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第5章 日々の暮らしの基盤づくり 第2節 1

第2節 保健・医療施策

1.障害の原因となる疾病等の予防・治療

(1)障害の原因となる疾病等の予防・早期発見

ア 健康診査

健康診査は、リスクの早期発見による疾病等の発症予防、疾病の早期発見による重症化予防の機会として重要であり、必要に応じて保健指導に結び付ける機会でもある。

フェニールケトン尿症等の先天性代謝異常や先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)などの早期発見・早期治療のため、新生児を対象としたマススクリーニング検査の実施及び聴覚障害の早期発見・早期療養を目的とした新生児聴覚検査の実施を推進している。

また、幼児期において、身体発育及び精神発達の面から最も重要な時期である1歳6か月児及び3歳児のすべてに対し、総合的な健康診査を実施しており、その結果に基づいて適切な指導を行っている。

学校においては、就学時や毎学年定期に児童生徒の健康診断を行っており、疾病の早期治療や早期発見に役立っている。

職場においては、労働者の健康確保のため、労働者を雇い入れた時及び定期に健康診断を実施することを事業者に義務づけている。

イ 保健指導

妊産婦や新生児・未熟児等に対して、障害の原因となる疾病等を予防し、健康の保持増進を図るために、家庭訪問等の個別指導による保健指導が行われている。

身体の機能に障害のある児童又は機能障害を招来する児童を早期に発見し、療育の指導等を実施するため、保健所及び市町村において早期に適切な治療上の指導を行い、その障害の治癒又は軽減に努めている。身体に障害のある児童については、障害の状態及び療育の状況を随時把握し、その状況に応じて適切な福祉の措置を行っている。

ウ 生活習慣病の予防

急速な人口の高齢化の進展に伴い、疾病構造が変化し、疾病全体に占める、がん、心疾患、脳血管疾患、糖尿病等の生活習慣病の割合が増加している中、健康寿命の更なる延伸、生活の質の向上を実現し、元気で明るい社会を築くためには、若いうちから生活習慣の見直しなどを通じて積極的に健康を増進し、疾病の「予防」に重点を置いた対策の推進が急務である。

このため、がん、糖尿病等のNCDs(非感染性疾患)の予防等の具体的な目標等を明記した「健康日本21(第二次)」(厚生労働省告示)に基づく国民健康づくり運動を平成25年度より開始している。

また、平成20年度から「適度な運動」、「適切な食生活」、「禁煙」に焦点を当てた新たな国民運動として「すこやか生活習慣国民運動」を展開するなど、生活習慣病対策の一層の推進を図ってきたが、平成22年度からはこの運動をさらに普及、発展させた「スマート・ライフ・プロジェクト」を開始し、幅広い企業連携を主体とした取組等を通じて、生活習慣病対策の一層の推進を図っている。

(2)障害の原因となる疾病等の治療

リスクの高い妊産婦や新生児などに高度な医療が適切に提供されるよう、各都道府県において、周産期医療の中核となる総合周産期母子医療センター及び地域周産期母子医療センターを整備し、地域の分娩施設との連携体制の確保などを行っている。

また、平成27年1月1日に「難病の患者に対する医療等に関する法律」(以下「難病法」という。)が施行された。同年27年7月までに、医療費助成対象を特定疾患治療研究事業で対象としていた56疾病から306疾病へと拡大した。さらに、同年9月には、難病法に基づき、「難病の患者に対する医療等の総合的な推進を図るための基本的な方針」が策定され、同方針に基づき、国及び地方公共団体等が取り組むべき方向性を示すことにより、難病の患者に対する良質かつ適切な医療の確保及び難病の患者の療養生活の質の維持向上などを図ることとしている。

(3)正しい知識の普及

ア 学校安全の充実

学校においては、児童生徒等が自他の生命を尊重し、日常生活全般における安全に必要な事柄を実践的に理解し、安全な生活ができるような態度や能力を養うことが大切である。このため、体育科、保健体育科、特別活動など学校の教育活動全体を通じて安全教育を行っている。

文部科学省では、安全教育の充実を図るため、各都道府県において指導的な役割を果たしている小・中・高等学校の教員等を対象とした「健康教育指導者養成研修学校安全コース」(独立行政法人教員研修センターが実施。)を開催し、指導者の学校安全に関する資質の向上を図っている。

「難病の患者に対する医療等に関する法律」(平成26年法律第50号)に基づく新たな難病対策について

難病対策については、昭和47年10月に策定された難病対策要綱に基づき本格的に推進されるようになって40年以上が経過した。その間、各種の事業を推進してきた結果、難病の実態把握や治療方法の開発、難病医療の水準の向上、患者の療養環境の改善及び難病に関する社会的認識の促進に一定の成果をあげてきた。

しかしながら、医療の進歩や患者及びその家族のニーズの多様化、社会・経済状況の変化に伴い、同じような疾病であっても、医療費助成の対象となる疾病とならない疾病があり、疾病間で不公平感があるなど、様々な課題が指摘されるようになった。特に、都道府県における超過負担の問題は制度自体の安定性をゆるがすものとされ、難病対策全般にわたる改革が強く求められるようになった。その結果、持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律に基づく措置として、平成27年1月1日に「難病の患者に対する医療等に関する法律」(以下「難病法」)が施行され、公平かつ安定的な医療費助成制度が確立された。

難病法に基づく医療費助成の対象となる指定難病の要件は、発病の機構が明らかでなく、治療方法が確立していない希少な疾病であって長期の療養を必要とするもののうち、「患者数が本邦において一定の人数に達しないこと」及び「客観的な診断基準(又はそれに準ずるもの)が確立していること」と定められており、同年7月までに、特定疾患治療研究事業で対象としていた56疾病から306疾病へと拡大した。さらに、同年9月には、難病法に基づき「難病の患者に対する医療等の総合的な推進を図るための基本的な方針」が策定され、本方針に基づき、医療費助成にとどまらず難病法の基本理念である難病の克服に向けた調査・研究事業の推進、医療を提供する体制の確保、難病患者の療養生活の質の維持向上等を図るための必要な検討や取組を進めている。

難病の患者に対する医療等の総合的な推進を図るための基本的な方針 概要

障害者総合支援法の施行3年後の見直しについて

○障害者総合支援法の見直しの契機について

障害福祉施策においては、障害者の地域移行や一般就労への移行が進む中、障害者が望む地域生活の実現や職場への定着を図るとともに、障害者の高齢化や障害児支援のニーズの多様化への対応を進めるため、より一層のきめ細かな支援が求められています。

また、障害者総合支援法の附則において、同法の施行後3年(平成28年4月)を目途として、障害福祉サービスの在り方等について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずることとされています。

これらを踏まえ、平成26年12月から平成27年12月にかけて、厚生労働省社会保障審議会障害者部会等において、障害者総合支援法の見直しに関する検討を進めてきました。

障害者総合支援法施行後3年を目途とした見直し事項

○社会保障審議会障害者部会等における検討について

障害者総合支援法の附則の検討規定を踏まえ、障害福祉サービス等の実態を把握した上で、その在り方等について検討を進めるに当たっての論点整理を行うことを目的として、平成26年12月から、「障害福祉サービスの在り方等に関する論点整理のためのワーキンググループ」を開催しました。ここでは、計38団体からのヒアリングや意見交換を経て、平成27年4月に、「障害福祉サービスの在り方等について(論点の整理(案))」が取りまとめられました。

ワーキンググループによって取りまとめられた論点整理も踏まえ、平成27年4月からは、社会保障審議会障害者部会において、計45団体からヒアリングを行うとともに、計19回にわたって障害福祉施策の見直しに向けた検討を行い、平成27年12月14日には、今後の取組に関する報告書が取りまとめられました。

○社会保障審議会障害者部会の報告書について

社会保障審議会障害者部会の報告書においては、ワーキンググループが取りまとめた10の大きな論点(常時介護を要する障害者等に対する支援、障害者の就労支援、等)ごとに、現状及び課題を分析するとともに、今後取り組むべき事項がまとめられています(報告書の概要については、図表5-1)。

○障害者総合支援法の見直しについて

社会保障審議会障害者部会が取りまとめた報告書のうち、法律改正が必要な事項に対応するため、障害福祉サービス及び障害児通所支援の拡充等を内容とする「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律及び児童福祉法の一部を改正する法律案」が平成28年3月1日に閣議決定され、国会に提出されました(法律の概要については、図表5-2)。

このほか、報告書のうち法律改正を必要としない事項については、平成30年度に予定されている障害福祉サービス等に係る次期報酬改定に向けた検討等の中で、具体的な見直しの内容について検討し、必要な対応を進めることとしています。

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