峰松 直茂さん
~しめ縄づくりで地域おこし、総合学習に貢献~

名前(年齢) みねまつ なおしげ
峰松 直茂さん(82歳)
地域 佐賀県武雄市
活動概要 武雄市橘町に伝わるしめ縄づくりを、12年にわたり地元小学生に総合学習の時間を使って指導し地域文化を伝承してきた。熟練した老人クラブ会員の協力も得て指導し、郷土を愛する子どもの心を育てる一助となっている。
表章の類型 過去に培った知識や経験をいかして、それを高齢期の生活で社会に還元し活躍している事例
キーワード しめ縄づくり/地域文化伝承/世代間交流

(注)年齢は、平成25年4月1日時点

活動のきっかけ

総合学習の時間にしめ縄の指導をする峰松さん

しめ縄を地区の特産品として商品化しよう

 武雄市は、肥沃な武雄盆地に位置し、奈良時代以前から稲作が行われた穀倉地帯です。この地で農業を専業としていた峰松さんは、昭和30年頃(当時24歳)から、稲わらを使った米俵、蓆(むしろ)、藁縄などの生産を副業としていました。一部の地域では、しめ縄や草履、草鞋(わらじ)なども自家用として作っていました。
 しかし、時代の移り変わりと共に、米俵や蓆は使われなくなくなりました。そこで峰松さんは、伝統的なしめ縄を復興させ、さらに改良を加えて地区の特産物として商品化しようと思い立ちました。

活動内容や現在の活動状況

出来上がったしめ縄を峰松さんに見てもらう子どもたち


完成したしめ縄と老人クラブの皆さんと一緒に
(写真前列右から3人目が峰松さん)

総合学習を通して町の歴史も理解する

 峰松さんは、しめ縄を家庭用に作っていましたが、昭和30年代後半頃(当時29歳)から自家用車ブームが興り、車飾り用として出荷したところ、ちょっとした小遣い稼ぎにもなり、好評だったので車飾り用に商品化しました。今日では、車飾り、門飾りしめ縄、神棚飾りとして地域の特産品となっています。峰松さんは地域興しの功労者といえます。
 地元橘小学校では、「町を愛する子ども、郷土愛に満ちた子を育てる」ことを教育目標の一つに掲げています。平成元年に「勤労生産学習の研究」を推進する学校に指定され、農村(水田耕作)の特性を取り入れた総合学習に取り組むことになりました。
 平成13年度からは、5年生を対象にした総合学習の時間に「田んぼの学校」として、稲作をモミ蒔きから収穫までを体験させています。この学習の過程で、水害常襲地として知られる武雄盆地を流れる六角川の水利と、町の歴史なども学習することに発展しました。さらに、稲作にかかわる副産物である藁工品(米俵、蓆、藁縄など)の生産が盛んであったこと、また、草履や草鞋、しめ縄も一部の地域で生産されていたことにまで学習内容は発展しました。
 峰松さんは、平成13年(70歳)から子どもたちから質問を受ける機会がしばしばあり、小学校でこのような学習が行われていることを改めて知りました。この出会いがきっかけとなり、自ら商品化したしめ縄づくりの経験をいかして、体験学習の指導を買って出ることにしました。その指導が好評で今日まで12年間続いています。

ポイント、工夫している点

郷土を愛する子どもを育てよう

 しめ縄づくりの基本は、稲わらを左よりで綯(な)わなければなりません。また、綯う時の力の入れ方にも工夫が必要です。この技術は大人でも難しいといわれ、熟練した老人クラブ会員の協力を得て、指導の手助けを受けながら行われています。峰松さんの指導を受け、また、老人クラブ有志の協力のもとに実施されるしめ縄づくりは、郷土を愛する子どもを育てる一助となっています。そして、老人クラブの協力は、学校と地域の連携にも貢献しています。橘町の5年生の家庭には、家々にミニしめ縄が飾られ、のどかな町の正月を告げる風物詩となっています。

子どもたちに囲まれて指導する峰松さん

 〔本人インタビュー〕
 あっという間に12年が経ってしまいました。子どもたちに、しめ縄を作り、飾る意味を作りながら教えるようにしています。お正月は特別な意味で、神様に向けて左側を神聖と昔からいわれていたから左よりに綯うのだよと教えています。
 毎年、総合学習の授業に「田んぼの学校」が取り入れられる間は、指導を続けていこうと思っています。子どもたちの熱心に取り組む姿を見ることができて楽しいひと時を過ごすことができます。