障害者政策委員会(第45回)議事録

令和元年6月27日(木)
13:30~16:30
中央合同庁舎8号館 1階 講堂

【議事に使用されている資料については「議事次第」のページにまとめて掲載していますのでご参照ください。】

○石川委員長 それでは、定刻となりましたので、これより第45回障害者政策委員会を開会いたします。
 委員におかれましては、御多用のところを御出席いただきましてありがとうございます。
 本日の委員会は、16時半までを予定しております。
 なお、委員会の冒頭、委員の皆様の御迷惑にならない範囲で取材が入り、撮影が行われますので、御承知おきください。
 冒頭、事務局より委員の異動について御報告をいただきたいと思います。

○寺本参事官 本日付で、新たに障害者政策委員会の構成員として着任された方を御紹介いたします。
 本日は所用により欠席ではございますけれども、前北海道知事の高橋委員の御後任としまして、神奈川県知事の黒岩祐治委員に御就任いただいております。
 それから、日本商工会議所の髙野専門委員の御後任としまして、同商工会議所主席調査役の大内博専門委員に御就任をいただいております。

○石川委員長 ありがとうございます。
 それでは、大内専門委員から一言御挨拶をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

○大内専門委員 ただいま御紹介いただきました日本商工会議所の大内でございます。前任の髙野にかわりまして参加させていただきました。本日、こういった機会をいただきまして、ありがとうございます。
 私ども商工会議所につきましては、中小企業を中心とする会員組織でございますけれども、中小企業ではまだまだ障害者雇用の取組が遅れております。ただ、先日の法改正等により、中小企業の先進的な取組の認定制度など、その取組を促進する動きが国でも推進されておりまして、より多くの事業者でこういった取組を共有できるように、私どもも周知を進めていきたいと思っております。
 私自身、不勉強な部分も多々あろうと思いますけれども、本政策委員会で勉強させていただきましたことを、中小企業の支援・取組推進に活かしていきたいと思っております。今後ともよろしくお願いいたします。

○石川委員長 大内専門委員、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、本日の委員の出欠状況につきまして、事務局より御報告をいただきます。

○寺本参事官 本日御欠席の委員ですが、岩上委員、大日方委員、加藤委員、門川委員、久保委員、黒岩委員、竹下委員、辻委員、野澤委員、長谷川委員、平川淳一委員、松爲委員、以上の各委員が所用により御欠席と連絡をいただいております。
 また、大河内委員が遅れて到着されるとの連絡をいただいております。

○石川委員長 ありがとうございます。
 それでは、毎回恐縮ですが、当委員会における発言ルールについて確認させていただきます。
 まず、委員長が発言を求めます。発言を希望される委員は、挙手をお願いします。委員長の指名によって発言を開始してください。
 発言は、まず結論を述べ、次に理由、説明を補足していただくという形が、情報保障の点で最も合理的かと思います。可能な限りということでお願いいたします。
 発言の際は、できるだけゆっくり分かりやすくお話しください。また、マイクを効果的に御活用ください。発言ルールにつきましては、以上となります。
 それでは、本日の議題及び資料につきまして、事務局より御説明いただきます。

○寺本参事官 本日は、障害者差別解消法の見直しの検討の議論の一環としまして、主な相談事例について、それと障害者権利条約との関係、大きくこの2点について御審議をいただければと存じます。
 前半の事例については、前回も資料としてお配りしておりますが、これまでの障害者政策委員会での御指摘を踏まえて事務局で整理しましたので、意見交換いただければと思います。
 また、これまでの障害者政策委員会で石川委員長から御紹介のありました、条例の制定の趨勢についてなど、これまでの御質問の関連の資料を一部用意しております。
 前半の議題の終了後、2時40分前後を目途に15分程度の休憩を設ける予定です。
 その後、後半の障害者権利条約との関係については、石川委員長より、障害者権利委員会の一般的意見等についての御説明をいただき、その後、意見交換いただければと思います。
 一点、お配りしております資料の中で資料3がございます。こちらは障害者権利委員会の障害者権利条約に関しての一般的意見第6号というものの訳でございますが、これは、あくまで仮訳・暫定版ということで、本日お配りしております。
 毎回同様ですが、委員の皆様のところには、関係法令等をまとめた赤のファイルをお配りしております。
 それでは、これ以降の報道機関の写真撮影は御遠慮いただき、カメラも御退出をお願いいたします。

○石川委員長 ありがとうございます。
 それでは、議題に入ります。
 まず、事務局より、障害者に対する不当な差別的取扱いに関する主な相談事例等について説明をお願いいたします。

○寺本参事官 それでは、資料1をごらんください。
 こちら、内閣府で各地方公共団体から、あるいは国の各省庁から集めた障害者に対する不当な差別的取扱いに関する相談事例ということで、相談があって解決に至ったもの、解決に至っていなくて依然進展が見られていないものについて、全部で43事例を掲載してお配りしております。
 いずれもほとんどのケースで、各地方公共団体の相談員、あるいは大学のケースでは大学の相談員がかかわったものがありますが、その相談員等が間に立って事業者と相談者との調整が行われて、一定の経過をたどっているものがほとんどです。
 全部はなかなか難しいので、幾つかのものにポイントを絞って御説明いたします。 まず、1番をごらんいただきますと、こちらは肢体不自由の女性の事例で、イベント参加のため、人工呼吸器付きのストレッチャーを利用した状態でバスを利用する旨をバス事業者に事前に申し出たところ、断られたということで、安全上の問題から乗車困難と判断した旨の当初の説明でありましたが、調整の上、乗車時の安全についての検証テストを実施して、結果的に乗車できるようになって、今後もそのバス事業者では、様々なストレッチャータイプを想定した対応をしていくということが進んでいる事例です。
 2番は、こちらもバスの事例ですが、発達障害の方で、御本人は過去10年以上にわたって一人でバスに乗車していたのですが、たまたまそのバスの乗車中に異性に対しての迷惑行為があったと。これは犯罪につながるようなものではなかったようですけれども、若干触れてしまったようなことがあって、バス事業者から保護者の同乗を求められ、一人でのバス乗車はお断りという扱いを受けた事例です。
 これに関して、関係機関、地方公共団体などが間に立って、本人は迷惑行為をスキンシップと捉えていた、あるいは他人との距離感をなかなかとれない障害だったことも想定されますが、ケース会議などを開催しまして、事業者に理解を求める、あるいは御本人にしっかりルールを教えるということで、バスの乗車訓練を支援事業所のスタッフの同乗のもと、一定期間行いまして、1カ月半後に一人で乗車できることになったということで、事業者にも理解をいただいて、従前どおり一人での乗車という形になったという事例です。
 3番ですが、ハイヤーの利用の拒否ということで、リフト付きワゴンサービスを利用したほうがいいということで、暗に断られたような事例ですが、これも調整の上、事業者の納得を得られたということです。
 4番では、以前、佐藤委員からも御紹介があったケースかもしれませんが、盲導犬利用者5人で飛行機を利用しようとしたところ、約款に抵触してできないと言われましたが、航空事業者でマニュアルの取扱いを改められ、乗れるようになったという事例です。
 5番では、エレベーターに乗ろうとしたところ、付き添いの方と一緒に乗ってくださいという表示があった。これに関しては、このビルの会社でほかに同様の表示がないかを調査して、こういった部分を撤去するなどの措置を講じたというものです。
 6番、肢体不自由の方が多目的トイレを利用する際、通常施錠されていて、その都度事務所に申し出て開錠するようになっているのを改めてほしいという相談について、常時開錠する取扱いに改められたというものです。
 7番は、知的障害の生徒さんが、特別支援学級に在籍しているということを理由にサッカー部の在籍を拒否された事例です。状況をたどってみると、実は部員は理解を示したのだけれども、校長先生の許可が得られていなかったということで、管理職の意識改善を図って在籍を認めるようにしたというものです。
 8番は、大学で介護の実習体験をする際に、本人の意向の確認が十分に無いまま、介護体験を免除していたということで、これは大学側に対話をして介護体験に参加できるようになったというもの。
 9番は発達障害の方のケースで、これも大学ですけれども、障害のある学生の研究室発達障害の特性、指導の困難さを背景に配属がなかなか決まらなかったところ、複数名の教員が数カ月のローテーションで研究指導をするようにしたということで、対応を図った事例です。
 10番では、精神障害の男性が大学のサークルに精神障害者手帳を見せたところ、部長から親を連れてくるように言われて、これは不適切な対応であったということで、謝罪をして対応されたという事例。
 12番ですが、聴覚障害の男性が医療機関の診療予約のために電話の代理サービスを利用したところ、本人確認ができないということを理由に予約を拒否されました。ファックスでもいいかと言ったところ、電話以外は不可と言われたということで、さらに診察時にも、医師から筆談対応はできないと断られたというものです。
 これについて医療機関側と調整を行って、ファックス対応あるいは電話代理サービスでの予約対応について、一定の対応がなされるようになったという事例です。
 盲ろうの方の事例が13番ですけれども、こちらも医療機関で診療予約を行うように求められ、メールでできないかと伝えたところ、メールでは対応していないと断られたことについて、これも医療機関との調整の結果、メール対応での受付をしてもらえるようになったというものです。
 14番は盲導犬の事例ですけれども、親族が入院する病院にお見舞いに来たところお断りされたということで、病院側の説明としては、右の3行目のところですけれども、例えば動物アレルギーや拒否反応の患者さんもいるということで、すぐには対応できないと一旦断られましたが、病院で検討してもらって、個室の病室については入室を可能とする、あるいはレントゲンの検査室や大部屋の病室についてはお断りせざるを得ないという形で取扱いが整理されたという事例です。
 15番は、知的障害の女性が療育手帳の判定の際に、乳幼児に接するかのような言葉で話しかけられたという事例。16番は、高次脳機能障害の男性が施設で子供をあやすかのような応対をされたという事例。いずれも改善が図られているというものです。
 17番は、盲導犬を連れてホテルの宿泊をしたいと予約を行ったところ、お断りをされたということで、改めてホテル側に身体障害者補助犬法の説明を行い、ホテル側は受け入れる旨の回答。宿泊施設関係団体への周知が足りなかった部分もあるので、改めてその周知を行ったという都道府県での対応です。
 18番では、聴覚障害の男性が金融機関に自分で出向くことができないので、日常生活自立支援事業の金銭管理の利用を地方公共団体に申し出たけれども、これはもともと判断能力に課題があるという方の制度ですので、そういうケースに当たらないということで利用をお断りされた。こういった対応について、金融機関が相談者の自宅まで出向いて、通帳の記帳や振り込み等の対応ができるようにしたということで、行政の制度上の制約を金融機関がカバーしたという事例です
 19番では、スーパーでレジの従業員が、本人でなくガイドヘルパーにお礼を言ったり釣り銭を渡したりするという、本人に向き合わない事例ということで、これもスーパーで従業員教育などの改善を図ったという事例です。
 20番は、発達障害のある男性が店内で手を打ち鳴らしたり、声を上げたりということがかなり長期間続いたということで、店側が警察に通報して、警察がそのお店への出入りをしないようにということを告げたというケースで、こちらについても警察官の対応に若干きめ細かさが足りなかったところがありますので、これを契機に、当該地方公共団体の交番担当の警察官全員を対象に、この合理的配慮に関しての研修や障害者差別解消法に関しての理解を求める対応をしたというものです。
 22番は、聴覚障害の男性のケースで、特定後写鏡、いわゆる特定免許という形で、ワイドミラーや補助ミラーがあれば免許がとれるという聴覚障害の方について、そういった方の教習を断る教習所があって、これも調整の結果、教習所で対応が図られたというケースです。
 少し飛びますけれども、25番のところ。てんかんのある方がスポーツクラブを利用しようとしたところ、スポーツクラブの規定に抵触するということで、これもスポーツクラブに法の趣旨を説明して、規定が見直されることになったケースです。
 このようなケースが一定の進展が見られたケースということで、一連記載をしております。
 続きまして、少し飛びますが、8ページ以降、解決に向けた進展が見られていないケースを幾つか挙げております。
 1つ目は、ハンドル型の電動車椅子を使用してバスに乗ろうとしたところ、乗車を拒否されて、こういった車椅子はなかなか固定できないということで乗車をお断りされたということで、当該バス事業者ではこれに対応できるバスの導入予定がないということで、進展が見られていないケースです。
 32番もバスでの事例で、日常的に車椅子対応のバスを利用していたのですが、バス停で待っていたところ、車椅子対応のバスが故障したということで、車椅子対応が難しいバスが来てしまった。運転手さんも別の方だったということで、ここで介助者と一緒でないと同乗できないと言われた。
 これは、もともとバスに乗る際には事前に連絡をして、バス事業者が運行規程の中で対応していた経緯というのもありまして、情報の行き違いでそのような事例が起きてしまったのですけれども、双方意思がかたくなになってしまいまして、本人はもうバスを利用しないという形になってしまっておりますし、バス事業者としては、対応できることはやっていたのにということで、これ以上の対応はできないという形で、現時点ではバスを利用せずに、この方はグループホームで生活されている、肢体不自由、知的障害、精神障害の重複の方なのですけれども、施設の車両で外出しているといったケースです。
 33番では、タクシーに乗ろうとした精神障害の方が、早く乗るようにとか、細かいお金はないのかといった不適切な発言をされたということで、事業者に調整をしているのですけれども、一般のタクシーは乗降時の介助はしないということで、まだ事業者の理解が十分得られていないという状況です。
 34番については、肢体不自由の生徒さんが特別支援学校から通常学級への転籍を希望したいというケースですが、教育委員会としては、本人の状況からして通常学級では困難ということで、現時点でも調整が続いているというものです。ただ、教育委員会が少しずつ前向きの方向で体制を整備しようとしているというものです。
 37番のケースでは、難病の方ですけれども、定期的に通院していた医療機関から入院や定期検査を拒否されるようになってしまった。医療機関側の説明が色々あるのですけれども、どの医療機関でも対応できる疾病ではないかという説明が一旦あったり、あるいはベッドの空きもないといった説明があったりして、相談者としては、申立てを含めて色々検討しているのですけれども、医療機関がなかなか前向きに対応してくれていないというケースです。
 38番、飲食店でのケースですけれども、肢体不自由の方が車椅子で飲食店を利用したところ、入店を断られているというケースです。理由としては、店内が狭く、段差もあって物理的に対応できないということで、なかなか改善に至っていないという事例です。
 40番は肢体不自由の女性の方で、これも飲食店のケースですが、車椅子が場所をとるなどの理由で入店を拒否されていて、お店側としては、商品へのクレームを結構おっしゃる方だということで、業務に支障があるので入店をお断りしているということで、それ以上の進展が得られていないというもの。
 41番も飲食店での肢体不自由の方のケースですけれども、段差を理由に入店を拒否されているというケースです。お店側の説明は、予約者に限定しているという説明があったり、介助者を同伴してほしいという案内をされたり、様々な御説明がなされていながら、なかなか前向きな対応が得られていないというケースです。
 42番は、町内会でのケースですけれども、肢体不自由の方が役員を中心としたグループから色々な嫌がらせを受けるようになって、結果として町内会にいづらくなっているという状況です。ただ、このケースでは、嫌がらせが悪化する恐れがあるので、匿名希望として表ざたにしてほしくないということなので、相談対応としては傾聴にとどめざるを得なくて、調整が前に進められていないというケースです。
 最後、43番では、障害のある教員が学級担任になることを切望しているけれども、なかなか実現しないというケースですが、教育委員会側の説明としましては、学級担任になるために資質向上のための校内研修の受講が必要だということで、それを求めているけれども、御本人はそれに従っていない。あるいは学級担任を務める場合の支援体制の構築がなかなか難しいということで、現時点では学級担任にできない状況だということで前に進んでいない。こういったケースがございました。 以上、色々なケースを御紹介させていただきました。
 事実関係につきましては、地方公共団体等から提出されたものをまとめておりまして、これ以上の詳細なところは、今、私どもで必ずしも細かく把握できているわけではございませんが、御質問いただいた範囲内ではお答えさせていただきますし、できればこれらにつきましては、追って御意見を中心にいただければと思います。資料1の説明は以上です。
 次に、資料2-1と資料2-2を簡単に御紹介させていただきます。
 資料2-1は、前回、石川委員長から御指摘があった件で、条例において合理的配慮を義務化している条例とそうでない条例、様々な条例がありますけれども、どのような趨勢になっているかというものです。
 年度ごとに、赤のグラフは、合理的配慮について法律と同じ努力義務として条例を定めているもの。青のグラフは、法律にさらに上乗せをする形で合理的配慮を義務化しているケースということで、法律が施行されているのが平成28年度ですので、平成28年度を境に見ていただきますと、平成27年度以前で42の条例が制定されている中で、青のケースは8事例です。つまり合理的配慮を義務化する条例を制定しているのが8の地方公共団体です。平成28年度と平成29年度のデータでは、31の地方公共団体が例を制定しておりますが、そのうち5の地方公共団体が義務化をしているというものです。
 あと、障害者差別解消法は平成25年6月に公布されて、3年の準備期間をもって平成28年度からの施行ですが、平成25年度の条例制定のケースをごらんいただきますと、6事例あります。法律の公布よりも先に条例を制定していると思われますけれども、6条例中4条例が合理的配慮を義務化した条例を制定している。そういう状況がございます。
 資料2-2は、以前、柘植委員から御質問いただきました。従前説明しました地方公共団体の施行状況の調査で、法律の施策の効果の測定に関する取組を行っている地方公共団体があるということで御紹介しており、その詳細についてという御質問でしたが、各地方公共団体で障害当事者向けの実態調査をしているケースを挙げました。
 主に2つの時点ですね。平成25年から平成27年ぐらいの時点と、平成28年以降の時点で、アンケート調査で、障害者差別解消法の施行などに伴って生活に変化があったか、あるいは障害者への差別を感じるか、嫌な思いをしたことがあるか、そういったものを聞いているものです。
 青のグラフが、そういう差別を感じないというケースや、あるいは良い方向の変化を感じるといったケース。つまり、青のグラフが上向きになっていますと、改善傾向が推測されます。
 赤のケースは、差別や嫌な思いを多く感じると答えたもので、これは下がっていればいい結果ということになりますので、青のグラフが上がっているか、赤のグラフが下がっているかで見ていただければと思います。
 これは2時点での調査が、調査数とか調査対象者も違いますので単純な比較はできないのですけれども、御参考ということで挙げました。
 最初の北海道のケースですと、赤も青も横ばいになっています。(2)の豊島区のケースでも、ほぼ横ばいです。
 以降の各地方公共団体のケースも横ばいのものが多いのですけれども、(4)の静岡県伊豆市、(5)の大阪府豊中市のように、青のグラフが比較的挙がっているというケースもございます。
 全体として良い傾向にあるものと悪い傾向にあるもの、余り変わらないものということでそれぞれあるのですけれども、こういった効果測定が各地方公共団体でなされている状況について、まとめさせていただきました。説明は以上でございます。

○石川委員長 とても分かりやすく丁寧な御説明をいただきました。ありがとうございました。
 個々の相談事例、解決に至った事例、解決に至らない事例、一つ一つについても興味がありますけれども、各委員から御意見・御質問等がございましたら挙手をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
 曽根専門委員、お願いします。

○曽根専門委員 曽根です。御説明ありがとうございました。
 1つ目は、法律の効果を実感したことについて述べさせていただきます。その理由は、1番目の相談事例なのですけれども、ストレッチャーで人工呼吸器つきの方が路線バスに乗るときに、安全ベルトの工夫をして乗車できるようになったという事例でした。
 私、実は法施行前に同じような体験をしたことがありまして、ストレッチャーで人工呼吸器の方の路線バスの乗車について、会社に交渉に行ったのですけれども、安全ベルトが通常の車椅子仕様になっていて、ストレッチャーでは安全が確認できないということで実現できなかったのですね。でも、法律が施行されて、こういった形で実現できたというのは、法律の効果を感じました。
 なぜこんなことをわざわざ申し上げるかといいますと、こういう国の会議で発言があったということになると波及効果があるかなと思いまして、一応申し上げさせていただきました。
 もう一点なのですけれども、マニュアルですとか規則の中に、差別的な要素ですとか合理的配慮の義務違反的な要素が入っている事例というのが、幾つかあったと思います。これは、そういった事例があった都度、そういったマニュアルや規則を備えている企業ですとか地方公共団体と調整をして解決していくということになりますと、ある意味モグラたたきみたいなことで、あちこちで同じような事例が発生して、その都度少しずつ直していくということになってしまうと思うのですけれども、これが規則やマニュアルですと、こういったことは障害者差別解消法の中で合理的配慮の義務違反になりますとか、あるいは不当な差別的対応に当たりますということで、例えば業界団体ですとか地方公共団体に周知をして、一斉に直していただくような措置がとれれば、要するに、後手に回るのでなく、むしろ予防的な対応といいますか、一つの事例でたくさんの今後起こるであろう差別的あるいは合理的配慮の不足というものを解決できるのではないかと思いまして、これを法律に書き込むのか、基本方針の中で解決できるのかというのは、技術的には分からないのですけれども、そういったことが実現できるといいなと感じました。これは意見です。以上です。

○石川委員長 ありがとうございました。
 それでは、森委員、お願いします。

○森委員 ありがとうございます。
 まず、資料1です。こちらに事例を色々挙げていただいていますけれども、なかなか難病の事例が上がってきていないということが非常に気になります。やはりまだ難病の患者さんが相談しにくい背景があるのではないかと思います。
 それと、こちらに一つ事例が挙がりました、9ページの37番、先ほど御説明のありました医療機関での課題ですけれども、私たち難病患者の治療については、専門医がいるところでないとなかなか十分な治療を受けられないといった事情もあります。そして、治療により状態が落ち着けばできるだけ近くの医院、診療所などでも診ていただきたいという願いもありまして、難病でも医療提供体制の構築を各都道府県において進められているところですけれども、私自身も近くの医院で、例えば風邪などの一般的な病気でかかったときに、ベースに難病がありますと、薬さえ出していただけなかったということも経験いたしました。
 そんなところで、医療提供体制の構築であるとか、医療機関、医療関係者が様々なこういった制度を御存じないということがありまして、それらが十分に理解されるともう少し対応が変わってくるのではないかと感じております。
 次に、資料2-2なのですけれども、これら良くなっているケース、また、余り変わっていない、また、なぜだか少し下がっているような事例がありますけれども、これら回答された方がどのような点から良い方向に向かっているのか、また、悪く感じておられるのかといったことが分かるような項目であるとか、自由記載があるのであれば、理由も教えていただきたいと思います。
 それから、障害種別によってこれらの結果の違いがあるのかどうかということも、分かるようでしたら教えていただきたいです。私の周辺では、まだ難病への理解というのが進んでおらず、まだまだ誤解や偏見があって生きづらく感じておられる方が多い状況ですので、これらの改善に向けて、ぜひ良い方向に行くような制度改正が望まれますので、お願いします。以上です。

○石川委員長 御質問がございましたので、事務局、御回答が可能であればお願いいたします。

○寺本参事官 ありがとうございます。
 効果の測定、当事者向けの調査で、どのような理由でいい方向になっていると感じるか、あるいはそうでないかということに関しては、今の時点で情報がございませんので、また各地方公共団体などに確認しまして、あるいは障害種別ごとにどうなっているかということも含めて、少し確認してみたいと思います。今日のところは失礼いたします。

○石川委員長 石野委員、どうぞ。

○石野委員 石野です。2つほど質問をさせていただきたいと思います。
 1つ目は、相談事例の件なのですが、43事例が載っております。そのうち知的障害者の事例は一つだけになっております。本当はもっとたくさんの事例があるのではないかと感じておりますが、知的障害者の方の相談については、少ないのか、あるいは出てきていないのか。そのあたりの実態について少しつかみにくいので、それも御教示いただきたいと思います。
 ここ政策委員会には、知的障害のある委員はここにいらっしゃいません。ですから、反映しづらい背景があるのではないか、という課題もあると思っております。
 2つ目ですが、資料2-2になります。
 3ページですが、大阪府豊中市、これはほかと比べていい傾向だと思いますが、もう少しわかる範囲で分析をしていただきたいと思っております。その辺、お分かりでしたら教えてください。以上です。

○石川委員長 ありがとうございました。
 2点質問がございましたので、よろしくお願いします。

○寺本参事官 石野委員からの御質問ですが、ありがとうございます。
 知的障害の事例という御質問かと思うのですが、知的障害に関しては比較的ございまして、7番、15番、32番、35番、4事例ほど挙げさせていただいております。
 また、豊中市の調査も、今、分析について情報を持ち合わせてございませんので、また改めて確認をさせていただきたいと思います。

○石川委員長 ありがとうございました。
 ほかに御質問・御意見はございますでしょうか。
 岡田委員、お願いします。

○岡田委員 精神障害者の全国組織みんなねっとの岡田と申します。
 2点ほど意見を述べさせていただきます。
 一つは、この事例から、個別対応で済ませていいものと、先ほど御意見があったかと思いますけれども、このことをもとにもっと広い範囲で、きちんとした根本的な対策が必要になってくる事例があるかなと思いますので、そのあたりをきちんと整理していく必要があるかなと思っております。
 例えば20番の発達障害の方の事例で、警察の方がかかわって、警察官全員を対象に研修会を実施したということがございますが、この問題はこの地域の警察官だけでいいのかということがあると思います。
 実は私どもの会に、オレオレ詐欺の研修に警察官の方に来ていただいたことがあって、たまたまその警察官の方の息子さんが精神疾患で入院中だということがありまして、同じ家族同士としての話が少しできたのですけれども、私たち家族にとって、今、残念なことに警察に協力してもらわなければいけない事態になることが大変多いわけですね。
 それで、警察官になる上で精神障害についての学びがあるのかということを聞いたら、一切ないという回答があったわけです。全く知識がない中で対応をせざるを得ない警察官の方たちも大変だろうし、もしかすると不条理な対応に陥ってしまう可能性もあるわけで、そのように個別対応で済んでよかったねという場合と、これをもとに全国的な課題として捉えて、根本的なところから見直していくべき課題を少し整理して見ていく必要があるなと思ったことが1点です。
 もう一点は、先ほどもありましたけれども、障害別あるいは男女別、年齢別に見ても、多い少ないの差があると感じております。声にならない声、届きにくい声をどのように拾い上げ、その問題を解決していったらいいのかというのが、大変大きな課題かなと考えております。
 実は私の長女は統合失調症で20年ほどが経過しておりますけれども、10年ほど前に結婚して子供を産むということに直面したときに、近所に大変評判のいい産婦人科がありましたのでそこに受診しましたら、そういう病気の方は受け入れられませんと、本当にけんもほろろに断られて、娘は、この病気の人は子供を産んではいけないのかと泣き崩れた経験があります。
 私はこういう活動をしておりましたので、娘の場合は、私のあらゆる人脈を使って、今、9歳の女の子の母親で大変幸せな生活を暮らしているのですけれども、私が受けた相談の中には、精神科の主治医に出産を反対され、母親はその主治医の判断を受けて、娘さんを説得して堕胎をさせた。それがきっかけで病状が悪化して離婚になり、現在も親子関係がうまくとれなくて困っているという相談が寄せられたり、あるいは出産とは直接関係ないのですけれども、18歳の娘さんが精神科に入院して、身体拘束、紙おむつをされて、しかも、そのおむつ交換を男性の看護師から受けたという相談も寄せられていますが、実名も病院名も教えていただけませんでした。
 こういうとても深刻な問題が出てきにくいという現状がある中で、どうしたらこういうことを解決できるのかということを、私も考えたいと思いますけれども、ぜひこの場で皆さんにも考えていただきたいということで、では、どうすればいいかということになかなか思い至らないのですけれども、意見を発表させていただきました。以上です。

○石川委員長 ありがとうございました。
 本日の後半でも、恣意的拘禁にかかわる人権侵害等について、少しこの会議で情報共有あるいは問題意識を共有したいと考えております。岡田委員、御意見ありがとうございました。引き続き重要なテーマですので、今、障害者差別解消法の見直しの話が中心的なテーマですけれども、この政策委員会が所掌している事柄というのはもっと広範囲にわたっておりますので、引き続き取り上げていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 玉木委員、お願いします。

○玉木委員 玉木です。ありがとうございます。
 今日、一つの意見と一つの質問をしたいと思っています。
 まず、事例の中で解決に至ったもの、解決に向けて進展が見られたものの対応とか経過等の中で気になる表現が幾つか出ていまして、例えば1番でいくと「事業者により試験的に乗車許可との回答」とか、7番の「校長の許可が得られなかったこと」とか、「許可」というのがあって、でも、障害者権利条約とかを色々見ていくと、「他の者との平等を基礎として」という文言があるのに、現実は解決していく方向の中で許可されないとできない存在なのかということで、本当にこれで障害者差別解消法が有効に働いているのだろうかというところでの疑問が一つ出てきたということ。
 それから、9番に至っては、本来は大学院か何かで、特定の研究室で研究を深めないと修了できないことが、実は研究室に所属せず、ローテーションでごまかしごまかし課程を終えたということが、果たして課程を終えたと言い切れるのかということでいくと、まだ法のもとの平等という前に、とりあえず仕方がないから入れてやろうかとか、とりあえずややこしいからこの形でかわしてやろうかみたいなことが見え隠れしているのが、ここを見ただけで明白と思っているので、今回の障害者差別解消法の改正については、少し踏み込んだ形で抜本的に改正していかないといけないかなと思ったというのが一つの意見です。
 質問については、18番の金融機関のことについて、実は私、仕事で日常生活自立支援事業の担当係をやっていまして、やはり判断能力はあるけれども、金融機関にアプローチできないとか、それこそいまだに本人の直筆でないと出金できないとか、そういう事情がいっぱいあって、例えば金融機関でできますよという事例があったら、これをベースに、今までは色々な金融機関にアプローチをかけていきたいと思っているのですけれども、ここを明確にしていただいて、実は金融機関の出張サービスが可能だということを、今回この事例をきっかけにオープンにしていいのかどうなのか。
 もしくはここで書かれているのは、あくまでも一方的に聞きとった事例なので、これはまだ精査していないから、この会議でとめ置いてほしいと言われるのか。そこだけ確認させていただきたいと思います。以上です。

○石川委員長 ごもっともな御指摘ありがとうございました。それと質問が1点ございましたので、事務局、御回答をお願いできればと思います。

○寺本参事官 18番の金融機関の自宅まで出向いて対応した事例について、御質問の趣旨としては、一般的に金融機関がこういった対応が可能、あるいは対応していただくようなサービスかどうかという御趣旨かと思うのですけれども、私ども内閣府において、このあたりを踏み込んで答弁できる状況にないということで、今日のところは具体的な回答については申しわけございませんが、まだ全金融機関で全てということにはならないような気もいたしますけれども、合理的配慮については、事例の積み重ねによって、それが波及効果ということもあろうかと思いますので、今日そういった視点で捉えていただくということはいいのかなと思います。ありがとうございます。
 それと、最初、曽根専門委員から1番のケースについて御意見をいただきました。ありがとうございました。
 このバス事業者においては色々なケースを想定して、これからも調整をしていくと聞いております。

○石川委員長 ありがとうございました。ほかに御意見・御質問はございますか。
 大塚委員、お願いします。

○大塚委員 日本発達障害支援ネットワークの大塚です。
 玉木委員の御発言の中で、障害者差別解消法ができて、様々な形での取組、差別の解消あるいは合理的配慮の取組ができているということは進んでいて、それぞれの場面における個別的なところもあるし、広く制度的なところもあって色々な試みがなされている。
 その際、こういう事例を通して、色々な表現というか、言葉というか、言語が使われるわけですけれども、そういうところにある背景とかも含めて分析しながら、どのように解決していくかということが非常に大切で、それが大きな力になっていくと思っております。
 例えば20番の発達障害の方なのですけれども、「発達障害のある本人は仕事帰りに一人で買い物をする際、しばらく店内に立ち、手を打ち鳴らしたり声を上げたりする癖」があると。「癖」という言葉で何となく済むけれども、本当に癖なのかどうかということをすると、本人の立場から考えたら少し違うようなこともして、こういう言語にまつわる色々な意味合いというのは、普通には使われているけれども、色々な解釈もできるということで、こういうことを少し分析しながら、構造的な差別であるとか合理的配慮ということも含めて検討をしていくのも一つの方法かなと思っています。以上です。

○石川委員長 御指摘、そのとおりだと思います。非常に貴重なデータを収集してきておられますので、本日の資料報告は、中には合理的配慮の提供・不提供にかかわるものも一部含まれているかと思いますけれども、主として不当な差別的取扱いに関するものでした。合理的配慮の提供・不提供をめぐっての紛争解決に至った事例であるとか、至り得なかった事例であるとか、分析も含めてこういうデータは非常に貴重だと思います。
 関川専門委員、お願いします。

○関川専門委員 事務局から、差別が疑われる相談事例を整理されて説明していただきましたが、これは、障害者差別解消法第12条、第14条の仕組みが機能しているか、していないかを考える上で重要な資料であると思っています。
 相談事例は、解決に至ったもの、至らないものがありますが、これまでの規定にもとづく取扱いであったり、慣行上の取扱いによる差別的取扱い事例が紹介されています。事例のなかには、平等取扱いのためには、従来の取扱いについての変更・調整が必要になるもの、通常の対応とは異なる対応を求めているものが幾つか含まれています。幾つかの事例では、現場担当者が、従来の取扱い方針にしたがい、規定上対応できないとお断りして、差別ではないかと、相談・申立に至っています。興味深いのは、相談をうけて相談員が関与・調整しますと、担当者だけでなくて、本部職員であったり、会社の代表者と話し合いがもたれることがあり、こうした調整によって、会社としての方針が変わるとか、これまでの規定自体が変更・修正されるということが幾つか事例として見られています。
 今回取り上げたのは、差別的取扱いが疑われる事例ですが、法形式は第8条と第1項「差別的取扱いの禁止」と第2項「合理的配慮の提供に努めなければならない」では違いますけれども、この法の趣旨や、差別的取扱いを禁止することの意味や合理的配慮が求められる意味を正しく理解していただくことによって、差別の解消のために、企業の経営の中でも変更可能とされるものは、数多くあるのだなという印象を受けたところでございます。
 その意味では、法施行から3年が経過しましたが、差別解消法の運用を通じ、平等を基礎とする参加・利用の機会が保障されるような、法律に期待される本来的な機能が認められるものと評価できると思います。
 解決に至ったもの、至らないものも含めて、なぜこうした差別的取扱いや、合理的配慮の不提供が起こるのかと考えた場合には、この相談事例の中で幾つか類型化できるようにも思います。
 一つは、やはり法律自体を十分理解していない、あるいは差別的取扱いや、合理的配慮というものを十分理解していない、誤解があるというケースが幾つか見られます。
 2つ目は、安全を理由にサービス利用の不提供があったり、参加の拒否があったりしておりますけれども、調整によって変更・改善されたものとされないものがあって、この事例を見る限りでは、具体の危険があるものについては、事業者は規定や対応をなかなか変更しないという傾向があるのかなと思います。
 相談員も、事業者側から具体的な事故の危険等を懸念する意見があった場合には、それでも参加を認めてくれというのはなかなか言えないのではないかと思っています。
 三つ目は、過重な負担との関係で、経済的支出を理由とする不提供事案があると思いますが、これは今回紹介されておりません。これが少し意外でございました。相談員といたしましても、経済的な負担があり、それをあえて負担してでも合理的配慮を提供してくれというのは、なかなか言いづらい部分もあると思っています。以上です。

○石川委員長 ありがとうございました。
 事務局にお尋ねですけれども、今日は不当な差別的取扱いに関するデータ整理ということで、中には、今、関川専門委員もおっしゃったように、合理的配慮の提供・不提供にかかわる例も一定程度含まれておりましたけれども、合理的配慮の提供・不提供にかかわるデータ整理というのもなされているかと思います。これについては、今後、事務局として御報告の御予定があるかどうかについて、教えていただけますでしょうか。

○寺本参事官 今回は、差別が疑われる事例ということを中心にまとめました。
 合理的配慮の提供に関しては、申し出があって、調整の結果、様々な提供がなされているという事例を合理的配慮の事例集として、従前からかなりまとめてきている経過もございましたので、逆に言うと、もう事例は集積していると思っています。
 これまで、差別を受けて、それを改善したというのが事例としてはなかなかなかったので、今回お示しをさせていただきました。
 今回の事例の中で、結果として改善する方向なり対応する方向なりということで、一連の対応が合理的配慮をもたらすという部分があろうかと思いますので、合理的配慮の求めに対しての事例は、これまでの事例集において対応している部分を、また必要に応じてこの場でも御紹介させていただければと思います。

○石川委員長 ありがとうございました。
 繰り返し申し上げているのですけれども、法の見直しの検討と法の運用の見直しの検討、両方が必要で、順番としては法の見直しの検討をまずやって、運用の見直しの検討をやって、それらを整理して、障害者政策委員会としての意見とするのがよいのではないかと考えていまして、切り分けが難しい部分は幾分あるかもしれませんけれども、恐らくそれは可能であろうと思っていますので、今、言わば同時着工してやっている状態なのですけれども、次第にまとめていく段階で法の見直しの議論、法の運用の見直しの議論というようにして分けて整理をしていく。そのプロセスの中で、また必要に応じて追加的な御報告をいただきたいと思います。
 ほかに御意見・御質問はございますでしょうか。北岡委員、どうぞ。

○北岡委員 今、石川委員長がおっしゃった障害者差別解消法の見直しの検討と運用の見直しの検討という点なのですけれども、どういうスケジュール感で、どういう議論の材料が出て議論されていくのかということをどこかで、事務局でお示しいただくというほうがいいのかなと思っています。
 というのは、今日のこういう事例は、これからもこういう差別的取扱いがあるのかということを知っていくということとあわせて、先ほど私が申し上げたロードマップをそろそろしっかりつくっていただいたほうがいいのかなと思っています。
 また、今日出された相談事例は、全部差別的取扱いであると疑われるものであるということで、先ほど事務局から御説明があったかと思うのですが、例えば15番の事例で、18歳にもかかわらず医師から赤ちゃんのような言葉で扱われたということも、差別的取扱いであると。言わば不快なことと差別であるということ、その差別の定義みたいな話が曖昧な中で色々な事例が紹介されてくると、私自身も整理できないところがあります。
 例えば、とある障害者の施設では、障害者を「ちゃん」と呼んではいけないという話なども議論されているようで、「さん」と呼びましょうみたいな話なのですが、例えば私は、今日ここにいらっしゃる尾上アドバイザーには、よく「尾上ちゃん」と言うのですけれども、これは差別的取扱いであるということが疑われるのだろうかと思ったり、少しつまらない話かもしれませんけれども、差別とはどういうことを指すのかということなどもあわせて、そろそろ法律の見直しのロードマップをつくっていっていただきたい。
 場合によっては、諸外国のこういう法律との比較などをやっていく作業も必要になるのではないのかと考えます。どうぞよろしくお願いします。

○石川委員長 事務局、ロードマップについて、おおよその目途をつけていらっしゃると思いますけれども、今日おおよその感触、感じ、見通しについて御説明が可能であればお願いしたいと思いますし、少し時期尚早ということであれば次回以降ということでも結構ですけれども、どうでしょうか。

○寺本参事官 これからの進め方にかかわる部分であろうかと思います。事実上、今年の4月、障害者差別の解消に関する地方公共団体への調査も御説明しながら審議を始めさせていただいておりまして、その際にも申し上げた、あるいは資料でお示ししたのは、おおむね1年前後をかけて、施行状況、実際の状況ということを踏まえて、どこかの時期で論点を整理する、あるいは関係者にさらに問題意識などをお伺いするということを含めて、一定の時期に委員会としての御意見を取りまとめていただくということを、念頭に置いて御審議に入らせていただいていいますので、時期に関しては、当初想定しておりましたのは、1年前後をかけて議論をおまとめいただくということでお願いしておりますので、来年のしかるべき時期になろうかと思います。
 あとは、今後の具体的なプロセスなど、何回か様々御議論いただいて、大変色々な御意見もいただいておりますので、そこから主な御意見を整理させていただいて、論点の整理につなげていける方向で、事務局としては順次整理を進めたいと思っております。

○石川委員長 ありがとうございました。
 次、休憩後の話にもかかわってきますけれども、国連の障害者権利委員会による日本の審査は、まだ正式には確定していないのですけれども、来年であろうということですので、恐らく審査の前に見直しの作業がこの障害者政策委員会レベルでは終わっているといいなと誰しも思っているところだと思いますので、そういう時間感覚でやっていきたい。
 拙速はいけないが、時間をかければ幾らでも時間がかけられる話でもあるので、一定の時間の中で、この委員会としての作業としては、一定水準の作業取りまとめをしたいと思っております。
 それでは、ここで15分間休憩を入れまして、2時55分再開ということでお願いします。

(休憩)

○石川委員長 それでは、再開いたします。
 最初に、まず私から、障害者権利条約の第5条について、障害者権利委員会が採択して公表しています一般的意見第6号というものがありまして、これを仮訳・暫定訳という形ではありますけれども、かなり丁寧な翻訳作業を事務局に行っていただきまして、私もポイントポイントはチェックさせていただいておりますけれども、少なくとも深刻な誤訳はないと思いますので、これに基づいて、一般的意見において障害者権利委員会が表明している条文解釈に基づいて障害者差別解消法を見ると、誰が作業をしてもこういう課題が浮かび上がってくるということをお話ししたいと思います。
 まず、お配りした資料に沿って説明させていただきますけれども、条約における差別概念についてですが、直接差別と合理的配慮の不提供あるいは拒否でも結構なのですが、それとともに、先ほど北岡委員などからも少しお話がありましたけれども、間接差別、ハラスメント、交差差別、複合差別及び関連差別も含まれる旨、一般的意見に言及がございます。
 この中の合理的配慮の拒否あるいは不提供に関しましては、さらに一般的意見の中で、民間事業者、民間部門にもそれは適用される旨言及があります。
 次に、複合差別と交差差別という2つの概念についての説明がありまして、これは読んでも難解なのですけれども、それを一応私なりの理解を申し上げたいと思います。
 複合差別、複合的な差別というのは、複数の差別をこうむるような属性、カテゴリーを引き受けている人々。例えば女性障害者というのを念頭に置いていただければと思います。その場合に、その2つの差別の効果が重複して、あるいはその程度が強化されて差別をこうむる場合、それを複合的差別と呼ぶ。足し算の場合もあるし、掛け算の場合もあるよと書いてあります。
 一方、交差差別というのは、言わば交差点の交差ですね。Intersectional discriminationという言葉を使っていまして、これはAという条件とBという条件が両方あったときにのみ生じるような差別のことを交差差別と呼ぶのだと、一般的意見ではそのように言及されています。
 どういうときにあるのかというと、そんなにはないと思うのですけれども、例えばある国で女性の障害者だけが出生登録されないという事例が報告されました。健常の女児は出生登録される。障害のある男児も出生登録されるのだけれども、障害のある女児だけ出生登録されないというケースは、交差的差別と言えるかもしれない。
 これを独立して、複合差別と交差差別を分けて、概念上論理的には分けられるけれども、実質的にどれぐらい意味を持つかというのは議論の分かれるところで、特に我が国においてどうかというのは、また考える必要があると思いますけれども、差し当たりは、一般的意見から見ると、複合差別及び交差差別についての言及が差別解消法には欠けているという点だけ指摘したいと思います。
 関連差別についても含む旨言及がありますが、この場合の「関連」というのは、障害者の家族、障害者と至近距離で関係のある人に対して、あるいはそういう人々がこうむる差別のことを関連差別と呼んでいます。これについても一般的意見では、差別解消法が対象とすべき人々であるとしているということです。これが大きな1点目です。
 2点目、条約における障害概念ですけれども、差別解消法制には、過去、現在、未来及び推定上の、あるいは憶測された障害も包含する必要がある旨言及があります。
 例えば精神病の病歴のある人であるとか、元ハンセン病患者で、今は治癒しているという人であるとか、発症していない難病の素因を有する人、発達障害とラベリングされている人、こういった人々がこうむる差別についても対象とすべきだと言及しています。
 3点目、手続的配慮について、これと合理的配慮を混同してはならないという言及があります。
 手続的配慮というのは、障害者権利条約の第13条の中でのみ使われていまして、司法へのアクセスにおいての配慮というのは、過度な負担によって免責されないようなものとして提供されなければならない。これを手続的配慮、手続的なアコモデーションと呼んでいて、これは合理的配慮とは違う。過度な負担ということによって免責されないと障害者権利委員会は明確に述べています。
 4点目、救済制度についてなのですけれども、これも見なれない概念が使われております。差別が構造的あるいは体系的、英語はシステマティックなのですけれども、体系的な性質を帯びている場合は、民事的あるいは行政的、刑事訴訟法的救済による個人への保証だけでは不十分で、社会のあり方、英語ではアプローチという言葉が使われていますので邦訳もアプローチになっていますけれども、社会のあり方とか考え方、そういったものを変えていくには、「将来志向非金銭的救済」通称FNRを導入する必要がある旨言及があります。
 これについては、最後に補足資料を2ページ目に用意したので説明しますが、先に5点目に行きます。
 統計です。データを収集及び分析し、それを障害及び交差的な分類に基づいて分解する必要がある旨言及と、難解な表現になっているので、私なりに再翻訳しますと、障害の有無や種別、性別、年齢等の属性に分けてデータを比較して、どこにより大きな不平等だとか、格差だとか、課題とかがあるのかを発見して、施策に生かしていけるような法制度のつくりにすることを求めていると思います。日本語では非集計化とも呼ばれているのですが、まとめ上げてしまうと、見えなくなることを細かく分けることで、先ほども、例えば知的障害の場合はどうかとか、難病の場合はどうかとか、細かく分けて幾つかの条件に分解して、Aという条件とBという条件とCという条件に当てはまる場合はどうというようにして細かく分けていくことによって、見える化する作業を障害統計によって行っていくということを求めていると思います。
 「将来志向非金銭的救済」につきまして、若干補足説明をさせていただきます。
 まず、「1.定義」ですが、これは一般的意見の中にこういう説明があるわけではなくて、ただ単に将来志向非金銭的救済について、一つのパラグラフの中で強調されていたのですけれども、これだけでは少しわかりづらいので補足資料をつけました。
 差別の構造的要因を克服するための金銭によらない体系的あるいは実質的な救済という意味で、FNRに含まれる具体的な救済策としては、例えば日本では雇用促進法にかかわることになりますけれども、雇用管理規則の改定、それから、個別組織におけるアクセシビリティの監査、3つ目に、差別廃止計画の採択。
 アメリカで黒人の公民権運動が1950年代から1960年代にありまして、その後、アファーマティブ・アクションという政策がとられまして、やがてそれは人種間の黒人枠みたいなもの、割当制度みたいなものに若干矮小化されていった経緯がありますけれども、もともとの意味は、差別廃止計画をそれぞれがつくっていくということを求める政策で、アファーマティブ・アクションも、一種の将来志向型の非金銭的救済と言えるかもしれない。女性の社会における平等参加を促進していく施策、アクションプログラムもこういったものかと思います。
 次に、公共調達における入札手続への参加禁止措置。こういったペナルティーを用意することによって、将来にわたっての問題解決を民間事業者に求める。こういったものが含まれているとされています。
 3つ目の特徴ですけれども、従来の「過去志向/後ろ向き」な救済に対して位置付けられるもので、差別による波及効果に対処することと、コミットメントを示すということが一つあります。さらなる差別の予防のための環境を創出することに主眼があると言うこともできると思います。あるいは懲戒的なアプローチとともに奨励的なアプローチも入れていく。両方を含めていこうとする試みも含んでいます。
 最後に、諸外国における導入状況なのですけれども、欧州諸国を中心に多数採用されておりまして、イギリス、アイルランド、ポルトガル等となっています。
 もともとこのFNRというのは、国際貿易の分野で開発されてきて、やがて人権法の分野に適用されてきたという経緯がございます。私からの報告は以上です。
 この後、外務省から1点御報告をいただいて、その後にまとめて皆様の御意見や御質問をお受けしたいと思います。この後、せっかく国際人権のメカニズムについて少しお話をさせていただいたので、人権条約体ごとに持っている審査機能、障害者権利条約で言えば障害者権利委員会というのがそれに当たりますけれども、それとは別に、人権理事会のもとにUPR(Universal Periodic Review:人権理事会の普遍的・定期的レビュー)というメカニズムがあったり、特別手続というメカニズムがあったりします。
 その特別手続の中に、恣意的拘禁作業部会というのがありまして、この作業部会は一種の個人通報の機能を担っていまして、日本からも、あるいはほかの国からも多くの通報があります。全てを受理するわけではありませんけれども、慎重に吟味した上で調査を行って、意見を出すということをしています。
 障害者政策委員会にかかわりのある自由の剥奪というのは、言うまでもなく精神障害者がこうむる可能性のある自由の剥奪、拘禁で、それが恣意的拘禁に当たるのかどうか。つまり、障害者権利条約で言うところの第14条に違反するような拘禁ということがある場合には、やはり当委員会としては注意を向けざるを得ないということがありまして、2件ほどそうした意見が出ておりますので、外務省の人権人道課よりその件につきまして御報告をいただきたいと思います。
 よろしくお願いいたします。

○外務省(総合外交政策局人権人道課:杉浦課長) 外務省の杉浦でございます。今、石川委員長からお話しいただきました、国際連合の人権理事会のもとで設立されている恣意的拘禁作業部会について、関連する部分、どういったものかということを御説明させていただきます。
 まず、恣意的拘禁作業部会というものは、1991年に、今は人権理事会という形になっていますが、その前身でございます国連人権委員会というものの決議で設立されたものでございまして、特別手続、スペシャルプロシージャーズという言い方をしていますが、そういったものの一つでございます。
 現在、2016年に人権理事会決議で、これは何年間という期間が決められて延長していく形になっていますので、2019年まで3年間、本年の秋まで延長されて作業をしているということになります。
 内容としましては、恣意的または国際基準に適合していない拘禁事例を調査するということで、5人の委員で構成されていまして、年に3回会合を開催しまして、調査の結果を人権理事会に報告するという仕組みでございます。特別手続というものは、こういった形で人権理事会に任命されるという形で作業をするものとなっております。
 人権理事会で、その任命された特別報告者であるとか、独立専門家であるとか、代表、作業部会等色々な仕組みがございまして、今のような形で調査を行って、勧告を行うという制度でございます。
 そういった調査以外に加盟国を訪問するという手続もございまして、これは国単位での人権状況を分析するということで、加盟国の招待に基づいて特別手続が訪問するという仕組みがございます。
 この訪問を国について行った場合には、その国の人権状況に関する調査結果、勧告について、理事会に対し報告書を出すという仕組みになっております。
 石川委員長からお話のありました個人の通報ないしは情報提供ということでございますが、特定の人権侵害についての申立てを受けて、対象国の政府に情報提供要請または緊急アピールというものを出しまして、情報提供あるいは行動を求めるということになっております。  これに対して、要請と政府からの回答については、人権理事会に報告されまして、人権高等弁務官事務所のホームページで公開されるという仕組みになっております。
 恣意的拘禁作業部会は名前のとおりでございますので、特定事案がこういった形でもたらされた場合には、それが恣意的拘禁に当たるかどうかという意見を採択し、それを公表するということになります。
 一般に、特別報告者、こういった作業部会といった特別手続の位置づけですけれども、特定の国の状況や特定の人権に関するテーマについて、調査、報告を行うということで、独立の専門家部会という整理になっておりまして、その見解は、各委員の出身国の政府であるとか、ないしは国連やその機関である人権理事会の立場を代表するということではないということになっておりまして、また、法的な効果というものもない。独立のそういう意見を調査して出す仕組みということでございます。
 恣意的拘禁に関連して、この作業部会から、保護、入院のケースについて、日本に対して情報提供を求められましたので、それについて政府として回答いたしましたけれども、いずれのケースにつきましても国内法に基づいて適切に行われているということで、政府としては恣意的拘禁に該当する行為ではないと考えていますということを回答いたしました。
 一つ難しい点がございますのは、国連のこの仕組みは、日本の個人情報保護等の仕組みと違って、個人情報の保護についての約束が得られないところがありまして、我々はそのあたりもありますので、政府としては可能な範囲でお答えしている。先ほど申し上げましたように政府の回答も公開されてしまいますので、そこに何を載せるのかということについても、そういった配慮が必要だったということは申し添えたいと思っております。
 以上でございます。

○石川委員長 ありがとうございました。
 ちなみに、これは保護入院でなくて措置入院ですね。

○外務省(総合外交政策局人権人道課:杉浦課長) 入院の部分はそうなのですけれども、保護という警察に関連する部分も含まれた情報提供要請でしたので、そういう意味で保護と入院という意味で申し上げました。

○石川委員長 今回折しも法の見直しの話と、法の運用の見直しの話というのを障害者差別解消法について行っているわけですけれども、精神保健福祉法の法が権利条約から見てどうなのかという評価の問題と、精神保健福祉法に基づく運用が果たしてどうなのかという課題というのは、当委員会としても、すぐには手がつけられないかもしれませんけれども、大きな課題であると考えておりますので、委員と共有したいということで、今日御報告をしていただきました。
 直接的には今日のメーンの主題でないので、余り多くの時間はとれないかもしれませんけれども、厚生労働省も御担当からの回答も可能かと思いますので、若干であれば質疑応答が可能ではないかと思っております。
 この後は、先ほどの一般的意見に基づく障害者差別解消法の課題についての論点整理の最初の出発点になると幸いなのですが、お話をさせていただいたので、そのことと今の恣意的拘禁作業部会の件も含めて、御質問あるいは御意見のある委員は挙手をお願いしたいと思います。

○三浦委員長代理 それでは、よろしいですか。

○石川委員長 どうぞ。

○三浦委員長代理 皆様の質問が上がる前に1点御質問をさせてください。全国身体障害者施設協議会の三浦と申します。石川委員長のスピーチも含めてでよろしいですか。

○石川委員長 もちろん。

○三浦委員長代理 障害者権利条約における差別概念の中で、間接差別、ハラスメント、交差差別、複合差別、関連差別について、大変貴重なところを御報告いただき、ありがとうございました。
 直接差別と合理的配慮というものは施行から3年目で、ある程度日本国内の中に入ってきた概念だと思うのですけれども、大変大切な間接差別が規定もありませんし、まだ何も知られていないという感じがするのですけれども、例えばその間接差別概念を障害者差別解消法の見直しに当たって位置付けて、また、ハラスメント、複合差別等々も説明をつけるということは、今後、法改正の方向性としては可能であるか、可能性はあるかということをお尋ねしたいです。

○石川委員長 事務局に御質問ということで、可能性はあるか。可能に決まっていますね。ですけれども、可能であるからすぐに実現できるかというのはまた別の話なので。

○寺本参事官 間接差別ということに関しては、例えばこれは障害者差別解消法ではないですけれども、雇用の分野において、自立出勤を前提として採用基準に盛り込むことが事実上障害者の採用に当たっての大きなハードルになっているということで、問題視されたケース、地方公共団体が障害者雇用に当たってそういう条件を付けることに関しては、不適切であるということが議論された経緯もあろうかと思います。
 ですので、間接的な差別というものが、今、全く法的な概念として念頭に置かれていないということでも必ずしもないと思いますけれども、直接的に障害を理由とした差別と文言としては出てこなくても、それが差別に該当するということを明確化していくやり方については、法律的な手当ということによるか、あるいは差別ということを法律で細かく色々なことを書き込むというのは、法規定上の論点とか限界もあろうかと思いますので、様々な対応方法があると思います。御指摘を踏まえた一定の対応は、可能性としては十分あるのではないか。
 すぐ法改正につながるかどうかはともかく、こういう問題提起は受けとめていく必要があるのと思います。

○石川委員長 ありがとうございます。
 私も一点補足させていただくとすると、障害者雇用促進法の差別禁止指針では、順番は忘れましたけれども、補助者、補助犬、補助機器の利用の制限を含めて直接差別という考え方を指針としては示していて、これは一つの工夫だったと思うのです。
 ですから、障害者差別解消法の見直しのときに、基本方針でどう書くか。今、寺本参事官がおっしゃったことなのですけれども、基本方針で書くというやり方ももちろんあるし、障害者差別解消法の条文の中で、障害者権利条約に合わせて「あらゆる形態の差別」と書いて、基本方針の中で、それはこういう意味なのだという政府として、内閣としての考え方を明示的に示す。
 色々なやり方があろうかと思うのですけれども、それはこの委員会の範囲を超えてしまうので、論点整理としては、直接差別、間接差別、複合的差別、交差差別、関連差別といったものを含む障害者差別解消法であることが望ましい、あるべきであるという論点整理なのではないかと思っております。

○三浦委員長代理 ありがとうございます。

○石川委員長 ありがとうございます。ほかに御意見・御質問はございますでしょうか。平川則男委員。

○平川(則)委員 身体拘束の関係でもいいですか。医療保護入院の関係で、身体拘束が年々増えているという現状にあるかと思います。別の審議会で厚生労働省に対して原因は何かと聞いたら、高齢者の認知症の方が増えているからという回答があったと思います。
 確かに法に基づいて運用されているということになるかと思いますけれども、その運用がどうなのかということや、場合によっては医療保護入院してすぐに拘束という実態もあるのかもしれないし、原因がどうもよくわからないということもありますので、状況がわかりましたら教えていただければと思います。

○石川委員長 では、お願いします。

○厚生労働省(社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課:萩森課長補佐) 厚生労働省精神障害保健課の萩森と申します。
 今、御質問のございました身体的拘束のことですけれども、我々としても研究班の報告で、拘束している数が増えているということは認識しているのですけれども、申しわけございませんが、その原因についてまでは、報告の状況から把握できていないという状況でございまして、現在はお答えが難しいという状況になっております。以上です。

○石川委員長 どうぞ。

○平川(則)委員 今の回答に対して、確かに先ほどの政府の国内法に基づいてやっているので、恣意的拘禁ではないという考え方が公式見解になるのかもしれませんけれども、やはり石川委員長がおっしゃったように、運用がどのような状態になるのかということをしっかり分析した上で意思表明をしていくということが必要なのではないかと思いましたので、身体拘束の関係について意見として言わせていただきました。よろしくお願いいたします。

○石川委員長 ありがとうございます。
 精神保健福祉法でいうところの措置入院の要件というのは、まず、精神障害者であるということと、自傷他害の恐れがある、この2要件だと思うのですけれども、言いかえれば、精神障害という要件を満たしていなければ、自傷他害の恐れがあっても措置入院の対象にならないというのは、障害者権利条約から見たときに問題視されるということですね。
 では、精神障害があってもなくても、自傷他害の恐れがあれば、そこは障害による不平等はないということになるのですが、そちら方向に持っていってみんなが幸せかというと、そうは思えないではないですか。
 ということは、精神障害の人たちにとっても、自傷他害の恐れがあって精神障害があると措置入院ということになり、場合によっては何年間も出してもらえないということは、法に基づく運用なのだけれども、それでよいのかという課題が一つあるということと、措置入院が必要かどうかの判定が適切になされているのかどうかということ等々、課題があるのではないかと考えていますけれども、せっかく所管課が来ていらっしゃるので、もし、おっしゃりたいことというか、言っていただけることがあればお願いできればと思います。

○厚生労働省(社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課:萩森課長補佐) 厚生労働省でございます。今の御質問について、現時点ではお答えしづらい部分ではあるのですけれども、精神保健福祉法の運用としては、精神障害者の医療及び保護のための法律でございますので、精神保健福祉法に基づいた運用は適切に行われる必要があるという認識はあるのですけれども、今の御要望に対する直接的なお答えではないかもしれないのですが、そういう形で対応させていただきたいと思います。

○石川委員長 ありがとうございます。
 今日のところは課題というか、問題意識の共有ということと思いますけれども、委員で御発言はありますか。
 内布専門委員、お願いします。

○内布専門委員 内布です。
 私、精神障害者当事者でして、保護室、隔離室の経験もあるのですけれども、今、身体拘束を受けた仲間もいたりするので、お話をよく聞くのですね。自分は少し不当な扱いを受けたのではないかという話をされる方も中にはいらっしゃいますし、現状として実態を知っていただきたいというのが率直な意見です。以上です。

○石川委員長 ありがとうございます。
 また機会をとって内布専門委員にもプレゼンテーションしていただくとか、そういう機会をつくれたらいいなと思います。
 ほかにこの件についてございますか。
 玉木委員、どうぞ。

○玉木委員 玉木です。
 少し気になるのは、精神科病院に特化すると身体拘束ということが恣意的な拘禁になるかなとも思うのですけれども、実際問題、例えば一方で障害者虐待防止法から見たときでも、私が知っている範囲のことで、例えばグループホームに施錠がされているとか、通所施設であっても、日中飛び出しが危険だから玄関に施錠がされているとか、いわゆる利用者の安全確保という名目でいまだに施錠されていたり、近年いわゆる昔の座敷牢というのがちょこちょこ出てきていて、そこら辺のことは、実は今の障害者虐待防止法であったり、一連の障害者差別解消法に至っては余り問題視されていないと私は思っていて、そこら辺の問題も一回委員会の同じテーブルに上げて、安全という名のもとで拘禁されている状況について、やはり我々はもう一回きちんと検証していく必要があるのではないかと、今の意見とかを聞いていて少し思いました。以上です。

○石川委員長 ありがとうございます。
 多分、自由が奪われている状態のことを拘禁と呼び、身体の自由まで奪われている場合を身体拘束と呼ぶのではないかと思うのですね。
 もちろん両方問題なので、それが恣意的な場合あるいはそれを許容せざるを得ない条件というのは、非常に限定的な条件としてあり得るかもしれないけれども、最終手段ですね。
 最終手段を最初の手段として使われてしまうと非常に困るので、それについては障害者の人権について考えていく上で最も基本的な課題の一つですので、当委員会として今後取り上げていく必要があると思います。ほかにございますか。
 岡田委員、どうぞ。

○岡田委員 みんなねっとの岡田です。
 法律のもとにきちんと対応しているということなのですけれども、先ほど運用面でどうなのかという御意見が出ました。先日、うちの埼玉の家族会の理事会の中で出た話なのですけれども、息子さんが入院したときに拘束がなかなか外されない。いつまでこの状態が続くのかと質問したところ、人手が足りないのでなかなか外せませんという理由の説明があったということが一つありました。
 もう一つのことについては、家では暴れたりしたので、警察を呼んで入院に至った。でも、病院に着いたときには本人は落ちついていて、ちゃんと医者との対話もきちんとできていたのに、目の前で拘束された。母親は、なぜこの状態で拘束するのですかと聞いたら、「決まりですから」という説明だった。
 こういう実態があるわけなので、運用面での実態をどのように適正化していったらいいかというのは大変深い、そして重要な課題だなと実感しておりますので、ぜひこの委員会を通してそういうことが日本国内からなくなるような方策を、私自身も考えていきますけれども、ぜひ考えていただきたいと考えております。以上です。

○石川委員長 ありがとうございます。
 各委員の御協力、ぜひお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
 ほかに御意見・御質問はございますでしょうか。とりわけ障害者差別解消法の見直しに関していかがでしょうか。
 関川専門委員、どうぞ。

○関川専門委員 大阪府立大学の関川でございます。
 今日は条約について、平等及び無差別に関する一般的意見第6号を提出いただきまして、改めて感謝申し上げます。大変参考になりました。
 条約自身は、第5条に関しては非常に抽象的・一般的にしか表記されていませんが、こちらの一般的意見第6号を拝見しますと、非常に細かに考え方が整理されており、これに基づいて障害者差別解消法の改正課題を整理していくということが大切だと思っております。
 障害者差別解消法第14条は、相談及び紛争解決の体制を整備することを求めておりますけれども、具体の救済の内容であったり、この仕組み、手続については明記されておりません。今日の資料でもありましたとおり、一部地方公共団体においては、紛争の解決の調整の中で、結果として紛争の解決、差別の解消が実現されているといいえると思いますけれども、実効ある相談および紛争解決の仕組みの構築について、改めて第14条で具体にどう書くかという問題なのか、それとも指針を整備していくのか、あるいは先駆的な取組事例を各地方公共団体に周知して、その導入・普及を呼びかけていくのか、幾つか方法はあるかと思います。なかでも、石川委員長のお話を伺って、第14条のもとでも、適切な将来志向非金銭的救済の仕組を構築することができるというためには、何らかの整理が必要と考えました。
 実際の相談事例の解決を見ますと、調整やあっせんや調停の仕組みを活用することによって、「将来志向非金銭的救済」、つまり石川委員長の提出資料にあるような救済方法が部分的には図られている、あるいは図られる可能性があるものと考えられます。
 今日、問題となっている安全等利用諸規定の改定を約束していただくとか環境面のアクセスの改善を約束し、その後、チェックをするとか、あるいは差別廃止について全般的な方針の見直し、職員教育から、ハード面の改善を含む改善計画の策定を求めるとか、などが考えられます。 さらには、現在はその方法はとられておりませんけれども、公共調達であったり、国や自治体との公的取引であったり、補助金の対象、事業委託にあたっての競争入札における申請手続の参加を制限するということは、条例に定める等によって、第14条の範囲内の地方公共団体の裁量の中で可能なのではないか。ただ、国の方針として、こうした将来志向非金銭的救済の考えに立った第14条の見直しが必要だという方向性を出していただくと、恐らくその方向で条例等の見直しが進んでいくのではないかと考えております。
 石川委員長に改めてお聞きしたいのですけれども、この将来志向非金銭的救済を日本で実現するには、障害者差別解消法第14条の見直しという枠組みで対応可能なのでしょうか。

○石川委員長 ありがとうございます。
 まず、基本的な方法論について賛成いただいて、大変嬉しく思います。
 第14条の改正だけで実装できるかどうかはわかりません。これは法理論的な専門性がないと答えられない問です。それでもあえて私見を述べるなら、この法律のつくりが行政法、事業者法のつくりになっていて、行政指導に基づいて民間事業者の行動を方向づけるということを基本とする、民間事業者に対してのアプローチとしては、業法としてのアプローチになっているかと思います。
 では、行政指導というのは色々あると思うのですが、中には結果的に将来志向型の救済となるということはあり得る、それを事業者が合意するということはあり得るけれども、それを言わば基本とするというか、原則とするようなつくりでは行政指導というのは本来ないのではないか。
 つまり、目前の問題に対してそれを解決するということが優先的な課題であって、将来を見越したアクセシビリティを進めていくであるとか、環境整備を進めていくであるとか、事業者の基本的なあり方とか考え方に働きかけていくということまで、行政指導で行わなければならないとまではなっていないので、どこまで深掘りしていかないと実現できないのかについては、私としては残念ながら即答ができないという状況です。
 ですので、行政法や事業者法の専門家の助けが必要ということで、事務局、いかがでしょうか。

○寺本参事官 ありがとうございます。
 将来的な志向という視点からすると、石川委員長がおっしゃったような、現在の障害者差別解消法での紛争が起きたときの解決、行政からの指導や調停、勧告といった枠組みとは少し別に考える必要があるのではないかという印象はございますけれども、そもそも将来志向というのは、やはり理解を促進して、例えば事業者の従業員の間においても、障害の差別とか合理的配慮というのはそもそもどういうものなのかといったものもあわせて浸透していただくということをもって、対応を期待するという部分もあろうかと思いますので、そういう意味では、事業者の取組として、従業員に対して、あるいは社会の理解全体をという部分も側面としてはあるのではないかと思います。
 今のところでは、そういうお答えとさせていただきます。

○石川委員長 補足ですけれども、基本方針とか対応指針で、将来志向非金銭的救済について強調するというのは、ハードルが高いという気はしています。何せ導入実績が日本にはまだない。例えば女性の分野とかでこういうものがあると参考にできるのですが。ありますか。少し調べてみないといけないと思います。ああ、そういえば、一昨年の男女機会雇用均等法の改正で、女性の就業環境を害する行為の防止措置を講じる義務を事業主に課したのは、将来指向型の非金銭的救済といえるかもしれません。
 どなたか御意見はございますか。曽根専門委員、お願いします。

○曽根専門委員 曽根です。
 意見でなくて、石川委員長にお尋ねしたいのですけれども、例えば私が先ほど発言したような障害者差別解消法の趣旨に反するようなマニュアルですとか規則、そういったものが見つかった場合に、業界全体としてそのような規則やマニュアルを改正してもらうということは、今、話題になっている将来志向的な救済の一つと考えてよろしいのでしょうか。

○石川委員長 それを事業者あるいは業界に対して、今の障害者差別解消法のつくりのままでやろうとすると行政指導ということになると思いますし、対応指針の中でそのことをどのぐらい強調して書かれているものがあるかどうか、私、今すぐには即答できないのですけれども、ソフトロー的にやろうとしているので、これをやったらいいのではないかと合意されたものについては、やる気になればできるということだと思います。
 今、曽根委員がおっしゃったようなことはやったほうがいいとなって、やりましょうかということになれば、対応指針とかにきちんと書き込んでいって、さらに何か課題が発見されたときに、その機にその業界に対して働きかけていただくみたいなことは可能だと思うのですが、それが徹底できるかどうかというのはまた別問題で、また、全ての事業に対して主務大臣というものが存在しているのかどうかが非常に疑わしくて、つまり、事業者法というのは、やはり課題が見つかって立法というのがあるわけですから、いっぱい穴があいているであろうと。ですから、主務大臣なき事業というのはあるはずで、そういう場合には、今の障害者差別解消法のつくりだと対応する主務大臣がいない事業があると思うのですね。そういった問題もあると思います。
 例えば出版とか新聞というのは、行政指導になじみにくい。表現の自由とか思想に対する検閲みたいなことになってはいけないということもあって、事業者法で行政指導すべきでないとか、しづらい事業というのはあるはずですし、マンションのオーナーも事業を営んでいるわけですけれども、マンションオーナーが障害者との契約を拒んだとしても、それに対して行政指導をする、それを所管しているところはないのではないかと何度と思ったりするのです。
 曽根専門委員、その後、加野委員に少しお聞きしたい。

○曽根専門委員 ありがとうございます。国内法で対応が難しいのだなということがよくわかりまして、勉強になりました。
 私がお尋ねしたかったのは、先ほどの将来志向非金銭的救済という概念は、今、私が申し上げたようなことが含まれているかどうかということを教えていただけたらと思ったのです。

○石川委員長 石川です。当然含まれていると思います。

○曽根専門委員 ありがとうございました。

○石川委員長 マンションオーナーなどについて、加野委員、御専門の立場から御意見があったら教えていただきたいです。

○加野委員 加野です。
 マンションオーナーのことは分からないのですけれども、先ほど来、今、第14条の変更で、将来志向非金銭的救済ということをどのように実現できるのか、できないのかというお話になっていますけれども、先ほど委員長がおっしゃったように、現行法の行政法という枠組みではなかなか難しい部分があるというのは、私もそのように思っているのですが、一方で、障害者雇用促進法の紛争解決の方法としては、調停という形のことが法律上明記されているので、場合によっては、将来志向非金銭的救済としては十分でないと思うのですけれども、必ずしも事後的な金銭救済でなく、こういうことをしなさいとか、こういうことをしてはならないということを、先ほど関川委員がおっしゃったように、調停とか仲裁といった紛争解決手段では、割合金銭救済ではない形のことが、あくまで個別的な紛争対応ではございますけれども、可能かと思いますので、そういった紛争解決の手段をより第14条に詳しく書き込む形で、将来志向非金銭的救済につなげるということも一つの方法かと考えます。
 それがあくまで個人的な個別の紛争解決にしかならないといったときには、少し消費者団体訴訟的な考え方というか、団体訴訟は日本では消費者団体の法律がございますけれども、例えば障害のある方の障害者団体という形の調停の当事者になることを認めるとか、そういった方法であれば、あくまで対個人と事業者の間だけの紛争解決でない、ある一定の障害のある方に対しての差別的な事象とか合理的配慮の事象ということを多少は広く解決するということは、今の日本の法律の中の枠組みでも工夫次第では可能かなと。
 私の考えるところはまだその程度なのですけれども、十分なところかというと、一部ではあったとしても、少し近づけるということに関しての工夫は、法の見直しの中で可能ではないかと考えます。

○石川委員長 ありがとうございます。
 ほかに御意見のある委員、御質問のある委員はいらっしゃいますか。
 大塚委員。

○大塚委員 日本発達障害支援ネットワークの大塚と申します。
 平等及び無差別に関する一般的意見第6号を出していただいて、ありがとうございます。これを読んでということで、そうすると、私たちの国の現状における様々な差別というのは、非常にたくさんあるということが分かるのですけれども、そういうものに対して、先ほどの障害者に対する不当な差別的取扱いに関する相談事例と、一つ一つの事例について、本人の申立てや家族の申立てによって解決していく。一つの仕組みの中でこれを充実させるという方向性だと思うのですけれども、やはり申立てだけにおいては、なかなか解決しづらいとか、あるいは本人の状況によっては、なかなか困難だということもあって、そうすると、今の私たちの国の制度、施策の中において、一般的意見の中においては差別と指定されるものはある。
 これを解決していくために障害者差別解消法があるということであれば、今の差別を解消するための支援措置の相談、紛争解決や地域における連携とか啓発、これでは不十分だと。新たな仕組みづくりの中において、一般的意見が言うような差別に対してどのように取り組んでいくかということが、これからの本質的なことかなと思っているのですね。そういう仕組みづくりができるかどうか、そこまでやるのかどうかということ。そうすると、今の制度・施策におけることと一般意見との間の非常に大きな乖離をどのように調和していって、それに取り組まなければ、そもそも何のための差別解消法かということで、この辺の議論が必要かなと思います。以上です。

○石川委員長 御意見ありがとうございます。
 では、三浦委員長代理、お願いします。

○三浦委員長代理 この一般的意見第6号は、何か私たちに指針をいただいたように思います。仮訳をしていただいたことに感謝をしています。
 資料3の17ページになるのですけれども、上段で、「統計及び資料の収集に関する第31条」のところの71のパラグラフの真ん中あたりに、障害包容指標、障害インクルーシブ指標という意味かと思うのですけれども、これをSDGsのアジェンダと整合性のある方法で作成、利用されなければならないということが記載されていて、私たちが意見を言って、策定された期間中にあります障害者基本計画(第4次)の「おわりに」の部分でも、この指標をつくらなければならないということは、目標として既に記載されているのですけれども、こういうインクルーシブ指標というものがあると、色々な業界もしくは各省庁でも、目標に向かって取り組みやすい。それと現時点の状況を確認できるというものではないかと思うのですが、策定の見込みというものに関して、現時点も含めてお尋ねしたいと思います。
 もしくはこういうもので代替できるよというものも、あれば教えていただきたいと思います。

○石川委員長 まず、事務局にお願いできますか。

○寺本参事官 ここで「障害包容指標」と書かれているところの意味するところは、必ずしも十分な理解に至っていないのですけれども、障害者基本計画においても各分野にわたって数値目標をつくっております。
 社会参加あるいは、社会で活躍いただいていることをはかる指標が、この数値目標の中にあるとすれば、そういうものに該当し得るかと思いますし、例えばバリアフリー化の指標がこれに当たるかどうか分からないですが、今、障害者基本計画の数値目標は、一昨年、御議論いただいた中で非常に拡充していますので、その実施状況なども含めて、これからも御議論いただきたいと思いますし、今後もまたこういった指標が必要でないかという御意見も伺いつつ、取組を進めていくことが考えられると思います。

○石川委員長 71パラグラフの後半の中で、ここで主として言っているのは、障害についての分解可能性ということで、細かく分けてデータをとることによって課題が見えるようにするということで、障害という変数を入れないで幾らデータを整備していっても、障害については何もわからない。
 ですから、障害についても含めて、障害という変数を入れてデータをとって整理してくださいねという意味だと思います。

○三浦委員長代理 ありがとうございます。

○石川委員長 性別とか年齢とか、収入とか、職業とか、色々ありますね。様々な社会的変数の中に障害という変数、できれば障害の種別も入れて、データ整理をして統計データを整備することによって、障害のある人とない人でどのような格差があるのか。どのような障害について、どのような大きな課題を抱えているのかということが見えてくるという意味だと思います。

○三浦委員長代理 分かりました。
 では、ここのパラグラフでは、ただ含むというもの。ほかの場面では、例えばインクルーシブ教育のところを包容教育と訳されているので、そういう特別な指標があると思い質問しました。

○石川委員長 Disability inclusive indicatorというのは社会への障害者の包摂の達成レベルをはかる指標というよりは様々な社会指標に障害を含めるという意味だと思います。
 玉木委員、どうぞ。

○玉木委員 玉木です。
 今日の論議は結構難しくてついていけていないのですけれども、ただ、何で、もやっとしたかというと、これまでの意見を聞いている中では、状態に対しての基準とか、マニュアルとか、それを整えていって、民間の差別をなくしていこうみたいな話が中心だったかなと思うのです。
 ただ、今日、出していただいた資料3の2番目の「当委員会は、締約国における法律や政策が、それらのモデルが本条約に矛盾しているにもかかわらず、未だに慈善モデル及び/又は医学モデルを通して障害に取り組んでいることについて懸念している」とありますが、私はこの文章がむちゃくちゃ大きいと思っているのです。
 それは、事業者云々と言う前に、現行の国内法においても、例えば教育基本法であったり、障害者総合支援法であったり、虐待防止法においても色々な矛盾があるということは、多分みんなが同意していただけることかなと私は勝手に思うのですけれども、そうしたら法律そのものが本当に合っているかどうなのかという評価を誰がどこでやっていくかということが不明確なのかなと。
 そういうことを石川委員長が出された資料の参考のFNRに含まれる具体的救済策はという中に、差別廃止計画の採択というのがあって、私は実はこの中身が一番聞きたくて、この差別廃止計画というのは何をもって差別廃止計画というのかということを、少し委員長にお聞きしたい。

○石川委員長 ありがとうございます。
 まず、国の現行制度、法制度の中で、権利条約に照らして不具合があるというか、問題のあるものは速やかに是正してくださいとあります。それは一応、条約を批准するための制度改革ということで、ある程度はやりました。ですけれども、まだ完全ではないということで、これはずっとやっていかないといけないことで、法律というのは人の成長よりも成長速度が遅いというか、こつこつとやっていくしかないということで時間がかかる。
 かかるけれども、玉木委員がおっしゃったように、現行の法制度の中に様々な課題があって、国内的には国内の権利条約の国内実施を監視する機関は、今のところ当委員会しかないので、ここでやれることをやるしかないのですけれども、今、差別解消法の見直しに特化していて、基本法の見直しについてもと、北岡委員からも、佐藤委員からも言われているし、ほかにも様々あるわけなのですけれども、ここでは一つ一つやっていくしかない。
 もちろんほかでもできることは多々あって、やっていかないといけないわけなのですが、ここのFNRにおける差別廃止計画というのは、当該の事業者に対して、個別の救済でなくて、将来に向けた救済ということで差別廃止計画の策定を求めるという意味ですね。
 ですから、国としての方針ということでなくて、個々の事業者に対してそれを求めるというのが、将来を見据えた非金銭的救済。何か損害賠償で、わずかながらのお金を民事的に出させるみたいな話では未来につながらないということで、将来志向型の非金銭的な救済を実装しようとしている国が、今、欧州等ではあるということで、日本も手本にしてはどうかということを考えるわけです。
 玉木委員、どうぞ。

○玉木委員 ありがとう。よく分わかりました。それでいくと、すごく根本的な話で怒られそうなのですけれども、障害者政策委員会というのがこの頻度で開催されていたら課題がたまっていく一方で、色々なところの評価をしていかないといけないところが、実際は今、全然できていないということになってくるので、それが今後、それこそ障害者基本法の改正でいくと、その評価をするところが障害者政策委員会でしかなかった場合に、それ以外にも各省庁がちゃんと監視機関を設けて、そこできっちりと個別の法律を見ていくとか、そのようにやっていかないと、私が持っていたストレスはずっと持ち続けたまま生きていくしかないので、そこが分かっているのだったら、もう少し色々な省庁も含めて積極的に改革していくような中身にしていただきたいし、そのためにも障害者基本法の改正というのは大きな課題かなと思いました。
 ありがとうございます。

○石川委員長 ありがとうございます。
 私はよくPDCAサイクルという言葉を多用していまして、国際的なPDCAサイクル、それから国内のPDCAサイクル、各施策、分野ごとのPDCAサイクル、それへの当事者参加。ですから、プランとチェックの両方に参加できるようになっているところはどこなの、どこがある程度できていて、どこが全然できていないのか、そういうことを見ていく必要があると思います。
 山崎委員、お願いします。

○山崎委員 少し切り口を変えて発言したいと思います。
 先ほど石川委員長からマンションオーナーの話が出ましたが、実は私は、主にグループホーム運営の仕事をしています。
 去年の秋口に利用者からサテライトがいいと言う希望があったものですから、グループホームのサテライトを何戸かつくろうと思って、不動産屋に一斉に依頼したのですね。そうしたら、私の事業所は札幌市西区というところにあるのですけれども、20件ほど住宅情報を送ってきて、こんなにあるからどうだいと不動産屋が来たのです。
 利用者本人と話をしたら、候補にある住宅を全部見たいと言うので、全部見せていただきますと言いました。借り手であるこちらの情報は、法人で借りるが、住むのは知的障害のある人だ、本人は一般就労していてお金は十分あるという借りるための条件は全部そろっているわけですよ。ところが、当初20件近く送られてきたデータは、実際に見るとなると2件しか見せてくれなかったのですよ。今回のサテライト対象者は2人いたのですけれどもね。私はむっときて、不動産屋に、障害を理由に入居を断ったら差別にあたりますよ。というようなことを言ったのですけれども、もちろんオーナーさんは障害を理由には断らないわけです。
 私もこの委員会に所属している以上、闘おうかなと思ったのですけれど、そうしている間も人は生きているわけですよ。考えてみたら、うちの仲間たちを暮らさせたくないというところに住んで幸せなのかと考えたら、答えはノーなわけですね。利用者を住まわせたくないところになんか住んでやるものか。普通に住めるところに住もうということで、結局違うところに借りました。障害者差別解消法というのは、そういう側面があって、利用者は、今、現実に生きているわけですよ。生きて生活しながら闘うのは非常に大変なわけです。
 今日の資料の事例を見ても、余裕があるなと私自体は少し思ったのです。実際にぎりぎりで生活していたら、とてもでないけれども、調停には言えないし、弁護士さんにも相談できない場面があるのではないか。そういう見えない声が、精神の家族の方はあるのではないかという気がしております。そういったことを、この委員会でもっと論議できればと思っております。以上です。

○石川委員長 ありがとうございます。
 そうですね。ですから、こうやって可視化されているケースというのは意識も高いし、実際に建設的な対話によって、かなりの程度解決に至っているケースがここに出てきているわけですけれども、そうでない、そもそもテーブルの俎上に上っていない非常に無数の出来事が起きていると思います。
 マンションオーナーに関しては、契約を強制するということは極めて困難だと思います。
 時間的にはあともう少しなのですけれども、今日に関しては大体収束ということであればそろそろとも思います。佐藤委員、どうぞ。

○佐藤委員 ありがとうございます。
 今後のことについてお願いなのですけれども、先ほど北岡委員からもありましたけれども、ぜひこれからの議論、来年に向けてのロードマップをぜひ示していただきたいと思います。
 その中で、論点ですね。今日、石川委員長から、障害者権利条約から見た障害者差別解消法の課題をお示しいただきましたけれども、これを踏まえて論点を出していただいて、ぜひその論点について議論をしていきたいと思います。
 私、障害者差別解消法とは少し違うのかもしれないのですけれども、日本は公共調達の仕組みがないというところが大きな問題だと思います。以前アメリカの公共調達に詳しい方に、この政策委員会でお話しいただきましたけれども、公共調達でアクセシビリティの要件をちゃんと整えることによって、全体として非常に整っている。
 例えばスマートホンは、日本で買っても、アメリカの公共調達を守ったものは、ちゃんとアクセシビリティが保証されているわけですね。日本もそういうところが必要なのではないかと思っております。
 最後に、日程なのですけれども、できれば早目に幾つかの日程を決めておいていただけるといいかなと思います。最近欠席の方が多いと感じるのですけれども、それはあらかじめ日程調整をして、少し先まで決めておいていただけると、より多くの委員が参加して、これから山場の議論が始まると思いますので、そのようにしていただけたらと思います。
 以上です。

○石川委員長 ありがとうございました。佐藤委員から締めの意見があったので、ほかによろしいですか。岡田委員、どうぞ。

○岡田委員 みんなねっとの岡田です。
 今日の議論とは直接関係ないのですけれども、第42回、2月の障害者政策委員会で私から、高齢長期退院者数についての御質問を出させていただいた回答として、年齢別死亡退院数についてのデータをいただきたいということをお願いしましたら、データはありますので追って御案内をしたいと御回答いただいていますが、いまだにそのデータをいただけていないので、ぜひよろしくお願いしたいということを最後に申し上げたいと思います。

○石川委員長 厚労省からお願いします。

○厚生労働省(厚生労働省障害保健福祉部企画課:山下補佐)厚生労働省の山下と申します。
 多分、第42回障害者政策委員会のときには、当時の担当が対応させていただいたと思います。内容を再度確認させていただいてから御返事させていただけたらと思っています。申しわけございません。

○石川委員長 ぜひともよろしくお願いいたします。
 それでは、以上をもちまして、本日の議論は終了とさせていただきます。
 事務局から、今後の予定等につきまして説明をお願いいたします。

○寺本参事官 ありがとうございます。
 先ほども日程のことも御指摘をいただいたところなのですけれども、できる限り早目に皆様方の日程も調整しながら、先々の日程が組めるように鋭意尽くしてまいりたいと思います。
 今日の時点で申しわけございませんが、次回の日程につきましては、現在調整中でございます。議題を含めまして、詳細について確定次第、また御案内をさせていただきます。

○石川委員長 ありがとうございました。
 それでは、以上をもちまして、第45回障害者政策委員会を終了いたします。