障害者政策委員会ワーキング・セッションIV:情報アクセシビリティ 議事録

○石野委員 「障害者政策委員会ワーキング・セッション:情報アクセシビリティ」第2回目の会議となります。
 私は、司会を務めさせていただきます石野と申します。不慣れですが、御協力をぜひよろしくお願いいたします。IVを開催させていただきます。
 コーディネーター3人は、私は聞こえません、竹下さんは視覚障害者、門川さんは盲ろうの方という情報アクセシビリティは非常に重要な3人です。今までの打ち合わせにおきましても、情報保障について配慮しながら協議をし、まとめてまいりました。御協力をぜひよろしくお願いいたします。
 それでは、事務局から出席状況について御報告をお願いいたします。

○加藤参事官 事務局でございます。
 本日のワーキング・セッションIVには、コーディネーターの石野委員、門川委員、竹下委員のほか、石川委員長、伊藤委員、上野委員は遅れておられるようです。大河内委員、大日方委員も遅れておられるようです。河井委員、佐藤委員、松森委員、三浦委員が出席されています。
 なお、会議冒頭、委員の皆様の御迷惑にならない範囲で取材が入りまして、写真撮影が行われますので、御承知おきください。
 以上でございます。

○石野委員 ありがとうございます。
 では、本日の進め方でございますが、毎回皆様方に申し上げておりますが、私は聞こえませんので、どなたが発言されているのかわからない場合があります。その場合に、介助者から協力を受ける形になります。私が指名してから御発言をお願いいたします。スイッチをオンにして、発言が終わりましたオフにしてください。まず結論から述べていただきたいと考えております。
 もう一つ、発言のときには、まず御自分の名前を名乗ってください。そして、第3次障害者基本計画の実施状況に関しましての委員、参考人の発言を求めるときには、可能な範囲で、第3次障害者基本計画の何ページのいずれの項目に該当するものなのかをあわせて発言をしていただきたいと思います。ページ数、何条、どの項目かをぜひお願いいたします。
 本日は、情報アクセシビリティにおきまして、第3次障害者基本計画の実施状況について議論をします。
 それでは、会議資料と流れにつきまして、事務局から説明をお願いいたします。

○加藤参事官 事務局でございます。
 本日のワーキング・セッションの会議資料と流れについて御説明いたします。
 まず、会議資料でございますが、資料1「教科用特定図書等について」という1枚の紙がございます。
 参考資料1「障害者政策委員会ワーキング・セッションについて」
 参考資料2「障害者政策委員会における第3次障害者基本計画の実施状況の監視に係る今後のスケジュールについて(案)」
 参考資料3「障害者政策委員会における第3次障害者基本計画の実施状況の監視について(案)(第20回障害者政策委員会資料)【抜粋】」となっております。
 なお、委員の皆様には、机上に常備いたします資料として「障害者基本法」「障害者基本計画」「障害者基本計画の概要」「障害者基本計画の実施状況」「障害者の権利に関する条約」をファイルで御用意しております。
 次に具体的な進行についてですが、まず前半では総務省、文部科学省、国土交通省から、前回のワーキング・セッションで委員から御質問がありました事項について回答を行います。その後、参考人質疑を行います。
 後半では、情報アクセシビリティの分野における第3次障害者基本計画の実施状況につきまして、間に10分間の休憩を挟んで意見交換を行っていただきます。
 以上でございます。
 なお、これ以降の写真撮影は御遠慮いただきますようお願いいたします。
 以上です。

○石野委員 ありがとうございました。
 前回のワーキング・セッションで委員から御質問等があったと思います。それにつきまして、各省庁からの御説明をいただきたいと思います。
 まず、大河内委員から御質問がありましたセキュリティーとアクセシビリティの両立をするためには、その取り組みについて、あるいは考え方を伺いたいということでしたが、これについて総務省からの御回答をお願いいたします。

○総務省 総務省でございます。先日の大河内委員からのアクセシビリティの関係で、セキュリティー等のことがございました。総務省、私どものほうでお答えできる範囲でお答えさせていただきたいと思います。
 まず、総務省では、高齢者、障害者を含む誰もが、国及び地方公共団体等の公的機関のホームページを利用できますよう、ウェブアクセシビリティに関する日本工業規格でございますJIS X 8341-3に基づき実施すべき手順等を示しました「みんなの公共サイト運用モデル」を作成、公開し、国及び地方公共団体等におけるウェブアクセシビリティ確保の取り組みの支援を行っているところでございます。
 本モデルにおきましては、障害者の皆さんが国及び地方公共団体のホームページ等で提供される情報や機能を支障なく利用が可能となるよう、ウェブアクセシビリティの重要性の理解やその対応の手順等を記載しており、公的機関のウェブアクセシビリティ向上の取り組みの一助になることを期待するところでございます。
 そのようなウェブアクセシビリティに関して、先日のセキュリティーとアクセシビリティの間の優先度合いの御指摘かございました。ただ、ウェブアクセシビリティに限って申し上げますと、先ほど申し上げましたJIS X 8341-3とセキュリティーとの間に相反することはないと考えられておりますので、障害をお持ちの方からも、両者が矛盾するという御意見は聞いていないところでございます。
 なお、大河内委員御指摘の大手金融機関のサービスとか、あるいは個別の分野の事案につきましては、それぞれの分野ごとに事情や対応方法が異なるものと思われます。各分野を所管する各省庁さんや団体が適切に対応する必要があると思われますので、仮に横断的な対応が必要であれば、その際は内閣府や内閣官房さんにおいて対応を検討いただくことが必要ではないかと考えるところでございます。
 もう一点発表したいことがございます。基本計画の実施状況の関係でございます。58ページぐらいに6-(1)-1、情報アクセシビリティの向上に関しまして書かれているところでございますが、前回のワーキング・セッションの第1回におきまして、石川委員長から御質問がございました件でございます。
 ウェブアクセシビリティにつきまして、JISに準拠していると回答している省庁あるいは地公体の数はどうだったかという御質問をいただきました。それについて私のほうから、地方公共団体につきましては都道府県では26年4月1日現在では68.1%に当たる32団体、市町村については52.6%に当たる961団体が準拠を表明していますというようなことを申し上げ、また25年4月1日現在の調査では、都道府県で25団体、市町村では821団体であったので、若干ながら取り組みは進んでいるものではないかなということをまずお答えして、その次に中央省庁についてはどうですかという追加の御質問がございまして、おおむね達成しているのではないのかなということを申し上げてございました。
 まず、ここの中央省庁の数でございますが、あの後、ウェブアクセシビリティ基盤委員会が26年11月現在で調査をした数というのが見つかりまして、ここの中央省庁のところを見ますと、ウェブアクセシビリティ方針を策定、公開済みの団体が40団体中13団体、うちJISへの準拠を表明した団体は7団体でありましたというところで、中央省庁の部分が少し私の認識とは違っていたというところがございますので、ここについて御報告の上、訂正させていただきたいと思います。
 一方、都道府県とか市町村の比率の出典でございますが、私が先ほど申し上げた26年4月1日とか25年4月1日というのは、総務省が公表している「地方自治情報管理概要」からの数値でございます。これは総務省の調査票に対しまして、JIS X 8341-3に準拠したホームページを作成していると回答した自治体の数を取りまとめたものでございます。
 先ほど、私は最後、WAICさんの数値を申し上げましたが、ここの数値は、都道府県はございましたが、残念ながら市町村のレベルではございませんでした。ただ、そもそもとしてこのWAICさんが公表している数値というのは、先ほど申し上げたように、まずはウェブアクセシビリティ方針を策定して公開しているところのうち、準拠していると宣言をしているところ、このような2段階方式で数字がつくられているということで、先日申し上げた総務省の統計のやり方とは若干違っているというところを補足で説明させていただきたいと思いました。
 以上でございます。

○石野委員 ありがとうございました。
 総務省の方に伺いたいのですが、今の御説明について、新しいデータや資料は今お持ちでないでしょうか。もし必要があれば、これから配付していただきたいと思います。
 どうぞ、新谷参考人。

○新谷参考人 参考人で来ています新谷です。
 今の総務省の御説明で、政府インターネットテレビの字幕というのは、JISXのこの規格には恐らくはないと思うんですけれども、政府インターネットテレビで字幕のついているものもあれば、ついていないものもある。これに関する政府方針というのはどうなっているのですか。

○石野委員 では、御説明をお願いいたします。

○総務省 各省庁がやっています動画配信等の字幕のことになるのかなと思いますが、それぞれ方針が出ているか出ていないかというのは私は存じていないのですが、やり方といたしましては、各省、各庁のホームページ管理を担当される方がそれぞれの動画について字幕をつけるということが必要ではないかと考えるところでございます。
 以上です。

○石野委員 ありがとうございます。新谷参考人、それでよろしいでしょうか。
 では、石川委員長、お願いいたします。

○石川委員長 今の件に関連して2点申し上げたいと思います。
 まず、動画への字幕付与もJIS X 8341-3の中でアクセシビリティとして必要であるとされていると理解しています。ただし、準拠といったときに、3つのレベルの準拠が想定されていて、Aが1つのものをシングルAと呼び、Aが2つのものをダブルAと呼び、Aが3つの場合はトリプルAと呼んでいます。それぞれがどこまでを当面目指すかということについては、アクセシビリティ方針ということで、概してダブルAというのを当面の目標とする、あるいは古いアーカイブ、多分利用されることはないであろうというものについては、作業負担かかかる割にはメリットが少ないというので、それは諦めて、新しいもの、あるいは利用者にとって重要と思われるものを優先的にアクセシブルにしていくというように取り組んでいくというのが現実的だし、そういう方針を立ててやっていただければよいかと考えています。
 また、そういった各府省や地方公共団体がどのようなアクセシビリティ方針を立てて、どのような試験を行って、シングルAなりダブルAなり、何を目指しているのかということまで含めた詳細なデータの公開というのは、ウェブアクセシビリティ基盤委員会でも出していらっしゃると思いますし、また総務省さんのほうとしても取りまとめていただきたいと思います。それが1点です。
 もう1点は、JIS X 8341-3準拠についてですけれども、準拠を公開されているかどうかについて、NTTクラルティ社調べですが、12府省のうち5府省です。それから、47都道府県のうち15都道府県がJIS X 8341-3の準拠を表明されています。これは、準拠といっても、トリプルAは多分ないと思いますが、先ほど私が言いましたように、Aだったり、ダブルAだったり、どちらかである可能性があるので、両方を含めて準拠と言っているのだろうと思います。もし違っていたら、後で近藤先生か寺島先生に訂正していただきたいと思います。
 以上です。

○石野委員 運営の流れもありますので、参考人の方には後でまた御発言いただきたいと思います。
 では、次に参ります。前回のセッションで佐藤委員から、基本計画6-(2)-4に関連しまして、電子図書に関する普及に向けた取り組みについての御質問がありました。また、それに関連して、石川委員長のほうからも、電子書籍アクセシビリティガイドラインの成果物が総務省のサイトに公開されているという話がありましたが、それぞれ文部科学省、総務省からの御回答をお願いいたします。
 まず、文部科学省の方、よろしくお願いいたします。

○文部科学省 文部科学省教科書課の武井と申します。よろしくお願いいたします。
 配付しております資料1を御覧いただければと思います。「教科用特定図書等について」という資料でございますけれども、「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律」という法律が平成20年に成立いたしまして、小中高等学校で使用する教科書について、障害の有無にかかわらず十分な教育を受けることができるようにするということで、検定教科書では障害があるために認識することができない児童・生徒のために、文字を大きくした拡大教科書や点字教科書、あるいはその他の障害のある児童・生徒のための教材ということで、検定教科書に代えて使用し得るもの、こういったものを教科用特定図書等と位置付けまして、これらを推進していこうという法律ができたところでございます。
 文部科学省におきましては、ボランティア団体等が教科用特定図書等を作成する際には、教科書発行者から、教科書の電子データを文部科学省に提供していただき、教科用特定図書等を作成するボランティア団体等にその教科書のデジタルデータを提供するということを行っているところでございます。
 また、この資料の下の方に書いてありますけれども、教科用特定図書等の普及促進に関して、「教科書デジタルデータを活用した拡大教科書、音声教材等普及促進プロジェクト」ということで、平成26年度から予算化しまして、27年度においては約1億4,000万円の予算を計上しているところでございます。
 このプロジェクトの内容というのは、発達障害等のある児童・生徒が音声教材にアクセスしやすい環境を整えるために、音声教材を実際に作成していただいている団体に対して、より効率的に音声教材等が作成できるよう、支援するというものでございます。
 また、これらの音声教材について、文部科学省が直接教育委員会、学校関係者に対して普及促進を図るための会議を全国5ブロックにおいて実施しているところでございます。これについても、今年度も実施していく予定でございます。
 また、高等学校における拡大教科書が、義務教育段階に比べてまだまだ普及がされていないという現状に鑑みまして、高等学校における拡大教科書の普及の促進を図っていくための調査研究を実施しているところでございます。
 前回の御質問で頂きました、このような電子教科書といいますか、音声教材については、視覚障害者だけでなく肢体不自由者においても有効であるということから、音声教材等についての普及促進について、どう取り組んでいるかということでございますけれども、今申し上げましたように、各ボランティア団体等が音声教材を作成する過程において、より作成をしやすくするという点で支援をして、普及促進しているというところと、学校現場、教育委員会においても、まだまだ現場の先生方の認識が十分ではないという点もございますので、それらの関係者に対して直接、音声教材が視覚障害者や発達障害だけではなくて、肢体不自由者についても有効に活用されるべきものであるということについて周知徹底をして、さらなる普及促進を図ってまいりたいと考えております。
 以上でございます。

○石野委員 ありがとうございました。
 続きまして、総務省からの御説明をお願いいたします。

○総務省 総務省情報流通振興課です。よろしくお願いいたします。
 前回の会合で石川委員長から御指摘をいただきましたアクセシビリティに配慮した電子書籍のガイドラインの件で御説明をさせていただきます。
 これに関しましては、御存じのとおり、平成25年9月に策定されました障害者基本計画の6-(2)-4の部分に基づきまして、昨年度、私どもの調査研究の費用を使いまして策定をしたものでございます。タイトルが「音声読み上げによるアクセシビリティに対応した電子書籍制作ガイドライン」というものでございます。
 実は、この策定に当たりましては、石川委員長様におかれましては本当にお世話になりました。今後ともよろしくお願いいたします。
 内容でございますけれども、具体的にはアクセシビリティに配慮したということで、音声の読み上げ機能を付した電子書籍のつくり方でございます。具体的には、電子書籍コンテンツの音声の読み上げの対応手順から最後のチェックの手順に至るまでの電子書籍の制作のプロセスにおける音声読み上げ対応の実施工程でありますとか、それを受ける電子書籍のリーダー、今でいうとタブレット、もしくはアマゾンのキンドル、楽天のKoboだったりするのですけれども、このリーダーに求められる機能、もしくは表記方法等を規定させていただいてございます。それで、ことしの4月に対外的に総務省のホームページにおいて発表させていただきましたガイドラインでございます。
 障害者基本計画に記載してあるということで、我々としても非常に重要な政策と考えてございますので、深掘り、横展開を目指して取り組んでまいりたいと考えてございます。
 以上です。

○石野委員 では、竹下委員、お願いします。

○竹下委員 竹下です。
 今の報告に対して質問です。大変申しわけないけれども、電子書籍のガイドラインそのものの内容を理解していないのですが、基本計画にも点訳の点が規定されているわけですけれども、点訳等の促進のためには、出版された書籍が電子書籍ではなくて、電子書籍も含むわけですけれども、印刷物も含めて本来データとしての電子情報があるはずなのですが、これらの電子データを点訳版用に利用するということは、そこには含まれてこないのでしょうか。

○石野委員 それでは、総務省から御回答をお願いします。

○総務省 引き続き、総務省でございます。先々月に発表させていただきましたガイドラインにつきましては、御指摘のとおり、まだ検討には至っていないという状態でございます。
 以上です。

○石野委員 ありがとうございました。
 続きまして、石川委員長のほうから御発言があるようです。お願いいたします。

○石川委員長 手短にしたいと思います。最初の教科用図書の件についてですが、実は教育のワーキング・セッションでも私、この件について御質問いたしまして、第2回目のワーキング・セッション、教育については、所用で出席できないものですから、非常に関連性が高かったので、重ねてお聞きしたいと思いまして発言いたしました。
 多様なニーズに対応した教科書など教材の提供を推進するというのが基本計画の中で示されているところですけれども、現時点で標準拡大教科書とそれ以外の拡大教科書と、それからディスレクシア等学習障害、発達障害の子供たちにとって有効と言われているマルチメディア教科書に対する文科省としてのお取り組みには、かなりはっきりとした温度差があるように感じられます。
 つまり、この書きぶりにもあらわれていますけれども、マルチメディア教科書はボランティアがつくっているところを文科省としても調査・研究を進めていますと、こういう書き方になっているわけです。だけれども、基本計画というのは政府が責任を負って多様なニーズに対応した教科書等の教材の提供を推進するという話なので、ボランティアグループがやっていることを側面から支援するとか、あるいはそれはそれでやっていて、文科省としては今のところ調査・研究をやっていますというのでは不十分ではないかと感じますが、それについての問題意識をお伺いできればと思います。

○石野委員 では、文部科学省のほうからのコメントをいただけますでしょうか。

○文部科学省 文部科学省の教科書課でございます。
 マルチメディアの電子教科書についての取り組みということでございますけれども、文部科学省といたしましては、これらの音声教材について普及していくということは、拡大教科書とともに、非常に重要なことであると考えているところでございます。
 平成26年度から音声教材の制作団体に対して効率的な政策方法等について調査研究事業を委託して実施しているわけでございますけれども、まずはこの事業をしっかりと推進することによって、少しでも音声教材が効率的に制作され、普及の促進が図られるように取り組んでまいりたいと考えているところでございます。
 以上でございます。

○石野委員 関連でしょうか。どうぞ。

○石川委員長 しかし、成果としてボランティアグループがやっていると書いていらっしゃるので、その意義は評価されていることは明らかですよね。その上、調査、開発等は、もう既に何年も続けてやっていらっしゃいますので、結果は出ているのであろうし、その結果に基づいてボランティアグループの活動も御評価をされていると思いますので、文科省が先頭に立って実施する段階に既に来ているのではないかと考えますので、よろしくお願いしたいと思います。
 以上です。

○石野委員 ありがとうございます。
 では、次に進みたいと思います。前回、佐藤委員のほうから御質問がありました基本計画6-(4)-4に関連しまして、不特定多数の方が利用する施設、公共交通機関において緊急事態が発生した際の速やかな情報伝達にかかわる取り組みについて御質問がありました。
 2日前、小笠原において大きな地震が発生しました。幸いにも東日本大震災ほどではありませんでしたが、やはりいつ起こるかわからないのが自然災害です。今か明日かという、そういった不測の事態になりますので、そのときの情報伝達というのは非常に命にかかわる重要な課題になってくると思います。そういうこともあわせて、国土交通省からの御説明をお願いいたします。

○国土交通省 国土交通省でございます。
 前回、佐藤委員から御質問のありました電車、バスなどで緊急事態が起きたとき、速やかに伝達ができるような取り組みということでございますが、関係モード、鉄道、バス、タクシー、船舶、航空関係、緊急時には障害者を含めました利用者に対しましてアナウンスを実施するほか、口頭により、また声かけ等により個別に情報を伝達するという形をとっております。
 また、駅におきましては液晶ディスプレーなどにおきまして、文字等による情報提供を実施、そのほかの公共交通モードにつきましても、筆談具とかコミュニケーションボードを使用するなどによりまして、情報伝達を行っているところでございます。
 簡単でございますが、以上でございます。よろしくお願いいたします。

○石野委員 今の御説明に対して、御質問は。竹下さんのほかにどなたか。お一人だけでしょうか。
 では、竹下委員、お願いします。

○竹下委員 今の説明はちょっと理解し切れていないので、重ねての質問になるのですが、基本計画の6-(4)-2と6-(4)-4を重ねた場合に、その点は少し説明としては不十分ではないのかなと思うのです。
 すなわち、「障害の特性に応じた」という部分、それから「民間事業者の協力を得つつ」という部分が6-(4)-2に指摘されていて、6-(4)-4においては「各府省においては」ということで、情報提供が緊急時において十分認識できる形でということになるはずなのですが、それこそ一昨日の地震でもそうですけれども、そうした現実の場面で障害者の特性、端的に言えば、視覚障害者で言えばテレビであろうが、その他の通信網を使った場合の音声化された、あるいは音声で確認できるアクセスという形での情報提供というのは現実にされているのでしょうか。

○石野委員 関連でしょうか。では、新谷さん、お願いします。

○新谷参考人 この問題は随分前から議論されていますけれども、今、竹下さんからお話がありましたが、新しい技術の活用のことも基本計画をつくるときに議論があって、もっと踏み込んだ段階に来ていると思うのですけれども、まだ前の御説明のとおりということです。
 今、緊急時の問題は、リアルタイムで情報を得るということが非常に大切なので、交通機関の中に私たちが乗っている場合に地震とか火災があった場合に、リアルタイムで聞こえないものはどういうふうに情報を得るかという議論があって、そのときには、竹下さんからありましたように、音声認識技術を活用したリアルタイムの文字表示ぐらいはもうできる技術があるのではないかという議論があったので、それを踏まえた国交省の方針をお伺いしたいと思ったのです。
 それよりも前に、中央防災会議の避難のあり方研究会で、これはもうとっくに議論が出ていたわけですけれども、その辺の中央防災会議の議論と国交省の今の御説明とが情報交換されておられるのかどうか、その辺も疑問を感じたのですけれども、いかがでしょうか。

○石野委員 ほかには。関連でしょうか。では、佐藤委員、お願いします。

○佐藤委員 佐藤です。今、御回答いただき、ありがとうございました。新谷参考人の意見と重なるのですけれども、2点あります。
 1つは、今、ディスプレーでの表示が駅だけのような御回答でした。それはもうちょっと少な過ぎるなと思います。例えばバスとか駅以外の、電車の中もそうですし、競技場とか、いろいろな施設にいるときに緊急なことというのは出てくるわけですので、そこでの表示について、今後どういう方針をお持ちなのかというのが1つ。
 2つ目は、駅のディスプレーに関しても、少し不十分だなと思うことがありました。それは、ダイヤが乱れたときに、アナウンスではどのぐらいおくれていますという表示をするのですけれども、ディスプレーは全然変わらずに正規のディスプレーですから、聞こえない人は全然わからないわけです。せっかくディスプレーがあるのに表記されないということを何回か見ました。ですので、その辺の方針をちゃんと徹底しないと、ディスプレーがあっても生かされていないのではないかなと思いました。
 以上の2点、お願いします。

○石野委員 では、竹下委員、新谷参考人、佐藤委員、お三方から非常に重要な御指摘があったと思いますが、これに対して国土交通省の担当者の方、お願いいたします。

○国土交通省 先ほどの御説明の中で、少し舌足らずなところがあったかもしれません。申しわけございませんでした。
 先ほどの緊急時の利用に関しましての情報伝達というところでございますが、鉄道に関しましては、先ほど佐藤委員のほうからも御発言いただきましたが、駅だけではなくて、車内のほうでもディスプレーによる文字表示等で案内のほうは実施しているところでございますが、まだ十分でないところもあるかと考えております。それにつきましては、今後もどういった形で普及促進が進んでいくのかというところを関係部署等と検討しながら進めてまいりたいと考えております。
 また、リアルタイムでの表示というところでございますが、こちらにつきましても、先ほど新谷参考人のほうから御発言がありましたが、技術的には進んでいるというところでございますので、そういったところも踏まえながら、関係するところと検討を進めてまいりたいと考えております。

○石野委員 ありがとうございました。
 では、次に参考人質疑に入りたいと思います。参考人は、お三方がお見えになっておられます。参考資料をごらんください。
 各ワーキング・セッションのコーディネーター及び参考人のお名前が記述されておりますが、今回は東京大学、近藤武夫様、先ほども発言されました全日本難聴者・中途失聴者団体連合会、新谷友良様、浦和大学、寺島彰様、お三方に当ワーキング・セッションの参考人という形でお越しいただきました。お忙しいところ、今日はありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 前回、参考人お三方からの意見を述べていただきました。今回につきましては、参考人に対して前回の意見陳述を踏まえた上で質疑を行いたいと考えております。お三方、それでよろしいでしょうか。
 では、質疑に入りますが、委員の皆様方で御意見、御質問のある方は挙手をお願いいたします。
 松森委員、どうぞ。

○松森委員 松森です。
 直接参考人に対しての質問というわけではないのですけれども、63ページの6-(3)-1、それから、6-(3)-3などにかかわります。情報アクセシビリティの分野は、情報障害と言われる聴覚障害に深くかかわっておりまして、これまでさまざまな施策が進められてきたのはすばらしいことだと思います。
 一方で、身体障害者手帳を持たない難聴者は約2,000万人程度いると言われています。でも、そうした方々は、日常生活にさまざまな困難を強いられているにもかかわらず、手話通訳者や要約筆記者の派遣サービス等、必要なサービスを受けられていません。こうした制度の谷間にいる難聴者への施策のために、身体障害者手帳を持たない難聴者の状況を把握する実態調査をする必要があります。
 でも、国として難聴者が生活や就労、就学の面でどんなことに困っているのか把握したデータは現在ありませんね。
 参考までに、国連の世界保健機関WHOでは、40デシベルから補聴器の装用を推奨しています。日本では聴力が70デシベル以上でないと身体障害者手帳を取得することができません。この70デシベルというのは、一般的に普通の話し声での会話は難しくて、うるさい場所やたくさんの人がいる場所でのコミュニケーションも相当な困難を伴います。
 例えばこのような場の会議への参加が難しいとか、学校の授業が聞こえにくくて、周りとのコミュニケーションも難しく、非常時には情報から取り残されてしまう可能性もあるということです。
 身体障害者福祉法の基準以下、軽度から中等度の難聴者への施策のためにも、平成27年度に行われる予定の生活のしづらさなどに関する調査において、調査項目の中に難聴者の生活のしづらさに関する調査項目を具体的に加えるなどして、難聴者の情報アクセシビリティの施策に対応できるようにしてほしいと思います。
 恐らく、前回の調査のときにも、全難聴のほうからもこうした提案は出されていたと思います。
 新谷さん、いかがでしょうか。また、厚生労働省のほうからもお話を伺いたいです。

○石野委員 今、松森委員のほうからの御質問がありましたが、意思疎通支援事業のみならず聴覚障害者の現状をさまざまな施策に関して触れられたと思います。
 では、新谷参考人から御発言をお願いいたします。

○新谷参考人 松森委員からのお話は、私ども団体として主張を繰り返していることなので、もう一日も早く国際的な基準に日本も従った障害認定にしていただきたいということで、それは厚生労働省を初めお願いをしておりますので、十分問題のありどころは御理解いただいていると思います。
 聞こえの問題というのは、ゼロか1かではなくて、いろいろな段階を経て、聞こえない、聞こえる、聞こえにくいと、いろいろな問題がありますので、それにやはりきめ細かな対応をいただきたいと思います。
 それで、意思疎通支援事業、コミュニケーションの問題を簡単に考えていただきたいのですけれども、ここの場に50人ぐらいおられると思うのですが、もし50人の中の49人がろう者の方であって会議しているというときには、基本的に皆さんは手話でお話しになっていると思います。そこに1人聞こえる人が来たときに、本当に意思疎通のために切実なコミュニケーション支援を求めるのはどなたでしょうか。恐らく聞こえる方が一番切実にその会議での情報保障を求められると思うのです。
 そういう意味で、コミュニケーションの意思疎通支援といいますか、そういう言い方では常に聴覚障害者がいつもその問題を考えて準備する、これを国に要求したり、都道府県に要求したりということで考えてきたわけですけれども、そうではなくて、聞こえる方も含んだ問題なのだと。だから、聞こえる方が情報保障を求める場面もこれからはどんどんあるのだというような理解に立っていただきますと、いかに今の意思疎通支援の考え方が狭い範囲でコミュニケーションを捉えているのかということが御理解いただけると思います。
 そういう意味で、松森さんの御質問に私たちは明確には答えられないですけれども、必要な施策というのはもうお伝えしておりますので、今はその施策が実現できるのか、実現できないとしたらどういうスケジュールで徐々に改善されていくのかというようなお答えをいただく段階に来ていると思っています。

○石野委員 ありがとうございました。
 では、厚生労働省のほうからお願いします。

○厚生労働省 厚生労働省の自立支援振興室長でございます。御質問、ありがとうございます。非常に重要な御指摘だと思っております。
 公の福祉サービスの仕組みを決めております障害者総合支援法という法律がございますけれども、その総合支援法の施行後3年を目途とした見直しの作業というのを今やっておりまして、聴覚障害の方のサービスの範囲をどうするのかについては大きな論点の一つになっているところでございます。
 現在の仕組みは、障害をお持ちの方、「障害者」は手帳をお持ちの方ということになっておりますので、サービスの対象を広げるということになりますと、障害認定をどうするのかという議論になってまいります。そこは私の責任の及ぶ範囲ではないのですけれども、いろいろと御要望もいただいているということは承知しておりまして、また、実態の把握ということについての御指摘もございました。そこは、私どもの調査でどうするのかということもございますし、皆様方からいろいろとデータもいただいておりますので、そういったデータもまた見せていただいて、どのような形でその御要望に応えていけるのか、今後障害者総合支援法の見直しの議論もしっかりと見据えつつ考えていきたいと思っております。
 以上です。

○石野委員 ありがとうございました。
 全体の討議につきましては、休憩後に行いたいと思いますので、そのときにお願いします。その前に、参考人に対する質疑になりますが、寺島参考人、11時半に所用で退席されると伺っております。参考人がいらっしゃる間にいかがでしょうか。
 では、まず寺島参考人から。

○寺島参考人 寺島です。最後までいます。

○石野委員 大変失礼しました。ありがとうございます。

○寺島参考人 いい機会ですので、話させていただいていいでしょうか。

○石野委員 どうぞ。

○寺島参考人 前回、ぜひ取り組みの視点として7つ欲しいという7つの視点を申し上げましたけれども、その中で一番言いたいのは、障害のある方がこの社会で一緒に過ごしているんだという考え方がどうもまだ社会の中に根づいていないので、それを具体的にどう実現したらいいのかといいうところを政策委員会では具体的な政策を提案していただければありがたいと思っているわけです。
 その一つとして、これから放送とインターネットの融合だとか、そういうことでいろいろなところで規格が検討されていたり、できていたりするのですけれども、実際のところ、規格を決める段階に障害のある人の意見が反映されていないことが多いのですね。例えば、先ほど石川委員長が言われました経済産業省でのガイドラインができていたり、それから総務省関係では例えば最近できましたCM字幕の規格がこれからつくられようとしているとか、そういうところがあるのですけれども、そういったところに障害のある人たちの意見が反映されるような形にしていくべきだなと思うのです。ITUの規格などもそうです。ただ、問題は余りにも規格が多過ぎて、それに全部対応するというのは非常に現実的に難しいところがあるのです。
 ということで、そういった省庁横断的な規格について検討できるような場面が必要なのではないかと、最近切に思っております。例えば、個々に我々が世界、日本の規格についていけるかというと、片手間ではとてもついていけないくらいのスピードで動いています。ですから、全体的な規格を障害のある方たちの視点から検討していけるような、そういう組織があるといいかなと常々思っている次第です。もし可能でしたら、政策委員会などでもこれからの課題にしていただければありがたいと思っています。
 以上です。

○石野委員 ありがとうございました。
 先ほど挙手をされた方。佐藤委員。

○佐藤委員 佐藤です。先ほど、意思疎通支援のお話が出ましたので、それに関連して、新谷参考人と厚労省の方にお聞きしたいと思います。
 先ほど、対象者の話だったのですけれども、意思疎通支援の中身ですね。量と内容の制限、この辺に少し課題があるのではないかなと思っています。地域生活支援事業ですので、内容が自治体によって差があります。
 私が昔いたところは市内しか派遣をしないという限定がありました。ほかの地域では市街への派遣もあると聞きました。あとは、使える量、手話とか要約筆記とか、パソコンテイクとか、そういったものを使える量的な制限もある。例えば、積極的にどんどん社会参加すればするほど使えなくなってしまうという問題が出てくるのではないかと思います。
 ですので、新谷参考人にお聞きしたいのは、全国的にこの地域生活支援事業の中身についてどういう課題があるかということを教えていただきたい。厚労省のほうは、今後、統一した内容、あるいは現状の問題を認識してどういうふうに改善する方向性があるのかというのをお聞かせください。
 以上です。

○石野委員 ありがとうございました。
 では、新谷参考人、また厚労省。まず、新谷参考人のほうからお願いいたします。

○新谷参考人 佐藤さんへのお答えですけれども、今の地域生活支援事業の意思疎通支援事業に関する大きな問題は、先ほど松森さんから御指摘のあったサービスを利用できる人の範囲の問題、これが障害者手帳を持っている人だけに限定されている。私たちの主張は、手帳を持っていない人も利用できないと困るし、それは個人ではなくて団体も利用できないと困る。こういう主張をしています。それが大きな範囲の問題です。
 次は利用目的です。個人の利用目的で、例えばある自治体の実施要項では、民事訴訟の場合に要約筆記者の依頼ができないということを明記している自治体があります。そういうことは信じられない。基本法違反だというような気もするのですけれども、民事の場合には個人で有料で依頼するのか、それとも裁判所が準備するのか、ちょっとよくわかりませんけれども、とにかく外れている。それから、純粋な個人の趣味に類する目的には依頼できない。こういう制限がかかっています。そういう制限は、人の生活全体を考えると、ちょっと考えられない制限なので、この制限を外してほしい。それが2つ目の問題です。
 3つ目の問題は、今の地域生活支援事業というのは、基本的に基礎自治体をベースに組み立てられていますので、複数の区市町村の人が参加するような集まりへの意思疎通支援をどうするのですか、複数の都道府県から参加する人がいる場合の意思疎通支援をどうするのですかということが煮詰まっていない。ある意味では、広域的な派遣事業として、自治体独自の判断でそういうところは認めているということもありますけれども、これは自治体任せになっているという現状があると思います。その辺が大きな課題だと思っております。
 この要望書は厚生労働省のほうにも十分お伝えしておりますので、御検討いただいていると思います。

○石野委員 次は、厚生労働省からの御説明をいただきます。それが終わりましたら、休憩に入ります。
 では、どうぞ。

○厚生労働省 厚生労働省の自立支援振興室長でございます。
 地域生活支援事業で、意思疎通の支援という事業をやらせていただいておりますけれども、量の問題につきましては、これは予算の制約もこれありということでございますので、そこは自治体でいろいろと創意工夫してやっていただくというのが重要かと思っておりますし、私どももできるだけ予算が削減されないようにしっかりと、予算の折衝といいますか、調整を進めていきたいと思っております。
 事業の対象の制約の関係につきましては、いろいろな御指摘もこれまでございましたので、私どもといたしましてもモデル要綱という形で、こういった形でやってくださいということを自治体にお示ししておりますし、意見交換をさせていただく中で、こういう問題がありますということにつきましては、各自治体に、全国会議の場などで注意喚起といいますか、周知を図ることもやらせていただいているところでございます。
 先ほどの議論もございましたけれども、障害者総合支援法の中に位置づけられておりますので、対象者につきましては手帳をお持ちの方ということになっております。そこの対象を広げていくのかどうかということにつきましては、繰り返しになりますが、現在見直しの議論が進んでおりますので、そういったところの議論の推移を踏まえまして、しっかりと考えていきたいと思っております。
 以上です。

○石野委員 では、ただいまより休憩に入りたいと思います。10分間の休憩をとりますので、11時45分に再開いたします。


(休憩)



○石野委員 時間も限られておりますので、先ほどからの議論の継続になりますが、参考人質疑も含めて、全体的な意見交換の時間にしたいと思います。
 先ほどから議論になっておりますのは、1つは情報通信における情報アクセシビリティをどのように向上させていくかという議論、2つ目は意思疎通支援事業のあり方について、生活支援とどのように結びつけていくかという議論、3つ目は情報バリアフリーの問題について、環境整備についての御意見も出てきたかと思います。
 参考人の方も含めてともに議論をお願いしたいと思います。意見がありましたら挙手をお願いします。まず門川委員から、順番に回りたいと思います。では、門川委員、お願いします。

○門川委員 門川です。
 挙手はしておりませんけれども、きょうはコーディネーターという立場もあるのですが、特に前回の第1回目のワーキング・セッションも含めまして、特に余り目立った議論がなされていなかったであろう人的支援の意思疎通の支援について、盲ろう者の立場から発言させていただきます。
 まず、盲ろう者についてですが、全難聴の方からもありましたように、実際、盲ろう者の数というのは、今、公の場で発表されている数は1万数千人から2万人といった大変小さな数字です。ところが、諸外国、特にアメリカに目を向けてみますと、アメリカは全人口3億人の国ですが、3億人に対して盲ろうの人の数、視聴覚二重障害という定義、見えない、見えにくいプラス聞こえない、聞こえにくいという範囲で、さまざまな調査がアメリカの国では行われているようです。それによりますと、100万人から200万人の盲ろう者がいるという調査結果があり、この数字は信用できる数字だと伺っています。これを日本に当てはめると、日本には50万人ほどいてもおかしくないのではないかと、そういう話も聞きます。日本の調査の仕方にいろいろと限界があるのではないかなと。つまり、障害者手帳保持者で数を引き出しているのではないか。そう言うと、実際に手帳を所持している盲ろうの人の数はすごく少ないだろうと思われます。手帳ではなくて、ほかの調査方法を柔軟にやると、数字は大きくなるのではないかと思います。
 実際にはたくさんいるであろう盲ろう者の数が、その盲ろうの人が今一番必要としている支援が情報アクセス、コミュニケーション、移動といった3つの社会的障壁を取り除くこと、そのような支援をしていただく人材の確保です。
 このような一くくりにしまして、人材のことを意思疎通支援者、通訳介助員と我々は呼んでいます。通訳介助員、これが聴覚障害者に対する手話通訳とか要約筆記者と違うところは、通訳介助員というのは盲ろう者に対する支援が手話ベースだけではなくて、音声ベースなどさまざまなコミュニケーションの方法が実際に使われていまして、私もここでは指点字でコミュニケーションなり、通訳を受けるなりしておりますし、手話ベースの人も多いですが、それだけではなくて、さまざまなコミュニケーションの方法を盲ろうの人たちは使っているので、こういった柔軟なコミュニケーションの対応が可能なような通訳介助員が必要なわけです。
 この通訳介助員を派遣する事業を厚生労働省として平成12年からモデル事業として実施していただいておりまして、平成25年からは全国の都道府県において実施するということが義務づけられるようになりまして、今に至っていると思います。最近始まった新しい制度だと考えています。ですが、この制度は全国的に見ますと矛盾が生じていたりします。それは、例えばある地域では利用できたり、また別の地域では利用ができなかったりする地域差があったり、また障害の程度が軽度の人は結構多いですね。軽度の人たちが利用できたり、できなかったりといった地域差があったりします。その地域差はなくしていただきたいと思います。
 また、利用の条件として例えば盲ろうであったり、学校で勉強をしたりするときに、利用することができないという問題があって、各省庁の横断的な対応が求められる問題かなと思うので、ここは就労の場とか、教育の場とか、ほかにも日常生活で横断的な対応が必要な場はあると思うのですが、そういったどこにいても利用ができる、どこに参加しても利用ができる制度、そういう制度にこれからはしていっていただきたいと、我々は強く要望させていただいているところです。
 またアメリカの例になって恐縮ですが、アメリカという国は大きい国ですが、どういうわけかワシントン州のシアトル市は全米で最も盲ろう者が住みやすいところということで大変人気があるのです。その理由を調べたみたところ、盲ろうの人たちには住みやすいまちになっている。盲ろうの人たちには利用しやすい制度がいろいろあるし、交通機関も大変利用がしやすいということで、そこに盲ろう者が行きたがるのです。そういうところがアメリカの中にあるということで、日本でも盲ろう者が住みやすい地域とかそうでない地域が出てくるのかなと思うのですが、どこにいても盲ろう者が住みやすいということが理想なので、ぜひそういう国になってほしいと思います。
 あと、利用時間数にしても地域差があったりしますので、それも含めて今後の課題かとは思います。盲ろうの人は、支援者が隣にいなかったら、先日の小笠原地震のように何が起きたのかわからない。私もちょうどあのころ一人で歩いていたのですが、全然気がつかなかったのです。大分揺れていたようですが、気がつかなかったのですが、歩行の方向修正に苦労していたので、そのころ地震が起こっていたのかな、あのとき誰か隣にいたら教えてもらうことによって、地震が発生していたのだなということが理解できたと思います。また、電車に乗っていても、バスに乗っていても、電光掲示を見たり、音声を聞いたりすることができません。誤解のないように言いますけれども、盲ろう者といいましても、必ずしも誰かが隣にいないといけないとは限らないのです。けれども、大変軽い視覚と聴覚に障害のある盲ろう者もいて、その人たちは単独でも自由に行動することも、移動することも可能なので、そういう人たちのことが忘れられがちですから、そういったこともぜひ取り組みに入れていただきたいと思っています。
 少し長々となってしまいましたが、人的支援ということについて一言言いたかったので、盲ろう者の視点から発言させていただきました。ありがとうございました。

○石野委員 門川委員、ありがとうございました。
 話の中で非常に重要なポイントがありました。問題提起もされました。盲ろう者の福祉の充実だけではなく、さまざまな分野において情報アクセシビリティの充実というものが必要だということ、またあわせて、支えるための環境整備、特に人的支援の育成はどうあるべきか、この確保の問題についても提起されました。ありがとうございました。
 そのほか、伊藤委員。

○伊藤委員 伊藤です。ありがとうございました。先ほどから、松森委員や今の門川委員などが発言されたことの中で、意思疎通の問題で難病での事例が少し関係するかと思いますので、紹介させていただきます。
 やはり人の生活困難度というのは、等級や手帳の有無でサービスの必要性を分けるというのは実は困難というか、そうあってはいけないことなのではないかと思っていたのですが、支援区分の難病認定マニュアルの考え方をそれらの障害にも適用するということにしてはどうかと思います。というのは、この認定マニュアルは、1つは手帳がなくても障害者福祉サービスを受けることができるようになっております。それから、病気ですからできるときとできないときがある。これはときだけではなくて、さまざまに進行したり、あるいは環境、家の中と外では違うとか、さまざまな環境でできるときとできないときがあるのです。認定に当たっては、できるときではなくてできないときがあるということに着目をして認定をするようにと、この厚生労働省がつくった認定マニュアルには書いてあるのです。これを難病だけではなくて、ほかの障害、あるいはこれから障害が重くなりつつあるさまざまな病気、そういう方々のサービス提供にこの考え方を使えば、かなりの方が対象になると思うのです。
 こんなことを言うと、難病のほうが今度は狭められてしまうかもしれない、やぶ蛇になったら困ると思って、言うか言わないか迷っていたのですが、今後そういうように障害者福祉制度そのものの見方を変えていくということに、難病が今度の総合支援法の対象になったということの意味もあるのではないかと思いますので、専門の方々、あるいは参考人、厚生労働省の御意見も伺ってみたいなと思いました。
 以上です。

○石野委員 伊藤委員からの御発言、意思疎通支援事業は非常に広範囲にわたる、そういう面も含めて配慮していただきたいということですが、ほかに関係質問はあるでしょうか。
 では、厚生労働省からお願いいたします。

○厚生労働省 厚生労働省の自立支援振興室長でございます。
 門川先生、御指摘ありがとうございました。大変重要な点を御指摘いただいたと思っております。確かにニーズをお持ちの方の人数の把握といいますか、実態の把握というのは私どもでも十分できておりませんで、今は障害をお持ちの方の数というのは推計値によって全体を把握しているというところでございます。盲ろうの方の人数の把握につきましても、盲ろう者協会さんの御協力をいただきながら、どれくらいの方がいらっしゃるのかといったことを把握している状況でございますので、いろいろと御指導をいただきながら、実態把握に努めていきたいと思っているところでございます。
 また、人材の養成についても御指摘をいただきました。しっかりと支援を行える方を養成していくということは本当に重要なことだと思っておりまして、御発言の中にもございましたけれども、研修のプログラムにつきまして、盲ろう者協会で研究していただいて、それを自治体に展開していくというようなことをやらせていただいております。まだまだ十分な取り組みができていない自治体もあるかもしれませんが、私どもも各自治体に要請をしながら、しっかりと定着していくように努めてまいりたいと考えております。
 何分、全体予算の範囲内でということでございますので、そこは自治体の創意工夫に期待するところもあるわけでございますけれども、優先順位をどのようにつけるのかという各自治体の実情もございます。必要な方に必要なサービスがちゃんと届くということが何よりも重要でございますので、そういった制度の趣旨につきましては、今後もしっかりと自治体に対して周知をして、協力をお願いしていきたいと考えております。
 続きまして、難病の関係で御質問、御指摘をいただきました。障害者総合支援法のサービスの対象の範囲につきまして、難病の方にもその範囲が広がっております。難病の方で手帳をお持ちの方につきましては、身体障害者ということでサービスは従前より受けておられたわけでございますけれども、不勉強で恐縮ですが、難病の方は状態像が一定ではなく、いろいろと変化されるということで、なかなか手帳を取得できない方もいらっしゃるということでございます。これは法律改正いたしまして、難病の範囲を決めまして、そういった方については障害者総合支援法に基づくサービス提供をしましょうということで法律が改正されたと認識しております。
 サービス提供の範囲をどう広げていくかというのは、法律改正事項になると思いますので、国民的な議論といいますか、当然そこには財源も必要になってまいりますので、そういった議論を踏まえて検討していくということになるかと思います。
 これも現在、障害者総合支援法の見直しの議論がされており、そういった中で御意見も出てくると思いますので、私どもも議論の推移を見ながら対応していきたいと考えております。
 以上でございます。

○石野委員 ありがとうございました。
 では、関連して、近藤参考人からも人的支援のことにつきまして前回も言及されたと思いますが、いかがでしょうか。

○近藤参考人 近藤です。
 私は人的支援については幾つか申し上げたいことがあるのですけれども、それを可能にするという意味で、情報アクセシビリティに関しては、前回、いわゆる情報アクセシビリティに関する方針を明示していただきたいということと、それから担当者と責任者をしっかりと設定することが必要であるということを申し上げさせていただきました。
 まず、先ほど文科省のタケイさんからと総務省の方から御回答をいただいた件について、これに関係して1点ずつ申し上げたいのですけれども、まず教科書等の教材のアクセシビリティに関してです。
 私も、アクセシブルな教科書をつくるという事業を私のところで行っていますので、よくわかるのですけれども、まず日本の教育分野においては情報アクセシビリティという概念はほとんど知られていないと言っていいと思います。特に通常の学校の中では、ほとんど全くと言っていいほど知られていません。例えば、学習障害など印刷物を読むことに困難がある発達障害の例を挙げさせていただきますけれども、平成24年の文科省の統計では、発達障害が疑われる児童生徒が通常の教室に6.5%存在するということが知られています。
 そう考えると、インクルーシブ教育のためには、通常級でも当然情報アクセシビリティへの対応、つまり情報保障が必要なのですが、そうした必要性があるという認識は通常級では持たれていないと言っていいと思います。特別な教育的指導は行っていますよという声はありそうですけれども、皆さん御存じのとおり、アクセシビリティを保障する、つまり情報保障を行うということと、特別な教育的指導を行うということは実際には異なっています。
 こうした状況から、現在のところ、学校や教育委員会の側が教科書や教材のアクセシビリティを保障しなくてはならないという認識はほとんどないと言っていいと思います。自分の職責であると考えている担当者を置いているケースは少ないと思います。
 教科用特定図書等ができたということは、非常に喜ばしいことだと思いますし、そうしたものが制度的に存在しているということはすばらしいことだと思いますが、その存在を学校や自治体が知らず、また活用方法もわからないという現状があると言っていいと思います。
 その点でも、前回私が述べさせていただいたような、自治体等による情報アクセシビリティに関する方針の明示と、担当者、責任者の設定というものは不可欠であると私は考えています。
 また、これは初等、中等教育については特有の問題としてあることだと思うのですけれども、例えば先ほど挙げましたような発達障害等による読み書きの困難のある生徒や親自身ですが、彼らはそうした困難があること自体を認識していないケースというの方が実際には多数派であると言えます。
 その理由は、学校では、例えばWISCやWAISという知能検査が一般的にアセスメントとして使用されることが一般的ですが、WISCやWAISでは、読み書きの困難ことは直接的にはわからないのです。やはり読み書きの困難についてのアセスメントを行わないといけないのですけれども、こうしたアセスメントは一般的には行われていません。そのため、本人にはニーズがあるのですけれども、本人はわからない自分が悪い、自分のいわゆる頭が悪いことが自分の問題であると思っていて、そのニーズを声に出して自分から言うということが難しい状況があります。つまり、ニーズはあっても、本人から声を上げられないという人がかなり潜在しているということです。このことは、米国や英国等、他国の障害のある児童生徒数の統計と、日本のそうした困難のある子供の数の統計を比較して、日本での学習障害のある児童生徒の数が極端に少ないことからも、明らかであると思います。
 そこで、解決に向けた取り組みとしては、私のほうからは意見が3点あります。1つ目は教育的なアセスメントを行って、情報保障のニーズを正しく把握すること。2つ目ですが、教科書とそれ以外の副教材、試験問題、解答用紙、それから、教師の口頭指示なども含まれますが、そうした情報へのアクセシビリティを保障すること。3つ目に、通常の教育カリキュラムの指導の中で、アクセシビリティを確保する方法なり教材を用いていくことを原則とすること。こうした一連の情報保障の流れというのが教育の中でも必要です。こうしたものが文科省の教育施策の中につくられていくということが不可欠であると思っています。
 長くなって申しわけないですが、もう一点だけ、先ほど総務省のサカモトさんからの御意見について、アクセシブルな電子書籍に関しての意見を申し添えさせていただきたいのですが。まず、書籍が最初から規格などの何らかの基準を守ることで、通常の印刷物を利用することが難しい人にとって、アクセシブルに最初からなっているということは、何より重要であると私も思います。その点で、電子書籍がアクセシブルなデータの形式をとることが当然のこととなり、それらが流通することには、私も大きく期待を寄せています。
 しかしながら、実際には、例えば私がいるような大学であるとか、もしくは通常の学校、そういったところでは、ボランティア団体などの力もかりながら、個々の学校や事業者が個々の生徒たち、学生たちの個別のニーズに応じて、紙の書籍等の電子化をするなどの対応を行っています。
 そして、こうしたニーズというのは間違いなく残り続けると思います。しかし、実際に電子化を行おうと思うと、現在大きな壁として、著作権等の保護によってデータを入手することがかなり難しいという壁があります。
 例えば、学校のことでいうと、アクセシブルなものというのは、検定教科書については教科用の特定図書等というのがあるので、次第に音声教材や拡大教科書などが出てきていますけれども、実際には学校では副教材があります。副教材、つまりこれは教科用特定図書でカバーされないものです。それから、大学での教科書であったり、教育や研究活動に利用される資料として使用される書籍や資料というものは、やはり各自の学校等が情報保障をしていかなければいけないものです。それから、試験問題や解答用紙もそうしたものに当たります。
 このように、現場現場でさまざまな素材をアクセス可能となるように、学校等が処理をしていかなければならないという現状があります。そのためには、学校や支援にかかわる団体等がデータを法にかなった形で入手するための枠組みの設定が必要ですが、今存在していない。なので、こうした枠組みというのはまず不可欠であると考えます。
 これも、最初の私が提言させていただいたことに戻るのですけれども、情報アクセシビリティに対する、例えば出版社等を含めた各事業所も対応方針と、あと担当者と責任者が明確になっていれば、いわゆる一から学校やいろいろなボランティア団体が全てつくるということではなくて、例えば権利制限された形で、著作権保障された形でデータを入手するという枠組みがあれば、そのニーズに対応してもらう窓口というのができると考えられます。
 情報保障においては、例外や個別ニーズというのは常に存在するので、こうした運用面のサポートは不可欠であると思いますので、いわゆるアクセシブルな書籍の電子データの形式ということ以外に、こうした方針と責任者を明示するような仕組みの実現というのをお願いしておきたいと思います。
 以上です。

○石野委員 ありがとうございました。
 私は常日ごろ、情報アクセシビリティをどのように向上させたらいいかという、非常にわかりやすいヒントを近藤参考人からいただいたと思います。ありがとうございました。
 では、大河内委員からお手が挙がったと思います。

○大河内委員 近藤参考人にお尋ねすることでして、今かなりお答えいただいた範囲のことでもあるのですけれども、今、書籍の電子化が行われ始めていて、特に書籍というのは一部の障害を持った人たちにはアクセスしにくいものだった媒体ですけれども、それが電子化という流れの中で、特別な加工を施さなくてもアクセスできるようになってきている現状があります。それを読むための情報端末のUD化と多様化によって、例えば門川委員のような盲ろうの人でも、一般の電子書籍が利用できる準備が現状は整ってきていると思っていますが、現状は余り利用が促進されていないという部分、私自身もそういうものを入手したいと思っても入手ができないという実情があります。教科書からもう少し広げていただいて、電子書籍の出版と利用で、現状と今後の課題について情報提供を近藤参考人からお願いしたいと思っております。
 以上です。

○石野委員 では、近藤参考人、お願いいたします。

○近藤参考人 今いただいた御意見については、私が後半のほうでお話しさせていただいたことが少しかかわるのではないかと考えています。
 例えば、ユーザーサイドの視点から見てみると、どの書籍がアクセシブルで、どの書籍がアクセシブルでないのかというのは、ほぼわかり得ない状況になっていると思います。例えば電子データとして販売されているものに関しても、それがアクセシビリティについてどのような配慮が行われているのかというのは、購入してみないとわからないというのが現状であると思います。
 なので、先ほど大河内委員がおっしゃったような、ユーザーにとって、例えばこれがアクセシブルかどうかということを判断するためには、まず購入してみないとわからないというのが大きな壁であると私は思っています。
 先ほど後半のほうで申し上げさせていただいたことは、データも含むのですけれども、紙の書籍であっても、ユーザーからしてみると、出版社の誰かに聞いてみないと、果たしてアクセシブルなデータが用意されているのか、それとも用意されていないために、例えば図書館であるとか、もしくはその他、何らかのボランティア団体等の手をかりて、アクセシブルな形になるように変換作業をしてもらわなければならないのかどうか、そのこともわからないというのが現状であると思います。
 その点からいいますと、やはり先ほど申し上げたような、出版社等、もしくは電子的な書籍データを提供しているところも含めて、印刷物も含めて、対応の窓口となってくださるようなところが存在する必要が現時点ではあるのではないかと思います。
 データの形式そのものでいうと、例えばEPUBという標準的な電子データの形式がありますけれども、ああした電子データになっていれば比較的アクセシブルである確率は高いです。確率は高いのですけれども、やはりそれは実際にはよくわからない。例えば、EPUBデータを開いてみると、中身は全部画像データで、音声読み上げはできなかったということもあったりしますので、現時点では運用面と、あとは個々の教科書や書籍の電子データのアクセシビリティを高めていくという、その2つが車の両輪として必要なのではないかと私は考えています。
 以上です。

○石野委員 時間が残り10分になってまいりました。御意見のある方は挙手をしていただけますでしょうか。5人の方が手を挙げられました。では、順番に、まず石川委員長からお願いいたします。

○石川委員長 それでは2分で頑張ります。
 まず、アクセシブルな電子書籍を提供している主要なストアとしては、キンドルストアとKoboストアがありますが、先ほどのお話にあったように、全てのものがアクセシブルではないので明示していただきたいのです。つまり、リフロー型なのか、固定型なのかという情報が重要です。リフローならアクセシブル、固定ならアクセシブルでないということがほぼいえます。だから購入前にわかるように明示していただきたい。
 ただし、そのことを指導監督する権限というのがどこかの府省にあるのかどうかという問題がわからないので、教えていただきたい点です。これは差別解消法の対応指針にもかかわる話です。
 それからもう一つ、同系的な問題ですけれども、紙のほうを視覚障害者が購入したけれども、私は目が見えないので、このままでは読めないので、データを提供してくださいというのは合理的配慮要求のわかりやすい例だと思うのですが、現状は努力義務ですので、出版社は拒んでも違法にはならないのでしょう。ですが、これに対しても対応指針を示すような立場にある府省というのは存在しているのかどうか。出版という業界に対して監督するということがそもそもなじむ話であったり、実際にそういうことがあるかどうかということですね。
 この2点は同系的な問題なのですが、そもそも差別解消法ではあらゆる業種に対して対応指針を出すことができるかのような前提で、そういうたてつけでつくられているように思うのですが、そうなのでしょうかということです。だから、各事業者が行っている事業のある側面に対して、ある法的な根拠をもって監督したり、指導したり、あるいは認可したり、免許を与えたり、そういう権限を持つ府省はあるにしても、あらゆる業界に対して、全体を丸ごと監督するとか、指導するという権限はないのではないかということについて確認したい。差別解消法ではうまく対応できているのだろうかということを問題提起させてください。
 もう一点だけ。数年前までネット上ではたくさんのテレビ番組表がありましたが、今はほとんどありません。なぜないかというと、ほとんどのデジタルテレビや録画機には電子番組表があり、それを使って録画予約をすれば簡単にできるので、必要がなくなったからだと思います。
 この電子番組表は端末まで文字情報が来ているので、音声での読み上げを実装することができます。実際、パナソニック社と三菱電機社のテレビ及び録画機は、音声で電子番組表を読むことができます。ほかにもあるかもしれません。ただ、それはあくまで自主的に行われているわけでして、これまではそれはベストプラクティスと呼んでよいものであったと思いますけれども、では電子番組表をそういう規格にした理由というのは、アクセシビリティへの配慮ということがあったからなのかというと、多分そうではなくて、手元で番組を検索したいというニーズに対応するには、文字情報まで送らないとできないからだということだと思います。つまり、偶然、図らずも音声での読み上げ、電子番組表のアクセシビリティは可能になったにすぎない。
 そこで、先ほど寺島参考人がおっしゃったような、今後、情報通信系の規格を策定していくときには、アクセシビリティについての観点を抜きにしてそれをつくっていくということはもはやできないはずだと言えると思います。権利条約を批准した我が国はできないはずだと。この点について、十分な理解の徹底を図っていく必要があると考えます。
 以上です。

○石野委員 ありがとうございました。今、お話がありました合理的配慮の提供に関する話になりますが、今後、7月、8月だと思いますが、各省庁におきまして、来年度、障害者差別解消法スタートに向けた対応指針などについての議論が大詰めになると思います。こういう部分も含めて議論ができればと思います。
 では、新谷参考人、お願いします。

○新谷参考人 新谷です。
 このワーキング・セッションで、基本計画の5の生活環境と6の情報アクセシビリティが別のワーキング・セッションで議論されているので非常に残念なのですけれども、前回のセッションでも申し上げましたように、障害、特に聴覚障害でも中程度の障害者、それから多分弱視の方も同じような問題を持っておられるのですけれども、環境の整備で改善できる部分が随分あるわけです。
 きょうは、残念ながら、ここはループの準備をいただいていませんので、私は普通の耳で聞いている限りは皆さんの会話をほとんど理解できていない。音がまざってだめなのですけれども、これがループを入れるとはっきり聞こえるというのは、この部屋の遮音効果が高くて、ほとんど雑音がなければ、私は聞き取れる状態にあるわけです。そういう中等度、それから軽度の難聴者というのは物すごくいる。それから、弱視の方も、恐らく明るい環境であればかなり見えるという弱視の方が物すごく多いのではないかと思います。
 だから、情報アクセシビリティのための環境ということで、残念ながら、国土交通省が御担当かもわかりませんけれども、この生活環境の施設、建物のガイドラインのところに環境問題としての騒音の問題はあったのかもわかりませんが、その基本計画の中には騒音の問題は全く触れられていない。それを議論のときに取り上げなかったのは非常に残念です。
 それで、いろいろな文献なども調べたのですけれども、例えばノルウェーは2009年から2012年まで、聞こえの障害を解消するためのノルウェージアン プロジェクトというのを実施しています。2012年の国際難聴者会議でノルウェーの厚生大臣がその報告を行い、最後に聴覚障害のための最大の施策は音の環境の改善なのだと。いろいろな施策はあるけれども、環境の改善というのが大きな効果を持ったものだという説明があったのです。
 今、国土交通省のほうでいろいろ建物、施設のガイドラインをつくられていますけれども、全部の建物に遮音効果をつけると大変なお金がかかると思いますが、少なくとも幾つかの会議施設は、これは特別な遮音効果をやっているので聴覚障害者は利用しやすくなりますよと、そういうガイドラインを整備すれば、恐らくいろいろなことの解決の幅は大きく広がってくると思います。
 同じことは、自治体ベースの、例えば東京都のガイドラインの中に、会議施設には磁気ループを埋めてほしいとか、そういう要望は繰り返しておりますけれども、中央の基本計画レベルでぜひそういう施策も織り込んで、もっともっとも言えば、そういう磁気ループに至る前の建物構造そのものの規格にぜひそういう問題を反映していただきたいと思います。
 以上です。

○石野委員 ありがとうございました。あと二、三分しかありませんが、松森委員、佐藤委員、お二人だけということで。何か省庁のほうからの御説明はあるでしょうか。大丈夫ですか。
 では、松森さんお願いします。

○松森委員 松森です。
 私からは、障害がある女性という立場で1つ、これは意思疎通支援事業と生活支援にかかわります。女性の相談窓口に関する情報アクセシビリティも課題として検討する必要があります。女性の相談窓口に聴覚言語障害がある人も来ることを想定して、電話だけではなく、ファクスやメールなどで連絡できるようにすること、また面談のときには手話や筆談等、障害者本人の希望に沿うようにできることが必要ですが、そうした施策を積極的に進めることは考えられているのかどうか。
 質問の理由は、内閣府男女共同参画局のホームページには、女性問題に関する相談窓口の一覧表があって、全国の相談窓口が紹介されています。例えば、障害のある女性が性的被害やドメスティックバイオレンスについて女性の立場で相談をしたいと思っても、障害者のことは障害者福祉の窓口にとたらい回しをされることが多くあります。でも、被害者は相談をしていることを周りの人に知られたら危険ということもありまして、障害者福祉の窓口は適切ではない場合もあります。障害のある女性も安全に安心して連絡し、相談できることが必要です。
 参考までに、DPI女性障害者ネットワークが障害女性を対象に2011年に実施した、障害のある女性の複合差別実態調査では、回答者87名のうち35%が性的被害を経験しているという結果があります。この調査では、現在もなお障害のある女性の多くが被害を受けているにもかかわらず、性的被害を受けた障害女性に対する支援制度、相談制度が整っていないから、問題が潜在化しているという可能性が示唆されています。
 以上です。

○石野委員 ありがとうございました。女性の視点からの御発言ですね。では、佐藤委員、お願いします。

○佐藤委員 佐藤です。2点質問させてください。
 1点目は、マラケシュ条約の批准と著作権法の改正について、今後の見通しを教えていただきたいということです。
 2点目は、マラケシュ条約は対象者を視覚障害だけに限定せずに、上肢に障害がある人とか、さまざまな人を含めているわけですけれども、今後、読書保障についてどの省庁でどのようにやられていくのかということを教えてください。
 この2点はどの省庁かわからなかったので、次回、政策委員会のときに資料で出していただいても結構です。ありがとうございます。

○石野委員 今の御発言は多分文化庁の担当ではないかと思いますが、どなたかおられますでしょうか。いらっしゃいませんか。では、後ほど事務局を通して回答したいと思います。
 では、以上となりますが、私、コーディネーターとして思っていることが1つございます。障害者基本計画は第3次になりますが、1次、2次におきましては情報アクセシビリティという分野はありませんでした。情報バリアフリーが中心に議論がされず、また余り深まらなかったのではないかと思います。今回第3次基本計画におきまして初めて情報アクセシビリティという分野が盛り込まれました。
 いろいろな議論がありましたように、今後さらに議論を深めていく必要があると思います。障害者の権利条約第3条、第9条、第21条、これは情報アクセシビリティが関係します。
 東京オリンピック・パラリンピックも目前にひかえています。情報アクセシビリティについても議論をしていると聞いております。あわせて、今後とも政策委員会としても議論を進め、またその施策に盛り込めればと考えております。
 今回第2回目のワーキング・セッションを終了いたします。長時間、ありがとうございました。御協力に感謝いたします。
 最後に、事務局のほうから加藤参事官、今後の予定につきましてお願いします。

○加藤参事官 事務局でございます。
 お手元の参考資料2をご覧ください。この資料には今後のワーキング・セッションと障害者政策委員会の予定を記載しております。今、石野委員の御発言のとおり、ワーキング・セッションIVでの議論はこれで終了し、前回と今回の議論を受けまして、事務局においてワーキング・セッションの議論の整理、たたき台を作成します。これをコーディネーターに御確認いただき、第23回の障害者政策委員会にコーディネーターから提示いただいて、ワーキング・セッションの議論の概要を御報告いただくことになります。
 第23回の障害者政策委員会につきましては、7月以降を予定しているところでございまして、日時、会場につきまして、決まり次第、事務局のほうから御連絡差し上げます。
 また、次回第22回の障害者政策委員会につきましては、6月29日月曜日、13時30分開始でございます。場所は、この建物ではなくて、官邸の近くの8号館の1階の講堂を予定しております。
 事務局からは以上でございます。

○石野委員 では、これをもちまして、政策委員会ワーキング・セッション、アクセシビリティの議論を終了いたします。