黒崎 啓さん
~住みやすいまちづくりへの参加と戦争遺跡を守る語り部~

名前(年齢) くろさき ひろ
黒崎 啓さん(77歳)
地域 東京都府中市
活動概要 消費者問題、環境問題をテーマに住みよいまちづくりに取り組むために地域で「生活会議」を立ち上げた。また、地域の高齢者がより前向きな生活ができるようにと「エンディングノート」を作成し、普及にも努めている。
表章の類型 地域社会の中で、地域住民のリーダーやコーディネーター的な役割を発揮し生き生きと生活している事例
キーワード 資源回収/公園清掃/マイバッグ運動/エンディングノート/語り部

(注)年齢は、平成25年4月1日時点

活動のきっかけ

料理教室の様子(一番左が黒崎さん)

消費者問題・環境問題への関心

 41歳(昭和51年)の頃、「もったいない」精神を消費者に広めることの必要性を痛感していた時期に、行政主体で生活学校を設立する動きが始まりました。そこで府中市西部生活学校に入校し、その後、55歳(平成2年)で勤務先を退職したのを機に、自ら「サークル穂波生活会議」を設立しました。現在は生活学校で学んだことを基本として、方向性を共にする仲間と住みよいまちするために、消費者問題、環境問題等に取り組んでいます。

活動内容や現在の活動状況

資源回収の様子(写真左が黒崎さん)

住みよいまちづくりへの参加

 「サークル穂波生活会議」の代表に就任以来、「地域のことは地域で守る」を合言葉に、<1>定期的な資源回収やリサイクル運動、<2>色々な行事に使用されている「花の公園」の定期的な清掃、<3>生活学校設立当初から環境問題として取り組んでいるマイバッグ運動、<4>定期的に開催される料理教室の活動参加、<5>東京のあすを創る協会行事への参加、<6>子育て支援の一環として西府の森保育園支援(食育の時間の園児のサポート)、<7>地域自治会活動への協力、<8>美術鑑賞会、<9>誕生会、<10>高齢者支援の一環として高齢者福祉施設でのボランティア活動などを実践しています。「サークル穂波生活学校会議」の代表として率先して、地域を住みやすい町にするためのさまざまな活動を展開し、メンバーのよき手本となっています。
 また、一人暮らしの会員が病死した際、葬儀に故人のことを知らない息子さんの会社関係者ばかりが参列したことに疑問を抱いたことをきっかけに、新しい活動として、会員の高齢化を考慮し、エンディングノートを作成し、その普及にも努めています。

ポイント、工夫している点

明るく前向きな生活を送る

 エンディングノートは手作りで、表紙のタイトルは、「エンディングノート 旅立ちの日のために」(A4判、8ページ、参考資料付き)とし、1,000部作成しました。平成6年から学習会なども開催し、エンディングノート活用の普及に努めています。その結果、会員が自らの状況をきちんと把握し、より明るく前向きな生活が送れるようになったとの声も聞かれるようになりました。「元気な時から最期の旅立ちのスタイルを考えることは、今をどう生きるかにつながります。そういう意味でエンディングノートは、遺書を書き始めて人生に前向きになっている自分に気付くことができます。また、気軽に書いて考えが変われば書き直せば良いし、家族と話し合うきっかけにもなります。」という森崎さんのお言葉には、地域社会のための活動に生きがいを持って前向きに生活しつつ、自分自身を改めて見直し、高齢者としてそれぞれがさらによりよい毎日を送ることができるように、という強い願いが感じられます。

その他の活動

掩体壕について説明する黒崎さん

戦争の歴史を伝える証人

 黒崎さんは地域活動で「調布飛行場の掩体壕(えんたいごう)を保存する会」にも所属し、戦争体験者が少なくなる中で、悲惨な戦争の歴史を伝える貴重な証人の役割を果たしています。
 掩体壕は調布飛行場周辺に60基以上ありましたが、宅地開発や都市計画道路の開通により2基しか残っていません。府中市は平成7年に平和都市宣言20周年を記念する事業として白糸台掩体壕を市の文化財として保存することにし、これを機に「調布飛行場の掩体壕を保存する会」が発足しました。掩体壕は、空襲から飛行機を隠し守るために、戦争末期の昭和19年、本土決戦に備えて造られました。身近にある戦争遺跡に目を向けようと平和の礎展が開催され、戦争遺跡は当時を偲ぶ語り部の役割を果たします。黒崎さんは、毎年開催される特別公開日に歴史や掩体壕の解説を行っています。

 〔本人インタビュー〕
 平成24年、生活会議の代表を辞して一会員として生活会議の運営をサポートしています。高齢化に伴い、思うように活動に参加することができない会員もいます。「できるときに、できる人がやればいい」をモットーに、互いに支え合い、学び合える仲間の輪を大切にしようとしています。これからも、地域の環境改善、保育園のサポート、老人施設のボランティアなどの活動を進め、これらの活動が、地域に根を下ろしてこそ、自分たちの住みやすい町を形成することができる一助になるのだとの信念を抱いて活動を継続していくことを望んでいます。