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第3章 障害のある人に対する理解を深めるための基盤づくり 第2節 3

第2節 障害を理由とする差別の解消の推進

3.障害者差別解消法に関する取組等

障害を理由とする差別については、国民一人一人の障害に関する知識・理解の不足、意識の偏りに起因する面が大きいと考えられる。このため、全ての国民が障害の有無によって分け隔てられることのない共生社会を実現するためには、「障害者差別解消法」で求められる取組やその考え方が、幅広く社会に浸透することが重要である。政府においては、各般の取組により国民各層の関心と理解を深めるとともに、建設的対話による相互理解を通じた合理的配慮の提供等の促進をはじめ、障害を理由とする差別の解消を妨げている諸要因の解消を図るため、必要な啓発活動を行うこととしている。

(1)合理的配慮の提供等事例集

内閣府では、「障害者差別解消法」に基づく合理的配慮の提供や環境の整備に関する事例を関係省庁、地方公共団体、障害者団体などから収集し、障害種別や生活場面別に整理した上で、「合理的配慮の提供等事例集」として取りまとめている。

この事例集の活用を通じて、合理的配慮の提供を始めとする障害者差別の解消に向けた取組の裾野が更に広がるとともに、「障害者差別解消法」に対する国民の理解が一層深まることが期待される。

(2)障害者差別解消支援地域協議会の設置の促進

「障害者差別解消法」において、国及び地方公共団体の機関は、「障害者差別解消支援地域協議会」(以下「地域協議会」という。)を組織することができるとされている。地域協議会を設置することで、その地域の関係機関による相談事例等に係る情報の共有・協議を通じ、各自の役割に応じた事案解決のための取組や類似事案の発生防止などを行うネットワークが構築されるとともに、障害者や事業者からの相談等に対し、地域協議会の構成機関が連携して効果的な対応、紛争解決の後押しを行うことが可能となり、差別解消に関する地域の対応力の向上が図られる。

地域協議会は、都道府県及び指定都市においては全て設置されているが、一般市の設置率は約7割、町村の設置率は約5割であり、設置した市町村においても開催実績が乏しいところもある。こうした状況を踏まえ、各都道府県等で地域協議会の設置や活性化に向けた的確な助言等ができる人材育成等を図ることを目的とした「障害者差別解消支援地域協議会体制整備・強化ブロック研修会」を、2019年度に2ブロック(関東信越、近畿)、2020年度に4ブロック(東北、東海・北陸、中国・四国、九州)で開催した。

図表3-2 地方公共団体における障害者差別解消支援地域協議会の設置状況
選択肢  
都道府県 指定都市 中核市等 一般市 町村
割合 割合 割合 割合 割合 割合
設置済み 1,041 58% 47 100% 20 100% 70 80% 479 68% 425 46%
設置予定 98 5% 0 0% 0 0% 5 6% 34 5% 59 6%
設置していない 649 36% 0 0% 0 0% 12 14% 195 28% 442 48%
1,788 100% 47 100% 20 100% 87 100% 708 100% 926 100%
資料:内閣府
注1:各数値は、2020年4月1日時点の値を示している。
注2:「中核市等」とは、中核市、特別区及び県庁所在地(指定都市を除く。)を示している。
注3:「一般市」とは、指定都市及び中核市等のいずれにも該当しない市を示している。
注4:割合の値は、小数点以下を四捨五入している。
注5:地域協議会を正式に設置していない場合でも、地域協議会の事務に相当する事務を行う組織、会議体、ネットワーク等の枠組みが別途存在しており、かつ、過去に当該枠組みで地域協議会の事務に相当する事務を行った実績がある場合は、「設置済み」と整理している。
注6:複数の地方公共団体が共同で地域協議会を設置している場合は「設置済み」と整理している。

(3)主務大臣等による行政措置

事業者における障害を理由とする差別の解消に向けた取組は、主務大臣の定める対応指針を踏まえ、各事業者により自主的に取組が行われることが期待される。

しかしながら、事業者による自主的な取組のみによっては、その適切な履行が確保されないような場合、例えば、事業者が法に反した取扱いを繰り返し、自主的な改善を期待することが困難である場合など、特に必要があると認められるときは、主務大臣又は地方公共団体の長等は、事業者に対し、行政措置を講ずることができるとされている(2020年度、主務大臣等による助言、指導及び勧告の行政措置の実績はなし)。

/内閣府
第3章第2節 3.障害者差別解消法に関する取組等
TOPICS
障害者差別解消に関する取組事例

山形県における心のバリアフリー推進員の養成及び活動支援

山形県では、2016年に「山形県障がいのある人もない人も共に生きる社会づくり条例」を制定した。施策の一つとして、職場や地域などで、障害を理由とする差別の解消の中心として活動する「心のバリアフリー推進員」(以下「推進員」という。)を養成し、その活動を支援している。

1 目 的

推進員は、民間事業所などにおける障害者に対する取組の中心的な役割を担い、障害を理由とする差別の解消、合理的配慮の提供及び障害者雇用の促進等に資することを目的とする。その養成と取組の支援を通じ、障害に対する正しい理解を深め、障害者が働きやすい職場や暮らしやすい地域づくりなど、障害のある人もない人も共に活躍できる共生社会を実現する。

2 「心のバリアフリー推進員」の役割

推進員は、事業所の従業員などが「心のバリアフリー推進員養成研修」を受けることにより、事業所において障害に配慮したサービスの提供や障害者が働きやすい職場づくり、地域における障害に関する正しい知識の普及に率先して取り組むことが期待されている。

〇心のバリアフリー推進員養成数(2021年2月時点)

年度 2016 2017 2018 2019 2020
養成人数
(実績:人)
282 516 681 448 207 2,134
《「心のバリアフリー推進員」の事業所・地域における取組例》

・職場で定期的に研修を実施し好事例の共有により利用しやすい環境の共通理解を図った。

・障害の種別で必要なサポートが異なるため、「何かお手伝いすることはありませんか」と言葉をかけ、関わりのきっかけにしている。

・障害のある職員の業務について、苦手な業務内容を練習できる環境を作った。

・日常生活で周囲の人に障害者差別解消について伝え、障害のある方の見守りに努める。

3 「心のバリアフリー推進員養成研修会」の開催

県内の事業所や地域の住民を対象に、障害について理解を深める内容の研修会を開催し、受講修了者に「心のバリアフリー推進員」認定証とステッカーを交付する。

研修会は事業所や団体等の申込みを受けて行う「出前講座」と、県内4ブロックで行う個人向け研修を開催している。出前講座は年10回程度、ブロック研修は年4回実施しており、2016年から2020年までに計57回実施し、2,134人が受講した。

2020年度は新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、研修の一部はオンラインにより実施した。

4 研修内容の例(2020年度)

① 障害者差別解消について~共生社会の実現のために~

身体に障害があり、障害者施設で相談支援業務に従事した経験がある方を講師に迎え、各種障害の特性や障害者の日常生活におけるバリアとそれをなくすための取組の紹介、障害者に話しかけるタイミングなどのコミュニケーションの方法、障害者に対する合理的配慮の事例紹介などについて講義した。

② 手話を覚えてみよう

聴覚障害について理解を深めるため、当事者であるろう者が講師となり、生活上の困難事例や配慮を望むことなどを説明し、挨拶などの簡単な手話を学習した。

《県内の事業所における「心のバリアフリー推進員養成研修」を通じた取組例》

・社内研修に「心のバリアフリー推進員養成研修」を取り入れ、障害を理由とする差別の解消及び合理的配慮の提供に関する理解を深め、障害のある方への配慮を心がけている。

・事業所で独自に業務の内容を踏まえた「こころのバリアフリーハンドブック」を作成し、全従業員に配布、読み合わせをして障害と障害のある方への理解に努めている。

・職員が障害者スポーツのイベントにボランティアとして参加することを推奨している。

5 活動支援

山形県では、職場や地域などで障害や障害のある方に関する正しい知識の普及を目的として、合理的配慮の事例などを冊子にまとめた「心のバリアフリー推進員活動の手引き」を作成して推進員に配布し、活動をバックアップしている。出前講座の開催に際しては、民間の事業所を訪問し、様々な業種への参加を呼びかけている。

今後は推進員同士の情報交換や事例共有を促進していくため、県内4ブロックで推進員や関係者を対象としたミーティングやワークショップを開催し、推進員による活動のネットワーク化を進め、活動の活性化を図ることとしている。

▽心のバリアフリー推進員活動の手引き〈抜粋〉(2020年3月作成)
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