障害者政策委員会ワーキング・セッションI:成年後見制度も含めた意思決定支援など 議事録
○野澤委員 「障害者政策委員会」ワーキング・セッションI「成年後見制度も含めた意思決定支援など」の第2回を開催させていただきます。
本日の司会を務めさせていただきます、本ワーキング・セッションのコーディネーターの野澤です。委員の皆様におかれましては、御多忙中のところをお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
本日の会議は12時半までを予定しております。
では、事務局から、委員の出欠状況について報告をお願いします。
○加藤参事官 事務局です。
本日のワーキング・セッションIには、コーディネーターの田中委員、玉木委員、野澤委員のほか、伊藤委員、上野委員は少し遅れておられるようです。大河内委員、大原委員、大日方委員、加野委員、河井委員、佐藤委員、辻井委員、松森委員、三浦委員、山崎委員が出席されています。
なお、会議冒頭、委員の皆様の御迷惑にならない範囲で取材が入り、写真撮影が行われますので、御承知おきください。
以上でございます。
○野澤委員 それでは、議事に入ります。
毎回のお願いで恐縮ですけれども、議事に入る前にお願いがあります。
各委員から発言を求めるときには、まず挙手をいただき、司会からの指名を受けて発言をお願いいたします。できれば最初に結論を述べて、その後、理由あるいは説明をしていただくのが合理的配慮としてよいのではないかと思っております。
発言の際には、まずお名前を名乗り、可能な限りゆっくりわかりやすく御発言いただくようお願いします。できるだけマイクに近寄ってお話しください。発言後は、必ずマイクのスイッチをオフにしていただくよう、お願いします。
また、障害者基本計画(第3次)の実施状況に関しまして、委員あるいは参考人より御発言いただく際、可能な限り、事前にお配りしております障害者基本計画(第3次)の実施状況のいずれの項目に関連しての御意見なのかを資料のページ数とあわせてお知らせくださいますよう、お願い申し上げます。例えば「実施状況、4ページにある項目番号1-(1)-5についての意見です」というように言っていただければと思います。
本日は、成年後見制度も含めた意思決定支援などの分野における第3次障害者基本計画の実施状況について、御議論いただきたいと考えております。
では、会議の資料と流れについて、事務局より御説明をお願いします。
○加藤参事官 本ワーキング・セッションの会議資料と流れについて御説明いたします。
まず、会議資料でございます。
資料1「都築参考人提出資料」
資料2-1「成年後見関係事件の概況」
資料2-2「後見人等解任事件のうちに認容で終局した件数」
参考資料1「障害者政策委員会ワーキング・セッションについて」
参考資料2「障害者政策委員会における第3次障害者基本計画の実施状況の監視に係る今後のスケジュールについて(案)」
参考資料3「障害者政策委員会における第3次障害者基本計画の実施状況の監視について(案)(第20回障害者政策委員会資料)【抜粋】」となっております。
なお、委員の皆様には、机上に常備いたします資料として「障害者基本法」「障害者基本計画」「障害者基本計画の概要」「障害者基本計画の実施状況」「障害者の権利に関する条約」を御用意しております。
次に、具体的な進行についてですが、まず、成年後見制度も含めた意思決定支援の分野における第3次障害者基本計画の実施状況について、厚生労働省と法務省からの説明を行い、25分間意見交換を行います。その後、15分間の休憩を挟んで、後半では55分間全体での意見交換を行います。
なお、これ以降の写真撮影は御遠慮いただきますよう、お願いいたします。
以上です。
○野澤委員 それでは、成年後見制度も含めた意思決定支援などに係る第3次障害者基本計画の実施状況について、また、こちらから確認を依頼していた事項について、まず、厚生労働省から説明をお願いします。
○厚生労働省 厚生労働省でございます。私、障害保健福祉部障害福祉課の障害児・発達障害者支援室及び地域移行支援推進室の室長として、先週着任いたしました津曲と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
本日は、厚生労働省の障害者基本計画に基づきまして取り組んでいる成年後見制度に関する状況について、御説明させていただきたいと思います。
お手元の机上配付資料といたしまして、青いファイルに「障害者基本計画(第3次)の実施状況(案)」というものが挟まれておりますけれども、そちらをごらんいただいて、そちらに沿った形で説明したいと思います。
「障害者基本計画(第3次)の実施状況(案)」の3ページに分野別の基本的方向の1-(1)-4と書いてあるところがございます。ここでは、障害者基本計画において知的障害または精神障害により判断能力が不十分な者による成年後見制度の適正な利用を促進するため、必要な経費について助成を行うとともに、後見等の業務を適正に行うことができる人材育成及び活用を図るための研修を行うとされております。
厚生労働省の平成25年度の推進状況でございますけれども、成年後見制度に関しましては、これを利用するときに資力のない方、お金のない方はどうするのかというような問題意識がかねがねございましたので、厚生労働省の地域生活支援事業の必須事業として位置づけている事業がございまして、成年後見制度利用支援事業というものでございますけれども、こちらの事業を通じまして登録手数料であるとか、鑑定費用などの成年後見制度の申し立てに要する経費、こちらを支援することとしております。
実施状況でございますけれども、平成24年4月、1,240市町村で、25年には1,322。資料には書いてございませんけれども、26年4月には1,360市町村まで広がってございます。
今、お金のない方の支援について申し上げたわけでございますけれども、先日の会議のほうで問題提起いただきました身寄りのない方に関しましては、市町村のほうが家庭裁判所と相談して成年後見制度の手続に入るという仕組みとなってございます。
また、もう一つの○でございますけれども、成年後見制度における後見業務を適切に行うためには、特に障害者の方に関しましては一定の配慮が必要と考えております。と申しますのは、成年後見制度をスタートするのは、障害者の方の場合ですと例えば20代、30代、40代、こういうようなところからスタートして、それがまた人生とともに歩んでいくという形になるわけでございますけれども、そうしますと、後見人の方も50代、60代、70代とお年を召していくということでございまして、そういった場合に、個人で後見していくことがなかなか容易ではないようなケースもあるわけでございます。このために、法人としてしっかりと後見をしていくことが大事だと考えておりますので、24年4月からこのような成年後見制度、法人後見支援事業を行っておりまして、24年4月段階では47市町村がこちらの事業を行っておりましたけれども、25年4月には174、そして26年4月には、記載がございませんが207市町村であることが確認できておる状況でございます。
私どもといたしましては、このような施策を通じまして、成年後見制度の活用に関しまして支援を行っていくということでございますけれども、法人後見等の実施状況についても御質問があったと聞いておりますが、私どものほうで把握しております法人後見の実施状況でございますけれども、NPOさんであるとか社福さんの状況はわからなかったのですが、社協さんがどの程度行っているかでございますけれども、26年9月1日現在で298社協さんで法人後見をすることができる状況にある。実際に受任しているところと受任していないところがございまして、26年9月1日現在で受任しているところが249社協さん。そして、受任はしていないけれども、受任体制を整えているという社協さんが49社協あると聞いてございます。
また、市民後見人がどのくらい現在いらっしゃるのかに関しましては、これは私どもも裁判所のサイトで確認したものではございますけれども、こちらの「市民後見関係事件の概況」という資料によりますと、平成26年の段階では213人という記載があったところでございますが、個別にこれ以上に関しましては、私どものほうでも情報を持ち合わせていないところでございます。
厚生労働省からの説明は以上とさせていただきます。
○野澤委員 ありがとうございました。
では、続いて法務省から御説明をお願いします。
○法務省 私は法務省で官房参事官をしております堂薗と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、前回御質問があった点を中心に御説明をさせていただければと思います。
まず、資料2-1「成年後見関係事件の概況」と書かれているものをごらんいただければと思います。
成年後見事件につきましては、基本的に裁判所のほうで事件を取り扱っておりますので、統計関係については全て最高裁判所の統計をもとに御説明をさせていただきます。この「成年後見関係事件の概況」も最高裁の事務総局家庭局でまとめたものでございます。
まず、成年後見の件数がどの程度か、あるいは年次推移がどうなっているかという点でございます。この点につきましては、概況の1ページをごらんいただければと思います。
申し立て件数が書かれておりまして、下のグラフを見ていただければわかりやすいかと思いますが、総数というのは、後見保佐、補助、全て合わせたものでございますが、この総数の5年間の推移がここに書かれておりまして、平成24年まではずっと増加しておりますが、25年、26年は微増、微減ということでございます。内訳でございますけれども、後見が圧倒的に多く、平成26年度ですと2万7,000件台。保佐、補助は比較的少なく、任意後見というのもさらに少ないという状況でございます。
これは申し立て件数でございますが、今度、利用者数につきましては、この概況の11ページをごらんいただければと思います。ここに「成年後見制度の利用者数について」という統計がございます。ここも総数と3類型に分類した統計が載っておりまして、これは年々増加しております。総数でいきますと、平成26年は18万件ということになっております。申し立ては若干減っておりますけれども、成年後見制度というのは一旦開始されますと、基本的には長期間にわたって継続しますので、その意味で利用者数は年々増加していく傾向にございます。あと、お尋ねの高齢者と障害別の統計というのは、最高裁のほうでもとっていないということでございまして、そこはこちらでも把握しておりません。
次に、市町村長の申し立てにつきましては、この概況でわかる現状でしかお答えできませんけれども、概況の4ページをごらんいただければと思います。申立人と本人との関係が書かれておりまして、市町村長は一番下のところで5,592件で、それ以外にはお子さんが一番多いということになっております。
次に、後見のなり手、成年後見人にどういう人がなっているかという点でございますが、これにつきましては、資料の概況、9ページをごらんいただければと思います。この9ページに書かれているものは平成26年の分だけでございますが、一番多いのが司法書士、弁護士、そしてお子さんということ。その次にまた社会福祉士ということで、第三者、特に専門家の後見人をつける数が年々増加しているという傾向にございます。
ここは平成26年のものしか書いておりませんが、司法書士、弁護士、社会福祉士、いずれも平成24年、平成25年、平成26年と件数が増加しているという傾向にございます。
市民後見人と法人後見の点につきましては、先ほど厚生労働省の担当者の方から御説明がございましたが、これも9ページの今の表の中で、市民後見人がグラフの下から3番目にございまして、先ほど御紹介があったように213件ということになっております。
10ページの注4をごらんいただければと思いますが、弁護士、司法書士、税理士、行政書士の件数のうち、法人のものが含まれておりまして、それぞれここにあるとおり、弁護士法人は355件、司法書士法人が282件、税理士法人が2件、行政書士法人が23件含まれてございます。
次に、後見人の解任の件数でございますが、これは成年後見事件の概要の中にはございませんので、別途、最高裁が出している司法統計をもとに整理したものが資料2-2でございます。後見人の解任というのは、後見人のほうで不正なことをしたりというような場合に裁判所が後見人を解任するというものでございますが、その件数は成年後見制度が平成12年に始まりましたが、それ以降、増加傾向にございまして、平成26年度には692件解任されている統計になってございます。
障害者権利条約と我が国の成年後見制度の関係といいますか、代行決定あるいは取り消し権などの被後見人の権利を制約する点が、この条約に抵触するのではないかという一部指摘がありますので、その点についての法務省の見解を御説明いたします。
結論といたしましては、当然法務省としては、我が国の成年後見制度は障害者権利条約に抵触するものではないと認識をしております。その検討結果を踏まえて実際に加盟したということでございますので、そういう理解でございますが、基本的に障害者権利条約の中にある法的能力が日本民法でいう権利能力を意味していて、条約12条第3項でいう法的能力の行使というのは行為能力をそれぞれ指すという理解をしておりますけれども、そういう前提に立ちますと、成年被後見人であっても、一律に権利能力自体は認めておりますし、行為能力の点につきましても成年後見制度で配慮はされておりますので、そういった意味で抵触することはないのではないかと考えているところでございます。
私からの御説明は以上でございます。
○野澤委員 ありがとうございました。
それでは、質疑応答に移りたいと思います。各委員から御意見や御質問等ありましたら、挙手をお願いいたします。
○加野委員 加野です。
今、御説明いただいた点とは違った点で御質問ですけれども、第3次障害者基本計画の13ページの1-(7)ですが、総合支援法の附則の第3条第1項に基づき、障害支援区分の認定を含めた支給決定のあり方等、同条同項に規定された事項について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるという計画に対して、推進状況部分では、常時介護の問題と意思疎通支援の問題が掲げられていますけれども、この検討を加える事項の中には、意思決定支援のあり方と成年後見制度についても検討事項として入っていたと思います。その推進状況について何も触れられていないというのは、検討がされていないということなのか、まだ途中ということなのか。また、これから検討するということであればどこで、例えばどの審議会でどういう時期に検討をする計画があるかをお示しいただければと思います。
○野澤委員 では、厚生労働省からお願いします。
○厚生労働省 厚生労働省でございます。
御質問についてでございますけれども、御承知のとおり、現在、社会保障審議会の障害者部会におきまして、障害者総合支援法の3年後見直しに関する検討をスタートしたところでございまして、4月下旬に論点整理のペーパーが出されて、その後、関係団体の皆様からヒアリングをさせていただいているところでございます。今後、テーマごとに議論を進めていく段取りになるのかなと考えておるわけでございますけれども、その中でこちらの法律の附則に示された事項につきましても、議論していく予定でございます。
○野澤委員 法務省は何かありませんか。よろしいですか。
ほかにはいかがでしょうか。
では、辻井委員、お願いします。
○辻井委員 先ほど御説明いただいた資料2-2ですが、資料2-1の成年後見の利用者数を考えていっても、解任などの件数の増加はかなり著しいですが、これは何を意味すると理解したらいいのですか。
○野澤委員 では、法務省、お願いします。
○法務省 この点につきましては、解任事由というのは法律上それなりに限定されておりまして、後見人に不正などがあった場合に解任できることになっているわけでございますが、要するに後見人の方が御本人の財産を不正に使うような事案が社会的に問題になってきたところもございまして、裁判所のほうでも後見に対する監督を強化している。取り組みとして、そういう強化をしていることが背景にあるのではないかと思います。
以上でございます。
○野澤委員 よろしいですか。
では、伊藤委員、お願いします。
○伊藤委員 資料2についてですけれども、とても用語が一般的に使われている用語の意味なのかどうかよくわからなくて、例えば終局とかは何を言うのかとか、鑑定とか認容とか自然人とかいっぱいありまして、一般市民の方もわかりやすい言葉でないとなかなか広がっていかないのではないかという気もするのですが、とりあえず「終局」ということの意味を教えていただきたいと思います。
○野澤委員 法務省ですね。
○法務省 それでは、法務省からお答えいたします。
2ページの終局区分の「終局」ということでよろしいでしょうか。基本的に、これは事件が終わるという意味でございまして、ただ、申し立てがあって、それについて認容というのは申し立てが認められた。申し立てが認められた割合が94.9%です。そういった意味でございます。ですから、申し立てがありますと、裁判所はそれに対して何らかの形で回答しますので、その回答をすることによって事件としては終わるということになります。
○伊藤委員 それはわかるのですけれども、例えばここにも書いてあるように、わかりやすくというのがあるように、無理してそんな言葉を使わなくても、普通の日本語で説明できることであればそのようにすることが大事なのではないかと思いましたので、質問させていただきました。
○野澤委員 どうぞ。
○法務省 この資料自体は最高裁判所のほうでつくっている資料を流用させていただいている面もございますが、そういった御意見があったことはお伝えさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
○野澤委員 これはこのテーマだけではなくて、情報保障とかほかの分野にもまたがるテーマで、合理的な配慮とも非常に深く関係しているので、ここだけではなくて、ほかの分野でも専門用語とかわかりにくい言葉がたくさん出てきますので、総合的に考えていければと思っております。
○伊藤委員 お願いします。
○野澤委員 では、佐藤委員、お願いします。
○佐藤委員 佐藤です。ありがとうございます。
法務省の方に条約と抵触していないという御説明をいただきまして、私、よくわからなかったので、もう少し教えていただきたいのです。条約の一般的意見1の中で書かれていたのは、代理決定はいけないと条約では言っていると思うのですけれども、日本の後見人の制度でいうと、後見と保佐は代理決定になっていると思うのです。ですので、抵触しているのではないかと私は思っていたのですけれども、そこをもう少しわかりやすく御説明いただけたらと思います。お願いします。
○野澤委員 では、法務省、お願いします。
○法務省 この点については、いろいろ御指摘があるところであることは承知しておりますが、条約の文言を見る限り、代理権の付与自体がこの条約に反するとは解釈できないのではないかというのがまず前提としてはございます。現実問題といたしましても、例えば我が国の成年後見制度のうち、一番判断能力の低下の度合いが強い後見につきましては、要件としては事理を弁識する能力。要するに、判断能力を欠いていることが通常の状況にあることが要件になっておりますので、そういった方について、その人に意思決定をさせることになりますと、かえって、それによって御本人の利益が害されるおそれもありますので、そういった場合については代理人のほうで適切に判断することが必要になるのではないかという点が1点ございます。
ただ、今の後見制度、一番重い後見類型につきましても、法律上、本人の意思を尊重しなければならないという規定がございます。要するに、後見人が代理行為をするに当たっては、本人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態や生活の状況に配慮しなければならないという注意義務が課されておりますので、当然、御本人と相談しながら、最終的にはどういう契約を結ぶかを決めていくのが民法上も予定されているところではないかと思います。
私からは以上でございます。
○野澤委員 よろしいでしょうか。
では、お願いします。
○河井委員 全肢連、河井です。
法務省の成年後見関係の概況の資料の中の質問です。
8ページで、鑑定についてということで機関別の割合と鑑定費用別の割合が出ているのですけれども、件数としては非常に少ないのですが、3カ月を超える、6カ月超えも0.4%あるところで、こういった長期にわたる鑑定が必要なのはどういう理由なのかということと、鑑定費用が20万円を超えるというのも同じくどういった理由があるのか。その前のほうのページで、だんだん鑑定が長期化しているというような表現もありましたので、そこら辺を伺いたいと思います。
以上です。
○野澤委員 法務省、お願いします。
○法務省 どういう理由でこの程度の期間かかっているかとか、費用の点もそうですけれども、基本的には裁判所のほうで必要に応じて鑑定をし、費用についても鑑定人の労力に応じて裁判所のほうで決めるということになりますので、その辺の理由がどういったところにあるのかというのは、法務省のほうではなかなか把握していないところはございます。ただ、一般に鑑定を行って後見を開始するとか、保佐を開始するという場合もございますが、それ以外にも医師の診断書などがあれば、それを踏まえて裁判所では判断するという例も多くございますので、鑑定が必要になるものについては非常に微妙な事案ですとか、判断が難しい。要するに診断書だけでは判断が難しいとか、そういった特殊な事情がある場合に通常は行われているのだろうとは思います。
以上でございます。
○野澤委員 よろしいですか。
ほかにはいかがでしょうか。
どうぞ。
○三浦委員 三浦と申します。
1点、法務省さんに御質問させてください。
資料2-2で、先ほど後見人の監督を強化しているので、このように件数がたくさんあらわれてきたというような御説明だったかと思うのですが、具体的にはどのような方法で監督を強化なさっているかを教えていただけますでしょうか。
○野澤委員 では、法務省、お願いします。
○法務省 この点も実際にやっているのは裁判所でございますので、こちらは詳細には把握しておりませんが、一般に言われておりますのは、基本的には定期的に後見人に財産状況などを報告させ、裁判所がそれを精査して、何か問題があると思われるようなものについては、後見人に来てもらっていろいろ事情を聞いたり、あるいは客観的な資料をさらに追加で求めたりというようなことをしながら、問題がある事案については、より重点的に監督をしていると聞いているところでございます。
○野澤委員 ほかにいかがでしょうか。
では、玉木さん、お願いします。
○玉木委員 まず、法務省の方にお伺いしたいのですけれども、解任事由のうち終局した件数というのはここに載せているのですが、解任というか、要は後見人等をかえてほしいという申し出があったとか、もしくは裁判所が評価をしてくれなかったり、この後見人は不適切だということで裁判所が解任をしていくとか、そういった事案が大体何件ぐらいあるのか。その解任した理由なども明確に挙げてもらわないと、解任された件数だけでどうだという話にはならないし、一部マスコミで報道されているよう後見人等の不祥事事件も含めて、裁判所のチェック機能が果たせていなかったり、後見人の間違った行為について見過ごしてしまっているという状況も何件か伝え聞く中で、そもそも今の裁判所の中できっちりと障害のある人の状態というのを判断できるのか。できないとしたら、診断書とか鑑定書に頼ってしまって、鑑定書で後見類型とついてしまったら、もうそのまま後見類型で辛抱させてしまっているのではないかというような危惧もしているのですけれども、そのあたりを、どうお考えか。
もう一点は、厚生労働省の方にお伺いしたのは、地域生活支援事業の中での必須事業となっている成年後見支援事業が100%になっていないということは、今の法律でいくと成年後見制度は、障害がある人とか意思決定能力が弱いと言われる人たちの権利保障のための制度であるはずなのに、それが100%実施できていないということだと理解しています。ということは、今もなお、意思決定能力が弱い人の権利保障が進んでいないという状況もあると思うのです。そこら辺の推進度が今後の100%実施もしくは事業を実施しているからといって、それを活用をして成年後見制度を利用するに至っていないケースもあると聞いているのですが、成年後見制度の利用に向けた広報啓発などを厚生労働省としてはどう進めようとしているかをお聞かせいただきたいと思います。
○野澤委員 では、まず法務省からどうですか。
○法務省 まことに申しわけないのですが、成年後見事件の統計につきましては、基本的には実際に裁判を行っている裁判所のほうでとっているところがございまして、法務省としては、最高裁判所の統計結果を通じてしか実態を把握できないという面がございます。さらに、成年後見事件のような家族にかかわるようなものにつきましては、プライバシーの保護等の問題もございますので、なかなか具体的にどこまで裁判所のほうでも統計結果を開示できるかという問題はあるのではないかと思います。
先ほどの御質問のうち、どういう理由で解任されているかという点につきましては、そういった意味で統計の資料が全くございませんので、法務省としてはお答えすることはできません。一応、一旦ついた後見人が例えばほかの人にかわるというためには、一旦ついた後見人が解任されるか、あるいは自分でやめるという場合のどちらかになると思いますけれども、自分で辞任するほうにつきましても、正当な事由がなければ任務を辞することはできないということになってございまして、大変恐縮ですが、その件数も今、手元の資料ではどの程度あるかというのは把握できておりません。
余りお答えできませんで申しわけございませんが、以上のとおりでございます。
○野澤委員 では、厚労省、お願いします。
○厚生労働省 成年後見制度を支援する仕組みの普及状況でございますけれども、確かに御指摘のとおり、全市町村とはなっていないような状況でございます。ただ、私どもといたしましては、このような枠組みがある、現に市町村内に具体的ニーズがあるかどうかにかかわらず、こういう枠組みを整えていくことが必要と考えております。
ただ、市町村ごとにニーズというのも異なると思いますし、恐らく、この市町村の分母には離島であるとか、本当に小さな市町村であるとか、そういうものも含まれておりますので、市町村ごとに事情がいろいろあって、優先順位もいろいろあるとは思いますが、具体的に市町村のほうでそのようなニーズがあることがわかった場合には、すぐにでもこのような仕組みをしっかりと整えていっていただきたいなと思っております。
また、このような制度を普及啓発するための事業も行っておるところでございまして、厚生労働省としても、全国の担当者の会議であるとか、さまざまな機会を捉えまして、この仕組みを支援することの大切さを伝えていきたいと思っております。
○玉木委員 これは意見ですけれども、法務省の方に聞いておいていただきたいなと思うのは、先ほど佐藤委員から御指摘のあった権利条約に批准していない内容があるのではないかという回答の中で、批准していると思いますという発言があったのですけれども、今の話を聞いていくと、数字だけで具体的にどういう理由で解任が起きたかとか、どういう問題が上がってきたのかとか、法律上の仕組みではなくて運用上の課題とか、問題点などが整理できていない中で、権利条約に批准しているという評価を出すには早過ぎるのではないかと個人的には思っていて、むしろ、法の仕組みには、仕組みを動かすのも人ですから、その人がきっちりと障害のある人に対する理解を持っていかないと、結局、書面上の審査であったり、声の強い人の意見だけを反映してしまうという怖さを十分秘めているということを御理解していただきたいなと思います。
○野澤委員 意見ですね。また後半でも意見交換したいと思いますけれども、今の御意見に対して何かコメントがあったら。
○法務省 もう御意見は承ります。裁判所のほうで具体的に成年後見事件について実務上どういう点が問題になっているのかというあたりにつきましては、法務省と最高裁のほうでも意見交換などはしてございますので、統計の具体的な内容についてなかなかこれ以上詳しくというのは難しいところがありますが、問題状況などについては、今後も最高裁などと連携しながら、こちらとしても把握していきたいとは考えております。
○野澤委員 ほかにはいかがでしょうか。
私からもお尋ねしたいのですけれども、まず、厚労省ですけれども、成年後見制度の法人後見支援事業です。先ほど挙げていただいたのは、社協が受託している件数ですね。社協以外では制度の対象になっているのでしょうか。もし、なっているとすると、どこか受託しているところとかありませんか。
○厚生労働省 この法人後見支援事業に関しましては、市町村が研修事業を行っているものでございまして、その運営費を補助しているものではないので、私どものほうでどの団体が実際に事業を行っているかがわからないということで、先ほどわかる範囲で社協さんが現にどれだけ行っているかが確認できましたので、御報告させていただいた次第でございます。
○野澤委員 わかりました。
法務省さんにもう一つ、資料2-2の解任された件数のうち、理由ではなくて内訳。よくテレビ、新聞等に出るのは、弁護士さんが横領をしたことで解任されたというニュースになるわけですけれども、実態として、どのぐらいの割合なのか知りたいです。よく実務をやっている方に聞くと、親族が研修も余り受けずに後見人になっていて、お金もそれまでの延長線で使い込んでしまったりとかで解任が多いのだと聞くのですけれども、最近、専門職が件数自体は伸びているということですね。解任はどんな状況なのかなというのを知りたいと思うのですが、何か統計等ありませんか。
○法務省 統計としては、申しわけございませんが、もうこれ以外にはございませんで、法務省としても把握してございませんが、ただ1点、裁判所が先ほど申し上げた監督を強化している理由については、親族の方の流用事案が多い。したがいまして、後見人の選任につきましても、かなり相当額の財産があるような方については専門職の方を後見人としてつける運用もしているという話は伺ったことがございますので、そういった取り決めをしている中で、専門職の中でも不正をされる方がいるのは報道でも出てくるところではございますが、一般的に言いますと御親族の方のほうが多いのではないかということは言えるのではないかと思います。
○野澤委員 ありがとうございます。
26年度だけで692件、1日2件ぐらいずつ解任されたということですね。このあたりをもう少しクローズアップして、いろいろと分析されてもいいかなという気がしたりしました。
ほかにはいかがでしょうか。なければ、一応前半戦はこのぐらいにして、15分間休憩した後、後半は質疑だけではなくて意見交換も含めて、もう少し議論を掘り下げていけたらと思っております。よろしいですか。
では、半端ですけれども、29分から始めたいと思います。よろしくお願いします。
(休憩)
○野澤委員 再開したいと思います。
ここからは、皆さんの意見交換ということで、各委員から御意見、御質問がありましたら、またお願いします。
どうぞ。
○河井委員 全肢連の河井です。
法務省の方に1件質問です。資料の7ページの申し立ての動機についてというところで、身上監護が3番目の理由として挙げられている。決して小さくない数字なのですけれども、前回の1回目のワーキング・セッションを私は欠席したので、この辺の細かいところを承知していないのですが、参考人としてお見えになりました細川様の御意見の中で、6番目の今後身上監護の重要事項について明確にするべきという御意見もありました。なかなか肢体不自由であるとか、高齢化等々重なって、身上監護の問題が非常に出てくるのですけれども、この辺の判断をどうするのかを法務省として制度の中でどのように位置づけるのかがあれば伺いたいと思います。
○野澤委員 お願いします。
○法務省 身上監護につきましては、基本的に成年後見人の権限をどう考えるかというところと関係するのではないかと思うのですけれども、一応、法務省の整理といたしましては、成年後見人というのは基本的には契約などの法律行為をするのに必要な判断能力が不足している方を保護するための制度で、したがって、基本的には法律行為、契約などの行為をかわりに行ってもらうということと、その方の財産を管理するのが権限であると考えておりまして、したがって、身上監護でも、例えば実際の身の回りの世話をするとか、そういったものは後見人の権限には含まれておりませんで、基本的にはそういったものについては、介護保険制度などほかのもので対処していただくという整理ではないかと思います。
ただ、身上監護につきましても、例えば介護契約を結ぶとか、そういった身上監護にかかわる契約を締結する場合には、当然後見人の権限に含まれます。そういったものについては民法上も、先ほども若干御紹介いたしましたが、注意規定、要するに、こういったことに注意してくださいというような規定がございまして、成年被後見人、御本人の生活、療養看護あるいは財産の管理に関する事務を行うに当たっては、先ほども申し上げましたが、本人の意思を尊重したり、あるいは体、心の状態を考慮しなければいけない、配慮しなければいけないというような規定はございますので、その限度で身上監護に関しても、成年後見人は適切に対応しなければならないとなっているものと考えております。
○野澤委員 質問だけではなくて、意見交換でも結構ですので。
では、伊藤さん、お願いします。
○伊藤委員 伊藤です。
意見ですけれども、63ページ、この中の強いて言えば6-(3)-2だと思うのですが、実は神経筋疾患等の治療開発が進み、相当重症な方々でも入院なり家庭なり施設なりで生活を行うことが可能になっているのですが、その中で意思決定の前に、まずコミュニケーション、意思疎通をどうするかということも非常に重要な要素になっているのですが、これがなかなかうまく進まない。ここは機器の開発だとか給付とか貸与がありますけれども、各メーカーさんも頑張っていっぱい機器の開発などはされているのですが、問題は、その人の障害の程度に合わせた利用の方法あるいは変化、工夫。特にスイッチなどの適合はとても難しい事業ですが、これがこの中には盛り込まれていないというか、支援をする人がまず誰かということもあるのですけれども、その支援をする人をどう育てるか、あるいはどう支援するかが今非常に重要なのですが、ほとんど民間の小さなNPOなり、私ども厚労省から補助金をいただいて、スイッチ適合についての情報を公開するホームページなどを開いていますけれども、みんな微々たるものなのです。多くはたくさん開発されている機器を本人の状況に合わせた状態でうまく使えていない。これについても、それをどう育てるかという人のマンパワーの問題だと思うのですが、そういうようなこともここの中に少し含まれたほうがいいのではないかと思うのですが、それはあるいはどこかに書いてあるのかもしれませんけれども、見当たらないので発言させてもらいました。
○野澤委員 意思決定支援とコミュニケーションは非常に密接に結びついたものだと思うのですが、今の伊藤さんの御意見というのは、例えばワーキング・セッションIVの情報アクセシビリティで何か議論とかされていますか。そのあたりまではまだ議論が及んでいないですか。
では、議論ということで、ほかに、これに関連してでも、そうでなくてでも結構ですけれども、どうでしょうか。この前のワーキング・セッションに参考人で来ていただいた都築さんが今回資料を出していただいているのですけれども、玉木さん、相談支援、これはここでも一つのテーマですけれども、成年後見だけに絞ってしまうとどうも間口が狭くなって、障害者の方の地域生活とか考えるときに、相談支援は非常に大きな問題だと思うのです。これに関して御意見いただけますか。
○玉木委員 まず、都築さんからの伝言です。本当は都築さんは今日も来たかった。前回の会議も緊張はしていたけれども、自分がこういう会議の場で話ができてよかった。今回も東京土産を買いたかったという思いがあって、欠席してしまうのは残念だということです。この間の発表の中で私がいろいろ聞いたから、それに関して帰って話し合いもしてもらって、スマホが欲しいけれどもということで、あかんあかんと言われておったけれども、話をした結論、金がないからお金がたまってからスマホを買うということになったそうです。そこで話し合いができて、そのときはできる、もしくはできないことが、個々のやりとりなどで確認していくということです。実は相談支援というのはサービス利用計画が前面に出てしまっているから、それが相談支援専門員の仕事のように思われがちなのだけれども、実はひもといていくと、サービス利用計画をつくるに当たって、本人さんと向き合って今こうやっているという確認の中でやりとりをしながら、答えはすぐに見つからないから、今の時点ではこういう形でいきましょうというように、双方で納得するような話し合いが持たれていく。それが相談支援というものの本質かなと思っています。
だから、今は、残念ながら、実は就労のBをやめたいと言っていることについて、継続して何でやめたいかとか、支援者としては何でここに働いたほうがいいと言っているかということを継続して話し合いを持っていく。そういう仕組みが大事だと。今日の話でもあったように、成年後見制度においても意思の尊重をしながら決めていくと言っているのだけれども、本当にそのことが相談支援の現場ですらこういうやりとりがなかなかできていない中で、果たして本当に弁護士さんなり司法書士さんなり、法律の専門職の方がここまでのやりとりを懇切丁寧にやっていっているのか。また、現場の相談支援専門員もここまでにきちんと丁寧にやり切っているのかということも考えていきたいし、それぞれの方でも相談支援専門員とか、いわゆる本人の立場に立って応援する人たちに対してどういうような人材になってほしいとか、どういうような仕事をやってほしいか御意見を寄せていただければありがたいなと思います。
○野澤委員 ありがとうございます。
ほかにはいかがでしょうか。
では、田中さん、お願いします。
○田中委員 育成会連合会の田中です。
きょう、厚生労働省と法務省のお二方のお話を聞いて、意思決定支援と成年後見ということで、この間ずっと参考人の方からも意見をいただいたりしてきているわけですけれども、調整をどうしていくのかが非常に大事だとは思っているのですが、どうも法務省の方からの裁判所との関係性を聞いていくと、意見交換という関係性はなかなか難しいのではないか。もちろん、全くコミュニケーションがなくてぶつ切れ状態になっているという意味ではなくて、うまくかみ合う状況をつくり出すことが難しいのではないかと感じました。
なので、今の玉木さんの意見については、その現状をどうにか変えていかなければいけないとすると、変えていくための何か工夫をこの場でもしていかないと、省庁の方に来ていただいて、やれていないところだけみんなで確認して、やれていないのではないかと言っても前に進まないなというのが、きょう、お二方にいろいろな無茶な質問に答えていただいたことも含めて、すごく前向きにお話しいただいているのですけれども、前には行きそうもないというのが実感としてありますので、その点について、もう少し意見交換の場ですので、皆さんからも御意見をいただけると、きょうのコーディネーターの一人としてもありがたいなと思っているのです。
特に相談に関して、当初、障害者自立支援法の当時に契約が本格的になるということで、成年後見については、サービス利用の一環としても成年後見を使うのだと。特に、代行制を用意しないと本人の意見だけでは契約の際の書類のサイン自体も怪しいということで始まっているわけですけれども、そのこと自身がいつの間にかおざなりになっていて、新しく意思決定支援という言葉にすごく皆さんが新たな展開を切り開いてくれるように期待している部分があるのですけれども、根っこの部分はそこをきちんと見ていかないと変わらないのではないかとも思っていますので、きょう、お二方の厚労省と法務省の立場の違いと、前回参考人で来ていただいた佐藤さんの意見と細川さんの意見というのは、大分クロスしていってシンクロするところがあるとも思いながら聞いていました。
そして、実際に日常生活を送る都築さんのような人は、そんなに制度の振り子の幅の振り切ったところに成年後見でないとだめだとか、意思決定支援が持ち込まれないとだめだとかということではなくて、迷いながら日常を生きている感じなので、そこに一番寄り添えるのは相談支援の方なのかなとも思っています。その辺のあり方も含めて、意思決定支援と成年後見、そして、身上監護が多分もう一つのサービスとして必要になってくるのではないかと思うのです。その辺のことも議論できたらいいなと思っていますので、ぜひ皆さんから意見をいただければと思っています。
以上です。
○野澤委員 田中さんがせっかく問題提起をしていただいたので、現状のテーマ設定にこだわらずに、将来に向けてのことも含めて自由な意見交換が少しできたらと思いますけれども、辻井さん、お願いします。
○辻井委員 中京大学の辻井です。
発達障害関連のところをずっと今までフィールドでやってきて、今のところの後見制度とかに余りうまく乗らないよねと、いつも事件が終わった後、顧問弁護士たちと相談したりするのです。詐欺被害というのが挙がって、例えば女の子、女性の友達など一切いませんから、町で声をかけてくるかわいらしい方というのは大体キャッチセールス目的だったりとかするような形で、御商売ですから、大変お上手にサインを引き出して、100万円単位できれいにかすめ取っていきます。わかったときにはもう連絡がつかなかったりというようなことがあって、かなり気をつけてそういう研修を行っても、数年に1人ずつぐらいはひっかかるところがあります。ある金額ぐらいのところに関しては何らかの制度を使ってとも思わなくはないのですが、本人の意思と考えてみると、女の子とこれでお友達になれると考えれば、本人はそれ相応の貯金を持っていれば、それは安いものだと本人の中で考えることがもしあるとすれば、それは本人の意思ではあるのだけれども、それは詐欺被害に遭っていることでもあってというところで、やはりある種の制度をどう使うのか使わないのかみたいな話を含めていろいろ考えるところがあります。だから、まだ相談してくれれば、それは本当に友達なのかなというところには乗れるのですが、どこまでをきちっと守ってあげて、でも、それは本人の権利を本人の希望と異なる形で制限することになるのかもしれないところを、いつも後見制度の話で、サービス利用に関しては、発達障害などであれば本人が何を使いたいのかということで判断ができるのですが、プラスアルファの要素というか、例えば向こうがだまそうと思ってしているとか1個加わったときに、かなり見える姿というか、使わなければいけない制度が変わってくるようなところがあって、きょうは消費者庁とかもおられないのですが、このあたりはどういう形の対応ができたりするのかということを後見の話を聞きながら、今、考えていたところなのです。相談支援の中で何とかするべきことなのか、もう少し一定の守りを必要なときにはかけられる仕組みを何か想定していくのか、どこまで意思を尊重するのかとも絡めて、大変現場的には悩むところかなと思っております。
○野澤委員 相談支援でできるかどうか。
相談支援専門員協会の玉木さん、どうですか。
○玉木委員 なかなか協会としてという発言はまだ難しいですけれども、それは現実無理です。気づくことがあったとしても、気づいた後にどういう仕組みを使ってやるのかということ。多分法務省の方などは法テラスなど、そういうのを活用してと簡単に言われるかもしれないけれども、その事実確認ですらできない状況の中で相談だけ持ち込まれてきても、では、どこでどうつながって何を活用してその問題を解決するかということはなかなか厳しいのではないかなと思いました。
○野澤委員 今、辻井さんが言ったようなケースは、だから成年後見が必要なのだと結構言われてきたのです。でも、イギリスあたりのMental Capacity Actなどを見てみると、そういう被害に遭うから、そういう脆弱性を持っているからといって法的能力がないとは言えないのだというのが前提なのです。では、どうするのかというときに、そういうことはあるけれども、でも、本人の意思、意思決定を大事にしていこうという仕組みをいろいろ探り出しているわけですね。やはり我々の議論のベクトルとしては、そちらのほうに向かうべきなのかなと個人的に思ったりするのです。
私も個人的な意見を言わせていただきたいのですけれども、いろいろなワーキング・セッションがあるのですけれども、ここは物すごい難しいと思っているのです。というのは、第3次障害者計画の設定が成年後見制度の適正な利用促進についてとあって、前回の参考人で出てきた佐藤彰一さんなども言われていますけれども、そもそも今の成年後見制度は国連の権利条約に抵触しているのではないか、それを利用促進という自体がどうなのか、ナンセンスだというような、どういう言葉だったかは正確には覚えていませんが、全体的に見るとそういうことだと思うのです。
ただ、法務省の方にきょう来ていただいて、非常に苦しいお立場だと思うのですが、でも、だったら権利条約を批准できないわけで、当然、抵触しないと判断したから批准したわけですね。そういう現実があるわけです。どうやってこれを考えていくのかは難しいなと思っているのですけれども、そもそも権利条約に抵触するかどうかという技術的な判断の前に、今の日本の成年後見、特に後見の代行決定というのは、制度面なのか、それとも運用の問題なのかは別にして、本人の意思に本当に沿ったものになっているのだろうかというのが、多くの方がそういう疑問を持っているのは間違いないと思います。本人の意思にそぐうものになっていないという極端な例が解任ですね。全く真っ黒だからこそ解任されたわけで、それだって年間700件近くあるわけで、その前提にあるグレーゾーンの部分などは膨大にあるはずなのです。このグレーゾーンの部分を我々は問題にしなければいけないと思っているのです。
それをどんなようにやっていくのか。佐藤彰一さんの意見の中にありましたけれども、家庭裁判所の業務量が増え、機能的にも家庭裁判所に求めること自体がもう無理なのだというような御意見だったかと思うのです。実際にどうですかと言われたら答えようがないと思うのであえて振りませんけれども、では、どうするのかということです。
一つは、成年後見制度自体を法改正して大きく変えていくか。あるいはなかなかそれも今すぐにというと難しそうだなとなると、それとは違う、成年後見というのは限定的な例外的なものとして、もっと今の我々が直面している問題意識に沿ったような運用ができる仕組みを新しくつくっていくのかどうなのか。そのときのキーワードが意思決定支援だと思うのです。そういう立体的な複眼的な議論がこれから必要になってくるのではないかなと思います。ここでそういう理想的なものについて議論するだけではなくて、実際に今の法務省、厚労省初め、行政の中でどのようにそれを制度化していけるのか、制度を改正していけるのかということも、もっと踏まえた現実的な議論が必要なのかなと漠然と思ったりしているのですが、いかがでしょうかと振って困ってしまうかもしれませんけれども、どうでしょうか。
では、大原委員、お願いします。
○大原委員 全国ネットの大原です。
現場にいる中で、保護者の方から後見人制度については極めて関心を寄せられて、勉強会をしたいとか、将来法人としてどう考えているのかとか、我が町ではどういうように推進されているのか。これは極めて保護者の方から非常にリクエストされるところです。
一方で、では、そういったことを相談支援センターであったり、もしくは法人に、これについて勉強会をしようということになっても、なかなかどういった勉強会を進めてどうやっていいか。その辺が非常に悩ましいところがあって、これが先ほど推進していくというところで、もちろん玉木さんがおっしゃられていたような、市町村事業の財源のところもあるのですが、普及啓発というところで言えば、今、市町村のほうにというように厚労省からもお話があったのですけれども、実はかなり現場でサポートしている職員も、もしくは相談員も、場合によっては親御さんも、この制度がどういうものでどういうように運用できるのかということを具体的にイメージできていない。先ほど野澤さんから、もちろん、この後見人制度自体のいろいろなことをさておき、現状で置かれている現場の中では、まさにそういった問題が起きている。
一方で、そうした保護者の方が結局悩みを持ったまま、だんだん年数を重ねていって、先ほど解任事件というようなこともありましたけれども、親御さんが背負ってしまって、結局専門家の人たちに預けられないというような事象も生じてくる。どういうように預けて、どういうことを頼って、どういうことを委ねられるのかをしっかり保護者の方が理解できていない。言葉が難しいという問題なのか、私は例えばこれはもう既にこういったことを取り組んであれば、私の勉強不足だとは思うのですが、例えば具体的に実際に後見人を使ってこういう暮らしぶりをしていますというような方々のいろいろな事象に合わせたモデル的なそういったことをどんどん親御さんであったり、御本人であったり、場合によっては御本人とこういう話し合いを重ねてこういう運用をして、こういう暮らしをしていますとか、保護者の方々とこういう形で議論をしてこうしましたとか、場合によっては、市町村の役所なども、このことについてどう進めていいか余りわかっていないのが私の中の実感で、ずっとこの数年、余り件数が伸びていかない。では、市町村の中で、実はこういう創意工夫をして推進に努めていますとか。つまり、財源の問題もありますでしょうけれども、その運用に関してそれぞれ工夫しているようなところをもっと平易に伝えていくような、そういう展開が必要なのではないかということを現場にいて感じるところでした。
○野澤委員 ありがとうございます。
ほかにはいかがでしょうか。
では、山崎さん、お願いします。
○山崎委員 山崎です。
悩ましいのは、この法務省のデータから見ると、障害者の数は恐らく2割強ぐらいなのかなと数字を読んだのです。高齢の方々は、財産がおありになって、何億円ではないでしょうけれども、ある程度の預貯金があったり、不動産があったりして後見人ですね。障害の方々は、生活のためのお金の後見人なのだというところが圧倒的に違うと私は思っているのです。
約100名の地域で暮らしている方々にかかわっておりまして、そのうち50歳以上の10名の方に保佐人ですけれども、後見人をつけていたのです。それはなぜつけたかというと、後見人をつけないと、お金を施設はとりませんが、親がとるのです。こういう平たい言い方をすると嫌われるのですけれども、要は例えば養護施設に18歳までいて、うちみたいところに来るわけです。2年一般就労すると、大体100万ぐらいたまるわけです。そうすると、突然親が出てきて引き取るということになるわけです。契約ですから、ちょっとは引きとめますが、親も子も、家でやりますと言ったら、はい、そうですかということになるわけですね。これを何とかしたい。
愛知の方のおっしゃる、御本人のお金は御本人が使っていいと私も思っていますが、でも、これは暮らすための生活だということをクローズアップしないと、どうにもこうにもならなくなるだろうなという気が現場ではしております。うちは社会福祉士さんの保佐人を使わせていただいているのですけれども、かなり生活支援している我々と保佐人とコミュニケーションを細かくして、このお金はこうだとか、ああだかとかと連携をとらないと難しい。保佐してくださる方も悪い方はいらっしゃいますので、その辺はグループで支援するみたいなところがいいのかなと思っています。
御本人、発達障害系の方もうちはいらっしゃって、だまされるのは日常茶飯事です。だけれども、そこがグレーゾーンなのです。だまされる前に私たちが手を出すべきなのか、そこが非常に毎日苦しい思いをしております。そんなような感じで、この後見人制度というのを野澤さんおっしゃるようにもし変革できるのなら、高齢者の方々の、これはまた違うのか、仕組みが、もう少し使い勝手がいいといいなという気がします。
以上です。
○野澤委員 田中さん、どうぞ。
○田中委員 高齢者イコール金持ちという定義は極端過ぎて、多分高齢の方でも財産保全だけではない後見人が必要だと思うのです。特にひとり暮らしの人で生活が不安定で転落してホームレスになるということを引き上げるときに、市町村の申し立てでの後見人もつくということなので、その後見の動きに関して、もう少しきょうの報告で補足ができているのかなと思ったら、数字でざっくりと丸まった状況しか把握できていなくて、その裁判所がどう把握しているかは法務省的には三権分立なので難しいということであると、先ほどの意見とも重なるのですけれども、どこかで誰かが調整しないと、このまま交わることがないまま、後見人の問題を法務省は気にしても裁判所は気にしないということになるのか。そこにどうお願いをしていったら届くようになるのかも模索しなければいけないというような状況もあると先ほど佐藤さんからもお聞きしたのですけれども、そうだとすると、今、成年後見の多くが知的障害の分野での調査によると、ほとんどの場合に財産を保全する。これは守るものがある人がこれを使っているということなので、高齢と障害として分けるのではなくて、お金がある人とない人のかかわり方が違うということにもう少し着目したほうがいいのではないかなと思っていますし、やはり相談の人がサービス等利用計画を立てていくときに、ないサービスを思いつけない現状をどうしたらいいのかということも、そこには意思決定支援という新しい切り口が役に立つのではないかなと思っているところもあるのですけれども、そこが切り口だとすると、今この場では現状の把握ということなので、まだまだスタートラインにも立てていないのがよくわかった感じかなと思っているのです。その辺で整理していく必要があるかなと思ったので、お金の取り扱いに関しての成年後見がかなり全体を占めていて、お金を守るほうが優先されているのが多分前回の佐藤さんの提案の中でも位置づけとしては課題だとなっていたのではないかと思いますので、改めて厚生労働省として、契約行為に関しての成年後見をもう諦めてしまったのか、もう少し前向きに取り組む工夫をしようとしているのか、そこにサービス等利用計画のような仕組みを考えていらっしゃるのかについて、きょう、この場では難しいと思いますので、宿題にして検討していただけたらと思いますが、何かコメントがあればお願いしたいと思います。
○野澤委員 ありますか。
○厚生労働省 今、さまざま皆様方の御議論をお伺いしていて、非常に難しい問題があるのだなということをまた改めて認識したところでございますけれども、まさに玉木委員おっしゃったとおり、相談支援専門員という仕組みをつくって、私どもとしては、利用者の方々に寄り添うというような方向で進めてきていて、この4月に完全に施行していったわけでございますけれども、私、介護が長いので介護との比較で言えば、ケアマネジャーがケアプランを月に1回つくっていくとか、そういうようなことを通じて寄り添っていくという形をとっているわけです。この障害の分野でいうと、まさにスタートしたばかりということであって、今、簡単な研修であるとか、そういうところからまずスタートしているわけでございますけれども、まずは量的な充足、そういうようなところも必要なのだろうなと思いつつ、これからは契約であるとか法律的な行為についても、どういうバックアップができるのかも課題になってくるのだろうなと思っておりましたので、田中委員がおっしゃるようなことも課題として考えていきたいと思っています。
○野澤委員 ありがとうございます。
ほかにいかがですか。
では、三浦委員、どうぞ。
○三浦委員 先ほど議論になった資料2-2はとても貴重で、法務省からいただいた数字は重い数字だなと受けとめております。その中で、解任された事例はどういう事例かということで主に御親族と答えをいただいたのですけれども、家裁がこの数字を把握していて、御親族が例えば経済的に搾取をしたことが理由である場合には、当然経済的な虐待の事例になるのではないかと思うのですが、公的機関で数を把握されていて、虐待の通報義務、市町村への通報義務に乗っているかというところを少し疑問に思いました。このことが重要だなと、これは私の意見ですけれども、障害のある方々の施設を私も仕事としてやっておりますので、御家族の方も御本人に支給される障害年金が御本人のものであるという当然の権利がわかられない場合もあって、極端な場合、施設でお暮らしになっていても、障害基礎年金は御本人の意思によって家族の生活費に充てられるという事例は非常に多いのです。ですが、本人の意思に反して、その家族が、しかも法的な枠組みの中で本人のお金を無断で取ることが起こった場合には、もう明らかな経済的な虐待ではないかと思われるので、通報の仕組みがあるかということを一つお尋ねしてみたいと思いました。
もう一つは意見です。成年後見の制度は含まないで意思決定支援を考えるときに、非常に細やかな相談支援というのは極めて重要なものだと思うのですけれども、御本人から見ると、体験もしていなくて意思を決めなさいと言われても、特に地域移行などの場合に非常に不安があられます。そして、サービスの仕組みの中に、これを体験してみたら戻れるといいましょうか、戻れる場所があって地域生活も体験できるというようなものが担保されていないと感じております。短い期間だったらできるという仕組みはあるのですが。私がサービスを提供している方々は相当に障害の重い方々なので、大変な不安と覚悟が地域生活に移行されるときもあって、その意思決定をしていく上では、体験を保障することがサービスにあってくれるといいなと思います。
その2点、2つ目は意見ですが、1つ目は質問としてお願いいたします。
○野澤委員 では、法務省、お願いします。
○法務省 それでは、1点目の御質問についてお答えいたします。
まず、先ほども申し上げましたとおり、解任事件のうち、専門職の方がどれぐらいで、御親族の方がどれぐらいかというのはあくまで私の推測で、一般的に言われていることをお伝えしたので、正確なものではないということは御留意いただければと思います。
ただ、一般には御親族の方の場合には、例えばお子さんが親御さんの面倒を見ているという場合は、専門職の方が財産を管理している場合と比べて、勝手に財産を流用するということはどちらの立場からしても違法なわけですが、その違法行為をするに当たって、乗り越える垣根みたいなのが御親族のほうが若干低いところがあって、そういったこともあって御親族のほうが割合的には多いという面もあるのではないかと思います。これに対して、専門職の方が仮にそういうことをやって発覚しますと、それは資格も失うということになりますので、そういった面はあるのではないかと思います。
次に、そういった後見人が財産上の損害を御本人に負わせた場合ですけれども、基本的には、その方は御本人に対して民法上は損害賠償。要するに、損害を与えた分については自分の財産からそれを補填する義務を負うということになります。その点の権利行使を御本人の方が難しいということになりますと、実際難しいのだと思いますので、仕組みとしては、不正をした後見人を解任して、それにかわる新たな後見人を選任し、その新たな後見人の方が前の後見人の方に対して損害を賠償するように請求していくことになるのではないかと思います。
以上でございます。
○野澤委員 よろしいですか。
ほかにはいかがでしょうか。
私、質問があるのですけれども、今後の議論を考えたときに、例えば法務省の中で成年後見制度そのものを今のあれだとぐあいが悪いので改正しなければいけないねというような議論というか、ムードというか、そういうのはどのぐらいあるのだろうかというのと、あと家庭裁判所の機能は、この件数を見てももっと必要かなというのは客観的には伺えるのですが、そういった家裁の機能を強化していこう、あるいはもっと人員の配置を厚くしていこうみたいな、そんな議論というのは法務省内でどの程度あるのかお聞きしたい。
○法務省 法務省の立場といたしましては、法律で規定をしてしまいますと、例えば全件についてその記述にのっとった取り扱いをしなければいけないということで、かなりがちがちの制度になってしまいますので、運用による改善で工夫ができる点については、むしろ運用で改善をしていくというほうが、事案に応じた適切な処理ができるという面ではすぐれているのではないかというところがございますので、まずは運用による改善ができないかどうか。運用による改善ができないということになりますと、それは法改正を検討していくことになるのではないかと思います。
現在、いろいろ問題点を御指摘いただいておりますけれども、最高裁も含め、運用の改善を今いろいろ工夫していると聞いておりますので、法務省としてはその状況を注視しているような状況でございます。
これは議員立法の話なのですけれども、成年後見制度をもう少し利用を促進するための何か政策がとれないかとか、今、現実に困っていることについて見直しができないかというようなことを国会議員の中で検討している動きはあると聞いております。
○野澤委員 ありがとうございます。
ほか、いかがでしょうか。
では、どうぞ。
○加野委員 加野です。
今、成年後見制度について運用の改善というようなお話も聞きましたけれども、先ほど法務省の方がおっしゃったように、成年後見制度が障害者権利条約に合致しているかどうかという点で、重要なところは、本人の意思の尊重が実際されているかだと思うのです。私自身も弁護士として後見人になっていて感じているのは、なかなか本人の意思の尊重が実際上は難しい。
というのは突然知らない人の後見人につきますので、御本人の意思が発言できる方はいいですけれども、そうでない方の意思をどうやって酌み取るかが非常に難しいところがございます。それは私だけではなくて、恐らく弁護士、司法書士、多くの専門職が、もともとそういったところを専門にしておりませんので、非常に難しいのではないかと思っています。
今、裁判所の運営の改善については、やはり横領ですとか不適切な事案があるということで、例えば東京家裁などは、今年から弁護士後見がついていても、一定の額以上の財産がある方には後見監督人を重ねて選任するというような運用になっていまして、私自身が後見についている案件も監督人がついたりしているのです。その場合に、監督人はどういう人がつくかというと、結局弁護士なのです。弁護士が2人つくという形になる。そうすると、結局それほど複眼的な視点から見ることが難しくて、やはり横領されていないかという点だけをチェックするような形になってしまう。
ただ、財産管理のための目的についた後見であっても、高齢者の方であっても、御自宅で生活されている方、施設に入られている方、いろいろな方がいらっしゃって、御本人の生活をどのようにしていくかも非常に重要な身上監護の点もあるのですけれども、そういうときに例えば入居施設を選ぶとか、そういうところも福祉的な視点がなかなかなくて、弁護士が自分の経験値の中で選んでいくしかない。例えばそれほど高額でない施設ですとか、施設の運営母体がしっかりしているかとか、そういう経済的な面は見るのですけれども、実際に本当に被後見人の方のケアがどこまで十分に御本人の意思に沿った形でなされるかというような視点はなかなか難しいところがございます。
なので、どうしても運営の改善が先ほど来出ている、後見人の多くは財産の保全がメーンになっている中で、財産の保全がきちっとできるかどうかという方向でだけ運営の改善がされているのではないか。例えば後見監督人もつくとそちらにも報酬が発生するので、御本人の財産から後見人と後見監督人と両方に報酬は払うのですけれども、それだったら、例えば一人は弁護士後見でも、もう一人は福祉関係の方をつけるとか、そのようなこともできるのではないかなとは思うのですけれども、現実にはそういうような運用になっていないところもあって、運用の改善という意味でいえば、まだまだいろいろできる余地はあるのではないかなと思っております。
○野澤委員 ありがとうございます。
今の加野委員の御意見は非常に貴重だと私も思って、制度どうこうというよりも前の段階で、本人の意思決定がちゃんとできるのか、これをどうするのだというのが大きな問題として考えなければいけないものだと思うのです。だから、意思決定支援みたいなものの議論が必要なわけですけれども、現実を見てみると、それをチェックするのは一体誰かというと、今の制度だと家裁しかないのです。後見人のこれだけ量が多くなってきていると、それを家裁が全部チェックできるのかというのは、非常に現実的ではないし、特にお金はいいかもしれませんが、それ以外の部分というのは、果たして司法のシステムでできるのだろうかということを考えたときに、もっとそこに福祉サイドの仕組みが必要になってくると思うのです。
厚労省がやっている成年後見制度の後見支援事業の中で、市民後見人も含めた法人後見のあり方みたいなものを模索されていて、これは従来の考え方、もう一つ、先を行っているような気もして、何かというと、後見人と家庭裁判所という、これだけではなくて、市民後見人と、その上に法人後見があって、ここでチェックしながら、さらに最終的なところは家庭裁判所。前さばきというか、あれを福祉サイドの中でやっていくということはもっと考えられてもいいのかもしれないなと思って、実際に社協以外でもいろいろなところで法人後見やっていますね。そういう事例みたいなものをもっともっと研究する余地があるのではないかと思います。そこに意思決定、現場のところに意思決定をもっともっと厚くしていく。そういう下から積み上げていったところで、最後に家庭裁判所の機能とか役割はどういうものがふさわしいのかみたいな、そういう考え方というのもありなのかなと思って聞いていたりしたのです。
厚生労働省はどうでしょうか。そんな方向で今、考えているという気もしているのです。
○厚生労働省 御指摘のとおり、確かに好事例というのは少しずついろいろなところで好事例と言えるような事案、そういうようなケース、取り組みがあるはずですので、そういうような取り組みというのを私どもも参考にする必要があるのかなと、委員の皆様方の御意見を聞いて今、感じておるところですので、具体的な検討というのはまだ部会では進んでいないので、ぜひこのような御意見を踏まえながら私どもも検討していきたいと思っております。
○野澤委員 ありがとうございます。
あと8分ありますので、どなたか。
では、伊藤委員、お願いします。
○伊藤委員 伊藤です。
本当にこれは難しい問題でいろいろ考えたのですけれども、その前に質問ですが、例えば後見人というのは、医療の現場でも後見人の立場というのはどうなるのでしょうか。例えば終末期であるとか、胃瘻をつけるとかという判断を後見人がするということは可能なのでしょうか。
○野澤委員 医療同意はできないということになっています。
○伊藤委員 医療同意はできないと。
○法務省 はい。基本的には現行の成年後見人の権限といたしましては、先ほど申し上げましたように、契約などの法律行為をするということと、本人の財産を管理するということでございます。ですから、病院との間で例えば診療契約を結ぶということについては権限の中に入ってくるわけですが、いわゆる医療同意と言われている、例えば大きい手術をするのに必要な同意などについては契約とはまた別の話でございますので、そういった体に大きな侵襲を伴うような手術をすることの同意については、現行法のもとでは成年後見人の権限からは外れているという理解でございます。
この点については実務上非常に問題になっているという点は法務省でも聞いております。ただ、この問題については、そもそも成年後見制度の問題に限らない問題ではないか。すなわち乳幼児の方とか、交通事故で意識不明になられた方、そういった意思を発言できないような方の治療をどうやって行うのかという問題ではないか。
したがって、そういった場合に、御本人にかわる誰かの同意が必要なのかどうかという点も含めて、医療規制としてどういった規制をかけるのかという問題ではないかと思っておりまして、ですから、そういった問題を成年後見制度の中だけで議論するというのは、法務省としては難しいというのがかねてからの法務省の立場でございます。
○野澤委員 この辺、すごくおもしろくて余談なのですけれども、イギリスのMCAというMental Capacity Act、医療の問題のときに最終的な決定権限者は医師なのです。ただ、本人に本当に意思決定能力がないと思われる場合には、誰かが決めなければいけないのです。家族がいなかったり、そういうことを決める人がいない場合には、第三者が代弁人として派遣されるのですけれども、そのときに重大な医療行為について派遣されるのですが、その重大なというところがおもしろくて、注射一本でも客観的に見ると重大ではないけれども、本人にとって重大かどうかで判断されるのです。例えば自閉の人で非常に注射に物すごい恐怖感があって、それがトラウマになってしまうような人の場合には、注射一本が相当重大な行為だということです。そのあたりの意思決定が、誰のための意思決定なのかというところを本人のほうに重視になるというのは非常におもしろいなと思って、余談です。
ほかにいかがですか。あと4分ぐらいあります。
では、お願いします。
○松森委員 松森です。
このセッションでは、後見制度と意思決定支援について取り上げていますが、対象項目が1番の生活支援と8番の差別の解消及び権利擁護の推進ともあるのですけれども、虐待防止についてお話ししたいと思うのですが、きょう、この場で発言しても大丈夫でしょうか。あるいは6月29日のセッションでになるのでしょうか。
○野澤委員 別にいいですね。どうぞ。
○松森委員 大丈夫ですか。
こちらの実施状況の78ページ、(2)-1、障害者虐待防止法について、多分厚生労働省に対しての発言になると思います。
虐待防止法の最新報告では、虐待被害者のうち62.9%が女性であるという報告が出されています。女性の被害者が多いということが単純統計としてあるのですけれども、ジェンダーの視点からの分析がされていません。分析し、女性に重点を置いた施策立案が必要ですし、法令にも障害のある女性の支援を記述する改正が必要になると思います。それだけではなくて、DPIの女性障害者ネットワークが2011年に行った障害のある女性の複合差別実態調査では、回答者87名のうち35%が性的被害を経験しており、それはあくまでも氷山の一角にしかすぎないことがわかっています。
そして、障害者虐待防止法には、虐待や暴力を禁止して防止しなければならないのだと書かれてあります。ここには福祉施設従事者、使用者や雇用主、擁護者による虐待を受けたと思われる障害者を発見した者は、市町村に通報しなければならないという通報義務があるのです。問題は、医療機関、学校、保育所における虐待は、通報義務の対象とされていないことです。障害がある女性の複合差別実態調査の中でも、医療機関、学校での虐待や暴力が報告されています。でも、学校や病院は通報義務の対象とされていないということです。でも、これでは問題が浮かび上がらないと思うのです。こうした課題を踏まえて、障害者権利条約第16条に対応できるように、女性に重点を置いた施策立案、障害者のある女性への支援を法令に記述する改正が必要だと思いました。
これについては、6月29日の政策委員会のときにでも改めて議論できればと思っています。よろしくお願いします。
○野澤委員 ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。
では、大河内さん、お願いします。
○大河内委員 大河内です。
済みません、先ほど伊藤委員がおっしゃった意思疎通について、情報アクセシビリティ部会でも少しはあったのですけれども、若干外れるかもしれませんが、発言させてください。
とかく、今、情報アクセスについては、特に意思を持って情報にアクセスする人たちの中では、いわゆるタブレット端末みたいなものが出てきてしまって、業界の中であるテクと言われる、あるものを使って、一般の人が使っているものを使ってアクセシビリティを実現していこうという方向もかなり模索されてきています。それは非常にすばらしいことではあるのですけれども、一方で、先ほど伊藤委員がおっしゃったように、まさにわずかな感覚機能を使って意思疎通、意思決定のプロセスである作業をしているような人たちにとっては、そういう細かなマーケットになかなか乗らないような機器支援が得られにくいですし、オーファンテクノロジーといいますけれども、そういうものに対する光が当たりにくい部分もあります。特に一般的な汎用性の高い機械を使うことのほうがよいという雰囲気もある中で、声の上げにくい、重度の障害を持った人たちの操作性が見過ごされてきているところはあるので、その辺は、本当は情報アクセシビリティ部会で言うべきところではあったと思うのですけれども、この部会でもこういうお話が出ておりましたので、申し添えさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。
以上です。
○野澤委員 ありがとうございます。
予定していた時間が来ました。これはまとめではないのですけれども、私、最後に司会者の権限で一言だけ個人的な意見を言わせていただいて。
きょうの議論を聞いて、私がすごく感じたのは、成年後見にしても、個別給付のサービスにしても、日本は規制が強いなと思うのです。これをやってはだめ、あれをやってはだめ、利用場面も限られているみたいな話です。もっともっと利用者の立場に立って考えてみると、裁量でいろいろなことを自分で自由にやりたいし、サービスも自由に使いたい。そのときに、利用者と行政とか国家、あるいは裁判所、サービス提供事業所と監督官庁、この関係だけだと限界が来ているのかなという気がしました。もっと成熟した市民社会というか、地域福祉を考えたときに、その中間にもっと自立的にいろいろなチェックをしていけるような、あるいは意思決定を促進していけるような仕組みがもっともっとあったほうが、本来やらなければいけない国や裁判所の役割がもっと明確化になってくるし、もっと限定的になり得るはずだと思うのです。できるだけ被害に遭うようなリスクが少なく、あるいは不正をしないようにということを考えると規制を強化していくわけですけれども、そこにもう少し緩やかな民間レベルのみずから規制してチェックしていくようなものをもっともっと組み込んでいくことによって、もう少し利用者が裁量でいろいろなことができるようになるのではないかと思いました。
そんな方向でこれから議論していけるといいなと思ったので、これはまとめではありません。最後に個人的な意見を言わせていただいて、以上で、このワーキング・セッションIの議論を終了したいと思います。
では、事務局にお返しします。
○加藤参事官 事務局です。
お手元の参考資料2をご覧ください。この資料には、今後のワーキング・セッションと障害者政策委員会の予定を記載しております。
今、野澤委員のお話にございましたとおり、ワーキング・セッションIでの議論はこれで終了しまして、前回と今回の議論を受けまして、事務局においてワーキング・セッションの議論の整理、たたき台を作成します。それをコーディネーターに御確認をいただいた上で、第23回の障害者政策委員会にコーディネーターのほうから提示いただいて、ワーキング・セッションの議論の概要を御報告いただくことになります。
23回の障害者政策委員会につきましては、現在、7月以降の開催の予定でございまして、日時、場所につきましては、事務局のほうで調整の上、速やかに御連絡させていただきます。
なお、次回、第22回障害者政策委員会につきましては、6月29日月曜日の13時30分開始でございます。場所は8号館の1階講堂を予定しております。官邸の近くの建物でございます。
事務局からは以上でございます。
○野澤委員 では、これをもちまして「障害者政策委員会」ワーキング・セッションIの第2回を終了いたします。
どうもありがとうございました。