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第7章 住みよい環境の基盤づくり

第1節 障害のある人の住みよいまちづくりと安全・安心のための施策

5.安全な交通の確保

(1)安全かつ円滑な通行の確保

ア 生活道路対策の推進

全交通事故死者に占める歩行者の割合は3割を超えており、歩行者の安全を確保することが重要な課題であることから、障害のある人を含むすべての人が安全に安心して道路を通行できるよう、生活道路等において、都道府県公安委員会と道路管理者が連携し、信号機の新設・高度化、歩道等の整備、車両速度を抑制するような物理的デバイスの設置等の対策を推進するとともに、最高速度30km/hの区域規制や路側帯の設置・拡幅等により区域内における速度抑制や通過交通の抑制・排除を図る「ゾーン30」等の面的かつ総合的な事故抑止対策を推進している。

イ 利用する視点からの歩行空間の整備

歩行空間の整備に当たっては、様々な利用者の視点を踏まえて整備され、整備後も、不法占用や放置自転車のない歩行環境が確保されるよう、行政と住民・企業など地域が一体となった取組を行っていく必要がある。このようなことから、様々な利用する人の視点に立って道路交通環境の整備が行われ、適切な利用が図られるよう、「交通安全総点検」の点検結果を新規整備の際に活用するなど計画段階から住民が参加した整備を推進している。

また、平成25年に交通の方法に関する教則(昭和53年国家公安委員会告示第3号)を改正し、自転車を駐車する際には点字ブロック上及びその近辺に駐車しないようにすべきことについて明記した。

ウ 障害のある人等の利用に配慮した信号機等の設置

音響により信号表示の状況を知らせる音響式信号機、信号表示面に青時間までの待ち時間及び青時間の残り時間を表示する経過時間表示機能付き歩行者用灯器、歩行者・自転車と車両が通行する時間を分離して交通事故を防止する歩車分離式信号機等 のバリアフリー対応型信号機等の整備を推進している。

エ 障害のある人等が運転しやすい道路交通環境の整備

障害のある人を含むすべての人が安心して運転できるよう、ゆとりある道路構造の確保や視環境の向上、疲労運転の防止等を図ることとし、道の駅等の休憩施設の整備、付加車線(ゆずり車線)の整備、道路照明の増設を行うとともに、高速自動車国道等のサービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)、自動車駐車場等において障害者用トイレや障害者用駐車スペース等の設置を実施しているほか、信号灯器のLED化、道路標識の大型化・高輝度化、道路標示の高輝度化、交通情報提供装置の整備、道路情報板、情報ターミナル等の道路情報提供装置やそれを支える光ファイバ網等の情報通信基盤の整備を推進している。

また、「道路交通法」においては、肢体不自由を理由として免許に条件を付された者が、身体障害者標識を表示して普通自動車を運転している場合には、他の運転者は、危険防止のためやむを得ない場合を除いて、その普通自動車に対して幅寄せや割込みをすることが禁止されている。

さらに、同法においては、身体に障害のある歩行者等その通行に支障がある歩行者が道路を横断し、又は横断しようとしている場合において、当該歩行者から申出があったときその他必要があると認められるときは、警察官等その他その場所に居合わせた者は、当該歩行者が安全に道路を横断することができるように努めなければならないこととし、車両等の運転者は、身体に障害のある歩行者等その通行に支障のある者が通行しているときは、その通行を妨げないようにしなければならないこととされている。

聴覚障害のある人については、平成24年4月から、ワイドミラー又は補助ミラーの装着を条件に、すべての普通自動車を運転できることとなり、平成26年12月末日現在、833人がこの条件で普通自動車免許を保有している。

また、大型自動二輪車、普通自動二輪車、小型特殊自動車及び原動機付自転車の免許について、適性試験における聴力が廃止され、聴覚障害のある人も運転できることとなっている。

聴覚障害のある人が普通自動車を運転する際には、聴覚障害者標識の表示が義務付けられており、聴覚障害者標識を表示した自動車に対する幅寄せや割込みは禁止されている。警察では、聴覚障害者標識に関する広報啓発を行うとともに、聴覚障害のある人が安全に運転できるよう、関係団体と連携し、免許取得時の教習等の充実や周囲の運転者が配慮すべき事項についての安全教育に努めている。

さらに、警察では、高齢者や障害のある人が安全で余裕のある駐車ができるよう、都道府県公安委員会が交付した専用場所駐車標章を掲示した普通自動車に限り、指定された区間・場所に駐車又は停車することができる高齢運転者等専用駐車区間を整備している。

オ 走行音の静かなハイブリッド車等への対策

ハイブリッド車や電気自動車は、登録台数が近年急増しており、今後さらに増加するものと予想されている。一方、これらの自動車は「音がしなくて危険と感じる」との意見が寄せられていることを受け、国土交通省においては、学識経験者、視覚障害者団体、自動車メーカー等からなる「ハイブリッド車等の静音性に関する対策検討委員会」の結果を踏まえて、平成22年1月に「ハイブリッド車等の静音性に関する対策のガイドライン」を定めるとともに、自動車メーカー等の関係者に周知し、対策の早期普及を促すこととした。現在は、国際統一基準の策定に向けた取り組みを実施している。

(2)電動車いすの型式認定

「道路交通法」上、一定の基準に該当する原動機を用いる身体障害者用の車いすを通行させている者は歩行者とされるが、平成26年度において、その基準に該当する4型式が型式認定された。

(3)運転免許取得希望者への配慮

身体に障害のある運転免許取得希望者の利便の向上を図るため、各都道府県警察の運転免許試験場に、スロープ、エレベーター等を整備することに努めているほか、運転適性相談窓口を設け、身体に障害のある人の運転適性について知識の豊富な職員を配置して、運転免許取得に関する相談を行っている。

また、身体に障害のある人が、身体の状態に応じた条件を付すことにより、自動車の安全な運転に支障を及ぼすおそれがないと認められるときは、標準の試験車両以外の車を運転免許試験場に持ち込んで技能試験を受けることができることとしているほか、指定自動車教習所に対しても、身体に障害のある人の持ち込み車両による教習の実施や施設の改善等を指導している。

このほか、知的障害のある運転免許取得希望者の利便の向上を図るため、学科試験の実施に当たり、試験問題の漢字に振り仮名を付けるなどの対応をしている。

■ 図表7-10 条件付運転免許の保有者数(平成26年)
条件 人数
補聴器の使用 39,383人
補聴器の使用(使用しない場合はワイドミラー又は補助ミラーと聴覚障害者標識を付けた普通自動車に限定) 399人
ワイドミラー又は補助ミラーを付けた普通自動車に限定 833人
身体障害者用車両に限定 204,622人
義手、義足又は装具の条件 4,022人
合計 249,259人
注: 上記区分中、2種類以上の条件が付されている場合は、表の上側となる区分に計上。
資料: 警察庁
身体障害者標識・聴覚障害者標識
■ 図表7-11 バリアフリー対応型信号機の設置状況(平成25年度末現在)
種類 基数
高齢者等感応信号機 6,708基
歩行者感応信号機 1,380基
視覚障害者用付加装置 18,530基
音響式歩行者誘導付加装置 3,271基
歩行者支援装置 612基
資料:警察庁
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