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第6章 住みよい環境の基盤づくり 第1節 4

第1節 障害のある人の住みよいまちづくりと安全・安心のための施策

4.建築物のバリアフリー化の推進

(1)官庁施設のバリアフリー化

官庁施設の整備においては、窓口業務を行う官署が入居する官庁施設について、「バリアフリー法」に基づく「建築物移動等円滑化誘導基準」に規定された整備水準の確保など、障害のある人を始め全ての人が、安全に、安心して、円滑かつ快適に利用できる施設を目指した整備を推進している。

(2)人にやさしい建築物の整備

すべての人が利用しやすい建築物を社会全体で整備していくことが望まれており、デパート、ホテル等の多数の人々が利用する建築物を、障害のある人等が利用しやすくするためには、段差の解消、障害のある人等の利用に配慮したトイレの設置、各種設備の充実等を図る必要がある。

建築物のバリアフリー化を推進するため、「バリアフリー法」においては、出入口、通路、トイレ等に関する基準(建築物移動等円滑化基準)を定め、不特定多数の者が利用し、又は主として障害のある人等が利用する建築物(特別特定建築物)で一定の規模以上のものに対して基準適合を義務付けるとともに、多数の者が利用する建築物(特定建築物)に対しては基準適合の努力義務を課している。(2,000m2以上の特別特定建築物の総ストックのうち、「移動等円滑化基準」に適合しているものの割合:約61%(2019年度末時点))

また、障害のある人等がより円滑に建築物を利用できるようにするため、「建築物移動等円滑化誘導基準」を満たし、所管行政庁により認定を受けた優良な建築物(認定特定建築物)に対して支援措置等を講じている。

(3)「バリアフリー法」に伴う助成等

建築物のバリアフリー化を推進するため、上述の「建築物移動等円滑化基準」に基づき特定建築物の建築主等への指導・助言を行っている。

また、認定特定建築物等のうち一定のものについては、障害のある人等の利用に配慮したエレベーター、幅の広い廊下等の施設整備に対する助成制度(バリアフリー環境整備促進事業)により支援している。

地方公共団体が行う、公共施設等のバリアフリー化についても支援している。

総務省では、地方公共団体が実施する公共施設等のユニバーサルデザイン化のための改修事業等について、2018年度から公共施設等適正管理推進事業債に「ユニバーサルデザイン化事業」を追加し、地方財政措置を講じている。

(4)表示方法の統一

ア 点字表示

多くの公共施設等で、点字による情報提供において、表示方法の混乱を避けつつ更なる普及を図るため、「高齢者・障害者配慮設計指針-点字の表示原則及び点字表示方法-公共施設・設備(JIST0921)」を2006年に制定した。また、2009年には消費生活製品に関して、「高齢者・障害者配慮設計指針-点字の表示原則及び点字表示方法-消費生活製品の操作部(JIS T0923)」を制定したが、規格を利用する際の利便性を向上させるため、2016年度にJIS T0923をJIS T0921に統合し、JIS T0921を「アクセシブルデザイン-標識、設備及び機器への点字の適用方法」へと改正した。

イ 案内用図記号(ピクトグラム)

不特定多数の人々が利用する交通施設、観光施設、スポーツ文化施設、商業施設などの公共施設や企業内の施設において、文字や言語によらず対象物、概念又は状態に関する情報を提供する図形「案内用図記号(JIS Z8210)」は、一見してその表現内容を理解できる、遠方からの視認性に優れている、言語の知識を要しないといった利点があり、一般の人だけでなく、視力の低下した高齢者や障害のある人、さらに外国人等でも容易に理解することができ、文字や言語に比べて優れた情報提供手段である。

JIS Z8210について、2015年5月には「ベビーカーが利用できる施設を表示する図記号」及び、「ベビーカーの使用を禁止する場合に表示する図記号」を追加し、併せて、当該図記号の使用方法を参考に記載するための改正を行った。また、2016年3月にも改正し、「土石流注意」等、2つの注意図記号及び「洪水/内水氾濫」等、5つの災害種別一般図記号を追加した。東京2020大会を契機に外国人観光客の増加が見込まれることから、外国人観光客などにも、より分かりやすい図記号にするため、2017年7月に国際規格との整合化の観点から7つの図記号について変更するとともに、15種類の図記号及び外見からは障害があることが分かりにくい人が周囲に支援が求めやすくする「ヘルプマーク」の図記号を新たに追加した。その後も、2019年2月に「洋風便器」など3つのトイレ関連図記号、同年7月には「AED(自動体外式除細動器)」「加熱式たばこ専用喫煙室」の図記号を追加し、2020年5月には「男女共用お手洗」、「介助用ベッド」など近年の社会情勢の変化を踏まえた9つの案内用図記号を追加した。

「災害種別避難誘導標識システム」については、2014年9月に制定した「津波避難誘導標識システム」のJIS Z9097を基に、洪水、内水氾濫、高潮、土石流、崖崩れ・地滑り及び大規模な火事にも素早く安全な場所に避難することが可能になるように、避難場所までの道順や距離についての情報を含んだ標識を、避難場所に至るまでの道のりに一連のものとして設置する場合に考慮すべき事項について規定したJIS Z9098を2016年3月に制定した。また、同年10月にこれらをISO(国際標準化機構)に提案した。

ウ 公共トイレ、触知案内図

視覚障害のある人が、鉄道駅、公園、病院、百貨店などの不特定多数の人が利用する施設・設備等を安全で、かつ、円滑に利用できるようにするため、「高齢者・障害者配慮設計指針-公共トイレにおける便房内操作部の形状、色、配置及び器具の配置(JIS S0026)」、「高齢者・障害者配慮設計指針-触知案内図の情報内容及び形状並びにその表示方法(JIS T0922)」及び「高齢者・障害者配慮設計指針-触覚情報-触知図形の基本設計方法(JIS S0052)」を制定している。

/国土交通省
第6章第1節 4.建築物のバリアフリー化の推進
TOPICS
ホテル・旅館、観光地のバリアフリー化

ホテル・旅館のバリアフリー化については、2017年3月に「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」(以下「建築設計標準」という。)を改正し、国土交通省のホームページ(URL:http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/jutakukentiku_house_fr_000049.html)に公開した。

本改正においては、車椅子使用者用客室だけでなく、一般客室におけるバリアフリー化も促進するため、バリアフリーに配慮した一般客室の設計標準を追加するとともに、既存客室の様々な制約を解決しながら改修を進めるため、合理的・効果的なバリアフリー改修方法を提示した。また、東京2020大会の開催を契機に、障害のある人等がより円滑にホテル・旅館を利用できる環境を整備するため、ホテル等のバリアフリー客室設置数の基準の見直しについて、2017年12月から開催した検討会において検討を開始し、2018年6月の取りまとめを踏まえ、2018年10月、「ホテル・旅館のバリアフリー客室基準」を改正した。さらに、ホテル・旅館におけるバリアフリー化を促進するため、2018年9月から「建築設計標準」の改正に向けた検討会を開催し、2019年3月に「建築設計標準」の改正を行った。また、2018年8月に「宿泊施設におけるバリアフリー情報発信のためのマニュアル」を作成・公表した。

加えて、旅館・ホテル等におけるバリアフリー化への改修の支援を実施した。

観光地のバリアフリー化については、観光地のバリアフリー情報の提供促進に向けて、バリアフリー評価指標を作成するとともに、観光地バリアフリー評価指標の普及及びバリアフリー情報の提供方法について具体的に示した「観光地におけるバリアフリー情報の提供のためのマニュアル」を2019年4月に公表した。

ホテル・旅館 観光地
/国土交通省
第6章第1節 4.建築物のバリアフリー化の推進
TOPICS
公共交通機関・建築物等のトイレのバリアフリー化

高齢者、障害のある人等の社会参加や外出等の機会を更に促進するためには、支障なくトイレを利用できる環境を整備することが重要である。これまで整備が進められてきた多機能トイレでは、近年利用者の集中により、車椅子使用者など真に利用が必要な方が必要な時に利用できない問題が生じている。こうした問題に対応するため、国土交通省では、2011年度に「多様な利用者に配慮したトイレの整備方策に関する調査研究」を実施し、各種ガイドラインの改正によるトイレの機能分散の推進やトイレの利用マナー啓発等により、多機能トイレの利用集中を解消するための取組等を推進してきたところである。

また、2020年5月に「バリアフリー法」が改正され、高齢者、障害者等の円滑な利用のために配慮が必要な施設や設備について、国、地方公共団体、施設設置管理者、国民に適正利用を推進することの責務が課されたことに伴い、トイレの利用環境を整備していくことの重要度は更に増している。

こうしたことから、近年のトイレにおける機能分散の推進等によるトイレの整備状況の変化や、バリアフリー化の進展により高齢者、障害者、乳幼児連れの方等の外出機会が増加したことに伴う多機能トイレの利用状況の変化、さらには「バリアフリー法」の改正の趣旨を踏まえ、改めてトイレの整備状況や利用状況の実態を把握し、対応を検討するための検討会を2020年度に開催した。

本検討会では、施設整備やバリアフリーデザインに精通した有識者、当事者団体等、施設設置管理者等及び地方公共団体を委員、トイレに関する知見を有する関係者をオブザーバーとして参画いただき、「共生社会におけるトイレ整備の今後のあり方と適正利用の推進に係る取組方針」を取りまとめた。具体的には、「車椅子使用者用便房等の機能分散の推進に必要な考え方」、「多様な利用者特性への対応」、「多様な利用者が必要とする設備・機能の有無・位置に関する情報提供の推進」及び「適正利用の推進に向けた広報啓発・教育等の充実」という観点で整理を行い、引き続き共生社会におけるトイレ利用環境の整備を推進していく。

共生社会におけるトイレの今後のあり方について(とりまとめ)
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