障害者政策委員会(第64回)議事録

令和4年4月26日(火)
13:00~16:00
TKP新橋カンファレンスセンター幸ビルディング13階 ホール13A
(Web会議にて開催)

【議事に使用されている資料については「議事次第」のページにまとめて掲載していますのでご参照ください。】

○石川委員長 それでは、定刻になりましたので、これより第64回「障害者政策委員会」を開会いたします。
 委員各位におかれましては、御多用のところ、御出席いただきましてありがとうございます。
 本日の委員会は、16時まで時間を確保しております。
 本日は、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、ウェブ会議によって開催しております。
 なお、取材及び一般傍聴者につきましては、感染防止の観点から本日もお断りしまして、その代わりに動画中継を視聴していただくこととしております。よろしくお願いいたします。
 まず、事務局より委員の異動について報告をお願いします。

○立石参事官 事務局でございます。
 本日付で新たに障害者政策委員会の構成員として着任された方を御紹介いたします。
 日本商工会議所の杉崎委員の御後任として、日本商工会議所産業政策第二部部長の大下英和委員に御就任いただいております。
 以上でございます。

○石川委員長 大下委員より一言御挨拶をいただきたいと思います。

○大下委員 日本商工会議所産業政策第二部長を務めております大下と申します。本日より参画させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

○石川委員長 次に、事務局より委員の出欠状況について報告をお願いします。

○立石参事官 本日は、内布専門委員及び中野専門委員が所用により欠席との連絡を受けているほか、柘植委員が14時30分頃、佐保委員が14時50分頃、大下委員及び北川委員が15時頃、野澤委員はお時間未定ですが、所用により途中退席されると伺っております。
 また、長谷川委員が14時半から15時の間、席を外されると伺っております。
 また、黒岩委員の代理として、神奈川県福祉子どもみらい局福祉部障害福祉課長の鳥井健二さまに御出席いただいております。

○石川委員長 それでは、本日の議事に入ります。
 御発言いただく際の意思表示ですけれども、挙手機能を使用していただき、委員長の指名を受けてから御発言いただくようお願いいたします。
 また、御発言の際には最初にお名前を名乗ってください。ゆっくり、分かりやすく、また、簡潔にお話しいただければ幸いです。
 それでは、本日の議題及び資料について、事務局より説明をお願いいたします。

○立石参事官 事務局でございます。
 本日は、まず議題1の基本方針改定について御審議をいただきたいと思います。関係資料としては、資料1から3のほか、参考資料を用意しております。
 途中、15分程度の休憩を挟みつつ、15時20頃まで御審議いただく予定でおります。
 その後、議題2の国連障害者権利委員会の審査に向けた審議について御議論いただきたいと思います。関係資料としては、資料4を用意しております。
 以上でございます。

○石川委員長 それでは、議事に入りたいと思います。
 基本方針改定案について、事務局から説明をお願いします。

○立石参事官 事務局でございます。
 議題1の基本方針改定について、資料の御説明を申し上げます。関係する資料につきましては、資料1の基本方針改定案(第1・第2部分)と資料2の新旧対照になっております表、資料3の基本方針の改定に係るこれまでの議論等、参考資料として現行の基本方針をおつけしております。事前に資料をお送りしておりますので、御議論のお時間を確保するために、簡潔に御説明をさせていただければと存じます。
 まず、今回御議論いただく基本方針についてですが、現行の基本方針は参考資料を御覧いただければと思いますが、第1から第5までの章立てで構成されております。本日は、第1及び第2の部分について御議論いただきたいということで、関係部分の資料を準備しております。
 それでは、資料3を御覧ください。これまでの主な御議論について整理させていただいた資料でございます。最初にこちらを御確認いただければと思っております。
 まず、資料3の1ページからでございます。これまで御議論があったものとして、基本方針第1・第2部分について、法の対象範囲でございます。法の対象範囲につきましては、差別解消法施行3年後見直しに関する意見、令和2年にお取りまとめいただいたものにおきまして次のような記載がございます。
 「例えば、基本方針等において、・・・障害者の家族その他の関係者に対する障害を理由とする差別についても、障害者本人に対するものと同様に解消すべきものである旨を示すこと等について検討すべきである」とございます。
 また、昨年秋から冬にかけて実施をさせていただきました団体ヒアリングにおける主な御意見につきまして、事務局の方で取りまとめて載せております。
 その中のものでございますけれども、1つ目のポツ「障害当事者だけでなく、障害者の家族や関係者への障害を理由とした差別を禁止すべき」、2つ目「過去に障害があった(とされる)者、未来に障害を持つと思われる者、障害があると推測される者に対する不当な差別的取扱いも禁止すべき」といった御意見がございました。
 また、同じくヒアリングにおいて提供された事例といたしまして一つ読み上げさせていただきますと、1つ目のポツ「特別支援学校に通う医療的ケア児の保護者(母)は、看護師等の配置がされているにもかかわらず、通学時の付添いが必要、服薬時や子供の様子が変わった場合には必ず学校にいかなければならず、仕事を入れることができなくなった」といった事例を提供していただいたところでございます。
 2ページ目につきましては、差別解消法における障害者の定義、第2条1号における障害者の定義を参考に記載させていただいております。それから、障害を理由とする差別の禁止に関する第7条、第8条の規定を記載させていただいております。
 次に、3ページでございます。【検討の視点】と書かせていただいております。今回、基本方針を御議論いただくに当たり、事務局として検討の際に留意して御議論いただければというものを記載しております。読み上げさせていただきます。
 (1)「障害者」の範囲について
 ○ 法第7条第1項、第8条第1項において、「障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱をすることにより、「障害者の権利利益を侵害してはならない」と明記されていること、法第2条第1号において「障害者」の定義が明記されていることから、基本方針において「障害者」の範囲を拡大することは困難ではないか。
 ○ その上で、例えば、家族等に対する差別として掲げられていた事例については、本人に対する不当な差別に該当するか否かの観点から検討を行うことができるのではないか。
 としております。
 続きまして、4ページをお開きください。「2 不当な差別的取扱い」についてのこれまでの御議論についての整理でございます。
 ■でございますが、3年後見直しに関する意見に関係する記載でございます。
 ①差別の定義・概念の明確化
 ○ 障害者差別について社会的な認識を広げ、差別の解消に資するという観点からは、法律で差別の定義を設けること等が望ましいと考えられる。
 ○ 一方で、法律で差別の定義を設けると、かえって条約よりも狭く定義される等の懸念があるとともに、解釈の違いによる混乱も予想される。また、差別の類型にどのような事例が該当するのか現段階では明確でなく、法律に規定することに困難があることや現場に混乱が生じないよう慎重な検討が必要となること等の課題もあると考えられる。
 ○ これらを総合的に考慮しつつ、差別の定義・概念の明確化を図る観点から、どのような対応が可能かについて検討を行うべきである。その一環として、例えば、基本方針等において、形式的には障害を理由とする差別的取扱いには該当しないものであっても、実質的には障害を理由として障害者でない者と不当な差別的な取扱いをすることも障害を理由とする差別となる旨・・・を示すこと等について検討すべきである。
 また、次の○でございますが、「更に具体的な相談事例の蓄積等を進めるべきである」ですとか、その次の○「障害のある女性や子供等への差別に関しては、基本方針等において、性や年齢別に具体的な相談事例を蓄積すること等により更に実態把握に努めるとともに、相談事例を踏まえて適切な措置を講じるべき旨を記載することについて検討すべきである」といった記載があったものでございます。
 次の■は、差別解消法の国会における審議の際の衆参の附帯決議を掲げさせていただいております。
 4号でございます。「障害者の権利に関する条約の精神にのっとり、差別の定義に係る基本的な考え方を明記すること」。
 5号、「障害のある女性や性的少数者等への複合的な差別の解消について、基本方針、対応要領及び対応指針に明記することを検討すること。複合的な差別に関する情報の収集、分析を行うこと」といった指摘がなされております。
 5ページの中ほどでございます。先般の団体ヒアリングの御意見について幾つか御紹介をさせていただきます。
 6ページをおめくりいただきます。<いわゆる間接差別等について>というところで、間接差別等を差別の概念に含まれるものとすべきとの御意見といたしまして、「基本方針では、いわゆる『間接差別』『関連差別』『ハラスメント』は記載されていない。差別の内容をわかりやすくするため、このような詳細な差別の内容も記載すべき」という御意見。
 また、4つ目のポツでございますが、「特に障害のある女性や障害のある子どもに対しては、障害に加えて、性別や年齢による社会的障壁が複合した、不当な差別的取扱いが存在することに留意する必要がある」と追記すべきといった御意見がございました。
 7ページでございます。(慎重に検討すべきとの御意見)の1つ目のポツ「定義が不明確であり、具体的事例が蓄積されているとは言えず、事業者が何を行うことが求められるのか、不明確。認識の共有がないまま新たな概念を導入するよりは、現行の『障害を理由とする不当な差別的取扱の禁止』『合理的配慮の提供』『環境整備の実施』に取り組み、着実に解決を図っていくことが、差別の解消に資する」という御意見。
 また、4つ目のポツ「間接差別、ハラスメント等の見極めが明確にできない現状において、これらを差別に含むとなれば、営業の現場においては大変な混乱が生じる」という御意見がございました。
 7ページの一番下、<ヒアリングにおいて提供された事例>でございます。
 8ページをおめくりいただきますと、1つ目のポツ「4DXのシアターで映画鑑賞を希望したところ、座席が動くなどの理由で車いす使用者が拒否された」。
 3つ目のポツ「盲導犬を連れて飲食店に入ろうとしたら拒否された」。
 4つ目のポツ「自閉症のある子が感覚過敏がありマスクの着用ができないと伝えたところ、宿泊を断られた」。
 こういった事例が間接差別または関連差別の事例ということで、ヒアリングで御提供いただいてございます。
 また、事例の下から2つ目のポツ「知人の障害者と飲みにいったら、居酒屋に『車いすの人が入れるような店じゃねーよ』と言われた」。
 これがハラスメントの事例ということで御提供いただいたものでございます。
 少しページが飛んで恐縮でございますが、12ページを御覧いただければと存じます。間接差別に関連して参考となる国内・国外の法令について、御参考として掲載をさせていただいております。
 12ページの下の方にございますのは、男女雇用機会均等法における間接差別の規定、第7条でございます。
 「事業主は、募集及び採用並びに前条各号に掲げる事項」、これは配置、昇進、教育訓練といった事項でございます。「に関する措置であつて労働者の性別以外の事由を要件とするもののうち、措置の要件を満たす男性及び女性の比率その他の事情を勘案して実質的に性別を理由とする差別となるおそれがある措置として厚生労働省令で定めるものについては、当該措置の対象となる業務の性質に照らして当該措置の実施が当該業務の遂行上特に必要である場合」など、「その他の合理的な理由がある場合でなければ、これを講じてはならない」としております。
 13ページ、男女雇用機会均等法の間接差別の規定における厚生労働省令で定めるものとして、法律の施行規則を載せております。
 そこでは、間接差別の要素の一つとなる中立的な要件につきまして3つ定めておりまして、その3つの項目を省令により規定し、明示する形になっているところでございます。
 また、その次、「障害者雇用促進法における差別禁止に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針」の抜粋を掲載しております。
 第二の「基本的な考え方」、差別の禁止の説明部分でございますが、ここの2段落目でございます。
 「ここで禁止される差別は、障害者であることを理由とする差別(直接差別をいい、車いす、補助犬その他の支援器具等の利用、介助者の付添い等の社会的不利を補う手段の利用等を理由とする不当な不利益取扱いを含む。)である」と記載してございます。
 この後、諸外国の法令も御参考に載せております。13ページの下はアメリカ、14ページをおめくりいただきますと、イギリス、フランス、15ページにドイツとなってございます。
 御参考にフランスの例を読み上げさせていただきます。「間接差別とは、表面上は中立的な規定、基準又は慣行ではあるが、当該規定等が正当な目的によって客観的に正当化され、かつ、その目的を達成するための手段が必要及び適切である場合を除き、上述の理由(※障害等)のいずれかにより、ほかの人と比較して特定の不利益をもたらす可能性のあるものをいう」と定義をつけているところでございます。
 16ページをおめくりいただければと存じます。
 こちらも、【検討の視点】ということで、今回御議論をいただく際に御留意いただいて、これらの点も含めて検討いただければというものでございます。読み上げさせていただきます。
 (2)いわゆる間接差別等について
 ○ いわゆる間接差別等を差別の概念に含めることに関する検討に当たっては、実効性を担保する観点から、
 ・「不当な差別的取扱いの禁止」という法的義務が課せられる事業者等にとって、何が禁止すべき差別に当たるのか明確にすること
 ・今般の法改正により事業者に対して合理的配慮の提供が義務化されたこととの関係に留意すること
 が必要ではないか。
 ○ その上で、いわゆる間接差別について、国内法令の先例や諸外国法令にならい、「形式的には障害に中立的な規定、基準又は慣行であって、当該規定等を特定の障害者に適用した場合に当該障害者が他の人と比較して不利益となるもの(以下「中立的基準」という。)を、当該障害者に適用すること。ただし、当該中立的基準が正当な目的によって客観的に正当化でき、その目的を達成するための手段が適切かつ必要である場合(以下「正当な理由」という。)を除く。」と仮に整理した場合、以下の点の検討が必要ではないか。
 ・障害の種類やその程度が個々の障害者により多様であることを踏まえると、中立的基準も多様となることが考えられるが、事業者等が事前に予測することは可能か。
 ・中立的基準について、事業者に対して合理的配慮の提供が義務化される中で、合理的配慮を提供してもなお不利益が解消されないものとしてどのようなものがあるのか。
 ・「不当な差別的取扱い」と判断された場合、事業者等に対し、当該中立的基準についてどのように取り扱うことを求めるのか。
 障害者でない者も含め、一律に当該中立的基準を撤廃することを求めるとするのか、又は当該障害者の状況に応じて個別の対応を提供することを求めるとすべきか。
 ・「正当な理由」の判断の視点について、どのように考えるか。
 このようなことも含めて御議論いただければと考えてございます。
 以上が不当な差別的取扱いについてのこれまでの御議論でございます。
 続けて恐縮でございますが、合理的配慮についてのこれまでの御議論について御説明をさせていただきます。
 17ページの一番上、3年後見直しに関する意見におきましては、【見直しの方向性】の「②建設的対話の促進、事例の共有等」というところで、「建設的対話を適切に行うべきであること、障害者やその家族が社会的障壁を解消するための方法等を相手に分かりやすく伝えることや、障害特性によって意思決定や意思疎通が困難である場合に障害者やその家族に配慮することも重要であることを、基本方針等で明確化すべきである」ということが書いてございます。
 また、次に「②相談対応等を契機とした事前的改善措置(環境整備)の促進」ということで、「相談・紛争の事案を事前に防止することに有効と考えられるため、特に幅広い事業者等における取組が期待される、相談対応等を契機とした事業者の内部規則見直し等の環境整備について、その重要性の明確化を図るとともに、そうした取組を促すべきである」といった記載がございます。
 また、法案審議の際の附帯決議でございます。六号「基本方針等において、障害の分野に応じて、具体的な差別事例や合理的配慮の提供事例を盛り込むことを検討すること」といった御指摘がなされてございます。
 18ページを御覧いただければと思います。団体ヒアリングにおける主な御意見を御紹介させていただきます。
 18ページの下の<合理的配慮の判断基準や事例について>でございます。19ページにいきまして2つ目のポツ「合理的配慮の『現時点における一例』において、具体的な例を挙げて説明してほしい(特に、知的障害や精神障害における具体例も追記してはどうか)」という御意見がございました。
 また、その次のポツ「合理的配慮の提供に係る好事例や提供義務違反にならない事例の提供も有効である他、『合理的配慮の提供』と『環境整備』との関係も分かりやすくすべき」といった御意見がございました。
 19ページの下の<意思の表明について>の御意見として、2つ目のポツ「見ただけでは分かりにくい障害をもつ障害者には、見ただけで障害があると分かる者とは異なる支援の必要性があることに留意する必要があるという内容を追記してほしい」という御意見。
 20ページにいきまして1つ目のポツ「『女性である障害者は、特に、プライバシーが確保されにくく、意思の表明も難しいことにも留意する』旨を追記すべき」という御意見がございました。
 3つ目のポツとして「障害の判断が外見上できないにもかかわらず、対応に不備があるとの指摘を受け対応に苦慮することや、合理的配慮の提供を行う際、障害者が『以前大丈夫だった』などと回答するのみで個別具体的なヒアリングに応じてもらえないことがあるため、障害者から行う『現に社会的障壁の除去を必要とする意思の表明』については、どのような配慮や措置を希望するのかを具体的に示すように努めるよう追記してほしい」といった御意見がございました。
 また、<ヒアリングにおいて提供された事例>につきましても、20ページから21ページにかけて記載をしてございます。事業者団体等から、どの範囲まで合理的配慮として対応すればいいのかといった現場で悩んでいる事例が寄せられたと考えてございます。
 21ページでございます。「②過重な負担について」でございます。<過重な負担の考慮要素について>の御意見として、「過重な負担の考慮要素として、障害者の権利利益の性質も含めることが検討されるべき」という御意見。
 また、「過重な負担の基本的な考え方について、考慮すべき要素の『実現可能性の程度』に記載のあるカッコ内の例示に、『法令上の制約』を追記すべき」という御意見。
 3つ目のポツ「『過重な負担』について、『適正な負担』又は『可能な負担』とすべき」との御意見などがございました。
 22ページでございます。中ほどの<行政機関及び事業者による『過重な負担』の説明について>というところでございます。
 1つ目、現行の基本方針においては、「過重な負担」の説明について、「理解を得なければならない」「理解を得るよう努める」とすべきという御意見として、「理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましい」を修正すべきという御意見がございました。
 また、具体的な根拠を示して説明すべきとする御意見として、1つ目のポツ「『過重な負担』について、行政機関等や事業者の側において根拠を交えて説明することや、証拠となる資料を求められた場合には応じること(少なくとも、誠実な説明を行うこと)を追記すべき」とする御意見がございました。
 一方で、22ページの下の方でございますが、具体的な根拠を示して説明すべきとすることは困難とする御意見として、1つ目のポツ「法律において事業者に説明責任等を義務付ける規定はなく、基本方針で義務付けることはできない」という御意見。
 2つ目のポツ「証拠となる資料を求められた場合に応じることを義務付けることは、要求の対応や求められる証拠の内容、事業者の規模や人員・体制によっては事業者にとって過大な負担となり、かえって状況に即した柔軟な対応がしにくくなるおそれがあるので追記の必要はない」といった御意見がございました。
 なお、先ほど御説明の際に不当な差別的取扱いのところの御説明として飛ばしてしまった部分がございまして、大変恐縮ですが、10ページに戻っていただきますと、<「正当な理由」の説明について>というところで、今、「過重な負担」の説明についてで御覧いただいたものとほぼ同様の御意見が10ページから11ページにかけて出ていたところでございますので、説明を飛ばしてしまって大変恐縮でございますが、後ほど御確認いただけますようお願いしたいと思っております。
 引き続き、また23ページにお戻りいただきます。
 「過重な負担」についてのヒアリングでの御意見でございましたが、23ページの中ほどから、<建設的対話について>の御意見がございました。
 2つ目のポツでございますが、「『社会モデル』という考え方をもっと広めていくことが肝要であり、障害者差別解消法が制定されているからこそ丁寧に対話をして、一緒に解決策を探るという姿勢が必要であることを障害者自身が認識することも大事」という御意見がございました。
 以上、資料3のこれまでの御意見についての整理の御説明でございました。
 これまでのヒアリングでの御意見などを踏まえまして、現時点における改正案として、資料1、資料2を提出しております。
 なお、改正案につきましては、本日以降の御議論を踏まえて、こちらをたたき台に必要な修正を行っていくものであるという位置付けでございます。
 それでは、資料1の1ページ、資料2は新旧対照表になってございますが、資料2の1ページから御覧いただければと存じます。
 まず、「第1 障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する基本的な方向」に関する記載でございます。
 ここでは「1 法制定の背景及び経過」とございますが、現行方針におきましては、ここで権利条約の採択から我が国における法的整備、権利条約の締結までを書き込んでいるところでございます。
 資料1の2ページの冒頭、資料2の3ページの冒頭部分に今回の追記を書いてございます。ここでは、この現行方針の記載に追加いたしまして、先般の法改正の内容を追記してはどうかという案にしてございます。
 次に「2 基本的な考え方」でございます。現行の基本方針では、「(1)法の考え方」「(2)基本方針と対応要領・対応指針との関係」「(3)条例との関係」について記載をしている部分でございます。いずれも今回の法改正に伴い、直接改正が必要な部分はないところでございますが、「(2)基本方針と対応要領・対応指針との関係」の部分の2段落目、現行方針では「対応要領及び対応指針は、法に規定された不当な差別的取扱い及び合理的配慮について、具体例も盛り込みながら分かりやすく示しつつ」と書いてあるものに、今回「障害種別に応じた」を追記しまして「障害種別に応じた具体例も盛り込みながら」と書きまして、具体例の充実を促す追記としているところでございます。
 次に、資料1の3ページ、資料2の5ページでございます。「第2 行政機関等及び事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する共通的な事項」でございます。
 「1 法の対象範囲」「(1)障害者」の部分でございます。今、御覧いただいている資料で追記をしている部分につきましては、定義の法律の条文の引き方に関する文章の適正化を行っております。内容的に変更はございません。
 障害者の範囲の記載につきましては、先ほど資料3で御説明したとおり、これまでの御議論、検討の視点なども含めて、本日御議論いただければと思っているところでございます。
 また、「2 不当な差別的取扱い」の部分でございます。こちらにつきましても、今回お出しした資料にはまだ修正案が加えられていない状態でございます。先ほど資料3に基づき説明をいたしましたけれども、差別の概念や定義の部分について様々な御意見がございました。また、検討を深めていただきたい点もございますので、本日御議論いただければと思っております。
 次の「(2)正当な理由の判断の視点」でございます。こちらは、附帯決議やヒアリング等においても、差別的取扱いの具体的な事例を記載することを検討すべきという指摘が多かったことを踏まえ、正当な理由がなく差別に該当する例、また、正当な理由があるため差別には該当しない例をそれぞれ書き込んでございます。
 まず、正当な理由がなく、不当な差別的取扱いに該当すると考えられる例として3つございます。
 1つ目「障害の種類や程度、サービス提供の場面における本人や第三者の安全性などについて考慮することなく、漠然とした安全上の問題を理由に施設利用を拒否すること」。
 2つ目「業務の遂行に支障がないにもかかわらず、障害者でない者とは異なる場所での対応を行うこと」。
 3つ目「障害があることを理由として、障害者に対して、言葉遣いや接客の態度など一律に接遇のレベルを低くすること」という事例を盛り込んでございます。
 次に、正当な理由があるため、不当な差別的取扱いに該当しないと考えられる例につきまして、同じく3つ挙げてございます。
 1つ目「旅客船や航空機において、コミュニケーション等に係る合理的配慮の提供等を行っても、障害の種類や程度、人的体制・設備等から客観的に判断して、緊急時に職員の安全に関する指示が理解できないおそれがあり、職員が他の乗客等の安全の確保を図りつつ補助を行っても安全に避難することが困難と考えられる場合に、当該障害者に介助者の付き添いを求めること」という例。その後ろに、正当な理由に相当するかどうかの観点として、(障害者本人及び第三者の安全確保の観点)というものを入れております。
 2つ目「飲食店において、タイヤカバーのない車椅子の利用者が畳敷きの個室を希望した際に、そのまま入室すると畳が傷つくおそれがあることから、カーペット敷きの別室を案内すること。(事業者の損害発生の防止の観点)」。
 3つ目「銀行において口座開設等の手続を行うため、預金者となる障害者本人に同行した者が代筆をしようとした際に、必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ、障害者本人に対し障害の状況や本人の取引意思等を確認すること。(障害者本人の財産の保全の観点)」というように3点を記載してございます。
 その次の段落、正当な理由があると判断した場合の行政機関及び事業者の説明についての記載でございます。こちらも先ほど御説明したとおり、ヒアリングなどにおいても異なる御意見がそれぞれあったと承知しております。今回お出しした資料におきましては、正当な理由があると判断した場合には、「障害者にその理由を丁寧に説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましい。その際、行政機関及び事業者と障害者の双方が、お互いに相手の立場を尊重しながら相互理解を図ることが求められる。」という記載を追記する形にしてございます。
 資料1の5ページの「3 合理的配慮」、資料2の10ページでございます。
 合理的配慮の部分でございますが、イに追記をしている部分がございます。こちらにつきましては、現行の方針におきまして、アの項目の最後の段落に書いてあったものを、分かりやすさの観点から、イにまとめて記載しているというものでございまして、記載の内容についての変更はないというものでございます。
 資料1の6ページ、資料2の11ページで記載をしております。合理的配慮の例を追記してございます。ここでは、現行の方針に掲載されている事例を、ヒアリングで指摘のあった配慮の内容を詳しく書き込んだり、また、人的支援の例を追記するという形で充実させていただいております。
 合理的配慮の例といたしましては、2つ目のポツのところに追記した部分として、「筆談、読み上げ、手話」に続きまして「コミュニケーションボードの活用」といった例を入れたこと、また、「振り仮名や写真、イラストなど分かりやすい表現を使って」ということで、コミュニケーションの手段の例を追記してございます。
 3つ目の事例でございますが、「障害の特性に応じた休憩時間の調整」に加えて「必要なデジタル機器の使用の許可」といったことを追記してございます。「などのルール・慣行の柔軟な変更」ということで、充実をさせているものでございます。
 また、4つ目のポツを追記いたしまして、「店内の単独移動や商品の場所の特定が困難な障害者に対し、店内移動と買物の支援を行うこと。」という例を追記してございます。
 その次に、合理的配慮の提供義務違反に該当すると考えられる事例及び該当しないと考えられる例として、それぞれ4つずつ追記をしております。
 まず、違反に該当すると考えられる事例の1つ目「試験を受ける際に筆記が困難なためデジタル機器の使用を求める申出があった場合に、デジタル機器の持込みを認めた前例がないことを理由に、必要な調整を行うことなく一律に対応を断ること」。
 2つ目「イベント会場内の移動に際して支援を求める申出があった場合に、『何かあったら困る』という抽象的な理由で具体的な支援の可能性を検討せず、支援を断ること」。
 3つ目「電話利用が困難な障害者から各種手続を行いたい旨求められた場合に、自社マニュアル上、当該手続は利用者本人による電話のみで手続可能とすることとされていることを理由として、メールや電話リレーサービスを介した電話等の代替措置を検討せずに手続の実施を断ること」。
 4つ目「自由席での開催を予定しているセミナーにおいて、弱視の障害者からスクリーンや板書等がよく見える席でのセミナー受講を希望する申出があった場合に、事前の座席確保などの対応を検討せずに『特別扱いはできない』という理由で対応を断ること」という例を記載してございます。
 また、合理的配慮の提供義務に反しないと考えられる事例ということで、1つ目「飲食店において、食事介助や自宅への送迎等を求める配慮の申出があった場合に、当該飲食店が当該業務を事務・事業の一環として行っていないことから、その提供を断ること」。そして、この後、合理的配慮の判断の際の視点を括弧書きで追記してございます。ここでは「本来の業務に付随するか否かの観点」ということを書き込んでございます。
 2つ目「筆談で十分対応できるやり取りに手話通訳者の派遣を求められた場合に、当該要望への対応を断ること。(必要とされる範囲か否かの観点)」。
 3つ目「小売店において、混雑時に視覚障碍者から店員に対し、店内を付き添って買い物の補助を求める配慮の申出があった場合に、混雑時のため付添いはできないが、店員が買い物リストに従って商品を準備することができる旨を提案すること。(過重な負担(人的・体制上の制約)の観点)」。
 4つ目「オンライン講座の配信のみを行っている事業者が、オンラインでの集団受講では内容の理解が難しいことを理由に対面での個別指導を求められた場合に、その事業の目的・内容から対面での個別指導を可能とする人的体制・設備を有していないため、当該対応を断ること。(事業の目的・内容・機能の本質的な変更に当たるか否かの観点)」ということで記載をしてございます。
 その次の段落でございます。
 合理的配慮の提供に当たっては、現行の基本方針でも「障害者の性別、年齢、状態等に配慮するもの」とされてございますが、ヒアリングなどにおきまして、女性への配慮についての御意見があったことを踏まえまして「特に女性である障害者に対しては、障害に加えて女性であることも踏まえた配慮が求められることに留意する。」ということを追記してございます。
 また、エの意思の表明に当たっての記載の部分でございますが、3年後見直しの意見やヒアリングなどでも事業者団体から御意見があったことを踏まえまして、「コミュニケーションを図る際に必要な手段(通訳を介するものを含む。)により伝えられる」とする現行の指針の後ろに、「その際には、社会的障壁を解消するための方法等を相手に分かりやすく伝えることが望ましい。」という記載を追記してございます。
 また、(2)の過重な負担についての記載でございます。ここは過重な負担についての説明を追記してございます。こちらにつきましても、ヒアリングなどでも様々な御意見があったものと承知してございます。したがいまして、今回お出しする資料におきましては、「過重な負担に当たると判断した場合は、障害者に丁寧にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましい。その際、行政機関等及び事業者と障害者の双方が、お互いに相手の立場を尊重しながら、建設的対話を通じて相互理解を図り、代替措置の選択も含めた対応を柔軟に検討することが求められる。」ということを追記してございます。
 資料1の8ページ、資料2の15ページでございます。「(3)環境の整備との関係」という項目でございます。
 現行の方針におきましては、環境の整備につきましては、「第5 その他障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する重要事項」に記載していたところでございます。
 環境整備の内容と合理的配慮に係る内容との関係性を分かりやすくすべきではないかといったヒアリングでの御意見等も踏まえまして、今回、合理的配慮の項目で整理をし直すという案としているものでございます。
 「ア 環境の整備の基本的な考え方」に書いている部分でございますが、こちらは現行の基本方針の第5に記載されている内容とほぼ同趣旨の内容を書かせていただいております。
 「イ 合理的配慮との関係」の部分でございます。第1段落目と第2段落の3行目「中・長期的なコストの削減・効率化につながる点は重要である」という部分につきましては、現行の基本方針の合理的配慮の基本的考え方のイ及びエにあった記載をこちらに移動した上で、文章の整理を行っているものでございます。
 その後の「また、相談・紛争事案を事前に防止する観点からは、差別的取扱いや合理的配慮の提供に関する相談対応等を契機に、行政機関等及び事業者の内部規則やマニュアル等の制度改正といった環境の整備を図ることは有効であると考えられる」としている部分につきましては、3年後見直しの意見における記載などを踏まえまして今回新たに追記をしておりまして、相談対応を契機にマニュアル等を見直す、環境整備ということを書いているところでございます。
 この後、合理的配慮と環境の整備との関係を分かりやすくするために、ここでも例を3つ記載してございます。
 1つ目の例としまして「不特定多数の障害者が利用することを想定し、あらかじめ携帯スロープを購入した上で、車椅子利用者から出入口の段差を乗り越えるための支援を求められた場合に、段差に携帯スロープをかける」という事例、ここでは「携帯スロープを購入した上で」というのが環境の整備に当たり、「段差に携帯スロープをかける」というのが合理的配慮の提供に当たるということで整理をしてございます。
 同じく2つ目の事例「視覚障害者から申込書類への代筆を求められた場合に、本人の意向を確認しながら店員が代筆する」は合理的配慮の提供。「とともに、以後、他の障害者から同様の申出があった場合に円滑に対応できるよう、申込手続における適切な代筆の仕方について店員研修を行う」が環境の整備。
 3つ目「オンラインでの申込手続が必要な場合に、手続を行うためのウェブサイトが障害者にとって利用しづらいものとなっていることから、手続に際しての支援を求める申出があった場合に、求めに応じて電話での対応を行う」が合理的配慮の提供。「とともに、以後、障害者がオンライン申込みの際に不便を感じることのないよう、ウェブサイトの改良を行う」が環境の整備に当たるということで、事例を書き込んでいるものでございます。
 大変駆け足の御説明となりまして恐縮でございますが、資料の説明につきましては以上でございます。御議論いただきますよう、どうぞよろしくお願いいたします。

○石川委員長 事務局、説明ありがとうございました。
 それでは、これから審議に移りたいと思います。全体として最大で80分の時間を確保したいと思います。途中に休憩を1回入れます。
 それでは、御意見のある委員は挙手ボタンを押してください。
 では、まず佐保委員、お願いします。

○佐保委員 御指名いただきましてありがとうございます。冒頭、事務局からの説明もありましたように途中で退席をさせていただきますので、早めに発言させていただきます。
 資料1と2がありますが、資料2のページを基に発言をさせていただきたいと思います。
 資料2の5ページや13ページに「女性である障害者」との記載がございます。「障害者の権利に関する条約の実施状況に係る障害者政策委員会の見解」では「障害のある女子」と記載され、「障害者の権利に関する条約」の6条では「障害のある女性」と表現されています。読み手への分かりやすさの観点で、表現の統一などを検討されたらいかがかと思っています。
 2点目は、法の対象範囲に障害者の家族が含まれていないことについてです。実際に差別を受けている状況が存在していると以前より意見が出ていたことや、障害者権利条約の一般的意見6で、障害のある人の関係者に対して差別が行われる可能性に触れられていることを踏まえ、対象を広げるべきだと考えております。
 次に、不当な差別的取扱いについてです。資料2の6ページの部分ですが、自治体の採用試験において、受験資格に「活字印刷による出題に対応できる方」などと記載している例がございます。これは視覚障害の方を排除するものではないかと思います。このように、直接的ではないけれども、障害のある方に対する差別があることを誰もが認識し、差別をなくしていくためには、間接差別や関連差別なども含めるべきではないかと考えております。
 次に、資料2の8ページ、11ページですが、第2の「2 不当な差別的取扱い」に関する不当な差別的取扱いであるかどうかの事例や、「3 合理的配慮」に関する合理的配慮に該当する、しないの例が基本方針に記載されていますが、読む側の視点で考えると、基本方針に事例を多く掲載されることで、かえって分かりにくさにつながってしまう可能性も考えたほうがよいのではないかと考えます。事例によって判断しやすくなるという側面があることを踏まえ、別に事例集としてまとめることの検討も必要ではないかと考えています。
 最後に、資料3の16ページになりますが、【検討の視点】の中で、中立的基準について事業者等が事前に予測することは可能かと記載がありますが、自治体の採用試験のように差別という意識をあまり持たずに差別している状況があり、当事者や障害のある方の御家族などでなければ気づきにくいことも多いのではないかと考えております。
 私からは以上です。ありがとうございます。

○石川委員長 ありがとうございました。
 続きまして、熊谷委員、お願いします。

○熊谷委員 熊谷です。
 法の対象範囲に関してコメントをさせていただきます。
 私の意見としては、対象に障害者の家族を含めること自体は慎重にすべきではないか、もう少し踏み込んで言えば、含めないほうがよいのではないかと考えております。
 一つには、法律の解釈として既に検討すべき事項として書いてありますけれども、法律の解釈としてちょっと無理があるだろうということと、私自身、家族に対する差別があるという事実は十分理解していて、それに対して何とかしなくてはいけないという問題意識を十分に共有しているのですが、同時に家族と障害者とがコンフリクトを来す場面にもしばしば立ち会うことがあります。この法律の目的・趣旨として、誰の権利・利益を守るのかということが拡散してしまうというのは、適切ではないのではないかという意見を持っております。
 ただ、具体的な事例として挙げられている事例は非常に納得のいくものですし、対象を広げるという方法ではなくて、対象はそのままにしながら、例えば事例などで家族に対する差別が、ひいては障害者本人に対する差別につながっている事例という形で、こういった事例をしっかりと記述するという方法がよいのではないかと考えております。
 私からは以上です。

○石川委員長 ありがとうございました。
 次に、佐藤委員、お願いします。

○佐藤委員 ありがとうございます。佐藤です。
 私から3点あります。
 まず、差別解消法は、条約との整合性を踏まえて定めていく必要があるのではないかと思っております。
 1つ目、法の対象範囲ですけれども、条約では一般的意見6で、障害のある人の関係者に対しても差別が行われる可能性がある、関係者差別というように関係者を含める考えを示しています。以前、政策委員会で久保委員から、障害のある子がいることが分かって家族全員で引っ越しを余儀なくされたという事例が報告されていました。障害者だけでなくて、家族にも、関係者にも大きな影響を及ぼしている。こういった実態を改善させるために事例等で盛り込むことが必要ではないかと思います。この点に関しては、久保さんあるいはみんなねっとの岡田さんにも、みんなねっとの方で調査もされていますので、お聞きしたいと思いました。
 2点目は、差別の定義です。間接差別なのですけれども、公務員の採用試験も、受験資格に自力通勤、自力勤務ができる者とか、活字印刷文の出題に対応できる者とか、音声による面接に対応できなければならないといった規定があり、大分改善されたのですけれども、まだまだ残っています。こういったことは合理的配慮を提供する前の段階で一律に排除されている事例ですので、不当な差別的取扱いに具体例として盛り込んでいただきたいと思います。
 最後は関連差別です。私は車椅子に乗っているのですけれども、たまにお店に入ろうとすると、何度か言われたことがあるのですけれども、あなたは入ってもいいけれども、車椅子はだめと言われるのですね。私と車椅子は一体ですので、車椅子が入れないとなると私は入れなくなります。障害を直接な理由としては言われていないけれども、障害に関連することで差別されておりますので、こういった事例も不当な差別的取扱いに盛り込んでいただきたいと思います。
 以上です。

○石川委員長 ありがとうございました。
 続きまして、門川委員、お願いします。

○門川委員 ありがとうございます。門川です。
 私の方から3つほど述べたいと思います。
 新旧対照表で言いますと、5ページの「正当な理由がなく、不当な差別的取扱いに該当すると考えられる例」とありますが、ここに先ほどの佐藤さんのお話にもあったように関連差別に該当すると思うのですが、その内容を盛り込んでいただければありがたいと思っています。
 具体的には、補助犬の受入れ拒否の問題についてです。これについては、2002年に成立した補助犬法では、やむを得ない場合を除き、公共の施設や公共機関、ホテルや病院などでその同伴を拒んではならないことになっています。それにもかかわらず、受入れを拒否されるケースが後を絶たないですね。
 飲食店だけではなくて、例えば病院ですけれども、最近もニュースになっていたと思いますが、視覚障害者が盲導犬同伴で通院することを拒否されたこともありましたし、今でも話題になることがあるのですが、大阪の阪急百貨店で補助犬の啓発活動に参加していた聴導犬とユーザーがいて、啓発活動の後だと思いますが、同じフロアにある喫茶店に入ろうとしたら断られたという話が大きなニュースになりました。そんなこともあるので、補助犬についてはまだまだ理解が広まっていないと思うので、事例として盛り込んでいただきたいと思います。
 2つ目ですが、13ページの終わりの方、改正案のエの最後、「その際には、社会的障壁を解消するための方法等を相手に分かりやすく伝えることが望ましい」とあるのですが、正直言ってこれは何を意味しているのか分からないのは私だけでしょうか。これについては具体的な事例があったほうがいいと思います。
 例えば社会的障壁を解消するための方法として、障害者一人一人、障害種別、個性、ニーズ等を理解するための主な障害種別ごとの分かりやすい対応方法、対応事例を集めたマニュアルといったものをつくるということでしょうか。よく分からなかったので教えていただければと思います。
 最後に3番目、17ページになると思いますが、最後の事例です。「求めに応じて電話での対応を行う」とあります。電話と言い切ってしまわないで、電話やメールなどというように修正していただきたいと思います。
 以上です。ありがとうございました。

○石川委員長 ありがとうございました。
 続きまして、竹下委員、お願いします。

○竹下委員 日視連の竹下です。
 今までの委員の発言と重なる部分が多いのですが、3点意見を申し述べさせていただきます。
 まず1点目は、障害の定義の問題であります。関連差別とか間接差別という概念を持ち込むことに強い抵抗があるようですけれども、そうであればあるほど具体的事例において弊害となる差別事例をもっと丁寧に書き込むべきではないかと思います。
 その典型例が、佐藤委員が指摘したような採用試験における要件であったり、盲導犬、補助犬全体もそうですけれども、同伴者に対する差別が考えられるわけですけれども、そういう現実的には類型としての間接差別かもしれないけれども、ほぼ直接差別に近いような類型ないしは対応が想像される場面においては、間接差別や中立的基準ということでの反対論が出ることを考慮しても、具体例を示すことによって事業主側からも混乱が起こらないのではないかと思われますので、できるだけ具体例を示す中で定義をより明確にするという方法をぜひ検討していただきたいというのが1点であります。
 2点目は、今回の改訂案の中で、ページ数はにわかに分からなかったのですが、正当な理由があるために不当な差別に該当しないという例の中で、旅客船や航空機においてコミュニケーションに困難がある人の事例を挙げています。これを挙げることは、私は絶対に反対です。これは明らかにコミュニケーションに大きな障害を持つ障害者を差別してもいいということを、言わば国が示すことになるわけです。こんな不当な基準あるいは事例を掲げることは、絶対にしてはならないとさえ思うのです。
 そうではなくて、そういうコミュニケーションに困難がある人について、どういう形でその本人及び全体の客の安全を確保できるかということを十分に検討して対応することこそが必要なのに、一律に付添いを求めるという形で、当該障害者の乗船を拒否したり、あるいは大きな負担を強いることは絶対に避けるべきではないかと思います。その意味で、この事例は極めて不適切な事例だと思っております。
 3番目、改正法の附帯決議にもあったわけですけれども、障害の特性ないし種別に応じた具体例を掲示してはどうかという項目があると思うのですが、このことは先ほどの差別の定義のところでも触れたわけでありますけれども、合理的配慮であれ、不当な差別であれ、できるだけ障害種別ごとに典型的と思われる、あるいはその障害を理解するために、場合によっては差別というものを理解するために分かりやすい事例を豊富にする。そのために、場合によっては基本方針の別表のようなものをつくってでも具体例を豊富にすること、特に差別の事例や合理的配慮の好事例は掲げるべきではないかと思っています。
 以上です。

○石川委員長 ありがとうございました。
 続きまして、石橋委員、お願いします。

○石橋委員 全日本ろうあ連盟の石橋です。御指名ありがとうございます。
 合理的配慮に関わる意見です。資料2の12ページです。自由席について記述がございます。実際にみえない、みえにくい方だけではなく、きこえない、きこえにくい方も、手話通訳者が見える席や、ヒアリングループのある場所に誘導されることが合理的配慮であるという参考事例になると思います。
 それと、合理的配慮の提供義務違反にあたらないという文章がございます。13ページです。オンライン配信について、実際に2点考えられることがございます。
 民間企業等の研修や大学等のオンライン講座、オンライン授業等で、手話通訳または文字通訳等の合理的配慮がされなければならないのですが、これに合わないところがございます。誤解を与えるのではないかという危惧をしております。事業者が大学等も含め、設備や人的な配慮が配置できないときには合理的配慮の提供義務違反ではないとありますが、手話通訳や文字通訳が必要な面も併せてオンライン講座には必ず必要になってくると思います。
 3つ目として、具体例が何も載っていませんが、今、多くの民間企業のチラシで、問い合わせ番号は電話番号ばかりです。実際にきこえない、きこえにくい人はそれに対応し切れておりません。例えばホームページとかネットショッピング等を見てすごく欲しいなと思っても、連絡先が電話番号だけ、また、資料を見ても電話番号だけという状況なので、そうでなくて、ファクス番号やメール等、きちんと3つを全てのものに記載していただきたいと思います。
 そのような御提案を申し上げます。以上です。

○石川委員長 ありがとうございました。
 続きまして、加野委員、お願いします。

○加野委員 加野です。ありがとうございます。
 差別の定義と概念について意見を申し述べさせていただきます。差別の定義を基本方針にどのように書くかを考えるに当たっては、行為規範として不当な差別的取扱いという概念を明確にする。つまり、どういった行為が禁止され、どのように行動しなければならないかが、行政機関や事業者にとってできる限り明確になるようにするということが、法の実効性を確保する観点から大切だと考えます。
 この点、先ほど事務局からの説明にもありましたように、男女雇用機会均等法では、間接差別について、法律で実質的に性別を理由とする差別となるおそれがある措置として厚生労働省令で定めるものと定義した上で、省令でこれを具体的に定めています。
 間接差別というだけでは、どのようなものが不当な差別的取扱いに当たるのかが分からないので、どのようなものが不当な差別的取扱いとして禁止される間接差別に当たるかを具体的に説明する必要があると考えますが、障害に基づく間接差別は多岐にわたるものが想定されますので、これをどのように具体的に説明するかというのは慎重な検討を要する事柄だと考えます。
 また、雇用促進法に関する障害者差別の禁止に関する指針では、「ここで禁止される差別は障害者であることを理由とする差別(直接差別をいい、車いす、補助犬その他の支援器具等の利用、介助者の付添い等の社会的不利を補う手段の利用等を理由とする不当な不利益取扱いを含む。)である」とされています。ここでは、差別は直接差別だと言われていますけれども、括弧で「含む」とされているものは、間接差別と考えられているものを含んでいるのではないかと思います。
 このように直接差別、間接差別といっても、何を指すかということが法律によって違うということでは事業者も混乱することとなると思いますので、用語を使うときには慎重に使う必要があると思います。
 差別の禁止の実効性を確保するために、義務づけの対象となる事業者にとって、禁止の対象ができるだけ明確になることが望ましく、先ほど来同様の意見がございましたけれども、個人的には不当な差別的取扱いに該当する行為について、具体例をもって説明を補うことがよいのではないかと考えています。
 以上です。

○石川委員長 ありがとうございました。
 河井委員、お願いします。

○河井委員 全肢連の河井です。よろしくお願いします。
 私の方からは1点意見です。
 障害者の範囲について、資料3の【検討の視点】の2つ目の○で、家族に対する差別としては「本人に対する不当な差別に該当するか否かの観点から検討を行うことができるのではないか」と記載があるのですが、これですと、この前に記されていた特別支援学校の医療的ケア児の親御さんが仕事を諦めざるを得なかったというのは、本人の教育機会は確保されているので本人に対する差別はなかったということで、このままスルーされてしまう事案と解釈されなくもないと思います。
 ですが、やはり先ほど来何人かの委員の方もおっしゃっておりましたように、家族がそれに関して差別的な取扱いを受けることはままあることなので、例えば1点提案なのですが、法の対象範囲、(1)「障害者」の最後の部分にでも「障害者の家族等は社会的障壁により様々な制約を受ける場合があることにも留意する」といった文章を追記するのはいかがでしょうかという提案です。
 以上です。

○石川委員長 ありがとうございました。
 長谷川委員、次にお願いいたします。

○長谷川委員 ありがとうございます。
 まず、法の対象範囲ですけれども、そもそも法の対象範囲は法に明記されるものですので、今般の法改正では、その範囲の改正はなかったと理解しております。そのため、基本方針において対象範囲を拡大することは適切ではないと考えます。
 不当な差別的な扱いについて、今回、事務局案において不当な差別的扱いに該当する例、しない例について示されたことは、個別事案に対応する現場での判断に資するものと存じ、評価します。
 正当な理由の判断の視点につきましては、障害者差別解消法に事業者の説明責任等を義務づける規定はなく、基本方針で義務づけることは適切でないと考えます。事業者に対して立証責任を求めるのではなく、事業者と障害者の間の相互理解を進めることが重要です。
 事務局案では「丁寧に」という言葉が追記されていますが、既に現行でも「理解を得るよう努めることが望ましい」という記載がございますので、改めての追記は必要でないのではないかと存じます。
 資料1の5ページの上段ですけれども、「行政機関及び事業者と障害者の双方が、お互いに相手の立場を尊重しながら相互理解を図ることが求められる」と記載いただいたことは、共生社会を実現する上で重要な視点であり、建設的対話を促進することにつながると考えます。
 間接的差別等について、今回の法改正では事業者に対する合理的配慮の提供が義務化されており、事業者としては、まず義務化の趣旨を理解し、対応することが共生社会の実現に資する上で重要だと考えております。
 他方、間接差別等については、それぞれの類型にどのような事例が該当するのかが明確でなく、法律に規定することが難しく、結果として法改正の対象とならなかったと理解しております。
 同様に、基本方針においても具体的な事例が蓄積されておらず、個別事例において何が間接差別に該当するのか、何をすることが求められているのかが不明確です。事業者には予測がつかないものが差別の概念に含められ、結果として対応できなかった場合に事業者が差別を行ったとされることは、現場に大きな混乱を生じさせ、事業活動を委縮させる懸念もあることから、適切ではないと考えます。
 基本方針では、新たな定義や概念を導入することよりも、今回の法改正に追加された事項に関する基本的な方向性を示すことにとどめ、差別の概念を拡大することには反対いたします。
 合理的配慮ですけれども、今般の法改正により事業者による合理的配慮の提供が義務化されたことを踏まえて、現場で円滑に対応していくには、合理的配慮の範囲の判断要素を明確にして、何が義務違反に該当し、何が該当しないのかということを現場レベルでしっかりと理解できるようにすることが重要です。
 昨年度の事業者団体においても様々な事例が挙げられており、好事例もあった一方で、現場が対応に苦慮しているという実態も多々報告されております。
 事務局案において合理的配慮の提供義務違反に該当する例、しない例の判断の視点が示されたこと、また、環境の整備と合理的配慮の関係について明確化されたことは、現場で適切に判断していく上で有効だと存じます。今後は、主務官庁が策定される業界ごとの対応指針においても事例の充実が行われることを期待します。
 また、行政には、一層の周知啓発に努めていただき、合理的配慮についての社会全体の共通理解の形成を図っていただきたいとお願いします。
 過重な負担の説明については、不当な差別的取扱いに関する正当な理由の説明と同様、過重な負担の説明に関しても、法に事業者に説明責任等を義務づける規定はなく、事業者に対して立証責任を求めるのではなくて、事業者と障害者の間の相互理解を進めていくことが重要です。
 こちらも事務局案では「丁寧に」と追記されていますが、既に現行で「理解を得るよう努めることが望ましい」と記載されておりますので、こちらの追記も必要でないのではないかと考えます。
 以上です。

○石川委員長 続きまして、曽根専門委員、お願いします。

○曽根専門委員 曽根です。
 まず、障害者差別解消法の基本理念では、全ての国民が障害のあるないに分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するということが目的と書かれていますので、今回、正当な理由の判断の基準あるいは合理的配慮との関係というところで、障害者と事業者双方が相互理解と建設的対話の姿勢を持つことが重要だと書かれたことは、法の理念から言っても非常に重要な記載だったのではないかと思います。ただ、丁寧ということについては、より入念に書くという意味では、私はあってもいいのではないかと感じました。
 次に、環境の整備の関係で、合理的配慮との関係というのが今回追記されまして、環境の整備と合理的配慮の関係が分かりやすく記載されたということは、理解の促進の上で重要だったのではないかと思います。
 また、相談・紛争事案を事前に防止する観点から、差別的取扱いや合理的配慮の提供に関する相談対応を契機にして、行政機関、事業者の内部規則やマニュアル等の制度改正といった環境の整備を図ることは有効という記載がありまして、これまでマニュアルの中に、結果として差別的な取扱いに当たるような対応が書かれていたことによって、マニュアルに沿って仕事をした従業員が差別をしてしまうことがあるのではないかということは、会議の中でも発言させていただいたと思うのですけれども、こういったことを端緒にして、マニュアルとか内部規則、研修、こういったものを差別を解消するという観点から改善していくというのは、この間、点で差別を解決していくというように対応していたものが、線的・面的に差別を解消することにつながる可能性があるのではないかと感じました。
 最後に、学校に家族の付添いが求められて、結果として家族が働けなかったという事例については、やはり私は当事者に対する差別という観点で整理すべきではないかと思いました。というのは、家族の付添いということは、事業者が合理的配慮の提供をしないで対応しているということになると思いますので、家族に対応を求めるというのは合理的配慮の提供になっていないと思うのですね。ですので、当事者の側から合理的配慮の不提供と整理していくのがいいのではないかと感じました。
 以上です。

○石川委員長 ありがとうございました。
 続きまして、大河内専門委員、お願いします。

○大河内専門委員 大河内です。
 門川委員がおっしゃっていた間接差別の事例について、少し補足してお話をしようと思います。
 先ほど補助犬のイベントで補助犬の入店拒否があるという差別がお話しされていましたけれども、同じような事例は東京でも、視覚障害者イベントの中の会場で飲食店に盲導犬が拒否されるような話はありますので、そういう事例は多分たくさんあるので、この辺も事例として重ねておいたほうがいいだろうなと思うことと、少し違いますけれども、これも間接差別の事例で、例えば電話リレーサービスを使って本人確認をする段階になって、それは難しいと断られるような事例とか、郵便局が分かりやすいですけれども、郵便局の障害者向けの非常にマイナーなサービスを近くの郵便局で申し込んだところ、本当はそういうサービスはちゃんと合理的配慮として提供されているにもかかわらず、担当の郵便局までその情報が届いていなくて、大きな声を出さないとなかなかそのサービスが得られないという事例もありますので、本来は提供される合理的配慮が様々な連絡ミスによってなかなかオーソライズされずに差別的な取扱いになってしまうという事例もあるなと思いますので、そういうことも事例として積み重ねていただけるといいのかなと思いました。
 以上です。

○石川委員長 続きまして、岡田委員、お願いします。

○岡田委員 ありがとうございます。全国精神保健福祉会連合会の岡田です。
 先ほど佐藤委員の方から、差別の調査についてということで発言を促していただきましたので、少しそのことをお話しさせていただきます。
 2019年に当会で精神障害当事者の家族に対する差別や偏見に関する実態把握全国調査というものを行いまして、30.22%の方が、家族が差別を受けた経験があると回答がありました。
 具体的には、多分これは親の立場だと思うのですけれども、発病の原因を負わされる、あるいは無視される、挨拶をしても返してもらえない、暴言や嫌味を言われるなど、家族に向けられた差別や偏見の事例がたくさん挙がっております。
 これらは他の親族や地域住民、支援者、行政職員、警察官、商店街の人など、あらゆる立場の人からの偏見に満ちた誤解、育て方や遺伝などは間違った情報なのですけれども、あるいは深刻な社会的排除や差別、例えば結婚が破談になったり、会社を辞めざるを得ない状況になるなどが含まれておりました。
 特に私が深刻だと感じましたのは、主に障害当事者の兄弟の方だと思うのですけれども、お見合いの相手から、親族に精神障害者がいるのでお付き合いできませんと断られたり、精神障害者の家系の者をこちらの家族に迎えることができないというように、人生に関わる大きな差別を受けている現実が分かりました。
 このことから、差別に関しては家族への配慮が必要であるという記載があるといいのではないかと考えております。
 以上です。ありがとうございます。

○石川委員長 続きまして、玉木委員、お願いします。

○玉木委員 ありがとうございます。
 もう皆さんが言われているように、今回、具体的な事例が入ったことはすごくよかったなと思っています。
 その上で、佐保委員がおっしゃったように、基本指針の本文中に全ての事例を書き込むことはなかなか厳しいのかなと思っていますので、別途Q&Aでもう少し分かりやすく整理していただいたほうがいいかなと思っています。
 その上で、例えば4ページの「(2)正当な理由の判断の視点」ということで、正当な理由なく不当な差別的取扱いに該当すると考える事例として3つあります。逆に、該当しないと考える事例として、またここも3つあります。この選び方なのですけれども、誰がどうやって選ばれたのかということが気になっています。
 なぜかというと、該当すると考えられる例については、割と幅広く普遍的な書き方がなされているのに、該当しないと考えられる事例になったら、いきなりすごくマニアックというか、あまり耳にしないような事例を書いておられる。これでいくと誤解が生まれるのかなと思います。
 一つだけ言っておくと、例えば2つ目の飲食店に和室があった場合に洋室に案内するということを書いているのですけれども、和室が多いところはなかなか洋室がないという状況があって、そういう場合、現実的にはブルーシートを敷くとか、段ボールを敷くとか、そういう対応をしているので、例えば部屋を替えたいということでもいろいろなことを試してみるということも一つあるのかなということが1点です。
 もう1点今日気づいたことは、8ページの「イ 合理的配慮との関係」という中で、下から3行目の「また、相談・紛争事案を事前に防止する観点からは、差別的取扱いや合理的配慮の提供に関する相談対応等を契機に、行政機関等及び事業者の内部規則やマニュアル等の制度改正といった環境の整備を図ることは有効であると考えられる」はすごくいい文章だと思うのですけれども、一方で、説明するときに、これまでの論議の中では具体的な文章を示すことができないという意見もあったのですけれども、全部が全部見せなくてよくて、例えば事業所でこういったマニュアルをつくった場合には、うちはこういう形でやっているのですと丁寧に説明をしていくということは、とても有効なことなのではないかと思っています。
 最後なのですけれども、やはり今回も聞いていて思ったのが、合理的配慮と建設的対話というのがどうも別々のこととして捉えられているように思っていて、やはり合理的配慮をやっていくためには建設的な対話をやり続けていく。その中で、丁寧な説明とか、当然当事者も真摯にそれを聞く姿勢を持つ必要があるのではないかと思いました。
 以上です。

○石川委員長 ありがとうございました。
 まだ発言を求めていらっしゃる方が6人いらっしゃいますが、ここで休憩を挟みたいと思います。再開は2時45分となります。よろしくお願いします。

(休憩)

○石川委員長 それでは、再開いたします。
 次に、大下委員、御発言をお願いします。

○大下委員 御説明ありがとうございます。
 私からは3点ほど申し上げたいと思います。
 初めに、法の対象範囲と差別の概念のところですけれども、私、今回いただいた資料で赤い文字で様々加筆・修正されている中で、一番大事なのは、9ページと15ページに同じ文章が新たに入っていますけれども、「お互いに相手の立場を尊重しながら、建設的対話を通じて相互理解を図ることが求められる」に一番の精神が入っているのではないかと思います。
 この相互理解という観点で考えますと、もう一つ今回の修正の中で非常にいいのは、たくさん事例を入れていただいているところだと思います。これは私ども商工会議所の会員の多くを占める小さな企業さん、事業者さんにとっても分かりやすくて望ましいことだと思っています。
 他方で、法の対象範囲を法に定められているものから過去・未来といった形で広げていったり、あるいは差別の概念についても間接差別というように広げていってしまうことは、少なくとも今の時点では、逆に理解を難しくしてしまう面もあるのではないかと思っています。そういう意味では、現時点ではいずれも望ましくないのではと考えています。
 2点目ですが、先ほど長谷川委員もおっしゃっていました正当な理由と過剰な負担のところの文章で、「理解を得るように努めることが望ましい」の前に「丁寧に」という一言が入っていますが、これは改めて追記せずとも十分趣旨は伝わると思いますので、特段追記は不要かなと思っています。
 最後に3点目、合理的配慮の部分です。今回、事業者の規模にかかわらず、一律に義務化とされます。ぜひ今回の義務化で、社会全体に、あるいは広く事業者さんに合理的配慮というものが理解されて取組が進むことを心から望みますけれども、中小企業さん、小さな事業者さんには一抹の不安がある部分もあるのではないかと思っています。これが指し示す範囲であるとか、あるいは負担が過重でないときということが指し示す意味、こういった辺りを事業者に向けて、あるいは社会全体に向けて、共通認識の形成が非常に重要かと思っておりますので、政府にはこの辺りの丁寧かつ十分な周知をお願いしたいと思います。
 私からは以上です。ありがとうございます。

○石川委員長 続きまして、米山委員、お願いします。

○米山委員 全国児童発達支援協議会の米山です。よろしくお願いします。
 最初の発言でございましたが、資料2の5ページになりますけれども、右側の下のところに「特に女性である障害者」ということで、ほかの方では「障害のある女性」の表現が幾つかあります。その下にある「障害児」というところでも、やはり「障害のある子供」なのか、御説明いただいた資料3の4ページにも「障害のある女性や子供等への差別」という表現があって、少し統一したほうがいいかなと思いまして、ここのところは「障害のある子供」という表現をすると思います。
 子供も、今、家庭庁のときは子供が全部平仮名になったのでそれをどうするかということと、国際法の中だと障害のある児童という表現もしていますので、その辺を法律と合わせて整理されるといいかと思います。
 もう一つだけ。今回、具体例も集めてそれを載せるということですけれども、何人かの委員からもありましたけれども、具体例を合わせると少し混乱することがあるので、具体例は別の項目立てにしていただきたいと思います。
 最後に、資料3の1ページ目に医療的ケア児の保護者よりというヒアリングの事例がありました。医療的ケア児というのは親とか支援の側からの表現で、実は医療的ケアを必要とする子供側にとってみると、この表現は必ずしもうれしいことではなくて、私どもが人工呼吸器をしている子供たちとも付き合っていく中ではそういう表現は一切しません。これは通称で医療的ケア児法というものができているのですが、本来は「医療的ケアの必要な子供」という言葉が正しいと思います。
 この言葉は、私も属していますが、1995年に日本小児神経学会から提案した言葉で、そのときから医療的ケア児みたいな形では言っておりませんので、今日の議論から外れるかもしれませんが、医療的ケア児というのはもう一度検討を願いたいと思います。
 以上です。

○石川委員長 ありがとうございました。
 では、大塚委員、お願いします。

○大塚委員 日本発達障害ネットワークの大塚と申します。ありがとうございます。
 意思表明についてのコメントです。資料1の7ページ、真ん中から下ぐらいですけれども、「障害者からの意思表明のみでなく、障害の特性等により本人の意思表明が困難な場合には、障害者の家族、介助者等、コミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う意思の表明も含む」となっております。
 権利条約の趣旨から言えば、家族、介助者等、コミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う障害者本人の意思表明ということなのでしょうけれども、ここにおいてはどうしても主語は、家族、介助者等が行う意思の表明ということですので、代理、代行的な意思表明ということでしか捉えられないと思っています。
 とはいえ、やはり意思表明が困難な方がいらして、現実にはいろいろなことを動かしていかなければならないということで、家族、介助者等の役割も重要だと思っています。先ほどの議論にもありましたように、とはいえ、やはりコンフリクト、家族、介助者と障害者との対立もありますので、恣意的な家族、介助者等の野放図というか、非常に拡大された意思の表明というのはなかなか受け入れられないのではないか。何かしらの枠組み、制限をつくったほうがいいかと思います。
 そういう意味では、家族、介助者等、コミュニケーションを支援する者が本人を補佐して、例えば本人の最善の利益の観点から行う意思の表明であるとか、あるいは意思表明を行う際には利益相反などに十分留意しながら行ってくださいというような、障害者自身をきちんと意識した注意等が必要なのではないかという意見です。
 以上です。

○石川委員長 ありがとうございました。
 続きまして、野澤委員、お願いします。

○野澤委員 野澤です。
 私、3時過ぎに出なければいけないので、間に合わないかと思ってひやひやしたのですけれども、ぎりぎりでありがとうございます。
 障害者の範囲と間接差別のところで、皆さんの意見を聞いていたり、資料を読んでいて感じたのですけれども、障害者の範囲の中に家族というのはちょっと難しいのかなと思うのですね。間接差別のところも、事業者の方にとっては曖昧で、見極めが難しくて不明確だったりするとなかなか難しいのかなと率直に思うのですけれども、そうだと本当に分かりやすい差別しか救ってもらえないな、法律はそういうものなのだなと思ってしまうのですね。
 この法律ができたときに、私も知的な障害の子がいる関係で、知的障害の親の会で、差別解消法がようやくできたといってあちこちでセミナーをやったり、研修会をやったりしたのですけれども、あまりぴんときてもらえないですね。これは身体障害の人たちの法律ねと見られるのですね。そうではないのだと、私、そのときは盛んに言ったのですけれども、今、改めて見るとやはり分かるような気がした。
 知的な障害、うちは自閉症でいろいろな行動も問題、特性があるのですけれども、小さな頃からずっと曖昧で、見極めが難しくて、不明確な間接差別とかハラスメントをいろいろな場面でいっぱい受けてくるわけです。それがすごいダメージなのですよ。
 例を挙げて、これが適切で分かりやすい例かどうかも難しいので、ここが難しさなのですけれども、例えばバスとか高速道路とかで割引制度を使おうと思って手帳を見せると、「障害者なのか」と大きな声で見せしめのように言われたり、ちゃんと提示しているにもかかわらず、「見えないんだよ」と嫌がらせをされたり、スーパーへ行ってちょっとパニックになると、警備員の人が「迷惑だ」と言われて、それは迷惑だろうなと思うのですけれども、警備員の方の高圧的な態度とか、排他的な雰囲気にはものすごく敏感に、ネガティブに響いてしまったりするのですね。これを立証するというのはなかなか難しいのですね。とても分かりにくいです。でも、分かりにくいからこそダメージになるのです。悪意のある人には巧妙にやられるのです。結局、なかなか社会に参加しにくくなる。委縮してしまう。
 一方で、今度は親が、障害のある子供にとっては社会的な参加を制限する加害者的な立場になるわけです。ストレスがたまったりして虐待に近いことになれば、まさに加害者になってしまうわけですね。そうすると、間接差別やハラスメントの被害者であり、障害のある本人に対しては虐待とか差別の加害者になるという二重のつらい立場に立たされるわけですね。ここは何とかしてほしいなと思います。法律というのはこういうものを救えないのかなと思うと、とてもむなしい気持ちになります。
 もう一つ皮肉なのは、強い親もいるのです。そこで負けずにちゃんと闘って、乗り越えて局面を開いていく親もいるのです。そうすると、やはり親の個人の責任、もっと頑張れと言われるのですね。普通の平均的な親がとても生きにくい。法律にも救ってもらえない。せっかくできた法律ですので、この辺のところも救えるようなものに、ぜひこの機会にしてほしい、したいなと思います。
 間接差別とかハラスメントという言葉を使うかどうかは別にして、非常に分かりにくい、不明確で曖昧なものでも、家族や本人の社会生活を制限するとか阻害するものがあるのだということは分かりやすく丁寧に明示してほしいと思いますし、こういうものを建設的対話の俎上に上げるようなものにしていただきたいと思っております。
 以上です。

○石川委員長 続きまして、岩上委員、お願いします。

○岩上委員 全国地域で暮らそうネットワークの岩上でございます。
 私は、資料2の3ページの「2 基本的な考え方」というところでお願いしたいと思っているのですけれども、大変いいことを書いていただいていると思うのですが、伝えたいことがございまして、これは障害者や、今、御家族の話もありましたけれども、そのための法律ではなくて、国民のための法律である、障害者がお願いをして差別をなくしてくださいという立場ではなくて、建設的対話をすることによってお互いを理解し、合理的な配慮も行い、私たちが目指すべき地域共生社会をつくっていくのだ、そのための法律であるということを分かる内容にしてほしいと思うのですね。
 それと同等のようなことは書いていただいているのですが、障害者の方々がお願いをしてではなくて、むしろ地域共生社会をつくっていくために、周りの方々が知らないことを、障害者や御家族が差別を受けていることについて教えていただいて、それによってよりよい社会をつくっていくための法律だということで、先ほど野澤委員もおっしゃっていましたけれども、いろいろなことのハードルがどんどん高くなってしまっているときに、強い御本人や強い家族でなくても、こういうことで困っているのだということを教えていただいて、それであれば私たちにできることはこういうことがあるね、そういう相互理解を目指しているわけですね。そういったことも書いてあるのですが、それを国民みんなで目指していく法律だということを、もう少し踏み込んで「2 基本的な考え方」に書いていただきたいと思います。
 以上です。

○石川委員長 片岡委員、お願いします。

○片岡委員 ありがとうございます。全国地域生活支援ネットワークの片岡です。
 皆さんの御意見を伺いながら、何点か意見を述べさせていただきたいです。資料1に沿って発言いたします。
 まず、資料1の3ページ目、「1 法の対象範囲」ですが、私も何人かの委員の方の発言と同様に、障害者の家族も対象に含むような工夫ができないかということを模索することに賛成いたします。
 あと、ちょっと細かいのですが、「(1)障害者」のところに「精神障害(発達障害を含む)」という記載が2か所出てきた後に、「なお、高次脳機能障害は精神障害に含まれる」という記載があります。これは「精神障害(発達障害・高次脳機能障害を含む)」とするか、文末にまとめて「なお、発達障害及び高次脳機能障害は精神障害に含まれる」とするか、どちらかの方向で統一するほうがすっきりすると思います。
 続いて4ページなのですが、「正当な理由がなく、不当な差別的取扱いに該当すると考えられる例及び正当な理由があるため、不当な差別的取扱いに該当しないと考えられる例としては、次のようなものがある」というところで、1ポツ目の「障害の種類や程度、サービス提供の場面における本人や第三者の安全性などについて考慮することなく、漠然とした安全上の問題を理由に施設利用を拒否すること」に「考慮することなく」という言葉を入れることに、何とも言えない違和感を覚えるのですけれども、「考慮することなく」を省いて、「安全性などについて漠然とした安全上の問題を理由に」云々と書いてもいいのではないかという意見を持っております。
 また、その下の(正当な理由があるため、不当な差別的取扱いに該当しないと考えられる例)で、旅客船や航空機のことが例で挙がっておりますが、これは私も竹下委員が述べられた考えと同様の考えを持っており、削除の方向に賛成いたします。
 最後に5ページの「行政機関等及び事業者は、正当な理由があると判断した場合には、障害者にその理由を丁寧に説明するものとし」、途中を省略しまして「お互いに相手の立場を尊重しながら相互理解を図ることが求められる」という記載がありますが、先ほどから「丁寧に」という言葉の削除という話が上がっていますが、お互いに相手の立場を尊重しながら相互理解を図るためには、やはり慎重で丁寧な説明が必要だと考えます。したがいまして、せめて「丁寧」という言葉の追記はされるべきだという考えを持っております。
 以上です。

○石川委員長 では、佐保委員、お願いします。

○阿部委員 日本身体障害者団体連合会の阿部です。よろしくお願いします。
 私も、多くの委員の皆様がおっしゃるように、具体的な事例が示されるということは、事業者も含めて多くの方に伝わってよいと思います。ただし、事例集で示すほうがもっと分かりやすいのかなと思います。
 そのような中で1点なのですけれども、環境の整備との関係、合理的配慮との関係の中で、17ページの一番上のポツです。「不特定多数の障害者が利用することを想定し、あらかじめ携帯スロープを購入した上で(環境の整備)、車椅子利用者から出入口の段差を乗り越えるための支援を求められた場合に、段差に携帯スロープをかける(合理的配慮の提供)」とありますけれども、そもそも環境の整備であればスロープをつけるということが環境の整備なのかと思います。
 携帯スロープを購入した上で合理的配慮をするのは、合理的配慮として大事なことです。環境の整備とは、恒久的なスロープをつける、または段差がないようにするのが環境の整備だと考えます。ただし、環境の整備をすぐに行うためにはいくつかの問題があり、すぐには行えない場合に取組むのが合理的配慮であるということが伝わるようにしていただきたいと考えます。
 以上です。

○石川委員長 ありがとうございました。
 委員長ですけれども、ここで私も発言させていただきたいと思います。
 何点かございます。まず第1点は、法が対象とする障害者は、障害者基本法に定義された障害者である。したがって、手帳所持者に限らないとなっていまして、その後はなお書きで、片岡委員も指摘された高次脳機能障害について精神障害に含まれるという記述がありますけれども、この部分は片岡委員に賛成です。
 ここに、「また、個々の障害法の対象や指定範囲に限らない」ともっとはっきりと、差別解消法が対象とする障害というのは、個別の障害法のそれぞれの事情なり理由によって対象とされている障害者に限るものではないのだということを書くべきだと思います。
 2点目、事業についてなのですけれども、対面とオンラインとのサービス形態の別を問わないということも強調しておきたいと考えます。オンラインの店舗、オンラインのストアにおける合理的配慮についても、差別解消法は対象としているのだということをはっきりと示さないといけないと思います。
 3点目ですけれども、車椅子、補助犬その他の支援機器の利用、介助者の付添い等の社会的障壁を取り除くための手段を理由として行われるサービス提供の拒絶・制限等も不当な差別的取扱いに含まれるというように、いわゆる雇用促進法と同じ態様になるかもしれませんけれども、そのように述べるのがよいと考えます。
 4点目ですけれども、過重な負担の説明に当たってはという部分ですが、可能な限り資料を示すなどして丁寧に説明する。「丁寧に」は不要ではないかという御意見もございましたけれども、「資料を示すなどして丁寧に説明する」。資料を示すということは重要なことで、なぜかというと、説得力をもって丁寧に対話的な関係の中で、なぜ求められている合理的配慮の提供が難しいのか、困難なのかを理解してもらう努力を事業者には求めたいということで、立証責任を事業者に課すという趣旨ではないということを示す意味でも「丁寧に」というのは残して、さらにその前に「資料を示すなどして」と書き加えることを提案したいと思います。
 5点目です。環境整備につながる合理的配慮に関してですが、波及効果のある方法を推奨するような記述がよいと考えます。現状は中長期的なコスト削減を理由とする説明になっていますけれども、それは各事業者が言わなくても当然考えておられることで、そうした理由づけよりは、法の趣旨からすると、次に同様の社会的障壁に直面する経験を避けるという意味で、波及効果がある方法の方が、波及効果のない全く個別的な合理的配慮よりもほかの条件が同じであれば勝っているということを説明の中に加えていくほうがよいと考えます。
 もう1点ですけれども、不当な差別的取扱いに当たらない事例の1つ目は、竹下委員もおっしゃっていた、あるいはほかの委員もおっしゃっていた点ですけれども、実はこれは国土交通省の航空機についての対応指針でもほぼ同様の記載があります。本日も御出席いただいているので、この辺りについての御答弁というか、追加的な情報をいただけるかなと思いますけれども、どのようにして合理的配慮を尽くしても緊急時に避難指示を伝えることができないということを事業者が知り得るのか、私には分からないのですね。これはどのような障害やどのような状況を想定しての事例なのでしょうか。
 移動の自由を事業者が絶対的に拒絶できるような事例を事例のイの一番に挙げてしまうということはかなりリスクのあることだし、基本方針の趣旨というのは差別解消を推進していくための基本方針なので、本当に誰もが理解できるし、納得できる、そして条件がはっきりした事例であれば有用なのですけれども、それが何を意味しているのか、解釈の範囲が広過ぎたり、曖昧な事例を挙げることは、かえって副作用が大きいと考えます。
 私の意見は以上です。
 それでは、熊谷委員、お願いします。

○熊谷委員 何度もすみません。熊谷です。
 法律の対象に家族を含めるかどうかという議論に関して、皆さんの御意見を伺いながら少し追加でコメントを述べてみたいと思います。
 例えば、一つの案として「1 法の対象範囲」の「(1)障害者」という項目の最後に、「障害者への差別が家族などの二次的依存状態や家族などへの関係者差別をもたらし得る点に留意する」という追記をするのはよい方法なのではないかと思いました。
 何にこだわっているかを少し御説明いたしますと、一次的依存状態と二次的依存状態は明確に分けるべきである。すなわち障害者が依存状態に置かれているということと、社会から障害者のケアを負わされて、家族が依存状態、例えば就職ができないであるとか、そういった状態のことを二次的依存状態と呼ぶことがありますが、その一次と二次は明確に分けるべきであろう。
 もう一つは、本人への差別とそれが波及する形での関係者差別は、概念上明確に分けるべきであろう。
 なぜ分けなければいけないかというと、歴史を振り返ったときに、二次的依存状態や関係者差別だけを解消しようとして、障害者本人を隔離的な環境に置いたり、あるいは存在を隠したりといったことが歴史的には過去にあったわけですね。そういう二次的依存状態や関係者差別を優先して一次依存状態や本人差別を後回しにするということだけは、この法律では避けるべきであろう。あくまでもこの法律は、本人の一次的な依存状態と本人への差別を解消するためのものであって、そこから波及的に二次的依存状態や関係者差別が生じるということは視野に入れて、留意はしなくてはいけないけれども、本丸は一次的なほうであるという整理をしないと、どちらか一方だけ、特に後者だけということを過去に繰り返したことを踏まえると、そういった整理は譲れないのではないか。
 ただ、実際調査にもあるように、家族への不当な差別があることは、私自身の家族との経験を振り返ってみてもたくさん思い出されることがありますので、それは事実だと思います。何とかしなくてはいけないと思いますが、整理としてはそのように整理するべきであろうと考えているところです。
 長くなりましたが、補足いたしました。

○石川委員長 ありがとうございました。
 それでは、ここで事務局あるいは各省からも発言や参考意見、情報をいただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

○立石参事官 事務局、内閣府でございます。
 今後御議論いただくに当たって整理をしたい点について、発言をさせていただければと思います。
 今ほども委員の皆様からいろいろな御意見をいただいた、家族への差別についてでございます。家族への差別について、様々な差別の実例があるというお話をいただいたところでございます。
 ただ、今回の差別解消法につきましては、差別禁止の責任を負うのは事業者、行政機関でございますので、例えば近所の人であるとか親戚、そういった方からの差別というのは法律の対象でないことを確認させていただければと思います。
 それから、間接差別につきまして、こちらも事例をたくさん挙げていただきました。ありがとうございます。その中で、雇用の関係、就職の際の採用試験とか条件、そういった事例について多くいただいたところでございます。
 ただ、雇用につきましては、障害者雇用促進法の方で対応するということを差別解消法上明確に書いておりますので、雇用につきましては、今回こちらの射程ではないということを確認させていただければと思っております。
 委員から御質問がございましたが、資料3の1つ目のヒアリングにおいて提供された事例の中で、医療的ケアを受ける子供についての事例というのは、御本人への差別と引きつけづらいのではないかという御発言があったと思いますが、私どもとしては、異なる条件をつけるということで、御本人への差別ということで対応することも可能なのではないかと考えております。
 私ども、資料をつくりました関係から、書いた趣旨を幾つか御説明したい部分がございます。「(2)正当な理由の判断の視点」のところで、不当な差別的取扱いに該当すると考えられる例、不当な差別的取扱いには該当しないと考えられる例、それぞれ3つずつ事例を載せているところでございます。
 該当しないと考えられる例のところでいろいろと御意見をいただいているところでございますが、今回こちらを載せた趣旨として、差別に該当すると考えられる例の1つ目のところで、「漠然とした安全上の問題を理由に施設利用を拒否すること」というのを載せておりまして、ヒアリングでも漠然とした安全上の理由ということを言われて断られるという御意見もあったのではないかと思っております。
 そういったことを踏まえて、個々にきちんと必要性を考慮すべきなのに、障害の種類や程度、サービス提供の場面における本人や第三者の安全性、そういった個々に判断すべきことをきちんと考慮することなく、漠然とするのはよろしくないということで、1つ目の例で載せたところでございます。
 一方で、安全性ということにつきましては、正当な理由の判断の観点として、やはり一つ重要なものであると考えておりますので、不当な差別的取扱いに該当すると考えられる例もあれば、正当な理由があるから該当しないと考えられる例もあるという両方の事例を示すべきと事務局として考えまして、1つ目のポツの例を挙げさせていただいたものでございます。
 環境の整備と合理的配慮の関係のところで、やはり事例を載せておりまして、委員から、携帯スロープを購入するというよりは、むしろスロープをきちんとつける例の方がいいのではないかと御指摘をいただいたところでございます。
 このような事例とした趣旨といたしましては、環境の整備と合理的配慮の両者が絡み合っているところから、その両方が関係できるような事例として、携帯スロープを購入するということと、それを使用して合理的配慮を行うという例として載せているものでございます。段差を乗り越える例として、携帯スロープにすべきであるとか、スロープを設置するべきであるとか、そういったことを示したものというよりは、環境の整備と合理的配慮の関係を示す例として載せたという趣旨として御説明をさせていただければと思っております。
 事務局として御説明、補足をさせていただきました。以上でございます。

○石川委員長 ありがとうございました。
 国土交通省、可能であれば対応指針の事例と今回の基本方針の中で上げようとして、事務局の方で準備をしていただいた事例の類似点もございますので、御所見をいただければと思います。

○国土交通省(総合政策局北小路企画調整官) 国土交通省でございます。
 今回事例として記載させていただいてございます旅客船や航空機におきまして、コミュニケーション等に係る合理的な配慮の提供等を行っても、係員、職員の安全に関する指示が理解できないおそれがあるときに付添いを求めるということで記載をさせていただいてございます。
 安全の確保という観点で、障害の有無にかかわらず、客室乗務員であったり乗組員であったりということになりますけれども、係員の指示に従っていただけないおそれがある場合というのは、実際に乗船、航空機も乗っていただくことをお断りする場合があるというのは、一般論として全て適用させていただいているところでございます。
 ですので、国土交通省としては、旅客船、航空機、どちらにおいても安全に関する情報提供というところでは、例えば航空機内での安全に関するお知らせについては、手話を追加するなど、そういったコミュニケーションができる体制を整えていきつつ、一方で、係員の指示に従っていただけないおそれがある場合については、付添いの方をいただく形でのお願いをする場合があるということで、記載をさせていただいているところでございます。
 こちらについて、直近でも大きな事故が起きております。安全の確保というところで様々取組をしているということは御理解いただければと思っております。よろしくお願いいたします。

○石川委員長 ありがとうございました。
 ただ、質問に対して直接的な答えをいただいていない印象なのですけれども、いかにして意思疎通ができないということを事業者あるいは空港職員あるいは機内スタッフが確認できるのでしょうか。あるいは、するという想定なのでしょうか。

○国土交通省(総合政策局北小路企画調整官) こちらは現場での対応となりますので、ケース・バイ・ケースでの状況になると思いますけれども、当該お客様と係員なりが会話をさせていただく中で、しっかりと言っていることを理解して行動していただけるかといったところでの判断となってございます。また、例えば障害手帳をお持ちの場合であれば、その内容等に応じて判断させていただくという形になります。

○石川委員長 本件について、竹下委員あるいはほかの委員も御指摘があったかと思いますが、もし御意見・御質問等があれば。
 竹下委員、どうぞ。

○竹下委員 竹下です。
 私は少し誤解があると思っているのです。例えば3つ誤解を言いますと、コミュニケーションがとれないという要件を言うのだけれども、コミュニケーションがとれないとか、あるいは乗務員からの意思が伝わらないというのは、それ自身がケース・バイ・ケースというか、主観的なのです。
 現に事例として挙がっているのは、全盲の方に対しても言われるわけです。緊急時に方向が分からないだとか、ランプが見えないだとか、そういうことがあると、それも指示が伝わらないから危険だという例に入るのです。
 2番目には合理的な配慮を尽くしてもと言うのだけれども、どういう内容を尽くしたかというのは示されていないのです。
 もう一つは、実際にはそう言いながらも、この基準で弊害が起こっている例を見てみますと、例えば小さな飛行機だから駄目だ。現に、私は国内で移動することが多いために、これに引っかかったのは今までに3回も4回もあるのだけれども、それで抗議すると結局のところは乗せてくれるのです。だから、何が問題なのかということは非常に曖昧で、場合によっては乗務員というか、受付というのか、よく分かりませんが、担当者によって判断が分かれているのではないかとさえ思える場面が多過ぎるのです。
 ですから、こういう曖昧な基準を基本方針に掲げるというのは相当に弊害が広がっていって、極端な話、重度の障害者はほとんど乗れなくなるのではないかという懸念を持たざるを得ないということを分かっていただきたいと思います。
 以上です。

○石川委員長 眞保専門委員は関連して挙手ボタンを押していらっしゃいますでしょうか。

○眞保専門委員 眞保です。ありがとうございます。先ほど国土交通省の方より「障害手帳をお持ちの場合であれば、その内容等に応じて判断させていただくという形になります。」とのご回答がございました。知的障害のある方、発達障害のある方の中には、コミュニケーションに困難がある方もいらっしゃいます。ただ、そうした方でも企業で業務指示の内容を理解して働いていらっしゃる方もいます。発話が明瞭でなくても指示は理解できている、という方もいらっしゃいます。「緊急時に職員の安全に関する指示が理解できない」かどうかは手帳の内容で判断が難しく、かつ個別性が高い内容だと思います。
 「(2)正当な理由の判断の視点」の例示の表現ですと、対象となる方を現場で拡大して解釈されることを懸念いたします。
 また、第三者の安全ということがこの文章の中に含まれていないように思うのですけれども、括弧書きのところでは「第三者の安全上の確保の観点」となっています。障害のある方の安全という趣旨だけでよいのではないでしょうか。障害のある方が船舶や航空機を利用されると緊急時に「第三者の安全確保」が図れない、といった誤った解釈がなされる恐れを懸念いたします。

○石川委員長 内閣府、どうぞ。

○立石参事官 内閣府でございます。
 今の眞保専門委員からいただきました第三者の安全確保の観点でございますけれども、こちらは内閣府として入れさせていただいているものでございます。
 こちらなのですけれども、安全の確保ということを考える場合には、御本人はもちろんのこと、ほかの乗客の方の避難への影響といったこともあるのではないかということから載せたものでございます。直接事例の文章の中に入っていないという御指摘でございましたけれども、そういった観点から入れているところでございます。
 以上でございます。

○石川委員長 ありがとうございます。
 多くの委員も懸念を示されていますけれども、これですと、例えば事前に予約する際にこれこれの障害があるのですと伝えると、その情報だけを基にして避難時に意思疎通が困難である可能性があるとして、事業者は同行者の付添いを求めてもよいというのが国交省の御判断ですか。
 さらに言えば、既に搭乗した後に話しかけた際に、例えば視覚障害あるいは聴覚障害で、手話ができる乗員は事前予約がないので乗っていないといった場合に、付添いはいませんと言ったら降りていただけますかと。あるいは、機長が大丈夫だと言えば大丈夫だけれども、機長が責任を負えないと言えば降りていただくみたいな話も適法であるというのが国交省のお考えかどうか、確認させてください。

○国土交通省(総合政策局北小路企画調整官) 国土交通省でございます。
 今の御質問につきまして、事前に御予約頂く際に障害をお持ちといったことをお申し出いただいた場合については、その内容等を事業者の方で確認させていただくといった形があると思います。その中でお話をいろいろとお伺いしながら、必要に応じて付添い等のお願いをすることがあるところではありますけれども、先ほど竹下委員の方からは拒否された事例があるということで御指摘があったところで、そういったところは国土交通省の方でも内容についてしっかり確認させていただきたいと思いますけれども、原則としてお一人で移動できる方について、付添いを求めるような形はないといった対応を事業者の方が行っていると我々としては認識しているところです。
 その上で、繰り返しになりますけれども、例えば実際に事故等が発生した際は通常とは異なる状況ですので、例えばコミュニケーションの方法については、事前に手話ができる者がいる、いないといった話や、コミュニケーションボードを用意している、していないといった条件も含めて、当事者の方々にこういった形になりますといったことを確認させていただくこともあるかと思います。その上で、安全の確保が難しいといった状況であれば、どなたか付添いの方をお願いするといったこともあると思っています。
 先ほどから御指摘いただいていますが、ちゃんと移動ができるような体制を整えていくことは非常に重要と思っており、国交省としては全体としてちゃんと移動ができるような形にできるよう施策として進めさせていただいているところです。
 一方で、安全の確保というものもきちんと行っていかなければならないところでありますので、まさにこれは一方的に通告をするというよりは、しっかりとコミュニケーションをさせていただいた上で、御理解いただきながら御利用いただきたいということになってございます。

○石川委員長 ありがとうございます。
 安全運航時には単独で問題なく旅行できる多くの人々が、いざ緊急時となったときに、事業者から見て、安全確保、避難誘導とか避難指示について責任が持てないと判断されてしまう場合には、緊急時はいつ起きるか分からない、確率は低いけれども、起きる可能性があって、そのことを考慮して、例えば現場の責任者、機長とか船長が判断する。付添いがいないと乗せられないという判断をされたら、会社としてもその判断を尊重せざるを得ないし、国交省もその判断は適切だと判断するという理解でよろしいですか。

○国土交通省(総合政策局北小路企画調整官)実態として、安全の確保というのは機長また船長等に課せられている。これは航空法や船員法で規定されているところでございます。一方で、その判断が正しかったのかどうか、もしくは正当であったかどうかといったところについては、国交省は相談窓口等も設けさせていただいてございますので、例えば疑義がある場合であれば事後的にも確認をさせていただきたいと思ってございます。

○石川委員長 ありがとうございます。
 本件については、移動の自由に関わる非常に重要な案件なので、きちんと詰めて相互理解を深めていきたいと考えておりますが、またそのような対話の場を持たせていただきたいと思いますけれども、前向きに御検討いただきたいと思います。
 それはそうとして、この複雑な変数が関わっている事例を基本方針の中の不当な差別的取扱いにならない事例の1番に入れることが適当かどうかについて、多くの意見が消極的もしくは反対のお立場かなと思ったのですけれども、各委員のお考えをもう一度確認したいと思います。
 内閣府、どうぞ。

○立石参事官 内閣府でございます。
 本日、今回この事例も含めていろいろ御意見をいただきましたので、いただいた意見を踏まえて、また次に御検討いただく資料という形でお出ししていければと思っております。よろしくお願いいたします。

○石川委員長 では、この事例に限りませんけれども、さらに検討を深める、あるいは再検討をするということでお願いしたいと思います。
 時間が大分過ぎましたので、本日はほかにもございますけれども、あと1点だけ申し上げたかったのですけれども、接客において障害のある客に対して事業者がサービスの質を下げるという事例があったのですが、もっと踏み込んで、実際に様々経験されている事例として、レベルを下げるというレベルでなく、ハラスメントを経験する、嫌な顔をされたり、公然とした拒絶ではないけれども、二度と行きたくない気持ちにさせられるような接客というのは事実上拒絶と変わらないので、そうしたことも基本方針の中で書いたほうがよいと思います。先ほど申し上げるのを忘れたので、追加コメントをさせていただきます。
 それでは、ほかによろしいでしょうか。次回もまた引き続き検討いたしますので、時間の関係もありますので、障害者権利委員会の対日審査に向けての政策委員会の意見の最終確定をしたいと思います。
 では、事務局、お願いいたします。

○立石参事官 事務局でございます。
 議題2でございます。資料につきましては、資料4を御覧いただければと思っております。前回第63回の委員会での御審議を踏まえた最終原案を資料4の形でお示ししたものでございます。
 時間の制約もございますので、前回の審議内容を踏まえて、修文内容について特に確認が必要と考えられる6条、7条、12条、19条、21条、24条及び30条の部分につきまして、事務局より御説明、読み上げを行わせていただいて御確認いただければと思っております。
 なお、ほかの条項に係る部分につきましては、若干の文言の適正化を図っておりますが、いずれも前回の審議において委員会で確定したものとなっております。
 それでは、順番に御説明させていただければと存じます。
 最初に、資料4の3ページをお開きいただければと思います。「第6条 障害のある女子」でございます。第6条について、前回保留となってございましたのは懸念点のところでございますけれども、そこで委員の御意見として、障害のある女性が性犯罪、性暴力に遭わないように性被害防止プランを策定ということを書いてはどうかという御意見があったことから保留となっていたものでございます。今回その御意見を踏まえて文言を調整しておりますので、懸念点、「以下の対応を求める」のところの1つ目の○を読み上げさせていただきます。
 「障害者権利条約第6条『障害のある女子』に対応するため、例えば、福祉施設、在宅介護サービスや医療施設での同性介助の標準化や障害のある女性に対する性犯罪防止策の更なる推進などに取り組む必要がある」としているものでございます。
 続きまして、第7条でございます。
 第7条につきましては、前回、障害のある子供についての進捗及び懸念につきまして委員から御意見があり、事務局に提案を御送付いただくということになっていた部分でございます。次のようにしております。
 第7条 障害のある児童
 障害者政策委員会は、以下の点を懸念し、対応を求める。
 ○ 障害児は、被虐待のリスクがある。児童虐待防止を視野に入れた援助や支援の充実が求められる。
 続きまして、第12条、4ページでございます。
 この12条でございますが、前回御議論となっておりましたのは、前回の原案におきましては、5行目の「制限されることがある制度となっている」に続きまして、改行がない状態で「意思決定の支援及び法的行為能力の行使を支援する社会的枠組みの構築が急務である」とされていたものでございます。
 その点に関しまして、御意見として、意思決定支援が成年後見制度の見解の中だけで記載されているように見えて不十分ではないか。新たな項目を立てて記載すべきではないかという御意見と、日常的意思決定支援は法的行為能力の支援のもっとベースになる部分であり、12条の実施の課題とするのはやや正確ではないので、項目を分けるのではなくて、改行して記載すべきではないかという御意見。また、制度の内外においてという形で一つにつなげてはどうかという所管官庁からの意見があったところでございます。
 これらを踏まえまして委員長と御相談し、次のようにしております。
 12条、障害者政策委員会は以下の対応を求める。
 「○ 成年後見制度のうち、特に代行型の枠組みである後見類型は、最良の支援を提供しても、なお法的行為能力の行使が困難な場合に本人の権利と利益を守るための最終手段として利用されるべきものである。しかし、現行制度は、意思決定能力がある場合でも、事理弁識能力がないとされると、法的行為能力が制限されることがある制度となっている」。
 ここで改行し、「法的行為能力の行使及び法的行為能力の行使に繋がる日常的意思決定を支援する社会的枠組みの構築が急務である」としております。
 続きまして、第19条、5ページでございます。
 第19条につきましては、懸念点の1つ目の○でございます。ここの「入所施設から地域移行が進んでいないことが課題である」という部分につきまして、委員から、とりわけ条約批准後に地域移行が減速している。2010年より2018年では1,525人減っている。期を追うごとに続々と下がっていることを踏まえ、追記すべきとの御意見がございました。
 担当省庁に確認しましたところ、地域移行の数が減少していることについては、高齢化による影響なども考えられるということで、様々な理由があるとの見解でございました。
 これらを踏まえ、委員長とも御相談をいたしまして、趣旨につきましては、地域移行が進んでいないということで御意見の趣旨が含まれているということ、それから、全体方針としても細かい数値などは記入しないという方針で進めていることから、元の文章のままで維持しているものでございます。
 続きまして、6ページ、21条でございます。
 21条につきましては、進展の1つ目、電話リレーサービスの法律につきまして委員から御意見がございました。電話リレーサービス自体は評価できるが、実際には課題があり、うまく使えないことがあるから、その旨を課題の方に入れてほしいという御意見がございました。
 この点につきまして委員長と御相談をいたしまして、今回顕著な課題を記載すべきところ、同法は2020年に交付・施行の新しい法律であり、現段階で停滞しているとまでは言えないということから、元の文章のままとしてございます。
 それから、24条、教育でございます。
 7ページでございますが、懸念点といたしまして、学校の選択につきまして、障害者権利条約の啓蒙についての御意見がございました。前回の委員会では、啓蒙をもっとすべきという御意見と、一方で十分に啓蒙されているのではないかという御意見がございました。これら御意見が異なっておりますことから、この点については委員会として合意が難しいのではないかと考えられたところ、今回は追記していないという形になってございます。
 また、高等学校や私立学校における合理的配慮の施策を推進する必要があると追記すべきとの御意見がございました。
 この点につきましては、特に私立学校における合理的配慮については、これから義務化が施行となりますので、顕著な懸念とまでは言えないということで、追記はしないということとなってございます。
 「第30条 文化的な生活、レクリエーション、余暇及びスポーツへの参加」でございますが、1つ目の○の進展部分につきまして、文化芸術活動の法律につきまして、進展ということで入れておりましたところ、地方自治体における計画策定率がむしろ低いということで、懸念点にすべきではないかという御意見がございました。
 こちらにつきまして委員長と御相談をし、こちらの法律につきましても平成30年にできたばかりということで、顕著な懸念とまで言えるかどうかということで、元のままとしているものでございます。
 駆け足でございますが、説明については以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○石川委員長 ありがとうございました。
 1点、6条で気がついてしまいまして、「障害のある女子」と「障害のある女性」、2つの表現がありますが、「障害のある女性」に統一させていただきたいと思います。編集的な修正ですので御理解いただきたいと思います。
 以上で最終確定とさせていただきたいと考えております。委員の御賛成をいただきたいと思います。反対の方は挙手ボタンを押していただけますか。
 どうもありがとうございました。全員の賛成を得ることができました。パリ原則に基づいた独立した監視枠組みの先進国と比肩しましても、当政策委員会の報告は遜色ないレベルであると考えております。
 御発言でしょうか。門川委員。

○門川委員 門川です。ありがとうございます。
 24条が引っかかっています。「政策委員会は、以下の対応を求める」で、実態把握について入れていただいているのですけれども、「障害のある児童生徒に関する実態把握のための調査」と入れていただいているのですが、そこを障害種別ごとの児童生徒に関する実態把握のための調査と修正していただくことはできないでしょうか。
 理由は、特に盲聾児童生徒は通常学級にどれだけ在籍しているか、データがとれていないこと。どんな学習上の困難とか、学習指導を受けているかが分からないので、障害種別ごとの実態調査としていただきたいのですが、よろしくお願いします。

○石川委員長 この部分ですけれども、そうしましたら「詳細な調査」とさせてください。詳細な調査は、今、門川委員がおっしゃったような観点も含め、さらにもっと踏み込んで、様々な観点からの調査ということになると思いますので、いかがでしょうか。
 門川委員、詳細な調査ということで賛成していただけないでしょうか。

○門川委員 分かりました。ありがとうございます。

○石川委員長 ありがとうございます。
 ほかの委員の御異論はないと思います。これで最終確定とさせていただきます。
 繰り返しますけれども、独立した監視枠組みとしての報告としましては、権利委員会の目線から見ても、国際的な水準の報告になったと思います。御尽力をいただいた委員、事務局、御協力いただいた各省に厚くお礼を申し上げます。どうもありがとうございました。
 英訳をいたしまして、できるだけ速やかに国連の障害責任委員会に送付するように事務局にお願いしたいと思います。ありがとうございました。
 そうしましたら、本日予定しておりました議題は以上となります。
 佐藤委員。

○佐藤委員 佐藤です。
 総合支援法の見直しのことについて一言発言させてください。
 3月に開かれた第125回社会保障審議会障害者部会で、委員から、対日審査との関係でも、政策委員会として総合支援法の検討が必要な論点を障害者部会に出してほしいという意見が出ておりました。これを受けて、障害者政策委員会でも議論が必要ではないかと思っています。
 国連は現在、脱施設ガイドラインを検討しており、昨年の12月にはアウトラインが示されて、近々確定されたものが公表される見込みです。このような国際的な流れを鑑みて、総合支援法の地域移行の課題について、政策委員会で議論が必要だと思いますので、ぜひ御検討をお願いいたします。

○石川委員長 どのぐらいの時間を要する議論が必要だと見積もっていらっしゃいますか。

○佐藤委員 取りあえず1回はやっていただきたいと思います。

○石川委員長 また事務局と相談してみます。まだ安心できる状況ではなく、差別解消法の基本方針の改正作業もまだ緒に就いたばかりですし、第5次基本計画の策定作業という大きな仕事がありますので、総合支援法については障害者部会の方で当事者参加型で議論されているので、各分野でPDCAサイクルがきちんと回っているところについては、そこを信頼してお任せするというのが政策委員会の立場かなと考えていて、むしろ回っていない分野こそ政策委員会で議論すべきなのではないかと思っているのです。
 総合支援法の分野は、障害者部会で当事者参加型で十分に回っているのではないかと私は理解しているのですけれども、いかがでしょうか。

○佐藤委員 佐藤です。
 条約の理念を踏まえた法改正、地域移行を進めていくというところが、今の中の議論では少し弱いのではないかと聞いていて思います。特に脱施設ガイドラインのまとめがこれから国連で出されようという中ですので、そこの部分は政策委員会として議論する必要があるのではないかと思いました。

○石川委員長 事務局とも相談してみたいと思います。
 それでは、事務局から次回の委員会の日程等についてお願いします。

○立石参事官 事務局でございます。
 次回の政策委員会の詳細につきましては、委員長に御相談の上で確定次第御案内をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

○石川委員長 それでは、以上をもちまして、第64回「障害者政策委員会」を閉会いたします。本日はありがとうございました。