施設の現況について紹介する(14年3月時点の全国の内容である)。
在籍児状況 3045名
外来―月延べ11万人の様々な障害児が受診し、訓練・装具・薬物などの治療を受けている。
施設の半数以上が名称を含めてセンター化し、障害者や重症心身障害児施設の併設・通園の併設への取り組みなど新たな展開を努力してきていて、施設の6割ほどがリハビリテーション総合承認施設となって、地域の障害児リハビリテーションの核となっている。しかし、施設の主要な課題は重度重複化に対する多職種の専門スタッフの整備などにより支出に占める人件費割合の高さは以前より、施設の経営を圧迫していることである。
児童福祉法にのっとった施設における医療は政策医療であるべきである。従来この姿勢が続けられてきていたが、昨今急に後退しつつあると考えている。改めて、政策医療であるべきことを確認されたい。
肢体不自由児施設在籍の虐待児の分析
虐待の予防・対策に関する法的かつ具体的な方策が策定され整備されてきたが、全国の施設に入所している障害をもった虐待児は3312人中145人で4.4%ほどであり、重度病棟の3.1%を占めている。また社会的入院は全国的な統計はないが心身障害児総合医療療育センターでは35%ほどを占めていて、母子あるいは父の片親家庭・病気・経済的な破綻などの家庭の崩壊した重症児である。
マスコミ報道(別紙)で肢体不自由児施設での障害をもった虐待児の存在が指摘されたが、虐待に関する全国レベルの研究会においても肢体不自由児施設例は知られておらず、その統計からは省かれている。
この課題でも児童相談所の最大の頼る施設が肢体不自由児施設となっていると考える。障害児のあるゆえに素晴らしい家庭になる場合と崩壊してしまうばあいとがあり、障害児が個々人のレベルまで認知されるよう具体的な方策に充実が望まれる。
入所児童の分析は以下のとおりである。
要因として、家庭の問題では多い順に(1)経済的不安定、(2)育児負担過大、(3)夫婦不和、(4)孤立した家庭、(5)他の家族との葛藤であり、養育者の問題としては(1)性格の問題、(2)生育歴、(3)精神疾患、(4)アル中・薬物乱用 となっていた。
社団法人 日本経済団体連合会常務理事 紀陸 孝
1.国としての障害者施策の方向は、福祉から雇用へと進めることに力点をシフトすることが重要であり、障害者の自立と社会参加を進める上で障害者雇用施策の充実が大変重要である。このような中、平成14年5月7日より、改正障害者雇用促進法が施行された。今回の改正により、企業の障害者雇用に大きな影響を与える点は、特例子会社に関する認定要件緩和と除外率の縮小である。
2.特例子会社制度については、ノーマライゼーションの観点から否定的な議論が行なわれることもあったが、これまでの実施状況から、こうした心配はなくなっている。そして、特例子会社をさらに有効に活用するためには、親会社の分社化による事業のスリム化の進展、持株会社制度の発展、国際会計基準の導入等に対応することが必要となってきた。そこで、改正法では特例子会社を保有する企業が関係する子会社も含めて障害者雇用を進める場合に、企業グループでの雇用率算定を可能とすることとなったことを評価したい。
3.一方、民間企業に対する除外率制度は、「ノーマライゼーションの理念から見て問題があること、職場環境の整備等が進んでいる実態と合わなくなっていること、障害者の雇用機会を少なくし、障害者の職域を狭めるおそれがあること等から不合理となっている。」と指摘され、職場環境の整備等を更に進めつつ、今後、周知・啓発を行いながら、2年間の準備期間を置いた後、平成16年4月1日からまず10ポイント引き下げ、その後一定の期間(次の障害者基本計画の計画期間・平成15年から10年間)をかけて、段階的に除外率を引き下げ、縮小を進め、廃止を目指すこととなった。
しかし、この除外率を10ポイント引き下げた場合、現在の実雇用率(1.49%・2001年6月)を維持するためには約9000人の障害者を新たに雇用しなければならない、という試算がある。これまで展開してきた障害者雇用施策を後退させないためにも、啓発事業等により上記2年間の準備期間を効率的に活用し、企業に対する理解を求めるよう積極的な周知が必要である。
4.障害者の雇用の促進及び安定のための積極的な施策の推進として、厚生労働省が展開する「障害者雇用機会創出事業」を高く評価したい。この障害者雇用機会創出事業は、旧日経連が旧労働省から委託を受けて実施した「障害者緊急雇用安定プロジェクト」を永続的な制度として位置付けたものと理解している。「障害者緊急雇用安定プロジェクト」は全国の多くの企業から反響を頂き、障害者の雇用を促進して行く上で、大きな足跡を残したと考えている。
「障害者緊急雇用安定プロジェクト」がこのような成果を見せたのは、(1)障害者の適職を見極めてから雇用するという企業側の主体性が保障されていること、(2)申請事務が簡素化されており、事務処理が比較的スムーズに行なわれていること、(3)知的障害者や精神障害者などこれまで雇用が難しいとされていた分野でも積極的に活用されていること、(4)「職場実習・トライアル雇用」に奨励金が付加されていること、などが大きな要因と考えている。
このように企業や障害者双方に大きなメリットがある「障害者雇用機会創出事業」は、予算の制約から年度途中に上限に達し、打ち止めとなる状況が2年間継続している。上記4の通り、約9000人の新規雇用の呼び水となるよう予算の確保が喫緊の課題である。
以上
社会福祉法人 日本身体障害者団体連合会会長 児玉 明
私どもの団体では去る5月31日、第47回日本身体障害者福祉大会を徳島県で開催し、障害者施策に関する要望事項、宣言、決議等を採択しました。その中身には、新しい障害者プラン・基本計画に関するものも含まれております。新・計画については、5つほど要望として申し上げます。
以上
全国社会就労センター協議会 会長 斎藤 公生
さまざまな障害にかかる差別を禁止する法律(日本版ADA)、援護就労保障法を創設し、障害者の生活しやすい環境と、労働施策と福祉施策を統合させ平等な就労機会を保障する。
新・新長期計画においては、障害種別法律における弊害を打破することが求められる。障害の特性による提供サービス等のちがいはあっても、障害による制度間格差がおこらないような計画が必要である。
計画は、障害当事者、行政、関係者のみでつくりあげるのではなく、ひろく市民の合意が得られるような仕組みづくりが不可欠である。
平成15年度施行の支援費制度において、理念上は地域生活移行が前提であるが、基盤整備は地域生活移行を支えるほど整っていない。
よほどインセンティブをつけて抜本的な整備を行わない限り、飛躍的な基盤整備の伸びは期待できない。支援費制度移行を契機に、抜本的な見直しが可能となるような計画とすることが期待されている。
障害者は「地域に生きる生活者」であるとの視点を欠かさない計画づくりが不可欠である。
従来、障害者が可能な限り一般就労につくことが目的とされてきたが、経済構造の変化による不況で、リストラ、不安定雇用が続くなか、一般就労で障害者が安心して暮らせる状況は少なくなっている。社会就労センター(授産施設)は、「第二の雇用の場」として期待されている。
これまでの、雇用か福祉かの二者択一ではなく、「雇用+福祉」の支援の場として、社会就労センター(授産施設)を重視し、施策の充実を盛り込むこと。
地域生活を可能とする所得保障の確立が急務である。年金、雇用保険、障害者年金の財源を活用した所得保障の充実・確立が不可欠である。
社会福祉法人 日本盲人会連合会長 笹川 吉彦
1.障害者基本計画を立てる上で、介護保険制度や支援費制度をどう取り扱って行くのか政府のご見解をお示し下さい。
2.視覚障害者の場合、見えないという特性から、総合的、横断的に取り扱えない問題が多々あります。障害の特性について今後どう取り扱って行くのかお示し下さい。
熊本県知事 潮谷 義子
1 プランの中心的課題について
〜障害者の地域生活の支援:障害者ケアマネジメントの体制整備を
社会福祉基礎構造改革の進展により、障害福祉施策の中心的課題は、自己選択・自己決定をどう支援していくかということに移ってきていると思われる。その意味でも、新しい障害者基本計画における施策の体系化にあたっては、利用者を中心に置いたサービスのあり方という視点が不可欠である。
また、障害者の自立と社会参加を促進し、障害者の地域生活を支援するためには、公的サービス等の社会資源の充実は当然のこととして、障害者がこれらを有効に活用できる相談支援が必要である。
そこで、障害者本人のニーズを的確に捉え、最大限に尊重しながら、一人ひとりの生活に必要な福祉・保健・医療・教育・就労などのサービスを総合的に提供するために、個々人のケア計画を作成し実施する障害者ケアマネジメントの体制整備が求められる。
なお、障害者の地域生活を支援する障害者ケアマネジメントは、生活圏単位で受けるべきサービスであるため、その相談機能は市町村を窓口とすべきである。
2 プランに盛り込むべき新たな施策について
〜障害者の家族に対する支援:レスパイトケア施策の充実を
障害者施策は、障害者本人の自立を支援する立場から、本人に対するサービスを充実すべきことはいうまでもないが、同時に、障害者の家族が現実的に直面している社会生活上の不利に対しても社会全体で支援する必要がある。そのため、家族を障害者本人にとって最も身近な支援者として位置付けるだけでなく、障害者と同等にサービスを受けるべき当事者として、その支援施策を障害者計画に明示すべきである。
中でも障害児の居宅生活を支援するサービス(デイサービス・ショートステイ・ホームヘルプサービス)については、家族支援も大きな目的のひとつとして新たに位置付け、サービスの利用者が利用しやすい運用を図ることが望まれる。
また、学校週5日制を踏まえ、障害児の家族への支援については、より多くの新たな具体的支援策を創出する必要がある。
なお、障害児者の家族に限らず、介護にかかわる人たちのニーズには共通点が多く、レスパイトケアという視点に立てば、老人介護も子育ても同様の支援を必要としている。地域福祉の現場では、もっと横断的な取組みが求められている。
3 プランの推進方法について
〜パートナーシップの重要性
障害者福祉サービスは、障害種別や年齢等に応じたきめ細やかな配慮が求められている。また、地域の現実としては、フォーマルなサービスだけでなく、インフォーマルなサービスも含めた社会資源の総動員によるサービス量の確保が迫られている。
そういった場面において、障害者団体やNPO・ボランティアのノウハウやマンパワーを活かすことが、障害者計画の推進にとっては非常に有効であると思われる。
また、計画推進の実効性の確保といった意味では、当事者やNPOによるモニタリングといったかたちで、単に数値目標の進行管理だけでない実質的チェック機能としても有効に連携できるのではないか。
新計画においては、社会資源を総動員して障害者サービスの質も量も確保するという観点から、行政と行政以外の機関がパートナーシップを形成する仕組みについても明示することが望まれる。
4 障害者基本計画の枠組み(施策の対象者の範囲等)について
障害者基本法上、障害者基本計画は障害者の福祉に関する計画である。「障害者」とは、「身体障害、知的障害又は精神障害があるため長期にわたり日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者をいう」とされているが、LD、ADHD、高機能自閉症、アスペルガ―症候群等の取扱いについては明確でなく、実際に、障害者福祉サービスを利用できない場合も多い。
国際障害分類(ICIDH)もすでに国際生活機能分類(ICF)に改訂されるなど、障害のとらえ方も変化しており、障害者の定義も見直しの時期に来ているのではないか。その中で軽度発達障害等も包括した障害の概念を確立し、基本計画において福祉施策を用意する必要があると思われる。
東京学芸大学教授 松矢 勝宏
1.この度の「障害者の雇用の促進等に関する法律」の改正により、除外率の段階的な廃止が決定しました。平成16年度からまず一律10%下げることが予定されています。欠格条項の見直しという障害者の完全参加と人権保障の実現に向かう施策の一環として、大きな意義があります。
2.現在の障害者の実雇用率は1.49%で法定雇用率1.8%を達成していません。除外率を10%下げた場合の概算によれば、約9000人の障害者を新たに雇用しないと現在の実雇用率1.49%を維持することができないことになります。企業関係者のご協力により、是非とも、現在の実雇用率を減少させることなく、さらなる障害者の雇用促進を図ることを要望いたします。
3.そのためには、新しい基本計画に雇用促進の施策を盛り込む必要があります。第1には、現在、離職障害者の再就職を進める障害者雇用創出事業(平成14年度予算、2100人分)がありますが、この予算額を平成15年度にまず特別措置として大幅に増額させることです。この事業は、平成11年度・12年度で実施された障害者緊急雇用安定プロジェクト(旧労働省が旧日経連に委託し展開、緊プロあるいはトライヤル雇用と略称された事業)を引き継いだものです。緊プロでは、予算計上された6200人分のうち約65%強にあたる障害者の雇用(再就職)を実現しました。トライアル雇用は、求職中の障害者と企業が求める働く能力と適性のある障害者とを、よりよくマッチングすることができることを実証したわけで、優れた雇用創出の方法です。この事業をもっと強力に展開することで、新たに9000人の雇用創出を実現することが可能です。
4.また今回の法改正で、障害者就業・生活支援センター事業、職場適応援助者(ジョッブコーチ)事業が制度化されました。要望したい第2の施策は、長期計画でこれらの制度の整備・拡充の目標を数値化することです。除外率の段階的廃止で必要になる障害者の雇用創出を実現するためには、これらの制度の整備・拡充と、地域障害者職業センターの職業カウンセラー、ジョブコーチ、また就業・生活支援センターの就業支援者等の配置の拡充及び専門性の向上が求められると考えます。障害者の雇用創出は、障害者の職業領域における完全参加の実現のみならず、雇用への移行の実現により福祉予算のさらなる活用につながるという観点から、基本計画の重点施策にならなくてはなりません。
5.第3の必要な施策は、毎年1万名を超える盲・ろう・養護学校高等部卒業生のための個別移行支援計画を策定することです。そのためには、これらの学校における職業教育や進路指導のあり方に関して改善と充実が必要であり、文部科学省特別支援教育課により本年度から開始された個別移行支援計画による就業支援に関する調査研究(平成14年度、5県)について、近い将来に全国展開が可能になるよう拡充策を要望したいと考えます。
埼玉県立大学教授 丸山 一郎
わが国障害者政策の開始である「身体障害者福祉法」施行から半世紀が過ぎたが、障害者政策があらゆる障害のある人々に対して、また全ての分野に拡大してきたことを慶ぶものである。新しい計画策定に当たり、次の3つの課題に取り組むことを提案したい。
1.地域福祉施策の充実と障害種別間の格差是正・・・・法の統合を目標に
障害者福祉施策も地域福祉推進の中に展開されることになり、すべての障害のある人が住民の一人として社会参加することを実現・促進することが明確にされつつある。しかし、この半世紀障害種別に分けて行われてきた対策には、障害種別や程度さらには原因などによって、大きな相違と格差を生んでいる。このことはノーマライゼーションを進めることについての、障害のある人々や関係者のみならず住民の理解を得ることも阻害している。
援護の実施主体が市町村に移行したが、複雑多岐にわたるサービスを障害種別に異なった基準で実施することは混乱を招き、地域でのサービス提供が困難にするとともに経済的な実施も妨げている。ニードは同じでありながらも提供されるサービスに大きな格差を解消することを含め市町村のサービスを実施し易くする制度的改革が急がれる。
このためには、福祉法だけでも障害種別に3つに別れているものを統合した一つにするなどの根本的な制度改革が必要である。新たな計画ではこれを実現するための方策とスケジュールを明確に設定する必要がある。わが日本は障害種類別の福祉法をもつ唯一の国といえるが、ノーマライゼーションを進めてきた先進国の動きから大きく遅れている。
2.雇用・就労政策の改革を本計画で明確にすること
障害のある人々の就労は年々悪化し、就業率は身体障害のある人々でも30%(平成8年)と国民一般の半分にも及ばない。知的障害・精神障害のある人々の就労はこれよりはるかに悪い状態である。現在雇用されている障害者実数はおよそ18万人(常用労働者56人以上の事業所)であり、新長期計画の十年間全く増加していないといえる。25年前に義務化された法定雇用率は民間企業(現1.8%)においては達成されないのが当然となってしまっている。(ダブルカウントという操作で見せかけの雇用率を1.49%としているが、実雇用率は法定より遥かに低いものである。)
11.5万人もの障害のある人々は、職業安定所に求職登録しても就職できない状態であり、(上記雇用者数を遥かに越える)19.4万人が“福祉的就労”をしているとされている(平成8年)。福祉的就労の中心である授産施設では約7万人の障害のある人々が働いているが、平均工賃は月額2万円以下という劣悪な就労状況であり通常の雇用者とは大きくかけ離れている。福祉的就労という雇用・就労促進施策ではない日本独特のものが存在する状態は、わが国も批准した国際労働機関(ILO)の「職業リハビリテーションおよび障害者雇用に関する条約」や関連する勧告に違反しているものであり、国際的信用や協調上も問題である。(雇用か福祉かに分離されている状況は、働く分野でのノーマライゼーションが特に遅れていることであるといえる。)
職業リハビリテーション施策の内容充実も大きな課題である。たとえば重度な障害をもつ人々の職場復帰にかかる期間が欧米のものの十倍近いといわれるような状態を改善するため、企業との連携などを含む抜本的な方策を進める必要がある。
新計画においては、数値目標でもある法定雇用率の達成スケジュールを明らかにすると共に、福祉的就労といわれるものを雇用・就労施策に統合することについて取り組むことの道筋を明らかにする必要があると考える。厚生・労働が統合された厚生労働省の施策統合にも障害関係者の期待は大きい。
3.障害者分野における国際協力の一層の推進・・・国内での計画実施促進にも効果
わが国は、これまでも国連の障害者基金への拠出やODAによる援助・協力、JICAなどによる技術支援など、更には「アジア太平洋障害の十年」の提案や実施支援など、積極的な貢献をしてきているが、一層目に見える国内外に印象を与える協力が望まれている。
特に、
(1) 国連の「障害者国際権利条約」の実現にむけて、世界をリードする積極的貢献。
(2) 再び日本からの提案で延長された「アジア太平洋障害者の十年」が具体的な成果を生むための、政府各省庁の施策の実施。
(3) すべてのODAをバリアフリーなものとするなど障害者の参加促進の観点を含んで実施すること。
(4) 日本からの障害のある人を含む人材の派遣と、人材養成への協力。
など、各国の障害者対策の進展に貢献する具体策を計画に盛り込むこと。
国際協力の実施が国内での計画推進へもよい効果をもたらすことになることも留意すべきである。