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第3編 障害者施策の実施状況 第1章 第1節 4

第1章 障害のある人に対する理解を深めるための基盤づくり

第1節 広報・啓発活動の推進

4.バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者の表彰

高齢者、障害のある人、妊婦や子供連れの人を含む全ての人が安全で快適な社会生活を送ることができるよう、ハード、ソフト両面のバリアフリー・ユニバーサルデザインを効果的かつ総合的に推進する観点から、その推進について顕著な功績又は功労のあった個人・団体に対して、内閣総理大臣及び高齢社会対策又は障害者施策を担当する大臣が、毎年度、表彰を行い、その優れた取組を広く普及させることとしている。平成28年度においては、6団体を表彰した。

■ 図表3-1-1 平成28年度バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰 受賞者○内閣総理大臣表彰
株式会社ジェイ・ティー・アール
(埼玉県戸田市)
【厚生労働省推薦】
  • 我が国で唯一35年にわたり、点字プリンターの開発、製造から販売まで行っている企業であり、日本国内はもとよりアジア諸国に至る視覚障害者の大切な文字である点字の普及発展のために意欲的に事業を展開している。
  • 全国の点字図書館、視覚障害者情報提供施設、社会福祉協議会等から発行される点字図書を製作する点字プリンタプロッタを開発、点字を通じ、視覚障害者が障害のない人と同等に文字情報を入手することができるよう、また、視覚障害者が障害のない人と同等の読書環境の整備と情報収集を行いやすい環境整備に力を注いでいる。
  • 量産及び企業努力により、個人でも購入しやすい価格としたため、自宅で点字プリンターを使用することを実現させ、視覚障害者の自立支援や社会参加及び就学に貢献している。
  • 点字印刷のみならずグラフィックも表現できる点図印刷機能も備えたプリンターを製品化している。
株式会社静岡新聞社・
静岡放送株式会社
メディア・ユニバーサルデザインプロジェクトチーム
(静岡県静岡市)
【静岡県推薦】
  • 静岡県におけるマスメディアの中核を担っている企業である。社員がカラーユニバーサルデザインの研修に参加し、従来から行っていた情報発信が、色覚障害者の特性等を理解しておらず、一部の人には伝わりにくいものになっている可能性が高いことに気づき、メディア展開におけるユニバーサルデザインを進めることとした。
  • ユニバーサルデザインの導入に当たっては、NPO法人メディア・ユニバーサルデザイン(MUD)協会の監修等を受けながら、色覚障害者だけでなく、国内初の取組として、白内障等で見えにくさを感じている高齢者も視野に入れた配慮を行った。また、新聞、放送共同でプロジェクトチームを発足させ、グループ全体で使用するMUDガイドブックを作成したほか、社内にMUD教育検定の資格取得者を配置し、常時メディアとしての適正な表現についてチェックが行えるようにしている。グループ会社を含めたガイドブック活用の研修も実施している。また、新聞紙面に新聞UDフォントを導入し、高齢者にも読みやすい新聞紙面の取組も進めている。
  • 平成28年3月、静岡県立静岡文化芸術大学デザイン学科の小浜朋子准教授(工学博士)とメディア・ユニバーサルデザイン協会による「後期高齢者参加型高齢社会のQOL向上に向けた調査」を実施し、新聞UDフォントを導入した静岡新聞のテレビラジオ欄は、調査対象主要5紙と比較し一番読みやすいという評価を得た。また、静岡新聞はより明るい光源下、より暗い光源下の両条件においても他紙よりも読みやすいという結果が確認された。
○内閣府特命担当大臣表彰 優良賞
有限会社さいとう工房(東京都墨田区)
【東京都推薦】
誰もが入手しやすい市販機で、オーダーメイドに近い多機能電動車椅子を作ることを目指し、6年の歳月をかけて多機能選択型電動車椅子「レル・シリーズ」を開発した。「レル・シリーズ」は、まだ日本で普及していない*6輪型を採用し、直径96㎝での小さな旋回や大幅な軽量化を実現し、屋内外での傾斜がある場所においても同社開発の独自機構(平成25年4月特許取得)により、安心・安全を利用者に提供する段差越え機能を備える。また、座面の奥行、幅、高さ、座角を機械操作で簡単に調整できるようにし、寝ることを可能にしたティルト・リクライニング機能、食事や洗面時に必要な適度な姿勢をつくりだす座角変換機能等も備えている。
* 補装具費の支給制度を利用する際の額の算定基準に関係するJISの規格において、電動車椅子が「前2輪、後2輪の四輪で構成したもの」と定義されていることが原因の1つであると考えられる。社長は、JIS開発委員会及びその分科会の委員の一人として、平成28年度末までの改正JIS原案の作成にも尽力。
なにわ一水
(島根県松江市)
【島根県推薦】
  • 障害のある人や高齢者が家族と一緒に旅行に出かけ、家族全員で旅行の楽しみを共有できる環境づくりが必要と考え、ユニバーサルツーリズムと福祉介護が共存し、全ての人に非日常を楽しんでもらえる旅館を目指し、施設改修やサービスの充実に取り組んでいる。(施設の概要:5階建、客室全25室)
  • 障害者のサポート方法や施設整備について、障害者の社会参画支援を行っているNPO法人プロジェクトゆうあい(バリアフリーマップの製作、宿泊施設へのバリアフリー研修等の実施について、平成20年度バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者内閣府特命担当大臣表彰(奨励賞)を受賞)から意見を得ながら施設及び心のバリアフリー化を進めている。
○内閣府特命担当大臣表彰 優良賞
ヤマハ株式会社新規事業開発部
SoundUDグループ(東京都港区)
【総務省、京都府推薦】
  • 交通機関、商業施設、公共施設で流れるアナウンスや観光地のガイダンス、非常放送、災害放送等、街中では様々な音声情報が流れているが、聴覚障害者や音が聞き取りづらい高齢者、日本語アナウンス等がわからない外国人は、内容を理解できず不自由を強いられることが多い。開発した「おもてなしガイド」は、世界初の「音のユニバーサルデザイン化」をコンセプトとして、ヤマハの音響通信技術と国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の高精度音声認識技術を活用して実現したシステムであり、インターネット回線を必要とせず、既存の放送設備も活用でき、災害に強いことも特徴である。
  • この「おもてなしガイド」は、日本語アナウンスの内容が、ユーザー各自のわかる言語文字として、瞬時に各々のスマートフォン等に表示することができるもので、特に、訪日外国人には通訳者を、聴覚障害者には手話通訳を介することなくアナウンス等の内容を伝えることができ、バリアフリー化に極めて有用なものである。
座間キャラバン隊(神奈川県座間市)
【神奈川県推薦】
  • ダウン症の妹を持つ小学校6年生の男児が、自閉症の児童の不思議な行動を馬鹿にする同級生に対して、自閉症についてどう説明したら良いのかと母親に問いかけてきたことを受け、その母親が学校の先生に相談し、障害のある児童について説明する時間を持つこととなった。その際、仲間たちへ持ち掛け、アイデアを出し合い、台本、カード、グッズ等を作り、地域の小学校で障害のある児童を理解するための公演をしたことがきっかけとなり、平成13年に「座間市手をつなぐ育成会地域啓発キャラバン隊」を結成した。
  • 平成14年に公演活動が全国的に知れ渡り、冊子・ビデオの作成、ビデオレンタル等で活動内容を広範囲に広め、20年には、座間市手をつなぐ育成会から独立した。15年以降、現在まで300回近い公演を行い2万人以上が公演活動を観賞しているほか、雑誌、テレビ、ラジオにも多数取り上げられ、自閉症支援実践賞「いとしご賞」等の賞を受賞するなどにより、類似の活動の全国への広がり、障害児童への理解促進において多大な功績がある。
左:点字プリンター例(株式会社ジェイ・ティー・アール) 右:MUDガイドブック「制作視点」(株式会社静岡新聞社・静岡放送株式会社メディア・ユニバーサルデザインプロジェクトチーム)

資料:内閣府

平成28年度障害者週間行事

1.「障害者フォーラム2016」

平成28年12月2日(金)13:00~17:00

会場:中央合同庁舎第8号館1階講堂(東京都千代田区)

第1部 「心の輪を広げる体験作文」及び「障害者週間のポスター」最優秀賞受賞者の表彰式

障害のある人に対する理解を促進するため、全国から募集した「心の輪を広げる体験作文」及び「障害者週間のポスター」最優秀賞受賞者の表彰と受賞者による作文の朗読。

最優秀賞受賞者(内閣総理大臣賞)
「心の輪を広げる体験作文」 小学生部門:益田 幸奈
中学生部門:常盤 美海
高校生・一般部門:山崎 嘉通
「障害者週間のポスター」 小学生部門:岡本 彩佐
中学生部門:榎本 雛
最優秀賞受賞者の表彰
「作文」・「ポスター」最優秀賞受賞者

第2部 「障害者週間」記念シンポジウム

「真の共生社会とは何か、あらためて問う-全ての命と尊厳の尊重を」をテーマに、障害者基本法等の趣旨を改めて再確認するとともに、多くの国民と全ての命と尊厳が尊重されることの大切さを広く共有し、共生社会の実現に揺るぎなく向かっていくことを確認する機会とするシンポジウムを開催。(シンポジウム概要については第1編第1節参照)

2.「障害者週間のポスター」原画展

日時:平成28年12月3日(土)~9日(金)

会場:有楽町駅前地下広場(東京都千代田区)

内容:全国の小・中学校等から公募した「心の輪を広げる体験作文」の最優秀作品及び「障害者週間のポスター」の推薦作品の原画を展示。

「「障害者週間のポスター」原画展

3.障害者週間連続セミナー

日時:平成28年12月6日(火)~7日(水)

会場:有楽町朝日スクエア(東京都千代田区)

内容:障害者週間行事の一環として、障害者週間の趣旨にふさわしいセミナーを主催する団体に会場を提供し、障害及び障害者に関する国民の理解を促進するため、連続してセミナーを実施。

【12月6日(火)】

  1. <1> チック、トゥレット症候群とそれに関連する発達障害
      主催:特定非営利活動法人 日本トゥレット協会
  2. <2> オストメイト対応トイレの実態調査
      主催:公益社団法人 日本オストミー協会
  3. <3> 発達障害者の雇用を促進するために Vol.5 ~安定して働き続けるために 一人ひとりができること~
      主催:独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構
  4. <4> 失語症を含む高次脳機能障害者の社会的障壁を考える
      主催:特定非営利活動法人 日本失語症協議会

【12月7日(水)】

  1. <1> 高齢者・障害者等の読み書き困難者への理解を促進する行政施策について考える
      主催:特定非営利活動法人 大活字文化普及協会
  2. <2> 「吃音や関連する障害のある人の社会参加・就労支援に向けて」
      主催:特定非営利活動法人 全国言友会連絡協議会
  3. <3> 発達障害児教育への支援~音声教材の有効性と今後の課題について~
      主催:公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会
  4. <4> 大人の発達障害について~最近の動き~
      主催:一般社団法人 日本発達障害ネットワーク
障害者週間連続セミナーの様子1

4.障害者週間の広報

内閣府では、広報・啓発事業として、全国の小・中学生から募集した「障害者週間のポスター」の中から最優秀作品を図案化した啓発ポスターを作成、配布しており、平成28年度は、小・中学校、駅等に約27,000枚を掲示した。
 また、政府広報等を活用した広報・啓発活動を行い「障害者週間」の周知を図るとともに、障害及び障害のある人に対する理解の促進を図った。

障害者週間の広報

内閣府ホームページ(障害者週間概要)

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