第3節 前例のない高齢社会に向けた対策・取組の方向性
○ 我が国は、今後、高齢化の一層の進行が見込まれ、50年後の2055年には40%に達すると推計され、全人口の5人に2人が高齢者という前例のない高齢社会が現出することとなる。
○ 我が国の高齢者には働く意欲がありながら就労できていない者がまだまだ存在する。また、今後の人口減少時代に必要な労働力を維持・確保していくためには、意欲のある高齢者を就労可能とするような環境づくりが必要であり、それが高齢者本人の意欲に応えていくことにもつながる。
  また、社会参加についても意欲がありながら、情報やきっかけがないばかりに実際の活動につながっていないケースも多い。
○ 戦後平均寿命は大きく延伸し、2005年には男性78.56年、女性85.52年となり、今後も延伸を続けると予測されている。人生80年時代が現実のものになり、今後も寿命が延びようとしている時代に65歳は引退する年齢には早すぎ、長すぎる「余生」をすごすことになりかねない。
○ 3世代同居が減少し、核家族化が進行したことなどにより、生活の基盤であり、高齢者を支えてきた家族の機能は低下してきた。
  また、従来の地域が担ってきた機能は低下し、高齢者が地域で孤立することで、高齢者の孤立死などが問題として取り上げられている。
○ 家族の支えは基本ではあるが、今後、家族の機能が低下し、高齢単身世帯や高齢者のみ世帯が増加していくことも予想される。今まで家族が高齢者を支えてきた機能も変化してきた。
  また、もう一つ高齢者の支え手として期待される地域についても、現在そのつながりは希薄なものとなっている。
○ 経済的にも生活時間的にも苦労している子育て世代や将来が不安な若年世代に対する支えの必要性が指摘されている。少なくとも高齢者には時間に余裕がある人が多い。その時間を家族や地域という場で活用して、子育て世代や若年世代を支える側に回ることは十分可能。
○ バリアフリー施策や犯罪被害者対策を講じてきたこともあり、高齢者が安心して活動できる環境も整ってきている。
  しかしながら、地域で孤立した高齢者を被害者とする犯罪や高齢者を被害者とする消費者トラブルは後を絶たず、その防止が急務である。
○ 健康で長生きするためには、若い頃から健康に留意し、健康づくりに励み、高齢期になっても病気や要介護状態にならないための予防に取り組むことが必要である。しかし、そのための備えが十分自覚されていない状況にある。
○ 高齢期に生きがいを持って生活するためには、若い時期からの準備、備えが必要であるが、現実には若い時期には仕事や育児などの家事に時間を取られて、自分の高齢期への備えが十分にできているとは言い難い状況にある。
○ 前例のない高齢社会を活力あり安心できるものにしていくための対策と取組の方向性として、以下の事項があげられる。

(1)「65歳」=「高齢者」=「支えられる人」という固定観念を捨てること
 高齢者は、総じてみれば元気で就労や社会参加に意欲をもった人たちである。今後は、「高齢者は高齢社会を支えることが可能な貴重なマンパワー」と位置付け、国民の中にそういった意識を醸成していくことが求められる。

(2)高齢者の意欲と能力を職場で活用することで「世代を通じたワークライフバランス」を実現するための取組
 企業については、まず高齢者は意欲・体力が低下して戦力として使えないという先入観を変えていくこことが求められ、労働者には、若い時期から高齢期の就労が可能となるように準備に取り組むことが求められる。また、有償ボランティアのような生きがいを重視する就労形態も重要である。
 さらに、ワークライフバランスの実現は高齢者にとっても考えるべき問題であり、より多くの就業を希望する高齢者にとっての「ワークライフバランスの実現」は、より「ワーク」に向けられる時間を増やす方向で取り組まれることが必要。

(3)高齢者がちょっとした手助けを行うことで地域のきずなを再生するための環境づくり
 近年、高齢者が自分でするのは少し辛い日常のちょっとした手助けをしてもらいたいときに依頼できるシステムづくりの取組が多くみられるようになっている。こうした「ちょっとした手助け」に意欲のある高齢者が一歩踏み出すことは、地域で暮らす高齢者にとって大きな安心の基盤になることが期待される。

(4)高齢期をできる限り元気で活力あるものとするための準備
 高齢期を元気で健康に生活するためには、もとより若い時期からの健康づくりと高齢期に入ってからの継続的な健康づくり、介護予防が重要である。
 高齢期を活力あるものとしていくためには、若い時期から準備しておくことが有効であるものが少なくない。例えば50代になったら自分の「高齢期についての人生プラン」を考えてみるのも有益ではないか。また、こうしたプランづくりに取り組むためには、自分の人生全体で、若い時期から高齢期まで全体を見渡しての「ワークライフバランス」を考えることも必要。

(5)高齢者が安心して活動し生活できるまちづくり
 今後、高齢者とりわけ独居高齢者や夫婦のみ世帯の高齢者の増加が見込まれる中で、高齢者を犯罪等から守るためには、高齢者を地域で孤立させないための日常の周囲とのコミュニケーションが重要であり、地域社会の積極的な役割が期待される。
○ 今後の前例のない高齢社会を活力あり安心できるものとしていくためには、行政や国民一人一人が、次のような方向性で政策や取組を進めていくことが必要であることを提言する。
 [1] 固定観念を見直し、「高齢者は高齢社会を支えることが可能な貴重なマンパワー」であると意識を転換する
 [2] 労使双方の努力で、「世代を通じたワークライフバランスの実現」を可能にし、働く意欲のある高齢者の「ワーク」に向けられる時間を増やす
 [3] 高齢者の「ライフ」を充実させるため、高齢者が地域参加するきっかけをつくることが重要であり、市町村等の「地域の仲人」的な役割に期待する
 [4] 高齢者が「ちょっとした手助け」に一歩踏み出すことが高齢者の安心の基盤になることを考える、とりわけ、地域社会の力で高齢者を地域で孤立させないことの必要性を認識する
 [5] 自分の健康づくりは、「自己責任」という意識をもつ
 [6] 50代になったら「高齢期の人生プラン」を考えてみる
 [7] 高齢者が安心し活動しやすいまちづくりの重要性を認識する
  これらの事象が実現し、今後増大していく高齢者の意欲が事前に十分に準備をして、家族や地域、職場で活用されることにより社会を支える力になれば、「前例のない高齢社会」を安心でき、活力あるものとしていくことは十分に可能である。

 

目次 前の項目に戻る     次の項目に進む