高齢社会対策説明「高齢社会フォーラム・イン東京」

「高齢化の現状と高齢社会対策~全員参加型社会を目指して~」

宮本 悦子
内閣府高齢社会対策担当参事官

宮本 悦子氏の写真

 皆さん、こんにちは。今、御紹介いただきました内閣府の宮本でございます。

 本日は、「高齢化の現状と高齢社会対策~全員参加型社会を目指して~」につきまして、少し御説明をさせていただきたいと思います。

 時間も限られておりますので、お手元にパワーポイントの資料と高齢社会白書の概要がございます。この中から、かいつまんで御説明させていただきます。

 本日のテーマは「全員参加型社会を目指して」です。例年は高齢社会白書について御説明しておりますが、本日は全員参加型ということですので、白書以外にも大綱ですとか、それから、私、少子化対策も担当しておりまして、高齢社会白書とともに少子化社会対策白書も作成しております。少子化社会対策白書のほうからも少し御説明させていただきたいと思っております。

○全員参加による社会の構築

宮本 悦子氏資料スライド3 宮本 悦子氏資料スライド4

 まず、高齢社会対策大綱でございます。これは、政府の高齢社会対策を進めていく上の基本となるべきものでございまして、大体5年に1回策定しております。直近のものは平成24年9月7日に策定して、閣議決定をしております。

 特徴といたしまして、大きく五つポイントがございます。まず、全員参加による社会の構築ということでございます。高齢者だけでなく、若者、女性の能力を積極的に活用することによって、全ての世代が積極的に参画する社会の構築を目指すとされております。

 それから、先ほど樋口先生のお話もございまして、樋口先生は100年とおっしゃっていますけれども、内閣府は少し遅れていまして、「人生90年時代」に対応できる社会の構築というふうにしております。それから世代循環型社会の構築、住民により支え合う地域社会の構築ということがございます。

 本日は、第1分科会で地域社会につきまして、第2分科会についてはシニアの意識改革も必要といったことについてもお話をいただくことにしております。

 それから、高齢化の現状について御説明いたします。こちらにつきましてはよく御承知だと思いますので詳細は省きますけれども、65歳以上の高齢化率は25.1%、75歳以上は12.3%に上昇しております。

○少子化の現状と増加する高齢世代人口

 これは少子化社会対策白書からの説明でございますけれども、少子化の現状は、青い棒グラフは年間に生まれる赤ちゃんの数で、直近では103万人となっております。左のほうを見ていただきますと、1947年には269万人でしたが、直近は100万人程度で推移しております。合計特殊出生率は1.26で底を打ちまして、直近は1.41まで上がってきておりますけれども、人口を維持するためには2.07が必要だというふうに言われております。まだまだ低い状況であるということです。

 そういった中で、2015年には高齢者1人に現役世代が2.3人。2060年には高齢者1人に対して現役世代が1.3人になるといった見込みです。

 先ほど社会保障費の話が出てきましたが、社会保障給付費も伸びております。2011年には107兆円です。このうち高齢者関係給付費は72兆円と7割を占めております。

宮本 悦子氏資料スライド5 宮本 悦子氏資料スライド7 宮本 悦子氏資料スライド13

○高齢者の就労意識と労働力人口

宮本 悦子氏資料スライド12

 高齢者の方々もこれまでのように支えられる側ではなく、支え手となっていただきたいということがございます。では、具体的に高齢者の方々の意識につきまして、また支え手としての現状について少し御説明をしたいと思います。

 まず仕事です。高齢者の方の意識といたしましては、仕事をしたいと思う年齢は、「働けるうちはいつまでも」という方が約3割で一番多くなっております。赤いラインで囲ってある部分です。

 実際の労働力人口の推移は、労働力の人口総数に占める65歳以上の比率は近年大きく上昇しておりまして、直近ですと9.9%まで伸びております。

○高齢者の社会参加活動

 続きまして、本日の大きなテーマの社会参加活動についての現状です。

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 60歳以上の高齢者のグループ活動への参加率は、一番左の部分、赤い点線で囲ってある部分ですが、61%となっております。一番右側のオレンジが平成5年の数字ですので、10年前に比べて増加しているということがわかると思います。

 それでは、実際にどういった団体に参加しているかということですが、赤い棒グラフが参加したいもので、青い棒グラフが実際に参加しているものです。参加したいと思っているものが趣味のサークルですとか団体ですけれど、実際に参加していらっしゃいますのは、先ほど堀田先生のお話にもございました、町内会・自治会が最も多いというふうになっておりまして、まだまだ高齢者の方の意識と実際に参加されているところには乖離があるということです。

 実際に参加活動された方でよかったと思うことについても意識調査をしております。「新しい友人を得ることができた」「生活に充実感ができた」「健康や体力に自信がついた」というメリットを実際多くの方々がおっしゃっておりますので、是非こういったことをPRしていただくこともいいのかなというふうに思っております。

○学習活動や地域活動への参加意向と現状

 続きまして、学習活動です。一番下ですが、学習活動への参加の意向と実際の参加状況です。こちらが参加したいと思っていらっしゃる方ですが、実際に参加は14.1%と、ここもまだまだ大きな乖離があるということです。

 地域活動についての意識調査です。地域活動に実際に参加するために最も必要な条件につきまして聞きましたところ、赤い枠で囲っておりますが、「自分自身が健康であること」が一番多いのですが、次に多いのが「一緒に活動する仲間がいること」となっています。

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○若い世代との交流

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 それから、本日の大きなテーマであります全員参加型のためには、やはり若い世代との交流が大事だと思います。若い世代との交流への参加の意向、参加状況につきまして意識調査をしたところ、交流の参加意向は、「参加したい」という方は大体6割ですが、実際に参加されている方は4割ということで、まだまだこちらも乖離があります。

 では、どのようにすれば参加していただけるのかということで、参加をするための必須条件について意識調査をしましたら、一番左の、「交流機会の設定」が3割となっております。周りの方どなたかが場を設定するなどにより、背中を押してあげるといったことが大事なのではないかと思っております。

○高齢期の社会参加

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 こちらが高齢期の社会参加活動に備えて必要なこと、それから今行っていることです。やはり皆様、「一緒に活動する仲間を作っておくこと」とお考えのようですが(一番上の赤い線です)、実際には取り組まれていない。こちらのほうも「特にない」と考えていらっしゃる方は少ないですが、実際に備えていらっしゃらない方が多いという状況です。高齢期に備えて今から備えをしたいとは考えていても、なかなか進んでいないという状況があります。

○子育て世代の意識

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 次に、子育て世代の意識について御紹介したいと思います。これは理想の家族の住まい方についての意識調査です。こちらを見ていただきますと、「祖父母と近居または同居」と答えられる方が半数以上に上ります。子育て世代のおじいさま、おばあさまの世代への期待は大変大きいものがございます。

 次は、子供が小学校に入学するまでの間に祖父母が育児や家事の手伝いをすることを望ましいと考えているかどうかについての意識調査です。約8割の方が「望ましい」と考えていらっしゃいまして、家族の中でおじいさま、おばあさま世代に対する期待が大変大きいという状況が見て取れます。

○地域社会への期待

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 今のは家族の話ではないかということになりますが、では地域での期待はどうかというものがこちらです。子育てをする人にとって地域の支えの重要性について聞きましたところ、こちらの赤い枠で囲っておりますが、約9割の方が子育てをする人にとって地域の支えが重要だと考えております。

 では、具体的にどういったことを期待されているかがこちらです。それほど難しいことではありません。「子供の防犯のために声かけや登下校の見守りをする人がいること」が一番多い。それから、「子育てに関する悩みについて気軽に相談できる人や場があること」「子育てをする親同士で話ができる仲間づくりの場があること」、それから少し下のほうに、「地域の伝統文化を子供に伝える人や場があること」。そういう地域でほんのちょっとしたことを子供世代のために期待されているということが見て取れると思います。

○高齢社会対策

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 各省の高齢社会対策につきまして簡単に御紹介したいと思います。社会参加・学習等分野に係る基本的施策といたしましては、高齢者の社会参加活動の促進ということで4分野に分かれて実施しております。1点目が高齢者の社会参加と生きがいづくり、2点目が高齢者の海外支援活動の推進、3点目が高齢者の余暇時間等の充実ということでして、エイジレス・ライフ実践者の紹介などを実施しております。これは内閣府で実施しておりますので後ほど説明いたします。4点目が高齢者の社会参加活動に資するICT利活用の推進ということです。

 それから、こちらが内閣府が今実施している施策です。エイジレス・ライフ実践者及び社会参加活動事例の紹介です。エイジレス・ライフは、年齢にとらわれず自由で生き生きとした生活を送ることを実践されている方、それから、地域で社会参加活動を積極的に行われているグループといった方々を表章しております。毎年度100名・団体の方を表章しておりまして、この事例につきましては、内閣府のホームページ、冊子などで紹介しております。

 少し事例について御紹介したいと思います。個人のエイジレス・ライフを実践されている方です。まず青森県の弘前市の例ですが、乳幼児と母親が参加するサークルで、親同士の交流の手助けや育児に関する相談を受け付けるなどの子育て支援活動を行っている方を表章しております。

 それから、社会参加活動の例です。二つ御紹介させていただきたいと思います。奈良県の新岡憩いの会ですが、この地域は非常に高齢化が進んでいる。1人暮らしの高齢者の方がたくさん住んでいらっしゃるために、住民の見守り活動を中心にお手伝いをしたり、必要に応じて食事の用意をしたり、買い物の代行、そういったお世話を行っている。さらに月1回のペースでサロンを開催して、交流の場をセットしているという事例です。

宮本 悦子氏資料スライド31 宮本 悦子氏資料スライド32

 熊本県の例で、松合小学校放課後子供教室です。この地域は小学校の学童保育が廃止になったことを受けまして、地域の高齢者の方が中心になって放課後子供教室を立ち上げました。これまでの御経験を生かされて、習字ですとか、パソコン、そろばん、読み聞かせといったことを実施されています。

 こういった地域での活動につきまして、内閣府で毎年御紹介しております。本年度につきましては現在選考中です。来年度以降も引き続いて募集して、御紹介していきたいと思っておりますので、是非ここにいる皆様方にも御応募いただきたいと思っております。

 それから最後に、高齢社会白書で紹介した東京の港区の例です。東京の港区に「あい・ぽーとステーション」という子育て拠点広場のようなものがございます。そちらで高齢者の方々にも御活躍いただきたいということで、高齢者の方々に講座を受けていただきまして、「子育て・まちづくり支援プロデューサー」という方を養成している。この支援プロデューサーの方が地域のお子様の面倒を見たりされているということで、大変すばらしい取組として今年度の白書で紹介しております。

 このように全員参加型社会を目指して、高齢者の方々に期待することは大変大きくなっているということは、樋口先生、堀田先生も繰り返しおっしゃったことですが、私からも重ねて申し上げます。今後、高齢者の方々が社会参加活動を通じて、こういった地域への貢献をお願いしたいと思っております。

ご清聴ありがとうございました。