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付録 4 障害者基本計画(第3次)(平成25年度~平成29年度)

(平成25年9月27日閣議決定)

はじめに

(日本におけるこれまでの取組)

我が国において政府は、昭和57(1982)年に国連障害者の十年の国内行動計画として、障害者施策に関する初めての長期計画である「障害者対策に関する長期計画」を策定して以降、平成5(1993)年に同長期計画の後継計画として「障害者対策に関する新長期計画」を、平成14(2002)年には、平成5(1993)年に改正された障害者基本法(昭和45年法律第84号)に基づく障害者基本計画(以下「旧基本計画」という。)を策定し、ノーマライゼーション1とリハビリテーション2の理念の下、障害者施策の総合的かつ効果的な推進に努めてきた。

旧基本計画においては、我が国が目指すべき社会を、障害の有無にかかわらず、国民誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合う「共生社会」とすることを掲げ、各分野において着実な取組が進められてきた。この間、平成16(2004)年の発達障害者支援法(平成16年法律第167号)の制定、平成17(2005)年の障害者自立支援法(平成17年法律第123号)の制定、平成18(2006)年の改正教育基本法(平成18年法律第120号)及びバリアフリー法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律。平成18年法律第91号)の制定等、法令面でも進展が見られたところである。

(国際社会の動向)

旧基本計画の期間中、国際社会においては、平成18(2006)年に国際連合(以下「国連」という。)において、障害者の権利及び尊厳を保護し、促進するための包括的かつ総合的な国際条約である、障害者の権利に関する条約(仮称。以下「障害者権利条約」という。)が採択され、平成20(2008)年から発効している。

また、アジア太平洋地域においても、平成14(2002)年に滋賀県で開催された国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)ハイレベル政府間会合において採択された「びわこミレニアム・フレームワーク3」に基づき、すべての人のための障壁のないかつ権利に基づいた社会の実現に向けて地域内の取組が進められてきており、平成24(2012)年11月には「アジア太平洋障害者の十年(2013-2022)」の行動計画である「アジア太平洋障害者の権利を実現する仁(イン)川(チョン)戦略」が採択されたところである。

(障害者権利条約締結に向けた取組等)

我が国は障害者の権利及び尊厳を保護及び促進する観点から、障害者権利条約の意義を認め、起草段階から積極的に参加してきたところであり、平成19(2007)年の署名以降、同条約締結に向けた国内法の整備を進めてきた。

平成23(2011)年の障害者基本法の改正においては、日常生活又は社会生活において障害者が受ける制限は、社会の在り方との関係によって生ずるといういわゆる社会モデルに基づく障害者の概念や、障害者権利条約にいう「合理的配慮」の概念が盛り込まれるとともに、国内において障害者基本計画の実施状況を監視し、勧告を行う機関として障害者政策委員会が設置された。また、平成24(2012)年には、障害者総合支援法(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律。平成17年法律第123号)が制定されたところである。さらに、平成25(2013)年、改正障害者基本法第4条の「差別の禁止」の基本原則を具体化し、障害を理由とする差別の解消を推進することを目的として、障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律。平成25年法律第65号)が制定された。

また、この間、障害者虐待防止法(障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律。平成23年法律第79号)、障害者優先調達推進法(国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律。平成24年法律第50号)、成年被後見人の選挙権の回復等のための公職選挙法等の一部を改正する法律(平成25年法律第21号)等が議員立法により制定されている。

(障害者政策委員会における検討)

旧基本計画の期間の満了を迎えるに当たり、障害者政策委員会においては、以上のような国際社会の動向、これまでの国内における取組の進展等を踏まえ、平成24(2012)年7月以降、新たな障害者基本計画に関する調査審議を行ってきた。その結果、障害者政策委員会は、同年12月17日、「新『障害者基本計画』に関する障害者政策委員会の意見」を取りまとめ、これを内閣総理大臣に提出した。

これを受け、政府においては、障害者政策委員会の意見に示された考え方を踏まえて新たな障害者基本計画の原案を作成し、原案に対する障害者政策委員会の意見の聴取を行った。

(障害者基本計画(第3次)の策定)

政府は、障害者政策委員会の意見及びパブリックコメントにおいて寄せられた意見を踏まえ、次のとおり、障害者基本計画(第3次)4を策定し、障害の有無にかかわらず、国民誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合う共生社会の実現に向け、障害者の自立と社会参加の支援等のための施策の一層の推進を図るものとする。


1 「障害者基本計画」(平成14年12月24日閣議決定)では、「障害者を特別視するのではなく、一般社会の中で普通の生活が送れるような条件を整えるべきであり、共に生きる社会こそノーマルな社会であるとの考え方」とされている。

2 同様に「障害者基本計画」では、「障害者の身体的、精神的、社会的な自立能力向上を目指す総合的なプログラムであるとともに、それにとどまらず障害者のライフステージの全ての段階において全人間的復権に寄与し、障害者の自立と参加を目指すとの考え方」とされている。

3 平成14(2002)年10月に滋賀県大津市で開催された「アジア太平洋障害者の十年(1993-2002)」最終年ハイレベル政府間会合において採択された「アジア太平洋障害者の十年(2003-2012)」の行動計画。

4 平成5(1993)年の障害者基本法改正において、「障害者対策に関する新長期計画」は、同法に基づく障害者基本計画とみなすこととされており、今回の障害者基本計画は、障害者基本法に基づくものとしては第3次の計画となる。


I 障害者基本計画(第3次)について

1.障害者基本計画の位置付け

障害者基本計画は障害者基本法第11条第1項に基づき、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策の総合的かつ計画的な推進を図るために策定されるものであり、政府が講ずる障害者のための施策の最も基本的な計画として位置付けられる。

2.障害者基本計画(第3次)の対象期間

障害者基本計画(第3次)は、より長期的な展望を視野に入れつつ、平成25(2013)年度から29(2017)年度までの概ね5年間を対象とする。

3.障害者基本計画(第3次)の構成について

障害者基本計画(第3次)は、この「I 障害者基本計画(第3次)について」、「II 基本的な考え方」、「III 分野別施策の基本的方向」及び「IV推進体制」で構成される。

「II 基本的な考え方」では、基本計画全体の「基本理念」及び「基本原則」を示すとともに、「各分野に共通する横断的視点」を示している。

「III 分野別施策の基本的方向」では、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を10分野に整理し、それぞれの分野について基本計画の対象期間に政府が講ずる施策の基本的な方向を示している。

「IV 推進体制」では、これらの取組を総合的かつ計画的に推進するための体制を示している。

II 基本的な考え方

1.基本理念

障害者基本法第1条に規定されるように、障害者施策は、全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるという理念にのっとり、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現を目指して講じられる必要がある。

この基本計画では、このような社会の実現に向け、障害者を、必要な支援を受けながら、自らの決定に基づき社会のあらゆる活動に参加する主体としてとらえ、障害者が自らの能力を最大限発揮し自己実現できるよう支援するとともに、障害者の活動を制限し、社会への参加を制約している社会的な障壁を除去するため、政府が取り組むべき障害者施策の基本的な方向を定めるものとする。

2.基本原則

上記のとおり、障害者を必要な支援を受けながら、自らの決定に基づき社会のあらゆる活動に参加する主体としてとらえ、政府は、障害者基本法第3条から第5条に規定される以下の基本原則にのっとり、上記の理念の実現に向けた障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を総合的かつ計画的に実施する。

(1)地域社会における共生等(障害者基本法第3条)

障害者施策は、全ての障害者が、障害者でない者と平等に、基本的人権を享有する個人として、その尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを前提としつつ、以下の事項を旨として図られなければならないこと。

<1> 全て障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されること。

<2> 全て障害者は、可能な限り、どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと。

<3> 全て障害者は、可能な限り、言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られること。

(2)差別の禁止(障害者基本法第4条)

障害者の活動を制限し、社会への参加を制約する、障害を理由とする差別その他の権利利益を侵害する行為が禁止されなければならないこと。また、障害のある者が日常生活又は社会生活を営む上での制約となっている社会的障壁については、その除去を必要としている障害者が現に存在し、かつ、その実施に伴う負担が過重でない場合は、それを怠ることによって障害を理由とする差別その他の権利利益の侵害が生じないよう、その除去の実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならないこと。

なお、前述のとおり、以上に掲げた障害者基本法第4条の「差別の禁止」の基本原則を具体化するため、障害者差別解消法が制定されるとともに、障害者雇用促進法(障害者の雇用の促進等に関する法律。昭和35年法律第123号)が改正されており、これらに基づき障害を理由とする差別の解消に向けた取組を進める(III.を参照。)。

(3)国際的協調(障害者基本法第5条)

障害者施策は、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策が国際社会における取組と密接な関係を有していることに鑑み、国際的な協調の下に図られなければならないこと。

前述のとおり、我が国においては、これまで障害者権利条約の締結に向けた国内法の整備に努めてきたところ、本基本計画の対象期間中のできる限り早期に同条約を締結することができるよう、所要の手続を進める。

3.各分野に共通する横断的視点

(1)障害者の自己決定の尊重及び意思決定の支援

障害者を施策の客体ではなく、必要な支援を受けながら、自らの決定に基づき社会に参加する主体としてとらえ、障害者施策の策定及び実施に当たっては、障害者及び障害者の家族等の関係者の意見を聴き、その意見を尊重する。

障害者の政策決定過程への参画を促進する観点から、国の審議会等の委員(臨時委員、特別委員及び専門委員を含む。)の選任に当たっては、障害者の委員の選任に配慮する。特に障害者施策を審議する国の審議会等については、障害種別等にも配慮し、障害者の委員への選任を行う。その際、障害者である委員に対する障害特性に応じた適切な情報保障5等を確保する。

また、これらの審議会等の会議資料等を始めとする障害者施策に関する情報の公開や障害者施策に関連する命令や計画等に関する意見募集(パブリックコメント)は、障害特性に配慮して実施する。

あわせて、障害者本人の自己決定を尊重する観点から、障害者本人が適切に意思決定を行い、その意思を表明することができるよう、相談の実施等による意思決定の支援とともに、意思疎通のための手段を選択する機会の提供を促進する。

(2)当事者本位の総合的な支援

障害者が人生における全段階を通じて適切な支援を受けられるよう、教育、福祉、医療、雇用等の各分野の有機的な連携の下、施策を総合的に展開し、切れ目のない支援を行う。

支援に当たっては、障害者基本法第2条の障害者の定義を踏まえ、障害者施策が、障害者が日常生活又は社会生活で直面する困難に着目して講じられる必要があること、障害者の支援は障害者が直面するその時々の困難の解消だけに着目するのではなく、障害者の自立と社会参加の支援という観点に立って行われる必要があること、に留意する。

(3)障害特性等に配慮した支援

障害者施策は、性別、年齢、障害の状態、生活の実態等に応じた障害者の個別的な支援の必要性を踏まえて、策定及び実施する。

特に、女性である障害者は障害に加えて女性であることにより、更に複合的に困難な状況に置かれている場合があること、障害児には、成人の障害者とは異なる支援の必要性があること、に留意する。

また、発達障害6、難病、高次脳機能障害7、盲ろう等について、国民の更なる理解の促進に向けた広報・啓発活動を行うとともに、施策の充実を図る。

さらに、適切な役割分担の下、地方公共団体、民間団体等と連携し、地域の実情に即した支援の実施を図る。

(4)アクセシビリティの向上

障害者基本法第2条においては、障害者を「障害がある者であって、障害と社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」と定義しており、障害者が経験する困難や制限が障害者個人の障害と社会的な要因の双方に起因するという視点が示されている。

このような視点を踏まえ、障害者の社会への参加を実質的なものとし、障害の有無にかかわらず、その能力を最大限に発揮しながら、安心して生活できるようにするため、障害者の活動を制限し、社会への参加を制約している、事物、制度、慣行、観念等の社会的障壁の除去を進め、ソフト、ハードの両面にわたる社会のバリアフリー化を推進し、アクセシビリティ8の向上を図る。

特に、障害を理由とする差別は、障害者の自立又は社会参加に深刻な悪影響を与えるものであり、社会全体において、その解消に向けた取組が行われる必要がある。このため、平成25(2013)年に制定された障害者差別解消法及び平成25(2013)年に改正された障害者雇用促進法に基づき、地方公共団体や障害者団体を始めとする様々な主体の取組との連携を図りつつ、事業者・事業主や国民一般の幅広い理解の下、障害を理由とする差別の解消に向けた取組を積極的に推進する。

あわせて、社会全体でのバリアフリー化を推進する観点から、積極的な広報・啓発活動に努めるとともに、企業、市民団体等の取組を積極的に支援する。

(5)総合的かつ計画的な取組の推進

障害者が必要なときに必要な場所で適切な支援を受けられるよう、地方公共団体等との適切な連携及び役割分担の下で、障害者施策は立案及び実施されなければならない。

また、効果的かつ効率的に施策を推進する観点から、高齢者施策、医療関係施策、子ども・子育て関係施策、男女共同参画施策等、障害者施策に関係する他の施策・計画等との整合性を確保し、総合的な施策の展開を図る。


5 障害等により情報の取得が困難な者に対して、代替手段を用いて情報を提供すること。

6 平成23(2011)年に改正された障害者基本法等においては、「精神障害(発達障害を含む。)」とされている。

7 交通事故や病気などによる脳への損傷に基づく後遺症により、記憶、注意、遂行機能、社会的行動などの認知機能(高次脳機能)が障害された状態を指し、器質性精神障害として位置付けられる。

8 施設・設備、サービス、情報、制度等の利用しやすさのこと。


III 分野別施策の基本的方向

1.生活支援

【基本的考え方】

障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与することを目的とし、また、身近な場所において必要な日常生活又は社会生活を営むための支援を受けられることにより、社会参加の機会が確保されること及びどこで誰と生活するかについての選択の機会が確保されることを旨として、障害者及び障害児が基本的人権を享有する個人としての尊厳にふさわしい日常生活又は社会生活を営むことができるよう、障害福祉サービス等の障害者及び障害児が日常生活又は社会生活を営むための支援を行う。

(1)相談支援体制の構築

○障害者が自らの決定に基づき、身近な地域で相談支援を受けることのできる体制を構築するため、様々な障害種別に対応し、総合的な相談支援を提供する体制の整備を図る。1-(1)-1

○障害者個々の心身の状況、サービス利用の意向、家族の状況等を踏まえたサービス等利用計画案の作成の促進等、当事者の支援の必要性に応じた適切な支給決定の実施に向けた取組を進める91-(1)-2

○障害者等の相談等を総合的に行い、地域における相談支援の中核的な役割を担う基幹相談支援センターの設置を促進するとともに、関係機関の連携の緊密化とともに地域の実情に応じた体制整備について協議を行うことで障害者等への支援体制の整備を図ることを目的とする協議会の設置の促進及び運営の活性化を図る。1-(1)-3

○知的障害又は精神障害(発達障害を含む。)により判断能力が不十分な者による成年後見制度の適正な利用を促進するため、必要な経費について助成を行うとともに、後見等の業務を適正に行うことができる人材の育成及び活用を図るための研修を行う。1-(1)-4

○発達障害者支援センター等において、地域の医療、保健、福祉、教育、雇用等の関係者と連携して、発達障害児・者やその家族に対する相談支援やペアレントメンター10の養成等を行うとともに、発達障害者支援センターを中心とした地域生活支援体制の充実を図る。1-(1)-5

○高次脳機能障害(失語症等の関連症状を併発した場合を含む。)について、地域の支援拠点に相談支援コーディネーターを配置し、専門的な相談支援や関係機関との連携・調整等を行うとともに、高次脳機能障害に関する情報発信の充実を図る。1-(1)-6

○難病患者の療養上、日常生活上での悩みや不安等の解消を図るとともに、難病患者の様々なニーズに対応したきめ細やかな相談や支援を通じて地域における難病患者支援対策を推進するため、難病相談・支援センター等により、地域で生活する難病患者の日常生活における相談・支援を行う。1-(1)-7

○障害者虐待防止法に基づき、障害者の養護者に対して相談等の支援を行う。1-(1)-8

○各種ガイドラインの策定及び普及、障害者相談員や相談支援に従事する職員に対する研修の実施等により、相談業務の質の向上を図るとともに、児童相談所、更生相談所、保健所等の関係機関間のネットワークの形成及びその活用を推進し、障害者が身近な地域で専門的相談を行うことができる体制を構築する。1-(1)-9

○家族と暮らす障害者について情報提供や相談支援等によりその家庭や家族を支援するとともに、ピアカウンセリング等の障害者同士が行う援助として有効かつ重要な手段である当事者による相談活動の更なる拡充を図る。1-(1)-10

(2)在宅サービス等の充実

○障害者が基本的人権を享有する個人としての尊厳にふさわしい日常生活又は社会生活を営むことができるよう、個々の障害者のニーズ及び実態に応じて、在宅の障害者に対する日常生活又は社会生活を営む上での、居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護等の支援を行うとともに、短期入所及び日中活動の場の確保等により、在宅サービスの量的・質的充実を図る。1-(2)-1

○常時介護を必要とする障害者が、自らが選択する地域で生活できるよう、日中及び夜間における医療的ケアを含む支援の質と量の充実を図るとともに、体調の変化等、必要に応じて一時的に利用することができる社会資源の整備を促進する。また、常時介護を必要とする障害者等に対し必要な支援を適切に実施できるよう、常時介護を必要とする障害者等の支援の在り方に関する検討を行う。1-(2)-2

○自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、身体機能又は生活能力の向上のために必要な訓練(機能訓練及び生活訓練)を提供する。1-(2)-3

○外出のための移動支援、創作的活動や生産活動の機会を提供するとともに日常生活に必要な便宜を供与する地域活動支援センターの機能の充実等、地方公共団体が地域の特性や利用者の状況に応じて実施する地域生活支援のための取組に対する支援を推進する。1-(2)-4

○障害者の移動に関する支援の在り方について、社会参加の機会の確保の観点から、障害者のニーズと実情を踏まえた検討を行う。1-(2)-5

○障害者支援施設について、地域で生活する障害者に対する在宅支援の拠点としてその活用を図るとともに、施設の一層の小規模化・個室化により入所者の生活の質の向上を図る。また、グループホーム等の充実を図り、入所者の地域生活(グループホームや一般住宅(居宅での単身生活を含む。)等)への移行を推進する。1-(2)-6

○障害の重度化・重複化、高齢化に対応する地域における居住の支援やサービス提供体制の在り方、専門的ケア方法の確立及び強度行動障害のある者等への適切な支援の在り方について引き続き検討する。1-(2)-7

(3)障害児支援の充実

○障害児やその家族を含め、全ての子どもや子育て家庭を対象として、身近な地域において、子ども・子育て支援法(平成24年法律第65号)に基づく給付その他の支援を可能な限り講じるとともに、障害児が円滑に同法に基づく教育・保育等を利用できるようにするために必要な支援を行う。1-(3)-1

○障害児を受け入れる保育所のバリアフリー化の促進、障害児保育を担当する保育士の専門性向上を図るための研修の実施等により、障害児の保育所での受入れを促進するとともに、幼稚園における特別支援教育体制の整備を図るため、公立幼稚園における特別支援教育支援員の配置等を推進する。1-(3)-2

○障害児の発達を支援する観点から、障害児及びその家族に対して、乳幼児期から学校卒業後まで一貫した効果的な支援を地域の身近な場所で提供する体制の構築を図り、療育方法等に関する情報提供やカウンセリング等の支援を行う。1-(3)-3

○児童福祉法(昭和22年法律第164号)に基づき、障害児に対して指導訓練等の支援を行う児童発達支援等を提供するとともに、障害者総合支援法に基づき、居宅介護、短期入所、障害児を一時的に預かって見守る日中一時支援等を提供し、障害児が身近な地域で必要な支援を受けられる体制の充実を図る。また、障害児の発達段階に応じて、保育所等訪問支援及び放課後等デイサービス等の適切な支援を提供する。1-(3)-4

○障害児について情報提供や相談支援等によりその家庭や家族を支援するとともに、在宅で生活する重症心身障害児(者)について、短期入所や居宅介護、児童発達支援等、在宅支援の充実を図る。1-(3)-5

○児童発達支援センター及び障害児入所施設について、障害の重度化・重複化や多様化を踏まえ、その専門的機能の強化を図るとともに、これらの機関を地域における中核的支援施設と位置付け、地域や障害児の多様なニーズに対応する療育機関としての役割を担うため、必要な施設整備も含めて体制整備を図る。1-(3)-6

(4)サービスの質の向上等

○障害福祉サービス又は相談支援が円滑に実施されるよう、これらのサービス等を提供する者、又はこれらの者に対し必要な指導を行う者を養成する。1-(4)-1

○障害福祉サービス等の質の向上を図るため、障害福祉サービス等を提供する事業者に対する適切な苦情解決の推進、事業者に対する第三者評価の適切な実施及び評価結果の公表の促進等に努める。1-(4)-2

○知的障害者又は精神障害者(発達障害者を含む。)が障害福祉サービスを適切に利用することができるよう、本人の自己決定を尊重する観点から、意思決定の支援に配慮しつつ、必要な支援等を行う。1-(4)-3

○地方公共団体における障害福祉計画の策定に当たり、国において、障害者の地域生活を支援するためのサービス基盤整備等に係る数値目標等を定めた基本指針を策定し、障害福祉サービス及び相談支援並びに市町村及び都道府県の地域生活支援事業を提供するための体制の確保が計画的に図られるように取り組む。1-(4)-4

○長時間サービスを必要とする重度訪問介護利用者等に対して、適切な支給決定がなされるよう実施主体である市町村への周知に取り組むとともに、都道府県との連携の下、市町村に対する支援を行う。1-(4)-5

○障害福祉サービスの提供に当たっては、都道府県による管内市町村への適切な支援等を通じ、地域間におけるサービスの格差について均てんを図る。1-(4)-6

○難病患者等に対する障害福祉サービス等の提供に当たっては、各地方公共団体において、難病等の特性(病状の変化や進行、福祉ニーズ等)に配慮した円滑な事務が実施されるよう、理解と協力の促進を図る。1-(4)-7

(5)人材の育成・確保

○社会福祉士、介護福祉士、精神保健福祉士等の福祉専門職について、その有効な活用を図りつつ、養成及び確保に努めるとともに、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、義肢装具士、言語聴覚士等の医学的リハビリテーションに従事する者について、専門的な技術及び知識を有する人材の確保と資質の向上を図る。また、ホームヘルプサービスについて、障害特性を理解したホームヘルパーの養成及び研修を行う。さらに、障害福祉サービス等を提供する事業者に対し、労働法規の遵守を徹底する。1-(5)-1

○国立障害者リハビリテーションセンター等の国立専門機関等において障害に係る専門的な研究を行うとともに、障害保健福祉に従事する職員の養成・研修においてこれらの機関の積極的な活用を図る。1-(5)-2

(6)福祉用具の研究開発及び身体障害者補助犬の育成等

○良質で安価な福祉用具の供給による利用者の利便性の向上を図るため、研究開発の推進等を進める。また、研究開発や障害者等のニーズを踏まえ、ユニバーサルデザイン化を促進し、誰もが使いやすいものづくりを推進する。さらに福祉用具の適切な普及促進を図るため、積極的に標準化を進めるとともに、必要に応じて国際規格提案を行う。1-(6)-1

○補装具の購入又は修理に要する費用の一部に対する公費の支給、日常生活用具の給付・貸与を行うとともに、福祉用具に関する情報提供などにより、その普及を促進する。1-(6)-2

○情報提供機関や相談機関のネットワーク体制の構築により、福祉用具に関する情報の提供や相談窓口の整備を推進するとともに、研修の充実等により、福祉用具の相談等に従事する専門職員の資質向上を図る。1-(6)-3

○身体障害者補助犬法(平成14年法律第49号)に基づき、身体障害者補助犬(盲導犬、介助犬、聴導犬)の育成及び身体障害者補助犬を使用する身体障害者の施設等の利用の円滑化を図る。1-(6)-4

(7)障害福祉サービス等の段階的な検討

○障害者の生活ニーズを踏まえた障害福祉サービスの更なる充実等を図るため、地域社会における共生の実現に向けて新たな障害保健福祉施策を講ずるための関係法律の整備に関する法律(平成23年法律第51号)附則第3条第1項に基づき、障害支援区分の認定を含めた支給決定の在り方等、同条同項に規定された事項11について検討を加え、その結果に基づいて、所要の措置を講ずる。1-(7)-1

2.保健・医療

【基本的考え方】

障害者が身近な地域において、保健・医療サービス、医学的リハビリテーション等を受けることができるよう、提供体制の充実を図る。特に、入院中の精神障害者の退院、地域移行を推進するため、精神障害者が地域で暮らせる環境の整備に取り組む。あわせて、難病に関する施策を推進する。

(1)保健・医療の充実等

○障害者が身近な地域で必要な医療やリハビリテーションを受けられるよう、地域医療体制等の充実を図る。その際、特に、高齢化等による障害の重度化・重複化の予防及びその対応に留意する。2-(1)-1

○障害者総合支援法に基づき、自立した日常生活又は社会生活を営むために必要な医療について、医療費の助成を行う。2-(1)-2

○国立障害者リハビリテーションセンター病院において、早期退院、社会復帰に向けて、各障害に対応した機能回復訓練を行うとともに、医療相談及び心理支援を行う。また、障害者の健康増進についてもサービスの提供、情報提供を行う。2-(1)-3

○骨、関節等の機能や感覚器機能の障害、高次脳機能障害等の医学的リハビリテーションによる機能の維持、回復が期待される障害について、適切な評価、病院から地域等への一貫した医学的リハビリテーションの確保を図る。2-(1)-4

○障害者の健康の保持・増進を図るため、福祉サービスと連携した保健サービスの提供体制の充実を図る。また、障害に起因して合併しやすい疾患、外傷、感染症等の予防と、これらを合併した際の障害及び合併症に対して適切な医療の確保を図る。2-(1)-5

○定期的に歯科検診を受けること等又は歯科医療を受けることが困難な障害者に対する歯科疾患の予防等による口腔の健康の保持・増進を図る取組を進めるとともに、障害の状況に応じた知識や技術を有する歯科専門職を育成するための取組を促進する。2-(1)-6

(2)精神保健・医療の提供等

○精神障害者への医療の提供・支援を可能な限り地域において行うとともに、入院中の精神障害者の早期退院(入院期間の短縮)及び地域移行を推進し、いわゆる社会的入院を解消するため、以下の取組を通じて、精神障害者が地域で生活できる社会資源を整備する。2-(2)-1

ア 専門診療科以外の診療科、保健所等、健診の実施機関等と専門診療科との連携を促進するとともに、様々な救急ニーズに対応できる精神科救急システムを確立するなど地域における適切な精神医療提供体制の確立や相談機能の向上を推進する。2-(2)-1-ア

イ 精神科デイケアの充実や、外来医療、多職種によるアウトリーチ(訪問支援)の充実を図る。2-(2)-1-イ

ウ 居宅介護など訪問系サービスの充実や地域相談支援(地域移行支援・地域定着支援)の提供体制の整備を図る。2-(2)-1-ウ

エ 精神障害者の地域移行の取組を担う精神科医、看護職員、精神保健福祉士、心理職等について、人材育成や連携体制の構築等を図る。2-(2)-1-エ

○学校、職域及び地域における心の健康に関する相談、カウンセリング等の機会の充実により、一般国民の心の健康づくり対策を推進するとともに、精神疾患の早期発見方法の確立及び発見の機会の確保・充実を図る。2-(2)-2

○精神障害者及び家族のニーズに対応した多様な相談体制の構築を図る。精神障害者に対する当事者による相談活動に取り組む地方公共団体に対し支援を行う。2-(2)-3

○精神医療における人権の確保を図るため、精神医療審査会の審査の在り方の見直し等により、都道府県及び指定都市に対し、その機能の充実・適正化を促す。2-(2)-4

○精神疾患について、患者の状態像や特性に応じた精神病床の機能分化を進めるとともに、適切な医療の提供を確保し、患者・家族による医療機関の選択に資するよう、精神医療に関する情報提供、EBM(根拠に基づく医療)及び安全対策の推進を図る。2-(2)-5

○精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律(平成25年法律第47号)附則第8条に基づき、医療保護入院や精神科病院に係る精神障害者の意思決定及び意思の表明についての支援の在り方等に関する検討を行う。2-(2)-6

○心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に対する適切な医療の確保を推進するとともに、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(平成15年法律第110号)附則第3条に基づき、精神医療及び精神保健福祉全般の水準の向上を図る。2-(2)-7

(3)研究開発の推進

○優れた基礎研究の成果による革新的な医薬品・医療機器の開発を促進するため、研究の支援、臨床研究・治験環境の整備、独立行政法人医薬品医療機器総合機構の薬事戦略相談の活用等を推進する。2-(3)-1

○最新の知見や技術を活用し、倫理的側面に配慮しつつ、疾病等の病因・病態の解明、予防、治療等に関する研究開発を推進する。また、再生医療や個別化医療等の新たな医療分野について、多くの障害者、患者が活用できるよう、研究開発の推進及び実用化の加速に取り組む。2-(3)-2

○脳機能研究の推進により、高次脳機能障害、感覚認知機能障害等に関する新たな診断法の開発、医学的リハビリテーションの効率化及び訓練プログラムの改善を進める。2-(3)-3

○障害者の生活機能全体の維持・回復のため、リハビリテーション技術の開発を推進する。2-(3)-4

(4)人材の育成・確保

○医師・歯科医師について、養成課程及び生涯学習において、リハビリテーションに関する教育の充実を図り資質の向上に努めるとともに、様々な場面や対象者に対応できる資質の高い看護職員等の養成に努める。2-(4)-1

○理学療法士、作業療法士、言語聴覚士等の医学的リハビリテーションに従事する者について、専門的な技術及び知識を有する人材の確保と資質の向上を図る。2-(4)-2

○地域において健康相談等を行う保健所、保健センター等の職員の資質の向上を図るとともに、地域の保健・医療・福祉事業従事者間の連携を図る。2-(4)-3

(5)難病に関する施策の推進

○難病患者の実態把握、病因・病態の解明、画期的な診断・治療法の開発を推進するとともに、診断基準・治療指針の確立及び普及を通じて、難病患者が受ける医療水準の向上を図るため、難病の研究を推進する。2-(5)-1

○難病患者に対し、総合的な相談・支援や地域における受入病院の確保を図るとともに、在宅療養上の適切な支援を行うことにより、安定した療養生活の確保と難病患者及びその家族の生活の質の向上を図る。2-(5)-2

○難病に関する医療の確立、普及を図るとともに、難病患者の医療費の負担軽減を図るため、医療費助成を行う。2-(5)-3

○難病患者の療養上、日常生活上での悩みや不安等の解消を図るとともに、難病患者の様々なニーズに対応したきめ細やかな相談や支援を通じて地域における難病患者支援対策を推進するため、難病相談・支援センター等により、地域で生活する難病患者の日常生活における相談・支援や地域交流活動の促進などを行う。2-(5)-4

○難病患者等に対する障害福祉サービス等の提供に当たっては、各地方公共団体において、難病等の特性(病状の変化や進行、福祉ニーズ等)に配慮した円滑な事務が実施されるよう、理解と協力の促進を図る。2-(5)-5

(6)障害の原因となる疾病等の予防・治療

○妊産婦健診、乳幼児及び児童に対する健康診査、保健指導の適切な実施、周産期医療・小児医療体制の充実等を図るとともに、これらの機会の活用により、疾病等の早期発見及び治療、早期療養を図る。また、障害の早期発見と早期療育を図るため、療育に知見と経験を有する医療・福祉の専門職の確保を図る。2-(6)-1

○糖尿病等の生活習慣病を予防するとともに合併症の発症や症状の進展等を予防するため、栄養・食生活、身体活動・運動、休養、飲酒、喫煙及び歯・口腔の健康に関する生活習慣の改善による健康の増進、医療連携体制の推進、健康診査・保健指導の実施等に取り組む。2-(6)-2

○疾患、外傷等に対して適切な治療を行うため、専門医療機関、身近な地域における医療機関及び在宅における医療の提供体制の充実、保健所、精神保健福祉センター、児童相談所、市町村等による保健サービス等の提供体制の充実及びこれらの連携を促進する。2-(6)-3

○外傷等に対する適切な治療を行うため、救急医療、急性期医療等の提供体制の充実及び関係機関の連携を促進する。2-(6)-4

3.教育、文化芸術活動・スポーツ等

【基本的考え方】

障害の有無によって分け隔てられることなく、国民が相互に人格と個性を尊重し合う共生社会の実現に向け、障害のある児童生徒が、合理的配慮を含む必要な支援の下、その年齢及び能力に応じ、かつその特性を踏まえた十分な教育を可能な限り障害のない児童生徒と共に受けることのできる仕組みを構築する。また、障害者が円滑に文化芸術活動、スポーツ又はレクリエーションを行うことができるよう、環境の整備等を推進する。

(1)インクルーシブ教育システム12の構築

○障害の有無によって分け隔てられることなく、国民が相互に人格と個性を尊重し合う共生社会の実現に向け、本人・保護者に対する十分な情報提供の下、本人・保護者の意見を最大限尊重し、本人・保護者と市町村教育委員会、学校等が、教育的ニーズと必要な支援について合意形成を行うことを原則として、市町村教育委員会が就学先を決定する仕組みを構築する13。また、以上の仕組みの下、障害のある児童生徒の発達の程度、適応の状況等に応じて、柔軟に「学びの場」を変更できることについて、関係者への周知を促す。3-(1)-1

○障害のある児童生徒に対する合理的配慮については、児童生徒一人一人の障害の状態や教育的ニーズ等に応じて設置者・学校と本人・保護者間で可能な限り合意形成を図った上で決定し、提供されることが望ましいことを周知する。3-(1)-2

○合理的配慮を含む必要な支援を受けながら、同じ場で共に学ぶことを追求するとともに、個別の教育的ニーズのある子どもに対して、自立と社会参加を見据えて、その時点で教育的ニーズに最も的確に応えた指導を提供できるよう、小・中学校における通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校という連続性のある「多様な学びの場」のそれぞれの充実を図る。3-(1)-3

○医療、保健、福祉等との連携の下、乳幼児期を含め早期からの教育相談・就学相談の実施を推進する。3-(1)-4

○可能な限り早期から成人に至るまで一貫した指導・支援ができるよう、子どもの成長記録や指導内容等に関する情報を、情報の取扱いに留意しながら、必要に応じて関係機関間で共有・活用するとともに、保護者の参画を得つつ、医療、保健、福祉、労働等との連携の下、個別の教育支援計画の策定・活用を促進する。3-(1)-5

○障害のある児童生徒への支援に関する先進的な事例の収集を行うとともに、関係者に対して情報提供を行う。3-(1)-6

○障害のある児童生徒の後期中等教育への就学を促進するため、個別のニーズに応じた入学試験における配慮の充実を図る。3-(1)-7

○福祉、労働等との連携の下、障害のある児童生徒の就労について、支援の充実を図る。3-(1)-8

(2)教育環境の整備

○障害のある児童生徒の一人一人の教育的ニーズに応じた教科書を始めとする教材の提供を推進するとともに、情報通信技術(ICT)の発展等も踏まえつつ、教育的ニーズに応じた支援機器の充実に努める。3-(2)-1

○災害発生時における利用等の観点も踏まえつつ、学校施設のバリアフリー化を推進する。3-(2)-2

○障害のある児童生徒に対する指導方法に関する調査・研究を推進するとともに、研究成果の普及を図る。3-(2)-3

○特別支援教育に関する教職員の専門性の確保、指導力の向上を図るため、特別支援学校のセンター的機能の充実を図るとともに、小・中学校等の教員への研修の充実を図る。3-(2)-4

(3)高等教育における支援の推進

○大学等が提供する様々な機会において、障害のある学生が障害のない学生と平等に参加できるよう、授業等における情報保障やコミュニケーション上の配慮、教科書・教材に関する配慮等を促進するとともに、施設のバリアフリー化を推進する。3-(3)-1

○大学入試センター試験において実施されている障害のある受験者の配慮については、障害者一人一人のニーズに応じて、より柔軟な対応に努めるとともに、高等学校及び大学関係者に対し、配慮の取組について、一層の周知を図る。3-(3)-2

○障害のある学生の能力・適性、学習の成果等を適切に評価するため、大学等の入試や単位認定等の試験における適切な配慮の実施を促進する。3-(3)-3

○入試における配慮の内容、施設のバリアフリー化の状況、学生に対する支援内容・支援体制、障害のある学生の受入れ実績等に関する各大学等の情報公開を促進する。3-(3)-4

○各大学等における相談窓口の統一や支援担当部署の設置など、支援体制の整備を促進するとともに、障害のある学生への修学支援に関する先進的な取組を行う大学等を支援し、大学等間や地域の地方公共団体、高校及び特別支援学校等とのネットワーク形成を促進する。3-(3)-5

○障害のある学生の支援について理解促進・普及啓発を行うため、その基礎となる調査研究や様々な機会を通じた情報提供、教職員に対する研修等の充実を図る。3-(3)-6

(4)文化芸術活動、スポーツ等の振興

○障害者が地域において、文化芸術活動、スポーツに親しむことができる施設・設備の整備等を進めるとともに、障害者のニーズに応じた文化芸術活動、スポーツに関する人材の養成等の取組を行い、障害の有無にかかわらず、文化芸術活動、スポーツを行うことのできる環境づくりに取り組む。特に、障害者の芸術活動14に対する支援や、障害者の芸術作品の展示等を推進するための仕組みを検討し、推進を図る。3-(4)-1

○国立博物館、国立美術館、国立劇場等における文化芸術活動の公演・展示等において、字幕や音声案内サービスの提供等、障害者のニーズに応じた工夫・配慮が提供されるよう努める。3-(4)-2

○障害者芸術・文化祭や全国障害者スポーツ大会の開催を通じて、障害者の文化芸術活動、スポーツの普及を図るとともに、民間団体等が行う文化芸術活動、スポーツ等に関する取組を支援する。特に、身体障害者や知的障害者に比べて普及が遅れている精神障害者のスポーツの振興に取り組む。3-(4)-3

○パラリンピック15、デフリンピック16、スペシャルオリンピックス17等への参加の支援等、スポーツ等における障害者の国内外の交流を支援するとともに、パラリンピック等の競技性の高い障害者スポーツにおけるアスリートの育成強化を図る。3-(4)-4

○聴覚障害者及び視覚障害者が映画を楽しむことができるよう、関係団体等の協力の下、日本語字幕の付与や音声ガイドの制作等のバリアフリー映画の普及に向けた取組を推進する。3-(4)-5

4.雇用・就業、経済的自立の支援

【基本的考え方】

障害者が地域で自立した生活を送るためには就労が重要であり、働く意欲のある障害者がその適性に応じて能力を十分に発揮することができるよう、一般就労を希望する者にはできる限り一般就労できるように、一般就労が困難である者には就労継続支援B型事業所等での工賃の水準が向上するように、総合的な支援を推進する。あわせて、年金等の支給、経済的負担の軽減等により経済的自立を支援する。

(1)障害者雇用の促進

○障害者雇用促進法に基づく障害者雇用率制度を中心に、引き続き、障害者雇用の促進を図る。平成25(2013)年の障害者雇用促進法の改正により、精神障害者の雇用が義務化(平成30 (2018)年4月施行)されたことも踏まえ、精神障害者の雇用の促進のための取組を充実させる。4-(1)-1

○法定雇用率を達成していない民間企業については、公共職業安定所(ハローワーク)による指導などを通じ、法定雇用率の達成に向けた取組を進める。また、国の機関や地方公共団体等に対しては、民間企業に率先垂範して障害者雇用を進める立場であることを踏まえ、適切に指導等を行う。4-(1)-2

○特例子会社制度等を活用し、引き続き、障害者の職域の拡大及び職場環境の整備を図るとともに、いわゆるダブルカウント制度18等により、引き続き、重度障害者の雇用の拡大を図る。4-(1)-3

○一般企業等への就職につなげることを目的として、各府省において知的障害者等を非常勤職員として雇用し、1から3年の業務を経験するチャレンジ雇用19を実施する。4-(1)-4

○都道府県労働局において、使用者による障害者虐待の防止など労働者である障害者の適切な権利保護のため、個別の相談等への丁寧な対応を行うとともに、関係法令の遵守に向けた指導等を行う。4-(1)-5

○雇用分野における障害者に対する差別の禁止及び障害者が職場で働くに当たっての支障を改善するための措置(合理的配慮の提供義務)が新たに規定された改正障害者雇用促進法(平成28(2016)年4月施行)に基づき、障害者と障害者でない者との均等な機会及び待遇の確保並びに障害者の有する能力の有効な発揮を図る。4-(1)-6

(2)総合的な就労支援

○福祉、教育、医療等から雇用への一層の推進のため、ハローワークや地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターを始めとする地域の関係機関が密接に連携して、職場実習の推進や雇用前の雇入れ支援から雇用後の職場定着支援までの一貫した支援を実施する。4-(2)-1

○ハローワークにおいて、障害の種類・程度に応じたきめ細かな職業相談・紹介、職場適応指導等を実施する。4-(2)-2

○障害者雇用への不安を解消するため、トライアル雇用20の推進等の取組を通じて、事業主の障害者雇用への理解の促進を図る。4-(2)-3

○障害者を雇用するための環境整備等に関する各種助成金制度を活用し、障害者を雇用する企業に対する支援を行う。あわせて、障害者雇用に関するノウハウの提供等に努める。4-(2)-4

○地域障害者職業センターにおいて、障害者に対する専門的な職業リハビリテーションを行うとともに、事業主に対して雇用管理に関する助言等の支援を行う。また、障害者の職場への適応を促進するため、職場適応援助者(ジョブコーチ)による直接的・専門的な支援を行うとともに、地域の就労支援機関等に対し、職業リハビリテーションサービスに関する技術的な助言・援助等を行い、地域における障害者の就労支援の担い手の育成と専門性の向上を図る。4-(2)-5

○障害者の身近な地域において、雇用、保健福祉、教育等の関係機関の連携拠点である障害者就業・生活支援センターの設置の促進・機能の充実を図り、就業面及び生活面からの一体的な相談支援を実施する。また、地域の就労支援機関と連携をしながら、継続的な職場定着支援を実施する。4-(2)-6

○障害者職業能力開発校における障害の特性に応じた職業訓練、技術革新の進展等に対応した在職者訓練等を実施するとともに、一般の公共職業能力開発施設において障害者向けの職業訓練を実施するほか、民間教育訓練機関等の訓練委託先を活用し、障害者の身近な地域において障害者の態様に応じた多様な委託訓練を実施する。また、障害者の職業能力開発を効果的に行うため、地域における雇用、福祉、教育等の関係機関が連携の強化を図りながら職業訓練を推進するとともに、障害者の職業能力の開発・向上の重要性に対する事業主や国民の理解を高めるための啓発に努める。4-(2)-7

○就労移行支援事業所等において、一般就労をより促進するため、積極的な企業での実習や求職活動の支援(施設外支援)等の推進を図る。4-(2)-8

(3)障害特性に応じた就労支援及び多様な就業の機会の確保

○精神障害、発達障害等の特性に応じた支援の充実・強化を図る。また、採用後に障害を有することとなった者についても、円滑な職場復帰や雇用の安定のための施策を講じる。4-(3)-1

○精神障害に関する事業主等の理解を一層促進するとともに、精神障害の特性に応じた支援の充実・強化を通じて、精神障害者の雇用拡大を図る。精神障害者に対する就労支援に当たっては、就労支援機関が医療機関と連携を図りつつ、「医療」から「雇用」への流れを一層促進する。また、ハローワーク等において発達障害者、難病患者等に対する専門的な支援の強化を図る。4-(3)-2

○短時間労働や在宅就業、自営業など障害者が多様な働き方を選択できる環境を整備するとともに、情報通信技術(ICT)を活用したテレワーク21の一層の普及・拡大を図り、時間や場所にとらわれない働き方を推進する。4-(3)-3

○障害者優先調達推進法に基づき、障害者就労施設等の提供する物品・サービスの優先購入(調達)を推進する。4-(3)-4

○農業法人等の農業関係者や福祉関係者等に対する情報の提供、労働に係る身体的な負荷の低減に向けた技術開発等を通じて、農業分野での障害者就労を推進する。また、障害者の就労訓練及び雇用を目的とした農園の開設及び農園の整備を促進する。4-(3)-5

(4)福祉的就労の底上げ

○事業所の経営力強化に向けた支援、共同受注化の推進等、就労継続支援B型事業所等における工賃の向上に向け、官民一体となった取組を推進するなど、就労継続支援A型も含めた福祉的就労の底上げを図るとともに、その在り方を検討する。4-(4)-1

○障害者優先調達推進法に基づき、障害者就労施設等の提供する物品・サービスの優先購入(調達)を推進する。(再掲)4-(4)-2

(5)経済的自立の支援

○障害者が地域で質の高い自立した生活を営むことができるよう、雇用・就業(自営業を含む。)の促進に関する施策との適切な組み合わせの下、年金や諸手当を支給するとともに、各種の税制上の優遇措置を運用し、経済的自立を支援する。また、受給資格を有する障害者が、制度の不知・無理解により、障害年金を受け取ることができないことのないよう、制度の周知に取り組む。さらに、年金生活者支援給付金制度の着実な実施により所得保障の充実を図るとともに、障害者の実態把握に係る調査を引き続き実施していく中で、所得状況の把握についてはその改善を検討する。4-(5)-1

○特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律(平成16年法律第166号)に基づき、同法にいう特定障害者に対し、特別障害給付金を支給する。4-(5)-2

○障害者による国や政府関係法人が所有・管理する施設の利用等に当たり、その必要性や利用実態を踏まえながら、利用料等に対する割引・減免等の措置を講ずる。4-(5)-3

5.生活環境

【基本的考え方】

障害者の自立と社会参加を支援し、誰もが快適で暮らしやすい生活環境の整備を推進するため、障害者が安心して生活できる住宅の確保、建築物、公共交通機関等のバリアフリー化を推進するとともに、障害者に配慮したまちづくりを推進する。

(1)住宅の確保

○公営住宅を新たに整備する際にはバリアフリー対応を原則とするとともに、既存の公営住宅のバリアフリー化改修を促進し、障害者向けの公共賃貸住宅の供給を推進する。また、障害者に対する優先入居の実施や単身入居を可能とするための取組が地方において行われるよう、福祉部局と住宅部局が連携して障害者に対する取組を進めていくよう地方公共団体に対して周知・情報提供を行っていく。5-(1)-1

○住宅セーフティネット法(住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律。平成19年法律第112号)に基づき、賃貸人、障害者双方に対する情報提供等の支援、必要な相談体制の整備等を行うとともに、家賃債務保証制度の活用を促進し、民間賃貸住宅への円滑な入居を促進する。5-(1)-2

○障害者や民間賃貸住宅の賃貸人が行うバリアフリー改修等を促進するとともに、障害者の日常生活上の便宜を図るため、日常生活用具の給付又は貸与、及び用具の設置に必要な住宅改修に対する支援を行う。5-(1)-3

○障害者が日常生活上の相談援助等を受けながら共同生活を行うグループホーム、ケアホーム22の整備を促進するとともに、その利用の促進を図る。5-(1)-4

○グループホーム、ケアホームに入居する障害者が安心して生活できるよう、非常災害時における消防団や近隣住民との連携体制の構築を促進するとともに、建築基準法(昭和25年法律第201号)、消防法(昭和23年法律第186号)の基準に適合させるための改修費用や消火設備の設置費用の一部を助成すること等により、防火安全体制の強化を図る。5-(1)-5

(2)公共交通機関のバリアフリー化の推進等

○駅等の旅客施設における段差解消、ホームドア等の転落防止設備の導入、障害者の利用に配慮した車両の整備の促進等とあわせて、人的な対応の充実を図ることで、公共交通機関のバリアフリー化を推進する。5-(2)-1

○公共交通機関の旅客施設及び車両内において、障害特性に配慮した案内表示や情報提供の充実を推進する。5-(2)-2

○交通事業者等における障害者に対する適切な対応の確保を図るため、教育訓練の実施等を促進する。5-(2)-3

○従来の公共交通機関を利用できない障害者に対し個別的な輸送を提供するスペシャル・トランスポート・サービス(STS)について、地方公共団体を含む関係者間の連携の下、その普及拡大に向けた取組を進める。5-(2)-4

(3)公共的施設等のバリアフリー化の推進

○バリアフリー法に基づき、不特定多数の者や、主として高齢者、障害者が利用する一定の建築物の新築時等における建築物移動等円滑化基準への現行の適合義務に加え、地方公共団体による同法に基づく条例において義務付けの対象となる建築物の追加、規模の引下げ等、地域の実情を踏まえた取組を促すことによりバリアフリー化を促進する。5-(3)-1

○窓口業務を行う官庁施設について、高度なバリアフリー化を目指した整備を推進する。5-(3)-2

○都市公園の整備に当たっては、安全で安心した利用のためバリアフリー法に基づく基準や支援制度により、出入口や園路の段差解消、高齢者や障害者等が利用可能なトイレの設置等を進める。また、身近な自然空間である河川の魅力を誰もが享受できるような水辺整備をまちづくりと一体となって進める。5-(3)-3

○日常生活製品等のユニバーサルデザイン23化に関し、障害者の利用に配慮した製品、設備等の普及のニーズがある場合、高齢者・障害者配慮設計等に関する標準化を推進する。5-(3)-4

(4)障害者に配慮したまちづくりの総合的な推進

○福祉・医療施設の市街地における適正かつ計画的な立地の推進、公園等との一体的整備の促進、生活拠点の集約化等により、バリアフリーに配慮し、障害者が安心・快適に暮らせるまちづくりを推進する。5-(4)-1

○バリアフリー法に基づき市町村が定める重点整備地区内の旅客施設周辺等の主要な生活関連経路(駅、官公庁施設、病院等を相互に連絡する道路)において、公共交通機関等のバリアフリー化と連携しつつ、幅の広い歩道の整備や無電柱化等を推進する。5-(4)-2

○バリアフリー法に基づき市町村が定める重点整備地区内の主要な生活関連経路を構成する道路において、歩行者・自転車と車両が通行する時間を分離する歩車分離式信号、歩行者青時間の延長を行うPICS (歩行者等支援情報通信システム)等のバリアフリー対応型信号機、見やすく分かりやすい道路標識等の整備を推進する。5-(4)-3

○障害者が安全に安心して自動車を運転できるよう、信号灯器のLED化、道路標識の高輝度化・大型化等を推進する。5-(4)-4

○市街地等の生活道路における歩行者等の安全な通行を確保するため、区域(ゾーン)を設定して、最高速度30km/hの区域規制、路側帯の設置・拡幅、物理的デバイス設置等の対策を効果的に組み合わせ、速度抑制や通過交通の抑制・排除を図る。5-(4)-5

○バリアフリー環境の構築をソフト施策の面から推進するため、歩行経路の段差や幅員等の状況を含む歩行空間ネットワークデータ24の整備を促進するとともに、携帯端末でのバリアフリー経路案内等の情報提供による移動支援を推進する。5-(4)-6

6.情報アクセシビリティ

【基本的考え方】

障害者が円滑に情報を取得・利用し、意思表示やコミュニケーションを行うことができるように、情報通信における情報アクセシビリティの向上、情報提供の充実、コミュニケーション支援の充実等、情報の利用におけるアクセシビリティの向上を推進する。

(1)情報通信における情報アクセシビリティの向上

○障害者の情報通信機器及びサービス等の利用における情報アクセシビリティの確保及び向上・普及を図るため、障害者に配慮した情報通信機器及びサービス等25の企画、開発及び提供を促進する。6-(1)-1

○研究開発やニーズ、情報技術の発展等を踏まえつつ、情報アクセシビリティの確保及び向上を促すよう、適切な標準化(日本工業規格等)を進めるとともに、必要に応じて国際規格提案を行う。また、各府省における情報通信機器等(ウェブコンテンツ(掲載情報)に関するサービスやシステムを含む。)の調達は、情報アクセシビリティの観点に配慮し、国際規格、日本工業規格への準拠・配慮に関する関係法令に基づいて実施する。6-(1)-2

○国立研究機関等において障害者の利用に配慮した情報通信機器・システムの研究開発を推進する。6-(1)-3

○障害者に対するIT(情報通信技術)相談等を実施する障害者ITサポートセンターの設置の促進等により、障害者の情報通信技術の利用及び活用の機会の拡大を図る。6-(1)-4

(2)情報提供の充実等

○身体障害者の利便の増進に資する通信・放送身体障害者利用円滑化事業の推進に関する法律(平成5年法律第54号)に基づく放送事業者への制作費助成、「視聴覚障害者向け放送普及行政の指針」に基づく取組等の実施・強化により、字幕放送(CM番組を含む)、解説放送、手話放送等の普及を通じた障害者の円滑な放送の利用を図る。6-(2)-1

○聴覚障害者に対して、字幕(手話)付き映像ライブラリー等の制作及び貸出し、手話通訳者や要約筆記者の派遣、相談等を行う聴覚障害者情報提供施設について、情報通信技術(ICT)の発展に伴うニーズの変化も踏まえつつ、その整備を促進する。6-(2)-2

○身体障害者の利便の増進に資する通信・放送身体障害者利用円滑化事業の推進に関する法律に基づく助成等により、民間事業者が行うサービスの提供や技術の研究開発を促進26し、障害によって利用が困難なテレビや電話等の通信・放送サービスへのアクセスの改善を図る。6-(2)-3

○電子出版は、視覚障害や学習障害等により紙の出版物の読書に困難を抱える障害者の出版物の利用の拡大に資すると期待されることから、関係者の理解を得ながら、アクセシビリティに配慮された電子出版の普及に向けた取組を進めるとともに、教育における活用を図る。6-(2)-4

○現在の日本銀行券が、障害者等全ての人にとってより使いやすいものとなるよう、五千円券の改良、携帯電話に搭載可能な券種識別アプリの開発・提供等を実施し、券種の識別性向上を図る。また、将来の日本銀行券改刷が、視覚障害者にとり券種の識別性の大幅な向上につながるものとなるよう、関係者からの意見聴取、海外の取組状況の調査等、様々な観点から検討を実施する。6-(2)-5

○心身障害者用低料第三種郵便については、障害者の社会参加に資する観点から、利用の実態等を踏まえながら、引き続き検討する。6-(2)-6

(3)意思疎通支援の充実

○障害のため意思疎通を図ることに支障がある障害者に対して、手話通訳者、要約筆記者、盲ろう者向け通訳・介助員等の派遣、設置等による支援を行うとともに、手話通訳者、要約筆記者、盲ろう者向け通訳・介助員、点訳奉仕員等の養成研修等の実施により人材の育成・確保を図り、コミュニケーション支援を充実させる。6-(3)-1

○情報やコミュニケーションに関する支援機器の開発の促進とその周知を図るとともに、機器を必要とする障害者に対する給付、利用の支援等を行う。6-(3)-2

○意思疎通に困難を抱える人が自分の意志や要求を的確に伝え、正しく理解してもらうことを支援するための絵記号等の普及及び利用の促進を図る。6-(3)-3

(4)行政情報のバリアフリー化

○各府省において、障害者を含む全ての人の利用しやすさに配慮した行政情報の電子的提供の充実に取り組むとともに、地方公共団体等の公的機関におけるウェブアクセシビリティ27の向上等に向けた取組を促進する。6-(4)-1

○災害発生時に障害者に対して適切に情報を伝達できるよう、民間事業者等の協力を得つつ、障害特性に配慮した情報伝達の体制の整備を促進する。6-(4)-2

○政見放送への手話通訳・字幕の付与、点字又は音声による候補者情報の提供等、障害特性に応じた選挙等に関する情報の提供に努める。6-(4)-3

○各府省において、特に障害者や障害者施策に関する情報提供及び緊急時における情報提供等を行う際には、知的障害者等にも分かりやすい情報の提供に努める。6-(4)-4

7.安全・安心

【基本的考え方】

障害者が地域社会において、安全・安心して生活することができるよう、防災・防犯対策の推進、消費者被害からの保護等を図るとともに、東日本大震災の被災地における障害者に配慮した復興施策を推進する。

(1)防災対策の推進

○障害者や福祉関係者等の参加及び防災関係部局と福祉関係部局の連携の下での、地域防災計画等の作成、防災訓練の実施等の取組を促進し、災害に強い地域づくりを推進する。7-(1)-1

○自力避難の困難な障害者等が利用する災害時要援護者関連施設が立地する土砂災害のおそれのある箇所において、ハード・ソフト一体となった土砂災害対策を重点的に推進する。7-(1)-2

○災害発生時、又は災害が発生するおそれがある場合に障害者に対して適切に情報を伝達できるよう、民間事業者等の協力を得つつ、障害特性に配慮した情報伝達の体制の整備を促進する。7-(1)-3

○災害発生時、又は災害が発生するおそれがある場合に避難行動要支援者名簿等を活用した障害者に対する適切な避難支援や、その後の安否確認を行うことができるよう、地方公共団体における必要な体制整備を支援する。7-(1)-4

○避難所、応急仮設住宅のバリアフリー化を推進するとともに、避難所において障害者が、必要な物資を含め、障害特性に応じた支援を得ることができるよう、市町村における必要な体制の整備を支援する。7-(1)-5

○災害発生後にも継続して福祉・医療サービスを提供することができるよう、障害者支援施設・医療機関等における災害対策を推進するとともに、地域内外の他の社会福祉施設・医療機関等との広域的なネットワークの形成に取り組む。7-(1)-6

○火事や救急時におけるファックスやEメール等による通報を可能とする体制の充実に取り組むとともにその利用の促進を図る。7-(1)-7

(2)東日本大震災からの復興

○それぞれの地域の復興施策の企画・立案及び実施における、障害者やその家族等の参画を促進し、地域全体のまちづくりを推進する。7-(2)-1

○障害者の被災地での生活の継続、被災地への帰還を支援するため、被災地の障害福祉サービス事業者に対する支援を実施し、被災地における安定的な障害福祉サービスの提供を図る。7-(2)-2

○住み慣れた生活環境から離れて避難生活を行っている障害者に対する、心のケア、見守り活動、相談活動等の取組の充実を図る。7-(2)-3

○被災地における雇用情勢を踏まえ、産業政策と一体となった雇用の創出、求人と求職のミスマッチの解消を図り、障害者の就職支援を推進する。7-(2)-4

(3)防犯対策の推進

○ファックスやEメール等による緊急通報について、その利用の促進を図るとともに、事案の内容に応じた迅速・適切な対応を行う。7-(3)-1

○警察職員に対し障害及び障害者に対する理解を深めるための研修の充実に取り組むとともに、手話を行うことのできる警察官の交番への配置、コミュニケーション支援ボードの活用等、障害者のコミュニケーションを支援するための取組を推進する。7-(3)-2

○警察と地域の障害者団体、福祉施設、行政等との連携の促進等により、犯罪被害の防止と犯罪被害の早期発見に努める。7-(3)-3

(4)消費者トラブルの防止及び被害からの救済

○障害者の消費者トラブルに関する情報を収集し、積極的な発信を行うとともに、その被害からの救済に関して必要な情報提供を行い、障害者の消費者トラブルの防止及び被害からの救済を図る。7-(4)-1

○障害者団体、消費者団体、福祉関係団体、行政等、地域の多様な主体の連携を促進し、障害者の消費者トラブルの防止及び早期発見に取り組む。7-(4)-2

○地方公共団体における、消費生活センター等におけるファックスやEメール等での消費者相談の受付や、相談員等の障害者理解のための研修の実施等の取組を促進することにより、障害者の特性に配慮した消費生活相談体制の整備を図る。7-(4)-3

○消費者トラブルの防止及び障害者の消費者としての利益の擁護・増進に資するよう、障害者及び障害者に対する支援を行う者の各種消費者関係行事への参加の促進、研修の実施等により、障害者等に対する消費者教育を推進する。7-(4)-4

○被害を受けた障害者の被害回復に係る法制度の利用の促進のため、日本司法支援センター(法テラス)の各種業務及びこれを遂行する体制の一層の充実に努める。7-(4)-5

○常勤弁護士を始めとする日本司法支援センター(法テラス)の契約弁護士が、福祉機関等との連携・協力体制を密にすることにより、障害者などの社会的弱者の振込め詐欺の被害や悪質商法による消費者被害の早期発見・被害回復に努める。7-(4)-6

8.差別の解消及び権利擁護の推進

【基本的考え方】

全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、平成25(2013)年に制定された障害者差別解消法等に基づき、障害を理由とする差別の解消の推進に取り組む。あわせて、障害者虐待防止法に基づく障害者虐待の防止等、障害者の権利擁護のための取組を進める。

(1)障害を理由とする差別の解消の推進

○平成28(2016)年4月の障害者差別解消法の円滑な施行に向け、同法に規定される基本方針、対応要領及び対応指針を計画的に策定するとともに、法の趣旨・目的等に関する効果的な広報・啓発活動、相談・紛争解決体制の整備、障害者差別解消支援地域協議会の組織の促進等に取り組む。また、同法の施行後において、同法に規定される基本方針に基づき、同法の適切な運用及び障害を理由とする差別の解消の推進に取り組む。8-(1)-1

○雇用分野における障害者に対する差別の禁止及び障害者が職場で働くに当たっての支障を改善するための措置(合理的配慮の提供義務)が新たに規定された改正障害者雇用促進法(平成28(2016)年4月施行)に基づき、障害者と障害者でない者との均等な機会及び待遇の確保並びに障害者の有する能力の有効な発揮を図る。(再掲)8-(1)-2

○障害者に対する差別及びその他の権利侵害を防止し、その被害からの救済を図るため、相談・紛争解決等を実施する体制の充実等に取り組むとともに、その利用の促進を図る。8-(1)-3

※本基本計画においては、障害者に対する配慮等に関する取組について、原則として各分野において掲載している(例えば、教育分野における配慮等は3に、行政サービス等の分野における配慮等は9に掲載。)。

(2)権利擁護の推進

○障害者虐待防止法に関する積極的な広報・啓発活動を行うとともに、同法の適切な運用を通じ、障害者虐待の防止及び養護者に対する支援に取り組む。8-(2)-1

○障害者本人に対する意思決定支援を踏まえた自己決定を尊重する観点から、意思決定支援の在り方を検討するとともに、成年後見制度の適切な利用の促進に向けた取組を進める。8-(2)-2

○当事者等により実施される障害者の権利擁護のための取組を支援する。8-(2)-3

○障害者に対する差別及びその他の権利侵害を防止し、その被害からの救済を図るため、相談・紛争解決等を実施する体制の充実等に取り組むとともに、その利用の促進を図る。(再掲)8-(2)-4

9.行政サービス等における配慮

【基本的考え方】

障害者が適切な配慮を受けることができるよう、行政機関の職員等における障害者理解の促進に努めるとともに、障害者がその権利を円滑に行使することができるように、障害者に対して、選挙等における配慮、司法手続等における配慮を行う。

(1)行政機関等における配慮及び障害者理解の促進等

○各行政機関等における事務・事業の実施に当たっては、障害者差別解消法(平成28(2016)年4月施行)に基づき、障害者が必要とする社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮を行う。9-(1)-1

○行政機関の職員等に対する障害者に関する理解を促進するため必要な研修を実施し、窓口等における障害者への配慮の徹底を図る。9-(1)-2

○各府省における行政情報の提供等に当たっては、情報通信技術(ICT)の進展等も踏まえ、アクセシビリティに配慮した情報提供に努める。9-(1)-3

(2)選挙等における配慮等

○政見放送への手話通訳・字幕の付与、点字、音声、拡大文字又はインターネットを通じた候補者情報の提供等、情報通信技術(ICT)の進展等も踏まえながら、障害特性に応じた選挙等に関する情報提供の充実に努める。9-(2)-1

○移動に困難を抱える障害者に配慮した投票所のバリアフリー化、障害者の利用に配慮した投票設備の設置等、投票所における投票環境の向上に努めるとともに、成年被後見人の選挙権の回復等を行う公職選挙法の改正を踏まえ、判断能力が不十分な障害者が自らの意思に基づき円滑に投票できるよう、代理投票の適切な実施等の取組を促進する。9-(2)-2

○指定病院等における不在者投票、郵便等による不在者投票の適切な実施の促進により、選挙の公正を確保しつつ、投票所での投票が困難な障害者の投票機会の確保に努める。9-(2)-3

(3)司法手続等における配慮等

○被疑者あるいは被告人となった障害者がその権利を円滑に行使することができるよう、刑事事件における手続の運用において、障害者の意思疎通等に関して適切な配慮を行う。あわせて、これらの手続に携わる職員に対して、障害や障害者に対する理解を深めるため必要な研修を実施する。9-(3)-1

○知的障害によりコミュニケーションに困難を抱える被疑者等に対する取調べの録音・録画の試行や心理・福祉関係者の助言・立会い等の試行を継続するとともに、更なる検討を行う。9-(3)-2

○矯正施設に入所する累犯障害者等に対して、社会復帰支援のためのプログラムの提供を促進するとともに、これらの施設の職員に対して必要な研修を実施する。9-(3)-3

○矯正施設に入所する累犯障害者等の円滑な社会復帰を促進するため、地域生活定着支援センターにおいて、保護観察所等の関係機関と連携の下、矯正施設に入所する累犯障害者等が出所等後に必要な福祉サービスを受けるための支援を行う。9-(3)-4

○弁護士、弁護士会、日本弁護士連合会、日本司法支援センター(法テラス)等の連携の下、罪を犯した知的障害者等の社会復帰の障害となり得る法的紛争の解決等に必要な支援を行うなど、再犯防止の観点からの社会復帰支援の充実を図る。9-(3)-5

(4)国家資格に関する配慮等

○各種の国家資格の取得等において障害者に不利が生じないよう、試験の実施等において必要な配慮を提供するとともに、いわゆる欠格条項について、各制度の趣旨も踏まえ、技術の進展、社会情勢の変化等の必要に応じた見直しを検討する。9-(4)-1

10.国際協力

【基本的考え方】

障害者施策を国際的な協調の下に推進するため、障害分野における国際的な取組への積極的な参加、国際協力の推進、障害者団体等による国際交流の推進等を進める。また、障害者権利条約について、その早期締結に向け、必要な手続を進める。

(1)国際的な取組への参加

○我が国が平成19(2007)年に署名した障害者権利条約については、これまで、障害者基本法の改正、障害者総合支援法の制定、障害者差別解消法の制定等、その批准に向けた取組が進められてきたところであり、これらの環境整備の進展も踏まえ、早期締結を目指し、必要な手続を進める。10-(1)-1

○障害者施策は国際的な協調の下に行われることが必要であり、国連や地域の国際機関等、国際的な非政府機関における障害者のための取組に積極的に参加する。10-(1)-2

○平成25(2013)年から10年間の「アジア太平洋障害者の十年(2013-2022)」について、アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)事務局や他加盟国と十分に連携しながら、域内の障害分野における国際協力に積極的に取り組む。10-(1)-3

(2)政府開発援助を通じた国際協力の推進等

○「政府開発援助大綱」(平成15年8月29日閣議決定)に基づき、政府開発援助の実施に当たっては、相手国の実情やニーズを踏まえるとともに、障害者を含む社会的弱者の状況を考慮して行う。10-(2)-1

○開発途上国において障害分野における活動に携わる組織・人材の能力向上を図るため、独立行政法人国際協力機構(JICA)を通じた研修員の受入れや専門家の派遣等の協力を行う。また、草の根・人間の安全保障無償資金協力等を通じて、障害分野における活動を行う国内外のNGO等に対する支援を行う。10-(2)-2

○障害分野における国際協力の実施に当たっては、支援の提供と受入れの両面における障害者の参画を得るように努める。10-(2)-3

(3)国際的な情報発信等

○我が国の障害者施策について、その特徴や先進性に留意しつつ、対外的な情報発信を推進する。10-(3)-1

○国際機関や外国政府等の障害者施策に関わる情報の収集及び提供に努める。10-(3)-2

(4)障害者等の国際交流の推進

○障害者団体等による国際交流や障害分野において社会活動の中核を担う青年リーダーの育成を支援するとともに、途上国における障害者関連事業に携わる我が国のNGOに対して支援を行う。10-(4)-1

○文化芸術活動、スポーツ等の分野における障害者の国際的な交流を支援する。10-(4)-2


9 ここでいうサービスには、「4.雇用・就業、経済的自立の支援」、「5.生活環境」に記載されている訓練等給付等も含まれる。

10 発達障害者の子育て経験のある親であって、その経験を生かし、子どもが発達障害の診断を受けて間もない親などに対して相談や助言を行う人のこと。

11 <1>常時介護を要する障害者等に対する支援、障害者等の移動の支援、障害者の就労の支援その他の障害福祉サービスの在り方、<2>障害支援区分の認定を含めた支給決定の在り方、<3>障害者の意思決定支援の在り方、障害福祉サービスの利用の観点からの成年後見制度の利用促進の在り方、<4>手話通訳等を行う者の派遣その他の聴覚、言語機能、音声機能その他の障害のため意思疎通を図ることに支障がある障害者等に対する支援の在り方、<5>精神障害者及び高齢の障害者に対する支援の在り方

12 障害者権利条約第24条において、「インクルーシブ教育システム」(inclusive education system、署名時仮訳:包容する教育制度)とは、人間の多様性の尊重等の強化、障害者が精神的及び身体的な能力等を可能な最大限度まで発達させ、自由な社会に効果的に参加することを可能とするとの目的の下、障害のある者と障害のない者が共に学ぶ仕組みとされている。

13 合意形成に向けて意見が一致しない場合の調整の仕組みとしては、市町村教育委員会の判断の妥当性を市町村教育委員会以外の者が評価することで意見が一致する可能性もあることから、市町村教育委員会が調整するためのプロセスを明確化しておくことが考えられる。

14 障害者の芸術活動については定着した名称がなく、「アール・ブリュット」、「アウトサイダー・アート」、「エイブル・アート」、「ボーダレス・アート」など様々な関連する概念や表現がある。

15 4年に一度、オリンピック終了後に同じ開催地で行われる、障害者(聴覚障害者を除く。)のスポーツの世界大会であり、夏季大会と冬季大会が開催されている。

16 4年に一度行われる、聴覚障害者のスポーツの世界大会であり、夏季競技大会と冬季競技大会が開催されている。

17 4年に一度行われる、知的発達障害者のスポーツの世界大会であり、夏季競技大会と冬季競技大会が開催されている。

18 障害者雇用率制度では、各企業の実雇用率の算定時において、重度身体障害者及び重度知的障害者は1人を2人として障害者数に算入することができることとされている。

19 各府省・各地方公共団体において知的障害者等を非常勤職員として雇用し、1から3年の業務の経験を積んだ後、ハローワーク等を通じて一般企業等への就職の実現を図ることを目的とする。

20 障害者を短期の試行雇用の形で受け入れることにより、その後の常用雇用への移行の促進を図ることを目的とする。

21 情報通信技術(ICT)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のこと。

22 平成26(2014)年4月にグループホームに統合予定。

23 施設や製品等について、誰にとっても利用しやすいデザインにするという考え方。

24 歩行経路の空間配置及び歩行経路の状況を表すデータであり、主に歩行経路を表す「リンク(線)」とリンクの結節点を表す「ノード(点)」で構成されている。

25 音声認識技術、画像認識技術、音声合成技術等を活用した機器及びサービス等を含む。

26 これまで聴覚障害者向けの電話リレーサービスなどの役務提供を行うものに対して101件、視覚障害者向けのデジタルテレビ放送音声受信装置などの研究開発を行うものに対して169件の助成を実施。

27 誰もがホームページ等で提供される情報や機能を支障なく利用できること。


IV 推進体制

1.連携・協力の確保

政府の障害者施策を一体的に推進し、総合的な企画立案及び横断的な調整を確保するため、各府省相互間の緊密な連携・協力を図る。

また、基本計画は政府の障害者施策の基本的方向を定めるものではあるものの、その着実な実施及び推進には、地方公共団体との連携・協力が必要不可欠であることから、都道府県及び市町村における障害者計画の策定に関する情報提供、研修機会の提供、広報・啓発活動等、地方公共団体との連携・協力体制の一層の強化を図る。

障害者の自立と社会参加に関する取組を社会全体で進めるため、政府における様々な活動の実施に当たっては、障害者団体、専門職による職能団体、企業、経済団体等の協力を得るよう努める。特に、障害者の自立及び社会参加の支援に当たり、障害者団体等の自主的な活動は重要な役割を果たしており、基本計画の推進に当たっては、これらの団体等との情報共有等の一層の促進を図る必要がある。

我が国の障害者施策における取組やその成果について積極的に海外に発信するとともに、国際機関、諸外国政府等との連携・協力に努める。

2.広報・啓発活動の推進

(1)広報・啓発活動の推進

障害者施策は幅広い国民の理解を得ながら進めていくことが重要であり、障害者基本法及び本基本計画の目的等に関する理解の促進を図るため、行政はもとより、企業、民間団体、マスメディア等の多様な主体との連携による幅広い広報・啓発活動を計画的かつ効果的に推進する。

また、障害者基本法に定められた障害者週間(毎年12月3日から9日まで)における各種行事を中心に、一般市民、ボランティア団体、障害者団体など幅広い層の参加による啓発活動を推進する。

障害者が自立した日常生活及び社会生活を確保することの重要性について国民の理解を深め、誰もが障害者等に自然に手助けすることのできる「心のバリアフリー」を推進する。

(2)障害及び障害者理解の促進

引き続き、国民の障害及び障害者に対する理解を促進するための取組を推進する。とりわけ、より一層の国民の理解が必要な知的障害、精神障害、発達障害、難病、盲ろう、高次脳機能障害等について、その障害特性や必要な配慮等に関する理解の促進を図る。

また、一般国民における、障害者が利用する視覚障害者誘導用ブロックや身体障害者補助犬、障害者用駐車スペース等に対する理解を促進するとともに、その円滑な利活用に必要な配慮等について周知を図る。また、障害者団体等が作成する啓発・周知のためのマーク等について、関連する事業者等の協力の下、国民に対する情報提供を行い、その普及及び理解の促進を図る。

障害のある幼児、児童、生徒と障害のない幼児、児童、生徒との相互理解を深めるための活動を一層促進するとともに、小中学校等の特別活動等における、障害者に対する理解と認識を深めるための指導を推進する。

さらに、地域社会における障害者への理解を促進するため、福祉施設、教育機関等と地域住民等との日常的交流の一層の拡大を図る。

(3)ボランティア活動等の推進

児童、生徒や地域住民等のボランティア活動に対する理解を深め、その活動を支援するよう努めるとともに、企業等の社会貢献活動に対する理解と協力を促進する。

また、特定非営利活動法人、ボランティア団体等、障害者も含む、多様な主体による障害者のための取組を促進するため、必要な活動環境の整備を図る。

3.進捗状況の管理及び評価

各分野における障害者施策の一義的な責任を負うこととなる各府省においては、障害者やその家族を始めとする関係者の意見を聴きつつ、本基本計画に基づく取組の計画的な実施に努める。また、各府省は、本基本計画に掲げる施策に関して、適当な事項について具体的な達成目標を設定するよう努めるとともに、数値等に基づき取組の実施状況及びその効果を把握・評価し、その結果に応じて取組の見直しを行う。

本基本計画の着実な推進を図るために策定する各分野における成果目標は別表のとおりである。なお、これらの成果目標は、それぞれの分野における具体的施策を、他の分野の施策との連携の下、総合的に実施することにより、政府全体で達成を目指す水準であり、地方公共団体や民間団体等の政府以外の機関・団体等が成果目標に係る項目に直接取り組む場合においては、成果目標は、政府がこれらの機関・団体等に働きかける際に、政府として達成を目指す水準として位置付けられる。

障害者政策委員会においては、障害者基本法に基づき、政府全体の見地から本基本計画の実施状況を評価・監視し、必要に応じて内閣総理大臣又は内閣総理大臣を通じて関係各大臣に本基本計画の実施に関して勧告を行う。その際、障害者政策委員会の円滑かつ適切な運営のため、事務局機能の充実を図る。

社会情勢の変化等により本基本計画の変更の必要性が生じた場合、あるいは本基本計画の推進及び評価を通じて本基本計画の変更の必要性が生じた場合には、対象期間の途中であっても、政府は本基本計画を柔軟に見直すこととする。

4.法制的整備

本基本計画の推進及び推進状況の評価を通じて、その必要が認められた場合には、政府において所要の法制的な整備を検討する。

5.調査研究及び情報提供

障害者施策を適切に講ずるため、障害者の実態調査等を通じて、障害者の状況や障害者施策等に関する情報・データの収集・分析を行うとともに、調査結果について、本基本計画の推進状況の評価及び評価を踏まえた取組の見直しへの活用に努める。また、障害者施策の適切な企画、実施、評価及び見直し(PDCA28)の観点から、障害者の性別、年齢、障害種別等の観点に留意し、情報・データの充実を図るとともに、適切な情報・データの収集・評価の在り方等を検討する。

本基本計画の推進において広く国民の理解と協力を得るため、効果的な情報提供とともに、国民の意見の反映に努める。また、国内外の取組等に関する調査研究や先進的な事例の紹介等に努める。


28 Plan (企画立案)、Do (実施)、Check (評価)、Action (企画立案への反映)という一連のサイクルの頭文字をつなげたもの。


(別表)

障害者基本計画関連成果目標
事項 現状
(直近の値)
目標
1.生活支援    
福祉施設入所者の地域生活への移行者数 2.9万人(平成17~23年度) 3.6万人(平成17~26年度)
福祉施設入所者数 14.6万人(平成17年度) 12.2万人(平成26年度)
障害者総合支援法第89条の3第1項に規定する協議会を設置している市町村数 1,629市町村(平成24年度) 全市町村(平成29年度)
訪問系サービスの利用時間数 494万時間(平成24年度) 652万時間(平成26年度)
日中活動系サービスのサービス提供量 893万人日分(平成24年度) 978万人日分(平成26年度)
療養介護事業の利用者数 1.9万人分(平成24年度) 1.6万人分(平成26年度)
短期入所事業のサービス提供量 26万人日分(平成24年度) 33万人日分(平成26年度)
相談支援事業の利用者数 計画相談支援 2.6万人
地域移行支援 0.05万人
地域定着支援 0.1万人
(平成24年度)
計画相談支援 18.9万人
地域移行支援 0.9万人
地域定着支援 1.3万人
(平成26年度)
2.保健・医療    
統合失調症の入院患者数 18.5万人(平成20年度) 15万人(平成26年度)
メンタルヘルスケアに取り組んでいる事業所の割合 43.6%(平成23年) 100%(平成32年)
入院中の精神障害者のうち、1年未満入院者の平均退院率 71.2%(平成20年度) 76%(平成26年度)
入院中の精神障害者のうち、高齢長期退院者数 各都道府県において算出 各都道府県において算出した値を元に設定
障害者支援施設及び障害児入所施設での定期的な歯科検診実施率の増加 66.9%(平成23年) 90%(平成34年度)
3.教育、文化芸術活動・スポーツ等    
特別支援教育に関する個別の教育支援計画作成率 76.2%(平成24年度) 80%以上(平成29年度)
特別支援教育に関する教員研修の受講率 72.1%(平成24年度) 80%以上(平成29年度)
特別支援教育に関する校内委員会の設置率 85.6%(平成24年度) 90%以上(平成29年度)
特別支援教育コーディネーターの指名率 86.8%(平成24年度) 90%以上(平成29年度)
4.雇用・就業等    
公共職業安定所における就職件数(障害者) 27万件
(平成20~24年度の累計)
37万件
(平成25~29年度の累計)
障害者職業能力開発校の修了者における就職率 60.0%(平成22年度) 65.0%(平成29年度)
障害者の委託訓練修了者における就職率 43.8%(平成22年度) 55.0%(平成29年度)
一般就労への年間移行者数 5,675人(平成23年度) 1.0万人(平成26年度)
就労継続支援B型等の平均工賃月額 13,586円(平成23年度) 15,773円(平成26年度)
就労移行支援の利用者数 45.6万人日分(平成24年度) 69.5万人日分(平成26年度)
就労継続支援A型の利用者数 53.2万人日分(平成24年度) 56.4万人日分(平成26年度)
50人以上規模の企業で雇用される障害者数 38.2万人(従業員56人以上企業)(平成24年) 46.6万人(平成29年)
公的機関の障害者雇用率 国の機関 2.31%
都道府県の機関 2.43%
市町村の機関 2.25%
都道府県等の教育委員会 1.88%
(平成24年)
全ての公的機関で雇用率達成
(平成29年度)
50人以上の規模の企業で雇用される精神障害者数 1.7万人(従業員56人以上企業)
(平成24年)
3.0万人(平成29年)
地域障害者職業センター 支援対象者数 14.8万人
(20~24年度の累計)
支援対象者数 14.7万人
(25~29年度の累計)
障害者就業・生活支援センター 利用者の就職件数 1.5万件
定着率 71.8%
(平成24年度)
利用者の就職件数 2.0万件
定着率75%
(平成29年度)
ジョブコーチ養成数・支援 ジョブコーチ養成数5,300人
ジョブコーチ支援 支援終了後の定着率 86.7%
(平成24年度)
ジョブコーチ養成数9,000人
ジョブコーチ支援 支援終了後の定着率 80%以上
(平成29年度)
精神障害者総合雇用支援 (支援終了後の復職・雇用継続率83.3%(平成24年度)) 支援終了後の復職率75%以上
(平成29年度)
5.生活環境    
グループホーム・ケアホームの月間の利用者数 8.2万人(平成24年度) 9.8万人(平成26年度)
一定の旅客施設のバリアフリー化率i <1>81%(平成23年度末)
<2>93%(同上)
<3>78%(同上)
<1>約100%(平成32年度末)
<2>約100%(同上)
<3>約100%(同上)
特定道路におけるバリアフリー化率ii 77%(平成23年度) 約100%(平成32年度末)
都市公園における園路及び広場、駐車場、便所のバリアフリー化率iii 園路及び広場:48%
駐車場:44%
便所:33%
(平成23年度末)
園路及び広場:約60%
駐車場:約60%
便所:約45%
(平成32年度末)
特定路外駐車場のバリアフリー化率iv 47%(平成23年度末) 約70%(平成32年度末)
不特定多数の者等が利用する一定の建築物のバリアフリー化率V 50%(平成23年度) 約60%(平成32年度末)
不特定多数の者等が利用する一定の建築物(新築)のうち誘導的なバリアフリー化の基準に適合する割合 18%(平成23年度) 約30%(平成32年度末)
車両等のバリアフリー化率vi <1>53%(平成23年度)
<2>38%(同上)
<3>3% (同上)
<4>13,099台(同上)
<5>21%(同上)
<6>86%(同上)
<1>約70%(平成32年度末)
<2>約70%(同上)
<3>約25%(同上)
<4>約28,000台(同上)
<5>約50%(同上)
<6>約90%(同上)
共同住宅のうち、道路から各戸の玄関までの車椅子・ベビーカーで通行可能な住宅ストックの比率 16%(平成20年度) 28%(平成32年度)
高齢者(65歳以上の者)が居住する住宅のバリアフリー化率(一定のバリアフリー化率) 37%(平成20年度) 75%(平成32年度)
高齢者(65歳以上の者)が居住する住宅のバリアフリー化率(高度のバリアフリー化率) 9.5%(平成20年度) 25%(平成32年度)
6.情報アクセシビリティ    
聴覚障害者情報提供施設 36都道府県(平成24年度) 全都道府県(平成29年度)
対象の放送番組の放送時間に占める字幕放送時間の割合 NHK総合83.5%、在京キー5局平均93.3%(平成24年度) ともに100%(平成29年度)
対象の放送番組の放送時間に占める解説放送時間の割合 NHK総合9.4%、NHK教育12.4%、在京キー5局平均4.3%(平成24年度) NHK総合及び在京キー5局等10%、NHK教育15%(平成29年度)

I 1日当たりの平均的な利用客数が3,000人以上である全ての旅客施設(鉄軌道駅、バスターミナル、旅客船ターミナル、航空旅客ターミナル)のうち、<1>段差解消、<2>視覚障害者誘導用ブロックの整備、<3>障害者対応型便所の設置がバリアフリー法に基づく公共交通移動等円滑化基準に適合するように行われているものの割合。

II バリアフリー法に規定する特定道路*のうち、道路移動等円滑化基準を満たす道路の割合。
 *特定道路:駅、官公庁施設、病院等を相互に連絡する道路のうち、多数の高齢者、障害者等が通常徒歩で移動する道路の区間として、国土交通大臣が指定したもの。

III 特定公園施設(バリアフリー法に基づき、同法政令で定める移動等円滑化が必要な公園施設)である園路及び広場、駐車場、便所が設置された都市公園のうち、各施設がバリアフリー法に基づく都市公園移動等円滑化基準に適合した都市公園の割合。

IV 特定路外駐車場(駐車の用に供する部分が500m2以上、かつその利用に対して料金を徴収している路外駐車場のうち、道路付属物であるもの、公園施設であるもの、建築物であるもの、建築物に付随しているものを除いた駐車場)のうち、バリアフリー法に基づく路外駐車場移動等円滑化基準に適合した路外駐車場の割合。

V 床面積2,000m2以上の特別特定建築物(病院、劇場、ホテル、老人ホーム等の不特定多数の者又は主として高齢者、障害者等が利用する建築物)の総ストック数のうち、バリアフリー法に基づく建築物移動等円滑化基準に適合するものの割合。

VI 車両等のうち、バリアフリー化が公共交通移動等円滑化基準に適合するように行われているものの割合等。<1>:鉄軌道車両のバリアフリー化率、<2>:バス車両(基準の適用除外の認定を受けた車両を除く)のうち、ノンステップバスの導入率、<3>:適用除外認定を受けたバス車両のうち、リフト付きバス又はスロープ付きバスの導入率、<4>:タクシー車両のうち、福祉タクシーの導入台数、<5>:旅客船のバリアフリー化率、<6>:航空機のバリアフリー化率。


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