障害者政策委員会(第23回)議事録

○石川委員長 これより第23回「障害者政策委員会」を開催いたします。
 委員におかれましては、御多用のところを御出席いただきましてありがとうございます。
 本日の会議は16時15分までを予定しております。
 まず、事務局から委員の出欠状況について御報告いただきます。

○加藤参事官 事務局です。
 本日は、大原委員、門川委員、清原委員、田中委員、玉木委員、花井委員から欠席との連絡をいただいております。また、大河内委員からは少し遅れるとの連絡をいただいておりますが、今のところ、辻井委員、野澤委員、平川委員も少し遅れておられるようでございます。
 それから、会議冒頭、委員の皆様の御迷惑にならない範囲で取材が入りまして、写真撮影が行われておりますので、御承知おきください。
 以上でございます。

○石川委員長 それでは、本日の議事に入ります。
 毎回のお願いです。各委員から発言を求めるときは、まず挙手をいただきます。委員長からの指名を受けてから発言をお願いいたします。
 できれば最初に結論を述べていただき、その後、理由ないしは説明を述べてください。また、御発言の際は、可能な限りゆっくり、わかりやすくお話しください。また、マイクに近寄ってお話をしてください。発言後はマイクのスイッチを切ってください。
 また、障害者基本計画の実施状況に関しまして御発言をいただく際、いずれの項目に関連しての御発言なのかをお知らせいただけると幸いです。
 本日は、参考人としまして勝又幸子様をお迎えしております。
 その後、第3次障害者基本計画の実施状況について、各ワーキング・セッションから議論概要を報告していただくということになっております。
 その後、それを受けまして質疑応答とさせていただきたいと考えております。
 それでは、会議の資料と流れにつきまして、事務局よりお願いいたします。

○加藤参事官 本日の会議資料と流れについて御説明いたします。
 まず、会議資料でございます。
 資料1 勝又参考人提出資料
 資料2-1~資料2-4、ワーキング・セッションI~IVそれぞれの議論の整理(たたき台)
 資料3-1~資料3-4、ワーキング・セッションI~IVそれぞれの議論の概要
 資料4-1~資料4-14、各ワーキング・セッションにおけます各省庁からの提出資料
 資料5 厚生労働省提出資料:ワーキング・セッションII委員・参考人からの質問事項 喀痰吸引等支援体制加算に関するデータについて
 資料6 厚生労働省提出資料:ワーキング・セッションIII委員及び参考人からの追加のご指摘に対する回答
 資料7 文部科学省提出資料:ワーキング・セッションII III IV 第2回における御質問への回答
 参考資料1 障害者政策委員会ワーキング・セッションについて
 参考資料2 障害者政策委員会における第3次障害者基本計画の実施状況の監視に係る今後のスケジュールについて(案)
 参考資料3 障害者政策委員会における第3次障害者基本計画の実施状況の監視について(案)(第20回障害者政策委員会 資料)【抜粋】となっております。
 それから、委員の皆様には机上に常備いたします資料として、障害者基本法、障害者基本計画、障害者基本計画の概要、障害者基本計画の実施状況、障害者の権利に関する条約を御用意しております。
 次に、具体的な進行についてですが、時間を前半と後半に分けまして、前半ではまず国立社会保障・人口問題研究所情報調査分析部長の勝又幸子様より、障害者に関する統計をめぐる現状と課題をテーマに御意見をいただきます。
 続いて、各ワーキング・セッションでのコーディネーターから、各セッションにおける議論の概要について御報告をいただきます。
 また、各セッションで積み残しておりました質問などに関しまして、各省庁からの補足説明も続けて行います。
 その後、15分間の休憩を挟みまして、後半の時間を意見交換とする予定でございます。
 なお、これ以降の写真撮影は御遠慮いただきますようお願いいたします。
 以上です。

○石川委員長 ありがとうございました。
 それでは、第3次障害者基本計画の実施状況のモニタリングに入っていきたいと思います。
 第3次障害者基本計画の「IV推進体制」の「5.調査研究及び情報提供」として、障害者施策の適切な企画、実施、評価及び見直し(PDCA)の観点から、情報・データの充実を図るとともに、適切な情報・データの収集・評価のあり方等を検討することが記載されております。
 こちらに関しまして、参考人としまして、今、加藤参事官から紹介のございました国立社会保障・人口問題研究所の勝又幸子様に、きょうお越しいただいております。本日はお忙しいところ御出席いただきまして、ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○勝又参考人 御紹介ありがとうございます。国立社会保障・人口問題研究所の勝又と申します。座ってお話しさせていただきます。
 今回、石川委員長のほうから3つ御質問をいただきました。1つは、権利条約が求めている障害統計の水準とはどのくらいのものか。2つ目は、日本の障害統計の場合、現状でどのような不備や不足があるのか。3つ目は、その不備や不足をどうすれば改善することができるのか。この3つの御質問をいただきました。
 お手元に、資料1ということで3ページの資料を用意させていただきましたが、権利条約の条文の中で「統計及び資料の収集」と言われておりますのは、この私が用意しました3ページ目に囲みで、「第三十一条 統計及び資料の収集」ということで抜粋してまいりました。
 内容については各自で読んでいただきたいと思うのですけれども、第1番目の御質問、権利条約が求めている障害統計の整備の水準についてですが、この31条から読みますと、条約を実効あるものにするのに役立つ水準と私はお答えしたいと思います。言いかえれば、政策の監視・評価に使える水準、その資料を整備することと言っているのだと思います。今まさに委員会で第3次基本計画の監視をされているということですので、権利条約に沿って基本法がつくられ、基本法に沿って基本計画があるわけですから、既存の統計が基本計画の監視で使える水準なのかどうかというのは、間接的に権利条約の求める水準に至っているのかどうかということになると考えます。
 それから、第2、第3の御質問ですけれども、日本の障害統計の場合、現状でどんな不備かあって、不足があるのか、それをどうすれば改善できるのかですけれども、資料1の1ページ目に3つ課題を挙げさせていただいております。
 1つ目、障害者と障害のない人との比較が可能となるデータがないこと。2つ目、性別調査の徹底が必要なこと。3つ目、国と自治体のさまざまな統計データの活用が必要だが、そのための施策がないこと。この3つを課題として挙げさせていただいております。
 第1番目ですけれども、権利条約では他の者との平等ということをたくさん使っております。しかし、これまで日本で行われております調査、特に障害者の調査は、障害者を対象にした調査でして、日本に住む人口全体を対象にした調査の中に障害について尋ねたものはございません。
 諸外国の例として、資料1に欧州共同体(EU)や国連の例を挙げておりますけれども、国連の最新のデータですと、124カ国中94カ国、76%が国勢調査の中で障害について尋ねております。そのときに用いられる障害の定義は、ICF、国際生活機能分類を基礎としております。
 日本においても、国勢調査に障害の設問を入れるべきだと私は思っておりますけれども、国勢調査の質問票をいかに厳しい制約の中でつくられているかを知っている人からは、とんでもないと言われるかもしれません。
 しかし、国際的に見て、多くの国が入れるようになっていますし、そうするように国連も指導しております。必ずしも毎回の国勢調査に入れる必要はなくて、次々回2020年の調査に入れてみるべきではないかと考えております。
 特にこの設問が日本にとって重要なのは、人口減少社会になった今、全員参加型の社会を支えていくことが重要だからです。国勢調査で障害の有無を尋ねることは、子供から高齢者までの全年齢で、障害があるということはどういうことなのかと人々に考える機会を与えることにつながります。今や、人口の少子高齢化は先進諸国だけの問題ではありません。先週、国連のミレニアム開発目標、2015年のレポートが出ましたけれども、そこでも障害のあるなしが政策の中で非常に重要なポイントだと書かれております。
 前回の政策委員会の最後のほうで、上野委員が認知症について取り上げていくべきだという御発言をされていたのをビデオで拝見しました。認知症が高齢者に多いということあっても、年齢に関係なく、全ての障害者が他の者との平等を実現することが権利条約批准国としての責務だと思っております。
 2つ目の課題です。男女別統計の整備が徹底されていないという課題です。男女別統計をきめ細かくとっていきましょうということは、ずっと呼びかけがあるわけですけれども、まだまだ徹底されておりません。資料1に書きましたように、既にこの委員会でもそういうことは議論になっていると承知しております。
 きょう配付された資料3-3、16ページにありました厚生労働省の回答で、「障害者雇用状況報告」について女性や都道府県の詳細なデータをとることのメリットがあるのか、そういうことをやることの条約上の義務があるのかという御質問がありましたけれども、男女別統計がないことで複合差別の実態がわからないというデメリットを解消するためですので、大いにメリットはあるといえます。
 それから、条約上の義務。まさに第6条で障害のある女性というのをわざわざ入れているわけですから、批准国が複合差別の解消に取り組むのが義務であるということになると思います。
 さらに、日本政府は、今、女性活躍推進法というのを国会に出しております。子供を産んだり、育てたり、仕事をしたり、さまざまな形で社会に参加していく。これは障害があるとかないとかに関係なく、同じ女性として、女性の活躍推進法の中に障害のある女性も含まれるべきでございまして、それが他の者との平等ということだと思います。
 3つ目の課題は、前の2つの課題ととても関係が深い課題です。政策監視・評価に使える水準の統計が、国のみならず自治体でも不足している。使える統計がなければ、それをつくる必要がありまして、そのためには幾つか重要なポイントがあると思います。
 石川委員長の3つ目の御質問、どうすれば障害統計の不備や不足を改善することができるのかということのお答えになるかと思いますが、私から3つのお答えを出したいと思います。
 1つ、障害者を対象とした既存調査の改善が必要です。一番新しい障害者を対象にした調査は、平成23年に実施されました生活のしづらさ調査、別名、全国在宅障害児・者実態調査と申しますが、これは障害者の手帳を持っている人も持っていない人も、全体を包括する調査ということで提案されました。
 この調査以前は、身体と知的の調査しかなかったわけですから、精神と難病を加えた調査は大変意味があるものだと思いますが、新しい調査には問題もありました。例えば在宅に限定されたことで、施設や病院にいる障害者は対象にならなかったこと。自分で回答を記入して郵送で回収する方法をとったため、回答者に偏りがあったのではないかということです。
 国立のぞみの園の研究によりますと、高齢化によって近年になるほど65歳以上の知的障害者の数の伸びは大きくなっておりますけれども、平成17年の知的障害者の実態調査と23年の生活のしづらさ調査を比べますと、65歳以上の知的障害者が3.8倍になっていたそうです。この研究では、生活のしづらさ調査の方法が以前と異なることで、高齢知的障害者の数が大幅にふえたのではないかという仮説を立てております。
 生活のしづらさ調査は、障害の社会モデルに基づく把握という意欲的な調査だったと思うのですけれども、多くを盛り込み過ぎたため、それだけではいろいろな問題がございます。この調査から得た課題を次の調査に生かしていくべきだと思うのですけれども、実はこの調査が世論調査として実施されたという問題があります。
 世論調査として実施されたことの問題は、データ二次利用に制限があるということです。統計法という法律でデータの利用というのは決められておりますけれども、二次利用、つまり個票と呼ばれます調査から得られます最も細かいレベルのデータを貸し出して再利用する、これを二次利用といいますけれども、世論調査の場合はそういう制度が統計法上定められておりません。ですから、これを利用することが今はできないわけです。
 生活しづらさ調査の前の調査、知的と身体の調査は一般統計調査という位置づけだったので、二次利用ができました。ですから、これを次の調査のときには一般統計調査に戻して、利活用できるようにすべきだと思います。
 2つ目の改善方法ですが、使える統計をつくるといっても、調査を所管する省庁を動かし、使える調査に改善させるのは大変なことです。これはもう皆さん、今、まさにそういうことをなさっているので、おわかりになると思います。そこで、全省庁の基本認識を変えるべきです。そのために、次期統計基本計画への意見出しを障害者政策委員会から行うべきだと思います。
 前例としまして、男女共同参画局がジェンダー統計の整備を今期の基本計画に入れることに成功しております。先ほど私が申し上げましたように、例えば国勢調査に障害の設問を入れるということを提案するのであれば、まず次期基本計画に明記してもらい、2020年の国勢調査に実施する。そういう準備が必要です。
 3つ目の改善方法ですが、使える統計をデータベースとして整備するということが重要だと思います。国の基本計画の監視のためだけではなくて、自治体の支援のためにも必要です。自治体の障害福祉計画や、そこで基盤整備等に数値目標をつくるわけですけれども、そういうものを監視するのにも非常にデータベースの整備は重要だと思います。
 国の一般統計調査は、もう既にデータベース化が総務省で終わっております。しかし、さまざまな補助金とか、委託とか、各省庁が研究者に研究費として渡してやったような調査とか、そういうものは1回限りでその調査の個票データもそのままになってしまって、利活用されません。また、各自治体で実施している特徴ある調査の結果も、自治体間で共有して活用されることはありません。データベースの整備を通じて、そういうことが可能になるのではないかと思います。
 そのとき重要なのは、業務統計として行われている、例えば相談事業の実態とか、虐待の実態とか、さまざまなそういう調査についても、そこにデータベースとして入れるべきではないかと思います。
 東京都の障害者調査というので、障害者の生活実態というのが平成25年に行われておりますが、これはとても参考になります。何がすぐれているかといいますと、施設入所者も対象にしていること。調査員が訪問して聞き取り調査をしていること。手話通訳等の情報保障が準備されていること。そして、難病患者についても都の助成制度を通じた名簿で調査を入れているということです。国の調査の対象は4,000人弱にとどまっておりますけれども、平成25年の東京都の調査は全体で7,200人の対象を調査しております。相当なお金がかかったのではないかと想像しますけれども、このような調査はぜひ利活用されて、他の自治体でも参考にされるべきではないかと思います。
 以上、障害統計の改善方法について3つ提案させていただいたのですが、最後に政策の監視・評価に使える水準の統計を整備するために忘れてはならないのは、今申し上げた量的なアンケート調査だけではなく、現状を把握するための調査というのが重要です。例えば、基本法に述べられている法制度の障壁について、既存の法制度で障壁になっているものはどのくらいあるのかとか、そういう徹底した調査はまだなされていないと聞いております。ぜひそういう調査もされるべきでしょう。
 最後の最後に繰り返しになりますが、なぜ統計や資料の整備が必要なのか。権利条約の31条にありますように、条約を実効あるものとするためなのです。そこをよく考えていくべきだと思います。
 ありがとうございました。

○石川委員長 勝又先生、ありがとうございました。大変貴重な、また、重要な御指摘をいただきまして、本当にありがとうございます。
 それでは、各委員から質問あるいは意見を求めたいと思います。挙手をお願いいたします。
 それでは、遠藤委員、お願いします。

○遠藤委員 経団連の遠藤と申します。勝又さん、お久しぶりでございます。毎回、明快な御発言、感服いたします。
 2つお尋ねさせていただければと思います。まず1つ、資料1の1ページ目にございましたが、障害の有無についての設問項目を入れるという御提案でございましたが、御説明の中ではEUの実態として、その場合の定義として機能分類のお話をされておりましたが、仮に設問項目を入れるとして、その場合の定義として機能分類を置くのか、それとも社会モデルということで社会的障壁というものの取り扱いも含めて入れていこうと考えているのか、勝又さんはどちらでお考えなのかというのが1つ目のお尋ねでございます。
 2つ目でございますが、男女別の人数の割合ということでございます。これについては、第1期の障害者政策委員会のときから多くの方の御発言を私は聞いております。お立場も自分なりには理解しているつもりであります。
 そういった中で、ここに引用されております厚生労働省の一つの見解というのは、これは行政サイドからすれば真っ当なお答えだと思っています。男女比に差があることをもって直ちに違法ではないという状況下にある中で、やはり人数比をとることがどういうことの意味を持っているのか、あるいはそれを行政側がどう受けとめていけばいいのかというところについてのより積極的な、あるいは納得できるような理屈づけを持ってこない限りにおいては、必要だ、望ましいというだけでは、予算に限りがある中にあってはなかなか政策の優先順位というところでは物事が進んでいかないように思っております。そういった中で、ここに述べられていることにプラスアルファするような形で積極的な意味合いというものがもしございましたら、教えていただければと思います。
 以上であります。

○石川委員長 ありがとうございました。2つ御意見、御質問が出ておりますので、勝又参考人からお答えいただければと思います。よろしくお願いいたします。

○勝又参考人 ありがとうございます。
 まず第1番目のどういう設問を入れるのかということですけれども、これはある意味で障害種別まで詳しいことを入れるというよりも、国勢調査ですので、私は国勢調査を対象に申し上げておりますけれども、EUで行われておりますような調査の項目、具体的には、あなたは慢性的な心身の健康の問題、病気、障害を持っていますかというような言い方で聞く。そう思っている人は丸をつけるというものを私自身は想定しております。
 もう一つ、実は国連が推奨しているものの中には、先ほどICFというお話をしましたけれども、そのICFの中でもう少し詳しい設問を入れるという提案をしております。その提案をしている中に、実はワシントングループという研究者のグループがおりまして、その研究者のグループは、それをまた国連の提案からもう少し単純化した形での設問を出しておりまして、それはもう少し機能に関係する設問になっております。
 例えば眼鏡を使用しても見にくいか、補聴器を使用しても聞き取りにくいかとか、歩行や階段の上りおりがしにくいか、通常の言葉を使ってコミュニケーションが難しい、人の話を理解したり人に話を理解されることが難しいとか、思い出したり集中したりするのが難しい、入浴や衣服の着脱のような身の回りのことをするのが難しいと。
 こういう2つの方法が今あると思いますけれども、日本の全体の人口から障害を持っている人の実態を出すためには、私個人としては前者のEUのほうの問いを入れて、それを全体の分析の中に使って、細かいところは障害者を対象にした調査で行うと考えております。
 それから、男女別の調査をやるべきだといっても、それには理由が必要だという厚生労働省の回答はもっともであるという御意見でございますけれども、実態としてもう男女差はないんだという結果が出ていれば何の問題もないわけです。その男女差があるかどうかということがわからないというところで議論をするわけですから、まずはやってみましょうというのが政策としては重要なことで、かつそれほどお金がかかることかと私は思います。
 男女共同参画基本法のほうでも、各省庁にそういうものをやってくださいということで出しておりますし、男女別統計を整備していこうという方針(基本計画)を閣議決定して、やると言っているのに、ここにあって、やはりやらないという積極的な理由のほうがかえって説明できず、むしろその説明をしていただきたいと思います。
 以上です。

○石川委員長 ありがとうございました。
 遠藤委員、よろしいですか。

○遠藤委員 どうもありがとうございました。
 私自身、明快な答えを持ってお尋ねしたわけではございませんので、まずは御回答ありがとうございました。
 その上で懸念といいますか、私自身悩んでいることがございまして、社会的な障壁というものを基本法の中に入れたということは、やはり私は評価すべきことだと思っていて、そのための周知を今、行っている状況下があるわけです。まだ十分行き届いていないと思っています。そういった中で、統計の中でアンケートをとる場合については、別の定義で行っていくということが、今、その社会的障壁を含めて周知を行っている状況下で、果たしてそれでいいだろうかという思いがございますので、お尋ねをさせていただいたというのが1点目であります。
 それから、2点目の部分でございますけれども、差があることは、例えば抽出調査という形で厚労省の回答もあったかと思います。抽出調査の部分だけで足りないということが、どこが足りないのかというようなところ、あるいは抽出調査が正確でないというような根拠があるのであれば、また別の展開はあるかと思いますけれども、各種これまで議論を行ってきたことの経験談から申し上げれば、正確なデータがとれないような場合にあったとしても、抽出調査、あるいは特別に加工した調査によって、既存のものを有効活用しながら議論をしてきたということは多々経験させていただいている状況下がありますので、大きく変えていくということがどういう形で次に展開していくのかというところをもう少し議論を詰めていかない限りにおいては、私はもう少し積極的な理由としては難しいのではないかと個人的に思っているということでございます。
 以上であります。

○石川委員長 ありがとうございました。
 いずれにしましても、勝又参考人から問題提起ということで委員会として受けとめさせていただきたいと思います。
 2点目については、ほかの委員からも御意見があろうかと思いますが、1点目について、EUの国勢調査についての御紹介がありましたけれども、USセンサス、アメリカの国勢調査でも障害については以前より尋ねていると私としては理解しておりますけれども、勝又参考人、いかがでしょうか。

○勝又参考人 アメリカも尋ねております。すでにご説明したワシントングループの提案している設問のような形で尋ねております。
 遠藤委員のおっしゃったことは、この基本法と障害の定義ということで、調査の中に同じものを入れなくていいのかという、私は理解が不十分かもしれないのですけれども、そういうことだったのではないかと思うのですが、私が御提案している国勢調査に障害というのは、全国民の中でどういうふうに障害、例えばEUのお話ですと、本当にばくっとした、自分自身が慢性的な心身の健康問題や病気や障害を持っていますかという自分の考えみたいな形で言っているような、そういうものを聞いているもので、それ自体は国際的にもEUでもやっています。本人がそういうふうに考えているということで、どのくらいの人が障害というものを認識しているかという調査ですので、必ずしもこの基本法の対象と合致したものと捉えなくてもいいと思っています。そういう基本法に関する調査というのは、今、障害者の調査もやっておりますし、意識調査もきっとできるでしょうし、別途やればいいわけで、全てを一つのところの調査で聞かなくてはいけないということではないと理解しております。

○石川委員長 ありがとうございました。
 国勢調査ですと、比較的単純化された質問を、そう詳しくは聞けないので、USセンサスにしても、ほかの国勢調査にしても、障害についての設問で余り複雑なことは聞けないし、それはそれでデータとしての価値があり、国勢調査としてやっている調査であるからこその価値がありますし、アメリカにはADA法があり、権利条約の障害の定義、どちらも社会モデルではありますけれども、障害の社会モデル的定義と、国勢調査での障害についての聞き方とが整合性がとれないとしても、それはやむを得ないのではないかと、私も個人的には思います。これについてはまた議論していきたいと思います。
 それでは、佐藤委員、お願いします。

○佐藤委員 ありがとうございます。佐藤です。
 勝又さん、ありがとうございました。
 最後におっしゃった法制度の障壁の調査が必要なのではないかというところで、私も全く同じ考えです。社会的障壁のうち法制度の障壁について、除去のために政府としての実態の調査をぜひお願いしたいと思います。
 前回も発言させていただいたのですけれども、欠格条項に関しては1999年に63制度というのが政府によってピックアップされているのですけれども、この63制度というのは主に職業的な免許、資格や業務の許可について、身体または精神の障害を名指しした欠格条項という範囲でした。ですので、それ以外のものはこの63には入っていないのですね。
 昨今、例えば、前回も言いましたけれども、議会の傍聴で鹿児島県、愛知県で白杖を持った人がそのまま入れない、そういう問題がありました。また、就労のところで、地方自治体の試験の受験資格に、活字印刷に対応できる者とか、あるいは自力通勤、自力勤務できる者、そういうように結果的に特定の障害者を排除する要項があるわけです。そういうのも含めて、実態がどうなっているかというのを政府としてぜひ調査をしていただきたいと思います。
 以上です。

○石川委員長 ありがとうございました。
 続きまして、阿部委員、お願いします。

○阿部委員 日身連の阿部です。
 大きく2つのことについてお話しさせていただこうと思います。まず1点は、先ほども遠藤委員と勝又参考人の間でのやりとりの中で、厚生労働省とのかかわりの中で、男女のことも含めて、既存のデータを活用するということで、話題になりました。もともとの目的を持ったデータとしては今まではよかったのだけれども、これを活用するというか、例えば男女とか都道府県別データが必要かどうかについては、これはこの委員会の中できちんとした根拠を持って考えなければいけないことであって、厚生労働省の答えはこのとおりで、恐らくこういう答えなのだと思います。これを踏まえて、私たちが委員会の中で本当に必要なのか、それはどうなのかという議論をしておく必要があるだろうし、そのことをまた勝又委員は必要だと言っていただいたという認識で捉えています。
 それから、もう1点ですけれども、勝又参考人がおっしゃいましたけれども、国の障害者基本計画をもとにモニタリングしている、でも地域にも障害者基本法に基づく障害者計画、または障害者保健福祉計画というところもあるのですけれども、策定のときにもきちんとアンケート調査もしていますし、モニタリングも私の地域ではもう18年から始めていますけれども、それをどう活用するかということが大事だと思います。
 ただ、そのときに、統計その他専門ではない私から勝又参考人にお聞きしたいのですけれども、地域の既存のものを、それぞれ数値も持っていますし、ただ問いかけ方も微妙に違う内容のものを、どのようにして地域全体の反映として理解するかということに関しては、これからの問題なのか、それとも財源等とか基本的な何かが必要なのか、その辺のところを教えていただきたいと思ってお話しさせていただきました。
 地域ではほとんどのところはしています。これを本当に地域の温度差がないようにということで取り組んでいるわけですけれども、活用できるようになるのがとても大切で、そしてまたそのデータですけれども、これはもちろん都道府県だけではなくて、全市町村が今や障害者計画は義務化されています。どの辺のところまでをお考えになって、先ほどお話しされたかも含めて、お願いしたいと思います。いろいろなデータはある。そのデータをうまく活用できればすごくいいなという視点からの確認の質問をさせていただきました。お願いします。

○石川委員長 ありがとうございました。2点目に関しまして、勝又参考人にお答えいただきたいと思います。
 いろいろな調査があり、それらについて二次利用可能とすべきであるし、また、データベースとして共有して政策にかかわる人々、あるいは研究者がそれを活用していけるような道筋をつくっていくにはどうしたらよいのかといったような御質問かと思います。

○勝又参考人 阿部委員、御質問ありがとうございました。
 まず、地方自治体がみずからやっている調査というのも、法律上は統計法の中の公的調査に当たります。そうしますと、例えば先ほど御紹介した東京都の調査も、そういう調査をやるときには、国がやっている調査をかぶらないかとか、国がやっている調査と違う形にならないかみたいな形で、調整をするというのが基本になっております。
 ですから、本当に小さなところで限られた人の調査をやったときにも、もちろんそういう調査をやるということは、国と同様に、地方自治体も統計法にのっとった形で調査をしているという理解です。
 ただ、実態として、その調査がどのくらい整備され、そして利活用されているかということについては、国の統計委員会ではそこまでは調べておりません。ただ、法律的にはそうなっている。
 それから、逆に言いますと、先ほどの阿部委員の御発言のように、利用者がこういうデータが欲しいんだということをしっかり言わないと、データが乱立していて、結果的に自分たちが知りたいことは知ることができないということになってしまう。
 また、公的な調査は、御存じのように、公費を使ってやっておりますので、現状ではスクラップ・アンド・ビルドで、なかなか新しい調査をするというのは難しいわけです。ですから、その調査が利活用されていないということになりますと、すぐに予算カットされます。
 そういう意味では、お答えになっているかわからないのですけれども、障害者福祉計画のモニタリングに必要なものは一体何なのかということを地域ごとでしっかり捉えて、そして必要なデータを整備させるという形で、各自治体に求めていくということが必要だと思います。
 以上です。

○阿部委員 ありがとうございます。そういう視点を持って取り組むということが大事だということですね。

○石川委員長 もう一点確認ですけれども、公的調査として行われたものに関しましては、本来、利活用可能でなければならないということになりますでしょうか。例えば一般の研究者もそれを使って自分なりの統計手法を用いた集計、例えばこの変数とこの変数をクロスして比較してみたいということが可能な形でデータベースというのはアクセス可能になっていないといけないという理解でいいでしょうか。

○勝又参考人 一般統計調査というのは、アンケートを配ったりしていろいろやる調査が基本でございまして、それについては二次利用のガイドラインがしっかり決まっているのですけれども、行政上集められたデータとか、事業主に対してやったデータとか、そういうものについては統計法上の32条、33条に、そういう統計の情報を利活用することができるという規定があるのですけれども、現状で対象になっているのは、基幹統計指定された国の主な調査だけです。そこでは。ですから、自治体がやっている調査全てを統計法上で開示しなければいけないのかと、もしそういうことを御質問されているのでしたらば、現状ではそうではないということになっています。

○石川委員長 ありがとうございました。統計法を勉強します。
 では、石野委員、お願いします。

○石野委員 全日本ろうあ連盟の石野です。
 先ほど、基本的な問題についてお話がありましたので省きます。私がお聞きしたいことは、EUにおける調査について先ほどお話がありましたが、内閣府が発行する障害者白書には統計がたくさん載っています。障害者の数や障害種別についても載っていますが、それについては必ずしも正確な数字とは言えないのではないかと思います。
 と言いますのは、推計として載っているからです。ほかの国の場合は、きちんとしたデータを持っているのかどうか、お聞きしたいと思います。日本の調査の統計については、やはり限界があると思っているのですが、その限界についてはどのように解決したらよろしいでしょうか。白書の統計をプロの目から見たところの御意見をお聞かせいただきたいと思います。
 以上です。

○石川委員長 ありがとうございました。勝又先生、お願いします。

○勝又参考人 石野委員、御質問ありがとうございました。
 まず、EUやOECDなどで、障害者についての国際比較の報告書を幾つか出しております。OECDの報告書の中には、各国の障害者の割合というのを出しているのですけれども、そこで使われているものは、先ほど御紹介した、例えばEUにおける家計調査の中の調査結果とか、各国で国勢調査や、そういう意識調査やさまざまな全体を網羅した形で聞いているものの中で、障害を持っていると答えている者の割合を寄せ集めた形になっております。ですから、OECDのデータであっても、統一されたデータソース、データのもとで比較されているものではないのです。それは、今、日本だけではなく、世界各国に統一された統計というものがないからです。
 その一つの解決策として、国連は各国の国勢調査の中に障害を特定できるような設問を入れてくださいと。それによって、ある程度同じような設問をしながら、各国で標準化されたといいますか、そういうものを出していく必要があるということで言っております。
 日本の白書でございますが、これはおっしゃるように積み上げでございます。さまざまな調査から推計された各種別の障害者の数を積み上げているということで、EUや国連の国勢調査のような全体を対象にした形での推計にはなっておりません。
 以上です。

○石川委員長 ありがとうございました。もうひと方だけ。松森委員が挙げていらっしゃったので、これで最後とさせていただきます。

○松森委員 松森です。勝又さん、ありがとうございました。
 私からは、障害女性の視点からのモニタリングにおいて、男女別の統計の必要性を提案したところ、先ほども出ましたように、厚生労働省からはメリットがないとできないという趣旨の返答がありました。しかし、国連女性差別撤廃委員会からは日本のマイノリティー女性の状況に関するデータが不十分であるという勧告を受けていますし、勝又さんからは、デメリットを解消するためのメリットがあると、だから男女別の統計は不可欠であることを御指摘いただきました。そうした課題を、きょう、各省庁の方も含め全員で共通認識として持てたのはとてもよかったと思いました。
 1つ質問です。政府にとって今、欠如している調査・研究、データ収集の課題についておっしゃっていました。私は前回の委員会で、東日本大震災において被災した障害者の実態把握が必要だと意見を述べました。世界の中でも日本は大きな災害を経験している国として、国連にも報告できると思うからです。
 しかし、現在、被災した障害者について、地域別や性別による犠牲者数などのデータがない状態ですが、そこからどう改善につなげていけばいいのか、そのあたりの御意見やアドバイスを伺いたいと思います。

○石川委員長 よろしくお願いします。

○勝又参考人 ありがとうございます。
 被災者の実態把握というのは本当に重要だと思います。そして、早くやらなくてはいけない問題だと思います。同時に、実態把握というのは国際社会の中でも求められている実態なんだということをしっかり私たちは認識するべきだと思います。
 その上で、結局、どのくらいの予算がかかるんだみたいな議論になってしまうわけですけれども、調査のやり方というのは今、発展しております。さまざまなビッグデータ、それから、いろいろな調査の方法がありますので、そこは調査の方法を含めた形で、新たに被災地の調査ができるような工夫というのを早急にやるべきだとこの委員会からも言っていただいて、専門家、研究者が知恵を絞って、限りある財源の中でやっていく必要があります。被災者に対する調査は、人々の記憶に残っている間という時間との関係もあり優先順位を高めてやっていく必要があると思います。
 以上です。

○石川委員長 ありがとうございました。6月の障害者権利条約の第8回の締約国会議でも、障害統計に関するラウンドテーブルがございまして、そこで障害統計の整備の重要性と標準化について活発な議論がありました。また、先ほど勝又先生から御紹介があったワシントングループの提案についても議論がありました。
 勝又様、本当にきょうはありがとうございました。統計につきましてはここまでとさせていただきたいと思います。
 それでは、次に各ワーキング・セッションから議論の概要の報告をお願いいたします。お手元の参考資料2をごらんください。第21回、第22回の障害者政策委員会と並行しまして4つのワーキング・セッションを開催し、御議論をいただきました。各ワーキング・セッションにおける議論の概要について、各セッションのコーディネーターから御報告をいただきます。
 まず、ワーキング・セッションIIから報告をお願いしたいと思います。ワーキング・セッションIIを代表しまして、大濱委員、お願いいたします。

○大濱委員 大濱です。
 ワーキング・セッションIIの報告をさせていただきます。資料2-2をごらんください。
各段落の後ろに書いてある枝番が第3次計画の進捗状況に対応しています。
 まず、(1)精神医療のあり方についてです。
 単に物理的な空間や設備が病室ではなく居住施設であるというだけで、地域移行の権利が実現されているということは言えない。
 権利条約は、最初から地域で生活をする権利の保障、入院をしないで済むような政策を求めており、入院している人を退院させることが第一義的な意味ではない。地域移行を考えるのと同時に、現に精神障害のある方、今後障害を負うことになる方が、地域で生活できるような資源を開発することが重要。
 入院を避けるための代替措置や、退院を促進するための地域の資源に対する財政的な投入の度合いが低い。法改正でもっと要件を厳格化する努力は必要であり、財政的にも地域資源に配慮した資源開発の必要がある。
 社会的な役割を失った精神科病棟は閉鎖すべきもの。用途を変えて再び人を隔離・収容するために利用すべきではない。
 自発的な入院である任意入院において事実上退院の自由はなく、任意入院の方が長期入院の割合が高いことが問題。精神科入院医療において、地域生活をしたいという希望を失った人がたくさん作り出されていることを示している。
 精神科病棟の密室性が問題。利害関係のない第三者が病棟に来て、入院中の方の権利擁護者として付くことが必要。
 本人にとって不本意な強制入院時に本人の話を聞き、応援できる権利擁護者(第三者による監視体制)が必要不可欠。精神保健福祉法の附則において「代弁者制度の検討」ということが書き込まれているが、現場では実現されていない。
 精神保健指定医制度の制度的欠陥の問題。入院中の行動制限に関して一人の指定医に権限が集中しており、本人の権利を守る仕組みがないことが問題。
 医療法の特例の中で精神科医師は48床に1人いればいいとなっている。診察の折、主治医に落ちついて話を聞いてもらえず、信頼関係が取り結べないまま長期間の収容となっていることが、人権侵害が発生する土壌になっている。
 精神保健福祉法33条が医療保護入院を規定していることが妥当なのかは再検証をする必要がある。
 医療保護入院は、民間人が民間人に対して強制力を行使するという形態になっており、国際的に理解を得るのは難しい。
 医療法の施行規則第10条3号に精神病患者は精神病室でない病室に入院させないことと記載されており、他科の医療従事者からの治療拒否ということが現在も存在している。
 ワーキング・セッションIIの第2回の資料3-6精神病床の利用状況調査結果報告として出しているような調査を継続的に実施してほしい。
 認知症に関して、精神科医療を中心とすべきではない。新オレンジプランの循環型の仕組みが問題。
 続きまして、(2)地域移行のための環境整備についてです。
 障害のある方や精神障害のある方に出向いて、福祉的サービスや医療的サービスを提供するという地域でのモバイルチームが求められている。地域ケアの支出の増加や地域ケアへの人員配置の増加など、地域で生活を支えながら医療や福祉を提供することが必要。
 報酬が低すぎるために、地域移行支援から撤退していく事業者が増加している。利用人数の少なさの背景をもう一度分析していただき、精神障害の障害特性に見合った予算の設定を求めたい。
 家族等の同意で入院させる制度があることが、長期入院を生む一つの要因になっている。家族に対する社会的なサポートが乏しい。
 精神障害者に対する専門職の養成を強く望みたい。
 民間の入居に関しては、精神障害者ということでなかなか受け入れてもらえていないという実情がある。
 進行性疾患あるいは筋疾患の難病患者にとって、将来の病態の変化に伴って、生活状態の変化に対応した医療や福祉、施策の総合的な相談窓口が身近なところに存在してほしい。
 福祉ハイヤーの数が伸びているとのことだが、実感は全くない。基準自体が、私たちの思っている福祉タクシーの基準と違うのではないか。福祉タクシーとは何なのか、あるいは障害者自身が抱えているタクシーへの情報アクセスにどういう問題があるのか、検討してほしい。
 ユニバーサル(デザイン)の基準というものが、どういう基準に合わせていったらいいのかを考えてほしい。

○川﨑委員 ここからは読みを川﨑がかわります。
 (3)在宅における医療的ケアの充実について。
 どんなに重度で医療的ケアが必要であっても地域で一人暮らしは可能である。医療的ケアが必要な人は一人暮らしは無理だという偏見・差別をなくし、地域で人間らしく生きられるための24時間の介護保障をしてほしい。
 居宅介護で喀痰吸引等の支援を必要としている人が、785人というのは少ない。必要としているけれどもサービスが受けられないという人が多く潜在しているのではないか。
 必要なサービスが地域によって偏ることがなく、対象者の需要に沿って提供されているのか。札幌市の重度心身障害児(者)に関するデータの年齢の構造を見ると、18歳以上では約5割の333名が在宅。ところが、18歳未満の児童では、89%の方が在宅で暮らしている。18歳を超えた段階で50%の方に減ってしまうと読み取れるのではないか。これは24時間介護の支給決定者が少ないこと、あるいは必要なサービスが提供されていないことの裏返しではないのか。
 子供の場合、例えば人工呼吸器使用で常時介護や見守りが必要という場合であっても、子供は1カ月13時間までしか居宅介護時間は出さない、2時間以上連続のサービスは提供できない、未就学児は移動支援は一切認めていないという市町村がある。各サービスの実施状況の報告に、子供の利用状況がわかるようにしてほしい。子供であることで一律の扱いをするべきではないということを市町村に周知してほしい。
 療養介護というのは施設入所ということであり、施設内で24時間365日を完結する制度。子供が重度で、医療の支援が必要だが、療養介護を利用すると、施設にしかいられず日中ほかの生活を選択できない。故に、在宅で医療的な支援が受けられず、親は大変だが、子供のことを考えたら療養介護を選ぶことができない人が多い。
 療養介護を必要としている子供たちのニーズをどう捉えていくのか。進行性の難病の子供たちはこれから障害が重くなるが、重度にならなければ使えないとなると、児童福祉法を背景にした政策と療養介護の区分5というものが、つながっていないのではないか。
 医療的ケアが必要でも、日中活動としてその方々を受け入れることのできる制度上の仕組みは、生活介護しかない。
 地域で暮らしやすくなるかはホームヘルプの支給と合わせて日中活動の場の確保と言われている。平均で4人程度の看護師が必要であることがポイントであり、要望としてお願いしたい。
 地域の中に小さな拠点があるほうがより多くの人にかかわってもらいやすいが、ケアホームが進んでも、人工呼吸器をつけた人までは手が回らない。採算が合わないので、やるところも出てこない。
 バクバクの会で昨年行った実態調査では、7割以上の親が学校での付き添いをさせられており、付き添いをしている親のほぼ全員が医療的ケアも行っている。喀痰吸引等の制度が最大限有効活用され、保育・教育の場でも医療的ケアが提供されるように研修費の補助や医療的ケア実施体制の補助費をつけるなどしてほしい。
 以上が第2セッションのたたき台として報告いたします。

○石川委員長 ありがとうございました。
 続きまして、ワーキング・セッションIIIのコーディネーターを代表しまして、佐藤委員、お願いします。

○佐藤委員 佐藤です。ワーキング・セッションIII「インクルーシブ教育システム、雇用など」です。資料はたくさんございます。今から報告するのは資料2-3ですけれども、そのほかには、資料3-3、4-10、4-11。

○石川委員長 佐藤委員、済みません。既にきょうは、ことのほか時間が押しておりまして。

○佐藤委員 では、簡単に。どうしましょうか。これは読むと5ページもあるのですけれども。

○石川委員長 これを全部読み上げるのではないかという不安にかられて、今ちょっと。少し長いので、特にポイントとなる点を紹介していただいて、各委員には全て読んでいただく必要は当然ありますが、お願いします。

○佐藤委員 わかりました。資料があと6,7というふうにたくさんあります。このセッションは教育と雇用と2つやりましたので、かなり資料が多いです。
 参考人は、教育のほうで大南先生、全国特別支援教育推進連盟から来ていただきました。それから、村上由美さん、ボイスマネージャー。雇用のほうは田中伸明さん、名城法律事務所、弁護士さんです。上智大学の永野先生に来ていただきました。
 2回やりました。
 議論の中身は、3-3のほうに一通り全部まとめていただいていますので、また後でお読みください。きょうは2-3、ここだけでも5ページあるので、ここをかいつまんで御報告させていただきます。
 まず、III-1「インクルーシブ教育システム」です。
 (1)意思の尊重と一人一人のニーズに応じた支援。障害者権利委員会の政府報告においては、法律や施行令の改正のみをもってインクルーシブ教育に精いっぱい取り組んでいると主張しても説得的ではない。本人及び保護者の意思の尊重の観点から、初等・中等教育における地域の学校への就学について、このように着実に前に進んでいるということが言えるといい。
 インクルーシブ教育の前提は、あらゆる障害のある子供が一緒に教育を受けることをベースにした上で、それぞれのニーズにどこまで対応できるかという考えに立って報告をしていかなければならない。
 特別支援学校でも交流等の努力をしていることは理解しているが、自分が生活する地域で学ぶというインクルーシブの理念から遠い。個別の支援を求めて特別支援学校に進学する子供がふえるという、インクルーシブとは逆の流れになることが懸念される。
 あと4つありますけれども、これは飛ばします。
 2つ目は、環境の整備です。発達障害の児童・生徒は特別支援教育支援員の支援対象であるのに、知的障害のある子は対象ではないのは、インクルーシブ教育を実現するために、まずは地域の学校で受け入れることができないか、そのためにどのような支援が可能かということを第一に考えるべきという立場で考えた場合、また、基本計画にあるように、合理的配慮を含む必要な支援を受けながら同じ場でともに学ぶことを追求するという点に反するのではないか。予算配分のバランス等も検討し、保護者本人が希望すればできるだけ地域の学校で受け入れるという体制づくりが必要。
 インクルーシブ教育システム構築モデル事業を実施し、特に早期からの教育相談・支援体制の整備や特別支援学校のセンター的機能の強化について、都道府県、市町村、学校等の協力を得て大きな成果を上げている。
 多様な学びの場の充実を図るため、教員定数の改善、特別支援教育支援員の配置や増員については評価している。一方で、さらに多様な学びの場を全国で展開するには教員の定数改善が必要であり、また、平成25年4月の教育振興計画で指摘された教室不足の課題が残っている。
 あと4つありますけれども、これも飛ばします。
(3)その他。特別支援学校における職業教育、進路指導の先生による定着支援といった、連携の取り組みをしている先生が存在するのは大きな意味がある。物や時間の管理、お金の管理ができないと、現場では信用されない。そういうことを意識した上で、学校生活をより快適に過ごせるような合理的配慮を根本から考えてほしい。
 あと3つありますけれども、これも飛ばします。
 次はIII-2「雇用」です。
 (1)法定雇用率等について。49人以下の企業・事業所への雇用を推進する必要がある。教育委員会の中でも、特に都道府県教育委員会は、教育の現場を統括する機関でもあり、障害者を職員として採用することは、障害者の教育の面でも施策推進に役立つと考えるので、雇用率の達成率に努力いただきたい。
 障害者雇用ができていない企業に障害者理解の推進を図ってほしい。
 障害者自身に対する就労支援だけでなく、企業に対する支援も必要。既に、高齢・障害・求職者雇用支援機構により各種の助成がなされている点は評価できるが、それらの情報提供、さらに内容の見直しを適宜行っていくことが求められる。
 中小企業に対しては、既にさまざまな支援がなされており、新たな助成金も創設されているが、これを充実させていくことが課題。
 中小企業等に対する障害者雇用相談啓発事業の実施状況のような数字を挙げていくことで、雇用政策を推進してほしい。
 本来障害者のインクルーシブな生活、実際に働くことを実現するためにある雇用関連の助成金について、期間終了後に雇用を打ち切られることがある。助成期間終了後も雇い続けているところがどのぐらいあるかを明記してほしい。
 このあとも10個ぐらいありますけれども、飛ばします。
 (2)特例子会社です。グループ適用に際しては、特に親会社と特例子会社の間で人事交流を図る、特例子会社で蓄積された障害者雇用のノウハウの蓄積を発信する、親会社でも生かすなどの工夫をして障害者雇用を推進してほしい。
 特例子会社における対応が悪い、一旦行くと二度と親会社に戻れない、賃金の格差があるといった実態があるのであれば、インクルーシブの視点から少し問題があるのではないか。
 これに対しては、厚労省から括弧書きで、特例子会社と本社では行っている業務自体が異なっているため、賃金の違いということだけで判断するのは難しい。
 1つ飛ばしまして、(3)福祉的就労です。障害者は多様であり、多様な選択肢が存在することが重要。A型就労や一般就労が可能であるのに、A型事業所の不足等により、労働法の保護がないまま就労せざるを得ない障害者がいることは問題。また、それが困難な障害者には労働法とは別の形で、工賃を含む就労条件の保障を行うことが必要。
 あとは、(4)雇用と福祉の連携、(5)障害者優先調達推進法について、それぞれ2つずつ意見が書いてあります。
 ざっとこういう感じなのですけれども、全体を通して非常に質問が多くて、さらにデータも関係省庁からたくさん出していただきました。ですので、少し議論を深めるというところまでにはちょっと行けなかったなと思っております。できれば、よりちゃんと議論を一旦またどこかの場面でしていただきたいと思いました。
 辻井先生、柘植先生、何か補足があれば。
 よろしいですか。ありがとうございました。

○石川委員長 佐藤委員、長いものをいきなり短くしろとむちゃなことを申しまして申しわけありません。
 それでは、ワーキング・セッションIのコーディネーターを代表して野澤委員から御報告をいただきます。お願いいたします。

○野澤委員 済みません。おくれてきた上に、さらに後に回してもらってありがとうございます。
 ワーキング・セッションIでは、成年後見制度も含めた意思決定支援ということについて話し合いました。
 障害者基本計画では、成年後見をちゃんと利用するようにということで目標設定されているのですけれども、ヒアリング等を通して、そもそも今の日本の成年後見制度そのものにいろいろな問題があるのではないか、この問題を放置したまま、ただ利用を進めるということでいいのだろうかという、その問いの前提自体に疑問を持つということが中心的な話し合いになりましたので、若干その辺のことを説明しなければいけないと思います。
 資料2-1ですけれども、成年後見制度の位置づけ・機能についてですが、制度の基本的な建付けが取消権を中心とした保護主義的な代行型の枠組みであって、取消権や法定代理権が持っている社会的な排除作用(銀行口座の扱いや欠格条項など)について、改革のための検討が充分に行われているとは言いがたい。
 本人に判断能力がないことを制度利用の前提にしつつ、他方で、本人の意思に配慮することが求められることについて未整理である。その人なりの意思や判断があることを基本に置いた再整理が行われなければならない。
 この民法858条は身上配慮義務ですけれども、どうすれば本人意思を尊重したことになるのか、空白である。本人の意向に沿っているかをどうチェックするのか、本人の意向に沿っていないときに、成年後見人などの支援はどのように評価されるのか、現状では分からないことが多い。
 本来は本人の権利を守るための制度であるはずなのが、支援者や家族のためのリスクマネジメントになってしまっているのではないか。
 特に、国連の障害者権利条約、我が国も批准しているわけですけれども、一般的意見の中で、代理決定はいけないと言っている。日本の後見人制度において後見と保佐は特に代理決定になっているために、条約に抵触しているのではないかということが指摘されております。
 これについては、今、ほかの諸外国も国連の委員会との間でいろいろな意見のやりとりをしていて、まだ明確な形では出ていないように思われます。この前、来日した方に聞いたのですけれども、アメリカ国内でも各州で成年後見はやはり本人の権利を束縛するものを緩めようという方向にはありますけれども、本当に代理決定がだめなのかどうなのかということについては、まだかなり異論があるようなので、ちょっとこのあたりは慎重な議論が必要ではないかと思われます。
 この中で、特に最近は後見人の不祥事等で後見を返上というか、かえるということがかなりふえてきているのですけれども、後見人をどうやって監督してチェックしていくのかということについて、今の日本の成年後見制度では家庭裁判所が審判をした後も、裁判所の仕事として監督業務を続けているわけですけれども、毎年1万件を超える規模でどんどんふえていて、なかなかさばき切れていないのではないか、チェックし切れていないのではないかと。
 裁判所というのは本来裁判をするための機関であって、諸外国では行政機関が後見人の監督を担うことが多くて、我が国でもそうした方向で検討されるべきではないかと。ただ、かなり抜本的な制度改革になりますので、急にはできないとしても、意思決定支援に習熟した機関が法人後見や成年後見人などの支援を担う方向が現実的ではないかという意見もありました。
 さらにもう一つ言うと、弁護士さんや司法書士さんのようなプロの後見人と、親族の後見人以外に、市民後見人というあり方と、特に厚生労働省が介護保険や障害者の総合支援法、虐待防止法等の中でうたっておりますけれども、市民後見人を含めた法人後見のあり方が模索されていて、現場での意思決定というものをもっと緩やかな関係性の中で厚くしていって、最終的に家庭裁判所の機能というものを考えたときに、もう少し限定的な運用というものがあり得るのではないかという意見もありました。
 意思決定支援ですけれども、今、厚生労働省において、総合支援法の3年後の見直しで、この意思決定支援も一つの論点に挙がっております。この成年後見と意思決定支援との関係、さらにもう一つ言えば、相談支援との関係の整理というものが必要であろうということが考えられます。
 ただ、ここで問題なのが、ほかの国でもそうですが、判断能力やコミュニケーション能力に著しいハンディのある知的障害のある人たちの場合に、意思決定支援だけでというと、どうやってそれを確かめるのか。意思の表出が難しい、あるいはこちらが酌み取ることが難しい。特に単純な事実行為はいいのですけれども、難しい法律行為まで含めて、内容をよく理解しにくい、できない事柄について、なかなか意思決定は難しいのではないか。形式的な本人意思の尊重だけでなくて、実質的な権利を守るということも重要な権利擁護であって、これも権利条約の理念である。この辺の関係性についてどういうふうに考えていくのかという議論がこれから必要だろうという意見が多かったです。
 その中でも、特に本人に取り返しのつかない不利益を及ぼすような重要な法律事項の決定は、本人意思や意思決定支援に委ねず、やはり現行の成年後見制度のようなもので守る必要があるのではないかと。
 ただ、その一方で本人の最善の利益を目指す、イギリスの Mental Capacity Act でかなりこのあたりの手続を定めておりますけれども、本人の最善の利益を目指す前向きの制度の設計、ベスト・インタレストが必要ではないかということが指摘されておりました。
 もう一つは、意思決定支援というものを1人の人に委ねるのではなくて、意思決定支援をしている、基本的にはヘルパーさんだったり、ケースワーカーだったり、家族だったするわけですけれども、こういう人たちを支援するような仕組みづくりというものも必要であろうということであります。
 また、本人の意向に沿った意思決定について、生活の場、人生設計の場、命にかかわる場と、いろいろな場面があるわけで、例えばこういう3層構造でガイドラインのようなものをつくっていくというのが現実的に対応できる方法ではないか。さらに、関係者の間で意思決定支援のやり方について紛議が生じたときに、調整あるいは判断をするという役割を担う機関がそこにあると、かなり意思決定支援の形というものは具体的に描けるのではないか。
 それにしても、ただ単純に本人を生活の場から切り取ってきて、そこでその意思をどう判断するのかということではなくて、やはり前提としていろいろな体験の機会というものをふやすことによってご本人に選択の幅を広げる。これがやはり大事だと。
 さらに言えば、失敗しても、失敗したからこれはだめだということではなくて、継続的に本人の意思を確認していくという姿勢が前提として必要とされるのではないかという意見が出ております。
 まだ十分言い切れていないと思いますけれども、とりあえず私のほうからまとめとさせていただきます。

○石川委員長 どうもありがとうございました。
 最後に、ワーキング・セッションIVのコーディネーターを代表しまして、石野委員、お願いいたします。

○石野委員 石野です。
 参考人としまして3人の方をお願いいたしました。東京大学の近藤先生、全日本難聴者・中途失聴者団体連合会会長の新谷さん、浦和大学の寺島先生です。
 1回目は集まった委員が9人でした。2回目は10人の委員が集まりました。
 今までの議論について、情報アクセシビリティの分科会ではどのようにまとまったかを項目ごとにまとめてみました。「情報通信技術等について」が1つ目、2番目に「放送等における情報提供の充実について」、3つ目に「日常生活における意思疎通支援の充実等について」、4番目に「災害時・緊急時における情報提供の充実について」、5番目に「教育分野の情報アクセシビリティについて」です。それぞれの分野について説明します。
 最初に、情報通信技術についてですが、情報アクセシビリティに関連する標準化に対応しているか、事業者や行政機関等がアクセシビリティに関する方針を持っているかを確認することが実効的である。
 次に、情報通信系の規格を策定していく際には、アクセシビリティの観点について十分な理解・徹底を図っていく必要がある。
 スマートフォン、タブレットを使ってコミュニケーションする技術が進んでいる。そのようなコミュニケーションの学習が必要。
 省庁横断的な内容が多いので、省庁横断的な組織があり、アクセシビリティや機器の開発に関するコーディネートなど行われればありがたい。
 情報アクセシビリティの側面として、デバイスやコンテンツのアクセシビリティに加えて運用がある。この3つを掛け合わせ、最終的にアクセシビリティが担保されているかが重要である。
 次に、放送等における情報提供の充実についてです。平成25年度の字幕放送等の実績はふえていないので、課題として提起したい。
 テレビ放送における音声解説は、映画等も含めて、普及率は10%以下と認識している。
 都道府県知事選挙や小選挙区の政見放送の手話及び字幕放送は実施されていない。特に、国会中継については字幕も手話もついていないという課題があります。
 都道府県知事選挙や小選挙区の政見放送においては、衆議院の小選挙区等についても候補者の持ち込みビデオには手話がついていますが、義務制にはなっていません。字幕の付与については、限られた期間の中での収録を行われなければならないという時間的制約もあります。国会審議という内容の重要性がありますが、生放送で、かつ正確性、公平性が求められ、現時点では対応が難しいと聞いています。
 次に、日常生活における意思疎通支援の充実等についてです。重度重複障害と身体障害の方々も常に視野に入れて検討してほしい。
 難聴者の情報アクセシビリティの施策にも対応してほしい。
 障害者総合支援法における意思疎通支援事業の大きな問題は、サービスを利用できる人の範囲、利用目的が限定されていること。さらに、複数の都道府県、市町村から人が参加するような集まりでの意思疎通支援をどうするのかも十分に検討されていない。
 通訳・介助員を派遣する事業の地域差をなくしてほしい。
 そして、女性の相談窓口に関する情報アクセシビリティも課題として検討する必要がある。
 次に、災害時・緊急時における情報提供の充実について。緊急時の情報は正確さが重要であるが、少々不正確でもタイミングのほうが急がれることがある。総務省で災害関係を考える基本的な視点をどこに置くかが方針を決める際に重要なところではないか。
 ディスプレーでの表示が駅だけでは少ない。駅のディスプレーに関しても不十分で生かされていない。例えば駅以外のバス、電車の中、競技場、その他の施設における表示について、今後の方針が必要。
 国連防災会議が障害者を包摂したインクルーシブな防災会議として国際的に高く評価されている。政府報告においてはぜひ入れてほしい。
 最後ですが、教育分野の情報アクセシビリティについてです。標準拡大教科書とそれ以外の拡大教科書、マルチメディア教科書に対する文部科学省の取り組みには温度差があるように感じられる。ボランティアグループがやっていることを側面から支援する、調査しているというのでは不十分。また、教育分野では情報アクセシビリティという概念はほとんど知られていない。特に通常の学校の中で知られていない。
 教育的なアセスメントを行い、情報保障ニーズを正しく把握することや、教科書と副教材、試験問題、解答用紙や教師の口頭指示などのアクセシビリティを保障すること。
 3人のコーディネーターは門川が盲ろう、竹下が視覚障害、私が聴覚障害です。3人で意見を調整し、まとめるのに大変時間がかかりましたけれども、ある意味では情報をきちんと整理できたのでよかったと考えております。
 参考資料としては3つあります。資料4-12、4-13、4-14、それぞれありますので、報告いたします。

○石川委員長 ありがとうございました。
 続きまして、各ワーキング・セッションの中で指摘のあった点等につきまして、各省から補足説明をお願いしたいと思います。ワーキング・セッションIに関しましては、特に補足説明はないと伺っておりますので、ワーキング・セッションIIから始めたいと思います。
 まず、文部科学省、お願いいたします。

○文部科学省 文部科学省特別支援教育課長、井上でございます。セッションIIの関係で補足説明をさせていただきます。
 医療的ケアが必要な児童・生徒の保護者の付き添いの実態についてお話をいただきました。障害のある児童・生徒の学習や特別活動等に際して、設置者や学校が保護者による付き添いを求めるケースもあると、当省も承知しております。
 このことにつきまして、まずは小中学校における付き添いの実態がどのようになっているか、私どももしっかりその実態の把握に努めていきたいと考えてございます。
 以上でございます。

○石川委員長 ありがとうございました。
 続きまして、厚生労働省、お願いいたします。

○厚生労働省 厚生労働省障害保健福祉部企画課長でございます。
 ワーキング・セッションIIの6月1日での宿題事項でございますが、後ろのほうに資料5という2枚紙がございます。喀痰吸引の関連のデータを示していただきたいということでございました。
 その資料の1ページ目ですけれども、ヘルパーなどが喀痰吸引ができるという仕組みが平成24年4月からスタートしております。スタートしてからことしの3月までの利用人数、回数、事業所数等の推移を示しております。順調に伸びてきているところだと思います。これはあくまでも報酬上の加算をとっているところでございますので、これが全てではなく、一つの指標としてということでございまして、このほかにも、1ページの下にありますように、特定事業所加算という優良な事業所の加算をとっているところは痰の吸引などができますので、これらの事業所の中にも行われている事業所、あるいは利用されている方がいらっしゃるということになります。
 また、最後の2ページ目にございますけれども、事業所の登録から見ますと、平成26年4月1日現在2,583の事業所が登録を受けているという状況でございますし、実際に痰の吸引のできる従事者につきましても、下にありますように、平成26年4月ですと、合計3万数千人の方が研修を修了しているという状況でございます。
 引き続きまして、ワーキング・セッションII、資料2-2につきまして幾つか補足説明をさせていただければと思います。1ページ目に、精神医療のあり方について幾つかの御指摘がございました。
 我が国の精神保健福祉法がございますが、精神障害者の社会復帰、自立、社会経済活動への参加の促進のために必要な援助を行い、精神障害者の福祉の増進を図ることを目的としているもの、そういう制度の趣旨でございます。
 平成25年の法律改正におきましても、精神障害者の地域生活への移行を促進するための措置を強化をいたしますとともに、厚生労働大臣による精神障害者に対する医療の提供の確保に関する指針を策定するなど、精神障害者の人権に配慮した制度の整備を図っているものと考えております。
 また、1ページ目の下のほうの御指摘で、精神保健福祉法33条が医療保護入院を規定していることが妥当なのかは再検証をする必要があるという御指摘、あるいは医療保護入院は民間人が民間人に対して強制力を行使するという形態になっており、国際的に理解を得るのは難しいという項目がございますけれども、この医療保護入院というものは指定医による診察の結果、精神障害者であり、かつ医療及び保護のための入院の必要がある者であって、精神障害のために入院の必要性について本人が適切な判断をすることができない状態にある場合に適用されるものでございます。
 その実施に当たりましては、精神保健指定医による診察、あるいは入院措置についての本人への書面告知が義務づけられております。人権への配慮という観点から、入院の手続が厳格に定められているところでございます。
 また、精神障害者本人の権利擁護が重要であること、それからインフォームド・コンセントがますます重要とされる中で、患者の身近に寄り添う家族等に十分な説明が行われた上で、家族等が同意する手続が重要であることといった点を総合的に考慮し、家族等の同意を要件としているものでございます。
 また、2ページ目の上のほうに、医療法の施行規則第10条3項に、精神障害者は精神病室でない病室に入院させないことと記載されており、他科の医療従事者からの治療拒否ということが現在も存在しているのではないかという項目がございます。
 この点につきまして、医療法施行規則第10条3号は、精神疾患を有する方に適切な医療を提供するために設けられた規定であると理解をしておりますけれども、その実態等もよくお聞きをした上で、必要に応じて対応を検討してまいりたいと考えております。
 なお、1ページ目の冒頭のところに戻って恐縮ですが、最初の○に「単に物理的な空間や設備が病室ではなく居住施設であるというだけで、地域移行の権利が実現されているということは言えない。」という項目がございます。これは、恐らくでございますが、精神科病院敷地内におけるグループホームという議論を受けての取りまとめであると考えておりますが、この点についても若干補足させていただきたいと思います。
 この精神科病院敷地内におけるグループホームでございますけれども、これは退院に向けた支援を徹底しても、なお直接地域に出ることを不安に感じる方にとっての通過的な、経過的な居住の場として、あくまでも試行的、例外的なものと整理をしているところでございます。長期にわたって入院されている精神障害者が退院するに当たり、自宅、民間アパート、グループホームといった地域での生活に直接移行することが大原則でございます。引き続き、地域における居住の場の確保に努めていきたいと考えているところでございます。
 なお、セッションIIIのものになってしまうのですが、資料2-3の5ページに障害者優先調達推進法の御紹介がありました。この点についてだけ補足をさせていただきます。
 優先調達法がむしろ価格を押し下げてしまう、配慮を欠くようなものになっているのではないかという御指摘でございますが、全国の共同受注窓口としての役割を担っている日本セルプセンターに確認をいたしました。国や地方公共団体が物品等を調達する際には、会計法令に従って手続を行うこととなっており、調達に当たりましては障害者就労施設を含めた複数の事業者から相見積もりをとることとされておりますし、金額をあらかじめ示すようなことはしないということでございますから、不当に調達価格を引き下げるようなことは実態としてはないということをお聞きしているところでございます。
 以上でございます。

○石川委員長 ありがとうございました。
 それでは、ワーキング・セッションIIIに関しまして、文部科学省からお願いいたします。

○文部科学省 ワーキング・セッションIIIにおきまして、インクルーシブ教育システムでの活発な御議論をいただきましたこと、まことにありがとうございました。
 資料2-3の議論の整理(たたき台)につきまして、若干補足させていただきたいと思います。
 1項目の(1)の「インクルーシブ教育システム」について幾つか御指摘をいただいております。そのことについてでございます。障害者権利条約に定めるインクルーシブ教育システムにつきましては、障害のある者がその能力等を最大限に発揮させ、自由な社会に効果的に参加することを可能とするとの教育理念のもとで、障害のある者と障害のない者とが可能な限りともに教育を受けられるように配慮するものと承知しております。
 また、教育の分野では、平成24年7月に公表されました中央教育審議会、中教審の初等中等教育分科会の報告におきましても、インクルーシブ教育システムについて、インクルーシブ教育システムにおいては同じ場でともに学ぶことを追求するとともに、個別の教育的ニーズのある幼児・児童・生徒に対して自立と社会参加を見据えて、その時点で教育的ニーズに最も的確に応える指導を提供できる多様で柔軟な仕組みを整備することが重要であり、通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった連続性のある多様な学びの場を用意していくことが必要であること等が提言されているところでございます。
 このような基礎的な考えをもととして、今の施策を進めているところでございますけれども、文部科学省といたしましては、これらを踏まえまして具体的な制度改正として、平成25年8月に学校教育法施行令を改正し、障害のある子供の就学先を決定する仕組みを改正したところでございます。
 また、(2)の最初の○でございます。特別支援教育支援員についての御意見も頂戴いたしました。支援員は各学校において、障害のある子供に対して学校における日常生活動作の介助や学習活動上のサポートを行う者であり、各自治体が支援の必要な子供の実態に応じて配置するものでございます。そのことにつきまして、前回のワーキング・セッションでも申し上げましたが、知的障害のある子供が支援の対象外というものではございません。その上で、個々の子供の障害の状態や教育的ニーズによって、支援員による日常生活等のサポートではなく、特別支援学級等において特別な教育課程、カリキュラムの編成を含めたより包括的な支援を行うことが適当である場合もあることから、就学相談等におきまして、市町村教育委員会と保護者等が十分に話し合った上で、支援方法を決定するということが重要と考えてございます。
 なお、支援員の配置につきましては、学校現場からも評価いただいておりますけれども、配置に必要な経費につきまして、地域の実情に合わせて国から地方交付税として地方財政措置をされているところでございます。これにつきましては、毎年調査を行っておりまして、その実数を総務省に報告して、相談をして、次年度の数に反映を毎年していっていただいているところでございます。自治体の配置実績を踏まえて、年々拡充をしてきているところでございます。
 文部科学省といたしましては、今回いただいた御意見等も踏まえまして、引き続きインクルーシブ教育システムの推進、一人一人の教育的ニーズに応じたきめ細かな支援の充実に取り組んでまいりたいと考えてございます。
 そして、第2回目のセッションで御質問いただいた項目等で、その会議でお答えできなかった部分につきまして、資料7になりますけれども、1ページの2番目の部分、ワーキング・セッションIIで提出された御質問に対する回答ということでまとめさせていただいております。読み上げますと時間の関係があると思いますので、ごらんいただければと存じます。よろしくお願い申し上げます。

○石川委員長 ありがとうございました。
 先ほど、厚生労働省のほうからは、優先調達法にかかわる補足をいただいたのですが、ワーキング・セッションIIIに関しまして、さらに補足がございましたらお願いいたします。

○厚生労働省 厚生労働省障害者雇用対策課長の宮本でございます。
 資料6でございます。前回ワーキング・セッションIIIにおきまして宿題になっていた事項について簡単に説明させていただきます。
 まず、御質問として、難病患者の就労サポーターの現状、課題ということについて御質問がございました。平成25年度から全国15カ所のハローワークに難病サポーターという難病の専門的なサポーター、相談に乗る専門職を配置しておりまして、26年度においては4,930件の職業相談活動をやっております。27年度より全都道府県に1名配置できるよう増員を図っております。難病相談支援センターと着実に連携していくということが今後の課題であると考えております。
 それから、質問2ですが、助成金の支給期間の終了後の定着率ということで御質問がありましたが、支援期間終了後の定着率というのは現時点では把握はしておりません。
 参考までに、平成25年の雇用実態調査において、離職をした理由を載せておりますけれども、事業主の都合により離職した場合というよりも、個人的な理由による離職のほうがかなり多いという状態にはなってございます。
 それから、要求された資料といたしまして、特例子会社の障害者雇用の内訳というものがございました。平成26年6月1日時点においては391社、障害者数が1万5,262人、身体障害者が5,674人、知的障害者が7,849人、精神障害者が1,739人、そういう内訳になっております。
 また、要求資料といたしまして、就職率のみが掲載されている項目についての定着率というのがございましたが、能力開発機構の修了者等においては、就職後の定着率という形での集計は行っていないということでございます。
 それから、企業における中途障害者の割合ということがございました。常用労働者5人以上の民間企業に雇用される障害者を対象とした抽出調査でございます平成25年度雇用実態調査によれば、身体障害者の場合は、今の会社に就職する前から障害があった方が62.5%、会社に就職した後が36.4%、精神障害者については、今の会社に就職する前が64.1%、今の会社に就職した後が33.7%となっております。
 要求資料4ですけれども、企業におけるリハビリ就労の状況ということでございます。要するに、メンタルの不調になった場合に、リハビリ就労というものを規則として定めているところ、慣行上行っているところ、そういったものについては、メンタルヘルス対策に関する調査というのを行っておりますので、ご覧のような結果になってございます。
 要求資料5が企業における助成への申請数、助成額等ということで、ご覧のような結果でございます。
 要求資料6、福祉就労に関して、A型・B型の賃金はご覧のとおりでございます。最賃減額特例の許可数については、一般事業場やA型就労事業場の分類はしていないため、集計はできませんということでございます。
 あと、基礎年金の支給停止数というのがございました。これもご覧のとおりでございまして、支給停止者の割合は約5%ということになっております。
 最後に、たたき台につきまして一言だけ意見を言わせていただきたいと思います。
 雇用のところで、49人以下の企業、事業所の雇用を推進する必要があるという御意見がありましたが、これはセッションのときにも申し上げましたけれども、現在、我々の推計ですと、5人以上49人以下の従業員の企業で現在22.2万人の障害者の方が雇われているということでございます。これは50人以上の34万人という実数に比較しても決して遜色のない数字でございまして、むしろこちらの5人以上49人以下の企業というほうが、雇用率という形で言えば、推計値ではありますけれども、高くなっている状況でございますので、必ずしも49人以下の企業が障害者を雇っていないということはないので、その事実だけ御確認をいただければと思います。
 以上でございます。

○石川委員長 ありがとうございました。
 続きまして、ワーキング・セッションIVに移りたいと思います。まず文化庁のほうからお願いいたします。

○文化庁 文化庁著作権課、課長補佐の秋山でございます。
 ワーキング・セッションIV-2で出された御質問に関して、資料7の4ページをごらんください。佐藤委員から、いわゆるマラケシュ条約への対応に係る著作権法の改正に関する今後の見通しについてという御質問をいただきました。お答えいたします。
 平成25年6月に、視覚障害者等による発行された著作物へのアクセスを促進することを目的とした「盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約(仮称)」(以下「マラケシュ条約」という。)が採択されました。
 マラケシュ条約への対応につきましては、昨年度より文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会において検討がなされてございます。昨年度は、障害者団体、権利者団体から御意見を頂戴し、制度整備のあり方について検討を行いました。
 昨年度の小委員会におきましては、障害者団体からはマラケシュ条約の締結に必要な手当のほか、視覚障害・聴覚障害等に係る多岐にわたる御要望が寄せられました。
 一方、権利者団体からは、マラケシュ条約の締結に必要な手当については前向きな反応があったものの、その他の要望事項については、反対もしくは慎重な立場が示されました。
 これに対して、障害者団体からはマラケシュ条約の締結のために必要な最低限度の法改正だけを先行するのではなく、障害者の情報アクセスの充実の観点から、その他の要望事項についてもあわせて所要の措置を講じてほしいとの意向が示されたところでございました。
 これらのことを踏まえまして、昨年度の小委員会において、まずは関係者間で意見調整を行った上で、改めて小委員会で審議を行うこととされました。このため、現在、文化庁においては、こうした意見の集約に向けて関係方面と調整を行っているところでございまして、意見集約を行った後、小委員会において検討を行い、そして必要な措置を講じたいと考えてございます。
 回答は以上でございます。

○石川委員長 ありがとうございました。

○文部科学省 文科省から、セッションIVのところについて補足させていただきます。
 セッションIVの中で、拡大教科書、音声教材のことにつきまして御意見をいただきました。その中の音声教材のことにつきまして、少し補足させていただきます。
 音声教材につきましては、平成25年度までは教材として有効性等について調査研究事業を行ってまいりました。その有効性が確認されたため、昨年度になりますけれども、平成26年度からは音声教材の製作団体について制作費等を直接支援する委託費の措置をしております。これは事業の名称が調査研究となっておりますけれども、実質的には制作費やインターネット配信をするためのシステム運営費などの委託費が支出されているものでございます。現在希望する児童・生徒が制作団体に申請をいただければ、無償で提供を受けることが可能となっている状況でございます。
 なお、これらの音声教材について、今後より一層普及推進を図るため、昨年度より全国を5ブロックに分けまして、学校、教育委員会関係者を集めて、音声教材の普及推進会議を開催、運営し、その活用方法等につきまして、周知徹底に努めているところでございます。
 あともう一点、最後になりますけれども、情報アクセシビリティのことにつきましても御審議をいただきました。教育分野、特に通常の学校における情報アクセシビリティについてでございますけれども、例えば会議の中でも触れさせていただきました、文科省が平成25年10月に取りまとめました教育支援資料、これは学校及び教育委員会等に配付しているものでございますけれども、その中の障害の状態等に応じた教育的対応といたしまして、教育内容及び方法、支援体制、そして施設設備、それぞれの面から情報保障の考え方を含む合理的配慮の観点について記載をし、周知を行っているところでございます。
 先ほど触れました平成24年の中教審の分科会報告におきましても、情報に着目した合理的配慮の事例をまとめていただいておりますけれども、今後、情報保障の考え方につきまして、差別解消法の施行に伴う合理的配慮の取り組み等を進めていく中でも、より広く普及、広めていきたいと考えてございます。
 以上でございます。

○石川委員長 ありがとうございます。
 それでは、内閣府男女共同参画のほうからお願いします。

○内閣府 内閣府男女共同参画局暴力対策推進室でございます。
 私のほうからは、障害者である配偶者暴力の被害者の方が相談に見えられた場合の対応につきまして御説明させていただきます。
 この点につきましては、第3次男女共同参画基本計画におきまして、配偶者暴力防止法が対象としている被害者には障害のある人も当然に含まれていることに十分留意しつつ、その立場に配慮することを徹底するとされているところでございます。
 実際に障害者である被害者の方が相談にいらっしゃった場合の対応につきましては、内閣府が作成いたしました「配偶者からの暴力 相談の手引」におきまして、考えられる対応、望ましい対応などについて記述をいたしております。具体的には、障害の有無にかかわらず、被害者が相談しやすい体制づくり、施設のバリアフリー化の推進などを盛り込んでいるところでございます。
 この手引につきましては、各地方公共団体に配付し、研修で使用するなど、周知に努めているところでございます。
 なお、配偶者暴力相談支援センターに対しまして、障害者である被害者の方から寄せられた相談の件数につきましては、平成25年度におきまして5,081件となっているところでございます。
 以上でございます。

○石川委員長 ありがとうございました。
 質疑応答は休憩後としたいと思います。ここで15分間休憩をとります。15時30分に再開いたします。

(休憩)

○石川委員長 再開します。
 これからは、各ワーキング・セッションで御議論いただいた内容のたたき台をまとめていく作業ということで、きょうは残る時間が、私の進行の不手際もありまして、余り十分とは言えません。きょうはどこまでできるか、やってみないとわからないという面もございます。
 そこで、各ワーキング・セッションのコーディネーター、複数いらっしゃるのですが、先ほど代表して御報告をいただいたコーディネーターを中心に、ワーキング・セッションでの議論のまとめと、各省からの先ほどの補足説明及び資料での回答を踏まえて、第3次障害者基本計画の実施についての監視という観点から、実施についてのモニタリングということに関しまして、それぞれのワーキング・セッションで浮かび上がってきている、特に優先度の高いというか、重要な課題について、もう一度コーディネーターのほうから簡単に御発言いただいて、それについて各委員からの意見、あるいは各省からの御回答という形で、単純計算で言うとそれぞれ10分ぐらいですので、本当に時間が短くて申しわけないのですけれども、そのようなやり方で進めさせていただこうかと思っております。よろしいでしょうか。
 各ワーキング・セッションで特にここが重要なポイントなのだということを、改めてそれぞれのセッションのコーディネーターからお話をいただきたいと思います。
 それでは、上野委員、平川委員が発言を求めていらっしゃるので、御発言いただきたいと思います。

○上野委員 ありがとうございます。精神科医の上野です。
 今、委員長から提案されました進め方に関してですけれども、私たちのワーキング・セッションに関して各省庁からの追加説明がありましたので、それに対する意見もしくは質問の時間もとっていただきたいと思うのですけれども、いかがでしょうか。

○石川委員長 そのつもりではありますけれども、何分、各セッション当たり平均して10分というのがきょうの残っている時間的リソースでして、多分足りないと思いますので、次回に引き続きこれを進めなければいけないのではないかとは思っておりますが、やるだけやってみて、きょうの最後の段階で判断させていただきたいと思っております。各省の回答への御意見、御質問ももちろんお受けしたいと思います。
 平川委員、お願いします。

○平川委員 ワーキング・セッションIIのところでお話ししますので、結構です。

○石川委員長 それでは、まずワーキング・セッションIから行きたいと思います。野澤委員でよろしいでしょうか。

○野澤委員 はい。コーディネーターはきょう私しかいないので、失礼します。
 このワーキング・セッションIはなかなか難しくて、ヒアリングで参考人の方に来てもらったのですけれども、佐藤彰一さんは、こんな本人の権利を制限する成年後見を進めようなんてしている国は権利条約に批准した国の中ではどこにもない、今の成年後見制度はだめだという非常に厳しい意見です。
 片方の細川瑞子さんは、とはいえ、では判断能力にハンディのある重度の知的の人たちの被害とか、彼らをどうやって守っていくのだ、成年後見は絶対必要だと、一見すると真っ向からぶつかっているのですけれども、ただ、両方とも立場は同じで、御両人とも親の立場であって、何とか判断能力にハンディのある人たちの権利を守りたいという立場なのです。よくよく聞いてみると、そんなに違うことを言っているようにも思えないのです。
 ここのテーマの難しさというか、矛盾というか、判断能力がないことを制度利用の前提にしつつ、判断能力がないからこそ成年後見が必要だと言いつつ、本人の意思に配慮しなければいけないということが決められていて、そこが身上配慮義務、何をどうすれば本人の意思に配慮したことになるのか、本人の意思を確かめたことになるのかという、この一番重要なところが全く欠け落ちたまま議論をしているので堂々巡りをしているのですね。
 この資料2-1の1ページ目の四角の中に法務省の見解があるのですけれども、権利条約に抵触しているのではないかということで、ただし後見人が代理行為をするに当たっては本人の意思を尊重し、かつ心身の状態や生活の状況に配慮しなければいけないという注意義務が課されているのだから、いいのだとは書いていませんけれども、こういうことです。では、どういうことが配慮したことになるのかという一番肝心なところが抜け落ちているのです。ここに尽きるのではないかと私は思ったりします。
 なので、もう喫緊の課題といいますか、やらなければいけないことは、ここをきちんと議論して埋めていくということだと思います。それが今、総合支援法の見直しでやっている意思決定支援だと思います。
 意思決定支援と一言で言っても、いろいろな要素が詰まっているのですけれども、要するに障害者に対するエンパワーメントやコミュニケーションスキルを向上させて、本人の意思を表出できるようにしていく、これが大前提なのです。でも、どんなにやっても、やはりなかなか難しい人というのは現実にいるわけです。その場合どうするのか、ここが核心中の核心だと思っているのです。この本人の最善の利益、どうしても難しい場合に、それでも追求するわけですけれども、でも待っていられないので、そのときにやむを得ず代行決定するときに、本当に最善の利益を誰がどうやって、どういう手続のもとでやっていくのか、これが意思決定支援の一番大事なところだと思います。ここを最優先してやらなければいけないと思います。
 それをやった上で、現行の成年後見をどう判断するのか。国連の権利条約に抵触しないという論拠は、これをやらないで、文章上のここにこういう規定があるではないかということではとても通用しないと私は思うのです。なので、これをまずやっていくべきだと思います。
 すぐに大規模な、根底的な制度改革ができるとは思えませんので、法改正ができると思えませんので、現行の成年後見もいろいろなパターンが今ありますので、それをできるだけ整理して、検証した上で、どんなやり方がこのベスト・インタレストを支えていくのに一番ふさわしいのかということを、運用上の研究というか、検証というか、それをやっていくべきではないかと思います。
 諸外国ではいろいろなやり方が既に施行されておりますので、そういうことも参考にしながら、モデル事業等をやりながら、多角的にこの問題の整理をしていくべきではないかと思っております。
 そのいろいろな提案については、ここのたたき台の中でもあちこちで出てきておりますので、もう少しこれをまとめ上げると、優先課題順にやらなければいけないことが整理されていくのではないかと思います。それをなくして、今、抽象的な概念上の議論を幾らしても、何か余り実のある結論に到達するとは思えないのです。
 御異論があれば、言っていただければと思います。

○石川委員長 ありがとうございました。
 このワーキング・セッションIに関しまして、御意見、御質問が特におありの方はいらっしゃいますでしょうか。
 では、竹下委員お一人ということで、お願いします。

○竹下委員 竹下です。
 今の野澤委員の話を聞いていてもよくわからないのですけれども、もう一度、第3次基本計画のその項を読んでみると、簡単に言えば、成年後見制度を意思決定支援としてより利用しやすくするための制度を進めろということだと思うんですね。そうすると、今の議論とどうかみ合っているのか、よくわからないというのがまず結論であります。
 その上で、このワーキング・セッションで成年後見人を、とりわけ知的障害者、私自身は実は精神障害者は経験ないのですけれども、知的障害者の成年後見を幾つか経験しておられる方の話は聞いておられるのでしょうか。
 といいますのは、少なくとも本人の意思尊重の上で、知的障害者の支援をするときにはそれなりに皆さん工夫しておられると思うのです。その意思を尊重するために成年後見人がどういう後見業務を行っているかということの前提に立たないと、ここはかみ合わないのではないでしょうか。
 以上です。

○石川委員長 ありがとうございました。
 それで、できれば取りまとめに向けての御提案をいただけるとありがたいのですけれども、今のこの状態で次回、原案を出せますか。
 野澤さん。

○野澤委員 参考人で呼ばれたお二人は後見人をされていると思います。我々コーディネーターも、何人も経験されている人から、日常的につき合いがありますので、いろいろなケースについては聞いているつもりでおります。

○石川委員長 竹下委員、もしコメントがあれば、簡潔にお願いします。

○竹下委員 ありがとうございます。
 私の思いとしては、全部第Iセッションの内容を読めていないので、そこで答え出されているのであれば、それでいいのですけれども、提案としては、現在の成年後見制度の成年後見はどこに問題があって、これをどのように運用をすれば解決するのかということが示されることが必要だと思っているのです。例えば成年後見で言えば、関係者、例えば福祉事務所のケースワーカーであったり、各事業所の担当者等を集めたケース会議を定期的にやっていくことによって、意思尊重といいますか、本人のありようというものに即した成年後見業務は十分可能だと思うのです。
 それから、もう一つは保佐、補助との組み合わせをどういう形で知的障害者の程度と生活実態に合わせて組み合わせるかということをもっと具体的に提案していくことが望ましいのではないかと思っています。
 以上です。

○石川委員長 野澤委員、お願いします。

○野澤委員 竹下先生の御発言の御趣旨は全くそのとおりだと思うのです。ただ、私はそれでもやはり知的障害の方の意思を本当に確認するというのは難しいものだなと思います。私、28年間知的障害の子の親をやっていますけれども、まだわからないことのほうが多いです。どんなにケース会議を開いて何度やっても、だからといって本人の意思に沿った決定ができると簡単に言われてしまうと、ますます不安になってくるのです。ここがやはりこの問題の非常に難しいところで、多分一つの意見にはまとめ切れないだろうと思います。
 それを、今、どんなふうにまとめるのかということでお話ししているのですけれども、とても一つの方向性、こうすべきだというふうには多分まとめ切れないのではないかと思うのです。だから、課題を幾つか挙げて、とりあえずその中で最優先してやっていくべきことはこういうことではないのかというまとめ方しかできないのではないかと思っています。

○石川委員長 重度の高次脳機能障害とか重度の認知症の場合も同じような経験を私もしておりますけれども、幹事のほうで何かございますか。法務省か厚生労働省。特にないですか。わかりました。
 というわけで、一つにまとめることができるかどうかは置いておきまして、問題の広がりと深さと難しさは全体として共有できていると思いますので、とにかくそれで先へ進みたいと思います。よろしいでしょうか。
 では、ワーキング・セッションIIのコーディネーターを代表して、あるいは複数でも構いませんけれども、重要な論点につきましてもう一度簡潔にお願いできればと思います。
 大濱委員、お願いします。

○大濱委員 大濱です。
 精神科医療のあり方についてですが、かなり日本では遅れているのが現実で、病床数が全然減っていないという大問題があるということで取り上げたと私は認識しております。
 では、この中でどういうことが具体的に問題なのかということになると、例えば、イギリスでは家族に対する支援が法制化されている一方で、日本では家族支援が非常に弱いことが挙げられます。また、権利条約19条で言う地域社会で生活する平等の権利がきちんと日本では守られていません。地域生活というのは、物理的な空間や設備が病室ではなくて居住施設であるというだけでは不十分であり、地域社会の中でインクルーシブに暮らすことができないといけません。病棟から居住施設に転換して、居室内に家具やテレビを自由に置けるようになったからと言って、それを地域生活と呼べるわけではありません。
 それから、居住の場の確保が全くできていません。精神障害の人たちには住む場所がないという大きな問題があるということで、病床転換型居住系施設の議論も出たわけですが、これも一時的なものですから、最終的にはいかに地域社会の中に居住の場を確保するのかという問題になります。その点で厚生労働省に特にお願いしたいのは、現在の第4期障害福祉計画の基本指針の中で、長期在院精神障害者を3年間で18%、3万人減らすという数値目標が掲げられていることです。これは非常に低過ぎる。新規の入院患者が1年以上の長期在院者へ移行するのを防げば、毎年1万人の死亡退院だけで達成できる数字にしかなっていません。これでは、既存の長期在院者の地域移行は全く進みませんから、そういう数値目標で本当にいいのかということになってしまいます。ですから、厚生労働省としてももっと頑張って、削減目標を18%ではなく25%や30%ぐらいに設定してもらいたいということです。
 あと、難病患者や、喀痰吸引等が重要な重度障害者についても、精神障害者と同じように地域での居住の場がないというのは共通した問題だと私たちは考えています。
 以上です。

○石川委員長 ありがとうございました。
 先ほど、上野委員のほうから意見があるということだったので、上野委員、最初にお願いします。

○上野委員 ありがとうございます。精神科医の上野です。
 私のほうでは、厚労省の方に追加説明をいただいたのですけれども、それに対してコメントと質問をさせていただきたいと思います。
 まず第1に、単に物理的な空間や設備や病室でなく云々という、精神科医療のあり方について、病院内でのグループホームの整備に関してお話をいただきました。確かに私たちは何年間も入院させておいて、そして生活能力が下がってしまって、地域生活をするために極めて厚い支援が必要な方がいることは事実です。そして、厚労省の方は一時的な施設として病院内にグループホームを整備させるとおっしゃいました。精神科病院は民間病院が9割です。そして、私も民間病院に勤務していますけれども、民間病院は保有する設備を最大限活用しないと経営が成り立ちませんので、民間病院に新たにそういった箱物をつくらせるということは、一時的ということはあり得ないのです。なので、その点が矛盾していますので、ぜひ敷地内のグループホームの整備に関しては再考をお願いしたいというお願いが一つ。
 あとは、医療保護入院に関してです。ワーキング・セッションの議論の整理のたたき台の一番下、「医療保護入院は民間人が民間人に対して強制力を行使するという形態になっていて理解が得にくい」と。私は法律の専門家ではありませんが、この趣旨は「国家が私人である患者さんの人権制限をすること」、それは法律上認められる。しかし、我が国の医療保護入院においては、民間病院に勤務する精神保健指定医、すなわち私人が私人である患者さんの人権制限をする」ということで、法律上の説明がつかないということです。だから、これが精神保健福祉法で人権保障がされているということで説明がつく問題ではありませんので、そちらのほうはもう一回考えていただきたい。
 その人権保障の内容ですけれども、精神保健福祉法によって患者さんの権利が守られていると皆さん説明されるのですけれども、その根幹は精神保健指定医制度なのです。そして、昨今、聖マリアンナ医科大学というところで指定医の不正取得というのが問題になりました。精神保健指定医の合否判定の大きなポイントは8例の症例のレポートの提出になります。症例のレポート自体は、あのレポートを読むと、その方が精神科医療についてどのぐらい理解しているか、精神保健福祉法についてどのぐらい理解しているかが手にとるようにわかるので、症例レポートを合否判定の基礎に使うのはいいと思うのですが、結局、現状の制度では、「誰がそのレポートを書いたのか」というのは全くわからないのです。なので、誰が書いたかわからない症例レポートを合否判定、指定医の認定の基礎にしているということで、精神保健指定医の認定自体に非常に大きな制度的な欠陥があるのです。
 そして、精神保健福祉法においては、例えば行動制限の規定などにおいて、1人の精神保健指定医に全ての権限が集中しています。そして、現在、指定医のそういった巨大な権限に対して第三者のチェック機構が事実上全く働いていません。なので、患者さんの人権を守るような制度的保障が全くありません。そのような状態を考えると「人権保障がなされる」などとは到底言えないと思うので、指定医制度を今後どうするおつもりなのかということを御説明いただきたい。それが質問の第1点です。
 あとは、家族等の同意に関してですけれども、御家族は、特に精神科の入院という場面になると、御家族の利益と御本人の利益というのはもう完全に対立したものになってしまうことが多いのです。なので、御家族の同意は御本人の人権保障には事実上余り機能していないという部分があります。
 そして、現在の日本の福祉においては、障害者の方の生活を支援するにおいて、家族の負担がたいへん大きいのです。家族等の同意で入院させるような医療保護入院、昔の同意入院から医療保護入院の制度を設けていること自体は、長期入院を生んだ大きな原因になっていると思いますので、精神保健福祉法第33条が医療保護入院を規定することが妥当なのかは再検証する必要があるというのはそういった意味です。その点についての回答をいただきたいと思います。
 あと、この障害者政策委員会に関してですけれども、ぜひ認知症に関して全体で議論する場をいただけたらと思います。
 以上です。

○石川委員長 重要な御意見と御質問ばかりでしたが、たくさんいただいたので、全部にお答えできるかどうかわからないのですが、厚生労働省のほうから今の点につきまして、敷地内グループホームと医療保護入院の人権論的な位置づけについての疑義、指定医制度について、家族同意について等々ございましたけれども、よろしいでしょうか。

○厚生労働省 厚生労働省精神保健医療統括推進官を務めております江浪と申します。
 御質問いただきました点は多岐にわたっておりまして、順次お答えを申し上げたいと思っております。
 まず、大濱委員から御質問いただきました地域移行に関します障害福祉計画におきます目標値でございますけれども、これは先日開催されました審議会の障害者部会のほうでも御説明申し上げましたけれども、退院される方の中に死亡退院の方が含まれているということは事実でございますけれども、死亡退院の方も含めた退院者数が5万人という数字でございますけれども、一方で新たに1年以上の地域入院に移行される方も5万人いらっしゃるということで、亡くなっていらっしゃる方が現にいらっしゃるわけですけれども、それだけでは病床は減らないという現状でございます。
 そういった中ではございますけれども、指標の設定に当たりましては、過去に病床の削減が進んでいる5つの県のデータをもとに、その削減トップ5と同じぐらいの規模で減っていくという目標で今回設定をしたものでございますので、これに関しましては県のほうから見れば比較的ハードルの高い指標ではないかと考えております。これにつきましては、もちろんもっともっといろいろな施策を尽くしていけば目標を高めていけるのではないかという御指摘もあろうかと思いますので、そういった御指摘も踏まえながらしっかりと対応していきたいと考えております。
 次に、病院敷地内におきますグループホームの関係に関しましては、地域における居住の場が足りないから病院敷地内にグループホームを整備するという議論というよりは、退院に関する支援を徹底しても、なお直接地域のグループホームなどに戻るということにちゅうちょがある、そういうことができない方がいらっしゃるという中で、暫定的、一時的に居住の場というものを病院の敷地内に設けて、そこから地域に戻っていっていただく。そういう移行の場であると考えております。
 この移行の場である、暫定的なものであるということにつきましては、制度上どう担保していくかということでございますが、1つは敷地内グループホームに入居される方につきまして利用期間を設けるということ。さらに、この制度そのものについて、制度施行日から4年後をめどに、3年間の実績を踏まえて、制度のあり方について検討するということで担保しているところでございまして、これにつきましてしっかり取り組んでいきたいと考えているところでございます。
 また、指定医のことにつきまして御質問いただきました。精神保健指定医に関しましては、上野委員御指摘のとおり、まさに精神障害者の方の入院が医学的に妥当であるということを制度上も担保する非常に大事な仕組みであると考えております。
 そういった中で、先般、聖マリアンナ医科大学におきまして精神保健指定医の申請に当たって、自分が担当していない症例についてケースレポートを作成して提出したということに関しましては、これは精神保健医療福祉の根幹を揺るがす非常に重大なものであると考えておりまして、これにつきましては聖マリアンナ医科大学に対しまして厳正に対応していくということのほかに、全国的にも同様の事例がないか、そういったことも調査するということとしております。そういった中で、この精神保健制度に関しまして信頼をしっかりと回復していきたいと考えているところでございます。
 医療保護入院におきます家族等の同意のことにつきましても御指摘をいただいております。今回、家族等同意に関しまして、精神保健福祉法改正におきまして設けることとした理由といたしましては、冒頭、企画課長から御説明させていただきましたとおり、インフォームド・コンセントがますます重要という中で、患者の身近に寄り添う家族等に十分な説明が行われた上で、家族等が同意する手続が重要であるということなどを踏まえて行ったものでございます。
 精神保健福祉法に関しましては、一方で3年見直しの規定というものもございまして、これからさらに、入院している患者さんの権利擁護の関係をどうやっていけるかということも含めまして検討規定が設けられておりますので、これにつきましては引き続き検討していくということとしているところでございます。
 若干長かったですけれども、以上でございます。

○石川委員長 ありがとうございました。
 それでは、平川委員、お願いします。

○平川委員 私は意見ですけれども、まず、今回の資料で出されたデータは平成19年のデータが出ておりまして、今から8年も前のデータを使った検討をしなければいけないという問題が一つありました。この8年間に2回、精神保健福祉法の改正がありまして、前回21年の改正のときには、今までこういう長期化してしまったことを反省して、一からやり直そうというところから5年間が経過しています。
 その中でまた問題に挙がったことを、去年、精神保健福祉法をまた改正しまして、指定医が一人でいろいろな責任を負わないように、チームで話をしていこうということで、入院と同時に入院療養計画書というのを御家族も、できれば本人も集めて、会議を開いて、退院促進をしていこうと。指定医が一人でやるようにしないようにしようということで、先ほど上野先生がおっしゃったようなことをすれば、これは違法行為をしていることになります。
 上野先生の御指摘は多分七、八年前の話なのかもしれませんが、先生も臨床医としておっしゃっているとすれば、この会議に当事者の方が参加していないので、先生はその方々の思いをここでおっしゃったのだと思いますが、実際に今回のたたき台で挙がったようなことについては人権侵害が甚だしくて、これはまさしく違法行為です。我々はそういうことがないようにしておりますので、これについては、たたき台としてここで出して構わないと申し上げたのは、まだこういう偏見といいますか、精神科医療が変わっていないという認識が皆さんにあるということをまず認識をしておきたいということ。
 それから、日本の精神科病床とか平均在院日数が多いのは、OECDとの比較だという話があります。先ほど、勝又先生からお話がありましたが、OECDはもう全部条件が違うわけです。条件が違うところと比較をして日本だけ突出しているという表現をされるのは大間違いだと思いますので、こちらについても正しい統計をとっていただいて、進捗を確認していくというこの障害者政策委員会の存在というのは非常に重要だと思いますので、ぜひ正しい統計をとっていただきたいと思います。よろしくお願いします。

○石川委員長 ありがとうございました。
 川﨑委員、手が挙がっておりました。

○川﨑委員 私どものセッションの中で取り上げましたのが、地域移行のための環境整備についてですけれども、ここに挙げられているように、地域移行をするための地域での環境整備ができていけば、これは私はスムーズにいくのではないかと思っているのですけれども、この環境整備がここに述べられていること一つもなかなかされていないということで、例えば先ほどの住まいの問題にいたしましても、実はあいているアパートは今いっぱいあるわけです。そういうところにどうして入れられないのかということは、そこにひとり暮らししても何のサービスを受けられなくて、本人がとても困ってしまうから、だからアパートでのひとり暮らしはできないということがあったり、それでなかなか退院もできないでいる人とか、それから先ほどの医療保護入院を家族が同意するというのは、こんなのは本当は同意したくないです。本人を入院させたくないというのが家族の思いですけれども、やはり退院後に家族が全部を背負わなければいけない、その大変さ、いわゆる家族への支援が何もされないということも一つの原因でありまして、この環境整備がされないがために地域移行が全然伸びていない。
 地域移行の前は退院促進と言いましたね。退院促進がなかなか進まなかったのは、やはり地域基盤ができていなかったのではないかと言われておりますし、今回の地域移行に関しても、なかなか基盤整備ができていない中で、地域移行、地域移行と言っても、これは恥ずかしいことですが、なかなか我が国では数字が上がっていなくて、今回の国連の報告でもちょっと悲しい報告をしなければいけないのではないかなという懸念をしております。
 その辺、厚生労働省にお聞きしたいのですが、地域基盤整備といいますか、これには財源をつけなければいけないのです。そういう、例えば支援員の養成とか、家族支援とか、そういうことに対しての財源の確保というのはどのようにお考えかをお聞きしたいと思いました。

○石川委員長 ありがとうございます。
 では、厚生労働省、今、川﨑委員から支援員についての質問がございましたので、簡単にお答えいただけますでしょうか。

○厚生労働省 精神保健医療統括推進官の江浪でございます。
 地域移行ということに関しまして、地域基盤の整備、また地域生活に移行した後の生活を支えるサービスの充実ということは非常に大事な課題だと考えております。ワーキング・セッションにおきましても、その場では国土交通省の方が御出席されて、住宅政策の中でも検討しているというお話もされておりましたけれども、連携してしっかりと地域基盤を支えるサービスというものをやっていきたいと考えております。
 財源の確保に関しましては、国の財政が非常に厳しい中で、障害福祉サービスに関しましてどういうふうにこれから充実して進めていくことができるかということに関しましては、障害者部会、審議会のほうにおきましても御議論いただいているところでございます。御議論を踏まえまして、しっかりと対応していきたいと考えております。

○石川委員長 ありがとうございます。
 司会の不手際で、申しわけありませんが、15分延長させていただきます。

○松森委員 時間延長について、例えば子供の保育園に延長を連絡をしなければならないとか、延長料金がかかってしまったりとか、そういう都合がありますので、ぜひ時間は守っていただきたいのです。お願いします。

○石川委員長 困った。時間は極力守りたいと思います。その場合、次回に原案提出という事務局の強い御希望、これは政府報告のタイムスケジュールというか、締め切りもかかわっていまして、ちょっと事務局、どうでしょうか。

○中島審議官 審議官の中島でございます。
 当初お配りしていたスケジュールでは、次回8月10日に再度議論をしていただいて議論の整理全体版の取りまとめという形で、既に御案内申し上げています。それで、次回、申しわけございませんが、徹底して御議論いただければありがたいと思っているところです。
 実は、このモニタリングについては、4月17日の第20回政策委員会で進め方を御議論いただいて、モニタリングしていくときに特に力を入れてしっかりやらなければいけない分野について、きょう御報告いただいたように4分野を挙げていただいたという形になるわけです。そして、第21回の政策委員会でマッカラム前委員長にも来ていただいてお話をいただき、そして本格的にモニタリングをやり始めたということで、きょうこの議論を終えていただくと、ワーキング・セッションを入れて、別に国会審議ではないのですけれども、30時間御議論いただいているということになります。
 それで、お忙しい委員の皆さん方に30時間もというところはあるわけですけれども、事務局として見せていただくと、議論がしっかり行われて論点が絞り込まれてきているのではないかという感じはしているわけです。いわゆるモニタリングで何に力を入れなければいけないのかということを4つ決めて、それぞれのワーキング・セッションでやっていただいて、きょうとりあえずのたたき台を出させていただきましたけれども、その中でも、例えば今もう議論になっておりますけれども、精神医療の質の問題があれば、医療ケアを必要とされる方の地域移行の問題等と、幾つかの大きな論点が出てくるということです。
 本日のたたき台の資料では、委員の皆様方、先生方の発言を尊重する意味で余り要約をしていないわけでありまして、意見の中には共通している意見もあれば、若干ニュアンスが違う意見もあるわけです。野澤委員と竹下委員の御意見の微妙な差も、恐らくそういうところから出てくるのだと思いますので、また委員長と相談させていただきますが、次回は改めて、特にここの4分野が重要だと思いますが、これまで御議論いただいたことをこの障害者基本計画の項目に即して、論点が大きくなれば、1対1対応は必ずしも項目ごとには難しかろうと思いますが、委員の皆様方から出た意見を事務局のほうである程度整理をさせていただいて、こういうところが問題なのではないかということ、それに対してはこういう見方がそれぞれあるのではないかという形で整理させていただき、そしてその下に皆様方からいただいた意見をぶら下げさせていただくという資料を用意させていただいて、改めて次回に事務局のほうで整理させていただいた論点ごとに議論をしていただくというのが効率的なのかなと思っております。
 それとともに、前回複数の委員から、この基本計画の実施状況の表のつくり方が定性的なものの記述が多くて、定量的な数値等が織り込まれていないという御指摘もいただいていますから、これについても関係省庁の御協力を得て、盛り込める数値というのは可能な限り盛り込んだものを次回までにしっかりお作りをして、できれば論点メモみたいなものと合わせて事前にお送りをして、お忙しいと思いますが、お目通しいただいた上で、一通りそれぞれのテーマに沿った論点ごとに時間を決めて御議論いただいて、ある程度煮詰めていただくのかなと思っておりますので、改めて委員長とも相談させていただいて、この案にこだわるものではないということで発言させていただきます。

○石川委員長 悩ましいことではございますが、私もきょう何とかしようと最善の努力はしたつもりなのですけれども、そのようなことで申しわけございません。
 それで、あともう3分しかないので、ここでじたばたしても仕方がないので。
 どうぞ。

○上野委員 ありがとうございます。精神科医の上野です。
 厚労省の江浪さんからのお話で、私の質問にちゃんと答えられていただいていない気がするのですが、1つだけ、指定医の不正取得問題に関して、聖マリで行われたような不正取得がほかのケースがないかというのをお調べになるというお話でしたけれども、温床となった、大もととなった制度的な欠陥、誰が書いたかわからないレポートを合否判定の基礎にしているという、その制度を改正するというおつもりはないのでしょうか。それだけお願いします。

○厚生労働省 精神保健医療統括推進官の江浪でございます。
 1つ、指定医制度のケースレポートについて、全く誰が書いたものかわからないものを審査しているという御指摘もいただきましたけれども、ケースレポートに関しましては、本人が自分が経験した症例を記載するということが原則でありまして、さらに言いますと、上司の指定医が、別の方ですけれども、その方がそのケースレポートにさらにサインするという形で一定程度の担保をとっているということでございます。
 聖マリアンナ医科大学におきましては、サインをする上司のことを指導医と言っておりますけれども、この指導医におきましても見逃しがあったということで、指導医に関しましても処分を行ったということでございます。
 今、上野委員からこの制度の見直しのことについて、方向性につきまして御質問をいただいたところでございますけれども、今、我々として全力で取り組んでおりますのは、この聖マリアンナ医科大学におきます問題のさらなる分析と、あとは全国的な実態調査ということでございます。

○石川委員長 ありがとうございます。
 不正行為が起きたときには、その穴をふさぐための努力は厚労省のほうできちんとやっていただけると思いますけれども、例えば、これは上野委員もおっしゃっていましたし、また池原参考人も強調されていた医療保護入院という制度そのものがどうなのかといった議論は水準がまた違うかと思います。
 そのようなこともありますし、また、地域移行に関してのモバイルチームの重要性、それから海外でも完全な回答は出ていないけれども、それぞれ模索しているので、それを勉強して、日本は日本なりにどういうふうにしてやっていくのかということを考えていくことも重要で、基本計画の実施に関するモニタリングのみならず、権利条約のモニタリングという観点からも、この問題に関しましては政策委員会としては非常に重要なテーマだと考えますので、またこれは事務局と相談させていただいて、外部の有識者に全体会議で意見を述べていただく場を検討するということも含めて、ちょっと検討させていただきたいと思います。
 あと、ワーキング・セッションIIIとIVについては、もう時間がなくなってしまいまして、大変申しわけないのですが、これは潔く諦めて、次回回しとさせていただくということでよろしいでしょうか。

○竹下委員 竹下です。
 今の第IIセッションの報告書の内容のその意味も疑問があるので、それは次回に質問させていただくことも、少しお含みいただければと思います。

○石川委員長 もちろん、次回でこの基本計画に基づく監視の作業を終えるということはもう諦めるというか、もう一回やるということに事実上なったと思いますので、次回、十分な時間をとって議論をしたいと思います。よろしいでしょうか。
 ありがとうございます。音声エコーが返ってこないと不安になってしまう。申しわけないです。
 事務局から、次回の日程等につきまして御報告いただきます。

○加藤参事官 事務局です。
 次回以降の日程についてお伝えいたします。お手元の参考資料2をご覧ください。今後の障害者政策委員会の予定が記載されております。
 次回は第24回障害者政策委員会でございますが、8月10日月曜日、13時15分開始、場所は4号館4階408会議室、この建物の4階の408会議室を予定しております。
 それから、松森委員から、4月の第20回障害者政策委員会、それから前回の委員会におきまして、障害のある女性の課題について御指摘をいただいておりました。この件につきましては、石川委員長とも事務局のほうで御相談させていただき、次回の8月10日の委員会におきまして、大日方委員、松森委員、このお二人から、これまでの議論を踏まえまして、各分野にわたる横断的視点から御意見を述べていただくということにしたいと考えております。
 また、本日の御議論を踏まえまして、事務局において議論の整理(たたき台)をお示ししたところでございますけれども、先ほど審議官のほうから申し上げましたように、少し資料を整理させていただいた上で、それらの資料をもう一度8月10日のときに御議論いただき、あわせて第21回と第22回の障害者政策委員会におきます議論を反映した部分も事務局のほうで御用意して、御議論いただければと思っております。
 さらに、前回6月29日の委員会で、複数の委員から、障害者基本計画(第3次)の実施状況(案)につきまして、データの追加であるとか、わかりやすくすることなどが必要であるという御意見をいただきましたので、現在、各省庁に再度の作業を依頼し、更新を行っているところでございます。
 更新したものにつきましては、次回8月10日の委員会の資料として提出することとしておりまして、委員の皆様には、きょう出しました議論の整理(たたき台)の修正したものとともに事前にお送りして、当日は両方の資料に基づいて御議論いただきたいと考えております。
 なお、まだ先の話でございますけれども、25回の障害者政策委員会につきましては8月31日月曜日の開催を予定しております。時間は13時15分、場所は4号館4階の408会議室の予定でございます。
 以上でございます。

○石川委員長 ありがとうございました。
 以上をもちまして、第23回の障害者政策委員会を終了いたします。ありがとうございました。