第3章 日々の暮らしの基盤づくり 第2節 4
第2節 保健・医療施策
4.研究開発の推進
障害の原因となる疾病等の予防や根本的治療法等を確立するため、これまで障害の原因、予防、早期発見、治療及び療育に関する研究が行われてきた。これは、障害児施策の基本である障害の予防や早期治療を確立し、有機的かつ総合的に施策を推進させるための基礎となるものである。この研究の成果を踏まえ、1歳6か月児健康診査、3歳児健康診査、先天性代謝異常等検査、新生児聴覚検査等が実施されている。
厚生労働科学研究の「障害者政策総合研究事業」においては、障害者を取り巻く現状について課題別に調査・分析し、支援の改善方策を研究することにより、障害者を取り巻く現状を正しく理解し、障害者の社会参加の機会の確保や、地域社会における共生の実現に資する政策実現のための研究を推進している。
また、難病に関する研究については、これまで、患者数が少なく、原因が不明で、根本的な治療方法が確立されておらず、かつ、後遺症を残すおそれが少なくない難治性疾患について、厚生労働科学研究の「難治性疾患克服研究事業」において、難治性疾患の画期的な診断法及び治療法の研究開発を推進してきた。国立障害者リハビリテーションセンターでは、難治性聴覚障害者に関する調査研究を信州大学と共同で進めている。
現在は、診療体制の構築や普及啓発、難病の治療法の確立のため、診療ガイドラインの作成等、診療の質の向上に政策に直結する研究を行う「難治性疾患政策研究事業」と、病態解明や創薬に関する研究を行う「難治性疾患実用化研究事業」を実施しており、互いに連携しながら、治療方法の開発に向けた難病研究の推進に取り組んでいる。なお、「難治性疾患実用化研究事業」については、医療分野の研究開発及びその環境の整備の実施や助成等を行う国立研究開発法人日本医療研究開発機構にて実施しており、難病の患者に対する医療等に関する法律(平成26年法律第50号)において定義されている発病の機構が明らかでなく、治療方法が確立していない希少な疾病や、小児慢性特定疾病等であって、長期にわたり療養が必要な疾病についての研究の推進を行う方針となっている。
経済産業省においては、優れた基礎研究の成果による革新的な医薬品・医療機器の開発を促進するため、「再生医療の産業化に向けた評価基盤技術開発事業」「未来医療を実現する医療機器・システム研究開発事業」を実施し、日本が強みを有する優れた技術を応用した、日本発の革新的な医薬品・医療機器の開発を推進している。
保健・医療の向上に資する研究開発の事例として、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「未来医療を実現する医療機器・システム研究開発事業」(経済産業省要求予算事業)において、発達障害や精神障害についての診断支援技術(詳細は、以下のとおり)を開発した。
①注視点検出による発達障害診断システム(2019年度治験開始予定)
現在、発達障害(ASD;自閉症スペクトラム症、ADHD;注意欠陥多動症)の確定診断は、専門の医療機関において行われているところ。本システムは、注視点検出技術やAIを用いた診断アルゴリズム等で構成されており、被検者が10分程度の画像を見るだけで、専門の医療機関でなくとも、客観的・定量的かつ短時間で、ASDとADHDの確定診断が可能となる。
②精神症状の客観的評価デバイス
現在、うつ、双極性障害、認知症等の精神疾患は、専門の医療機関での診断が必要であり、特に重症度を調べるには、熟練の医師の経験や大掛かりな検査を伴う。本デバイスは、患者の表情や音声を、AIアルゴリズムを用いて解析を行い、専門外の医師であっても患者との会話のみで、専門医と同様の診断が可能となり、重症度も調べることができる。