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障害者施策 サイトマップ
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障害者の社会参加促進等に関する国際比較調査の概要



第1 調査対象等

1 調査の目的

 日本、アメリカ及びドイツの3カ国における「障害者の社会参加推進等に関する国際比較分析」を行い、今後の障害者施策の推進に資することを目的とする。

2 調査対象

(1)対象国:日本、ドイツ、アメリカ
(2)調査対象者:歳以上の男女

3 調査事項

(1)障害についての認識(1〜3)
(2)障害に対する意識(4〜8)
(3)支援、交流活動の状況(9、10)
(4)障害のある人の社会参加状況の認識(11)
(5)障害者施策への意識、期待(12〜16)

4 標本数
日本1,093サンプル
ドイツ1,001サンプル
アメリカ1,001サンプル

※日本では、層化二段無作為抽出法、ドイツでは無作為二段抽出(地域・人口規模別二段抽出)乱数ダイヤル法、アメリカでは割当て抽出法により、それぞれ1,000サンプル回収を原則として調査を行った。

5 調査時期

  平成19年2〜3月


第2 結果概要

1.障害に関する言葉の周知

次にあげる、障害のある人々に関連する言葉のうち、内容についてご存知のものをすべて選び、番号に○をつけてください。(○はいくつでも)


(図表1)障害に関する言葉の周知
図表1 障害に関する言葉の周知

 障害に関する言葉を10項目あげて周知度(知っているかどうか)を聞いたところ、日本では、「手話」が97.7%と最も高く、以下「点字」(94.1%)、「パラリンピック」(94.0%)、「バリアフリー」(93.3%)の順である。ドイツは、「点字」(97.1%)、「手話」(94.6%)、「リハビリテーション」(94.5%)、「グループホーム」(89.2%)、「パラリンピック」(85.9%)の順となっている。一方、アメリカでは「スペシャルオリンピックス」が93.1%と他の国に比べて際立って高く、以下「手話」(86.6%)、「リハビリテーション」(81.0%)、「点字」(80.0%)の順となっている。


2.自国の人口に占める障害のある人の割合

何らかの障害のある人は、自国の人口の中で、どの位の割合を占めているとあなたは思いますか。次のうち、あてはまるものを1つだけ選び、番号に○をつけてください。(○はひとつだけ)


(図表2)自国の人口に占める障害のある人の割合
図表2 自国の人口に占める障害のある人の割合

 なお、日本では、4割強が自国の人口に占める障害のある人の割合を10%未満(「1%未満」「1〜5%未満」「5〜10%未満」)であると回答しており、また、「わからない」という回答する者も15.6%と多い。一方、ドイツ、アメリカでは、「30%以上」と回答する者が2割強(独20.2%、米22.3%)で、日本と差がみられた。
 日本の障害者人口は、655万9,000人[1]と推計され、人口の約5%を占め、一方、ドイツの障害者人口は860万人(人口の約10%)[2]、アメリカでは5,120万人(人口の約18%)[3]とされている。


3.身近な障害のある人の有無

これまであなたの身近に、何らかの障害のある人がいたことはありますか。次のうち、あてはまるものをすべて選び、番号に○をつけてください。(○はいくつでも)


(図表3)身近な障害のある人の有無
図表3 身近な障害のある人の有無

 日本では、「学校」(37.8%)、「家族、親族」(35.6%)、「隣近所」(34.3%)、「自分の職場、仕事関係」(33.9%)という回答が、いずれも3割台でほぼ同率である。「身近にいたことはない」と回答した者は、14.5%であった。
 ドイツでは、「家族、親族」(41.3%)、「自分の職場、仕事関係」(41.0%)、「趣味仲間、友人」(39.7%)、「隣近所」(39.3%)が4割前後である。一方、アメリカでは、「家族、親族」が60.0%と際立って多く、次いで「趣味仲間、友人」が53.1%と、他の2か国より多くなっている。
 「自分自身」と言う回答は、日本で3.3%、ドイツで10.1%、アメリカで19.8%と、前述の各国の障害者人口割合(日:約5%、独:約10%、米約18%)に近似している。


4.障害のある人の生活

障害のある人は、障害のない人と同じような生活を送っていると思いますか。それともそうは思いませんか。次のうち、あてはまるものを1つだけ選び、番号に○をつけてください。(○はひとつだけ)


(図表4)障害のある人の生活
図表4 障害のある人の生活

 障害のある人はない人と同じような生活を送っているか、という問いかけに対して、日本では「そう思わない」(46.5%)と回答した者が5割近くで、「あまりそう思わない」者(28.4%)を合わせると4人に3人は、同じような生活を送っているとは『思わない』と答えている。一方、ドイツでは「そう思う」(12.9%)と答えた者が1割強で、「ややそう思う」(69.0%)という者と合わせると、同じような生活を送っていると『思う』者が8割強である。
 アメリカは、『そう思う』(「そう思う」+「ややそう思う」)という者が53.7%で、同じような生活を送っているとは『思わない』者(45.4%)と意見が拮抗し、3か国の違いが回答に顕著に表れた設問といえる。


5.障害のある人を前にした時の意識

何らかの障害のある人を前にした時、あなたはどのように感じますか。次のうち、あてはまるものを1つだけ選び、番号に○をつけてください。(○はひとつだけ)


(図表5)障害のある人を前にした時の意識
図表5 障害のある人を前にした時の意識

 何らかの障害のある人を前にした時の意識について、日本では、「非常に意識する」(8.3%)という者が1割弱で、「少しは意識する」(52.3%)を合わせると、6割は『意識』して接すると回答している。これに対して、ドイツでは、「あまり意識せず接する」(53.5%)が過半数で最も多く、「全く意識せず気軽に接する」者は33.9%である。また、アメリカでは、半数が「全く意識せず気軽に接する」(50.0%)と回答しており、ドイツ、アメリカともに『意識せず接する』が9割近くを占める。


6.障害のある人を前にした時の周囲の意識

では、あなた以外の周囲の人は、何らかの障害のある人を前にした時、どのように感じると思いますか。次のうち、あてはまるものを1つだけ選び、番号に○をつけてください。(○はひとつだけ)


(図表6)障害のある人を前にした時の周囲の意識
図表6 障害のある人を前にした時の周囲の意識

 周囲の人が障害のある人を前にした時の意識について、日本では、「少しは意識する」(55.5%)と答えた者が6割弱で、「非常に意識する」(14.5%)を合わせると、周囲の人は『意識する』という回答は7割である。ドイツ、アメリカも同様に、『意識する』という者が7割を超え、自分自身は意識しないが、周囲の人は意識するという見方をしている。


7.障害のある人への意識

次のような人が、車椅子に乗っていたり、視覚や聴覚に障害があったりしたとしたら、あなたはどのように感じますか。次のうち、それぞれについて、あてはまるものを1つずつ選び、番号に○をつけてください。(○はひとつずつ)


(図表7)障害のある人への意識
図表7 障害のある人への意識

 “職場の上司・同僚”“近所の人”“買い物に行く店の店員”“政治家、芸術家など有名人”に障害がある場合の意識を、それぞれについて聞いた。
 日本では、4項目とも『意識せず接する』が5割前後であった。ドイツとアメリカでは4項目とも『意識せず接する』が9割前後である。アメリカでは、“近所の人”に関して、「全く意識せず接する」(77.1%)という者が8割近くを占めているが、いずれの国でも、相手による接し方に大きな違いはみられなかった。


8.精神障害のある人の近隣への転居

精神に障害のある人が、あなたのご近所に暮らすことになったとします。あなたはどのように感じますか。次のうち、あてはまるものを1つだけ選び、番号に○をつけてください。(○はひとつだけ)


(図表8)精神障害のある人の近隣への転居
図表8 精神障害のある人の近隣への転居

 精神に障害のある人の近隣への転居について、日本では、「非常に意識する」(25.5%)と「少しは意識する」者(47.3%)を合わせると、7割以上が『意識する』と答えている。これに対して、ドイツとアメリカでは、「全く意識せず気軽に接する」(独37.8%、米38.0%)がともに4割弱で、7割以上は、近隣の精神に障害のある人と『意識せず接する』と答えている。


9.障害のある人の支援・交流活動への参加経験

今までに、障害のある人々の手助けをしたり、ボランティアや交流活動をしたりしたことがありますか。あなたがしたことがあるものを、次のうちからすべて選び、番号に○をつけてください。(○はいくつでも)


(図表9)障害のある人の支援・交流活動への参加経験
図表9 障害のある人の支援・交流活動への参加経験

 障害のある人々の手助けや、ボランティアや交流活動の経験としては、日本では「席をゆずる、横断歩道や階段で手助けをする」(52.2%)が5割強で最も多く、次いで「一緒に遊ぶ」(22.2%)、「相談相手、話し相手」(18.6%)と続くが、「したことはない」(31.3%)という回答も3割程度ある。
 ドイツでは、「席をゆずる、横断歩道や階段で手助けをする」(78.6%)と「相談相手、話し相手」(76.5%)が7割台で最も多く、次いで「寄付、経済的な援助」(62.2%)が6割台である。
 一方、アメリカでは、「相談相手、話し相手」(79.7%)と「寄付、経済的な援助」(79.1%)がほぼ8割弱で最も多く、「席をゆずる、横断歩道や階段で手助けをする」が65.3%である。ドイツ、アメリカで「したことはない」者(独2.6%、米3.2%)は、3%前後である。
 3か国の中で、特にアメリカで「寄付、経済的な援助」(日17.9%、独62.2%、米79.1%)、「募金活動、寄付集め」(日10.1%、独18.7%、米50.5%)、「NPO(非営利団体)、ボランティア団体への参加、運営の手伝い」(日5.2%、独32.4%、米41.1%)と回答した者が多く、寄付やボランティアを取り巻く文化的違いを反映していると考えられる。


10.今後の活動意向

あなたは、今後、障害のある人々の手助けをしたり、ボランティアや交流活動をしたりしたいと思いますか。次のうち、あてはまるものを1つだけ選び、番号に○をつけてください。(○はひとつだけ)


(図表10)今後の活動意向
図表10 今後の活動意向

 回答者全員に、今後の支援・交流活動への参加意向について聞いたところ、日本では「機会があればそうしたい」と回答した者が65.7%であった。ドイツでは、「機会があればそうしたい」(72.7%)が7割強、アメリカ(63.7%)では6割強である。
 一方、日本では、「そうしたくない」が3.7%で、「わからない」(30.6%)が約3割であるが、ドイツとアメリカでは「そうしたくない」(独25.4%、米32.3%)が3割前後で、日本とは対照的である。


11.障害のある人への配慮が望ましいものや場所

あなたは、日常生活の中で接するものや場所について、もう少し工夫や配慮があれば、障害のある人々にも利用しやすくなるのに、と思ったことがありますか。次のうち、そう思うものをすべて選び、番号に○をつけてください。(○はいくつでも)


(図表11)障害のある人への配慮が望ましいものや場所
図表11 障害のある人への配慮が望ましいものや場所

 障害のある人への配慮が望ましいものや場所としては、日本では、「道路の段差や信号」が69.3%で最も多くあげられ、以下「電車やバスなど公共交通機関」(65.7%)、「住宅の構造」(56.7%)と続く。
 ドイツでは、「住宅の構造」(92.7%)が9割強で最も多く、次いで「電車やバスなど公共交通機関」(89.1%)、「図書館や役所のような公共施設」(87.1%)、「遊園地、映画館などの娯楽施設」(85.5%)、「学校、教育施設」(85.0%)、「デパートやスーパー、ホテルなど商業施設」(83.6%)などが、全て8割台となっている。
 アメリカでは「住宅の構造」(91.5%)、「遊園地、映画館などの娯楽施設」(86.8%)、「電車やバスなど公共交通機関」(85.2%)、「デパートやスーパー、ホテルなど商業施設」(84.8%)、「学校、教育施設」(83.3%)、「図書館や役所のような公共施設」(83.0%)、「電化製品の使い勝手」(82.8%)、「コンピューター、インターネットの使い勝手」(81.3%)が全て8〜9割台である。日本に比べ、ドイツ、アメリカでは回答者一人当たりの回答数が多いことが特徴的である。


12.社会参加支援に取り組んでいる組織等

次にあげる組織や人々の中で、障害のある人が社会へ参加していくことに対して、

(1)現在、積極的に取り組んでいるのはどれだと思いますか。

また、

(2)今後、もっと積極的に取り組むべきだと思うのはどれですか。

次のうち、それぞれについて、あてはまるものをすべて選び、番号に○をつけてください。(○はいくつでも)


(図表12)社会参加支援に取り組む組織等
図表12 社会参加支援に取り組む組織等

 現在、社会参加支援に取り組んでいる組織や人々としては、日本では、「NPO(非営利団体)、ボランティア団体」(64.1%)が6割強で最も多く、次いで「障害のある人自身」(46.1%)が続く。ドイツ、アメリカでも同様に、「NPO(非営利団体)、ボランティア団体」(独91.8%、米92.8%)、「障害のある人自身」(独80.5%、米84.6%)の順である。ドイツ、アメリカでは「宗教団体」(独67.3%、米77.8%)が第3位にあげられており、日本(8.1%)と大きな差がある
 一方、今後、社会参加支援に取り組むべき組織等については、日本では「国」(76.8%)が最も多く、「地方自治体」(66.4%)、「一般市民」(60.5%)が続く。ドイツ、アメリカでも同じ3項目が上位を占めているが、いずれの組織等についても今後取り組むべきであるという回答率が、日本に比べて高くなっている。
 現在の認識と今後の期待を比較すると、3か国とも傾向が似ているものの、アメリカは現在と今後の乖離がやや少ない。


13.企業・民間団体の障害のある人への支援

あなたは、企業や民間団体が、障害のある人に対して、今より多く支援をするべきだと思いますか。次のうち、あてはまるものを1つだけ選び、番号に○をつけてください。(○はひとつだけ)


(図表13)企業・民間団体の障害のある人への支援
図表13 企業・民間団体の障害のある人への支援

 日本では、「今より多く支援するべき」(67.8%)と回答した者が7割弱である。ドイツとアメリカでも「今より多く支援するべき」という者が多数を占め、ドイツでは88.5%と特に多くなっている。


14.国・地方自治体の障害のある人への支援

それでは、国や地方自治体は、障害のある人に対して、今より多く支援をするべきだと思いますか。次のうち、あてはまるものを1つだけ選び、番号に○をつけてください。(○はひとつだけ)


(図表14)国・地方自治体の障害のある人への支援
図表14 国・地方自治体の障害のある人への支援

 日本では、76.6%の人が、障害のある人に対して国や地方自治体が「今より多く支援するべき」と回答している。ドイツでとアメリカでも、「今より多く支援するべき」という者が多数を占め、ドイツで92.6%と、最も割合が高い。


15.合理的な配慮と差別

次の例を読んで、お答えください。

例:車椅子を使う人がレストランを利用できるようにするためには、レストランの経営者は、店の入り口を階段からスロープに改修したり、車椅子でも使えるトイレを整備したりする必要があります。また、視覚障害や聴覚障害の人が、企業の会議などに参加できるようにするためには、点字の資料を用意したり、手話通訳を用意したりすることが必要となります。

例のように、障害のある人が障害のない人と同じように生活していくためには、いろいろな配慮や工夫が必要となることがあります。このような、障害のある人への配慮や工夫を行わないことは、「障害のある人への差別」になると思いますか。次のうち、あてはまるものを1つだけ選び、番号に○をつけてください。(○はひとつだけ)


(図表15)合理的な配慮と差別
図表15 合理的な配慮と差別

 日本では、障害のある人が障害のない人と同じように生活していくために必要な、いろいろな配慮や工夫など、いわゆる“合理的な配慮”を行わないことは、「差別だと思う」(16.2%)、もしくは「どちらかといえば差別だと思う」(25.8%)と答えた者が42.0%で、『差別になるとは思わない』者(44.6%)と二分されている。
 ドイツでは、『差別になると思う』という意見が64.8%である。また、アメリカでは、『差別になると思う』が70.0%、『差別になるとは思わない』が28.5%で、ドイツと傾向が似ている。


16.配慮と負担

障害のある人が障害のない人と同じように生活していくために、前問の例のように、必要な配慮や工夫を行うことを求められた場合、負担を生じることもありますが、あなたはどうしますか。次のうち、あてはまるものを1つだけ選び、番号に○をつけてください。(○はひとつだけ)


(図表16)配慮と負担
図表16 配慮と負担

 日本では、「可能な範囲の負担であれば、配慮・工夫を行う」(63.7%)が6割強で最も多く、「負担の程度にかかわらず、配慮・工夫を行う」(7.1%)は1割弱、「負担が無ければ、配慮や工夫を行う」(16.4%)は2割弱である。ドイツでは「可能な範囲の負担であれば、配慮・工夫を行う」(82.7%)が8割強で、「負担の程度にかかわらず、配慮・工夫を行う」(6.1%)は1割弱にとどまっている。一方、アメリカでは「負担の程度にかかわらず、配慮・工夫を行う」(19.6%)と回答した者が2割弱であり、日本、ドイツに比べると多い。



[1] 内閣府、2006年、『平成18年障害者白書』、社会福祉法人東京コロニー、p.168

[2] Federal Statistical Office Germany. 2007. Lebenslagen der behinderten Menschen Ergebnis des Mikrozensus 2005. p.1268

[3] Steinmetz, Erika. 2006. Americans with Disabilities: 2002. Washington, DC: U.S. Census Bureau.


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