障害者政策委員会 差別禁止部会(第2回)議事録

平成24年8月17日(金)
13:00~17:00
中央合同庁舎第4号館共用220会議室

【議事に使用されている資料については「議事次第」のページにまとめて掲載していますのでご参照ください。】

棟居部会長 定刻になりましたので、これより第2回「障害者政策委員会差別禁止部会」を開催させていただきます。
 差別禁止部会は傍聴希望の方に所定の手続を経て公開しております。
 また、会議の模様はインターネットを通じても幅広く情報提供いたします。
 なお、御発言に際してのお願いとして、発言を求めるときはまず挙手いただき、指名をうけた後、御自身のお名前を述べられてから可能な限りゆっくりと御発言いただくようお願いいたします。
 本日の会議は17時までを予定しております。
 それでは、東室長から委員、オブザーバー及び専門協力員の出席状況と本日の予定、資料説明をお願いいたします。

東室長 こんにちは。担当室の東です。
 今日の出欠状況でありますが、全員御出席の予定でありますけれども、若干遅れられているのかなと思っております。
 本日の議事は前回に引き続きまして、意見のとりまとめについてであります。
 まず、今日は資料が多うございますので、資料の確認からいきたいと思います。
 資料1は部会三役の原案3【はじめに】の部分でございます。
 資料2は部会三役の原案4、各論の前半でありまして【雇用、司法手続き、選挙等、公共的施設及び交通機関の利用、情報とコミュニケーション】についての原案であります。
 資料3が部会三役原案1の修正2となります。
 資料4はその修正箇所が明らかになるように、修正箇所を表示したものであります。
 資料5につきましては部会三役の原案2-1の修正です。【国等の責務】を内容とするものです。
 資料6はその修正箇所を表示したものであります。
 資料7は部会三役の原案2-2の修正1であります。これは【簡易迅速な裁判外紛争解決の仕組み】を内容とするものでありまして、修正が反映されたものです。
 資料8はそれの修正箇所が表示されたものです。
 続きまして、委員提出資料として2つあります。
 1つは太田委員提出の各則に関するJDF意見書、JDF障害者差別禁止法案であります。
 2つ目は川内委員提出の「『公共的施設及び交通機関の利用』に関する三役案への意見」といった表題が付いております。
 資料としては以上でございますので、御確認のほどよろしくお願いいたします。
 続きまして、本日の予定でありますが、15分の休憩を2回とることにしまして、3つのコーナーに分けて議論していきたいと思っています。
 第1のコーナーは75分を予定しております。まず部会三役の原案4(各論前半)につきまして資料2の雇用、司法手続き、選挙等の3つの分野につき、それぞれ25分で報告並びに質疑及び議論を行いたいと思っております。
 第2コーナーは50分ほどを予定しておりまして、今、申しました部会三役の原案4(各論前半)の中の残りの部分、公共的施設及び交通機関の利用、情報とコミュニケーションの2分野につき、それぞれ25分で報告並びに質疑及び討論を行ってまいります。
 第3コーナーは70分を予定しております。まず最初の25分で資料1に基づき部会三役原案3【はじめに】について報告並びに質疑及び議論を行います。次に15分を予定しておりまして、資料3及び資料4に基づきまして部会三役原案1の修正について報告並びに質疑及び議論を行います。続く15分で資料5及び資料6に基づき、部会三役原案2-1の修正について同様の議論を行います。最後の15分で資料7及び資料8に基づきまして、部会三役原案2-2の修正1について同じように議論を行いたいと思っています。
 以上が今日の予定であります。

棟居部会長 ありがとうございました。
 それでは、議事に入らせていただきます。第1コーナーは75分で部会三役の原案4(各論前半)について(1)を取り上げます。資料2をごらんください。資料2の中の雇用、司法手続き、選挙等の3分野について、それぞれ25分で報告並びに質疑及び議論を行います。
 資料の番号の順番と本日の議事進行の順番がいろいろ前後しておりますので、御注意ください。
 まず各論ということで、資料2の雇用から始まるものをお手元に置いてください。今、申し上げましたように雇用につきまして、最初に私の方から5分ほどで御報告をさせていただきます。
 皆さんはこの資料2の1~4ページをごらんください。私は手元に読上げ用の要約を用意しておりますので、それをかいつまんで読み上げる格好になります。ですから今後もそうですが、今、何ページのどこであるということを必ずしも適切に申し上げないと思います。しかし、この4ページの中で順番どおりにほぼいきますので、お手元の資料2でチェックをしてください。
 ということで、まず5分程度、雇用につきまして御説明を申し上げます。
 「1.はじめに」のところは、一般的な前振りですので省略をさせていただきます。
 「2.この分野において差別の禁止が求められる対象範囲」につきまして、特に強調したいのは、差別が禁止される事項には募集、採用から解雇、退職、再雇用に至るまで雇用に関わるすべての事項を含めるべきと考えるという点でございます。つまり、雇用契約が始まった後だけではなくて募集の段階、また、再雇用という段階までをカバーするという考え方であります。これは非常に大事な点であると考えております。
 2)は相手方の範囲であります。契約の相手方である事業主を差別禁止を求める相手方としてとらえると原則論として考えます。この事業主という概念と労働基準法などにおける使用者という概念は異なるわけですが、その使用者というところまで広げるかというのは検討を要するところであります。要検討というのは問題の所在だけを指摘するということであります。
 それから、今、特に問題になります労働者派遣法に基づく派遣労働者ですが、派遣元と派遣先のいずれの領域で発生した事案であるのか等については、これも詳細な検討が求められるという問題の指摘をしたいと考えております。
 3)福祉的就労ですが、福祉的就労と呼ばれるものであっても、A型事業で働く障害者は勿論ですが、B型の場合であっても実態として労働者性が認められるものも、本法の対象とすべきであると考えます。
 「3、この分野で禁止が求められる不均等待遇」ですけれども、これは先ほども特に採用に力点を置いたものを申し上げましたが、この2)で不均等待遇と労働能力につきまして、特に採用の場面で整理をする必要があるという問題の所在の指摘をしたい。
 続きまして4、で合理的配慮の話であります。これは3ページになります。その2)でございます。この点は重要と思いますが、事業主の合理的配慮義務についての公的支援と過度の負担の関係であります。障害のある労働者から合理的配慮の提供を求められた事業主が、合理的配慮に係る経済負担の調整や助成を受けた場合にも、過度の負担であることを主張できるのかどうかという論点があります。この点につきましては差別禁止の観点からの検討が必要だということで、4ページを見ていただいて一番上から2行目ですが、消極の要素になるというまとめをしております。つまり、助成を受けた場合には過度の負担である、まだ足りないという主張を事業主の側からすることは、もはやできないであろうという見立てをしておるわけであります。
 以下、内容が今日は全体に多いので端折り端折り、飛び飛びということになりますが、お許しをください。
 続きまして合理的配慮とガイドラインですが、ガイドラインにつきまして政府で策定すべきであるということですが、労働者、使用者、障害者、公益委員、いわゆる公労使に加えて障害者の参画の下で、政府において策定すべきという4者の構成によるべきであるという考え方を示しております。
 同じ4ページの下の方3)通勤支援等ですが、障害のある労働者にとって不可欠な通勤時の移動支援等につきまして、事業主のなすべき合理的配慮なのか、行政による福祉サービスなのかは、政府において引き続き検討するべきであると問題の指摘をしております。
 4)公務員ですが、これは民間の雇用関係とは異なる法理の下に立つとは言え、国家公務員または地方公務員につきましても、以上に準じた取扱いがなされるべきだという考えを示しております。
 以上が雇用につきましてのお手元の資料2の御説明でございました。5分オーバーしたと思いますけれども、お許しください。なかなかこれを5分でというのは難しいです。
 では、お願いします。どこからでもどうぞ。
 先ほど西村委員と廊下でお会いした際に、公務員についてコメントいただけないかと、勝手に夏休みの宿題を出したようなことになりましたが、10分ほどの間に何かお考えをおまとめになっていれば、お願いします。

西村委員 何点かございますけれども、今、部会長の御指摘がありました部分ですが、4ページの公務員につきましては「以上に準じた取扱いがなされるべきである」という書き方をされていますが、準じた取扱いで十分なのかという疑問がございます。
 障害者雇用促進法の障害者雇用率については、自治体は垂範すべきということも含めて、民間が定められている以上の雇用率が設定されているので、公務部門につきましては民間に対して模範となるべき扱いをすることが必要だと思います。記載内容は、「以上に準じた取扱い」というよりも、もっと垂範すべき形でやるべきであるという書き方をした方がいいと思います。
 とりあえず以上です。

棟居部会長 ありがとうございました。三役で引き取らせていただきます。
 伊藤委員、お願いします。

伊藤委員 2点、意見を述べさせていただきます。
 まず2ページ上の方の3)福祉的就労ですが、A型は勿論、B型でも実態として労働者性がある場合には、本法の対象とすべきだと書いてあります。本法というのが差別禁止法であれば、B型であっても福祉サービスを受けることにおいて差別は禁止されていなければならないのではないかと思います。
 4ページ上の方の3)合理的配慮とガイドラインのところですが、ガイドラインの持つ意味合いについて言及がありません。その他の部分で3ページの上の方の2)では、一番最後のところに「実質的な判断がされなければならないであろう」とか、4ページの一番上のところで「過度の負担であるかの判断にあたって、消極の要素になるだろう」と、判断についての考え方を示されている部分があります。ガイドラインについても、それがどういう意味や効果を持つのかがわかるように書くことが必要だと思います。
 以上です。

棟居部会長 ありがとうございました。
 各論に今日入っておるわけで、これは委員の皆さんもお気づきと思いますけれども、ある意味この差別禁止法に向けた提言あるいは立法作業に当たっての最大の難関でありまして、それはなぜかと言いますと比喩的に言えばトラのしっぽが十何本並んでいる。それを障害物レースみたいにと言うのか、踏まざるを得ないということで、結局、各省庁の所管という関所がたくさんあるわけです。ただ、これは条約を批准して国内実施だということですから、そういう縦割というのは世界に向けて全く通用しない論理ではあるんだけれども、我々は意識せざるを得ないわけです。つまり所管官庁がそれぞれ所管の法を整備していただくという、そういうことを促していく。そしてそれを運用に当たっていろんな指針や基準を示していただくという、そこは餅は餅屋で委ねるべきものが多いということで、今、伊藤委員がおっしゃいました2つの御指摘は、いずれも結局根っこは共通の問題に関わっていると思います。
 つまり、2ページの福祉的就労についてですが、これは労働者性のいかんにかかわらず、本法の対象とすべきなのは自明である。こうおっしゃったんですが、雇用というくくりの中でその所管をされているところに向けて、本法の対象ですよというメッセージを投げておるので、はっきり相手さんを書いておりませんが、特定の権限と責任をお持ちのところに呼びかけているということで雇用というくくりをしております。これは福祉なんだからと言っても雇用的な性格があれば、当然に本法の雇用に関わる部分がかかってきますよという物の言い方であります。
 2点目のガイドラインについて、もっと中身の基準あるいは意味や効果がわかるように書くべきだ。これは誠にごもっともなんですが、我々は一般論でわかっていただけるような方向性を示しながら、具体的なガイドラインは先ほど申し上げたように各所管官庁で英知を結集して練り上げていただきたい。そういう意味でいろんな意味で間接的な書き方をしてしまっております。もっと踏み込んだ方がいいとおっしゃれば、それはぎゅっとトラの尾を踏む覚悟でどんどん書いていけばいいんでしょうけれども、若干既にレスポンスをちょうだいしておりまして、一線を越えかけておるのではないかと。つまり非常に権限とか所管を気にされる部署もおありのようですので、私の所感としてはここらの書きぶりがいい線かなと思っているんですが、背中を押していただければ。

東室長 ガイドラインにつきましては、総則の部分で一定説明は申し上げていると思っています。例えば資料4の15ページを開けていただくと、6)ガイドラインの設定ということで書いております。これは合理的配慮の中での記述になっておりますけれども、合理的配慮は非常に個別性が高いということで、それぞれ一つひとつ判断していてはなかなか難しい面もある。だから一定、例えば職場なら職場でだれにでもわかるような形のものを事前につくっておくということで、だれもがわかりやすくなるのかなという視点で、ガイドラインの設定については一応書いております。
 また、合理的配慮が時代とともに変わるということも予想されますので、適宜見直していくといったことについても一応書いておりますので、これを前提にして各論的にも特にこの場面は必要だろうというところには、部会三役の方で書いておられると思います。この総則での書き方から見てももう少し足りないということであれば、検討していただくといったことになろうかなと思っています。

棟居部会長 どうもありがとうございました。
 伊藤委員、どうぞ。

伊藤委員 ガイドラインについては理解しました。福祉的就労のところを確認したいんですけれども、まさかですが、B型で労働者性が認められない人については、差別禁止法の対象外だというわけではないですよねということだけを確認したいと思います。

棟居部会長 勿論その点はおっしゃるとおりで、これはあくまで縦割り的な雇用というくくりの中でこういう書きぶりになっている。ですから、ここだけ読まれると確かにこれは不当に制約しているのではないかと誤解されるかもしれません。何かそうではないんだという修文を三役で考えさせていただければと思います。ありがとうございました。
 池原委員、お願いします。

池原委員 1つの意見と1つの質問がありますが、1つは3ページ目の合理的配慮とその不提供の部分なんですけれども、かねてから私が個人的に気にしているのは、障害者雇用促進法の分野で議論されている合理的配慮義務というのは、行政法上の義務としての位置づけが強くて、言わばその義務違反は行政処分とか行政指導の対象にはなるけれども、逆に障害のある人に合理的配慮を請求する権利があるのかというと、場合によるとそれは行政的な義務の反射的効果として一定の利益は認められるけれども、権利があるわけではないのだという説明がされることを恐れていまして、これはあくまでも我々が議論している差別禁止法は民事法レベルでの差別禁止法ですので、事業主側に合理的配慮義務があるのと同時に、逆に障害のある人の側には合理的配慮を求める請求権というものがあるという枠組みで理解していると思うんです。
 そういう意味で言うと、その辺を少し明確に区別した方がいいのではないかと思っていまして、これはある意味、むしろ明確にしない方がいいのだという考え方もあるのかもしれませんけれども、その点をはっきり認識できるようにするためであるとすれば、3ページ4の1)の1行目「事業主に合理的配慮の提供義務が発生すること」というところに、障害のある人の側には合理的配慮を請求する権利が認められて、事業主の側にはそれに対応した合理的配慮の提供義務が発生するんだというような書きぶりにした方が、行政法的なアプローチと民事法的なアプローチの違いが明確になってよいのではないかと思います。
 もう一つは質問みたいなものなんですけれども、4ページ5の2)紛争解決ですが、労働分野で1つ重要なハードルになるのは、特に採用場面での差別をどうするのかというところがあって、雇用された後においては比較的合理的配慮はしてもらいやすいけれども、採用される段階で拒否されたり適切な配慮がされないという部分について、①のシステムが職場内の相談機関等を通じての自主的解決となっていて、採用される段階でこれが機能するのか、言葉としては職場内と言われると勤めていることが前提になっているような感じがするので、紛争解決機構の中で雇われる段階、まだ正式に雇用契約が発生していない段階で採用してもらおうとする企業の職場での相談機関での救済というのは、求められるのかどうかという辺りをどう考えたらいいのかなというか、含めて考えておられるのか、むしろそれは②の既存のADRでやるということなのか、もし整理できていれば御意見をいただければと思います。

棟居部会長 ありがとうございました。
 まず1点目についてですけれども、権利性というのは条約をそのまま国内実施というときには権利論は当然ついてまいるわけで、それに対して行政の言わば客観法的な義務づけ、あるいは事業主に対する客観的な義務づけで、その反射的利益にとどまるということでは権利として認めたことにならないという非常に貴重な御指摘をいただいておるわけで、これは先ほど各省庁の関所がというか、トラの尾がとかいろんな余り適切ではない比喩かもしれませんけれども、申しておりますが、恐らく各省庁が中身だけをごらんになれば、今、既に合理的配慮をとっているとか、あるいはそれを実現する仕組みを現行法で設けているとか、そういうふうにお感じになることが多々あるんだろうと思います。
 我々が実は一番申し上げたいのは、そういう個別の話はまさに各省庁でお考えいただく。しかし、前提としては単なる客観的な義務づけとか、あるいはよき裁量権の行使という客観的なレベルの話ではなくて、まず権利論があるんだ。権利性があって、そこから事業主や行政機関等に客観的な義務が発生するんだという、そういう言わば物の考え方、発想の転換をしていただかなければいけないという、これがこの差別禁止法の場合、まず最初に打ち出すべき非常に大きなコンセプトだと思います。
 結局、例えば裁判所で裁判長が適切に訴訟指揮をされて、今までも合理的配慮がなされているケースが非常に多いんだろうと思いますけれども、それが果たして被告人の権利として裁判長が言わば義務づけられたという権利があるから、義務があるという発想でなさっているのか、それとも公正な裁判を実現するという客観的な思いだけでなさっているのかという、そこの発想の差というのが非常に各論の個別の運用のところで大きく物を言ってくるんだと思うんです。
 ですから、今おっしゃった点は恐らくこれからいろんな個別分野の話で、この委員の多くの方がここの書きぶりは弱いとか、おかしいとか、いろいろおっしゃる点に共通すると思います。ですから言わばまとめて先取り的に申し上げると、総論的なところでも権利論というのを強調して、個別のところでもそれが伝わるように修文を重ねていきますけれども、先ほど申したように何か全く異質なものを要求されているというふうに思われて拒絶されるのは、これはこれで戦略的にどうかなというのがあって、少し中和した書き方になっているという言い訳です。
 2点目ですが、採用差別について職場内の救済の仕組みは当てはまらないのではないかという、これはそのとおりだと思います。ですからADR等を我々は念頭に置いているということであります。
 東室長、どうぞ。

東室長 最初の法的な効力の問題につきましては、今日、資料で言うと資料7【簡易迅速な裁判外紛争解決の仕組み】の6ページ「第6、司法判断」の2ポツで法的効力というのが書いてあります。ここで基本的に差別禁止法上の私人間効力といいますか、それをどう考えるのかということについて一応書いてありますので、これをベースにして各論も考えていただくという形になろうかと思うんです。
 ですから、今のお話は労働分野だけで議論されておりますけれども、この総論のところも踏まえて、もう一度この総論に戻って御議論いただければと思っているところです。

棟居部会長 川内委員、お願いします。

川内委員 今、棟居部会長が御説明いただいたことで、お立場というのがわかってきましたけれども、確認ですが、これをつくって各省庁、各分担の部署がガイドラインなり施策をつくっていくというお話でしたが、それが本来のこの差別禁止法あるいは権利条約の精神に合致したものであるかどうかということについてのダブルチェックというか、何らかのこちら側のチェックシステムというのはないと理解してよろしいんでしょうか。

棟居部会長 今の点につきましては政策委員会に私としては期待したいと思っております。あそこは担当各省庁の大臣に物を申せる立場にありますので、しかるべき立場は政策委員会だと思っております。川内委員よろしいですか。
 では、遠藤オブザーバー、お願いします。

遠藤オブザーバー 経団連の遠藤と申します。ありがとうございます。
 まず先ほど請求権的な位置づけをある程度明確にした形での修正という御主張がございましたが、従来から申し上げておりますように、請求権的な位置づけで書くということについては、終始反対をさせていただきたいと思っております。それが1点目です。
 書きぶりにつきまして2点ございます。
 2ページ目から3ページ目に関して、これは採用に係るところですけれども、「人柄」という言葉が2か所出てきています。用語としては意欲、能力、適性というのが専らでございまして、余り人柄という言葉は使わないので、ここは手直しいただいた方がよいと思っております。
 3ページ目です。上から2つ目のパラグラフの中段辺りに「ただ、募集が職務内容を特定せず、いわば何でもこなせることを前提にする場合も多い」と書かれております。将来的な人材活用といったことを考えれば、職務内容を特定しない場合も多い程度であればいいのですけれども、採用するときに何でもこなせるなんていうのは企業現場から離れているということです。
 最後、これは御議論になるということで意見を申し上げます。4ページ目です。過度の負担に係るところで、公的な支援を受けた場合に「消極の要素」になると書かれております。確かに、ヒアリングの中で伺ったドイツ、フランスの事例は私も存じ上げておりますけれども、果たして消極の要素という形で断定的に書いておくことが今後の対応を考えたときにどうなるのか、むしろ私は公的な支援をどんどん入れてもらって、できるところはやっていくという形の方がむしろ政策展開の中ではいいと思っています。
 と言いますのは、求めてくる中身が複数の要望というのは当然あります。でも、助成されるのは1項目の場合もあります。そうなったときに助成をされていない、支援をされていないところについての対応をどう考えるのか等々考えていく必要があり、何かを受け入れてしまったということだけをもって消極の要素というのは行き過ぎではないかと思います。修文するとすれば一案ですが、要素の1つであるという程度の書きぶりの方が、むしろ今後の展開の中でよいのではないか。もっと議論が詰まってきて、ここまで断定的に言えるものがあれば、それはまた別です。今の段階ではそこまで行っていないと考えます。
 以上であります。

棟居部会長 貴重な御指摘ありがとうございました。
 人柄というのは確かに不適切だと思います。能力等の言葉に置き換えさせていただきます。
 また、何でもこなせるというのも採用の現場を知らないという誠にごもっともで、私の念頭には私が勤めておるような大学の事務局では、ほとんど学生さん相手の窓口業務なので、そういう意味では走り回ったりできなくても構わないのではないかという話題を職場でしたことがあるんですが、防災訓練のときなんかにグラウンドを走ってもらわないと困るんだという、年に1回のことを理由に消極的なことをおっしゃる管理職の方がいたりということがありましたので、採用のときには言わばブランクな状態で人を採りたいんだなと漠然と思っておったということで、ただ、実際にはもっと高度ないろんな専門性に着眼した採用がなされておるんでしょうし、すると何でもこなせるというのは現実離れしているということで修文させていただきます。
 3点目の、これは非常に現実的な修文案まで御提供いただいて、消極の要素になるであろうというのは断定がましいので、先ほどおっしゃったような、言わば1つ助成を受けると、ほかも含めてすべて過度の負担とは言えなくなるという、これだと現場が動かないのではないかという御懸念だろうと思います。おっしゃったことを重々考慮しながら、これは修文をというか、少なくとも今、御指摘のようなケースについては、特にここで排除する趣旨ではないというようなことがわかるように練ってみたいと思います。消極の要素になるであろうというのはかなり漠然とした言い方のつもりだったんですが、恐らく経済界の方はこの文章には非常に着目されるでしょうから、何か政府が言わば通り一遍の助成をすると、あとはすべて何も言えなくなるという硬直的過ぎるようにならないような何か工夫を文章に盛り込みたいと思います。ありがとうございました。
 続きまして、高山オブザーバー、お願いします。

高山オブザーバー 今、遠藤オブザーバーの方からお話があったので、そこは重複を避けますけれども、私も今の点、助成を受けてもそのすべてを一気に解決できるというケースばかりではありませんので、その点は表現ぶりを工夫いただきますよう、お願いしたいと思っております。
 あと、細かい点でございますが、1ページの2に「差別が禁止されるべき事項や場面」ということでいろいろと場面の表現がございますけれども、ここは均等法の書きぶりに少し合せてはどうかという御提案でございます。具体的に、「募集、採用」とございますけれども、ここを「募集及び採用の機会」。「研修」というところを、「教育訓練」。「解雇、整理解雇」と分けているところを「解雇」一本にまとめる。このように、均等法の表現ぶりに合せてはいかがでしょうか。
 1点、これは誤字だと思いますが、3ページの第2段落の下から2行目の「職務適正」は修正が必要ではないかと思っております。
 以上です。

棟居部会長 適性試験とか言うときの表現かと思いますが、検討させていただきます。最初の点も含めまして貴重な御指摘ありがとうございました。
 予定の時間を雇用については超過しております。浅倉先生、お願いします。

浅倉委員 ほとんど既に言っていただいたものがありますので、省略して1つだけ申し上げます。
 2ページの3の2)3段落目。大体ここでは職務遂行能力とか職務という言葉を使っていらっしゃいますが、ここのところだけ事業の遂行とあったり、障害者が事業所に必要な本質的労働能力とありますので、職務の遂行能力あるいは職務に必要な労働能力とか、そういうふうにしていただければと思います。
 以上です。

棟居部会長 ありがとうございました。そのように修文させていただきたいと思います。
 太田委員、どうぞ。

太田委員 遠藤オブザーバーの御意見について質問と確認でございますが、合理的配慮の請求権には御反対であるということでございますけれども、基本的には合理的配慮の請求は差別であるということについては共有していただけるんですね。

棟居部会長 ありがとうございました。
 遠藤オブザーバーの先ほど最初の点、請求権的な性格という点は認めがたいという従来からの御指摘で、その点は参考にしますとか肯定したつもりはないので、こちらも従来から権利だと言い続けておって、今、太田委員はその点を御確認されましたね。つまり権利性がないと仮に言うとしても、合理的配慮をしなければ差別になるという法的な効果は当然に出てくるはずだという御指摘で、その点も従来からそのように我々は考えてきておると思います。
 これは少しテクニカルな面も含みますので、権利だと言ってもその中身はどういうことなのか。つまり合理的配慮をしなければ差別ですよという、そこにとどまるのか、それとも独立した請求権的なものを、あれを提供しろ、これを提供しろという、そちらが主眼になってくるのかについてはもう少し練るべきところは練りたい。今、大きなテーマをこの時間オーバーのところでおっしゃっていただきましたが、ということで太田委員に関してよろしいですか。

太田委員 基本的な視点を確認したかったです。

棟居部会長 ありがとうございます。
 これも戦略ですが、この部会で権利だというのを言葉としても言っていかないと、権利論抜きだったら各省庁に任せればいいではないかと。

遠藤オブザーバー 私は権利性がないなんてことは一言も言っていなくて、作為義務として、どういうふうにしたら現場で合理的配慮が実効的に確保できるのかということを積み重ねてきたと理解しています。そういった中で今回、作為義務という形で整理をされているのであるから、私はその立場に言立って申し上げているわけであり、それを請求権的な位置づけで書きかえよう、修正しようということについては反対を申し上げただけであります。合理的配慮の不提供が差別であるということについては、何らそれを否定するものではないということだけ申し上げておきます。

棟居部会長 どうもありがとうございました。
 権利だというのが形を表すのが、司法的救済の非常にこじれた最後の局面ということですね。これは通常の雇用の場等でスムーズに制度として運用されている段階では、権利という言葉をあえて全面に出さなくても、当然に合理的配慮はガイドラインにのっとってなされていく。そこでは何らここでの食い違いはないと思います。
 ということで時間がオーバーしておるんですが、西村委員で止めさせていただくということでお願いしてよろしいですか。

西村委員 先ほど言おうと思ったんですけれども、忘れてしまったので簡潔に申し上げたいと思います。書きぶりです。
 2ページ目の下から3行目「障害という属性を採否の判断要素の組み入れることも許されることになる」という書き方については、ちょっと変えていただきたいと思います。判例に基づいての書き方なのかもしれませんけれども、差別禁止部会の意見の中でこうした表現を使うのは適切ではないと思いますので、訂正をお願いしたいということと、3ページ目の文言ですが、上から2段落目の「したがって、一般論としては」の真ん中ぐらいですが「障害があるというだけで採用拒否されたと言える場合には、不均等待遇に該当すると言わざるを得ない」という表現もいかがなものか。明らかに障害を理由で採用拒否されたのであれば、不均等待遇に該当すると書くべきと思いますので、この2つの書き方につきまして御検討していただきたいと思います。
 以上です。

棟居部会長 ありがとうございました。2点目についてはそのようにさせていただきたい。
 1点目について室長、お願いします。

東室長 最初の点は前提として、この採用の事由を全く無制約のものとしてとらえれば、こうなるということなんです。

棟居部会長 ですから、日本語としてはなってしまいかねないとか、しまうこととなるかもしれないとか、そういう「しかし」という次にスムーズにつながるような工夫が要るというのが、西村委員の御指摘と思います。修文したいと思います。
 ありがとうございました。雇用については非常に大きな問題というのは承知しておりますけれども、予定の時間を15分近くオーバーしておりますので、司法手続きに移らせていただきます。
 皆さんお手元の先ほど来の資料2の5ページ以下をごらんください。司法手続きにつきまして、これは先ほど各省庁がとか申し上げましたが、省庁にも含まれない裁判所が司法権の独立という形で、これは制度的に別の領域をなしておりますので、物を申しにくいんですが、ただ、これも先ほど申しましたように条約という観点からすれば、日本国としての条約の国内実施という点では、裁判所あるいは検察庁等もこの条約の趣旨を免れるものでは勿論ありません。そこで確認的な物言いをここでもしておきたいということであります。
 「1、はじめに」をごく簡単に申し上げますけれども、現実にさまざまの刑事手続上の権利が国民一般に付与されておるわけですが、障害者の存在というものは必ずしも想定されていないわけであります。したがいまして、権利があるはずなのに障害者には実効的にそれが与えられていないという状態が、これは全世界的に存在するだろうという指摘をまずしておるわけであります。
 そして、この対象範囲という5ページの下、3ポツのところですが、対象となる手続については、刑事手続については捜査段階から刑を受け終わるまですべてを含む。民事訴訟、行政事件訴訟等々裁判所が関わる司法手続全般が対象となるということであります。これは差別禁止法がとか、この意見書、提言がそれをすべて対象とするのかという点については、繰り返しになりますが、各省庁や場合によっては裁判所に違和感があるやもしれませんが、条約の国内実施という観点からはすべてがカバーされることを確認的に申しておるわけです。
 続きまして3の「2)差別をしてはならいなとされる相手方の範囲」という6ページの上ですけれども、これにつきましては整理が必要だろうと。ここで書いておりますように、警察官あるいは刑務所、刑務官、拘置所等々さまざまの相手方が問題となり得るので、更に整理する必要があるという指摘だけしております。
 「3)法的保護の対象」ですが、被疑者、被告人、原告、被告、受刑者のほか、条約上は証人も含まれることとなっておりますけれども、傍聴者や裁判員についてはさらなる検討が必要だという、ここでも問題の指摘をしております。
 続きまして「5、合理的配慮が求められる事項や場面」ですが、ここで逮捕の理由や弁護人選任権、黙秘権の意味について障害のある被疑者に正確に伝わるようにすべきだが、例えば視覚障害者は逮捕しようとする者が警察官なのか、令状があるのかさえ確認できないといった、具体的な立法事実の指摘をしておるつもりであります。これは担当所管庁等は立法事実がそもそもないという厳しい反論や御指摘を従来、散々浴びてきましたので、こういう場面で一般の被疑者被告人には立派な人権が保障されておるとしても、障害者との関係ではそれが実効的には保障されていないこともあるのではないかということを、あえて例示をしておるわけであります。
 以下、これはごらんいただければ場面ごとにいろいろな立法事実、例えば民事手続きという5)をごらんいただきますと、裁判所内での移動や法定へのアクセスといった、裁判所の中のつくりについても物を申すようなことまで書いておりますが、こういう言わば司法権の奥の院にまで物を申さなければいけないというのは、条約の精神を隅々にまで行き渡らせて実効性を持たせるという点で、やむを得ないと考えたからにほかなりません。
 以上が今、取り上げようとしております司法手続きについての資料の御説明でした。部会三役案の原案の御説明でした。どこからでも御意見どうぞ。

川島委員 ありがとうございます。川島です。
 総論とも関連することで質問なんですけれども、まずそもそも合理的配慮義務というのが具体的な場面で発生する契機というのは、障害者は相手方にこれこれをしてほしいという、障害者の要求があって初めて相手方に特定の作為義務が発生して、相手方は過重な負担がない限り、その要求の、もしくはそれと同等の実質的な実効性がある配慮を行わなければならず、もしも過重な負担がある場合は差別にはならない、という理解だったと思います。しかし、この5ページ目で、過重な負担を課さないものは、司法手続きの重要性にかんがみると原則として認めない方がいいのではないかということが書かれています。
 これを踏まえますと、どうしても差別禁止法の射程という問題が出てきて、まず合理的配慮を実効的に確保するためには、事前的に、つまり特定の障害者が相手方に要求する前に、裁判所なり相手方が合理的配慮を提供できるような体制を整えておくということが非常に重要になってくるということを、ここは示唆しているわけです。
 そうすると、この部会で何度も議論になってきた事前的改善義務という、つまり現状を、合理的配慮がいつでも容易に提供できるような形で、万全に整えておく義務を課した方が良いのではないか、事前的改善措置を講じる義務を課しておけば、具体の場面で、ある障害者が合理的配慮を要求したときにスムーズに配慮を提供できるのではないかという話があったと思います。ただし、事前的改善義務というのは、個別の場面で障害者が具体的な要求をしていない状況では、その義務を果たさなくても、これは差別にならないというような理解だったと思います。
 しかし、事前的改善義務を怠っていて、実際障害のある人が何らかの配慮要求をしたときに、それは過重な負担だからできません、と言った場合には差別になるというような理解で、ここのくだりを、そこまで含めて書かれているのか。その場合、この差別禁止法の射程というところで、差別禁止法は事前的改善義務というものまでを要求する内容なのか、それともほかの法律が差別禁止法を実効ならしめるために、そういう義務を要求してくるのか。そういうところをどういうふうに整理されているかということを教えていただけますと幸いです。

棟居部会長 大変難しい問題を振っていただいたと思います。つまり、この司法の場に特化した御指摘では必ずしもない御指摘で、従来何度も川島委員が提起された事前的改善義務という問題について、この部会で必ずしも全体の意見として共有されるに至らなかったわけですが、まさにこの過度の負担という言い訳というのか、エクスキューズが成り立たない場面があるのであれば、だったら現実的には事前的改善義務というものを課すことで言わば問題を未然に防いでいくということしかあり得ないという御指摘だろうと思います。
 これを正面から認めると、恐らく予算の折衝のときなんかに、かなりいろんな障害のある被疑者被告人その他裁判当事者がその場で困って、裁判所も配慮でいろいろ苦労するということを避けるために、相当立派ないろんな障害に対応できる施設を当然に予算を組んで用意しなければいけないということになり、また、それはそれで財布のひもを握っているところからクレームが来るかもしれないという、ちょっと私としてはそういう心配もしますけれども、これはですから裁判所の英知にお任せをしたいというのが本音なんですが、ここでは過度の負担という概念は司法の場では成り立たない場面があるんだということを言っておけば、それならその場であらゆることをさせられるぐらいなら、事前に何らかの措置を講じようということで頑張っていただけるのではないか。つまり結果として事前的改善を促進することになるのではないかという期待を込めて、こういう文章にしております。
 事前的改善措置がとられることが望ましいとか入れると、恐らく川島委員の趣旨にはもっとかなうことになるんだろうと思いますけれども、それも含めて三役で検討させていただきます。ありがとうございました。
 太田委員、どうぞ。

太田委員 基本的には私がこれまで申してきたことを、あるいはJDFの意見が大体網羅されているのかなと思い、基本的な部分で支持と評価していきたいと思います。
 ただ、司法について気になる動きがあります。先だっての地裁判決で障害者が求刑以上の判決を受けた。そういう状況があると司法の人たちの考えの遅れというか、そういうものをまず指摘させていただきたい。障害を理由にして求刑以上の判決を下しているという問題。
 もう一つは、障害者が逮捕れて起訴されるまでの間、拘置所内に鑑定留置をされた場合、逮捕から起訴まで22日以内にしなければならないのに、不当な拘束をされてしまうという問題。それを拒否した場合、医療観察法の対象とされてしまっているという問題など、差別的な温床がまだまだ残されているということを指摘して、そういうことを盛り込んでいただきたいと思います。

棟居部会長 ありがとうございました。
 最近、報道をにぎわしているその判決について特にお取り上げになったわけですが、判決の中身についてここで文書の形であれこれコメントは勿論できませんが、いわゆる司法修習生の教育とか、研修の中で障害者についてもっとちゃんと指導すべきであるということがどこかで伝わるべきなんですが、うまく取り入れられるかどうか検討させていただきます。
 もう予定の時間はこの司法について尽きておりますが、植木委員、どうぞ。

植木委員 植木です。全体にも関わり得るところなんですが、6ページ3)の「本法によって保護される障害者は、当事者のほか証人である場合も含むが、傍聴者や裁判員についてはなお検討を要するところである」のところに関してですが、恐らく傍聴者や裁判員が本法によって保護されないということはないと思うので、これは前段部分での伊藤委員の問題提起もそうですが、「本法によって」という書きぶりは、各論部分では「本章」とか「本節」という書き方に整理していくことがあり得ると思います。
 その上で傍聴者については、恐らくは公共的施設の利用者として構造上のアクセスや情報アクセスが保障されることになると思うので、それは書いてしまってもいいのではないかという気がします。
 また、裁判員が障害を理由にして裁判員から排除されるということも恐らくあってはならないことだと思いますので、そこも検討の余地なくここに書いてしまってもいいのではないかと私は思いました。
 以上です。

棟居部会長 ありがとうございました。
 本法によってというのが言い過ぎであるというのは誠にごもっともであります。傍聴者や裁判員につきましては、この裁判所あるいは裁判長の職権の問題、裁量の問題という、すべては適正、公正な裁判を行うための1つの手段として、よき裁量権の行使に委ねられているという理解の下に、あえて抵抗の強い原理論といいますか、差別禁止法の射程を及ぼすことを文章上避けている。
 ただ、これは従来の司法の例えば法廷の裁判などでも傍聴のメモをとるのが権利だとは認めなくて、しかし裁判長の適切な裁量を行使すべきであったという裁判所の考え方の流れにも即しつつ、しかし、すべての領域に差別禁止の考えが及ぶべきであるというのは誠にそのとおりですので、なお検討を要するではなくして、もう少し肯定的なニュアンスにできないか、修文させていただきたいと思います。
 では、以上でこの司法につきましてここで切らせていただきまして、第1コーナーはもう一つございます。選挙権でございます。この点につきましても最初に私から5分程度で報告をさせていただきまして、その後、20分程度の時間で質疑、議論を行いたいと思います。
 なお、ここで選挙権と今、申しましたが、お手元の資料にございますように、タイトルとしては政治参加(選挙等)ということであります。いわゆる選挙そのものだけではなくて、それに関連するより広く政治参加一般をここで取り上げております。
 9ページ2、の差別の禁止が求められる対象範囲でございますけれども、これは選挙権や被選挙権に関わる資格、選挙に関する公的機関の情報提供、政見放送、投票方法、投票所の物的人的支援等、さまざまの事柄が問題となるということであります。
 2)差別をしてはならないとされる団体や個人の範囲。これも選挙管理委員会を並べております。そのほか関係機関がその相手方となるという少しぼかした言い方にしておりますけれども、政治参加一般に関わる各部署が相手方となるということであります。
 「3、この分野で禁止が求められる不均等待遇」ですが、選挙権や被選挙権の欠格事由に成年被後見人という成年後見の制度がございますけれども、これは障害及び障害に関連する事由を理由とする不均等待遇に該当する。ただ、正当化事由について検討する必要があるわけでして、この点につきまして現在訴訟が起こされておりますので、これらの動向を見て判断をする必要があろうという事実の確認をしております。
 9ページの下から次のページにかけての「4、合理的配慮及びその不提供を正当化する事由」の「1)合理的配慮について」ですが、まず政見放送における字幕や手話は多くの選挙で行われるようになってきまたけれども、なお残された課題も多々あるところであります。点字及び音声による選挙公報等の発行は不十分である。あるいは選挙はがき等に漢字が使われており、知的障害のある人等には意味がわからない。あるいは投票所まで、または投票所内の移動や情報に係るアクセスが困難である。入院・入所中の障害者の投票の機会が不十分である等のバリアがあるとの指摘がなされている。こういう情報提供、事実の確認をここでいたしておるわけであります。
 これもそんなの当然百も承知だと我々としては考えるところなんですけれども、立法事実という大きな言葉の壁がございまして、これは既にある制度の運用面で適切な配慮を既に行っておるし、また、今後もしていけばおのずと解決する問題。あえて差別禁止法の射程を及ぼす必要がないという反応を示される関係機関もないわけではないことから、あえてこういう事実が多々あるのではないかという、従来我々が収集した事実をここに並べておるということであります。
 以上を踏まえますと、以下のような合理的配慮が必要となるのではないかという考え方を示しておるのが、10ページの①投票の機会以下でございます。
 まず政見放送における手話通訳・字幕の付与は当然必要である。
 b)選挙情報の提供。点字やテキスト版、音声テープ版等の整備。わかりやすい表現を工夫する。振り仮名を付すといった知的障害者を主に念頭に置いたわかりやすさ。
 更にc)投票所のバリアフリーということですが、段差の解消、車いす利用者が記入できる机の配置、視覚障害者のための点字板または照明具の設置といった合理的配慮が必要である。
 d)投票方法。知的障害者や発達障害者等にわかりやすい投票用紙の様式が必要であろう。代理による投票や自宅での投票等、障害特性に応じた適切な投票方法の整備及びそれを利用するための手続の簡易化等の配慮が必要であろう。代理による投票の際のプライバシーへの配慮が必要だろうといった、これも一般的な課題の所在を述べているところであります。
 ②入院・入所中の投票の機会。ごらんいただければ一目瞭然のことを書いております。投票所への移動の支援、出張による投票、その他投票の機会を実効的に確保するためのさまざまな配慮が必要であるということであります。
 ③合理的の不提供を正当化する事由。これも先ほど司法のところで川島委員御指摘のところで出てまいった事柄ですけれども、そもそも民主制の根幹をなす選挙等の政治参加の分野におきましては、過度の負担という合理的配慮をしないことの正当化は安易に許されてしかるべきではない。基本的にそうした考え方はとれないということをここで指摘されております。
 5、その他の留意事項というところですが、これは11ページになりますけれども、これも1)政治参加、4)政治活動による情報の提供といったこと皆、2)も3)も当然のことを書いておるんですけれども、特に1)、4)の最後をごらんいただきますと、各党各会派における真摯な議論が求められるというように、これは政党等のなさることでこちらが踏み込むことをやはり遠慮しておるんですが、しかし真摯な議論が必要だと。この最高裁の判例でも、政党につきましては議会制民主主義の重要な要素であるといったことを述べておりますので、単なる任意の結社であるということで逃げるのではなくて、当然政党としても真摯に前向きに政治参加のためのさまざまな配慮をお願いしたいということであります。
 2)、3)につきましては手話通訳、字幕の付与、介助体制ということで、特にそれ以上中身に今、触れることはいたしません。
 以上が選挙等の政治参加についての、そして、この第1コーナー最後のテーマについての私からの報告でありました。
 では、どこからでもどうぞ。

太田委員 政治参加は私たちにとって重要な項目だと認識しています。
 それで今、成年後見人の選挙権の問題のことや、政党の問題についても触れていただいて、とてもありがたく思っております。
 更に申し上げるならば、政策決定過程の参加権ということをきちんとどこかに盛り込めないかということで、例えば障害分野で言えば精神、知的、身体というように大雑把にはそんなグループがあるわけですが、その問題を話している行政審議会に当事者が入れなくて、関係団体が入れたり、家族団体だけが入っていて、それが当事者の意見になることがまま起きることがあります。そういうことがないように、自分たちに関わる政策については、強い権利を保たれたいということをどこかでうたっていただきたいと思います。
 また、政党についても今、御配慮いただきましたが、きちんと差別禁止法の対象の団体であることを願わくばしていただけると、ありがたいなと思います。
 以上です。

棟居部会長 ありがとうございました。
 最初に御指摘になった点は、資料2の10ページの一番下「③政策決定過程への参画の機会」というところで、国や地方公共団体が実施しているパブリックコメントをアクセスしやすいものにする。また、政策に関する公聴会での情報保障を行う等の配慮と述べておるんですが、例えば委員会の委員に障害者が選出されるということも、政治参加としてここに含むべきであるという御指摘だったと思います。
 この点について委員会の委員という、皆さん委員になっていただいているんだけれども、これは客観的な情報収集をし、国民各層の意見を、更には専門的な知見を反映して、よき政策をつくっていくというあくまでいわゆる上から目線で皆さん選ばれておって、権利としてここにおられる人は一人もいないと私は思います。適切だからおられるということなので、委員の選び方に権利論を持ち込むと、多分また非常に話がややこしくなるかもしれない。ただ、例えば議員という選挙で選ばれる被選挙権は当然選挙権と表裏一体です。そういう意味で選挙権を行使するときの障害者の権利ばかりを言って、選挙で選ばれる方を無視するというのはおかしいわけです。
 委員会の委員になるというのも、言わば国会議員として政策決定に加わっていくというのに少し似た面があるとすると、被選挙権の類推、アナロジーとして障害者に一定の参加の資格とか権利というものが出てくるのではないか。勿論、障害者にかかわらず女性とかもすべていわゆるマイノリティと呼ばれる人たちに、そういう論点が出てくるのではないかというのは御指摘のとおりで、ちょっと今、即答しかねますが、三役で引き取らせていただいて修文等可能か検討させていただきます。ありがとうございました。
 西村委員、どうぞ。

西村委員 西村です。ありがとうございます。
 これは意見というか質問ですけれども、政治参加、選挙権につきましては11ページの一番上段で、合理的配慮の不提供に関する視点が明確に書かれています。これは全くそのとおりだと思うんですが、質問はその前のページの9ページなんですけれども、3で不均等待遇の禁止といったところでの、いわゆる先ほども説明がありました成年後見制による制約という問題が裁判で争われていますが、ここの段落の中で一番最後に、これらの訴訟の動向を見て判断される必要があると記載されてます。私たちが今、検討している差別禁止法は、来年の通常国会に上げるスケジュールが用意されていると思いますが、この訴訟は場合によっては高裁、最高裁といったところに行くと思っていますが、そうした中でこの訴訟の動向を見て判断されるという記載につきまして、どういったことを今、考慮されているのか質問したいと思います。
 以上です。

棟居部会長 ありがとうございました。
 これも腰の引けた言い方で、要するに裁判所マターである。現に裁判が進行中だという書き方をしていますけれども、これが判例として早期に最高裁の判決が下されれば、それはそれで言わば金科玉条としてこちらは物を申しませんというニュアンスがないわけではない。正直なところ。これはすべて先ほど申し上げた餅は餅屋ということで、特に裁判や司法については基本的には相手さんに任せるというスタンスが出てしまっているのですが、こうやって現に進行中であるという、そして動向を見て判断するというふうに時間の要素を入れてしまうと、西村委員が御指摘のようにどのタイミングでこちらとしての態度決定をするんだ、あるいは間に合わないのではないかという御質問は当然であります。表現等も含めてこれも今、両方の顔を見てもよくわからないので、では、どうぞ。

大谷委員 関連で、私もそこはとても気になるんですけれども、きっと裁判の方は裁判で、これは立法に任せるべきだという感じで、こういう問題はお互いにボールを投げ合うことが多いんだと思うんです。
 それで、私はやはりこの委員会としてそれなりの見解は出すべきだと思って、少なくとも「動向を見て判断される必要がある」という一文に関しては削除していただきたいなと強く思っております。

棟居部会長 削除はします。

大谷委員 少なくとも一律に排除しているんです。だからほとんど欠格事由のような規定になっておりますから、少なくとも判断の方向性として一律に選挙権を奪っているのは問題であるとか、何らかの方向性だけは示してほしいなと思っております。
 以上です。

棟居部会長 御指摘の点を踏まえて修文させていただきます。ありがとうございました。
 時間はもう尽きておりますが、よろしいでしょうか。

竹下副部会長 原案をつくっているときに気付かなかったんですけれども、2点気になりまして。1つは投票方法の点についての平等性の問題です。
 現在、最高裁、裁判官、国民審査の方法において、皆さん御存じのように対象となる最高裁判事の氏名が印刷されていて、罷免を可とする場合にだけ×を付けるわけです。しかし、視覚障害者の場合には白紙が提供されて、それに対象となる裁判官を書き込んで×と書かなければいけないのです。非常に時間もかかるし対応が難しいし、もっとつまらないところで言うと、時間がかかっていればだれかの罷免を可としているんだということがもろわかるわけです。非常にその点で昔から問題になっています。そういう意味では投票方法においての配慮は、ここで加える必要があるのかもしれません。これが1点目。
 もう一点は、選挙活動における配慮の点であります。これは立法事実としては和歌山県における言語障害者の選挙活動において、公選法違反とされた事件がありまして、それは言語障害者が自らの主張を言葉ではできないために、文字を用いた。そのことが文書違反として有罪になったという事例があります。その点で選挙活動における配慮というものをどうするかを少し検討する必要があるかなと思いました。
 以上です。

棟居部会長 竹下副部会長にその修文案を是非練っていただいて、早急に改善をしたいと思います。
 ありがとうございました。それでは、第1コーナーをここで切らせていただきまして、以上で第1コーナーを終了といたします。
 今、25分より少し前ですが、25分としまして15分間の休憩をとらせていただきます。再開は14時40分になります。

(休憩)

棟居部会長 再開します。第2コーナーは50分で部会三役の原案4(各論前半)その2です。資料2の残りの公共的施設及び交通機関の利用、情報とコミュニケーションの2分野につきまして、それぞれ25分で報告並びに質疑及び議論を行いたいと思います。
 なお、冒頭というかこの流れから外れた話で、しかもこれはけしからんとおっしゃれば引っ込める話ですけれども、今日は今、永野委員が中座されていますが、基本的にフルメンバーそろっているということで、ちょうどお盆時で本来お忙しい別の用務、業務等が全部ない中で、逆にこちらに来ていただいているということだろうと思います。大変ありがたく存じます。
 ということで写真を撮りたいという小学生のようなことを考えまして、第2コーナーの途中で自分は忙しいんだということでお出になる人はおられますか。では第2コーナーの最後までいていただいて、永野委員はそれまでにお戻りになるようですので、第2コーナーが終わった後、勿論、休憩中ということで委員会中にそういうよけいなことはできませんが、休憩時間にすぐ散り散りになってしまわれずに、こちら側にお集まりいただいて、何分間か御辛抱いただけますと非常にありがたい。マラソンで言うと一番しんどい35kmか38kmあるいは40kmか、とにかく来るところまで来ております。ということで今、私を含め全員が無事な間にひとつ写真を撮りたいということの御提案で、もし御異議がなければ後ほどお伝えしますので、御協力をお願いします。
 それでは、第2コーナーの中身に入りまして、公共的施設及び交通機関の利用、情報とコミュニケーションということで、まず先ほどに続きまして資料2の12ページ「第4、公共的施設及び交通機関の利用」をごらんください。
 ここでは「1、はじめに」につきましては一般論を書いておりますので、お目通しをいただくということにしまして、「2、この分野において差別の禁止が求められる対象範囲」で、これは先ほども話題に出てまいりましたが、まず差別が禁止されるべき事項や場面という1)ですが、a)公共的施設でございます。公共的施設の利用において差別禁止の対象となる事項としては、施設利用契約の締結、利用の許諾、利用に必要な手続や条件の付加、施設内やその敷地内における移動や施設に附属する設備等の利用、施設利用に伴う情報の提供、施設利用に伴う役務の提供などに関する事項も含まれる。ですから、単に公共的施設の申し込みの段階で障害者だから排除されるということが許されない。これは当然ですが、それにとどまらず、実質的にその施設を利用できるような物理的条件を含むさまざまの周辺的な役務の提供も含むんだということを、ここで述べております。
 b)交通機関ですが、これは散々この委員会でも議論として出てまいった点ですが、ですからもっとたくさん書くことが本来はあるとも思いますけれども、ここでは交通機関の利用において差別禁止の対象となる事項としては、運送契約の締結、運送に必要な手続や条件の付加、交通施設内やその施設内における移動、施設に附属する設備(例えば券売機、改札、トイレ)等の利用、交通機関の運行に伴う情報の提供、交通機関の提供に伴う役務の提供などに関する事項も含まれるということで、ここも言うまでもなく単に運送契約の締結上、排除されないという余りにも当たり前な事柄にとどまるのではなくして、実際に交通機関を利用できるようなさまざまの施設等を含む、そういう広い意味での役務の提供すべてを含むんだということを述べております。
 「2)対象物と差別をしてはならないとされる相手方の範囲」ですが、ここではバリアフリー法では不特定かつ多数といった表現が用いられておるところですが、この2)の最初の方「不特定または多数の者の利用に供される建物、施設、設備」であれば足りるというふうに、意識的に範囲を広げる。不特定または多数。つまり不特定であれば少数でも構わない、あるいは多数であれば特定されておっても構わないというふうに、対象とされる相手方の範囲を広くとるための書き方にしています。
 今、述べましたバリアフリー法に関連してですが、3)国のバリアフリー施策とどう関係するのかということですけれども、これは14ページになります。この住み分けといいますか、両者の関係づけというのはかなり実際には気になるところなんですが、ここでの位置づけとしましてはいわゆる車の両輪という言い方をしておるんですけれども「国のバリアフリー施策と本法による差別禁止は、障害者の社会参加を確保するための両輪である」という言い方をして、相携わって初めて障害者の社会参加が十分に実現されるという考えであります。
 ですから、バリアフリー施策は勿論重要なわけでありますが、バリアフリー基準だけで障害者の持つ障害の多様性あるいは個別の状況に合った合理的な配慮といったものが、バリアフリー基準という一律の基準だけで当然満たされるとは一般的には考えられないわけでありまして、障害の持つ多様性や個別の状況に応じた合理的配慮というのが、まさにこの差別禁止法でカバーしようとする具体的な権利あるいは合理的配慮の中身となってまいりますので、国のバリアフリー施策ですべてが尽くされるものではない。こういう形でバリアフリー施策を何か否定するとか、消極にとらえるということでは全くないのですが、障害というものの多様性や個別性という観点からすれば、合理的配慮についてはバリアフリー施策とはまた別個の個々の配慮が必要になるということを、書かんとして表現しようとしておるわけであります。
 これも先ほどトラの尾がたくさんあると言いましたが、各省庁の既に今まで行われている施策、特にバリアフリー施策といった障害者施策としても一定評価すべきものとの関係で、しかし、なお差別禁止法がプラスαで何事かを更に求めていくことになるということを恐れ恐れながらお断りをしておる、指摘をしておる。恐れるな、もっと堂々と言えと大谷委員とかはおっしゃるかもしれませんが、私が個人的に腰が引けておるということかもしれませんけれども、書きぶりについては後ほどまた御指摘をいただくとして、両輪であるという押さえ方をしておるということであります。
 この分野で禁止が求める不均等待遇という3、につきましては、これは言うまでもないことを書いております。2)不均等待遇を正当化する事由ということですが、合理的配慮を尽くした上で建物または公共に供される車両等の構造上、安全上やむを得ないと認められる場合などの理由がある場合は差別に当たらないとすることが妥当である。これも「ただし」という後の方に力点があるので、これは書き方がそういう意味では下手なのかもしれませんが、何かこの正当化事由の方が前面に出ておるように見えるかもしれませんけれども、これは建物や交通というそうした公共の施設や機関については、安全というのが第一義として出てまいります。
 したがって、そういう安全という観点からの正当化事由が場合によってはあり得るということは、一般論として認めつつ、ただし、交通機関の利用に際し、合理的配慮を提供しないまま障害者に対してのみ一般的、抽象的な可能性のレベルで安全が保障できないと判断することは、これは異なる取扱いと言える。安全性が錦の御旗だと今、言いましたが、それなら障害者を乗せないことが最も安全であるといった、障害者に安全のコストを押し付けてくるような使われ方、不均等待遇の正当化は許されませんよということで、安全性の判断は個別具体的な根拠を要するものと考えるべきであるとしております。ちょっと文章あるいは内容が伝わりにくいかもしれませんけれども、趣旨は今、申したことでございます。
 4の合理的配慮の内容や例外として正当化される場合があることについては、これは既に総則でも述べておること、また、今しがたも述べたことでございます。勿論そういう点が当てはまることは否めないところであります。
 具体的な合理的配慮の中身としまして、移動においては物的障壁の除去や人的支援の提供。接遇においては障害特性に配慮した対応。設備の利用においては障害者にも可能となるような手段の提供等。施設の利用に必要な情報においては容易に理解したり、受け取れるようにするための手段の提供といったことが当然にこの分野でも求められるということで、以上が皆様方にお示しをしました部会三役の資料2の公共的施設、交通機関の利用に関する部分の簡単な御説明でありました。
 なお、このテーマにつきまして川内委員から委員提出資料ということで、太田委員が従来からお示しになっている差別禁止法案の後に、川内委員の意見書が委員提出資料の15ページ以下に付されておりますので、もし差し支えなければ川内委員、今この時間を使って簡単に御趣旨を御紹介いただけますでしょうか。

川内委員 ありがとうございます。
 委員提出資料の15ページからをごらんください。基本的には今、部会長が配られたもとの案をベースにして、それに加えるところを書いていますが、勿論この文書どおり加えてくださいということではないんですけれども、この三役案の書きぶりというのが例えば公共的施設について事例を列挙して、そして一番最後に「したがって」以降でまとめているという書き方なんですが、「したがって」以降だけ読むと余りにもまとまり過ぎていて意味がよくわからないということで、その前にある事例というのが非常に重要になってくるだろうと思っています。
 私が加えたのはアンダーラインのところですけれども、委員提出資料の15ページで言うと、まず1つは利用時間の制限、選択肢の制限、ほかの人よりも高い料金を求められる、障害のある方に必要な施設というのがインターネット等で広報されていない。あるんだけれども、広報されていないというもの。
 もう一つは、バリアフリーの法律はいろいろあるんですが、接遇というのは抽象的にしか書いていなくて、接遇の内容については事業者側の任意になっているところが大きな問題であるというところを例示として加えていただきたいということがあります。
 その後「したがって」ということになりますけれども、提出資料16ページの上から4~5行目ですが、今まで原文で要約されたものにプラスして、障害者のみに加えられる利用上の制限ということを入れるべきではないか。ただし、利用に必要な手続や条件の付加というものが既にありますので、それに包含されているのであれば、この記述はなくても結構ですけれども、例示のところではやはり書いていただきたいということがあります。
 交通機関については、障害者のみほかの者とは異なる利用時間の制限がある。例えば新幹線では指定席しか選択肢がない。接遇の内容については事業者の任意になっているということ。それから、申し込みのときに一般とは全く異なる利用申し込み方法を求められる。JRなんかはこういうやり方をやっています。それから、個人情報を求められる。申し込みの際に電話番号とか名前など、ほかの人が申し込む場合は求められないようなものまで求められる。最近では格安航空機なんかで電動車いすのバッテリーの取り外しを事業者がやらずにお前がやれというふうに言われるという利用の条件があります。
 最後のまとめの「したがって」のところに、これもよくまとめてあると思いますが、外部とその交通機関を結ぶ経路において障害者のみに加えられる制限を書いています。これは先ほど申し上げた利用時間の制限というところですけれども、駅と例えば外の道路とをつなぐ経路がないと駅に行けないわけですけれども、よく駅にはエレベータがなくて隣接ビルのエレベータを使う、あるいは駅ビルのエレベータを使うということがありますが、その場合に営業時間が終わってしまえば、終電はまだ先なのに利用できないということがあります。ですから、先ほどのまとめのところでも交通機関内部の経路だけではなくて、外部と交通機関を結ぶ経路というのが視野に入るべきではないかということで書きました。
 17ページの中で対象物と差別をしてはならないとされる相手方の範囲の中に、先ほど部会長がおっしゃいましたけれども、不特定または多数ということを入れていただいたのは非常にありがたい。範囲を広げていただいたということでありがたいんですが、住宅については除いてもいいのではないか。特定の少数の者が使うんだからということですけれども、アメリカなんかではそのために車いす使用者は知人や親戚の家にも行けない、近所付き合いもできないのはおかしいという考え方がありまして、特定少数の者の利用だとしても不特定または多数の者に対して販売活動が行われるものについては、例えば集合住宅なんかだと全住戸の何%かは住戸そのものを段差改修するというふうな、車いすでのミニマムアクセス、最低限の利用を可能とすべきといったものも必要なのではないかということを書いています。
 それから、もう一つその次に※印を入れておりますが、ここの原文では発想が交通機関の中での移動を思われているようですけれども、外部から交通機関に到達するために移動困難者に提供される経路というのも含むべきではないかということを書いています。
 それで18ページですが、上から5行目に「こういった施策は障害者権利条約が求めるほどに重要なことではある」というところですが、非常に記述が抽象的というか意味が不明瞭なので、ここはもっと明確に書いていただきたいというのがあります。
 その下にも書いていますけれども、現行のバリアフリー基準はハードについての規定で、接遇の内容は事業者側の任意になっているのが問題であるということです。
 それで先ほどもお話にありましたが、バリアフリー施策と差別禁止というのが両輪であるということは私も同意ですけれども、一方で国土交通省は、障害者が公共交通機関を利用することは権利ではないという立場をずっととってきています。したがって、その立場の下で行われているバリアフリー施策そのものが差別性があると私は考えていて、ここで両輪であると持ち上げていることによって、その差別性を問うということができるのかどうかということが1つ疑問としてあります。
 その次の※印ですが、社会の中には法に適合しない公共的な施設がたくさんあって、例えば違反した状態、本当はスロープを付けなければいけないんだけれども、付けていない建物にスロープを付けてくれと求めるのは合理的配慮の範疇なのか、法令への適合なのかというのが私にはよくわからないところがあります。というのは、合理的配慮の範疇ならば差別禁止法の紛争解決のルートがあって、これは好ましいというかルートがはっきりしているんですが、バリアフリー法令への適合を求めるということになると、バリアフリー法令そのものに紛争解決のルートがつくられていないんです。ですからかえってややこしいことになる。だけれども、今までの考え方からすると法令適合ということで合理的配慮の範疇には入らないということになりそうなので、その辺りの区別がどうなるのかというのが1つ疑問としてあります。
 最後19ページですが、2)の一番終わり、4ポツの前ですけれども、安全性の判断は個別具体的な根拠を要するものと考えるべきであるというふうになっていますが、現在はバリアフリー法制に紛争解決のルートがないということもあって、事業者がこれは危険だとか、安全だとか言うと、それでもう決まってしまうところがあります。ですから、この安全性の判断をどこが行うのかということが、もう少し明確にできないのかなと思いました。
 以上です。

棟居部会長 貴重な御指摘ありがとうございました。あるいは御質問に当たるような御意見も多々含まれておったと思います。私がフォローし切れていない部分を勿論、この文書自体は持ち帰りますけれども、お答えするとして、その前に室長からコメントされますか。

東室長 2点ほど質問させてもらっていいですか。
 接遇についてはバリアフリーの規定はないということだと思っています。具体的に例として挙げるべきということで書いていらっしゃると思うので、接遇に関する具体例は何かありますか。

川内委員 交通機関ですか。

東室長 両方ともです。ここは接遇という言葉しかなくて、具体的に接遇の例で困った事例というのはどういうものがあるのかということを知りたいというのが、1点目の質問です。

川内委員 例えば現在では公共的な建物に視覚障害のある方を案内するためには、その建物の受付まで誘導ブロックを敷くということがハードの面では求められているわけですけれども、ではそこの受付の人が視覚障害のある方に対する対応の仕方を知っているかと言うと、知らないとか、あるいは聴覚障害の方が行くと敬遠してしまうということは実際にあります。
 公共交通機関では本当にたくさんあって、例えばプラットホームと電車の間にスロープ板というのを渡して接遇するのが一般的ではありますけれども、係員の方が「あなたは要らないと思った」と言って出さないとか、そういうふうなことはいっぱいあります。しかも、そういう接遇がなければ移動ができないために、例えば途中下車ができないとか、乗っている電車が事故か何かでトラブルで止まってしまったりすると、係員が来ないと乗降できないわけですから、ほかのお客さんがどんどん乗降して乗り換えているとか、いろいろ行動がとれるのに障害のある人間は行動がとれないとか、そういうふうな問題が起きています。

東室長 では、川内さんが言われている接遇というのは、人的な対応とか人的な支援がないということですかね。

川内委員 接遇というのは私の理解では、交通バリアフリーの世界ではそういう理解です。人的な対応です。

東室長 それと2点目ですけれども、一定面積以上の共同住宅の話のところで、対象としては不特定多数の者に販売する事業者に対して、例えば何%か利用ができるものを付けて売れというような政策が外国などであるというお話だったんですか。

川内委員 アメリカなどでは公正住宅法という法律で、4戸以上の住戸の場合に特定のパーセンテージの住戸をアクセスブルにしなさいということはあります。日本の法制では共同住宅については入口のロビーとか、エレベータといった共用部分についてのバリアフリーの規定は一定のものがあるわけですけれども、一つひとつの住戸の中については何の規定もないんです。ですから車いすを使う方が今、共同住宅に住んでいても、自分の家の風呂に入ったことがないとか、そういう人たちがたくさんいるわけです。それはやはりおかしいだろうということです。

東室長 ただ、それは一定の政策として、こういう基準を備えたものを一定程度つくって売りなさいという政策としてはあり得るかもしれませんけれども、差別禁止という観点から見た場合に、その点はどういうふうに理解されているのかお聞きしたいのですが。

棟居部会長 ちょっと横から入らせてもらっていいですか。これは余り時間もかけられないと思うけれども、一般論としては役務の提供ということですね。つまりレストランで食事をしたいというときに段差があるというのと、いろんな意味でフラットな自分が住める住居を販売してほしいというのは役務の提供、商品の提供という点では、つまりレストランの食事にしろ分譲住宅にしろ、物の売り買いですから、あるいはサービスの提供ですから、同じ面があります。
 ただ、レストランの場合には食事の内容自体は従来の議論ではずっと決まっている。どこやらレストランのカレーを食べたい。しかし、それをアクセスするためにエレベータがないとか、そういうことを問題にしてきたわけですけれども、そういうことを理由に排除されるというのを問題にしてきたんだけれども、住宅の場合にはそもそも障害者の口に合うカレーがないというか、障害者がそこに住めるような住宅を販売しないという、そこが問題で、その仕様を変更して障害者が住みやすい住宅を提供しろという、そこまで役務提供の合理的配慮でカバーできるかという、これは結構難しい問題をおっしゃっている。
 今、即答を要しませんので引き取らせていただく。どこまでこの差別禁止の、あるいは合理的配慮の考え方が及び得るのか。今、ショーウインドウの中にある商品やサービスに同じようにアクセスできるという、そこを超えてショーウインドウの中の商品にまで一定の内容の変更を求めることができるかという、教師としては非常に面白いテーマをいただいておるんだけれども、それで喜ぶと時間オーバーするのでやめておきます。問題の指摘ありがとうございます。
 ほかも例えば川内委員の16ページ、隣接ビルのエレベータはそもそも公共交通機関である駅が、隣接するビルのエレベータを使ってくださいで合理的配慮をしたことになってきたという、あるいはそういう現実があるとすれば、これは極めてお寒い現実と言わざるを得ないですね。つまり何の権限もなく単に借用しておるわけですから、そういう意味では公共交通機関の側がちゃっかりしておるというだけのことで、それが隣接ビルの営業時間が終わってしまうと物理的に車いす使用者は駅にアクセスできなくなるという御指摘はまさにそのとおりですが、言い方を変えるとかなり特異な例ですね。そういう公共交通機関が自分でどこまで合理的配慮をすべきかという話をしているときに、隣のショッピングモールのエレベータを使えるからいいではないかという正当化というのがあり得るのか。

川内委員 そうはおっしゃいますが、現実には日本中でこういう例はたくさんありまして、それはある意味で納得せざるを得ないところもあって、そういう既存のものにエレベータをつくると言うと数億のお金がかかる。しかも耐震規定なんかに引っかかってくると、エレベータ1つつくることで駅舎全部やり変えなければいけないということも起こり得るんです。ですからそれの現実的な解決としてそういうことをやってきているというのは、認めざるを得ないところがあるというところは御理解いただきたいと思います。

棟居部会長 わかりました。いずれも教師として興味深い限界事例をおっしゃっている。しかし、まさにその限界事例が実際には多いんだという御指摘もちょうだいしたと思います。

伊東副部会長 今、川内委員がおっしゃったことは重要です。その1つが15ページの例えばというところから、ここではいわゆる通常の生活であればアクセスができるようなことが、非常時だとか災害時の時には、どうなのか、機能するのかということです。おっしゃるように例えばホテルにいて何らかの災害に遭遇した時に、通信が遮断され、電気も点灯しないといった状況になったときに、障害のある人が宿泊していた場合に、それでも危険発生の伝達や避難、救援など、ライフラインを守ることが配慮されるべき、ということは重大です。

棟居部会長 ありがとうございました。
 川内委員の問題提起は非常に多岐にわたって、今すべてお答えできなくて三役でいずれも宿題として持って帰るということで、その一端を今、伊東副部会長にお答えいただいたんですけれども、川内委員の18ページの下の方に古い建物で法改正によって不適格になる。こうしたケースでバリアフリー法令違反ならば紛争解決のルートは確立されていないとありますが、これは先ほど述べました車の両輪という比喩の実際の意味に関わっておると思います。
 つまりバリアフリー施策というものが、実際にはかなり合理的配慮に類似した一定のアクセスの可能性というか、アクセシビリティを保障する客観的な機能、つまり我々の差別禁止という新しい観点から見た場合に評価し得る部分をたくさん持っている。しかし、足りないものも勿論出てくるだろうということなんですが、すると我々の新しい合理的配慮を義務づけるという観点、そして、それがなされない場合に紛争解決の一定の簡易迅速な手法を用意していくという観点。これは既存のバリアフリー法令だけだと、紛争解決のルートがなかった者に対しても合理的配慮義務違反という新しい観点から見れば、紛争解決の新しい手法になじむ。それに乗せることはできるのではないかと私は思いますけれども、これも法解釈に関することで私は一番それの弱い分野の人間ですので即答は要しません。

川内委員 実はこの委員会で私は合理的配慮というものがまだ十分理解できていないんですけれども、私が書いた18ページの下から7行目辺りに書いていますが、合理的配慮が何らかの法や基準に担保された整備レベルの上に求められる柔軟な配慮だとしたらというふうに書いていますが、つまりアクセス基準で法令が求めているものというのは、これはそれに適合するのが当然であって、それは合理的配慮ではない。それが適合している上で更に個人的なニーズに対して柔軟な対応をするというのが合理的配慮と考えるべきなのか、今の部会長の御発言からは、そういうバリアフリー基準で求められているような整備の内容も合理的配慮の一部なんだととれる御発言だったと思うんですが、それをどう理解すればいいのかというのは私はいまだによくわかっていません。

棟居部会長 これも私個人の見解になります。視覚障害の方には申し訳ないけれども、私のコップに2割か3割、今、お茶が入っているわけです。これが現行のバリアフリー法が差別禁止という観点から見た場合に実現しておる一定の施策のレベルだとします。20%か30%か、レベルは低いけれども、勿論、差別禁止の観点からも一定の評価はできる。
 ただ、足りないというときに例えばこれは半分ぐらいまでお茶を増やしたわけですが、それでようやく合理的配慮だと言えるとすると、こうやってお茶を混ぜてしまえばコップの半分まですべて合理的配慮というお茶で満ちておるわけで、すべてが言わば差別禁止の世界の話になっておって、それでトータルで足りないとすれば、足りない部分に対して一定の我々が用意する簡易迅速な救済というものがかかってくる。
 最初から入っておった2割のバリアフリーの部分に対しては、救済も含めてがちがちなので文句言えないという、何か底に水には溶けない何か石みたいなものが敷いてあるようなイメージではないと私は考えています。
 要するにトータルの施策としてどこまで達成されて、どこが足りないか。足りない部分に対しては合理的配慮をしていないという形で救済の対象になり得る。こういう理解を個人としては持っています。ただ、それも三役あるいは室長、また議論しなければいけない新しい観点をちょうだいしたいと思っています。ありがとうございました。

川内委員 おっしゃるとおりで、これはやはりこの部会としてきちんとした見解を出すべきだろうと思います。
 以上です。

棟居部会長 ありがとうございました。
 実はもう川内委員に詳細な御指摘をいただいている間に私の不行き届きがありまして、時間の管理は室長にもお願いしておるんだけれども、我々の不行き届きがありまして予定の時間をオーバーしてしまっております。ということでもしほかに御発言がなければ情報とコミュニケーションに行きたいという気持ちが強いのですが、これは勿論、今の公共交通機関等に関してですね。大野委員、お願いします。

大野委員 今の川内委員のお話、とても一当事者としても社会の障壁に日々悩まされて、今日ここに来るにも様々な要因から電車を使って来られず、非常に困っている一当事者としていろんなことを考えました。先ほどの政治への参加にも関わりますが、不均等待遇を正当化する事由について、15ページですけれども「構造上、安全上やむを得ないと認められる場合などの理由がある場合は、差別に当たらないとすることが妥当である」というのは言い過ぎであるように感じます。それと11ページ、議論を戻して非常に恐縮なんですが、政治参加の方で合理的配慮の提供が過度の負担を生じる場合は、この分野に安易に適用すべきではないという表現もあるんですけれども、では安易でない適用という解釈が逆に生じてしまうのではないか。ローカルルールでもって、これは安易でない適用ですと。地域で生きている当事者の人たちにとって、そういうような解釈の幅を与えるような表現ではないかと思います。当事者が交渉をした場合に、つまり自分が要求をした場合に、これは安易ではないんですというような解釈を与えるような文章の書きぶりが少しあるかなと感じました。
 以上です。

棟居部会長 ありがとうございました。修文を検討します。
 関連して川島委員、お願いします。

川島委員 今の大野委員と関連してなんですけれども、15ページの正当化事由で「構造上、安全上やむを得ないと認められる場合などの理由がある場合」とあります。合理的配慮の正当化事由は過重な負担でいいんですが、不均等待遇の正当化事由は、実はこの部会で必ずしも意見の一致を見ていないような気がするんです。
 それで以前も私は発言したんですけれども、「やむを得ない場合には」「不均等待遇」にはならないとしても、いわゆる違法審査基準というか、正当化事由にここではなるんでしょうが、普通、諸外国では目的と手段両方を書くのが一般的かなと。例えば、やむにやまれぬ目的があって、より制限的でない、他の選びうる手段がない場合は、不均等待遇にならない、みたいな形で、その言葉の使い方というのは諸外国の具体的な立法例も見た方がいいのかもしれないんですけれども、そういうところで、労働分野の3ページのところですと、「正当な目的の下で行われたものであり、かつ、当該取扱いがやむを得ないとされる正当化事由がある場合」と記されていて、若干、不均等待遇についての正当化事由の基準に一貫性がない、と読んでいて思われました。そこのところはどういうふうに考えることになるのかなと思います。

棟居部会長 目的だけでオン・オフというか、YES・NOにならないように手段というものを取り込んだ書きぶりにすべきだと。その意味で雇用の方に合せた方がいいのではないかという御提案。これは先ほどの大野委員との指摘とも関連すると思いますけれども、検討させていただきたいと思います。
 違いますか。室長、私が今、誤解しておるとすれば直してください。

東室長 その点、目的の正当性は当然の前提にした上での書きぶりになっています。一般的には目的+手段という2方向で検討するといったところを、この意見書では変えますという趣旨ではありません。
 手段の目的が正当なものでないなんてことは普通余りないんですが、目的がどういう目的かという中身の正当性の話とそのために取られる手段は関連してくるわけです。安全性を確保する目的というのは当然否定はできないんです。だから目的での議論ではなくて、その目的から来る安全確保の手段を取る必要性をどういうところで議論すべきかというところに焦点を当てて書いたわけですから、構造を変えているというものではないことは理解してください。

川島委員 多分、考えていることは一緒だと思うんですけれども、予測可能性とか明確性という観点から目的と手段を両方挙げて、たとえば目的は当然許されるけれども、手段もという形で、読んでいる方としては、という趣旨です。

棟居部会長 つまり、一般的な規範をここでも正確に繰り返した方がいい。文章の力点が目的の方にあるからと言って、それだけを書くというのだとわかりにくいという御指摘で、これもYES・BUT、「ただし」から後に力点があるんだけれども、どうも全体の流れが読みづらいということだったと思います。

遠藤オブザーバー 先ほどお預かりして検討するということだったのですが、建物の設置管理者がだれなのか、あるいは鉄道の運行責任者はだれなのかということを考えたら、安全上やむを得ないと認められる場合は最上位概念であると思いますし、だれもそれを否定する人はいないと思います。それは十分踏まえていただきたいと思います。それが1点目であります。
 2点目ですが、15ページの「すなわち」以下の内容について、具体にどういうものを絵姿として思い描いているのか教えていただけますでしょうか。

棟居部会長 室長、お願いします。

東室長 安全性でよく問題になるのは例えば、飛行機に乗る場合です。飛行機がエアポケットに入ったときなんかは急降下しますね。そうすると気圧が下がったりする関係で緊急マスク、酸素マスクが下りますね。ですから、ああいう場合は自分で装着しなければならない。しかし、両手が動かない場合は自分で装着できない。そういう場合を想定すると上肢が効かない人を単独で乗せるということには危険性の問題が伴うということなので、単独搭乗を拒否するという事例があり得る話です。
 確かにぎりぎり詰めていけば、そういう危険性というのは確かにないとは言えないわけです。しかし、ある意味交通事故よりも事故の発生率は非常に低い乗り物です。そもそもが。しかし、100%そういうことはないとは言えない。では、単独では乗れないのか。そこの安全性の基準をどこら辺に線引きするかという、非常に微妙な問題があると思うんです。
 だから安全性という一言をもってもすべてなで斬りにされるような状況だけはやめにして、個別具体的にこういうことが具体的に危険性として想定されるから、この場合はだめだとか、抽象的な議論ではなくて、具体的なところで判断すべきだということで三役の案はできているとこちらとしては理解しています。

棟居部会長 今おっしゃっていただいたとおりなんですが、要するにこれはつまり安全というのがどうしても運航業者さんの側からは出てくる。そして、それが当然公共交通機関ですから、言わば絶対的な切り札という面がないわけではないわけです。しかし、その安全ということの中身が例えば今、室長がフォローしてくださったような手が動かない人が酸素マスクを自分で装着できないといった、そういう場面を想定して航空会社側が安全という観点から搭乗を拒否するということであれば、これはほかにも例えば心臓に問題を抱えている乗客とかたくさんいるわけです。そういう極限の状況ではこの人はまずいだろう。だけれども、一々調べることもせずにどんどん乗せてしまっていて、結局あなたは手が動きませんねとか、車いすですねとか、そういう容易に見てとれる外形的な理由であとは安全という抽象論でシャットアウトしてしまう。そこの言わばQ&Aみたいなことを意識して書いております。
 つまり、安易に安全という言葉が独り歩きするのは好ましくない。より具体的な、丁寧な理由づけが必要になってくるということなんです。ですから絶対に認めないとかそういう答えを出そうというよりも、一定のやりとりのプロセスを想定して、あとはしかるべきガイドラインに熟成させていくべきものという、こういう観点からであります。書きぶりが非常に抽象的で申し訳ない。
 遠藤オブザーバー、どうぞ。

遠藤オブザーバー 説明として承りました。ただし、1つ思ったことは、要するに説明する側がどこまで対応するのかというお話と、安全ということをそこに引っかけて議論していくというのは、私は納得できません。安全は安全ですから何にも増して優先すべき課題だと思っています。
 また、「すなわち」以下の部分について、一刀両断で対応するなということは、一刀両断しないように情報提供をどういう形で事業主サイドにつなげていくのかという仕組みづくりが必要なのであって、そこの情報のつなぎ方をどうするのかという知恵を出すことが求められていると思っています。
 以上です。

棟居部会長 おっしゃる点は非常に悩ましいところで、というのは先ほど川内委員の御指摘にもありましたように個人情報を出さなければいけない、あるいは診断書まで求められる。こういうことはそれはそれで障害者側として困るんだということが一方にあり、他方ではしかし事業者が本当に責任を持って具体的な安全を実現しようとすると、ある程度そういう個人情報等に踏み込まざるを得なくなるかもしれないという、そこのバランスのとり方という、これはこの部会では議論できていなかった問題だろう。それをこのとりまとめ段階でもそのまま生煮えの状態に残した格好になっているということで、ですから議論していないことをこのとりまとめと称して今、決めることを三役でやると我々の越権になるかなと恐れています。
 ということで、何か議論し切れていないことを突っ込んだ表現で書いておるように見える部分は、逆にそこをカットしていくという方向でとりまとめをするという点も含めて検討させていただきたい。ありがとうございました。
 ということで、この公共的施設、交通機関の利用について、これは予定の時間を大分オーバーしてしまっております。20分ほどオーバーしております。大変恐れ入りますが、情報とコミュニケーションに移らせていただけませんと休憩時間がとれなくなり、写真撮影という歴史的な記録になるはずの事柄が実現できませんので、先を急がせていただきたいと思います。
 皆さんお手元の先ほど来からの資料であります。この16ページ以下となります。
 「はじめに」はここでも一般論を書いておることで読み流していただきまして、見ていただくとしまして、「2、この分野において差別の禁止が求められる対象範囲」ですが、情報保障ということでどういう対象がということですけれども、社会にあふれている情報の多くは障害者がアクセスすることを想定していないということで、障害者が利用できないでいるという残念な現実があります。いわゆる情報化社会と呼ばれ、社会の多くの仕組みが情報の非常に大量かつスピーディーな、そして容易なインターネットや携帯電話、スマートフォン等を通じたやりとりをベースに成り立っている今日であればこそ、なおさら障害者がそうした情報の自由かつ豊かな情報にアクセスできないでいるということが、ますますその障害者の実質的な機会の平等を損なっているという認識が、我々の根底には共有されておると思います。
 ということで、人とのつながりがますます障害者の場合、困難になりつつあるということで、コミュニケーションに関して手段の選択、仕様に関してここで一定の事柄を述べておく必要があるということで、2、「2)差別をしてはならないとされる相手方の範囲」というところで、すべて網羅できているかどうか自信が必ずしもございません。それだけ情報化社会というのはあらゆる局面で情報があふれかえる社会になっておりますが、特に障害者との関係でこれはゆるがせにできないという点としまして、A)一般公衆へ情報を提供するという相手方、報道機関、出版社、大容量記憶装置により情報を記録した媒体(CD、DVD)を販売する事業者、以下記号は読み上げませんが、情報を添えた商品を一般消費者に販売する事業者、国民に情報を提供または開示する国または地方公共団体。
 それから、今、述べましたような一連のものに比べると少数を対象とするという点は言えるんだけれども、しかし不特定のものに情報を提供という点では、やはりここで相手方とすべきものとして演劇の公演、寄席、音楽ライブ、スポーツ観戦等。スポーツの場合ですと何万人ということがあって決して少数とは言えないわけですが、しかし何百万人が読む新聞とか何十万部も売れるベストセラーとかに比べると一時的であり、かつ、人数もスポーツ観戦や演劇等は限られます。しかし、やはり情報へのアクセスという点では差別をしてはならない相手方に含めてしかるべきということで整理をしております。
 更に職場、学校、その他団体、会議体等が構成員に情報提供する場合の事業者。これらはいずれも学習権といった子どもや大人も含めますが、学校という学習の場あるいは職場で雇用の場あるいは会議体等で意思決定をしていく場。まず情報が共有されないと能力も発揮できませんので、情報共有ということが当然に求められる場となります。
 更に一般公衆と意思を疎通するということを生業としている事業者に関しましては、当然に障害者に対しても分け隔てなく情報の流通をするべきであるという観点であります。
 以上から「3、この分野で禁止が求められる差別」といたしまして、いずれも裏返していけば以下のことが言えようと思います。つまり、一般公衆へ情報を提供する相手方、例えば新聞社等ですけれども、そういうマスメディア等については相手技術の進歩や手話並びに字幕付き放送の増加等、情報伝達に係る技術や体制の整備ができるにもかかわらず、これをしない。一方でインターネットを通じた新聞の配信等をしながら、しかしそれを例えば視覚障害者に対しては音声を通じて伝えるといった、こういう技術的には可能なのにそうしたサービスを提供しないというのが合理的配慮に当たるのではないか。今、申し上げた例が合理的配慮の提供義務に反すると断定しておるわけでは決してございませんが、そうした局面ごとに合理的配慮の提供義務の有無が問題となってくる、あるいはその中身が問題となってくるという整理でございます。
 代替手段を用いた例えば視覚障害者との関係では音声を通じたといった、あるいは聴覚障害者との関係では逆に字幕を通じたといった、こういう合理的配慮は勿論、障害あるいは障害者の持つ障害の中身がさまざまであるということに応じまして多様でございます。そして、それぞれに応じて技術的な可能性、困難さ、経済的な負担もさまざまであります。したがって、政府が障害者、専門家、事業主の参画を得て、特に大事なのは障害者の参画をも得て提供できる合理的配慮の手段や方法に関するガイドラインを作成する。極めてきめの細かいガイドラインの作成が求められようと思います。
 なお、その際に国、自治体に関しましては情報提供に当たり、過度の負担原則を援用して自らの責任を免れるというのは適切ではないと、ここでも先ほど来出てきておった国や自治体は、泣き言を言うことはできないという考え方を打ち出しております。
 以上、一般公衆へという一番メジャーなメディア等を念頭に置きましたが、少数を対象とするが、不特定の者に情報を提供する演劇等の提供。先ほどスポーツ観戦等も含むと申しましたが、これに関しても不均等待遇となり得るんだということで、合理的配慮として実施できる手段があるにもかかわらず、提供しない場合は差別と考えるのが妥当であるという考え方であります。
 これも具体例でどこまで踏み込んで考えておるのかというと、これはケース・バイ・ケースとしか言いようがございません。例えば視覚障害者の場合にラジオのナイター中継があれば音声を通じてかなり適切に、ですから私なんかはむしろテレビよりはラジオで聞いておる方が、平凡な試合でもよほどわくわくするというか、あらゆる試合をエキサイティングに中継してくれますので楽しめるわけですが、これがラジオも含めて中継がどんどん減っておるという現実の中で、例えば野球場に行けば、あるいは有料のサービスでインターネットで中継を見れば、当然に視覚障害がある人には音声で同時中継的なサービスが野球場なりインターネットの有料中継でなされるかというと、恐らくそういう現実はないんだろう。そういうサービスが提供されるべきなのかどうかというのが1つの教科書的な事例なのかなと。一般論でしか頭でっかちの発想でしか三役案では書いておりませんけれども、今はその当てはめの例としてはいろいろなものが頭をよぎるところであります。
 特定のものに提供されるという不特定多数ということではなくて、特定のものという場合ですが、これもやはり事業の構成員でありますので手話通訳、要約筆記、ノートテイク、筆談、知的障害者や発達障害者の特性に配慮した対応、点字文書、振り仮名付の文書等、障害の特性に応じた情報提供及びコミュニケーションのための合理的配慮がなされてしかるべきである。特定のものというのは職場や学校あるいはここでそうであるような会議体の構成員に対して、つまり学校であれば生徒に対して情報を提供する。そういう事業者、すなわち学校側ですが、これはさまざまな手段を駆使して情報を提供すべきであるということを述べております。
 更に一般公衆との意思の疎通ということを事業活動として行うというものとの関係では、これはコミュニケーションがとれないという障害者側の事情を理由として、それならしようがないですねということが認められるかということですが、これは不均等待遇となるんだ。障害に配慮した方法、手段等をとることが合理的配慮義務として求められるということを述べております。
 続きまして「4、その他の留意事項」ですが、情報におけるバリアフリー化に向けた施策という、バリアフリーという言葉が必ずしも差別禁止や合理的配慮と重なるわけではなく、むしろ区別をすべき概念ではあるんですが、ここでは情報におけるバリアフリーというあえてミスリーディングな表現を使っておりますけれども、そうしたある種、全体を見通した画一的な建物のバリアフリーによく似た、情報における一定のインフラ整備的なバリアフリー化という施策がまずなされてしかるべきだと。
 個別の合理的配慮を積み上げていくというのは大変なことでございますので、一律に例えば音声による同時中継とか、そういったことはベーシックなサービスとして提供するということが求められるのではないかという観点から、政府はそのための施策を検討し、必要な措置をとるべきである。勿論、政府というのは、この報告書も政府の中の一部会がつくり上げるものではあるんですが、したがって「政府は」というのは政府の中の権限を持つ所管官庁がという呼びかけでもあるんですけれども、自分で自分に言っておるようでほかの省庁に呼びかけておるわけですが、必要な措置をとってくださいということで、以上で私からの説明を終わらせていただきます。どうぞ先ほど来と同じように御意見、御質問をいただきたいと思います。

野澤委員 さまざまなところまで目が行き届いた書きぶりで、ありがとうございます。その上で幾つか意見を言わせていただきたいと思います。
 16ページなんですけれども、真ん中より下のところで「障害者にとっては手話通訳、要約筆記、知的障害者の支援者などの」とありますが、ここは是非、発達障害というのも入れていただきたいなと思っております。今、自閉症の出現率が100人に1人とか言われていますけれども、どんどん最近は増えているのではないかと言われて、昨年の韓国のだと37人に1人と言われていて、どのくらいかわかりませんが、とにかく膨大な数でいて、その膨大な数の方々が特に情報保障の点で非常に御苦労されているというところを、是非強調していただきたいなと思います。
 それと、この書きぶりをずっと見ていると、どうも言葉とか文字でのやりとりができる人を対象に書かれているような気がするんですけれども、必ずしもそういう文字や言葉によるコミュニケーションが難しい方々こそ、情報保障というのは私は必要だと思っておりまして、それをどういうふうに書くのか難しいんですが、例えば点字文書、振り仮名の付与などの障害の特性に配慮した形とあるんですが、ここで1つイラストや絵記号など構造化された情報保障の付与も入れていただきたいと思います。これは特に自閉症の支援の現場でこういった物すごいいろんな工夫や研究をされた上で、こういう構造化されたものはかなり有効だということが広まってきておりますので、これはこの言葉を入れることによって随分メッセージ性が高まるのではないかと思っています。
 もう一つ、コミュニケーションを考えたときに双方向性を感じるんです。これを見ると障害者に情報をどうやって提供するか、あるいは障害者がどういうふうに情報にアクセスするかという側面ですけれども、逆に障害者の側が発する情報が間違って受け取られている、誤解されるというケースがあって、それはどうなんだろうかと思うんです。
 それは私自身が確たるこうすべきだというものが必ずしもあるとは言えないんですけれども、例えば特に発達障害の方、アスペルガー症候群とか後期の自閉の方で言葉でのやりとりはできるが、文脈だとか空気だとか関係性だとか場面などが普通の方とは違うものですから、言葉でのやりとりはできているけれども、全く違う意味で受け取られるケースがかなりあるんです。これは顕著なのが、その後の特定のものに提供される情報のところにもありますが、捜査当局での取り調べの場面あるいは就職試験の面接試験の場面。例えばというと笑われそうですけれども、例えば面接試験で「今日はいい天気ですね」と言われると、「無意味なあいさつにどう答えたらいいのか自分はわかりません」と言ってしまうんです。これはよくよく考えれば本当にそうなのかもしれないけれども、儀礼上というか、そういうものなんだということを理解しないままそう言うから、非常に悪い印象を受ける。あるいは捜査当局の取り調べや裁判の場でも反省がないような言葉をしゃべってしまう、あるいはそういう態度をしてしまう。でも必ずしもそうではなくて、彼らなりに反省の念はあっても、それをうまく我々が通常反省の念を表せるような方法で表せていないものですから、間違った受け取られ方をして非常に不利益を被っているという、この逆の障害者が発することを間違って受け取られてしまうことに対する合理的配慮というのは、考えなくていいのかと思うんです。
 これは全体の書きぶりの中で是非、双方向性のところを踏まえたような書きぶりも入れていただきたいなというのが1つと、もう一つはそれをどうすればいいかというと、知的障害、発達障害の人も通訳者、どういう言葉を使っていいかわかりませんけれども、彼らの発していることはこういう意味なんだと相手に誤解されないような補足説明をしたり、通訳をしてくれる人がそこにいることによって随分違うと思います。
 例えばイギリスなどでは捜査段階で発達障害の方なんかが対象になるときには、Appropriate Adult Schemeという仕組みがあって、彼らの障害特性に配慮した方が付き添って取り調べを受ける。その付き添っていない取り調べは証拠価値が低いとされているということがありますので、これは全く架空のことを言っているわけではなくて、実際にそういう例があることを踏まえた上で、何かそういうものを盛り込んでいただけないかなと思っています。
 19ページの上の方のところで、手話通訳、要約筆記、ノートテイク、筆談のところに、通訳者の立ち会いとかコミュニケーション手段の行使だとか、こんな言葉を入れていただけたらいいのかなと思います。
 もう一つ、全然違う観点からなんですけれども、18ページです。私は新聞社で30年仕事をしてきているものですから、やはりこの点は言っておいた方が。業界を代表して来ているわけでも何でもないのであれなんですけれども、技術や体制の整備ができるにもかかわらず、これを提供しないことは合理的配慮の不提供。
 確かに技術や体制はできています。ただ、新聞記事全部をネットに流すとビジネスとして新聞というのは成り立たなくなってしまうんです。どこもそうですけれども、全部出しているわけではないです。かなり出していますが、よく見てもらえばわかるように紙で書かれた新聞のごく一部しか載っていないんです。詳しくは買って読んでくださいねということで、これはすごく私も気持ちはわかりますけれども、ただ単に技術や体制の整備だけではなくてビジネスも関わってくるので、その辺をどう考えたらいいのかなと思うんです。

東室長 例えば新聞購読者で視覚障害の人だけに、例えば自分のアドレスを入力すれば全文インターネットで読み上げることができるような契約は考えられないんですか。無料では一部しか見せないけれども、新聞を購読している人であれば全文その人だけには見られるというような代替方式というのは、やろうと思えばできるのではないですか。

野澤委員 できないことはないですけれども、相当技術的には大変だと思います。というのは、新聞で刷られている記事は刻々と変わってくるんです。中身が。

東室長 でも朝刊なら朝刊の場面だけ。

野澤委員 朝刊でもたくさん変わってくるんです。版によってどんどん変わってくるんです。

東室長 だから印刷した版だけを出すことはできないんですか。

野澤委員 印刷したものは、同じ日の同じ朝刊でも何種類もありますので。

東室長 そこの住む人のところに来る版というのは。

野澤委員 最終版だけということで割り切ってもらえればできないことはないと思います。

東室長 だからそういう検討をある意味すべきだと思うんです。そういうことができるのかできないのか、お金の面も含めて。

野澤委員 これはとても難しいところです。相当手間暇がかかる。全然関係ない話ですけれども、弊社は80年以上、点字新聞というものを出していまして、これはずっと赤字企業が赤字を垂れ流しながら出しているものなんです。なかなか経営がどこも苦しい中で、果たしてどこまでそれを保障できるのかというのは簡単ではないと思います。こういう書きぶりだと、そういう立場の方々は反応されると思います。もう少しそこに補足していただいた方が議論に乗れるのではないかと思います。

棟居部会長 この文章で説明が足りないというのはよくわかりました。
 また、先ほど口では有料という言葉を付け加えておって、恐らくメディアの方は非常にそこは気にされるだろう。私は情報はただだとは思っていないので、現状のインターネットの無料サービスがただで情報を提供されるのは結構なことだけれども、そのことによって逆に有料で質のいい情報提供をするという本来の姿が損なわれつつあるのではないかという、私は逆の思いを持っておるものですから、個人的には有料でアクセスしたい人には音声によるアクセスも可能にするというような、つまり視覚障害者を排除するといった役務の提供ではないという格好、つまり80年の伝統をそういうインターネット上でも再現していただければなという個人の思いです。
 あと、先ほど発達障害についてそれを加えろとおっしゃったのは、これは文章として修文は簡単なことで、そこが大きな問題だということであれば、これは加えていかなければいけないかなと個人としては思っております。また、イラスト等による言わば直観的な理解は、そもそも文字、テキストによる理解というのは一定の能力を要求するわけですから、つまり認識能力というか理解能力を要求する。本来、イラストというのが例えば英語の読めないアメリカ人がたくさんおるというので、イラストでいろいろ表示をしておるのと同じような発想というのは、我が国でもとられてしかるべきだと個人としても思いますし、イラスト等をどこかに文章として入れるというのは、これはこれでそう難しいことではないと思います。
 また、双方向性ということをおっしゃいました。この点については情報とコミュニケーションと2つ並べておりますので、コミュニケーションと言うからには双方向、つまり障害者の発信を正確に障害のない側が受け取るということもコミュニケーションの保障に含まれるべきだということは、一般論としては誠にそのとおりでありますが、ただ、ここで「はじめに」の「情報が利用できず、またはコミュニケーションが制約されるならば」ということで、あるいはその上の段では「コミュニケーション(意思疎通)の手段等に関しては」というふうに、情報を受け取るということで、それから後のコミュニケーションが可能になっていくという、まず情報を正確に障害者が受け取るという力点を置いた書き方になっておるので、発信というところが双方向なんだからカバーされなければいけないということになると、相当にハードルが上がってしまうということは実際にはあるのではないかと思います。
 通訳者という現実的な御指摘、これは非常にすばらしいと思うんですけれども、国の施策の中でそうした人を育てていく、あるいは一般の学校教育で発達障害の人の反応に対する正しい理解を伝えていくとか、こういう宿題はたくさんあるんだろうと思いますけれども、ここで言わば権利性ということをうたい文句にしている文脈の中でそうしたことがどううまく織り込めるについては、引き取らせていただきたいということであります。
 以上です。
 山本委員、どうぞ。

山本委員 差別をしてはならないとされる主体といいますか、相手方の問題について質問をしたいと思います。17ページの部分です。ここでは、相手方の範囲は、例示されているものを見ますと、すべて事業者になっていると思います。これは、差別してはならないとする相手方を事業者に限るということなのかどうか。仮にそうだとすると、なぜ事業者だけがこのような負担を負うのか、それをどのように説明するのかということが問題になります。
 さらにもう一方で、本当に相手方を事業者に限定できているのかということも実は問題です。本や雑誌ですと、出版社のみが挙がっていますが、その著作者に当たる者も一定の情報の伝達の仕方について義務を負わざるを得なくなるのではないかと思います。つまり、情報のコンテンツに当たるものの著作者等にも、この義務が及んでいくはずだと思います。その意味で、事業者に限定し切れるとは思えないのですけれども、この点についてはどうお考えでしょうかというのが質問です。
 先ほどのラウンドの問題なのですが、やはり主体の問題で一言だけ指摘しておきたいことがあります。それは、公共的施設について一定の合理的配慮等の負担を課せられるという場合の、その主体が一体だれなのかということです。川内委員が少し指摘しておられましたけれども、建物の所有者なのか、建物を実際に使っている者なのか、その一方ないし双方なのかということです。公共的施設というのが何を指すのかということが問題でして、どのような建物でも、私的に使うことができるし、公共的施設としても使うことができる。必ずこのタイプの建物はこちらだということはあるかもしれませんが、家屋によってはもともと私的に使っていたものを公共的に開放して使うということも起こり得る。そのときに、所有者がそれらの負担を負うと一律に言えるのか。建物をどう使うかということは、使う人間の決めるべき事柄ではないか。建物を所有者から借りて一定の事業をそこで営んでいる者が負担を負うということもあるだろう。そのときに、所有者は負担を負わないのかという非常に難しい問題が生じます。
 これは詰めておきませんと、仮に差別禁止法でこのようなことを定めても、一体だれを相手に、何を求めればよいのかが決まらないという非常に難しい問題が出てくると思いますので、少なくともその点が明らかになるようなまとめをするべきではないかと思います。

棟居部会長 貴重な御指摘ありがとうございました。
 初めの事業者というくくりはなぜだ。またはそれが一貫しておるか。著作者なんかも含まれてしまうのではないかという御指摘ですけれども、情報というのはあらゆるところに行き届き、あふれかえっておるので、事業者という一定の線引きをせざるを得ないだろうということで、言わば直観的にこういう線を引いておるんですが、後知恵かもしれませんけれども、高度情報化社会でまさに情報を売るという形、情報で商売をするという形での産業が初めて成立しておるわけで、そういう例えばインターネット等の一定のインフラを利用して、例えばバス事業者のような道路を利用してバス事業で儲けるというようなものに近いイメージが、ここで挙げた事業者にございます。
 そうした高度情報化社会の最大の受益者であるまさに情報産業の事業者には、その情報を障害のない人だけに伝えるのではなくて、客を選ばずに障害のある人にもその障害に応じた適切な情報の伝え方というものを付加的に義務として負うべきではないかという、受益には義務が伴うのではないかという観点から事業者というくくりを出しておる。
 それから、著作者はというようなのは勿論、これは著作権というものに踏み込んでくる非常に大きなテーマになってくるので、これも大きなトラの尾が待っている。踏んでしまうとえらいことになるという意識で出版社ということで、著作者とは一線を画したような下手な書き方になっておるんですけれども、事業者という点でどこまで線が引けるのか。
 例えば今、アマゾン等では簡単に自費出版をして、いわゆる出版社、アマゾンが出版社かもしれませんが、特定の有斐閣とか岩波書店による出版ではない、そういう出版が可能になっております。決して電子書籍というだけではなくて、プリントアウトした格好で立派なものが送られてくるようですけれども、そうしたものを実際に出版するのは結局だれなのか。本人自身が言わば出版社化しているのではないか。こういうものも含めてもっと考えてみたいと思います。今すぐにはお答えできません。
 それから、公共的施設について要するに合理的配慮義務はだれに及ぶのか。その所有者なのか、それとも例えばテナントを丸ごと借りて店舗をやっていれば、そのテナントなのかという、そういう非常に重要な御指摘でありますけれども、私は公共的施設というのは言わばハード面で物理的に公共的施設としてそこにあります。それに伴い合理的配慮義務が出てきますということではなくて、あくまで公共的な利用をすることによって、例えばショッピングモールであれば不特定多数の人に対して自由に来てください、物を買ってくださいという公共空間を提供することによって利益を得ているという、その借り上げをしておるショッピングモールの事業主体あるいは大規模な百貨店やスーパーといった使用者、所有者ではない現実に公共的にその空間を利用して利益を得ている側が、義務を負うというふうに私としては考えています。これが多分、公共的施設ということから出てくる義務の自然な帰結ではないか。
 バリアフリーという場合には、これは勿論大きな貸しビルを地主さんがこさえたら、その段階でバリアフリー規制をクリアーしようとするでしょう。それは持ち主にかかっているのでしょう。これも私は法解釈に疎いのでいい加減なことは言いませんけれども、そこでバリアフリー法の規制と差別禁止法の規制は相手方が変わってくるかもしれません。

太田委員 確認をしたいんですが、私たち障害者団体が国会中継などに字幕や手話通訳をつけてほしいという要望を長年出していますが、この考え方が今、この法律ができれば法律の対象になりますよね。

東室長 一般的に言うと合理的配慮は個別性が強いということですね。だから要するに情報コミュニケーションの手段として、手話通訳というのは1つの在り方ではあるんですが、それがすべてどこでもその在り方しかないとか、それを提供することが唯一の義務だという形ではないと思います。その中の1つであるという位置づけです。
 国会中継の話では、それはまず国会の在り方について本法の適用があるのかということが1つ大きな問題です。ここで言う情報の提供の中に国会の情報提供の在り方は正直言って書いてありません。ですから、そこをどうするかということは議論していただかなければ書けないところであります。

棟居部会長 国会については本来は政治参加の方で、そういう情報保障も含めてカバーをすべきで、どこかに書けるようであれば先ほどの政治参加のところで書くべき部分を見つければ、書かせていただきたいと思います。

太田委員 ほかの市民が国会をテレビで見て情報を得ているのに、耳が聞こえないという理由で情報を得られないというのは差別だと思います。

東室長 そこで少し議論させていただかないといけないのは、国会中継の場合、国会の場で手話をつける。それをテレビで映して報道する場合と、手話なしの国会中継にテレビ会社が手話をつけるというのは、違う問題だと認識してください。
 要するに一般に手話がないシーンを報道機関は録画して報道するわけですけれども、ここで問題にしているのは、そういう報道をするときに字幕とか手話をつけろということを議論しているわけですね。今のお話は、国会の情報提供の在り方として、そこに手話をつけろという話なんでしょう。

太田委員 国会の生中継です。

東室長 生中継というか、国会の情報発表の形として横に手話通訳者をつけた形で発表しろということなんでしょう。

太田委員 手話とか字幕などをつけてほしいということです。

東室長 字幕ということになると、テレビ会社で報道するときに字幕をつけるかという話になって、それは国会の情報提供そのものの問題ではなくて、今ここで議論している問題だと思うんです。ただ、手話を横につけて記者会見するという問題は、国会の活動そのものの問題というところもあるでしょうということなんです。

太田委員 記者会見ではなくて国会中継です。

棟居部会長 国会の本会議については憲法上も会議は公開が原則とされておって、それは直接には傍聴の自由ということなんだけれども、そこに行けない人、これは障害があって行けないという方を特に念頭に置くと、テレビが果たす国会の会議の公開原則に対応する役割というのは非常に大きいですね。
 ただ、テレビでせっかく中継しておりながら、今おっしゃったように例えば画面上では手話通訳がうまく見えないとか、そういうことで十分公開原則が果たされていないとすれば、字幕等によるフォローアップが必要になる。これはすべてかなり具体的なガイドラインあるいは運用のレベルの話だろうと思います。
 ただ、国会の会議の公開については、先ほどの政治参加のところで本来もう少し意識すべきだったという反省はしております。ということでよろしいですか。もう時間を大幅にオーバーして写真云々どころではなくなってしまっておるんですが、情報というのは非常に広範なものを含みますので、長くなるのはしようがないかなという気もしておりますけれども、それにしても本来予定しておったこのコーナーの終了が30分ですが、今、4時05分になっております。ということで打切りにさせていただければと思います。どうも時間の管理が甚だ不適切で申し訳ありませんでした。
 これはもう終了しているんですよ。ここから後はですから全く第2コーナー終了後の休憩時間の使い方についての独り言的なアナウンスですが、せっかくそろっているので写真を撮りたい。それで最後の何kmかを走り抜くという決意を新たにしたいと思っておりますので、場所はどこがいいですかね。こちらにお集まりいただきましょう。勿論、写真はごめんだ、すぐに休憩したい方は拒否していただいて構いません。
 では、第2コーナーは以上です。第3コーナーは今、4時05分ですので、20分から再開とさせていただきます。

(休憩)

棟居部会長 再開します。時間が押しています。ですからあと30分ほどで終わらなければいけないスケジュールになっております。ということで極力私の方も、ごらんいだければおわかりいただけるような内容を敷衍するようなだらだらとした発言は差し控えたいということなんですが、資料1の部会三役の原案3【はじめに】というタイトルになっております全体の冒頭をなす部分。ずっと後回しにしてまいりました。今回これをお示しするわけであります。
 この【はじめに】の最初のところですが、推進会議と当部会における検討の経緯。これは歴史を語っている部分で省略させていただきます。
 続きまして2ページに行っていただきますと「2、障害分野における差別禁止法の世界的な広がり」。これは旧差別禁止部会で専門協力員の方々にお助けいただきながら、外国の法制については随分勉強させていただいたところであります。そうした点を踏まえましてごく簡単にここで各国の状況についてまとめております。
 3ページ「3、日本における立法事実の存在」。この立法事実という言葉にこだわりますのは、我が国では既に合理的配慮等は解決済みである。現行法で十分カバーできるということで、あとは個別の運用だけ。つまり立法として新規に差別禁止法なるものを起こす理由はないという意味での立法事実の不存在ということが、関係省庁から何度か聞こえてきたという現実がございますので、これは条約の批准、国内実施に合せて日本でも差別禁止法という法律をつくる意味がある。なぜなら、そういう法律をつくらなければ解決できないような社会的な現実、いわゆる立法事実がそこにあるからだということを指摘したいということです。
 具体につきましては現に先行する条例の制定の際に調査検討がなされておるところでございますが、千葉県、熊本県では800件、北海道では970件、さいたま市では521件、また、内閣府独自に8,000件の事例を集めているということで、この数字が多いのか、それともこれでも氷山の一角なのかという議論はあろうかと思いますけれども、現行法で対処可能としては多過ぎないか。やはり新規の立法、特に簡易迅速な救済といったものを加えた新たな立法が必要ではないか。また、一般の人々がわかりやすい形で何が差別に当たり、どういう合理的配慮が求められるかというわかりやすさという点も含めた立法が必要だ。そうした救済手続やわかりやすさという意味での要件の明確化。こうした点を踏まえた我々は立法の必要性をここで強調したいわけで、それがいわゆる立法事実の存在だというふうに述べたいという箇所であります。
 4ページ「4、障害に基づく差別の新規に関する法制はなぜ必要か」。これは今の繰り返しになりますが、重点を置いて述べておる部分をごらんいただきますと、5ページの真ん中辺り「差別はよくないことだ」という国民だれもが持つ考え方を形にしていきたい。何が差別なのかという物差しを明らかにし、これをしないことを社会のルールにする。今でも、つまりこの差別禁止法を設けていない現段階または条約の批准もしていない現段階でも、障害者差別が人格権の侵害といった形で裁判を起こされれば、慰謝料が認容されるといった救済、勿論、限られた救済かもしれませんが、これは現行法の下でも十分に可能と考え得るところなわけであります。
 しかし、裁判任せ、判例の蓄積任せでは時間もかかりますし、どういう行為が禁止され、つまり違法とされ、どういう配慮が求められるかという点については見えにくいわけです。現行法ではそもそも合理的配慮というのは判例上も出てまいりませんが、ともあれ不明確であるという1点をとらえましても新たに立法を起こしまして、また、ガイドライン等を含め明確化していく必要があるということをるる述べております。
 ということで必要不可欠だということを最後に強調し、また、ここは障害者政策委員会差別禁止部会一同ということで、日付は9月にしておりますけれども、これは最終の意見書をまとめる期日ということで、この【はじめに】について勿論過不足はあると思います。それはこれから限られた時間の中で御議論いただきたいんですが、最後の差別禁止部会一同ということで御承認いただければ、大変私としてはありがたいということで説明を終わらせていただきます。

川島委員 この【はじめに】の部分で追加していただきたいことがございまして、1つだけなんですけれども、社会権規約委員会が2001年9月24日に日本政府に対して勧告を出しています。その内容は社会権規約上の問題なんですけれども、特に労働権と社会保障の権利との関係で、法律上及び事実上、障害者差別が今でも存続していることに懸念するということを、日本政府に対して社会権規約委員会は述べた上で、更に日本政府が障害者に対するあらゆる種類の差別を禁止する法律を制定するように勧告する、としてもう10年以上前に勧告を出しているわけです。それを1つ書き加えていただければと思います。
 以上です。

棟居部会長 今の点につきましては、そうした経緯もあったという書き方なら可能かもしれませんが、恐らくこれもちょっと勉強不足で申し訳ないですけれども、日本政府側としては立法事実がないという言い回しと似たような形で、現行法で十分にカバーできる。もし問題があるとすれば、それは運用において個別に何か問題があるに過ぎないという回答を多分したのではないか。すると今回ここで改めて内閣府の中の一部会である我々として、そのときの宿題が残っておったような前提で書くというのは、少し矛盾指摘されないかという、非常に私は個人として危惧するという政府の側に立っておりますけれども。

川島委員 2001年段階では日本政府の意識が非常に低かった。今日になって、差別というものが本当に深刻なんだということが、この10年でようやくわかってきた。そういうような背景があるので、書いておくことに対しては特に問題はないかなと思っています。

棟居部会長 もし加えるとすれば、我々国民の中でどういうものが差別に当たるのかがわかりにくい。それをわかりやすくするという文脈と合せまして、諸外国から見ても国内法制として明確な基準の下でちゃんとしたものがとられている。それがわかるようにしていくというアピールをするという形で今の御提案を受け止めたいと思います。ありがとうございました。
 西村委員、どうぞ。

西村委員 ありがとうございます。時間がありませんので簡潔に申し上げたいと思います。それ以外の簡単な修文が必要だと思われる内容につきましては、後日メールをしますので判断していただきたいと思います。
 3ページ目の上段でアジア太平洋障害者の十年の最終年とありますが、これは第二次だと思いますので、その加筆が必要だと思います。
 5ページの中段落目には「差別はよくないことだ」云々かんぬんという書き方があるんですが、5ページの一番下の段落の「以上を踏まえ」の段なんですけれども、ここの2行目には「どのような差別が許されないのか」と書いてますが、では許される差別があるのかとなりますので、どのような行為が差別なのかと修文した方が中身が適切に伝わると思います。
 その他は細かい部分ですので、これは改めましてメールしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

棟居部会長 貴重な御指摘ありがとうございました。
 なお、後日メールということですが、我々は非常に時間が切迫しておりますので、これは注文がましくて恐縮ですが、早急にお願いしたいというのと、既にある委員が申し出てくださいましたが、今日中に赤ペンを入れたものを置いていくという形で積極的に御協力いただければ、なおありがたいと思います。

浅倉委員 4ページの2段落目「これらの事案は」と始まる部分ですが、いじめや侮蔑といったハラスメント思われる事案等も存在する一方と言って、差別としか言いようのない事例も多いという、なぜこのように書かれているのか。議論の経緯を見るとわかるのですが、ここだけを読むと、何か侮蔑、ハラスメントが差別ではないと言っているようにしか思えないので、ここは少し修文された方がいいと思います。むしろ、これらの中には・・・というのを削除して、差別と思われる事案として集められたものである。これらを通して見るとさまざまな実態が浮かび上がってくる。そういうふうにした方がいいかなと思います。

棟居部会長 勿論、文意としてはいじめや侮蔑といったハラスメント、すなわち従来一定の救済のルートや手法がそれなりに用意されていると思われる事案以外に、これまでそのような救済の手法やルートが与えられてこなかった純然たる差別の事例も多々あるというニュアンスなんですけれども、要するに法律あるいは役所の縦割り的な感覚がここにあるのは紛れもない事実ですので、もう少し何かいじめや侮蔑が差別とは無関係であるという誤解を生まないような、包括的な書き方にしていきたいと思います。ありがとうございました。
 引馬委員、お願いします。

引馬委員 4ページ「4、障害に基づく差別の禁止に関する法制はなぜ必要か」の2段落目になります。「それでは、障害者と障害のない人が社会の中で接する機会を今以上に増やせば、差別はなくなるだろうか」とあり、その後文章が続きまして、次の段落は「しかし」でまた文章が始まっています。
 この今、申し上げた文章ですが、読み方にもよるかもしれないのですけれども、鶏と卵の関係の整理が全体としてもう一歩なのかなと。全体と言いますのは4の中を指していまして、その部分の印象です。差別とは何かという基準を、つまりその物差しをこの法律で示すという目的が、最終的に障害のある方の社会参加や、障害のある人とない人の共生を促進することであるならば、つながりや関係性をもう少し整理する必要があると思います。

棟居部会長 おっしゃることはよくわかりました。つまり、機会を今、以上に増やすというのも差別禁止法によって初めて達成されるのではないか。しかし、ここでの書きぶりはあたかも一般の施策として、障害者と障害のない者との共存の機会を増やしていけば、そういう社会の啓発の中でおのずと解決される問題も多々あるだろう。しかし、差別禁止法の必要はなお残るという書き方なので、整理ができていない。今おっしゃっていることを聞いていると、この4ページの一番下の5行はカットしてしまって、前後をうまくつないでいきたいと思っております。座りがいいかなと思って中二階みたいなものを入れたんですけれども、かえって誤解を招くということであればカットさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
 もしよろしければ【はじめに】につきましては、後で赤ペン等の修正提案は置いていっていただけるということを期待しつつ、次に移らせていただきたいと思います。
 次に、ごく短時間ですが、資料3及び資料4に基づきまして、3の方が修正反映版ということできれいに清書したもの。4が見え消しの修正箇所表示版というものですけれども、中身は同じものでございます。部会三役の原案1の修正2というもので、この2点を用いまして私から若干のお時間をちょうだいし、御説明を申し上げたいと思います。その後、ごく短い議論をしていただくということでお願いしたいと思います。
 見え消しの方がわかりやすいと思うんですが、どういう点を以前の御議論をちょうだいした後にいじっておるかというところで、御自分の御主張がちゃんと反映されているか。修文すると言ったけれども、直っていないではないかということを中心に各自ごらんいただければいいのではないかということで、御自身でめくっていただいている間に私の方からアナウンス的に申し上げますと、類型ということで5ページの直接差別、間接差別、関連差別、合理的配慮の不提供と4つあるんですが、それぞれについてどういうものなのかについて、言わば教科書的と言うのか説明的な記述を加えておるわけであります。特に関連差別については資料4の6ページをごらんいただきますと、世界保健機関が示した分類等の知見を引用しておるところであります。
 更に、結局一本化をするというのがこの部会での到達した結論なわけですけれども、これはこの6ページの下、直接差別、間接差別、関連差別の関係についてということで、まず間接差別と関連差別の関係、そして直接差別と関連差別の関係、ここらは余り修文していないところですので取れませんが、そうしたものを比較しつつ、8ページに不均等待遇という1つのカテゴリに持っていこうということで、ここでいろいろ説明をしておりましたが、これを先ほど読み上げました前に回したりして、全体の構成をすっきりさせておるということであります。
 以下、修文の少ない部分はずっと飛ばさせていただきまして、以上ということで見え消し版の方で専ら説明いたしましたが、ですから御意見をちょうだいするときは見え消し版で言っていただくと私はありがたいんですけれども、修正版の方でも勿論結構です。御意見ございませんでしょうか。5分ほどで済ませたいと思っております。
 大きなハードルというのか、とにかくカテゴリについて散々議論したけれども、結局、不均等待遇という一本に持っていくとか、しかし、世界の趨勢とある意味異なる扱いですので、世界の概念論をちゃんと踏まえているんだというようなあいさつをする必要がある。何かローカルなルールを勝手にこさえているのではないんだという意味合いで、WHO等々については詳しく書いておるつもりであります。
 時間を省略する観点から、引き続き原案2-1の修正1に移らせていただきまして、もし今、触れました原案1の修正2についても御指摘があれば、後で一括して伺うという格好でよろしいでしょうか。では、そのようにさせていただきたいと思います。
 資料5が清書版で資料6が見え消し版でございます。この見え消しの方で私は説明をさせていただきますけれども、まず国の基本的責務というところで、関係事業者を含む国民に障害者の置かれている状況を明らかにすることが求められるといった文章にしております。
 「第1、国の基本的責務」の「2、ガイドラインの作成等」ですが、国が何をなすべきかということについて、合理的配慮を実施する上での技術面や考え方等について相談に応じ、これに対して助言をすることが求められるという、これも少し腰の引けた言い方かもしれません。本当は条約を実施する直接の義務自体は条約に判こを押した国自身ですから、もっと踏み込んでいろんな助言や施策を講じなければいけないということなんですけれども、ガイドラインというもので国民各層が混乱のないようにしていくということを、こういう表現を用いてしておるつもりであります。
 そして、更にというところは支援の中身ですけれども、過度な負担により合理的配慮の実施が困難とならないための技術的支援、財政的支援、税制措置等を検討することが求められる。これも予算を場合によっては伴う、お金が動く話であります。あるいは税制面で公助といったことを認めると入るはずのものが入らないという点で、さまざまなコストの観点からの抵抗や懸念も想像されるところでありますけれども、これだけ大きな施策で、言わば従来の障害者に専らツケが回されるような社会の構造になっていたものを、国際標準に合わせて改めていこうという高い志の立法でありますので、そのための特に日本が誇るIT技術等を駆使すれば、かなり実は問題は解決できるものもあるのではないか。
 または健常者と呼ばれる障害のない方々に対しても、十分な恩恵が行き渡る。日本社会全体の効率もアップするのではないかといった、全体的な視野に立っている国としては技術支援、財政支援、税制措置等を考えるべきであるということをあえて提言させていただいておるわけであります。
 勿論これは次の2ページの「4、関係機関の連携の確保」が、この法律に関してはあらゆる局面で、先ほどから何度も言っているトラの尾を踏むということになりかねないんですけれども、関係機関の連携の確保ということが非常に必要であるということを、当たり前のことを強調いたしました。
 2ページの下の方で、男女共同参画という観点から障害のある女性について特に特記をするということ。また、児童虐待とかDVに関しても言及をすることを3ページで行っています。また、欠格条項につきまして障害または障害に関連した事由によってという表現に改めて、障害があるというだけでという従来の表現を消したということであります。
 地方公共団体の責務ということでございますけれども、差別のない地域社会をつくる主体としての積極的な取組みということで、国の取組みに準じたではなくて、むしろ先行しておるところもあるぐらいでありますから、地方についても言わば第一次的な責務の主体なんだという表現を用いております。
 国民の責務ということですが、民間事業者を含む国民各層ということで、特に民間事業者には非常に大きな、いろいろな施策が求められる、合理的配慮が求められることにどうしてもなりますので、あえて事上げをしたということで、この説明を終わらせていただきます。

川島委員 ありがとうございます。
 資料4の1ページの正当化事由なんですけれども、前回と今日も若干指摘させていただきましたが、不均等待遇の正当化事由として扱いがやむを得ない場合というのが、つまり正当な目的があって、他の選び得る手段がないんだ、という話が先ほどあったと思うんですけれども、その点についてこのままでいくのか、目的・手段という形の正当化を設定するのかというところについて、御検討いただけますと幸いです。

棟居部会長 資料4で言うと11ページの正当化事由のところをおっしゃっているのでしょうか。

川島委員 そうです。資料4の11ページの正当化事由のところで「正当な目的の下に行われたものであり、かつ、当該取扱いがやむを得ない場合」とありまして、その当該取扱いがやむを得ない場合というのはどういう場合か、ということを表現する場合に、正当な目的があってその目的を達成するために他の選び得る手段が全くない場合にやむを得ない場合だと。つまり、正当化されるのではないかという話があったと思うのですけれども、そういうわけではないんでしょうか。

棟居部会長 つまり、正当な目的の下に行われたものであり、A&Bのように「かつ」ですから、その前と後を分けて書いているつもりなんですけれども、川島委員は恐らく正当な目的の下に行われたものであり、かつ、当該取扱いがやむを得ない場合というのは、何か全体として正当な目的の方に力点が置かれているという、手段というのが薄くなっているという印象を持たれたということでしょうか。

東室長 要はやむを得ないという場合の中身について、今おっしゃったことを入れろという修文提案と理解していいんですか。

川島委員 ちょっと混乱しているので簡潔に言いますと、合理的配慮の場合は過重な負担、不均等待遇の場合は目的手段で正当化するということで、先ほどそういう話だったと思うので、ここでは差別というのはやむを得ない場合に許される。すなわち正当な目的の下に行われたものであり、かつ、その目的を達成するために他の選び得る手段が全くない場合に、当該取扱いは例外的に是認されるという趣旨なのかなと思いました。

東室長 11ページ上から8行目の終わりから「当該取扱いが客観的に見て、正当な目的の下に行われたものであり、かつ、当該取扱いがやむを得ない場合においては、不均等待遇は例外的に是認されることとすることが適当である」と書いてあるんです。この表現は目的と手段を分けて両面から考えるということを意味しているとこちらは理解しているんですけれども、川島委員の表現としては、これをどういうふうに変えたらいいということですか。

川島委員 私の意見としては、これは部会長がおっしゃられたように、手段という側面が、読んでいる方としては明確に、一義的にとらえづらいところがあるので、当該取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、かつ、その目的を達成するための他のより制限的でない他の選び得る手段がない場合においては、その扱いは例外的に是認される、という目的と手段。もしくは正当な目的というところが、やむを得ない正当な目的。それはちょっとくどいので正当な目的でもいいかなと。

棟居部会長 裁判所が判断するときにいわゆる審査基準と呼ばれるものをそのままこの基盤の中に取り込むというのは、言いようで多分余りよくないというふうに個人としては感じておりまして、恐らく川島委員がおっしゃることは、当該取扱いが手段としてやむを得ない場合にはという、手段としてぐらいは挿入しておけば一応クリアーされるのではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

川島委員 ちょっと私も。

棟居部会長 時間がありませんので修文の提案をお願いできませんか。

川島委員 とりあえずこれは、これでやめておきます。

棟居部会長 今50分です。そして、すべて終わるのが10分後なんです。それには記者会見等も入っておりまして、ですからお一言ずつでお願いします。

池原委員 欠格条項のところで資料5の3ページすけれども、3の項目の第4段落2行目「最低限の要件や能力に関わる制限の必要性を踏まえつつも」の後に、前回もちょっと言って私の方で修文を出さなかったので申し訳なかったのですが、本意見書第4、IV、6)に照らしてというのを入れる。そこが正当事由についての項目なので、本意見書第4、IV、6)に照らしてというのを入れていただくと、統一がとれていいと思います。

棟居部会長 ありがとうございました。
 加納委員、どうぞ。

加納委員 ありがとうございます。
 資料6で見ていただいた方がいいかと思います。2ページ「第2、国の基本的責務に関して特に留意を要する領域」「1、障害女性」の3つ目の段落でございます。大変御尽力いただいたことにまず感謝申し上げます。
 もう一声頑張っていただきたいために、次のような文章を後で修文の提案を持参させていただきますので、よろしくお願いしますが、読み上げるだけにいたします。この第3段落をこのようにしていただきたいということです。
 「このように男女共同参画の分野では、『障害のある女性』が取り上げられるようになったが」の次です。加えていただきたい。障害者に関わる統計には、現在も男女別統計がほとんど示されておらず、その結果、差別防止の観点を踏まえた具体的な施策の実施やモニタリングは不足している。この「と言われている」は消していただいて、不足していると言い切っていただく。「同時に」の後の部分を、2010年12月の第二次意見のところで出ている文言を活かしたいと思います。これまでの障害者施策には、差別や不利益を受けるリスクの高い女性が置かれている実態を問題にする視点が欠落していたというふうに入れていただければいかがかと思っております。
 以上です。

棟居部会長 ありがとうございました。修文案をお届けいただくということで検討させていただきます。取り込む方向で、ただ、整合性の問題などありますので検討します。
 ということで、もう5分ほどしかというか、もう5分も実はなくて3分ほどしかないんですけれども、最後に部会三役の原案2-2の修正1という資料8【簡易迅速な裁判外紛争解決の仕組み】という、ここについて今日これも時間がありませんので、私から要点だけまずぽんぽんと申し上げます。そして、ここについて修文案があるという方は後で持ってきていただく。また、もっと大きな何か例えば最後の辺に多少この私の専門に関わるようなことで何か書いておるんですけれども、これはおかしくないかとか、要らないだろうという御指摘については、勿論、謙虚に承りますが、場合によっては次の冒頭で指摘いただいたことについて若干お答えするとか、何か時間を設けることができればなと個人的には思っています。両三役がそんなのはだめだ、今、終わらせろとおっしゃるかもしれないけれども、物理的にどうかなということで、とりあえず100m走るつもりで今ちょっとやってみますと、自主的な解決の仕組みと促進という見え消しの1ページ目についてるる書いております。これは2ページ以下、第3というところで自主的な解決の仕組みと第三者が関与する解決の仕組みという、これを書いていたこの自主的な解決を前に回したという構成上の問題。
 それから、第3が関与する仕組みについて、いろいろ修文を加えているというのが3ページ辺り。
 多数の段階を設けておって、そこには権利性が弱いのではないかという御指摘があった3~4ページの相談、調整等々を丁寧に書き分けてみましたが、これはある程度ひっくるめてまとめたというふうにして、何か丸め込んでしまう権利性を認めないという誤解が生じないような書き方にしたつもりでございます。
 4ページの下、3)実効性の担保なども修文をしたところでありまして、6ページの国内における実施及び監視というところについて、るる条約との関連性というものを書いておる。
 7ページは司法判断の裁判規範性というところをいじりまして、法的効力というものを独立させまして、ある程度丁寧に書いていくという、これは私の独自説云々ということではなくて無難なことを書いたつもりなんですけれども、まだこういう場に紛れて勝手なことを言おうとしておるというお叱りがありましたら、御遠慮なくどうぞということで、ただ、長くなるでしょうですからこれは早急にメール等で承る方がよいのかもしれません。
 ということで説明は以上です。一言、二言あればどうぞ。

遠藤オブザーバー ありがとうございます。7ページ目の法的効力のところです。2つ目のパラグラフの「仮に」以下で「本法は憲法が人種等と並んで差別を禁止する『社会的身分』に障害者が含まれるとの解釈を前提とするものであり」について、私は全く知見がないものですから、少し解説いただけるのであれば幸いです。

棟居部会長 これは憲法14条1項に平等についての規定があるんですけれども、その後段と呼ばれる後半部分に人種、心情、性別、社会的身分、門地といったことが列挙されておって、特にそれについて差別を禁止しておるという読み方が一応は主流である。
 判例上、必ずしも人種、心情、性別等々を特別扱いするというふうに裁判所が考えているわけではないんですけれども、これは以前、厚労省の委員会の検討等の中でも障害者についてあえて個別の列挙を、どの法制度の上でだったか失念しましたが、入れなくても憲法上のいわゆる社会的身分というものには障害者も含まれてくるんだといった理解もそこで示されておったように、今、1つの例示に過ぎませんけれども、憲法の社会的身分という言葉は非常に曖昧模糊としておりますが、具体的には自分の意思でそうなっているわけではなく、他方で社会的にはいろんな偏見にさらされてきた歴史があるんだという、こういう類型の方々を社会的身分という耳慣れない言葉で呼んでおるんだという解釈は一般的で、つまり学者が勝手に言っておるのではなくて、厚労省の現場でもそういう解釈、運用がなされておるように、かなり一般的な考えだろうと思います。
 という観点から、障害者についても憲法14条の単に不合理な差別をしてはいけませんというのが最初に書いてあるんですけれども、それにとどまらずに、むしろ社会的身分といったものに該当することによって、その障害者とそうでない者という要件のところでそのような書き分けをしておれば、これは極めて疑わしい。
 つまり、憲法違反であるという推定が働いて、そうではありませんよという国等の側が一生懸命正当化の理由を立てていく必要があるといった、天秤の向きが変わってくる。これは女性差別を念頭に考えていただくと非常にわかりやすくなると思います。今、女性はだめだ、つまり男子限定なんていうのは論外ということですね。そういう初めから排除してしまうという形で障害者という類型を何か要件で設けるというのはだめですよと。憲法ですから直接には国や自治体を縛る規範なんですけれども、男女雇用機会均等法にそれが民間の関係にも及ぼされてくると、採用等でも女性だから排除するというのはだめだ。同じような考えの方向で、我々は障害者差別の問題についても10年遅れ、20年遅れなんでしょうが、少しずつ障害者という特殊なテーマですけれども、法制度を積み上げようと今している。
 それを現行法でどうなのか。憲法とかは何も言っていないのかというと、そんなことはない。ここに当てはまるという解釈が普通にはなされますよと。だから逆に言うと憲法と裁判所のよき判断だけでも、慰謝料ぐらいは取れるだろうというのが現状としてあります、言えます。だけれども、それでは足りないだろうということで先ほどからるる述べておる差別禁止法の要件の明確化、簡易迅速な救済手段という、そこを頑張りましょうという話をしておるところですね。
 ただ、原点に帰ってそもそも我々は何をしているのか。特に民間で私人対私人の関係でいきなり今まで存在しなかった何か新規な権利がぽっと出てくるということに対しては、非常な違和感を事業者の方は持たれると思うので、これは今、法律が何もないところでも人格権侵害とかそういう一般原則の援用の格好で、これは事案によりますけれども、殊更に相手の人格を否定するような排除をすれば、慰謝料等ぐらいまでは行くんだ。更にそれを明確化していくという共存の仕組みを整えていこうというのがこの法律ですという、全体の立法の精神を織り込んだつもりであります。
 何か趣味に走っているとか、自分がしんどい思いをしたから最後ぐらい言わせてほしいとかいうのがないわけではない。そのとおりなんです。だからこれは要らないと言われたら切っても別に何も全体の構成には関係ありません。ただ、1つの論点にはなり得るんです。何もないところに無理して権利を入れるということではないんだということを言いたいということです。
 時間オーバーをして申し訳ないです。これ以上の時間は使いませんので、申し訳ありませんが、今日はここで打ち切りとさせていただき、修文についてはお持ちいただく、また、メール等で御意見があればすぐにお寄せください。場合によっては次回の冒頭の時間等を使ってお答えをしたいと思います。どうも今日はありがとうございました。
 なお、ここで終わらせるわけにはいきませんで、議事はこれで終了しました。最後に東室長から御報告をお願いします。

東室長 どうも御苦労様です。
 メールの話が今、出ておりましたけれども、来週の火曜日までということで時間は区切らせていただきたいと思います。御協力お願いします。
 それと、次回は第3回になりますが、各論についての後半の部分を8月31日金曜日13時から17時まで議論します。今日も2時からだと思って来られた方がいらっしゃるようですが、1時からです。場所が実はここではなくて内閣府本府の仮設庁舎となりますので、これは改めてわかりやすい御案内をしたいと思っています。
 なお、第4回につきましては9月14日金曜日、これも13時から17時まで、同じく仮設庁舎で行う予定です。この第4回で意見書をとりまとめる予定でありますが、万々が一のために9月28日も予備日としてとっておりますけれども、この予備日は使わなくて済むように頑張っていければなと思っているところでございます。
 報告としては以上でございます。

棟居部会長 どうも時間オーバーをして済みません。ありがとうございました。
 本日の差別禁止部会の概要につきまして、この後、記者会見において私と伊東副部会長、竹下副部会長、東室長から説明させていただきます。
 本日はお忙しい中、また、このお盆時にもかかわらず、お集まりいただきまして誠にありがとうございました。