障害者政策委員会(第79回)議事録

令和6年6月24日(月)
13:00~15:00
中央合同庁舎8号館 1階講堂
(ハイブリット開催)

【議事に使用されている資料については「議事次第」のページにまとめて掲載していますのでご参照ください。】

○熊谷委員長 それでは、定刻になりましたので、これより第79回「障害者政策委員会」を開会いたします。
 委員の皆様におかれましては、御多忙中のところ、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。本日の委員会は15時までを予定しております。
 それでは、事務局より委員の出欠状況について報告をお願いいたします。

○小林参事官 事務局です。事務局より御報告申し上げます。
 本日は、浅香委員、安藤真理子委員、大下委員、黒岩委員、内布専門委員から所用により御欠席との御連絡を受けております。

○熊谷委員長 ありがとうございました。
 次に、本日の議題及び資料について、引き続き事務局より説明をお願いいたします。

○小林参事官 事務局です。
 本日は、障害者政策委員会前委員長で国連障害者権利委員会元副委員長であり、現在は静岡県立大学名誉教授、障害学会会長でいらっしゃいます石川准先生をお迎えし、「第5次障害者基本計画の実施状況の監視に向けての視点」と題しまして御講演をいただくことになります。
 資料につきましては、石川先生から御提供いただきました御講演の資料を資料1として用意しております。
 以上になります。

○熊谷委員長 熊谷です。ありがとうございました。
 本日は、石川先生の御講演終了後に15分程度の休憩を取りまして、残りの時間を石川先生との質疑応答の時間としたいと思います。
 それでは、早速、議事に入りたいと思います。
 まず、石川先生には、本日、大変お忙しい中、障害者政策委員会において御講演いただきますこと、改めて深く感謝申し上げます。
 それでは、石川先生、御講演のほうをどうぞよろしくお願いいたします。

○石川先生 御紹介ありがとうございます。石川です。
 既に今日の話の資料をお配りしておりまして、ほぼその内容のとおりにお話を最初にいたします。
 では、早速、話します。
 3つのパートからなっておりまして、最初に権利条約と権利委員会についてお話しします。2つ目に、国内制度改革と対日審査について。3点目に、政策委員会にお願いしたいことについて、お話をいたします。
 まず、権利条約ですけれども、障害のある人の人権や基本的自由を守ることなどを目的として、障害者の権利を実現するために、各締約国、批准した国々、あるいは地域がすべきことを規定しています。
 国連の主要人権条約と呼ばれる条約が9つあります。半世紀をかけてこれらの主要人権条約を制定してまいりました。人種差別撤廃条約、自由権規約、社会権規約、女性差別撤廃条約、拷問等禁止条約、子どもの権利条約、移住労働者権利条約、それから、障害者権利条約、強制失踪者保護条約の9つです。
 なぜこれらの条約が主要人権条約と呼ばれるかというと、締約国による報告義務を規定していて、そしてまた、条約機関と呼ばれる監視機能を組み込んだ条約だという点に主要ということのゆえんがあります。
 最初に社会の全ての成員の人権に関する条約を制定いたしました。自由権規約とか社会権規約、その後、女性、子供といった人権侵害を受けやすい集団に属する人々の人権に関する条約がつくられていった。ここまでのそういう流れというのは自然な流れだと思いますけれども、ただし、その中で、障害者の権利条約は2006年と最も遅く、あるいは「待たされた条約」と言うこともできます。ただ、待たされた分だけ新しい考え方を導入できたとポジティブに見ることもできます。
 権利条約が求めていることは何かといいますと、あらゆる差別の禁止、アクセシビリティ、これは条文の順番にリストしていまして、優先度順というわけではありません。どれも同等に重要ということだと思います。その次が法的能力の承認と支援、自立と自己決定等支援、教育への平等なアクセス、インクルーシブな教育への平等なアクセスというほうがより正確かもしれません。雇用の機会均等、政策立案と監視への当事者参加、障害者団体の参加ということです。
 権利委員会、Committee on the Rights of Persons with Disabilitiesは、略すとCRPDとなり条約名と同じになってしまうので、ややこしいのですが、権利条約の締約国による実施状況を監視する条約機関です。この条約に組み込まれた監視機関、条約機関です。18人の委員によって構成されていて任期は4年、1回更新が可能なのでマックス8年です。締約国からの推薦により立候補して選挙で選ばれます。ちょうど先日、締約国会議がありまして、日本が推薦しておりました田門弁護士が当選いたしました。
 権利委員会の委員の大多数は障害当事者です。これは比率の高い順番にリストをしているかどうかは怪しいのですが、障害のある研究者とか、弁護士とか、障害者運動の活動家が推薦されることが多いです。そして、政府から推薦はされますが、政府から独立した立場で監視の任に当たることが義務づけられています。
 障害者権利委員会の主要任務は、まずは各締約国による条約実施の審査、初回審査と定期審査です。日本は初回審査を終えたところです。
 2つ目は、選択議定書に基づく個人通報の審議を行います。これは選択議定書を批准した国の市民だけが個人通報できるとなっています。
 3つ目は、選択議定書に基づく締約国による重大または系統的な条約違反の調査。これも選択議定書を批准した国に対してのみ、この調査ということが可能となっています。
 4つ目は、権利委員会の条文解釈としての一般的意見の作成。各条文について一般的意見というものを出して、この条文はこのように解釈すべきだという権利委員会の意見を述べたものです。
 条約実施の審査の枠組みですけれども、まず、政府報告というのが義務づけられています。政府報告と同時に市民社会からのパラレルレポートが提出されます。どの国の市民社会もパラレルレポートを出せるわけではない。政治的な理由によってパラレルレポートを出したくても出せない国もある。あるいは障害者の力がその国の中ではまだ十分ではなくて、パラレルレポートを出せない国もある。こういった状況があります。そのような場合には、国際的な協力によって、お互い助け合うということをしながらパラレルレポートを出すということもあります。
 これらを受けて政府との建設的な対話が行われます。そして、市民社会からのブリーフィングが行われます。これは同時に行われます。その数週間後にはクローズドなセッションで総括所見の採択を行い、被審査国に対して送付するということをやっております。
 次に「障害者権利条約批准に向けた国内制度改革」ということで、日本は当初、権利条約の早期批准を予定し、準備をしていました。しかし、障害者団体は、批准の前に国内の法制度を権利条約に調和させる必要があると主張いたしました。よかれと思ってやっているのにどうしてという反応ではあったものの、建設的な対話が行われて、政府は障害者団体の主張を受け入れて制度改革を優先する選択をいたしました。
 「障害者権利条約批准前後の国内制度改革」について、簡単に述べます。
 第一期は、批准前の制度改革。制度改革推進会議、その下の差別禁止部会、総合福祉部会が牽引しました。障害者基本法の改正とか、障害者差別解消法の制定というのは、批准前の制度改革の成果と言っていいと思います。その後、2014年に権利条約を日本は批准いたしました。満を持しての批准です。
 その次が第二期ですが、批准後の制度改革です。いささか手前みそになりますけれども、政策委員会が重要な役割を担いました。障害者差別解消法の改正、障害者差別解消法基本方針の策定など、また、国内監視枠組みとして権利委員会に報告をいたしました。独立した監視枠組みであるかどうかの試金石として政策委員会の意見を政府報告に加えて報告いたしましたし、審査の直前にはそれをアップデートしたものをまとめて再び提出いたしました。
 次に、「障害者基本法の改正」です。
 批准前の制度改革の柱で、障害者に関する基本理念とか、各分野の政策目標などを規定する法律です。障害者政策全体の理念法という位置づけの法律で、平成23年、2011年に改正が行われました。そのポイントは、障害の社会モデル、あるいは相互作用モデルの導入、合理的配慮を含めた差別禁止の規定、政策委員会の設置を規定、当事者参画型で監視機能を担うという政策委員会の設置を規定した。この3点だと思います。
 「内閣府障害者政策委員会」についてです。障害者基本法の改正により2012年に設置されました。国の障害者基本計画の策定の場として、政策委員会の意見の取りまとめを行います。そこで取りまとめられたものは、パブコメとか、あるいはその後の与党からの意見等で若干の修正はあるものの、ほぼほぼそれが閣議決定されるという重要な役割を担っています。
 さらに、基本計画の実施状況の監視を行います。これから第5次の基本計画の実施状況のフォローアップを行うことになっていると承知しています。さらに、障害者差別解消法基本方針の策定、これは障害者差別解消法に規定された所掌事務です。さらに、国連障害者権利条約の独立した監視枠組みを担っています。これは政府が条約批准時に国会答弁において説明し、また、国連に対して日本の独立した監視枠組みは障害者政策委員会だと報告しているということに基づいています。法律条文には規定がありません。
 次に、「障害者差別解消法の制定・改正」です。平成25年に制定されまして、令和3年に改正されました。
 この法律の狙いですけれども、行政や事業者と障害者との間の建設的対話により、個々の障害者が直面する障壁を取り除くための方法を合意すること。悪質な差別に対しては、主務大臣による指導・監督により、不当な差別的取扱いの禁止の徹底と合理的配慮の提供を民間事業者に浸透させていくこと。これがポイントだと思います。
 権利委員会と日本政府との建設的対話が2022年8月22日と23日にジュネーブの国連欧州本部で行われました。市民社会からも多くの人々、100人以上の人々がオブザーバーとして参加し、また、日本の実施状況について、市民社会、障害者団体だけではなくて、日弁連などのグループもプライベートブリーフィングにて発言いたしました。
 次に、「総括初見」です。これは2022年10月7日に送付されました。
 「総括所見で示された主な勧告」ですが、
 1つ目は、代行決定制度を廃止して、障害者の法の下の平等を確保し、支援型意思決定制度を構築すること。
 2つ目が、障害者の強制入院による自由の剥奪を認める全ての法的規定を廃止すること、及び本人同意のない精神科治療を合法化する全ての法的条項を廃止すること。
 3つ目が、障害者の施設収容を終わらせるための迅速な措置を取ること、及び障害者が居住地、どこで誰と暮らすかを選択する機会を持ち、特定の生活形態で暮らすことを義務づけられないようにし、自分の生活に対して選択とコントロールを行使できるようにすること。
 4つ目が、障害のある子供のインクルーシブな教育を受ける権利を認めて、全ての障害のある生徒が全ての教育レベルにおいて合理的配慮と必要とする個別支援を受けられるようにし、質の高いインクルーシブ教育に関する国家行動計画を採択すること。
 5つ目が、パリ原則を完全に満たす国内人権機関を設立すること、及びその枠組みの下で政策委員会の制度的基盤を強化すること。
 これが主な勧告と私が考えている点です。
 次に「障害者政策委員会の初回対日審査への関与」について述べます。
 2014年に政策委員会は、条約批准の際に政府から権利条約の独立した監視枠組みに指定されました。2016年、初回政府報告に政策委員会の意見を含めることができました。2022年6月、政策委員会の見解をまとめて単独で権利委員会に提出しました。そして、2022年8月22日、政府代表団の中に政策委員会委員長の私が加わって、独立した監視枠組みの立場で建設的対話で冒頭ステートメントを述べました。
 次に「Part3 障害者政策委員会が留意すべきこと」ですけれども、合理的配慮というのは合理的環境調整のことだということをぜひ徹底していただきたい。合理的配慮というのは気遣いや心配りのことではない。合理的配慮というのは合理的環境調整のことだと。accommodationを「配慮」と訳してもう30年ぐらいになるのでしょうか。しかし、合理的配慮を英語に戻すとconsiderationになってしまって、意味が違ってしまう。その結果、合理的配慮は、どうして「配慮」なのに「義務」なのだという違和感を与えている側面があると思います。
 次が「事前的環境整備と合理的配慮は車の両輪」だということです。
 社会的障壁の除去に向かって、事前的環境整備は不特定多数の障害者が経験するであろう社会的障壁を前もって取り除くプロアクティブな対応のことであり、プロアクティブというのは、事前的、前もっての対応、環境整備、アクセシビリティとか、様々な社会的障壁を取り除くための施策を事前的環境整備と呼ぶと。一方、合理的配慮というのは、今まさに実際に社会的障壁にぶつかった障害者が求める要求への個別的かつリアクティブな応答のことだとしています。この2つ、環境整備と合理的配慮が車の両輪となってアクセシビリティを進めていく。
 ちなみに、現代の各国の差別禁止法というのは、合理的配慮の不提供を差別として禁止する規定を持っています。中でもイギリス平等法や障害を持つアメリカ人法は、プロアクティブな合理的配慮についても合理的配慮としています。日本は、それは環境整備として、合理的配慮はリアクティブなものとして、この2つの概念整理というか、区分けをしています。
 次は「3つのPDCAサイクル」です。
 PlanDoCheckActionですけれども、国連によるPDCAサイクルというのは、チェック機能を担っているのが権利委員会になります。日本で国内のPDCAサイクルのチェック機能を担っているのは政策委員会です。
 また、各分野ごとに同じようにPDCAサイクルが回って、この3つのサイクルが調和しながらというか、協調しながら回っているというのが望ましい姿で、分野を見て、PDCAサイクルのCheckの部分とか、Planの部分で当事者参加が全然できていない分野はどこなのだということを政策委員会は常に注視してください。そういう分野に対しては、政策委員会は果敢にチェック機能を果たしていただきたいと思います。
 次に「内閣府障害者政策委員会の制度的位置づけと求められる機能」ですが、制度的位置づけは審議会です。内閣府設置法の37条に基づく審議会で、いわゆる8条委員会と呼ばれるものです。求められる機能は独立した監視枠組みです。しかし、率直に言って、ここには大きなギャップがあります。ですが、制度的には審議会だけれども、機能させることが大事なのだと政府も批准のときから説明していますし、私もそのように思います。現時点でこの政策委員会が独立した監視枠組みを担える唯一の機関です。市民社会にとってはもちろん、政府にとっても政策委員会を独立した監視枠組みとして引き続き機能させていくことは極めて重要と考えています。
 私の今日の報告は以上です。ありがとうございました。(拍手)

○熊谷委員長 石川先生、大変分かりやすくまとまった御講演をありがとうございました。
 それでは、ここで15分間の休憩に入りたいと思います。オンラインで御参加の委員の皆様方におかれましては、休憩中、カメラをオフにしていただいて結構です。13時45分からの再開といたします。

(休憩)

○熊谷委員長 熊谷です。
 それでは、時間になりました。再開したいと思います。
 これから約1時間の質疑応答に移りたいと思います。
 なお、オンラインで御参加の委員の皆様は、まず、チャットメッセージに文字、テキストで「挙手」と書いて送信することにより挙手いただきますようお願い申し上げます。
 挙手された委員につきましては、私のほうで順次指名をさせていただきますので、私の指名を受けてから御発言いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
 また、御発言の際にはマイクに近づいてゆっくり分かりやすく御発言いただくこと、それから、なるべく多くの委員の皆様に御質問いただきたいので、最初に結論を述べ、その後、できる限り簡潔にその理由や説明をしていただくことをお願いできればと思います。こちらは情報保障の質を上げる上でも重要な留意点ですので、御協力のほどをよろしくお願いいたします。
 なお、本日は石川先生の御講演ということになりますので、各府省庁のほうには必要に応じて傍聴してもらっているものの、各府省庁への質疑応答対応は予定しておりません。その点のみ、あらかじめ御了承ください。
 それでは、御質問、御意見がある方は挙手をお願いいたします。挙手されている方の記録を取りますので、恐れ入りますが、そのまま手を挙げたままでお願いいたします。申し訳ございません。もう少々御協力をお願いいたします。
 ありがとうございました。手を下していただいて構いません。
 それでは、当てさせていただきます。
 まず、石橋委員、お願いいたします。

○石橋委員 全日本ろうあ連盟の石橋と申します。
 石川先生、御講演、本当にありがとうございました。
 質問です。講演の中で事前的環境整備と合理的配慮の2つが車の両輪だという例で話をされました。本当に分かりやすい説明でした。実際に事前的環境整備というのは、これは最初から見れば分かる問題だと思うのです。まず、そこの障壁を排除すべきだと思っているのですが、ところが、実際にはかなり施策として遅れているのではないか。これを強く主張する場はやはりここの政策委員会だろうと思うのですが、障害者団体や市民団体が意見を言うべきなのか、この役割としてはどちらを優先すべきなのかというのが質問の1点目です。
 2つ目の質問です。石川先生の御意見と申しますか、考え方をちょっとお聞きしたいのですが、前回、こちらの政策委員会で委員長を務めておられました。また、実際にジュネーブでの対日審査にも行かれています。今、国連から勧告が出ました。それを聞いて課題は一体何だとお考えなのか、石川先生として強く思うポイントを教えていただければ幸いに存じます。よろしくお願いいたします。

○熊谷委員長 熊谷です。ありがとうございました。
 それでは、石川先生、御回答をお願いできますでしょうか。

○石川先生 石橋委員、ありがとうございました。
 まず、事前的環境整備というのは、環境整備法と私は呼んでいるのですが、例えば、新バリアフリー法とかが一番分かりやすいかと思いますが、こういった差別禁止法、差別解消法とは異なる枠組みがあって、その法制度に基づいて環境整備を実施していくということが障壁を解消することにつながっていくと考えています。それぞれについて法律が制定されていれば、その法を所管する省庁が実施を進めていく、改善していく。また、その実施の計画立案に障害当事者が参加して、あるいはモニタリングに参加していくということがこの権利条約が求めていることなので、政府、行政も、それから、障害者団体、市民社会も一緒になって計画の立案や監視プロセスを回していくということが大事だと考えています。
 あと、総括所見の中で私が大事だと思うことは何かという質問があったのですが、先ほどの講演の中で挙げた点です。主な勧告というのはとりわけ重要な勧告です。ほかにももちろんたくさん重要な勧告はあるのです。どれといって、そこに載せていないものも含めてどれも重要なものばかりだと思いました。  以上です。

○熊谷委員長 熊谷です。ありがとうございました。
 では、続きまして、オンラインで挙手いただいている委員の中から、森委員、お願いしてもよろしいでしょうか。

○森(隆)委員 ありがとうございます。森と申します。
 私は日本精神科病院協会というところの副会長をしておりまして、まさに今日御指摘いただきました勧告の内容にかなり関わったところでございますので、こちらからもコメントさせていただこうと思います。
 まずは、石川先生、ありがとうございました。分かりやすい御説明をいただいたことを感謝いたします。
 その中で、特に勧告の大事なところとして、精神科の強制入院を減らすこと、それから、精神科だと思われますが、障害者の施設収容を減らすこと、こういったことの2点は極めて重要なことだと私どもも認識しております。
 1番目の強制入院については、これは先生方も御存じのように、精神保健福祉法という法律が今回改定されましたけれども、非常に限局的に、言ってみれば、差別されたような形で法律が制定されておりますので、私どもは、これはやはり枠組みをもう少し広げて一般化するか、もしくは医療・福祉全般の法律に抜本的に改革するべきだと思っています。したがって、ここのところで家族の問題、あるいは強制入院の問題も修正できるのではないかと思っておりますが、これは私どもの力だけでは何ともならないことなので、またお力添えをいただければと思っております。
 それから、2番目の施設収容の問題でございますが、精神科の場合は特に長期の入院であるとか、そういったことがよく指摘されるわけでございます。他の国に比べて多いとか、少ないという話でございますが、これもいろいろなことを私どもも努力してきましたし、国のほうも努力をされてきましたけれども、なかなかこれがうまくいかない。
 なぜかといいますと、やはり現場からの改革が難しいからなのです。上から指摘されてもどんどん抜け道ができてしまって、そして、また不祥事が起こるということの繰り返しが何年かごとに起こってしまいます。したがって、現場から改革するしかないと考え、例えば、私の病院は合併症を受け入れる病院に変えました。私の病院は精神科の単科病院でございました。精神科の患者さんだけの病院でございましたけれども、整形外科をつくり、オペ室をつくり、リハビリテーションをつくり、歯科をつくり、内科をつくり等々で全科を診られるにして、合併症を受け入れる病院に転向したわけです。
 これはどういうことかというと、精神科の病院だけれども、精神科の障害を診るのではなくて疾病を診る。つまり、合併症で悩んでおられる精神科の方たちで、ほかの病院では精神科の患者さんというだけでなかなかちゃんと治療してもらえない方たちを我々のところでちゃんと治療するという仕組みをつくろうとして、今、4年目、5年目になったところでございますが、残念ながらこういったことはすごく大変で、一般の精神科病院のようにゆったりとした感じではなくて、大体月に40人も50人も入院があって、40人も50人も退院するという病院になっています。ですが、精神科病院ですので、一般診療よりもずっと診療報酬が安く設定されてしまっていまして、赤字すれすれでやっているというのが現状なのです。
 こういったことを中心に、例えば、精神科の患者さん、精神障害を持っていらっしゃる患者さんも当然高齢化して合併症をお持ちになりますので、そういったものを治療するという病院に転換することで一般化できないだろうか。つまり、障害を診るのではなくて、患者さんの病気を診る。これは一般の人の病気を診るのと同じでございますので、料金が安いというのはあり得ないと僕は思うのですけれども、現状、日本はそうなっております。
 以上でございます。ありがとうございました。

○熊谷委員長 熊谷です。
 森委員、ありがとうございました。
 石川先生、いかがでしょうか。

○石川先生 日精協の森委員の前向きなというか、強制入院に対する問題意識をお聞かせいただいて大変うれしく思います。
 身体拘束についてのコメントなのですけれども、精神科に限らず、日本の病院は非常に安易に身体拘束をやっている現実があると私は考えていまして、例えば、脳神経外科などでも、術後というか、急性の治療中であるとか、あるいは何らかの軽い不穏行動であっても、すぐに主治医や病院長の判断だけでいとも簡単に身体拘束できる。ベルトか何かで身動きできなくしてしまったり、あるいは4点柵のベッドにして、拘束感を非常に感じるというようなことがあって、至るところで身体拘束をやっていると思います。これは人権よりも治療、あるいは安全優先という考え方で、どちらも大事で、治療も安全も人権も大事なのだという意識が弱いのではないかと考えております。この点も、今後、政策委員会ではぜひフォローしていただきたいと思います。
 以上です。

○熊谷委員長 熊谷です。ありがとうございました。
 それでは、続きまして、会場から田中委員、お願いいたします。

○田中委員 ありがとうございます。日本視覚障害者団体連合の田中でございます。
 石川先生、本当に分かりやすい講義をありがとうございました。
 私からは少し総論的な御質問をさせていただきます。これは内閣府の事務局に宛ててということになろうかと思います。
 障害者権利条約は、かなり締約国も増えまして、今、非常に重要な条約としての位置づけになってきていると思います。そんな中で、G7の中でもこの障害者権利条約に関係する会議の開催が予定されております。本年の議長国はイタリアでございますが、10月中旬にインクルージョンと障害に関する閣僚級会合というものが予定されていると聞き及んでおります。G7のメンバーでもある日本としましては、やはりこういった障害者権利条約を中心とした閣僚級会合への参加を積極的に進めていくということはとても大切なことだと考えております。
 そこで、内閣府のほうへお尋ねなのですけれども、現時点において、本年、イタリアで開催されますインクルージョンと障害に関する閣僚級会合への積極的な取組の状況について、ぜひ御報告いただければと思っております。
 併せて、こういった会合につきましては、日本政府だけではなくて、やはり内閣府の障害者政策委員会、あるいは障害者関係団体も積極的に参加していくことで、世界に取り残されず、障害者施策を日本が実施していこうとしていることを示すことになろうかと思います。したがいまして、この会合に関する情報提供もぜひ継続的に行っていただきたいと思っております。
 まずは、可能であれば、現状の取組状況について、御報告いただければありがたいと思います。
 以上です。

○熊谷委員長 熊谷です。ありがとうございました。
 こちらは内閣府からいかがでしょうか。

○小林参事官 内閣府です。
 今、御指摘がありましたG7のインクルージョンと障害の閣僚会合についてですけれども、我々のほうでも把握しておりまして、今年10月、イタリアのほうで開かれると聞いております。いずれにしても、今後の対応については、関係各省庁とも連携しながら詳細を把握して、検討してまいりたいと考えておりますので、そういった形で御承知おきいただければと思います。
 以上になります。

○熊谷委員長 熊谷です。ありがとうございました。
 続きまして、オンラインから福田委員、お願いしてもよろしいでしょうか。

○福田委員 全国盲ろう者協会の福田と申します。
 石川先生に2つほどあります。意見をお聞きしたいことと助言いただきたいことがあります。
 1つ目は、今期の第6期の政策委員会ですが、これまで報告を聞くことがすごく多くて、先ほど講演の中であったPDCAサイクルを果たして回しているのか。石川先生はどのように思われるか率直な御意見を賜りたい。新しい委員として、いいのか不安であります。
 あと、ギャップについて、制度的に審議会でありながら独立した監視枠組みとして機能する。そのためにはどういう積極的なプロアクティブなアクションをこの政策委員会はとっていけばよいのか、助言を頂きたいなというのがあります。
 あと、私の個人的なことでもありますが、新しい任期の委員に就任しまして、この政策委員会がインクルーシブになればと。また、難しさもあったものですから、全国盲ろう者協会のほうに小林参事官と事務局の朝倉さんに来ていただきまして、話合いを持つことができました。そして、今日のいわゆるプロアクティブな、また、リアクティブな合理的配慮は今までよりも一番よかったなと感じております。非常にありがたく思っております。対話の重要性というものを改めて認識した次第です。この政策委員会には、いろいろ経験豊富な委員の皆様がたくさん参加しておられるので、もっと建設的な対話が大事だと非常に感じております。
 実は森委員が先ほどおっしゃったことにも質問したいことはあるのですが、一応、一旦私の発言は以上とさせていただきます。ありがとうございます。

○熊谷委員長 熊谷です。
 福田委員、ありがとうございました。
 石川先生、いかがでしょうか。

○石川先生 6期の委員会をどう思うかと言われると、私は退任した立場で、口出しするのはあまり適切でないと感じます。むしろ委員長であるとか、あるいは以前からの委員、例えば、玉木委員とか、佐藤委員とか、どのような感じを持っていらっしゃるのかお聞かせいただいたほうがいいかなと思います。
 ちょうど第5期というのは非常に忙しかったのです。3つの大きな仕事があって、改正差別解消法の基本方針をつくったり、第5次基本計画をつくったり、対日審査の政策委員会の見解をまとめたりと、2年間で3つもやって非常に忙しかった。
 6期は、第5次基本計画のフォローアップはあるのですけれども、どうしてもやらなければならないものはそれ1つといえば1つということもあって、いつも全力疾走だと息が切れてしまうので、少し息が入っているのかもしれないなと思っています。
 私が委員長をやっていたときも、何期だったですかね。3期かな。第4次基本計画をつくったその次の期は、最初の何か月ですか、6か月か7か月か、私の表現で言いますと、暴れ馬を厩舎につないだ時期がありました。主語は事務局です。そういうこともあると。しかし、全体としてあれやこれやある中でやっていくということが、緩急をつけてやっていきましょうという。それほど焦る必要はないのではないか。
 委員長のお考えをお聞きしたいと思います。

○熊谷委員長 熊谷です。
 ひやひやしながら一言一句伺っておりました。私も試行錯誤しながら、委員の皆様にもいろいろ教えていただきながら、少しずつこの役割の全体像を理解してきたところです。今日、石川先生から頂いたコメントはどれも、この半年、この役割を担った後に聞くと突き刺さるものが随所にありまして、先ほど福田委員がおっしゃったPDCAサイクルが本当に実質的に回っているのかといったところや、少しずつ改善はしているとはいえ、この会議自体の合理的配慮や環境整備の問題、取り組んでいかなければいけないところは多々あると思います。ぜひ引き続き忌憚のない御意見を頂ければなと思っております。8月からはいよいよ5次計のモニタリングが始まりますので、気づかない点は多々あると思いますが、ぜひ御意見を頂ければと思っております。
 そんなところでよろしいでしょうか。
 それでは、続きまして、再び会場から安部井委員、いかがでしょうか。

○安部井委員 ありがとうございます。全国重症心身障害児(者)を守る会の安部井でございます。
 本日は、石川先生に大変分かりやすい御講義をいただきまして、ありがとうございました。
 その中で不明な点があるので、1点質問させていただきたいのですが、資料の中の「総括所見で示された主な勧告」の3つ目のポツについて、お伺いしたいと思います。
 その中に施設収容を終わらせる、特定の生活形態で暮らすことを義務づけられないようにすると書いてあります。収容には拘禁や身柄を拘束して自由を奪うというニュアンスがあると思います。そのような環境に置かれている人たちは、自ら選択した生活に移るべきだと思います。施設において医療や教育、福祉サービスを必要としない方々にとっては、ヘルパーさんなどの在宅福祉サービスを利用して生活を送れる社会が望ましいと思います。
 しかし、地域移行、脱施設化の延長で語られる施設不要や廃止論は、現状として施設によって命が守られ生活できている障害者にとっては、命や生活の場が奪われてしまうのではないかと不安を覚えます。
 総括所見で示された特定の生活形態とは、施設そのものの存在を問うものなのか。障害者の自立性や地域生活への包摂などの保障を問うものなのか。ほかに何か解釈があるのでしたら御教示いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○熊谷委員長 熊谷です。
 安部井委員、ありがとうございました。
 石川先生、いかがでしょうか。

○石川先生 安部井委員、ありがとうございました。
 濃厚な医療を日常的に必要としている障害者が、現状、もし施設でしか命をつないでいくことができないとしたら、その施設を廃止するというのは命を守ることに反するので、そういうことを意味しているわけではありません。自分が少しでも望む形、自分が生活したい場所や一緒に暮らしたい人と暮らすことと、濃厚な医療を必要とするということ、この2つは両立させていきたい。両立させるということを諦めずにその目標を立てて、できることをやっていくということが、この勧告から読み取れることだと思います。
 重症心身障害児(者)と呼ばれている人たちは、未来永劫、施設でしか生きられないのかどうか。そのように諦めてしまうと、そういうことになってしまうので、そうではないと。そんなことはないはずだと。問題を解決してインクルーシブな地域での生活ができる。家族との生活ができ、かつ、医療的ケアが受けられるようにするにはどうしたらいいのか。これは環境整備を行っていくということを言っているのであって、直ちに重症心身障害児施設を閉めろなどという乱暴なことを言っているわけではないと思います。
 答えになっていますでしょうか。

○安部井委員 ありがとうございました。
 私たちも、子供本人、それから、親や家族の生活を現実的に見て、理想とするものを求めていきたいと思っております。それには社会の皆様の御理解が必要だと思っておりますので、これからもどうぞよろしくお願いいたします。

○熊谷委員長 熊谷です。
 安部井委員、石川先生、本当にありがとうございました。重要なディスカッションをいただきました。
 続きまして、オンラインから曽根委員、お願いいたします。

○曽根委員 日本社会事業大学専門職大学院教員の曽根と申します。
 私は日本障害者虐待防止学会の副理事長も務めておりまして、今回、障害者権利委員会の総括所見の中の権利条約第16条の「搾取、暴力及び虐待からの自由」に関しての勧告について、少しお伺いしたいと思います。
 この中で権利委員会としては、教育、医療、刑事・法の場における虐待の防止、あと、報告・調査が排除されているという障害者虐待防止法の範囲及び有効性の欠如に対して懸念を示し、あらゆる環境における虐待の調査、あるいは法的な救済を提供するための措置を確立するために障害者虐待防止法を見直すことという勧告を行っています。
 私がお伺いしたいのは、学校教育における虐待の通報等の対応についてなのですけれども、この勧告からは、障害者虐待防止法を改正して学校の教育における虐待の通報、あるいはその他の対応を入れるということを勧告していると理解できると思います。
 ただ、一方、第24条の教育に関しては、障害の有無にかかわらずインクルーシブ教育を推進するということを勧告しています。
 そうしますと、同じ学校の中で、障害のある子供も障害のない子供も共に学ぶということがこれからは主流になっていくという中で、虐待については、障害者虐待防止法というのは障害者だけに適用される法律ですので、障害児が虐待を受けた場合だけは通報義務がかかるというような、ちょっとちぐはぐな対応をせざるを得なくなるということが、この勧告に沿った対応をした場合に想定されると思います。
 私は、学校教育における虐待の通報義務等については、障害児だけを対象にするのではなく、全ての子供たちに対して通報義務、あるいは虐待防止の措置がかかるような法制度にするべきではないかと考えておりまして、この勧告については、矛盾があると思っているところです。
 それについて石川先生の所感をお伺いしたいのと、もう一つ、市民社会から障害者権利委員会に対して総括所見に対する質問を行うということは可能かどうか。もし可能だとした場合、その窓口はどこかということについて教えていただきたいと思います。
 以上です。

○熊谷委員長 熊谷です。
 曽根委員、大変重要な御指摘、ありがとうございました。
 石川先生、いかがでしょうか。

○石川先生 曽根委員、ありがとうございました。
 重要な鋭い指摘でして、私、ちょっと見落としていました。おっしゃることはもっともだと思います。同時に権利委員会の言わんとすることを考えるならば、複合的虐待が起きるインクルーシブな場で障害児がより多く虐待されるということが起きるということを想定している可能性もあるかと思います。
 実際には確率としてより多く虐待を被っている、つまり、虐待、あるいはいじめとか、暴力にさらされたり、排除、あるいは無視されたり、そういったことはより多く起きる。今日の段階では私としてはあまり用意がなくて十分な答えができませんけれども、全ての子供たちに対して通報義務がかかるような法制度と、障害者虐待防止法の改正は矛盾しないと思います。
 以上です。

○熊谷委員長 熊谷です。
 もう一点、曽根委員から、総括所見に対して市民社会が何かコメントする場合の受け皿というのはあるのでしょうかという御質問を頂いて、こちらも重要かなと思いまして、もし追加でコメントがありましたら、お願いします。

○石川先生 正式なチャネルはないかもしれないのですが、権利委員会に対して、例えば、市民社会、あるいは政策委員会でもいいと思いますが、質問を投げれば答えてくれる可能性はあると思います。ですから、前回の建設的対話においてプライベートブリーフィングをやった、例えば、JDFとか、あるいは日弁連とか、政策委員会が中身のしっかりとした質問を投げれば、答えてくれる可能性はあると思います。

○熊谷委員長 熊谷です。ありがとうございました。
 それでは、続きまして、水流委員、いかがでしょうか。

○水流委員 ありがとうございます。全国地域生活支援ネットワークの水流と申します。
 暴れたことのない馬なので、つながれている先輩たちを見習って発言させていただきます。
 本日はとても分かりやすい御講演をありがとうございました。お話を伺ってますます必要性を感じているのですけれども、具体的には障害者基本法の改正を望む声が各所から上がっているということです。
 石川先生にお聞きしたいのは、もし改正がなされるとしたら、どのような視点が必要と思われますか。例えば、本日お話しいただいたように、基本法32条に独立した監視枠組みとしての役割を加えるということや、同25条に障害者文化芸術推進基本法のように、日本として誇れる取組があるということを明記する等、何よりもメインメッセージとして、これからの日本の障害福祉の目指す共生社会の方向感が示せるような法律にすべきと思いますが、いかがでしょうか。

○熊谷委員長 熊谷です。ありがとうございました。
 石川先生、いかがでしょうか。

○石川先生 ありがとうございます。
 この障害者基本法というのは、障害者政策全体の基本法、理念法です。ところで、この法律の立法事実ということをよく言うわけです。法を改正しなければならない問題があるのか、必要性があるのか。それがないのに改正することはできないという議論だと思うのです。これは内閣法なので、内閣法制局を説得、納得させるだけのロジックや事実を積み上げていかないと改正できないということで、事務局はなかなか難しいものがあると判断しているのかなと推測するわけです。
 1つは、御指摘のように、障害者政策委員会というのはダブルスタンダードになっていて、審議会であって独立した監視枠組みである。審議会というのは、行政が行おうとする政策などを承認する承認機関という意味合いが主で、独立した監視枠組みを審議会が担えるはずがないですよね。
 だけれども、一方で、政府として権利条約の独立した監視枠組みを指定したことによって、機能的には監視枠組み、制度的には審議会という、非常に難しい薄氷を踏むようなことをやらなければいけないということになっていて、これはやれてきたからいいではないかというものではなく、いつでもできるわけではない。いろいろな条件が重ならないとできないような状況で、不都合がある、不便である、不十分であるということであれば、立法事実というのかどうかは私には分かりませんけれども、1つ国内で独立した監視枠組みというのを所掌事項に加えるというのは本当は必要だと考えています。
 総括所見で制度的な基盤を強化するように求められていて、それに対しての応答として、そういった法改正というのは検討すべきことだと思っています。ほかにもいろいろと改正したほうがよい点はあると思いますが、理念法ですから、個別の法律に比べて、立法事実という具体的な問題というよりも、理念法としての膨らみや広がりをさらに増していくということであっても法改正は進められると思います。現に前回の改正というのは、どういう立法事実に基づいたのかはよく分からないですけれども、そのときだってそんなに厳密な意味での立法事実があったかどうかというのは定かではないというか、やろうという機運になればやれるものではないのかなと思います。

○熊谷委員長 熊谷です。ありがとうございました。
 では、続きまして、オンラインから臼井委員、お願いいたします。

○臼井専門委員 臼井です。マイクは大丈夫ですか。

○熊谷委員長 大丈夫です。

○臼井専門委員 今日の御講演で初回の対日審査で政策委員会が関与したことを詳しくお話しいただき、ありがとうございました。
 今日のお話を伺って今後の委員会に向けて考えたことですが、さらに、総括所見の内容を政策委員会で共有して、当面としては第5次基本計画の進捗を評価して、第5次計画に含まれていないことについても検討を進められるようにすることは大事だと考えています。
 また、これは内閣府の事務局にお願いですが、総括所見を次回以降の会議の資料にも入れていただきたいです。
 石川さんに1つ伺いたいです。障害者権利委員になっていろいろな国の審査に関わられたと思います。条約審査で独立した人権機関が役割を果たした事例などがあれば、お教えください。
 以上です。

○熊谷委員長 熊谷です。
 臼井委員、ありがとうございました。
 石川先生、いかがでしょうか。独立した人権機関が役割を果たした事例があれば、教えてくださいという御質問だったと思います。

○石川先生 ほとんどの国は国内人権機関が独立した監視枠組みを担っています。略称NHRIですけれども、あるいはオンブズマンが監視役割を担っている国もありました。
 国内人権機関世界同盟、Global Alliance of National Human Rights Institutions、GANHRIという団体があるのですけれども、そこはNHRIの独立性とか、どう機能しているかで評価していて、A評価、B評価、C評価をしていて、A評価とB評価のNHRIでないと加盟できないとしているのです。A、B合わせて100を超えるNHRIがこのGlobal Allianceの加盟組織になっています。
 ですから、国内人権機関があるということは、国際社会的には常識中の常識、当たり前の中の当たり前で、ない国もあるのですけれども、ない国で代表的なのは日本とアメリカかなと。ただし、アメリカは司法省とかEEOC、雇用機会均等委員会とか、幾つかの政府機関が分散してNHRIのような機能を担っています。
 そういう国もありますけれども、ほとんどはNHRIとか、あるいはオンブズマンが独立した監視枠組みを独立した立場で担っているという現状があって、日本に対してもその設立を求めているのが権利委員会です。
 以上です。

○熊谷委員長 熊谷です。
 石川先生、ありがとうございました。
 もう一点、臼井委員から、総括所見を配付資料の中にという御意見を頂きました。こちらは内閣府からよろしいでしょうか。

○小林参事官 8月以降の5次計画のフォローアップの中での話になってきますけれども、資料については、また検討させていただきたいと思います。
 以上になります。

○熊谷委員長 ありがとうございました。
 では、続きまして、再び会場から佐藤委員、お願いいたします。

○佐藤委員 ありがとうございます。DPIの佐藤です。
 石川先生、ありがとうございました。2点質問させてください。
 1点目は、石橋委員も質問されていたことなのですけれども、アメリカのADAとイギリスの平等法はプロアクティブな対応も合理的配慮に含むというようなお話だったかなと思います。ということは、プロアクティブな対応、日本でいうと事前的環境整備も義務になっているということなのでしょうか。その辺を確認させてください。
 2点目は、日本の条約の国内監視機関としてこの政策委員会が位置づけられているのですけれども、日本の政策委員会は監視をしっかり頑張りなさいよというような石川先生のお話だったかなと受け止めました。
 石川先生が委員長のときに、基本計画を策定する中で、PDCAサイクルに非常にこだわってつくられておりました。実際につくって監視をする中で、今の基本計画の中でのPDCAサイクルに対してどのように思われているか。ちょっと不十分ではないかなとか、ここはこのようにもっと力を入れたほうがいいのではないかなということがあれば、ぜひ教えていただきたいと思います。
 あと、最後に、これは事務局にお願いなのですが、次回以降で結構なのですけれども、日本の2回目の対日審査なのですが、簡易報告手続を選択するのかどうかというのを教えていただきたいと思います。これはその後のスケジュールが変わってくるので、特に市民社会パラレルレポートをつくったり、その準備に何年かかけたりしますので、日本は2回目の対日審査で簡易報告手続を選択するのか、あるいはその判断がまだであれば、いつ頃その判断をするのかということを、次回で結構ですので、ぜひ教えてください。
 以上です。

○熊谷委員長 熊谷です。ありがとうございました。
 石川先生、いかがでしょうか。

○石川先生 佐藤委員、ありがとうございました。
 まず、イギリス平等法やADAはプロアクティブな合理的配慮も義務づけているかということなのですが、そうだと思います。ただ、そうなってくると、プロアクティブな合理的配慮を怠るということは、しばしばというか、常に起きることですよね。例えば、建物に階段しかない2階建ての建物とか3階建ての建物、そこに車椅子の人がやってきて3階で開催されている何かのイベントに参加しようとした瞬間、合理的配慮の不提供ということになって、平等法違反が成立するのかという。
 これは理屈からいえばそう言えるかもしれないのですが、それは回避できなかったことなのか、やむを得なかったことなのか、対応できたはずのことなのかをもって、もし訴訟になれば争うことになると思います。必ず司法の場で判断して一つ一つやっていくので、事前的なプロアクティブな合理的配慮の不提供は直ちに差別と認定されるかどうかというと、必ずしもそうではないだろうと思います。
 それと、もう一つ、アクセシビリティとプロアクティブな合理的配慮というのは、どうやって線引きするのかという問題が出てくる。一方で、環境整備をしていくというのは、段階的にできることを積み上げていくという性質のものでもあるので、アクセシビリティだと、いきなりNGとはならないですよね。だから、プロアクティブなものまで入れてしまうと、アクセシビリティの問題で着実に進めていくことを行うものと、合理的配慮の不提供というものの線引きが難しくなる。それも絶えず司法の場で争うことになるだろうと思います。
 日本はリアクティブな合理的配慮の不提供だけを差別解消法で禁止して、事前的環境整備は努力義務として、それはアクセシビリティと理屈をつないだわけです。だから、線引きとしては一つの判断であったと思います。プロアクティブな合理的配慮を差別禁止に入れてしまうと、かなり強い法律になってしまって、それが社会全体にとって本当にいいかどうかというのはよく考えてみる必要があるかなと個人的には思っています。
 あと、政策委員会の監視役割について、PDCAサイクルがちゃんと回っているかどうかなのですが、まず、そもそも権利委員会のPDCAサイクルはなかなかちゃんと回らない。時間がかかってしまうということがあります。これだけ条約締約国が多くなると、定期審査というのは8年、10年で回ればいいほうです。180か国のうち、中には報告を出さずにさぼってしまう国も一部あるので、仮に140~150か国だとしても、1年に20か国の審査をするのが精いっぱいということで、次の審査が回ってくるまでに8年とか10年かかる。
 まず、これで進めていくのはなかなか大変だということもあるし、総括所見を出しても、きちんとした国は受け止めて対応しようとするのです。だけれども、無視する国もあるわけです。日本は無視せずに受け止めようとしていると信じたいですが、中にはそういう無視する国もあって、それだったら何のために条約に入ったのという話でもあるわけなのです。
 法的拘束力があるか、ないかという話ではなくて、そもそもそういう枠組みの中でPDCAサイクルを回して、総括所見を受けて自分たちの実施状況を振り返って、どこを改善していくのかということを引き受けてやっていくという枠組みなのですが、それができない国もある。当然、国内でも同じようなことがあり得る。
 あと、PDCAではなくてPDC、PDCと回っているという面はある。PDC、PDCです。これだとCがPにある程度は生かされると思いますが、政策委員会はPとCに関係しているので、PDCのCが次のPに生かされてはいるのですけれども、Aを飛ばしてPDCという感じになっています。でも、やらないよりはずっとましだと思っています。

○熊谷委員長 熊谷です。ありがとうございました。
 それから、簡易手続に関して、内閣府からもし現時点で御説明できることがあればという御質問でした。

○小林参事官 内閣府です。
 日本の第2回目の政府報告は簡易手続なのかどうかというところで、できれば次回委員会に教えてほしいということだったのですけれども、障害者権利条約自体、外務省のほうで所管されておりますので、外務省とも相談の上、どのような対応ができるかというところを検討したいと思います。
 以上になります。

○熊谷委員長 熊谷です。ありがとうございました。
 オンラインではもう挙手はなさそうですが、会場のほうはまだ何名か委員の方がいらっしゃいます。
 では、岡田委員、お願いしてもよろしいでしょうか。

○岡田委員 ありがとうございます。全国精神保健福祉会連合会の岡田です。
 本日、石川先生から障害者政策委員会の役割について改めてお話をいただき、襟を正す思いがしております。改めまして、この委員会が独立した監視枠組みとしてより機能していくことを考えたいと思っております。
 以前、この委員会の場で警視庁の方から障害についての研修に取り組んでいるというお話をいただきましたが、2022年に愛知県の警察署で拘留中に、精神障害がある男性が必要な医療的ケアを受けられず、また、複数の署員から暴力を受けたりなどして死亡するという事件が起こりました。また、別の会合でも、知的障害や発達障害のある方が警察で不適切な対応をされていることが問題視されているということを聞いております。
 このような現実の状況に対しまして政策委員会として何ができるのだろうかと考えておりましたが、今現在、持ち上がっているより具体的な問題に対してこの場で議論するというのは、これまでの経過から見ると、時間的な制約もあってなかなか難しいなと私は実感として考えているのですけれども、例えば、ワーキンググループ的なもう少し少人数の別の会議を持つということについては、石川先生はどうお考えなのかということと、先ほどからの発言にも出ております国内人権機関、こういう機関があれば、起きている問題に対して個々に対応がなされるのではないかということで、日本に国内人権機関を設立するためにまずは何をしたらいいのかということで、お考えがありましたら、ぜひお聞かせいただけたらと思いました。よろしくお願いいたします。

○熊谷委員長 熊谷です。ありがとうございました。
 石川先生、いかがでしょうか。

○石川先生 ありがとうございます。
 だんだん難易度が高くなってきまして、私もどうお答えできるか悩ましいのですが、まず、ワーキンググループ方式というのは、2016年に第1回の政府報告に対する政策委員会の意見をまとめるときに採用いたしましたが、やはり政策委員会の委員全員が参加して議論するという場を大事にするほうがよかったかなと、そのときの反省として思いました。委員は、障害者政策全般に対して意見を持ち、理解を深め、そして、それぞれ様々な団体の代表として参加されている方も多いですけれども、個別イシューだけではなくて、障害者政策全体について、権利委員会と同じように独立した個人の立場で意見を述べていただきたい、考えていただきたいと思っています。
 また、ワーキンググループの座長に何か取りまとめをお願いした場合に、それをオーバーライドというか、駄目出しして書き換えるというのは非常に難しいと思いました。そういうこともあって、そのことも含めて、できれば全体として議論を進めていくということをより重視していただきたいなと思っております。
 国内人権委員会なのですけれども、本当に日本ではこんなにも難しいことなのかなというほど難しくて、道筋が見えてこないです。正直に言って、どうしたらいいか本当に分からないです。いつこれができるのか全く見通しが立たない。基本的なツールなのですが、それが共有されていないし、何度かトライしたけれども挫折したという歴史もあって、それもトラウマになっているかもしれないし、あと100年ぐらいかかるかもしれない。
 障害者差別解消法とか、障害者権利条約も、1990年ぐらいの段階でそう思っていたら、30年ぐらいでできたので、もっと早くできるかもしれないですが、今のところ、どういう条件が満たされると実現するのか全く分からない。申し訳ございません。

○熊谷委員長 熊谷です。ありがとうございます。
 今ちょうど予定していた時間になったのですが、まだ挙手いただいているのに指名していない委員の方が3名いらっしゃいます。せっかくの機会なので、もう少し延長させてもらってもよろしいですか。石川先生、大丈夫ですか。
 それでは、続きまして、北川委員、お願いいたします。

○北川委員 日本知的障害者福祉協会の北川です。
 石川先生、ありがとうございました。石川先生がここにいらしていたときはコロナだったので、初めてお会いしてうれしく思っております。
 私は、総括所見で示された主な勧告の中で、子供に関わっていることが多いので、インクルーシブ教育について質問、意見をしたいと思います。
 インクルーシブ教育の今後の在り方というのは、社会的な障壁の除去との関連が非常に深いと思っております。インクルーシブというと、一緒にいるだけと思われがちなのですけれども、やはり個別の支援の充実があって、この教育が成り立つのではないかなと思います。
 こども家庭庁ができて障害児の施策と一般子供施策と同じ庁になったのはまず第一歩かなと思って、その中で、こども基本法でも大綱でもインクルーシブのことが書かれてあります。それで、私ももう少し勉強したいと思って、昨年、二度イタリアに行ってきました。イタリアでは99%インクルーシブだったのですけれども、クラス全体で学ぶことと個別の支援との両立がきちんとされていたという印象です。そして、いろいろな子供がいるということを教室の中で学び合っている。社会に出る前に教室で学び合っているという、そこがいいなと思いました。クラスが小さかったり、大人の配置が多かったりしているわけですけれども、まず、教育の方法論として、大学とか専門学校でともに学び合える、学び合うという授業の方法論を先生方が40年かけて学んできているので、そういうインクルーシブの教育が成り立つのではないかなと思いました。
 日本はまだそういう教育方法論がないので、一緒か、分離かになってしまうので、これを具体的に進めていかなくてはいけないのと、共に同じ教室にいろいろな子がいていいのだという人権教育を、大人のほうが大学とか専門学校で学んでいく必要があるのではないか。具体的にインクルーシブ教育を進めていって、本当に子供の頃からいろいろな人がいていいのだという意識を醸成していく、寛容な社会をつくっていくということが非常に大事だと思っているのですけれども、先生は、具体的に教師とか保育士の養成課程での学びについてなど、あと、人権教育などについて、どのようにお考えか教えてください。

○熊谷委員長 熊谷です。ありがとうございました。
 石川先生、いかがでしょうか。

○石川先生 北川委員、ありがとうございました。
 おっしゃっていることに200%賛成です。インクルーシブ教育の前提として、ほとんどの時間、みんなが同じことを同じペースで学ぶことをやっているという学校ではなくて、テーラーメードというか、それぞれの子供たちに合った、カスタマイズされた教育と、一緒に学ぶということのバランスというか、それを組み合わせた学校というものをまず構想して、そういう学校でこそインクルーシブ教育というのは実現するし、そういう大方針の変更なくしてインクルーシブ教育というのはなかなか進まないなと思っています。
 また、そういう場での教育というのを前提として、教育方法論などの開発とか、あるいは実践とかを積み重ねていかないと、やり方というのは磨かれてこないし、そういう好循環が生まれてこないので、これから大学の教育課程の中でもそういったことを取り上げて進めていっていただきたいなと私も思っております。
 具体的にどういう動きがあるのかについては、私もまだフォローできていないので、十分なお答えはできないのですけれども、おっしゃっていることは本当に賛成です。
 以上です。

○熊谷委員長 熊谷です。ありがとうございました。
 では、続きまして、玉木委員、お願いします。

○玉木委員 玉木です。ありがとうございました。
 石川先生、本当にもう少し話を聞きたかったのですが、ゆっくりそういう機会をつくっていただきたいなと思うのですけれども、今日お聞きしたいのは、2022年10月に総括所見が出たときに、国連からこれからの障害者施策を考えていく上でとても大事な指標が出たと思ったのです。
 ところが、出たものの、いまだに政府訳は仮訳で、しかも、話をしていく中では、認識の違いとか、解釈の違いということで論議がかみ合わないという部分も出ているので、できたら、最低限、当事者とか、政府とかと総括所見の方向性はこういうことなのだねというような形で本当は見たほうがいいなと思っているのだけれども、石川先生は、そこはぼやっとした中でやっていってもいいと思っていらっしゃるのかということをお聞きしたいのです。
 それはなぜかというと、今日、僕は先生の資料の5枚目の主要な人権条約というのがすごく大事だなと思っていて、というのは、総括所見が出たときに、障害児のこともあるので、子どもの権利条約の総括所見はどうなっているのだろうかと調べていくと、実は2019年3月に4回目、5回目の第2次審査を受けた総括所見が出ていて、その中には、例えば、インクルーシブ教育については「包摂的教育」という訳し方をしていたり、あとは、国内に複合的差別禁止法を制定しなさいということで、国連の条約しかり、差別問題も部落の問題とか、多岐にわたったあらゆる差別について指摘をしていて、なおかつ、障害者権利条約も、議定書を受け入れていない部分については、ちゃんと受け入れなさいと、権利のことをぐるっとパッケージした総括所見が出ているのです。
 それを見たときに、我々は、先生も先ほどちらっとおっしゃっていたように、障害者だけの問題ではなくて、全ての人の人権をどう守るのかというように動いていかなければいけないと思うのです。そのためには建設的な対話が必要だし、総括所見の解釈を受けて、認識が違うからということで、きっちりと議論ができていかない。また、スピード感も、総括所見が出て1年8か月たってしまっている中で、いまだパターナリズムの問題であったり、日本語訳の問題が論議できていないということに僕はいらつきを覚えているのだけれども、そこら辺も含めて先生の意見を聞きたいなと思いました。
 以上です。

○熊谷委員長 熊谷です。ありがとうございます。
 石川先生、お願いいたします。

○石川先生 議論がかみ合わない分野は限られていませんか。インクルーシブ教育と、あとどこですかね。脱施設、この2つが代表的なのかなとは思うのですけれども、そこはやはり特別支援教育とか、これまで施設をずっとつくってきたという、そういった枠組みやこれまで投入してきた資産というか、それがあって方向転換に対して消極的だということもあると思うのです。土台にそれがあって、なかなか対話が成り立っていないと考えています。
 言われていることは分かっている。ただ、しかし、そのようにインクルーシブ教育だけでやっていけるのかとか、成年後見制度を廃止して本当にやっていけるのだろうかとか、施設を完全になくして本当にやっていけるのか。もっと言えば、強制入院だって完全になくしてやっていけるのかという腑に落ちていない部分もあるのだろうと思います。
 だから、そこに対して腑に落ちていないところを納得してもらうような対話も必要だと思うのです。総括所見でこう言っている。権利条約はこう言っている。だから、進めていかなければいけない。そうは言っているのかもしれないけれども、そんなむちゃくちゃなことはできないでしょうという思いが一方にあるわけだから、そういった対話でしか前に進んでいけないのではないかなと思うのです。

○熊谷委員長 熊谷です。
 ありがとうございました。すばらしい御意見を頂きました。
 私からの質問は、合理的配慮とか合理的環境調整のことで、これは理解できるところなのですが、過重な負担があった場合とか、物理的に難しかった場合、建設的な対話をしてということになっておりますけれども、建設的な対話をした結果が、例えば、配慮とか、気遣いとか、心配りみたいなことになってしまうケースもないとは言えないと思うのですが、そうした場合は、当面の間はそういうことであっても、最終的には申し出た合理的環境調整がきちんとなされればいいのか、それとも、ずるずると配慮とか、気遣いとか、心配りが進んでしまった場合、これはやはり義務違反になるのかというところを教えてください。
 それでは、最後になりますが、佐々木委員、お願いしてもよろしいでしょうか。

○佐々木委員 全国手をつなぐ育成会連合会の佐々木と申します。昨年6月に久保から代わりまして会長になりました。どうぞよろしくお願いいたします。
 石川先生、御講演ありがとうございました。
 私からの質問は、合理的配慮とか合理的環境調整のことで、これは理解できるところなのですが、過重な負担があった場合とか、物理的に難しかった場合、建設的な対話をしてということになっておりますけれども、建設的な対話をした結果が、例えば、配慮とか、気遣いとか、心配りみたいなことになってしまうケースもないとは言えないと思うのですが、そうした場合は、当面の間はそういうことであっても、最終的には申し出た合理的環境調整がきちんとなされればいいのか、それとも、ずるずると配慮とか、気遣いとか、心配りが進んでしまった場合、これはやはり義務違反になるのかというところを教えてください。

○熊谷委員長 熊谷です。ありがとうございました。
 石川先生、いかがでしょうか。

○石川先生 すみません。私、だんだん集中力が落ちてきまして、質問の意図がつかみ切れなかったのですけれども、何か具体的な例で説明していただけますか。

○佐々木委員 実は私、自分の地域で区民の皆さんとか小学生のところに障害者理解啓発の授業で年に30回程度行かせていただいているのですが、その中で差別解消法のお話もさせていただいていて、その具体的な事例として、知的障害者の具体的事例というのはすごく難しいので、車椅子利用の方のお話をさせていただくのですが、そのときに、例えば、来年からこの会社に入ることになったので、車椅子利用の方が玄関前にスロープをつけてくださいと申し出た場合、会社はスロープをつけなければいけないのだけれども、ただ、物理的に難しかった場合、その方が出社、退社するときに、同じ会社の方たちが車椅子を持ち上げて階段を使って上がったり下りたりする。数段の場合ということはつけていますが、具体的な事例としてそういったお話をさせていただいているのですけれども、今考えたら、それは本当に合理的配慮の提供に当たるのかどうかというのがちょっと分からなくなってしまったので、お聞きしたところです。

○石川先生 分かりました。合理的配慮ではないと思います。それはまさしく同僚とかのサポートとか、支援とか、ヘルプというもので、会社が提供する合理的配慮には当たらないと思います。

○佐々木委員 ありがとうございました。

○熊谷委員長 ありがとうございました。
 それでは、時間が超過してしまいましたけれども、本日は本当にすばらしい御講演、そして、その後のディスカッションも、本当に聞き入ってしまうようなすばらしいディスカッションをありがとうございました。
 改めまして、石川先生に委員の皆様から盛大な拍手をお願いできればと思います。

○石川先生 どうもありがとうございました。(拍手)

○熊谷委員長 本日、石川先生からお伺いしたお話、今後の第5次障害者基本計画の実施状況の監視を始めとした議論に生かしていきたいと思っております。どうもありがとうございました。
 最後に、事務局から事務連絡をお願いいたします。

○小林参事官 事務局です。
 今後の委員会の開催についてですけれども、前回の委員会でも御説明したとおり、あと、今回のやり取りの中に出てきたとおり、本年8月以降に第5次障害者基本計画の令和5年度分の実施状況のフォローアップを3回に分けて実施することを予定しております。
 現在、日程調整をさせていただいておりますので、具体的な開催日時等については、熊谷委員長に御相談の上、確定次第御案内申し上げますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。
 以上になります。

○熊谷委員長 ありがとうございました。
 それでは、これをもちまして第79回障害者政策委員会を閉会いたします。
 オンラインで御参加の委員の皆様は、画面の「電話マーク」をクリックして御退室ください。
 本日は、皆様、ありがとうございました。