障害者政策委員会ワーキング・セッションI:成年後見制度も含めた意思決定支援など 議事録

○田中委員 成年後見制度を含めた意思決定支援などの第1回を開催させていただきます。
 本日の司会を務めさせていただきますワークセッションのコーディネーターの田中です。よろしくお願いします。
 私以外のコーディネーターは、隣の野澤さんと玉木さんになります。3人で企画しましたので、うまくいってもいかなくても3人の責任でということで、前に出ております。
 委員の皆様方におかれましては、御多忙中のところをお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。また、報告をいただく皆様も、遠くから御参集いただきましてありがとうございます。
 本日の会議は、12時半までを予定しております。
 では、事務局から委員の出欠状況についての報告をお願いします。

○事務局 事務局でございます。
 本日のワーキング・セッションIには、コーディネーターの田中委員、玉木委員、野澤委員のほか、石川委員長、石野委員、少しおくれておられるようですが、上野委員、大河内委員、加野委員、佐藤委員、松森委員が出席されております。また、伊藤委員は少しおくれると連絡をいただいております。
 なお、会議の冒頭、委員の皆様の御迷惑にならない範囲で取材が入り、写真撮影が行われますので御承知おきください。
 以上でございます。

○田中委員 それでは、議事に入ります。
 基本ルールの確認をさせていただきます。毎回のお願いで恐縮ですが、議事に入る前にお願いがございます。各委員から発言を求めるときは、まず挙手をいただき、司会からの指名を受けてから発言をお願いいたします。できれば最初に結論を述べ、その後、理由あるいは説明をしていただくというのが、合理的配慮としてよいのではないかと思っております。
 また、御発言の際は、まずお名前を名乗り、可能な限りゆっくりわかりやすく御発言いただくようお願いします。できるだけマイクに近寄ってお話しください。発言後は、必ずマイクのスイッチをオフにしていただくようお願いいたします。
 「障害者基本計画(第3次)の実施状況」に関しまして、委員あるいは参考人より御発言いただく際、可能な限り事前にお配りしております「障害者基本計画(第3次)の実施状況」のいずれの項目に関連しての御意見なのか、資料のページ数とあわせてお知らせくださいますようお願いします。例えば「実施状況4ページにある項目番号1-(1)-5についての意見です」とお願いいたします。
 本日は、成年後見制度も含めた意思決定支援などの分野における第3次障害者基本計画の実施状況について御議論いただきたいと考えております。
 それでは、会議の資料と流れについて、事務局より御説明をお願いいたします。

○事務局 本ワーキング・セッションの会議資料と流れについて御説明いたします。
 まず、会議資料でございます。
 資料1「成年後見制度も意思決定支援も、知的障害者には必要」
 資料2「5月22日参考人意見」
 参考資料1「障害者政策委員会ワーキング・セッションについて」
 参考資料2「障害者政策委員会における第3次障害者基本計画の実施状況の監視に係る今後のスケジュールについて(案)」
 参考資料3「障害者政策委員会における第3次障害者基本計画の実施状況の監視について(案)(第20回障害者政策委員会資料)【抜粋】」となっております。
 なお、委員の皆様には、机上に常備いたします資料として「障害者基本法」「障害者基本計画」「障害者基本計画の概要」「障害者基本計画の実施状況」「障害者の権利に関する条約」を御用意しております。
 次に、具体的な進行についてでございますが、会議時間を3つに分けまして、第1パートでは意思決定支援等成年後見制度について参考人からのヒアリングを行い、質疑応答を行います。
 その後、15分間の休憩を挟んで、第2パートでは意思決定支援と生活支援について参考人からのヒアリングを行い、質疑応答を行います。
 最後のパートで、全体での意見交換を行いたいと考えております。
 なお、これ以降の写真撮影は御遠慮いただきますようお願い申し上げます。
 以上でございます。

○田中委員 それでは、議題1「意思決定支援と成年後見制度」に入ります。
 お手元の参考資料をごらんください。各ワーキング・セッションのコーディネーターと参考人が記載されていますが、ワーキング・セッションIの参考人3名のうち、この議題については国学院大学の佐藤彰一様、富山育成会の細川瑞子様のお二方にお越しいただいております。本日はお忙しい中、おいでくださいましてありがとうございます。よろしくお願いします。
 具体的な進め方についてですが、まず各参考人から10分間ずつ意見を述べていただき、その後20分間質疑応答を行うという形で進めてまいります。
 議事進行に御協力をお願いします。
 それでは、最初に佐藤様、よろしくお願いいたします。

○佐藤参考人 参考人の佐藤でございます。よろしくお願いいたします。
 お手元に「5月22日参考人意見」というものが配付されているかと思いますが、きのう配付されたばかりですので、まだお目通しいただいていない方もいらっしゃると思います。基本的には、これを読み上げる形でお話をさせていただきたいと思っております。
 これから私が述べる内容は、あくまでも日本の現在の成年後見制度の現状を御紹介することに特化しております。時間の関係もありますので、かなり説明をはしょってお話をいたします。わかりにくい部分あるいは言葉遣いが極端に走るところがあるかもしれませんけれども、その点は御容赦をいただきたいと思っております。
 現行の成年後見制度は、法律上は2000年に新しく始まった制度でございまして、それまでは禁治産という制度であったものを改めたわけでございますけれども、それを改めるに当たりまして、それまで法律家は行為無能力という言葉で呼んでおりましたけれども、行為能力がないという表現であったものを制限的行為能力者、制限があるのだけれども行為能力はあるよという形に概念を改めるということが行われました。あるいは、それまでは禁治産と準禁治産という2つの制度であったものを、補助を入れて後見、保佐、補助という3類型に改める。そして、任意後見制度を新たに導入するという形で、制度の多様化が図られたという側面もございます。
 そしてこれが重要なのですが、後見人や保佐人や補助人が業務、職務を執行するに当たりまして、制度の利用者御本人の意思に配慮をするという規定が民法の中に新たに入りました。
 全体として、禁治産制度に比べますとノーマライゼーションという言葉に向けた形での改革が図られたということは、否定し難いと言ってよろしいかと思います。ただ、それは禁治産制度と比較しての話でありまして、現在、世界的に議論をされております意思決定支援の枠組みへの移行という観点から見たときには、やはり現行制度も問題をかなりはらんでいると言わざるを得ないものでございます。
 どういうことかといいますと、基本的には取消権。取消権というのは、かなりきつい取消権でございまして、理由なく契約行為を取り消せるというものでございますが、この取消権があるということを中心にした保護的な代行型の決定の枠組みである。こういう形で設計をされているということであります。
 しかも、その保護的なものの色彩が一番強いものが後見類型でございますけれども、運用面におきまして、委員の皆様は御承知のことと思いますけれども、圧倒的に後見類型の利用が多い。9割を超えるという現状でございます。
 また、取消権があるということは行為能力が制限をされるということでございますが、これが類型的に決められるということでございまして、いわばレッテルを張るということになります。あるいは法定代理人という位置づけで、後見人や保佐人、補助人が行動するわけですが、そういう人がついているということが、法律上の話としてはともかくとして、社会的なさまざまな排除を生むという現象があるということについての認識が、まだ十分検討されていないところがございます。
 資料にも書きましたけれども、銀行口座の名義が御本人の名義から少し工夫が入って、後見人や保佐人あるいは補助人の名義をつけ加えたものに変わってしまうとか、あるいは御存じのように、各種欠格条項が規定されるというような社会的排除のシステムがまだ現存をしております。
 御存じのように、選挙権が剥奪をされるという規定につきましては、訴訟の結果回復をいたしましたけれども、それ以外につきましては、まだ180あるいは200弱の欠格条項が残っているという状況でございます。
 こういった検討が進まない原因は、基本的には取消権があるということの前提として、御本人に判断能力がないという前提で制度がつくられているわけでありますが、判断能力がないと言いつつ、御本人の意向に従いなさい、尊重しなさいということで、ノーマライゼーションとは言ってもかなりわかりにくい規定になっている。そのことが十分整理されないで運用が行われている。こういうところに大きな原因があるのかなと思っているところでございます。
 したがいまして、今後改革を図るに当たりましてはこの点の整理が重要でありまして、基本的な枠組み、物の考え方としては、どんなに障害の重い人であっても、あるいはどんなに重い認知症の方であっても、その人なりの考え、思い、判断があるのだということを前提にした制度設計が図られていかなければならない。これが世界的な動向でもあるし、日本もそういう方向で進まなければならないと考えているところでございます。これを能力存在推定と私は呼んでいるわけですが、呼び方はともかくとして、そういう考え方をとるべきだと考えるところでございます。
 そういう形で制度設計を改めるときに、現行制度を眺めましたときに留意しなければならない点が2点ほどあると思っております。それは、まず身上監護におきまして、御本人の意思に配慮すべきであると言われていますけれども、そのことが十分整備をされていないということであります。もう一つは、財産管理におきまして、後見監督の業務が機能不全を起こしている点であります。
 まず、身上監護のほうで申し上げますけれども、代行決定の枠組みでございますので、取消権や代理権を使って御本人を支援するということが基本的な制度のたてつけでございますけれども、その代行決定をするに当たりましても御本人の意思を尊重しなければならない。これがそこに書いてあります民法857条の規定の趣旨でございます。もちろん意思決定支援をやるときにも御本人の意思を尊重しなければいけないわけですが、代行決定をやるときも御本人の意思を尊重しなければいけない。こちらが本来の職務ということになるわけです。
 ところが、条文にはそのように書いてあるのですけれども、どうしたら御本人の意思を尊重したことになるのか、間違って御本人の意思を尊重しなかった場合にはどのように評価されるのか、こういったことについては法律の条文上は何も書いてございません。事実上何もチェックがありませんので、現実の現場の運用ではもちろんのことになりますが、御本人の意向に沿わないような後見の支援が行われていることはあるわけであります。
 そこに書きましたけれども、御本人の意向はともかくとして、閉鎖的な入所施設に入っていただいて誰も会いに行かない。預金通帳だけを後見人が預かっている。そういった後見支援といったものが、いまだにあちこちで見られるということになるわけでございます。
 そういうことではいかんと思って、御本人の意向に沿った形の支援をしましょうと思っている後見人さんも現場ではたくさんいらっしゃるわけでありまして、その人たちがいろいろな工夫をしているわけでありますけれども、それは制度上担保された業務や工夫ではないわけであります。そういった人たち、御本人の意向に沿いたい、あるいは御本人の意思決定を支援したいという人たちへの支援、あるいは制度上の担保というものが必要なわけですけれども、現行の成年後見制度の枠組みの中では、そういったものは十分配慮されていない、整備されていないということになろうかと思います。
 そこで、現場では法人後見、あるいは個人後見人を支援するセンターというものが、非常に有効な手段として機能していると思いますけれども、そういったセンターや法人後見の機関に対する援助も十分行われていない。これが現状であると思われます。
 次に財産管理につきましてですが、成年後見制度は基本的には家庭裁判所の業務ということになります。家庭裁判所は裁判所でございますので、本来の仕事は裁判をすることということでございます。裁判所が裁判をすれば、本来的な姿で言いますと仕事はそれで終わるということでございますけれども、成年後見に当たりましては、裁判は審判と申しますが、その審判をして成年後見人をつけた後も裁判所の業務がずっと残る。これを後見監督業務と呼んでいますが、御本人がお亡くなりになるまでそれがずっと続くというのが現在の日本の仕組みでございます。
 このずっと続く業務を、裁判所では管理継続案件と呼んでおりますけれども、2000年に始まりましてからずっと続いておりまして、毎年1万件を超える規模でふえておりまして、平成25年度の統計ではその数が17万件を超える。恐らく、現在では20万件近くまでいっているのだろうと想定いたしますけれども、かなりの数が裁判所に入っていることになるわけであります。しかも、これは今後もふえ続けるであろうと予測されるところであります。
 こういう中で、家庭裁判所の仕事が負荷過剰、いわばオーバーロードになっている。これはもはや誰の目にも明らかなことでございまして、あちこちで家族後見人や専門職後見人、こういった方々の横領案件がマスメディアに報道されるということは御承知のとおりでございますけれども、横領案件が発覚するというのは裁判所の監督機能が働いているということでございますから、それ自体は特に裁判所にとっては問題ではないのですけれども、横領案件が発覚をした中に、裁判所の監督のミスで横領が行われたといったことが指摘される案件がちらほらと出てき始めております。訴訟が提起されて、裁判所が裁判所に訴えられて、裁判所が負けるというケースが幾つか報告をされているところでございます。これは、裁判所にとっては大変な事態になっていると言わざるを得ないわけでございます。
 家庭裁判所もこういった事態を踏まえていろいろと工夫をしておりまして、現在、その工夫の最も徹底した姿が後見支援信託という制度の利用でございます。この後見支援信託というのは、通常言われます民事信託、投資信託なんかもそうですけれども、こういったものとは異なりまして、裁判所が職権で、本来の後見人に監督人あるいは共同後見人といったものをつけまして、被後見人、御本人の財産をチェックいたしまして、不要不急のお金は全部、どこの銀行に預けているものであっても、1カ所の信託銀行に預けかえをするという仕組みであります。預けかえをした後は、裁判所の許可がないと自由には使えない。このようにしてしまう仕組みでございます。
 既存の選任された後見人が後見支援信託の利用を拒否するということももちろんできるわけでありますが、拒否した場合には監督人や共同後見人がそのまま選任され続けまして、一緒に仕事をしていくという話になる。
 報酬がかかりますので、それはいいです、後見支援信託を使いますと、既存の後見人が選択をいたしますと、今度は預けかえが行われて、財産を自由に、自由にというのは自分のためにというわけではないですが、被後見人のためにということですけれども、使うことができなくなるという仕組みになるわけであります。
 この運用は財産保全を目的にしているものであるということは明らかでありまして、しかも、そのことによって裁判所の負担が軽減をされるという狙いがあることも明らかであります。
 これは2012年からスタートしている家裁の運用でございますけれども、当初は既に後見人になっている方ではなくて、新しく後見申し立てをした家族後見人の方だけが対象だったのですけれども、現在は、既に後見人になっている家族後見人の方も対象になりつつありますし、専門職後見人に対してもこういった監督人や共同後見人をつけて、後見支援信託の利用を図ろうかという動きが出ているところでございます。
 これは財産保全という目的から見た場合には、かなり効果的な方法であります。要するに、後見人にお金を使わせないということでありますから、財産をフリーズしてしまうわけですね。しかし、被後見人の持っている財産というものは、本来は御本人のよりよき生活のために使われなければならない。そのために後見人が選任されているという話ですから、選任された後見人がそのためにお金を使うのに、一々裁判所の許可を得なければならないという話になる、あるいは実際上はそれが面倒くさいから使えないという話になると、何をやっているのかよくわからないということになるわけでございます。
 特に障害者の後見業務の場合には、支援期間が非常に長いということがありますので、そのうち非常に大きな問題を出してくるだろうと思っているところでございます。そもそも選任した成年後見人を信用しないという仕組みをつくっているわけですが、そういう仕組みであるということは、そもそも選任の段階がおかしいのではないかと言ってもよろしいかと思いますけれども、そういう声は現状では聞かれないところでございます。
 これは、裁判所の置かれている過重の負担を軽減するという目的のために行われている現在の姿でございますけれども、これを改善するためには後見支援信託を批判するばかりではなくて、裁判所の業務の負担をどうやって少なくするかということを考えなければならないわけですけれども、本来裁判をするのが仕事であるところの裁判所に、本来的な業務でないものを押しつけているということ自体を改善しないとならない時代に来ているのかなと思われます。
 そろそろ後見監督業務を、家裁ではなくてほかの機関、行政機関が担うということを模索してもいいのではないか。ほかの国ではそういったことを行っている国のほうが多いわけでありますけれども、日本でもそういうことが検討されてしかるべき時期に来ていると思うところでございます。
 ただ、そう急にしかるべき行政機関が出てくるとも思えませんので、短期的には裁判所のそういった業務を担う法人後見機関、あるいは権利擁護のセンターといったものがそういった監督業務を担っていく、こういうことを考えるのが現実的かなと思うところでございます。
 いずれにしましても、現状の成年後見制度を意思決定支援の仕組みにつくりかえていくという作業は必須でありますけれども、現状では代行決定の仕組みですら機能不全を起こしている。こういうことを認識した上で、もし、残すとしても、よりよき代行決定の仕組みをつくらなければいけないでしょう。しかし、基本的にはまず意思決定支援があるべきであって、仮に代行決定の仕組みを残さざるを得ないと考えたとしても、それは必要悪、ラストリゾートであるという考え方で制度設計が図られるべきである、このように考えるべきであります。
 代行決定の仕組みとしての成年後見制度をどんどん使いましょうということを言っている国は、少なくとも条約締結国の中には一カ国も存在しない。このことを我々は知っておくべきであると思うところでございます。
 多少時間を超えたと思いますけれども、以上でございます。

○田中委員 大変わかりやすい御説明をいただきまして、ありがとうございました。
 それでは、引き続きまして細川さん、お願いします。

○細川参考人 細川でございます。
 私の子供は33歳の最重度の知的障害者です。言語はなく、意思疎通も身辺自立も不十分です。歩きますが、手を放したらどこへ行ってしまうかわからず、車が危ないことも赤信号の意味もわかりません。こんな子を親はいつか残していかなければなりません。親がいなくても子供が安心して生きられる社会を目指して私は育成会で活動し、子供を託す制度としての成年後見制度に期待もし、改善を目指して研究をしています。きょうは、そのような立場で意見を述べさせていただけることを大変ありがたく思います。
 さて、障害者の権利条約が批准され、障害者が一人の人格としてあまねく尊重されるようになることに期待をしています。しかしながら、本人意思こそが絶対であり、知的障害者の支援もこれからは成年後見制度でなく意思決定支援でとの意見については、知的障害者の障害特性を知らない人の考えだと思います。
 知的障害者といってもさまざまです。軽度の人でしたら、支援されれば自分で決定することが可能かもしれません。しかし、知的障害者は損得の判断が苦手で、迎合性があり、不合理な決定へ誘導されやすい特性があります。意思決定支援がいいとはいっても、支援者や支援の方向性によっては本人が不利益をこうむるおそれがあります。
 一方、重度の人の中には、不利益を理解しないまま、何でもはいと答える人もいますし、現実に意思決定ができない人もいます。どんなに障害が重くても意思のない人はいないとの意見もあるようですが、意思決定をする事項の中には簡単な行為から難しい法律行為まであり、内容を理解できない事柄については意思決定できません。意思決定支援という言葉はいかにも本人尊重に見えますが、本人意思を絶対視すると、自分にとって得か損かを判断する能力が不十分な知的障害者は、大きな不利益をこうむるおそれがあります。形式的な本人意思の尊重だけでなく、実質的な権利を守ることも重要な権利擁護ではないでしょうか。
 支援しても理解ができない事柄、例えば相続放棄、担保権の設定などについては不利益から守る必要があります。権利条約の理念とは、形式的な本人意思を尊重する余り、実質的に本人への不利益を見逃すことを勧めてはいないはずです。むしろ、障害が重くて意思決定ができない人であっても、一人の人格として尊重されるべきであることに変わりはないと理解すべきだと思います。
 また、自分で決めることを絶対視して代理を拒否する意見もあると聞きます。しかし、現代の契約社会は複雑で、私たちも自分たちの生活を守り、活動範囲を広げるために代理が不可欠です。代理とは、自分の意思で委任する任意代理だけを意味するのではなく、委任する能力がない重度の人であっても代理は必要だと思います。成年後見人は、本人の生活を守り、広げるために代理決定や同意、取り消しをします。法定代理人である成年後見人は家庭裁判所が決め、監督し、だからこそ法的権限があるのです。
 一方の意思決定支援においては、支援者には法的権限がなく、無責任になりがちです。しかし、私は決して意思決定支援に価値がないと言っているわけではありません。日常生活の範囲、毎日の活動においては意思決定支援は有効であり、体験をふやし、生活を豊かにし、もし間違った決定であっても被害は少ないのです。
 一方で、本人に取り返しのつかない不利益を及ぼす重要法律事項の決定は、本人意思や意思決定支援に委ねず、成年後見制度で守る必要があります。重要法律行為というのは、中度の知的障害者などが対象である被保佐人が法律行為をする場合に、保佐人の同意を必要とする行為として、民法13条1項に掲げられています。具体的には、借金、保証、不動産売買、訴訟行為、相続などです。これらの事項については、たとえ支援をしても本人に意思決定をさせてはならないと思います。
 ただ、民法13条には、財産管理に関する事項しか掲げられていません。私は、以前から権利侵害があったときや心身の急変時、そして親の死後の暮らしなど、身上監護における重要事項を明確にすべきであると主張をしています。
 これらの重要法律事項については、障害特性を十分理解した成年後見人が、本人の意思表示がなくても、その秘められた気持ちを推し量り、心情に配慮し、本人の最善の利益を目指して責任を持って決定することが必要です。
 成年後見制度がスタートして既に15年。当初は親族が中心だった成年後見人が、今や法律家や福祉の専門家の方が過半数を占めるに至りました。それによって認知症高齢者や知的障害者への法律家の理解も深まり、虐待対応などにも積極的にかかわり、行政とも連携をとって本人の利益を守る方向性ができつつあります。それは、社会の責任を明確にするという意味もあり、成年後見の社会化が進む機動力にもなっています。知的障害者も家族や福祉だけでなく、社会で支えられて生きていく時代へとダイナミックにさま変わりしようとしています。
 一方で、意思決定支援は、ふだんの生活を熟知した支援者が一人一人の気持ちに寄り添い、本人の日常生活を豊かにするために、より細やかな支援をすることが期待されます。それによって本人の決定能力が向上し、意思表出が可能になれば、本人の意思尊重の理念は関係者の意識を変えていくことも期待できます。それこそ福祉の役割かと思います。
 以上、知的障害者には成年後見制度も意思決定支援も必要なのです。双方の役割分担を考え、重要な事柄の決定についても、成年後見人が1人ではなく、ふだんの生活をよく知っている意思決定支援者や関係者が同じテーブルについて、本人を中心に協議する場を設定する等、より本人の最善の利益を目指す前向きの制度設計が必要だと思います。それこそが権利条約の理念を判断能力に困難を抱える知的障害者へ展開するための合理的配慮だと思います。
 御清聴ありがとうございました。

○田中委員 細川さん、ありがとうございました。
 それでは、ここから各委員の皆さんからの御意見・御質問を頂戴できたらと思いますので、御意見や御質問がおありの方は挙手でお願いをしたいと思います。
 それでは、伊藤委員、お願いします。

○伊藤委員 交通機関の都合でおくれてきたので全部をお伺いすることはできなかったのですけれども、お三方にお聞きしたいのですが、私どもは医療の現場でかかわることが多いのですけれども、成年後見制度とか意思決定支援というのは、医療の場でも適用できるようなものと考えることはできるのでしょうか。

○田中委員 それでは、佐藤さん、細川さんの順で、医療についてのお話をお願いいたします。

○佐藤参考人 現状では、御存じのように現行法上は医療同意権というのが成年後見人にはないというシステムになっていますので、いわゆる手術の同意、そういったものが現状でできるかというとできないことになります。新しい意思決定支援の枠組みの中では、御本人の意向を確認していくということなので、同意をするか同意をしないかは御本人が決めることなので、そういう形での支援はできるということになりますから、もちろん医療の現場でも、あるいはほかの福祉の現場でも、そういった御本人の意向を確認し、御本人の同意を得ていくという支援はできる。こういう形の枠組みになっていくだろうと思います。ただ、それは御本人の意向であって、代行決定ではないということになります。

○田中委員 細川さん、お願いします。

○細川参考人 一昨年ですが、成年後見法学会で日独シンポジウムがございました。その中で医療同意の問題が取り上げられまして、私も発言をさせていただきました。
 現実には、成年後見人には医療同意見がないと言われています。今、医療の同意は、本人の意思が明確でない限りできないと言われています。しかし、本当に医療が必要かどうか、それに同意するかどうかの能力がない人が現実にいます。そういう人たちが、本人の意思が明確でないからといって、医療から疎外されるということはあってはならないことだと思っています。
 私は、成年後見人の義務の中に入っている身上配慮義務の中に当然医療は含まれると思っています。ですから、成年後見人に医療同意権がないと言われていること自体に問題があると思っています。
 一方で日本では、今、家族同意は認めているのですね。逆に言うと、これ自体が本人の医療を狭めていることもあろうかと思います。だから、家族同意というよりは、本人にとってどんな医療が必要なのかということをもう少し客観的に見られるようなシステムをつくっていかないといけないと思っています。
 ちなみに、ドイツでは成年後見人に医療の同意権が認められています。成年後見人で決められない場合には、家庭裁判所が決定するというシステムがあるそうです。なお、家族の同意権はないそうです。
 以上です。

○田中委員 ほかにはいかがでしょうか。
 野澤さん、お願いします。

○野澤委員 きょうは、貴重な意見をありがとうございました。
 そもそもこの議論の前提というか、スタートが障害者基本計画の第3次の中で、成年後見の利用の促進についてとあるのですね。これが前提になっている。今、厚生労働省で総合支援法の3年後の見直しの議論が始まっていますけれども、その中でも成年後見の利用の促進についてということ、そもそもこれがスタートになっての議論なのですね。
 これは何かというと、民主党政権下であった制度改革推進会議の中でやった総合支援部会でこれが打ち出された。その後、誰もチェックしないまま、ずっとこの文言が議論のスタートラインになっているのですね。
 ところが、この間に何があったのかというと、日本が国連の権利条約に批准したわけで、批准した国はこの成年後見の代行決定の部分については、国連の委員会からかなりしつこく追及されているというか、問い合わせが来ている。そういう状況の中で、日本だけが、我々だけがあっけらかんと、相変わらず成年後見の利用促進についてどうするのかみたいなことを議論しているのはちょっと恥ずかしいのではないのかという問題提起を、私は最近あちこちでさせていただいています。
 きょう、佐藤先生から最後に厳しい指摘があって、私は全くそのとおりだと思っているのですね。日本でこれを考えるときに難しいところは、厚生労働省と法務省にまたがってのもので、厚生労働省の中だけの審議会や検討会での議論が進まない、進めにくいということがあると思う。だから、むしろ内閣府の政策委員会が原動力になってといいますか、主導してやっていくぐらいでないと、なかなか法務省を巻き込んでの議論ができないのではないかなということで、きょうは非常に貴重な場だと私は思っているのですね。
 では、成年後見にかわるべきものとしての意思決定支援は何なのかといったときに、いろいろな方の意見を聞いたり読んだりするのですけれども、どうもそれぞれ定義が違うのではないかという気がしてきて、狭義の意思決定、本人が意思決定をするのだということが前提なのか、それともイギリスのMCAのベストインタレストの原則までも議論の射程に含めたものなのかということによって、大分見方が変わってくるのかなということは感じております。
 昨年、スウェーデンに行って、田中さんとも行ったのですけれども、中央政府や自治体や当事者団体の方といろいろな話をして意思決定のところを聞くのですが、正直に言うと一つも納得できる答えが返ってきませんでした。当たったところが悪かったと言われればそうかもしれないのですけれども、スウェーデンでも今の成年後見で代行決定の部分があって、そこは国連から結構いろいろとしつこく指摘されていて、スウェーデンの国内で政府が十数の当事者団体にいろいろ意見を聞いたところ、みんな今の成年後見は廃止すべきだと言っている。ところが、1つの団体だけが存続すべきだと言う。それはスウェーデンの知的障害者の親の会なのです。これは問題に直面しているところが日本と似ているのかもしれないな、この辺が本質なのかなという気がしているわけです。
 せっかくの機会なので、佐藤先生に御意見を。この短い時間でどこまで聞けるのか、本当は酒でも飲んで一晩ぐらい話さないとわからないと思うのですけれども、一つは、佐藤先生の資料の中にある、どうすれば本人の意思や判断を尊重したことになるのか、どうすれば本人の意向に沿った支援ができるのか、詰まるところここに尽きるなという感じもしているのですけれども、条文にどのようにこのことを落とし込めるのか、個人的な御見解でいいのですけれども、教えていただきたいと思います。イギリスの現場に行って、いろいろな方に聞いても、すごく納得できるのですけれども、それを定型的な方程式というか、方法論とか、そういうところできちんと文言化できるのだろうかみたいなところを考えてしまう。それが1点。
 もう一点は、日本の場合に後見類型がだめとして、補助や保佐でやっていけばある程度のものはクリアできるのかどうなのかということですね。
 もう一つは、法改正はなかなか時間がかかるとすれば、現行制度の運用で改善できるのか。どのようにすれば現行制度の運用でもいけるのかというあたりについて、最後のほうにも御指摘がありましたけれども、その3点について御意見を伺えればと思います。

○佐藤参考人 どれぐらい時間をかけてしゃべっていいのか難しいところがありますけれども。

○田中委員 時間に関してなのですけれども、後半の最後のところで3人の方の意見陳述を受けて話す時間もありますので、ここの場では5分以内におさめてもらって、その後、次の参考人のお話を聞く段取りの中で、また最後のほうで追加でお願いしたいと思います。

○佐藤参考人 今、野澤委員の御意見、御質問に答えようと思うと、それこそ本当に一晩中しゃべらなければいけないという話になるのですが、まず第1点目、御本人の意向に沿った支援は一体どうやったらできるのかということについては、確かに文章化は難しいと思います。文章化したものというのは、かなり抽象的なものにならざるを得ないと思うのですが、ただ、そうは言ってもガイドラインのようなものはできるでしょうということで、そのガイドラインというものは、いろいろな研究班でも研究していますけれども、私の頭の中では生活の場、人生設計の場、命にかかわる場というライフの3層構造と呼ばれるところがありますが、それぞれでガイドラインは違うでしょうと思っておりまして、基本的には重要なことであっても簡単なことであっても、意思決定支援のガイドラインというのはあるはずだ。そのガイドラインというのは、かなり明確なものではない形でとどめざるを得ないので、それで紛議が生じたときにどうするのだということを改めて判断する、そういう機関があるべきだ。
 それが裁判所の役割だと私は思っていまして、何か意思決定支援というのはこうやるべきだということを示すのが裁判所の役割ではなくて、何か関係者の間で意思決定支援のやり方について紛議が生じたときに、それを調整する、あるいは判断をする。裁判所でなくてもいいですけれども、そういった役割を担う機関があればそれで足りるのだろう。そういうプロセス的なガイドができるべきである。多分、イギリスのMCAをごらんになったらおわかりかと思いますけれども、そういう形のプロセス的な判断枠組みをとっていると思っております。
 それから、保佐、補助でいけるのはどうなのかということについては、法律家の中でも幾つか議論がありまして、保佐一元論だ、あるいは補助一元論だという見解が出ておりますし、いや、保佐でも補助でもだめで全く違うものにつくりかえるべきだという意見もございます。
 これは結局、取消権と代理権というものをどのように理解するかということでありまして、今の国連のモニタリング委員会の一般意見に従いますと、保佐でも補助でもだめです。およそ代行決定は、取り消しであろうが代理であろうが一切認めないということですから、これはだめでしょうという話になりますが、それに各国が従えるかどうかというのはかなり微妙なところがあって、そこは私も先ほどの意見の中で濁しております。なかなかはっきりコンクリートな形で意見が出せないところがございますけれども、恐らく現行の保佐や補助というやり方ではだめでしょう。仮に補助という制度を使うにしても、相当改めないと。現在の補助制度というのは、やはり意思決定の枠組みに沿ったものではありませんので、そういったものをつくりかえていかないとだめでしょう。少なくともこういうことは言えようかなと思います。
 それから、現在の制度を全く改めないで意思決定支援ができるのかどうなのかということについては、現場ではやっている人がたくさんいらっしゃると私は信じているのですが、これは先ほどの民法の条文に従えば、本来の後見人や保佐人の業務ではありませんけれども、意思決定支援をやってはいけないということではありませんから、それはやってくださいという話です。ただ、それは代行決定ではなくて、本来の意思決定支援ということをやるためには、相当に面倒くさい作業をしなければいけない。それを現場でやるのですけれども、それが本来の業務でないからほとんど評価されない。こういう現在の評価システムあるいは行政の対応といったものを改めないと、なかなか現行のままでうまくいくということにはならないでしょう。
 しかし、現在のところで何かをやるとすると、そういうところに着目し、いわゆる本来の意思決定支援をやっている人たちを支援するような仕組みづくりをしていかなければならないし、それはできるだろう。そのためのやりようとしては、意見の中でも述べましたけれども、法人後見といったものを活用しながら、その法人後見を担う機関が意思決定支援の本来の姿にかなり習熟をしているという人たちが集まった機関であれば、何とかそこが支援をしていけるのではないか。こういうところに活路を見出そうかなと思っているところでございます。

○田中委員 ありがとうございました。
 同じ枠組みで細川さんからもお話を聞ければと思う部分もあるのですけれども、先ほどお伝えしたように、ここで一度休憩を挟んで、都築さんからお話を聞いた後に、また全体を通して確認をする場で整理をさせていただければと思いますので、ここで一度休憩に入りたいと思います。
 15分ほど休憩をとりたいと思いますので、11時35分から再開したいと思います。それでは、休憩に入ってください。

(休憩)

○田中委員 委員の方、席にお戻りのようですので再開したいと思います。
 「意思決定支援と生活支援」という議題で後半のヒアリングを進めてまいりたいと思います。
 この議題については、参考人として愛知太陽の家、都築美幸様にお越しいただいております。きょうは、お忙しい中をおいでいただきまして、ありがとうございます。
 都築様のお話をいただく際に、コーディネーターの玉木さんから一言お伝えしたいことがあるということですので、玉木さん、お願いいたします。

○玉木委員 玉木です。
 今回は意見発表という形で、実際にいろいろな支援を受けながら生活をしている方の声の中で、具体的には、相談支援やサービス等利用を活用しながら、本当に御自身がしたいこと、したい仕事、やりたいこと、周りの人に言えること、言えないことがいろいろあるかと思います。今回は、発表というよりは、支援をされている方とのやりとりの中で、実際にどんな暮らしをされていて、本当に言いたいことが言えているかとか、言えていないのかとか、そういうところの話もお伺いできたらいいかなと思っていますので、都築さん、よろしくお願いします。

○田中委員 それでは、具体的な進め方なのですけれども、まずは都築さんと介助者の鈴木さんお二人で意見を述べていただいて、15分をめどにしておりますが、余り縛られずに進めていただいて構いませんので、お願いいたします。
 その後、25分間、質疑応答をしてまいりたいと思います。そして、都築さんの意見に関しての質疑応答を終えた後、先ほどお伝えしたように、3人の参考人の方の意見を踏まえての意見交換をする予定があります。それをおおむね15分ほどと考えております。12時25分には最終意見交換が終えられて閉会につながればという見通しでおりますので、そのように進めていきたいと思います。御協力をお願いいたします。
 それでは、都築さん、よろしくお願いします。

○都築参考人 初めまして、愛知県太陽の家から来ました都築美幸といいます。よろしくお願いします。

○鈴木氏 相談員の鈴木です。
 それでは、私からいろいろとインタビュー的にしながら、都築さんの今の状況をお話ししていただきたいと思います。
 今、都築さんは太陽の家から来たということですけれども、太陽の家というのはどういったところでしょうか。また、どういう仕事をしているか、そのあたりをお話ししてください。

○都築参考人 車の部品をつくっています。

○鈴木氏 何時から何時まで仕事をしていますか。

○都築参考人 9時から5時まで働いています。

○鈴木氏 仕事は9時から5時まで車の部品をつくっているということですけれども、生活はどういったところでしているのですか。

○都築参考人 そこの近くの会社の寮に住んでいます。

○鈴木氏 寮では何人で暮らしているのですか。

○都築参考人 男性のほうが多いのですけれども、女性は8人で暮らしています。

○鈴木氏 お部屋は8人みんな一緒に暮らしているのですか。

○都築参考人 1人部屋です。

○鈴木氏 先ほど働いていると言っていましたけれども、それは普通の会社ですか。それとも福祉事業としてやっているところですか。それはわかりますか。

○都築参考人 B型の授産所で働いています。

○鈴木氏 授産所ですけれども、大変大きな工場ですけれども、部署がいろいろありますね。

○都築参考人 はい。

○鈴木氏 それも説明できますか。

○都築参考人 難しいです。

○鈴木氏 そうですか。
 デンソー太陽という特例子会社があって、A型の事業所とB型の事業所があって、今、都築さんはB型の事業所で働いているということですね。

○都築参考人 はい。

○鈴木氏 わかりました。
 ちょっと話しにくいかもしれないけれども、B型の事業所で働いていて、1カ月でどのぐらいの給料をもらえているのですか。話しにくかったらいいですよ。

○都築参考人 それはちょっと言えません。

○鈴木氏 わかりました。済みません。
 あと、働いている給料以外に年金とか手当とか、金額はいいですけれども、そういったものをもらっていますか。もらっていませんか。

○都築参考人 もらっています。

○鈴木氏 では、収入もあってということですね。
 今の生活は、給料と年金、大体それで生活はできていますか。

○都築参考人 できているところはできていますけれども、厳しいときもあります。

○鈴木氏 厳しいというとどういうところが厳しいですか。

○都築参考人 お金が自由に使えないところです。

○鈴木氏 自由に使えない。
 給料というのは、現金でもらうのですか。それとも通帳に振り込まれるのか。もらえますね。

○都築参考人 口座に振り込まれます。

○鈴木氏 年金も口座に振り込まれますね。

○都築参考人 はい。

○鈴木氏 だったら、都築さん、自由に使えるではないですか。でも、使えないことがあるのですか。

○都築参考人 預けているからです。

○鈴木氏 そのお金は誰に預けているのですか。

○都築参考人 相談員のしおさいのサワダさんです。

○鈴木氏 では、お金も預けているわけだね。

○都築参考人 はい。

○鈴木氏 そうすると、その相談員さんとの1カ月のお金のやりとりというのは、いつもどのようにやっているのですか。

○都築参考人 相談しながらやっています。

○鈴木氏 どのように相談しているのですか。

○都築参考人 今週はこのぐらいだよとか、使い過ぎている週があるので次は節約しましょうとか、そういう感じでやっています。

○鈴木氏 そういうことをやっていると、時々自分の思いどおりにお金が使えなくて、ちょっと嫌だなとか、先ほどの苦しいときがあるということなのでしょうか。

○都築参考人 はい。

○鈴木氏 逆に、苦しくないときは自由にお金が使えているということですか。

○都築参考人 そうです。

○鈴木氏 ここ最近、ゴールデンウィークがあったけれども、ゴールデンウィークはきっとお休みが長かったね。何日ぐらいお休みがありましたか。

○都築参考人 8日間です。

○鈴木氏 さすがデンソーの会社のお休みですから、とても長いですね。
 そのゴールデンウィークだとかその後の生活は、どうしてもお金がかかりますね。その辺のお金の使い方は、いわゆる都築さんが言う苦しかったか、そうでもなく結構自由にやれたか。その辺はどうでしたか。
 どちらでもないところですか。

○都築参考人 はい。

○鈴木氏 ゴールデンウィークは、どのように暮らしていたのですか。

○都築参考人 遊んでいました。

○鈴木氏 遊ぶとお金を使いますね。

○都築参考人 はい。

○鈴木氏 お金は、まあまあ自由に使えたほうですか。

○都築参考人 そうですね。

○鈴木氏 では、そんなに苦しくなくて。

○都築参考人 はい。

○鈴木氏 では、いいゴールデンウィークだったということですね。

○都築参考人 はい。

○鈴木氏 これまでで苦しかったなとか、お金が欲しかったなという時期はありましたか。

○都築参考人 私は今、ガラケーを使っていますが、周りにいるみんながスマートフォンなので、スマートフォンを買いたいよと相談をしたら、だめだよと言われたからちょっと残念です。

○鈴木氏 自分でガラケーからスマホにしたいと決めたのに、だめだよと言われたんだね。

○都築参考人 はい。

○鈴木氏 何でだめだよと言われてしまうんだろう。それは自分のお金だね。

○都築参考人 ちょっとわかりません。

○鈴木氏 わからないけれども、だめだと言われたんだ。

○都築参考人 はい。

○鈴木氏 わかりました。それが苦しかったというか、自分で決めたいのに決められなかったという感じですか。

○都築参考人 はい。

○鈴木氏 ほかにそういったことはありませんか。ガラケー以外に、自分で決めているのになかなかうまくいかないことは。

○都築参考人 車の免許が取りたいのですが、お金がなくて取れないことです。

○鈴木氏 お金がないというのは、車の免許を取るためには、例えば自動車学校のお金が高いとか、そういうことかな。

○都築参考人 そうです。

○鈴木氏 自分でも、お金が高いから入れないなというのはわかっているの。

○都築参考人 わかっています。

○鈴木氏 その辺は納得しているのですか。やはり行きたいなという気持ちが強いですか。

○都築参考人 取りたいのですけれども、お金をためてから取りたいと思います。

○鈴木氏 では、それは計画的に考えて、将来的にやってみたいと思っているんだね。
 では、ガラケーからスマートフォンも、今はそのように考えようかなという感じになっているのですか。

○都築参考人 それはないです。

○鈴木氏 それはないんだね。どうして。

○都築参考人 新しいガラケーに変えられるからです。

○鈴木氏 ガラケーからスマホに変えようと思ったけれども、理由はわからないけれども、それはだめですよと言われて、古いガラケーから新しいガラケーにしようと思ったら、それだったら大丈夫そうなの。

○都築参考人 うれしいことに。

○鈴木氏 わかりました。お金のやりとりでは、大分いろいろあるみたいだね。

○都築参考人 はい。

○鈴木氏 少し難しい言葉も出てくるかもしれないのですが、事前に少し勉強もしたので聞いてみます。本音を言っていただければいいですけれども、そうやってお金をいろいろ管理してもらいながら生活をしていて、苦しいときもあればとても楽しいときもある。ゴールデンウィークは多少楽しいかなという感じだったのかな。そんな感じで生活をしているわけですけれども、お金を預けてもらったり、そうやってお金を使うことだとか、相談員という人がいますね。都築さんにとって相談員さんは、隣にいて話しにくいかもしれないけれども、もう自由に言っていただいて結構です。どうですか。いていただいていいと思っていますか。それとも実はというのがありますか。

○都築参考人 それは言えません。

○鈴木氏 大丈夫ですから言ってください。サワダさんを首にはしませんのでね。みんな本音を聞きたいところなのですよ。

○都築参考人 はい。

○鈴木氏 だから、きっと都築さんだったら言ってくれるだろうなということで、玉木さんはちょっと前から都築さんのことを知っていたから声をかけてくれたと思うのね。

○都築参考人 はい。

○鈴木氏 だから、本当のことを言っていただけばいいのですが、実際に相談員さんがいて、お金のこともいろいろ言う。あと、本当は仕事のことだとか、どこかに遊びに行ったり、今のように将来自動車学校に行くとか行かないとかということでいろいろ相談していると思うのですけれども、そういうときに、今は相談員さんがいるわけですけれども、いていいですか。余りよくないかなとか、絶対的に嫌だなとか、何かありますか。その辺の本音を言ってみてください。
 では、いいことは何、悪いことは何、そんな感じで言っていただいてもいいですよ。

○都築参考人 いいことは、仕事で失敗したときとか友達には話せないことが、相談員さんには話せるところです。
 悪いところは、甘えたいときに甘えられないことです。

○鈴木氏 甘えたいときに甘えられない。厳しいということですか。

○都築参考人 親みたいな存在になってほしいのですけれども、それができないからです。

○鈴木氏 親みたいなというのは、ちょっと都築さんのプライベートなお話になりますけれども、お父さんやお母さんはいらっしゃらないんですか。

○都築参考人 はい。
 間違いました。お母さんはいます。

○鈴木氏 いるね。ちょっと今、どきっとしたんだけれども、あなたがそう言った以上はそれを尊重しなければと思って、ちょっと心配だったんですけれども、お母さんはいるんだね。

○都築参考人 はい。

○鈴木氏 でも、ちょっと事情があって別に暮らしていらっしゃるんだね。

○都築参考人 はい。

○鈴木氏 でも、お父さんはいらっしゃらない。お母さんはいるけれども、そのように離れて暮らしていらっしゃるので、なかなかかかわりを持てない。だから、そのかわりになるような人になってほしいという感じなのでしょうか。

○都築参考人 そうです。

○鈴木氏 わかりました。
 先ほど、いいことは仕事で失敗したときに話せることだと言ってくれましたけれども、これまでに何か失敗してしまったことがあったの。

○都築参考人 何度か仕事をお休みしていて、もう会社から来なくていいよときつく言われたときに、相談員さんの支援員の鈴木さんやら太陽の家の職員さんたちが雇ってくれたから、まだここにいられると思います。

○鈴木氏 失敗してしまったけれども、休んでしまったりしたんだけれども、仕事というのは就労継続支援B型事業だね。

○都築参考人 はい。

○鈴木氏 会社と言っているのはB型事業所ですけれども、B型事業所でも、もう来なくてもいいよと厳しく言われてしまったことがあるんだね。

○都築参考人 はい。

○鈴木氏 そのときに相談員さんに何とか調整をしてもらって、またそこを利用できるように。都築さんもそのときに、もう嫌だ、やめたいと言っていたじゃない。

○都築参考人 やめたかったです。

○鈴木氏 やめたいと言ったね。

○都築参考人 はい。

○鈴木氏 でも、計画書だとかモニタリングだとか、あのときの紙をサワダさんから見せてもらったりして、これからも続けていこうねということで、またみんなで話し合いをして続けたり、そういうことができていたね。

○都築参考人 はい。

○鈴木氏 そういったところがよかったなという感じですね。

○都築参考人 はい。

○鈴木氏 あと、友達に話せないことまで話せることもいいことだということでしたけれども、友達に話せないことをここで話してくださいというのも厳しいかもしれないけれども、どのようなお話なのですか。

○都築参考人 好きな人がいるよとか、きょう職員とかに注意されたのだけれども、こういうことはどういう意味か、言葉の意味が余りわからないので、聞くことができたりするのが、友達に話したら、友達も自分のことで精いっぱいなもので、やはり話せない部分もあるもので、相談員に話したりします。

○鈴木氏 B型事業所の中で、職員さんやそこで教えてくれる人がいろいろ言うのだけれども、あるいは注意されるのだけれども、そのことがよくわからないな。友達に聞きたいけれども、友達もそうやって忙しいからなかなかお話ができない。そのことを相談員さんが来てくれたときに話すと、そのことがわかるように話してくれるということですか。
 わかりました。
 では、まだお話は続きますけれども、嫌なこと、自分が決めたいことがなかなか決められないことがあるというお話がありましたけれども、この際ですから、これからそういうところはどのようにしてほしいと思いますか。特にお金の使い方のことなどがポイントのようですけれども。

○都築参考人 お金は自分で持っているとなくなってしまうので、好きなだけ使ってしまうので、支援員のサワダさんに預けて、持ってもらっていたほうがいいと思います。

○鈴木氏 お金のことは、預けてというか、そのように相談をしながら使っていけるようにしたいなということですか。

○都築参考人 はい。

○鈴木氏 わかりました。ただ預かっているだけでは、もう言ったとおりに出していくということになるわけですけれども、自分が出してと言っても、ちょっとここは使わないほうがいいのではないのと言われたら、それは使わないほうがいいですか。

○都築参考人 そうですね。

○鈴木氏 そこは大丈夫ですか。

○都築参考人 我慢します。

○鈴木氏 これからけんかになったり、トラブルになったりしないでしょうか。

○都築参考人 大丈夫だと思います。

○鈴木氏 そうですか。そういうところはこれからも頼っていきたいということでしょうか。

○都築参考人 はい。

○鈴木氏 わかりました。
 ということで、今の都築さんの生活の様子、相談員とのかかわりというのは、大体わかっていただけたのではないかと思います。

○都築参考人 ありがとうございました。

○田中委員 都築さん、ありがとうございました。
 それでは、皆様から質疑応答をお受けしたいと思いますので、委員の皆様から質問や御意見がある場合には、挙手でお願いをしたいと思います。いかがでしょうか。
 石野さん、お願いします。

○石野委員 全日本ろうあ連盟の石野でございます。
 今のお二方のやりとりを見て、私、非常に感動しております。私も、過去、ケースワーカーとして20年間仕事をしておりまして、鈴木さんはすごくうまい引き出し方をされておりました。
 また、都築さんに伺いたいのですが、2つほどあります。この前、統一選挙がありましたね。行かれたと思いますが、今まで投票の中で嫌な思いをされた経験があれば教えてください。
 2つ目の質問です。例えば法律的にいろいろ悩みがあったときには、弁護士に相談に行く。普通は30分間で済ませることが多いのですが、それ以上だと実費、お金がかかってしまう。一般の相談の場合には、30分で済ますかどうかもわからないということがあります。そのような相談の時間が長くなるといったケースもあります。そういう中で嫌な経験をされたかどうか、教えてください。
 以上です。

○都築参考人 嫌なことというか、紙を裏表間違えて書いたことが失敗しました。

○鈴木氏 ほかにはない。

○都築参考人 ほかにはないです。

○鈴木氏 選挙というのは、いつも1人で行くのですか。お友達と行くのですか。

○都築参考人 お友達と一緒に行きます。歩いて行きます。

○鈴木氏 選挙では、大体そんなところですか。

○都築参考人 はい。

○鈴木氏 もう一個、弁護士さんに相談をしたりすると30分でお金がかかるということですけれども、そういう相談をするということで何か嫌な思いをしたことはありますか。
 その前に、弁護士さんに何か相談をしたということはありますか。

○都築参考人 ないです。

○鈴木氏 弁護士さん以外でも、ほかに何か相談をして嫌な思いをしたとか、そういうことはありますか。

○都築参考人 太陽の家の職員に相談したことはありますけれども、そのときに余りいい返事が返ってこなかったことがちょっと嫌です。

○鈴木氏 それはB型事業所の太陽の家の職員さんですか。

○都築参考人 違います。

○鈴木氏 そうですか。太陽の家でもどういう職員ですか。

○都築参考人 事務局の人です。

○鈴木氏 嫌だったのは、対応の仕方が悪かったのか、それとも言葉遣いが悪かったとか、何かそんなことがあったのですか。

○都築参考人 それは言えません。

○鈴木氏 わかりました。でも、ちょっと嫌な思いをしてしまったということですね。

○都築参考人 はい。

○鈴木氏 ありがとうございます。
 以上ですか。

○都築参考人 ありがとうございました。

○田中委員 とても大人な返事でありがとうございました。
 それ以外に委員の皆様から御意見、御質問があればお受けいたします。
 石川委員長、お願いいたします。

○石川委員長 どうもありがとうございます。
 私、目が見えないので確認したいのですが、都築さんの相談員のサワダさんは女性でいらっしゃいますか。

○都築参考人 はい。

○石川委員長 やはり女性のほうがいろいろ話しやすい、相談しやすいと思うのですが、そのように考えていいですか。

○鈴木氏 相談員さんは女性のほうが話しやすいかどうかという御質問です。

○都築参考人 女性のほうが話しやすいです。

○石川委員長 もう一点、太陽の家では、相談員は同性が原則とされているかどうかというのを鈴木さんにお伺いしたいと思います。

○鈴木氏 都築さんは女性ですね。そのときには、太陽の家は女性の相談員さんがお話をしてくれるのか。そうではなくて男性の相談員さんがお話をしてくれるのか。女性でもいたり、男性でもいたりするのか、その辺はどうですか。

○都築参考人 ときによって違うときもあるけれども、話しやすい人に話しています。

○鈴木氏 女性でも男性でも、都築さんが話しやすい相談員さんに話しているということですか。

○都築参考人 はい。

○鈴木氏 これも答えたくなければ答えなくてもいいですが、そのときにはどちらかという男性ですか。どちらかといえば女性ですか。その辺はどうですか。

○都築参考人 両方です。

○鈴木氏 両方だね。男性でも女性でも、いい相談員さんにはお話をするということですか。

○都築参考人 はい。

○鈴木氏 以上です。

○田中委員 ありがとうございます。
 ほかの委員の皆様。佐藤さん、お願いします。

○佐藤委員 どうもありがとうございました。佐藤といいます。
 都築さんに教えてもらいたいのですけれども、今、寮に住んでいらっしゃいますね。寮は、ヘルパーさんとか身の回りのことを世話してくれる人はいるのですか。

○都築参考人 いません。

○佐藤委員 洗濯とかはどうされているのですか。

○都築参考人 部屋に洗濯機が置いてあるので、それでやっています。

○佐藤委員 では、全部自分でできるのですか。

○都築参考人 ちょっとだらしないところもあるので、ときにはさぼったりもしますけれども、なるべく毎日回そうとしています。

○佐藤委員 御飯とかはどうしていますか。

○都築参考人 月曜日から金曜日まで、食堂でつくってくれるので、それを食べています。

○佐藤委員 あと、サワダさんのほかに生活をする上でいろいろ相談したり、手伝ってもらったりしている人はいますか。

○都築参考人 今はサワダさんだけです。

○佐藤委員 ありがとうございました。

○都築参考人 ありがとうございました。

○鈴木氏 今のに関連して1つ。以前は、その寮にヘルパーさんが来ていたことがありましたね。

○都築参考人 はい。

○鈴木氏 でも、途中でやめてしまいましたね。

○都築参考人 やめてしまいました。

○鈴木氏 何でやめてしまったのですか。その辺もお話をしていただくとわかりやすいかなと思いまして。

○都築参考人 こんな言い方をしてはいけませんけれども、気が合わなくてやめてしまいました。

○鈴木氏 ヘルパーさんと気が合わなかったね。

○都築参考人 はい。

○鈴木氏 そのときにヘルパーさんと気が合わなかったこと、例えば相談員さん、そのときはサワダさんではなかったかな。誰か、相談員さんに相談をしたりしましたか。

○都築参考人 サワダさんです。

○鈴木氏 そうだったのですね。結果的にやめるとなったのでしたか。

○都築参考人 はい。

○鈴木氏 ありがとうございました。

○田中委員 ありがとうございました。
 それでは、玉木さん、お願いします。

○玉木委員 先ほどの続きなのですけれども、ヘルパーさんと合わなかったからやめたと聞いているけれども、例えばほかの人にかえてほしいとか、そういうことは都築さんは言わなかったのですか。

○都築参考人 言いませんでした。

○玉木委員 それは、暮らしの中で、私はヘルパーさんを使わなくてもやっていけると思ったからいいですと言ったのですか。

○都築参考人 それは違います。

○玉木委員 やはりその人と合わなかったから、もういいですと言ったのですか。

○都築参考人 はい。本当はヘルパーさんが欲しかったのですけれども、その人と合わなくて、もう無理だと思ったからやめました。

○玉木委員 そうか。本当は別のヘルパーさんに来てもらいたかったのですか。

○都築参考人 はい。

○玉木委員 それを言いましたか。

○都築参考人 言っていません。

○玉木委員 言えたらよかったね。

○都築参考人 はい。

○玉木委員 あともう一つ、皆さんは気になっていないかもしれないけれども、スマートフォンは何でだめだったんだろうね。言いにくいかもしれませんが、言ってしまってください。言ってしまっていいです。

○都築参考人 何か危ないネットとかに引っかかるみたいなので、それでだまされてお金を請求されたりするのではないかという心配があるから持たせないと言われました。

○玉木委員 持たせないと。

○都築参考人 はい。

○玉木委員 それは、都築さんは納得したのですか。

○都築参考人 納得はしていないのですけれども、仕方がないなみたいな。

○玉木委員 仕方がないなと思った。

○都築参考人 はい。

○玉木委員 そこも、どうやったら使えるようになるのかとか、そういう相談が今後もできたらいいですね。

○都築参考人 そうですね。

○玉木委員 わかりました。ありがとうございます。

○都築参考人 ありがとうございました。

○田中委員 ありがとうございました。
 さすが相談員の玉木さん、相談業務が始まってしまうのかと思いましたけれども、いろいろ聞けてよかったと思います。
 松森さん、お願いします。

○松森委員 松森と申します。
 お聞きしたいのですけれども、寮は男性と女性、男性のほうが多いとおっしゃっていましたね。女性は8人、男性は何人ぐらいですか。

○都築参考人 30人ぐらいだと思います。

○松森委員 男性は30人ぐらいいるのですか。

○都築参考人 はい。3階が女性の部屋だけで、1階と2階と4階は男性なので。

○松森委員 なるほど、男性がとてもたくさんいるのですね。

○都築参考人 そうですね。

○松森委員 生活の中で、男性がたくさんいて嫌だなと思ったこととかはありますか。

○都築参考人 ないです。

○松森委員 みんな仲よくしているのですか。

○都築参考人 けんかもありますけれども。

○松森委員 例えばお風呂とかトイレとか、そうしたときに嫌だなと思うことはないですか。

○都築参考人 お風呂とトイレは別々なので、男性のトイレもあって女性のトイレもあるので、分かれていますので嫌だなと思うことはないです。

○松森委員 わかりました。ありがとうございます。

○都築参考人 ありがとうございました。

○田中委員 ありがとうございました。
 それでは、伊藤さん、お願いします。

○伊藤委員 伊藤といいます。
 2つ教えてください。ヘルパーさんいなくても、今、都築さんは暮らしに不便していないのですか。

○鈴木氏 ヘルパーさんが来なくなった。来なくなって生活しているときに、何か不便だったり、困ったなということはありませんかという質問です。

○都築参考人 部屋の片づけがうまくできないときとか、手伝ってほしいなと思うときはありますけれども、今はヘルパーを頼んでいないので、自分でやっています。

○伊藤委員 自分でやっているのですね。
 もう一つ聞いていいですか。お仕事以外に、自分の寮で生活していて一番楽しいことはどんなことですか。

○都築参考人 寝ることです。

○伊藤委員 ありがとうございます。

○都築参考人 フットサルのクラブに入っているので、それもやっています。ありがとうございました。

○田中委員 ありがとうございました。
 それでは、ほかの委員の方、いらっしゃいませんか。
 いらっしゃらないようですので、都築さん、どうもありがとうございました。

○都築参考人 ありがとうございました。

○田中委員 ここからは、3人の参考人の方にお話をいただいたことを踏まえて、全体についての意見交換をしていきたいと思います。各委員の皆様からの御意見や御質問、全体を通していただければと思いますので、どうぞ挙手でお願いいたします。
 野澤委員、お願いします。

○野澤委員 このワーキング・セッションは、生活支援と意思決定支援と成年後見という物すごくざっくりしたもので、ありとあらゆるところにかかわってくるものなのですけれども、例えば生活支援と一言で言ってもいろいろなものなのですが、例えば住むということに関して言うと、家族との同居があって、入所施設があって、随分前から知的障害のある方たちの場合はグループホームがいいのではないかとやってきて、いろいろなサービス自体はふえてきただろうと思います。質もそれなりに上がってきただろうと思うのですけれども、ほかの国へ行っていろいろなものを見てきたりすると、日本は物すごく単調だなと最近感じるのですね。グループホームは、どこに行っても大体同じようなグループホームで、それは国の制度だからそうですね。
 でも、イギリスに行って見てみると、もっとパーソナルアシスタンスを使って単身で暮らしていたり、でも、べたっと24時間つくわけではなくて、もっとITだとか技術を住居に導入して、非常に時間を制限してパーソナルアシスタンスを使って、結構重度の高度障害の方もそれで単身生活が成り立っていたり、あるいはシェアードリビングという養子縁組みたいな制度があったり、ケアホームもそれぞれですね。
 これは住むというところだけではなくて、日本の場合は就労にしても日中支援にしても、どれもこれも全国どこへ行っても似ているのですね。やっていることも似ているし、規模も似ている。それは国の制度だからそうなのですけれども、本当にそれでいいのかなと最近思っていて、ここあたりが判断能力にいろいろなハンデがあると言われる知的な障害のある方と、それ以外の自分で判断ができる方たちとの本質的な違いなのかもしれないなと思ったりしています。
 既存のいろいろなサービスの類型があって、それにそろえられて、それはすごくたくさん出てきてよくなっているのですけれども、その中から選ぶことしかできない。むしろ本人がやりたいことをもっと、制度だとかルールだとかをはみ出してもオーダーメイドでクリエイティブにつくっていくみたいなもの、そろそろそういう生活支援が、この国で知的な障害を持った方たちにもあっていいのではないかと思っています。
 では、そのオーダーメイドは誰がオーダーするのだということですね。きょうで言えば玉木さんや鈴木さんのような相談支援をやっている方、あるいは家族、あるいは成年後見人なのかということなのですけれども、そういうことをやりながら、既存のサービスにはないものを体験しながら、いろいろな体験や経験があって初めて意思決定というものがつくられる前提ができてくるのではないかなと思うと、それを抜きにして、ただ単に意思決定をどうするか、成年後見をどうするかということだけでは少し満ち足りてこないのかなということを思って、両輪かもしれないなと思ったりしております。
 このアプリケーションをそろえていく、障害基本計画を見てもそうなのですけれども、それだけではなくてもっとOSのところですね。誰がどうやって既存のサービス類型でないものまでも、本人のニーズに沿ったものをつくり上げていくのか、そこにもう少し踏み込んだものをこれから考えていかなければいけないなと漠然と感じております。
 これは質問ということではなくて、きょうのテーマを通して、漠然とした考えなのですけれども、そんな議論ができたらなということを思っております。
 以上です。

○田中委員 ありがとうございます。
 前半の佐藤さんと細川さんのお話を聞いていても、意思決定支援という入り口と成年後見という土台になっている部分と、その両方が求めているものが本人の権利擁護と主体性の尊重ということで、違う切り口のようでいながら目指しているものは一緒のような感じはしたのですけれども、どうしても権利条約を前提にして、特に新しい言葉としての意思決定支援に関しては、今、野澤さんにも問題提起をしてもらいましたけれども、環境をかなり整理というか、どんな環境で暮らしているのかという前提に意思決定の仕組みを当てはめたときに、どんな個人個人の答えが出てくるのか。佐藤さんからも提起がありましたけれども、まず仕組みをつくって個別の事情を取り込んでいくという仕組みが、これから必要になってくるのかなと思って聞いておりました。
 そんなことで、迷いながらこの3人でコーディネーターをしながら、一番ばくっとしたところの中心になるところに、今、取り組んでいる佐藤さんと細川さんという両論客に御意見をいただいたところなのですけれども、委員の皆様も、またきょうの話を受けて、まだまだ現状を探らないといけないところはあると思うのですけれども、御意見を賜れればと思います。いかがでしょうか。
 伊藤委員、お願いします。

○伊藤委員 伊藤です。
 残念なことに佐藤先生のお話の全般をお聞きすることができなかったのですが、ざっと眺めてみて、今、知的なハンデを持っている方のお話が中心になっているようですけれども、先ほどのスマホの話に代表されるように、生活のスタイル全般、社会全般が大きく変わってきて、さまざまな機器があったり、医療も物すごく発展していたりして複雑になっていますし、ある意味過激にもなっている。そういう中で、知的障害だけでなく、病気やらさまざまなハンデを持っている人たちの生活環境も変わっているという中で、これは少し考えなければいけない問題なのではないか。
 特に、医療の発達に伴う意思決定が困難な方への医療の問題というのもいろいろあるものですから、そういうことも踏まえた形での議論が必要かなと。これも感想なのですけれども、そういうことを感じました。これを専門の方々がどのようにお考えになっていくかも、またお聞きしたいところだと思います。

○田中委員 ありがとうございます。
 ほかにいらっしゃいませんか。加野さん、お願いいたします。

○加野委員 加野です。
 私は、弁護士として自分自身が成年後見人で、高齢者の方の後見業務を幾つかやっています。その中で意思尊重ということを私自身も考えながら進めてはおりますけれども、実際問題として裁判所から選任をされて、全く今までかかわりのなかった人の後見にいきなりつくので、本人の意思の尊重といっても、お話ができる方、できない方、意思決定支援というところまではとても及びませんで、近しい方とかその周囲の方のお話で、御本人のこれまでの生活歴とか、いろいろなことをお聞きしながら、御本人の意思に沿うような形でどういうことができるだろうということを考えているような状況です。
 そういうところからすると、今の「障害者基本計画(第3次)の実施状況(案)」の10ページの1-(4)-3の項目ですけれども、計画としては、本人の自己決定を尊重する観点から、意思決定の支援に配慮しつつ必要な支援等を行うというところの推進状況が、成年後見の利用促進とか、そういうことだけが書かれているような状況になっていますけれども、そうではなくて、意思決定等に配慮しつつ必要な支援等を行うというところで、今の成年後見制度を前提に考えても、もちろん今の成年後見制度を変えていかなくてはいけない部分はあるのですけれども、すぐに変えられないとすれば、今の成年後見制度で改善すべき点はたくさんあって、まずは本人の意思尊重というところを、本当に弁護士とか司法書士とか、専門職の後見人というのはどうしても財産管理の面だけに目が向きがちですので、本人の身上監護や何かにも配慮するときに、ちょっとガイドラインというお話もありましたけれども、いろいろ福祉の専門の方とか、相談、連携ができるような体制を整備するとかですね。
 まず一番必要なのは、意思決定支援ということがまだ言葉として浸透はしていなくて、専門職の後見人になっているような方も、意思決定支援という考え方自体を知らない人がすごく多いと思うので、その意思決定支援という考え方自体をより普及、広めていくというところが、まずは大事なのかなと思っています。

○田中委員 ありがとうございます。
 ほかにいらっしゃいますか。佐藤さんや細川さんからお話をいただいてもいいと思いますが、玉木さん、お願いします。

○玉木委員 加野委員の言われたことは、全くそのとおりだと私も思います。要は、成年後見制度にしても相談支援でも、本来は本人さんの権利を守るためにできた制度であるはずなのに、いつの間にか支援者のためのリスクマネジメントだったり、家族のためのリスクマネジメントであったり、下手をすれば司法側も、裁判所は後見人をつけたから権利を守られているであろうと、全て性善説に基づいて動いているところに気持ち悪さを感じていて、私も実は過去に保佐を2件受任していたけれども、結局、裁判所も佐藤先生が言われたようなチェックができていない状況の中で、一方で財産管理と、一方で身上監護という言葉が業務の中にあるのだと言われながら、結果的には財産管理、しかも使えない財産管理。お金をため続けて、その後はどうするのという財産管理というのが主流ではないかと思っています。
 佐藤先生が言われたように、一足飛びに変えるということではないと思うのですけれども、移行期にあって、成年後見制度も含めてどういった形で本人さんの意思を反映できるのかということで、それは司法だけでなくて、行政も、支援者も、家族会の方々も含めて、どうやって本人さんのことを確認できるのだろうかということを探っていくツールというか、それが例えば相談支援のサービス等利用計画であったり、権利擁護の観点からいく中でも、成年後見制度における支援計画というか、成年後見制度を活用して、この方の生活をこう応援していきますという具体的な形が明確にされないと、いつまでたっても後見人がついているからいいではないか、保佐人がついているからいいではないか、最終的には保佐人に決めてもらいましょう、後見人に決めてもらいましょうみたいな、丸投げ的な支援が本当に支援なのかということを、整理していかなければいけないなと思っているのですけれども、佐藤先生、どう思われますか。

○田中委員 佐藤さん、お願いします。

○佐藤参考人 今の玉木さんの御質問に直接答えることになるのかどうかはよくわからないのですが、野澤さんがもういなくなりそうな雰囲気なので、野澤さんの先ほどの発言も含めて私の意見を述べさせていただきたいのですけれども、意思決定支援と言ったときの決定という言葉の中身にかかわるのですが、何か決定をすると失敗をすることがあるのですね。その失敗というものを日本は極度に嫌うので、したがって、日本は全国一様に失敗が起きないようなシステムをつくってしまう。そういうことだから、どこに行っても同じ話だという野澤さんの感想になるのだと思います。
 失敗をなぜ嫌うかというと、失敗した人はもう支援をしないということですね。何か間違った決定をしたら、それはもう自己責任だから放っておけという感じでやってしまうから失敗を許さないということなのですが、この意思決定支援で一番大切なことは、間違った決定をした場合でも支援は続けるという感覚でないと、意思決定支援の議論はできない。そうしないと選択の幅が広がらないし、経験も積めない。経験が積めないところで決定なんてできない、選択もできない、こういうことの繰り返しになるので、そこのところの決定概念をきちんと整理する。失敗しても支援を続けるという考えで制度設計をすることが必要だと思います。
 ただ、失敗が許されない領域もあるので、それはまさに命にかかわる医療の世界の最終的な問題になるわけですが、ここの議論は自己決定だけで済まない話になってしまう領域が出てくるので、医療の世界ではシェアード・ディシジョン・メイキングという話になってくるようなところがあって、それは医療側も責任を持つという話になってくる。これはちょっとディメンションが違う。
 だから、先ほど野澤さんが、意思決定支援という言葉の定義がわからないとおっしゃっていたけれども、そこまでを含めた形で意思決定を議論すると、いわゆる自己決定とは違う意思決定というものを議論せざるを得なくなってくるので、どこのところの領域の話をするのかによって定義が違うということで、そこはまた整理が必要だろうと思いますけれども、今、我々が基本に置かなければならないのは自己決定の支援が中心であるということは、まず間違いがないのだろうと思っています。

○田中委員 25分終わりの予定なので、もう間もなくなのですが、細川さんから何か一言あれば、短くて済みませんけれども、お願いします。

○細川参考人 理念はともかくとして、現実にどこまで目を向けていくかということも非常に重要だと思うのですね。例えば今、私たちは障害者の分野で判断能力がある障害者、判断能力が非常に不十分な障害者、そういう分けで物事を考えていますけれども、例えば認知症の高齢者というのは、全て判断能力が不十分な人たちです。要するに、精神的な障害者ですね。そういう人たちが既に462万人もいると居ると言われており、おれおれ詐欺の被害だとか、JR東海から家族に損害賠償を求めた裁判とか、いろいろなことが現実に起きてきているのですね。そういうところにも目を向けていかないと、障害者の自己決定だけではこれからは済まないのではないかと思われます。
 もう少し社会的な問題にしなければならない、ということを申し上げたいのです。自己決定、意思決定というのは、どうしても本人サイドに立って物事を考える。これも一方では非常に重要なのですけれども、一方ではこういう社会としての大きな問題の中に障害者の権利の問題も含まれているのだという視点も持っていただければありがたいと思います。

○田中委員 ありがとうございます。
 都築さん、たくさんお話を聞かせていただいて、本当にありがとうございました。

○都築参考人 ありがとうございました。

○田中委員 それでは、3人の参考人の方に感謝を申し上げて、きょうの意見交換会が無事終えられましたことに感謝をして、このセッションを閉じたいと思います。
 予定していた議題は以上となりましたので、次回の日程について事務局からお願いいたします。

○事務局 お手元の参考資料2をごらんください。
 この資料には、今後のワーキング・セッションと障害者政策委員会の予定を記載しております。
 次回のワーキング・セッションIにつきましては、6月12日金曜日10時30分開始を予定しております。場所は、この建物と同じ4号館の別の階でございますが、4階の408会議室を予定しております。
 また、この資料にあるとおり、第21回の障害者政策委員会、その他のワーキング・セッションも並行して開催しております。
 以上でございます。

○田中委員 それでは、これをもちまして障害者政策委員会ワーキング・セッションIの第1回を終了いたします。本日は、ありがとうございました。