平成29年 青年国際交流事業に関する検討会(第4回)議事要旨
- 日時:平成29年4月6日(木)14:00~16:00
- 場所:中央合同庁舎第8号館8階822会議室
- 出席者:
(委員)牟田座長、池上委員、井上委員、ERIKO委員、田中委員(内閣府)小野田内閣府大臣官房審議官
中村内閣府青年国際交流担当室参事官
濱尾内閣府青年国際交流担当室参事官補佐
大部内閣府青年国際交流担当室参事官補佐
吉田内閣府青年国際交流担当室参事官補佐
水野内閣府青年国際交流担当専門官
- 概要:
- (1)開会
- (2)内閣府からの資料説明等
- 事業名の変更について
これまで、次世代グローバルリーダー事業「シップ・フォー・ワールド・ユース・リーダーズ」は、旧「世界青年の船」事業と名称のみならず内容面において異なるものとして実施してきたところであるが、旧「世界青年の船」事業の成果としての人的ネットワーク等については引き続き活用している中で、その効果的な活用においては、現事業名が「分かりにくい」、「長くて使いにくい」等、既参加青年ほか外部からの指摘もあったところ。
また、今後広く国内に発信していくためにも、分かりやすい簡潔な日本語名称の使用が求められているという認識から、今般、「世界青年の船」という名称を改めて使用することとした。
なお、今回改めて「世界青年の船」という名称を使うことが、本事業の目的・趣旨の変更を意味しているものではないため、引き続き、これまでどおりの御議論をお願いする。 - 資料説明
- 事業名の変更について
- (3)石井晴子教授からの説明
- IDI調査の概要及び趣旨
平成28年度世界青年の船事業に参加した日本人参加青年に対し、乗船前と乗船後に「異文化感受性の発達」に関する調査を実施した。当該調査結果の分析から、今後の本事業における提言を行うもの。 - PO(Perceived Orientation)とDO(Developmental Orientation)について
- 本調査において、PO「異文化への関わり方に対する理想」とDO「異文化との実際の関わり方」について分析を行った。
- 本事業に参加している青年は、乗船前からPO値が高く、既に異文化への関わり方に対して高い理想を有しており、異文化を受け入れる心の準備ができていた状態と言えるため、乗船後、急激にPO値が上昇したという傾向は見られない。
DO値については、結果にバラつきはあるが、平均すると全体的に上昇している傾向が見られる。そのうち、値が上昇している者の伸び率は非常に高く、その伸び率は、アメリカに留学している大学院生の約2年分の経験に相当する。他の研修事業等と比較しても本事業参加者の伸び率は高く、約1か月程度の乗船期間においてこれだけの伸び率が示されたことは、今後も本事業の効果に大きな期待が持てると言える。
- Minimization(類似性・普遍性の強調)について
DO値がMinimizationの領域に留まった青年も多数存在しており、当該青年は、乗船して異文化に触れた結果、「自分との共通点を発見することに終始」又は「同じ価値観を有する者との関わりを優先」したものと思料され、それ以上の異文化理解につながらなかったもの。
なお、Minimizationの領域にあることが一概に悪いとは言えないが、この領域に留まり続けると、自分の価値観と同じ者を過大評価し、価値観が異なる者を遠ざけたり、他者の個性や違いに興味を持つことを忘れ、文化の違いを理解することができなくなったりする危険性を有している。 - Acceptance(違いの受容)について
一般的にMinimizationの領域からAcceptanceの領域への移行が最も大きな転換であると言われており、本事業における目標は、日本人参加青年が乗船中に異文化に触れた結果、Acceptanceの領域に到達することであると考えている。 - 本調査結果を踏まえた提言
- 青年へのインタビュー
乗船後の青年にインタビューを実施することにより、異文化に触れた結果、DO値が上昇した青年は「何に気付き、どう分析し、どう関わって成功したのか」、下降した青年は「何が起こり、何を解決できなかったのか」を把握することが重要である。
例えば、インタビューを実施してDO値が下降した原因を把握し、解決方法を分析することで、今後の事業において、参加青年に対してその分析結果に基づいた助言を行い、本事業における参加青年のDO値を上昇させることは可能であると思料される。 - 乗船中のNL(ナショナル・リーダー)及びSNL(サブ・ナショナル・リーダー)による参加青年のフォロー専門家協力の下、NL及びSNLに上記インタビューに基づいた分析結果等の知識を持たせた上で乗船させ、参加青年のフォローを行わせるのが効果的であると思料される。
- 青年へのインタビュー
- IDI調査の概要及び趣旨
- (4)石井教授への質疑応答
- 男・女、学生・社会人、地方出身・都心出身等の属性別の分析結果はあるか。
→ 現時点で、分析は行っていない。 - 日本人参加青年に対してしか行っていないのか。
→ 今のところは日本人青年だけに対して行っている。 - 本調査では青年の本音を分析できているのか。青年の回答の中には本音ではないものも含まれているのではないか。
→ 「異なった価値観を受け入れるか」に「はい」と答え、「同じ価値観の人と仕事をするとやりやすいか」に「はい」と答えていても、どちらも本音である。故に矛盾した数値となる。(→この調査結果はある意味感情を度外視していると言えるのかの問いに対し)その通りである。 - 本調査は英語のオリジナルを日本語にして行っていると思うが、日本人向けのものを開発する可能性はあるのか。
→ 異文化コミュニケーションの結果を数値で表すというのは非常に難しく、本事業用に開発するとなれば参加青年のインタビューを行って分析するしかない。 - AcceptanceとAdaptationの違いは何か。
→ Adaptationは相手の考え及び行動を理解した上で、自分も相手の考え方のように考え、行動すること ができることであり、Acceptanceは相手の文化を知り、受け入れられることである。 - 本事業においてはAcceptanceが目標でいいのではないか。
→ そのとおり。本事業では日本人参加青年をMinimizationからAcceptanceに移行することが目標。 - 相手の文化を理解するためには言語的アプローチが必要。なぜそのような行動をするのかの理由を知ることによって解決される点は多い。
→ 日本人参加青年は参加国に関する下調べが少なく、知識が不十分に思われる。
- 男・女、学生・社会人、地方出身・都心出身等の属性別の分析結果はあるか。
- (5)意見交換
- 名称を戻したことは賛成である。内容的には従来の「異文化交流」や「異文化理解」を超えるものを。「新」世界青年の船事業としてはどうか。
- 参加青年の精神的負担を減らすため、メンタル面の管理を行う者を乗船させてはどうか。長期プログラムでは実施側の負担は非常に大きいので、メンターを付けてはどうか。目標を立てさせて、メンターが見てあげる。
- スキルセミナーは非常に良い取組だと考える。専門的技術・知識を有する青年を乗せるような選考が望ましい。
- 閉鎖空間での研修は困難も多い。事例ごとに解決方法を蓄積し、ガイドブックにしてはどうか。
- 今の日本企業はグローバルに活躍できる人材でなければ採用を躊躇する感じがある。船でタフな人間をつくる。アクティブラーニングの質を高め、遊びと言われない内容にしないと企業も人を出せない。最近の、モノ作りよりもプラットフォームやネットワークを使ったビジネスが増えている状況では、日本の鉄道システムの輸出などに見られるように、システムや運用方法といった説明しにくいものを説明していけるような人材を育てるアクティブラーニングが望ましい。
- 自分の考えと異なるものを受け入れる柔軟性などを、この船の事業で養えるということが分かりやすくデータ化されるといい。企業が人を出してみようかと思えるよう、数字で説明した広報資料が必要になってくると感じた。
- 参加青年の下船時のアンケート結果とIDI調査を併せて分析し、その結果に基づいたプログラム形成を行えると良いのではないか。ディスカッショングループごとなど、組み合わせ別に提言ができれば尚よい。
- 日本人参加青年の育成のために外国人を呼ぶのだから、どういった外国人青年を参加させると効果が高いのかを見るとよい。
- 応募時に作文で目標を立てさせるということについて、立てた目標を達成するための計画を作る際に、メンターのような相談できる者がいると本人も整理がついていいのではないか。また、作文では考えを書き出す技術による差が生じかねないので、プレゼン形式のようにしてみてはどうか。
- アンケート中の、海外参加青年へのホームステイに関する調査項目について、「ホストファミリーが観光に連れて行ってくれなかった」等の選択肢があるようだが、ホームステイは何を目的としているのか。また、ホームステイの目的を海外参加青年に事前によく理解させた上で実施した方がいいのではないか。
- アンケート中の「各種活動の内容はいかがでしたか。」の質問については、コースやセミナーにおいて、「自分の意見をたくさん発言できた人が満足している」ということや、「単純に好き嫌い」で回答しているケースがあり得るため、今後質問の方法を見直した方が良いのではないか。
- アンケート中の「プログラム参加前の全体的な期待」について、日本人参加青年の期待値が外国人参加青年に比べて低い。期待値が更に上がるよう、参加のモチベーションを高くするような工夫が必要。
- IDI調査結果の中でNLやSNLの成長について話があったが、リーダー役を担わない参加青年に対しても何か挑戦を課し、挑戦の結果を事後に確認することができると満足度はもっと上がるのではないか。
- 日本人参加青年のグローバル力を向上させるために、本音(思っていること)や感情を出すことは重要。事前研修において自分の本音を言ってもよいのだということを教え、本音を出す訓練などを取り入れてはどうか。
- (内閣府より)事業の名前については、参加者の事後活動が名前の変遷に関わらず一つの組織として活動しているため、本事業に参加した方々が年代に関わらず集まりやすいよう、また、分かりやすく国内に発信していくために統一したということがある。一方で今までと中身は異なるため、第何回という書き方から平成28年度といった書き方にするなどの工夫は行っている。名称が変わったばかりであるため、当面は現在の名称で進めていくこととし、今後も状況を踏まえながら対応していきたい。
- 閉会
以上