第2編 全般的推進状況(平成24年度を中心とした障害者施策の取組)
第4章 日々の暮らしの基盤づくり
第1節 生活安定のための施策
2.在宅サービス等の充実
(1) 在宅サービスの充実
障害のある人が地域で普通に暮らしていくためには、在宅で必要な支援を受けられることが前提となる。このため、「障害者総合支援法」においては、利用者の実態に応じた支援を行う観点から、利用者像やサービスの提供形態に応じ、居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護及び重度障害者等包括支援を実施している。
居宅介護…入浴等の介護や調理等の家事の援助等を短時間集中的に行うサービス
重度訪問介護…身体に重度の障害のある人に対し、入浴等の介護や調理等の家事の援助等のほか、日常生活に生じる様々な介護の事態に対応するための見守り等の支援や外出時における移動中の介護を、長時間行うサービス
同行援護…重度の視覚障害のある人に対し、外出時において同行し、移動に必要な情報を提供するほか、移動に必要な支援等を行うサービス
行動援護…行動上著しい困難を有する知的障害のある人又は精神障害のある人に対し、行動する際に生じ得る危険等を回避するために必要な支援等を行うサービス
重度障害者等包括支援…著しく重度の障害のある人の様々なニーズに応えて、円滑にサービス利用が可能となるよう、利用者のその時々の心身の状態等に応じて必要となる複数の障害福祉サービスを組み合わせて、包括的に提供するサービス
これらの居宅介護に加え、自宅で介護する人が病気の場合などに、短時間、夜間も含めて施設において入浴等の介護を行うサービスである短期入所も行っている。
(2) 住居の確保
ア 福祉施策における住居の確保支援
障害のある人が地域で安心して暮らすことができるよう、単身での生活が困難な障害のある人が共同して自立した生活を営む場として、共同生活介護(ケアホーム)と共同生活援助(グループホーム)を位置づけているところである。ケアホームについては、介護が必要な人を対象に食事や入浴等の介護、金銭管理や相談等の支援を行うこととし、グループホームについては、介護が必要ではない人を対象に金銭管理や相談等の支援を行うこととしている。ケアホームとグループホームの利用者については、それまで知的障害のある人や精神障害のある人としてきたところであるが、平成21年10月からは身体障害のある人(65歳未満の人又は65歳になる前に障害福祉サービス等を利用したことがある人)も利用することができることとしたところである。
地域生活支援事業における相談支援事業に住宅入居等支援事業(居住サポート事業)を位置づけ、公的賃貸住宅及び民間賃貸住宅への入居を希望する障害のある人に対して、不動産業者に対する物件のあっせん依頼及び家主等との入居契約手続等といった入居支援や、居住後のサポート体制の調整をしている。また、障害のある人が地域の中で生活することができるように、低額な料金で居室などを利用する福祉ホーム事業を実施しているほか、福祉ホーム等に居住する身体に障害のある人を対象に、身辺の介助や生活相談などのサービスを提供する身体障害者自立支援事業を実施している。
なお、今後、障害者の高齢化・重度化が進展し、介護が必要な障害者のグループホームの新規入居や、グループホーム入居後に介護が必要となるケースが増加することが見込まれることから、平成26年度の「障害者総合支援法」の施行により、ケアホームをグループホームに一元化し、外部サービスの利用規制の見直し等によってより柔軟なサービス提供を可能とすることとしている。
イ 住宅施策における住宅の確保支援
障害のある人等の住宅の確保に特に配慮を要する者の居住の安定を確保することは、「住生活基本法」の基本理念の一つであり、その理念に則り賃貸住宅の供給促進に関する基本事項等を定めた「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」に基づき、以下の通り公営住宅やそれを補完する公的賃貸住宅の的確な供給及び民間賃貸住宅への円滑な入居の支援等の各種施策を一体的に推進している。
<1> 障害のある人に配慮した公的賃貸住宅の供給
公的賃貸住宅は、障害のある人の心身の状況、その他の配慮を必要とする事情を勘案し、以下のように供給されている。
公営住宅においては、入居者の募集・選考に際し、障害のある人を含む世帯は特に住宅困窮度が高いものとして、地方公共団体の裁量により一定の上限の下、入居者の収入基準を緩和するとともに、当選率の優遇、別枠選考等の措置を講じている。
地域優良賃貸住宅制度においては、民間事業者等に対し、整備費及び家賃減額のための助成を行い、障害のある人を含む世帯等を対象とした良質な賃貸住宅の供給を促進している。本制度においては、障害のある人を含む世帯について地方公共団体の裁量により別枠選考等の措置ができるものとしている。
また、独立行政法人都市再生機構賃貸住宅(以下、「都市再生機構賃貸住宅」)においては、障害のある人を含む世帯に対して、入居者の収入基準の緩和、1階又はエレベーター停止階への住宅変更、新規賃貸住宅募集時の当選倍率の優遇、既存賃貸住宅募集時の優先申込期間の設定等の措置を講じている。
<2> 民間賃貸住宅への円滑な入居の促進
障害のある人等の民間賃貸住宅への円滑な入居を促進するため、地方公共団体や関係事業者、居住支援団体等が組織する居住支援協議会が行う相談・情報提供等に対して支援を行っている。
また、大家の不安を解消するという観点から、障害のある人を含む世帯の家賃債務保証を実施し、その民間賃貸住宅への円滑な入居を支援している。なお、家賃債務に加え、原状回復や訴訟に要する費用も保証の対象にしている。
ウ 住宅施策と福祉施策との連携
公的賃貸住宅の整備に際して、障害のある人の生活に関連したサービスを備えた住宅を整備するため、障害者福祉施設との一体的な整備を推進するとともに、障害のある人を対象とした住まいづくり・まちづくりに関する先導的な取組についても支援している。
公営住宅については、障害のある人の共同生活を支援することを目的とするグループホーム・ケアホーム事業へ活用することができることとしており、公営住宅等を障害のある人向けのグループホーム・ケアホームとして利用するための改良工事費について支援している。
また、生活支援サービス付き公営住宅(シルバーハウジング)については、住宅施策と福祉施策の密接な連携の下に供給されているところであり、地方公共団体の長が特に必要と認める場合に、障害のある人を含む世帯の入居を可能とし、その居住の安定を図っている。
民間賃貸住宅については、居住支援協議会を活用した民間賃貸住宅への入居の円滑化を促進し、障害のある人の一般住宅への入居を支援している。
また、住宅市街地総合整備事業、優良建築物等整備事業、市街地再開発事業等において、デイサービスセンター、保育所等の社会福祉施設等を合築・併設する場合、一定の条件を満たすものに対し建築主体工事費の一部を補助対象に上乗せし、障害のある人等の生活しやすい市街地環境の形成を図っている。
(3) 自立及び社会参加の促進
障害のある人が社会の構成員として地域で共に生活することができるようにするとともに、その生活の質的向上が図られるよう、生活訓練、コミュニケーション手段の確保等必要な社会参加促進施策を行っている。
平成18年10月から、市町村及び都道府県が創意工夫によって地域の特性や利用者の状況に応じて柔軟に事業を行う地域生活支援事業を実施し、障害のある人の社会参加と自立支援を推進している。
なお、平成14年度に「身体障害者補助犬法」が成立し、14年10月から身体に障害のある人が公共的施設等を利用する場合において、身体障害者補助犬(盲導犬、介助犬及び聴導犬)の同伴が可能となり、15年10月からは不特定かつ多数の者が利用する施設への同伴が可能となった。さらに、平成19年度に「身体障害者補助犬法の一部を改正する法律」が成立し、20年4月から、都道府県等が苦情の申し出等に関する対応をすることが明確化され、同年10月から、一定規模以上の事業所や事務所において、勤務する身体障害者が補助犬を使用することを拒んではならないこととされている。
また、都道府県地域生活支援事業において、身体障害者補助犬育成事業が実施されている。
国立障害者リハビリテーションセンター自立支援局においては、視覚に障害のある人を対象に、日常生活や社会活動に必要な訓練(歩行、点字、パソコン、調理、ロービジョン(保有視覚機能を最大限に活用するための訓練)等)の実施や、重度の肢体不自由のある人を対象に、医学的管理の下に日常生活に必要な機能回復訓練、日常生活動作訓練、職能訓練等を実施し、より充実した社会生活を円滑に送ることを目的とした自立訓練(機能訓練)を行っている。
また、高次脳機能障害のある人が、職場や家庭で自立して生活する力を身につけるための日常生活訓練や記憶障害等の代償手段の獲得のため、メモリーノート等の福祉機器を活用した訓練等を実施し、日常生活や社会生活に必要な力を高めることを目的とした自立訓練(生活訓練)を行っている。
その他、重度の知的障害のある児童を対象に、基本的生活習慣の確立や情緒の安定を図ることを目的とした施設支援の他、自閉症等の特有の発達障害を有する在宅の児童に対し、「外来診療」、「通園療育指導事業」及び「発達障害児及び家族包括支援事業(家族短期入所事業)」を実施している。
(4) 発達障害児・者施策の充実
ア 「発達障害者支援法」成立の背景
自閉症や学習障害、注意欠陥多動性障害等の発達障害は、これまで既存の障害者制度の谷間に置かれ、その発見や対応は遅れがちであり、既存の障害者制度に加え、それぞれの障害特性やライフステージに応じた発達支援が必要であると指摘されてきた。これらの状況に対応し、発達障害のある人の生活全般にわたる支援を図り、もってその福祉の増進に寄与することを目的として「発達障害者支援法」が平成16年12月に成立した。これにより発達障害の定義、発達障害のある人に対するライフステージを通した一貫した支援や関係機関の連携の必要性等が示され、発達障害のある人の支援のための体制整備が進められることとなった。
イ 「発達障害者支援法」の概要
<1> 法律の趣旨
発達障害のある人については、症状の発現後できるだけ早期の発達支援が特に重要であることから、発達障害を早期に発見し、発達支援を行うことに関する国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、発達障害のある人に対し学校教育等における支援を図る。
<2> 主な内容
- 発達障害の定義
「発達障害者支援法」における「発達障害」とは、「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」とされている。発達障害の定義が明らかになったことにより支援の対象が明確になった。 - ライフステージを通した一貫した支援
「発達障害者支援法」では、「国及び地方公共団体は、発達障害のある児童に対し、発達障害の症状の発現後できるだけ早期に、その者の状況に応じて適切に、就学前の発達支援、学校における発達支援その他の発達支援が行われるとともに、発達障害のある人に対する就労、地域における生活等に関する支援及び発達障害のある人の家族に対する支援が行われるよう、必要な措置を講じるもの」とされている。児童の発達障害の早期発見、早期の発達支援、保育、教育、放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の利用、就労支援、地域での生活支援、権利擁護及び家族への支援など、発達障害のある人のライフステージにおける一貫した支援の流れが明確にされるとともに、これにかかる国や地方公共団体の責務が明らかにされた。 - 関係機関の連携
「発達障害者支援法」では、「国及び地方公共団体は、発達障害者の支援等の施策を講じるに当たっては、医療、保健、福祉、教育及び労働に関する業務を担当する部局の相互の緊密な連携を確保するとともに、犯罪等により発達障害者が被害を受けること等を防止するため、これらの部局と消費生活に関する業務を担当する部局その他の関係機関との必要な協力体制の整備を行うもの」とされている。発達障害のある人の地域におけるライフステージを通した一貫した支援を行うために、多岐にわたる関係機関の連携やネットワークを構築して発達障害のある人への支援体制を構築することが必要である。 - 理解の促進
発達障害のある人の福祉についての理解、発達障害のある人の社会参加への協力が国民の責務とされている。また、国及び地方公共団体は、発達障害に関する国民の理解を深めるため、必要な広報その他の啓発活動を行うものとされている。 - 専門家の養成等
専門的な医療機関の確保、専門的知識を有する人材の確保、調査研究等が定められている。
ウ 発達障害者支援の推進
<1> 発達障害者支援の体制整備
「発達障害者支援法」の施行を踏まえ、厚生労働省においては、平成17年度から、発達障害のある人の乳幼児期より成人期までの各ライフステージに対応する一貫した支援体制の整備を図るため、「発達障害者支援体制整備事業」を実施している。具体的には、(1) 各ライフステージに対応する一貫した支援を行うための関係機関のネットワークの構築、(2) 発達障害に係る理解を深めるとともに地域における支援につなげていくためのアセスメントツール(発達障害を早期発見し、その後の経過を評価するための確認票)の導入を促進する研修会の実施、(3) 発達障害のある子どもを育てた親がその経験を活かし、子どもが発達障害の診断を受けて間もない親などに対して相談や助言を行うペアレントメンターの活動の推進や、その活動をコーディネートする者の配置などを行い、地域における発達障害者に対する支援体制の充実を図っている。
<2> 発達障害者支援センター運営事業
厚生労働省においては、発達障害者及びその家族等に対して相談支援、発達支援、就労支援及び情報提供など行う「発達障害者支援センター」の整備を図ってきたところであり、平成24年度までに全67都道府県・指定都市に設置された。
<3> 支援手法の開発と情報発信
平成19年度から、発達障害のある人やその家族、関係者等に対する支援方策をモデル事業として実施し、有効な支援手法の開発を行う「発達障害者支援開発事業」を実施するとともに、全国の発達障害者支援センターの中核拠点としての役割を担う、国立障害者リハビリテーションセンターに設置されている発達障害者情報・支援センターにおいて、発達障害に関する各種情報を発信し、支援手法の普及や国民の理解の促進を図っている。
<4> 発達障害の早期支援
平成23年度から、発達障害等に関して知識を有する専門員が保育所等を巡回し、施設の職員や親に対し、障害の早期発見・早期対応のための助言などの支援を行う「巡回支援専門員整備事業」を実施し、地域における発達障害者に対する支援体制の充実を図っている。
(5) 各種障害への対応
ア 盲ろう者への対応
盲ろう者とは、「視覚と聴覚に障害がある者」であり、全盲ろう、盲難聴、弱視ろう、弱視難聴の4つのタイプがある。平成18年7月に実施された調査結果において、盲ろう者は、2万2,000人と推計されている。
盲ろう者は、その障害の程度や生育歴等により、コミュニケーション方法も触手話、指文字、指点字、手書き文字など多様な方法があり、コミュニケーションの保障や情報入手、移動の支援が重要である。
平成23年度の地域生活支援事業においては、盲ろう者の自立と社会参加を図るため、コミュニケーションや移動の支援を行う「盲ろう者通訳・介助員養成研修事業」については、43都道府県で、盲ろう者向け通訳・介助員を派遣する「盲ろう者向け通訳・介助員派遣事業」については、全都道府県で実施された。
また、コミュニケーション手段の確保、外出のための移動支援など、社会参加を促進するためのサービス支援の人材確保や派遣事業等を引き続き充実していくことが必要であり、国立障害者リハビリテーションセンターにおいて、盲ろう者通訳・介助員養成・研修を行う指導者の研修を実施し、サービス支援の人材育成を行っている。
平成22年度から23年度にかけて、国立障害者リハビリテーションセンターで行った、盲ろう者宿泊型生活訓練等モデル事業を基に、23年度はモデル事業報告書及び生活訓練等マニュアルを作成した。
また、平成24年度は、生活訓練等マニュアルを基に地域の施設において生活訓練等を実施しており、今後も継続して盲ろう者の地域における生活訓練のあり方について検討を行うこととしている。
イ 強度行動障害への対応
強度行動障害児(者)とは、ひどい自傷、強い他害、激しいこだわりや器物破損、睡眠の大きな乱れのほか、拒食、異食等の食事面の問題や、便こねや強迫的に排尿排便を繰り返すなど排せつ面の問題など、生命維持にも危険を及ぼすような行動上の問題があり、その養育環境では著しく処遇の困難なものをいい、強度行動障害児(者)等に対しては、行動障害の軽減を目的として障害児入所施設等の指定施設において特別処遇が行われている。
特別処遇は、児童相談所、知的障害者更生相談所、福祉事務所等の関係機関と連携を取りながら個別プログラムに基づき3年以内を目処として実施されており、障害の軽減が図られた場合、施設内処遇の変更や他施設への移行あるいは退所する等によって終了する。
なお、「障害者総合支援法」においては、行動援護や重度障害者支援加算など、強度行動障害のある人への支援体制のさらなる充実を図っている。
ウ 難病患者等への対応
平成24年度までは、難病患者等の居宅における療養生活を支援するため、要介護の状況にありながら「障害者自立支援法」等の施策の対象とならない等の要件を満たす難病患者等を対象として、市町村等を事業主体として、難病患者等居宅生活支援事業を実施していた。
しかし、平成25年4月から施行された「障害者総合支援法」においては、障害者の定義に難病患者等を追加して障害福祉サービス等の対象とし、新たに対象となる難病患者等は、身体障害者手帳の所持の有無にかかわらず、必要に応じて障害程度区分の認定などの手続きを経た上で、市区町村において必要と認められた障害福祉サービス等(障害児にあっては、児童福祉法に基づく障害児支援)が利用できることとなった。また、「障害者総合支援法」における難病等の範囲については、当面の措置として、難病患者等居宅生活支援事業の対象疾病と同じ範囲として施行されたが、新たな難病対策における医療費助成の対象疾患の範囲等に係る今後の検討を踏まえ、見直しを行うこととしている。
シルバーハウジング・プロジェクトとは?
住宅部局と福祉部局が連携することにより、公営住宅等について、手すり・緊急通報装置の設置等の高齢者の安全や利便に配慮した設備・仕様とし、併せてデイサービスセンター等福祉施設との併設、又はライフサポートアドバイザーの配置により生活を支援しています。入居者は高齢者世帯ですが、事業主体の長が特に必要と認める場合に限り、以下の障害者世帯についても対象とすることとしています。
- 障害者単身世帯
- 障害者のみの世帯
- 障害者とその配偶者のみからなる世帯
- 障害者と高齢者(60歳以上)又は高齢者夫婦(夫婦のいずれか一方が60歳以上であれば足りる。)のみからなる世帯
発達障害の早期発見・早期支援に向けた取組
自閉症を含む発達障害は、できる限り早期に発見し、適切な支援につなげていくことが重要です。1歳6ヶ月及び3歳児を対象とした健康診査で発達障害の早期発見に留意するだけでなく、身近な保護者の方や周囲の方が正確な知識を基に早い時期から気付くことなども重要であり、今日、発達障害の早期発見・早期支援に向けた様々な取組が行われています。
◯発達障害情報センター
発達障害は、「どのような能力に障害があるのか」「どの程度の障害なのか」「どのような支援があれば能力が発揮できるのか」等が周りから見て理解されにくいこと、誤った情報によって不適切な対応を受けることがあること等から、社会参加について様々な困難さを抱えています。このような状況を踏まえて、厚生労働省では平成20年3月28日に発達障害情報センターを開設し、WEBサイトを通して、本人・家族の方、発達障害を知りたい方、発達障害に関わる方(支援者)に対して、発達障害の気付き方や相談窓口などの情報提供を開始しました。また、平成20年10月からは国立障害者リハビリテーションセンターに同センターを移管し、引き続き情報提供及び普及・啓発活動を行っています。
発達障害に関する信頼のおける情報を分りやすく提供することによって、保護者や周囲の人が早い時期から気付き、本人が適切な理解と支援を速やかに受けられるようになることを目指しています。
◯民間団体との協力
発達障害のある人一人ひとりに合わせた支援を提供するためには、様々な機関の役割分担や協力が必要となっており、民間団体と行政との協力も重要な課題となっています。このため、先進的な支援手法の開発とその検証を行う「発達障害者支援開発事業」におけるモデル事業の実施を社会福祉法人や特定非営利活動法人等にも委託できることとし、民間団体との協力体制を整備しています。
例えば、同事業において、佐賀県の「特定非営利活動法人それいゆ」は、これまで行政の施策としては十分ではなかった親同士の支え合いを行う「ペアレントメンター(信頼のおける相談相手という意味)」の養成に取り組んでいます。ペアレントメンターは、特に、診断前後の親に対して専門家とは別の役割を担い、例えば、同じ親として話を聞くことや共感すること、地域の情報を提供することによって、様々な疑問や不安に応えることを目指しています。このような取組を国としても十分に検証し、支援手段として確立させ、発達障害情報センターを通して全国に普及を図ることとしています。
◯地方自治体での多様な取組
発達障害の中には、注意欠陥多動性障害など、3歳児の健康診査の後に、保育所などの集団生活のなかで問題が明らかとなる場合があります。このため、保育所などにおいて的確に気付き、保健指導につなげていくことが重要となりますが、一部の地方自治体では、5歳児を対象とした健康診査などを実施しているところもあります。鳥取県では、平成19年度からすべての市町村において5歳児健康診査あるいは5歳児発達相談が行われています。地方自治体における地域の実情に応じた多様な取組が期待されています。