第6章 日々の暮らしの基盤づくり
第1節 生活安定のための施策
5.スポーツ・文化芸術活動の推進
(1)スポーツの振興
ア 障害者スポーツ大会等の開催
障害のある人のスポーツに対する国民各層の理解と関心は年々高まりをみせており、現在では、全国各地で数多くのスポーツ大会やスポーツ教室が開催され、また、国際スポーツ大会に我が国から多数の選手が参加している。平成25年度においては、ロシアのソチで「ソチ2014パラリンピック冬季競技大会」が開催され、世界から547人の選手が参加し、日本からは20名のアスリートと35名のコーチ・役員が参加した。本大会は、4年に一度行われる身体・知的障害のある選手による世界最高峰の大会であり、夏季大会と冬季大会が開催されている。また、国際障害者年の記念行事として昭和56年より毎年開催され、第33回を迎えた「大分国際車いすマラソン大会」には、世界16か国から約250名の車いすランナーが出場した。本大会は世界初の車いす単独のマラソン大会であり、国際パラリンピック委員会公認大会となっている。
イ 障害者スポーツ指導者の養成
障害のある人がスポーツ活動を行うためには、それぞれの障害の特性に応じて適切な指導ができるスポーツ指導者の確保が不可欠である。このため、公益財団法人日本障がい者スポーツ協会において障害者スポーツ指導者制度を設け、同協会や都道府県が実施主体となってその養成を行っており、全国で21,955人(平成25年10月31日現在)が指導者として登録されている。
ウ 障害者スポーツ振興のための取組
障害者スポーツについては、公益財団法人日本障がい者スポーツ協会を中心として、障害者全体のスポーツの振興を進めている。具体的に、国においては、全国障害者スポーツ大会を開催するとともに、地域生活支援事業の一環として、「スポーツ・レクリエーション教室開催等事業」により、各地方公共団体による大会・教室の開催や障害者スポーツ指導者の養成、身近な地域でスポーツを親しめる環境の整備、パラリンピック等の国際大会に参加した選手を招いて障害者スポーツの楽しさを体験してもらう事業に対して支援を行っている。また、選手強化のため、世界大会でメダル獲得が有望な選手・団体に対し重点的な強化等の実施や、パラリンピック、デフリンピック、スペシャルオリンピックス世界大会等の国際大会が開催される年度には、選手団の派遣や国内強化合宿を実施している。その他、「社会福祉振興助成事業」を通じて、スポーツ振興への助成を行うとともに、同協会においても、組織強化や主催大会の実施、国際大会への日本選手団派遣、パラリンピック競技大会のメダリストへの報奨金や選手の育成強化を図るための、各企業への協賛や募金の呼びかけなどを行っている。
なお、平成23年6月にスポーツ基本法が成立し、その基本理念に障害のある人のスポーツを推進することが明記された。同法の規定に基づいて平成24年3月に策定された「スポーツ基本計画」の中でも、年齢や性別、障害等を問わず、広く人々が、関心、適性等に応じてスポーツに参画することができる環境の整備を基本的な政策課題としている。これを踏まえ、国では平成24年度より、障害のある人と障害のない人が地域において一体となってスポーツ・レクリエーション活動を行うことができるようにするための実践研究を行うとともに、地域におけるスポーツ・レクリエーション環境の実態を把握する調査を実施している。
また、国立障害者リハビリテーションセンター研究所では、平成24年より障害者スポーツ用具の開発及び改良を進めている。
平成26年度よりパラリンピック競技大会をはじめとする近年の障害者スポーツにおける競技性の向上等を踏まえ、公益財団法人日本障がい者スポーツ協会への補助や全国障害者スポーツ大会の開催事業を厚生労働省から文部科学省に移管し、福祉やリハビリテーションの観点に加えて、スポーツ振興の観点からも障害者スポーツをより一層推進していくこととしている。
主な国内・国際障害者スポーツ大会
◯全国障害者スポーツ大会
平成13年度から、それまで別々に開催されていた身体に障害のある人と知的障害のある人の全国スポーツ大会が統合され、全国障害者スポーツ大会として開催されています。平成20年度からは、精神障害者のバレーボール競技が正式種目に加わり、全国の身体、知的、精神に障害のある方々が一堂に会して開催される大会となっています。本大会は、障害のある選手が、競技等を通じ、スポーツの楽しさを体験するとともに、国民の障害に対する理解を深め、障害のある人の社会参加の推進に寄与することを目的として、国民体育大会(本大会)の直後に、当該開催都道府県で行われています。
平成25年度の第13回大会は、東京都において開催されました。
なお、平成26年度の第14回大会については、長崎県で開催される予定です。
◯全国ろうあ者体育大会
本大会は、聴覚に障害のある人が、スポーツを通じて技を競い、健康な心と体を養い、自立と社会参加を促進することを目的として、昭和42年度から開催されています。
平成25年度は、第47回となる夏季大会が富山県で開催されました。今回の大会では10競技が行われ、選手・役員合わせて約1,400人が参加しました。
◯ジャパンパラ競技大会
競技力の向上と国際大会へ派遣する選手の選考を目的とした本大会は、平成3年度から陸上競技と水泳、5年度からスキー、6年度からアイススレッジホッケー、10年度からアーチェリーの大会が、各々開催されています。
陸上競技、水泳及びスキーの大会には、身体に障害のある人と知的障害のある人が、また、アイススレッジホッケー及びアーチェリーの大会には身体に障害のある人が参加しています。
◯デフリンピック
4年に一度行われる、聴覚に障害のある人の国際スポーツ大会であり、夏季大会と冬季大会が開催されています。
夏季大会は1924年を第1回としており、2013年には、ブルガリアのソフィアにおいて開催されました。日本選手団として選手・役員合わせて219名が参加し、金メダル2個、銀メダル10個、銅メダル9個を獲得しました。次回の夏季大会は、2017年にトルコのアンカラで行われる予定です。
冬季大会は1949年を第1回としており、2007年には、アメリカのソルトレークシティにおいて第16回大会が開催されました。2015年にはロシアのハンティ・マンシースクで開催される予定です。
◯アジアパラ競技大会(旧フェスピック大会)
アジアパラリンピック委員会が主催するアジア(中東地域を含む)地域最大の障害者の総合スポーツ大会です。
我が国の呼びかけにより、1975年より、9回にわたり開催されてきたフェスピック競技大会を前身としています。
2010年に中国の広州市で開催された本大会は、フェスピック競技大会の歴史と精神を引き継ぎ、アジアパラリンピック委員会として初めて開催された大会となりました。
次回は、2014年に韓国の仁川(インチョン)において開催が予定されています。
◯スペシャルオリンピックス世界大会
4年に一度行われる、知的発達障害のある人のスポーツの世界大会であり、夏季大会と冬季大会が開催されています。順位は決定されるものの最後まで競技をやり遂げた選手全員が表彰される、といった特徴がある大会です。
夏季大会は1968年を第1回としており、2011年にはギリシャのアテネにおいて第13回大会が開催されました。次回は2015年にアメリカのロサンゼルスにおいて開催される予定です。冬季大会は1977年を第1回としており、2013年には韓国の平昌(ピョンチャン)において第9回大会が開催されました。次回は、2017年にオーストリアにおいて開催される予定です。
◯パラリンピック競技大会
オリンピックの直後に当該開催地で行われる、障害者スポーツの最高峰の大会であり、夏季大会と冬季大会が開催されています。
夏季大会は、1960年にイタリアのローマで第1回大会が開催され、オリンピック同様4年に一度開催されています。
2012年には、イギリスのロンドンにおいて第14回大会が開催されました。次回は、2016年、ブラジルのリオデジャネイロにおいて開催が予定されています。
冬季大会は、1976年にスウェーデンのエンシェルツヴィークで第1回大会が開催されて以降、オリンピック冬季大会の開催年に開催されています。2014年3月には、ロシアのソチにおいて第11回大会が開催されました。次回は、2018年に韓国の平昌(ピョンチャン)で開催が予定されています。
2020年パラリンピック競技大会について
平成25年9月に開催された国際オリンピック委員会(IOC)総会(アルゼンチン/ブエノスアイレス)において、2020年オリンピック・パラリンピックの開催都市が東京都に決定した。これにより、東京都は史上初めて、2度目のパラリンピック夏季競技大会を開催する都市となった。
パラリンピック競技大会は、世界のトップアスリートが参加し、スポーツを通じて、障害のある人の自立や社会参加を促すとともに、様々な障害への理解を深めることにつながるものである。また、アクセシビリティに配慮した会場やインフラの整備により、東京のまち全体を障害のある人をはじめとするすべての人々が安全で快適に移動できるようになり、ユニバーサルデザイン都市、東京の実現が促進されるものである。
2020年パラリンピック競技大会は、8月25日の開会式に始まり、9月6日の閉会式まで12日間、オリンピックと共に60日間の1つの祭典として開催される。大会は、東京湾沿いのウォーターフロントを中心として開催され、晴海の選手村から半径8km圏内にパラリンピック競技会場の95%が設置される予定である。
平成26年1月19日~20日には国際パラリンピック委員会(IPC)が来日し、2020年オリンピック・パラリンピック競技大会の開催準備に関するセミナーを開催した。セミナーでは、IPCから、大会運営のコンセプトやガバナンス、人事管理、マーケティング、レガシーと持続可能性、競技会場、財務等様々な分野における説明がなされ、大会成功のための知識共有や今後のプロセスについての意見交換が行われた。
1月24日には、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が一般財団法人として設立し、会長に森喜朗元内閣総理大臣、事務総長に武藤敏郎大和総研理事長が就任した。今後、大会織委員会が中心となり、東京都、日本オリンピック委員会(JOC)や日本パラリンピック委員会(JPC)、政府が一丸となって大会準備を行っていく。
(2)文化活動の振興
最近では、障害のある人による芸術活動や、障害のある人も楽しめる舞台芸術公演、展覧会等も各地で開催されるようになってきている。また、国立劇場や新国立劇場においては、障害のある人の入場料の割引を、国立美術館、国立博物館においては、展覧会の入場料の無料を実施しているほか、全国各地の劇場、コンサートホール、美術館、博物館などにおいて、車いす使用者でも利用ができるトイレやエレベーターの設置等障害のある人に対する環境改善も進められている。
また、障害のある人の生活を豊かにするとともに、国民の障害への理解と認識を深め、障害のある人の自立と社会参加の促進に寄与することを目的として、「第13回全国障害者芸術・文化祭やまなし大会」(平成25年度)が山梨県において開催された。
さらに、平成25年に開催された「障害者の芸術活動への支援を推進するための懇談会」中間とりまとめを受け、平成26年度からは芸術活動を行う障害者やその家族、福祉事務所等で障害者の芸術活動の支援を行う者を支援するモデル事業を実施するなど、障害者の文化芸術活動の振興を深める取組を行っている。
「障害者の芸術活動への支援を推進するための懇談会」中間取りまとめ
芸術活動に取り組む障害者やその家族、支援者等に対する支援や、障害者による芸術作品の価値が認知され、展示等につなげていくための取組について、その具体的な方策等を検討するため、平成25年6月から7月にかけて厚生労働省と文化庁が共同で「障害者の芸術活動への支援を推進するための懇談会」を開催しました。
懇談会においては有識者による検討が行われ、以下のとおり中間取りまとめを行いました。
- 1.障害者の芸術活動の意義
- 障害者の社会参加を進め、共生社会を実現していく上で重要。芸術文化の発展に寄与。
- 2.障害者の芸術活動への支援の方向性
- 「裾野を広げる」という視点と、「優れた才能を伸ばす」という視点が重要。
- 「アール・ブリュット」をはじめ様々な概念・呼称で取り組まれている障害者の芸術 活動については、概念・呼称を問わず、支援の対象。
- 3.障害者の芸術活動への具体的な支援の在り方
- (1)障害者、その家族、支援者等に対する支援の在り方について
- 相談支援の充実
- 障害者の芸術作品に関する権利保護
- 地域において障害者の芸術活動を支援する人材の育成
- 障害者による芸術鑑賞への支援
- (2)障害者の優れた芸術作品の展示等を推進するための仕組みについて
- 優れた芸術作品の評価・発掘、保存、展示機会の確保等
- 作品の販売や商品化への支援
- 障害者の芸術作品の評価・発掘、発信等を行う人材の育成
- 障害者の芸術鑑賞のための環境づくり
- (3)関係者のネットワークの構築等について
- 障害者やその家族、福祉事業所や特別支援学校等の職員、美術関係者等のネットワー ク構築
- 各地域における各種支援機能の拠点化、全国的ネットワーク化
- (1)障害者、その家族、支援者等に対する支援の在り方について
今後も、福祉分野を所管する厚生労働省と芸術文化の振興を所管する文化庁が相互に連携・協力し、この取りまとめの方向に沿った取組を着実に推進していくこととしています。