第6章 住みよい環境の基盤づくり 第1節 3
第1節 障害のある人の住みよいまちづくりと安全・安心のための施策
3.建築物のバリアフリー化の推進
(1)官庁施設のバリアフリー化
官庁施設の整備においては、昭和48年度以降、合同庁舎、窓口業務を行う官署等について、車いす使用者の利用を考慮したスロープ、車いす使用者用トイレの設置や視覚に障害のある人の利用を考慮した構内通路の整備等、所要の措置を講じてきた。
更にきめ細かい障害者・高齢者施策を推進するため、窓口業務を行う官署が入居する官庁施設について、「バリアフリー法」に基づく建築物移動等円滑化誘導基準に規定された整備水準の確保など、障害者をはじめすべての人が、安全に、安心して、円滑かつ快適に利用できる施設を目指した整備を推進している。
(2)人にやさしい建築物の整備
デパート、ホテル等の多数の人々が利用する建築物を、障害のある人等が利用しやすくするためには、昇降装置の設置、廊下の幅員等の確保、各種設備の充実等を図る必要がある。このため、建築物のバリアフリー化を推進するため、「バリアフリー法」に基づき、障害のある人等が円滑に利用できる特定建築物の廊下・階段等に関する基準(移動等円滑化基準)を定め、一定規模以上の特別特定建築物の建築等について当該基準への適合を義務付けるとともに、同法に基づき所管行政庁により認定を受けた優良な建築物(認定特定建築物)に対して支援措置等を講じている。
(3)「バリアフリー法」に伴う助成等
建築物のバリアフリー化を推進するため、上述の移動等円滑化基準に基づき特定建築物の建築主等への指導・助言を行っている。
また、認定特定建築物のうち一定のものについては、障害のある人等の利用に配慮したエレベーター、幅の広い廊下等の施設整備に対する助成制度(バリアフリー環境整備促進事業)により支援している。
地方公共団体が行う、公共施設等のバリアフリー化についても支援している。
(4)表示方法の統一
ア 点字表示
多くの公共施設等で、点字による情報提供において、表示方法の混乱を避けつつ更なる普及を図るため、「高齢者・障害者配慮設計指針─点字の表示原則及び点字表示方法─公共施設・設備(JIST0921)」及び「高齢者・障害者配慮設計指針─点字の表示原則及び点字表示方法─消費生活製品の操作部(JIST0923)」を制定している。
イ 案内用図記号
不特定多数の人々が利用する交通施設、観光施設、スポーツ文化施設、商業施設などの公共施設や企業内の施設において、文字や言語によらず対象物、概念又は状態に関する情報を提供する図形(案内用図記号JISZ8210)は、一見してその表現内容を理解できる、遠方からの視認性に優れている、言語の知識を要しないといった利点があり、一般の人だけでなく、視力の低下した高齢者や障害のある人、さらに外国人等でも容易に理解することができ、文字や言語に比べて優れた情報提供手段である。
案内用図記号については、「案内用図記号(JISZ8210)」があるが、平成27年5月には「ベビーカーが利用できる施設を表示する図記号」及び、「ベビーカーの使用を禁止する場合に表示する図記号」を追加し、併せて、当該図記号の使用方法を参考に記載するための改正を行った。
また、平成28年3月にも改正し、「土石流注意」等、2つの注意図記号及び「洪水/内水氾濫」等、5つの災害種別一般図記号を追加した。
平成26年9月に制定された、「津波避難誘導標識システム」のJISZ9097を基に、洪水、内水氾濫、高潮、土石流、崖崩れ・地滑り及び大規模な火事にも素早く安全な場所に避難することが可能になるように、避難場所までの道順や距離についての情報を含んだ標識を、避難場所に至るまでの道のりに一連のものとして設置する場合に考慮すべき事項について規定した、「災害避難誘導標識システム」のJISZ9098を平成28年3月に制定した。また、これらをISOに提案するための作業を開始した。
ウ 公共トイレ、触知案内図
視覚障害のある人が、鉄道駅、公園、病院、百貨店などの不特定多数の人が利用する施設・設備等を安全で、かつ、円滑に利用できるようにするため、「高齢者・障害者配慮設計指針─公共トイレにおける便房内操作部の形状、色、配置及び器具の配置(JISS0026)」、「高齢者・障害者配慮設計指針─触知案内図の情報内容及び形状並びにその表示方法(JIST0922)」及び「高齢者・障害者配慮設計指針─触覚情報─触知図形の基本設計方法(JISS0052)」を制定している。
「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」の基本的枠組み
「バリアフリー教室」
高齢者や障害を持った方々の自立と社会参加を促進するためには、高齢者や障害のある人等が公共交通機関などの施設を円滑に利用できるようにすることが必要ですが、バリアフリー施設の整備といったハード面の対応だけではなく、国民一人ひとりが高齢者や障害のある人等の移動制約者を見かけた際に進んで手を差し伸べる環境づくりといったソフト面の対応も重要です。
このため、多くの国民が高齢者や障害のある人等に対する基礎的知識を学び、車いす利用体験や視覚障害者疑似体験・介助体験等を行うことを通じて、バリアフリーについての理解を深めるとともに、ボランティアに関する意識を醸成し、誰もが高齢者や障害のある人等に対して自然に快くサポートできる「心のバリアフリー」社会の実現を目指すことを目的として、全国各地で「バリアフリー教室」を開催しています。
平成26年度には、全国で252件の「バリアフリー教室」を開催し、約16,000人の参加を得ました。小中学生をはじめとした学生や、鉄道やバスといった公共交通関係事業に関わる現場職員等、様々な方にご参加いただいています。
体験終了後、参加した学生からは、「大変さや苦労を知ることができた」、「とても勉強になった。声をかけることはとても勇気がいると思うが、学んだことを生かし、素直な気持ちで障害のある方のお手伝いができたらと思う」などの感想をいただくなど、本教室が高齢者・障害者等の移動制約者に対する理解とボランティアに関する意識啓発の一助となっています。