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第6章 住みよい環境の基盤づくり 第2節 4

第2節 障害のある人の情報アクセシビリティを向上するための施策

4.コミュニケーション支援体制の充実

(1)手話や点訳等によるコミュニケーション支援

地域生活支援事業においては、聴覚、言語機能、音声機能、視覚その他の障害のため、意思疎通を図ることに支障がある人に、手話通訳者等の派遣や設置、点訳や音声訳等による支援などを行う意思疎通支援事業や、点訳奉仕員、朗読奉仕員、要約筆記者、手話奉仕員及び手話通訳者等の養成研修が実施されている。平成25年4月に施行された障害者総合支援法における地域生活支援事業では、手話通訳者、要約筆記者及び盲ろう者向け通訳・介助員の養成研修を都道府県の必須事業とするとともに、派遣を行う事業についても市町村で実施できない場合などは都道府県が実施する仕組みとし、意思疎通支援の強化を図っている。

各都道府県警察においては、聴覚に障害のある人のための字幕スーパー入り講習用映画の活用や手話通訳員の確保に努めている。また、言語での意思伝達を困難とする人たちと警察官とのコミュニケーションを円滑にするため、協力団体とともに開発し、提供を受けた「コミュニケーション支援ボード」につき、イラストを追加するなどの改定を行い、全国の交番、パトカー等に配備し、活用している。

(2)コミュニケーション支援用絵記号及びアクセシブルミーティング

日本工業標準調査会(JISC)は、文字や話し言葉によるコミュニケーションの困難な人が、自分の意思や要求を相手に的確に伝え、正しく理解してもらうことを支援するための絵記号に関する規格を「コミュニケーション支援用絵記号デザイン原則(JIST0103)」として制定し、平成22年に障害のある人が会議に参加しやすいように主催者側の配慮事項を「アクセシブルミーティング(JIS S0042)」として規格を制定した。

コミュニケーション支援用絵記号の例

絵記号の例

(注)コミュニケーション支援用絵記号デザイン原則(JIS T0103)には参考として約300の絵記号の例を収載しており、これらは公益財団法人共用品推進機構のホームページから無償でダウンロードすることができます。

「2020年東京大会に係る障害者関連施策」

1)大会に向けたアクセシビリティの実現

平成26年(2014年)11月、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会、国の関係行政機関、東京都、関係地方公共団体、障害者団体及び障害者スポーツに関わる団体等で構成するアクセシビリティ協議会を設置し、「Tokyo2020アクセシビリティ・ガイドライン*1」の検討を開始した。

競技会場等構造物の設計段階で必要となるハード面の基準について、他の項目に先行して検討を行い、平成27年4月に暫定基準としてとりまとめ、平成28年1月に国際パラリンピック委員会(以下「IPC」という。)から承認を得た(図表1)。

今後、暫定基準で対象とならなかった項目等について、引き続き検討・協議し、平成28年春を目途にとりまとめ、IPCの最終承認を得た後に、広く公開し、2020年東京大会の準備・運営に反映させる予定である。

*1.国際パラリンピック委員会が定める『IPCアクセシビリティガイド』と国内関係法令等に基づき、東京大会の各会場のアクセシビリティに配慮が必要なエリアと、そこへの動線となるアクセス経路、輸送手段、組織委員会による情報発信・表示サイン等の基準、及び関係者の接遇トレーニング等に活用する指針として、組織委員会が作成するもの。

(図表1)暫定基準の具体例
項目 内容
エレベーターのかごの大きさ 推奨 幅2,100mm×奥行1,500mm(IPCの推奨)、又は同等水準のサイズ

※鉄道駅等は、複数台設置により全体容量で推奨基準を達成する場合、当該基準を満たしたものとみなす。

標準 幅1,700mm×奥行1,500mm(IPCの遵守基準)、又は同等水準のサイズ

※構造上の理由等によって標準を満たせない場合
幅1,400mm×奥行1,350mm(国の遵守基準)

出入口のドア幅 推奨 950mm(IPCの推奨)
標準 大会会場では850mm(IPCの遵守基準)
公共交通機関では900mm(国の推奨)

※構造上の理由等によって標準を満たせない場合
800mm(国の遵守基準)

傾斜路の踊り場 推奨 高低差500mm以内ごとに設置(IPCの推奨)
標準 高低差750mm以内ごとに設置(国の遵守基準)

※公共交通機関の屋外部分は高低差600mm以内ごとに設置(国の推奨基準)を標準とし、構造上の理由等でそれを満たせない場合にのみ、上記規定を適用

2)大会を契機としたユニバーサルデザイン及び心のバリアフリーの推進

平成27年11月に閣議決定されたオリパラ基本方針において、「全国展開を見据えつつ、東京において、世界に誇れる水準でユニバーサルデザイン化された公共施設・交通インフラを整備する」とともに、「「心のバリアフリー」を推進することにより、共生社会を実現する」こととされた。

このため、競技会場等にとどまることなく、地方を含め、街づくりにおけるユニバーサルデザイン及びいわゆる「心のバリアフリー」に取り組み、共生社会を次世代に誇れるレガシーとして創り出すべく、平成28年2月に遠藤オリパラ大臣を座長とする「ユニバーサルデザイン2020関係府省等連絡会議(図表2)」を設置した。2月22日に開催された第1回連絡会議において、具体的な検討項目(案)を提示したところである(図表3)。今後3月には、心のバリアフリー分野及び街づくり分野について、専門的な見地から施策の具体化を行うため、それぞれ分科会を設置し、8月の中間とりまとめ、12月の最終とりまとめに向けて検討を行う予定である。

(図表2)ユニバーサルデザイン2020関係府省等連絡会議構成員について
座長: オリパラ大臣
副座長: 内閣官房オリパラ事務局長
構成員: 内閣官房オリパラ事務局企画・推進統括官、内閣官房国土強靱化推進室審議官、内閣府政策統括官(共生社会政策担当)、内閣府政策統括官(防災担当)、警察庁交通局長、総務省情報通信国際戦略局長、消防庁次長、法務省人権擁護局長、文部科学省初等中等教育局長、スポーツ庁次長、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長、農林水産省食料産業局長、経済産業省商務情報政策局長、国土交通省総合政策局長
オブザーバー: 東京都オリパラ準備局長、東京都都市整備局長、東京都福祉保健局長、大会組織委員会副事務総長、日本パラリンピック委員会委員長
事務局: 内閣官房
(図表3)ユニバーサルデザイン2020の検討項目(案)
〈検討項目(案)〉
1.心のバリアフリー 2.ユニバーサルデザインの街づくりの推進
  1. (1)教育
    1. <1>「心のバリアフリー」教育の実施(幼・小・中・高)
    2. <2>「心のバリアフリー」促進に向けた大学連携の活用
  2. (2)民間事業者等への働きかけ
    1. <1>接遇対応の改善
      1. a)交通・観光分野におけるサービス水準の確保
      2. b)東京大会で作成される「接遇テキスト」の幅広い展開
      3. c)多目的トイレの利用マナーの向上
    2. <2>企業における「心のバリアフリー」の社員教育の実施
    3. <3>障害者等を支えるボランティアの促進
    4. <4>災害時における障害者及び外国人に配慮した避難のあり方
  3. (3)国民全体に向けた取組み
    1. <1>障害者への理解促進や障害者へ配慮する行動の促進
    2. <2>障害者の社会参加の促進
    3. <3>健常者と障害者がともに参加できるスポーツ大会等の開催を推進
  1. (1)東京大会の競技会場、アクセス経路等の整備
  2. (2)各地において、アクセシビリティ・ガイドラインを踏まえた高い水準のユニバーサルデザイン化を推進
  3. (3)複合施設(大規模駅や地下街等)において、連続的・一体的なバリアフリーを実現)
  4. (4)障害者用トイレの整備の推進
  5. (5)リフト付バス・UDタクシーの普及
  6. (6)ICTを活用したきめ細かい情報発信・行動支援
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