清野 吉巳さん
~次世代へ地域文化を伝えるボランティア活動~

名前(年齢) せいの よしみ
清野 吉巳さん(80歳)
地域 福島県福島市
活動概要 昔話に興味を持つ仲間と平成13年に「ふくしま民話茶屋の会」を立ち上げ、地元の幼稚園や保育園で定期的に昔話を披露している。また、自分の畑を開放し、子どもたちに季節の野菜栽培体験などを実施している。
表章の類型 壮年期において達成した地位や体面などにとらわれることなく、高齢期を新しい価値観で生き生きと生活している事例
キーワード 民話の語り部/農業体験/世代間交流

(注)年齢は、平成25年4月1日時点

活動のきっかけ

幼稚園児に昔話を語る光景

心癒される園児の声に励まされて

 平成3年に退職し家業の農業に従事しているとき、築70年の自宅の古民家で休んでいる間も、農作業中でも自宅近くにある保育園や幼稚園、小学校から聞こえてくる園児や児童の元気な声に身も心も和み、園児や児童に直接交流する機会があったら楽しいだろうなと思ったことが活動の原点になっています。
 ある日、近くの幼稚園児が散歩中に清野さんの自宅前の道路で転倒し、奥様がかすり傷の手当てをしていたところ、幼稚園の先生が「誰かサツマイモの栽培を教えてくれる人はいませんかね」と尋ね、「それなら家の父ちゃんなら教えられるよ」と答えたことが、園児たちと直接交流する機会の実現につながりました。

活動内容や現在の活動状況

老人クラブと幼稚園児の餅つき会の様子


「ひまわり王国」迷路の説明を聞く園児たち

念願の直接交流できる機会の実現

 元農業指導員であった経験をいかし、自宅裏の畑にサツマイモの苗を作ることから始め、園児とともに苗植え、収穫を体験し、そしてサツマイモ料理を食する体験を援助しました。サツマイモにとどまらず、サトイモやジャガイモを植え付けたり、枝豆の種を播いたりと年間を通した野菜づくり体験へと発展していきました。清野さんは、この体験を通して、農業の楽しさと大切さを学んで欲しいと願っています。
 幼稚園や小学校から花壇の花の栽培について相談を受けることもあります。平成12年に幼稚園の庭にひまわりの種を播いたのをきっかけに、自宅近くの休耕田10アールを利用して「ひまわり王国」を作りました。7月に播いた種は、夏休み明けに子どもたちの背丈を超える大きさに育ち、9月中旬に一斉に花を咲かせた迷路をはしゃぎながら伸び伸びと走り回る子どもたちの姿を見て、清野さんの苦労が報われるのです。
 平成13年に昔話に興味を持つ仲間数人と「ふくしま民話茶屋の会」を立ち上げました。民話を収集するために県内にとどまらず現地へ足を運び、他団体とも交流しながら民話を集め、語り部としての研究会にも参加して技術を磨きました。週1回の福島市の複合施設「コラッセふくしま」内での活動に加え、地域の幼稚園、保育園、地元の学習センターその他老人会関係の行事など幅広く活動、民話を披露しています。また、平成23年の東日本大震災直後も避難住民の集まる体育館を訪問し、民話を披露し子どもたちの暫しの憩の場となるよう活動したり、仮設住宅での活動も継続して行っています。清野さんが昔話を語ることに力を注いでいる理由は、民話に込められた人間の生き様や、民話を方言で語ることが無形の文化財の保存活動でもあるからです。
 老人クラブの仲間と保育園、幼稚園、小学校で、もちつき、凧揚げ、コマまわし、折り紙など日本文化に限定し、その伝承活動も行っています。

ポイント、工夫している点

世代間交流で地域文化の伝承

 地域の習慣や行事、文化を後世に伝えようと農業体験の指導者、昔話の語り部として、また世代間交流を通して伝承する活動をしています。昔話の語り部では、囲炉裏が切られ、かつて養蚕が行われた築70年の自宅の古民家に園児を呼び寄せ、そこを舞台に設えて昔話を語ることもしばしばあります。顔見知りになった園児や児童は清野さんのことを、親しみを込めて「よしみちゃん」との愛称で呼んでいます。

小学生にコマまわしを指導する清野さん

 〔本人インタビュー〕
 昔話は文字にするべきではなく、親から子へ、先祖から子孫へ語り継いでこそ昔話といえます。子どもたちは昔話を聞いて頭の中で自由に姿や表情を思い描くことができるのです。手塚治虫さんは、「昔話は全ての根源である」と語っています。それ故、昔話を語って聞かせようとしています。
 東日本大震災の影響で「ひまわり王国」は2年間中断していました。平成25年から再開することができます。これまで実施してきた活動を続けること、特に、世代間交流を地域の人たちと一緒に進めたいと考えています。