第1章 高齢化の状況(第3節 事例集)

[目次]  [前へ]  [次へ]

第3節 前例のない高齢社会に向けた対策・取組の方向性

事例集

(高齢者が地域と結びついて活動している事例)

○高齢者の生きがいづくりのために地元の観光ガイドを行っている事例(「鎌倉シルバー・ボランティアガイド協会」)

神奈川県鎌倉市は、観光ガイド不足への対応と、高齢者の能力活用と生きがいづくりのため、平成2(1990)年9月に高齢者のボランティアガイド養成のための講座を開講した。この養成講座の修了者31名が中心となり、3(1991)年4月に鎌倉の史跡や歴史など解説し、鎌倉のよさを再認識してもらうことを目的とした「鎌倉シルバー・ボランティアガイド協会」が発足した。

スタッフの数はその後徐々に増え、平成18年4月1日現在で87名(男性68名、女性19名)となっている。平均年齢は約70歳で、元教師や元営業マンなど、スタッフの前職は多彩である。

同協会では、協会主催による市内の「史跡めぐり」や、個人旅行、旅行業者が主催する団体旅行、小・中・高等学校の校外学習などのガイドを受けている。

同協会主催の「史跡めぐり」については、予約者や当日参加希望者が鎌倉駅前に集合。参加者が20人程度集まった時点で1組目が出発し、その後漸次出発していく形をとっているが、多い時は1日100人以上集まることもあるという。

コース参加料金は一人500円で、他に拝観料、交通費等は参加者の負担となる。

これまでのガイド実績は、平成17年度でガイド件数827件、派遣ガイド延べ人数1,883名、参加者数は25,074人となっている。

協会主催の「史跡めぐり」

同協会では、ガイド内容を画一的なものにしないように、ガイドのマニュアルをあえて作成しない方針を採っている。そのため、同じ観光コースをガイドするにしても、担当者によってガイドの仕方は多様なものになっている。ツアー参加者の中にはリピーターも多く、各ガイドが工夫を凝らした内容が好評を博している。

また、毎月1回、歴史や宗教、教養などをテーマに定例研修を行っている。さらに個々のスタッフも自主的にコースの下見等を行うなど、サービスの向上に熱心である。スタッフの1人は、「みんなそうやって勉強をするのが好きなのです」と話す。

また、鎌倉市内の観光スポットとなるお寺などに対しては、日頃から交流を深め、意志疎通を図ることで、相手先に迷惑をかけないよう心を砕いているとのこと。

あるスタッフは、「ガイドをするとよく歩くことになるので、健康によい」、「前もってガイドのための下調べや案内の仕方に工夫を凝らすなど、事前の準備を念入りに行ううえに、現地では相手の反応を見ながら説明するなど、頭を使う良い機会になっている」と話す。

組織としては、会長以下15名で幹事会を構成するとともに、5つの班を組織している。会員は5つの班のいずれかに所属し、班ごとに開催する会合を通じて幹事会の決定事項を伝えるとともに、会員の意向を幹事会に伝えている。こうした仕組みで組織内の風通しをよくすることに取り組んでいる。

スタッフの募集は、協会が主催するガイド養成講座において行っている。講座内容は、鎌倉市の地理、歴史、史跡、古文書等の解説及び現地実習で、講師は協会会員のみならず学者等の外部有識者を講師に招くこともある。養成講座を修了するためには、一定の出席率と数回の試験で合格点をとることが必要とされている。

ボランティアガイドの希望者は多く、スタッフ集めは概ね順調であり、スタッフの定着率も高い。

[目次]  [前へ]  [次へ]