第1章 障害のある人に対する理解を深めるための基盤づくり 第2節 3

目次]  [前へ]  [次へ

第2節 障害を理由とする差別の解消の推進

3.障害者差別解消法の施行に関する取組等

障害を理由とする差別については、国民一人ひとりの障害に関する知識・理解の不足、意識の偏りに起因する面が大きいと考えられる。このため、全ての国民が障害の有無によって分け隔てられることのない共生社会を実現するためには、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)(以下「障害者差別解消法」という。)で求められる取組やその考え方が、幅広く社会に浸透することが重要である。政府においては、同法の円滑な施行に向けた各般の取組により国民各層の関心を高め、障害に関する理解と協力を促進することによって、建設的対話による相互理解を通じた合理的配慮の提供等を促進していく。

(1)合理的配慮の提供等事例集

内閣府では、障害者差別解消法に基づく合理的配慮の提供や環境の整備に関する事例を関係省庁、地方公共団体、障害者団体などから収集し、障害種別や生活場面別に整理した上で、「合理的配慮の提供等事例集」として取りまとめている。

この事例集の活用を通じて、合理的配慮を始めとする障害者差別の解消に向けた取組の裾野が更に広がるとともに、障害者差別解消法に対する国民の理解が一層深まることが期待される。

(2)障害者差別解消支援地域協議会の設置の促進

障害者差別解消法第17条において、国及び地方公共団体の機関は、「障害者差別解消支援地域協議会」(以下「地域協議会」という。)を組織することができるとされている。地域協議会を設置することで、その地域の関係機関による相談事例等に係る情報の共有・協議を通じ、各自の役割に応じた事案解決のための取組や類似事案の発生防止などを行うネットワークが構築されるとともに、障害者や事業者からの相談や事案に対し、地域協議会の構成機関が連携して効果的な対応、紛争解決の後押しを行うことが可能となり、差別解消に関する地域の対応力の向上が図られる。

都道府県及び指定都市においては全て設置済みとなっているが、現在未設置の市町村に対しても取組を後押しするため、課題整理などを支援する有識者等を内閣府からアドバイザーとして派遣している(2018年度は、山形県酒田市、埼玉県八潮市、千葉県習志野市、東京都渋谷区、同中野区、同昭島市、長野県諏訪市、愛知県岡崎市、和歌山県有田市及び沖縄県沖縄市へ派遣)。また、地方公共団体等の幅広い関係者の出席を得て、学識経験者による講演、地方公共団体による取組事例の報告、パネルディスカッション等を内容とする報告会を開催し、地域協議会の設置に向けた各地域における取組の促進と機運の醸成を図っている。

図表1-2 地方公共団体における障害者差別解消支援地域協議会の設置状況
選択肢  
都道府県 政令市 中核市等 一般市 町村
割合 割合 割合 割合 割合 割合
設置済み 923 52% 47 100% 20 100% 63 74% 428 60% 365 39%
設置予定 167 9% 0 0% 0 0% 7 8% 78 11% 82 9%
設置していない 698 39% 0 0% 0 0% 15 18% 203 29% 480 52%
1,788 100% 47 100% 20 100% 85 100% 709 100% 927 100%
注1:各数値は、2018年4月1日時点の値を示している。
注2:「中核市等」とは、中核市、特別区及び県庁所在地(政令市を除く。)を示している。
注3:「一般市」とは、政令市及び中核市等のいずれにも該当しない市を示している。
注4:割合の値は、小数点以下を四捨五入している。
注5:地域協議会を正式に設置していない場合でも、地域協議会の事務に相当する事務を行う組織、会議体、ネットワーク等の枠組みが別途存在しており、かつ、過去に当該枠組みで地域協議会の事務に相当する事務を行った実績がある場合は、「設置済み」と整理している。
注6:複数の地方公共団体が共同で地域協議会を設置している場合は「設置済み」と整理している。

(3)主務大臣等による行政措置

事業者における障害者差別解消に向けた取組は、主務大臣の定める対応指針を参考にして、各事業者により自主的に取組が行われることが期待される。

しかしながら、事業者による自主的な取組のみによっては、その適切な履行が確保されず、例えば、事業者が法に反した取扱いを繰り返し、自主的な改善を期待することが困難である場合など、特に必要があると認められるときは、主務大臣又は地方公共団体の長等は、事業者に対し、行政措置を講ずることができるとされている(2018年度、主務大臣等による助言、指導及び勧告の行政措置の実績なし)。

図表1-3
障害者差別解消法に関する経緯
資料:内閣府
図表1-4 障害者差別解消法の概要
資料:内閣府
/内閣府
第1章第2節 障害を理由とする差別の解消の推進
TOPICS
障害者差別解消に関する取組事例

岐阜市における障害者理解の啓発と配慮の促進の取組

岐阜市では、障害者差別解消法の理念と取組を広めるべく、障害者理解の啓発を推進するとともに、2018年度から、障害者理解を「合理的配慮」につなげていくための新たな取組を実施し、障害者差別の解消の加速化を図っている。

(1)障害者理解啓発推進事業

障害者団体との協働により、「障がいの理解啓発パンフレット」の作成や「白杖SOSシグナル普及啓発シンボルマーク」など障害者に関するマークの普及に取り組むとともに、障害者週間や発達障害啓発週間等において講演会や障害者スポーツ体験会、作品展等の啓発イベントを開催している。

障害者理解の啓発の成果

「差別や偏見を感じている障害者の割合」2013年:32.7% → 2016年:25.0%

※障害者計画等策定実態調査(各年11月実施)より

(2)障害者配慮促進事業

自治会等の地域活動団体や学校、企業等における障害者配慮の好事例を収集、発信するとともに、好事例の一層の創出を図るため、地域活動団体や学校、企業等からの要請に応じ、配慮について助言等する「岐阜市インクルーシブアドバイザー」を派遣している。

①障害者配慮の好事例の収集、発信

2019年3月に「障がい者配慮事例集KIZUKI」を発行した。

(紹介している主な事例)

○難聴者が地域の防災訓練への参加をためらっていたが、自治会と難聴者が話し合い、訓練に要約筆記者をつけ、参加が可能となった。その後、文字ガイダンス付きAEDも設置した。

○地域の運動会において、障害者の参加できる競技がなかったが、主催者と障害者団体が話し合い、障害のある人とない人が共に参加できる「車椅子体験リレー」を実施し、障害への理解の広まりに寄与した。

○知的障害の子供との外出時、親がトイレで離れると不安がる等で外出しにくかったが、見守り合いの仲間を築き、子供の不安に対応することで外出しやすくなった。

②岐阜市インクルーシブアドバイザーの派遣

アドバイザーには、障害者団体や高等教育機関、障害者雇用の実績のある企業に候補者の人選を依頼し、講習会を経て、2018年9月に15人に委嘱した。アドバイザーの派遣は、岐阜市内の自治会等の地域活動団体や学校、企業等からの申請(助言等を求める内容、配慮を必要としている人の障害の種別等を申請)を受け、岐阜市で対象となる障害や事案の状況を確認してアドバイザー2人を選定し、派遣(1回当たり2時間を限度)している。2018年の派遣実績は1件であるが、問い合わせや研修の講師としての派遣の要望等が寄せられている。

(岐阜市インクルーシブアドバイザー制度の特徴)

○配慮を求める側、行う側の双方の立場を理解し、話し合いを円滑に進め、助言等できるよう、相談対応の経験豊富な障害者関係団体関係者と専門的な助言等が可能な有識者等の2人体制。

○解決するまで複数回の派遣も可能。

○派遣後に、申請者から結果報告書(助言等を受けた内容、その後の対応状況等を報告)の提出を求め、その内容も事例として公表(承諾を得た場合)。

障害のある人への配慮の事例を収集・創出・発信することにより、差別のない社会へ

配慮の事例の収集、インクルーシブアドバイザーの派遣による更なる事例創出、事例集の発信により、市民一人一人が、それぞれの立場に立った配慮や身近にできる工夫に気づき、考えることで、障害の有無にかかわらず、誰もが生き生きと暮らす地域社会の実現を目指している。

○「障がい者配慮事例集 KIZUKI」(2019年3月)

  • 事例集:地域の運動会に参加
  • 事例集:安心して行事に参加

○岐阜市インクルーシブアドバイザー

  • 岐阜市インクルーシブアドバイザー
  • インクルーシブアドバイザー講習会
    (2018年8月)

目次]  [前へ]  [次へ