障害者政策委員会 差別禁止部会(第4回)議事録

平成24年9月14日(金)
13:00~17:00
内閣府本府仮設庁舎講堂(2階)

【議事に使用されている資料については「議事次第」のページにまとめて掲載していますのでご参照ください。】

棟居部会長 定刻になりましたので、これより第4回「障害者政策委員会差別禁止部会」を開催させていただきます。
 差別禁止部会は、傍聴希望の方に所定の手続を経て公開しております。
 また、会議の模様はインターネットを通じても幅広く情報提供いたします。
 なお、御発言に際してのお願いとして、発言を求めるときはまず挙手いただき、指名を受けた後、御自身のお名前を述べられてから、可能な限りゆっくりと御発言いただくようお願いいたします。
 本日の会議は17時までを予定しております。
 それでは、東室長から委員、オブザーバー及び専門協力員の出席状況と、本日の予定、資料説明をお願いします。

東室長 どうもこんにちは。担当室の東です。よろしくお願いします。
 最初に障害者政策委員会及び差別禁止部会を担当しております、内閣府共生社会政策担当統括官が異動で交代しております。村木厚子前統括官にかわりまして、新しく就任しました山崎史郎統括官に、一言御挨拶をお願いいたします。

山崎統括官 9月10日付で政策統括官を拝命いたしました山崎でございます。
 この障害者政策は大変大事な場面になってございますので、私どももしっかりと取り組みたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
 以上です。(拍手)

東室長 どうもありがとうございました。
 それでは、本日の出欠状況でありますが、ただいま数名の方がまだ御着席願っていませんが、来られると思います。
 引馬委員だけが、きょう御欠席という御連絡を受けております。その他の皆さんは御出席です。
 本日の議事は前回に引き続きまして、意見の取りまとめについてということであります。
 まず、資料の確認でありますけれども、資料1は「障害を理由とする差別の禁止に関する法制」に関する差別禁止部会の意見(案・全体版)となっております。前回8月31日に議論していただいたものを基に、部会三役で修正したものを反映させたものでございます。
 資料2につきましては「障害を理由とする差別の禁止に関する法制」に関する差別禁止部会の意見(案・全体版)ということで、これは修正の箇所がわかるような形で書いてあるものです。修正箇所表示版となっております。
 以上が資料でございます。資料があるかどうか御確認のほどお願いします。
 続きまして、本日の予定でありますが、15分の休憩を2回とることとして、3つのコーナーに分けて行っていきたいと思います。
 まず第1のコーナーは60分ほどを予定しております。意見取りまとめ(その1)となります。ここでは「はじめに」「第1章 総則」「第3章 紛争解決の仕組み」について時間をとっております。最初に、簡単に部会長より主な修正点の説明をいただいた後で、質疑及び討論という形で進めたいと思います。
 第2のコーナーは60分ほどです。部会意見取りまとめ(その2)ということで「第2章 各則」の中で「第1節 公共的施設・交通機関」「第2節 情報・コミュニケーション」「第3節 商品・役務・不動産」「第4節 医療」「第5節 教育」というところまで、先ほどと同じようにまず修正点の報告をいただいた上で、質疑及び討論を行います。
 第3コーナーは60分で、部会の意見の取りまとめ(その3)です。「第2章 各則」の中で残りの「第6節 雇用」「第7節 国家資格等」「第8節 家族形成」「第9節 政治参加(選挙等)」「第10節 司法手続」につきまして、同じように修正点の報告をいただいた後、質疑及び討論を行います。
 それでは、これが終わりました最後のほうで若干の報告事項がございます。
 以上が本日の予定です。よろしくお願いします。

棟居部会長 ありがとうございます。
 それでは、議事に入らせていただきます。
 第1コーナーは60分で、部会意見の取りまとめ(その1)でございます。まず「はじめに」「第1章 総則」「第3章 紛争解決の仕組み」につき、最初に私から10分程度で報告させていただき、その後、質疑及び議論を行います。
 お手元の資料2の修正箇所表示版、いわゆる見え消し版をごらんいただくと、どういうふうに書いたり消したりしてきておるかというプロセスが見えますので、こちらのページ数で以下、説明を簡単にさせていただきたいと思います。
 修正部分の説明ということで「はじめに」から入ってまいりますけれども、全体としていろんな箇所、赤で書いたり消したり、あるいは違う色のものもございます。主にできるだけわかりやすくという表現上の修正あるいは誤字等の修正はいたしたつもりですが、特に誤字等については残っておる可能性がございます。これはある意味、非常にこの意見書の全体の信頼性を揺るがしかねないということがございますので、お気づきのところはぜひこの平場で、あるいは後で肩をぽんとたたいていただいて、小学生みたいな嘘字を書いておるではないかという御指摘をしていただく。ですから、誤字をどんどん教えていただくというのをきょう皆さんにまずお願いしたい。非常にお恥ずかしいお願いで恐縮ですが、その点もよろしくお願いします。
 今、言いましたように、表現上のわかりやすさというものの観点からの修正については、きょう一々の御説明はいたしません。非常に内容にわたるものもこれまでの議論を踏まえてでございますけれども、今回、実質の最後ということでいじっております。その点を中心に御説明をさせていただき、御意見を賜るというふうに進めさせていただきたいと思います。
 ということで、ではようやく「はじめに」ということで、お手元の資料2、見え消し版の3ページをごらんいただきますと、この上のほうに赤字で赤線が引いてありますが「この結果、EUにおいて」という部分。これは世界の動き、EUの動きについて若干説明補強をしておるということと、読みやすさの観点からの修正といったものを加えております。
 続きまして8ページに飛んでいただきますと、総則となります。この8ページの一番下に脚注をつけております。「本意見書においては『障害者』は『障害児』を含むものとして使用している」。こういう念のために脚注をつけました。
 同じくこの8ページでございますが「2、相手方を一方的に非難し制裁を加えようとするものではないこと」というタイトル、この表現を本文中にも入れております。これは内容にわたる修正あるいは追加ではございませんで、単純に表現上の統一性という観点からのものです。
 10ページ「第1章 総則」の「第2節 国等の責務」に入ります。この「第1、国の基本的責務」の「1、差別防止に向けた調査、啓発等の取組」ですが、どういった知識の普及なのかということについての例示。例示と言ってもそう具体的なことを書いておるわけではありませんが、どのような行為が差別に当たるのかなどの知識の普及というふうに、文章を少し追加しました。
 12ページ「2、障害に関連して行われるハラスメント」であります。これは従来「障害に基づくハラスメント」という表現をしておりました。しかし、ハラスメントにつきまして障害との関連性という観点から、より広い表現として今回この「障害に関連して行われるハラスメント」という表現に改めています。
 16ページに行っていただきますと「第3節 障害に基づく差別」という、今、ハラスメントのところでは「基づく」というのをやめて「関連して」というふうに、少し緩やかなつながりの表現に改めましたが、第3節の表記はもちろん「障害に基づく差別」という本来の表現がここでは当てはまるわけで、これは当然いじっておりません。
 16ページの青字のところであります。「なお、本意見書では」というところですが、権利条約では「合理的配慮の否定」という表現がされています。「合理的配慮の否定」という訳語が当てられております。しかし、これはわかりにくい日本語と思います。そこで、本意見書では「合理的配慮の不提供」「合理的配慮を提供しないこと」「合理的配慮をしいこと」といった言葉遣いをしています。これは従来からそのような言葉遣いをしてきましたが、わざわざといいますか、注意的にここに書いています。
 ごめんなさい。費用の節約という観点か、あるいは私がよくフォローできないというか、忘れてしまうということか、カラーなのは私の手元だけで、皆さんのお手元はまさに見え消し版の白黒ということで、今、青とか赤とか言っておりますけれども、皆さん色はないのだと。棟居には青に見えておるという御理解のもとに、今、16ページの「なお、本意見書では」という部分を読み上げましたが、そのように御理解をください。大変失礼しました。
 飛びまして26ページに行っていただきますと「3、合理的配慮が求められる対象範囲」というところでございます。ここで消しておりますけれども、これはその下「4、合理的配慮の内容」に文章を簡略化しつつ移しております。ということで、内容の配置を少し見直したということであります。
 同じく26ページ「4、合理的配慮の内容」で従来、具体例の典型としてこの3つ、26ページの下に「1)基準・手順の変更」「2)物理的形状の変更」「3)補助器具・サービスの提供」ということを挙げておりましたが、これは具体例の典型という整理を従来しておりましたけれども、むしろ3つの視点で考えるという観点からの記述であると捉え直ししまして、そのような書きぶりに改めています。ごちゃごちゃとわかりづらいことを申しましたが、単なる例示というよりは物の見方、3つの観点なんだという理論的な整理をしたということでございます。
 続きまして27ページ、28ページをごらんください。これまでは「4、合理的配慮の内容」の後に「5、正当化事由」を持ってきておりました。しかし、ガイドラインの設定というものを前に持ってきたほうがいいということで、従来6であった「ガイドラインの設定」を5に移しております。そして5でありました「正当化事由」を6としております。こういう順番の変更をこれまた体系的あるいは理論的な理由からしておるということであります。
 以上が「第1章 総則」についての御説明でありまして、この第1コーナーで予定しておりますのは、もう一つ第3章というものがございますが、これは一挙に83ページまで飛んでいただきますと「第3章 紛争解決の仕組み」というところでは、この83ページの1カ所のみ実質の修正を加えております。
 すなわち83ページの2段目の記述のところでありますが、調停等の手続の中で知的障害者等の本人の主張を支え、表現し切れない部分を補う役割を果たす人材の配置の必要性があるということで、その旨の記載を加えたという実質の変更をこの第3章についてはしております。
 第3章については以上であります。
 ということで、この第1コーナーでは第1章と第3章につきまして、以上ごく簡単に御説明申し上げました。今の点も踏まえまして御意見、御議論を賜ればと思います。
 なお、既にいろいろな御意見をかねてよりちょうだいしておるところでありますが、この障害に基づく差別につきましては、竹下副部会長に機能障害という観点についてどう捉えるかについて、今、何かおっしゃいますか。あるいは後。

竹下副部会長 後にします。

棟居部会長 わかりました。どうも大変失礼いたしました。
 では、以上で第1コーナーで予定しておりますところの私側の説明、第1章並びにこれはごくわずかでしたが、第3章についての今回の補足、修正についての御説明を終えまして、皆様方に御意見を賜りたいと思います。
 なお、この第1コーナー全体の時間は14時10分までを予定しておりますので、時間は比較的たっぷりございます。
 では、お願いします。川内委員、お願いします。

川内委員 川内です。
 25ページの下から2つ目の段落というか、塊ですが「上記の例でいえば、二階フロアーでの買い物を希望する障害者に」云々とあって、それの3行下に、また「二階フロアーでの買い物の機会を障害者にだけ提供しない」と書いてあるのですけれども、フロアーは要らないのではないかと思います。

棟居部会長 わかりました。この記述のイメージは、非常に狭い店舗にたくさん下から上まで壁に物を積み上げておる店舗、安売りの店舗ですね。しかも都市型というか、大都会のど真ん中にある、そういう店舗の形態が今、若い人の間で非常にはやっておるようで、通れないぐらい人がたくさん客が中にいるというようなことがありますが、そういった店舗形態をイメージしましてフロアーという言葉を使っておるので、このフロアーというのは別にあってもなくても構わないのだろうと思いますけれども、あって悪いかなというのもちょっと。

川内委員 そういうふうに意図的ならば結構ですが、普通は余り2階フロアーとか3階フロアーではなく、2階とか3階で買い物するということだろうと思ったので申し上げました。こだわりで使っていらっしゃるなら結構です。

棟居部会長 室長、お願いします。

東室長 今のは「二階」までも削除すべきだという御意見だと思いましたけれども、フロアーという言葉だけですね。要するに「二階フロアーでの買い物」というところを消すと、1階ではできるのではないのという話が出てきますので。

川内委員 ごめんなさい、フロアーだけです。
 それから、同じ塊の2行目ですが「例えば、人力で二階に上げるとか」とかという、この例えは、例えばエレベーターを設けるとかほかのものであって、人力というのは全く選択の外としていただきたいのです。

棟居部会長 室長、お願いします。

東室長 エレベーターがないような、例えば2階建ての建物も随分ありますね。そこでエレベーターをつけることが合理的配慮だというふうに決めつけて書いてしまうと、現実問題どうなのかというところもあって、典型例としてエレベーターを書くということは部会三役の中でも、それはどうかということだったのです。もちろん、できればという形で書けばいいのでしょうけれども、すべて過度な負担ということを考慮なく具体例として挙げるのは、適切ではなかろうかということを部会三役で話し合ったところです。

棟居部会長 川内委員、よろしいですか。

川内委員 余り納得していないのですけれども、後でそちらに休憩時間にでも行って、御相談したいと思います。
 もう一点あるのですが、以前に合理的配慮の内容についてというか、定義について私が少し御質問したことがあって、公的な最低限のリクワイアメントの上に乗せるものが合理的配慮なのか、それとも法的な求めそのものも含めて合理的配慮なのかというのをお聞きして、部会長のほうからは法的な最低限の要求も含めて合理的配慮なのだという、コップの中に水が半分入っているとかという非常にわかりやすい御説明をいただいたのですが、それは口頭であって、ここの文章の中で合理的配慮の定義というのが余り明確ではないように、一部に定義が難しいので実例を並べるのが有効だというふうなことが書いてありましたけれども、法的と言う場合、常に最低限を求めているわけですが、そういう最低限の法的な求めも含めるのか含めないのかというのは、どこかに書くべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

棟居部会長 その点については、前回コップの比喩で言わんとすることはおわかりいただいたというふうに私は手ごたえを感じましたが、しかし、ある意味重要な議論はそこでせずに済ませておるところもあります。ただ、今これを詰めるのかというと、非常にこれは理屈の上でも多分難しい話で、また、専ら差別禁止法の合理的配慮の問題だというふうに、例えばバリアフリー法のような従来からのハード面の規制も全部こちらが引き取ってしまうと、今までは所管官庁でどんどん予算をとって、せっせとしていただいておったものが、どうも性格づけが変わってしまうと、言わばそういう最低限の保障のところも全部あやふやにならないかなと。あやふやという言い方は変かもしれませんが、そういう意味でいじりたくないなというのが少しあります。
 室長、どうぞ。

東室長 担当室の東です。
 ここでは政策としてどういうものがいいかということの議論ではなくて、あくまでも差別の1つの類型として議論しているところなのです。そういった意味で最低限ぎりぎり、ここから先、これもできないのであれば差別だよというところを議論しているわけです。ですから、もう少しこういうものがあればもっといいなというレベルの話をしているわけではないわけです。そういう意味で、最低限度に焦点を当てた議論だと考えています。
 ですから先ほどのエレベーターの話でもそうですけれども、ぎりぎり何が必要なのかといったところに焦点を合わせて、例示も考えているという関係にあろうかと思っているところです。

棟居部会長 今、川内委員がおっしゃった点は26ページの下の先ほどこれは例示ではなくて、観点の違いということで「1)基準・手順の変更」「2)物理的形状の変更」「3)補助器具・サービスの提供」この3つ挙げておりますものを視点の問題、観点の問題と整理をし直したということを申し上げました。
 このバリアフリーといったハード的、物理的なものは「2)物理的形状の変更」あるいは「3)補助器具・サービスの提供」といったことに入るかもしれません。それと3)の後半に書いてあるサービスという言わば人的な支援。これらがどう関係するのか。全部が同じ性格の合理的配慮というものの単なる言わば外形というか、つまりハード的に合理的配慮をする、ソフト的人力による合理的配慮、いろいろあるけれども、合理的配慮だよというふうにここでは言わんとしておるのですけれども、それ以上に今、川内委員がおっしゃったように、例えばバリアフリーの問題なども合理的配慮だというところまで取り込めるかというと、ちょっとそれは確かに引いた記述というか、もう少し一般論的な記述にしておるのは事実です。
 ただ、そういう箇所は御承知のようにほかにもたくさんあるわけで、俗な言い方をすると1個ずつけんかを売るよりも、大きな物の見方を示して、自然にそのように権限のあるところが補正をしてくださるという、そういう考え方でいくべしというふうに皆さん思っていただいていると、勝手に我々は感じてきたものですから、ある意味、具体的過ぎる記述は避けているようなところもある。その一例だということであります。
 先ほどおっしゃいましたように、休憩時間にまたここも、もしうまい表記があればということでお願いします。ただ、この休憩時間と言っておっても、きょう表現をかためたいと思っています。きょうの後にさらにメールとか、そういう個別のやりとりは避けたい。なぜかと言うと以前から申しておるように、とにかくここでの全員一致という格好でこの意見書は出したい。でないと、そもそもインパクトとして非常に弱いものになる。ただでさえいろいろ違和感というか、抵抗感というか、なかなか従来の法制度からしても合理的配慮というような新しいものを持ち込もうとしておるわけですから、ですからとにかく全員一致だというふうに思っています。その意味でもきょう、文面も含めてかためたい。
 ですから、この第1コーナーで扱っておるようなことについては、休憩時間がとか、第2コーナーでちょっと議論すればいいとか、いろいろおっしゃるかもしれません。しかし、第3コーナーではそういうチャンスもないわけです。ですから、なるべく今、平場でここはこうすべきだという格好で議論、提案していただいて、それについてイエス、ノーで答えをかためていきたいと思っています。
 太田委員、お待たせしました。どうぞ。

太田委員 太田です。
 先ほどの川内委員の人力での対応については、配慮はのけてほしいという意見については、やりとりの中でのことにおいては、東室長の意見を支持したいと思います。
 すべての店舗にエレベーターをつけられるという客観的状況がない中で、その可能性を追求する姿勢を明らかにさせるためにおいても、もしその店舗に2~3人の人員がいて、車いすも小さくて簡単に2階まで上げられるものであるならば、それは拒否する理由もなく、受け入れるべきだと考えるから、いろいろな方法を、さまざまな方法を用いて合理的配慮がなされるべきであって、その方法の1つに人的対応も除くべきではないと思います。

棟居部会長 ありがとうございました。
 先ほど川内委員が休憩時間にとおっしゃったので、ついそれに乗っかってしまいましたが、今し方、私、言いましたように、もうこの場でかためた方がよいと思います。
 川内委員、どうぞ。

川内委員 川内です。
 今の太田委員の意見については、私は異論申し上げます。
 ここの書きぶりは、例えば2階に上げるとか、それが極めて困難な場合には2階の商品を持っておりると書いてあります。つまり、第一の選択肢が人力で2階に上げるということであって、その次に、それができない場合は商品を持っておりるということを言っているわけです。
 では、人力で2階に上げるというのは第一の選択肢になり得るのかというと、非常にこれは危険な転落とかいう事例も実際にあるわけですし、私も落とされたことありますし、これを第一の選択肢に持ってくるのはおかしいと思うわけです。
 例えばというふうにおっしゃっているのですから、エレベーターを絶対につけろとか言っているわけではなくて、ほかの機械もありますけれども、そういう機械的なものでもいいのですが、少なくとも人力で2階に上げるというのは選択肢の1つには入れていただきたくないというのが私の意見であって、これからどう修文されるかは部会長にお任せします。

棟居部会長 室長、どうぞ。

東室長 この事例が10階建てぐらいの建物であれば、エレベーターがない建物はないのでしょう。しかし、やはり2階建ての建物でエレベーターがあるというのは、現実的に言って非常に少ないです。だから例えばエレベーターがあればこれに越したことはないという表現では不十分と思いますが、「エレベーターが可能であればエレベーター、非常に困難であれば人力で」という形で、エレベーターの事例を入れ込むという形での修正はいかがでしょうか。

棟居部会長 私はエレベーターという言葉を使わないで、同じ内容になる修文を考えましたので、それを今、読みます。その上でさらに御意見いただければと思います。
 「上記の例で言えば、階段しかない店舗の二階での買い物を希望する障害者に、階段にかわる、例えば、それが容易であれば人力で二階に上げるとか、それが極めて困難な場合には二階の商品を」云々。あとは一緒であります。
 今の議論、いろいろ出された御意見をかろうじてクリアするというか、つじつま合わせというだけの修文ですけれども、いかがでしょうか。

川内委員 川内です。
 対象者は車いす利用者だけに限らないので、今の修文で私は結構です。

棟居部会長 「上記の例でいえば、階段しかない店舗の二階での買い物」それから、二行目の「例えば、それが容易であれば、人力で二階に上げるとか」。この辺、川内案を取り込んだというつもりでおるのですが、特に破綻していなければかためてしまいたいということであります。
 これは比喩というか例示なので、そこで全体の構造が崩れるようでは、わざわざこういう話を持ってくる意味がないのですけれども、例示としての意味を何とかなしておるということであれば、今の文章あたりで御了解いただければありがたいと思います。
 ほか御意見。植木委員が手を挙げられておられましたでしょうか。

植木委員 植木です。
 川内先生の2つ目の御質問のところに関するコメントだったのですが、2つ目におっしゃった内容は合理的配慮の定義をはっきりさせろという話と、それが法の最低限の基準と言えるかどうかをはっきりさせろという話だったと思います。
 この内容で言えば24ページの真ん中の2)の最後の「したがって」の部分からが、恐らく本意見書における合理的配慮の内容の定義になるのだと思います。なので、川内先生がおっしゃった内容をある意味ではっきり確認する意味では「本法においても、障害者の求めに応じて障害者が障害のない者と同様に、人権を行使し、又は機会や待遇を享受するために、必要かつ適切な現状の変更や調整を行わないことを、合理的配慮の不提供として差別であると位置づける必要がある」という形にすると、本法で言うところの合理的配慮の不提供とは何かがある程度はっきりし、その上でその下の2の最初の2行ですけれども「このように、合理的配慮の不提供は差別と位置付けられ、積極的な作為義務が課せられることになる」ということになれば、趣旨は明らかになるのではないかと思いました。

棟居部会長 ありがとうございます。
 まさに今、2のところで「合理的配慮の不提供は差別と位置付けられ」とせっかく言っておるのだから、それをその上、今、お読みになりました「現状の変更や調整を行わないこと」という、この行にもその趣旨を入れればよいという御意見でよろしいでしょうか。こちらの用意しておる内容に一切の変更はございません。むしろクリアになるという修文であります。ありがとうございました。
 それでは、意外に順調に進行しておって非常にこれは怖いというか、従来の展開と余りにも違うのできょうで終わりなのだなという感じがひしひしと伝わるのですが、しかし、野球で言うと秋風が吹いておるとか、消化試合と言うと、これは余り意味のないというニュアンスですね。きょうは取りまとめの最後ですから、大いに有意義にしたい。
 挑発する意味では決してございませんが、我慢して言わないでおいてやったというようなことを後でおっしゃるぐらいであれば、今おっしゃっていただきたいのです。その上で極力御説明申し上げ、室長はまた私とは違うディフェンドを横からされるかもしれません。あるいは竹下副部会長はまた違うことをおっしゃる、伊東副部会長もおっしゃるかもしれません。あるいはほかの委員も、それならこうすべきだとおっしゃるかもしれない。とにかくきょうどんどん議論いただいて、最後に大団円といいますか、つまり全員一致、文字どおりそうですという格好で終わらせたいと思っております。ということで、ぜひご遠慮なくどうぞ。
 山本委員、どうぞ。

山本委員 これは内容の確認なのですが、同じ24ページの「1)人権及び基本的自由」の部分の2段落目です。「また、『基本的自由』」ということですが、その第2文、つまり3行目の冒頭に「これらは」で「したがって」が消してあるというように続いています。この「これらは」というのは基本的自由のみを指していると理解してよろしいのでしょうか。

棟居部会長 ここで接続詞の使い方がそんなにクリアではない。つまり「したがって」と言うほど理論的につながっていないということで、少し関連性をぼかして、代わりに「これらは」というのを入れておるという程度のことでございまして、この「これらは」というのは要らないようなものです。「これは」ですか。

山本委員 表題が「人権及び基本的自由」でして、第一段落目は人権で、第二段落目は基本的自由が書いてあります。「これらは」とあると、日本語としては両方かなと思うのですが、後ろのほうまで読みますと、どうも基本的自由のことのみを指しておられるのかなと思いました。

棟居部会長 本来の趣旨は、これは改行して人権と基本的自由両方を指しておるつもりだったと思いますが、今おっしゃったように「これらは」というのは「これは」と改め、この基本的自由に係る文章としたほうがおさまりがよいと思います。よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。
 それでは、川内委員、お願いします。

川内委員 川内です。
 12ページ「3、欠格条項」の2つ目の段落の2行目に「運用の在り方によってはそうした結果を」云々とありますが、これを「運用の在り方等」というふうに「等」を入れていただきたい。
 この理由は61ページに同じように欠格条項が書いてあるのですが、それの下から2つ目の「2、欠格条項」の一番下の段落の上から4行目には「欠格条項の解釈運用等により」というふうに「等」というのを入れていらっしゃるのです。それと対応させるために12ページも「運用の在り方等」と入れるべきだと思います。

棟居部会長 一向構いませんが、あえてディフェンドというか、これはディフェンドする意味ないと思いますけれども、つじつま合わせをするとすれば、61ページの「解釈運用等」というのは、解釈運用を中心とするいろいろな周辺的なものを一切含むという趣旨ですが、そうした解釈運用プラスα、あわせて12ページの「運用の在り方」という「在り方」という曖昧な日本語で解釈運用プラスαを受け止めているということで、そんなにもともとずれてはいないと思っておりますが、ただ、逆に「運用の在り方等」と入れても曖昧なものに何かどう加えても、別にふえも減りもしないので、語呂がそのほうが確かにつじつま合わせとしては流れがいいので「等」を入れさせていただきます。ありがとうございました。
 いかがでしょうか。大谷委員、どうぞ。

大谷委員 大谷です。
 私が言うことではないのかもしれなくて、誰か池原さんか竹下先生が出されないかなと思っているのですけれども、85ページなのですが、この紛争解決手段が要するに裁判外紛争解決の仕組みという限度で、とりあえず提案するという形で議論してきたということですので、いわゆる人権委員会としての設置をここに盛り込むということをシビアに議論していたわけではないので、この点はなかなか難しいと思うのです。ただし、この85ページの「4)国内における実施及び監視」として権利条約33条2項を引いておられますので、今さら本当にここで言うのは申しわけないですけれども、最後の段落に「このように、紛争解決に当たる組織の在り方の検討に当たって、障害者権利条約上の要請を意識した議論が求められるところであるが、」で終わってしまっていて、いずれにせよということで非常にある種ごまかした文章になっているのです。議論が求められるけれども、とにかくいずれにせよ裁判外紛争解決の仕組みが必要だということで、我々はそのことに触れないというか、ここはそれはさておきということに文章が流れている。
 それで先回、竹下委員が、これは3条委員会とは別のものだろうという強い御意見も出たこともありますので、ここは議論が求められ、今後その独立性については人権委員会の設置を踏まえてこれからの議論に委ねたいということで1回文章を切って、とりあえず我々は政府からの独立性については、これから設置される人権委員会の設置を見る。だけれども、それを待てないので裁判外紛争解決の仕組みを早急に用意すべきであるという趣旨がわかるような文章に二分したらどうかなというふうに思っているのですが、いかがでしょうか。今さらこんなことを言って申し訳ないと思うのですけれども、この文章を2つに分けることによって、立場性を明らかにしたほうがいいかなと思うのですが、竹下先生、いかがですか。だめですかね。

棟居部会長 この85ページは、先ほども全員一致でいきたい。そうやってインパクトを強くしたいということを言ってまいりました。また、この意見書案をごらんいただいて、こういう議論もあった、こういう議論もあったという書き方はほとんどしておりません。ここぐらいです。そういう意味では両論併記的なものが残ってしまっているという意味で、形式上も統一性を欠く。つまり特定の立場を全員一致で明示すべきである。もし特定の立場がとれないのであれば、全員が一致できるところまで戻るという言い方を私は以前したと思います。そういうことをしてでも全員一致を何とか維持したいと今でも思っています。
 その観点からも、ここについては確かに非常に苦しい部分がいろいろこのページの記述にはある。逆に言うと、3条委員会だということで全員一致ということでは今までの議論でもなっていなかったと思います。独立性ということはもちろん、我々皆、何ら疑うものではありません。それが必要であるということは皆認められる。ただ、他方でそうした言わば行政組織的な1つの高望みというか、大きな要求を掲げていくことで裁判も含めた形で既存の仕組みを使った中で、より実効的な救済が得られる道をかえってふさいでしまうことになったら、これは非常に総論は立派だけれども、救済のところで3条委員会にこだわるばかり、全部が失敗してしまうことになるので、それはまずいという意識が少なくとも私にはあります。皆さんも多分そういう御懸念から3条委員会ということでまとまってこなかったと思います。その痛しかゆしの状況をうまく書ければいいということだと思うのです。
 大谷委員、どうぞ。

大谷委員 その趣旨は全く異論なくて、その趣旨をある意味でよりはっきりさせたほうがいいのではないかということだけなのです。議論が求められたということまではみんな一致して、そして、それは今後私たちは人権委員会の設置を待ったところもありますので、それが今回成立しなかった。だけれども、我々とすれば紛争解決の仕組みは提案しますよということでここまで来たと思うのです。その経過をよりはっきりさせるためには、それは人権委員会の設置を踏まえ、これからの議論に委ねたいということで、独立性に関してはこれからの議論に委ねるのだと。
 だから、我々はこの紛争外解決の手続が別に人権委員会に代わるものであるとは思っていない。これからも議論してくださいということを逆にはっきりさせたほうがいいのではないかという趣旨なのです。
 新しい合意を求めるだけではなくて、議論の経過を文章化すれば、そちらのほうがよりいいかなという提案です。

棟居部会長 以前、法務省の方に来ていただいて、あの時点ではまだ一般的な人権救済機関が設置されるかもしれないという段階にあったわけです。我々はお話を承って、それに乗れればめでたしめでたしと考えました。しかし、いずれにせよ、あの一般的な制度が成立していない中で、この障害者問題についてだけ、差別禁止についてだけこの条約をてこに人権救済機関的なものを我々が打ち出していくというわけにはまいらないということにならざるを得ない。これは最後閣議決定まで持っていって、それで法案にという、結局は政府としての一元性、一体性というものがどこかフィルターとしてかかってきますね。
 そのような言わば今後が見えている中で、つい最近、先送りされていることについて、この障害者の差別禁止のテーマだけで先取りをするというのは、これも先ほど申し上げた話と同じで、余分なリスクを背負うことになるのでぼかさざるを得ないというのと、「この点に関して」という段落のところですが「仮に障害者政策委員会に調停等の機能を付与するとなれば、条約上の要請を満たすよう努めることが求められるのではとの意見」。ちょっと書きぶりがわかりづらい書きぶりで恐縮ですけれども、政策委員会に頑張っていただいて、そしてこれは意見を関係各大臣に述べるといった権限があるわけですから、頑張っていただいて、この独立性というものの実質を政策委員会自分自身で勝ち取っていっていただく。この条約の実施を促進し、保護し、監視するための枠組み。適当な場合には1または2条の独立した仕組み。その一翼を政策委員会が担うという期待をして、政策委員会を励まして、そちらにお返しするというような文章に「この点に関して」という段落はなっておるということであります。ですから、ここらは生き残るというか、残せる文章ではないかと思っています。
 池原委員、どうぞ。

池原委員 大谷委員の御指摘に基本的には賛成なのですけれども、それで、この85ページの文章のつくり方ですが、例えば第5の上の最後の段落から「このように」から始まって「用意すべきである」という段落に関してですけれども、この後半部分の「いずれにせよ」から始まるところの「いずれにせよ」を取ってしまって「本法においては、障害に基づく差別による紛争が生じた場合に備え、簡易迅速な実効性のある裁判外紛争解決の仕組みを早急に用意すべきである」というところを、むしろこの1つ上の段落にくっつけてしまって「具体的な紛争解決の仕組みを早急に用意すべきであるといった意見も出され」で、うまくつながるかどうかわかりませんけれども、言わばこれは長期的に見て仮原則に基づく人権委員会のようなものができるのを待つのではなくて、本法で法の施行とほぼ同時に権利救済システムがあったほうがいいだろうという趣旨での流れなので、そこに「本法においては、障害に基づく差別による紛争が生じた場合に備え、簡易迅速な実効性のある裁判外紛争解決の仕組みを早急に用意すべきである」という、一応の立場を表明した上で、その次の段落をなお書きとするかどうか、書き出しは問題ですけれども、ややつけ足しをなお書き的に、例えば「このように」は取って「今後、紛争解決に当たる組織の在り方の検討なり議論に当たっては、障害者権利条約の要請を意識した議論とか検討が求められるところである」。
 だから将来、障害者政策委員会なり法務省なりで、さらにその独立性が高い機関の議論は引き続き進められるのでしょう。ただ、差別禁止法においてはとりあえずという言い方は変ですけれども、法の施行に備えてとりあえずの紛争解決機関をつくりますという、そういう説明の仕方はどうでしょうか。

棟居部会長 室長、御意見をどうぞ。

東室長 この部分については、かなり以前に議論されたところです。この案文はほとんど最初のころに出されて、それ以降、ここで問題提起された山崎先生も、これを了とされて、その後これについて特段の意見はいただいてこなかった経緯があります。
 今「いずれにせよ」以下を上に持ってくるという話もありましたけれども、そうするとかなり意味が違ってくるわけです。基本はそういう問題もあるが、この部会としてはいずれにせよ「以下」が結論だったわけです。だから別の結論をまた持ってくるということになりますので、今日の段階においてそれは非常に難しい話ではなかろうかと思っているところです。

棟居部会長 今の室長のに私なりにつなげさせていただくと、独立性という点では司法機関、裁判所があるのではないかという、正面からは否定しにくい、しかし、条約が言っておる独立というのは少し違う意味ではないかというやりとりというか、違和感というか、そういう議論の流れがあって、しかし、司法と言うときに一番の泣きどころ、特にこの差別禁止の問題での泣きどころは、残念ながらスピードが遅いという点です。そして、決して簡易とも言えない。ですから簡易迅速という独立した機関ではあるが、裁判にはなかなか望めないものについて、裁判外紛争解決の仕組みということを特に注文として出していくということで、条約の要請に正面から、ど真ん中で答えるというのとは少し違うけれども、日本の実情に応じてアレンジをした形で、この条約の要請に応えていくことになるのではないかということで、簡易迅速というキーワードが出てきた。
 それで裁判プラスα、裁判外の紛争解決ということを言って、この権利条約33条2項に一応、応対をしたということにしたい。つまり人権救済機関の設置といった非常に大きな、しかも別の省庁でされておるテーマとは一応バッティングしない格好で、この差別禁止に特化した何事かをやっていくということで、このような苦渋の書き方。あえて言うと透間を狙う書き方をしておるわけです。
 正面から3条だと言うことは、取りまとめという今、出すとこれはまとめではないという、つまり新たな提案ということになると思うのです。もちろんきょう皆さんでそれでいいということであれば、これはまとめかもしれません。
 しかし、私は先ほども言いましたように、とにかくインパクトを強くするためには言わば脇を締めるというか、あれもこれも欲張ることでインパクトを強めるというのではなくて、むしろそれは逆なのであって、隙を与えないというか、余りあれも欲しい、これも欲しいでふたを開けたら何も入っていなかったということにならないように、現実的な、これならできるはずだという提案で、それでもだめだと言うと条約の観点からもまずいのではないかというぐらいに、いわゆる追い込みをかけるというような、誰に向かってなのだというのは問題ですけれども、私はそういうふうにこの意見書は持っていくべきだと。でないと、これはきょうどこかのタイミングで言おうと思っておったのですが、延べ100時間です。旧差別禁止部会からすると毎回4時間。それが通算で25回です。100時間いろんな議論をして、言わば丸めて丸めてここまで来ておるわけですから、ここでまだどこかで突出してとげを出してしまうと、そこが全体のバランスを崩すことになるのを恐れているというか、怖がっている。
 この部会長というお話を伺ったときには、もっと楽だったはずなのです。私はこんなはずではなかったと思っています。今、言うのは、それはもっと後の時間にとっておけと言われるかもしれません。しかし、とにかくそれだけに形を残したいというのが強くて、恐らくその点は多分皆さん一緒です。
 3条という話をちょっとここで出すのは、そういう思いからするとどうなのだろうなと。
 大谷委員、どうぞ。

大谷委員 ごめんなさい。新しい議論をするつもりはなくて、別に新たにこの紛争解決を3条委員会にせよと言っているつもりは全然なくて、文章の歯切れが悪いので、もう少しすっきりさせたい。
 我々は議論をして、そして今後の議論に委ねたいぐらいはだめかなと思ったのですけれども、それもだめということであれば、せめて池原委員の提案のように、1文と2文を入れかえることによって、逆に我々の立場をはっきりさせる。そういう議論はしたけれども、そういうことはちょっと抜きにして、とりあえず紛争解決の手続をつくろうよというところに来て、そこはみんな一致してきたわけですから。でも、池原委員の言うところのなお書きにしても、そういう議論がありましたという権利条約上の要請を意識した議論はしてきたのですよというところは、なお書きででも残すという形ですれば、今、我々が提案する裁判外紛争解決の手続の位置づけと、それと今後まだまだ権利条約を意識したあり方は、これから議論されるのだなということがわかるかなという提案なのです。ですから、新しい提案をしているつもりは全然ないのですけれども、それでもだめでしょうか。今ごろになってというのは本当に申しわけないです。

棟居部会長 竹下副部会長、お願いします。

竹下副部会長 竹下です。
 私は池原さんの提案には、申しわけないけれども、反対です。
 大谷委員がおっしゃったことを、私が三役でどんな意見を言ったかは別としまして、今この案をできるだけ維持したいという立場で、かつ、大谷委員や池原委員が言ったことを日本語として整理するために、ちょっと確認ですけれども、この「いずれにせよ」だけ削除すれば、日本語としてよりすっきりし、かつ、大谷委員や池谷委員が言っている日本語になりませんでしょうか。
 そうするとどうなるかというと「議論が求められるところであるが、本法においては」というのは、まさに我々の議論の経過と思いと、さらに今この意見をまとめるに当たって、この結論が現時点における必要最小限として譲れないのだというところでまとめられませんか。

棟居部会長 室長、どうぞ。

東室長 この文章は、これまでの流れをそのまま反映している文章なのです。「いずれにせよ」というのは議論の実態を反映している言葉なのです。こういう問題はあるけれども、当面はこれでやろうという思いがここに書いてあるわけで、だからこれを分解してしまったら全く別の見解になってしまうと思うのです。
 ただ、竹下先生がおっしゃった提案は、この間の流れを害するものではありません、文章としてもそのまま続きますので、修正案としては適切だという感じはしますけれども、この文章自体を分解するということはできないと思っています。

棟居部会長 分解ではないのですが、まず1点は「いずれにせよ」というのを取る。これは多分なくて構わないと思いますので取るということを今、申し上げたいです。
 もう一つは、姑息な修文をあと10分ぐらいの間にやってしまおうと思うのですけれども「裁判外紛争解決の仕組みを早急に用意すべである」という文章を少しいじりまして「裁判外紛争解決の仕組みを早急に用意し」その後に「さらに」と加えて、独立性云々についての一定の期待を込めたものを加えるというふうにしておけば、多分皆さん同意していただける。これは期待ですから構わないのではないか。それはほかでもたくさんやっていますね。そういう期待については。
 ただ、現状の例えば裁判が独立性を満たす満たさないとかについて答えを出すと、またもめるので。

竹下副部会長 部会長、それは誰もそんなことをおっしゃっていないです。

棟居部会長 それはここでは誰も言わないだけで、出るところに出ると裁判があるという意味で、既に何もいじらなくても独立性は満たされていますよという、こういう多分説明もどこかでは出てき得るわけで、しかし、それについて特にどうこう言うのではないが、この条約上の独立した仕組みということについて、それを期待するとか、その必要性を認識するとか、要は条約を批准するという前提でこの意見書を出しているのですから、条約の文言を繰り返すような格好をとっておけば何ら問題は多分ないはずです。そういう修文を今、考えました。
 東室長、どうぞ。

東室長 今の点は上のほうで十分に書いてあると理解しているわけです。そういう権利条約の趣旨も踏まえてこういう議論をしたということで、これまでまとまってきた文案だと思っています。修文するにしても、この「いずれにせよ」を削るのでなければ、いいんですが。今、何人かの委員の方の意見を聞いていますけれども、全員で最初から議論していたら、ほとんどこれだけで今日は議論が終わってしまうのではないでしょうか。

棟居部会長 ありがとうございました。
 大谷委員が先ほどおっしゃったのは、個別の表現は覚えていないのですけれども「この中で」という段落の最後の「適当に場合には独立した仕組みであることを求めていることになる」という言い方では弱いということですか。

大谷委員 大谷ですけれども、内容を変えるつもりは全然ないのです。ですから、今、棟居部会長がおっしゃってくださったような感じで、この「いずれにせよ」を削って「用意し、今後期待したい」という形で締めていただければ非常にありがたいと思います。それは私は「求められ、今後、独立性については今後の議論に委ねたい」というのを最初提案させていただきましたけれども、そこは余りにもある種刺激的だということであれば「求められるところであるが」というところで「いずれにせよ」を削って、最後のところに「今後期待したい」というふうに言っていただければ、私の意図するところだし、そんなに皆さんの総意にも反しない、経緯にも反しないのではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。

棟居部会長 今、室長が横からいろいろコメントされて、さらにおっしゃると思いますが「適当な場合には独立した仕組みであることを求めていることになる」というこの文書がある意味突き放したというか、特に意見として言っておるというよりは、条約にはこういう要請が入っていますよねという確認的な文章で、さらにしかしそれを引き取ると先ほど条約を繰り返すのは構わないのではないかと私は言いましたが、最後に意見の格好で独立性だということをもう一押ししてしまうと、かなりパラグラフ感のニュアンスというか、力学が変わってしまうというので、これは皆さんのお手元には見え消しの修文の跡がほとんどない、きれいな文章として並んでいますけれども、これをつくるに当たっては書いたり消したりというか、あるいはここは先ほど申しましたように両論併記にかなり近くなっています。
 それだけ微妙な力学を考慮して、玉虫色という言葉は好きではないですけれども、いろんな見え方がするような書き方をしておるのです。いじってしまうと今はこれでいいということになっても、皆さんが御自分の都合のいいところを見てこれでよしとされていて、内容の一致は逆にない可能性もあります。それはちょっと意見書としてはいかがか。つまり正反対の方々が将来このページのある部分、別の部分をそれぞれ引用して、だからこうなのだという正反対のことをおっしゃるようでは意見書事態のできが悪い。あるいは信頼性を損なう心配というのはしなければいけないかなというふうに、座長職としては思っております。
 室長、どうぞ。

東室長 これまで何度も何度も部会三役の原案を出させていただいております。これをチェックする機会もかなりあったわけです。8月31日以降も暫定的なものとして、委員の皆様方には部会三役の暫定的な修正版を提示して、その上で今日を迎えたわけです。その間、全く議論がないところで、しかもここはかなりセンシティブな問題であるわけです。それを最後になってこういう形で出されても、ほかの委員の皆さんもよくよく考える時間も余りない中で、基本的な枠組みを変えることはできないと思います。
 以上です。

棟居部会長 伊東副部会長、お願いします。

伊東副部会長 それぞれのお立場の考えで言うと、いろいろ1つ修正してまた元に戻ったりという繰り返しが今までもありました。差別禁止法という名前のついた法律をつくることが今、一番大事なことです。完璧を期したいですが、それよりも何よりも、とにかくこの差別禁止法という名前のついた法律ができることが一番大事な点だと思います。
 様々な立場からいろいろ言えば、いろんなことがあります。しかし今までの法・制度、運用との関係もあります。小さい部分、大きい部分いろいろ意見はあります。しかし国、社会で「なるほど」と言っていただける概ねのところに視点を当てていただいて、きょうで最終の結論を出し、部会長おっしゃるように全員一致でこのまとめをさせていただきたい。
 いろんな思いのところがあると思いますが、三役としては相当詰めた上でこれを出しましたので、議論が後戻りするような場面はお許しいただいて、ぜひこれでおまとめいただきたいということをお願いします。

棟居部会長 私も全く同感です。どうもありがとうございました。
 端的にきょう我々が何をすべきか。部会三役としての思いを今、伊東副部会長におっしゃっていただいた。要するにとにかく制度をこさえる。そして、それに基づいて裁判ができるようにする。今それがないのですから、このできるようにするかしないかというイエス・ノーという、そこのところで3条委員会でなければだめなのだという1点で全てを否定することになりかねないとすれば、そのリスクは避けたほうがいい。非常に三役的な物の言い方で、政策的な物の言い方で恐縮ですけれども、そのように思います。
 ということで、もう第1コーナーの予定時間が過ぎましたので、結局、今、85ページ散々御意見をいただきましたが「いずれにせよ」を削除。あとはこのままということでよろしかったでしょうか。もっとましな文章にできればよかったのですが、どこを切るとどうなるかというのがわからないぐらい複雑怪奇な直し直しの連続ですので、今の点でもし御納得いただければ大変ありがたく存じます。
 では、ありがとうございました。以上で第1コーナーを終わります。
 加納委員、どうぞ。

加納委員 加納です。
 2点ですけれども、まず1つだけ、時間も過ぎましたので簡単に。
 目次の2ページの上から5行目のところです。これはまだ修正ができていないということだけの気づき、発見ですので「障害に関連して行われる基づくハラスメント」で「基づく」が入っていますので、これを消し忘れのないようにということが1つ。先ほど見て気がつきましたのでお伝えしておきます。
 それと、もう時間もあれなのですけれども、本当に三役の方々には取りまとめという大変な労をしていただいて感謝と敬意を表したいのですが、基本的にはこれからどうのということではないのですけれども、この第1コーナーについてはこれでさらなる議論をということでの意見ではないのですが、思い残すことがあるといけないという棟居部会長の言葉もありましたので、一言意見と今後の課題というふうに、もし部会の皆さんに御認識いただければというつもりで意見を表明させていただきたいと思います。
 箇所は11ページの私、加納がずっと遅れてこの部会に参加したものですから、障害女性の部分についての議論のところです。私どもの修正提案をほとんど生かして、国等の責務の留意する第1点という形で障害女性の中に反映させていただいたことは、非常に評価し、感謝するところなのですけれども、あえて言わせていただくとすれば、先ほどおっしゃったように差別禁止法という、これまでにないものを我が国に産み落とすという大変なときに、差別の最も厳しい状況にある複合差別の状況にあえいでいる層としての障害女性の部分に、できれば国連の権利条約のような形で条項化、つまり光が当たり、それを突破口に複合差別というところに向ける課題を啓発していただければなという思いが残りました。
 これはそういう意見表明として聞いていただきたいということであります。なぜならば、それは女子差別撤廃条約、男女共同参画の基本計画の3つでクリアしていけるではないかとおっしゃるかもしれませんが、しかしながら、このトップの部会においても、やはりそれへの問題意識がまだ共有できていないのではないかという思いがしたからであります。
 そういう意味で、今後の政策委員会での課題として改めて複合差別、つまりここでは「複合的な困難」という言葉でしか表現できていないわけですけれども、そういった課題を今後の政策委員会でも引き継いでいただければというふうに、意見表明としてさせていただきました。

棟居部会長 ありがとうございました。
 御意見ということで、この文章はこのままでいいということかもしれませんが、11ページ下から3行目「同時に」を改行すると「これまでの障害者施策には、差別や不利益を受けるリスクの高い女性が置かれている実態を問題にする視点が欠落していた」という、今おっしゃったことの文章化がここなのですけれども、改行すると少しはましになるのであれば、そうさせていただきたいと思います。それ以上の修文、追加等は御容赦いただきたいと思います。

加納委員 ありがとうございます。そのようにお願いいたします。

棟居部会長 では、改行ということでよろしいですか。ありがとうございます。
 それでは、予定の時刻を過ぎておりますので、以上で第1コーナーを終わります。
 ここで15分の休憩をとります。再開は14時32分ということでお願いします。

(休憩)

棟居部会長 再開いたします。第2コーナーは60分で、部会意見の取りまとめ(その2)です。「第2章 各則」から「第1節 公共的施設・交通機関」「第2節 情報・コミュニケーション」「第3節 商品・役務・不動産」「第4節 医療」「第5節 教育」につき、最初に私から10分程度で御報告をさせいただきまして、その後、質疑及び議論を行わせていただきます。
 ということで、先ほどの見え消し版という資料2を再びお手元に置いてください。この第2章からでございますが、まず1点目としまして、第2章は30ページからですが、その33ページをごらんいただきますと「1、不均等待遇の禁止」とございます。そこに「障害者が利用する上で構造上のバリアがあることやそれを補う補助的サービスが提供されていないことも含め」という文章を追加しております。これはなぜかと申しますと、この分野で特に問題となる構造上のバリアであったり、それを補う補助的サービスが提供されていないということが、不均等待遇なのだということがわかるような記載にするための修文であります。
 続きまして34ページをごらんください。「第4、合理的配慮及びその不提供を正当化する事由」というところですが、この「合理的配慮の具体的な内容としては」の下4行目であります。「危険を回避し安全に利用できるよう対策を講じること」といった合理的配慮の具体例を追加しております。
 以上が第1節の説明でありまして、引き続きまして39ページに飛んでいただきますと「第3節 商品・役務・不動産」に入ります。ここでの1点目は39ページですが「1、差別が禁止されるべき事項や場面」であります。この分野における禁止事項を端的に総括し、簡単な文章をそのために入れたいということで「この分野において、不均等待遇及び合理的配慮の不提供として差別が禁止される事項は、商品においては売買、役務においては提供、不動産においては利用に関する事項である」という説明的な文章を追加いたしております。
 「1)商品の売買」ですが「視覚障害者が商品の内容を識別できるような点字表示がないため、商品の選択ができないなど、商品に関わる情報の提供の在り方や」といった部分を加えまして、商品の売買のところで商品に伴う情報にかかわる事例を入れておくという、説明上の補強をいたしております。
 40ページに行っていただきますと、下のほうの「2、差別をしてはならないとされる相手方の範囲」であります。ここは内容的には重要な修正になると思います。山本委員にいろいろと御指摘をいただきまして、結局、従来は「有償の民間事業者」といった表現を用いておりましたが、差別禁止が求められる根拠は何かという根拠にさかのぼって考え直しまして「不特定または多数のものを相手にする場合」といった表現に置き換えております。
 41ページ「2、不均等待遇を正当化する事由」というところですが、これも極めて技術的な内容の追加を十数行にわたって下線が引かれておると思いますけれども、その部分で技術的な説明の追加を行っておるということでございます。どういう趣旨かということだけを御説明申し上げると、行為能力の制限がある場合には、相手方の取引の安全を脅かすことにもなりますことから、障害者と相手方との調和という観点から、いかなる場合に正当化事由が認めるかという点について書いておるところであります。
 調和という言い方は、あくまで取引の安全というものにも配慮する必要があるということを言わんとしておるだけで、言葉としてどうなのだということがあるかもしれませんが、見ていただきたいのはあくまで41ページの追加した文章でございまして、この限りでは技術的な説明文以上のものではございませんので、特に御異論はないと期待しております。技術的な内容の書き方がさらに悪い、もっと直すべきだという御提案等ございましたら、後ほどお願いします。
 42ページ「2、この分野で求められる合理的配慮の内容」で、前回ガイドラインが必要であるという御意見をいただきました。したがいまして、その旨を真ん中あたり「様々なものがあるので、政府においては、障害者、専門家、事業主の参画を得て、ガイドラインを作成することが求められる」と追加をしております。
 また、前回いろいろ御議論ちょうだいした「不動産の利用においては」云々という部分については、この数行を削除というふうにしたいと思います。
 43ページ「5、その他の留意事項」であります。ここでも前回などに御指摘のございました、公営住宅の入居資格に関する地方公共団体の事例について「県営住宅の所在市町村において常時の相談対応等の居住支援(居住サポート事業)が実施されていることを条件とする地方公共団体もある」といった事例の追加をいたしております。
 44ページ「第4節 医療」であります。
 さらに1ページめくっていただきまして45ページをごらんいただきますと「1、不均等待遇の禁止」ですが、地域医療の提供という部分につきまして、他の人と同様に地域生活を営みながら医療の提供を受けられるようにするということに眼目がございますので、そのような趣旨が出るような若干の修文を加えたということでございます。
 45ページから46ページにかけてをごらんいただきますと、45ページ下の「2、不均等待遇を正当化する事由」であります。3段目をごらんいただきますと「障害者に特化した自傷他害のおそれや法的判断能力の欠如」。これが主語になっております。しかし、続けて最後まで読むと、結論が主語に対応していないという文章構成上のまずさがございましたので、そのような判断能力の欠如だけでは正当化事由にならないのだということを端的に表現する文章を、46ページの一番上で起こしておるわけであります。
 続きまして「第2章 各則」「第5節 教育」ということで、48ページから後でございます。
 50ページ「2、差別をしてはならないとされる相手方の範囲」です。ここで「同世代の子どもたちを対象とした保育所及びその設置者も本節における相手方となる」という、保育所並びに設置者をここで加える文章を入れています。これは前回、保育所も教育の範囲に入れるべきであるという御指摘があり、それに対応した修文であります。
 51ページ「1、不均等待遇の禁止」であります。これまでは義務教育を念頭に置いて書いているのか、全ての教育段階を念頭に置いているのか、必ずしもうまく書き分けておりませんでした。そこで、全ての教育段階に共通する部分と義務教育で問題とされる部分に分けて、区別して読めるように書き改めております。
 52ページ「2、この分野で求められる合理的配慮の内容」であります。ここでも同じように全ての場面で求められることと、そうではない部分が読んでわかるように書き分けをして、また、それぞれに小見出しをつけ、事例も加えるという丁寧な書きぶりにしておるつもりでございます。
 53ページ「第6、その他の留意事項」であります。「2、内部的紛争解決の仕組み」というところですが、なぜ内部的な解決が望まれるか、望ましいのかについての理由が要るという御指摘があり、それを踏まえまして「継続的な信頼関係を基礎とする教育現場において」といった文章を挟むという補強をしております。
 また、この教育といった言わば閉じた、また、一方的な関係になりやすい場という御指摘もちょうだいしておったところですから、第3章の紛争解決の仕組み、権利救済という軸足を置いた紛争解決の仕組みを利用できるということは、当然のことながらここでも加えて誤解を避けておるところであります。
 53ページから54ページにかけての「3、高校進学」ですが、ここでは地方の取り組みを紹介しております。また「政府において検討し」という部分を削除しております。これは高校の場合は、国の関与する度合いが義務教育よりも低いという一般的な認識に立った修文であります。
 54ページ「4、通学支援」については、従来そもそもこうした取り上げをしていませんでした。しかしながら、雇用の通勤支援と同じような問題がございますので、ここで新たに「4、通学支援」を1つ書き起こしております。
 第2コーナーはここまでです。以上が私の説明であります。先ほどと同様に修文云々につきましても、とにかくここで決めてしまうという要請がございます。それを意識しながら御意見、御議論を賜ればと思います。あるいは誤植の御指摘はもちろん大歓迎。ただ、紙に書いて一体のものとして持ってきていただけるとありがたいということであります。
 山本委員、どうぞ。

山本委員 山本です。全体にかかわることですので、最初に発言をさせていただければと思います。
 このことについては、私自身は部会で何度か指摘させていただいていたつもりですが、最後の段階になりましたので、文章として入れるかどうかは次の問題として考えていただければと思います。
 それは、各則で現在、第1節からずらりと並んでいるわけですが、各則で取り上げているものがなぜ取り上げられているのか、あるいはどのような意味で取り上げられているのかという説明が、第2章の冒頭にあったほうがよいのではないかということです。
 と言いますのは、総則で一般的な規定を置くとするならば、本来はそれでカバーできているはずなのですが、それに加えてなぜ各則をわざわざ定めるのかということは、やはり一言あってしかるべきだと思います。しかも、各則で全てが必ずしも網羅されているわけではないのだろうと思います。そうすると、物によってはなぜこれが外れているのか。これは保護しないつもりかというような疑問も出てくる可能性があると思います。
 その意味では、冒頭にごく簡単で結構ですので、例えば総則を踏まえて、各則においては特に障害者の差別が問題となる重要と考えられる領域を取り上げ、それらについて総則の規定の内容を確認ないし明確化し、場合によってはそれぞれの領域に応じて必要な補充を加えることを目的としているということを書いていただいたほうがよいのではないかと思います。
 そして、その際に、これは前に申し上げたつもりなのですが、ここで書いていることはこれでよいと思うのですけれども、実際に差別禁止法をつくるときに法律の中に各則でどこまでのことを実際に書くかということは、今後なお慎重に検討する必要があるという一言があってしかるべきではないかと思います。と言いますのは、総則で明らかにカバーできることであれば、わざわざ書く必要はないということもありますし、書いてよけいにわからなくなる可能性もあります。ある部分については書いて、他の部分については書いていないと、それはどうなのかということも問題になる可能性もあります。最終的には、全体をもう一度見通した上で、実際にどう定めるかということを慎重に考える必要があると思います。
 その意味で、一言そのような可能性があることを留保しておくほうが望ましいのではないかと思います。
 私からは以上です。

棟居部会長 ありがとうございました。
 今、御指摘があった後のほうについては、これは法制化を見据えて余りごちゃごちゃ書くことで何が言いたいのかわからなくなる。むしろ総則で基本的には尽きておるのではないかということだったと思いますが、これは最初に御指摘のあった各則がそもそも何のためなのかという文章が欠落している、ないではないかという御指摘とも多分、後の御指摘は通じると思います。
 それで、室長は極めてアドリブを好まない方なのですが、私はアドリブが大好きで、しかも中身のないアドリブしか言いません。今から申し上げる文章を各則のすぐ後、第1節のすぐ前に1行加えることで御勘弁願いないかというふうにお願いをしつつ、読みます。「障害者が直面する社会的障壁はさまざまであるが、以下、特に重要なものを取り上げる」とすれば、まず例示的なニュアンスですね。つまり、特に重要なものを取り上げたというわけですから、これが全てではないし、総則の繰り返しなのだということも出ると思います。
 ということで、社会的障壁という1つのキーワードを持ち出すことで、公共的施設や交通機関はどうだ、医療はどうだということが各論でどんどん出てくる。その前振りになるのではないか。できの悪い答案が最後に必死にちょっとでも点を稼ごうとして1行追加をして、かえって墓穴を掘ったりしておるのですが、今の私のは多分内容的にはそう間違えてもいないような無意味な文章だと思いますけれども、ないよりましかどうかということを今お尋ねしたい。
 室長、これは中身のバランスを崩してしまうとか、そこはどうですか。今のできの悪い追加あるいはほかにもう少しあれば、具体的な提案をいただくということで、とにかく「第2章 各則」のすぐ後に何か文章がないと、各則全体が一体どういう意味をこの意見書の中で持つのか、あるいは立法化に対して何が言いたいのか。結局は各則であれこれ個別の注文をつけたいばかりに大げさな総則を設けているだけなのか、それとも総則で尽きておる話を各則でより具体的に言っておるのか、各則は何なのだという疑問に答えなければいかんというのは、まさに山本委員御指摘だったとおりと思います。
 大谷委員、どうぞ。

大谷委員 私は個人的には、棟居先生のその文章を入れることは賛成です。その文章を入れていただきたいと思いますし、それで位置づけが明確になると思います。
 ただし、山本委員の意見も総論として理解できたのですけれども、最後にこれを法文化するときに、要するにどの部分を法律化するかどうかに関しては、慎重にという文章を入れることには絶対反対です。それはそうすることによって、要するに法文化するときにまた違う判断等々が我々が予期しない判断によって、かなりの部分が法文から落ちるという懸念もありますので、それはそれで後に譲るというか、後の判断に任せるということはあってもいいですけれども、慎重にとか、何かそういったスタンスをここに盛り込むことは避けていただきたいと思います。
 以上です。

棟居部会長 山本委員、どうぞ。

山本委員 慎重にというのは、私自身、慎重な人間のつもりですので入れたくなっただけなのですが、検討を要するということはあるのではないかと思いました。と言いますのは、実際に法律にしますと、この法律が適用されるか適用されないかで大きな影響が出てきます。したがって、どの範囲で適用されるかということを明確に定めないと混乱が生じるだろうと思います。
 しかし、その要件の定め方がどうしてもうまくいかない可能性は、やはりあると思います。典型例は大丈夫なのですけれども、グレーゾーンになってきますと、どこまでをどう線引きするかというのが常に難しくなってきます。そのときに、どうしても難しいのに無理やり定めてしまいますと大変なことになりますので、場合によっては総則の規定で尽きているので、特にその部分については明文化しないという判断は、私は立法としては十分あり得ると思います。
 残念ながら、この部会ではそこまでの技術的な詰めが、私の見たところはできていなかったと思います。その意味で、これで必ずこのように規定するのだというのではないという趣旨で「なお、検討を要する」ぐらいはあってよいのかなと思った次第です。
 ただ、この段階での修文ですので、不用意に書きますとまた別の意味での影響が出てくるかもしれませんから、それは皆様の御判断に委ねたいと思います。

棟居部会長 室長、コメントお願いします。

東室長 今、山本先生がおっしゃった点は、そのとおりの話だろうと思っています。ただ、ある意味、部会の意見は法律そのものを書くということではなくて、その前段の考え方などについてまとめていくということが、主な課題だったと思っています。それを政府のほうで受け止めて、法律をつくる段においては先生が言われたことは当然検討した上で策定されていくことになりますので、そこをこの部会で書くまでのことはないのではなかろうかと思いますけれども、いかがでしょうか。

棟居部会長 私からまたこれは追加になっておるかどうかわかりませんが、決してこの各則まで含めて条文化しないと総則が動かないかというと、これは全然そんなことはない。総則のところで差別とはかくかくしかじかですよと。それは違法なのですよと言い切ってしまうわけだから、裁判を起こせばその規範にのっとって従来なら勝てるかどうかはっきりしなかったものが、どんどん勝てるようになる。ただし、すると先ほど来というか、ずっと出てきているガイドラインというものが非常に大事になるわけです。つまり、日常生活上でどういうことを合理的配慮として守っていけば差別に当たらないのかという、その具体的な線引きというものを民民の関係で、民間人に合理的配慮についての作為義務を課していくといった面がございますので、より言わば予見可能性、具体的にどういうことが要請され、どういうことは逆にしなくても違法にはならないのかという、この見極めがつくようにすることが非常に大事になります。
 ですから、我々がここでこの意見書に入れようとしているつもりで従来議論してきた各則というのは、これは条文化するべきかどうかとうのは特に我々として答えを持ちあわせていない。そこまで詰めた議論をしていないというのは確かにそのとおり。しかし、総則だけの法律ができたとしても、それでは到底予見可能性、民間の一般の方が読んですぐわかるという明確性を持ち得ません。ですから、どこかでガイドラインといった形のものが出てくる必要があります。
 ところが、そのガイドラインと言うときには、これはいろんな分野ごとの分野の特徴、そこで障害者が、しかも障害もさまざまなわけですが、その分野ごとに障害者が直面する問題の出方というのは分野ごとに異なってくるということで、ガイドラインも分野ごとに書き分けをすることになるはずなのです。ですから、これは条文なのか、それともガイドラインなのか、運用のレベルなのか、どのレベルの話を各則でしているのだというのは、我々ははっきりさせてきませんでしたが、きょう最後ですのであえてつじつま合わせを言えば、あえてはっきりさせてこなかった。
 しかし、ガイドラインなり運用なり、どこかでは必ずこういう書き分け、分野ごとの整理は必要になります。これは決して条文にこういう整理を入れるべきだということを言っているわけではないですが、どこかでは整理が必要になる。その場合、具体的には障害の特性に応じてこういう合理的配慮が必要になるのではないかという、そこまで書き込んでいくことで、いわゆる立法事実論、つまりこんな法律なくてもうまくいくではないか。権利条約を批准してしまえば、それで国内法は対応できるではないかという楽観的な見方に対して、本当にここまでの運用が現行法で担保できるのですかというふうに、言わばシミュレーションして、やはり法律が要る。
 法律で全部書くかどうかはともかく、やはりこの総則規定を最低限持った法律が必要だという説得の材料にしたいというのが、かなり重たい各則がここに取り込まれていることの意味となるかなと。従来の議論をあえて言葉化すれば、そういうつもりでしておったかなと思います。これは全くよけいな追加かもしれませんが、どこに何を加えるという話ではなくて、意味づけの話をさせてもらいました。
 太田委員、どうぞ。

太田委員 太田です。
 私は部会長が初めにおっしゃった文章のつけ加えについて、賛成の立場でお話をしたいと思います。
 私たち障害者は、具体的に教育の場で、交通手段の場で、医療の場で、雇用の場で具体的な差別を受けていて、非人間的な扱いをされてきたわけで、それに対して差別禁止法という法律がどう応えてくれるのかということを、この法律ができ上がることをすごく期待をしている人たちがいる。抽象的に差別が禁止されるとか、救済されるとかではなくて、具体的にこういう場面ではこういう救済がある。差別と認定されるということが重要だと思っています。
 そういうことで、確かに法を網羅されているとは思いませんが、そのことをどう具体的な場面とつなぎ合わせていくかということで、部会長が最初おっしゃった文章について、賛成の立場でお話を申し上げたいと思います。

棟居部会長 ありがとうございました。
 最初に挿入する文章について御賛成いただいたということで、先ほど読み上げた文章よろしいですか。各則というのは一体何なのだというものを1行ほど加えるというものでございます。
 遠藤オブザーバー、お願いします。

遠藤オブザーバー 先ほど部会長のほうから、今後はそれぞれ法制化にあわせてガイドラインの策定の必要性をおっしゃっていただき、私もそのとおりだと思います。
 改めて意見案を見たとところ、10節ということで10の分野があるのですが、教育と公共的施設・交通機関については、各則でガイドラインの記述がないのです。これは何か過去に御説明があってのことなのか、私は聞き落としたので、改めてお尋ねします。

棟居部会長 室長、お願いします。

東室長 それは本来は総則で書いておりますので、各則で改めて書く必要はないと思ってはいたのですが、やはり現実的に必要性といいますか、意見の中でいろいろありましたので、出た部分は書く。ただし、書いていないからつくらないということではないという御理解でお願いします。

棟居部会長 またよけいな、まさに蛇足を加えますと、例えば教育の場合、インクルーシブ教育という教育固有の理念を打ち出すのに一生懸命で、ガイドラインを書くのがこの各則での位置づけなのだということを頭の意識から飛ばしていた、忘れておったということはあります。その分、こういう成熟した固有の分野については、言わば特別支援学級とかでき上がった制度がございますから、それとこの条約の理念とがどういうふうに整合するのかしないのかということ、あるいはどういう枠がかけられるべきかということを、インクルーシブという概念でやっていた。言わば各則の中の総則みたいな話が重くなっているのは御指摘のとおりです。
 川島委員、どうぞ。

川島委員 別の論点でもよろしいでしょうか。

棟居部会長 はい、結構です。

川島委員 先ほど意見を言えなかったので、今の部分までなのですけれども、まず冒頭の表紙なのですが「障害を理由とする差別」と書いてあるのですけれども、これは中身だと「障害に基づく差別」というのが包括用語で、これはあえてこういうふうにしているのかというのがまず1点。

棟居部会長 室長、お願いします。

東室長 障がい者制度改革推進会議の第一次意見に基づいて、「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」という閣議決定がなされました。その中の横断的な課題の差別禁止法制に係る表題がこういう形なのです。ですから、その諮問を受けて議論をしているということで、あえて括弧でとじているのはそういう趣旨です。

川島委員 はい、わかりました。

棟居部会長 今のいきさつは1ページにそのまま書いております。

川島委員 失礼しました。
 それと、続けてなのですけれども、どんどん言っていきたいと思いますが、2ページ目で第2の「1、リハ法第504条からADAへ」のところで、最初に「ところで」とありますが、これは必要かどうか。「ところで」はつまり、第2、第1というのは完全に章を分けて書いているところなので、要るのかなと。同じ章の中だったら文はつながっていると思ったのです。

棟居部会長 内容はわかりますので、御説明は結構です。こちらで後でまとめてお答えいたします。

川島委員 それと2ページ、3ページのところで、細かいのですけれども、改行がおかしいような気がしたのです。4ページもそうなのですが、改行がおかしいというのは右側に詰めてやったほうが見やすいのかなと。一応全部言えということで、つまらないことも含めてですね。

棟居部会長 今、御指摘の部分が原因かどうかわかりませんが、基本的に一太郎で作業をして、しかしワードの人もいるので、いろいろ混ぜているといろんなところで動くので、逆にいじるのが怖いというのが現状です。

川島委員 それで結構なら、それでいいです。
 次に11ページで「障害女性」と「障害のある女性」というのは互換的に使うという理解でいいということの確認をしたいなというところと。

棟居部会長 ごめんなさい、複合差別ということで障害プラス女性という位置づけなのです。それを障害女性と言っていて、しかし、我々は要するに障害者である女性ということですから、ほかの表記も使っているということで、複合差別というものを全面に出すと障害プラスというか、障害かける女性というか、両方が差別される事由を2つ持っているということでかけ算になるというので、障害女性という特に一まとまりの表現をタイトルで使っているという趣旨です。

川島委員 承知しました。
 次が20ページから21ページなのですけれども、ここは実質的な中身に入ってしまうのですが、趣旨としては同じだと思います。20ページの一番下のところに「したがって、例えば、能力障害を理由にする場合には関連差別の問題とはなるが、誰に対しても本質的に必要な能力が求められる場合には、異なる取扱いをしたとは言えず、差別には該当しないことになる」と書いてあますが、ここのところは恐らく誰に対しても本質的に必要な能力が求められる場合には、合理的配慮を尽くした上で異なる取扱いをしても差別には該当しないことになるという趣旨だと読んだのです。つまり、ほかの部分とあわせ読むと今みたいな修文のほうが、おっしゃりたいことを伝えているのではないかと思いました。

棟居部会長 今の点につきましては、合理的配慮云々ということをおよそ問うまでもなくというニュアンスで「本質的に必要な」という強い言い方をしているということで、合理的配慮という言葉を初めから落としている。ただ、これはもちろん補助器具とか技術革新によって変わってき得るのですけれども、例えば今、東室長はハンドルに何かついた車で非常に器用な運転、ある意味非常にスピーディーな運転をされるのですが、竹下先生は現状の技術では運転をなさることは多分できない。その場合、合理的配慮という言葉を入れても余り意味がないですね。ただ、これは何年かたてば頭の中にビジョンが見えるような装置、技術が開発されるかもしれません。そのときにはすべては合理的配慮の問題になってきます。そういう言わばある種の区別、書き分けをしているということです。

川島委員 「異なる取扱いをしたとは言えず」というのが気になったので、一応、異なる取り扱いをしても差別にならないということなのかなと思いました。ここは今とりあえず指摘にとどめて、どんどん次に行きたいと思います。
 26ページに「物理的形状」という表現があるのですけれども、後ろのほうで「物的」という言葉も使われていて「物理的」に統一したほうがいいのかなと。「物的」というところは「物理的」というほうが多く使われている言葉で、1カ所だけ「物的」というところがありましたので。

棟居部会長 「物理的」の誤植です。「物理的」に統一させていただきます。

川島委員 その1カ所がどこかにあります。
 次、28ページのところなのですけれども「サービス」という言葉が出てくるのですが、「役務」という言葉も出てきて、この使い分けは何か基準みたいなものがもしあれば教えていただきたいなと思いました。

棟居部会長 今の点は十分意識したわけではございません。ただ、役務ですと合理的配慮として役務の提供義務と言った場合に、一体として役務という言葉を使っておりまして、これに対して28ページの上から3段目「次に」というところで「提供される機会やサービス等の本質」という表現でおわかりのように、提供される機会と並列して提供されるサービスということで、この場合、サービスというのは事業者が消費者に対して与える役務という事業者といいますか、店舗の側、レストランの側が、向こうから与えてくるという事業者側、店舗側が主体になった言葉遣いではなくて、あくまで障害者の側を主体、中心に見た場合に提供される機会、提供されるサービスという、言わば止まった状態でサービスを見ている。役務というのをとめてみたらサービスになっているというちょっと苦しいニュアンスの区別かもれしませんが、頭の中ではそういう使い分けをしていると言えばしているということでございます。

川島委員 ありがとうございます。
 次、53ページなのですけれども、これは誤字だと思うのですが、第6「2、内部的紛争解決の仕組み」の2行目に「障害者及び保護者と学校及び学校設置者との意見が一致しない場合」で「の」が抜けていると思います。
 以上です。

棟居部会長 どうもありがとうございました。
 池原委員、お願いします。

池原委員 医療の分野のところで委員の方には修文案をお配りさせていただいていますが、何カ所か修正していただけたらというか、加筆していただけたらと思うところがあります。
 最初は44ページの医療の「第1、はじめに」「第2、この分野において差別の禁止が求められる対象範囲」というところなのですけれども、認識が一致しているのは、特にこの分野での差別というのは、障害のある人が望んでいる医療がちゃんと与えられないという部分と、望んでいないのによけいな医療が与えられるという両側面があると思うのです。そのことは趣旨としては書かれているのですけれども、どちらかと言うと例示的な表現の中では、望んでいるものが与えられていないというところに重点があって、望んでいないものが与えられてしまうというところが、やや力点が薄いかなと思っていまして、そこを少し補修していただけたらと思います。
 具体的には「はじめに」第3段落2行目「医師法自体が診療拒否を原則否定しているなどの特性があり」とありますが、これは要するに望んでいることを与えないというのはだめですよという趣旨ですけれども、そこにもう片方の側面の、つまり「否定し」で点を打って、反面で精神科医療では強制的な入院制度が定められているなどの特性があって、いずれも言わば私的自治という前提からは違った特色があるという書きぶりは、いかがかと思います。
 同じく第2のところで、これも同じ趣旨ですけれども、第2パラグラフの2行目のところ、要するに望んでいる医療が与えられないために命の危険につながるなど、深刻な状況に陥ることもあるというニュアンスの論述があるのですが、ここも「また、障害を理由として本人の自己決定や身体の自由が他の者よりも軽視される事態も生じる」と、要するに望んでいるものが与えられなかったり、望んでいないものがむしろ逆に与えられる、強制されるという側面があって、両方とも他の者と同質、平等な医療を保障するという観点からすると、改める必要があるのではないかという問題意識を提示していただけたらどうかなと思います。

棟居部会長 ありがとうございました。
 今の点について両方の問題があるという認識は、以前から共有されておったと思います。
 今の追加は特に従来からの合意に対してぶれてきますか。竹下副部会長、どうぞ。

竹下副部会長 竹下です。
 今の池原委員の指摘そのものについて全く異論はないのですけれども、修文の内容について少し、今の修文は覚え切れなかったが、逆に誤解を招きませんか。一番最初に言ったところで、医師法を引用しながら必要な医療を拒否した場合の規定を問題にしているわけです。それはまさに医師法に規定はあるわけです。それに対して、単刀直入に言えば精神障害者に対する強制医療なんかを問題にしていることはわかるのですが、それは本質が全く違うものを並べることになりませんか。そういう疑問を聞いていて感じたのです。

棟居部会長 つまり、その医師法の診療拒否はしてはいけないという、いわゆる応召義務というのは結構な制度。そういう意味で私的自治を制約する否定しておる。つまりプラスの方向で。これに対して精神科医療で強制的な入院制度。これは違憲論もあるようなまことにけしからん問題を含んでおるのではないか。つまり、言わば先ほど池原委員がおっしゃったような過剰な医療と過小な医療、両方書くべきだという御意見はもっともだけれども、今の例示はうまくそれに合っていないのではないかという御指摘でしたか。
 東室長、どうぞ。

東室長 担当室の東です。
 ここで役務から医療を取り出した理由として、第1の「はじめに」で書いているのですが、役務というのは私的自治の下で契約を結んで、それに基づいて行う訳ですが、その契約自体が医師法では少し変容されているということで、一般な役務と違うということをここで書いているのです。
 池原先生のおっしゃることはそのとおりだと思いますけれども、一般的に違うものだということを書いているだけで、特に精神面についてどうかとか、そういう個別面についても異なるということを書くべき部分なのかなという感じはしますが、どうでしょうか。

池原委員 そういうことであれば、この「はじめに」の最初の修文については、特に強くは求めません。ただ、若干ディフェンド的に申し上げると、医師法のほうは契約の当事者を医師と患者というふうに考えるとすると、医師のほうも必ずしも自由自治に基づいて私的自治に基づいた契約ができる、応諾とか拒否ができるわけではないし、患者の側もある意味では場合によると自分の意思に基づかずに、あるいは契約的な形でなく医療というものが提供されるという意味では、それぞれサービス提供者側も、あるいは受領者側についても、私的自治とは異なった側面があるという理解の仕方もできるかなと思います。ですが、最初のほうの修文については特に一般論としての問題で、まだここは障害そのものに限定した議論ではないという意味では、それはそれで結構だと思います。

棟居部会長 ありがとうございました。
 それでは、この44ページの下のほう「このような扱いにより」というところの次の行「深刻な状況に陥ることもある」というところの次に、先ほどの池原委員の御提案を繰り返しますと「また、障害を理由として本人の事故決定や身体の自由が他の者よりも軽視される事態も生じる」。これは言わば言いかえというのか、今まで言わんとしてきたことを明示していただいているということで、私は特に今これを追加することで全体の文意がずれてくる心配はないと思うのですが、これはいかがですか。皆さん方よろしいですか。ありがとうございました。では、今の貴重な御提案は取り込ませていただきます。

池原委員 済みません、あと2点ほどありまして、前回欠席してしまったもので申しわけありませんけれども、次は第3の不均等待遇の禁止のところですが、ここで1つは、これはあくまでもやや希望的な提案で絶対にということではないですけれども、2行目から3行目にかけて「十分な説明がないままに治療されたり、入院させられたりする等の扱いを受けることが多い」というところの「入院させられる」という手前に「本人の意思に基づかずに」というのを入れていただけたら、よりありがたいなと思っています。
 というのはどうしてかというと、例えば措置入院とか医療保護入院のような強制入院の場合にも、入院に際してのお知らせという文書が渡されるのです。ですから、それをもってインフォームド・コンセントが行われたのだということになってしまうとすると、十分な説明がないままに入院させられたりするというのは、現状を変える意味がほとんどなくなってしまうので、本人の意思に基づかずに入院させられたりするというような言い方をしていただいたほうが、より趣旨が明確かなと思った次第です。
 もう一つは次の一文なのですけれども、これはむしろどちらかと言うと医療者側の方に肩を持つような言い方になるかもしれませんが、一般には入院の必要がないのに安易に入院させられる場合もあるというふうにあって、これはやや医療者側からは、入院の必要のない人まで入院させていることはないですよという、むしろ反発を受けるのではないかなと思っていまして、ここは手書きの汚い修文なのですけれども「一般的には」という文章と「の必要がないのに、安易に」というところはむしろ削除して「入院を避けるための工夫(合理的配慮)が可能であるのに、その工夫を尽くさずに入院させる場合もある」というような言い方のほうが、後のほうで要するに合理的配慮をしないで入院させるというのは差別なのだというふうになっているので、必要がないのに安易に入院させているという言い方よりは、むしろニュアンスとしてもいいのかなと思いました。

棟居部会長 ありがとうございます。
 今、最後におっしゃった点は、入院の必要のあるなしというのは誰が判断するかという問題が、この元の文章だと残ってしまうので、合理的配慮と絡めた修文案をいただきました。そちらに置きかえたほうがクリアになると思います。その点はよろしいでしょうか。ありがとうございます。
 植木委員、どうぞ。

植木委員 池原先生の提案は賛成ではありますが、ただ、入院を避けるための工夫イコール合理的配慮とするのはどうかという気もします。
 というのは、いわゆる入院を避けるための工夫はいろいろあると思いますが、それがこの法律における合理的配慮とそのまま重なるものかどうかはちょっと。

棟居部会長 「入院を避けるための合理的配慮が可能であるのに」とすればよろしいということですか。

植木委員 逆で、合理的配慮のところを削除して「入院をさけるための工夫が可能であるのに」とすればよいのではないかと私は思いました。

棟居部会長 池原委員、どうぞ。

池原委員 私は今の御指摘はそのまま賛成ですが、場合によると「(合理的配慮等)」ということにするかというのもありますけれども、工夫だけでも結構です。それは御判断お任せします。
 あと2つだけ申し上げていいでしょうか。もう一つあるのは、これは細かい字句修正ですけれども、今の「1、不均等待遇の禁止」の2)で、最後の行のところ「強制的な医療行為を行うこと」と書いてあるのですが、これを「強制的に医療を行うこと」と書きかえていただいたほうが、趣旨が明らかになりやすいかなと思いました。
 何が違うのかということなのですけれども、この文章の中では、すなわち個々の医療行為についてインフォームド・コンセントの原則云々と書いてありまして、この2)が個々の医療行為のことだけを言っているのか、入院という包括的な医療行為までを含んでいるのかということがややわかりにくくて、2)の最初の見出しの部分は「一般に提供されるインフォームド・コンセントなしに医療を提供すること」と書いてあるので、入院も含んでいるのだろうなという趣旨に読めるのですけれども、「すなわち」以降を読んでみると「個々の医療行為について」というので始まるので、入院を含んでいないようにも読めるように思えて、したがって、一番最後の締めくくりの文章のところを「強制的な医療行為」という、もう一回医療行為を使うよりは、強制的に医療を行うことというふうに、むしろ見出しの言葉に対応させた、つまり医療を提供することとか、医療を行うことという対応関係にしたほうがわかりやすいかなと思いました。

棟居部会長 ありがとうございました。
 特に今の点、強制的に医療を行うことについて、そのような修文のほうがつじつまが合うということで、それを取り込ませていただきたいと思います。
 それから、先ほど一番最初に池原委員が御指摘になった点についてはまぎれてしまったように思うのですけれども、この「合理的配慮の」の前は。

池原委員 工夫と配慮の問題ですか。

棟居部会長 どこでしたでしょうか。合理的配慮の前に本人の意思に基づかずに入院させられたりという、これを入れるべきだという。

池原委員 ちょっとだけ申し上げますと、先ほど申し上げたのは実際には強制入院のときに、入院についてのお知らせというものは配られていて、ある種それはインフォームド・コンセント的な形態をとっていて、言わばそれで要するに現状をよしとするのか、やはりもう少し差別禁止法の観点から本人の意思に基づかないで医療が行われるという、特に障害を理由として自己決定とか身体の自由が軽視されやすいという条件に対して、何らか多少リマインドするようなファクターを置くのかという観点からすると、本人の意思に基づかずにというところをやや強調するという意味になりますけれども、つけ加えたほうが明確かなと思っていますが、ただ、普通に考えるとインフォームド・コンセントというのは当然、本人の意思に基づいて行われることが前提なので、絶対にここを入れてくださいと言うほど強い要求ではありません。

棟居部会長 必ずしも要求するものではないとおっしゃったので、ちょっとお答えにくいというか。
 太田委員、どうぞ。

太田委員 当事者の立場からすると、そういう実態があるということは指摘したいと思います。

棟居部会長 すると、この池原提案の文章を入れるということで太田委員、御賛成いただいたということですか。

太田委員 なるべく入れてほしいと思います。

棟居部会長 皆さんよろしいですか。竹下副部会長、いかがでしょう。

竹下副部会長 竹下です。
 池原さんに説明してほしいのですけれども「意思に基づかない」と入れることによって、何が変わるのですか。

池原委員 つまり、非自発的な入院というのは基本的に差別になる可能性があるという認識なのです。ここで言っているのは、インフォームド・コンセントがいわゆる現在行われているインフォームド・コンセントという、言わば説明さえしておけば、あとは本人の意思に基づこうが基づくまいが、いいのではないかという取扱いにされはしまいか。
 つまりもう一度申し上げると、現状の例えば措置入院ではインフォームド・コンセントはされているわけです。それは本当の意味でのインフォームド・コンセントだと私は思いませんが、だけれども、それはインフォームド・コンセントですよというふうに言われる可能性があるのではないか。そうすると、余り現状をこの意見書で変えることにはならないのではないかということが危惧されるという意味なのです。

棟居部会長 竹下副部会長、どうぞ。

竹下副部会長 竹下です。
 池原さん、私は入れることに反対というよりは、説明を聞いていると私は物すごく違うのではないかと思ってしまう。というのは、例えば措置入院だろうが、広い意味で強制入院の場合に、そういう実態があることは私も知っているけれども、それをもってインフォームド・コンセントと言っているのですか。私は言っていないと思うのです。なぜかと言ったら、先生自身がおっしゃっているようにインフォームド・コンセントというのは、まさに説明と同意なのです。同意が前提だったら強制入院という言葉は出てこないでしょう。だから、聞いていて言葉を入れることに抵抗はなかったのだけれども、説明を聞いていると逆に誤解を招くように思ったから発言をさせていただきました。

池原委員 その誤解はよく理解できます。ですので、必ずしもここに屋上屋を重ねるように「本人の意思に基づかずに」ということを入れなくても、本来の法的に厳密な意味で求められるインフォームド・コンセントは、当然むしろコンセントという本人の同意があることが当然の前提なので、屋上屋を重ねることになるので入れる必要はないかもしれないなとは思います。ただ、これがほかの分野に回ったときに、いやいやちゃんと説明はしていますよと言われてしまうのが、少し心配をしているということです。

棟居部会長 すると、先ほど池原委員、特にこだわらないとおっしゃっていただいたので、この「本人の意思に基づかず」にというのは、あえて入れないということでよろしいですか。つまり、入れることでまた新たな論点を惹起すると、ここでは処理し切れないということで、では恐れ入りますが、元のままということで御容赦いただければありがたく存じます。
 大野委員、どうぞ。

大野委員 入れないということで議論の方向性がかたまった後で本当につけ加えですけれども、これは恐らく現在はそうではないのだけれども、技術的革新であるとか、社会の認識の変化によって、将来それが解消される可能性があるということも認識として残した上で、ただ、現在の実態として医療現場において、やはり同意書をよく当事者がわからないうちに、とりあえずこれを書いてくださいと言われてサイン1枚でそのまま入院してしまってとか、それが一体どのような状況であるのかということを当事者が全く理解しないままに事態が進行してしまうということは、現状としてはままあることであって、現状を変えるという意味では「本人の意思を尊重する」という単語をどこかに入れるということを御提起された池原委員の意見は、医療現場に日常接している当事者としては非常によくわかるものというか、理解できるものであると思いました。
 以上です。

棟居部会長 池原委員あるいは大野委員の御意見を伺いまして、しかし、本人の意思という言葉を出すことでまたいろいろ議論が惹起されるとすると、代わりの姑息なというか、簡単な修文として、こういうものでは池原委員や大野委員の御趣旨にはかなわないでしょうか。つまり「十分な説明がないままに」というところの前に「障害者の特性に応じた」とか、そういう一文を入れる。意思という言葉を入れるといろいろと新たな論点が出てきます。でも「障害者の特性に応じた十分な説明」、通り一遍のインフォームド・コンセントではなくて、障害者に伝わるように、あるいはその障害者の個別の事情を踏まえた説明という意味でのインフォームド・コンセントという意味で今、申し上げました。
 池原委員、どうぞ。

池原委員 また蒸し返して申しわけないのですけれども、今の原案は「十分な説明がないまま」ということで、同意のほうを書いていないのです。だから、ここは今のことも入れていただくと「障害の特性に配慮した十分な説明に基づく同意がないまま」とか、言わばインフォームド・コンセントのことを日本語的に言い直したことがここに入れば、それはそれでよろしいかと思います。

棟居部会長 太田委員、どうぞ。

太田委員 同意について、池原委員の提案の中の説明と同意の部分は、事実として同意のないまま入院させられている人たちがいっぱいいるので、事実としてあることを明記してください。

棟居部会長 ありがとうございました。
 ちょっと混乱してしまいましたが、すると池原委員の御理解では、どういう修文案になりますか。

池原委員 そうしますと「1、不均等待遇の禁止」の2行目のところですけれども「条件を加えられたり、」の後に「障害の特性に配慮した十分な説明に基づく同意がないままに」というようなことでしょうか。

棟居部会長 今の修文案で皆さんいかがでしょうか。よろしいですか。では、そのようにさせていただきます。
 野澤委員、どうぞ。

野澤委員 野澤です。
 以前、差別の例外のところで議論になったことなのですけれども、特に判断能力にハンデがあるようなタイプの知的障害の人とか、発達障害の人の場合に、医療を受けるとき、あるいはコンサートに行くとき大きな声を出す、あるいは医療行為を嫌がるということで例外かどうかみたいなことをされていたのですが、障害特性に簡単に転嫁されてしまうのですけれども、確かに障害特性があるのですが、そのときも言ったと思うのですけれども、環境だとかコミュニケーションの配慮だとか、支援のスキルの問題だとか、むしろこの環境や支援する側のことも含めた構造の問題として、やはりそれを考えていかなければいけないと思うのです。
 むしろ彼らの場合に合理的配慮を欠いたままいろんな場面で、いろんなことで差別的な状況になって、それでこういういわゆる問題行動と言われるものがつくり出されてきている側面があるわけです。その合理的配慮を欠いている状態がどこか行ってしまって、今、目の前にあらわれている問題行動だけとらえて、こういう障害特性があるから差別の例外だ、あるいは過剰な負担を求めるべきではないと、簡単にそういうふうに結論づけられると、すごく本質的なところをくじかれているような気がして、彼らはここで障害者の差別をなくすという部会のところでそういう議論が通ってしまうと、とてもまずいなと思ってもやもやしながら考えていたのです。それを見てこのあれを見たのですけれども、医療の部分は物すごく細かいところに配慮されているのが伝わってきて、これは大変感謝しています。
 1つ気がついたのは、43ページの商品・役務・不動産のところで、コンサート会場で静けさが要求されているところで障害特性から大きな声を上げてしまう。やはり気になるのです。障害特性から大きな声を上げてしまう。果たしてそういうふうに思われるけれども、言ってしまっていいのかなというのと、でもそれ以外の理由ではないということで言っているということで、これは私も代替案が余りないのでいいとして、その後「設置されているモニターを通じてコンサートを鑑賞する」。どうしてもいろんな会場に行って別室でモニターを見ますけれども、極めて音響的にだめで、こういうふうに書かれると、そういう別室で見てもらえればいいわけねというふうに簡単に理解されてしまうのは、残念だなと思います。
 どういうふうな内容かなと思ったのですけれども「設置されているモニターを通じて」をすぽっと抜いてくれるといいかなと思うのです。つまり「個室を用意し、コンサートを鑑賞する方法等も一つの」。個室のというのは別に別室ではなくて、コンサート会場の中でオペラを鑑賞するような席もありますので、たとえば仕切りをして個室のようなスペースを確保するという方法もあると思います。そういうものがあるといいのではないかと思ったのです。
 もう一つなのですけれども、コミュニケーションのところです。私はいろいろ言ったのですが、これもいろんなことを盛り込んでいただいてとても感謝しているのですけれども、1つ言い忘れていた大事なことがあって、というのは文章のやりとりではなくてこういう議論のときに、知的な障害のある人の場合にどのような配慮が最も必要なのかというと、スピードなのです。議論が早過ぎてついてこられない。彼らにとって一番必要だと私が感じているのは、彼らが理解する十分な時間の確保が必要だと思います。なので提案ですが、38ページ「3、上記の2)(特定の者への情報提供)の場合」です。上から4行目「通訳者の立ち会いなどを含む対応」その後に例えば「ゆっくり話すなど、理解力に配慮した十分な時間の確保」というのを一言入れてもらえないかなと。提案ですが。

棟居部会長 今の御提案はそのまま入れさせていただきたいと思います。御異論ございますでしょうか。よろしいですね。
 太田委員、どうぞ。

太田委員 賛成です。

棟居部会長 ありがとうございます。
 ずっと西村委員をお待たせしておって申しわけございません。では西村委員、お願いします。

西村委員 西村です。ありがとうございます。
 加筆をお願いしたいと思っております。54ページ「4、通学支援」ですけれども、就労等ということのお話もありましたし、この部分については教育の中でも議論されたと思いますが、具体的な加筆につきましては、まず4番目の表題は「通学支援等」。そしてその後なのですけれども「通学支援や在学時の介助等、障害者が必要とする支援については」云々にというものに続いていくという形にしていただいたほうが、よろしいのではないかと思っています。
 以上です。

棟居部会長 ごめんなさい。文章全体を読み上げしていただけますか。

西村委員 読み上げます。
 「4、通学支援等。通学時の移動支援や在学時の介護など、障害者が必要とする支援については学校やその設置者がなすべき合理的配慮であるのか、行政による福祉サービスであるのかについては、仕様会社が教育を受ける上で不可欠な支援であることから、政府において引き続き検討することが求められる」。その部分だけです。

棟居部会長 在学時間を取り込むということですか。

西村委員 在学時の介助等。つまりここで書いているのは、障害に応じて必要とする福祉的サービスが、実は在学時にも就労時にも必要であるということなので、通学支援のみに限定するのはいかがなものかということです。

棟居部会長 今の点、室長お願いします。

東室長 「在学時」という言葉よりも「在校時」のほうが適切ではないですか。

棟居部会長 通学というときに、これは後から出てまいって御指摘に対応して「通学支援」という言葉を入れ、1つ立てたわけですが、この移動支援に尽きないと。むしろ学校にいる間も介助が必要だという記述が落ちておるという御指摘で、しかし、従来の我々はそうした配慮を排除する意図は全くなかったわけですから、今のように入れて構わないと思いますが、いかがでしょうか。よろしいですか。植木委員、どうぞ。

植木委員 今の点で質問があるのが、この部分は学校の中にいるのは学校の責任だということを前提にした上で、学校に来るまでの間が学校の責任なのか、その他の責任なのかをさらに検討しましょうという記述でした。
 どちらかと言うと私の印象としては、学校の中にいるときの介助は学校の責任だという、むしろそういう前提があってこうなのかと思っていたのですが、そこはどうなのでしょうか。

棟居部会長 竹下副部会長、お願いします。

竹下副部会長 私も植木さんと同じ疑問があって、私は京都の例しかわかっていませんが、実態としても就学時というか、学校の中での介助は現在においても学校あるいは教育委員会の配慮というか手配によってされていると認識しているので、これを通学時と一緒に並べてしまうとマイナスに働かないかという心配をしてしまったのですけれども、その点はいかがなのでしょうか。

棟居部会長 今のを留保しつつ、大谷委員、どうぞ。

大谷委員 それとの関連で、合理的配慮の内容で具体的に授業等に対して、52ページで障害特性に応じた等々の例示が分類されていますね。その中で「利用可能な物理的環境の提供」と「必要な人員の配置」というところが、従来はこういうところに授業へのアクセス、校内移動支援というのがある種含まれてきたのです。それと私は二重に書いても構わないだろうと思っていますけれども、でもやはり原則はこの分野で求められる合理的配慮の内容として、ここに校内移動は授業への重大なアクセス保障ということで、ここに例示するべきだろうと思っているのです。
 もう少し言わせていただくと、この後に分類がA~Fとなった後に「特に」ということで、「例えば」ではなくて特出する形で教科書が点字等々で保障されなければいけないということと、知的障害及び発達障害のある人に対しては、BとDに関して特に保障しろという書き方になっているのです。
 やはり気になるのです。もちろん先回の議論の中で加えられた内容であるということは理解しているのですけれども、ここで移動支援が全然入っていないのです。そしていわゆる校内のバリアフリー化と言われるものが全然例示されていないのです。ですから、全く触れられていないので、最後に通学支援になったところに、校内の移動支援と授業へのアクセス保障はないのではないかという疑問が出て、やはり通学支援等でここに「在校時での介助」というのが出てくるのは、何となく気持ちとしてよくわかるので、どちらかにきちんと書くべきだろうと思っております。
 もう一つだけ言わせてもらえれば、知的障害及び発達障害のある子に対する合理的配慮としてBとDが挙げられていますけれども、文章として「D)として」ということで、避難場所の提示がされているのです。ですけれども、これは若干「クラスメイトからの刺激や騒音など環境に苦痛を生じることを避けるための場所的な環境の提供」となっていますが、やはりここは具体的に修文として「クラスメイトからの刺激や騒音などに苦痛を生じた場合、それを避けるための場所的な環境の提供が求められる」とか、一般的に生じることを避けるための場所の提供が、何となく発達障害の子に常時用意しなければいけないかなという誤解を生じるかなと思うので「生じた場合、それを避けるための」ぐらいの文章にしていただきたいなと思っています。
 2つのことを一遍に言ってしまいましたけれども、以上です。

棟居部会長 今おっしゃった最後は、何か初めから言わば別扱いというか、インクルーシブにならないような表現になっていないかということですね。

大谷委員 Dの表記の仕方が若干それを感じさせるので「何々の場合、それを避けるための」ぐらいの文章にしていただけたらと思います。

棟居部会長 今の点はよろしいでしょうか。野澤委員、どうぞ。

野澤委員 私は大谷先生の意見はよくわかるのですけれども、問題の1つは発達障害の人たちの学校現場を私は見ましたが、苦痛を生じているかどうかの認識がなかなか持てないというところが問題で、そのときは普通にしているが、後で崩れていってしまって、結局、不登校になる子が物すごく多いのです。
 「生じた場合」としたときに、生じたという判断を誰がするのかというのが問題になって、だからいつでもそういうときには避難できるようなところを用意しておくという意味での表現がいいのかもしれないと、先ほどトイレに行ったときに考えたのですけれども、その辺どうでしょうか。確かにおっしゃるように、最初から分けるのを前提にしているようなニュアンスが出てくるのも事実なのですが、その辺の特性がとても微妙なところなので、どうかなと思ったのですが。

棟居部会長 また子ずるい修文案で恐縮ですが「環境に由来する苦痛を避けるための場所」というふうにすると、前後の関係を除去できますね。つまり、一たん苦痛が生じた後の話なのか、それともあらかじめなのかというのをぼかしてしまうという点は、あるかと思います。
 今この段ですから、そういうやり方しかできない。伊東副部会長、どうぞ。

伊東副部会長 先ほど西村委員のお話で、在校時の責任の対応の話がありました。また、竹下副部会長から在校時の対応については学校の責任というご意見で、本来的にはそうであると思います。現実は個別に事情が違います。例えば学内で移動する場合ですらも親が来てやることと、学校側から言われていたり、個別の事情によって異なっています。果たして本当に在校時の対応が学校側の責任で行われる状態になっているかどうかについては、かなり違うのではないか。そういう意味では西村さんの言われた在校時という言葉を明確にした方がいいのではないかと思います。

棟居部会長 植木委員、どうぞ。

植木委員 植木です。
 ちょっと問題になった点を整理しますけれども、内容的には西村委員の御提案はそのとおりだと思いますが、54ページ「4、通学支援」の文脈的には、通学時の移動支援が、学校がなすべき合理的配慮であるか、行政による福祉サービスであるかについては、引き続き検討することが求められるという趣旨ですから、ここに入れると逆に学校の責任ではないというニュアンスのほうがむしろ強くなると思います。そうであれば、実際に行われているかどうかということはともかく、52ページの本則「1)授業等に関して」のEに「介助等を含む必要な人員の配置」というふうに、これは学校の責任だとこの段においては明確にしたほうがよいのではないかと私は思います。

棟居部会長 今、最後におっしゃった52ページのEを「介助等を含む必要な人員の配置」とするということについては、いかがでしょうか。これは実際に必要な人員というときに、手話通訳とかいろいろなことを従来イメージしておったと思いますが、介助ということが必ずしも検討になかった。しかし、授業へのアクセスという点ではそこまでしないとだめなのではないかということ。そして、通学支援とは切り離してこちらに入れた方がいいという御指摘だったと思います。
 西村委員、どうぞ。

西村委員 わからないのですけれども、通学が学校の責任なのかどうなのかということにつきましては、例えば北海道なんかではそうですが、ほかの自治体はわかりませんけれども、養護学校が一般の養護学校に通っている生徒たちに対して移動サービスというか、送迎をしているという実態が1つあります。それから、小学校などにおきましてはスクールバスが出されていて、それに係る移動の保障もしているという実態があります。いわゆる他の者との平等、つまり一般の障害のないお子さんたちがどのような形で受けているのかということを見たときに、では移動支援は学校の責任ではないという言い方ができるのかということにつきまして、私はわからないです。
 ですから、移動支援にしても通学にしても学校の中の介助にしても、実際問題、障害のない親たちが受けていない負担を受けているという実態があるわけで、この問題をどういうふうに入れ込むかということについては、この間、議論してきたと思いますが、学校の責任という明確な位置づけで本当に介助というものができるのか。
 私は実は在校時の介助及び医療的ケアまで意見として言おうかなと思ったのですけれども、医療的ケアについては看護師の配置をしてやっている自治体もあるので、これは外したほうがいいのかなということで言わなかったのですが、いずれにしても制限と制約をどう改善していくために、どこに盛り込むのか。この福祉サービスということで選択肢にあるのか、あるいは学校の本来あるべきものとして入れていくのかということについては、ちょっと私もどうなのかなと思うところがあります。

棟居部会長 整理していただけるということであれば。

大谷委員 今、西村委員が言った通学支援にそれなりの配慮がされているというのは、非常にまた地域差があります。それから、義務教育段階と高等教育においても非常に差があります。
 義務教育段階においてはやっているところもあるし、全くやっていないところもあって、全て保護者の負担において通学させているところも本当に多いです。ですから、通学支援を保障させることは非常に大きな問題ですし、特に大学などは一切されていなかった。校内に入ったら大学の責任だけれども、学校に来るまではお前の責任みたいな形で、支援がされていなかったので、そこのところはこれから見直しましょうということで非常に着手したばかりの事態になっているのです。ただし、お金は一体どちらが出すのかということもまだもめている。ですから、この通学支援は義務教育段階、養護学校、特別支援学校、小中学校にいる子の差、それから、地域差があること、高等教育によって非常にばらつきがあるので、全体に対して通学支援をする必要があるのだという指摘をぜひしていただきたい。
 ただし、校内での授業、教育に対する内容にアクセスは、これは学校として教育内容の保障ですから、私は合理的配慮の問題だろうと思っているのです。ですから52ページにぜひ「利用可能な物理的環境の提供」と「必要な人員の配置」というのは校内移動、授業への具体的なアクセスを含めた配慮ということで、ここはある種問題になりそうでしたら、例示を下の文章の中に入れ込んでいただきたいなと思っております。
 以上です。整理にならなかったらごめんなさい。

棟居部会長 整理になっていないと言うと身もふたもありませんが、今、文章をいただきたいので何か考えろという宿題は今の段階では無理です。

竹下副部会長 大谷先生が言っていることは、それこそ怒られるけれども、どちらを言っているかわからない。要するに、西村君は通学介助のところにプラス在校時と言っているわけです。植木さんは、そこに入れるのではなくて52ページのほうにと言っているわけです。

棟居部会長 54ページの通学支援のところ、まず「等」と入れるかどうかという問題がありますが、これを52ページに何かの補強を加えることで54ページは通学支援だけということで西村委員、よろしいですか。今は合意をとっていく段階なので、特に西村委員、強い御異論がなければ、そして、もし御意見があればワンセンテンスでお願いします。

西村委員 そのことが含まれるのであれば、いいです。介助が必要だということが入れられればいいです。

棟居部会長 だれが言わば責任の主体であるのか、名宛人であるのかという点について、この通学支援の文章では「行政による福祉サービスであるのかについては」という格好でぼかしておるわけです。しかし、いずれにせよ結果は出るといいますか、障害者が教育を受ける上で不可欠な支援であるということは押さえているという、そういう戦略的なある種引いた書き方なので、西村委員が先ほどからおっしゃっているのは学校や設置者がなすべき合理的配慮であるという、ここの一本でいけとおっしゃっているのだけれども、我々はそこで合理的配慮はどこまでなのかというある種の概念論争に巻き込まれたくないと。福祉でも何でもいいからとにかく結果を出してほしいというので、今までは来ているということなのです。
 西村委員、いかがでしょうか。先ほど来の議論のやりとりの中で、授業等については52ページでの植木委員の御提案によるある種の補強ということが、西村委員の御提案の結果として出てまいりました。ですから純粋に通学支援については誰でも構わないからやれというこの文章でお認めいただくということでよろしいでしょうか。ありがとうございます。
 では、52ページの修文についてですが、これは確認になりますけれども、先ほど植木委員がおっしゃったのは、このEで「介助等を含む必要な人員の配置」ということでしたが、その前の利用可能なところもいろいろ御議論がございました。結局これはどこに落ち着くべきなのでしょうか。そこの整理をどなたでもお願いできれば。

竹下副部会長 座長、その前に52ページのところは植木さんの言うとおり修文は、正確にするためにですけれども、かつ、西村君が言ったことと合せると「校内における介助等の必要な人員」となるのでしょうか。

棟居部会長 校内という言葉は先ほど来は入れていませんが「授業等に関して」という大きなくくりの中ですから、おのずと今おっしゃったようになるだろうということです。
 介助等を含むというのが一番ミニマムでわかりやすい修文案でございます。「必要な人員の配置」の前に「介助等を含む」を加える。これでよろしいでしょうか。ありがとうございます。では、非常に濃密な議論ありがとうございました。
 もう時間オーバーなのでここで打ち切らせていただきたいのですが、1点、先ほど私の不注意で池原委員がお出しになった、私どもに提出されたペーパーの46ページについては、特に御発言はよろしいですか。

池原委員 ありがとうございます。
 精神医療について特に1項目をつくっていただいて、御指摘いただいているので、基本的に私はこの方向に強く反対するものではないのですけれども、少し修文案として出してみたのは、御承知のように精神保健福祉法は厚生労働省所管ですし、医療観察法も厚生労働省と法務省の共管事項になっていて、内閣府のほうから基本的にどうこうするという筋合いのことではないという限界があって、それに対して将来、権利条約が批准されるということになれば、これは当然のことだと言えば当然のことなのですけれども、権利条約の14条とか19条あたりの観点から、当然そういうものについて政策委員会等でも検討が進められることが求められるというような形で、こちらにもある程度土俵が残っているのですよということを言ったほうがいいのかなと思って、ちょっと指摘してみた次第です。

棟居部会長 ありがとうございます。
 私は先ほど十分紹介しませんでしたが、池原委員が御提案の修文案は47ページ精神医療のところの3行目ですけれども「問題点があり」の後に「係る観点から」という文章を入れる。そして、その下のほうですが「についての見直しの必要性が指摘された」という何か他人事のような書き方で終わってしまっているのですけれども、そこを削除して、代わりに「(精神保健福祉法)の在り方について障害者政策委員会等においても検討する必要がある」と、こういうふうに将来の課題として明示をするというのはどうかという御提案でございます。
 障害者政策委員会等においても検討する必要があるという、あちらより由緒のある部会でございますので、言い切ってもいいのかもしれませんが、今、皆さん御承知のように政策委員会の下に組み込まれてしまっておりますので、検討する必要があるなんて言うと、そんなことはこの部会に頼んだ覚えはないと、ここで検討できていないのだったらそれまでだというふうに、ボールが行ったり来たりする可能性もないではないので、今ちょっと苦しい気持ちでおります。

池原委員 語尾はもっとやわらかくてもいいと思います。「求められる」とか「期待される」とかです。

棟居部会長 障害者政策委員会等というものを出すことについては、特に問題はないですね。議題に上がってもおかしくないわけで「等においても検討されることが望まれる」とか「検討される必要性が指摘された」とかいうふうにまた戻るのか。とにかく池原委員がおっしゃりたいのは、障害者政策委員会といった今後続いていく場を特定して、宿題が残っていることを明示すべきだということですね。
 では「障害者政策委員会等においても、引き続き検討されることの必要性が指摘された」とかでいかがですか。ありがとうございました。
 それでは、以上でもう20分ほど遅延をしておりますので、山本委員、どうぞ。

山本委員 39ページの第3節の商品・役務・不動産について、やや細かい修文を幾つか提案したいと思います。
 まず39ページ真ん中の段のあたり「1、差別が禁止されるべき事項や場面」で「この分野において」とある2行目に「禁止される事項は」の後に「特に、」をつけ加えるべきではないかと思います。商品においては売買、役務においては提供、不動産においては利用というのは典型例でして、それに当たらないものがたくさんあるだろうと思います。
 そして、もっと難しい問題として、商品の定義が全くされていません。どうも動産を念頭に置いているのかなと思うのですが、無体物も多分入っていると思いますし、恐らく金融商品のようなものも入ってくるはずだと思います。それが混乱しているような気がしました。
 いずれにせよ「特に」をつけ加える必要があると思います。

棟居部会長 ありがとうございます。そのようにさせていただきます。

山本委員 2番目は、次の「1)商品の売買」の3行目は「といった日用品の売買・利用」ではないかと思います。

棟居部会長 そのとおりです。ありがとうございます。

山本委員 3番目は例を書いていただくということです。「2)役務の提供」のA)で3行目の後半「一方、生命保険のように広い意味での役務の提供に係る契約等、公共的施設や交通機関の利用とは重ならないものもある」とありますが、これは金融商品に入り得るものだと思います。その意味では、もっと典型的な役務の提供を考えるべきであって、例えば訪問看護とか訪問介護の例を挙げるほうが、リアリティも高まるのではないかと思います。順序はお任せいたします。

棟居部会長 そのようにさせていただきます。

山本委員 それから、41ページの真ん中の「2、不均等待遇を正当化する事由」で新たにつけ加えられた部分です。「ところで」のある部分の3行目「場合で、保佐人又は補助人の同意を得る必要がある行為」の前には「法律行為」を入れていただくほうがよいと思います。これはわかると思いますけれども、ほかは全部法律行為になっていますので、統一していただいたほうがよいと思います。
 最後ですが、その次の段落「そこで」の3行目です。「行為能力の制限があると分かった場合に、法律上有効でない契約の締結を拒む」というのは言い過ぎでして、これは取り消すことができるだけですので「法律上、取り消される可能性のある契約の締結を拒む」に改めていただいたほうが正確だと思います。

棟居部会長 法律上、取り消される可能性があるとさせていただきます。

山本委員 以上です。

棟居部会長 大変ありがとうございました。
 以上でもう時間切れというか、時間オーバーになっております。ということで、この第2コーナーを終了させていただきます。
 ここでもう終わりは泣いても笑っても本日限りでございます。かつ、一番最後が5時までということでございますが、15分という休憩をとらせていただきまして、したがって再開は22分からということで、第3コーナーでの迅速な御議論に御協力いただければと思います。
 では、休憩に入ります。

(休憩)

棟居部会長 再開します。
 第3コーナーですが、30分少々しか残っておりません。ここで「部会意見の取りまとめ(その3)」を終わらせてしまう必要がございます。すなわち「第2章 各則」から「第6節 雇用」以下を扱うことになります。
 まず最初に、私のほうから簡単に説明をさせていただきます。なお、今後等についてのアナウンスという事務的アナウンスはどうされますか。一番最後ですか。

東室長 一番最後に2~3分。

棟居部会長 ですから、最後に2~3分とっておかなければいけないということも御留意ください。
 ということで、まず55ページをごらんいただきますと「第6節 雇用」につきまして「1、差別が禁止されるべき事項や場面」という真ん中辺の1、のところですが、男女雇用均等法の書きぶりに合せております。
 56ページ「3、福祉的就労」ですが、労働者性がない場合については役務の提供の場面で扱うということを確認する文章を入れております。
 56ページから57ページにかけまして、56ページの下のほう「2、不均等待遇と労働能力」でございますが、全体に文章がこなれていないという御指摘があり、簡潔明瞭な形に修文をしたつもりでおります。ごらんいただきたいと思います。
 58ページ、真ん中辺「2、事業主の合理的配慮義務についての公的支援と過度の負担」という従来、議論いたしました点についてですが「消極の要素の1つとなる」といった文章を「考慮すべき要素の1つになる」といった文章に御指摘を踏まえた格好で直させていただいております。
 60ページの表題「第7節 国家資格等」というふうに「等」を加えるという修正を行おうとしております。
 同じ60ページでありますが、下のほう「2、差別をしてはならないとされる相手方の範囲」というところで、民間委託先の例示として、より適切な例に置きかえたつもりであります。
 60ページから61ページにかけまして、60ページ下の「1、不均等待遇の禁止」のところでありますが、資格試験の本質部分につきまして61ページの上のほうで「中でも、資格試験の内容は、障害があることにより資格取得に当たって求められる本質的な能力以外の要素で不利益につながるものであってはならない」という原則的な文章を加えております。
 61ページから62ページにかけて、61ページ一番下の「3、不均等待遇を正当化する事由」のところですが、62ページの上から3段目をごらんください。そこで業務の本質的部分を遂行することができるかという観点を委員の御指摘、御意見を踏まえまして、そのような文章に書き改めております。消しておる部分、その下の線を引いておる部分、これが置きかえた前と後を示しております。
 64ページをごらんいただきますと、一番下「4、民間資格」のところです。民間資格も国家資格と類似の課題を要するということを明確にいたしました。
 続いて「第8節 家族形成」ということでございます。65ページの一番上、従来、第8節は婚姻・妊娠・出産・養育としておりましたが、これを包括して漏れをなくす表現にすべきであるということで、家族形成という表題に改めさせていただいております。
 同じく65ページでございますが、真ん中辺「1)婚姻(婚姻の解消も含む)」ですが、まず事例を追加するということ、それから、最初の文章ですけれども「本来、両性の合意のみに基づいて成立するものである」という原則を追加しております。事例については「障害者と結婚すると不幸になる」云々という追加をしております。いずれも前回の御議論を踏まえたものであります。
 66ページ「2)妊娠・出産」をごらんいただきますと、子宮摘出という手術は優生保護法のもとであっても違法であったということを前提といたしまして、書き直しをいたしております。また「『子どもはどうせ育てられないのだから』と医療従事者から堕胎を勧められる」云々といった事例の追加をしております。
 同じ66ページの真ん中よりやや下「A)母子保健サービス」のところで、文章をわかりやすく修文をいたしております。
 67ページ上のほう「C)教育」をごらんいただきますと、親の役割を果たす上での支援について現状をつけ加える形で、親としての役割を果たす際の困難さを強調する文章にいたしております。
 同じく67ページの「D)親権」ですが、親子分離の事例というものを67ページ下のほう「親権の制限には至らないにしても、親に育児能力がないとして、出産直後に子どもを乳児院等に入れられるなど、適切な支援もないまま親子分離がなされることもある」といった形で事例を追加しております。
 68ページ、この一番最初をごらんください。これまでこの分野が女性だけの問題に限らないといったことを指摘しておったわけでございます。ただ、とりわけこれは先ほどもありましたが、女性障害者の置かれた状況に留意することが必要であるということで、そのようなニュアンスが出るような修文をしております。
 69ページ「2、不均等待遇を正当化する事由」をごらんください。これまで挙げておりました正当化事由の事例は、必ずしも適切ではないという御指摘がありましたので、線を引いておりますように削除をしておるところであります。
 同じく69ページ下のほう「1)婚姻」ですが、求められる合理的配慮の例としてAとBに分けて事例を挙げておるところであります。その際「B)施設入所中の障害者が婚姻する場合」について、場面設定をよりクリアにするという書きぶりに改めております。
 70ページの最初の段落をごらんください。不妊手術等を行う際の合理的配慮として、結果についての説明がなされること。それを理解していること及びその上で手術に同意していることを確認することが必要であるという観点から、文章を追加しております。
 同じ70ページ「3)養育」でありますが、線で消しておる従来の記述は事例として一部に偏っているということから、問題となる分野を挙げまして漏れがないような形で書きあらためたのが、このページの新しい文章でございます。御確認ください。
 続きまして、節で言うと71ページ一番上の「第9節 政治参加(選挙等)」ですが、72ページから73ページにかけましてですけれども「1、合理的配慮が求められる場面と具体例」という72ページの上のほうで幾つか事例を加えております。例えば「寝たきりで投票所に行けない」といった記述を加える。あるいは下のほうですが「投票所における知的障害者や発達障害者のための視覚による情報伝達支援(投票用紙の記入ブースに貼ってある候補者名に顔写真を付けるなど)」といった事例を加えております。
 続きまして、これも章が改まりますが、75ページをごらんください。「第10節 司法手続」であります。
 「第1、はじめに」ですが、原則論としまして一番最後「裁判を受ける権利そのものが脅かされかねない状況」という指摘をしまして、裁判を受ける権利との関係を明示した記述にしております。
 78ページをごらんいただきますと、最初の段落ですが、発達障害者を主に念頭に置いた刑事手続における合理的配慮の例を加えておる次第であります。78ページの一番頭からでありますが「さらに、発達障害者の場合、相手の感情や周囲の空気を読み取るのが苦手で、自ら深く反省する気持ちがあってもそれを表現することがうまくできず、裁判の過程での振る舞いがあたかも『反省していない』ように受け取られることもある。普通に会話をしてコミュニケーションをとるということが容易でない知的障害者や発達障害者の話や真意を十分かつ的確に聞きとるための本人と信頼関係が築け、本人の障害特性やコミュニケーションの特徴を把握して適切に対応できる人材を捜査段階も含めて配置し、本人の意思や認識が適正に把握されるための措置が合理的配慮として求められる」という、いわゆる悪文になっているかもしれませんが、発達障害を念頭に置いた、特に刑事手続における記述を加えております。
 79ページ「3)処遇における合理的配慮」という真ん中よりやや下のところであります。ここでもやはり発達障害者を念頭に置きまして、合理的配慮の具体例を加えております。すなわち「受刑することの意味を発達障害者が真に理解し内省を深めるための発達障害者の特性に合ったコミュニケーション方法や心理的アプローチ」という記述を加えておるわけであります。
 以上で、第3コーナーで残されました部分、本日の残りの部分の説明を全て終えました。先ほど来と同様にどこからでも御意見、御議論をどうぞということですが、議論にわたる時間は残念ながらございませんので、誤植さらにはこういう修文、そしてごく簡単な理由づけということでお願いします。加納委員、どうぞ。

加納委員 加納です。
 66ページ「2)妊娠・出産」1行目の文章の最終部をお願いいたします。ここの原文が「将来の妊娠を心配して又は生理介助に手間がかかることを理由に」というところがございますが、ちょっとここはこのようにシンプルに「妊娠をさせないために」というだけに変えていただけますか。

棟居部会長 「生理介助」のところは取るのですか。

加納委員 これは後ろのほうで説明いただいていますので、ここでは述べなくていいかと、整理をこちらでさせていただきました。

棟居部会長 そうすると、どういう文章になりますでしょうか。

加納委員 「妊娠をさせないために、本人が望まない、あるいは本人に意味を理解させないまま」という。

棟居部会長 妊娠をさせないために、本人が望まないというつながりですね。

加納委員 将来の妊娠を心配してとか言うと、また別のニュアンスが入るので。

棟居部会長 わかりました。特に中身がそれで目減りするものでもないようですので、よろしいでしょうか。ありがとうございました。
 ほかございますか。永野委員、お願いします。

永野委員 永野です。2点あります。
 まず政治参加のところですが、以前に外国法を調べたときに差別をしてはならない主体として、政党が挙がっていました。しかし、71ページ「差別をしてはならないとされる団体や個人の範囲」のところに政党は挙がっておらず、73ページの第5「1、政治参加」で少し政党に関する記述が書かれるのみになっております。もしかすると、あえてこういうふうな書き方になっているのかもしれませんけれども、もしあえてそうなっているのであれば説明をしていただきたいと思うのと、もしあえてというわけではなくて、ただ単に抜けているのであれば、差別をしてはならないとされる団体や個人の範囲のところに、政党を入れてもよいのではないかと思っております。それが第1点目です。
 第2点目は雇用のところなのですが、これは私が修文を出すのを忘れていたのが原因で申しわけないのですが、先ほどの教育のところでは、保護者が障害を持っている場合についての合理的配慮の記述があったのですけれども、それと同じような形で、労働者の家族に障害を持っている方がいらっしゃる場合の合理的配慮というのも、1つつけ加えていただければ大変うれしいなと思っております。

棟居部会長 今の最後の御指摘は、具体的にどこでしょうか。

永野委員 雇用は教育の後ですよね。

棟居部会長 55ページ以下です。どちらに入れればよろしいでしょうか。

永野委員 58ページ「第4、この分野で求められる合理的配慮とその不提供」に1~3とあるのですけれども、その後に4として、家族に障害を持つ人がいる労働者への合理的配慮という項目を入れて、52ページに教育の分野について保護者が障害を持っている場合の記述があるのですが、それと大体同じような形で、雇用における合理的配慮は障害者本人に提供されるものだけではなくというような記述があると良いかと思います。

棟居部会長 室長からコメントいただきます。

東室長 教育であえて親のことに触れたのは、それは親自身の問題ではなくて子供の教育に関係があるからということで書いています。家族に障害があって、家族自体に対する差別がどうなるのかということは、総論の障害に基づく差別のところの中に書いてあります。ですので、教育以外の個別の分野では、総論以上に書く必要はないのだろうということです。

永野委員 わかりました。

棟居部会長 ということで、教育が例外的にああいう記載になっておるということで、お認めいただければありがたく存じます。よろしいですか。
 ほかいかがでしょうか。西村委員、どうぞ。

西村委員 ありがとうございます。
 65ページの第2の1の1)の「婚姻は、本来、両性の合意のみに基づいて成立するものであるが」という記載なのですけれども、これは極めて正しい表現なのですが、障害者差別禁止法あるいは差別禁止部会として書くのであれば、両性の合意については「本来、当事者間の合意のみに基づいて」というふうにする方がよろしいのではないかと思います。
 というのは、インターセックスとか性同一性の問題なんかも受けている現状がありますので、そうした方たちの心情を考えたときに、両性と言うよりも当事者間の合意というふうに表記をしたほうがいいのではないかと思います。
 以上です。

棟居部会長 今の点について、一応のレスポンスをしておきますと、まず第一点の婚姻というのは法律婚ということを念頭に置いておるということ。それから、両性の合意というのは憲法24条でそういう文章になっておるということで、あえて両性というものをそのままなぞって書いておるということでございます。
 今いろいろ御指摘のあった、同性婚等を殊さらに排除するというつもりは全くもちろんなかったということなのですが、従来その点については議論もしてきていないです。ですから、排除する趣旨でないことを明示できればいいのかなと今、思っています。つまり「婚姻は憲法24条によれば」とか「両性の合意のみに基づいて成立するものであるが(憲法24条参照)」とかそういう格好にすれば、特に我々がここで価値判断をしていないということが言えると思います。括弧書きで「憲法24条参照」という形でよろしいですか。

西村委員 はい、よろしいです。

棟居部会長 では、皆さんよろしいですか。どうもありがとうございます。
 ほかいかがでしょうか。太田委員、どうぞ。

太田委員 永野委員の政党について答えてください。

棟居部会長 どうもうっかりしておりました。先ほどの永野委員の御指摘のうちの政党についてお答えをしていなかった。先ほど永野委員が既に答えをおっしゃったようなところがありますので安心し、また、うっかりしておりました。失礼いたしまた。
 この点については、以前議論をしたことがありまして、政党にまで踏み込んでいくというのは、まず1点としては我々は行政に対して、関係各機関に対して呼びかけていく。もちろん司法に対して呼びかけないわけではありませんが、政党という結局は国会に議席を得て立法権を握っていく。さらに内閣を構成していくという団体、あくまで憲法上は任意の結社なのですけれども、それに対して直接に物を言っていくことは、少し射程として広くなり過ぎるということで抑えた表現にしてあるというのは、永野委員が御指摘になったとおりであります。
 もう一つは今、まさに申しましたように、結社の自由ということでさまざまのイデオロギーや思想あるいは信条、基本的な政策に基づいて政党というものが結集されておるわけで、そのぜひというのはほぼすべて選挙を通じて有権者の判断に委ねられるべきだという考え方が、恐らく憲法論としての原則であろうと思います。つまり、法律等で政党の中に立ち入って、そこでさまざまの差別を禁止していくといった形をとる、そういう法規範的な制約を加えて、政党内の秩序をつくっていくというものではない。そうではなくて、いいも悪いも含めて全ては政治のプロセスの中で有権者が判断していくべきものということで、政党については特に言わば別枠の扱いをしようとしている。
 ただ、これは例えばこういう差別禁止法といった法律が政治過程の俎上に乗ってくる場合に、一体あなた方はどうなのだという格好で必ず政党自身に跳ね返ってくる話になってきます。これは法的な縛りとして跳ね返るわけではないにしても、政治的なまさに重しとして跳ね返ってくるわけですから、結果としては十分に対応をしていただけることになるはずだという期待もございます。
 以上が一応の説明です。今の点はよろしいですか。
 では、ほかいかがでしょうか。加納委員、どうぞ。

加納委員 加納です。69ページ「1、不均等待遇の禁止」の1行目の最後のところになのですけれども、新たに挿入していただいた「(家族等は除外されている)」なのですが、ちょっとお教えいただきたいのです。あえてこれを挿入いただいた修文についての質問です。

棟居部会長 これはこのような議論というか、御意見があり、つまり家族等は除外されているという括弧書きを加えるという修文提案を飲んだ格好でこのような、つまり平場での議論を通じてこのような結果になっておるというのが、今、室長が横から記憶を喚起してくださったのですけれども、ここで特に家族というのは極めて、これは加納委員何度もおっしゃっていることと重なってきます。そして、こちらというか我々で何度も議論したこととも重なってくる、繰り返しなのですが、どこまで言わば差別禁止とか、あるいは権利というものが、もちろん家族に当然人権とか平等とか、そういう権利は入っていくのだけれども、いわゆる合理的配慮をしないと不均等待遇になり、差別になりますよという法的な評価を家族といった典型的な親密圏、最も近しい関係においてどこまで成り立つものなのかという観点に対しては、これは私個人の意見ということでは決してないのだけれども、例えばこれは外国人を殊さらに会員に加えないという会則を設けているゴルフグラブの事件では、それも含めて結社の自由であるといった判例が出ておるところであるように、言わばごく近しい関係においては一般的な考え方が通用しない領域というものも、最後どうしても残ってしまう。
 そのことが逆に不特定または多数に対して開かれた事業者のようなケースでは親密圏ではないので、逆にそうはいきませんよということで差別禁止を強く言っていけるという、その差別禁止が強く成り立つ場面とそうではない場面との組み合わせというのが、従来の議論の前提にはあったわけで、これは明示的にその点を指摘されたのは、例えば山本委員は何度かおっしゃったと思いますし、しかし、その際、特に我々の間で違和感を持ったそういう御指摘ではなくて、これは24時間、生活の隅々まで全てに及んでくる話をしているわけではない。あくまで社会生活上、社会的な障壁が加えられてきた。それを突破していくという話で、逆に言うと、親密な関係の間ではそもそもそうした合理的配慮とかいった考え方以前のものとして、あえて法的な規制の対象には加えないという整理にしてきたのではないかということであります。
 今、非常に大きなことをおっしゃっていて、ここで家族等は除外されているというのを入れる、あるいは外すというのは何か小さな修正のようですけれども、非常に大きなことなので、何か適切な修文があればそのようにさせていただきます。

加納委員 提案は、あえてその議論はしないということで、外すというのはいかがかと。

棟居部会長 外すことが議論しないことを意味するかということが問題なのです。

加納委員 議論の余地を残してもらいたいということです。

棟居部会長 室長、どうぞ。

東室長 前段で家族の反対の事例は随分書いております。本来その範囲外だと考えれば、その事例を挙げるということは適切ではないわけですね。しかしながら、実態としてあるということだけでもここに書くべきだという意見があったことを踏まえて、事例としては書く。けれども、差別禁止の範囲としては違うよということはどこかで書かなければ、誤解が生まれるということになるわけです。だから、ここで事例は書いているけれども、差別禁止法は及ばないということは一定どこかで明確にする必要があると言うことで、その旨が書かれてあるわけです。

加納委員 では、事実として実際親密圏における閉鎖的な空間での差別や権利侵害の事例はあるのだけれども、それはこの法律の対象外であるという理解でよろしいですか。

東室長 家族内での障害を理由にした反対。それ自体が差別であるかどうか、差別の定義として考えた場合に、必ずしもそれが他と比較した上での異なる取り扱いと言えるのかという、一番基本的な部分でいろいろ考え方があるわけです。その問題と、あと1つは仮にそれが異なる取り扱いであったとしても、そういう場面で法律を適用することが妥当なのかといった基本的な総論の議論があります。ですので、家族内での反対は、それがそもそも差別に当たるのかといった点から議論が出発していることについて、御理解をいただければと思っています。

加納委員 もちろん精一杯で書いていただいているということは十分理解した上での、あえて児童虐待防止法等々あるいはDV法といったものの成立が、この親密圏の閉鎖空間の中で起こっていることへの1つの公的な介入ということでできた法律を持ったときに、それとの関連があるのかなと思いました。

棟居部会長 わかりました。家族といっても親密圏という美しい名前のもとで包み込まれて正当化されるものと、そうではない単なる暴力であるというものがありますので「家族等は原則として除外される」といった「原則として」というものを入れるということでいかがでしょうか。それですと加納委員がおっしゃっているような御指摘にも一応は対応できる。つまり例外的な場面はあくまでおっしゃっているはずですから。
 山本委員、どうぞ。

山本委員 「原則として」という言葉を入れますと、何が原則で何が例外かという新たな議論を生むことになって、よけいに紛糾することになりはしないでしょうか。

棟居部会長 提案をお願いしたいのです。つまり、いじらないということですか。山本委員の今の御指摘は、このままにしておいたほうが弊害が少ないということのようですが。

竹下副部会長 結論としては、私は「原則」を入れないほうがいいと思いますし、加納委員が言っていることの趣旨はわかったつもりであえて言いますけれども、このままのほうがいいと思うのです。確かに家族の中にある虐待の問題は、この間の議論も踏まえて言えば、虐待の問題を差別とどこまで取り込むのか、区別するのかという議論が現にあったわけですし、既に障害者虐待防止法ができていることも踏まえた場合に、ここでは差別禁止法の守備範囲としては、家族間の問題は適用外とすることで整理しておくというのが、この間の整理だと思うのです。

棟居部会長 家族形成という言葉をタイトルにしたがゆえに、家族を除く家族形成という、これは何かなという概念的によくわからなくなったりしてもおるのですけれども、しかし従来からのいずれにせよパッチワーク、いろんな議論の貼り合わせで「家族等は除外されている」というのは「除外する」という強い表現よりは少し落として「されている」という言わば技術的な書き方にしておるので、そこらをもし酌んでいただければ、つまりこれはまっとうな家族が大前提になっています。原文でいいかもわかりませんが、池原委員、どうぞ。

池原委員 余り強い意見ではないですけれども、この文章だけを読ませていただくと、今、加納委員から指摘されているところは「上記に述べた相手方(家族等は除外されている)」となっていて、上記に述べた相手方というのは、要するに68ページの2に差別をしてはならないとされる相手方の1~3に記載されているところを指していて、ここには特に2と3には家族は記載されていないですね。
 1については第2パラグラフのところで「法律が家族関係の在り方を規制することには慎重であるべきである」という論述があって、要するに虐待防止法に違反するような場合には当然介入されるけれども、それ以外の場合には介入されないのだという趣旨が生きているので、私の結論というか立場とすると、この「(家族等は除外されている)」ということはあえて指摘しなくても「上記に述べた相手方」というところは結局、前のページの2の1~3に書いてあって、家族については慎重にしろということも書いてあるので、趣旨は通じないかなという気はします。

棟居部会長 室長、お願いします。

東室長 ここをぎりぎりやってしまうと、一番強硬な意見としては家族の反対の部分は事例も含めて削除すべきという意見が出てくると思います。
 そこのぎりぎりの調整である意味こういう形でさせていただいております。69ページに括弧を入れるということは文章的にどうかという話であれば、逆に「2、差別をしてはならないとされる相手方」の後に家族は除外するという形にならざるを得ないわけです。でも表題でそこまで書くよりも、文章中に書いたほうが少しはやわらかくなるのではと思います。

棟居部会長 そのやわらかさのみを追求すると、今、池原委員がおっしゃった68ページの記述にあくまで結びついた記述なのだということで、それを踏まえると「家族等は除外されている」という括弧書きの最初に「そこでは家族等は除外されている」というふうに、あくまで上記の文脈というふうに限定を加えればいかがでしょうか。何かイデオロギー的というか、原理原則的に家族を除外するのだという誤解を避けるというのが、今ここでの命題ですね。そのためには69ページの括弧書きの最初に「そこでは」というものを放り込みたいと個人として思います。いかがでしょうか。ここをクリアできるとかなりゴールが近くなっておるという感じなのですが、今、最後のしんどい坂道ではあります。いかがでしょうか。「そこでは」を入れるということで特に何も減らしていないと思うのです。よろしいですか。では、お願いします。ありがとうございました。
 ほかもうよろしいでしょうか。どなたかお手を挙げておられるのに当たっていないということがなければ、大変恐れ入りますが、ここで時間も尽きたと。まさに私も刀折れ矢尽きるというぼろぼろの状態ですので、努力賞ということはお認めいただけると。ただ、こちらは努力しました。この矢が伝わるということを皆さんとともに祈りたいというか、大いに政治にかかわる先生方にも応援していただきたいということでお願いをいたしまして、そこで本日の第3コーナーを終了ということにさせていただきます。
 本日の議事はこれで終了いたしました。最後に報告、確認事項がございます。東室長、よろしくお願いします。

東室長 どうも本当に御苦労様でございました。
 部会長のほうで最終的に確認していただければとは思いますけれども、今日の議論をもちまして、この部会の意見については取りまとめができたと理解してよろしいでしょうか。

(拍手)

東室長 ありがとうございます。
 今日出ました御意見については、御意見のとおりの修文を施した上で、恐らく1週間ぐらいでホームページにアップできるかなと思います。
 この意見につきましてはまだ明確に決まっておるわけではないですが、部会長のほうで政務三役に御報告を願えるものと考えております。
 今後の予定ですが、まだ時期ははっきりしていませんが、地域フォーラムのような形で地方の公聴会といったものを開いていければなと思っているところです。
 最後に、この部会ですけれども、今日で解散というわけではありません。時期は明確にはできないのですが、恐らく来年になりますけれども、一応どういうものが用意できているのかということについて御説明する機会ができると思っています。少なくともそこまでは会としては残るということで、考えておいていただければなと思っております。
 現状として報告できるところは以上です。本当にありがとうございました。

棟居部会長 太田委員、どうぞ。

太田委員 推進会議の意見書と同じように、差別禁止部会の意見書のわかりやすい版というのはできないのでしょうか。仲間たちに広めていきたいのですが、非常に難しくてわからないという声が多くあります。多くの障害者が理解できるように、わかりやすい版をつくっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

棟居部会長 わかりやすいバージョンをという御期待というか御要望ですが、室長、いかがでしょうか。

東室長 これのサマリーといいますか、そういうものは当然つくる必要があると思っていますけれども、第一次意見もしくは第二次意見のように、特に知的障害の方も入っていただいて、わかりやすいものをつくるかどうかといった点について、まだ結論を出しているわけではございません。一応検討させていただければと思っているところです。

棟居部会長 追加で申し上げると、室長が先ほど言われたように、恐らく地方公聴会というものを何度も各地で行うという格好になり、そのときにはどうしてもわかりやすい何かまとめた資料、冊子あるいはパソコンから画面に取り込む、とにかくその場で限られた時間に大きな内容を説明できるような工夫は必要になってくると思いますので、何かしらは多分こちらで私とかがつくることになるかなと思っていますが、それが正規のわかりやすいバージョンという扱いになるのかどうかというのは、まだわかりません。
 つまり正規版だということであれば、本当にこの報告内容と合致しているかという、またぎりぎりした議論をしなければいけませんけれども、そういう時間は多分ありませんので、これは簡単にした、言わば漫画にしたということなら、私個人はそれがあったほうが説明しやすいと思っています。ということで、大変長い間ありがとうございました。
 それでは、本日の差別禁止部会を終了いたします。その概要につきましては記者会見において私と伊東副部会長、竹下副部会長、東室長から説明をさせていただきます。
 大変長い間、また、お忙しい中お集まりいただいて、まことにありがとうございました。これが最後ではないということですが、この際、厚く御礼申し上げます。どうもありがとうございました。(拍手)