第4章 日々の暮らしの基盤づくり 第2節 2
第2節 保健・医療施策
2.障害のある人に対する適切な保健・医療サービスの充実
(1)障害のある人に対する医療・医学的リハビリテーション
ア 医療・リハビリテーション医療の提供
障害のある人のための医療・リハビリテーション医療の充実は、障害の軽減を図り、障害のある人の自立を促進するために不可欠である。
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)に基づき、身体障害の状態を軽減するための医療(更生医療及び育成医療)及び精神疾患に対する継続的な治療(精神通院医療)を自立支援医療と位置づけ、その医療費の自己負担の一部又は全部を公費負担している。
また、平成30(2018)年度の診療報酬改定において、医療と障害福祉との切れ目ない支援を推進する観点から、入退院支援や退院時の指導等の要件に障害福祉サービスにおける相談支援事業者との連携を追加するとともに、自宅等で暮らす重症精神疾患患者に対する多職種共同の訪問支援等について評価の充実や継続的な支援を可能とする見直しを行った。さらに、医療的ケアが必要な児に対する長時間の訪問看護について評価の充実を行った。
イ 医学的リハビリテーションの確保
国立障害者リハビリテーションセンター病院では、早期退院・社会復帰に向けて、各障害に対応した機能回復訓練を行うとともに、医療相談及び心理支援を行っている。また、障害のある人の健康増進、機能維持についても必要なサービス及び情報の提供を行っている。
交通事故や病気等により脳に損傷を受け、その後遺症等として記憶、注意、遂行機能、社会的行動といった認知機能(高次脳機能)が低下した状態を高次脳機能障害という。高次脳機能障害は日常生活の中で現れ、外見からは障害があると分かりにくく、「見えない障害」や「隠れた障害」などと言われている。このため、都道府県に高次脳機能障害のある人への支援を行うための支援拠点機関を置き、〈1〉相談支援コーディネーターによる高次脳機能障害のある人に対する専門的な相談支援、〈2〉関係機関との地域支援ネットワークの充実、〈3〉高次脳機能障害の支援手法等に関する研修等を行う「高次脳機能障害及びその関連障害に対する支援普及事業」を開始し、全国で高次脳機能障害に対する適切な対応が行われるよう取り組んでいる。
また、国立障害者リハビリテーションセンターに「高次脳機能障害情報・支援センター」(http://www.rehab.go.jp/brain_fukyu/)を設置し、高次脳機能障害について一般の方への啓発を行うとともに、高次脳機能障害者支援に必要な最新の国内外の情報や研究成果等を集約し、高次脳機能障害のある人やその家族及び支援関係者等に役立つ情報についてホームページ等を通じて発信している。
さらに、国立障害者リハビリテーションセンター学院において、「高次脳機能障害支援事業関係職員研修会」等、現に高次脳機能障害のある人に対する支援を行っている専門職を対象とした研修会を実施している。
障害のある人の健康増進については、国立障害者リハビリテーションセンターに「障害者健康増進・運動医科学支援センター」を設置し、健康の維持・増進及び活動機能の維持と低下予防、総合検診(人間ドック)及び運動と栄養の介入による生活習慣病の予防等に取り組むとともに、障害のある人の運動医科学支援と運動活動環境の支援を実施している。
刑事施設においては、医療刑務所等にリハビリテーション機器を整備し、受刑者のうち、運動機能に障害を有する者や長期療養等で運動機能が低下した者に対して、機能回復訓練を行っている。
(2)難病患者に対する保健医療サービス
早期に正しい難病の診断ができる体制、診断後はより身近な医療機関で適切な医療を受けることができる体制が整備できるよう、都道府県ごとの難病診療連携拠点病院、分野別拠点病院整備、難病医療協力病院の整備、保健所を中心とした在宅難病患者に対する地域での支援の強化など、地域における保健医療福祉サービスの提供を推進している。
(3)保健・医療サービス等に関する難病患者への情報提供
難病患者への情報提供について、難病情報センターによりインターネットを活用して最新の医学や医療の情報等を提供している。難病患者のもつ様々なニーズに対応したきめ細やかな相談や支援が行えるよう、「難病相談支援センター」を都道府県、指定都市に設置し、地域における難病患者支援を推進している。