第1章 障害を理由とする差別の解消の推進 1
1.障害者差別解消法の制定経緯
障害者の人権及び基本的自由の享有を確保し、障害者の固有の尊厳の尊重を促進するため、障害者の権利の実現のための措置などを規定した「障害者の権利に関する条約」(以下「障害者権利条約」という。)が、2006年12月の第61回国連総会において採択され、2008年5月に発効した。起草会合には障害者の間で使われているスローガン「“Nothing About Us Without Us”(私たちのことを、私たち抜きに決めないで)」に表れているとおり、障害者団体が参画した。
我が国においては、「障害者権利条約」の起草段階から積極的に参加するとともに、2007年9月に署名して以来、締結に向けた国内法の整備及び国会承認を経て、2014年1月に批准書を国連に寄託した。2014年2月から「障害者権利条約」が我が国において効力を生じた。
「障害者権利条約」は、障害に基づくあらゆる形態の差別の禁止について適切な措置を求めており、我が国においては、2011年の「障害者基本法」(昭和45年法律第84号)の改正時に、「障害者権利条約」の趣旨を同法の基本原則として取り込む形で、同法第4条に差別の禁止が規定された。
障害者団体等からの意見を踏まえつつ、この規定を具体化したものが「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(平成25年法律第65号。以下「障害者差別解消法」という。)である。障害を理由とする差別の解消を推進し、全ての国民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会(共生社会)の実現に資することを目的として、2013年6月に成立し、2016年4月から施行された。