第2分科会「高齢社会フォーラム・イン東京」

「海外からみた日本の高齢社会」

コーディネーター
松田 智生
(株式会社三菱総合研究所 プラチナ社会センター 主席研究員)
パネリスト
アイザック・ガーニエ
(アメリカ)
シャネット・フックス
(ドイツ)
劉 瀟瀟
(中国)
松田 智生 株式会社三菱総合研究所 プラチナ社会センター 主席研究員の写真 パネリストの方々の写真

【松田】 どうも皆さん、こんにちは。三菱総研の松田でございます。今日はですね、こちらの分科会は、『海外からみた日本の高齢社会』ということで進めたいと思います。モデレーターを務めます、三菱総合研究所の松田です、よろしくお願いします。

 こちらの高齢社会フォーラム、4年にわたって担当してるんですけども、なるべく高齢社会を、いろんな見方で考えたいと思って進めてまいりました。数年前は、若者からみた高齢社会ということです。そして去年は、地方創生からみた高齢社会といったことで進めてきましたけども、今日はですね、『海外からみた日本の高齢社会』ということで、お話を進めたいと思います。

 実は2年前に、ドイツに行って高齢社会の学会がありまして、それは世界各国で、それぞれの国の高齢社会の良いところを話しして、討議して、解決策を見いだそうという学会がありました。そのとき私、非常に強い感銘を受けまして、その理由は、世界各国が日本を見てるということです。日本は今、世界で一番の高齢化率で、世界中の国が、日本が今、何に注目して、どういった課題解決を志してるのかというのを見てるということでございます。

 今日私の問題意識を最初に少しお話しした後に、それぞれのパネリストからお話をいただきたいというふうに思っております。私自身は、活力ある高齢社会を専門としていまして、国や自治体や企業の委員をしているという者でございます。

○キーワードは生きがい

第2分科会の写真

【松田】 今日のキーワード、幾つか挙げさせていただきました。お手元の資料を見ていただければと思いますけども、今日のキーワードで大事なのは、生きがい、生きがい、高齢社会で大事なのは、生きがいということに尽きます、生きがい。生きがいと言うと、普段も皆さん、生活の中で生きがいを感じる瞬間っていうのは、あるわけじゃないですか。例えば、どういうときに生きがいを感じますか。そんな難しい質問じゃないですからね。

【参加者A】 すぐ思い浮かばないです。家でゆっくりしているときが一番いいです。

【松田】 そういうことですよ。どういうときに生きがいを感じます?

【参加者B】 そうですね、あんまり生きがいっていうと堅苦しいテーマになって、やっぱりやりがいって言ったら、ちょっとつかみやすいかなと。だから、自分がなんか企画したものがね、ちゃんと成功したりすると、やりがいっていうんですか、感じますね。

【松田】 達成感があるってことですよね。どうです、どんなときに、生きがいややりがいを感じます? そんな驚かなくてもいいですからね。

【参加者C】 充実感だと思うんですよね。だから、生きがいっていうとこより、その居場所とか、そういうのがあるということだと思います。抽象的で、それちょっとものすごく難しいな。

【松田】 なるほど、そういうことですよ。やりがい、生きがい、達成感というのが大事だということですね。やりがいや生きがいというと、今日ここで話す私の生きがい、それからパネリストの生きがいも大事なんですね。せっかく、今日来てるのに、なんかみんなが、しらっと聞いてると、僕たちのやりがいも生まれないんですね。話してる途中に、なんか目つぶって、こっくりこっくりしてる人見ると、結構、悲しい気持ちになるわけですね。それから話してる途中にスマートフォンとか携帯電話いじってる人を見ると、結構むかついてくるわけですよ。だから、きょう私たちの生きがいのためにも、皆さんにお願いがある。それは、今日私たち話して、そうだなと思うときは、こう大きくうなずいてくださいね。そうすると、やりがいも生きがいも生まれると。本当にそうだなと思うときは、2回大きくうなずいてくださいね。そうでないときも、1分に1回ぐらいうなずいてくれると、うれしいということ。

 次のキーワード、27パーセント。これ何の数字でしょう。素晴らしい、いいですね。先週講演で話したら、体脂肪率って答えた人いましたけども、これ日本の高齢化率、世界で一番ですよ。じゃ、世界で一番の高齢化率の日本が悪いかというと、僕はそういうふうに思わないと。アクティブシニアが、これほどあふれてる国はないということですよ。60歳というのは、ある年の日本の平均寿命ですよ。今ね、雇用が65まで延長されてますけども、実は1950年の日本の平均寿命は60歳だったの。

 今、僕51ですけど、もう後9年しか生きれないと。それが80を超える世の中になったっていうことは、それはやっぱり素晴らしいことですよ。今日、こうやって会場見ますと、60以上の方、いっぱいいるわけじゃないですか。それが1950年であれば、もうこの場にいられなかったと考えると、それは長寿とはいいことだということ。10万時間は何かというと、これは老後にある自由時間なんですね。1日睡眠や食事を抜かした時間、14時間、掛ける365日、掛ける20年で、大体10万になると。それは、9時から5時で働いた人の労働時間に匹敵するぐらい。ゆえに、この老後の10万時間を、いかに元気で過ごすかということが大事になってくるということ。

○各国の高齢化率

松田 智生氏資料スライド1:今日のキーワード 松田 智生氏資料スライド2:世界各国の高齢化率

【松田】 これはね、先ほど話した、各国の高齢化率ですけども、日本は今、27.2パーセントに上がってる。ドイツ、イタリア、20パーセント超えてる。きょう話すアメリカは約15パーセント、中国は約10パーセントということ。これが世界の高齢化の状況ということです。

 でですよ、海外からみて日本はどう見られてるかっていうのを示す、いい写真がこれなんですね。2010年のEconomistの表紙なんですけども、Japan's burdenって書いてる、burdenってのは重荷っていうこと。日の丸を子どもがしょって、もうつぶれそうになってると。これは、重荷は何かっていうと高齢化率なんですよ。高齢者があふれて、日本は大変。子どもがこの重荷を背負ってるっていうふうに、エコノミストは、そう示してると。しかしですよ、こんなふうに思われていいんでしょうか。こんなネガティブなイメージを持たれていいんでしょうかというのが、私の今日の問題意識ということです。

○プラチナ社会

 今日の論点ということですけども、日本は今、課題の先進国、それはしょうがないですよ、高齢化率あるいは地域が疲弊してる、人口が減ってる、たくさん問題がある。でも、今、日本というのは、課題の先進国から、課題の解決先進国になる一番大事な時期にいるんだということです。それから、これももうやめましょう、元気の出ない四字熟語、人口減少、老人漂流、介護難民、熟年離婚。こんなこと言ったって何も解決してないわけですよ。今、大事なのは、課題の提起じゃなくて課題の解決ということ。そのためには、前向きな共通理念が必要だと私は思うんです。それは何かっていうと、プラチナ社会構想ということを提言しています。シルバー社会と高齢社会は言われてきました。でもシルバーっていうと、さびるし、シルバーシートのイメージ。ですけども、プラチナはさびない、輝きを失わないということで、活力ある高齢社会像というのを、プラチナ社会と私たちは呼んでるということです。

 マルコポーロの時代ね、15世紀、日本は世界の憧れの国だったといわれています。黄金の国ジパングと言われた。それが21世紀になって、再び日本がプラチナの国、日本と言われて、世界が注目するような国家像を、社会像を目指しましょうというのが、プラチナ社会構想ということです。

 そして、今日の分科会の進め方ですけども、大まかなスケジュールで、『海外からみた日本の高齢社会』を、アメリカ、ドイツ、中国のパネリストからお話ししていただきたいということ。そして、あるべき高齢社会の方向性を、みんなで考えましょうという趣旨です。

 前半にアメリカ、ドイツから報告いただいて休憩を挟んで、中国からの報告、そしてパネルディスカッションを進めたいと思います。今日のパネリストですね、アイザック・ガーニエさん、アメリカから、そしてシャネット・フックスさんはドイツから、そして劉瀟瀟さんは中国からということで、それぞれ日本に対して造詣が深い、それから、いろんな見方を持ってるということで、ぜひ私が、きょうの場に呼びたいと思っていた、すてきなパネリストのかたがたでございます。それでは、これから各パネリストからの報告をしたいというふうに思います。

パネリスト アイザック・ガーニエ氏のお話

アイザック・ガーニエの写真

【ガーニエ】 原稿を読みますので、座って話ししたいと思います。まずは、Hello good afternoon everyone thank you for coming such weather. 悪い天気なのに来てくださって、本当にありがとうございます。

 私はドイツ日本研究所のガーニエ・アイザックと申します。本日、この機会いただき、誠にありがとうございます。私はアメリカ、東海岸の文化人類学者で、専門は日本の文化と社会です。今日、この外国からみた日本の高齢社会というパネルの中で、アメリカ、つまり外からみた日本社会の高齢化、そして日本とアメリカのさまざまな対策について比較しながら、お話ししたいと思います。そして、最後に私が研究している傾聴ボランティア活動について少し説明いたします。どうぞよろしくお願いいたします。

○高齢化、高齢社会

 最初に高齢化、高齢社会といえば、日本が世界的に前線に立ってるといわれてます。人口構成から見ると、2010年以降、日本はいわゆる超高齢社会に定義されました。すなわち65歳以上の人口が全人口の21パーセント以上を占めてます。しかし、このような人口構成の用語を聞いても、高齢社会の実態は把握しにくいでしょう。

 例えば、統計を見るより高齢者の個人個人の生活はどうでしょうか。私は文化人類学者で、日本の文化と社会を学んでいます。その際、都会の若者から地方の高齢者まで、さまざまな方と話を聞きました。私が感じたのは、日本で最も社会的に活躍してる年齢層は、50代、60代、70代。つまり中高年や高齢者です。実際に私の義理の父も70歳を超えていますが、いまだに現役です。会社の経営、組織の運営、または政治の活動がほとんど、このいわゆる高齢者によって動いています。つまり日本の高齢社会は他の先進国と比べて、とっても活発的です。

 アメリカはどうでしょうか。一般的にアメリカでは、50代、60代、70代の方は、ほぼ退職し、プロフェッショナルな土俵から一歩下がり、年金の受給者になる方が多いです。また、発展途上国では、60代を超えたら長寿だと考えてますし、健康面の悪化が進み仕事などの活躍はできなくなるでしょう。つまり文化人類学の視点から見ると、同じ年齢でも場所によって、その年齢の実態と社会的な意味が違ってきます。言い換えれば、統計的に高齢社会と定義されても、高齢という意味は多様で、それぞれの高齢社会の実態と意味合いは、それぞれ違います。

○日本の「自由主義的家族主義」

アイザック・ガーニエ氏の資料スライド1:日本の「自由主義的家族主義」

 ではここで、高齢社会の中で、実際に社会で活躍ができなくなったかたがた、そういった方についてのサポートをちょっと考えていきましょう。一般に日本以外のアジア諸国では、家族が高齢者ケアの全責任を賄うような仕組みを取り、それらは家族主義と言われてます。そして日本は、ヨーロッパのように、家族と子女、国の社会支援などの連携をしたサポートを取る、自由主義的家族主義のシステムをとっています。具体的には、日本では国による国民年金、介護支援、高齢者のための社会保障と医療制度などがあります。また、高齢者には、在宅介護やデイケアサービス、または短期、長期の施設の利用があります。しかし、これらをうまく機能させるには、やはりそれぞれの家族上手に、そのサポートを連携しないといけないんです。

○アメリカの医療制度:日本との比較

アイザック・ガーニエ氏の資料スライド2:アメリカの医療制度:日本との比較

 では、アメリカはどうでしょうか。アメリカは実は日本と同じ、自由主義的家族主義のシステムをとっています。しかし、どちらかっていうと家族主義より自由主義といったカラーが強いです。

 例を挙げると在宅介護支援はほとんどなく、また自立性を重視する高齢者にとって、家族による介護は望ましいことと思われてません。その結果、自分で生活ができなくなると、老人ホームなどの施設に入ることが多いです。この施設費用も自分で払って、国からの援助はほとんどありません。

 また、それらの施設で働く人、看護師や介護士は外国人であることが多く、ここには移民の方の存在が重要になります。これらを個人的にどう思いますかって言うと、まずはアメリカ人として日本の医療制度はうらやましいです。国民健康保険や社会保険の制度によって、ほとんどの人が医療制度を利用できることがあります。薬の値段も決まっています。年を重ねると、健康を維持することが課題になり、そこで日本の高齢医療制度や介護保険がとても重要になります。そして必要に応じて、ケアマネジャーなどのサービスをコーディネートできます。これらは日本の高い平均寿命の理由の一つだと思います。もちろん、こうした制度は完璧ではありません。高齢化が進む中、さまざまな課題もあります。

 しかしアメリカの場合、いわゆる普遍的な健康保険がないため、一般的な医療費がとても高く、貧しい人たちは保険なんてありません。また、アメリカでの平均寿命は、収入に密接に関連しています。そして保険会社によっては、利用できる病院と利用できない病院があります。薬や手術の値段は、病院や製薬会社によって激しく異なります。端的に言えばアメリカでは、健康はお金で買えるものと考えられています。つまり日本と違ってアメリカでは、医療は自由市場の一部として運営されていますので、貧富の格差は、健康の格差につながります。そして年を取ったら、元気な高齢者と病気な高齢者の二極化につながります。その意味でアメリカの医療制度もアメリカの社会同様、自由市場主義と個人主義によって採用され、社会の二極化につながります。

○アメリカの「自律」と「自立」

アイザック・ガーニエ氏の資料スライド3:アメリカの「自律」と「自立」

 また、アメリカでは自律と自立、つまりAutonomy and Independenceが高く評価され、自分の人生だから、最後まで自分で責任を持つ。そして家族に頼れず施設に入ることが多いです。

○日本の「自由主義的家族主義」

アイザック・ガーニエ氏の資料スライド4:日本の「迷惑」

 自立という概念は日本にもあります。しかし日本の場合、誰かに世話させると迷惑掛けると考え、何らかの方法で迷惑を掛けずに、自分で老後を過ごすという考えている方が多いと思います。つまりアメリカの場合、高齢者は個人の自立性に重点を置きますが、日本の高齢者は周りの人への負担に重点を置くことと言えるでしょう。

○日本の課題

アイザック・ガーニエ氏の資料スライド5:日本高齢社会の課題

 では、それぞれのシステム、完璧ではありませんが、日本の課題は何でしょうか。私はアメリカからみると日本は主要先進国でありながら、家族を大事にしたいというシステム、さらには国のサポートがあり、素晴らしいシステムだと思います。

 しかし、こうした形態、家族が政府と連携し、高齢者をサポートするシステムは、同時に家族のいない方の不安、そして家族への負担、特に日本の場合、ケアの担い手の女性への負担が大きいと言えます。そこで、女性だけが負担を負うのではなく、男女共に負担を負うようになればと思います。また、そうなるためには、会社や働く施設の理解が必要です。また、これはもう行われてますが、看護師、介護士が激減してる日本では、高度外国人を呼び、医療系のスタッフの育成が、より重要になると思います。

 しかしこれには、香港やカナダ、アメリカと違い、日本では英語を使用しないことや、文化の違いが彼らへの負担になってるので、どういった方法で高度外国人の受け入れ育成することができるのか、また日本での働く環境の改善が、どうやってできるのか、これらが今度の課題になると思います。

○高齢者の社会孤立

アイザック・ガーニエ氏の資料スライド6:高齢社会における「社会孤立」

 今まで健康や医療、体の話をしてきましたが、精神面はいかがでしょうか。日本の高齢社会の一つの大事な課題は、高齢者のSocial Isolation、つまり社会孤立です。

 近年、自由主義的家族主義であるにもかかわらず、無縁社会や孤独死などについての報道を、よく聞くようになりました。これらの現象の大きな原因として、高齢者の1人暮らしが増えたこと、また社会やコミュニティーとのつながりが希薄になってることが挙げられます。こういった社会孤立、私は人々のコミュニケーションの問題としてみてます。社会孤立は日本では問題になりますが、不思議なことに、1人暮らしの高齢者の割合は日本の3倍であるアメリカでは、こういう社会孤立はあまり聞きません。

 アメリカは日本より1人暮らしの高齢者が多いです。つまり1人暮らしであるから必ずしも社会から孤立してるっていうわけではありません。内閣府の国際比較調査によると、困ってるときにアメリカの高齢者と比べ日本の高齢者は、家族や親戚以外に頼る人が比較的に少ないです。よって1人暮らしの日本人の高齢者は、他の人とのつながりが、だんだん薄くなります。

アイザック・ガーニエ氏の資料スライド7:高齢社会における「社会孤立」

○アメリカ人の社交性

 逆にアメリカの場合、迷惑っていう概念は、ほとんどありません。他人同士が気軽に話し合ったり冗談を言い合ったりします。そして困ったときに、すぐにお互いを助け合ったりします。確かにアメリカ人は表面的な社交性が多いといわれてますが、その分、気軽に助け合ったり、さまざまなコミュニケーションを交わします。

○高齢者のボランティア活動

 ここで話が少しずれますが、アメリカ人の社交的なおおらかさや気軽なコミュニケーションの表れの一つとして、ボランティア活動が挙げられます。多くのアメリカ人は若い頃からボランティア活動に参加し、高齢者の間でもボランティア活動が大人気です。教会などを通した活動もありますし、趣味による活動もあります。日本では、ボランティア精神は多くの方が持ってると思いますが、しかしボランティア活動という概念は、割と新しいです。また、ボランティア活動の内容が欧米と異なります。日本の高齢者のボランティアの場合、町づくり関連の活動、つまり身近にあるコミュニティーを良くするための活動が多いです。それに対してアメリカでは、ホームレスへの食糧支援などの貧困問題に対する、他人のための活動が多いです。私はアメリカのボランティアと異なるこうした自分とのつながりを考慮した日本のボランティア活動に参加することは、日本の明るい高齢社会づくりの一つの鍵だと思います。

○傾聴ボランティアとは

アイザック・ガーニエ氏の資料スライド8:傾聴ボランティアとは

 そこで、今日は最後に、私の日本で調査研究について、ちょっと話しさせていただきます。私は3.11の復興の調査をしながら、傾聴ボランティアという活動に出会いました。傾聴は英語でActive Listeningと言いますが、日本語で傾聴という言葉は、耳を傾いて真剣に聞くを意味します。このボランティア活動はアメリカで1987年に始まり、高齢者のためのカウンセリングとして実践されました。

 日本では、1990年に高齢者のかたがたが、同じ年代の方と話し相手になって、心のケアをする活動として始まりました。傾聴ボランティアという言葉をお聞きになっても、ぴんとこないかもしれません。傾聴とは、耳を傾け、気持ちに寄り添い、心を込めて聞くということです。つまり傾聴ボランティアは、相手の話を聞き、相手の気持ちに近寄り、心に寄り添うコミュニケーションのことです。

 傾聴ボランティアの活動の場は、老人ホーム、障害者施設、老健施設、デイケアなどの福祉施設や病院、地域の市民サロンと1人暮らし宅まで、さまざまな所です。

○傾聴の効果

アイザック・ガーニエ氏の資料スライド9:傾聴:新たなコミュニケーション方法

 では、傾聴の効果というのは何でしょうか。相手に話を聞いてもらうと、自分の悩みやストレスが発散できます。また、悩みと気持ちも整理できます。気持ちを言葉にすると、実際に脳に影響を与え新しい考えが生まれることもあります。言い換えれば、自分の気の持ち方を変える力が養われます。先ほど話したように、アメリカの場合、他人同士は、そんなに迷惑気にせずに、気軽に話しかけたり冗談言い合ったり、コミュニケーションを交わします。このようなオープンなやりとりが日本の高齢者に難しい場合、傾聴といった方法が、高齢者の社会孤立から救う新たなコミュニケーションツール、つまり希望になるのではないかと私は考えています。なぜかというと、傾聴ボランティアは、お医者さんのような専門家や福祉関係の利害関係者ではなく、利用者と同じ一般市民、つまり私のような普通の人であることです。

 また、純粋な第三者であるため複雑な人間関係がなく、家族や友人に軽蔑される、または迷惑掛けるといった心配も少なく話ができます。私は、これは特に日本社会で大事なことだと感じるようになりました。例えば、入院されてる方は、家族に心配させたくない、そして同居人や職員に自分の不満を言えなく、悩みや気持ちを胸に閉じ込めます。また1人暮らしの高齢者は、話し相手がいなく、誰にも認識されてないというふうに感じます。アメリカのように気軽に話したり、関わり合ったりすることは少ない場合、傾聴ボランティアなどの交流により、閉じ込めた気持ちを吐き出したり、何か希望が見えてきたり、前を向いて生きる力になったりします。そして、ボランティア自身も傾聴したことにより、自分の家族や友人とのコミュニケーションがうまくいくようになった人もいます。

○傾聴の社会的可能性

アイザック・ガーニエ氏の資料スライド10:傾聴の社会的な可能性

 こういった草の根レベルで始まった傾聴ですが、根本的には日本人の新しいコミュニケーション形態だと思います。そして、どういった形でも、より良いコミュニケーションを取ることは、高齢者だけでなく、社会を円滑するツールになると思います。

第2分科会の写真

 日本人は日本人の細やかな気配りや気遣い、こういったものが日本社会を円滑にしています。しかし、それと同時に、こういった気遣いにあまり縛られず、もう少し自由に他人とコミュニケーションを交わし、みんなで助け合えるようなシステムを作ることが、日本高齢者社会の日本社会の課題であり展望であると考えています。そして、それが欧米型と異なる日本型の強い自由主義的家族主義システムになると思います。ご清聴どうもありがとうございました。

パネリスト シャネット・フックス氏のお話

シャネット・フックス氏の写真

【フックス】 皆さま、こんにちは。今日悪天気の中で足を運んでいただき、本当にうれしいです、ありがとうございます。今日は日本とドイツの比較について話したいと思います。まずは、小林市の状況を少し説明さていただきます。その次は、私の生まれ育った故郷、Neckarwestheimの状況を説明します。その後は、少し日本とドイツの類似点と相違点について話し合いましょう。

 では、小林市の状況、まず私は小林市に引っ越したのは、2011年の夏でした。小林市は宮崎県の小さな、4万千人ぐらいの町です。小さなと言っても、面積、割と広いんです。このすてきな小さな田舎町では、約7年を過ごしてきました。その7年間の間、たくさんの高齢者と触れ合うきっかけがあったんです。

○小林市の人口ピラミッド

シャネット・フックス氏の資料スライド1:小林市の人口ピラミッド

 まず人口ピラミッドを見てみましょう。この人口ピラミッドは、やはりこの所、多いですね。やっぱりこれは高齢者なんです。一番少ない所はここです、20代の人たちは、ほとんどいないんです。大学に行ったり、就職活動でいなくなったりする人たちなんでしょうね。ここにいたら、すぐに帰ってください。こんなに高齢者が多いために、もちろん触れ合う機会はたくさんありました。そうです、ここで全然分からないこと一つ言うと、このたくさんのかたがたは、とても生き生きしています。

○小林市の状況

 例えば、この陽光の里という介護施設では交流をしました。そのときは、高齢者たちは、歌を歌ってくれたり、思い出話をしてくれたり、一緒にドイツ語を言ってみたり、たくさんの楽しいことをしてくれました。そして、小林市の方言は、とてもとても難しいです。そして、むぜもむぜと褒められたんです。むぜもむぜというのは、かわいいって意味です。その言葉が通じただけで、ものすごく皆さんが喜んでくれました。すごいたくさんの笑顔が飛んできました。

 そして、小林市の周りは、もう緑ばかりです。とってもとってもきれいな自然です。この中で畑をしてる人たちは結構多いです。アクティブな高齢者が多いです。こうやって大自然の中で動くのは、もちろん元気のもとですよね。それは夫婦同士でも、この2人は、もう47年間、一緒に畑をしています。夫婦でも、孫と一緒でも、あんまり手伝ってない様子ですけど、やはり楽しいです。これで皆さんは元気になってます。

 そして、この今の高齢者たちは、子どもが多い世代だったんじゃないですか。この人たちの子どもたちは、やっぱり近くにいるんです、大体。1人、2人ぐらいは同じ市に、それか同じ県に住んでおり、よく会えるんです。で、こうやって家族と触れ合う時間を過ごせるのは、またすごく大事だと思います。それは高齢者たちのためだけではなく、孫たち、ひ孫たちにとってもそうだと思います。かけがえのない時間だと思います。

 そして、さっきも少し話に出たんですけど、その生きがい、人の役に立つことは、私にとって、すごく大きな生きがいになっています。小林市では、すごくボランティア活動豊富です。高齢者たちは、保育園でボランティアしたり、小学校で読み聞かせしたり、宿題を手伝ったり、それから交通案内、手伝ったり、いろんな活動をしています。それで、やはり役に立てて生きがいを感じて長生きしてるんではないですかね。

 で、この方も大変旦那さんの役に立っているように見えます。どこ切っているか分からないんですけど。人に何かを教えたり、それから新しいことを身に付けたりすることも、とても気持ちいいと思います。ここでは、上の世代は下の世代に風習を伝えています。これは南九州の習慣、めの餅という風習です。で、一緒にすると、やっぱり1人でするより、ずっと楽しいと思います。またそれは、下の世代につながり、この風習がこれからもずっと残ることにつながります。

 小林市では、お祭りがとても多いです。お祭り、季節の行事、いろいろあるんですけど、祭りで出会う人たちは、やっぱり大体笑顔ですよね。子どもたちそうです、高齢者もそうです。で、お祭りを満喫することでも、また地域とつながっていて、悩みが、もう何となく吹っ飛ぶきっかけになるんです。そして、いろいろ頑張った後は、もちろん何もしないことも、とても気持ちいいです。

○Neckarwestheim状況

シャネット・フックス氏の資料スライド2:Neckarwestheimの人口ピラミッド

 じゃ、続きましてね、Neckarwestheim状況を少し話させていただきます。Neckarwestheimは、Baden-Wurttemberg州にある、とってもとっても小さな町です、このStuttgartの少し北のほうにある町です。町ではないんですね、村です。人口は3900人しかいないんです。でも、私が生まれたとき、2000人しかいなかったです。ドイツでも、だんだん田舎から人が消えていって、町が小さくなっていくんですけど、私の町は、ちょっとずつ大きくなっていきます。ご覧のとおり、きれいな所ですよね。そして、もう一つ、面積は13平方キロメートルしかないんですので、小林市と比べると人口密度はとても高いです。小林市では、1平方キロメートルに80人しか住んでおりません。この町では、1平方キロメートルに365人、約4倍の人も住んでいます。

 では、Neckarwestheimの人口ピラミッドを見てみると、やっぱり小林市と同じように、高齢者が多いです。小林市と違って、この20代の人たちも、そこまで少なくないように見えますが、大学に行ってる人たちは、大体、住所移さないで、そのまま通ってます。なので、ここに出ても、この町にはいません。

○外を楽しむ

シャネット・フックス氏の資料スライド3:外を楽しむ

 次いきます。Neckarwestheimの高齢者たちは、どういう毎日を過ごすかというと、やっぱり外を楽しむことが多いと思います。スナックもなく、パチンコもなく、カフェさえもない小さな村です。外を楽しむしかないと考えてもいいんです。こういうバーベキューできる小さな公園は、あちこちあります。

○習い事をする

シャネット・フックス氏の資料スライド4:習い事をする

 そして、ブドウ畑を散策する高齢者たちも、結構見掛けます。最近、いいバイクとてもはやっていますので、隣町まで行けば、あら、実家の何々おじさんが来てます、こんにちは、再会できます。小さな村でも、これは公民館です、公民館があります。その公民館で楽器を習ったり、外国語講座をしたり、いろんな習い事ができます。なので定年迎えても、そこで止まるんじゃなくて、そこからもまた成長していきます。小林市と同じように、年間にたくさんの行事があるんです、小さなお祭り、なんか市場祭り、ウサギとか繁殖させるクラブがあるんです、なんかそういうお祭り。日本と違う祭りでも雰囲気は一緒です、笑顔が多いです。

○介護施設

シャネット・フックス氏の資料スライド5:介護施設

 そして、これは私の町の唯一の介護施設です、グループホームもあります。ケア付きホームみたいなのあります。この施設の特長、私がすごくいいと思ってる特長は、町の小学校と連携しています。ドイツでは学校、小学校は大体昼に終わります。で、あたしが小さい頃、大体お母さんはうちで待っていて、ご飯作ってくれましたけど、時代が変わって、大体お母さんたちは同じように働いていて、家にいないんです。家に帰って誰もいない子どもたちは、この施設に行って、ここで高齢者たちと一緒にお昼ご飯を食べます。元気な高齢者たちは、また宿題を手伝ったり、ただ一緒に遊んだりすることもできます。

○お散歩天国

 ドイツは、もう散歩、お散歩天国だと思います。歩行者天国もたくさんありますし、住宅街は最高高速は、30キロメートルです、すいません。子どもたちが多い地域だと、最高時速は7キロだったりします。7キロなら、どんだけゆっくり歩いても、ひかれることは絶対ないです。で、歩道はちゃんと整備されていますので、本当に安全です、夜中でも安全です。そして夜もストリートライトが、ちゃんとついていますので安全です、何よりも。

 これは、あたしと、あたしのおばあちゃんです。あたしは3世代の家に育ちました。このおばあちゃんは、オーマゴーサ、とってもとっても元気なおばあちゃんでした。畑を持ち毎日、天気関係なく散歩に行き、元気に戻ってきました。で、いろんな人と触れ合って、少しした会話だけとかして、家に帰ったら結構元気になってました。病気もほとんどせず、結構前向きに生きていました、最後まで。

 もう一人のおばあちゃんも同じ、あたしの家にずっと住んでいて、この写真見ると、すごく元気に見えますが、あんまり散歩行かず、畑もせず、結構うつむいていました。で、病気も結構よくしていましたので、あちこち痛いと毎日ぶつぶつ言ってました。やっぱり外で動くことは、とても大事だと思います。

○日本とドイツの類似点

シャネット・フックス氏の資料スライド6:日本とドイツの類似点

 では、日本とドイツの類似点を幾つか挙げようと思います。まず、もちろん少子高齢化が進んでいます。今、少子超高齢化とも言うまでになっていますので、厳しい状況ではないかと思います。その次は団塊の世代。ドイツも日本も戦後、団塊の世代が出てきましたが、ドイツは少し遅れています。それ次のスライドで説明します。そして、日本もドイツも専門家不足、だんだん厳しくなっています。これからもまた、だんだん働く人が減ってしまいますので、そういうのも問題になっていくのではないかと思います。あと、さっきも言ったように、田舎からだんだん人がいなくなり町に集まってしまいます。で、日本もドイツも経済的に、とてもうまくいってます。そのために、高齢者の支援いろいろありますよね。

○ドイツと日本の平均年齢

シャネット・フックス氏の資料スライド7:平均年齢 シャネット・フックス氏の資料スライド8:人口ピラミッド

 ドイツと日本の平均年齢は、ほぼ一緒です。唯一高くなってる国は、モナコです。日本は平均年齢46.9歳、46.8歳ドイツ、一緒ですね。

 そして、人口ピラミッドも見ると一緒ですよね。ただ、ここの第1団塊の世代、第2はドイツにはなかったです。ドイツのベビーブームは、少し遅れていたため、経口避妊薬が出て、第2ベビーブームが出なかったです。すいません、でも一番大事なのは、やっぱりここです。どちらの国も少子化が進んでいます。

 年齢別分布を見てみると、またそのこと、よく分かります。若い人たちは、ほとんどいないんです、24パーセントもいないんです。これは中年の人たち、高齢者です。一緒ですよね。

 さっき言ったように、家族は高齢者にとって、とても大事です。会う頻度は多ければ多いほど皆さん元気です。これもまた似ています、この二つの国、ほとんど会わない人は、3パーセント程度です。ただ、少しずつ、月に1回、2回、年に数回会う人は、だんだん増えています、ここだんだん減っていってる。

○日本とドイツの相違点

シャネット・フックス氏の資料スライド9:日本とドイツの相違点 シャネット・フックス氏の資料スライド10:定年退職年齢2010年 シャネット・フックス氏の資料スライド11:ドイツの年齢層

 日本とドイツの相違点というと、年功序列制度は、日本ではやっぱりまだ残っています。ドイツは結構昔から成果主義です。そのために、高齢者たちにとっては、日本は割と働きやすい国、ドイツは一回ミスったら、やっぱり働きづらくなってしまい、早く定年迎える人が出てくるんです。そして定年退職年齢は、そのために異なります。自由時間も大きな違いです。ドイツでは、子どもたちは小さい頃から自由時間たくさんあります。その時間を充実に過ごすために、たくさん鍛えられてます。そうすれば、定年退職迎えても退屈しないです。自分の趣味に熱中になって楽しんでいます。

 もう一つは、外国人や移民が多いです、ドイツでは。そして輸出割合も全然違うんです。日本の経済は、やっぱり国内で支えられてます。ドイツはたくさんのものを輸出して、他の若い国に支えられてます。

 退職年齢を見てみると、ドイツも日本も65歳なのに、日本は割と働く期間が長いんです、ドイツはむしろ短いです。で、最近、移民たちは、よくニュースに出ているんですよね。この長い棒は、もともとドイツに住んでいたドイツ人です。で、この短い棒は、1950年以降入ってきたドイツです、ドイツ人、外国人、どちらもいます。これ見てみると、やっぱりもともと住んでいた人たちの高齢化が進んでいます。平均年齢は、全体的に46.8歳なのに、この移民たちは35歳です。

○結論

シャネット・フックス氏の資料スライド12:結論

 結論としては、日本が将来世代について抱える悩みは、遠く離れたドイツとの状況、酷似しています。でも、今の時代なら、少子高齢化は乗り越えられない問題ではないと思います。むしろ人口密度を考えると、正しい発展だと思います。だんだん今の高齢者、昔の高齢者とは全然雰囲気も違いますし、健康状態もいいんです。

 だんだん若くなってきている高齢者たちが、これから柔軟に勉強できる、活躍できる、仕事できる社会を目指しましょう。ご清聴ありがとうございます。

パネリスト 劉 瀟瀟氏

劉 瀟瀟氏の写真

【劉】 皆さま、こんにちは。ただいまご紹介にあずかりました、三菱総研、劉です。ちょっと座らせていただきます。本日、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。本日は日本と中国の高齢社会について、少しお話をさせていただければと思います。

 まず本題に入る前に、皆さまとお目にかかるのも初めてですので、少し自己紹介をさせていただければと思います。私は劉瀟瀟と申します。瀟洒の洋館の瀟で、しゃれていて優雅という意味ですけれども、画数が多くて難しい漢字です。普段はパソコンで打てるのは問題ありませんが、最近一番困るのは、他の会社さんを訪問するときに、受付で自分の名前を書くときです。名前を書くの、すごく時間かかりますので、後ろの方をよく待たせてしまうからです。

 私は中国、北京の出身です。大学卒業した後に、当初のみずほコーポレート銀行、今のみずほ銀行の北京支店に入行いたしました。法人営業を担当させていただきまして、たくさんの日本企業の現地法人のかたがたと、お付き合いをさせていただきました。そのとき、優れた技術、優れた商品、優れたサービスをお持ちの日本企業が、中国人を対象としたビジネスで、いろいろ苦労されていることを実感しました。これは、日本企業が中国人、ないし中国市場への理解が足りていないので、とてももったいないと思いました。それで、私はもっと日中ビジネスをスムーズに行うことに役に立ちたくて、日本に留学しました。大学院を終了した後、今の三菱総研に入社いたしました。

 現在、私の研究テーマですが、主にインバウンド、そして日本と中国の比較研究です。特に若者とシニアに注目しております。シニアについてですけれど、三菱総研には、1万5000人のシニアのデータを持っておりますので、それを使い研究して情報配信をさせていただいております。

 高齢社会についてですが、日本は中国、ないし世界の先生として、非常に研究する価値があると思います。一方、中国ならではの価値観や社会環境もあるので、取捨選択が必要なのではないかと考えております。これからのお話を通して、皆さまに日中の高齢社会について、少し理解を深めていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、本題に入りたいと思います。まず、クイズをしたいんです。私は2年前から訪日中国人の研究をしておりまして、80名近くのかたがたに、インデプスインタビューをいたしました。その中、日本に来て、最も印象的だったのは何ですかという質問に対して、最も多い回答は何でしょう、だと思いますか。このまま、おっしゃっていただければ大丈夫ですよ。

【参加者D】 それは、高齢者が。すいません、日本では高齢者が相変わらずよく働いている。中国は高齢になると、もう働かなくてもいいか働かないというような感じがします。

【劉】 さすが、ご名答です。実は一番多いのは、タクシーの運転手が、なぜみんなお年寄りなんですかという答えなんですね。もちろん日本で言うと、自然環境がきれい、あるいはマナーがとてもいい、そして買い物の天国などなど、いろんなことを言われてるんですけれども、実は日本に来た中国人は、シニアが働くことに非常に不思議に思っています。その理由は後ほどご説明します。

○日本の高齢社会と中国の高齢社会の比較

劉 瀟瀟資料スライド1:訪日中国人に一番驚く日本事情とは?

 それでは、本日の本題としては、日本の高齢社会と中国の高齢社会の比較を見ていきたいと思います。まず今、日本のシニア世代は、夫が働き、妻が専業主婦というパターンが多いようですけれども、多くの会社では、正社員の定年年齢は男女とも60歳でして、再雇用制度があれば、65歳まで会社で働けますね。でも、一方中国の場合は、1949年、中華人民共和国が設立して以来、男女平等、女性は半分の天を支えると保証しておりまして、共働きはデフォルトです。これは、日本の場合は、戦後、世帯単位で福利厚生制度を設計していたのに対して、中国では、実は個人個人、個人ベースで福利制度を設けていたと関係があります。

 つまり中国では妻が働けなければ、夫1人の給料で家族を養うことは非常に難しいということです。したがって中国では、お金持ちの奥さましか専業主婦になりません。その結果、日本をあまり知らない中国人は、日本人には専業主婦、つまり奥さまが多いんですので、日本人はみんなスーパーお金持ちだというふうに思っています。

 ただ、正社員だとしても中国の場合は、女性の定年年齢は早いです。管理職ですと55歳で、一般職だと50歳までです。男性はそれぞれ5年長く、60歳と55歳となっておりますが、日本に比べると、まだまだ若くて元気に働く年齢で定年してしまいますね。中国でも、先進国並みの平均寿命になっていますし、引き続き働きたい人も多いんですので、定年年齢を引き上げてもいいんじゃないかなという社会議論が多いんですけれど、今、現状では、まだそういう若いうちに、皆さんは定年してしまいます。

○幸せな老後について

第2分科会の写真

 では、定年した後、皆さんにとって、幸せな老後という考えはいかがでしょうか。三菱総研のシニア調査のデータを見ると、恐らくいらっしゃる皆さまもそうなんですけれども、幸せな老後については、まず自力で生活できること、そして、趣味や再就職を通して、自分ならではのシニアライフを満喫して、セカンドライフを楽しみたいというふうに思う方は多いでしょう。1人暮らしの場合でも、パートナーと過ごす場合でも、自分と子どもの生活は別々であることは、当たり前だと思う方も多いかと思います。 しかし中国では、全く逆だと言ってもいいでしょう。中国では、イーヤンテェンニアンという昔からのことわざがありまして、晩年を楽しむ、寿命が来るまで静養することが、一番理想的な老後生活だと思われています。

 そして、定年後の親が仕事をしていると、子どもが周りから、親不孝だね、親に働かせるなんて親不孝だっていうことを思われてしまうんですね、先ほどの方のおっしゃるとおりですね。したがって、例えば親が再就職して、自分の生きがいを見つけたいというふうに言ってきたとしても、子どもから見るとメンツなど、いろいろなことを考えて、変なうわさで立てたくないんですので、だから、まあまあいい年だし、せっかく定年になっていたので、チンフーというのは、清めた福、いわゆる何もしなくてもよいという幸せを楽しんだらと、慰めながら断るのが一般的ですね。

 で、日本に来ると、タクシーの運転手に中高年層の方が多いことにびっくりした話に戻りますと、ちょうど先週、1人の訪日中国人の典型的な発言を伺いましたので、ここで引用させていただきますと、どういうふうに思いますかと聞いたら、「日本の高齢化問題はとても深刻ですね、老人までタクシーの運転手にならなくてはいけないし、どこにいても働くシニアが見つかります。いい年になっても働くなんて、本当にかわいそうです。中国の場合は、こんな年になったら、とっくにチンフー、清めた福を楽しんでるよ」って感心されたようです。このような、日本人の皆さまからみると、働くことこそが生きがい、あるいは働けるうちに、いっぱい働くのが当たり前なのに対して、中国人にとっては、幸せの老後とは言えません。

 じゃ、どうして、その高齢者は子どもに言われたら、もう働かなくなるというと、やっぱり中国の社会保障制度が整えていないので、自分の老後生活は主に子どもに頼るしかないからですね。特に今、中国の都市の格差がとても激しくて、大都市の管理職ですと、とても優雅な老後生活を送れるんですけれども、農村に行くと、数年前まで年金ということすらない世代もたくさんいますので、子どもに面倒見てもらわないと、どうしようもないという方が多いからですね。

○高齢者の再雇用について

 では、幸せな老後をイメージと関連する就職についてどうでしょう。もちろん、先ほども申し上げたんですけれども、日本はとても高齢者の再雇用については、歓迎っていうことなんですね、ナレッジシェアでもいいし、職場の柔軟化、あるいは人材活用ということなんですけれども、中国はとても逆なんです、今、あまり歓迎していないんですね。

 なぜかというと、今のシニア世代に対しては、皆さんネガティブなイメージ持ってるからです。なぜかというと、今の60代以上の人たちは、若い頃、中国の文化大革命は、皆さんご存じだと思いますが、そういう政治運動は、たくさん体験しまして、例えばデモを起こして学校の先生に反対したり、毛沢東の文章しか読まなかったり、高校に行く年齢に農村に行かせられたり、そういうことがあって、大学受験も10年間も中断されていて、いわゆるきちんと教育を受けた機会はなかった世代なんですね。なので、今からみると、ちょっと先進国のマナーから見ると、ちょっとずれている人たちなんですけれども、高齢者の就職のハードルは非常に高いんですね。

○孫の面倒について

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 そして、孫の面倒についてですけれども、今の中国の高齢者たちは、自分を犠牲にして、子ども、孫のために、最後まで人生をささげています。孫の面倒についてですけれども、日本でも祖父母の力をいっぱい借りていますが、基本的に親が自力で育てることが多いですね。毎日、孫の面倒しかない老後生活を好む日本人は、多分誰もいません。

 しかし、中国の場合は、60代以上の人は子どもの頃、先ほど申し上げた社会環境の原因で、いろいろ苦労しました。それは、まず自分の子どもに、そういう苦しい体験をさせたくないんですね。で、自分は節約しながら子どもに大金を使います。いい学校、いい塾、いい生活、で、大学に入れば、本当にぜいたく三昧で、さらに就職先まで一生懸命探してあげます。で、子どもがやっと大人になって就職できたら、結婚も親の責任だと思って、こつこつ結婚資金、ほとんど不動産資金ですね、中国では不動産ないと結婚できないというのは基本的なので、ためていきますね。そして孫が生まれてきたら、祖父母になって彼らは、自分の子どもの教育費用やベビーシッターの負担を減らしたいんですね。自分が大事に育ててきた子どもに、そういう苦労はかけたくない。なので実情、自分はもう一回、子育てするんです。なので、自分の人生は永遠に眠り、自分が何が欲しい、そしてこれから何を楽しめばいいということは、考えたこともない人が少なくないし、で、そういう孫の面倒、一生自分の子どものために人生をささげることは、幸せだというふうに思う人が多いです。

○要介護状態になったら

 でも、元気のうちはいいんですけれども、要介護状態になったらどうでしょうか。先ほどもおっしゃられたんですけれども、日本の、日本人の国民性を言うと、他人に迷惑を掛けたくないということなんですね。一生懸命どうやって子どもに迷惑掛けないように、自分で健康を維持して、お金を用意して、施設を選んだりするのは、日本人のシニアたちのよくある話ですけれども、今までご説明した親子関係が非常に濃い中国人にとっては、それはあまりにも水くさくって寂しい印象がありますね。で、自分が子ども、孫のために本当に最後まで尽くしたので、介護、あるいは面倒見るぐらいな子どもであることは、当たり前だというふうにお互いに思っています。もちろん一人っ子政策の原因で、子どもは面倒見切れないので、施設に入ることや自分の老後を設計することを考え始めた、今の50代とか60代ぐらいの人が増えていましたが、世界一親密関係である子どもに頼まれないことは、かわいそうな孤独な人だと思われやすいんですね、中国では。

○健康について

 最後の健康についてですけれども、世の中、誰も関心が高いテーマですね。中国では、実は特長がありまして、日本語で言うと漢方、中国語で言うと中華の医学、中医と呼んでいますね。その中医の中の養生姿勢、つまり生命を養う思想は、今のシニアたちの健康の根本になっています。

 で、日本のシニアを言うと、山登りなどの運動をして、きちんと先生からの薬を飲んで、生活習慣もとても科学的な感じですけれども、中国では、昔からの養生思想を、また活用しています。例えば、冷えは一番良くないので、さゆしか飲まないとか、エアコンをあまりつけないとか。で、激しい運動は、実は養うことに合わないんですので、太極拳をやったり、広場でみんなで軽くダンスすることが好まれます。今までの生活習慣があまり良くなかったので、糖尿病の人が多いんですけれども、でも西洋の薬は必ず毒が入っていると皆さん思っていますので、医食同源が一番いいという、薬より食事から回復する人が多いですね。

○日本と中国のシニアライフの違い

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 そろそろ時間かもしれないんですけれども、日本と中国のシニアライフ、考えはこんなに違いがあるのかについては、少し理解いただけましたでしょうか。これから日本の高齢者のロールモデル、つまり趣味、仕事、ボランティアなどを通じて、定年後の人生も輝ける、で、自分らしく楽しく暮らせる、アクティブシニアを私としては、非常に中国の高齢者に伝えられたらいいなと思っています。

 また、タクシーの話に戻って恐縮ですけれども、中国でインタビューした、定年した50代の中国人女性は、日本に旅行に行ったのは、定年後、自分を見失ったので、どうすればいいのか分からなくなって、で、気分転換で日本に来たんですって。で、その空港で熱心に道を案内してくださったボランティアも高齢者だし、頑張って荷物を運んでくれたタクシー運転手もシニアだったので、とっても感心したとおっしゃってました。

 で、彼女は何をしたかというと、中国に戻ってから、孤児院の夜勤ボランティアを始めたようです。その理由を聞くと、「やっぱり定年になったといって、まだ50代だし、家でぶらぶらするより、日本の高齢者の皆さまのように、世の中のために何かしてあげたいというふうに思うようになったからです」と答えてくれました。で、私はこの話を非常に感動を受けまして、今まで本当に自分のこと全部犠牲して、本当に何もしなかった中国のシニアは、そろそろ日本のアクティブのシニアに見習い、自分らしいセカンドライフを楽しむ時代になってくるんじゃないかなと思います。そのとき、日本のシニアライフ、あるいは関連商品については、きっと日本市場も注目されるのではないかなと思います。

 はい、駆け足ではございますが、私からのお話しは以上です。ご清聴いただきまして、ありがとうございました。

パネルディスカッション

【松田】 では、続きまして、パネルディスカッションに移りたいというふうに思います。こういったパネルディスカッションですけども、常々私が思うのは、パネルディスカッションと言いながら、パネリストが言いたいことを一方的に言って、以上で終わっちゃうのが多くてですね、世の中では言葉のキャッチボールが大事だと言いながら、結構パネルディスカッションは言葉のドッジボールと言うんですかね、言いたいことを言って、ぶつけて以上みたいなことが多いんで、この分科会では、できるだけパネリスト同士で意見交換をしていきたいというふうに思っております。

 まずガーニエさんに対してのプレゼンテーションを聞いて、フックスさんと劉さんからの質問っていうのをしてみたいと思います。まずフックスさんからガーニエさんに対しての質問をお願いいたします。

○これから一体どうしたらいいのか?

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【フックス】 ガーニエさんの話を聞いて、やっぱりドイツと日本はとても近いといつも感じています。価値観、距離感、いろいろ近いなと思います 。あんなに離れているのに不思議だなって思ったんですけど、アメリカの話を聞いて、やっぱり高齢者の支えは、ドイツと日本も、またすごく近いと思っていました。アメリカでは、保険とか入れない人たちが多くびっくりしました。ドイツは先進国でアメリカもそうなので、そこは似ていると勝手に思ったんです。で、ガーニエさんは日本に住んで、自分の国とはこんなに違うとみて、これからどうしようと思いますか。アメリカ、まだまだ若いんですけど、アメリカに帰ったら老後どうなるかとか、そういう不安ありますか。

【松田】 いい質問ですね。直球ど真ん中で、ガーニエさん、これから一体どうしたらいいんだということですね。

【ガーニエ】 そうですね、実は私も、お二人に同じような質問をしたかったんですけれども、そうですね、基本的にアメリカと日本の違い、老後とか医療についての違いが、一番大きなのは、医療制度というものは、あるいは福祉というものは、経済の一部として生まれてます、アメリカでは。で、ドイツとか日本は、その逆ではないんですけども、経済に任せられないものがある、それはやっぱり人の健康とか、そういう考えが、まだ根付いてると思いますね。それは、これからどうなるか分からないんですけれども、アメリカの場合もう極端に行っています。だから、この20年先、30年先とか、そういうことは予測できないんですけれども、個人的には、こういうことはよく考えます。

 で、個人的には、老後は日本ではいいんじゃないかなと、私は思っています、正直です。でも、他の人たちに聞いてみたら、アメリカ人とカナダ人、アメリカの教授の友人が、やっぱりアメリカに帰りたいって、ハワイに行きたいんです。やっぱり気候が悪くないし、自分のうち持ってるから、やっぱりそういう生活はできます。ただ、カナダ人の夫なんですけど、その人の夫で、彼は日本に住みたいって。それはなぜかっていうと、そういう社会福祉、そういう保障とかいろいろありますので、やっぱり安心します。

 それと同時に日本の医療制度はすごいと思っています。だから、一人一人によって違うんですけど。また香港人、今、香港に住んでるんですけども、香港では、やっぱり香港人はカナダに行きたい人が多いんです。カナダのそういう福祉制度がいいし医療制度も悪くない。ただ、その中で日本に行きたい香港人もいます。やっぱりその普遍的な保険制度がないと、行きにくいところが結構あるし、アメリカもやっぱり老後で過ごしたい人は少ないと思いますね。やっぱりそういう不安があります。それで、ありがとうございます。

【松田】 なるほど、よろしいですか。やはりカナダに行きたいっていうの、医療費が圧倒的に安いっていう理由なんでしょうね。分かりました。じゃ、劉さんのほうから、ガーニエさんに質問はどうでしょうか。

○どうやって友達ができたのか?

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【劉】 貴重なお話ありがとうございました。私は非常に関心あったのは、先ほどのデータの中に社会孤立というデータがありまして、アメリカ人は結構友達に頼るというデータがあったんですね。それは多分、どうやって友達ができたのかを、非常に興味深いなと思います。何となく、日本のシニアの発言のデータを見ると、職場で知り合った友達が多いんですけれども、定年してから新しい友達とかあんまりいないし、アメリカは、もしかして転職が多いので、いろんな場所で違う人と会って友達ができて、老後も頼り合う、助け合う人が増えるんじゃないかなというふうに思うんですけれども、実際はどうでしょうか。

【ガーニエ】 質問ありがとうございます。そうですね、これは大幅に地域によって違ってきます。都会だったら、ずっと同じ所に、ずっと住んでる人がいるとしたら、やっぱり自分の学校での友達、まだ続いてる人もいるし、あるいは田舎のほうで、ずっと同じ町に住んでて、そういう人たちも、自分の高校とか小学校からの友達もいるんですね。一緒に老後を迎えることはあるんですね。それやっぱり、そういう人もいるんですけれども、結構、頻繁に引っ越す人もいます。そういう人にとって、多分友達のつくり方、現役、働いてるときは、やっぱり職場、あるいは職場の近くにあるバーとかレストランで気軽に話したりする、これもイギリスにちょっと似てますね、そのバー文化、アメリカの大都会にはあります。そういう本当にカジュアルな所で誰かと会って友達になる。で、アメリカ人はすぐ友達になることはあるんですけど、長く続くことは、そこまではない。

 だから、定年を迎えたら、どのように友達が残ってるかって言うと、そういう昔からの学校の友達とか、それはあるんですし、あとはやっぱりボランティア活動を通して会う人たちです。だから、もう60ぐらいのときにボランティア始める人たちは、そういう仲間と一緒にいろいろやったりします。なんか、それは多分、一番大きな友達と会う機会だと思いますね。

【松田】 なるほど。はい、ありがとうございます。会場のほうからいかがですか、ガーニエさんのアメリカの報告についてございますか。よろしいですか、じゃ、なければどんどん進めますね。続きまして、フックスさんのドイツからの報告について、ガーニエさんからの質問、それから劉さん質問でお願いいたします。

○老後はどのようにしたいと思っていますか?

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【ガーニエ】 とても貴重な発表をありがとうございます。じゃ、私は同じ質問をしたいんですけれども、老後はどういうふうに思ってますでしょうか。もし、どこ でも、世界でどこでも住めることができたら、どちらの所が選びになりますか、それはなぜですか。そして、それと同時に自分の子どもたち、自分の老後にどのような関わりがほしいのかを聞きたいです。

【フックス】 はい、人生、全部話すことになってしまいます。まず最近、娘が生まれて、やっぱり親になると、一番気にしてるのは、子どものことじゃないですかね。なのでこれから、まず娘の一番いい道、一緒に歩こうと思っています。老後は今のところ、どこでも何でもいいです。私は働くこと好きです、でも、休みも大好きで。なので、できれば定年退職迎えても、しばらくの間、ちょっと時間を減らして、ずっと働き続けたいと思います。好きなことをして、タクシーの運転手さんとか、なんかそういうこと。で、国も結構どこでもいいと思います。

 今、日本にいます。もちろん日本大好きじゃなければ、ここにいないわけです。家族から遠く離れて住むことにしました。本当に大好きも大好きです。でもやっぱり私の根はドイツにあります。文化の違い、よく気付きます。こんなに近くてもやっぱり違う、でもそれは、もちろん周りの人たち、ドイツに帰っても、こんなに同じドイツ人なのに考え方が違うっていうことも気付くことあると思います。計画、今、全くないです。とにかく元気でいられれば、どこでも何でもいいです。

【松田】 そうですね。僕が初めてシャネットさんと会ったときに、インタビューして、同じような質問を確かしたんです、シャネットさんの夢は何ですかと。で、小林市で日本の方と結婚されて、お子さんも生まれて、すごく幸せで、シャネットさんに、「あなたのこれらの夢は何ですか」っていうふうに僕が聞いたら、彼女はこう答えたんですね。「今、夢を生きてる」っていうふうに言って、いやあ、それを言えることっていうのは、すごく幸せなことだなということですね。だからそれは、今やりたいことを小林市でして、家族と幸せで暮らしてるということですね。だから、これからのことは、よく分からないけれども、日本でもドイツでも、やりたいことがやれればいいのかということだと思いました。劉さんからは、どうですか。

○引退後のドイツの人々は、どういうふうに暮らしてるのか? 

第2分科会の写真

【劉】 お話ありがとうございました。私、聞きたいのは、今その優雅な老後生活を言うと、日本では、例えば夫婦そろって絵画見に行ったり、展示、展覧会見に行ったり、西洋のコンサートを見に行ったり、そういう人が多いと思いますけれども、それは全部、ヨーロッパの文化ですね。

 で、引退後のドイツの人々は、どういうふうに暮らしてるのかを、ちょっと聞きたくて、いわゆる何を生きがいをしているのかとか、あるいは教養がありますので、アジア人からみると、外のものなんですけれども、ドイツの人からみると、自分のもの、実はヨーロッパのものなので、そういう教養があって、芸術とかをどういうふうに老後を楽しんでるのかについては、ちょっとお聞きしたいなと思います。

【松田】 いいですね、ドイツの高齢者、どういうふうにやって老後を過ごしてるかという、これも直球ど真ん中の質問でいいと思いますので、どうぞ。

【フックス】 私は、まだ老後迎えてないので、私の両親のことをちょっと考えると、多分、彼らにとって理想的な老後ではないかと思います、老後生活。彼らは、年1回、2回旅行に行き、大体私はここにいるから日本に来てしまうんですけど、私の両親も小林市、大好きです。で、たまには、行ったことない国に行ったり、何かの芸術家の何かを、わざわざイタリアまで行ったりすることもあります。決してお金持ちではないんですけど、限られた計算で楽しく過ごしましょう。で、一般的に過ごす時間は外にいる時間が長いです。家の庭が広くて、それを2人で全部面倒見ています。そして、友達と会う回数が非常に多いです。ほとんど毎日、誰かと会ってバーベキューしたり、ただ一緒にお茶したり、トランプをしたり、大統領関係なく、すたすたトランプしてます。なんか結構ドイツ人は、みんなで楽しめるゲームを楽しんでます。トランプだったりボードゲームとか、なんかそういうの結構あるんです。それが私からすると一般的です、私もそういうのでいいです。

【松田】 ありがとうございます。じゃ、劉さんに対しての質問を、ガーニエさんお願いします。

○中国では、自分の親と自分の子どもの世話をどのように両立するのか?

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【ガーニエ】 とても面白い発表で、面白い比較が気に入って、本当にありがとうござ います。幾つかの質問があるんですけれども、一つに絞ると、まず自分の孫の世話することが生きがいという、そういう、それは理想の老後ということが出てきましたけれども、もし、子ども、その子どもが自分の子ども、孫がいて、で、親が病気になったら、その子どもは、どのように自分の親の世話と自分の子どもの世話をするのかということを、ちょっと聞きたいんで。日本の場合ある学者が、公私のサンドイッチという言葉を作ったんです。それは自分の親の世話見ながら自分の子どもの世話もする。一番大変な時代、一番大変な世代、今の50代、60代の方ですね。で、それは中国でどのように両立できるのか、そして、できなくなる親が施設に入ったら、その施設の内容、そういう生活、どのような生活なのかと、ちょっと聞きたいんですね。

【劉】 ありがとうございます。まず、どうやってサンドイッチの状態なるかというと、今の80代以上の人の子どもは、50代ぐらいでして、50、60代ぐらいでして、その人は、子どもは20代、30代ですね。で、その真ん中の50、60代の人からみると、幸いなことに子どもが多いですね、兄弟が多いです。そのときは、戦後のベビーブームとは言えないんですけれども、そのときの中国の政策は、できれば多く産みなさいという方針だったので、非常に子ども、たくさんいたんですね。なので、今のその80代ぐらいの人が介護状態になると、誰かの子どもが、もう定年してしまったんですね、55歳とか50歳。で、定年して、その人から、いわゆる長男、あるいは長女から介護の順番に回っていくんですね。で、その下の子どもも、だんだん定年になって、で、一緒に頑張ってっていうふうに助け合うんですね、本当に家族の関係で助け合って、介護とか、こういうことをできるんですね。

 で、今一番かわいそうというか社会問題なのは、一人っ子世帯なんですね。一人っ子世帯だと、今だと一人っ子だから、2人まで産めることができるんです。なので、結婚すると夫婦にとっては、上は4人、下は2人っていう、非常にウエストが細い感じになっていて、これからの中国、本当に中国、一番大きな社会問題の一つじゃないかなと思います。で、そういう場合、今、そこまで健全化されていなく、まだ一人っ子の親は、まだ元気というところなんですけれども、でも中国政府からみると、やっぱり、いかにおうちで介護できることを、今、力を入れていて、そして中医ですね、中国の漢方を、そういうふうに支持しながら、いかに健康寿命を延長していくことは重視してると思います。でも、これからですよ、これからの施設に入って、どういう生活と言うと、今の70代、80代の人からみると、やっぱり施設に入るのは恥というか、自分が子どもに捨てられたという気持ちになりますので、もう死を待つって、死ぬことを待つっていう人が多いじゃないかなと、新聞報道でよく見られるんですけれども、でも逆に、もう今を生きるっていうことを悟った人も、少しずつ増えていくんじゃないかなと思います。逆に彼らのことも、今の60代以上の人だと、一人っ子の子どもに迷惑掛けたくないし、もう頼りたくても、多分頼れない状況になってますので、これからの商業保険とかそういうことを、施設に対する態度も、少しずつ柔らかくなっているんじゃないかなと思いますね。

【松田】 なるほど。世代によって結構、だから差があるということなんでしょうね。分かりました。じゃ、フックスさんのほうはいかがでしょうか。

○自分の親はどうしているのか?

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【フックス】 すごい直接ですけど、自分の親はどうしていますか。

【劉】 実は私、最近シニアの研究しながら、自分の孤独死とか親の介護とか、いろいろ今いっぱい考えてて、財形とか増やしたりしてますけれども、今、うちも結構そういう典型的な中国の家族でして、親には兄弟が多いんですね。なので、私の祖父母の介護は、あんまり心配というか、皆さん助け合って一緒にやっていくっていうことなんですけれども、自分の親の場合は、もう直接に、「頼っていませんので、ご心配なく」と言われました。私も一人っ子なので、頼れない娘で大変恐縮ですけれども、やっぱり健康に気を使うようになったんですね。で、健康に気を使うことと、子どもに迷惑を掛けたくないので、いかにいい施設を探す、今、結構いろんな所に行って探してるようですけれども、やっぱり大都市だと空気も、最近良くなってるんですけれども、ストレスが多いですね。あんまり養生ですね、チンフーをあんまり楽しむことではないんですので、結構、私のいわゆる今の60代の人は、きょうだいそろって、小さな2級、3級都市で、ちょっとお金持ちの人たちなんですけれども、別荘とかを買って一緒に住むことになってるんですね。なので、子どもには頼れないんですけれども、兄弟間で頼り合いましょうということですね。

○傾聴ボランティアで一番大切なこととは?

【松田】 今回、お三方から、日本の高齢社会のいいところっていうのを、海外の方の目線でご報告いただきました。それは、やっぱり国民介護保険、保険、これ医療制度やっぱり素晴らしいということ。あるいは特に小林市のような地方都市で言うと、人と人との助け合いというのが、素晴らしいといったことがありました。

 いいことの話をたくさんいただいたんですけども、そうは言っても、日本のここがちょっと問題じゃないのということを、お昼のときに皆さんと話したんですけども、私、印象的だったのは、ガーニエさんのほうは、孤独、ソーシャルアイソレーションと言い方を指しましたけども、それを解決する方策として、傾聴ボランティアが、すごい、いいと思ったんですけども、実際、傾聴ボランティアをやられてみて、ここがとても大事なことの、聞く、何でしょう、こつというか、聞くポイントっていうのは、何が傾聴ボランティアで一番大切なことなんでしょうかね。

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【ガーニエ】 ご質問ありがとうございます。そうですね、傾聴ボランティアと言っても、いろんな種類ありますね。そして、それは相手によって違うんです。だから傾聴ボランティアは、例えば病院とかそういう所に行くときに、そういう病気についての話がよく出てくる、だから、そういうことをよく聞いて、聞いてあげること、そして元気出してとか、そういうことは言わないんですね。だから、傾聴の一人一人のポイントは、自分からの助言を言うこととか、こうしたほうがいいんじゃないですかとか、そういうふうに考えないでとか、そういうような否定的なことは言わない、全てを肯定します。で、それするには、相づちと、言われたことをそのままで言い返すこと、言い替えればいいんですけど、だから、あくまでも相手の気持ちを反映することが一番大事。それによって、共感しているっていうふうに認識されて、それで開放感があるっていうことですね。

【松田】 なるほど。それはトレーニングすれば、傾聴ボランティアっていうのは、上手になっていくものなんでしょうか。

【ガーニエ】 どんなものでもトレーニングをすると、上手になっていくことが、傾聴でも言えますね。それは、やっぱり会話と違いますから、そういう会話の癖が出てくることが多いんですね。

【松田】 会話の癖。

【ガーニエ】 ええ。それは、自分の言いたいことを言うこと。だから傾聴は、それはないんです。本当に聞く、で、言うときは、相手が言ったことを別の言葉でもいい、でも言い返すことだけ。ですから、そういう会話の癖から離れることが、やっぱり練習しないとできないんですね。

【松田】 なるほど。すぐ会話の癖だと、で、結論は何だとか、何が言いたいんだとか、ついつい仕事をしてると言っちゃうけど、そういうのはいけない。

【松田】 なるほど、そうですね。僕もちょっとやってみようかなと。

○小林市における所得の課題

第2分科会の写真

【松田】 それから、これはフックスさんに聞きたいのは、課題でね、さっき、お昼で話したときに、小林市の課題で言ったときに、やはり経済、お金という話があったんですけども、もうちょっと、その話を詳しく言っていただけますでしょうか。小林市が経済的に所得が低いですとか、そういったところは課題だっていうことについて、もう少し詳しくお聞かせいただけますか。

【フックス】 はい、解決方法はないです、まだ考えてないんですけど。小林市は小さな町で、九州にあります。経済的にそんなにうまくいってないし、給料が割と低いんです、時給が低いし残業が多いです。お金出ない残業も多いです。なんかそこ難しいですよね、お金がなく、時間もなく、だんだんきつくなるのではないかと思います。

○日本の飲み会の文化

【松田】 なるほど。あとは、飲み会が結構多いのが良くないっていう話をされてましたね。

【フックス】 そうですね。よく日本に来て一番びっくりしたことは何ですかって聞かれるんですけど、そのときは、いや特に何もびっくりしてないんですってなってしまいますけど、飲み会は結構びっくりしました、よく考えると。なんか小林市に来て、1年目、散々飲み会に参加して、すごい楽しかったです。まだ友達もそんなにいなくて、することもなかったんです。飲み会に参加すれば、いろんな人と触れ合って楽しい会話もできて、この町のいろんなことも分かり、楽しかったですけど、お財布はだんだん薄くなっていきます。

【松田】 お金かかりますからね。

【フックス】 結構かかります。そして、小林市は1次会だけでは終わらないんです。2次会に行き、もう散々歌い、で、3次会に行くか行かないかで、もう最後はやっぱりラーメン屋で締めにラーメン食べて帰ります。で、8000円ぐらいかかります。それ週に3回、参加する人がいるんです。それでやっぱり職場でも、みんなお金がない、お金がないって騒いでるのは、よく分かります。理由教えましょうかって言えないんで、そこはやっぱり傾聴ボランティアみたいな役で、そうですねって流します。

【松田】 なるほどね。そうですね、確かに僕も小林市って行ったのは、飲み会の文化ですね。あと4万人の町でありながら、異様にスナックが充実してるんですよ。スナック街があって、共通して2000円で飲み放題なんですよ。カラオケ歌い放題で、大体みんな、はしごをするんですよ。だから、飲み会の文化というのは、やはりここが変だよ、日本人ってのが。劉さんも日本に来てびっくりしたの、飲み会だったでしょう? ちょっとその話はいいですか。女の人が飲み会に行くのが不思議だって。

【劉】 そうですね、一応、東洋経済オンラインでちょっと書かせてもらって、すごいランキング良かったんですけれども、本当に一番、女性がお酒を飲むことに非常にびっくりしまして、しかもわいわい飲んでいる、なんかすごい楽しそうに見えてて、すごいびっくりした。なぜかというと、中国ではお酒は女性飲まないんですね。お酒を飲む女性は品がない人というと、昔の伝統ですね。ある意味で仕事ではフェアですけれども、そういう考え方は、ちょっと古いですね。営業の女性はやむを得ず飲むんですけれども、他の人は、あんまり飲まないようにしています。なので、中国人は食べるのが大好きなので、飲み会じゃなくて食事会ですね。おいしいもの食べて、はい終わりっていう感じで、最初はすごい私も日本に来てから一番ストレスを感じて、にきびもたくさん出た時期は、新人のときの研修時代、毎日皆さん、なんでこんなに飲むのかなっていうことで、非常に違和感を感じました。

○あるべき高齢社会の方向性について

【松田】 なるほどね。ありがとうございます。皆さん、パネリストの方から、これからあるべき理想の高齢社会とは何かということですね、そのあるべき高齢社会の方向性について、一言ずつお願いできますでしょうか。じゃ、今度は劉さんからいきましょうかね。

○夫婦行動について

【劉】 私、本当に中国人の視点からみると、飲み会以外は、日本の社会の一番の違和感は、夫婦別行動については、非常に違和感を感じますね。三菱総研でも、そういうシニアのライフを研究しておりますけれども、やっぱり妻のほうが、どんどんどんどん活躍していて、自分の女友達と一緒に海外旅行に行ったり、趣味とかやったりしている人が、すごく多くて。

○70代日本人女性のペルソナ

劉 瀟瀟資料スライド2:70代日本人女性のペルソナ

 次ですね。それは、そうですね、私が分類した日本の70代の女性なんですけれども、右上の所は自由夫婦なんですね。いわゆる海外旅行は絶対旦那と一緒に行きたくないとか、もう面倒くさいから買い物に行っても、もう待つとか、そういうことだけだし、もう本当に夕飯ぐらいしか一緒に食べないという共同時間が非常に少ない日本のシニア世界は、なんかもうちょっと、一番親しいはず、お互いに老後生活を面倒見る人と、もうちょっとコミュニケーション取れたら、もっと孤独がなくなるんじゃないかなと思います。

 それは多分、今じゃなくて、働く時代、松田さんからっていうところ、50代から奥さんと仲良ししましょうっていうことを、働き方改革でもそうなんですけど、飲み会もそうなんですけれども、ちょっとファミリータイムを増やすことによって、特に男性の孤独とか、シニアライフの寂しさとか、非常に多めに経験できるんじゃないかなと思います。

【松田】 なるほど。夫婦改革が大事だということですね。

【劉】 そうですね、ぜひ奥さんとは仲良くしてください。で、三菱総研の調査データですけれども、彼女というか、異性の友達を持っているシニアの男性の幸福感が圧倒的に高いんですので、みなさんもぜひ。

【松田】 異性の、要するに女友達を持つ。

【劉】 友達がいる、シニアの男性は、幸福感が高いという結果もありますので、皆さま、ぜひ友達つくってください。

【松田】 そうですね、頑張りましょう。そして傾聴ボランティア、僕もやろうかと思って、ガーニエさんに「夫婦間での傾聴ボランティアどうですか」って言ったら、「いや家族は結構難しいです」って言われまして。じゃ、これからどうあるべきかっていうことを、今度はフックスさんからお願いできますか。

○九州男児

第2分科会の写真

【フックス】 私はもう今、言われたことにちょっと追加したいことがあって、九州では、九州男子っていう、聞いたことありますか?

 いるんですよ、九州男子、九州にたくさんいます。私の旦那は全然違いますけど、九州男子という人とは、やはり結婚したくないですね。なんか今の時代だと、女性も働いてるじゃないですか。だったら家事も一緒にやりましょう。で、同じようなことで、だんだん男性は家から離れてしまいます。残業もあって飲み会もよくあり、家のこと、だんだん分からなくなってしまいます。冷蔵庫に何入ってるかさえも分からない男性が多いと思います、九州では。娘の友達の名前とか言えないはずです。そのために、やっぱり老後うまくいかない気がします。もう家族ではなくなってしまいます。

 それから、ちょっと違うこと一つ。ドイツでは、夫婦で友達つくります。別に一緒に友達つくりましょうではなく、あたしが友達になった友達は、必ず旦那にも紹介します。で、旦那も仲良くなります。私だけの友達ではないんです、旦那の友達でもあります。日本ではすごく分かれてる気がします。やっぱりなんかみんな一緒に友達になれば、ストレス発散にもなります。なんか最近この子こんなこと言った、どう思うとか、なんかそういうの、傾聴ボランティアいなくても、からかいながら発散できます。

【松田】 なるほど、いいですね。非常に男性諸氏には、耳の痛い話が多いですけども、本質ですね、それはね。じゃ、ガーニエさん、お願いします。

○パッションを見つけることが大事

【ガーニエ】 そうですね、私もお二人と同じようなことに関連してるんですけれども、まずはやっぱり全体的な日本の働き方、働き方改革とかいろいろ言われてますけれども、やっぱりもう少し自分の時間が必要という感じがしますね。

 それは、レジャーすることだけではなくて、それはやっぱり男女共参型という言葉あるんですね、最近の政策の中で。高齢者の男女共参型ということも大事ですね。それは何かっていうと、それはあくまでも、こういうジェンダーと男女平等ということじゃなくて、特に男性の場合、自分で、うちで自立できるようなことがないと、いざとなったら大変なことになる、それは本当に一つの大事なこと。そのために働き方改革が必要。それはやっぱり若い頃から、自分で仕事以外のことも少し自信が、身に付けることがいいのかなと思いますね。で、それと同時に、これは女性でも男性でも言えることで、30代、40代、50代のときから、もうちょっと早くからでもいいんですけれども、何かのパッション見つけることが大事。

 パッション。それは、何かっていうと、その休暇のときとか週末のときに、パッションを追いかけるということだけじゃなくて、退職しても、ずっと続けるようなパッション。で、それは退職しても没頭できるようなパッション。それがあれば、やっぱり生きがいというか、生きたい理由が続いていくし、退職したら何も社会とのつながりがなくなるというわけではないんですね。そういう幾つかの、そういうふうに言ってるケースがあるんですね。劉さんがおっしゃったように、それは夫婦と一緒のパッションだったら、なおさらいいことですね。それも、夫婦との同じ友達の共有できることにもなります。それは、アメリカでよく見ることで、日本では滅多に見ないことです、それ一つのいいことかなと思います。

【松田】 なるほど、ありがとうございます。非常に示唆を富む話、ありがとうございます。ちょっといいですか、こっちのほうに。

○社会的孤立の問題

松田 智生氏の資料スライド3:75歳以上300名の5年間継続調査

 今日のモデレーターとして総括をさせていただきますけども、やはり、今日のキーワードで社会的孤立っていうのが非常に問題だと、これは、全世界共通だと思うんです。

 これは、今、映してる数字は、75歳以上、00名、5年間継続調査したというもので、なかなか私は、これはノーベル賞級のものだと思ってるんですけども、男、女性でみて、どうなったかっていうこと。これ死亡率、こっちは機能低下率ということなんですけども、男性の独居が、死亡率も機能低下率も高いわけですよ。やっぱり男の独居っていうのは、非常にご用心っていうか危険なんですね。

 一方、女性を見ると、死亡率ゼロ、機能低下率も一番低いということで、女性は元気。だから、社会的な大きな課題っていうのは、男性の独居ということです。

○男性改革が必要

第2分科会の写真

 これはまたですね、男が、いかに問題かっていうことで、60代女性の主なストレスを見ると、病気、地震、子ども、経済なんですけども、60代女性のストレス何かっていうと、これ夫なんですね。さらにリタイア後を一緒に過ごしたい相手っていうのは、男は夫婦でいたいと思いながら、女性は1人か友人といたいということ。だから、この日本のデータが、今日のパネリストの海外の方が見ると、すごくおかしいと、なんで夫婦で過ごさないのということだと思います。

 それは、やはり男性改革だと思うんです。得てして困ったシニアというのを、これもう5年前のNHKのクローズアップ現代で、こういう人たちがセカンドライフで失敗するということ、過去自慢で、すぐ私は部長だったとか何とか物産だとか言う人。この人NHKのエキストラなんです、この人もエキストラなんですけど、本当に嫌な顔してるじゃないですか。あと口は動くけど手が動かない、手は動かない、足は動かないって、これコピー取ってみたいな人。ちなみにこの人エキストラなんですけども、こういう嫌みな演技がとっても上手で、ロケのとき、本当にみんなから嫌われちゃったっていう人なので。やっぱり過去を語らず、今を語るということが大事だということ。

○貢献欲求・承認欲求

 今日のキーワードの中に、誰かの役に立ってるというのがあったと思うんですけども、それは心理学でいう貢献欲求や承認欲求だと思うんです。これは映ってるのは、実は私の父親なんですよね、おやじ。

 大田区の公立の小学校6年生に、ゲストティーチャーということで、町の歴史を教えて、おじいちゃん、おばあちゃんというコーナーがあって、そこで町の歴史を教えると。で、空襲って書いてるんですけど、東京大空襲の話をする。わが家は、焼夷弾が直撃して燃えちゃった。で、おやじは頭から水かぶって、家財道具を取り出したと。一面、焼け野原になったけど、今、この町は、こうやって住宅街に復興しましたっていうことを、小学校6年生にするんですね。そうすると、翌週こうやって感想文を書いて、小学校6年生が4人1組でプレゼンテーションしてくれると。ちなみに今の小学校6年生は、パワーポイントを使ってプレゼンするらしいんですけども、そうするとうれしい、役に立ってる、これが貢献欲求、承認欲求です。これが大事じゃないか。

○多世代の交流がある

 そして、今日のキーワードでね、フックスさんから、地元の所では、多世代の交流があるという。これは日本の事例ですけども、東京のビジネスマン、ビジネスウーマンを奄美の徳之島、離島に連れて行って、地元の高校生と働く論をディスカッションしたと。そうすると、建築家、デザインの話をすると、高校生は目をきらきらさせる。元スチュワーデスが、ホスピタリティの話をすると、そういうふうになるためには、私はどうすればいいんですかという、目をきらきらさせると。だから、シニアの経験や人脈っていうのは、とっても宝なんですね。それを聞きたい高校生いっぱいいる。それは何も華麗なるキャリアの人じゃなくてもいい。この人は一番評価が高かった人で、何を話したかっていうと、彼は山一證券に勤めてた。話したのは、会社が破綻するってどういうことだって。会社がつぶれるってどういうことだっていうことは、子どもたちはびっくりするわけですよ。つまり、しくじり先生だっていいんだと、貴重な経験というのを、若い世代に伝えることは大事じゃないですかということ。

○アクティブシニア市場

 それからね、社会目線じゃなくて、産業目線で見ると、やっぱり介護ですとか、医療以外のアクティブシニアの市場っていうのは、三菱総研の試算で約30兆円があると、ここに書いてるような、真ん中のキーワードで言うと、学んだり、働く、極める、装う、暮らす、出掛ける、改める、住み替える、若返る。大体30兆円、市場規模があるということ。これは、前向きなプラチナ社会というのは、新しい産業創造を生み出すということでございます。

○アクティブシニア市場

松田 智生氏の資料スライド4:2:6:2の法則の視点

 課題は、僕はこのニイロクニの法則かと思う。ニイロクニっていうのは、上の2割はアクティブ、下の2割は、もう非アクティブ、具合が悪い。問題は、この真ん中の6割の潜在アクティブ層。きょうここに来てる人は、この上ですよ、もう来てるわけだから。問題の人はここ、関心がある興味があるけども、一歩踏み出せないと。で、社会的に最大の問題は、この人たちがどんどん下に行っちゃうこと。例えばね、公民館に行くと、来てる人っていっつも一緒ですよ、女性ばっかり。

 で、男が、なかなかそういうのに来ない。これがね、こっちに行っちゃうリスクある。だから、どういうふうにやって、真ん中の層を上に引き上げるか。それは、今日話した傾聴ボランティアかもしれませんし、多世代交流かもしれませんし、一歩背中を押させるような制度設計が大事だと。それを僕は、ちょっとした義務だと思う。わが町は第2義務教育制度を始めました、60になったら、もう一回、学校に行かなきゃいけませんとか、もう一回、社会活動をしないと、住民税が上がりますみたいなね、やっぱりね、日本人はアメリカ人と違うんで、ボランティアやりましょうって言っても、いやいやってなっちゃう。そのときに、それは義務ですよ、あるいは、みんなやってますよというふうにすることが、程よい強制力が必要かなと思ってます。

○3大いきがい・モチベーション

松田 智生氏の資料スライド5:3大いきがい・モチベーション

 これが、やっぱり老後の生きがい、自分が年取っても成長してるということと、誰かかの気付きがあるということ、良かった悪かった。深い話し合いっていうのは、青臭い議論っていうのかな、一体これからの高齢社会どうあるべきかと、それを世界で、どう考えていくんだというような、ちょっと青臭い議論をするということが大切じゃないかと思います。

 でね、こういう話をしてると、得てしてね、困ったシニアから否定を言われるのは、こういうこと、否定語批評家、いやそれは制度が違う、国民性が違うみたいな、できない理由を言わせたら天下一品の人々が結構多いと。あと僕が煮えたのは、すぐいかがなものかという人がね、ここに書いてあるようなことはあるわけですよ。居酒屋弁士っていうのは、酒の席では雄弁なんだけども、こういう所来ると黙っちゃうということ。こういうのを打破しましょうということです。で、大切なのは、WillとCanというのは、あなたのやりたいこと、できること何ですかっていうのを、みんなで考えてはどうでしょうかということ。

○まとめ

松田 智生氏の資料スライド6:まとめ:今日の第二分科会「海外からみた日本の高齢社会」

 今日長々と、お話ししましたけれども、『海外からみた日本の高齢社会』ということで、僕なりに整理すると、やはりそれはシルバーじゃなくてプラチナ社会だということ。

 それから、多世代の視点というのが大事だと。今日ドイツでも、中国でも、アメリカでも、やはり多世代というキーワードが出てきたかと思います。

 それから、二期作、二毛作というのは、二期作っていうのは、米と米、麦と麦ですけども、二毛作っていうのは、全く新しいこと、米と麦とか、麦と野菜みたいな。それは人間の人生でも同じことをセカンドライフでやるのか、全く新しいことやるのかっていうことがあるんじゃないかということです。そして、WillとCanというのは、やりたいことをできるっていうことを、もう一度整理してはどうかということでございます。

 そして、これからどうしたいかっていうことは、この三つのキーワードですね。続けることと、深めることと、広めることでございます。続けるというのは、せっかくなので、こういった高齢社会について、世界各国で考えるという場を、どんどん続けていきたいというふうに思っています。深めるというのは、今日出てきたいい意見、もっともっと掘り下げて議論したいということです。広めるっていうのは、ここを、この場所だけじゃなくて、より多くの地域でやりたい。それはアメリカでやってもいいし、ドイツでもやってもいいし、中国でやってもいいということです。

 で、私の夢は、東京で高齢社会フォーラムを国際会議にするということですね。今、経済の国際会議はダボスで行われていて、経済のことを知りたければダボスに行けと言われてます。それを高齢社会のことを知りたければ、東京に行けと、世界中の人々が東京に集まるような、わくわくするような立て付けにしたいと思っています。

第2分科会の写真

 最後のキーワードは、一歩踏み出す勇気ということだと思うんです。これは、1人がやっても難しいと思いますけども、きょうここに集まったような、志の高いかたがたが一歩踏み出せば、それは日本にとっても、世界各国にとっても、大きな一歩になるんだというふうに思います。

 今日ですね、ここでの報告、パネリストの報告が、皆さんの新しい気付きや、これから一歩踏み出すきっかけになれば、モデレーターとして、これほどうれしいことはありません。どうも、きょうはありがとうございました。あらためて、パネリストの皆さまに大きな拍手をお願いいたします。じゃ、こちらのほうで、第2分科会を終了します。もし、名刺交換とかご希望の場合は、急いでどうぞ。そしてお帰りは、気を付けてお帰りください。