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第5章 社会参加へ向けた自立の基盤づくり

第2節 雇用・就労の促進施策

1.障害のある人の雇用の場の拡大

(1)障害者雇用の現状

ア 平成26年障害者雇用状況報告

現在、身体に障害のある人又は知的障害のある人を1人以上雇用する義務がある民間企業(常用雇用労働者数50人以上。)については、毎年6月1日時点の障害者雇用の状況を報告することになっている。平成26年の報告結果は次のとおりである。

<1> 民間企業の状況(図表5‒5)

図表5-5 民間企業における障害者の雇用状況

平成26年6月1日現在の障害のある人の雇用状況は、障害のある人の雇用者数が11年連続で過去最高を更新し、431,225.5人(前年同日408,947.5人)となるなど、一層進展している。また、労働者の実数は344,852人(前年同日323,839人)となった。このうち、身体に障害のある人の雇用者数は313,314.5人(前年同日303,798.5人)、知的障害のある人の雇用者数は90,203.5人(前年同日82,930.5人)、精神障害のある人の雇用者数は27,708.0人(前年同日22,218.5人)と、3障害とも前年より増加していた。

また、民間企業が雇用している障害のある人の割合は1.82%(前年同日1.76%)であった。

企業規模別に割合をみると、50~100人未満規模で1.46%、100~300人未満規模で1.58%、300~500人未満規模で1.76%、500~1,000人未満規模で1.83%、1,000人以上規模で2.05%となった。

一方、法定雇用率を達成した企業の割合は、44.7%と依然として半数に満たない状況であった。なお、雇用されている障害のある人の数については、すべての企業規模で前年の報告より増加した(図表5‒6)。

■ 図表5-6 一般の民間企業における規模別障害者の雇用状況
区分 <1>
企業数
<2>
法定雇用障害者数の算定の基礎となる労働者数
<3> 障害者の数 <4>
実雇用率
E÷<2>×100
<5>
法定雇用率達成企業の数
<6>
法定雇用率達成企業の割合
A.重度身体障害者及び重度知的障害者 B.重度身体障害者及び重度知的障害者である短時間労働者 C.重度以外の身体障害者、知的障害者及び精神障害者 D.重度以外の身体障害者及び知的障害者並びに精神障害者である短時間労働者 E.計A×2+B+C+D×0.5 F.うち新規雇用分
規模計 企業
86,648
(85,314)

23,650,463.5
(23,213,401.0)

103,320
(99,560)

12,360
(11,197)

195,279
(184,179)

33,893
(28,903)

431,225.5
(408,947.5)

45,269.5
(41,906.0)

1.82
(1.76)
企業
38,760
(36,413)

44.7
(42.7)
50~100人未満 企業
38,823
(38,073)

2,706,736.0
(2,655,493.0)

8,296
(7,848)

1,780
(1,582)

18,610
(18,093)

4,926
(4,078)

39,445.0
(37,410.0)

4,027.5
(3,490.0)

1.46
(1.41)
企業
17,102
(16,399)

44.1
(43.1)
100~300人未満 33,866
(33,497)
5,219,324.0
(5,156,348.0)
17,838
(17,229)
3,126
(2,797)
39,337
(37,258)
8,458
(7,289)
82,368.0
(78,157.5)
9,301.5
(8,346.0)
1.58
(1.52)
15,546
(14,585)
45.9
(43.5)
300~500人未満 6,441
(6,385)
2,288,945.0
(2,272,784.5)
9,394
(9,244)
1,358
(1,232)
18,506
(17,597)
3,454
(2,913)
40,379.0
(38,773.5)
4,415.5
(4,266.0)
1.76
(1.71)
2,735
(2,537)
42.5
(39.7)
500~1,000人未満 4,396
(4,274)
2,830,406.0
(2,,757,609.0)
12,650
(12,184)
1,418
(1,243)
23,390
(21,723)
3,437
(2,915)
51,826.5
(48,791.5)
5,684.0
(5,257.5)
1.83
(1.77)
1,831
(1,605)
41.7
(37.6)
1,000人以上 3,122
(3,085)
10,605,052.5
(10,371,166.5)
55,142
(53,055)
4,678
(4,343)
95,436
(89,508)
13,618
(11,708)
217,207.0
(205,815.0)
21,841.0
(20,546.5)
2.05
(1.98)
1.546
(1,287)
49.5
(41.7)
注1 <2>欄の「法定雇用障害者数の算定の基礎となる労働者数」とは、常用労働者総数から除外率相当数(身体障害者及び知的障害者が就業することが困難であると認められる職種が相当の割合を占める業種について定められた率を乗じて得た数)を除いた労働者数である。
<3>A欄の「重度身体障害者及び重度知的障害者」については法律上、1人を2人に相当するものとしており、E欄の計を算出するに当たりダブルカウントを行い、D欄の「重度以外の身体障害者及び知的障害者並びに精神障害者である短時間労働者」については法律上、1人を0.5人に相当するものとしており、E欄の計を算出するに当たり0.5カウントとしている。
A、C欄は1週間の所定労働時間が30時間以上の労働者であり、B、D欄は1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者である。
F欄の「うち新規雇用分」は、平成25年6月2日から平成26年6月1日までの1年間に新規に雇い入れられた障害者数である。
( )内は平成25年6月1日現在の数値である。
なお、精神障害者は平成18年4月1日から実雇用率に算定されることとなった。
資料:厚生労働省

<2> 国・地方公共団体の状況(図表5-7)

■ 図表5-7 国・地方公共団体における障害者の在籍状況
1 法定雇用率2.3%が適用される国、地方公共団体
<1> 法定雇用障害者数の算定の基礎となる職員数 <2> 障害者の数 <3> 実雇用率 <4> 法定雇用率達成機関の数/機関数 <5> 達成割合
国の機関 300,776.5人
(301,817.0人)
7,326.0人
(7,371.0人)
2.44%
(2.44%)
39/40
(39/40)
97.5%
(97.5%)
都道府県の機関 322,490.5人
(322,458.5人)
8,284.5人
(8,136.0人)
2.57%
(2.52%)
145/156
(144/156)
92.9%
(92.3%)
市町村の機関 1,061,832.5人
(1,061,543.5人)
25,265.0人
(24,792.0人)
2.38%
(2.34%)
1,939/2,336
(1,947/2,372)
83.0%
(82.1%)
2 法定雇用率2.2%が適用される都道府県等の教育委員会
<1> 法定雇用障害者数の算定の基礎となる職員数 <2> 障害者の数 <3> 実雇用率 <4> 法定雇用率達成機関の数/機関数 <5> 達成割合
都道府県等教育委員会 665,156.5人
(676,557.0人)
13,930.5人
(13,581.0人)
2.09%
(2.01%)
80/120
(72/125)
66.7%
(57.6%)
注1 各表の<1>欄の「法定雇用障害者数の算定の基礎となる職員数」とは、職員総数から除外職員数及び除外率相当職員数(旧除外職員が職員総数に占める割合を元に設定した除外率を乗じて得た数)を除いた職員数である。
各表の<2>欄の「障害者の数」とは、身体障害者、知的障害者及び精神障害者の計であり、短時間労働者以外の重度身体障害者及び重度知的障害者については法律上、1人を2人に相当するものとしてダブルカウントを行い、重度以外の身体障害者及び知的障害者並びに精神障害者である短時間労働者については法律上、1人を0.5人に相当するものとして0.5カウントとしている。
法定雇用率2.2%が適用される機関とは、都道府県の教育委員会及び一定の市町村の教育委員会である。
( )内は、平成25年6月1日現在の数値である。
資料:厚生労働省

国の機関(法定雇用率2.3%)に在職している障害のある人の割合、勤務している障害のある人の数はそれぞれ2.44%、7,326.0人であった。

また、都道府県の機関(法定雇用率2.3%)は2.57%、8,286.5人であり、市町村の機関(法定雇用率2.3%)は、2.38%、25,265.592人であった。

さらに、都道府県等の教育委員会(法定雇用率2.2%)は2.09%、13,930.5人であった。国、地方公共団体ともに、勤務している障害のある人の数は前年同日の報告より増加した。

■ 図表5-8 国の機関ごとの障害者の在籍状況
<1> 法定雇用障害者数の算定の基礎となる職員数 <2>障害者の数 <3> 実雇用率 <4> 不足数 備考
国の機関合計 300,776.5 7,326.0 2.44 7.0  
行政機関合計 272,417.0 6,600.0 2.42 7.0  
内閣官房 935.0 22.0 2.35 0.0  
内閣法制局 78.0 2.0 2.56 0.0  
内閣府 2,285.0 53.0 2.32 0.0  
宮内庁 867.0 22.0 2.54 0.0  
公正取引委員会 807.5 18.0 2.23 0.0  
警察庁 2,091.5 52.0 2.49 0.0  
金融庁 1,608.0 38.0 2.36 0.0  
消費者庁 345.0 9.0 2.61 0.0  
復興庁 (注4)
総務省 5,012.0 138.0 2.75 0.0 特例承認あり(注5)
法務省 31,463.0 750.0 2.38 0.0  
公安調査庁 1,489.5 37.0 2.48 0.0  
外務省 5,787.0 140.0 2.42 0.0  
財務省 10,856.0 251.5 2.32 0.0  
国税庁 57,179.0 1,333.5 2.33 0.0  
文部科学省 2,126.0 50.0 2.35 0.0 特例承認あり(注5)
厚生労働省 51,821.0 1,394.0 2.69 0.0  
農林水産省 16,401.0 379.0 2.31 0.0  
林野庁 4,082.0 97.0 2.38 0.0  
水産庁 605.0 16.0 2.64 0.0  
経済産業省 5,196.5 122.5 2.36 0.0 特例承認あり(注5)
特許庁 2,616.5 60.5 2.31 0.0  
国土交通省 37,542.5 871.5 2.32 0.0  
観光庁 100.5 3.0 2.99 0.0  
気象庁 4,864.0 113.5 2.33 0.0  
海上保安庁 137.0 6.0 4.38 0.0  
運輸安全委員会 181.0 5.0 2.76 0.0  
環境省 1,738.0 41.0 2.36 0.0  
原子力規制委員会 1,077.0 17.0 1.58 7.0  
防衛省 21,210.5 512.5 2.42 0.0  
人事院 624.0 15.0 2.40 0.0  
会計検査院 1,291.0 30.5 2.36 0.0  
立法機関合計 3,557.5 83.5 2.35 0.0  
衆議院事務局 1,440.5 33.0 2.29 0.0  
衆議院法制局 78.5 2.0 2.55 0.0  
参議院事務局 1,080.5 25.5 2.36 0.0  
参議院法制局 69.0 2.0 2.90 0.0  
国立国会図書館 889.0 21.0 2.36 0.0  
司法機関合計 24,802.0 642.5 2.59 0.0  
最高裁判所 1,006.0 24.0 2.39 0.0  
高等裁判所 1,728.0 41.0 2.37 0.0  
地方裁判所 16,394.5 420.5 2.56 0.0  
家庭裁判所 5,673.5 157.0 2.77 0.0  
注1 <1>欄の「法定雇用障害者数の算定の基礎となる職員数」とは、職員総数から除外職員数及び除外率相当職員数(旧除外職員が職員総数に占める割合を元に設定した除外率を乗じて得た数)を除いた職員数である。
<2>欄の「障害者の数」とは、身体障害者数、知的障害者数及び精神障害者数の計であり、短時間勤務職員以外の重度身体障害者及び重度知的障害者については、法律上、1人を2人に相当するものとしてダブルカウントを行い、重度以外の身体障害者及び知的障害者並びに精神障害者である短時間勤務職員については、法律上、1人を0.5人に相当するものとして0.5カウントとしている。
<4>欄の「不足数」とは、<1>欄の職員数に法定雇用率を乗じて得た数(1未満の端数切り捨て)から<2>欄の障害者の数を減じて得た数であり、これが0.0となることをもって法定雇用率達成となる。
したがって、実雇用率が法定雇用率を下回っていても、不足数が0.0となることがあり、この場合、法定雇用率達成となる。
注4の機関においては、労働者数が43.5人未満であり,障害者の雇用の促進等に関する法律第43条に基づく障害者の雇用義務が発生していない。
注5の省庁は、特例承認を受けている。
特例承認とは、省庁及び当該省庁におかれる外局の申請に基づき、厚生労働大臣の承認を受けた場合に、当該省庁におかれる外局に勤務する職員を当該省庁に勤務する職員とみなすものである。
特例承認一覧
省庁 外局等
総務省 消防庁
文部科学省 文化庁
経済産業省 中小企業庁 資源エネルギー庁
資料:厚生労働省
イ ハローワークの職業紹介状況

平成26年度のハローワークを通じた就職件数は、平成25年度を上回る84,602件(前年度比8.6%増)であり、5年連続で過去最高を更新した。このうち、身体に障害のある人は28,175件(前年度比0.5%減)、知的障害のある人は18,723件(前年度比6.1%増)、精神障害のある人は34,538件(前年度比17.5%増)、その他の障害のある人(発達障害、難病、高次脳機能障害などのある人)は3,166件(前年度比25.5%増)となり、精神障害のある人の就職件数が大幅に増加し、初めて身体に障害のある人の就職件数を上回った。

また、新規求職申込件数は179,222件(前年度比5.7%増)となり、このうち、身体に障害のある人は65,265件(前年度比2.1%減)、知的障害のある人は32,313件(前年度比4.2%増)、精神障害のある人は73,482件(前年度比13.2%増)、その他の障害のある人は8,162件(前年度比18.2%増)であり、前年度同様に精神障害のある人やその他の障害のある人の申込件数が大きく増加していることが分かる。

(2)障害者雇用対策について

ア 障害者雇用対策の基本的枠組み

障害者施策の基本理念である、すべての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現のためには、職業を通じた社会参加が重要である。この考え方の下に障害者雇用対策の各施策を推進している。

また、その実施に当たっては、平成4年に批准したILO第159号条約(障害者の職業リハビリテーション及び雇用に関する条約)を踏まえ、すべての障害の種類を対象として施策の推進に努めている。特に、施策の推進に当たっては、障害のある人の雇用の動向を踏まえた将来展望及び各施策の展開の障害者雇用施策全般における位置づけを明確にしつつ、総合的かつ計画的・段階的に推進していくことが重要である。

このため、「障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律123号。以下「障害者雇用促進法」という。)」や同法に基づく「障害者雇用対策基本方針」等を踏まえ、障害のある人、一人一人がその能力を最大限発揮して働くことができるよう、障害の種類及び程度に応じたきめ細かな対策を講じている。

また、障害者権利条約に対する労働・雇用分野での対応については、労働政策審議会障害者雇用分科会において議論が行われ、平成25年4月19日に雇用分野における障害者の差別を禁止するための措置及び精神障害者を法定雇用率の算定基礎に加えること等を内容とする「障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案」が国会に提出され、6月に成立した。

イ 障害者雇用率制度及び法定雇用率の達成に向けた指導

<1> 障害者雇用率制度

(ア)障害者雇用率制度

障害者雇用促進法では、民間企業等に対し、一定の割合(法定雇用率)以上の障害のある人の雇用を義務づけている。法定雇用率は、企業の社会連帯の理念に基づき、身体に障害のある人又は知的障害のある人に一般労働者と同じ水準の雇用の場を、各事業者の平等な負担の下に確保することを目的として設定している。昭和35年の制度創設時、民間企業の法定雇用率は努力義務として事務的事業所1.3%、現場的事業所1.1%であった。その後、昭和51年に障害者雇用率制度を義務化し、昭和63年、平成10年及び平成25年に率を改正し、平成25年4月1日以降は2.0%となっている。なお、国等の公的機関については、率先垂範すべき立場にあることから、民間企業を上回る2.3%(都道府県等の教育委員会は2.2%)としている。

(イ)特例子会社制度等の特例措置

事業主が障害のある人の雇用に特別の配慮をした子会社(特例子会社)を設立した場合には、一定の要件の下でこの特例子会社に雇用されている労働者を親会社に雇用されている者とみなして、雇用している障害者の割合(以下「実雇用率」という。)を算定できる特例措置(特例子会社制度)を設けている。特例子会社制度は、障害のある人の特性に配慮した仕事の確保・職場環境の整備が容易となり、これにより障害のある人の能力を十分に引き出すことができるなど、事業主及び障害のある人双方にメリットがあると考えられる。平成26年6月1日現在で391社を特例子会社として認定している。

また、特例子会社を持つ親会社については、関係する他の子会社も含め、企業グループ全体での実雇用率の算定を可能としている。

さらに、特例子会社がない場合も、一定の要件を満たす企業グループとして厚生労働大臣の認定を受けたものについては、企業グループ全体で実雇用率を通算できる「企業グループ算定特例」を設けている。

加えて、中小企業の場合、単独で障害のある人を雇用するために十分な仕事量を確保することが困難な場合も少なくないため、複数の中小企業が事業協同組合等を活用して共同で障害のある人の雇用機会を確保し、一定の要件を満たすものとして厚生労働大臣の認定を受けたものについては、事業協同組合等とその組合員である中小企業で実雇用率を通算できる「事業協同組合算定特例」を設けている。

<2> 法定雇用率の達成に向けた指導の一層の促進

障害者雇用率制度の履行を確保するため、ハローワークにおいて、法定雇用率未達成企業に対する指導を行っている。

(ア)民間企業等に対する指導

実雇用率の著しく低い民間企業に対しては、ハローワークが障害のある人の雇入れに関する2年間(平成24年以降。それ以前は3年間)の計画の作成を命じ、当該計画に基づいて障害者雇用を進めるよう継続的な指導を実施している。また、雇入れ計画を作成したものの、障害のある人の雇用が進んでいない企業に対しては、雇入れ計画の適正な実施に関する勧告を行い、一連の指導にも関わらず改善がみられない企業については、企業名を公表している。

雇入れ計画を作成していた企業のうち、計画終期で一定の改善が見られなかった84社に対し企業名公表を前提とした特別指導を行ったところ、平成26年度については、公表対象企業は8社となった。

そのほか農林水産省においては、農業分野における障害者就労を推進するため都道府県が行う意識啓発等の取組を支援する事業を実施している。

(イ)国・地方公共団体に対する指導等

国及び地方公共団体の機関については、民間企業に率先垂範して障害のある人の雇入れを行うべき立場にあることを踏まえ、国及び地方公共団体の各機関の人事担当幹部に対し、計画的な採用を図るよう要請を行っている。すべての公的機関は、毎年6月1日現在の雇用状況を発表するとともに、未達成である機関については、障害のある人の採用に関する計画を作成しなければならない。また、その計画が適正に実施されていない場合には、計画が適正に実施されるよう勧告を行っている。

平成26年6月1日現在の障害のある人の雇用状況では、国・地方公共団体で勤務している障害のある人は前年よりも増加しているものの、特に都道府県等の教育委員会では、未達成である機関が多くみられることから(法定雇用率未達成である都道府県教育委員会は47機関中25機関)、指導を行っている。

また、平成25年4月から国の法定雇用率が引き上げられたことを踏まえ、国の行政機関の障害のある人の雇用を促進し、実雇用率の更なる上昇を図る観点から、平成26年度は「公務部門における障害者雇用推進に関する地方別人事担当課長会議」を地方4ブロックにおいて開催した。

ウ 障害者雇用納付金制度(図表5‒9)
図表5-9 障害者雇用納付金制度の概要

障害者雇用促進法は、障害者雇用率制度に加え、障害のある人の雇用に伴う事業主の経済的負担を調整するとともに、障害のある人の雇用を容易にし、社会全体として障害のある人の雇用水準を引き上げるため、障害者雇用納付金制度を設けている。この制度では、法定雇用率未達成の民間企業(常用雇用労働者数200人超(平成27年度からが100人超))から納付金を徴収するとともに、一定水準を超えて障害のある人を雇用している民間企業に対して、障害者雇用調整金、報奨金を支給している。

このほか、障害のある人を雇い入れるために施設、設備の改善等を行う事業主等に対する助成金の支給や在宅就業障害者に仕事を発注する事業主に対する在宅就業障害者特例調整金等の支給を行っている。

エ チャレンジ雇用

各府省・各地方公共団体で知的障害のある人等を非常勤職員として雇用し、1~3年の業務の経験を積んだ後、ハローワーク等を通じて一般企業等への就職の実現を図る「チャレンジ雇用」を推進している。

オ 職業リハビリテーションの実施

障害者雇用促進法において、職業リハビリテーションとは、「障害者に対して職業指導、職業訓練、職業紹介その他この法律に定める措置を講じ、その職業生活における自立を図ること」(同法第2条第7号)としている。これに基づき、障害者が職業を通じて社会参加できるよう、ハローワーク、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターなどの機関を中心に障害者が適当な職場に就き、それを継続し、それにおいて向上することができるようにするための職業に関するサービスを実施している。

カ 助成金等による企業支援や普及啓発活動

国では、民間企業が無理なく、かつ積極的に障害のある人を雇用できるよう、障害のある人を雇用した場合などに助成金を支給している。

例えば、身体に障害のある人や知的障害のある人、精神障害のある人を継続して雇用する労働者として雇い入れる民間企業に対して助成する「特定求職者雇用開発助成金」や障害のある人を雇い入れたり継続して雇用するために必要な職場の環境整備等を行った場合に費用の一部を助成する障害者雇用納付金制度に基づく助成金等を支給している。

助成金のほか、民間企業等が積極的に障害のある人の雇用を進めるためには、障害のある人の雇用管理に関する先進的な事例等を普及啓発する必要がある。そのため、各種マニュアル等を発行し、民間企業等への配布等を通じて障害者雇用の啓発を行っている。

また、厚生労働省では、9月の「障害者雇用支援月間」に障害のある人を積極的に多数雇用している事業所、障害者の雇用の促進と職業の安定に著しく貢献した団体、職業人として模範的な業績をあげている障害者に対し、厚生労働大臣表彰を行い、障害者雇用に対する国民の関心と理解を一層深めることを目指している。平成26年度には34の事業所、22名の働く障害者を表彰した。

キ 税制上の特例措置 (図表5-10)
■ 図表5-10 障害者雇用に係る税制上の特例措置
(平成27年4月1日現在)
事項 内容
機械等の割増償却措置
(法人税、所得税)
障害者を雇用し、次のいずれかの要件を満たす場合、その事業年度又はその前5年以内に開始した各事業年度において取得、製作、建設した機械装置等について、普通償却限度額の24%(工場用建物等については32%)の割増償却ができる。
  1. <1>障害者雇用割合が50%以上
  2. <2>雇用障害者数が20人以上であり、かつ、障害者雇用割合が25%以上
  3. <3>次の要件のすべてを満たしていること
    1. イ 基準雇用障害者数が20人以上であり、かつ重度障害者割合が50%以上
    2. ロ 事業年度終了の日における雇用障害者数が法定雇用障害者数以上
助成金に係る課税の特例措置
(法人税、所得税)
国や地方公共団体の補助金、納付金及び障害者雇用納付金制度に基づく助成金については、助成金のうち固定資産の取得又は改良に充てた部分の金額に相当する金額の範囲内で、圧縮記帳による損金算入(法人税)又は総収入金額不算入(所得税)とすることができる。
事業所税の軽減措置 事業所税の従業者割については、課税標準としての従業者給与総額から障害者の給与分を控除し、また、障害者を10人以上雇用し、かつ、その雇用割合が50%以上である事業所であって、重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金等の支給に係る施設又は設備に係るものについては、事業所税の資産割に係る課税標準の算定につき、当該事業所床面積の2分の1を控除するものとする。
不動産取得税の軽減措置 障害者を20人以上雇用し、かつ、その雇用割合が50%以上の事業所の事業主が、重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金等を受けて事業用施設(作業の用に供するものに限る)を取得した場合において、その者が当該施設の取得の日から引き続き3年以上当該施設を当該事業所の事業の用に供したときは、当該施設の取得に対して課する不動産取得税については当該税額から価格の10分の1に相当する額に税率を乗じて得た額を減額するものとする。
固定資産税の軽減措置 障害者を20人以上雇用し、かつ、その雇用割合が50%以上の事業所の事業主が、重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金等を受けて取得した事業用の家屋(作業の用に供するもののうち、障害者の雇用割合に応じた部分に限る)に対して課する固定資産税の課税標準は、取得後5年間に限り、当該家屋の課税標準となるべき価格の6分の1を減額した額とする。
資料:厚生労働省

障害のある人を雇用する民間企業に対し、税制上の各種の特例措置を講じている。障害のある人の一層の雇用促進につながるよう、平成26年度税制改正では、障害者を雇用する場合の機械等の割増償却措置について適用期限を2年延長する等の改正を行った。

(3)改正障害者雇用促進法の施行に向けた取組

障害者権利条約等に対応するため、雇用分野における障害者の差別を禁止するための措置及び精神障害者を法定雇用率の算定基礎に加えること等を内容とする「障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案」が平成25年6月に成立した。改正法により新設された障害者に対する差別の禁止及び合理的配慮の提供義務等については、厚生労働大臣が差別の禁止に関する指針及び均等な機会の確保等に関する指針(合理的配慮の提供の指針)を定めることとされており、平成25年9月から、学識経験者等で構成される「改正障害者雇用促進法に基づく差別禁止・合理的配慮の指針の在り方に関する研究会」において議論を行い、平成26年6月に報告書を取りまとめた。その後、同報告書を踏まえて、同年9月から障害者雇用分科会において検討を行い、平成27年3月2日に「障害者に対する差別の禁止に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針案」及び「雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会若しくは待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するために事業主が講ずべき措置に関する指針案」として諮問・答申がなされ、同月25日に公布された。今後は、合理的配慮の事例集等をまとめ、各地で説明会を開催するなど、平成28年4月の施行に向けて周知・啓発を行っていくこととしている。

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