目次]  [前へ]  [次へ

第3章 相互の理解と交流

第2節 我が国の国際的地位にふさわしい国際協力に係る施策

2.国際協力等の推進

(1)国際協力の基本的な方針

障害者施策は、福祉、保健・医療、教育、雇用等の広範な分野にわたっているが、我が国がこれらの分野で蓄積してきた技術・経験などを政府開発援助(ODA)などを通じて開発途上国の障害者施策に役立てることは、極めて有効であり、かつ、重要である。協力を行うに当たり、対象国の実態や要請内容を十分把握し、その国の文化を尊重しながら要請に柔軟に対応することが大切である。このため、我が国は、密接な政策対話を通じ、対象国と我が国の双方が納得いく協力を行うよう努めている。また、草の根・人間の安全保障無償資金協力、日本NGO連携無償資金協力等の活用を通じたNGOとの連携、青年海外協力隊の派遣など開発途上国の草の根レベルに直接届く協力も行っており、現地の様々なニーズにきめ細かく対応している。

(2)有償資金協力

有償資金協力では、鉄道建設、空港建設等においてバリアフリー化を図った設計を行う等、障害のある人の利用に配慮した協力を行っている。平成27年度においては、12件の障害者配慮に関連した事業計画への援助を決定した。

(3)無償資金協力

無償資金協力においても、障害のある人の利用に配慮した協力を行うとともに、障害のある人のためのリハビリテーション施設や職業訓練施設の整備、移動用ミニバスの供与等、毎年多くの協力を行っている。平成27年度においては、草の根・人間の安全保障無償資金協力により44件の障害者関連援助を、NGO・教育機関・地方公共団体等に対し実施した。また、平成27年度には日本NGO連携無償資金協力により、9件の障害者支援関連事業を実施した。

(4)技術協力

技術協力の分野では、開発途上国の障害者の社会参加と権利の実現に向けて、独立行政法人国際協力機構(JICA)を通じて、障害者を対象とした取組に加え、開発プロセスのあらゆる分野において障害者の参加を支援するために、研修員の受入れや専門家及びJICAボランティアの派遣など幅広い協力を行っている。平成27年度には「障害者リーダーシップ育成とネットワーキング」をはじめ11の研修コースを本邦において実施し、研修員113人を受け入れたほか、専門家15人、言語聴覚士・理学療法士・作業療法士等のJICAボランティア102人の派遣などを行った。また、NGOや大学等をはじめとする市民団体の発意に基づく事業を実施するJICA草の根技術協力事業を活用し、平成27年度には17件の障害と開発関連事業を実施した。また、これら技術協力に日本および開発途上国双方の障害者が参加し、中心的な役割を担うことを推進している。

技術協力プロジェクトでは、コロンビアにおいて「障害のある紛争被害者のソーシャルインクルージョンプロジェクト」を平成27年3月から開始した。平成20年8月から4年にわたり実施した「地雷被災者を中心とした障害者総合リハビリテーション体制強化プロジェクト」により、リハビリテーションに従事する専門職の能力が強化された。一方、その過程で、リハビリテーション体制の強化のみならず、生計手段の獲得を前提とする社会復帰を含めた社会参加、ソーシャルインクルージョンの必要性が強く認識されたため、障害のある紛争被害者のソーシャルインクルージョンのための戦略(方法論や役割分担を含む実施要領)の作成及び推進をコロンビア政府とともに実施している。同プロジェクトでは、平成27年中にプロジェクトサイトの実態把握のための調査を完了し、今後は障害のある紛争被害者をはじめとする、対象地域に住む全ての障害者の社会復帰・社会参加を促進するための活動を行っていく予定である。

さらに、モンゴル及び南アフリカ共和国において新たな技術協力プロジェクトを平成28年度から開始するほか、障害者の社会参加促進に向けて相手方政府の行政官の能力強化を支援するべく、アドバイザー型専門家がルワンダ及びヨルダンにおいて活動中であり、平成28年度にはパラグアイにもアドバイザー型専門家の派遣を予定している。

(5)国際機関等を通じた協力

援助対象国に対する直接的援助のほか、我が国では国連等国際機関を通じた協力も行っている。昭和63年度から国連障害者基金に対して継続的な拠出を行っており、平成26年度には約1万ドルを拠出した。さらに、アジア太平洋地域への協力としては、国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)に対し、日本エスカップ協力基金(JECF)を通じた活動支援を実施しており、平成27年には、障害者に配慮した防災マニュアルの作成について5万ドルの支援を行った。

■ 図表3-2 技術協力の状況(平成26年度)
(1)本邦研修
2015年度実施研修員受入れコース 113
地域活動としての知的障害者支援 11
障害者リーダーシップ育成とネットワーキング 9
地域に根ざしたインクルーシブアプローチによる障害者の社会参加と生計(A) 11
地域に根ざしたインクルーシブアプローチによる障害者の社会参加と生計(B) 8
地域に根ざしたインクルーシブアプローチによる障害者の社会参加と生計(C) 7
中央アジア地域 障害者のメインストリーミング及びエンパワーメント促進 8
アフリカ地域 障害者の自立生活とメインストリーミング 11
パキスタン KP州障害者社会参加促進のための政府関係者と障害者の能力強化 14
コロンビア 障害のある紛争被害者のソーシャルインクルージョン 10
青年研修タイ 障がい者支援制度コース 14
ベトナムでの足こぎ車いすを利用したリハビリモデル開発及び、リハビリ人材育成プロジェクト 10
(注)課題別研修/国別研修/青年研修の受入人数
(2)ボランティア
102
青年海外協力隊 86
内訳 障害児・者支援 36
理学療法士 30
作業療法士 10
鍼灸マッサージ師 2
ソーシャルワーカー 7
言語聴覚士 1
シニア海外ボランティア 14
内訳 障害児・者支援 4
理学療法士 6
作業療法士 3
ソーシャルワーカー 1
日系社会シニア・ボランティア 2
内訳 ソーシャルワーカー 2

(注)障害児・者支援、養護、理学療法士、作業療法士、鍼灸マッサージ師、ソーシャルワーカー、義肢装具士、言語聴覚士の8職種を障害者支援関連職種とし、新規派遣人数を計上。

(3)技術協力プロジェクト事業
技術協力プロジェクト 専門家派遣(人) 研修員受入(人) 機材供与(百万円)
事業名
アフガニスタン
教師教育における特別支援教育強化プロジェクト(フェーズ2)
0 18 0
コロンビア
障害のある紛争被害者のソーシャルインクルージョンプロジェクト
3 10 0
マレーシア
障害者の社会参加支援サービスプロジェクト (フェーズ2)
2 7 0
モンゴル
障害児のための教育改善プロジェクト
0 10 0
パキスタン(個別長期専門家)
障害者社会参加促進アドバイザー
1 0 0
南アフリカ(個別長期専門家)
障害主流化促進アドバイザー
1 0 0
ヨルダン(個別長期専門家)
障害問題アドバイザー
1 0 0
ルワンダ(個別長期専門家)
障害分野アドボカシー及び調整促進アドバイザー
1 0 0
ヨルダン(個別短期専門家)
障害者のアクセシビリティ改善のためのアドバイザー
6 0 0

※前年度からの継続による専門家派遣・研修員受入人数を含む。専門家派遣については第三国人材の派遣及びコンサルタント契約による専門家人数を除く。また、研修員受け入れについては協力相手国内もしくは第三国で実施された研修コース分を除く。

資料:外務省

(4)草の根技術協力事業(平成27年度障害者支援関連事業)
対象国 案件名
インド インド共和国における視覚障害者の職業教育支援事業
ブータン ソーシャルインクルージョンによる障がい者支援プロジェクト
ブラジル PIPA自閉症児療育学級への支援を通じた自閉症児療育プロジェクト
ブラジル ブラジルにおける障がい者インクルージョンのための園芸療法
ルワンダ キガリ市に居住する障害者へのパソコン講習を通じた収入創出事業
コスタリカ コスタリカ自立生活推進プロジェクト
パキスタン パキスタンラホール市における電動車いす活用による重度障害者の自立生活推進事業
ペルー 障害者自立支援事業(フェイズ2)
南アフリカ共和国 障害者地域自立生活センター設立に向けた人材育成
ラオス ラオス障害者スポーツ振興プロジェクト
ラオス ラオスにおける障がい者の小規模起業支援事業
カンボジア 障がい者雇用を前提としたビジネスモデル構築事業
ベトナム ベトナムでの足こぎ車いすを利用したリハビリモデル開発及び、リハビリ人材育成プロジェクト
■ 図表3-3 日本NGO連携無償資金協力(平成27年度障害者支援関連事業)(単位:円)
実施国/地域 契約額 事業名
インドネシア 2,753,220 スラカルタ市の障害者支援団体に対する障害児用中古車椅子供与による福祉政策向上への支援
エチオピア 3,681,010 デシエ市のチェシャ財団障害児支援センターに対する障害児用中古車椅子供与計画
パキスタン 5,395,742 パキスタンにおける中古電動車いす提供を通じた重度障害者の自立支援事業
ラオス 20,993,280 ラオスにおける持続可能な障害者技能指導員養成と企業によるサポートの促進(第2期)
ラオス 23,427,580 ラオス・フアパン県における障害者の働く場づくり
ヨルダン 19,302,091 ヨルダンにおけるシリア難民負傷者・障害者支援事業
タジキスタン 37,624,070 ドゥシャンベ市における障がい児のためのインクルーシブ教育推進事業(フェーズ3)
パレスチナ自治区 29,500,458 ガザ地区における聴覚障がい児童及び危険地帯居住児童に対する心理社会的ケア事業(第3年次)
ベトナム 11,963,478 ドンナイ省、ラムドン省小学校のインクルージョン教育研修システムの構築事業(第3期)

資料:外務省

目次]  [前へ]  [次へ