目次]  [戻る]  [次へ

第6章 日々の暮らしの基盤づくり

第1節 生活安定のための施策

3.経済的自立の支援

(1)年金制度等による所得保障

障害のある人に対する所得保障は、障害のある人の経済的自立を図る上で極めて重要な役割を果たしており、障害基礎年金や障害厚生(共済)年金の制度と、障害による特別の負担に着目し、その負担の軽減を図るために支給される各種手当制度がある。

我が国は、国民皆年金体制が確立され、原則としてすべての国民がいずれかの年金制度に加入することとされている。これによって、被保険者期間中の障害については障害基礎年金や障害厚生(共済)年金が支給されるほか、国民年金に加入する20歳より前に発した障害についても障害基礎年金が支給されることから、原則としてすべての障害のある成人が年金を受給できることになり、年金は障害のある人の所得保障において重要な役割を果たしている。

年金制度は、全国民共通の基礎年金とサラリーマンや公務員に対し基礎年金の上乗せとして厚生年金や共済年金が支給されるという、いわゆる2階建ての体系がとられている。

年金制度による障害のある人の所得保障については、昭和60年改正の際の障害福祉年金から障害基礎年金への移行による大幅な年金額の引上げや支給要件の改善など、これまで着実にその充実が図られてきた。

近年では、平成16年改正の際の障害を有しながら働いたことを年金制度上評価する仕組みとしての障害基礎年金と老齢厚生年金等の併給を可能とする障害年金の改善等が行われているほか、平成23年4月からは、障害年金受給者に対する、子や配偶者がいる場合の加算の対象範囲が拡大されている。

平成24年には、社会保障・税一体改革の一環として、年金制度の枠外で、障害基礎年金受給者等に対して、福祉的な給付金を支給する「年金生活者支援給付金の支給に関する法律」が成立し、消費税の引上げと合わせて、平成27年10月から実施される予定である。また、平成25年には、障害基礎年金等の支給要件の特例措置(直近1年間において保険料の滞納がないこと)の延長が行われている。

昭和60年の年金制度の改革に伴い、それまで重度の障害のある人に対して支給されていた福祉手当についても見直しが行われ、特に重度の障害のある人を対象とする特別障害者手当と、障害基礎年金が支給されない重度の障害のある児童に支給される障害児福祉手当とに改編された。同時に、特別障害者手当の支給額が福祉手当と比較してほぼ倍額に引き上げられた。このほか、障害のある児童の父母等に対しては、従来より、特別児童扶養手当を支給している。

これらの年金及び手当については、毎年物価の変動等に合わせて支給額の改定が行われている。

また、「特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律」により、平成3年度前の国民年金任意加入対象であった学生や、昭和61年度前の国民年金任意加入対象であった被用者の配偶者のうち任意加入していなかった間に障害を負ったことにより障害基礎年金を受給していない者について、上記に述べたような国民年金制度の発展過程において生じた特別な事情を踏まえ、特別障害給付金の支給が行われている。

(2)個人財産の適切な管理の支援

認知症の人、知的障害のある人、精神障害のある人など、判断能力の不十分な人々の財産管理の支援等に資する成年後見制度について周知を図った。

また、都道府県・指定都市社会福祉協議会等では、認知症高齢者、知的障害のある人、精神障害のある人等のうち判断能力が十分でない方々の自立を支援するため、日常生活自立支援事業において、福祉サービスの利用に伴う預金の払い戻しや預け入れの手続等、利用者の日常的な金銭管理に関する援助を行っている。

図表6-14 障害年金のあらまし(平成26年度)
■ 図表6-15 年金、手当及び給付金の額の推移
(単位:円)
平成11~14年度 平成15年度 平成16年度 平成17年度 平成18年度 平成19年度 平成20年度 平成21年度 平成22年度 平成23年度 平成24年度 平成25年度 平成26年度
障害基礎年金 (1級) 83,775 83,025 82,758 82,758 82,508 82,508 82,508 82,508 82,508 82,175 81,925 81,925 80,500
(2級) 67,017 66,417 66,208 66,208 66,008 66,008 66,008 66,008 66,008 65,741 65,541 65,541 64,400
特別児童扶養手当 (1級) 51,550 51,100 50,900 50,900 50,750 50,750 50,750 50,750 50,750 50,550 50,400 50,400 49,900
(2級) 34,330 34,030 33,900 33,900 33,800 33,800 33,800 33,800 33,800 33,670 33,570 33,570 33,230
特別障害者手当 26,860 26,620 26,520 26,520 26,440 26,440 26,440 26,440 26,440 26,340 26,260 26,260 26,000
障害児福祉手当 14,610 14,480 14,430 14,430 14,380 14,380 14,380 14,380 14,380 14,330 14,280 14,280 14,140
特別障害給付金 (1級) 50,000 50,000 49,850 50,000 50,700 50,000 49,650 49,500 49,500 49,700
(2級) 40,000 40,000 39,880 40,000 40,560 40,000 39,720 39,600 39,600 39,760
資料:厚生労働省
(※)特例水準の解消のため、平成25年10月以降(12月支払い分以降)の年金額等は4月から9月までの額から1.0%(各手当については、0.7%)引き下がる。

(3)特別障害者扶養信託制度に係る非課税措置等の見直し

平成18年の「障害者自立支援法」の施行以後、知的障害や精神障害のある人を始めとする障害のある人の地域移行が進み、また、その高齢化も進む中で、障害のある人が「親亡き後」にも一人でも自立して生活できるように後押しをする支援が求められている。

特別障害者扶養信託制度は、昭和50年に創設された税制上の優遇措置であり、重度の障害のある人を受益者としてその親族等が金銭等の財産を信託した場合、受益者は贈与により取得したものとみなして贈与税が課税されるが、信託受益権の価額のうち6千万円までであれば贈与税を非課税にできるものである。この制度を活用すると、信託銀行等が財産の管理を行い、障害のある人に対し金銭を定期的に交付するので、生前贈与で親族等の財産を確実に手にすることができるだけでなく、障害のある人の金銭管理に資するものにもなっている。

特別障害者扶養信託制度は制度創設以来、重度の障害のある人のみを対象にしてきたが、上述のような障害のある人を取り巻く状況の変化や、中軽度の障害のある人であっても一定の日常生活・社会生活に係る制限を有していること等を踏まえ、平成25年度から、特定障害者扶養信託制度として、中軽度の知的障害や精神障害のある人も新たに対象とすることとなった(非課税限度額は3千万円)。

目次]  [戻る]  [次へ