障害者政策委員会第3小委員会(第3回)議事録

平成24年10月15日(月)
16:00~18:00
中央合同庁舎4号館220会議室

【議事に使用されている資料については「議事次第」のページにまとめて掲載していますのでご参照ください。】

氏田座長 こんにちは。時間となりましたので、「障害者政策委員会第3小委員会」の第3回の会合を開催いたします。
 委員の皆様方におかれましては、大変お忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。
 本日の会議は、18時までの2時間を予定しております。
 本日は、委員の皆様の中の御欠席はございません。
 いつものお願いで大変恐縮なのですけれども、小委員会の開催に先立ちまして、1点お願いがあります。本小委員会におきましても、情報保障の観点から、「障害者政策委員会」と同様に、各委員の皆様が発言を求めるときは、まず挙手をお願いいします。そして、指名を受けた後に、御自身のお名前を述べられてから、可能な限り、ゆっくりと御発言いただければありがたいです。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、議事に入りたいと思います。
 本日の小委員会の主な議題に入る前に、第1回会合で御議論いただいた論点①「障害者の消費者被害の事前防止及び被害からの保護」につきまして、菅専門委員より御意見をいただいております。御意見は皆様のお手元の資料6。関連して、資料5の論点①に関する消費者庁補足資料を御参照いただければと思います。
 菅専門委員の方から御発言をよろしくお願いいたします。

菅専門委員 菅でございます。よろしくお願いいたします。
 本日、第1回の会合の論点を蒸し返すようで恐縮でございますが、このような意見を発言させていただける機会を与えていただきまして、どうもありがとうございます。
 2回のときに意見を出させていただいたのですが、国・地方自治体は障害者がどのような消費者被害に遭っているか、実態を調査することを計画などに盛り込む。
 同時に、地方自治体単位で、被害の実態や情報を共有するため、関係者が連携できる「見守りネットワーク」のような組織をつくることを計画などに盛り込むという意見を提出させていただいております。
 全国消費者団体連絡会では、平成22年度から、消費者庁と地域の代表者でつくる実行委員会を共催で開催しています、地方消費者グループフォーラムの事務局的立場でかかわっております。その大きな目的は、あらゆる立場での消費者被害をなくし、よりよい地域づくりを目指すため、地域で活動する団体の連携を深めるための情報交換などを行うというものです。
 そこで、昨年度も、障害者団体から消費者被害についての実情などを御報告いただき、それを伺う限り、なかなか現状では自治体でも把握し切れていないのかなという感想を持ちました。
 障害者白書には、消費者被害の件数等が載せられておりますが、この問題を解決する第一歩は、やはりその地域での実態を調査することだろうと考えられます。
 一方、議員立法として国会に提出された消費者教育の推進に関する法律が8月10日に成立、8月22日に公布されました。今後、6カ月以内に施行となるそうです。本日、今、座長のほ方から紹介していただきました資料に概要というものがつけられているかと思います。それを見ていただければわかるかと思いますが、この法律は、国の責務として基本方針を定め、消費者教育推進会議を設置すること、地方自治体は、努力義務なのですが、都道府県消費者教育推進計画、市町村消費者教育推進計画を策定、消費者教育推進地域協議会を設置することとされています。
 また同様に、国と地方自治体への努力義務なのですが、地域における消費者教育の推進(13条)で、高齢者、障害者への支援のための研修、情報提供ということがうたわれております。ですから、障害者基本計画の中にも、同様に障害者支援のための情報共有の場を設置し、その中で情報収集や地域でも消費者被害防止に向けて連携して取り組まれるよう、盛り込むべきではないかと考えています。
 消費者教育の推進のための基本法と、障害者基本法、両方の側面から、基本計画の中に地域で盛り込まれることによって、より強固なものになるのではないかと考えて意見を提出いたしました。
 以上です。

氏田座長 菅専門委員、ありがとうございました。
 この点につきまして、資料5の方に、第1回の会合のときにクーリングオフの代筆関連では、大胡田専門委員から御意見をいただいていました。消費者教育に関連する意見ということでは中西委員、後藤委員、菅専門委員からということで御意見をいただいておりましたが、資料5に関連資料が載っておりますが、今の菅専門委員の御発言を受けて、皆様の方から御質問や御意見がありましたら、お受けしたいと思います。よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。こちらの議論に4時20分ぐらいまでお時間をとらせていただいています。どうぞせっかくですので。
 特にご意見はないようですので、それでは、本日の議事に入りたいと思います。
 本日の主な議事に入る前に、本日の議題及び資料について、事務局より御説明をお願いいたします。

東室長 担当室の東です。御苦労さまでございます。
 資料等、1冊のものになっているがあります。議事次第と表紙がなっておりますけれども、これを見ていただくと、今日の論点は2つありまして、論点④が「司法手続における必要な配慮の提供及び研修の実施」、論点⑤が「障害を有する受刑者・出所者等に対する処遇及び支援の在り方」ということであります。
 これに関する資料として、資料1~4まで、1ページ以下に載せてあります。
 議論の進め方としましては、まず、論点④に関しましては、論点④に関する法務省及び厚生労働省の方から説明いただく。その後、委員の討議を行っていただく。⑤についても同じような形で行っていきたいと思っております。
 なお、皆さん、これ(ブザー)を見ていただけますか。これは、1分ごとに青から黄色、黄色から赤に変わります。3分以内で御発言願いたいということで、推進会議で用いたものを持ってきましたので、御協力のほど、よろしくお願いしたいと思っています。
 以上です。

氏田座長 ありがとうございます。
 後藤委員、どうぞ。

後藤委員 日本福祉大学の後藤でございます。
 進め方ですが、ふだんより盛りだくさんな一方、今日の3回目で終わりです。小委員会として、きちっとした文章でまとめることをお願いしたく思います。
 事前に事務局からいただいた案内には、「簡単なまとめ」と書いてあります。これはまさか簡単なぺらっとした議長メモとかではなくて、例えば今日も委員から出ている大事な意見があります。小委員会としてどういう見解を出したかがまとまると思っておいてよろしいですか。親委員会に報告するときに、こういうことを議論したと書きものにして行うことが大事だと思います。時間配分にも影響すると思いますので、お尋ねです。

氏田座長 これは事務局からお答えいただけますか?

東室長 前回も少しお話しさせていただいたかなと思いますが、基本的にはここでの議論を正確に親委員会に反映させるということが求められていると思います。ただ、分量に関して全てのものを全部書き写しても、かえって伝わりにくいかと思いますので、まとめ方については座長、副座長の方でやっていただくと思っております。まずそういうことです。

氏田座長 私たちもそのように理解しておりまして、また委員の皆様にもいろいろ御意見をお伺いして進めたいと思いますが、事前にまとめたものを見ていただけるようにはしたいと考えております。

後藤委員 承知しました。どうもありがとうございました。

氏田座長 よろしくお願いいたします。
 それでは、本日の主な議題に入りたいと思います。論点④の「司法手続における必要な配慮の提供及び研修の実施」、皆さんのお手元の資料1を御参照ください。論点⑤の「障害を有する受刑者・出所者等に対する処遇及び支援の在り方」、お手元資料3になります。それについて法務省よりまとめて御説明をいただきますが、第1回会合で、大濱委員、関口委員、上野委員より御質問をいただいた部分についても含めて御説明いただけることになっておりますので、よろしくお願いいたします。
 では、法務省よりよろしく願いいたします。

濱参事官 法務省でございます。
 今、司会の方から御指示ございましたように、法務省からは、この論点④と論点⑤に関しまして、まとめた形で御説明をさせていただければと思っております。
 まず、私は法務省刑事局で参事官をしております濱と申しますが、私の方から、刑事手続における障害者への配慮という点について、近時、検察庁において行われている取組を中心として、若干御説明させていただければと思います。
 お手元に配付した資料のうち、「刑事手続における障害者への配慮~近時の検察の取組を中心に~」と題したものがあろうかと思いますので、まずそれを御覧いただければと思います。
 最初の「知的障がい専門委員会」について御説明します。この1枚目の紙が総括的なペーパーでして、2枚目に「知的障がい専門委員会」についてより詳しく記載した資料もつけておりますので、そちらと併せて御覧ください。
 「知的障がい専門委員会」というものは、知的障害者の方に対して取調べを行う場合に、知的障害を有することによる供述特性等を踏まえた発問等を行ったり、また、供述の信用性の吟味に際しても、障害を有する供述特性等を踏まえた吟味、検討が必要であるという観点から、最高検察庁に設けられた組織でございまして、この「知的障がい専門委員会」におきましては、専門的な知見を有する医師や大学教授の方などから、知的障害者の供述特性や取調べをする際に当たって留意すべき点等について講演をしていただいたりしたほか、知的障害者の方の取調べをする際に留意すべき事項等についても、様々な指摘や助言を受けております。
 また、その内容につきましては、2枚目の「『知的障がい専門委員会』について」という資料の○の3番目に「知的障がい専門委員会の活動概要」と記載しておりますので、御覧いただければと思います。そういう講演等のほかにも、知的障害者あるいは発達障害者の支援団体の方からの様々な御意見をお伺いする、そういった活動もしております。
 また、2枚目の資料の一番下の●に、「参与,外部専門家との意見交換」と記載しておりますが、「知的障がい専門委員会」におきましては、参与という立場で、社会福祉法人の関係者の方、この方は後ほど別に述べさせていただきます、いわゆる長崎モデルという運用の中心となっておられる方であるとか、児童自立支援施設の関係者の方、研究者の方々という方々に参与という立場でも加わっていただいておりまして、こういう方々との意見交換等もしております。
 このような「知的障がい専門委員会」で得られた内容というものを、最高検察庁から全国の検察庁に情報提供しておりまして、各検察庁におきましては、それを踏まえた取調べ等の捜査活動を行うなどして活用してきているというところでございます。
 「知的障がい専門委員会」というのは、資料にも記載がありますように、平成23年7月に設けられた組織でございまして、まだ設立されてから日も浅うございますが、最高検察庁におきましては、今後も知的障害のある方の取調べであるとか、再犯防止、社会復帰といった刑事政策的な配慮の在り方につきまして、専門家との意見交換等を積極的に実施していきたいと考えております。
 続きまして、1枚目の資料の、2番目の○の「取調べの録音・録画の試行」という点を御覧いただければと思います。
 その内容についての詳しい資料としては、3枚目の資料に「知的障害によりコミュニケーション能力等に問題がある被疑者に係る事件に対する取調べの録音・録画の試行」という資料もつけておりますので、併せて御覧ください。
 検察におきましては、裁判員裁判の対象事件、これには死刑又は無期の懲役・禁錮に当たる罪に係る事件、短期1年以上の懲役・禁錮に当たる罪に係る事件のうち、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係るものが該当しますが、こういった裁判員裁判の対象事件や、知的障害によりコミュニケーション能力等に問題がある被疑者についての事件に関しまして、身柄拘束をしている際の被疑者の取調べについて、取調べの全過程を含む広範囲の録音・録画というものを試行してきております。
 また、知的障害に限らず、精神の障害等により、責任能力の減退とか喪失が疑われる被疑者についての事件に関しましても、録音・録画の試行を近いうちに開始する予定でございます。
 この知的障害によりコミュニケーション能力等に問題がある被疑者の事件について、取調べの録音・録画を試行するという趣旨でございますが、これは、「知的障害を有する被疑者であって、言語によるコミュニケーション能力に問題があり、あるいは、取調官に対する迎合性や被誘導性が高いと認められるものについては、取調官の発問や被疑者の応答の状況が記録されていることが、その供述の信用性判断のために有効であると考えられる」というものでございます。
 この3枚目の資料にも記載されておりますが、対象となる事件につきましては、知的障害によりコミュニケーション能力に問題があるかどうかを判断するに当たって、明確で画一的な基準を定めるというのはなかなか困難ではありますけれども、個別事案ごとに被疑者の知的障害の程度であるとか、コミュニケーション能力等の被疑者の特性、事案の内容、被疑者の精神的負担や、供述に与える影響等を考慮して、録音・録画を試行するのに適した事案について試行を実施してきております。
 実際には、例えば療育手帳等の知的障害に関する公的な認定の有無であるとか、家族等の関係者が被疑者に知的障害がある旨を供述していること等といった客観的事情のほかに、実際の取調べを通じて認められたコミュニケーション能力の問題を伴う障害の存否等も踏まえて、個別具体的に録音・録画の試行を判断してきています。
 その試行の内容はこのペーパーにも書きましたように、取調べの全過程を含む広範囲な録音・録画を行うというものでございます。2つ目の○が「検察における実施状況」ということで、これまでの経緯を書いておりますが、平成23年4月から、東京地検等におきましてパイロット的に試行を開始し、平成23年7月から、東京、大阪及び名古屋地検で、その年の10月からは、全国の検察庁で正式に試行を実施しております。そして、今年の7月にそれまでの検証結果も公表しております。
 3つ目の○の「実施事件数」ですけれども、平成24年4月までということですが、知的障害によりコミュニケーション能力等に問題がある被疑者等に対する取調べの録音・録画を実施した事件数は540件であり、録音・録画を全く実施しなかった件数は13件でした。この13件というのは、いずれも被疑者の方が録音・録画を拒否したものであると承知しておりまして、検察としては、積極的に録音・録画の試行に取り組んできているというものであります。
 4つ目の○の「録音・録画の範囲別内訳」を御覧ください。この録音・録画を実施した540件のうち、取調べの全過程の録音・録画を実施した事件は194件でございます。さらに、その下に準全過程と書いておりますけれども、これは、警察から検察庁が事件の送致を受けた段階では、その被疑者に知的障害によりコミュニケーション能力等に問題があることを把握できなかったために録音・録画をしなかったものの、その後、それが取調べの過程を通じる等して判明したため、その後は全ての取調べについて録音・録画をしているという事件数のことを指しておりまして、これが109件ということですので、合計すると303件ということで、割合は録音・録画を実施した事件全体の約56.1%になります。
 続きまして、1枚目の資料の3番目の○の「心理・福祉関係者の取調べへの助言・立会いの試行」というところについて御説明いたします。
 検察庁におきましては、知的障害によりコミュニケーション能力等に問題がある被疑者に対する取調べにおいて、心理・福祉関係者から、知的障害者の供述特性や発問方法等に関する助言を受けたり、取り調べに立会人として、心理・福祉関係者の方に同席してもらうという試行も実施しております。
 その内訳は3枚目の資料の一番下に記載しておりまして、立会いに関しては、東京、大阪、横浜、京都、名古屋の5地検で試行しておりますが、まだ実施件数はそれほど多いわけではありません。立会人になっていただく方の位置付けであるとか、取調べというものに対する影響であるとか、そういうことを考えて、どういう方に立会人になっていただくのが適切か等、まだまだ実務上検討すべき課題もございますので、これらを踏まえながら試行をしているという状況でございます。さらに、検察当局において着実に試行を継続していくものと思っております。
 他方で、心理・福祉関係者による助言につきましては、そのような課題も比較的少なく、今後も多くの試行が実施されるものと考えております。
 次に、1枚目の資料の4つ目の○の「地域生活定着支援センターとの連携」というところを御覧ください。ここに書きましたように、長崎地検における取組を紹介しておりまして、これは本日も大濱委員の意見の中にも詳しく記載されておりまして、御紹介されるのではないかと思いますが、いわゆる長崎モデルというものでございます。
 この地域生活定着支援センターというのは、この小委員会の1回目でも法務省側から御説明しておりますけれども、高齢又は障害を有するために福祉的な支援を必要とする矯正施設の退所者等について、退所後、直ちに福祉サービス等につなげるための準備を法務省の保護観察所と協働して進めるということで、厚生労働省におきまして各都道府県に設置することとしている施設でございます。
 この地域生活定着支援センターと連携している長崎地検の取組としては、まず1つ目の中黒のポツですけれども、長崎地検では、知的障害によりコミュニケーション能力等に問題がある被疑者についての事件に関して、地域生活定着支援センターから福祉関係者の方の紹介を受けるなどして、取調べへの助言や立会いを試行することとしております。
 もう一つ、2つ目のポツの「障がい者審査委員会」による審査に基づく再犯防止・改善更生の取組という点ですが、これについては、お手元の資料の4枚目に少しその中身も記載しておりますので、併せて御覧ください。
 4枚目に「刑事司法の入口と出口における福祉的支援」として記載しております。例えば知的障害を有する方が万引きであるとか無銭飲食というものを繰り返しているような場合について、地域生活定着支援センターの下に設置された「障がい者審査委員会」という組織での審査が行われて、そこで更生支援計画が策定され、それが提出される場合に、検察庁におきまして、その計画や意見書等を踏まえて、例えば再犯防止等が期待できるという場合に、その被疑者の処分に関して、それを十分考慮した上での処分を行う。そういったような取組を行っているところでございまして、知的障害を有するような被疑者の場合について、福祉と連携しながら、再犯防止や改善更生を図るという試行に取り組んでいるところでございます。
 このような長崎地検の取組を実施するためには、福祉機関との連携が不可欠でありますが、検察当局としては、今後、同様の取組を長崎地検以外の庁にも拡大していくことを考えております。
 以上、御説明しましたように、法務省、検察当局としては、録音・録画の試行を中心とした、取調べにおける障害者への配慮を積極的に進めているところでありまして、今後もそういう試行の結果を踏まえながら、引き続きさまざまな取組を行って、その在り方を検討していきたいと考えております。
 最後に、1枚目の「刑事手続における障害者への配慮」という資料の一番下に記載しております「検察職員の研修」について御説明いたします。
 検察職員に関しては、任官時及びその経験年数等において受講が義務付けられている各種の研修におきまして、被疑者、参考人といった方々の年齢、境遇、心身の状況、障害等の特性を十分把握した上で、それぞれの特性等に応じた適切な捜査・取調べ、公判活動を行うように指導してきておりますし、国際人権関係条約や刑事に関する国際協力等といったものをテーマとする障害者権利条約も含めた講義であるとか、精神科の医師による精神障害等に関する講義等を実施しております。
 また、各地の検察庁におきましても、精神科医を含む精神医療関係者、福祉団体、福祉関係者等による講義や、精神医療関係者の方々との意見交換会等が実施されているものと承知しております。
 私からは以上でございます。

氏田座長 どうも御説明ありがとうございました。
 続けてお願いします。

宮田企画官 ありがとうございます。法務省の矯正局でございます。
 引き続きまして、障害を有する受刑者の処遇等につきまして御説明をさせていただきたいと思います。資料はお配りになられています資料3の49ページでございます。私は法務省矯正局の企画官で宮田と申します。資料に基づきまして御説明をさせていただきたいと思います。
 資料1に障害を有する受刑者の処遇とございます。刑務所で刑に服するわけですけれども、その処遇の原則というのが法律で定められておりまして、それは受刑者の資質及び環境に応じ、その自覚に訴え、改善更生の意欲の喚起及び社会生活に適応する能力の育成を図るということを旨として行うということを処遇の原則と定められて、それに従って行っているところです。
 お断りをさせていただきますと、福祉の関係の方からよく言われるのですけれども、処遇という言葉は非常に違和感をお持ちの方もおられるかと思いますけれども、申しわけございません、刑務所の場合は受刑者と関わり合うことは全て「処遇」という言葉で包括して言っておりまして、耳触りの方がおられるかと思いますけれども、御容赦いただきたいと思います。
 私どもポジティブな意味もネガティブな意味も含めまして、ニューラルな意味で、言わばトリートメントということで処遇という言葉を使っておりますけれども、再三、処遇という言葉を使わせていただきたいと思います。
 要は個々人の特性に応じた、一人一人に応じた形で処遇を実施しますよということなのですけれども、それをより効果的に行うために、大半の場合は必要に応じてですけれども、集団で編成します。居室も集団生活になりますし、刑務所に入る場合のほとんどは懲役刑でございますので、作業を行わないといけません。そのため、作業工場というところで、まさに集団で作業に従事させているということになります。
 そのほか専門的な医療などの処遇が必要な場合には、医療刑務所というのが全国に4カ所ありますし、医療刑務所までではないのですけれども、医療重点施設というのも幾つかございますので、そちらに収容することで、それぞれの障害の程度に応じた処遇を行っているということでございます。
 具体的にどのような障害者の特性に応じた配慮を行っているかについて御説明させていただきたいと思うのですけれども、その前に、ではどのように本人の個々人の状況を調べるのか、わかるのかということについて、先に御説明させていただきます。
 資料ですと1枚おめくりいただきまして、50ページに「2 障害を有する受刑者の調査」という項目で説明させていただいておりますけれども、刑務所に入りますと、全受刑者を対象に、その資質や環境の調査を行います。私どもは処遇調査と呼んでおります。それを処遇調査票という書類にまとめます。その中には、受刑者本人がどのような外面的あるいは内面的な特徴を持った人であるか。私どもが受刑生活でどのような点に気をつけなければいけないかということを処遇調査票に盛り込んで記載して、その内容については、刑務所内、関係各部署に伝えられているという仕組みでございます。
 処遇調査票に盛り込むべき内容で簡単に御説明しますと、もちろん、健康診断というのもありますけれども、その上で精神の状況、身体の状況、成育歴、教育歴、職業歴あるいは暴力団の加入歴、非行歴、犯罪歴、犯罪性の特徴、家族や入る前の生活の環境、職業や教育などの適性あるいは本人の希望、将来の生活設計、そういったものを調査いたしまして、所内でどういうふうに処遇すれば、どういうふうな点に気をつけなければいけないかということをまとめるわけでございます。
 そのためには、心理学の専門職という調査専門官というのを刑事施設に配置してございます。なかなか足りなかったのですけれども、大体今年度になって、ほぼ全庁に調査専門官、臨床心理士の有資格者をイメージいただければいいかと思うのですけれども、それを配置しておりまして、より専門的な調査が実施できる体制がようやく整えられつつあるという状況でございます。
 知的障害の関係で申し上げますと、適切な作業を行う上で本人の能力というのを全ての受刑者で調査しないといけないわけですけれども、私どもCAPASと呼んでいます、刑務所の中で使っている、矯正の世界で使っている能力検査がございます。それを使っていたのですけれども、そもそもCAPASは,IQを測定するためのテストではないということもありますし、後ほど保護局の方から御説明があるかと思いますけれども、近年、福祉との連携について施策を進めているというか、力を注いでおるところでございまして、その意味でも知的障害の有無、程度についてはもっと詳細に把握する必要があるということから、昨年度から知的障害に関するスクリーニングツールというのを盛り込みまして、CAPASによりましてIQ相当値が余りよくない場合には、スクリーニングツールを実施します。それでもなお知的障害の疑いがあると判定された者については、お医者さん、精神科医だとか調査専門官につなぎまして、より精査を行って知的障害の有無についての把握に努めているところでございます。
 資料は元に戻りいただきまして、1の(1)でございます。要は今、申し上げたような調査に基づきまして、本人の状況、特性を把握した上で、障害を有する方にどのように配慮しているかということで、(1)は身体障害に対する配慮でございます。一般的にはいわゆる手帳の交付に関する便宜を図っているところでございますし、当然とは思いますが、必要に応じて車いすといった歩行介護機器の貸与、もとより作業をしないといけませんので、それは義務でございますので、障害の程度に応じた刑務作業を選択して実施しているところです。
 施設の設備面で申し上げますと、近年高齢化が進んでいるのですけれども、介助を必要とする受刑者が多い場合には、収容棟の一部を介助を必要とする受刑者専用の施設に整備したりとか、そういったところでなくても、可能な範囲で順次エレベーターあるいは手すり、専用トイレ、車いすで入れるようなトイレ、そういったものを整備して、言わば施設のバリアフリー化を図っているところでございます。居室から作業所まで行かないといけませんので、例えば歩行に難儀される人は居室の選定とかも配慮してやっているところでございます。
 補正器具の関係で申し上げますと、視聴覚障害をお持ちの方には、当然ですけれども、自分の眼鏡だとか、補聴器といったものの使用。また、経済的な理由でお持ちでない方もおられますので、必要に応じて施設が貸与したりとか、支給したりということ。障害の程度に応じて、必要な補正器具の使用ということでやっています。
 聴覚障害の方で意思疎通を図る上で、必要となれば職員が筆談で意思疎通を図っているわけですけれども、例えば面会で手話の使用を認めたりといったような配慮をしています。手話を用いて面会したいというような場合がございまして、これは各施設でそれぞれ今まで取り組んでいたところですけれども、実は昨年に統一的に本省の方から各施設に指示をいたしまして、手話通訳、手話で面会する場合には、まず手話が使える職員をとにかく立会させるようにということでございます。数はまだまだですので、各施設には手話の研修を受けるように、そういった努力をするようにと伝えています。
 なかなかそういった場面でも得難い場合には、社会福祉協議会であるとか地元の自治体の方に手話通訳者の派遣を依頼しているというところですし、これについては刑務所の方でお願いすることですから、国庫負担でしております。
 医療刑務所ほか、医療重点施設におきましては、リハビリテーション機器なども整備してございます。受刑者の中では、運動機能に障害あるいは運動機能が低下している人もいますので、機能回復訓練というのも実施しているところでございます。
 (2)は知的障害に関する配慮でございます。もとより作業が適切な作業になるようにということの上に、教育とか指導も行いますので、なるべく平易な表現、繰り返し説明して、また視覚的にもわかりやすい資料、視聴覚資材を積極的に活用する、あるいはロールプレイを多用して理解の促進に努めているところです。
 一般的な刑務所に入る人は、その能力がそんなに高くない人が多いと思いますし、あと学力不足も非常に多いものですから、一般的な被収容者、刑務所に入る人に配布する資料につきましては、大きな文字でわかりやすい理解しやすい、ルビを振ってと努めているところです。
 (3)精神障害の方への配慮ということでは、医療刑務所を中心にカウンセリングといった精神療法あるいは窯業、園芸、紙細工といった作業療法。

東室長 ちょっと時間がありません。このままでいくと5時ぐらいまで行ってしまうので、すみませんが、よろしくお願いします。

宮田企画官 失礼しました。それでは、資料に書いていますので端折らせていただいて、一般的な医療の必要な方には医療を確保するように努めているところです。
 次のページの「3 障害を有する者に対するプログラムについて」ということで、一部の施設では、PFI刑務所を中心に「特化ユニット」を設けまして、社会復帰に向けたプログラムに取り組んでいるところです。また、ほかの施設でも、SSTなど、対人関係がなかなかうまく持てない人がいますので、そのスキルの向上に努めているところです。
 最後に「4 障害を有する受刑者に対する支援」です。後ほど保護局の方からもお話があると思いますが、多くの施設は社会福祉士の人をスタッフとして刑務所に来てもらっています。出てから福祉の支援が円滑に得られるように連絡調整をしてもらっているところです。
 あと追加で、ここには書いておりませんけれども、医療の観点で申し上げますと、出るときに所内で処方していた薬については、必要なものについては数日分になるかと思いますが、持たせて出所させるようにしていますし、診療情報につきましては原則口頭で伝えておりますが、内容が複雑なもの、理解力が乏しい者には適宜の様式で渡したりしています。
 宿題のありました研修の関係は5ページに載せさせていただいておりますが、これは具体例といいましょうか、非常に代表例でございます。全職員が受ける精神医学に関する研修の内容を掲げさせていただいておりますが、その後にも中等科、高等科といって選抜していく研修がございます。その中でも精神医学に関する講座を設けているところですし、各施設にも人権に配慮した処遇を行う上では精神医学が必要だということで、なるべくそういった医学的基礎科目を取り上げるように指示しているところです。また、福祉等の連携部分であれば、福祉の研修も昨今集中的に実施したところでございます。
 すみません、長くなりました。以上でございます。

氏田座長 どうぞ、お願いします。

今福企画官 引き続きまして、法務省保護局の企画官をしております今福と申します。
 お手元資料の52ページ以降について、簡単に紹介をさせていただきたいと思います。
 前々回の本委員会で、特別調整について御紹介があったと思いますので、詳しくは述べないでいきたいと思いますが、これについては平成21年度から実施されたもので、障害等により自立が困難な刑務所出所者等が、出所後直ちに福祉サービスを受けられるようにして、円滑な社会復帰を図ること、促進することを目的として、法務省と厚生労働省が連携する枠組みで実施しているものでございます。
 しかし、この枠組みで例えば施設に移行するということについて、調整が大体整ったけれども、しかし、すぐには定員の関係上入れないなど、出所後直ちに福祉の支援の確保が困難な場合もまま見られます。そういったときに、一時的に入所してもらう、本人の同意のもとに受け入れてもらう施設がございます。これが更生保護施設の中でも特に指定をした更生保護施設ということになっております。
 その中身につきましては、今日の資料の54ページをごらんいただきたいと思います。更生保護施設は一般には申し上げますと、刑事施設から仮釈放、あるいは満期釈放者などを含めて、頼るべき親族がないなどの理由で直ちに自立更生することが困難な者でありますが、更生の意欲はあるというような場合に、宿泊場所、食事を提供したり、就労支援をしたりするなどして、その社会復帰を支えていく施設でございます。全て民間の施設でありまして、全国には104施設で、各都道府県には1つ以上ございます。
 先ほど申し上げましたように、経営主体は全て民間で、3番、そのほとんどが更生保護法人ということになっておりますが、昨今、社会福祉法人等もここに参入されてやっている状況でございます。
 また、ここで行われる特別処遇といいますのも、実際にここでずっと終の棲家として生活されるという施設ではございません。いずれきちんと地域において自立していただく、それまでのつなぎとしてサポートを行っている、そういう処遇を行っているところでございます。
 以上です。

氏田座長 御説明ありがとうございました。限られた時間の中で大変申しわけありませんでした。
 今、4時50分ということで、6時まで残された時間が70分となりました。45分ずつぐらいの御議論をと思っていたのですが、少し延長になってしまうかもしれませんが、頑張って進めていきたいと思います。
 ただいまの説明を踏まえて御議論いただきますけれども、まず、事前に委員の皆様方から御意見を頂戴しておりますので、北野副座長の方から、皆様の御意見について御紹介を簡単にいただいていいですか。

北野副座長 すみません、風邪をひいていまして頭がぼうっとしていますので何を言うかわかりませんけれども、どうぞよろしくお願いをいたします。
 今回の部分は、障害者の権利条約の第13条、障害者基本法の改正第29条のところに関係しておりまして、特に障害者基本法は、第29条で新しい仕組みを条項に入れましたので、とても大切な議論であると今回は理解しております。
 ④の「司法手続における必要な配慮の提供及び研修の実施」の部分なのでありますけれども、かなり綿密な意見を各委員からいただいておりまして、特に大胡田専門委員、石野委員、中西委員は包括的な意見をくださっています。
 特に大胡田専門委員は、刑事裁判、民事裁判等の捜査の段階、取調べの段階から公判段階まで、障害者に対する合理的配慮や可視化の問題が1つ。
 2つ目は、参考人に対する合理的配慮の問題。関係職員に対する各種の研修、裁判員制度における裁判員に対する障害者の理解の促進を図り、裁判員の予断と偏見に基づく判断を食い止めるという問題、これは大きな問題であります。
 もう一つ、加害者でなくて被害者となった場合における、特に警察における対応の問題も含めた支援のことも表現されておられます。
 あと石野委員の方からは、特に刑事及び民事、行政訴訟を含めて、当事者、傍聴人等が合理的配慮を必要とした場合には、手話通訳者等の費用を裁判所が負担すべきである。そうでなければ、これは憲法及び障害者基本法に違反しているのではないかという意見をいただきました。
 とりわけ石野委員から詳しい意見をいただいておるのですけれども、各種の合理的配慮を保障したとしても、黙秘権であるとか、逮捕理由であるとか、弁護士の選任権であるとか、供述拒否権等、抽象的な概念を理解できないために、合理的配慮があるという理由で裁判が推し進められてしまうということが大きな問題であると表現されています。
 これは実は読んでおりまして私も思いましたが、聴覚障害者の問題だけではなくて、この問題は知的障害者や発達障害者や精神障害者、他の肢体障害者の方々も実は同じような問題を抱えている。つまり、市民一般の普遍的な問題点としてこの問題をきっちり取り組まなければいけないなと理解させていただきました。
 上野委員は刑事施設の医務官を体験させておられますので、極めてリアルなことが書かれておりますので、後で詳しくお話ししていただければと思います。「刑務官にとっては、精神症状は気合で治すべきものである」という言葉が非常に印象的でありました。
 あと田中委員と氏田座長から、知的障害や発達障害者特有の誘導されやすさ等についての問題がありますので、支援者等の立会いの仕組みを保障したり、司法や警察関係者が、知的障害や発達障害者の理解を深めなければ問題が残るということを表現していただきました。
 関口委員と山本専門委員の方から、医療観察法鑑定入院制度における司法手続上の不備の問題が提起されています。
 ⑤の「障害を有する受刑者・出所者等に対する処遇及び支援の在り方」ですけれども、特に大濱委員と田中委員から、いわゆる長崎方式についての詳しい意見をいただいております。特に、高齢者や知的障害者の方が受刑者のかなりの数を占めてらっしゃるという大きな問題がありますので、この問題について後で詳しく御説明していただけたらと思っています。
 長崎の南高愛隣会の取り組みは、触法障害者の支援を長く続けておられますけれども、現在、地域生活定着支援センターとして全国的に展開しておるという形でありまして、これについての詳しい説明は後で委員にしていただこうと思っております。
 関口委員の方から、医療観察法における強制通院治療の問題点について意見をいただいております。
 中西委員からは、矯正施設等において、障害当事者が参画する形でのカンファレンスの仕組みをやるべきではないかという御意見をいただきました。
 最後に山本専門委員からは、非常に大切な意見をいただいていました。それは罪を犯した方の支援の仕組みというよりも、むしろ一般的な人権配慮や支援システムのほころびとして虐待や犯罪の問題があるのであって、こういう問題をきっちり全体として把握する仕組みが必要ではないかという意見をいただきました。それは全体の皆さんの御意見・思いだと思います。
 以上です。

氏田座長 北野副座長、ありがとうございます。
 皆さんも大変長らくお待たせいたしました。残りの時間、論点④につきましては5時半ぐらいをめどに御議論いただきたいと思います。
 包括的な御意見をいただいている委員の方がいらっしゃいますので、大胡田専門委員、最初に口火を切っていただいてもよろしいでしょうか。

大胡田専門委員 大胡田でございます。
 御指名ですので、まず口火をということで、視点の提示ということでさせていただきたいと思います。
 私は大きく刑事裁判手続、民事裁判手続、そして刑事裁判、民事裁判に共通する3つの分類があるのかなという認識でおります。そして、この中の刑事裁判の手続、この中でも3段階に意見としては分かれています。
 まずは取調べ等の捜査の段階、実際の公判、裁判の段階、もう一つが、特殊ですけれども、裁判員という問題。この3つが刑事裁判において視点として挙げております。
 この中の捜査の段階については、障害当事者が実際に被疑者や被告人となった場合に求められる配慮について、また一方、障害当事者が犯罪の被害者となった場合に求められる配慮について述べております。
 先ほど法務省の方の御説明では、障害当事者が被疑者、被告人になった場合の点についてかなり詳細な対策を考えられているという御説明がありましたけれども、障害者が被害者となった場合、適切な聞き取りがされないと犯人を適切に処罰することができない、結局は法益が守られないということになりますので、この点についても十分に検討されるべきだろうなと考えております。
 次に、実際の刑事裁判の段階です。この裁判の段階でも、障害特性に見合った適切な情報保障が行われなければ、事実、真実を見誤ってしまって冤罪が生まれてしまう、そんな危険性もありますので、この点の情報保障は大変重要だと思っております。
 また、裁判員という点です。裁判員については、裁判員の裁判によって裁かれる側が障害者であるという場合、また裁く側の裁判員が障害を持っているという場合も想定できます。ですので、仮に裁かれる側、被告人が障害者である場合には、一般市民である裁判員が障害について十分理解していないと誤った審判をしてしまいますので、障害者についてのきちんとした理解を持っていただく必要があるかと思います。
 また、裁く側の裁判員に障害者が選ばれたという場合、これは選挙人名簿をもとに選ばれるので、障害者も当然選ばれる可能性があるわけなのです。そうした場合には、裁判員に対しての十分な情報保障がなければ、裁判員としての職務を十分に果たすことができないだろうと考えております。
 以上が刑事裁判に関する問題でして、次、民事裁判に関する問題。ここの段階では、大きく2つの類型に分けております。
 まず1つ目です。障害を持つ当事者が民事裁判の当事者となった場合に必要とされる情報保障です。現在の民事裁判制度のもと、諸規定においては、障害者に対する配慮がほとんど記載されていないのです。これはあくまで健常者を想定して組み立てられた制度だからと言わざるを得ないと思います。ですので、国民の中には、障害を持っている者が多数いるのだということを前提として、民事裁判を障害者にも利用しやすいような制度を立法的に行っていく必要があるかと思っております。
 そして、次に、仮に何らかの配慮をされる、例えば手話通訳が法律によって保障されるとなったとしても、費用がその障害者当事者の負担とされてしまっては、費用負担を恐れるあまりに配慮を嫌って、結局裁判を利用できないということにもなってしまいますので、障害が理由で何か余分に発生する費用は国庫が負担する必要があると考えております。
 次に、民事裁判、刑事裁判に共通する視点です。1つは、司法に関係する全職員について、障害者に対する理解、合理的配慮等について十分な研修を行う必要があると考えております。この点は、先ほど法務省の方の御説明にも出てきていましたけれども、私は、裁判官も含めた裁判所の職員も研修を受けるべきだろうなと考えております。
 また、傍聴の問題です。多くの裁判所では、例えば車いすのスペースがなくて車いすでは傍聴できないだとか、手話通訳者が適切な場所に立てないので傍聴者が非常に手話通訳を見にくいといった問題が指摘されておりますので、障害を持つ市民が裁判を自由に傍聴できるような体制が求められております。
 最後に、これは司法のみに関係する問題ではありませんけれども、行政の行う情報保障サービスが重要だということを指摘いたしました。例えば裁判所から訴状が突然視覚障害者の家庭に送られてきたとして、これは行政による代読とか代筆のサービスがなければ、視覚障害者がこれを訴状だと認識することができないわけです。そうしますと、裁判所における合理的配慮や情報保障等を確保するとともに、在宅の障害者が十分に情報保障を受けられるような体制も求められると言わざるを得ないと考えております。
 以上、長くなりましたが、網羅的に述べました。

氏田座長 大胡田専門委員、ありがとうございました。皆さんからの御意見、御質問をお受けしたいと思います。どうぞ挙手をお願いいたします。
 大濱委員、中西委員でお願いいたします。

大濱委員 今の大胡田専門委員の説明にもありましたように、裁判官、警察官、検察官、刑務官の研修はかなりポイントになってくると思います。そのあたりで処遇困難者や障害がある人に対してどういう支援が必要なのか、教科書だけで読む研修ではなくて、現場に入る生の研修をやっていただいて、福祉の現場や当事者自身から声を聞き、本当に実のあるものにしていただきたいのです。現行のような形だけの研修、学問上の研修、要するに医学モデル的な研修だけでは無理だと思っています。そういう意味を含めて、ぜひ研修をもっと強化していただきたい。
 以上です。

氏田座長 ありがとうございます。
 中西委員、お願いいたします。

中西委員 中西由起子です。
 今の大濱さんの当事者性の不在と同様の意見なのですが、例えば2ページ、「知的障がい専門委員会」の中に知的障害の当事者が全然入っていなくて、知的障害者にかわって、知的障害というのはこういうものだよという説明をする人たちばかりが講師になっている。それは先ほどお話にあった、現場で知的障害の人と話をするという機会と大濱さんは言ってらっしゃったのですが、それ以前の問題として、当然ここで講師に入ってくるべきだと思いますので、今後専門委員会等をつくったときに、当事者、これは障害者の権利条約に沿った我々抜きには我々のことは決められないという原則から言ってもおかしいと思いますので、構成を再考していただきたいと思います。
 それと同時に、数としては少ないのですが、言語障害のある人が酔っぱらいのような形で物事、問題を起こしているということでよく警察に引っ張られたりしますので、知的障害だけではなくて、そのような理解するのが難しい、例えばCPの言語障害を持っている人、そういう人に対する処遇、研修も検討していただきたいと思います。
 以上です。

氏田座長 ありがとうございます。
 関口委員、お願いします。

関口委員 精神障害者が医療刑務所に行った場合、まず仮釈放は考えられず、満期となるのです。これ自体が差別ではないかと思うのです。その上、出所のときに、ここにも書いてありましたけれども、通報されるわけです。そうすると、満期で出所して通報されて処置入院になって、逃げ出したくて、言ってみれば責任を果たしたわけですから、もう自由になりたいということでもって殺人事件を犯してしまったという事件が実際にあったわけです。これは通報するのは親心なのかもしれませんけれども、それがそのまま精神保健福祉法による監禁につながるのではおかしいのではないかと思います。
 以上です。

氏田座長 お願いいたします。

上野委員 すみません、研修の問題をお話しさせていただきたいのですけれども、私は刑事施設に勤務していて、日本の刑事施設は欧米の刑事施設とかなり違うのです。私は刑事施設に勤務する前に、例えば「プリズン・ブレイク」だとか見て勉強したのですが、全く参考にならなかったのです。
 日本の刑事施設は非常に処遇が厳しいです。例えば最初に入所した人が持参したものを調査する。そのときからずっと刑務官はどなりっぱなしなのです。ああいう処遇をやっていると、例えば知的障害がある方だとか明らかに委縮してしまって、例えば自分の言いたいことも言えないとか表現できないとか、そういった形になってしまうのではないかと思って、そういった処遇のあり方の再検討。
 あと刑事施設は一般職員と幹部職員がいるのです。幹部職員の方々は2年ぐらいごとに転勤していってしまうので、刑事施設において例えば処遇の文化というか、医療のやり方だとかを規定しているのは一般職員の方々なので、ぜひ一般職員の方々に対する研修を充実させてほしい。
 先ほど矯正局の方が示されたのは、多分初等科の研修の中での精神科医療の研修だと思うのですけれども、私が見る限り、研修が実際の処遇の上で余り役に立っているとは感じられなかったので、本当に充実が必要なのではないかと思います。

氏田座長 法務省の方にもおいでいただいているので後で御発言いただきたいと思いますけれども、ほかに委員の方からの御意見、先にお願いいたします。
 小島専門委員、どうぞ。

小島専門委員 小島でございます。
 大胡田専門委員の意見5に関連して申し上げたいのです。裁判員に関して十分な情報保障というお話がございましたが、もう一つ、検察審査員というのも選挙人名簿から無作為に選ばれますので、当然障害者の方が検察審査員に選ばれることも想定されます。したがって、選ばれた検察審査員の方々にも、適切な情報提供が必要かと思いますので、その点、意見5に付け加えさせていただきます。
 以上です。

氏田座長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
 石野委員、お願いいたします。

石野委員 石野です。
 法務省に対して質問をよろしいでしょうか。

氏田座長 どうぞ。

石野委員 4ページにあります刑事法の入口と出口における福祉的支援の保護観察のところです。保護司の活動だろうと思うのですが、保護司に対する研修についてお聞きしたいと思います。
 2つ目です。「知的障がい専門委員会」についてお話しいただきましたが、その中で聴覚障害者、また視覚障害者に対する研修が含まれているのかどうかお聞きします。

氏田座長 よろしいですか。ほかに御意見なければ、今、一度、お答えいただいて次に進めたいと思いますが。
 では、田中委員、大胡田専門委員、関口委員、続けてお願いします。

田中委員 全日本育成会の田中です。
 取調べの可視化について非常に高い実施件数で進めていただいていることについては、この状況が進んでいるということについてうれしく思っておりますが、実際に状況として23年4月からパイロット試行で、全庁で試行開始が半年ということで一気に高まっていったということなのですが、全く今まで携わっていなかったことから全面的に展開するということにおいて、実際の取調べの後に裁判で扱われるとか、弁護士がどのようなかかわりをするかということで、運用面での検証が必要になってきている時期かと思うのですが、その辺について具体的なことでお話しいただけることがあればお聞かせいただければと思います。

氏田座長 ありがとうございます。
 では、大胡田専門委員、お願いいたします。

大胡田専門委員 法務省の方に、もしおわかりになればということで質問なのですが、1点、可視化の点でして、現在までに13件、録画・録音しない件数があったと。これについては、当事者の意思によって録音・録画をしなかったという御説明がありましたが、もともとが録音・録画の対象となっている方たちが知的障害等の障害者を想定していますので、適切な意思の決定ができたのかという不安がぬぐえないところです。どのような説明があって、どういう確認方法で結局、録音・録画しなかったのかということがわかればお聞きしたい。
 これは法務省の方にお聞きしておわかりになるかどうかわかりませんが、従前出ておりますように、裁判所職員についての研修が重要だという意見が、私を始め、何件か出ておりました。裁判所職員については、障害者に関する研修等が行われているのかどうなのかおわかりであればお聞きしたいと思います。

氏田座長 ありがとうございます。ほかによろしいでしょうか。
 関口委員、どうぞ。

関口委員 上野委員がかなり具体的なお話をしてくださったのですけれども、いわゆる矯正施設の内側については、ほとんど我々は何の情報も持っていないというのが正直なところだと思うのです。名古屋刑務所における不幸な事件の後で、行刑改革会議というものが開かれて、行刑を改革するという趣旨だったのでしょうけれども、その結果、死亡帳は発表されたのです。ただ、それ以後、死亡帳すら発表されていない。これに関して行刑改革会議は今どういうことを行っていて、何が課題になっているのかということを法務省にお尋ねしたい。

氏田座長 上野委員、お願いします。

上野委員 法務省の方へ質問させていただきます。私、A級施設の医務官として勤務していたのですけれども、一般の刑事施設の中で病気を持った方が普通の刑務作業をしないで療養に努める場所、いわゆる病院のベッドみたいな形で19床が確保されていたのです。多分、届出上、有床の診療所の扱いであったと思うのですけれども、私たち精神科の医務官が結構困ってしまうのは、私が実際にあったケースなのですが、脱水状態でいろいろせん妄状態を起こしてしまって、どうしても点滴治療が必要である。でも、脱水状態のためのせん妄状態で点滴の意義が理解できずに抜いてしまうのです。それで少し拘束が必要になるようなことがあって、拘束をするということに関して精神科の病院であれば精神保健福祉法に基づく強制的な医療が認められていますけれども、刑事施設の病舎においては、そういった医療行為に対する扱いはどういった法的根拠で行うことができるのかというのを質問させていただきたいと思います。

氏田座長 ありがとうございました。
 このあたりで一度お答えをいただけたらと思います。石野委員からの保護司に対する研修あるいは「知的障がい専門委員会」の中での聴覚の部分の御質問もありましたし、田中委員からは、可視化の運用面での検証についての御質問、大胡田専門委員の録音・録画しない13件というところでの御質問、関口委員の矯正施設内の死亡帳に関する御質問、今の上野委員の点滴を抜いてしまうときの法的根拠というところで、順番に恐縮ですけれども、お答えいただけますか。

今福企画官 それでは、保護司への研修についての御質問がございましたので、お答えさせていただきます。
 保護司は御案内のとおり、任期は2年でありますけれども、再任される可能性があるということで、通常、もう少し長くなっておられる方が多いものです。その中で年次が最初に保護司さんになられたとき、あるいは2年目、4年目というように、経験年数に応じた研修を実施するのが1つ目です。
 2つ目は、そうではなくて、各保護司会単位等で、年数回、テーマを決めて実施する研修がございます。そのテーマの中には、今、御質問のあったような、例えば障害に関する理解の話ですとか、覚醒剤に関する話ですとか、そういったものについてより理解を深めるためのテーマを選んで研修を実施する。
 もう一方は、先ほども御説明させていただきました福祉との連携を強めて社会復帰を促進していこうという新しい枠組みができたというようなことがございますと、そういった施策についてもきちっと御理解いただく趣旨でテーマを選んで研修を実施する、そのようなことを実施しております。
 また、研修という形ではございませんけれども、地元の福祉事務所などと定期的に協議会を設けるなどして理解に努めている、そのような状況でございます。

宮田企画官 続きまして、刑務所の関係でお答えさせていただきます。
 関口委員さんの方から行刑改革会議は今何をやっているかという話ですけれども、一応提言をいただきまして、それに基づいて新しい法律、刑事収容施設法というのができました。その時点で一応目的というか役割を終えたという整理で、今の活動は特にお伝えするものはございません。
 死亡帳の関係ではないのですけれども、刑務所内での死亡事案とかにつきましては、隠すことなく全件を公表するような取扱いで今やっているのと、各施設に刑事施設視察委員会というのが新しい法律などでできまして、独立して調査したりとか、受刑者から刑務所職員が知らないで、見ないで、刑務所職員からの意見を委員会独自に知って、検討したり、調査したり、あるいは施設に意見を述べたりというような新しい、ある意味ではなるべく公開する方向での仕掛けができまして、それで取り組んでいるところでございます。
 これはお伝えするのがあれかどうかわかりませんが、満期で釈放する際の知事通報でございますけれども、刑務所は刑期を終えたらもう拘束する根拠はないですので、もちろん身柄を釈放するということですけれども、精神保健福祉法上に、医療が必要な人を自治体が知るための契機ということだと思いますけれども、刑務所長の方には通報する義務があるものですから、それで知事の方に通報しているというのが実情でございます。
 刑務所内で身柄を拘束する、公権力を行使する根拠について、上野委員さんの方から御質問がございましたけれども、刑務所内では、刑事収容施設法に根拠がございまして、77条の第1項がございます。これは受刑者が刑事施設の職員の職務の執行を妨げる行為、またはしようとする場合は、合理的に必要と判断される限度でその行為を制止し、その他その行為を抑止するため必要な措置をとることができるということで、医療だけではないですけれども、強制的な医療行為を行うに際して、例えば暴れたりとかというようなことがあった場合には、それに備えて合理的に必要と判断される限度で体を一部押さえたりとかというようなことで、その刑事収容施設法を根拠に行っているところでございます。
 あと研修につきましては十分取り組んでいきたいと思いますけれども、刑務官も体を張ってやっているところなのでなかなか荒っぽいと認められたのかもしれませんけれども、研修も一層充実させて頑張っていきたいと思います。
 以上でございます。

濱参事官 刑事局でございます。まず、研修関係についてですけれども、大胡田専門委員の方から御質問があった裁判所の職員の関係は、私どもではわかりかねますので、申し訳ありません。
 石野委員から聴覚障害者、視覚障害者についての研修という御質問だったかと思いますが、これに特化した形での研修というプログラムまであるかどうかは把握しておりませんが、最初の説明でも申し上げましたように、各種の研修におきまして障害等の各種の特性を十分に把握した上で、それぞれの特性等に応じた捜査・取調べ、公判活動を行うように指導しておりまして、そういう中で聴覚、視覚という障害についてもその配慮の仕方を研修しているということになろうかと思います。
 その他、研修につきましては、大濱委員の方からも、生の研修をもっと強化してほしいという趣旨の御発言がございまして、私どもとしても重要なことだと思っておりまして、実際、各地の検察庁等におきましては、更生保護施設等に職員が訪問して、そこでの職員であるとか関係者と意見交換するといったことに取り組んでいるところもございますので、これからも積極的にそういう取組を進めていくことが大事だろうと考えております。
 田中委員と大胡田専門委員からの取調べの録音・録画関係での御質問でございますが、まず、大胡田専門委員の方から、録音・録画をしなかった13件についての御質問がございました。私の方でも詳細は把握しているわけではないのですけれども、例えば各地から報告されている事例として、強制わいせつ事件の被疑者で、犯行自体は認めているのだけれども、ドラマみたいに撮られるのは嫌だということをはっきり言って、それで録音・録画を拒否したということで実施しなかったというような例などが報告されており、それぞれ各検察官において、きちんとした拒否の意思が提示されているのかどうかを把握しながら対応していると承知しております。
 田中委員の方から、運用についての検証はどうなっているのかという御質問でございます。冒頭の説明でも申し上げましたが、本年7月に当面の運用の検証結果というものを公表しておりまして、その中でいろいろ指摘されていることがございますので、それを御紹介しますと、録音・録画をしたことによる有効性としては、捜査段階での供述の任意性、信用性の判断に有用であると指摘されております。
 また、録音・録画をすることで供述自体が記録化できることから、例えば被疑者が自白して犯行を認めている場合であっても、調書への署名・指印を拒否する場合があるわけですが、その場合も被疑者が供述している内容を記録することができるというメリットがあると指摘されています。
 あとは責任能力という刑法上の要件があるわけですけれども、その判断資料としても有用であるという検証をしています。
 他方で、録音・録画の問題点も指摘されておりまして、1つは、被疑者の供述態度に影響する、具体的には、取調べを受けている状況を撮影されることによって、自尊心や恥ずかしいといった思いや緊張するといった心理的な要因によって供述態度に影響が出てきているのではないかという指摘もあります。
 また、取調官側も録音・録画されていることを意識して、必要以上に丁寧でぎこちない言葉を使ったりして、きちんと真相を解明していくために必要な取調べ,発問等をしにくい部分があるというような指摘もあるところです。引き続き試行というのは現在も続けておりますので、その辺は引き続き問題点を考えていきたいと思っております。
 大体以上でよろしいですか。

氏田座長 ありがとうございます。
 上野委員、今の関係ですね。

上野委員 矯正局の方に質問です。上野です。
 そうすると、一般の刑事施設の中にある病舎というのは、私は有床の診療所と解釈していたのですけれども、それに対して刑事施設の法律で強制的な医療が認められることがあるという解釈でよろしいのでしょうか。

氏田座長 お願いします。

関口委員 今の医療の提供の件ですけれども、障害者基本法の医療のところは第14条第5項に、国及び地方公共団体は医療もしくは介護の給付またはリハビリテーションの提供を行うに当たっては云々かんぬんと書いてあって、その人権を十分に尊重しなければならない。ですから、これは刑務所であろうと国が行う政策なので、ちゃんとしたことをやらなければいけないと思います。
 イタリアのトリエステでは、被収容者も収容されていない人と同じ水準の医療及びリハビリテーションにアクセスできる権利が認められております。ですから、一番問題なのは、日本では刑務所の中で健康保険が使えないことなのです。健康保険が使えると同じ水準と言えなくもないのですけれども、そこのところら辺を、ないのだから健康保険を使えないのだからどう担保していくのかということを考えていただきたいと思います。

氏田座長 2つよろしいでしょうか。すみません。

宮田企画官 医療の関係で、例えば制圧という言葉を私どもは使うのですけれども、根拠は何かというのは、先ほど刑事収容施設法の77条に根拠があると申し上げました。
 同じ刑事収容施設法の62条に診療等というのがございまして、これは刑務所長の関係で医療上の必要な措置をとるということです。ただ、受刑者の生命に危険が及び、または他人にその疾病を感染させるおそれがないときは、その者の意思に反しない場合に限るという言い方をしております。ですから、逆に言いますと、受刑者に生命の危険がある場合あるいはほかの人に疾病を感染させるおそれがある場合には、ある意味では逆の読み方ということで強制的な治療も62条に基づいて許されていると私どもは解釈しております。
 もう一つございましたか。

関口委員 ほかの、つまり被収容者ではないのと同じ水準ということです。同様で不可欠な水準への権利を持つということを確認していただきたいのです。14条の5項では、国民に対して国がどうこうするということを書いてあるわけで、それは刑務所の中であろうと、外であろうと同じだと思うので、私の聞いた話では、随分昔の話ですけれども、精神科医が医官として入ったときに、薬を保存しておく冷蔵庫すらなかったという話を聞いております。

氏田座長 お答えいただけますか。

宮田企画官 実は刑事収容施設法の56条に、保健衛生及び医療の原則というのがうたわれてございます。刑事施設においては、被収容者の心身の状況を把握することに努め、被収容者の健康及び刑事施設内の衛生を保持するため、社会一般の保健衛生及び医療の水準に照らし、適切な保健衛生上及び医療上の措置を講ずるものとするということでございまして、一般の医療が刑務所内でも国の責任において確保されるようにということが規定されているところでございます。
 直接のお答えになっていないかもしれませんけれども、この法律に基づいて医療が行われているということでございます。

氏田座長 ちょっとお待ちください。挙手をしていただいて。
 上野委員、お願いいたします。

上野委員 あともう一点、病舎というのは、私が今まで考えていたのは、19条の有床の診療所と解釈していたのですが、これは間違いでしょうか。

氏田座長 よろしいですか。
 どうぞ。

宮田企画官 それは委員御指摘のとおりでございます。医療法上の手続に基づいて届け出。通常、一般だと思いますけれども、申請手続をして認められたものということでございますので、御指摘のとおりでございます。

氏田座長 ありがとうございます。
 関口委員はお答えよろしいですか。

関口委員 照らしてというところで、照らして同様の水準と書いてあれば私も納得するのですけれども、そうは書いていないではないですか。だから、矯正施設内での医療の水準が一般国民、つまり外にいる国民が受けている医療の水準よりも低いのではないかとい危惧は当たっているのではないかという気がしてしようがないのです。

氏田座長 上野委員、どうぞ。

上野委員 すみません、関口委員の御意見ですが、私は平成19年に勤務していたのですけれども、実際確かに、私が感じていたのは、一般の水準から比べるとかなり低いということを感じていました。それは構造上の問題がありまして、例えば私が精神科医としていろいろ被収容者の方の情報を得ようと思って、毎週の刑務官会議とか、毎朝の処遇部門のミーティングなどにも出席させていただいたのですが、それでは情報が入ってこないです。例えば工場の巡回についていったりとかしたのですが、工場では皆わき目も振らずに作業しているのです。それはなぜかというと、横を見たりとかすると懲罰の対象になってしまうのです。本当に規律が厳しくて、実際にその方がどの程度の医療が必要か、情報をなかなか手に入れることができなかった。
 そうしますと、一般職員からの情報がとても大切になるのですが、残念ながら一般職員の方の医学に関する知識というのがかなり低くて、そこでスクリーニングにかからないと、医務部の准看護師のところに情報が行かず、その准看護師のスクリーニングを通らないと医務官の方に情報が入ってこないということで、私の印象ではかなり重い状態にならないと医務官のところにまで情報が来なかったというような実態があったと思います。

氏田座長 よろしいですか。

宮田企画官 刑務所内での医療が十分かと言われますと、なかなか医師の確保も困難であるというのも正直なところでございますので、至らないところがあるのかもしれません。ただ、その点において、刑務所内での医療が十分でない場合には、これも法律の根拠はございますけれども、刑務所外の医療機関に診察をお願いする、あるいは治療をお願いするという形で補っている、やっているというところでございます。ちなみに62条の2項で、その根拠に基づいて、外部の医師、医療機関の治療等も得られるようにしているところでございます。
 これも上野委員さんへのお答えになるかどうか、受刑者は社会から隔離されて自由を奪っておりますので、どうしても病気に逃げ込むというような傾向はあると思います。私どもも、受刑者のうち大体6割ぐらいは何らかの疾病があるかなと思っています。つまり、相当医療に対するリクエストが本当に多い世界です。特にメンタルな意味で逃げ込んで、作業を逃げたいとか、集団生活から逃げたいというものも御存じかと思いますけれども、非常に少なくない。
 そのために医療が必要な場合には、一般に願箋と言われている物を本人から工場担当あるいは居室担当の者に出させて、それでスクリーニングをかけ、准看護師がまた見て、それでスクリーニングして必要なものについて医師の判断を仰いでいるというのが実態でございますし、やむを得ないというところがございます。それも含めて十分でないという御指摘であれば、甘んじてあれしますけれども、そういった形で進めてやっているところでございます。

氏田座長 ありがとうございました。
 続きまして、山本専門委員、どうぞ。

山本専門委員 先ほどの上野委員の発言とかぶるところがあるのかなと思いながら聞いていました。私は大阪の精神医療人権センターの電話相談をおよそ20年やらせていただいています。その中で送られてくるハガキの中に、自分が必要な精神科医療を受けさせてもらえない、理由としては、どう訴えても詐病であると言われてお薬が投与していただけない。できるならば、今までかかっていた主治医と連絡をとって、ちゃんと継続した薬を飲みたいのだけれどもというような要望とかが書かれていました。
 中に入られたときの緊張とかも書かれていて、そういうためによけいに眠れなくなってきている苦しさがメインだったと思います。そこら辺のことを訴えれば訴えるほど詐病であると疑われるつらさという表現でした。私たちのところに入ってくる手紙等々を見ていますと、余り精神症状については外で受けていた医療のレベルの延長線上で受けさせてもらえないという苦しさが伝わってくるのです。
 28ページに上野先生が書かれていますが、重大な薬の副作用の悪性症候群などを起こして初めて、よほどひどい状態になって初めて、命の危険に至るレベルで初めて診察の依頼が来る。そうならない手前ではお会いすることがないというお話は、実は今までも刑務官の医療、ドクターの話としてはよく耳に入ってきていました。診察に行きたいと思っても、そこは懲罰の空間であるから、定められた枠内でしか診察行為をしてはいけないととどめられるために、そこでの医務官としてのお仕事をやる意欲が薄れてしまって、2~3年で自分の中で気持ちが消えてしまう。よほど状態が悪化してどうしようもないお手上げにならないと面接ができないというのは非常に差別ではないかと思う。そういうふうに医務官を経験されてきたドクターの方々はお話をされています。
 先ほど56条とか62条という説明がございましたが、私たちが聞いている限りは、きれいごとすぎないかなと感じます。他の疾患、例えば肝臓とかであれば必要に応じて外での例えば阪大に移ってそこで手術を受けるとか治療行為を受けるということをしてまた元に戻るということができていますが、精神症状に関してはそのような他の医療施設に移って、治療してまた元に戻るということが受け入れられているとは聞いた記憶はないのです。むしろ希望としてはたくさん出ているのですが、そうしたことが他の者と平等な医療の提供、アクセスとはなっていないという訴えの方が圧倒的に多いので、そこら辺は、いくら懲罰の場であるからということはあったとしても、もう少しきちんと考えていただかないと、障害による差別に該当するのではないかと私たちは感じております。そこら辺はいかがでしょうか。

氏田座長 ありがとうございます。お願いします。

宮田企画官 刑務所での医療が不十分だという御指摘と、もう一つはアクセスということでしょうか。治療に対するアクセスが十分ではないということで、それも含めて不十分ということの御指摘だと思います。本当にきちんと受け止めてやりたいと思います。ただ、先ほど上野先生に御説明させていただいた、どうしても詐病がすごく多いので、私ども非常に身構えてやらなければいけないというのは1つあるのです。
 もう一つは、通常一般には願箋を出してもらって、准看護師でスクリーニングをかけるようなことで御説明しましたけれども、それ以外にも治療の訴えというのは幾つかルートがあります。例えば私も監査で立ち入り検査で刑務所などを回りますと、職員には絶対に知らせない状態で受刑者の面接などをします。苦情の申出というような手続があります。先ほど刑事施設視察委員会の話も申し上げました。そういう形で、例えば医療を受けられないという話が職員が全部つぶしているというのであれば、そういうことではなくて、そういう訴えができるチャネルは幾つか用意はありますし、その機会は十分ではないかもしれませんけれども、一応設けられてはいるということだけ御説明させていただきます。

氏田座長 山本専門委員、どうぞ。

山本専門委員 もう一回、ネーミングをお伝えください。

宮田企画官 刑事施設視察委員会という名前でございます。

山本専門委員 状況はよくわかりませんがあるのですね。

氏田座長 よろしいですか。すみません、願箋というのは何でしょうか。

宮田企画官 願箋といいますのは、メモとお考えいただければ。私はこういうことをしたい、あるいはこういうことをやってもらいたいというような。

東室長 まず漢字で。

宮田企画官 願いで「がん」と呼んで、「せん」は便箋の箋です。ただ、箋は難しいので平仮名で書く方が多いと思いますけれども、刑務所用語でございます。

氏田座長 ありがとうございました。
 では、上野委員、どうぞ。

上野委員 刑事施設の医療の話で、上野です。
 刑事施設は全国に70以上ありますね。その医療をどういった人を医務官が診察するかとか、医療のあり方は施設ごとにかなり違うみたいなのです。私が勤務していたところと、ほかの先生に聞いたところと、全然やり方が違っていたりとかして、いわゆる幹部職員でない一般職員の人たち、そこへずっと勤務して、欧米に比較して日本の刑事施設の場合は離職率が低いので、その人たちがそういったやり方をずっと保持している。そうすると、刑事施設によっては、事実上、准看護師の刑務官が処方しているような施設もあると聞いているのです。明らかにこれは医師法の違反なので、これだけは何があってもどうにかしてほしいと思うのですけれども、いかがでしょうか。

宮田企画官 事実であればそれは重大な問題だと思いますけれども、私どもはそういった例、現実的に准看護師が医療行為をやっているというのは承知しておりません。ただ、スクリーニングとかで、申しわけありません、今の時点では誤解ではないかということでお伝えさせていただきたいと思います。

上野委員 それは絶対誤解ではありません。私は辞めるときに矯正局の医療管理官の方にも申し上げております。後で詳しいお話をさせていただきたいと思います。

氏田座長 ありがとうございます。もう論点⑤の方にも少し入ってきてはいるのですけれども、論点⑤「障害を有する受刑者・出所者等に対する処遇及び支援の在り方」についてというところで、もう少し広げて後半の方の議論にも入っておりますけれども、御意見を頂戴したいと思います。長崎モデルも出ております。
 大濱委員、よろしくお願いします。

大濱委員 長崎モデルも含めてですが、恐らく今の話の中で大事なのは、処分決定に至るまでの過程で助言や立会人をどうやってつけるかということだと思います。そして、その前提として、どの段階で障害があると判断することができるか。これには警察官や検察官の両方にそのあたりの資質が相当問われて、担当者の資質によって相当変わってくると思うのです。
 例えば代表的な事例で、下関の駅舎の放火事件があると思います。これは御存じのように、74歳の人が下関の駅に放火しました。過去10回ぐらい累犯を繰り返しています。そして、刑期を終えて出所すると、そのたびに刑務所に帰りたいということで、何回もそういう放火を繰り返しているわけです。それをきちんと食い止めるという政策が非常に重要だと思っています。そのためには、まず処分決定前の段階で、警察官や検察官がどういう形でこういう人たちの障害を見抜き、きちんと福祉につないでいくかということが問題だと思うのです。福祉サイドの取り組みとして全国に地域生活定着支援センターがやっとできたわけですから、それにどうやって繋げていくのかが課題です。
 2006年のデータによると、受刑者2万7,024人のうち、調べたら410人しか知的障害を持っている人はいなかったという数字が出ていますが、2011年の矯正統計では、毎年2万5,000人ぐらいの新規受刑者うちの恐らく5分の1ぐらいは障害を持っているとされています。そのような現状に対して今後どうやって手当していけるのか、それが大きな課題です。それと同時に、不起訴、起訴猶予、処分保留などの人たちをどうやって福祉につなげていくか。これらが第1点目の問題です。
 第2点の問題としては、起訴されて、執行猶予がついた、あるいは実刑判決を受けて刑期を満了したその後、社会に戻る段階での支援プログラムをどうやってきちんとつくっていくかが挙げられます。やっとできた地域生活定着支援センターにどうやって結びつけていくか。このあたりの課題をきちんと解決していく必要があります。
 第3点として、今、長崎モデルということが盛んに言われていますが、これは他の地域でも本当にできるのかという問題があります。今日、田中さんがいるので説明してもらえばいいのかもしれませんが、コロニー雲仙に見られるように、長崎は大分前から施設改革が相当進んでいる地域です。今後、滋賀と宮城でモデル事業をやると聞いていますが、長崎という先進地だからできたという考え方もあると思います。
 長崎モデルを全国的に広げた場合に、一番怖いのは、福祉につなげるときに、どんな人でも施設に入所されればいいのだという事態に陥ってしまうことです。50人収容の刑務所のような入所施設、刑務所の延長上の入所施設、それこそが出所者にとって理想的な暮らし場だということになると意味がありません。そうではなくて、長崎モデルに近い支援システムを私たちがきちんとつくり上げていけるのかどうか。そのあたりをこの委員会でもう一回検証した方がいいのかなと思っています。
 以上です。

氏田座長 ありがとうございます。
 田中委員は発言されますか。

田中委員 田中です。
 今、お話があったように、地域定着支援センターもまだ全県に確実に配置されきっていない状況があると思いますが、大分ここ数年、各県で取り組み始めたと理解しているところです。今、大濱委員からお話があったように、受け皿をどのようにつくっていくのかということは、地域福祉の推進力がある、その分野に長けている県が非常にその任を担っているということなのです。長崎は特別に法人の方が非常に熱心に力を入れてということですが、宮城、滋賀の方は県の事業団がリードしていると理解しているのです。そういった公的な役割が、都道府県が主体になって、民間だけでは補いきれないところをつくっていくということで、この定着支援センターのあり方については、まだまだ緒についたところですので、そういった先行モデルを参考にしていくことを目標にしていってはどうかと思っています。
 今日は刑務所関係の方もいらっしゃっているので、中のプログラムについて先ほど少し御説明がありましたが、これも先ほどの可視化と同じで、まだ段取りが始まったばかりと理解していますが、中での段取りと、受け皿となる事業団などが積極的に推進していくつなぎ部分がまだ非常に弱いのではないかと思っておりまして、私の今かかわりがあります国立のぞみの園でもそのようなかかわりをし始めているところですが、やはり刑務所内での位置づけが基本的には懲罰であるということで、そこの中でのプログラムが、今日御案内を幾つかいただいたのですが、これも検証を踏まえて、今後の障害福祉計画の段取りの中でどの程度までを目標にしていくかということは参考にする必要があるかと思いますので、今日、にわかに御質問というよりは、資料として御提出いただけると、地域定着支援センターと刑務所内でのプログラムの展開、これをすり合わせて計画に盛り込んでいけるのではないかと、今日お話を伺って思いましたので、参考にさせていただければと思っています。

氏田座長 ありがとうございます。
 関連の御意見、中西委員、御意見ありますか。

中西委員 すみません、関連ではなくて介助に関してなのですけれども、いいですか。

氏田座長 どうぞ。

中西委員 先ほど49ページの御説明のところで、介助が必要な人は収容棟の中で収容して介助という話だったのですが、その中で多分これは高齢者を含めてほとんど寝たきりの人を想像しているのかなと思いまして、人的な介助があれば、例えば刑務所内の活動に参加できるというような人たちに対しての介助者の存在が全然見えてこなくて、片や知的障害者の支援者等で、受刑者の人がその肩代わりをして働いているという現状があると伺いましたので、介助が必要だというと、この受刑者の人が当たるのかなと思ったのですが、やはり介助、仲間の中でそのようなやりくりをするのではなくて、きちんと物的な福祉機器の提供と同じように、介助の位置づけは考えていただきたいと思います。
 以上です。

氏田座長 よろしいですか。その辺、いかがでしょうか。

宮田企画官 基本的には刑務官が介助しているのが実態ですけれども、刑務所の中の高齢化がすごく進んでおりますので、今の御指摘を踏まえて、足りないところがまだまだあるとは認識しておりますので、頑張ってやる。その刑務官が足りないときには、受刑者にも手伝っていただく場面ももちろんあるものですから、なかなか十分でないという認識はしております。ありがとうございます。

氏田座長 石野委員、よろしくお願いします。

石野委員 石野です。
 刑務所に入っている聞こえない人もいると思います。実際、地方の手話通訳派遣するところから幾つか報告もあります。先ほどお話にもありましたが、面会のときに聞こえない人と面会をする場合に、刑務官が話を聞いて記録をとると思います。手話のできる刑務官がいるから話の内容が全て把握できるというような状態にはならないと思います。手話ができると言いましても、3日とか4日とか手話を学んだレベルではとても習得できません。手話をきちんと読み取るには、1年半とか2年なりの学習が必要ですから、手話のできる刑務官をお願いする、来てもらうということ自体に限界があるのではないかと思います。
 したがって、手話通訳の派遣を利用する、あるいは要約筆記の派遣を利用するというように、専門的な人をきちんと配置するべきだと思います。それが刑務所の職員にきちんと理解されていない面があるので、先ほど申しましたように、聞こえない人についての理解を含めているのかどうか。こちらがお聞きしたいのは、知的障害者に対する研修だけではなく、知的障害プラス聾の人もいます。重複障害の人もいますので、そういう人たちに対してどういうふうな理解を研修に入れていくか、そのカリキュラムが今のところないようなので、ただ、話を聞くというだけになっているので、きちんとした研修システムをつくっていただきたいと思います。
 以上です。

氏田座長 法務省からよろしいですか。

宮田企画官 最初の御説明が十分でなかったかもしれませんけれども、手話通訳者の確保については、社会福祉協議会、自治体にお願いして派遣を要請して円滑な面会等ができるように努めているのは、そのとおりでございます。ただ、これも今まで各施設がある種それぞれのロケーションで努力していたところがあるものですから、昨年、本省の方から各施設に、あるいは原則としてこういうふうにしなさいよと、もちろん、手話が堪能な職員がいればそれはいいのですけれども、正直言ってそんな十分ではないと思いますので、適切な手話通訳者を確保するように指示しているところでございます。
 研修なのですけれども、研修については、知的プラス聾とおっしゃったのですが、広く福祉施設の実習、例えば車いすの実習なども含めて、そういったカリキュラムは現状でも研修の一環として設けているところでございます。地域福祉、社会福祉のあれです。例えば福祉施設の体験実習というようなものも含めてやっています。
 ただ、これもそれで十分かということはもちろんあるかと思いますけれども、今後も充実させていく必要はあると認識しておりますので、やっていきたいと思います。

氏田座長 石野委員、よろしいですか。
 関口委員、お願いします。

石野委員 別に意見をまた言わせていただきます。

氏田座長 ありがとうございます。

関口委員 蒸し返すようですけれども、入り口のところから考えてみたのです。そうすると、もし私が不当逮捕であろうと何であろうと拘留されると、黙秘権は行使できないわけです。つまり、自分の名前と主治医の名前と医療機関の名前を言わなければ薬が入ってこないという不利益が基本的にはあるわけです。
 その上で、薬を主治医に問い合わせてわかったと、適当な薬を対応してもらうということが捜査段階から始まるわけですけれども、外に出すときには精神保健福祉法による義務で通報するけれども、中に入れるときは外からの薬の情報は引き継がれないという、これは一体どういうわけなのでしょうか。精神保健福祉法にそういうことが義務づけられているのだったら、矯正施設の法律の方に、外の薬はちゃんと入れることと義務づけるべきではないでしょうか。

氏田座長 そのような実態がありますか。

宮田企画官 とりあえず実態で申し上げますと、刑務所に確定して受刑者になる場合には、その時点で拘置所を含めて留置施設にいて確定すれば刑務所に入るということになります。
 留置施設では、基本的には身柄は拘束されておりますけれども、その者の診療情報、本人の申告とか、本人がいろんな資料を持っている場合ももちろんあるわけですけれども、例えば診断書とか持っている場合もありますが、そういった情報につきましては、確定する受刑する施設の方に情報は伝えられる。それも参考にしながら服役していただくということになっていると思います。

関口委員 条文の根拠はあるのですか。細則でも何でもいいのですけれども、規則でも。

宮田企画官 申しわけございません。それをきちんと規定したという条文は恐らくないかと思います。というのは、刑事施設に行われている診療と医療行為については、刑事施設の長の判断で行われていることになりますので、そういった情報のやり取り、情報の伝達についても施設の判断で行っているというのが、恐らく根拠はと言われると、根拠はそこにあるのかなと思います。

氏田座長 関口委員、よろしいですか。

関口委員 納得はできませんが、ちゃんとそれは何でもいいですから、法令で定めるべきだと思います。それがないと、ある時点から薬がなくなったり減ったりとか、そういう変なことが起こってしまうし、合理的な配慮のもとに医療を受けるという権利が侵害されると思います。

氏田座長 ありがとうございます。
 法務省の方にお尋ねしたいのですが、刑事収容施設法はいつでき上がっているのでしょうか。

宮田企画官 実は法律は正式には、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律という非常に長い名前の法律でして、これは実は二段階の改正を経て今の法律の名称になっています。平成18年に古い100年以上続いた監獄法が改まって法律ができ、それを名称を変更するというようなことも含めて二段階変更して今の法律ができ上がっているということでございます。

氏田座長 ありがとうございます。
 先ほどの石野委員の研修に関する御意見は、中西委員も先ほど当事者性というところで御意見を言っていらしたと思いますので、その辺のところについてまたいろいろ当事者の方からの御意見が入るような形での研修ということだったかと思うので、また御検討いただけるとありがたいと思います。
 時間になっているのですけれども、どうしてもここはというところでぜひ御意見も。
 石野委員、どうぞ。

石野委員 石野です。
 本当は論点④の①、意見書に17ページにも上る意見を出しました。言いたいことは何かと言いますと、障害者基本法の第4条、差別禁止の定義があります。今まで議論してきたように、この委員会をまとめるという方向ですけれども、特に合理的配慮とは何なのかが基本的な問題だと思います。それに対して、司法手続についての意見をまとめて提出しました。
 最近は、裁判員制度も始まりましたし、聞こえない人が弁護士もふえています。聴覚障害者自身も訴訟するという権利も実現されています。司法に参加する機会がふえているのは大変いいことです。ただ、裁判所では、なかなか壁が厚くて、そのために弁護士団と裁判所とのやりとりがかなり四苦八苦しています。
 被告人への情報提供、また傍聴人への情報提供、盲ろう者がいた場合どうするか。難聴者や中途失聴者がいた場合にどうするのか、コミュニケーションについて、裁判所の考え方がまだまだ一致していませんが、障害者の権利条約の中でアクセスビリティという考え方が出されていますので、やはり司法の場もアクセスビリティが必要だと考えております。
 以上です。

氏田座長 お願いします。

大濱委員 最後に1点なのです。黒羽という刑務所があって、ここは一般的に独居房が多くて障害者が多いところだということで聞いています。先ほどの中西さんの発言ではないですが、ここで刑務官の補佐をする指導補佐という形で、実際に健常者が障害のある受刑者の介護に当たっているという話を聞いています。
 今後の考え方の1つとして、喜連川の社会復帰促進センターは、PFI手法も導入して、福祉刑務所のような位置づけ、特化ユニットという形で運営されているわけです。これからかなり高齢化が進みますと、受刑者どうしの老老介護といった問題も出てくるでしょう。ですから、受刑者に介護させるのではなくて、身体障害も含めて必要な介護がある人は、喜連川のような特化ユニットを備えた福祉刑務所を今後はもっとつくっていかないと難しいのではないかと思います。そのあたりはいかがですか。

氏田座長 お願いします。

宮田企画官 これも十分な御説明にならないと思いますけれども、ただ、御指摘のとおり、本当に福祉の措置が必要な受刑者が増えているのは確かです。私はよく申し上げるのですけれども、社会で高齢化が2倍になれば、刑務所内では4倍になっているのかなというぐらい、本当に急速な高齢化が進んでいるのも確かだと思います。ですので、委員の御指摘は、本当にそのとおりかなと思っています。
 ただ、そうは言いながら、今、一生懸命やっているのは、高齢受刑者の方で申し上げますと、社会での福祉にどうつないでいくか、その反対として、先ほど田中委員さんの方からお話がありましたけれども、刑務所内でどうプログラムを工夫して、地域の力を使っていただいて、どうプログラムをうまくやっているか。それをまた検証しながら、各施設に広げていこうというのを今考えているところでございます。なかなか一足飛びにそういった形ですぐはなかなか難しいかなと思いますけれども、参考にさせていただきたいと思います。
 追加で御説明させていただいてよろしいでしょうか。
 関口委員さんの方から、診療情報が刑務所内にきちんと伝わっているかどうかについて、これは法令というのはあれですけれども、警察の留置施設から刑事施設に移送を受ける際には、かなり詳細な診療情報も通知、私どもの局の課長通知に基づいて引き継ぎをするようにということで、通知は発出してもらっていますので、これに基づいて警察の留置所から情報は刑事施設矯正の方にいただけるということはございますので、追加で御説明です。
 1点、関口委員様にお断りというかお詫びでございますけれども、刑務所内での死亡案件を全件公表と申し上げましたけれども、全部ではございませんでした。数字はもちろん全部公表しておりますけれども、例えば司法解剖が必要であった場合、あるいは自殺の疑いあるいは自殺したというような案件、そういったものは公表しておりますけれども、そういった疑いのないものについては公表まではしていなかったようでございますので、すみません、訂正させてください。申しわけございません。

氏田座長 ありがとうございます。活発な御議論、ありがとうございました。
 どうしても御意見ありますか。では、簡単にお願いします。

関口委員 今のに関しては、個人情報保護法で守るべき個人情報は生きている人に対するものですから、死んだ人は個人情報保護法の範疇外だということを指摘しておきたいと思います。
 もう一つ、医療観察法施設からの出所者に対する強制医療の問題については、ここでは議論できなかったので、医療の部に譲りたいと思います。
 以上です。

氏田座長 ありがとうございます。
 事務局から一言。東室長、お願いします。

東室長 事務局サイドから御質問させていただきたいと思うのですが、今日、もっぱら刑事局を代表されて、参事官の濱さんに御答弁いただいているわけですけれども、お立場として、警察の取調べということも含めての御答弁ということで承っていいのかどうか、そこだけ1点確認させていただきたいと思います。

濱参事官 基本的には検察庁における取組ということで御発言をさせていただいているというスタンスでございます。

東室長 警察の取組というのは、また別の話だということでいいのでしょうか。

濱参事官 警察におきましても、録音・録画についての試行等はしているのを承知しておりますけれども、私の立場から、その詳細や評価を述べるわけにはいかないのではないかなと思っております。

氏田座長 ありがとうございます。来年度からの基本計画に司法へのアクセスビリティというところも入れ込んでいくということでの活発な御議論、ありがとうございました。
 これから今までの第3小委員会のまとめに入っていくのですが、今日のまとめを簡単に北野副座長の方から2分ぐらいでお願いできるということで北野副座長、よろしくお願いします。

北野副座長 もうそれでなくともぼうっとしておりますので、今日この議論を2分でまとめるということは不可能なのですけれども、1つは、後藤委員の方から、どう全体をまとめていくかというまとめについての意見をいただきましたので、まとめにつきまして皆さんの意見をできるだけ尊重して、座長と事務局の方で少し案を考えたいと思っております。
 今回、特に思いましたのは、大濱委員や中西委員がおっしゃってくださった、障害当事者の参加、参画した研修であるとかいろんなプログラム、仕組みをちゃんとつくっていかなければいけない。障害当事者の方が参画したような仕組みをきっちりつくることが必要であるということをすごく思いました。
 もう一つは、上野委員がおっしゃった、各刑事施設で例えば医療であるとか介助とか、さまざまな合理的な配慮に格差があるのではないか。これは一体憲法で保障する、健康で文化的な最低限度の医療なりそういうものが保障されているのか。つまり、各刑事施設全体にガイドラインのようなものがきっちりあるのか。それとも、様々なところでかなり格差のあるばらばらな仕組みが行われているのかを考えますと、今後、私たちは障害者の権利条約や障害者基本法に基づく、つまり、障害を持っている方の合理的配慮をきっちり求めていくという方向と今回の話がどこまできっちり整合性が取れるのかということについては、まとめの中でまたちゃんとした議論をしていかなければいけないなと思っている次第です。
 以上です。

氏田座長 ありがとうございます。
 どうぞ。

後藤委員 まとめですが、特に大事なのは、今後、基本計画が政府によってつくられて、それが今回の基本法のもとで監視の規範になる、それを10年間やっていくことになります。
 でき上がる基本計画には、その後ろの背景があるわけです。こういう議論をしてきましたと記録しておくことが、監視するときに厚みのある情報として貴重と思います。乱暴に申せば、せっかくこれだけ出ていれば、その議論を全部小委員会の記録に入れてもおかしくない。一致させた意見をコンパクトにつくるよりも、こんな議論もあんな議論も出てこういう方向だったと両論併記でもいいですから、ビビッドな議論をちゃんと記録しておく、そういう観点でおまとめくださいますか。事務局もその辺、お許しいただけるとありがたいと思います。

東室長 では、実質的な議論は終わったということでいいですか。

氏田座長 はい。終わったということで。

東室長 どうも本当に御苦労様でございます。これをどうまとめるかということで後藤委員から御意見が挙がっていますが、1点、前提の問題があります。障害者基本法では、29条で司法手続等における配慮等ということで、国または地方公共団体が主語になっているわけですので、解釈としては、国の中に裁判所ということも入るのかなと、それもあり得るのかなとは思うのですが、ここの政策委員会の議論は、行政の施策としての基本計画をつくるということが大くくりの話であるわけですね。
 ですから、今日の御意見、もちろん、書面も含めて、裁判所の対応についていろいろ御意見が出ておりましたが、直接的に裁判所がこうすべきだということについては、基本計画の中にダイレクトに入れるというのが非常に難しい、三権分立という観点からして、そこはひとつ御理解を願いたいと思います。
 その上で、行政の政策としてまとめられる部分について、事務局の私の方から言うのはおかしい話かなと思いますけれども、この分野の議論は、基本法29条ができたために議論もできる初めてのものだと思うのです。ですので、先ほど10年スパンとかおっしゃいましたけれども、基本計画が10年になるのかどうなのかは未定のところがありますが、まずはスタートということで、この議論をもう少し発展させるような形での基本計画のつくり方みたいなことも念頭に入れる必要があるのかなということも感じてはおります。
 いずれにしても、いろいろな議論をいただきましたので、いただいた議論は座長、副座長に主査になってもらってまとめをつくるということで考えさせていただければと思います。
 資料の最後に、今後の予定が書いてありますので、開けて見ていただくとわかると思います。11月5日が政策委員会、親委員会になりますので、そこで報告いただくということになろうかと思っているところです。
 事務局からは以上です。どうもありがとうございました。

氏田座長 11月5日の時間が入っていないようですが?

東室長 午後ということであけておいていただければありがたいかなと思っております。

氏田座長 では、11月5日と12月17日の全体会は午後からということであけておいてくださいということです。
 三権分立ということでしたけれども、今年の4月にあった発達障害の方の量刑がふえてしまったという問題は、私たち家族にとっても大変びっくりするような判決だったので、ぜひいろんな形で新しい計画に盛り込めればいいなと思います。
 大変申しわけありません。17分過ぎておりますが、それでは、これをもちまして「障害者政策委員会第3小委員会」の第3回会合を終了いたします。
 本日をもちまして、第3小委員会で予定されていた全ての議事が終了いたしました。事務局からも説明がございましたけれども、本小委員会の審議の状況につきましては、後藤委員からもアドバイスいただいたように、私から次回の11月5日の親委員会で報告させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします
 委員及び専門委員の皆様におかれましては、活発な御議論を頂戴いたしまして、ありがとうございました。また、本小委員会の運営に当たりまして御協力いただきました関係省庁の皆様にも、本当にありがとうございます。厚く御礼申し上げます。
 以上をもちまして、第3小委員会の第3回会合を終了いたします。お疲れ様でございました。