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付録 > 2 障害者基本計画

平成24年版障害者白書

付録

2 障害者基本計画

平成14年12月24日 閣議決定

はじめに

我が国では、昭和57(1982)年、「国連障害者の十年」の国内行動計画として、障害者施策に関する初めての長期計画である「障害者対策に関する長期計画」が策定され、平成4(1992)年には、その後継計画として平成5(1993)年度からおおむね10年間を計画期間とする「障害者対策に関する新長期計画」(以下「新長期計画」という。)が策定された。新長期計画は、その後同年12月に改正された「障害者基本法」により同法に基づく障害者基本計画と位置付けられた。

我が国の障害者施策は、これらの長期計画に沿ってノーマライゼーションとリハビリテーションの理念の下に着実に推進されてきた。すなわち平成7(1995)年には、新長期計画の後期重点施策実施計画として「障害者プラン」が策定され、障害者施策の分野で初めて数値による施策の達成目標が掲げられた。

また、「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律(平成6年法律第44号)」及び「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(平成12年法律第68号)」が制定され、建物、交通分野でのバリアフリー化に向けた制度が整備されるとともに、障害者の社会参加を阻む「欠格条項」の見直しが行われた。さらに、平成15(2003)年には、障害者福祉サービスの利用を従来の措置から利用者の選択による契約に改めるなど、障害者の自己決定に向けた取組を強化することとされている。

他方、国連においては、1992(平成4)年、「国連障害者の十年」の終了を受けて、アジア太平洋地域における国連「障害者に関する世界行動計画」を更に推進するため、ESCAP「アジア太平洋障害者の十年」がスタートした。この「十年」は2002(平成14)年5月のESCAP総会において我が国の主唱により、更に10年延長され、同年10月に滋賀県で開催されたハイレベル政府間会合において、すべての人のための障壁のないかつ権利に基づく社会に向けた行動課題「びわこミレニアムフレームワーク」が採択された。

我が国では、少子高齢化やIT革命の進展など社会経済の大きな変化に直面する中で、21世紀を活力に満ち、国民一人一人にとって生きがいのある安全で安心な社会とすることを目指して、経済・財政、社会、行政の各分野において抜本的な構造改革が推進されている。

新しい世紀における我が国の障害者施策は、これまでの国際的な取組の成果を踏まえ、また我が国の将来のあるべき社会像を視野に入れて策定する必要がある。

この障害者基本計画(以下「基本計画」という。)においては、新長期計画における「リハビリテーション」及び「ノーマライゼーション」の理念を継承するとともに、障害者の社会への参加、参画に向けた施策の一層の推進を図るため、平成15(2003)年度から24(2012)年度までの10年間に講ずべき障害者施策の基本的方向について定めるものである。

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I 基本的な方針

(考え方)

21世紀に我が国が目指すべき社会は、障害の有無にかかわらず、国民誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合う共生社会とする必要がある。

共生社会においては、障害者は、社会の対等な構成員として人権を尊重され、自己選択と自己決定の下に社会のあらゆる活動に参加、参画するとともに、社会の一員としてその責任を分担する。

他方、障害者の社会への参加、参画を実質的なものとするためには、障害者の活動を制限し、社会への参加を制約している諸要因を除去するとともに障害者が自らの能力を最大限発揮し自己実現できるよう支援することが求められる。

人権が尊重され能力が発揮できる社会の実現を図ることは、少子高齢化の進展する我が国において、将来の活力を維持向上させる上でも重要である。

国民誰もが同等に参加、参画できる共生社会は、行政だけでなく企業、NPO等すべての社会構成員がその価値観を共有し、それぞれの役割と責任を自覚して主体的に取り組むことにより初めて実現できるものであり、国民一人一人の理解と協力を促進し、社会全体としてその具体化を着実に推進していくことが重要である。

この基本計画では、以上のような考え方に立って、政府が関係者の理解と協力の下に取り組むべき障害者施策の基本的方向を定めるものとする。

(横断的視点)

1 社会のバリアフリー化の推進

障害の有無にかかわらず、国民誰もがその能力を最大限発揮しながら、安全に安心して生活できるよう、建物、移動、情報、制度、慣行、心理などソフト、ハード両面にわたる社会のバリアフリー化を強力に推進する。

また、ユニバーサルデザインの観点から、すべての人にとって生活しやすいまちづくり、ものづくりを推進する。

社会全体でのバリアフリー化を推進する観点から、企業、市民団体等の取組を積極的に支援する。

2 利用者本位の支援

地域での自立した生活を支援することを基本に、障害者一人一人のニーズに対応してライフサイクルの全段階を通じ総合的かつ適切な支援を実施する。

利用者が自らの選択により、適切にサービスを利用できる相談、利用援助などの体制づくりを推進する。

利用者のニーズに沿った多様かつ十分なサービスを確保するため、企業等の積極的活用も含め、供給主体の拡充を図る。

また、地域の実情に即した適切なサービス体制を構築するため、NPOや地域住民団体との連携・協力を推進する。

3 障害の特性を踏まえた施策の展開

個々の障害に対応したニーズを的確に把握し、障害の特性に応じた適切な施策を推進する。

また、現在障害者施策の対象となっていない障害等に対しても必要性を踏まえ適切に対応する。

WHO(世界保健機関)で採択されたICF(国際生活機能分類)については、障害の理解や適切な施策推進等の観点からその活用方策を検討する。

4 総合的かつ効果的な施策の推進

(1)行政機関相互の緊密な連携

国及び地方公共団体における教育、福祉、医療、雇用・就業等の関係行政機関相互の緊密な連携を確保する。

(2)広域的かつ計画的観点からの施策の推進

地域間、障害種別によりサービス水準の格差が生じないよう計画的・総合的に施策を推進するほか、適切な圏域設定の下で効果的な相談支援、サービス提供体制の整備を図る。

また、地域における効果的かつ効率的な施策推進の観点から、高齢者、児童等に関する他の計画との整合性に留意する。

(3)施策体系の見直しの検討

障害者福祉施設サービスの再構築を図るなど適宜必要な施策・事業の見直しを行う。

また、個々の障害者に適切なサービスを提供する観点から、高齢者施策など他の関連制度との連携の在り方について検討する。

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II 重点的に取り組むべき課題

1 活動し参加する力の向上

(1)疾病、事故等の予防・防止と治療・医学的リハビリテーション

障害の原因となる疾病等の予防、早期発見・治療や交通・労災事故等の防止対策を推進する。

障害の重度化を予防し、その軽減を図るため、障害の早期発見及び障害に対する医療、医学的リハビリテーションの提供を推進する。

障害の原因となる疾病等の予防・治療、障害の軽減等に関する研究開発を推進する。

(2)福祉用具等の研究開発とユニバーサルデザイン化の促進

障害者一人一人の多様なニーズに適合する各種福祉用具や機器等の研究開発を推進するとともに、国際標準によるガイドラインの策定等により障害の有無にかかわらず誰もが利用しやすい製品、サービスの普及を促進する。

(3)IT革命への対応

急速に進展する高度情報通信社会において障害者の社会参加を一層推進するため、デジタル・ディバイド(ITの利用機会及び活用能力による格差)解消のための取組を推進する。

特に、ITの利用・活用が障害者の働く能力を引き出し経済的自立を促す効果は大きいことから、その積極的な活用を図る。

また、障害者が地域で安全に安心して生活できるよう、ITの活用による地域のネットワークを構築する。

2 活動し参加する基盤の整備

(1)自立生活のための地域基盤の整備

障害者が地域において自立し安心して生活できることを基本にその基盤となる住宅、公共施設、交通等の基盤整備を一層推進するとともに、障害者の日常生活の支援体制を充実する。

支援体制は、障害者本人、ボランティア、地域住民の参加の下に関係機関の緊密な地域的協力により構築する。

また、障害者の自立に重要な役割を担う家族に対する支援策の充実を図り、家庭における障害者の自立への取組を支援する。

(2)経済自立基盤の強化

地域での自立した生活を可能とするためには経済的な基盤の確立が不可欠であり、雇用・就業、年金、手当等により経済的に自立した生活を総合的に支援する。

このため、IT等の活用や企業との連携による職業能力開発を強化するとともに、福祉、医療、教育など関係分野の連携による支援体制を構築することにより、障害者の働く力の向上を図る。

また、年金、手当等による所得保障を引き続き推進する。

3 精神障害者施策の総合的な取組

精神障害者に係る保健・医療、福祉など関連施策の総合的かつ計画的な取組を促進する。

入院医療中心から、地域における保健・医療・福祉を中心とした施策を推進し、退院・社会復帰を可能とするためのサービス基盤の整備を目指す。

4 アジア太平洋地域における域内協力の強化

「アジア太平洋障害者の十年」の次の10年の行動課題である「びわこミレニアムフレームワーク」の推進に積極的に貢献するとともに、技術協力や障害者団体の交流等を通じアジア太平洋地域の各国・地域との協力関係の強化に主導的な役割を果たす。

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III 分野別施策の基本的方向

1 啓発・広報

(1)基本方針

障害の有無にかかわらず、相互に人格と個性を尊重し支え合う共生社会の理念の普及を図るとともに、障害及び障害者に関する国民理解を促進するため、幅広い国民の参加による啓発活動を強力に推進する。

(2)施策の基本的方向

<1>啓発・広報活動の推進

共生社会の理念の普及を図るため、行政はもとより企業、NPO等民間団体との連携による啓発活動を推進するとともに、インターネット上に障害者理解のためのホームページを作成するなどITを積極的に活用し国民理解の推進を図る。

テレビ、ラジオ、新聞、雑誌等のマスメディアの協力を得て、国民理解促進のための広報活動を計画的かつ効果的に実施する。

障害者の日、障害者週間等の各種行事を中心に一般市民、ボランティア団体、障害者団体など幅広い層の参加による啓発活動を推進する。

<2>福祉教育等の推進

交流教育の実施など小・中学校等における学校の教育活動を通じ、障害者に対する理解を深める福祉教育を積極的に推進する。

福祉講座や講演会の開催、ビデオテープ、映画等のライブラリーの充実等により、社会一般の理解を深めるとともに、福祉事務所、更生相談所、児童相談所、保健所、精神保健福祉センター等の福祉、保健サービスの実施機関と連携しながら、地域住民への啓発・広報を展開する。

<3>公共サービス従事者に対する障害者理解の促進

障害者が地域において安全に安心して生活できるよう、公務員を始めとする各種公共サービス従事者への障害者に関する理解の促進とその徹底を図る。

<4>ボランティア活動の推進

児童生徒や地域住民等のボランティア活動に対する理解を深め、その活動を支援するよう努めるとともに、企業等の社会貢献活動に対する理解と協力を促進する。

2 生活支援

(1)基本方針

利用者本位の考え方に立って、個人の多様なニーズに対応する生活支援体制の整備、サービスの量的・質的充実に努め、すべての障害者に対して豊かな地域生活の実現に向けた体制を確立する。

(2)施策の基本的方向

<1>利用者本位の生活支援体制の整備

ア 身近な相談支援体制の構築

身近な相談支援体制を構築するため、各種の生活支援方策を中心として、ケアマネジメント実施体制の整備やケアマネジメント従事者の養成を図る。なお、これらの相談窓口は、様々な障害種別に対応して、総合的な運営を図る。

利用者によるサービス選択に資するため、福祉サービスについて情報提供の促進を図る。特に、都道府県レベルにおいて、各サービス提供事業者に関する情報のデータベース化とこれにアクセスするためのネットワーク体制の構築を図る。

家族と暮らす障害者について、その家庭や家族を支援することとし、特に、障害児の健全な発達を支援する観点から、家族に対し、療育方法などの情報提供やカウンセリング等の支援を行う。

障害者相談員が地域で生活する障害者の多様なニーズに身近で対応できるようにするため、相談員の養成・研修を行うとともに、相談員相互のネットワーク化等を図り、その活用を推進する。また24時間体制の電話相談等を普及させるとともに、インターネットを利用した相談体制の実施も検討する。

難病患者及びその家族の療養上又は生活上の悩み、不安等の解消を図るため、難病に関する専門的な相談支援体制の充実に努める。

児童相談所、更生相談所、保健所等の公的相談機関と、地方公共団体が実施する生活支援方策について、都道府県、障害保健福祉圏域及び市町村の各レベルでのネットワーク化を図り、障害者が身近な地域で専門的相談を行うことができる体制を構築する。

イ 権利擁護の推進

障害者の財産権や人権に関する実態を踏まえ、判断能力が不十分な者に対応する地域福祉権利擁護事業、成年後見制度など障害者の権利擁護に関する事業及び財産管理を支援するシステムについて、利用の促進を図る。

障害者の権利侵害等に対応するため、福祉制度や福祉サービスに係る権利擁護システムを地域において導入していくことを促進する。また、当事者等により実施される権利擁護のための取組を支援することを検討する。

ウ 障害者団体や本人活動の支援

知的障害者本人や精神障害者本人の意見が適切に示され、検討されるよう支援を強化する。特に、様々なレベルの行政施策に当事者の意見が十分反映されるようにするため、当事者による会議、当事者による政策決定プロセスへの関与等を支援することを検討する。

ボランティアを育成し、障害者がニーズに応じて派遣を受けることのできる体制の整備を検討する。また、障害者自身がボランティアとして活動できるよう支援する。

<2>在宅サービス等の充実

ア 在宅サービスの充実

ホームヘルプサービス等の在宅サービスを障害者がニーズに応じて利用できるよう、その量的・質的充実に努める。このため、既存事業者の活用とともに、新規事業者が参入しやすい仕組みとする。

ホームヘルプサービスについては、障害特性を理解したホームヘルパーの養成及び研修を行う。

豊かな地域生活のためには、日中の活動の場としてのデイサービスを身近な地域で利用できることが重要であり、デイサービスセンターに加え、学校の空き教室等を利用して、その充実を図る。また、重症心身障害児(者)通園事業については、充実を図る。

イ 住居の確保

障害者の地域での居住の場であるグループホーム及び福祉ホームについて、重度障害者などのニーズに応じて利用できるよう量的・質的充実に努める。

ウ 自立及び社会参加の促進

地域での自立生活を支援するため、情報提供、訓練プログラムの作成、当事者による相談活動等の推進を図る。特に、当事者による相談活動は、障害者同士が行う援助として有効かつ重要な手段であることから、更なる拡充を図る。

障害者が社会の構成員として地域で共に生活することができるようにするとともに、その生活の質的向上が図られるよう、生活訓練、コミュニケーション手段の確保、外出のための移動支援など社会参加促進のためのサービスを充実する。

障害者の社会参加を一層推進するため、身体障害者補助犬の利用を促進する。

エ 精神障害者施策の充実

精神障害者ができる限り地域で生活できるようにするため、居宅生活支援事業の普及を図るとともに、ケアマネジメントの手法の活用の推進を検討する。特に、条件が整えば退院可能とされる者の退院・社会復帰を目指すため、必要なサービスを整備する。

精神障害者及び家族のニーズに対応した多様な相談体制の構築を図る。当事者による相談活動に取り組む市町村への支援を検討する。

オ 各種障害への対応

盲ろう等の重度・重複障害者、高次脳機能障害者、強度行動障害者等への対応の在り方を検討する。また、難病患者及びその家族に対し、地域における難病患者等支援対策の充実に努める。さらに、自閉症の特性を踏まえた支援の在り方について検討するとともに、自閉症・発達障害支援センターを中心とした地域生活支援体制の充実に努める。

<3>経済的自立の支援

ノーマライゼーションの理念を実現し、障害者が地域で質の高い自立した生活を営むことができるよう、雇用・就業に関する施策を進めるとともに、年金や手当等の給付により、地域での自立した生活を総合的に支援する。

年金を受給していない障害者の所得保障については、拠出制の年金制度をはじめとする既存制度との整合性などの問題に留意しつつ、福祉的観点からの措置で対応することを含め、幅広い観点から検討する。

障害年金など個人の財産については、障害者が成年後見制度等を利用して適切に管理できるよう支援する。

<4>施設サービスの再構築

ア 施設等から地域生活への移行の推進

障害者本人の意向を尊重し、入所(院)者の地域生活への移行を促進するため、地域での生活を念頭に置いた社会生活技能を高めるための援助技術の確立などを検討する。

「障害者は施設」という認識を改めるため、保護者、関係者及び市民の地域福祉への理解を促進する。

授産施設等における活動から一般就労への移行を推進するため、施設外授産の活用や関係機関と連携した職場適応援助者(ジョブコーチ)事業の利用を推進する。

イ 施設の在り方の見直し

施設体系について、施設機能の在り方を踏まえた上で抜本的に検討する。

入所施設は、地域の実情を踏まえて、真に必要なものに限定する。

障害者が身近なところで施設を利用できるよう、小規模通所授産施設等の通所施設や分場の整備を図るとともに、障害種別を越えて相互利用を進める。

障害者施設は、各種在宅サービスを提供する在宅支援の拠点として地域の重要な資源と位置付け、その活用を図る。

障害の重度化・重複化、高齢化に対応する専門的ケア方法の確立について検討する。また、高次脳機能障害、強度行動障害等への対応の在り方を検討する。

入所者の生活の質の向上を図る観点から、施設の一層の小規模化・個室化を図る。

<5>スポーツ、文化芸術活動の振興

障害者自身が多様なスポーツ、文化芸術に親しみやすい環境を整備するという観点から、障害者の利用しやすい施設・設備の整備の促進及び指導員等の確保を図る。

また、文化芸術活動の公演・展示等において、字幕や音声ガイドによる案内サービス、利用料や入館料の軽減などの様々な工夫や配慮等を促進する。

全国障害者スポーツ大会や障害者芸術・文化祭の充実に努めるとともに、民間団体等が行う各種のスポーツ関連行事や文化・芸術関連行事を積極的に支援する。

(財)日本障害者スポーツ協会を中心として障害者スポーツの振興を進める。特に、身体障害者や知的障害者に比べて普及が遅れている精神障害者のスポーツについて、振興に取り組む。

<6>福祉用具の研究開発・普及促進と利用支援

福祉用具に関する情報の提供や相談窓口の整備を推進する。特に、専門的な相談に対応していくため、情報提供機関や相談機関のネットワーク体制の構築を図る。

福祉用具の相談等に従事する専門職員の資質向上のため、研修の充実を図る。

国立身体障害者リハビリテーションセンター、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)における福祉用具開発のための先進的研究を推進するとともに、研究機関、大学、企業等の連携により、福祉用具の開発等を進める。また、研究成果の安全かつ適切な普及を図るために、積極的に標準化を進めるとともに、国際規格提案を行う。

<7>サービスの質の向上

質の高いサービスを確保する観点から、「障害者・児施設のサービス共通評価基準」等を活用し、自己評価を更に進めるとともに、第三者評価機関等による客観的なサービス評価の実施も検討する。

サービスに関する苦情に対応するため、事業者や都道府県社会福祉協議会が設けている苦情解決体制の積極的な周知を図り、円滑な利用を支援する。

<8>専門職種の養成・確保

社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士など社会福祉の専門的相談・支援、介護等に従事する者の養成を行う。また、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、言語聴覚士などリハビリテーションに従事する者、ホームヘルパー等の質的・量的充実を図る。

障害に係る専門的な研究を行うとともに障害保健福祉に従事する職員を養成・研修するため、国立専門機関等を更に積極的に活用する。

3 生活環境

(1)基本方針

誰もが、快適で生活しやすいユニバーサルデザインに配慮した生活環境の整備を推進する。

このため、障害者等すべての人が安全に安心して生活し、社会参加できるよう、住宅、建築物、公共交通機関、歩行空間など生活空間のバリアフリー化を推進し、自宅から交通機関、まちなかまで連続したバリアフリー環境の整備を推進する。

また、防災、防犯対策を推進する。

(2)施策の基本的方向

<1>住宅、建築物のバリアフリー化の推進

障害者の特性やニーズに対応した適切な設備・仕様を有する障害者向けの公共賃貸住宅の供給を推進するとともに、バリアフリー化された住宅ストックの形成を推進する。

また、「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」に基づく多数の者が利用する一定の建築物についてのバリアフリー対応の義務付け、設計者等向けのガイドラインの作成・周知などにより、障害者等すべての人が円滑に利用できる建築物のバリアフリー化を推進する。さらに、窓口業務を行う官庁施設等について、障害者等すべての人の利用に配慮した高度なバリアフリー化を推進する。

<2>公共交通機関、歩行空間等のバリアフリー化等の推進

「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」及び旅客施設や車両等のバリアフリー化に関するガイドライン等により、鉄軌道駅、バスターミナル、旅客船ターミナル及び航空旅客ターミナル並びに鉄軌道車両、バス車両、旅客船及び航空機のバリアフリー化を推進する。また、道路については、道路の移動円滑化に関するガイドライン等を整備し、幅の広い歩道の整備や歩行者等を優先するエリアの形成、歩行者のためのITS(高度道路交通システム)の研究開発等を通じて誰もが安全で安心なバリアフリーな歩行空間ネットワークの形成を図る。

特に、旅客施設を中心とした一定の地区においては、旅客施設、道路等のバリアフリー化を重点的・一体的に推進する。

また、単独では公共交通機関を利用できないような障害者等の輸送といった、公共交通機関による輸送サービスが十分に提供されないおそれのある分野での移動の確保については、利用者のニーズや地域の実情等を踏まえ、STS(スペシャル・トランスポート・サービス)の活用を含め適切な対応を図る。

さらに、障害者等すべての人が公共交通機関を円滑に利用できるよう、バリアフリー情報の統一的な提供や障害特性に配慮した情報提供を推進するとともに、交通バリアフリー教室等の普及・啓発活動の展開により、国民の理解の浸透を図る。

また、障害者等すべての人が快適に利用でき、親しめる環境を整備するため、公園、水辺空間等におけるバリアフリー化を推進する。

<3>安全な交通の確保

「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」に基づき、音響信号機等のバリアフリー対応型信号機等の整備を推進する。

また、交通事故が多発している住居地区や商業地区を中心に、信号機や道路標識等の整備を重点的に推進することにより、生活道路における通過車両の進入や速度の抑制、幹線道路における交通の流れの円滑化等を図り、自動車事故の防止と障害者の安全かつ円滑な通行を確保する。

さらに、自動車と歩行者の通行を時間的に分離する歩車分離式信号の運用、携帯端末を活用した安全な通行に必要な情報の提供、歩行者青時間の延長を行うPICS(歩行者等支援システム)の整備を推進するとともに、障害特性に配慮した見やすく分かりやすい標識・標示の整備を図る。

<4>防災、防犯対策の推進

ア 災害対策

自力避難の困難な障害者等の災害弱者に関連した施設が立地する土砂災害危険箇所等において、治山、砂防、地すべり対策及び急傾斜地崩壊対策事業を強力に推進する。

イ 住宅等の防災対策

行政機関と福祉関係者等の防火対策推進協力者とが連携し、障害者等の所在の積極的な把握や訪問診断等役割に応じた防火対策を推進する。

消防用設備等の技術基準等の改正など障害者等が利用する防火対象物における消防用設備等の技術基準の在り方について検討を行う。

自力避難の困難な障害者等が居住する住宅及び避難所となる公的施設や利用施設等における障害者の特性に配慮した防災設備の整備・充実を図るとともに、自主防災組織等による協力体制の確立、地域における住民、消防署等による防災ネットワークの確立など地域における災害対策を推進する。

また、地域防災計画において、自力避難の困難な障害者等に対する防災知識の普及や災害時の適切な情報提供・避難誘導等の支援について位置付けるとともに、障害者関係団体の参加による防災訓練の実施を推進する。

緊急通報システム、ファクス、Eメール等による消防、警察への緊急通信体制の一層の充実を図るとともに、聴覚障害者など音声による意志疎通が困難な者へのEメール等による緊急連絡等のためのシステム検討や関係する民間活動への支援など、障害者に対する災害時・緊急時の情報伝達に配慮した施策を推進する。

ウ 防犯対策

緊急通報、ファクス、Eメール等による警察への緊急通信体制の一層の充実を図る。

また、手話のできる警察官の交番等への配置等の施策を引き続き推進する。

地域における住民と警察署による防犯・防災ネットワークの確立に努め、障害者に対する防犯知識の普及及び事故時における障害者への援助に関する知識の普及に努める。

障害者の生活施設や障害者が居住する住宅等における犯罪や事故の発生を警戒・防止するための民間の防犯システムの普及を図る。

4 教育・育成

(1)基本方針

障害のある子ども一人一人のニーズに応じてきめ細かな支援を行うために乳幼児期から学校卒業後まで一貫して計画的に教育や療育を行うとともに、学習障害、注意欠陥/多動性障害、自閉症などについて教育的支援を行うなど教育・療育に特別のニーズのある子どもについて適切に対応する。

(2)施策の基本的方向

<1>一貫した相談支援体制の整備

障害のある子どもの発達段階に応じて、関係機関が適切な役割分担の下に、一人一人のニーズに対応して適切な支援を行う計画(個別の支援計画)を策定して効果的な支援を行う。

乳幼児期における家庭の役割の重要性を踏まえた早期対応、学校卒業後の自立や社会参加に向けた適切な支援の必要性にかんがみ、これまで進められてきた教育・療育施策を活用しつつ、障害のある子どもやそれを支える保護者に対する乳幼児期から学校卒業後まで一貫した効果的な相談支援体制の構築を図る。さらに、思春期の児童生徒についても、必要な支援を行う。

また、精神疾患について、関係機関が連携して早期発見のための相談支援体制を確立するとともに、学校等における正しい知識の普及を図る。

<2>専門機関の機能の充実と多様化

近年の障害の重度・重複化や多様化の状況を踏まえ、教育・療育機関の機能の充実を図り、地域や障害のある子どもの多様なニーズにこたえる地域の教育・療育のセンターとしての役割を担うための体制整備を図る。

盲・聾・養護学校については、その在籍する児童生徒等への教育や指導に加えて、地域の保護者等への相談支援や小・中学校等における障害のある児童生徒等への計画的な教育的支援等を行う地域の障害のある子どもの教育のセンター的な役割も果たす学校へ転換を図る。

療育機関については、施設の入所者だけではなく地域で生活する障害のある子どもに関しても有用で専門的な技術を有しており、これらの機関を活用してショートステイ、ホームヘルプサービス等のサービスの充実を図る。

<3>指導力の向上と研究の推進

学校外の専門家等の人材の活用、組織として一体的な取組を可能とする支援体制の構築、関係機関との有機的な連携協力体制の構築等により、一人一人の教員及び療育にかかわる専門職員の教育・療育、相談等に対する専門性や指導力の向上を図る。

児童生徒等の障害の重度・重複化、多様化等を踏まえ、そのニーズに応じた教育の効果的な実施を確保するため、現在盲・聾・養護学校の学校ごとに特定されている特殊教育に係る免許制度の改善を図る。

独立行政法人国立特殊教育総合研究所、大学等において、先導的な指導方法の開発や体制等に関する研究を一層推進するとともに、その成果等を教育現場等に円滑に普及するための情報提供を推進する。

<4>社会的及び職業的自立の促進

障害のある子どもの社会的・職業的自立を促進するため、教育、福祉、医療、労働等の幅広い観点から適切な支援を行う個別の支援計画の策定など障害のある子ども一人一人のニーズに応じた支援体制を構築する。

また、後期中等教育及び高等教育への就学を支援するため、各学校や地域における支援の一層の充実を図るとともに、在宅で生活する重症心身障害児(者)に対し、適切な医学的リハビリテーションや療育を提供し、日常生活動作等にかかわる療育を行うほか、保護者等の家庭における療育技術の習得を図るための支援を行う。

地域における学校卒業後の学習機会の充実のため、教育・療育機関は、関係機関と連携して生涯学習を支援する機関としての役割を果たす。

<5>施設のバリアフリー化の促進

教育・療育施設において、障害の有無にかかわらず様々な人々が、適切なサービスを受けられ、また、利用する公共的な施設であるという観点から、施設のバリアフリー化を推進する。

障害のある児童生徒の学習や生活のための適切な環境を整える観点から、施設に加えて情報機器等学習を支援する機器・設備等の整備を推進する。

5 雇用・就業

(1)基本方針

雇用・就業は、障害者の自立・社会参加のための重要な柱であり、障害者が能力を最大限発揮し、働くことによって社会に貢献できるよう、その特性を踏まえた条件の整備を図る。

(2)施策の基本的方向

<1>障害者の雇用の場の拡大

ア 障害者雇用率制度を柱とした施策の推進

障害者雇用率制度は、障害者の雇用促進策の根幹となる柱であり、障害者に自立や社会参加の機会を提供する強力な後ろ盾となる制度である。今後とも当該制度を中心として、障害者雇用の一層の促進を図る。

個別の企業に対する日常的な指導の充実や、実雇用率の低い企業に対する雇入れ計画の作成命令等の指導の厳格化を図る一方、障害者雇用のための企業の取組を後押しするため、各種助成金についても、より効果的な活用が図られる方向で改善を図る。

精神障害者については、今後障害者雇用率制度の対象とするための検討を進めることとし、そのために、関係者の理解を図りつつ、精神障害者の把握・確認方法の確立、企業における精神障害者雇用の実態把握など障害者雇用率制度を適用するために必要な検討、準備を着実に進める。また、採用後に発病した精神障害者については、円滑な職場復帰や雇用の安定のための施策の充実を図る。

除外率制度については、平成16(2004)年度より段階的に縮小を進め、一定の準備期間を置いて廃止を目指す。

国及び地方公共団体の除外職員制度についても、企業との均衡を考慮して同様の方向で進める。

企業に対する啓発活動の充実を図るとともに、雇用管理のノウハウの情報提供に努める。

経営者団体においても、障害者雇用についての相談に応じるなど、障害者の雇用管理のノウハウの提供が行われることが望まれる。

障害者の教員免許取得状況等を踏まえつつ、教育委員会における実雇用率上昇のための取組について検討する。また、国、地方公共団体において障害者雇用の取組を行いやすくするため、より広い職域での雇用が可能となるよう、関係する行政機関等で合算して実雇用率を算定する方式の活用を進める。

イ 障害者の能力・特性に応じた職域の拡大

重度障害者多数雇用事業所や特例子会社における障害者雇用の取組を支援するとともに、その蓄積されたノウハウをいかし、障害者の能力・特性に応じた更なる職域の拡大に努める。また、障害者がその能力にふさわしい処遇を受け、労働条件面を含む職業生活の質の向上を図ることができるよう、諸条件の整備に努める。

重度障害者多数雇用事業所については、今後とも障害者雇用の先駆的な取組を促すべく助成金制度による支援を行う。

特例子会社制度を積極的に活用し、グループ内企業に共通する業務の集中処理等による障害者雇用の拡大を図るとともに、グループ企業全体の雇用を促進する。

ウ 障害者の働きやすい多様な雇用・就業形態の促進

短時間雇用、在宅就業等の普及は障害者がその能力や特性に応じて働くための機会の増大につながるものであり、必要な支援、環境づくりに取り組む。

直ちにフルタイムで働くことが困難な障害者等を念頭に、短時間雇用のための支援策の充実を図る。

通勤の困難な重度障害者等を念頭に、在宅就業におけるIT活用を推進する。

エ ITを活用した雇用の促進

障害者の職域の拡大、雇用・就業形態の多様化、職業能力の開発などの面でITを最大限活用する。

就業を可能にする機器やソフトの開発及び普及を行い、就業機会の拡大を図るとともに、障害の部位・特性等に配慮しつつ、IT技術を活用し、障害者がこれらの支援機器等の操作に習熟するための効果的な職業訓練を推進する。

在宅就業を行う障害者の仕事の受発注や技能の向上に係る援助を行う支援機関の育成、支援等の充実を図る。

オ 障害者の雇用・就業を行う事業の活性化

障害者雇用等の社会的意義を踏まえ、国の行う契約の原則である競争性、経済性、公平性等の確保に留意しつつ、官公需における障害者多数雇用事業所等及び障害者雇用率達成状況への配慮の方法について検討する。

カ 障害者の創業・起業等の支援

自ら創業・起業を行うような挑戦意欲のある障害者を支援するため、その実状や実態に係る調査を実施するなど具体的ニーズの把握に努めるとともに、その結果を踏まえ、障害者の創業・起業に必要な資金調達の円滑化に資する施策など必要な方策を検討する。

また、障害者によるNPO等の非営利団体の設立、創業・起業等の活動に対する支援策等を検討する。

<2>総合的な支援施策の推進

ア 保健福祉、教育との連携を重視した職業リハビリテーションの推進

障害者の雇用促進を効果的に行うため、障害者の職業生活全般にわたり福祉、教育等の関係機関が連携を図りながら施策を推進する。

障害者総合職業センター、広域障害者職業センター及び地域障害者職業センターが連携し、その特色をいかしつつ、中途障害者も含めた職業リハビリテーションを推進するとともに、医療、福祉、教育等との連携の強化を図る。特に地域障害者職業センターにおいては、社会福祉法人や保健福祉行政機関等と連携して職場適応援助者事業や職業準備訓練等の効果的な実施を図る。

また、障害者職業総合センターにおいて、障害の特性に応じた職業リハビリテーション技法等の研究開発を推進する。

障害者の就業面と生活面での支援を一体的に行うため、障害者就業・生活支援センターを通じた支援の促進を図る。

イ 雇用への移行を進める支援策の充実

トライアル雇用(一定期間の試行的雇用)の活用、授産施設等における支援、盲・聾・養護学校の在学中から卒業後までを通じた支援等により、雇用への移行の促進を図る。

トライアル雇用を更に拡充、実施するとともに、あわせて、短期間の職場適応訓練等を活用しながら、事業主に障害者雇用への理解を深め、常用雇用への移行を進める。

授産施設及び小規模作業所がその本来の機能を十分に果たし、企業等における雇用に一層効果的につなげていくことができるよう、障害者就業・生活支援センターや職場適応援助者事業を活用するほか、適切な方法で施設外授産を行う。

盲・聾・養護学校卒業生の企業への雇用を進めるため、労働機関、福祉機関等との十分な連携の下、生徒一人一人の将来の就業に向けた個別の支援計画を策定、活用するなど在学中から卒業後を通じた適切な支援を行う。

また、障害者が、就業を行う上で必要な各種の資格の取得において不利にならないよう、高等教育機関等の試験等で必要な配慮を進める。

ウ 障害者の職業能力開発の充実

多様な職業能力開発資源を活用し、新たに就業を希望する障害者及び在職障害者並びに離職を余儀なくされた障害者の早期再就職を図るための職業訓練を推進する。また、障害者の職業能力の開発・向上の重要性に対する事業主や国民の理解を高めるための啓発に努める。

障害者の職業能力開発については、一般の公共職業能力開発施設における障害者の受入れを一層促進するとともに、施設のバリアフリー化を推進するなど障害者の受入体制の整備を図る。

これらの施設で受入れが困難な重度障害者等については、障害者職業能力開発校において、障害の特性や程度に応じた訓練科目を設定し職業訓練を推進する。その際、障害の重度化・重複化、障害者の高齢化など訓練ニーズの多様化に留意するとともに、サービス経済化や情報化の進展、また、除外率制度の縮小に伴う雇用ニーズの動向を踏まえるものとする。

また、ITに係る教育訓練ソフトをインターネットを通じて配信し在宅でも随時能力開発ができるようにするための遠隔訓練システムを開発し、公共職業能力開発施設等への通所に制約がある障害者への活用を図る。

技術革新に伴う職務内容の多様化等に対応し、職業能力の向上を図るため在職障害者向け訓練を実施するほか、事業所においても在職障害者に対する効果的な職業能力開発が行われるよう、関係機関との密接な連携の下に、事業主や障害者に対し相談、援助等の支援を行う。

障害者が高度なレベルの職業能力を身につけ、その能力にふさわしい処遇を受けることが重要であることから、可能な限り多くの訓練機会を得られるよう、民間の教育訓練機関等多様な職業能力開発資源を活用した委託訓練を幅広く実施する。

また、民間外部講師についても一層積極的に活用し、多様化する訓練ニーズに対応していくものとする。

エ 雇用の場における障害者の人権の擁護

企業等において雇用差別など障害を理由とした人権の侵害を受けることがないよう、適切な措置を講ずる。

6 保健・医療

(1)基本方針

障害者に対して、適切な保健サービス、医療、医学的リハビリテーション等を充実するとともに、障害の原因となる疾病等の予防・治療が可能なものについては、これらに対する保健・医療サービスの適切な提供を図る。

(2)施策の基本的方向

<1>障害の原因となる疾病等の予防・治療

障害の原因となる疾病等の適切な予防及び早期発見・治療の推進を図り、出生から高齢期に至る健康保持・増進等のため、健康診査等の各種施策を推進する。

ア 障害の原因となる疾病等の予防・早期発見

妊産婦の健康教育、健康指導及び健康診査、周産期医療等の充実、新生児や乳幼児に対する健康診査等の適切な実施について、「健やか親子21」等に基づき推進を図る。

脳血管疾患、糖尿病等の生活習慣病の予防等について、「21世紀における国民の健康づくり運動(健康日本21)」等に基づき推進を図る。

学校、職域及び地域における健康診査等の適切な実施、疾患等に関する相談、カウンセリング等の提供機会の充実を図る。

イ 障害の原因となる疾病等の治療

周産期集中治療管理室や新生児集中治療管理室を含む周産期・小児医療施設の施設及び設備の整備を図る。

障害の原因となる疾患、特に精神疾患、難治性疾患等について適切な治療を行うため、専門医療機関、身近な地域における医療機関及び在宅における医療の提供、適切な入院医療の確保、保健所、精神保健福祉センター、児童相談所、市町村等による相談指導、訪問指導等の保健サービス等の提供体制の充実及びこれらの連携を促進する。

障害の原因となる外傷等に対する適切な治療を行うため、救急医療、急性期医療等の提供体制の充実及び関係機関の連携を促進する。

精神疾患や難治性疾患患者に対する治療及び保健サービスについて、福祉サービスとの連携を踏まえたサービスの提供体制について検討し、その充実を図る。

ウ 正しい知識の普及等

障害の原因となる精神疾患、難治性疾患等の疾病、外傷等について、その予防や治療について、国民、保健・医療従事者等に対する正しい知識の普及を図るとともに、これらの疾病等に対する不当な偏見・差別や過剰な不安の除去を図る。

<2>障害に対する適切な保健・医療サービスの充実

障害の早期発見及び障害に対する適切な医療、医学的リハビリテーションの提供により、障害の軽減並びに重度化・重複化、二次障害及び合併症の防止を図るとともに、障害者に対する適切な保健サービスを提供する。

特に、小児に対しては、障害に対応した発達を支援する。

ア 障害の早期発見

「健やか親子21」等の推進等により、妊産婦、新生児及び乳幼児の健康診査、学校における健康診断等の検診の適切な実施及びこれらの機会の活用を図り、障害の早期発見を徹底する。

イ 障害に対する医療、医学的リハビリテーション

治療やリハビリテーションにより軽減が期待される障害については、適切な医療、医学的リハビリテーションの提供並びにサービス提供拠点の整備及び確保を図る。

障害の早期発見と早期療育は、その後の障害の軽減や発達に及ぼす影響が大きいことから、療育に知見と経験を有する医療・福祉の専門職と療育の場の確保を図るとともに、障害に対応した発達を支援する。

人工透析を要する慢性腎不全、精神疾患、難治性疾患など障害に対する継続的な医療が必要な障害者に対しては、身近な医療機関等における医療の提供、医学的相談体制の整備等、治療のために適切な保健・医療サービス提供の充実を図る。

骨、関節等の機能や感覚器機能の障害及び高次脳機能障害など医学的リハビリテーションによる機能の維持、回復が期待されるものについて、適切な評価、病院から地域等への一貫した医学的リハビリテーションの確保を図る。

障害に起因して合併しやすい疾患、外傷、感染症等の予防と、これらを合併した際の障害及び合併症に対して適切な医療の確保を図る。

ウ 障害者に対する適切な保健サービス

障害を有する者の健康の保持・増進、精神疾患及び難治性疾患に対する保健サービスについて、福祉サービスとの連携を踏まえたサービスの提供体制について検討し、その充実を図る。

保健所等において、障害児の発達について相談・指導を行う。

エ 保健・医療サービス等に関する適切な情報提供

保健・医療サービス等の提供機関による自主的な情報公開と、第三者評価を推進するとともに、医療サービスの提供機関、その内容や評価、各種行政サービス等に関する情報を集約し、障害者等が入手しやすい情報提供体制の充実を図る。

<3>精神保健・医療施策の推進

一般国民の心の健康づくり対策とともに、精神障害者に対する保健・医療施策を一層推進する。

ア 心の健康づくり

学校、職域及び地域における心の健康に関する相談、カウンセリング等の提供機会の充実を図る。

うつ対策を中心とした自殺予防対策を講じる。また、職場における心の健康づくり体制を整備する。

睡眠障害を有する者のうち、特に治療を要する者に対する適切な相談体制を確保する。また、児童思春期における心の問題及び心的外傷体験を受けた者の心のケアに係る専門家の確保並びに地域における相談体制の充実を図る。

イ 精神疾患の早期発見・治療

精神疾患の早期発見方法の確立及び発見機会の確保・充実を図る。

専門診療科以外の診療科、保健所、健診の実施機関等と専門診療科との連携を促進するとともに、様々な救急ニーズに対応できる精神科救急システムを確立するなど地域における適切な精神医療提供体制の確立を推進する。

精神医療における人権の確保を図るため、都道府県及び指定都市に対し、精神医療審査会の機能の充実・適正化を促す。

精神疾患について、患者の病態に応じた適切な医療の提供を確保し、患者・家族による医療機関の選択に資するよう、精神病床の機能分化、精神医療に関する情報提供、EBM(根拠に基づく医療)及び安全対策の推進を図る。

心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に対する適切な医療の確保を推進する。

<4>研究開発の推進

最新の知見や技術を活用し、倫理的側面に配慮しつつ、障害の原因となる疾病等の病因・病態の解明、予防、治療、再生医療等に関する研究開発を推進する。

障害の予防、治療、障害者のQOL(生活の質)の向上等を推進するためには、基礎となる技術等の開発が重要であり、最新の知見や技術を活用した研究開発を推進する。

障害の原因となる先天性又は後天性の疾患の発症の病因・病態の解明並びにその予防、診断及び治療のための研究について推進を図る。特に、近年、急速に研究の進展が期待されるゲノムやプロテオーム技術、画像技術等の先端技術と疫学研究等を総合的に活用して学際的研究開発を推進する。

難治性疾患に関し、病因・病態の解明、画期的な治療法の開発及び生活の質の改善につながる研究開発を推進する。

障害のある身体機能、感覚器機能、臓器機能等の改善、再生、補完を行うことによって、障害の軽減を図ることが期待できることから、低侵襲手術やコンピューター技術等を活用した外科的治療、筋骨格系の維持や疾病治療等のための再生医療、身体機能や内臓機能の代替・補完等の支援機器に関する研究開発等を推進する。

脳機能研究の推進により、高次脳機能障害、感覚認知機能障害等に関し、新たな診断法の開発、医学的リハビリテーションの効率化及び訓練プログラムの改善を進める。

「キレる子」、「社会的ひきこもり」など心の健康に関連する問題の予防と対応のため、脳及び精神機能の発達と行動形成過程の解明、教育等の対応手法等に関する研究開発を推進する。

<5>専門職種の養成・確保

理学療法士、作業療法士、視能訓練士、義肢装具士、言語聴覚士、精神保健福祉士及び司法精神医療、児童精神医療等に係る医師、看護師等の養成と適切な配置を図る。

地域の保健・医療・福祉事業従事者の連携を図り、障害の原因となる疾病等の予防から福祉施策まで適切に提供できる体制を整備するための基礎となる専門職員の資質の向上を図る。

医師等の臨床研修及び生涯教育の充実等を図る。

7 情報・コミュニケーション

(1)基本方針

IT(情報通信技術)の活用により障害者の個々の能力を引き出し、自立・社会参加を支援するとともに、障害によりデジタル・ディバイドが生じないようにするための施策を積極的に推進するほか、障害特性に対応した情報提供の充実を図る。

(2)施策の基本的方向

<1>情報バリアフリー化の推進

障害者のリテラシー(情報活用能力)の向上のため、研修・講習会の開催、障害者のITの利用を支援する支援技術者の養成・育成を推進するための施策を促進するとともに、障害者のIT利用を総合的に支援する拠点の整備を推進する。

障害者が容易に情報を発信し、情報にアクセスできるよう、使いやすい情報通信機器、システム等の開発・普及等を促進するとともに、ISO/IECガイド71(高齢者・障害者のニーズへの配慮ガイドライン)に基づき、障害者にとって使いやすいように配慮した情報通信機器設計の指針等をJIS(日本工業規格)化する。

各省庁、地方公共団体は公共調達において、障害者に配慮した情報通信機器、システムの調達に努力する。

行政情報について、ホームページ等のバリアフリー化を推進する。

<2>社会参加を支援する情報通信システムの開発・普及

選挙における障害者の投票を容易にする手段として、電子投票の導入を推進する。

障害者のITの利用を促進するため、情報通信機器の取得を支援する施策を推進する。

SOHO(在宅や小規模な事務所での勤務)、テレワーク(情報通信を利用した在宅勤務等)などITの活用による障害者の就業のための取組を推進する。

<3>情報提供の充実

聴覚障害者情報提供施設について、全都道府県での整備を促進する。

放送事業者の協力も得て、字幕番組、解説番組、手話番組など障害者に配慮した情報提供の一層の拡充のための施策を推進する。

点字図書、字幕付きビデオなど視聴覚障害者への情報提供サービスの充実を図るとともに、公共サービスにおいては、点字、録音物等による広報の促進を図る。また、字幕付きビデオ作成に係る著作権の運用改善を図る。

<4>コミュニケーション支援体制の充実

コミュニケーション支援を必要とする視聴覚障害者に対する手話通訳者、要約筆記者及び盲ろう通訳者の養成研修を推進するとともに、これらの派遣体制の充実強化を推進する。

各種サービス窓口における手話のできる職員の育成、配置を働きかけるとともに、国民の手話に対する理解と協力を促進する。

8 国際協力

(1)基本方針

「アジア太平洋障害者の十年」が2003(平成15)年から更に10年間延長されたこと等も踏まえ、障害者団体間の交流、政府や民間団体による各種協力の実施等によるアジア太平洋地域への協力関係の強化に努める。

(2)施策の基本的方向

<1>国際協力等の推進

ネットワークづくりや推進体制の整備により、リハビリテーション等の技術交流、情報の交換、技術指導者の養成等の国際協力を一層推進する。特に、アジア太平洋地域における国際協力に積極的に取り組む。

また、国際協力に当たっては、相手国の実態やニーズを十分把握するとともに、援助を受ける国の文化を尊重し、その国のニーズに応じ柔軟に対応する。

<2>障害者問題に関する国際的な取組への参加

国連や各種の国際的な非政府機関における障害者問題についての条約や行動計画、ガイドラインの作成等の取組等に積極的に参加する。

<3>情報の提供・収集

我が国の国内施策を諸外国へ紹介するとともに、各国の施策の現状に関する情報の収集、提供等に努める。

<4>障害者等の国際交流の支援

障害者問題に関する国際的な取組等に貢献する観点から、障害者団体等による国際交流を支援する。

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IV 推進体制等

1 重点施策実施計画

重点的に取り組むべき課題について、基本計画に基づく諸施策の着実な推進を図るため、具体的な目標及びその達成期間を定めた重点施策実施計画を策定し実施する。重点施策実施計画を策定したときは、速やかに公表し、広く関係者に周知を図るとともに、その進ちょく状況を継続的に調査して公表する。

2 連携・協力の確保

効果的かつ総合的な施策の推進を図るため、障害者施策推進本部を中心として、内閣総理大臣のリーダーシップの下に関係行政機関の間の施策連携を強化する。

また、地域における総合的、計画的な施策の推進を図るため、都道府県との連携も図りつつ、複数市町村による広域の対応も含め市町村計画の策定を支援する。

全国的に均衡あるサービス水準の実現を図るため、地方公共団体との連携を図るとともに、地域福祉推進の観点から、障害者関係団体、NPO等民間団体、事業者団体、地方公共団体との連携・協力を推進する。

3 計画の評価・管理

障害者関係団体との意見交換やニーズ調査の実施等を通じて施策・事業の有効性についての検証を行い、効果的かつ適切な施策・事業を実施する。

また、障害者施策推進本部において基本計画の推進状況を継続的に点検するとともに、障害者のニーズや社会経済状況の変化等を踏まえて、必要に応じ計画を見直す。

4 必要な法制的整備

障害者関係の各種法令の見直し等による将来的に必要な法制的整備について検討する。

5 調査研究、情報提供

ニーズ調査、国内外の障害者施策の先進事例の収集・提供など調査研究、情報提供の充実を図る。

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用語(注)

1.ノーマライゼーション

障害者を特別視するのではなく、一般社会の中で普通の生活が送れるような条件を整えるべきであり、共に生きる社会こそノーマルな社会であるとの考え方。

2.リハビリテーション

障害者の身体的、精神的、社会的な自立能力向上を目指す総合的なプログラムであるとともに、それにとどまらず障害者のライフステージのすべての段階において全人間的復権に寄与し、障害者の自立と参加を目指すとの考え方。

3.バリアフリー

障害のある人が社会生活をしていく上で障壁(バリア)となるものを除去するという意味で、もともと住宅建築用語で登場し、段差等の物理的障壁の除去をいうことが多いが、より広く障害者の社会参加を困難にしている社会的、制度的、心理的なすべての障壁の除去という意味でも用いられる。

4.ユニバーサルデザイン

バリアフリーは、障害によりもたらされるバリア(障壁)に対処するとの考え方であるのに対し、ユニバーサルデザインはあらかじめ、障害の有無、年齢、性別、人種等にかかわらず多様な人々が利用しやすいよう都市や生活環境をデザインする考え方。

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