第3回資料 各委員からの意見
目次
(50音順)
「新しい障害者基本計画への意見」
全国精神障害者家族会連合会常務理事 池末 亨
- 医療に関すること
精神障害者は疾病と障害を併せ持っているため、精神医療の改善なくして福祉施策の改善はありえない。したがって下記の項目について障害者基本計画の中にきちんと位置付けること。
(1)医師、看護者などの職員配置基準の格差是正
平成13年3月の医療法改正でも精神科病床の人員配置基準は医師48対1、看護者4対1となっており、一般病床との格差が残っている。
(2)社会的入院の解消
今年1月から行われている社会保障審議会障害者部会精神障害分会で72000人が条件が整えば退院可能という数字が示されている。年次目標を立てて社会的入院の解消を図ること。その際既存の精神病棟を社会復帰施設に転換するという安易な方法には反対する。
(3)精神科救急システムの確立
全ての都道府県に24時間対応可能な救急窓口を設置する。
(4)精神保健福祉士をすべての病院に配置
精神保健福祉士制度ができたにもかかわらず、配置していない病院が多く、社会復帰促進を妨げている。
- 社会復帰施設に関すること
(1)数値目標を大幅に引き上げること。
現行障害者プランの数値の10倍は必要。
(2)医療機関偏重の是正
生活訓練施設、福祉ホームの6〜7割は医療法人立で、その病院の利用者以外はほとんど利用していない。
(3)他障害者施設との格差是正
同種の身体障害者・知的障害者施設に比べ運営費が極端に少ない。
(4)精神障害者地域生活支援センターの位置付け
施設併設型をすべて廃止し、独立した運営にする。
- 地域生活支援に関すること
(1)小規模作業所
全ての小規模作業所に国庫助成金を交付する。
(2)小規模通所授産施設
他の社会復帰施設と同様に数値目標を設定する。
(3)グループホーム
運営費の大幅な増額。
(4)ホームヘルパー派遣制度
全ての市町村で実施する。
(5)ショートステイ
家族のレスパイトケア、一時避難場所としての利用も可能とする。
(6)手帳制度によるサービスの拡充
JR運賃の割引制度の実現。将来意的には三障害統一の手帳にする。
- 権利擁護に関すること
(1)成年後見制度
全ての自治体で専門窓口を設け利用支援事業を実施する。
(2)地域福祉権利擁護制度
専門員に精神福祉士の資格を持ったものを配置する。
(3)保護者制度の撤廃
家族に過重な負担を強いる保護者制度を撤廃する。
- 就労支援に関すること
(1)精神障害者を法定雇用率の対象に
今年5月の雇用促進法改正では見送りになったが、次回法改正では法定雇用率の対象にする。
(2)障害者就業・生活支援センター
地域生活支援センターと同数程度の数値目標を設定する。また、精神障害者の利用を促進するため精神保健福祉士を配置する。
(3)職場適応援助者(ジョブコーチ)
精神保健福祉士の配置。
(4)福祉的就労と一般雇用の溝を埋める
グループ就労、施設外授産の活用による就業促進などの事業の拡充。
- 所得保障
(1)傷害年金
年金額の引き上げ。無年金者の解消。
(2)生活保護制度
精神障害者が利用しやすい制度に。特に補足性の原理の緩和。
- 住居の確保
公営住宅、民間賃貸住宅に入居できるような支援策の創設。
- 三障害の統合化
(1)支援費支給制度の対象になっていないことの問題点
特にホームヘルパー派遣事業についてはまったく同じ制度でありながら、支援費支給制度の対象になっていない。
(2)障害者地域生活支援センターの統合化
特に農村部では三障害別々のセンターでは効率性に問題がある。
(3)障害者スポーツの振興
全国障害者スポーツ大会は、精神障害者は対象になっていない。
(4)明るいくらし促進事業
他の障害者に比べ、精神障害者が利用しにくい仕組みになっている。
目次に戻る
新しい「障害者基本計画」及び「障害者プラン」について
財団法人日本知的障害者福祉協会理事 雄谷 助成
新しい「障害者基本計画」及び「障害者プラン」の策定にあたり、その方向性ならびに内容にかかる、本会の要望は次のとおりであります。
- 基本的方向性
今後とも、ノーマライゼーションならびにリハビリテーションを知的障害福祉の理念とし、障害の重さ、内容にかかわらず、知的障害者の地域生活と社会参加を推進し、豊かな生活の実現を目途とする。
- 入所施設中心から地域生活中心へ
近年の知的障害福祉は、入所施設から地域生活に向けた各種施策が推進されてきたが、一方では、入所施設も増加しているという実態がある。以前より生活の場と活動の場の分離、地域生活への移行などが叫ばれてきたが、自己完結的な入所施設に依存する傾向が未だにあることは否めない。地域生活・社会参加を標榜し、それを実現するためには、明確に地域生活を中心にした具体的方向性を示すことが重要である。
- 地域における基盤整備
知的障害者が安心でき、かつ豊かな地域生活を営むためには、地域に生活の場と活動の場を確保するとともに、福祉、労働、医療、教育、年金等様々な分野が連携し、その地域生活を支えるための基盤整備、さらにはそれを支援する職員の資質向上、また職員の処遇向上を図るため、地域生活を支える職員の所得を施設職員レベルまで引き上げを図るなどの対策が早急に求められる。
- 多くの支援を必要とする知的障害者の地域生活の推進
重度・重複障害あるいは重い行動障害のある知的障害者の地域生活を実現させるためには、それら障害特性に応じた多くの面での支援が必要となり、建物・設備、援助技術、支援体制、所得保障など環境条件の整備が一層重要となる。
- 児童期の発達支援と家族支援
知的障害者にとって、児童期における育ちは、成人期を迎えてのくらしに大きな影響を与えている。児童期の適切な発達支援と家族支援により、日常生活又は社会生活における困難性を軽減し家族が見通しをたてることで、より一層、地域生活・社会参加を可能とするところから、統合理念をふまえた入所更生施設と同様な自活訓練事業の創設を図るなど、児童期への対応についても積極的な取組みが重要である。
- 施設の地域生活支援機能の強化
従前より、知的障害施設は知的障害福祉における専門的機能を背景に、利用者(入所者)を中心にサービスの提供を行ってきたが、障害特性に応じたその専門的機能を地域福祉の資源として積極的に活用し、地域で生活する知的障害者並びにその家族等への支援を図るべく、施設におけるデイサービス事業やショートステイ事業など地域生活支援機能の強化が求められる。
- 施設における生活の場または活動の場としての環境条件の整備
平成12年の基礎調査によると、知的障害者のうち入所施設を利用者は約27%となっている。これら入所施設が、訓練施設(通過施設)として位置づけされてはいるものの、利用者個々人が施設において生活を営んでいる事実を踏まえ、知的障害者がどこに居ようとも豊かな生活を実現できるよう、入所施設における居住環境改善として居室面積の拡大や個室の確保等の整備が求められる。また、今後一層その重要性が増す毎日通える日中活動の場としての通所更生施設、通所授産施設及びデイサービス事業などの通所施設においても環境条件の整備を図る必要がある。
- 知的障害者のニーズに対応した支援体制・施設体系・施設機能の見直し
ケアマネジメントの視点を基本とした支援体制が求められていくなか、地域ぐるみで個々人の特性(支援ニーズ)に対応できる仕組み・体制の構築が重要となる。従って、それら様々なニーズに対応でき、効果的にサービスが提供できるよう、早急に、現在の支援体制としての地域療育等支援事業や就業・生活支援センターなど、施設体系としては平成9年の中間報告で示された生活施設の創設など、さらに、施設機能をライフステージに沿って見直すことが肝要である。
目次に戻る
障害児者医療の現状と課題
全国肢体不自由児施設運営協議会理事 君塚 葵
- 障害児者医療体系のいっそうの確立を
障害児療育は半世紀以上の積み重ねの上に築かれてきた専門性の高い広範な内容をもった複雑なものであり、成人となってからは早期よりも二次障害を生じてきて活動の低下を余儀なくされることが多い。高齢者に多い脳卒中よりもはるかに高度な専門性が要求されるもので、それにふさわしい政策医療としての医療体系の確立が必要である。
現在、重度・重複化と多様化がつよまり、元来難病であるため多くの経験と他職種によるチームアプローチが必要である。
- 発達期の早期訓練の継続の必要性
障害児(肢体不自由児、重症心身障害児等)のリハビリテーションは早期発見・早期訓練のもと、可塑性に富んだ未熟な発達してゆく脳に集中的な訓練をおこなって、機能を作り上げてゆくもので、リハビリテーションという言葉が適切であり、脳性麻痺では訓練により8歳までは歩行可能となりうる。このように機能がプラトーに達するまでの期間は脳卒中後と大きく異なり、障害の程度に応じて大きく成長変化する。
障害児の身体は15歳までは成長発育し、この成長期に下肢の変形拘縮および脊柱側弯変形などが著しく憎悪する。この発達・性長期に側弯や変形拘縮の憎悪予防のために、訓練を中心としたさまざまな治療をおこなうことが必要不可欠である。
- 児童福祉法に位置付けされた医療施設ーー歴史的展望
わが国の肢体不自由児施設、重症心身障害児施設という施設群は、児童福祉法に基づく福祉施設であり、機能的には医療機関としての要素を多く備え、運営の基礎を保健医療に依るという極めてユニークなシステムとなっている。保健、医療、福祉の連携の必要性が強く叫ばれている昨今、このシステムの存在意義は益々大きなものになっていると考えてよい。
いかにしてこのユニークなシステムが生み出されたのであろうか。わが国における肢体不自由児施設の制度創出に大きな貢献のあった高木憲次東大名誉教授(以下敬称略)は大正7年(1998年)頃に、それまでの身体障害児に関する調査をもとに「夢の楽園ー教療所の説」を唱え、整形外科的疾患患者には医療と教育と職能を授けられるような「教療所」が必要であることを主張して居る。ここには、障害をもった子ども達に対する公共的博愛精神を基礎とし、実態調査に基づいて対策を立てるという社会医学的視点と同時に医療のみでなく、教育、職能指導、社会参加というような総合リハビリテーションの発想が含まれていた。
大正13年(1924年)に高木は国家医学雑誌に「クリュッペルハイムに就いて」の論文を発表し、ドイツにおける肢体不自由児施設の原型を示してその設置の必要性を説いて居る。概略以下の通りである。「クリュッペルの救済については整形外科が主要な責任者であるが、ただ疾患部位の治療だけをしたのでは不十分で、更に進んで教育を授け適応技能を養い、自活の道の立つようにしなければ独立市民の資格にはならない。クリュッペル救済事業には整形外科的治療、特殊教育、手工および手芸的訓練、及び職業相談が協力してその目的を達しうる」ーー中略ーー「クリュッペルハイムの設立はもちろん必要であるが、不具児は一室に閉じこめられ、兄弟の通学姿を羨みつつ、一家の厄介者として扱われ、教育もされず悲惨な境遇にあるので、これを探し出し整形外科治療を施し更に教育を授け社会的独立を与えることは国家医学界の重大な問題であると信ずる」ーー後略
また、高木は昭和9年(1934年)には第9回日本医学会総会で「整形外科の進歩とクリュッペルハイム」という講演を行い、それまでの10年の実績を発表し、さらに朝日新聞講堂で一般向けに同じ演題で講演し多くの人々に感銘を与えた。「夢の楽園ー教療所の説」を唱えられて約四半世紀の間の努力の結果が昭和17年(1942年)5月にわが国の肢体不自由児施設の第1号として東京整肢身療護園が開園する事になる。
肢体不自由児という語彙そのものも、身体に障害をもつ児童に対してその救済対策の構想をも合わせて表現するための適切な呼称として高木が新しく考えた語彙であり、それまで社会一般にあった差別的な見方をぬぐい去ると同時に、障害箇所の明確化と、外見のみでなく機能がおかされていることを表現しようとしたものであった。
東京整肢身療護園は戦火に焼かれるが、戦後の諸制度の整備の中で昭和22年(1947年)12月12日に児童福祉法が制定された。高木はその草案起草委員に委嘱され、その尽力によって児童福祉法第43条の3に「肢体不自由児施設は上肢、下肢または体幹の不自由な児童を治療するとともに、独立自活に必要な知識技術を与えることを目的とする施設とする」として肢体不自由児施設が法的、制度的に位置づけられることになった。
20世紀前半の医学が発展する中で、その最先端に位置していた高木が、一般医療では対応が困難で特別な配慮が必要な子ども達の存在を指摘し、その救済のための処遇システムを、当時まだ一般的でなかったリハビリテーションの理念をもとに、医療的機能をもった肢体不自由児施設を福祉制度の中に位置づけたのである。それも教育、福祉、就労まで視野に入れてあり、現代で言われるところの総合リハビリテーションの理念であると考えて良い。
また、高木の尽力によって児童憲章の第11条には”すべての児童は身体が不自由な場合、又は精神の機能が不十分な場合、適切な治療と教育と保護が与えられる”と謳われている。我々はこの先人の知恵と理念を再度確認し、昨今に見られるような多様なニーズを抱えた子ども達へよりよく対応できるような体制を作る必要があると考える。
- 障害児の発達期医療と肢体不自由児施設・重症心身障害児施設
(1)施設が関わっている障害児者
肢体不自由児施設が関わるのは小児整形外科的疾患の身体障害児が主であると考えられがちであるが、従来から肢体不自由児施設が扱う疾患群で主要な位置を占めているのは脳性麻痺であり、身体障害、知的障害およびその重複障害が含まれ、その重度の重複障害として重症心身障害児である。
また、脳性麻痺の早期発見・早期治療を積極的に手がけて来たことから、その周辺の身体障害、知的障害など発達途上で様々な原因によって発達に困難を来した児が、肢体不自由児施設の治療の対象になり、身体障害、知的障害、精神障害の3障害のうち自閉症などの小児の精神障害も多くの肢体不自由児施設では外来や通園療育において扱われている。これらの発達途上で障害をもつ児を総括的に発達障害児と呼称するとすれば、肢体不自由児施設が発達障害児全般に関わっているという現状である。
しかし、3障害の重度な例では、個別の専門的な対応が必要不可欠である。
(2)発達障害
この様に肢体不自由児施設では障害状態の基礎疾患となる多様な疾患を対象としているが、これらの疾患が基礎となって、発達期の児がしめす困難な課題を「発達障害」と総称される。「発達障害」を以下のように捉えることができる。
発達障害とはーー子どもの知能、運動、コミュニケーション、行動などの遅れ、偏りを含むいろいろな問題を包括した概念である。その対策には、保育、教育、リハビリテーション、医療、福祉、行政的な支援など多方面からのアプローチがなされている。
また、随伴するてんかん、聴力・視力障害、摂食嚥下機能、呼吸障害、睡眠障害、体温調節障害、種々の内部疾患など様々な合併症も難治であり、専門性が必要である。
(3)発達期の医療の基本
発達期の医療では異常児における成熟過程(生存可能な胎児から完全に成長するまで)の構造と機能の諸問題を対象にしており、その目標は
(a)全ての小児の最も望ましい身体と精神の機能を促進する
(b)身体、精神、パーソナリテイーの阻害因子を早期に診断し、効果的に治療する
(c)それを予防する手段を見いだすことである。
とされる。
発達状態を評価しなければ小児を完全に診たことにはならないし、疾患または治療によって成長・行動パターンが変化している様子をたえず評価しなければ、その治療計画は完全なものにはならない。また、家庭、近隣(社会)、学校または社会の健全さあるいは俗悪さが健康で豊かな子どもの生活の進歩を促進したり、あるいは阻害したりするということを熟慮しなければならない。
障害児の発達期の医療は、障害された未熟な脳が環境から絶えざる異常刺激を受け、異常刺激に過敏に反応して心身の二次的異常が形成されてゆくのにたいして、施設全体としての専門性にのっとったチームワーク機能によって成長期にわたって長期間に心身の発達保障・保育・学業を含めた総合的な対応がなされなければならない。
これらの発達障害児の多様なニーズに応え得ているのは、肢体不自由児施設が福祉施設であるという側面と、医療法にのっとったリハビリテーション総合承認施設の届出をしている施設が多いことでも分かるようにリハビリテーション機能を充実して来たことにある。
(4)脳の発達と損傷脳の機能回復
発達障害を理解する上での生物学的基礎は脳の発達である。運動機能といえども脳の情報処理の効果器としての頭部、四肢、体幹などによって形成される包括的システムが示す重力の場における適応状態の一つである。脳の発達における系統発生は進化の中での大脳化の過程であり、個体発生は大脳化の成熟過程で、脳の発達には一貫して環境への最良の適応、即ち「適応可能性の増大」という生物学的合目的性が貫かれて大脳化とその成熟が進んでいる。その際、 環境からの情報は環境(特に触知可能な、3次元的な、重力に制約される)との相互作用計画および実施のために組織され、解釈され、脳の反応の適応性を増強するような形で、運動機能、感覚機能、認知機能などの機能あるいは過程が相互に作用し協調する 。
人間を適応的有機体として捉えると、人間行動は生理的ニード、安全ニード、所属と愛のニード、承認のニード、自己実現のニードが有り、これらのニードが満たされたとき発達途上の児は最も良い適応状態となって発達を保障されたことになる。
近年脳科学の進歩により、脳機能回復に関して、脳損傷後のニューロン軸索からの発芽によるニューロンネットワークの再構成や適切なネットワークに最も近い軸索が強化されるメカニズムなどが解明されており、発達期の脳障害の特殊性や、療育の意義は脳科学の面からも証明することが可能となり重要性が一層見直されている。
しかし、従来、脳性麻痺を中心とした発達障害児の脳の発達や損傷脳の機能回復を促し能力を最大限に発揮させるための療育の期間や治療・訓練の量や質に関して、十分な客観的な数値が現在なお確立されているとは言い難く、今後共通の評価法を確立する中で明らかにしていく必要があった。平成11年度から平成13年度に行われた厚生省の障害保健福祉総合研究事業によって肢体不自由児施設運営協議会が脳性麻痺を中心に評価に関する共同研究を行ったが、この研究成果をもとに科学的な対応がなされ、制度の検討が行われることが望まれる。
(5)母子間係
児の発達を扱う際に、個々の児と同時にその環境として最も大切な母親の存在は重要である。子どもが全人的にみて一人前のおとなになる過程のなかで、乳児期がいちばん重要な時期で、乳児期に持つ母と子の人間関係は、こどもが人生で最初にもつものであるがゆえに、円熟した母子関係をもつことがきわめて重要とされ、タッチングやアタッチメントなどの概念でその重要性が述べられている。障害児の場合にはより緊密な母子関係が不可欠である。
発達障害児をもった母親の心理や家庭内の状態がいかなる状況に陥るかは多言を要さないと思う。核家族化が進み育児機能の低下が指摘され、家庭崩壊や虐待などが社会問題化している昨今において、発達障害児をもった母親および家族にたいする支援を医学的、社会学的、福祉的に実践する場の確立が焦眉の問題として問われている。
これらの課題を含め、発達障害のさまざまなニードに対応できるのは、小児科、小児整形外科、小児リハビリテーションや小児を扱うその他の高度専門科分野からの幅広いチームアプローチが可能で、母子入園などのシステムをもつ肢体不自由児施設がまずあげられ、重度な場合とくに当てはまると考える。
(6)小児療育の特殊性
以上、発達期の医療について述べてきたが、小児では脳卒中などの中途障害と異なり、失われた機能を回復させるのではなく新たに機能を獲得させ発達を促すという困難さがあり、かつ脳の発達期には機能・能力が向上する可能性は大であるため長期にわたる適切な治療訓練が必要となる。歩行能力に限ってみてもその獲得時期は8―10才、ケースによっては12才頃まで歩行能力向上の可能性があり、その年齢までに児の持っている能力を最大限発揮させる治療訓練が重要となる。また、最大限の歩行能力を獲得した以後も、能力を維持する適切な訓練治療が必要となる。脊柱側弯では17-18歳の成長終了時まで変形は増悪し続ける。
また、脳卒中では脳が限局性に強く障害され、回復の予測は比較的早期から可能であるが、障害児の脳障害は一部が強く障害されるのではないため、障害範囲は広範囲で種々の重複障害をもっているが、長期にわたり発達の過程で障害を軽減し機能を改善することが可能であり、脳卒中と同列に早期の回復を予測して、それ以後は慢性期とするような対処のしかたは発達途上の児には当てはまらないと考えている。
以上のごとく発達期にある小児療育は介護を中心とした高齢者の慢性期医療とは明らかに異なり、小児療育の特殊性を考えずに両者を同一に扱うことはできない。
胎児期からあるいは幼児期早期に何らかの原因で「発達の軌道」から逸脱し通常の状態からは遅れたり、偏位した発達を余儀なくされている「障害児」は程度の差は有れ、通常の検査・処置に耐え難く、適切にそれが実施されるためには「手がかかり」、かつ通常の回復過程も取りがたい。中には「発達の軌道」からさらに大きく偏位あるいは遅滞し、障害状態をさらに重度化する児もある。
しかしこれらの「障害児」が全く発達しないかと言えば、ゆるやかではあるが運動機能知的機能はよりよい適応状態に向かった機能獲得の方向に向かって進行的、発達的に変化し、医療的、福祉的援助によってさらに能力は高まって行く。これらの「障害児」に対して、生物学的、心理的、社会的環境を調整し、ともすれば「発達の軌道」から逸脱が増悪しそうな状態を可能な限りの手段を駆使して適応能力を高め、発達を保障し、完全参加に向けて育成する医療分野を我々は発達障害医療であると考えている。
- 障害児者の医療
脳性麻痺・二分脊椎・骨形成不全症・中枢神経の退行疾患などはいずれも先天性の本来の難病で、病弱であり呼吸障害などによる死亡率も大変高く多くの合併症を持つ。肢体不自由児施設ではこのような重度重複障害児を対象としていて、在宅あるいは地域の療育施設への専門的なバックアップ機能を、長い歴史の中で育んできたものである。
ライフステージに応じたリハビリテーションおよび療育内容を以下に概観する。
(1)早期発見・早期療育リハビリテーション、特に母子入園のシステム
新生児集中医療管理の進歩により救命された重度障害の乳幼児が、在宅できるように母親への障害児の子育てへの指導援助を核としたもので、このシステム無くしては、在宅に移ることはできず、徐々に退院できない重症児で占拠されてしまっている全国のNICUの病床はさらに機能しなくなると考えられる。超重症児予備群への早期よりの母子入園は不可欠である。母子入園は肢体不自由児施設では古くから行ってきたもので、重度例に対する早期介入の基本である。 2-3ヶ月間の母親と障害児が入院して、専門スタッフのチームワークによる総合的な方針確立と母親指導を通して、生命の維持のための援助が中心となっている。それらの具体的な内容としては食事の方法(食事形態・摂食の方法・姿勢管理・誤嚥予防)、呼吸の管理(直接呼吸介助・気道確保の仕方・夜間呼吸停止への対応・肺炎予防)、痙攣重積時の対応、体温調節不良への対応・消化管障害(胃食道逆流)、さらには運動発達を促進し二次障害を予防するための日常的な配慮・家庭崩壊を防ぐためなどの家族への心理的側面でのサポート等であり、これらの支援なくしては、死亡率が何十倍と大きいものが一層大きなものとなってしまうのは目に見えている。入園中に評価を繰り返し、児の状態を把握し、適切な対策を確立して行くためには、専門性と多年の経験が必要である。最近、養護学校で医療面の管理が問題となっているが、母親達は母子入園などを通して生きる力の弱い児の子育てについて早期より様々な学習を繰り返して、吸引や吸入などの医療ケアーを毎日経験する中で、自らのものとし在宅療育を可能にしている。
(2)就学まえの在宅へのバックアップとしての医療・療育
外来・通園などでのPT・OT・ST などの訓練や相談・指導を含む医療のバックアップに基づいた在宅・養護学校・保健所療育相談・巡回などにおける地域との連携(一次・二次療育施設へのバックアップ)をおこなっている。就学前の脳性麻痺児へのひとつの治療として、それまでの外来訓練だけでは歩行できない5歳前後の就学前の児童に、入院して集中訓練をした上で下肢の手術を行い、手術後集中訓練を継続して歩行可能にさせることも大きな柱となっている。この場合には長期のリハビリテーションが必要である。
(3)就学して身体の発育の盛んな時期への医療・療育
疾患の性質上運動機能の後退が多く見られ、股関節の脱臼による強い疼痛の出現・脊柱変形の増悪による座位保持の困難化、下肢変形による装具が使用できなくなることなどが専門チームや家族による対応にもかかわらず問題となる。この場合には手術で一度、長年にわたってつくられた悪い運動パターンを改編して、新たに再建し直さなければならない。パターンの異常の程度により、手術後の集中訓練期間が大きく左右され、股関節や膝関節を含んだ手術で歩行の改善を得るにはより、疼痛に弱い児、恐怖心の強い旧来のことに固執する児、理解力に欠ける児など様々であり、入院訓練に長期間を要する。退院後の装具の活用・自主トレーニングの確保もその中には含まれる。
(4)その後の就業・社会参加・自立にむけての援助
二次障害の予防への対応も含めて総合リハビリテーション的な処遇も不可欠で、早期の退行、頸髄症など種々の課題が対応を迫られている。
脳性麻痺を中心とした障害者では20歳代から機能の低下がはじまり、易疲労・疼痛・変形の進行がすすみ、就業や社会参加に困難さをおこしてきやすく、強く悪化する前に予防的な医療介入によって、合理的かつ効率的に対応をおこなうことが必要である。しかし、専門医の不足や医療体制が不十分であり、障害児施設を利用している方がおおくみられる。
(5)障害児病床
平成10年に肢体不自由児施設の施設長、事務長が一堂に会して「21世紀の療育を考える」のテーマのもとに討論を行ったが、その中で、「発達期に受けた機能障害は成長とともに変化する。生涯に亘ってその機能障害の治療・管理を継続し、能力低下、社会的不利を軽減しかつ発達障害児・者の生活の質を充実させるためには総合的かつ専門的な知識・技術が必要である。ノウハウを蓄積し、継承していく施設の存在は、今も、これからも社会の要求するところである」ことを確認した。
家族支援の一環として、重症児者のレスパイトケア(緊急一時保護)のための病床を充実してゆくことが求められている。
児童福祉法に定める療育を実践するためには発達を援助するための生活指導や学校教育などは切り放すことはできず、多様化、複雑化している個々の障害に対して発達の段階に応じたきめ細かな対応をするためにはさまざまな職種の専門性を生かしたチーム医療が必要になる。
一方では医療を包含した福祉施設であり、一方では福祉マインドで実践される医療の場という福祉、医療の両面の機能を有機的に統合し、かつ教育の要素まで兼ね備えたシステムとして医療法・児童福祉法に具現化された肢体不自由児施設・重症心身障害児施設の存在は先人の英知の賜物である。
児童福祉法に謳われているように障害児の健全育成は公的責任においてなされなければならず、施策として長い歴史の経過の中で世界に誇れる優れた体制が構築されてきたと考えて居る。最近では障害児医療・療育においては次々と新たな対応が進んできており、例えばスポ?ツや音楽を訓練に取り入れての専門的な訓練(乗馬療法、音楽療法)、あるいは心理や精神分析の応用の上に神経発達学的なアプローチが家族への指導を大きな柱として、施設の医療スタッフのマンパワーのもとに形成されてきている。
このシステムが障害児者医療の概念の下に障害児者病床をもつ発達障害児施設としてリニューアルされ各地域にいきいきと機能するように条件が整備される事が今、最も求められることと考えている。
目次に戻る
チャレンジドや高齢者が、元気と誇りをもって働ける国に
社会福祉法人プロップ・ステーション理事長 竹中 ナミ
プロップ・ステーション(略称プロップ)は、IT(情報技術)を活用してチャレンジド(challenged)の自立と社会参画、とくに就労の促進を目標に活動しています。
「チャレンジド」というのは最近の米語で、「神から挑戦という課題、あるいはチャンスを与えられた人」を意味し、障害をマイナスとのみ捉えるのでなく、障害を持つゆえに体験する様々な事象を自分自身のため、あるいは社会のためポジティブに生かして行こう、という想いを込めた呼称です。
私は、自分が重症心身障害を持つ娘を授かったことをきっかけに、この30年間多くのチャレンジドに出会い、ともに活動して来ましたが、娘が障害を持っていなければ私がこうした活動を始めることはなかったやろうな、と思うと、娘も私も「チャレンジド」といえると思います。
プロップでは、全国各地の在宅チャレンジドが、家族の介護を受けながらも、ITを活用し、「仕事人」を目指して勉強し、実力を身につけ、まだまだ少ない量ではあるものの在宅ワークに励んでいます。プロップの役割は、技術習得のセミナーを開催することと並行して、企業や行政から彼らの仕事を受注し、在宅でそれが行えるようコーディネイトする重要な部分を担っています。重度のチャレンジドが「何が出来る人か」「どれくらい出来る人か」を知らない企業や行政機関が、不安感を持たずに仕事を発注するためには、きちんとしたコーディネイト機関が介在し、その不安を取り除くことが必要です。また「チャレンジドゆえに安く使われる」ということのない、価格の打ち合わせなども重要な役割です。従って、プロップでは専従スタッフ以外に、様々な仕事のプロフェッショナルたちがボランティアとして参画し、チャレンジドの実力アップを支援し、また適切な評価を下さっています。産官政学民の広範な人たちが、それぞれの立場で、プロップの目指す方向にご協力を下さっており、大変ありがたいことだと思っています。
プロップのスローガンは「チャレンジドを納税者にできる日本」という「刺激的な」ものですが、私は「日本という国はいま、チャレンジドや高齢者の力を必要としている」という私なりの現実認識のもとに、あえてこういう「誤解を受けやすいスローガン」を掲げて活動を進めてきました。
長年、草の根で活動を展開してきたプロップですが、1998年9月、第2種社会福祉法人として厚生大臣認可を取得しました。既存の福祉観とは異なるスローガンを掲げ、なおかつコンピュータネットワークを活用するという、全く新しいタイプの活動が「社会福祉法人」として認可されたことに、時代の変化をしみじみ感じます。
高齢化と少子化が大変なスピードで同時進行している日本では、フルタイムで働ける人や残業もいとわない、という人がどんどん少なくなっていきます。そうした社会にあってなお、福祉的財源(人とお金)を維持して行ける国であるためには、「一人でも多くの人が"自分の身の丈に合った"働き方で支える」という構造に日本の社会システムが変化しないと持ちません。
「働く」あるいは「働くことで誰かの役に立ちたい」という気持ちは、人間ならではの素晴らしい感覚です。日本が、「チャレンジドや高齢者が、元気と誇りを持って働ける国」になって欲しい、と同時に私の娘のような「働く」という形で社会貢献できない人間も、尊厳を持って存在できる国にあって欲しい!
そういう国にするために、自分もプロップの活動を通じて役立ちたい、と切に思う毎日です。
プロップ・ステーションホームページ http://www.prop.or.jp
ご連絡、ご相談アドレス prop@prop.or.jp
目次に戻る
「新しい障害者基本計画」についての意見
独立行政法人国立特殊教育総合研究所理事長 細村 迪夫
平成13年1月15日に、「21世紀の特殊教育の在り方について〜一人一人のニーズに応じた特別な支援の在り方について〜(最終報告)」(21世紀の特殊教育の在り方に関する調査研究協力者会議)が公表された。
最終報告では、社会のノーマライゼーションの進展、障害の重度・重複化や多様化、教育の地方分権の推進など特殊教育をめぐる状況の変化を踏まえ、今後の特殊教育の在り方についての基本的な考え方を整理するとともに、この考え方に基づいて1就学指導の在り方の改善、2特別な教育的支援を必要とする児童生徒への対応、及び3特殊教育の改善・充実のための条件整備について検討を行い、特殊教育全般にわたる制度の見直しや施策の充実について具体的な提言をしている。
本提言を受けて、政府においては、学校教育法施行令を改正し、科学技術等の進歩等を踏まえた盲・聾・養護学校へ就学すべき障害の基準(就学基準)の見直しと、就学基準に該当する児童生徒も一定の就学条件が整っている場合に小・中学校へ就学させることを可能とする手続きの見直しにより、障害のある児童生徒一人一人のニーズに合わせた就学のための制度改正を行った。
したがって、基本的には、この最終報告において提言された考え方や今後の課題を「新しい障害者基本計画」に盛り込むことが適当であると考える。以下に揚げる事項は、最終報告の概要を示したものである。これらの事項のすべてを盛り込むか、何か追加する事項はないかなどについては、懇談会で議論していただきたい。
なお、特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議は、現在、いくつかの問題について審議しており、今後、課題等を追加する可能性もあることを断っておきたい。
- これからの特殊教育の在り方についての基本的考え方について
(1) 近年の特殊教育をめぐる状況の変化を踏まえ、これからの特殊教育は、障害のある幼児児童生徒の視点に立って一人一人のニーズを把握し、必要な支援を行うという考えに基づいて対応を図ることが必要である。
(2) 今後の特殊教育の在り方についての基本的な考え方は次のとおりである。
ア ノーマライゼーションの進展に向け、障害のある児童生徒の自立と社会参加を社会全体として、生涯にわたって支援することが必要である。
イ 教育、福祉、医療等が一体となって乳幼児期から学校卒業後まで障害のある子供及びその保護者等に対する相談及び支援を行う体制を整備することが必要である。
ウ 障害の重度・重複化や多様化を踏まえ、盲・聾・養護学校等における教育を充実するとともに、通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に積極的に対応することが必要である。
エ 児童生徒の特別な教育的ニーズを把握し、必要な教育的支援を行うため、新しい就学基準・就学手続きを踏まえて就学指導の充実を図ることが必要である。
オ 学校や地域における魅力と特色ある教育活動等を促進するため、特殊教育に関する制度を見直し、市町村や学校に対する支援を行うことが必要である。
- 相談支援体制の整備及び就学指導の充実について
(1) 乳幼児期から学校卒業後まで一貫した相談支援体制の整備
ア 市町村の教育委員会は、教育、福祉、医療等が一体となって障害のある子供及びその保護者等に対して相談や支援を行う体制を整備すること。
イ 国は、各地域において教育、福祉、医療等が一体となった相談支援体制が整備されるようその体制の下で組織される特別な相談支援チームの機能や構成員等について検討すること。
ウ 都道府県の教育委員会においては、福祉、医療等の関係部局との連携を図り、域内の市町村において相談支援体制が整備されるよう努めること。
(2) 就学指導委員会の役割の充実について
ア 市町村の教育委員会に置かれる就学指導委員会は、障害のある児童生徒の就学に当たって、特殊学級や通級による指導等の教育的な対応の内容について校長に助言したり、就学後においても、障害の状態の変化に応じて適切な教育が行われるよう就学指導のフォローアップを行う等の機能の充実を図ること。
イ 市町村の教育委員会の判断と保護者等との意見がくい違う場合、都道府県の教育委員会に置かれる就学指導委員会が客観的な立場から専門的な助言を行う等の機能を果たすよう努めること。
- 特別な教育的支援を必要とする児童生徒への対応について
(1) 障害の状態等に応じた指導の充実方策
ア 障害の重度・重複化や社会の変化に対応した指導の充実
ア) 盲・聾・養護学校は、個別の指導計画、自立活動、総合的な学習の時間の実施、長期休業中における対応などについて、地域や児童生徒の実態に応じた創意工夫した取組に努めること。
イ) 養護学校に在籍する日常的に医療的ケアが必要な児童生徒等への対応については、医療機関と連携した医療的バックアップ体制の在り方等について検討を行い、その成果を踏まえ指導の充実を図ること。
イ 学習障害(LD)、注意欠陥/多動性障害(ADHD、以下ADHDという。 )、高機能自閉症等への教育的対応
ア) 通常の学級に在籍する学習障害(LD)、ADHD、高機能自閉症等の実態を把握するため、全国的な調査を行い、その成果等を踏まえ、教育関係者や国民一般に対し幅広い理解啓発に努めること。
イ) ADHDや高機能自閉症への教育的対応については、現在行われている調査研究協力者会議の動向を踏まえ全国各地において調査研究を実施するとともに、国立特殊教育総合研究所において効果的な指導方法等について検討すること。
ウ) 現在、全都道府県で行われている学習障害(LD)の充実事業については、モデル校のみならず全ての学校における校内支援体制を整備するとともに、今後は、ADHDや高機能自閉症等を含めた、通常の学級に在籍する特別な教育的支援の必要な児童生徒等全体への支援体制を整備すること。
ウ 最新の情報技術(IT)を活用した指導の充実
ア) 障害の状態等に応じた情報機器等の研究開発を行うとともに、盲・聾・養護学校に情報ネットワーク環境を整備し、最新の情報機器の計画的な整備を図ること。
イ) 訪問教育を受けている児童生徒や入院中の児童生徒への情報通信手段による指導を積極的に推進すること。
(2) 盲・聾・養護学校、特殊学級及び通級による指導の充実
ア 地域の特殊教育のセンターとしての盲・聾・養護学校の機能の充実盲・聾・養護学校は、早期からの教育相談を実施したり、地域の小・中学校等への教材・教具等を貸し出したり、小・中学校等の教員からの相談を受けたり、盲・聾・養護学校における小・中学校等の教員の研修を実施するなど、地域の特殊教育のセンターとしての役割を果たすこと。
イ 特殊学級、通級による指導の充実
特殊学級や通級による指導における教育は学校の教職員全体で支援するとともに、専門性のある者で非常勤講師や特別非常勤講師、高齢者再任用制度による短時間勤務職員等の活用を図るように努めること。
(3) 後期中等教育機関への受入れの促進と障害のある者の生涯学習の支援
ア 各都道府県においては、高等部の整備及び配置、高等養護学校の設置促進等について検討を行い、地域の実態に応じた整備に努めること。
イ 教育委員会は、福祉関係機関等と連携して障害者の生涯にわたる学習機会の充実に努め、盲・聾・養護学校は、障害者のための生涯学習を支援する機関としての役割を果たすこと。
- 特殊教育の改善・充実のための条件整備について
(1) 盲・聾・養護学校や特殊学級等における学級編制及び教職員配置
ア 都道府県教育委員会においては、地域や学校の状況、児童生徒の実態に応じて、機動的、弾力的に教職員配置を行うこと。
イ 盲・聾・養護学校は、学級という概念にとらわれず、多様な学習指導の場を設定するなど指導形態、指導方法を工夫すること。また、専門性のある非常勤講師や高齢者再任用制度等の活用や地域の多様な人材を特別非常勤講師として活用することにより、幅広い指導スタッフを整備すること。
(2) 特殊教育関係教職員の専門性の向上
ア 特殊教育教諭免許状の保有率の向上及び今後の免許状の在り方
ア) 各都道府県等は、すべての盲・聾・養護学校の教員が特殊教育教諭免許状を保有することを目指し、具体的な改善の目標及び計画を策定し、採用、配置、研修等を通じた取組を進めること。
イ 国は、各都道府県における特殊教育教諭免許状保有率の状況を踏まえ、全国的に必要となる保有者数を把握するとともに、各都道府県教育委員会等の免許状保有率の向上のための目標と計画及び改善状況等を調査しその取組を支援すること。
ウ 研修の充実
ア) 都道府県の特殊教育センター等は、盲・聾・養護学校の教員に対する適切な研修プログラムを策定するとともに、研修事業の成果の効果的な普及活用に努めること。
イ) 都道府県の教育委員会等は、特殊学級等の経験年数やニーズに応じて計画的、体系的な研修プログラムの提供に努めること。
(3) 特殊教育を推進するための条件整備
ア 教育委員会は、施設のバリアフリー化を含め学校施設の整備充実に努めること。
イ 特殊教育に係る設備については、新学習指導要領における改善内容に対応した教材や最新の情報技術に対応した教材の整備を図ること。
(4) 国立特殊教育総合研究所の機能の充実
国立特殊教育総合研究所は、我が国の特殊教育のナショナルセンターとしての機能を高めるため、次の事項について、その充実を図ること。
ア 国の行政施策の企画立案に寄与する研究
イ 新たな課題に対応した研修
ウ 全国的な教育相談情報のネットワークの整備
エ 衛星通信ネットワークの整備など情報発信機能
オ 諸外国の研究機関等との連携、協力、交流
目次に戻る
新しい障害者基本計画に関する懇談会への意見書
「基本的な考え方」について
社団法人 全日本手をつなぐ育成会常務理事 松友 了
新しい「障害者基本計画」と「障害者プラン」についての懇談会が発足し、活発な論議を進めることができていることに敬意を表します。また、その論議によって障害者とその家族、関係者が期待できる結果が出ることを、心から願っています。その思いを込め、第1次の「意見書」として『基本的な考え方』について述べさせていただきます。
- 新しい理念に基づく根本的な提起を
新しい「計画」と「プラン」を考える時、何をもって「新しい」とするかが問われます。世紀が変わって初めてのものであり、社会福祉構造改革がスタートした後のものであります。新しい理念である「自立した市民の自己決定」が尊重され、行動や施策が根本的に見直されなければなりません。また,
「障害」の新しい概念を示されたので、これも重視しなければなりません。
- 従来の路線の延長ではなく、施策の本質的な転換を
新しい理念に基づくならば、従来の施策の量的な拡大ではなく、質的な変化と充実が考慮されなければなりません。それは、「構造改革」後の施策の転換を前提とするでしょう。その際、重要視されるべきは、障害のある本人と家族の人間としての誇り(自尊心)や人権の尊重であります。具体的には、権利保障や差別禁止を、その法の制定を含めて高らかに謳いあげることです。
- 厚生労働省のみならず横断的な施策の展開を
地域生活においては、あらゆる場面において支援が不可欠です。そしてその施策は、本来の役割(業務)の中でなされるべきです。そのために、各省庁を横断する施策の展開が大事になってきます。また、障害者のための「特別な制度」ではなく、一般国民のための「通常の制度」の中へ、配慮と支援を考慮に入れて位置付けられ、利用の可能性を図るべきであります。
- 「障害」概念と障害者への対応の根本的な見直しを
2001年に世界保健機関(WHO)で採択された「国際生活機能分類(国際障害分類改定版/ICF)」は、さらに「医療」モデルから「社会」モデルへの方向性を強めました。その考えに従い、「障害」の軽減を目的とした更生・訓練の限界を認識すべきであり、その上で対応の根本的な見直しが必要です。また、慈善や救済思想に基づく施策や対応は、否定されなければなりません。
- 障害種別を越えた施策の総合化と総合福祉法の制定を
現在の福祉法は障害種別に分かれ、障害間の格差が生じています。また、知的障害者福祉法では発症年齢の制限があり、必要な人への支援を不可能にしています。そのため、障害種別や発症や年齢を越えた総合福祉法の制定が不可欠です。それにより、狭間にある障害や重複障害への対応も可能になります。しかし、支援の場面においては、徹底した「個別」対応が求められます。
- 「特別な場」でなく「通常の場」での必要な支援を
「障害」とは「特別なニーズ」があることであり、そのために「特別な支援」が必要です。しかし、「特別な支援」は障害者のための「特別な場」ではなく、国民一般のための「通常の場」を原則とします。そして、バリアフリー化と必要な支援の用意がなされなければなりません。また、サービスも特化されたものでなく、通常なものを原則とし必要な支援が付加されるべきです。
- 古い家族(イエ)制度に基づく扶養義務制度の根本的な見直しを
産業構造の変化に基づき、わが国の家族機能は変化と低下を示しています。それゆえ、家族内扶養は限界を迎えています。特に成人期以降の対応は、集団(家族・親族)から個人へと転換されるべきであります。新しい「日本の美風」は、社会システムとしての支援(扶助)を柱にし、社会連帯の思想のもと、相互に支え合うものでなければなりません。
- 社会資源としての家族への支援制度の充実を
人にとって家族は、もっとも支えになる場であり、アジアにおける伝統は高く評価されます。しかしながら、これまでの家族(特に親)は「責任論」から責められ、「資源論」として期待されることが弱かったといえます。家族への支援制度と家族の力を高めるエンパワーメントが重要です。とくに、乳幼児期・児童期の福祉的な支援サービスは早急に充実されなければなりません。
- 地域生活が本当に実現する施策を
新しい理念では、「地域での自立した生活」が追求されます。それを実現するには、地域の中に「住む場」「働く場」「支える人」を確保することが前提になります。とくに知的障害者の場合は欧米でいわれているような、人の手による「個別支援サービス(PAS)」制度の確立が不可欠です。また、余暇活動(スポーツ・旅行・文化芸術、等)も適切な支援によって実現が可能です。
- 所得保障制度の緊急整備を
新しい福祉サービスにおいては、一定程度の自己負担を前提としています。そのために、所得を保障する制度が不可欠です。働ける人のために、より踏み込んだ雇用支援とともに、保護雇用制度の検討が求められます。しかし、雇用が困難な人のためには、障害基礎年金を大幅に増額するか、扶養義務制度の見直しによる生活保護制度の活用と整備が検討される必要があります。
- 各分野の関与による権利擁護の確立を
地域生活は、危険が一杯といえましょう。そのため、障害者の権利を守るために、権利保障法や差別禁止法の制度が不可欠です。また、福祉や教育などの専門職員(機関)だけでは守り切れません。警察官などの公的機関の職員、商工会議所などの地域の基幹的な立場の人へ、積極的な理解の促進を行う必要があります。また、司法制度における理解と支援の拡大が求められます。
- 「本人主体」の実質的な確立のための支援の整備を
契約(利用)制度は、障害者本人が契約の主体になります。それが形式的にならぬよう支援が求められます。従来は、それはすべて家族に課せられていました。家族に代わる、あるいは家族と共に支える、公的な体制が求められます。成年後見制度は整備され、積極的な利用が推進されるべきです。また、本人活動(障害者自身によるグループ活動)への積極的な支援が必要です。
- 障害者団体(本人・家族)の活動へ強力な支援を
当事者(本人・家族)の相互支援は、きわめて大きな力となります。そのため、国連も障害者団体への支援を強く提起しています。組織維持を含めた「活動」に対して、財政的な支援が検討される段階ではないでしょうか。また、海外から国際的な活動を求められていますが、この面での財政支援も重要です。さらに、中央のレベルの活動拠点の創設が緊急の課題といえます。
事務局:〒105-0003 東京都港区西新橋2-16-1全国たばこセンタービル8F
TEL.03(3431)0668 FAX.03(3578)6935 E-mail:ikuseikai@pop06.odn.ne.jp
以上
目次に戻る
リハビリテーション領域の研究開発の推進
国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所所長 山内 繁
障害に関する研究開発を効率的に推進することが求められる。しかし、その方策に関しては十分に理解されているとは言いがたい。福祉機器の研究開発を例示として示し、欧米における研究開発組織を紹介するとともに、総合的な推進体制の整備を要望する。
- 福祉機器研究開発の特質
福祉機器は身体機能、身体構造における障害を補償することに始まり、現在では日常生活から社会活動の参加を支援する機器・システムであると位置付けられる。義足のように使用者個人の身体・生活条件への適合が強く要求されるものから、マークつきのシャンプーボトルのような共用品までの広範な機器が含まれる。
福祉機器の研究開発はニーズ指向型の研究開発であり、使用者にとっての利便性の追求が最も重要である。さらに、福祉機器を医療機器と比べると判るように、個人が長期にわたって使用する性格のものであるため、個人用機器として普及できる必要がある。このことを技術開発の面より見れば、福祉機器の研究開発は下流側の研究開発、すなわち、他の分野おいて基礎付けられた基盤的技術シーズと生産インフラを活用する性格の技術開発とならざるを得ない。研究における主たる関心は、使用者にとっての利便性と人間としての尊厳を最大限に追求することにある。
ハイテクを活用した福祉機器への期待が高まっており、実際コンピュータを活用した福祉機器の進歩には目覚しいものがあり、普及も進んできた。このことから、福祉機器開発を通じたハイテク基盤技術の確立への期待が語られることがある。しかしこれは論理の逆転であり、福祉機器開発におけるハイテクは、基盤技術として有効活用することを基本とすべきである。福祉機器を契機としたハイテク開発があり得ないわけではないが、そのような研究開発で失敗に終わった例は枚挙に暇がないほどである。欧米を含めた大規模プロジェクトにおける失敗例として、サリドマイド被害者のための電動義手の開発を歴史的な事例として指摘しておきたい。
ニーズが使用者、使用環境に強く依存した福祉機器においては、一般工業製品と比べると開発、生産、流通における生産性が悪いのはやむを得ない。このようなオーファンテクノロジーは、それを必要とする使用者の日常生活、社会参加のためには不可欠であり、研究開発においても、市場規模のみに着目して障害者のニーズを無視することがあってはならない。
一方、福祉機器も商品として生産・流通せざるを得ない以上、普及のためには市場性の観点を無視することもできない。これを克服するための一つの方策としてユニバーサルデザインの概念が提案されている。しかしここでもニーズに立脚した視点に立つことが求められる。ユニバーサルデザインとオーファンテクノロジーとは、言わば車の両輪として位置付けるべきである。
- 科学技術基本計画の下における福祉機器開発
平成7年に制定された科学技術基本法に基づき、平成8年の科学技術基本計画、平成13年の(第2期)科学技術基本計画が策定され、科学技術におけるフロントランナーとしての国家的戦略として、科学技術立国を目指し、新産業創出のための基盤的技術開発が強調されるようになった。
これらを具体的に実施に移すための「科学技術に関する総合戦略」においては、福祉機器は、「製造技術分野」において革新的な技術開発を行うべき技術の例示として、「医療・福祉機器技術」の中に位置付けられている。
これらに基づいた施策においては、昨今の経済情勢を反映してか、産業化、経済活性化、科学技術システムの改革の視点が強調されている。わが国の科学技術政策がこれらの視点を根幹とする点には異論はないが、「基盤的技術」が協調され過ぎ、結果として、福祉機器の研究開発は基盤的性格が弱いとの理由によって研究開発計画の中から排除される危惧を抱いている。実際、科学技術振興調整費においては、福祉機器関連の研究開発は平成7年に創設された生活・社会基盤研究のうちの生活者ニーズに対応した研究開発として執行されてきたが、平成13年度から生活・社会基盤研究の新規募集が廃止され、福祉機器など研究開発の提案が困難となっている。
このような趨勢のなかで、今後の福祉機器研究開発が福祉機器に名を借りたハイテク研究に重点を移し、使用者不在のハイテク開発が横行することになれば、サリドマイド事件に際しての電動義手開発の失敗を繰り返す虞があろう。
以上まとめると、福祉機器の研究開発戦略は、全般的な科学技術政策の基本戦略をそのまま持ち込むのではなく、ユーザーニーズと成果の普及の観点に基づいた独自の研究開発戦略を必要としていると言ってよい。
- リハビリテーション領域の長期研究開発戦略‐‐‐欧米の現状
福祉機器に限らず、障害者のリハビリテーション領域における研究開発戦略にあたっては、欧米に学ぶべき点が多い。代表例として、EUのTIDEおよびアメリカのNIDRRについて概略を紹介する。
(1)TIDE
ヨーロッパ委員会による包括的な福祉機器研究開発計画がTIDEである。TIDEは1991年にTechnology Initiative for Disabled and Elderlyの名称で開始され、1995年からTELEMATICS for the Integration of Disabled and Elderly peopleと改称されて第4次欧州総合研究開発計画に組み込まれた。1999年からは第5次欧州総合研究開発計画の枠組みで、IST(Information Society Technologies)計画の一環として推進されている。第6次欧州総合研究開発計画は本年から開始されるが、現在引き続きIST計画の一環として具体的計画を策定中である。
1995年から始まった第4次欧州総合研究開発計画においては53の福祉機器関連研究開発プロジェクトに対して5000万ECU(6200万ドル相当)を補助している。
第5次欧州総合研究開発計画は2002年までに総額140億ユーロに上るプロジェクトであるが、ISTにはそのうち36億ユーロが割り当てられている。福祉機器関連は「市民のためのシステムとサービス」枠(総額6億4600万ユーロ)に含まれる「障害者・高齢者等特別なニーズのある人々のための研究」分野に位置付けられている。これはさらに「自立生活のためのインテリジェントシステム」として17課題に2090万ユーロ、「インテリジェント福祉機器」として15課題1780万ユーロが補助されている。
IST以外の枠組みでは、「QOLと生活の資」枠の「高齢並びに障害」分野(総額1億9000万ユーロ)があるが、こちらは主として高齢者の健康、身体機能、社会的支援システムなどが対象とされている。
2000年の秋には、それまでの55のプロジェクトの評価と総括を行い、欧州議会に報告したが、その中で、(1)様々な障害のある使用者のための福祉機器の研究開発を継続すべきである。(2)ISTおよび他の分野における合理的な福祉機器研究開発に十分な資金供与をすること。(3)これらの成果を実効あらしめ、普及を図るために、ヨーロッパ連合における社会政策における施策による補完が必要である。との勧告を行うとともに、研究開発においては、使用者の立場にたつこと、市場性の重視、革新的技術の適用、学際的アプローチ、成果の公開、長期的視野に立った施策などが必要であると指摘している。
現在、第6次欧州総合研究開発計画(2002−2006)の策定作業が進行中であり総額140億ユーロ、ISTには36億ユーロが予定されている。
(2)NIDRR
福祉機器に限らず、アメリカにおける連邦レベルでの障害に関する研究開発を統括しているのが教育省に属するNIDRR(ナイダ:National Institute on Disability and Rehabilitation Research)である。NIDRRは1999年8月に2004会計年度までの長期計画を公表した。
ここでは、従来の身体機能の障害に基づいた医学モデルによるアプローチから、環境のもとでダイナミックに活動する全人格の観点に立って障害をとらえるパラダイムへと転換すべきであるとし、障害を個人の欠損ととらえる従来の立場を離れ、障害が人格を持った個人と環境との相互作用によってもたらされるとのパラダイムに転換すべきであるとし、この立場からの研究開発計画を策定している。これは、当時検討中であった国際障害分類(ICIDH2)の議論を踏まえたものであるが、国際障害分類が国際生活機能分類(ICF)としてまとめられた現状では、ICFのパラダイムに立脚した福祉機器の研究開発計画であると理解することができる。
特に協調されているのは、多様な民族と文化を尊重しつつ、自立と雇用の促進、障害者・高齢者の日常生活の利便を目指した開発の推進である。このためのアプローチとして、オーファンテクノロジーとユニバーサルデザインがいわば車の両輪として位置付けられている。すなわち、補装具、補聴器、自助具、代替入出力機器などのオーファンテクノロジーは市場規模が小さいこと、主として中小企業によって担われていることなどに配慮した研究開発体制が必要であり、一方、建築物、情報通信機器、交通機関、消費財などにおいてはユニバーサルデザインの立場からの研究開発を推進するとしている。
NIDRRの2001年度の予算は1億4100万ドルであり、このうち研究費補助金として344のプロジェクトに1億ドルを供与している。このうち福祉機器の観点から最も重要なのは1971年から始まったリハビリテーション工学研究センターに対するものであろう。これは原則として5年契約で大学、研究機関に年間60−135万ドルの研究資金を供与し、高度なリハビリテーション工学の研究開発を行うものである。それぞれ特定の研究課題に重点的に取り組む体制をとっており、現在17のセンターが指定されている。
- 障害者リハビリテーション研究開発の推進体制の整備
3.で見たように、ヨーロッパ連合においてもアメリカにおいても、障害者リハビリテーションに関する研究開発は障害者の視点から組織されるべきであるとして、総合的な長期戦略に立った運営がなされている。これに対し、わが国においては府省ごとに独立した研究開発計画が立案されており、それらの間に十分な連携が図られているとは言いがたい。また、福祉機器のハードウェアの研究開発に注目しがちであり、その普及、有効活用のための社会システムに関する研究、障害に関する社会科学的、心理学的研究との連携もなおざりにされがちである。
このため、使用者の視点を十分に取り入れることや合理的な資源配分を行うことも困難になっている。また、新産業創生のための基盤的技術開発を重視する科学技術政策の元では利用者の視点に比べて産業の視点が重視されがちになる虞がある。これらを解決し、障害者リハビリテーションに関する研究開発を障害者の立場に立って推進するためには、何らかの一貫した体制の整備が求められる。このような体制のもとで、中・長期的な総合研究開発戦略に沿った研究開発を推進できるよう基本計画に位置付けることが重要である。
目次に戻る