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第2編 全般的推進状況(平成24年度を中心とした障害者施策の取組)

第5章 住みよい環境の基盤づくり

第1節 障害のある人の住みよいまちづくりのための施策

5.安全な交通の確保

(1) 安全かつ円滑な通行の確保
ア 生活道路対策の推進

近年の交通死亡事故の発生状況を状態別に分析してみると、自動車乗車中に比較して、歩行中の減少割合が小さく、自動車と比較して弱い立場にある歩行者の安全を一層確保することが必要であることから、すべての人が安全に安心して歩くことができるよう、生活道路を中心に、都道府県公安委員会と道路管理者が連携し、信号機の新設・高度化、歩道等の整備、車両速度を抑制するような道路構造の採用等の対策を進め、特に一定の市街地等において、最高速度 時速30kmの区域規制、路側帯の設置・拡幅等を行い、歩車が共存する安全で安心な道路空間を創出する「ゾーン30」を整備するなど、面的かつ総合的な死傷事故抑止対策を推進している。

イ 利用する視点からの歩行空間の整備

歩行空間の整備に当たっては、様々な利用者の視点を踏まえて整備され、整備後も、不法占用や放置自転車のない歩行環境が確保されるよう、行政と住民・企業など地域が一体となった取組を行っていく必要がある。このようなことから、様々な利用する人の視点に立って道路交通環境の整備が行われ、適切な利用が図られるよう、「交通安全総点検」の点検結果を新規整備の際に活用するなど計画段階から住民が参加した整備を推進している。

ウ 障害のある人等の利用に配慮した信号機等の設置

鳥の声を模した音を出して歩行者に歩行者用青信号を表示していることを知らせる視覚障害者用付加装置付信号機や、押ボタンを押したり携帯用発信機を操作したりすることにより歩行者用青信号の時間が延長される高齢者等感応信号機、携帯情報端末等を通じて安全な歩行に必要な情報を提供するPICS(歩行者等支援情報通信システム)等、障害のある人等の利用に配慮した交通安全施設の整備を推進している。

また、道路を横断する目の不自由な人の安全性、利便性を向上させるために、目の不自由な人が横断歩道を横断するときに横断方向の手がかりとなる「エスコートゾーン」を横断歩道上に設置することに関する基準を示している。

エ 障害のある人等が運転しやすい道路交通環境の整備

障害のある人を含むすべての人が安心して運転できるよう、ゆとりある道路構造の確保や視環境の向上、疲労運転の防止等を図ることとし、道の駅等の休憩施設の整備、付加車線(ゆずり車線)の整備、道路照明の増設を行うとともに、高速自動車国道等のサービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)、自動車駐車場等において障害者用トイレや障害者用駐車スペース等の設置を実施している。

障害のある人を含むすべての人が運転しやすい環境を実現するために、信号灯器のLED化、道路標識の大型化・高輝度化、道路標示の高輝度化、交通情報提供装置の整備、道路情報板、情報ターミナル等の道路情報提供装置やそれを支える光ファイバ網等の情報通信基盤の整備を推進している。

また、「道路交通法」においては、肢体不自由を理由として免許に条件を付された者が、身体障害者標識を表示して普通自動車を運転している場合には、他の運転者は、危険防止のためやむを得ない場合を除いて、その普通自動車に対して幅寄せや割込みをすることが禁止されている。さらに、同法においては、身体に障害のある歩行者等その通行に支障がある歩行者が道路を横断し、又は横断しようとしている場合において、当該歩行者から申出があったときその他必要があると認められるときは、警察官等その他その場所に居合わせた者は、当該歩行者が安全に道路を横断することができるように努めなければならないこととし、車両等の運転者は、身体に障害のある歩行者等その通行に支障のある者が通行しているときは、その通行を妨げないようにしなければならないこととされている。

聴覚障害のある人については、平成24年4月からは、道路交通法施行規則の改正により、ワイドミラー又は補助ミラーの装着を条件に、全ての普通自動車を運転できることとなり、平成24年12月末日現在、607人がこの条件で普通自動車免許を保有していた。また、大型自動二輪車、普通自動二輪車、小型特殊自動車及び原動機付自転車も運転できることとなった。聴覚障害のある人が普通自動車を運転する際には、聴覚障害者標識の表示が義務付けられており、聴覚障害者標識を表示した自動車に対する幅寄せや割込みは禁止されている。警察では、聴覚障害者標識に関する広報啓発を行うとともに、聴覚障害のある人が安全に運転できるよう、関係団体と連携し、免許取得時の教習等の充実や周囲の運転者が配慮すべき事項についての安全教育に努めている。

さらに、警察では、高齢者、障害のある人等が運転し、都道府県公安委員会が交付した専用場所駐車標章を掲示した普通自動車に限り、高齢運転者等専用駐車区間に駐車又は停車することができることとする高齢運転者等専用駐車区間の制度を活用して、高齢者、障害のある人等による駐車の支援に努めている。

オ 走行音の静かなハイブリッド車等への対策

ハイブリッド車や電気自動車は、登録台数が近年急増しており、今後さらに増加するものと予想されている。一方、これらの自動車は「音がしなくて危険と感じる」との意見が寄せられていることを受け、国土交通省においては、学識経験者、視覚障害者団体、自動車メーカー等からなる「ハイブリッド車等の静音性に関する対策検討委員会」の結果を踏まえて、平成22年1月に「ハイブリッド車等の静音性に関する対策のガイドライン」を定めるとともに、自動車メーカー等の関係者に周知し、対策の早期普及を促すこととした。現在は、国際統一基準の策定に向けた取り組みを実施している。

(2) 電動車いすの型式認定

「道路交通法」上、一定の基準に該当する原動機を用いる身体障害者用の車いすを通行させている者は歩行者とされるが、平成24年度において、その基準に該当する3型式が型式認定された。

(3) 運転免許取得希望者への配慮

身体に障害のある運転免許取得希望者の利便の向上を図るため、各都道府県警察の運転免許試験場に、スロープ、エレベーター等を整備することに努めているほか、運転適性相談窓口を設け、身体に障害のある人の運転適性について知識の豊富な職員を配置して、運転免許取得に関する相談を行っている。

また、身体に障害のある人が、身体の状態に応じた条件を付すことにより、自動車の安全な運転に支障を及ぼすおそれがないと認められるときは、標準の試験車両以外の車を運転免許試験場に持ち込んで技能試験を受けることができることとしているほか、指定自動車教習所に対しても、身体に障害のある人の持ち込み車両による教習の実施や施設の改善等を指導している。

このほか、知的障害のある運転免許取得希望者の利便の向上を図るため、学科試験の実施に当たり、試験問題の漢字に振り仮名を付けるなどの対応をしている。

■ 図表2-52 条件付運転免許の保有者数(平成24年)
条件 人数
補聴器の使用 38,691人
補聴器の使用(使用しない場合はワイドミラー又は補助ミラーと聴覚障害者標識を付けた普通自動車に限定) 315人
ワイドミラー又は補助ミラーを付けた普通自動車に限定 607人
身体障害者用車両に限定 206,203人
義手、義足又は装具の条件 4,046人
合計 249,862人
注: 上記区分中、2種類以上の条件が付されている場合は、表の上側となる区分に計上。
資料: 警察庁
身体障害者標識 聴覚障害者標識
■ 図表2-53 バリアフリー対応型信号機の設置状況(平成23年度末現在)
種類 基数
高齢者等感応信号機 6,624基
歩行者感応信号機 1,339基
視覚障害者用付加装置 17,824基
音響式歩行者誘導付加装置 3,022基
歩行者支援装置 653基
資料: 警察庁
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