第3章 パートナーシップ事業

I はじめに

本章においては、平成17年度「交通事故被害者支援事業」のうち、「パートナーシップ事業」について報告する。

今年度は、NPO法人長崎被害者支援センター及び(社)被害者サポートセンターあいちにおける自助グループの立ち上げ支援とともに、昨年度に自助グループ立ち上げ支援を行ったNPO法人大阪被害者支援アドボカシーセンター及び(社)秋田被害者支援センター、一昨年度に自助グループ立ち上げ支援を行ったNPO法人石川被害者サポートセンター及び(社)いばらき被害者支援センターにおける継続支援も実施した。以下、その概要を紹介する。

II 自助グループ立ち上げ支援

本年度は、自助グループ立ち上げ支援を平成17年8月から平成18年1月にかけて、NPO法人長崎被害者支援センター及び社団法人被害者サポートセンターあいちにおいて実施したが、その内容は以下のとおりである。

1.NPO法人長崎被害者支援センター

(1)事前研修会の実施

平成17年8月30日(火)15時から17時まで、長崎市市民会館研修室において、被害者支援都民センター(以下「都民センター」という。)5名(含 研修生)、NPO法人長崎被害者支援センター(以下「長崎」という。)7名が参加して行われた。

事前研修会では、自助グループを開く意義、目的、効果、立ち上げ支援の進め方についてレジュメを配布し、都民センター大久保事務局長が質疑応答を交えながら講義を行った。その後、都民センターの自助グループの活動について、実際の様子をビデオで学んだ。講義の中では、以下のとおり質疑応答が行われた。

Q.自助グループの開催時間や頻度について

A.開催時間は二時間程度を目安と考えるが、会終了後も参加遺族の緊張を和らげたりする交流の場として部屋は開放しておくものとする。開催頻度は、二週間に一度が理想とされるが、参加遺族に無理のないよう、月に1度くらいを目安にするとよい。

Q.参加者の適性

A.自助グループに参加するか否かはあくまで本人の意思によるもので、被害の内容や被害に遭ってからの時間経過、回復段階の違いについては特に問わなくてよい。しかし、自助グループに参加する前に面接を実施し、自助グループへの参加が被害からの回復に有効か否か、逆に参加したことで不適切となることも念頭に置きながら、グループへの参加の適性を見極めた上で参加してもらう必要がある。

Q.自助グループ参加者の構成について

A.家族の生命を奪われた遺族と、生命が助かった被害者本人とでは受ける衝撃が異なるため、被害者遺族と傷害事件等の被害者本人の自助グループは、必ず別々に設定する必要がある。

Q.自助グループの実際の活動内容について

(被害者は、自助グループに対して様々なイメージを持っているので、自助グループの活動の様子について説明する必要がある。)

A.自助グループは、被害者自身の大変な想いを語る場であるため、とても辛い時間を過ごすこともある。しかし、旅行など通常の活動とは違った計画を盛り込むことで、被害の回復に役立つこともある。自助グループの特色を生かし、様々なアイデアを出し合って実施してみることが大切である。

(2)特別研修の実施

平成17年8月31日(水)9時から12時まで、長崎市市民会館研修室において、都民センター5名(含研修生)、長崎7名、長崎地方検察庁被害者支援員1名、長崎県警犯罪被害者支援室から1名が参加して行われた。

特別研修では、次の3名より講義が行われた。まず、都民センター大久保事務局長から、犯罪被害者の現状と必要な支援について、レジュメを配布して講義が行われた。犯罪被害者等基本法が施行され、被害者支援が広まりつつある中で、被害者の受ける二次被害や、被害者が求める支援について再確認し、直接的支援の必要性と被害者支援における早期援助団体のメリットについて述べた。

続いて、都民センター研修生の東京地方検察庁古井検事から、刑事手続と被害者支援という標題で、刑事と民事の違い、刑事手続の流れ、刑事手続上の被害者への具体的な支援について説明があり、その後、検察との連携がなされた都民センターでの事例が紹介された。

最後に、都民センターボランティアの望月氏から、ニュージーランドにおける被害者支援ボランティア活動について、クライストチャーチでの3年間のボランティア活動経験を通して講義が行われた。クライストチャーチ被害者支援センターにおける、ボランティア採用の流れと研修プログラム、実際の支援活動について説明を行った。また、ニュージーランドでは、危機介入に重点を置き、全国で統一された支援を行うため、全国共通のプログラムを組んでボランティア研修を開催している現状が報告された。

(3)第1回自助グループの実施

平成17年9月17日(土)14時から16時まで、男女共同参画推進センター(アルカス佐世保内)研修室において、長崎自助グループメンバー3名、都民センター5名(含研修生)、長崎3名が参加して行われた。

まず、ファシリテーターが自己紹介を行い、事前に準備されたレジュメを読み上げる形で、自助グループの目的と原則について説明した。続いて、参加者が自己紹介及び被害概要、参加の動機等について話をした後、以下のことが語られた。

(1)現行の法制度と加害者について

加害者の人権保護に重点が置かれ、被害者の人権が無視されている現行の法律に対する怒りや、満期と仮釈放、無期懲役の是非など加害者の刑期や矯正教育に関して意見が交わされた。また、一切の謝罪もない加害者への怒りや、犯罪被害者遺族になってはじめて知る社会制度の不備に対して、被害者遺族として社会に訴えかけていく必要性が語られた。

(2)亡くなった家族に対する想いと自助グループの意義

大切な家族を亡くした悲しみや、亡くなった家族への変わることのない想いが、繰り返し語られた。被害者遺族は、周囲からの理解が得られず社会から孤立してしまうが、自助グループでは自分の気持ちを安心して繰り返し語ることができ、その気持ちを受け止めて もらえたという体験が述べられた。同じ体験を持つ人々との出会いを通して、共通の悩みや想いを分かち合い、「自分は一人ではない」と感じることができたと感想が語られた。

(4)フォローアップの実施

第1回自助グループ後、同研修室において17時30分から19時まで、都民センター5名(含研修生)、長崎3名が参加して行われた。

今回の自助グループの目的は、遺族の方々が自助グループを「居場所」と感じられるよう、実際の様子を知ってもらうことだったと、ファシリテーターが振り返った。都民センターで自助グループ活動をしているメンバーが参加したことにより、自助グループがどのようなものか、イメージがつきやすかったのではないかと感想が述べられた。続いて、以下のような反省点を含めた意見交換が行われた。

(1)自己紹介の順番と内容について

今回、長崎のメンバーから自己紹介が行われたが、被害概要や参加の動機について、どのように、又どの程度話したらよいのか戸惑いが見られたことを受けて、都民センターのメンバーから自己紹介を行う方が、初対面での抵抗を減らし、緊張を和らげることができたのではないかと反省点が挙げられた。また、今後の自助グループ活動での自己紹介では、その都度被害概要を語る必要があるのかという疑問が出されたが、被害体験について繰り返し語ることは、受けた被害を受け止め、乗り越えるための訓練の場にもなるため必要であることが説明された。

(2)座席位置について

今回は、長崎のメンバー3名が横に並んだため、メンバー同士の交流がしづらかったのではないかという意見が出された。また、座席位置によっては、職員からメンバーの様子が見にくかったという反省もあげられた。メンバー対職員という座席位置にならないよう考慮しながら、メンバー同士が向かい合って話ができるよう留意することを確認した。

(3)自助グループの終わり方について

今回、初めはなかなか話せなかったメンバーが、終わりに近づくにつれて話ができるようになり、結果的にグループ活動の最後があいまいになってしまったという反省があげられた。時間のけじめを持ってもらうためにも、終了時刻が近づいたらそのことをメンバーに告げ、一度グループ活動を終了させることが必要であると確認した。

(4)開催場所について

今回の自助グループは佐世保で開催されたが、今後支援センターと自助グループが一体となって運営していくためにも、支援センター所在地である長崎市内で行うことが望ましいのではないかという意見が出された。参加メンバーにとっては、生活圏から少し離れて自助グループに参加することも気分転換になるという助言もあり、今後検討していくことが話された。

(5)第2回自助グループの実施

平成17年11月5日(土)14時から16時まで、男女共同参画推進センター(アルカス佐世保内)研修室において、長崎自助グループメンバー2名、都民センター4名、長崎3名が参加して行われた。

まず、ファシリテーターが自己紹介を行い、事前に準備されたレジュメを読み上げる形で、自助グループの目的と原則について説明した。続いて、参加者が自己紹介及び被害概要、参加の動機等について話をした。

今回は、ファシリテーターが提示した「支援センターに係わるようになったきっかけ」というテーマに終始重点が置かれ、ファシリテーターのリードでグループ活動が進み、以下のようなことが語られた。

(1)加害者に求めること

判決を受ける前と後では一変する加害者の態度や言動に対する落胆と憤りが語られた。また、加害者の家族からは謝罪どころかさらに深く傷つけられるような対応を受けるという実情も語られた。加害者本人及びその家族は、事実から逃げずに向き合うべきであり、責任能力の問えない加害者ならば、加害者の親にも責任義務を問える制度を望む声もあった。

(2)民事裁判について

たとえ民事裁判に勝訴したとしても、大切な家族を失った悲しみが消えることは無く、亡くなった家族の命を金銭で計られることへの抵抗感や、虚脱感に苛まれる被害者遺族の心情が語られた。また、民事裁判に対する周囲の人間の無理解によって、多くの二次被害を受けることも話された。民事裁判を通して、被害者遺族として亡くなった家族のために精一杯のことをやれたという達成感につながることもあるが、大切な家族を亡くした大きな衝撃や深い悲しみによって、民事裁判に向かう気力や体力をも奪われる被害者遺族の姿もあった。

(3)亡くなった家族への想いと被害体験の回復について

前回に続いて、亡くなった家族への深い想いが繰り返し語られた。深い悲しみとともに、どうしようもない悔しさ、やり場の無い気持ちを吐露する姿もあったが、遺された家族それぞれが納得できる方法を模索する様子が語られ、家族の中でも一人ひとり被害体験の回復の方法や過程が異なることが話された。

(6)フォローアップの実施

第2回自助グループ終了後、同研修室において16時20分から18時10分まで、都民センター4名、長崎3名が参加して行われた。参加者が一人ずつ感想を述べる中から、今回の反省点等を含めた意見交換が行われた。

(1)メンバーの様子

前回と比べ、メンバーの表情や語られる言葉から気持ちのゆとりや緊張感が軽減されている様子が感じられた。遅れてきたメンバーが居り、うまくグループに溶け込めるかどうかが心配されたが、前回の自助グループに参加したことで、同じ想いを抱えている人々の存在を体験として理解でき、自助グループに対するイメージをつかめたことが、今回の自助グループにうまくつながったのではないかと振り返った。

また、自分の想いを伝えることに不安を抱いているために、前回はほとんど話すことがなかったメンバーも、今回は日頃感じていることを語る場面があり、自助グループを通してメンバーの変化が確認された。

(2)自助グループの進め方と準備について

参加者の自己紹介を一通り終えた後に話が途切れたことについては、ファシリテーターがあせって不自然に介入することなく、様子を見ながらグループ自体の流れにまかせて間をとることが大切であると話し合われた。

さらに、自助グループ活動において、ファシリテーターは話題提供をするのではなく、メンバーが主体的に語り、メンバー同士の交流が活発に行われるよう視点を置くことが大切であることを確認した。

また、長崎から、参加する職員の自己紹介の必要性について質問が出され、都民センターは、自助グループの中では職員とメンバーの間に違いは無く、名札においてもメンバー、職員ともに用意するよう助言した。

(3)今後の自助グループの方針について

今後、メンバーの変化や増員によってグループの雰囲気等が変化していくことが考えられるが、長崎としての自助グループのゆるぎない指針を持って、グループを支えていくことが大切であると助言した。そのためにも、自助グループに参加するメンバーの選び方等に対する指針をセンターとして決めておき、参加の適性について面接を通して見極めていくことも重要であることが伝えられた。

また、現在はメンバーが少数であるが、メンバーの増員にとらわれることなく、被害者遺族が安心して繰り返し語れる場として変わらずに存続していくことが大切だと確認した。

(4)被害者支援における自助グループの意義について

自助グループは、被害者の孤立感を軽減し、被害からの回復に貢献するだけではなく、支援者が被害者遺族の声を聴き、支援に必要な基本的知識等を学ぶ場として貴重な時間であることを確認した。さらに、被害者と被害体験のない支援者が車の両輪のような協力関係で被害者支援の充実を図り、ひいては社会に根付かせていくために必要な場であることを伝えた。また、同じ時間を共有することで、支援センターとメンバーの信頼関係の構築につながり、メンバーと支援者の安定した距離感を保つことが被害の回復には大切であると話し合われた。

(7)支援センターに自助グループを立ち上げて
(1)当センターの概要

長崎では、1名の事務職を常勤で置き、8名の相談員スタッフで殺人・傷害・交通事故・性被害・DV・ストーカー等の電話相談を受け、相談のニーズに合わせて4名の支援員で、面接相談(時には、弁護士の先生を交えての面接相談)や被害者が必要とする関係機関などの付き添いを行っている。また、自助グループの紹介も行っている。

相談内容は、息子が集団暴行によって傷害を負わされた親からの相談や娘が強制わいせつの被害を受けた親からの相談が多い。その内容は、「刑事事件終了後は、加害者やその家族から一切連絡(謝罪)がないので、加害者家族と会って話をしたい。」、「刑が終了したら、仕返しに来るような感じがして怖い。日が経つにつれて恐怖心が高まっていく。」というものである。また、別の地方で、殺人や交通事故によって、肉親を奪われた遺族からの相談もある。相談された被害者家族が最後に必ず言葉にするのは、「被害者支援センターの存在を早く知りたかった」という言葉であった。(当センターの啓発活動の足りなさを反省させられる言葉であった。)

平成17年度の啓発活動の内容は、以下のとおりであった。

啓発活動中には、センターの活動内容やセンターの存在を知らせる必要性を言う者やリーフレットにセンターの所在地が掲載されていない(非公開となっている)ので怪しい団体と疑われることもあった。

当センターとしても、社会との繋がりを深めるためにも所在地を公開したい意向は強いが、掲載しないのは事務員が一人でセンターに居る時間が長いので、身の危険性を守るためでもある。過去に、電話相談で「面接相談をしたいので住所を教えてくれ」と強く尋ねられたことがあった。

平成16年度までは、警察官、弁護士、精神科医、臨床心理士の支援ボランティア研修を実施していたが、平成17年度からは、幅広い知識の必要性を感じると共に当センターの活動を知ってもらうために、長崎地方検察庁、婦人相談所、児童相談所など、外部講師の派遣による講座を実施している。

当センターの今後の課題は、各地域からの相談員確保(地域によって、移動する時間や交通の不便さがある)と相談員のレベルアップを目的とした養成講座の内容及び相談員の積極的な講座への参加の義務付けを検討することである。

(2)パートナーシップ事業を行おうと思った動機

自助グループ立ち上げは、長崎設立以来の目標の一つであった。しかし、実行に踏み切れなかった理由としては、以下の点が上げられる。

しかし、今回、内閣府事業において、自助グループの立ち上げを支援するということを聞き、また研修を通して上記の問題点を一つひとつ解決しながら、自助グループへの取り組み方や運営方法などあらゆる面での指導を受ける事ができるので、この事業への取り組みに一歩踏み出すことを決意した。

(副理事長:山本泰子)

(3)立ち上げ事前研修を受けて

二日間にわたる事前研修は、大変中身の濃い研修であった。歴史を振り返りながら、現状と課題そして被害者の求める支援について説明を受けたが、都民センターがこれまで積み重ねて来た努力の軌跡を改めて確認できたような気がする。

また、都民センターの紹介ビデオを見て自助グループの現実を知り、これから長崎が向かい合う現実を想像しとても緊張感を覚えた。

また、自助グループだけではなく、検事による刑事司法システムにおける被害者の地位について講義を受けたが、さまざまな立場の者がそれぞれの視点で被害者を見るという意味では、新しい発見とともに法制度上の問題も整理できたと考える。

海外での支援の紹介では、その国の文化を背景にした支援のあり方を知ることができ有益であった。日本における被害者支援もまだスタートラインに立ったばかりであり、欧米に限らずさまざまな国の体制を積極的に知ることが大切である。

(4)自助グループを立ち上げてみて

第一回目を実施したところ、予想と違ったことがいくつかあり、特に時間が全く足りなかった。数回実施した後に事前研修で教わったことがわかり始めた。頭の中だけで考えても本当に理解することができないこともあるが、それをいかにファシリテーターがまとめるかが一番難しいことだと感じた。

参加者についても、「参加するまでは悩んでいたが参加してよかった」と言われたとき自助グループの存在価値を確認できた。

会場の設営についてもきめ細かく指導を受けたので、回を重ねるごとにきちんとできたと考える。ティッシュ、ゴミ箱、時計、何気ないものにもすべて意味があり、じつに計算された緻密な配慮があるとわかり納得した。また、回が進むとともに参加者にも変化が現れた。

今後は、長崎の自助グループの方向性の検討と、長崎らしさを出すことが重要である。そして、今後一、二年は基本的なことを誰もができるということを目指し研鑽を積んでいく。他のセンターの自助グループとも連携を取りながら、長崎の自助グループをきちんと見つめながら一歩一歩前に進みたい。

(相談員:中野明人)

(6)自助グループ活動1年目の感想

長崎立ち上げ時に、第一期の電話相談員として研修を受け、以降、本業のかたわらではあるが、電話相談員として活動してきた。今春に、第6回直接的支援セミナーを受講させていただき、被害者支援センターの意義を再認識し、長崎の今後の方向性についても、改めて考えるようになった。そんな矢先に聞いたのが、自助グループ立ち上げの話だった。これまで、アルコール依存症や神経症のファシリテーターとして自助グループに関わったことはあるものの、センターの自助グループに携わるに当たり躊躇しなかったわけではなかった。犯罪被害に遭ったことのない自分が、支援センターの自助グループに役に立てるのか、大きな不安を抱いていたからである。そのような状況の中、立ち上げに先立ち、都民センターのスタッフをはじめ、自助グループのメンバーの方々に来ていただいた自助グループの実施と研修会は、私自身にとって大変有意義で、今後活動に携わる上でも心強い経験であった。知識的な講義もさることながら、ビデオ鑑賞によって大まかな雰囲気をつかむこともでき、さらには都民センター自助グループの方々の体験に基づいたアドバイスや励ましをいただけ、おおいに参考になった。

漠然とした不安ばかりが先行し、いろいろな心配が自分の中で絡み合っているような感じであったが、自助グループの実施とその研修は、センターのスタッフとしての知識・心構え・姿勢ならびに、センターに関わろうと思ったときの自分自身の動機や感情的なものを整理していくよい機会であった。

立ち上げ1年目の今年は、佐世保市で2回、長崎市で1回の自助グループを実施した。実際の自助グループ場面では、時間配分の難しさを再認識した。バランスや配分、深め方等、現在は参加者が固定しているが、今後の展開によって参加人数もさらに流動的になってくることが考えられるため、活動していく中での臨機応変な対応が必要になってくると思う。そういった時にでも、参加された方々が、“来てみて良かった”“今日も来てよかった”“久しぶりだけど行ってみようか”と思えるような、参加される方にとって確保された場所や時間、空間を提供できるグループでいたいと思う。そのためにも、グループにおけるスキルのみに限らず、場所の雰囲気・実施の在り方など、引き続きスタッフと検討していながら、より充実したグループになるよう取り組んでいきたいと考えている。

今後は、月に1回のペースで長崎市において実施していく予定である。自助グループに限らず、センターにおける今後の活動の方向性は未知数であるが、立ち上げ時から尻すぼみになるようなセンターの活動ではなく、利用者が必要を感じたときに、居場所として感じられ、利用者の状況に応じて役に立てるよう、センターのスタッフとして携わっていければと思っている。

(ファシリテーター担当:長浦由紀)

2.社団法人被害者サポートセンターあいち

(1)事前研修会の実施

平成17年10月6日(木)13時30分から15時30分まで、ウィルあいち(女性総合センター)会議室において都民センター4名、(社)被害者サポートセンターあいち(以下「あいち」という。)10名が参加して行われた。

事前研修会では、自助グループを開く意義、目的、効果、立ち上げ支援の進め方についてレジュメを配布し、都民センター大久保事務局長が講義を行った。その後、都民センターの自助グループ活動について実際の様子をビデオで学んだ。また、都民センターで自助グループに参加している被害者遺族から、実際に自助グループに参加して感じること等が語られ、最後に以下のとおり質疑応答が行われた。

Q.自助グループに係わる職員について

A.ファシリテーター、書記、サポーターとして3名がグループに参加することが望ましい。ファシリテーターはなるべく固定にして頻繁な変更は避けるべきであるが、サポーターに関しては固定する必要はなく、被害者遺族の声を聞き、支援に生かしていく支援員の学びの場として、複数の職員がかかわることも可能である。

Q.一人ひとりの時間配分と開催頻度について

A.参加者の人数によって異なるが、一人ひとりの話す時間が偏らないようファシリテーターは注意しながら、あまり話をしていない人にはファシリテーターから促すなどして、参加者全員がバランスよく話せる配慮が必要である。

自助グループの開催頻度は二週間に一度が理想とされるが、参加者に無理のないよう、月に一度、二時間くらいを目安にするとよい。また、時間通りに会を終了した後は、参加者の緊張を和らげたりする交流の場として部屋を開放しておくようにするとよい。

Q.自助グループ開催のお知らせについて

A.都民センターでは、開催の一週間前位にはがきでお知らせを出し、出欠の確認はしていない。毎月はがきを受け取ることで忘れられていないという実感を持つことができた、出欠の返事を求められないので気の赴くままに参加できるという声や、しばらく参加できずにいた被害者遺族からは、継続的に連絡を受けていたことで再度参加できるようになったという声もあるため、開催のお知らせは継続的に行っていくことが大切である。

Q.参加者が語る内容と参加者同士の交流について

A.参加者が語る内容には、被害概要や自分の家族のこと等プライバシーにかかわる事が数多くあるが、グループ内でどこまで話すかは本人が判断することである。ただし、センターから他の参加者のことについて漏らすことは一切ない。また、参加者の交流関係についても、センターが関与することはなく本人同士の自由である。

Q.自助グループの効果について

A.すべての被害者遺族が自助グループに参加することで立ち直りのきっかけを掴んだり、回復への道筋を描けるとは限らない。被害者遺族の求めるものや適した支援は一人ひとり異なるため、被害者遺族のすべてが自助グループに適しているわけではない。

Q.自助グループへの加入について

A.自助グループへの参加は、被害者遺族の希望だけでなく、面接を実施し、グループへの適正等を配慮して検討し、慎重に判断することが望ましい。

(2)特別研修の実施

平成17年10月7日(金)9時30分から11時まで、ウィルあいち(女性総合センター)会議室において都民センター4名、あいち9名が参加して行われた。

特別研修会では、まず、都民センター大久保事務局長が犯罪被害者等基本計画検討会で検討された「犯罪被害者等基本計画案(骨子案)」について資料を配布し、4つの基本方針に則って設定された5つの重点課題について解説した。続いて、都民センター佐藤総務事務局長が都民センターの組織運営についてレジュメを配布し説明した。都民センターの組織概要、活動状況、種々の組織管理等について報告した。さらに、賛助会員へ被害者支援に対する理解増進を図り、会員の募集と継続的協力を求めるための活動として、総務課が主体となって実施している活動報告会について紹介した。

(3)事前打ち合わせの実施

平成17年12月8日(木)10時から10時30分まで、あいち事務局内において、都民センター4名、あいち3名が参加して行われた。

はじめに、場所の設定やお茶菓子、配布物等の事前準備について確認した。ファシリテーターがグループ活動の冒頭で参加メンバーに伝える「自助グループの約束事」については、その内容を検討し、参加者に書面にして配布し説明するよう助言した。続いて、自助グループ活動の進め方について確認した。都民センターは、ファシリテーターの役割は、参加メンバー同士の交流が広がるような進行をすることであると伝え、グループ活動の冒頭に、自助グループの目的や意義、支援センターの役割等について参加者に説明するよう助言した。

(4)第1回自助グループの実施

平成17年12月8日(木)13時30分から15時30分まで、同事務局内において、あいち自助グループメンバー3名、都民センター4名、あいち3名が参加して行われた。

まず、ファシリテーターが自己紹介をし、都民センターから自助グループ立ち上げの目的と意義について説明した。その後、ファシリテーターがあいちの概要についてパンフレットを配布して紹介するとともに、自助グループ立ち上げに至った動機について説明した後、自助グループ活動の約束事について書面を配布し、読み上げながら確認した。続いて、参加者が自己紹介を行い、被害概要及び自助グループへの参加の動機を述べ、以下のようなことが語られた。

(1)被害者遺族が抱える感情

被害体験から年数が経つほど、大切な家族を失った実感が強くなり、悲しみが深まるという体験や、愛する家族を失った現実に向き合うことができず、加害者への怒りや深まる悲しみ等様々な感情を出し切れないまま過ごしてきた様子が語られた。一方で、被害体験から年数を経て、生きていく上での知恵を身に付けて生活するようになったという話もあった。

また、それぞれの方法で亡くなった家族への想いや存在を確かめていることも語られた。

(2)二次被害や生き方・価値観の変化について

被害によって家族や親戚との関係が悪化した体験や、親戚や友人等周囲の無理解から受ける数多くの二次被害について繰り返し語られた。外見は立ち直ったように見えても、心の中では周囲の何気ない言葉に深く傷つき、消えることの無い悲しみを常に抱えている被害者遺族の心情が述べられた。

また、大切な家族を失った衝撃によって、生き方や価値観が変わり、自己中心的な思考になったり、他人の幸せを素直に喜べない、人生の様々な場面を楽しめない等、日々の生活の中で沸く様々な感情とともに、強い自責感について繰り返し語られた。

(3)参加した感想

他の被害者遺族の話を聴くことができるだけではなく、自分の思いを話せる場を得られたことがよかった、電話相談だけではわからなかった支援センターの様子を知り、支援員の存在を実感することができてうれしかった、という感想が語られた。

今回の自助グループ活動では、メンバーが自分自身の立場や被害体験の違いについて、お互いを比較する場面が多く見られた。そこで、都民センターでは、自助グループとは、それぞれの立場や被害体験の違いを超えて、大切な家族を亡くした悲しみを共有することが目的であること、また、人によって様々な感情や考え方があることは当然なので、自分の気持ちを大切にするよう随時参加メンバーに伝えながら進められた。

(5)フォローアップの実施

自助グループ終了後、16時15分から16時45分まで、同事務局内において、都民センター4名、あいち3名が参加して行われた。

はじめに、参加者が一人ずつ反省点等を含めて感想を述べ、続いて質疑応答を交えながら本日の振り返りと今後の自助グループ活動における留意点等について都民センターから助言した。

(1)本日のグループ活動を振り返って

ファシリテーターは、参加メンバーがそれぞれ平等に話せるようタイミングを図りながら調整することが難しかったと振り返った。都民センターは、参加者の感想から、自助グループが安心して自分の想いを語れる場であるという認識を持てた様子が感じられ、第1回目の自助グループ活動の目的は達成できたのではないかと伝えた。

(2)自助グループの原則について

あいちは、メンバー同士がお互いの被害体験を比較したり、自分の考えを他のメンバーに強く主張する場面に対する介入について戸惑いを述べた。都民センターは、徐々にメンバー自身が自分の気持ちをコントロールすることができるようになるが、現在は、被害体験を比較したり、他のメンバーの話を批評しないという自助グループの原則を参加メンバーが把握できていないため、活動の中で折を見て伝えていく必要があると助言した。

(3)自助グループの目的と意義

都民センターから、自助グループ活動は、メンバーそれぞれが持つ特技等を生かした活動を取り入れることで、自分の役割を認識し、自尊心を取り戻すきっかけを掴む機会となる他、グループ活動終了前に、参加した感想を述べることで、メンバーにとってその日の自分自身を知る機会となることを伝えた。さらに、様々な考え方を持ったメンバーとの交流は、社会生活を送るための訓練の意味を持つことを再度確認した。

(4)次回の自助グループにむけて

グループ活動終了時に次の開催日を確認したが、10日から2週間位前にあらためて自助グループ開催のお知らせを送付するよう確認し、お知らせの文面には、第1回目の自助グループ活動参加に対する慰労の言葉を添えるよう都民センターから助言した。

(5)今後の方針

愛知県では、すでに殺人事件等犯罪被害者によるいくつかの自助グループが活動を展開しているため、本自助グループは、交通事故被害者遺族の自助グループとして確立しながら、支援センターと自助グループの協働関係を築いていくよう都民センターから伝えた。

フォローアップの中では、以下のとおり質疑応答が行われた。

Q.自己紹介は毎回行うべきか

A.毎回自己紹介をすることに抵抗を持つ遺族もいるが、自己紹介で被害概要、参加の動機等を述べることは、被害体験を繰り返し語ることになり、自分が受けた被害を受け止め、被害を乗り越えるための訓練の場にもなるので毎回行うほうが良い。

Q.テーマは毎回事前に決めておくべきか

A.ファシリテーターが話題を提供するのではなく、毎回の自己紹介の中で出てくる話題を取り上げて進めていくとよい。

Q.被害者支援に関わる専門家等の自助グループ活動への参加について

A.被害者遺族は、刑事司法に関する知識を求めることも多いので、検事や弁護士等を招いてグループ活動に参加してもらうこともよい。さらに、精神科医等の専門家や関係機関に対しては、被害者支援への理解を深めることも視野に入れ、被害者支援の必要性について関係者の理解を広げていくことも必要である。

Q.被害者遺族が自助グループに新しく加入する際、メンバーの了解は必要か。

A.従来から参加しているメンバーが、新たなメンバーを不安なく迎え入れることができるよう、支援センターが説明するとよい。また、支援センターは、被害者遺族に対してグループに加入する前に面接を実施し、グループ活動に参加することの適正等を判断する必要がある。

(6)意見交換会の実施

平成18年1月26日(木)14時00分から16時30分まで、あいち事務局内において、都民センター4名、あいち4名が参加して行われた。

意見交換会の内容は、以下のとおりであった。

(1)自助グループ活動の進め方

ファシリテーターから、参加者の個々の違いに対する介入の難しさについて述べられた。都民センターは、自助グループ活動の中でパーソナリティーや考え方の違いが生じるのは当然であるので、ファシリテーターは神経質にならず、バランスを保って対応することが大切であると伝えた。また、自助グループ活動のほかに個別の対応を必要とする参加者には、自助グループ活動とは別に面接等を導入してサポートしていくよう助言した。

(2)自助グループ活動のあり方

自助グループ活動は被害者遺族の被害からの回復を支えあうことが目的であるが、支援センターにおける自助グループ活動では、参加者が安心して想いを語ることのできる場を提供するために、様々なルールを定めることも必要である。単に雑談をする場ではなく、ルールを守りながら意識を持って参加することで、自助グループのグループ力を高め、個々人の回復にもつながる活動にすることが重要であることを確認した。

(3)今後の方向性について

自助グループ活動に参加する遺族は、グループ活動の中で他の遺族の話を聞いて気分が落ち込んだり、被害体験を想起して辛くなってしまうために参加を躊躇することも多く、自助グループ開催の案内を受けてもなかなか参加できないこともある。また、被害者遺族のニーズは、世の中の動向や被害からの年数等によって変化しながら長期にわたることも踏まえ、被害者遺族が自助グループに参加したいと思ったときに参加できるよう、支援センターで自助グループを存続させていることが大切である。また、被害者遺族に自助グループ開催のお知らせを定期的に伝えることで、遺族は支援センターとのつながりを意識でき、励みになることも多いため、支援センターの活動内容や、イベント等の情報と併せて継続して知らせていくと良い。

被害者や関係機関等にあいちの存在や、支援活動の内容が浸透していかない現状から、なかなか被害者の早期支援に結びつかないという問題に対しては、各警察署への地道な啓発活動やイベント開催等を実施していると報告された。都民センターは、各警察署や関係機関と連携して早期に必要な支援が行えるよう、支援センターの活動内容の充実と広報活動の必要性を確認し、日々の支援活動における直接的支援や早期支援から被害者との信頼関係を築いていくことが大切であると助言した。

(7)支援センターに自助グループを立ち上げて
(1)支援センターの現状

あいちは、平成10年2月20日、社団法人として設立され、平成16年3月26日には、犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律にもとづき、愛知県公安委員会から犯罪被害者等早期援助団体の指定を受け、以後、当センターの定款に基づく各種業務を推進している。

役職者は、会長以下19名の理事と、2名の監事が非常勤で、内1名の専務理事が事務局長を兼務して常勤である。事務局員は、いずれも女性で構成され、1名が常勤、3名が有給の非常勤である。さらに、電話相談員として無給の非常勤職員が15名となっている。

事業内容及び平成16年度の実績は、電話相談業務が616件、弁護士による法律相談が46件、臨床心理士による面接相談が55件、電子メールによる相談が108件及び直接的支援業務が30件となっているが、近年、直接的支援が増加傾向にあるほか、弁護士による法律相談がやや減少傾向にある。

平成17年度は、直接的支援要員の育成を図るため、ボランティアセミナーを開催した結果、直接的支援の必要性をボランティアの電話相談員が理解し、事務局員の直接的支援の補助的な活動に参加することが多くなった。

(2)パートナーシップ事業を実施しようと思った動機

愛知県下における交通死亡事故発生は、例年、全国ワーストのトップクラスの発生件数を示すので、事故犠牲者、家族及び遺族の中には、共通して抱く将来不安、悩み、困りごと等の多くの問題に対しサポートを必要とすることが多い。

県内には、緒あしす(殺人事件の被害者遺族)、TAV(大阪を拠点とする交通事故被害者及び遺族)及び全国交通事故遺族の会(交通事故被害者)の自助グループがそれぞれ活動中であるが、被害者の中には、地域的に遠隔である、価値観が異なる等の様々な事情を抱くことも多いことから、あいちとしての自助グループは、幅広くかつ緩やかな組織化を目標に活動を展開し、相互に価値観の共有できる場に育成する必要がある。

(3)自助グループを立ち上げ事前研修を受けた感想

自助グループ立ち上げに対する事前研修には、電話相談員及び本年のボランティアーセミナーにより採用したボランティアを参加させたところ、

等、全員が自助グループの必要性を理解し、電話相談員の枠を超えた活動への意欲を持つことができた。

あいちでは、直接的支援員の育成が遅れているため、限られた人員による支援活動が中心となっており、一部の者が勤務過剰となる傾向があったが、立ち上げ研修の効果として、電話相談員が直接的支援の参加意欲を持つことができたので、現行の直接的支援員に対し、補助的要員として参加させながら、直接的支援体制を順次拡大整備することができた。

また、立ち上げ研修は、電話相談業務への効果も期待できる。

犯罪被害者への対応については、電話相談の本来業務に対しても必要な問題として受けとめることができるようになった。

等、本来業務に対する波及的効果があった。

(4)自助グループを立ち上げた感想

自助グループの開催に当たっては、会議形式の事務的な相談会や検討会にならないよう細かな配慮が行われたが、どのように工夫をして、その環境、場を設定するかにより以後における会話の促進効果の違いを体験した。

自助グループは、犯罪被害者を特別視することなく、参加者との共通の問題意識の中で、自らの体験、悩み、苦労、喜び、期待感、安心感等を共通の問題として話し合うことにより、孤独感、喪失感、不安感等を除去しながら、社会生活への適応力の回復を目標として、将来に対する希望を持つことができたように思われる。

個人としての犯罪被害者が、家庭、職場及び地域において緩やかな中にも適応力を回復していくことにより、自尊心が回復し、平穏な生活を取り戻していくことができることも自助グループの効果であろうと思う。

また、自助グループ活動は、継続的に開催することにより、信頼関係を築くことができ、回を重ねるごとに、心の中で無意識にあった拒否反応も解けるものと考えられる。今後は、参加することの意義や効果を緩やかにでも感じることができるように、個々のメンバーを尊重し、可能な限り参加できる日程的な調整を図ることが大切である。

今回の自助グループメンバーは、初回にもかかわらず、相互理解の深度は思いのほか早く、継続開催の必要性を感じることができたと思う。

犯罪や交通事故の被害者の多くは、孤独感にさいなまれることが多く、日常的なストレス感を始め、様々な悩み、問題点などを持っている。被害に遭った後受ける共通の問題も多いため、参加する意味を体験しながら、回復していくことを自覚することができる。

(5)自助グループ活動1年目の感想

平成17年10月6日、第1回研修会の開催日が確定したことから、都民センターの支援により当面の参加者に連絡した。また、自助グループ名として仮称「あゆみの会」を名付けた。

平成17年12月8日(木)午後1時から、相談事務所において、自助グループの3名が参加したところへ、都民センターから4名の指導担当者を招き、第2回研修会を開催した。

この研修会の開催に当たっては、研修会を円滑に遂行するため、指導担当者とともに事前検討会を開催したが、あいちの担当者に対しては、基本姿勢から会議運営に必要な役割、留意事項等細部にわたる指導を受けた結果、担当者は、自信を持って研修会に臨むことができたので、成功裏に終了することができた。

今回開催した相談事務所は、今回の参加人員に比較してのスペースは狭く、やや不自由さが見られたが、今後、当センター支援員のみによる継続開催の場所としては、環境的に十分であったので、継続開催を考慮すると適地と思慮される。

各人の発言時間については、個人差もあって均等的な時間配分に至らなかった面はあるが、回を重ねることにより学習され、調整が可能と思慮される。

現在、自助グループメンバー3名により発足したが、メンバーの回復度や相互における信頼度の変化によっては、発足メンバーからの変動も予想されるので、グループ構成員の心的変化や適正人員を常に把握する必要がある。

III 継続研修

本年度は、昨年度までに自助グループ立ち上げ支援を実施した、NPO法人石川被害者サポートセンター、社団法人いばらき被害者支援センター、NPO法人大阪被害者支援アドボカシーセンター及び社団法人秋田被害者支援センターにおいて平成17年9月から平成17年12月にかけてフォローアップ研修及び継続研修を実施したが、その内容は以下のとおりである。

1.NPO法人石川被害者サポートセンター

(1)自助グループの実施

平成17年11月25日(土)14時から16時まで、NPO法人石川被害者サポートセンター(以下「石川」という。)事務局内において、石川自助グループメンバー2名、都民センター5名(含研修生1名)、石川4名が参加して行われた。

まず、自助グループの目的と原則が書かれた資料を配布し、ファシリテーターが読み上げ確認した。その後、都民センターから自己紹介を行い、続いてメンバーが被害概要及び近況を報告し、以下のことが語られた。

(1)亡くなった家族に対する想いについて

大切な家族を失った深い悲しみと、その悲しみが一生続く現実に直面する遺族の心情が語られた。また、時間の経過とともに形を変えて現れてくる亡くなった家族への様々な想いや、亡くなった子どもの友人等との関わりの中で感じる複雑な心情についても述べられた。やり場のない怒りや悲しみとともに、いつまでも亡くなった家族のことを忘れてほしくないという願い等切実な想いが繰り返し語られた。

(2)遺された兄弟(姉妹)について

子どもを亡くした遺族は、遺された子どもたちが兄弟(姉妹)を亡くした悲しみを様々な形で克服しようとしている様子について語るとともに、親は遺された子どもたちの行為や言動等を決して咎めないことが、彼らが悲しみを乗り越えていくために大切であると話した。そして、時間が経って打ち明けられた遺された子どもたちの亡くなった家族への想いや、遺された子どもたちに対する親の願いや悩み等、様々な想いが語られた。

(3)現行の法律や加害者に対する怒り

加害者の人権ばかりが守られる現行の法律や、心からの償いや謝罪も無く、犯した罪に向き合うことのない加害者の言葉や行動への怒りが語られた。刑事裁判を通して、被害者遺族の心情が全く伝わらない司法に対する悔しさや憤りも述べられた。刑期を終えて何事も無かったかのように社会生活を送る加害者への怒りとともに、裁判を経て、被害者が置き去りにされている現状や現行法制度の不備を痛感したという被害者遺族の想いが語られた。

(4)報道について

被害者のマスコミによる報道被害について語られた。被害者の心情を無視して情報を商品化する報道のあり方や、司法だけでなく報道においても加害者が守られている実情に対して憤りが述べられた。被害者の匿名報道の是非とその判断についても、被害者の意向に基づく判断が不可欠であること、さらにマスコミによる実名報道の判断に対する危惧についても述べられた。

(5)周囲の無理解と社会への怒り

近隣の住民や親戚など、周囲の人間の様々な言動による二次被害について語られた。大切な家族を奪われた悲しみは理解されず、亡くなった家族の命が軽んじられているような言動に深く傷ついたという体験も語られた。社会の理解の無さを痛感するとともに、犯罪を生む温床となっている社会に対する怒りも述べられた。

(2)フォローアップの実施

自助グループ終了後、16時30分から17時30分まで、同事務局内において都民センター5名(含研修生1名)、石川4名が参加して行われた。

まず、ファシリテーターから本日の自助グループの進め方等反省点や感想が述べられ、続いて参加者がメンバーの様子等を振り返った。さらに、自助グループのあり方など意見交換が行われた。

(1)本日の自助グループ活動を振り返って

石川は、都民センターからの参加者が多数居たため、メンバーがいつもどおりに安心して集えるかという懸念があったが、メンバーはそれぞれ安心して様々な想いを語ることができていた様子で、都民センターからの参加者が入ったことにより、いつもとは違った雰囲気の中で話すことができてよかったのではないかと意見を述べた。さらに、通常と比べて社会に対する意見や感情が多く語られたのではないかと振り返った。

(2)メンバーの変化

都民センターから、一年前と比べてメンバーの表情に柔らかさが出ていたことや、他のメンバーを気遣う様子、さらには被害体験を受け止め何か行動に移そうと変化していることが挙げられ、立ち上げから積み重ねられてきたグループの雰囲気づくりや石川と自助グループの信頼関係の構築が、メンバーの自尊心の回復に貢献していると伝えた。

(3)自助グループ活動中の留意点と開催日程の設定について

都民センターは、ファシリテーターの役割について、自助グループ開催時に、自助グループ活動へ参加したことに対する慰労の言葉を伝えること、また、終了時には、その日の自助グループ活動に参加した感想を話す時間を設け、その後、次回の自助グループの日時やその他連絡事項を伝えるよう確認した。

また、自助グループ活動の記録者は、メンバーが気兼ねなく安心して心情を語れるよう座席位置や記録の取り方について配慮するよう伝えた。

さらに、自助グループの開催日程は、参加メンバーが少数のうちはできる限り多くのメンバーが参加できる日に設定するとよいが、参加メンバーが増えてきたら、年間を通して日程を決める等、計画的に開催日を設定するよう助言した。

(4)自助グループのあり方と今後の方針

石川は、自助グループはメンバーが様々な想いを安心して繰り返し語ることができる場として、人数の増減にかかわりなく、変わらず存在していることが大切であると話した。都民センターは、石川のスタッフ全員が自助グループの目的や意義を理解し、自助グループに対する支援センターとしてのゆるぎない方針を確立するとともに、加入を希望する被害者遺族の自助グループへの適性等を見極めていくことが重要であると伝えた。

さらに、都民センターは、被害者遺族の中には、自助グループがどのような活動をしているのか等不安を抱いている人も多いので、支援センターの機関紙を配布するほか、自助グループ開催の案内に自助グループ活動の様子等の文面を寄せて送付し、支援センターや自助グループの活動を定期的に伝えていくことが必要であると助言した。また、関係機関への広報活動や、自助グループ活動に弁護士や検事等専門家を招いて、自助グループ活動について関係者の理解を深めていくことが大切であると伝えた。

また、被害者支援の方向性と今後の課題、支援に携わる者としての課題等意見交換を行い、自助グループの意義とともに被害者支援のあり方について確認した。

(3)支援センターに自助グループを立ち上げて
(1)石川の現状と動機

平成9年3月被害者支援を目的として、センターを立ち上げ9年目になりそれを機に名称も「石川被害者相談室」より「石川被害者サポートセンター」と変わり支援活動の内容も消極的な待ちの姿勢から、積極的に行動するセンターとして変化してきた。

今までの電話相談・面接相談から直接的支援を考慮した法廷付き添いサービス等を活動の中心に持っていくためにも、被害者及び遺族に対して理解を深めることが石川にとり重要であるとの話し合いがもたれ、よりよい支援をするにあたり、自助グループが被害者支援にいかに意義深い活動であること、そして必要性を各自が認識した。

話し合いの中で自助グループに対する理解度について支援活動員が発した言葉で、この活動に入る前は、事件が起こると必ず被害者と加害者がいるが、加害者のみがクローズアップされ被害者の存在が全く見えず、あまりにも世間には知らされていない被害者の存在に気づくことが出来た。

そこで、是非自助グループを立ち上げて、センターと自助グループが車の両輪として歩んでいくことを望む声が発せられ、自助グループに係わるべき人材育成への準備を始めた。平成15年パートナーシップ事業である自助グループ開設の話が持ち上がり、多くの不安を抱えながら都民センター指導のもと自助グループ立ち上げへと進んでいった。

自助グループを立ち上げるにあたり、数回定例会を開き具体案を話し合い、自助グループの必要性の確認・対応・関わり方・進め方・守秘義務・声かけ・ファシリテーターの人選・フォローアップ等センターが抱えた多くの課題に対して一つひとつ都民センターとの事前研修会で学習した。

(2)自助グループ事前研修を受けた感想

事前準備には慎重に多方面に心配りをし、特にセンターとして自助グループへの参加者とファシリテーターの人選について気を使った。

事前研修の中で都民センターから、センターが抱える疑問点等について協議し説明を受け、サポート側として自助グループの中心は常に被害者自身である事、また被害者を集めるだけでなく、グループ全体をリードする役目がファシリテーターに課せられている事などグループの保護・注意事項を含む心構えが伝えられた。

被害者支援の原点は「被害者の声」にある。その声を身近に聞きながら支援活動を行うためには、自助グループの存在は必要不可欠であるとの都民センター大久保恵美子氏の言葉が今も耳に残り忘れることは出来ない。

(3)自助グループを立ちあげた感想

被害者遺族一人一人が苦悩と向き合い現実を認識した中で、その事実を受け入れた痛みの意味やこれからの人生に対しての価値観を見い出すその過程に私達支援者は寄り添うことの大切さを感じた。

二人のファシリテーターの感想
月一回二時間、遺族の話にじっと耳を傾け真実の言葉に触れることにより、遺族の今の心情を共有することが出来る。そして、被害者及び遺族が置かれている状況がおぼろげながら見えてくる。その上で尚、遺族が体験している様々な事の中に法を含む世の中の仕組みの不備や理不尽さといった個人ではどうにもならない壁を知ることとなる。かくも多くの事を気づかせる「自助グループ」は、被害者支援の原点なのだという事を肌身で知ることとなった。
平成15年10月に第一回の集まりを開いてから、毎月会を開催するたびに、想像していたよりも、実際の場で、被害者が安心して心を開いたり、心情を話すのを感じる。個人的に被害者と会っても、ここまで心情を話す事はないし、このような「場」であるから、真実の声を聞くことができる。自助グループを立ちあげてから、センターの原点が自助グループであることに気づく事が出来たのと被害者の方にお話をしていただく機会が増え、センター自体の目指す目標がはっきりとし、いかに大切かを確認した。
(4)活動1年目の感想

支援者としていささか感心しないのだが、毎会やや緊張気味であったような自分をふりかえる。遺族のそれぞれの経過年数が違っても悲しみ・辛さの深さは測り知ることの出来ないエンドレスの苦悩の心模様に、ただひたすら傾聴あるのみの一年間であった。毎月の開催日は、前日から緊張した。開催後、反省会を開きながら、自分の態度、言葉遣いなどを振り返る。ファシリテーターとして、メンバーの皆様が平等に話せるように、何か気の利いた言葉を言わなくてはならないのではないかと緊張する場面もあった。継続研修等の機会を得て、励まされたり、気づかされたりもした。

(5)活動2年目の感想

同じ場所で開催したり、一人一人が参加しやすいように遺族との話し合いで曜日を変更したり工夫をしてみる。会の名前・代表者も決まり、一歩一歩歩んでいる事を実感する。被害者が、「犯罪被害者支援活動員の日・いしかわ大会」に積極的に参加したり、地元の講演会等にメッセージを伝えてくれるなど、自助グループの中でのゆっくりとした動きを感じた。

またそれぞれ、生活環境も変化する中で、自助グループに参加する者が日によって減ったりしている。初めの頃は参加人数にこだわりを感じていたが、この場所があることの意味を集まる者の一人一人から感じとり、言葉で語ってくれた時、人数にこだわることの無意味さを感じた。

毎月の集まりには、中心になる遺族が各自の話を平等に回したりして、ファシリテーターの至らない部分をサポートしてくれるので、ファシリテーターとしては、心の置き場所を間違わないようにして、その場に居るだけでよかった。

友人・親類・近所付き合いといった人間関係がやや濃厚なのが地方なのか、少なからず遺族にはそのような接点のある人々からの言葉に傷つく事が多い実態が語られる。どんな場合でも、程よい距離感は大事であるが、ことのほか言葉に敏感な遺族にとって無遠慮な一言が大きな二次被害へとつながる。

誰にも気兼ねせずに、心の中を思う存分吐き出せる場所が自助グループであり、遺族にとり重要な「場」であることを再確認した。

(6)活動3年目の感想

初心に返るではないが、今一度、原点に立ち戻るそんな気持ちで遺族との信頼関係を深めながら自助グループに携わっていきたいものと考える。

当初から気働きが足りなかったことを振り返り、今後も一回ずつを丁寧に取り組んでみたいと切に望んでいる。

グループの中で被害者の話が、法の整備、社会悪等の話と内容に変化を感じる。今まで社会から無視されていた被害者が、やっと自分の考えを声にして云える事の出来る社会へと変化していることに、自助グループが少しは役に立っているのかと嬉しく思う。

今後は、支援者として慣れすぎて惰性が出てきていないか反省し、あるべき姿をさらに学んでいきたい。自助グループに参加して、以前よりは身近にいる被害者に対して自然に寄り添えるようになった気持ちがする。

(7)自助グループに参加している遺族の感想
初めて、自助グループに参加した時の気持ちは、以下のとおりであった。
  • 自分の悲しみを話すことが精一杯で、他の方の話を聞くことはとてもつらく、次回の参加はできないのではと思った。
  • いろいろな事情が個々にあり思いも様々であるだろうなあと思う。不安があっての参加であった。
  • 同じような心の痛みを持つ人達に会えて話がしたかったので、参加できてうれしかった。声をかけていただき嬉しかった。
2年目の自助グループに参加したときの気持ちは、以下のとおりであった。
  • 参加当初は話すこと、聞くことが辛かったけれども、最近は穏やかな雰囲気で話が出来るようになった。この会に参加出来たことを心から感謝している。
  • 以前と比べると少し明るくなった。行きにくい事は全くない。人の前で意見を言うことが出来るようになった。
  • センターの方達がいて、自助グループに参加することに不快感はない。「公」とか「マスコミ」扱いになるとそれを見たり聞いたりする者からの「大変だね」あるいは、「苦しみの中にいるんだね」といったニュアンスの見方(反応)を受けると心が落ち込んでしまう。
3年目の自助グループに参加したときの気持ちは、以下のとおりであった。
  • あんなに参加することが、辛かった時もあったのに、今は参加することが楽しみであり、待遠しいと思うようになった。
  • もう3年が過ぎると、亡くなった子のことを話す場所がない。ここで心から亡くなった子の事を語れる。それが嬉しい。
  • 亡くなった子のことを一日も忘れたことはない。亡くなった子に会いたい時は娘によく似た観音様に会いに行く。このような事を語れる場所があることが幸せである。
(8)最後に

この3年間、都民センターの指導のもと自助グループの運営がやっと軌道にのってきた。「事件後にどんな支援があったら良かった」と思うかとの調査に対して、「話し合える場所の設定を一番望んでいる」との結果報告をみるにつけ、自助グループの必要性を痛感する。

日本の被害者支援は諸外国とは異なり、電話相談から始まったという経緯があり、被害者の「心に耳を傾ける」、「心の支えとなる」など精神面のみを重視した支援を展開していたような気が発足当時していたが、被害者と会い話を聞くだけが支援ではないと、方向性が徐々に見えてきた。

被害者・遺族が希望している支援内容は直接的支援であり、情報提供でありそして精神的な支援の中で同じような被害者・遺族と共に居たい等、これらはすべて私たち自助グループ「でんでん虫の会」の集まりの中から学び、そして支援活動員の意識のなかにも被害者支援のあり方として浸透していった。確かに心の支援も非常に大切であることは、自助グループの中ですべての遺族から感じ取れる。

自助グループには、支援をする者に対してやるべき事の優先順位は何か等、決して学問書の中にはない、真の被害者支援のあり方を学び得ることが出来ると考える。

被害者支援の流れの一環である被害者支援センターとしての自助グループを近い将来全国ネットワークの所属組織すべてが係わり、同じ支援が日本の国の中で平等に受けられる体制づくりへと進んでいくことを、自助グループを立ち上げたセンターとして希望する。

(小川雅子・八尾章子・吉田詔子)

2.社団法人いばらき被害者支援センター

(1)自助グループ実施

平成17年9月15日(木)10時から12時まで、水戸市社会福祉ボランティア会館において、いばらき自助グループメンバー3名、都民センター4名、(社)いばらき被害者支援センター(以下「いばらき」という。)3名、が参加して行われた。

まず、ファシリテーターが自己紹介をした後、続いてメンバーが被害概要及び近況報告を行い、以下のことについて語った。

(1)亡くなった家族への想い

大切な家族を亡くした虚脱感や助けられなかったという自責感、さらに、亡くなった子どもの兄弟の成長に対する複雑な心境等、かけがえのない家族を失った衝撃がもたらす遺族の戸惑いが語られた。また、亡くなった家族に対するいつまでも変わらない深い想いや、亡くなった家族の友人との交流を通して感じる、嬉しさと辛さの相反する複雑な想いについても語られた。

(2)加害者に求めること

被害者遺族は、大切な家族を失った苦しみと一生向き合っていかなければならないため、加害者にはただ刑罰を受けるだけではなく、しっかりとした謝罪と何か具体的な方法によって一生をかけて償ってほしいとの切実な想いが語られた。加害者の贖罪意識が問われる真の更正や、現行の矯正教育に対する疑問も投げかけられた。

(3)現行の法制度や刑事裁判について

メンバーからは、現行の刑事司法について、日本の法律がいかに加害者保護に重点が置かれているか、社会秩序を守るための刑事裁判のあり方等に対する憤りが語られた。加害者と比較して、被害者がいかに守られていないかということを被害者遺族になって思い知ったという声も聞かれた。

(4)民事裁判を通して感じること

民事裁判を抱えているメンバーからは、裁判における不安や悩み等が語られた。裁判の長期化や慣れない法律用語、被害者の心情が理解されにくい状況は、被害者に大変な労力と負担をかけるということについても述べられた。被害者の心情理解や法律用語に対する丁寧な説明等、弁護士に対して被害者の立場に立った対応を求める意見や、啓発活動の必要性についても語られた。民事裁判を終えたメンバーからは、裁判を通して遺された家族としてできることを精一杯行えたとの言葉も聞かれた。

(5)都民センター自助グループメンバーA氏(以下「A氏」という。)の存在

いばらき自助グループ立ち上げ初年度から関わってきたA氏は、メンバーそれぞれの回復の目標となる等グループにとって大きな存在となっている。A氏からは、自分の生活や気持ちの変化、支援センターとの関わりの大切さ等、自らの体験を踏まえた回復の過程について語られ、メンバーは心強い助言として受け止めている様子だった。

(2)フォローアップの実施

自助グループ終了後、13時50分から15時50分まで、常磐大学内いばらき事務局会議室において、都民センター4名、いばらき3名が参加して行われた。

まず、一人ずつ感想を述べ、ファシリテーターより3年目を迎えるいばらきの自助グループに対する思いや方向性等について語られた。

(1)感想の中から

A氏の被害を受けてからの長い年数を経て語られる言葉の重みは、グループにとって大きな影響を与えていることが再確認された。また、被害者遺族が、民事裁判等で大変な苦痛を伴う作業にも必死に立ち向かう姿に、被害者遺族の悲しみや亡くなった家族への深い想いをあらためて知る機会になったと語られた。

さらに、自助グループを通して、被害者遺族の心情をより深いところまで知ることができ、その他の支援の場においてもその経験を生かすことができる等、支援員にとっての自助グループの重要性も再確認された。

(2)自助グループの方向性について

いばらきからは、現在は参加メンバーも少なく、一人ひとりが存分に思いのたけを話せるグループであるが、個々のメンバーの参加の意思を尊重する形で、無理のないよう今後も根付かせていきたいと、いばらきとしての指針が確立された様子が語られた。都民センターからは、今後のメンバーの変化や増員によって、グループの雰囲気や一人が話せる時間の配分も変化していくことが考えられるが、いばらきとしての揺るがない指針や理念を持ち続けることの大切さを伝えた。さらに、グループとしての約束事を守りながら気持ちを話す場、また、多くの被害者遺族が語れる場として自助グループの必要性を伝え、自助グループの意義を確認し終了した。

(3)支援センターに自助グループを立ち上げて
(1)いばらきの現状

いばらきは、阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件などを契機に被害者支援への関心が徐々に高まってきた平成7年に、「水戸被害者援助センター」として設立され、当初より危機介入などの直接的支援を含んだ総合的な被害者支援を目指してきた。

その後、平成13年に「水戸被害者援助センター」を発展的に解散し、社団法人「いばらき被害者支援センター」として新たなスタートをした。翌14年12月9日には、「犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律」に基づいて茨城県公安委員会から「犯罪被害者等早期援助団体」の指定を受け、以後、直接的支援を中心とした支援活動をより充実させている。以下が、いばらきの現在の支援状況である。

電話相談
殺人、暴行傷害、性被害等の相談が年々増加している。交通事故(死亡事故を含む)の相談も大変多く、大切な人を失った遺族の思いや、被害に遭われた本人の辛さ、困難さは、はかり知れないものがある。電話相談の中から面接や法廷付き添いなどの直接的支援に移行するケースも少なくない。
面接相談
カウンセリングによる心のケアという面接ではなく、突然の被害にあってどうしてよいかわからないという被害者と会って、どのような支援が必要かをともに考えていく面接がほとんどである。必要に応じて弁護士や精神科医などの専門家との面接を設定することもある。
直接的支援
現在、大変増えている支援である。その大半は、法廷関連の支援であり、裁判傍聴の付き添い、傍聴席の確保、代理傍聴、証人として出廷する際の付き添い、検察庁への付き添い、意見陳述の資料提供、マスコミ対応などを行っている。
自助グループ支援
内閣府による交通事故被害者支援事業の一環として15年度に立ち上げた交通事故遺族が対象の自助グループを月1回、開催している。
また、総合的な支援を行う支援活動員を養成するために「被害者支援活動員養成講座」を開講している。被害者支援に関する基礎知識を学ぶ初級編から始まり、中級編、上級編へと進み2年間のすべての課程を修了して審査に合格した者が、支援活動員として認定される。支援活動員となった者は、「犯罪被害者等早期援助団体」における「犯罪被害者直接支援員」となることができる。
(2)パートナーシップ事業を行おうと思った動機

いばらきでは、設立当初から支援の一つとして自助グループを立ち上げることを目標に掲げてきた。また、日頃の電話相談の中で、時おり自助グループについての問い合わせや要望があり、その都度、他団体を紹介するなどの対応をしてきた。全国にあるいくつかの自助グループの存在を通してその意義や重要性を認識していたが、立ち上げ方、その後の具体的な運営方法などが分からずなかなか踏み出せずにいた。

特に、立ち上げについては、いばらき主導ではなく、被害者の方からの要望があってから立ち上げるもの、そしてリーダーとなる方がいなければできないものと思っていた。それまでの経験から交通事故遺族からのニーズを感じていたので、中心になる方がいたら、交通事故遺族を対象とした自助グループを立ち上げたいといういばらき内での共通認識をもっていた。

そのような足踏み状態を続けてきたなか、内閣府による立ち上げ支援事業があるということ、そしてすでに実践経験の豊かな都民センターから指導をいただけるとの話があり、ぜひ、これをきっかけに交通事故遺族を対象とした自助グループ支援の第一歩を踏み出したいと考えた。

また、交通事故によって大切な人を失った遺族は、その困難さの中で社会に対する信頼感を失っている場合も多いので、内閣府が、このような支援事業を行うということにより、社会から見放されてはいないという信頼感を取り戻すきっかけの一つになるのではないかという期待もあった。

(3)自助グループ立ち上げ事前研修を受けた感想

平成15年10月21日に常磐大学に於いて、大久保恵美子事務局長を中心とする都民センターの指導による事前研修会を開催した。自助グループの担当者3名をすでに選んではいたが、センターの重要な支援の一つとしてきちんとした共通認識をもつことが大切と考え、支援活動員全員を対象とした研修会を行うことにした。そのことは、担当者の都合が悪い時には、安心して代わりのスタッフを出すことができるなど、その後の運営にも十分生かされている。

まず、大久保事務局長から被害者遺族が抱える精神的な問題やさまざまな二次被害について学ぶとともに、心の傷からの回復の過程には遺族共通のものがあり、安心して自分のことを話せる場、何を話しても非難されない場が必要とされる、それが自助グループを開催することの意義であることを学んだ。

また、研修会には都民センターの自助グループのメンバーである遺族の参加があり、その方が体験を通して感じたことを話したことが、自助グループに対する我々の思いをより確実なものにしてくれた。参加することによって孤立感がなくなっていくこと、年月の経ったメンバーの話を聞くことによって将来の自分に希望を持てるかもしれないということ、自分の経験が、新しいメンバーの役に立てるかもしれないということ、心情を分かり合えるのは遺族のみという狭い考えから、自助グループに参加していろいろな人と関わることによってそうでもないことに気づくことなど、自助グループの目的や効果を理解することができた。

さらに、実際の進め方を具体的に学んだことによりイメージをつかむことができたことは、我々をさらに安心させた。花の飾り方などの会場の準備方法や開催時、終了後の配慮、会のルールの大切さなどについて知ることができた。一番心配だったファシリテーターの役割についても、遺族が安心して話せる場を提供すること、一人一人が平等に話せること、話題が目的からそれた時には軌道修正することなどであることを理解できた。黒子に徹する他の支援員の役割も明確になった。

最後に、参加してくださる交通事故遺族がいるかどうかが心配だった。無理な誘いをして遺族に嫌な思いをさせてはいけないと心配していたが、大久保事務局長の「何人でもいいから無理をしないで進めてください。」との言葉に肩の力を抜くことができた。

この事前研修会が支えとなって、第1回目の開催に向けての準備にも意欲的に取り組むこととなり、その意義はとても大きいと感謝している。

(4)実際に自助グループを立ち上げてみた感想

事前研修会で学んだことをもとに、自助グループの立ち上げ準備をした。一番心配だった参加者については、これまでの電話相談や面接相談で関わった交通事故遺族に電話や文書でお誘いした。その際、この自助グループの立ち上げは、内閣府による交通事故被害者への支援事業の一環であることや都民センターのサポートがあることを伝えた。また、参加する場合のルールについても事前にご連絡した。

平成15年11月27日に第1回目の自助グループを開催した。3名の交通事故遺族が参加し会を開くことができたことに安堵した。都民センターから3名、当センターから担当者3名、専門家として当センターの役員であり精神科医でもある中島聡美先生が参加した。

まず、自助グループの目的や参加するときの約束事を確認することから会を進めていった。関係者の人数が多くて話しづらいのではないかと心配したが、遺族は、自己紹介から始まり予想以上にいろいろな思いを語った。その様子から、やはりこのように語れる場を望んでいたのではないかと思われた。

被害から2年以内の被害者ばかりだったので、5年を経ている都民センターから参加した遺族の存在は、とても重要なものとなった。自助グループに参加することの意味や怒り、後悔などさまざまなこれまでの思いなどを語った。その言葉の一つ一つが参加者にとって癒しであり、励みとなったように思われた。また、最初に話をしたことにより、他の人がとても話しやすい雰囲気になったことも大変ありがたかった。このようなやり取りを通して自助グループの意義が少しずつ見えてきたような気がした。

また、泣けない辛さや受け入れられない現実、どう乗り越えたらよいのかなどについて専門家としての中島先生のアドバイスがあったことも参加者にとって安心できたのではないだろうか。不安を抱えての第1回目だったが、次回の開催を約束して無事終了した。

午後からセンターに戻ってフォローアップを行った。準備段階からの報告や実際に開催しての感想などについて話し合い、疑問点や悩みについて経験豊かな都民センターに指導を受けた。ファシリテーターの役割についても反省点をもとに一層理解することができた。

不安はあったが、無事開催することができたのは、事前研修で指導を受け、大切なことを学んでいたからにほかならない。そして、自助グループの必要性を実感できた一日となった。

(5)自助グループ活動1年目(平成15年度)の感想

11月の第1回目を開催した後、年明けの1月23日に第2回目を開催した。前回参加の遺族から参加を希望している方がいると聞いて、センターからすぐに連絡をとったので、参加者が1名増え、4人の遺族の参加となった。都民センターから3名、精神科医の中島聡美先生の参加に加え、内閣府からも1名の参加があった。

前回に比べて、話がしやすくなったのか怒り、悲しさ、辛さ、要望などのそれぞれの思いが語られ、時間が足りないくらいであった。遺族の中には、司法、行政への不満、怒りをもっている方も多く、今回、内閣府が話し合いに参加したことにより要望や意見を伝えることができたことは、失っている社会への信頼を少しずつ取り戻していくきっかけになったのではないかと思う。

2回目のフォローアップは、さらに充実した内容での指導をいただいた。いばらきにおける自助グループの位置づけや今後の運営方法などが、より明確になってきた。次回からは、自分たちだけで開催することになるのだが、事前研修を含めて3回の指導を受けたことにより課題はありつつも安心して前に進むことができると思った。

3回目を開催する前に、冨田理事長を交え、センターとして自助グループをどのように位置づけるのかについて話し合った。独立したものとするのではなく、センター付属の自助グループであること、参加する遺族については、参加する時期や状況がその方にとってよいのかどうかをセンターで判断していくこと、ファシリテーターはセンター側が行うことなどを確認した。また、具体的な場所、時間、経費の問題等については、参加遺族とともに検討していくこととした。

第3回目からは、遺族とセンター担当者による自助グループがスタートした。中島先生にも参加していただき、資料をもとに会の運営について話し合った。センターの自助グループとして位置づけ、センター主導の運営をしていくことについて話し合い、了解を得た。

また、月1回の開催日や時間、場所、連絡方法、参加の際にお茶菓子代として100円を負担することなどを取り決めた。ここで大切なことを遺族とともに話し合って決めたことは、いばらき主導ではあっても自分たちの会であるという思いを持つことができてよかったのではないかと思う。

第4回目は、年度最後の3月11日に開催した。3回目の時に中島先生からPTSDの話を聞きたいという要望があったので、会の後半は、その勉強会となった。PTSDの症状や回復の過程、薬との上手な付き合い方などについて話し合い、遺族から現在の自分の段階がわかり、急がなくてもいい、頑張らなくてもいいと思うことができて楽になったという声が聞かれた。

事前研修から立ち上げまでの指導を受けて、なんとか自助グループとしての活動が始まった記念すべき1年目となった。

(6)自助グループ活動2年目(平成16年度)の感想

2年目に入り、順調に月1回の開催を続けた。その間、遺族のお嬢さんの提案で会の名前が「よつばのクローバー」と決まった。「辛い日々だけど、少しずつでも幸せに向かっていけるように」と全員が賛成して決定した名前である。

会に参加する遺族には、体調が悪く参加するエネルギーがないこともあったり、話したい気持ちはあるが、参加するのが辛いと思うときもあったりとさまざまな思いがあったようだ。

話し合いの中では、安心だと思っていた日本という国に決して守られてはいなかったという失望感、警察、検察、裁判所などの司法や社会への怒り、加害者への怒りが多く語られた。特に刑事裁判を終えた後の空しさや辛さに生きていることに実感が持てないこと、さらに民事裁判に立ち向かう困難さなどが話題に出ることが多かった。民事裁判では、調書を読むことがどれだけ辛いか、陳述書を書くことがどれだけ過酷なことか、弁護士にどこまで気持ちを理解してもらえるかなど遺族に共通する問題があることがよく分かった。そのような話題を通して情報交換をできることも会の効果の一つであろう。

また、周囲の人たちとの付き合い方や遺された家族への対応の仕方なども共通した話題だった。特に子どもを亡くした遺族の場合、遺された子どもの安全に敏感になり心配しすぎてしまうことや子どもが被害に遭ったニュースなどに敏感に反応してしまうことなどが語られた。

遺族の要望により8月には、夏休みでも安心して参加できるようにとお子さん連れの会を開催した。親の会とは別に子どもだけの部屋を準備し、ゲームをしたりおしゃべりしたりと時間を過ごしたが、とても楽しかったと好評だった。

自助グループ開催時だけではない支援も行った。会を通して民事裁判がいかに大変なものか理解していたので、いばらきとして協議の上、民事裁判への付き添いも行った。10月3日の「犯罪被害者支援の日」の中央大会には、参加したいという要望があり、東京まで一緒に出向いた。思い切って出かけてとてもよい経験だったとの感想であった。

11月には、都民センターによる2年目のフォローアップがあり、適切な指導をいただいた。1年ぶりの再会で懐かしさいっぱいの会になった。前回参加した都民センターの遺族が、当センターと関わったことでその後前向きになれたという話はとてもうれしいものだった。

行きつ戻りつの思いを抱えながらの参加ではあるが、家族にも言えないことを安心して語れる場があることにほっとするという遺族の言葉に、自助グループの意義を見出した2年目であった。

(7)自助グループ活動3年目(平成17年度)の感想

17年度途中ではあるが、遺族の事情やセンターの都合で2回ほど会を開催することができなかった。しかし、10月には、当センターの10周年記念行事で都民センター大久保恵美子事務局長の講演を聴き、11月には県民まつりのキャンペーンに参加した。このような活動も有意義なのではないかと思った。

9月15日には、都民センターから最後のフォローアップとして温かいご指導をいただいた。気負わずにこつこつと歩んできた自助グループだが、いばらきらしいスタンスと雰囲気がよいとの言葉に立ち上げてよかったという思いとこれからもよい方向に進めていきたいとの思いを強くした。

12月からメンバーの了解といばらきの了解を得て新しい遺族が参加した。1月には、会場も変えることになっており、新たな思いでこの自助グループが遺族にとって一層大切な場となるよう努めたい。

ここまでの経験を通して、実際に語られる遺族の言葉から、大切な人を失うことがどれほど辛いことか、また、時間の経過とともにどのような大変さがあるのかなどを知ることができた。それは、電話相談や直接的支援の中では、語られない、見えてこない遺族の思いであり、支援センターとしてどのような支援をしていくべきなのかを示唆してくれる重要なものであることがよく分かった。そして、それが現在のいばらきの支援に生かされていると実感している。

また、遺族にとって安心して思いを語れる場が必要であること、様々なプロセスはあるが、そのことによって回復への道を歩みだせる方がいるということを知り、自助グループの意義と目的を再認識できた。

なかなか踏み出せずにいた自助グループを立ち上げ、ここまで歩みを進めてくることができたのは、立ち上げ研修から始まった都民センターの一連の指導によるものであると感謝している。これからも自助グループの目的を忘れることなく地道な活動を続けていきたい。

3.NPO法人大阪被害者支援アドボカシーセンター

(1)特別研修の実施

平成17年9月9日(金)18時30分から20時30分まで、大阪YWCA研修室において、都民センター4名、NPO法人大阪被害者支援アドボカシーセンター(以下「大阪」という。)11名が参加して行われた。

特別研修では、平成17年4月に施行された「犯罪被害者等基本法(以下「基本法」という。)」について資料を配布し、都民センター大久保事務局長が講義を行った。基本法成立までの流れや趣旨、具体的施策内容について解説した。さらに、犯罪被害者等基本計画検討会で検討された犯罪被害者等基本計画案(骨子案)について、4つの基本方針に則ってまとめられた5つの重点課題についても説明した。また、東京都杉並区で策定された「犯罪被害者等支援条例」についても紹介した。

(2)自助グループの実施

平成17年9月10日(土)14時から16時まで、大阪YWCA研修室において、大阪自助グループメンバー5名、都民センター4名、大阪4名が参加して行われた。

まず、ファシリテーターが自助グループでの「約束事」を口頭で確認し、参加者がそれぞれ自己紹介と近況報告を行い、以下のことについて語った。

(1)加害者との対面について

今後加害者と対面する際には、どう対応していけばよいか不安であるという話があった。すでに、出所した加害者と保護観察所を通して対面した経験のあるメンバーからは、実際に対面するまでの流れや感じたことが語られた。都民センターからは、加害者との対面に当たっては、被害者遺族の苦しみや悲しみ、被害者が置かれる理不尽な状況を知ってもらうためにも、更生保護委員会に自分の心情や要望を遠慮することなく伝えるべきであると助言した。そして、被害者支援への保護司の起用など、法務省における被害者支援の具体的施策について今後の動向が説明された。

(2)自助グループの意義と支援センターとの関係について

自助グループは、犯罪の種類の違いを越えて、生活の建て直しの方法など様々な情報を得られる場である。新しいメンバーが参加することでグループの雰囲気が変わることもあるが、犯罪被害者遺族にとって自助グループの存在はとても大切であるということがメンバーから語られた。今回初めて参加した遺族からも、「普段生活している中で、一般の人にはわかってもらえない心情や悩みを打ち明けられたことがうれしかった。」という感想が述べられた。一人では解決できないことでも、自助グループの仲間と支えあい、情報交換をしていくことで、穏やかな生活を取り戻していくことにつながるということが再確認された。

大阪では、これまでに被害者遺族との交流会が開催されてきたが、メンバーからは被害者遺族との交流の場をもっと頻繁に持っていきたいという意見が出された。都民センターからは、支援者にとっても被害者の声を知る機会を持つことは、被害者の要望にそった適切な支援活動を行うためには欠かせないこと、さらに、被害者と支援者が車の両輪となるように支えあい、協力関係を築いていくことが大切であると助言した。

終了後の意見交換の中で、都民センターからは、このグループに集うメンバーは気持ちを語るだけでなく、それぞれが被害体験を何か行動に移したいと考える等次の回復段階に入ってきていると感想が述べられた。メンバーからも、大阪との連携を深めて、社会に訴える啓発活動に参加し、より良い関係を構築していきたいという発言が出た。

(3)支援センターに自助グループを立ち上げて
(1)大阪の現状

大阪は、設立してから今年で10年目を迎える。週5日の電話相談と直接的支援、自助グループの支援などを行っている。相談件数は開設当初より増加の一途を辿っていて、被害内容も殺人、傷害、性被害、DV、ストーカー、虐待、悪質な交通被害など多岐に亘っている。特に最近では、悪徳商法などの経済被害やインターネット被害についても多く寄せられるようになってきている。相談内容は、心に傷を受けたことでの精神面での相談、医療、福祉、法律や制度などの情報提供を求める相談、裁判所、検察庁、医療機関などへの付き添いを求める直接的支援の依頼、また自助グループの紹介を求める相談も増えている。

直接的支援に関しては、裁判の傍聴や証人への付き添い、代理傍聴、検察庁や警察への付き添いなどだけでなく、面接や前後のフォロ−アップの電話も大切な支援である。依頼は、電話からだけでなく警察からの依頼もますます増加しているが、よりきめ細かい配慮の行き届いた支援が行えるよう、今後も支援活動員の研修をしっかり行わなければならない。

啓発活動としては、7月9日には西澤哲氏を講師に招き講演会「虐待が子どもに与え心理的影響とそのケア」を開催。また10月8日には、「犯罪被害者支援の日」のキャンペーン活動の一環として、大阪府被害者支援会議の後援を受け、被害者支援シンポジウム「被害者支援〜あなたに知ってほしいこと、あなたにできること〜」を開催し、基調講演には高橋シズヱさん、その後のパネルディスカッションでは高橋さんと大阪府警、大阪弁護士会、当センターが加わって「犯罪被害者等基本法」の制定を受けて、今後各機関がどのように協力し連携を深めていくかについて議論を深めた。

また、年2回のニュースレター発行のほか、昨年に引き続き発行した小冊子「『犯罪被害にあう』ということ―あなたに知ってほしいこと、あなたにできること―」の改訂版は、他機関の研修などにも活用されている。

4月16日には、センターの自助グループ「ippo」との共催で、今年で4回目となる追悼会「あなたのことは忘れません」を開催した。

被害者のニーズに合わせた支援を行っていくためにも、他機関ともますます密接な連携を行っていく必要があるが、単に紹介するだけではなく、その後のフォロ−アップや連携先との連絡が大切であることも実感している。

今後、被害者のニーズはますます多様化し、中でも裁判所、検察庁、病院などへの付き添い、また被害直後の生活支援など直接的な支援はますます必要とされる。大阪でも、既に2001年より大阪府警察本部から「民間被害者相談員」の委嘱を受け、警察の情報提供に基づいて直接的支援を行っている。今後は、さらに連携を深めより良い支援を行っていくために「犯罪被害者等早期援助団体」の指定を受けられるよう努力していきたい。

(2)パートナーシップ事業を行おうと思った動機

電話相談を中心に始まった被害者支援活動も、信頼できる情報の提供、そして直接的支援と、被害者のニーズにあった被害回復のための支援の拡がりが益々求められている。

開設当初より電話相談の中でも、自助グループに参加したい、どこかを紹介してもらえないかという声が多く寄せられていた。また被害者に直接お会いする機会も増え、お話しする中で「是非センターに自助グループを立ち上げてほしい」、「立ち上げに際しては協力してほしい」という要望をいただくようにもなった。そういう声に接する中で、被害者にとって被害体験を語り合い、安心して感情を吐露し、心の痛みを分かち合える場としての自助グループの存在の必要性を実感しているところであった。

自助グループの中では、被害体験や、そのことから生じたさまざまな問題についても語り合うことができる。今まで経験したことのない悲惨で苦痛な体験を安心して語り合える仲間がいることは、被害者の大きな心の支えとなる。また他のメンバーから体験に裏付けられた適切な助言を受けることもできるし、少し先を歩んでいる先輩の回復の過程を目の当たりにする機会にもなりうる。自助グループの集まりの場は、被害にあって孤立し引きこもりがちになる被害者にとって、仲間や支援者など安心してつき合える人たちとの交流の場として必要とされている。このように、様々な研修を通して自助グループの必要性をますます感じているところであった。

近年、大阪近辺にも、様々な被害者のための自助グループが設立されるようになってきた。しかし、規模が大きく参加者も多いのでなかなか心情的なことを心ゆくまで話せる場にはなりにくい、法律や制度を変えようという運動中心の自助グループなので個人的なことは話せる雰囲気にはない、といった声も聞かれていた。そうした折、ある被害者から「是非自分たちのニーズに合った自助グループを立ち上げたいので、自分たちも協力するが、バックアップしてもらえないか」との要請を受け、2年間の準備期間を経て、2004年4月から自助グループをスタートさせることになった。

準備期間中は、最初のきっかけが被害者からの声掛けによるものだったため、支援者が主導してよいものか、側面的な支援に徹した方がよいのでは等、手探りでのスタートであった。センターの関わりとしては、被害者主導で始まったということもあって、比較的自由な発言を尊重するというスタンスだったため、自助グループの本来の目的である自身の被害体験や被害後の気持ちの変化、日常生活における変化や今の気持ちなどを語っていただくだけにとどまらず、時として枠組みを逸脱する発言も目立つようになっていった。

また、特に多くのメンバーが既に他の自助グループに属し、その中でも中心的役割を担っておられることで、次第にそこで感じる人間関係のストレスや所属グループの運営方法などにまで話が及ぶようになっていった。当時は、大阪も力量不足で、そのことがまったく気にならなかったわけではなかったが、話の腰を折り、誘導や介入をして良いものかなど迷いがあった。

こうした手探り状態を解消するためにも、中心的役割を担う大阪の支援員が、もう一度自助グループについて学ばなければならない、また自助グループのメンバーも、自助グループのあり方を一緒に学んでいただける機会になるのではないかと思い立ち、この事業に応募した。

(3)自助グループ立ち上げ研修を受けた感想

2004年9月には2日間にわたって、自助グループに関わるスタッフに対しての事前研修会が持たれ、実際の自助グループの進め方やファシリテーターの資質と役割などについて詳しく学ぶことができた。また都民センターの自助グループ参加者の体験談を聞くこともあって、実際の場面を知ることもできたと同時に、さまざまなヒントを得ることができた。また、既に前年度自助グループを立ち上げられたいばらき、石川両センターの経験談を聞くことで大変勇気付けられた。

その後11月、1月の2度にわたって、都民センターのスタッフ4名が来阪し、研修の機会を得た。1日目には、運営に関わっていない支援員を対象とした研修会を持ち、自助グループを開く目的、留意点など基本的な研修を実施した。その中では「被害から2〜3年ほど経過すると、同じような被害者と話してみたいという気持ちが出てくる」、「自助グループの中では、安心して自分の思いを語ることができるので回復に役立つ」また「自助グループに参加することで、被害者が社会や人に対する信頼感を取り戻すよい機会になる」、「支援者が自分の価値観や道徳観を押し付けることなく、人の痛みに心の目を開き、目の前にいる被害者をまるごと受けとめ、被害者の持っている自己回復力を妨げず、見守る温かい目と適切な支援が必要である」ことを学んだ。自助グループについて、具体的に研修を受けるのが初めてのメンバーもあって、様々な質問にも丁寧に答えていただくことができ、意義深い研修となった。特定のスタッフだけではなく、このようなしっかりした研修を受けた支援員が一人でも多く継続して自助グループに関わることが大切である、と感じるよい機会にもなった。

2日目には、実際の自助グループを開催した。開催にあたっては、事前研修で学んだ進め方の実際や留意点について復習し、また、スタッフそれぞれの役割の確認など話し合いを持ちながら、当日に臨んだ。特に、既に2年間の準備会が開かれていたため、古いメンバー同士馴れ合いにならないように、また新しいメンバーが居心地よく過してもらうために、という点に留意した。4月からスタートしていたこともあってメンバーの殆んどが既に顔見知りであったが、今回メンバーが新規加入されたことで、メンバーもスタッフも緊張気味ではあったが、大久保事務局長や他のスタッフの励ましをいただき進めることができた。特に、都民センター自助グループ参加者の方からのアドバイスは、自身の体験に基づいた温かいもので、同じ被害者同士ということもあって、心に響くものがあったように感じられた。

自助グループ終了後、都民センタースタッフを交えて振り返りが行われた。その中で、今後のこととして、

等のアドバイスをいただいた。

この立ち上げ研修での経験は、その後の自助グループ活動を続けていく中で困った折の指針にもなっているし、原点ともなっている。

(4)実際に自助グループを立ち上げてみた感想

前述したとおり約2年の準備期間を経て、2004年4月に正式な自助グループ「ippo」が立ちあがった。

立ち上げに向けて準備期間中に話し合ってきたことを踏まえ、新たにメンバーの受け入れを行った。立ち上げメンバーが中心となって、関西在住の被害者に声かけを行い、会の趣旨に同意した方々が新規に加わることになった。新メンバーの多くは、過去に他の自助団体に関わっていた者であったり、現在も被害者支援の活動を行っている者だったりと、独特のメンバー構成でのスタートだった。当然、互いに顔見知りである者も少なくない状況であった。

このような特徴をもつメンバーであっても、「ippo」という自助グループとしての理念をしっかり守りつつ進めていきたいという思いをスタッフ側は強く持っていた。一方で、スタッフサイドが主導ではなく、あくまでも側面的にグループをサポートする姿勢も大事にしたいと考えていた。

(5)自助グループ活動1年目の感想

初回には、他県の自助グループが作成した規約などを参考にしながら「ippo」の活動目的や決まりごとの確認を行い、自助グループとして大切にしていきたいことをファシリテーターから参加者全員に伝えた。一方、大阪独特の開放的な雰囲気もあり、あまり形式的になりすぎないようにも配慮した。自由な雰囲気を尊重しながら全体的なバランスを保つことが必要でもあると感じていた。

また、回を重ねるごとに、各メンバーがこのグループに求めるものは多様であるということもわかってきた。他の自助団体で支援者的な役割を担っているメンバーにとっては、改めて被害者として自身の感情を吐露できる場として「ippo」を活用しているように感じられた。一方、活動報告的な話題に終始する雰囲気もあり、本来の趣旨とは若干離れる面も伺えた。被害者として日常の悩みを語り合う中で、自らが主体的に関わっている支援活動の話題がテーマになることはごく自然な流れと思われたが、そのことで本来の会の方向性を見失わないよう注意する必要性が、徐々に生じてきたようであった。

また、各メンバーの発言時間や発言内容についても、メンバー間のバランスを考えながら常に気を配る必要があった。状況によっては、終了後に個別フォローを行うことでバランスを取ることもあった。

(6)自助グループ活動2年目の感想

前述したような課題を抱えながら会を継続していく中、自助グループ立ち上げ研修の機会に都民センターのスタッフに自助グループの実施状況を見ていただく機会に恵まれた。終了後のミーティングでは都民センターから的確な助言を頂くことができ、今後の方向性を再確認する事が出来たように思う。

まず、グループとしての枠組みの不安定さについて指摘された。この点についてはスタッフとして常に気にはなっていたものの、なかなか改善しにくい課題であった。形式にこだわることで堅苦しい雰囲気になりはしないか、参加メンバーはもっと自由な雰囲気を求めているのではないかなど、試行錯誤しながら行っている状況だった。今から振り返ると、当事者である自助グループをスタッフが主導してよいものなのかという、ある種遠慮のような気持ちが大阪にあったのかもしれない。

都民センターからは、大阪側の指針を常に明確に示していくよう、アドバイスをいただいた。そうすることが結果的には参加者を守ることになる、つまり、枠組みを持つことが会を持続させていく上で不可欠である、ということを教えられた。

グループの運営方法などについても助言をいただき、参加者が安心して利用できるグループのあり方について初心に戻って考え直す事ができたように思う。顔なじみのメンバーであっても、会の目的や決まりごとを毎回必ず確認することや、規約を書面で毎回確認すると参加者が会の目的を常に意識しやすいことなど、具体的なアドバイスもいただくことができた。これまで試行錯誤しながらも曖昧になっていた課題が明確になり、今後の指針を見出せたような気がしている。

その後、都民センターからのアドバイスを活かし、枠組みの安定に重きを置きながら会を継続している。また、メンバーの意見や提案を元に、新しい試みも行っている。今年度は、ゲストスピーカー(大阪府警被害者対策室長)を招いての意見交換会や、自助グループとは別枠で交流会(被害者の方々とセンタースタッフの交流が目的)を行った。また、大阪主催の追悼会は、「ippo」との共催で実施している。

今後は、新たな参加者の受け入れをどのような形式で行っていくのかが早急の課題である。今後も大阪としての方向性を見失うことなく、メンバーと協力しながら前進していきたいと思っている。

また、この事業を通して、近年さまざまな自助グループが立ち上がっている中、特に民間被害者支援センターがイニシアティヴを発揮して行う自助グループの必要性を再認識することができるようになったことは意義深い。大阪が自助グループの運営および進行役を担うことで被害者の負担を少しでも減らし、失われた自尊心を取り戻し、回復するため自分に向き合う有効な場にすることができる。また、しっかりした訓練を受けた支援者が関わることは、いったん失った社会や人への信頼感を取り戻すにあたっての大きな役割を果たしている。さらに、被害者が自助グループの一員として、被害者の置かれる厳しい現状や被害者支援の必要性を語る場を大阪が積極的に提供することで、役に立っている自分を実感することができる。このように、被害者と支援者とが車の両輪として機能することで、さらに社会の一員として弱い立場の人にも思いやりを持てる文化をつくり、根付かせていくことにもつながるのではないか。

4.社団法人秋田被害者支援センター

(1)事前打ち合わせの実施

平成17年10月20日(木)12時30分から13時まで、北都銀行別館小会議室において、都民センター4名、秋田被害者支援センター(以下「秋田」という。)5名、自助グループメンバー1名(ファシリテーター)、秋田県警察(臨床心理士)1名が参加して行われた。秋田の自助グループでは、通常ファシリテーターのサポート役として県警の臨床心理士が参加し、互いに協力関係にある。

まず、参加者の自己紹介及び担当業務の説明がなされた。その後、当日の自助グループの流れ、自助グループ参加者の確認、昨年から今年にかけての自助グループの開催状況、ファシリテーターからの要望、秋田の自助グループの位置づけ等が述べられた。

また、都民センターから「東京都杉並区犯罪被害者支援条例」の提示があった。

(2)自助グループの実施

平成17年10月20日(木)13時30分から15時30分まで、北都銀行別館大会議室において、秋田自助グループメンバー6名、都民センター4名、秋田5名、秋田地方検察庁被害者支援室(以下「検察の支援員」という。)1名、県警臨床心理士1名が参加して行われた。

まず、ファシリテーターが自己紹介を行い、事前に準備された会の約束事が書かれたレジュメを読み上げて、メンバーで確認した。続いて、参加者が自己紹介及び被害概要、近況報告を話した。その中では、「毎月このグループで胸の奥の辛さを出し、次の1ヶ月を何とか過ごしている。」という切実な思いが語られ、被害者遺族にとっての自助グループの重要性が認識された。その後、以下の事について語った。

(1)裁判について

刑事裁判における加害者の量刑の短さに対するやり切れなさ、民事裁判では金銭で争うしかない事に対する悲しさ等が語られた。また、刑事・民事共に裁判が終了してしまった時の虚脱感・喪失感についても述べられた。

検察の支援員から、刑事裁判において、積極的に遺族の心情を裁判官に伝えるための方法としての意見陳述制度についての説明があった。メンバーからは、担当の検察官によって対応が違う旨の体験が述べられた。刑事裁判の公判中には、意見陳述というものをよく分かっておらず、充分に思いを伝えられなかったことに対する後悔の言葉も聞かれた。突然起きた被害による衝撃の最中で、経験の無い裁判に戸惑い、その結果各々の裁判に対して複雑な思いを残している様子が語られた。

(2)命日の過ごし方について

大切な家族を亡くした命日・事故のあった時間が近づくにつれ、心身ともに平静でいられなくなる様子が多くのメンバーから語られ、被害者遺族に共通の辛さであることが認識された。被害後年数の経っているメンバーからは、各々の時期の命日をどのように過ごしたか、そしてそれぞれ自分なりの方法で乗り越えてきたことが語られた。

(3)犯罪被害者等基本法について

最後に都民センターから、事前準備の資料を提示しながら、犯罪被害者等基本法及び犯罪被害者等基本計画案(骨子案)の概要が説明された。県警の臨床心理士からは、「秋田県犯罪被害者等支援基本計画グランドデザイン(案)」に対する意見募集中であるため、ぜひ被害者の意見を伝えて欲しいとの話があった。

(3)フォローアップの実施

自助グループ終了後、小会議室において16時から17時30分まで、都民センター4名、秋田6名、ファシリテーター、県警臨床心理士1名が参加して行われた。

まずファシリテーターが、今回はメンバーが、通常よりも様々な話をすることができたこと、検察の支援員にそれぞれが抱える刑事裁判に対する思いを伝えることができたことなどを振り返った。次に県警の臨床心理士が、メンバーの様子の変化について語った。その後、参加者の感想と今後の自助グループに対する考えが述べられた。都民センターからは、自助グループに秋田のスタッフが急に多人数入ることは、メンバーにとって負担になるので、計画的に行う必要性があるとの助言を行った。メンバーの中に、個人的に相談したいことがある方がいたので、面接につなげていく方法への示唆もあった。

(4)特別研修の実施

平成17年10月21日、10時から11時30分まで、北都銀行別館会議室において、都民センター4名、秋田7名、秋田県警察3名が参加して行われた。

まず秋田県警察から、「秋田県犯罪被害者等支援基本計画グランドデザイン(案)」の紹介と、これに基づく具体的施策の今後の予定が述べられた。その後、秋田の組織・運営・人材育成について、また自助グループと秋田との連携についての意見交換がなされた。県警の臨床心理士からは、ファシリテーター自身も被害者遺族であることから、ファシリテーターの要望を被害者遺族の要望として受け取ることの必要性が述べられた。都民センターからは、「秋田として、その被害者に対しどのような支援をするのか」をコーディネートする秋田中枢部の重要性が語られた。そして、被害者が支援者に対し求めているのは、人間対人間の対等の関係であること、その中で、一人一人の被害者にあった支援がなされることが大切であるとの助言を行った。また、被害者は支援センターに遠慮をしがちであるが、その中で本心を伝えてくれる自助グループのファシリテーターは、センターにとっても大切な存在であるとの指摘がなされた。

(5)支援センターに自助グループを立ち上げて
(1)支援センターの現状

当支援センターは、社会から支援されなければならないはずの被害者などが、通常では考えられないほどの犠牲を強いられており、被害者などが立ち直るためには、被害後のできる限り早い時期からの冷静な第三者による支援が不可欠という認識に基づき、民間有志の協力を得て、平成13年に「秋田被害者支援センター」として設立され、電話と面接による相談活動やさまざまな被害者などへの対応を通じて、その心情や必要な支援についての理解を深めてきた。

その後、被害者等がさらに一歩踏み込んだ直接的な支援を必要としているとの認識を得て、被害者等の視点に立ち、真にその支えとなる活動を推進していくためには、被害者等が安心して相談できる組織となることが必要であり、明確な責任体制と安定した財政基盤を整備し、組織としての社会的信用を確立していくため「秋田被害者支援センター」を発展的に解散し、平成15年に社団法人「秋田被害者支援センター」として新たなスタートをした。平成17年4月1日には、「犯罪被害者等給付金の支給に関する法律」に基づいて秋田県公安委員会より、「犯罪被害者等早期援助団体」の指定を受け、早期に円滑に被害者への支援活動が出来るように体制を整え取り組んでいるところである。

電話相談
早期援助団体としての指定後、毎日開設することが出来るようになった。相談件数も着実に増え、交通事故や性犯罪等の被害者等からの相談が多く寄せられている。
面接相談
相談については、相談員が一緒に考え整理していくが、必要に応じてカウンセリングや弁護士等の専門家が対応する。
直接支援事業
早期援助団体として指定を受けた後は、警察情報に基づき付添活動を中心に活動している。常時対応できる支援員を非常勤で確保し、緊急時の対応が出来るように体制を整えつつある。
また、「特別支援事業」として、性被害者等に対する医療費等の補助事業を平成17年7月より実施している。
自助グループ支援
早期援助団体としての新たな組織のもと、支援員がより多く自助グループの活動に関わることは、被害者の真の声を聴く機会が多くなり、理解を深めることができる。秋田の自助グループへの支援については、あくまでも後方からの支援とし自助グループ参加者の自主的な運営のため、スタッフ・場所・物品・資金の支援をこれまでどおり行うこととした。
内閣府の自助グループ立ち上げ支援事業に際しては、秋田の支援員が共通認識を持つために定例の研修会を通じて、自助グループの活動紹介や秋田としての関わり方について話し合いを重ねた。実際には、自助グループの中に支援員が入る機会はほとんど無いが、支援員スタッフの報告を通じて理解を深めている。
自助グループの活動は、平成17年6月にはじめて自助グループの開催を秋田市以外で開催し、また講演会、交通安全運動等があり秋田も協力をした。また、自助グループ、秋田県警、秋田で役割を分担し自助グループの活動を盛り上げた。
きめ細やかな被害者からの要望について、秋田で対応していくには、犯罪被害者等早期援助団体とはなったが、マンパワーの不足を感じている。現状は、被害者のニーズに応じ切られないため、出来ることを限られた中で実施している。
犯罪被害者等基本計画や秋田県における基本計画が示されるなど、秋田が民間の被害者支援団体として、被害者に行う支援体制の整備をはかり、その内容の充実などに努力をしているところである。
(2)パートナーシップ事業を行おうと思った動機及び今後の方向

平成16年より秋田県警察と秋田交通死亡事故被害者の会の立ち上げを遺族が代表となり、数人の遺族で自助グループを開始していたので、秋田としては、自助グループ開催に際し、開催案内、会場の確保と準備、お茶の準備など側面支援の立場でサポートを実施した。

秋田としては、自助グループの実際の運営やセンターとしての関わり方等、試行錯誤を繰り返しながら始まったので、自助グループ活動についてより理解を深める機会とするためにこの事業を行おうと考えた。

自助グループ立ち上げ支援事業として、昨年実際に自助グループ開催の際にはじめて支援員も参加し、更に本年度の支援事業に参加し、当支援センターの役割の大きさや被害者の真の声を聴くことの大切さを再認識する機会となった。

今後は、自助グループや被害者の信頼や期待を損ねることなく、支援員全員が意識の統一をはかり支援の充実を期していきたい。

(3)自助グループ立ち上げ事前研修を受けた感想

2004年、2005年と2年間にわたり、自助グループ立ち上げ研修を受けた中で、全国被害者支援ネットワーク会長、東京医科歯科大学教授 山上 皓先生が日本の被害者支援の立ち後れを憂いており、また自助グループは被害者にとって安心して感情を共有できる場であること、被害者はどこにいても同じ支援を受けられるようにと語られ印象的だった。

この事業に際し、都民センターの方々からは自助グループへの支援の考え方、実際面など丁寧にご指導いただき、都民センターの自助グループのことだけでなく、被害者支援に対する姿勢や考え方も再認識した。直接支援後の被害者の拠り所として自助グループが必要なこと、またその人たちの中からセンターを支えてくれる人が出てくるかもしれない。

被害者支援は、長期にわたる活動であり、都民センターも何度も繰り返し話していたが、センターと自助グループとは車の両輪である。自助グループと連携をとってよいかたちで支援が続けられればと考える。

また、現在交通事故の自助グループだけであるが、秋田としてファシリテーターの育成なども考えてもいいのではないかと考えた。2年間にわたり自助グループ立ち上げ研修で自助グループの意義や具体的な取り組み方、効果について学ぶことができた。

これからも被害者が事件事故から自身の尊厳を取り戻し、社会復帰できるように支援員として関わっていけたらと思った。

反省としては、事前の打ち合わせを含めて、支援員とスタッフとの話合いをもっと重ねて行うことなど、原点に何度も立ち戻りながら活動をすることが必要であると改めて認識を深めることになった。

(4)実際に自助グループを立ち上げてみた感想

実際に自助グループを平成16年4月から開催し、定期的に秋田研修室を主な会場として、日曜日の午後開催をしている。事前準備のための開催案内や当日の会場準備、出迎えなど秋田担当支援員が行っている。また、自助グループ開催後には、スタッフミーティングを開催し、反省や次回開催の予定、今後の予定等を話し合っている。

初年度は、「秋田の支援体制が整っていないため、遺族から抵抗感が持たれてしまう。秋田としては、遺族との信頼関係を作れる相談員を見つけて欲しいという」という要望がファシリテーターから出され、立ち上げ支援以後、秋田の自助グループへの支援方針について話合いがもたれた。

自助グループを立ち上げたことにより、自助グループが被害者にとっても、支援員にとっても大切なものであると認識された。今後は、秋田内での自助グループの周知を計り、被害者から望まれる支援を心がけたいと考えた。

2年目を迎え、大仙市での移動自助グループを初めて開催した。また、講演会に自助グループや秋田としても協力し、被害者等の心情や立場等を広く県民に理解してもらう機会となった。昨年に続きフルートコンサートを開催し自助グループの活動が自助グループに参加出来ない方なども参加できる環境作りにとてもよい結果につながっていっていると考える。

これまでに秋田が活動してきたことは、確実に自助グループ参加者の方々に認められつつある。立ち上げ支援事業の反省点を踏まえ、被害者にとってよりよい支援とは何かを見つめながら、今後も活動を行っていきたい。

(5)自助グループ活動1年目の感想

事故に遭遇すると精神的、肉体的、経済的さらに社会的にもダメージを受け、激しいトラウマを負い、人としての自尊心を失い、将来にも希望を持つことができなくなることを強く感じるが、他の被害者からいろいろ学ぶ機会ができ非常によかったと思う。

秋田の自助グループは、ファシリテーターが遺族の代表でもあり、1回目のフォローアップの中で都民センターがとてもいい方向で会を進められていること、また注意点として席順は大まかに決めたほうが良い、支援センター事務局としてキャンペーン、シンポジウムの開催などの情報を提供するようにとアドバイスを受けた。

一回目の反省から、自助グループに関することは、スタッフ全員で理解と確認をし、被害者に二次被害を与えない様な支援にする、自助グループと秋田双方が情報を提供すると共に広報、啓発等被害者にも協力をお願いすることを決定した。

また、自助グループ発足当初、地域性や諸々のことを考慮し当事者だけでの話合いを続けてきたが、状況によっては、徐々に支援員にも中に加わってもらおうと考えている。その場合、参加者との信頼関係が重要になるので、ある程度の期間、固定された支援員の関わりが必要と思われる。

参加者からは、交通死亡事故の被害者(遺族)は語り合う場を持てたが、被害者本人がもっと苦しんでいる現状がある。その人達(本人とその家族)の語り合う場がない。特に後遺症に苦しんでいる者の自助グループの必要性を感じているという意見が出ていた。また、連絡を取り合って自分達の出来ることを提供して行きたい。何か不備なことに気づいたら、お互いに補い合ってこの活動を広げて行きたいと思っているという意見もあった。

(6)自助グループ活動2年目の感想

秋田も早期援助団体となり、支援員として気持を新たにして参加した者の感想は、以下のとおりであった。

自助グループ開催日が平日でもあり、秋田の遺族参加は3名であったが、岩手や都民センターのスタッフの中にも交通事故の被害者の方がおり、事故に遭った当時のことや今の気持などを話したりした。遺族の参加者よりスタッフの参加が多いことが気になっていたが、都民センターが遺族側にまわって話したので、自然に参加者が話合いの中に入れたのではないかと思った。十数年経っても消えない苦しみ悩み悲しみが伝わり、またこの場所で話もでき時を共有出来て良かったという意見もあった。

遺族の話を聞くことにより、事故で受けた衝撃の大きさと悲嘆にくれる遺族の姿にどんな手を差し伸べたら癒すことができるのか、これまで自助グループに参加して「ここで話したら気持ちが軽くなった」、「来た時より明るい顔で帰った」などと簡単に言ってきた自分が本当に恥ずかしくなった。

また、被害者遺族は警察、検察、裁判所といった司法に関わる人に対する不満、疑問を少なからず持っているようであった。これについては、今回検察庁からも参加していたので、疑問と思うことを聴くことができた。

県外からも遺族が参加し、岩手県からは夫婦での参加であるが、これから作る自助グループの参考にするためとようやく語り合える場に来られた心情を涙ながらに話された。青森からの参加者は、「まだ青森には、支援センターがないので、都民センターが来ているこの場に呼ばれて嬉しい」と語った。

これまで、秋田のスタッフが自助グループの中に通常は入ることはなかった。今回初めて中に入り被害者のおかれている状況を聞くことで、どのような支援が被害者に必要か、また、自助グループに関わるようになって実際に被害者と接し、以前の理解が浅かったことに気づくことや、被害者支援に携わるには被害者の声を実際に聞くことがどれほど大事か再認識することが多かった。

被害者の立場に立った配慮に欠けるところを幾つか指摘され、被害者の立場に立った判断が的確にできるようでなければと思った。

(7)ファシリテーターの感想

内閣府による2年継続の自助グループ立ち上げ支援を頂き、自助グループの必要性をあらためて強く感じているところである。

事前研修やフォローアップなどを通して、自助グループの意義や目的、開催に関する留意点など細部にわたって知ることができた。またファシリテーターについても学ばせていただき、難しいと感じる場面もあるが、体験を重ねていくことも勉強になると思う。

秋田県内に自助グループができたことは大きな一歩であり、孤立していた被害者同士が知り合い、語り合い、それが大きな安心感につながっていることを実感した。参加された被害者の皆さんからも同じような感想が寄せられている。

2年目は、県内被害者の参加が少なかったこともあり、都民センターにも被害者の立場で参加をしていただいたが、ある程度の参加人数が必要だと考える。また昨年同様、支援の関係者にも参加していただいたが、このような機会はこれからも作っていかなければならないと思う。

さらに充実させ、より効果的な自助グループにしていくためにクリアしなければならない問題が見えてきた。被害者にもっと参加していただくための工夫も必要である。自分から進んで参加できない場合もあり、被害者が自助グループの事をよく知らないという問題もある。広く参加を呼びかける方策の一つとして、支援センターが、日頃の支援活動の中で被害者が自助グループに参加しやすいきっかけを作ってあげるようにして欲しいものである。

これまで、秋田は、場所の提供と運営費や事務的な支援をしていたが、ファシリテーターとして参加するとかもっと被害者と密接に関わった支援をお願いしたい。被害者と支援センターと相互理解を深めることが相乗効果につながると思う。特にこういう地方では、自助グループがその機能を果たしていくために、支援センターの積極的な関わりが必要不可欠だと考える。

このたびの内閣府による自助グループ立ち上げ支援事業は、大変意義深いものであったと考える。しかしながら、まだ勉強不足の部分が多々あり、これからも研修を含めた様々な支援が必要である。

IV 継続研修

継続研修は、平成17年12月9日(金)・10日(土)の2日間にわたって、東京医科歯科大学難治疾患研究所内ゼミナール室において、一昨年度に自助グループを立ち上げたいばらき1名及び石川3名と、昨年度自助グループを立ち上げた大阪3名及び秋田3名、都民センター9名(含研修生1名)が参加して行われた。なお、今年度の継続研修会は、全国被害者支援ネットワークによる自助グループ立ち上げ支援事業の継続研修会と合同で行われたため、参加者は総勢9団体、26名であった。

(1)第1日目(平成17年12月9日(金))

(1)オリエンテーション

参加者の自己紹介及び自助グループ支援における各自の役割と、自助グループの活動状況について発表した。

(2)自助グループの必要性について

まず、都民センター支援員が、被害者遺族にとっての自助グループの必要性と意義、また、被害者支援における自助グループの重要性について、及び支援センターに付随した自助グループを立ち上げ、ファシリテーターや自助グループ活動の運営を担い、メンバーと支援センターの協力関係の下で被害者支援を実践する意義について述べた。さらに、支援員自身における自助グループ活動の意義や効果について語った。

その後、都民センター自助グループメンバー4名が、自助グループの意義について実際に自助グループに参加して感じたことを語った。自助グループ活動は、被害者遺族が社会から孤立することを防ぎ、他のメンバーとの交流を通して自分自身の回復を実感できるだけでなく、支援センターとともに被害者支援行事や関係機関での講演活動等を通して、自分の役割を認識して失った自信を取り戻すことができ、自尊心の回復のきっかけをつかめるということも述べた。

Q.交通事故被害者遺族と殺人等その他の犯罪被害者遺族が同じ自助グループに集うことに問題はないのか。

A.自助グループの目的は、被害の違いを超えて、理不尽な犯罪被害によって大切な人を亡くした悲しみや苦しみ、二次被害等、被害者遺族に共通する様々な想いを共有しあうことである。お互いの被害体験や立場等、様々な違いを受け入れながらグループ活動を行っていくことは、様々な人間が生活する社会において再び生活を送るための訓練になる。さらに、様々な犯罪被害等の不条理な社会問題についてメンバーと一緒に考える機会にもなり、社会へ目を向けていくきっかけにつながるという利点もある。

(3)課題検討会

各支援センターから自助グループと支援センターのかかわりについて現状報告がなされ、その中で出された課題について意見交換が行われた。

会の中では、「支援センターに付属した自助グループ」の意義を再確認するとともに、自助グループ活動に対するかかわりが少ない支援センターから、被害者遺族のみでの自助グループ活動には問題点や限界が生じ始め、自助グループメンバーから支援センタースタッフの自助グループ活動への参加や、ファシリテーターを担ってほしいという意向が出てきている状況が報告されたため、自助グループ運営等への支援センターのかかわり方について意見交換が行われた。

さらに、メンバーによってグループ活動の内容や方向性も変化することから、メンバーの選び方について話し合われた。被害者の回復にとって必ずしも自助グループ活動が適するわけではないことを踏まえ、被害者遺族が新しく自助グループに加入する前に、支援センターが面接を通して判断する方法をとり、被害者がグループに参加することの適正等を見極める重要性が指摘された。

(2)第2日目(平成17年12月10日(土))

2日目は、まず、山上皓氏(全国被害者支援ネットワーク会長、東京医科歯科大学教授)による「全国被害者支援ネットワークの歩みと自助グループ活動との連携」について、レジュメを配布して講義が行われた。その後、飛鳥井望氏(財団法人 東京都医学研究機構東京都精神医学総合研究所参事研究員)から「被害者の心理と治療」について講義が行われた。

最後に、自助グループ活動に携わる役割ごとにグループワークを実施した。ファシリテーター、支援センター事務局、被害者遺族の3つのグループに分かれて意見交換を行い、終了後、各グループ代表者がその内容について報告した。

グループワーク報告から
(1)ファシリテーター

ファシリテーターの役割とグループ活動の進め方、自助グループの運営等について話し合われた。ファシリテーターの役割については、メンバーが平等に話すことができるよう配慮すること、また、メンバー同士がお互いの被害体験について比較しあう場面で、ファシリテーターがどのように介入したらよいかという問題提起においては、自助グループの目的や原則をグループの約束事として毎回確認する必要性を再確認した。さらに、ファシリテーターのフォローアップの必要性についても取り上げた。

(2)支援センター事務局

自助グループ活動の運営は、被害者遺族のみでは負担も大きく、支援センターの協力を求めるようになっている既存の自助グループも多いという現状から、自助グループ活動に対する支援センターのサポートの重要性は大きい。支援センター職員の自助グループに対する知識や共通認識を深めるとともに、事務局上層部の理解は不可欠である。したがって、自助グループに対する正しい知識や理解が十分に得られていない支援センターにおいては、事務局上層部への教育が急務である。

(3)被害者遺族

現行は被害者遺族が運営する自助グループにおいても、支援センターとの共存を目指している意向が再確認された。自助グループ活動は、自分が語るだけの面接とは異なり、他のメンバーの話を聴かなくてはならず、被害者遺族にとって癒しの場であるとともに、自分と向き合い被害からの回復のきっかけをつかむ非日常的な場として大切である。そのために、グループ活動における様々なルールやけじめは必要である。


資料1

内閣府自助グループ立ち上げ支援事業 継続研修会プログラム

開催場所:東京医科歯科大学難治疾患研究所
2階第2ゼミナール室

平成17年12月9日(金)
時間 内容 担当
13:00〜13:30 受付・オリエンテーション  
13:30〜14:30 ・自助グループ活動の必要性について
・報告「自助グループに参加して」
都民センター
・大久保氏、望月氏
・自助グループメンバー※1
14:30〜14:45 休憩  
14:45〜17:00 課題検討会 照山氏(いばらき)※2
17:00〜17:15 1日目の感想・気付きのまとめ  
18:00〜19:30 懇親会  

※1都民センター自助グループメンバー(久保田由枝子氏・清澤郁子氏・小畑智子氏・高橋美恵子氏)

※2社団法人 いばらき被害者支援センター事務局長 照山美知子氏

平成17年12月10日(土)
時間 内容 担当
9:00〜9:30 ネットワークの自助グループへの取り組み 山上皓先生※3
9:40〜10:40 被害者の心理と治療 飛鳥井望先生※4
10:40〜10:50 休憩  
10:50〜12:10 グループワーク
・ファシリテーター
・事務局
・被害者遺族
・照山氏(いばらき)
・大久保氏(都民センター)
・望月氏(都民センター)
12:10〜13:00 ・グループワーク結果報告
・2日目の感想・気付き
大久保氏(都民センター)

※3全国被害者支援ネットワーク会長・東京医科歯科大学教授

※4財団法人 東京都医学研究機構 東京都精神医学総合研究所参事研究員


V 自助グループ参加者へのアンケート調査

1.はじめに

平成15年度より交通事故被害者支援事業では、交通事故遺族の自助グループの立ち上げを行ってきた。この2年間で、茨城、大阪、石川、秋田の4都道府県で自助グループが活動を始めるようになった。今後も自助グループ活動を推進するにあたり、今までの自助グループの活動の有効性を評価し、新たな活動に取り入れていくことが重要である。そこで、今年度は、上記4都道府県における自助グループの参加遺族にアンケートを行い、活動の参加によってのメリットやデメリットを調査した。

2.目的

今回の調査の目的は以下の2点である。

  1. 交通事故被害者遺族自助グループの参加によって、参加遺族にもたらされた精神的・社会的な変化を把握し、そこから自助グループの被害者遺族に与える影響について検討する。
  2. 被害者遺族が自助グループについて感じていること、あるいは要望を明らかにし、今後の自助グループ活動に役立てる。

3.方法

(1)対象及び調査方法

自記式調査票による横断的観察研究である。内閣府の事業で立ち上がった4都道府県の交通事故被害者の自助グループの参加者を対象とした。対象者へのアクセスは、それぞれの自助グループを支援している民間被害者団体にまず調査の概要を口頭で説明し、これらの支援団体の了解を得た。支援団体を通して、対象者に独自に作成した調査票を配布してもらい(2005年10月)、自助グループ参加者より郵送で返信してもらった(2005年11月〜12月)。対象者総数は19名のところ、14名より回答を得た(回収率73.7%)。

(2)調査票(付表2)

調査票は、以下の項目により構成されている。

  1. 対象者の一般属性(2項目):性別、年齢
  2. 事故関連事項(2項目):事故発生年月日、故人との関係
  3. 自助グループ参加状況(4項目):最初の参加年月、参加回数、参加のきっかけ
  4. 自助グループに参加してからの変化(8項目):心境、対人関係、社会活動等
  5. 自助グループに参加することによる利益及び不利益(2項目)
  6. その他:自助グループに関連する感想等自由記載
(3)結果の分析

各項目の記述的データの集計と、参加による変化について関連する因子についての分析を行った。今回の調査では対象者数が少ないため統計学的検定は行わなかった。

(4)倫理的配慮

本調査票および調査計画はあらかじめ、交通事故対策事業運営委員に提出し、そこでの承認を受けている。また、こちらから対象者にアクセスできないため、支援を行っている民間被害者支援団体に対し、事前に口頭で調査の説明を行い、了解を得るということを行った。回答は匿名であるため、個人の特定はできない。また、回答は自由意志であることと、調査票の回収をもって同意とする旨を説明文書に明記した。調査結果の分析・発表は全体を集計したデータのみを扱い、個々人の情報及び、個々人を特定できるような内容とならないよう配慮している。自由記載部分の掲載については調査票においてあらかじめ記載の了解を確認しており、了解の得られたものについてのみ発表した。

4.結果

(1)対象者の特性(表1)

対象者の性別は男性1名(7.1%)、女性13名(92.9%)であった。また対象者の年齢は、35歳から75歳、平均51.4歳(標準偏差10.1)で、40代、50代が9人(71.5%)と多くなっていた。

(2)故人との関係、死別からの経過月数(表2、表3)

故人との関係では、子どもを亡くした人が11名(78.6%)と最も多く、そのほか、配偶者、親、きょうだいであった。死別からの調査時点までの月数は、15ヶ月から329ヶ月、平均69.2ヶ月(標準偏差80.1)であった。分布を見ると、3年から5年が7人(50.0%)と多くなっているが、5年以上の方も約3割であった。

(3)自助グループとの関わり(表4、表5)

死別から自助グループに参加するまでの経過月数は、7〜310ヶ月、平均52.1ヶ月(標準偏差78.9)であった。死別から1年未満の方は1名のみであったが、1年〜3年未満が7人(50.0%)であった。一方5年以上たってからの参加は3人(21.4%)であった。

自助グループへの参加回数は、1回から20回で平均10.3回(標準偏差6.8)であった。平均で、2.8ヶ月に1回の割合で参加しており、1〜3ヶ月に1回の割合で参加している人が11人(78.6%)ともっとも多かった。自助グループへの参加のきっかけは、支援センターからの紹介が4人(28.6%)、メディア(新聞、書籍等)が3人(21.4%)であった。その他として多かったのは、参加遺族からの紹介(3人、21.4%)で、そのほか、自身で立ち上げたり、学校からの紹介などがあった。

(4)自助グループに参加してからの変化(表6−13、図1)

自助グループに参加してからの気持ちや対人交流、社会活動の変化を5段階で尋ねた。前より悪くなったと回答した人がいた項目は、2項目(「つらさや悲しみ」、「家族との交流」)だけであった。前よりよくなった(「前より少しよい・増えた」と「前よりとてもよい・増えた」の回答の合計)という回答が多かった。60%以上が「前よりよくなった」と回答した項目は、「つらさ・悲しみ」(64.3%)、「孤立感・孤独感」(78.6%)、「他人に対する信頼感」(78.6%)、「外出や他の人との交流の機会」(64.3%)の4項目であった。特に、「孤独感・孤立感」については5人(35.7%)が“(参加)前よりとてもよい”と回答しており、自助グループによる変化の大きい項目であることがうかがわれた。一方、「変化がない」と回答した人の割合が50%を超えていた項目は、「社会や世の中に対する安全感や信頼感」(50.0%)、「家族との会話や交流する機会」(57.1%)、「楽しみや喜びを感じる時間」(57.1%)の3項目であった。

回答を3群(“悪化した”(「前より少し悪い・減った」と「前よりとても悪い・減った」と“変わらない”(「前と変わらない」)、“改善した”(「前より少しよい・増えた」と「前よりとてもよい・増えた」)に分けてそれぞれの質問項目での回答割合を図1に示した。

図1 自助グループ参加による気持ちや行動の変化

図1 自助グループ参加による気持ちや行動の変化

(5)自助グループに参加して良かったこと(表14、図2)

自助グループに参加してよかったと回答した割合を図2に示した。この項目で自助グループに参加して何か得られたり、良かったことがなかったと回答した人は、0人だったので、全員がなんらかの良い経験をしたことがわかる。特に回答の多かった項目は、「被害体験をわかちあえた」(11人、78.6%)、「事件の情報が得られた」(8人、57.1%)、「自分の気持ちを理解してもらえた」(7人、50.0%)であった。前述の自助グループに参加しての気持ちや行動の変化の問では、9人(64.3%)が外出や交流の機会が増えたと回答したが、自助グループのメリットとしてそれをあげた人は、3人(21.4%)であった。外出の増加は自助グループの直接の影響としては受け止めていないことがうかがわれる。

また、その他良かったことの自由記載では、「月に一度でも心から笑い本音を話せるということが大きな救いになりました」、「自分の気持ちを理解してもらえるかではなく、安心して心情を語ることができた。被害を体験した人でなければ分からない・言えないことがある。体験を話すことで気持ちが軽くなる。」、「気持ちが軽くなった」「自助グループの話題を元に家族と対話することができた。」など、同じ体験をした人同士気持ちの通じ合う環境で話しができることのメリットが示されていた。

図2 自助グループに参加してよかったこと

図2 自助グループに参加してよかったこと

(6)自助グループに参加して困難に感じたり、良くなかったこと(表15、図3)

自助グループの参加で困難や良くなかったことがなかったと回答した人は50%であった。したがって半数はなんらかの困難や良くなかったことを体験していることになる。2人以上の解答のあった項目は、「人の話を聞いてかえってつらくなった」(35.7%)、「人の状況と比較してつらくなった」(14.3%)であったことから、自助グループで話される内容で、気持ちのつらさを増したり、自分の状況と比較してつらくなるなどの気持ちの負担が生じることがわかった。また、その他の回答として、「フラッシュバックによる悲しみ、憎しみ、怒りによる疲れが増えた」、「人により同じ被害者でも感じ方が違う」など、話の衝撃や立場のちがいで理解し合えない問題などがあげられていた。

図3 自助グループに参加しての困難やよくなかったこと

図3 自助グループに参加しての困難やよくなかったこと

(7)自助グループに参加しての感想及び今後の自助グループのあり方

この項目については、自由記載の項目を以下にあげた(本人の引用許可のないものは掲載せず、個人を特定される可能性のある表記については一部修正した)。自助グループが気持ちを打ち明けられる重要な場所であり、多くの遺族が参加できるようになってほしいという記載が多くみられた。また、事務局がより決め細やかな対応をすることや、自助グループについてもっと勉強するべきなどの貴重な示唆が得られた。

問12 自由記載
同じ思いをしている人達の前では、素直に自分の気持ちをうちあける事が出来るし、唯一共有出来る場です
自助グループに参加される方は事故直後の方が多く、裁判などが済めば参加の回数が少なくなる傾向がある。事故直後は被害者の悲しみは勿論のこと、加害者の苦しみもあるだろう。しかし、年数が経つにつれて子を亡くした悲しみは消えないばかりか無念の情は募っていく。しかし、表面的には何事もなかったように生活している。加害者はどうだろう。今でも苦しんでいるだろうか。怒りがふつふつと湧いてくる。この思いを自助グループの場で語らせてもらっている。交通違反や事故を起こした者には大型免許を与えないでほしい。スピード違反を繰り返し、3年を経たからといって大型免許を与え、すぐに死亡事故をおこしている。何のための3年か?免許を与えた責任は大きい。
同じ悲しい経験をした人と、なぐさめ合えて私には、有意義な場所です。
県内にも被害にあわれた家族の方々が、どうしていいかわからず迷っている方々のためにもメディアを通じて自助グループを知ってほしいと思います。
本当はメンバーが増えない方が良いことなのだろうとは思うが、増えてほしいというのではなく、ここへも来られないで一人で苦しんでいる人がもっとたくさんいると思うから、そういう人たちに知ってもらって仲間に加わってほしい気がする。
(1)被害者は沈んだ気持ちで来ます。事務局があまりハイテンションに応対されると、気持ちが拒否反応を示す。是非静かな口調で応対してもらいたい。(2)正月であったが、「おめでとうございます」とあいさつされ、返事に困った。何回目の正月でも「おめでとう」の気持ちにはなれない。やめてほしい。おはようだけでよいのでは。司会者を除き事務局は被害者が孤独になっている心情がわからない。(3)刑事裁判、民事裁判など初体験の不安な事がおこる。前もって説明があれば、少しは不安が解消され安堵する。(4)精神的苦痛を早い段階で解消されるよう、医療機関を案内してほしい。(5)被害者に理解ある弁護士の一覧表の提示。(未知の世界にこれからどうなってゆくのか不安です。安心できる。信頼できる、保護してくれる弁護士が必要と思う。)
被害者支援が充足されているとは思えない中で個別相談の場と勘違いされて参加する被害者も多い。支援の関係者も被害者も双方がもっと自助グループについて理解を深める必要を感じる。(特に支援センターが自助グループについてもっと勉強してほしい)。検察や弁護士等専門家の方々に参加していただき広がりのある会をもって欲しい。
3年くらい前から活動を始めだんだんに人数が増えてきました。ただ全員が被害者だけなので、自分達の思いを話すこと聞くことは可能なのですが、カウンセラーやそれぞれの専門の方が、いない為専門的なことでは適切な回答が出来ないことが多い。
迎えてくださる支援センターのスタッフのあたたかい心配りに「ほっ」とすると同時に私たち遺族をまるごと受け入れてくださる姿勢に感謝の気持ちでいっぱいです。支援の仕方は、それぞれのケースによって違うと思いますが、私は法律改正の署名活動を応援して頂き、とても心強く勇気を与えて頂きました。是非、内閣府としてもバックアップして頂きたいと思います。
義務感に引かれることなく、自分を少しでもとりもどせることができれば(自分だけではなくて)よいと考えています。一人称としての”被害者”ではなく、社会に対して加害者を生じさせない社会を目指すことの一助になればとも考えます。
最初の参加のときにはほかの方の話を聴くことが辛く思いましたが、自分の話を聞いてもらいたく、回数を重ねる事に心が癒されました。遺族にとっては年がたつにつれ、悲しく辛い思いをしているのに、まわりの人は、年がたつと悲しみがうすれるように思っています。私にとっては自助グループは大切な居場所です。たくさんの方が自助グループに参加してほしいと思っています。ご支援宜しくお願い致します。
自助グループの存在を巾広く知ってもらい、多くの同じ体験をされた方と話し合うことができれば、孤立感や孤独感に悩む方が少なくなると思う。

5.考察

自助グループ(self-help group)は、当事者である仲間同士が支えあうグループであり、(1)参加メンバーが共通の問題を持つ、(2)共通のゴールがある、(3)対面的(face-to-face)な相互関係がある、(4)メンバー同志は対等な関係にある、(5)専門家との関係は様々であるが、基本的にメンバーの主体性を重んじる、などの特徴がある(1)

近年日本でも、全国交通事故遺族の会や、全国犯罪被害者の会など様々な犯罪被害や事故の被害者、遺族、家族の自助グループが形成されているが、それらの目的や機能は様々である。自助グループの大きな効果としては、グループの中から参加者が個々に得られるもの(共有感、情報を得ること、役割を自覚できることなど)と、集団として社会にアピールし、法や社会制度の改革や、一般への啓蒙などの社会活動としての2つがあると思われる。三島(2)は、自助グループがもつ相互援助のダイナミクスとして以下のような効果があるとしている。(1)同じ問題を抱え、それだけに共感もしてくれる仲間を発見し、(2)問題状況をとらえ直すイデオロギーを獲得し、(3)安心して自分の体験を語ると同時に、同じ体験を持つものだからこそ行える相互批判の場を供せられ、(4)同じ問題を抱えながら成功したり、日常生活をうまくこなしている多様な生きたモデルに触れ、(5)体験の交流の中で日々の問題に対する効果的な対処戦略を身につけ、グループを離れた場面でも力となる仲間とのつながりを得られる。これらの機能は、交通事故遺族の自助グループにもあてはまるものである。遺族は、他人(場合によっては同じ体験をした家族にさえ)に、自分の苦しみを理解してもらえない、他人がどう思うかあるいは他人の発言によって傷つけられる恐れから自分の気持ちを話すことができない、どのように対処したらよいかわからない、情報がないなどの問題を抱えている。このような遺族にとって上記にあげたような機能をもつ自助グループは大変ニーズにあったものだといえる。

しかし、自助グループはまた特有の問題も持っている。苦痛を抱えたものどうしの集団であることから、ファシリテーターや事務局に負担がかかることでこの人たちの精神健康が悪化したり、つらい話を聞くことで、苦痛が再現されたり、共有できるはずという期待があるだけに理解しあえないときの苦痛が大きくなったり、社会活動を行っている場合それに賛同できない場合に居づらくなるなどの問題が生じる可能性がある。

今回の事業では、上記にあげたような問題を解決するために、各地の被害者支援団体が事務局を行い、場所によってはファシリテーターも支援団体が行うことで、参加者に過剰な負担がかかるのを避けた。また、精神科医と自助グループの経験のある被害者支援都民センターが、サポートすることで専門家による精神健康上の問題の悪化への対応や、その他の問題への対応ができるような体制をとった。さらに、社会活動を主眼とせず、情緒的支援やお互いの情報交換を中心とし、広く交通事故遺族が参加できるようにしている。その意味では、他の集団の自助グループもなんらかの形で専門家より支援を受けていることが多く、Marmar(3)やVachonら(4)も、ファシリテーターは自分の問題について解決した当事者で訓練を受けているものであることが必要だとしている。

実際に、交通事故など暴力的な死の遺族の自助グループが精神健康のどのような効果をもたらすのかについての研究は少ない。従来の遺族の自助グループの研究は、主に病死の未亡人を対象としたものが多い。Vachon(4)は、配偶者を失った未亡人(主に病死)を対象に、自助グループ群と非介入群に無作為に割付け、死別から6ヶ月、12ヶ月、24ヶ月後に精神健康や社会適応状態を評価した。その結果、自助グループ参加群では、悲嘆の回復過程(不安や睡眠薬の使用などの個人の内的適応→社会参加などの対人的適応→全般的精神健康の回復)が促進されたとした。特に、この効果は、参加前の精神健康の悪い群に顕著にみられたとしている。また、Marmar(3)も死別から4ヶ月たっても苦痛の高い未亡人を短期の力動的精神療法群と自助グループ群に無作為に割付け、精神健康や社会機能について評価したところ、どちらの群も時間の経過にしたがって回復しており、群間の差がなかったことを報告している。この研究では、自助グループは精神健康の回復に、短期の力動的精神療法と同等の効果を示したということを意味している。暴力的な死別のグループとは異なるが、どちらの研究でも、悲嘆の強い群においてより自助グループははっきりとした効果を示したことから、通常の病死より、悲嘆が複雑化しやすいと思われる交通事故遺族においては自助グループが悲嘆の過程を促進し、精神的健康の回復に役立つのではないかということが考えられる。一方、日本の研究では、大和田(5)が子どもを亡くした犯罪被害者遺族において、家族や友人による情緒的サポートは、PTSDの症状軽減に効果を示さなかったと報告しているが、自助グループや専門家のサポートの有効性については評価されてはいない。このような遺族を情緒的に支えるのは、家族や友人では限界があり、むしろ専門家や自助グループのような遺族の心理をよく理解した人からの情緒的支援が有効なのではないかということが考えられるが、これについては今後研究が必要であろう。

今回の調査では、参加以前の状態や苦痛については評価しておらず、また参加者の負担をさけるため、精神健康についての標準化された評価票を使用していない、対象群がない、サンプル数が少ないなどの研究としての問題は、様々であるが、自助グループ参加による社会適応や苦痛の軽減の効果についてある程度の推測ができるものと思われる。調査結果を対象者の特徴、参加による気持ち、行動の変化、自助グループのメリットとデメリットの3点について考察を行った。

(1)対象者の特性

今回の調査の特徴として、対象者は女性が圧倒的に多いこと、年代として40代から50代の中高年層が多いこと、子どもを亡くした人が多いことがあげられる。女性が多かったことの要因として自助グループの開催時間が日中や平日であったことが関係しているかもしれない。しかし、他の遺族研究でも一般的に男性の参加者は少なく、Murphy(6)は、母親の方が父親よりPTSDの有病率が高いことを示しており、女性における苦痛の高さが強い参加の動機となっていることが考えられる。また、男性の場合、感情を外に出すことに抵抗があったり、対処行動として苦痛を話すという情緒的対処をしない傾向があるため、参加を希望することが少ないこともあるだろう。Murphy(6)は必ずしも、男性の問題が少ないとはいえず、男性ではトラウマが身体健康とより相関しており、PTSDを示した男性は症状が長く持続することも報告している。

対象者の年齢分布は、子どもを亡くした親が多いことと関係するだろうと思われる。故人との愛着関係は、悲嘆の強さに影響しており(7)、強い愛着をもった子どもを亡くした親の苦痛が著しく、参加の動機となっていることがうかがわれる。

死別から自助グループ参加までの期間には1年未満から10年以上と非常にばらつきがあった。苦痛の強さや気持ちを語る場がないということが、自助グループへの参加の動機としてあげられていることから、時間が経過しても精神的な苦痛や孤立感を抱えている遺族が存在していることが示されたのではないか。参加のきっかけは支援センターや参加遺族の紹介が約50%であり、支援センターなどの関わりのない遺族やもともとの遺族同士の交流のない遺族が参加しやすいとは言えない。これは、支援センター自体が不慣れなこともあり、あまり広く宣伝していないという事務局側の要因もあることだが、今後、自助グループ活動を推進する上では、検討する余地があるものであろう。

また、対象者の参加頻度は、1〜3ヶ月に1回であり、ほとんどの自助グループが1ヶ月に1回の開催をしていることとあわせると、参加した遺族は、継続的に参加を続けていることが伺われ、このこともまた、自助グループが遺族にとって継続参加に値するものであることを示していると思われる。

今回の調査での対象者はおそらく精神的苦痛の高い一群であり、そのような人に対して自助グループ活動が提供されたということが考えられる。回収率が73.4%と高いことから、調査対象者の特性は、参加者をほぼ反映していると思われる。

(2)自助グループに参加することによる気持ちや行動の変化

過去の研究(3)(4)から、自助グループに参加することで、全般的な精神健康状態、悲嘆の苦痛、故人へのとらわれ、新たな社会活動への参加や、友人との交流などに改善がみられることが報告されていたので、それらの知見にしたがい、自助グループの参加前と気持ちや行動の変化について9項目にわたって質問を行った。

自助グループ参加後にかえって悪くなったというものは極めて少なく、有害な影響は見られていないといえるのではないかと思われる。悪化したという項目は、「つらさや悲しみ」、「家族と会話や交流の時間」であり、どれも1名ずつであった。自助グループの有害な影響としては、参加することで、他人のつらい話を聞いたり、喪失の悲しみが強く自覚されるということが推測されるが、自助グループ以外のストレス要因もあるかもしれない。64.3%の参加者は、むしろ悲しみやつらさの軽減がみられた。時間の経過の要因や、参加によって感情を安心して出せることや、孤立感の回復などが苦痛や悲嘆に影響していることが考えられる。改善した人の回答割合が多かった項目は、「孤立感や孤独感」、「他人に対する信頼感」、「外出や他人と交流」であったことから、自助グループが、信頼できる仲間との交流を通して、他者の認知や対人関係の回復に特に有効なのではないかと思われる。一方「変わらない」と回答した人の多かった項目(「家族の交流」、「楽しみや喜び」)については、自助グループは家族より他者に対しての回復に関連しており、家族のコミュニケーションについての影響は少ないのではないかということ、楽しみや喜びは相当に回復した感情であり、そこまでの影響力はもっていないかいたっていないことが考えられる。また、これらの項目は、すべて変化について聞いているため、参加前から良好であれば改善がみられてもあまり意識されず、効果としてはみえにくいことと、時間の経過による改善をみているという可能性もある。ただ、死別から調査までの期間と変化の間に有意な関連はなかったことから、ここで示された変化は時間よりは自助グループへの参加によってもたらさせたものであることが、推測される。

(3)自助グループのメリットとデメリット

自助グループに参加して良かったこととして、「被害体験の分かち合い」、「自分の気持ちを理解してもらえる」、「情報が得られた」という3項目を半数以上の人があげていたことから、この事業での自助グループが主に「情緒的サポート」と「情報の交換」に有益だったことが示された。このことは自由記載を見ても共通していることである。参加後の変化の質問項目で変化があったと回答した人の多かった「友人との交流や外出の増加」は自助グループのメリットとしてあげた人はそれほど多くない(20.0%〜40.0%)ことから、自助グループ活動以外の社会活動も増加しており、2次的な効果としてあらわれたのではないかと思われる。何もメリットがないと回答した人がいなかったことから、なんらかのメリットを得ることができる活動であったいえる。

一方、自助グループの参加によって、半数の人がなんらかの困難やデメリットを示していた。気持ちを出すことが難しいという人は少なかったが、故人との関係や、参加者の背景のちがいから、参加しても理解しあえない場合がある。また、人の話を聞くことでつらくなるという回答が30%以上にみられ、自助グループでは避けられない問題とはいえなんらかの対応が必要であろう。また、取りまとめ役をする人では負担が大きく、疲労などが出ることが記載されていた。これらの問題に対処するためには、ファシリテーターや、サポート役で入っている支援者、専門家の役割が重要である。特に立場のちがう参加者がいる場合その人の発言を促進したり、立場の違いによる感じ方の差について説明することで、話しやすくすることができるだろう。また、困難を感じているような人や、話の内容でかえって苦痛を感じているようであれば、会話を制限したり、コメントを加えたり、会のあとでその人と話し合いフォロウするなどの工夫が必要である。グループのダイナミクスの効果は大きいがそれを有効にするためには、会を進行し、調整する機能の存在がないといけない。その意味では、事務局となる支援団体の研修やスーパーバイズ、フィードバックが重要である。また、自由記述からも、事務局の理解や対応の改善を求めるコメントと、新たな参加者が来られるよう活動を広げてほしいという要望がみられた。これらもあわせて今後の活動の推進、改善を行う必要がある。

6.まとめ

交通事故被害者支援事業によって立ち上げ、支援を行った4つの交通事故遺族自助グループの参加者にアンケート調査を行った。調査対象者の数が少ないことと、参加前のデータをとっていないこと、標準化された調査票を使用していないこと、対象群がないことなどの制限があり、これを自助グループの有効性や特徴であると一般化することはできないが、回答から自助グループ活動に参加者がなんらかのメリットを感じており、自助グループが苦痛の軽減や他者への信頼感の増加、対人交流や社会活動の増加などに効果をあげていることが推測された。一方で、話を聞くことの苦痛や、立場のちがいによる問題、事務局のかかわり方の問題、広報なども存在しており、支援者側がこれらの結果を踏まえて、研修やスーパービジョンを行っていくことで、よりよい活動になっていくことが考えられる。

謝辞:この調査に協力いただきました自助グループに参加されているご遺族、支援団体の方にこころより感謝申し上げます。

(1)久保紘章: セルフヘルプ・グループとは何か,セルフヘルプ・グループの理論と展開―わが国の実践をふまえて―. 久保紘章,石川到覚編. 東京, 中央法規出版, 1998,pp 2-20

(2)三島一郎: セルフヘルプグループの機能と役割, セルフヘルプグループの理論と展開―わが国の実践をふまえて―. 久保紘章,石川到覚編. 東京, 1998, pp 39-56

(3)Marmar CR, Horowitz MJ, Weiss DS, Wilner NR, Kaltreider NB: A controlled trial of brief psychotherapy and mutual-help group treatment of conjugal bereavement.Am J Psychiatry 1988; 145(2):203-9

(4)Vachon ML, Lyall WA, Rogers J, Freedman-Letofsky K, Freeman SJ: A controlled study of self-help intervention for widows. Am J Psychiatry 1980; 137(11):1380-84

(5)大和田囁子: 犯罪被害者遺族の心理と支援に関する研究. 東京, 風間書房, 2003

(6)Murphy SA, Braun T, Tillery L, Cain KC, Johnson LC, Beaton RD: PTSD among bereaved parents following the violent deaths of their 12- to 28-year-old children: a longitudinal prospective analysis. J Trauma Stress 1999; 12(2):273-91

(7)Reed MD, Greenwald JY: Survivor-victim status, attachment, and sudden death bereavement. Suicide Life Threat Behav 1991; 21(4):385-401

付表1 集計結果

表1 対象者の年齢分布
年齢
(歳以上〜未満)
パーセント 累積パーセント
30-40 1 7.1 7.1
40-50 6 42.9 50.0
50-60 4 28.6 78.6
60-70 2 14.3 92.9
70-80 1 7.1 100.0
合計 14 100.0  
表2 故人との関係
故人との関係
(記載者からみた故人)
パーセント 累積パーセント
配偶者 1 7.1 7.1
1 7.1 14.3
きょうだい 1 7.1 21.4
子ども 11 78.6 100.0
合計 14 100.0  
表3 死別から調査時までの経過月数
死別からの月数
(以上〜未満)
度数 パーセント 累積パーセント
12.0-18.0 1 7.1 7.1
18.0-24.0 1 7.1 14.3
30.0-36.0 1 7.1 21.4
36.0-42.0 3 21.4 42.9
42.0-48.0 1 7.1 50.0
48.0-54.0 2 14.3 64.3
54.0-60.0 1 7.1 71.4
60+ 4 28.6 100.0
合計 14 100.0  
表4 死別から自助グループ参加までの月数
月数(以上〜未満) パーセント 累積パーセント
6-12 1 7.1 7.1
12-18 4 28.6 35.7
18-24 2 14.3 50.0
24-30 1 7.1 57.1
36-42 2 14.3 71.4
42-60 1 7.1 78.6
60+ 3 21.4 100.0
合計 14 100.0  
表5 参加のきっかけ
  パーセント 累積パーセント
センター紹介 4 28.6 28.6
メディア 3 21.4 50.0
その他 7 50.0 100.0
合計 14 100.0  
表6 つらさ・悲しみの変化
  パーセント 累積パーセント
前よりとても悪い 1 7.1 7.1
前とかわらない 4 28.6 35.7
前より少しよい 6 42.9 78.6
前よりとてもよい 3 21.4 100.0
合計 14 100.0  
表7 孤立感・孤独感の変化
  パーセント 累積パーセント
前とかわらない 3 21.4 21.4
前より少しよい 6 42.9 64.3
前よりとてもよい 5 35.7 100.0
合計 14 100.0  
表8 自信の変化
  パーセント 累積パーセント
前とかわらない 6 42.9 42.9
前より少しよい 6 42.9 85.7
前よりとてもよい 2 14.3 100.0
合計 14 100.0  
表9 他人への信頼感の変化
  パーセント 累積パーセント
前とかわらない 3 21.4 21.4
前より少しよい 8 57.1 78.6
前よりとてもよい 3 21.4 100.0
合計 14 100.0  
表10 安心感・安全感の変化
  パーセント 累積パーセント
前とかわらない 7 50.0 50.0
前より少しよい 7 50.0 100.0
合計 14 100.0  
表11 社会的交流の変化
  パーセント 累積パーセント
前とかわらない 4 28.6 30.8
前より少しよい 8 57.1 92.3
前よりとてもよい 1 7.1 100.0
欠損値 1 7.1  
合計 14 100.0  
表12 家族との交流の変化
  パーセント 累積パーセント
前より少し悪い 1 7.1 7.1
前とかわらない 8 57.1 64.3
前より少しよい 3 21.4 85.7
前よりとてもよい 2 14.3 100.0
合計 14 100.0  
表13 喜びの変化
  パーセント 累積パーセント
前とかわらない 8 57.1 57.1
前より少しよい 5 35.7 92.9
前よりとてもよい 1 7.1 100.0
合計 14 100.0  
表14 自助グループに参加して何か得られたり、よかったこと
  %(N=14)
被害体験をわかちあうことができた 11 78.6
自分の気持ちを理解してもらうことができた 7 50
事件に関する情報(裁判その他)が得られた 8 57.1
友人、仲間ができた 6 42.9
外出する機会が増えた 3 21.4
その他 5 35.7
得られたり、よかったことはなかった 0 0

この人数は各項目に「あり」と回答した人数である

表15 自助グループに参加しての困難や良くなかったこと
  N
人の話を聞いてかえってつらくなった 5 35.7
自分の気持ちを話したり、表現することが難しかった 1 7.1
自分の気持ちをわかってもらうことができなかった 1 7.1
人の状況と比較してつらくなった 2 14.3
疲れたり、体の調子が悪くなった 1 7.1
その他 6 42.9
困難に感じることや良くなかったことは特になかった 7 50

付表1 アンケート用紙

交通事故被害者遺族自助グループに関するアンケートの説明とご協力の御願い

交通事故被害者遺族自助グループに参加されているご遺族の方へ

内閣府交通事故被害者支援事業では、交通事故のご遺族へのこころのケアのために2年前から自助グループを各地に立ち上げる事業を行っております。日本ではまだ被害者の自助グループの歴史は浅く、どのようなやり方がよいのか、また自助グループが皆様にとって有益であるのかについての実態は把握されておりません。

このたび、私どもでは、今まで設立された自助グループが、参加されたましたご遺族に有益なものであったのかを調べ、今後の自助グループのあり方に反映させたいと考えております。この調査の郵送回収は日通総研で行われますが、アンケートの開封、分析につきましては国立精神・神経センター精神保健研究所で行います。個々のデータはすべて匿名の情報として統計的に扱い、外部に漏れないよう厳重に管理いたします。また、この結果につきましては、全体を集計・分析したものについて事業の報告書、および、自助グループへのマニュアルに掲載する予定ですが、個別のデータを公表することはございません。このアンケートの返信を持ちまして調査へのご同意とさせていただきます。調査へのご参加は自発的な意思に基づくもので、ご協力いただけない場合でも自助グループへの参加等へ不利益が生じることは全くございません。

今後の自助グループをよりよいものにするためにぜひ、ご協力いただけますようお願い申し上げます。

平成17年11月8日

「交通事故被害者支援事業運営に関する検討会」委員
国立精神・神経センター精神保健研究所成人精神保健部研究室長
中島聡美

****************************************

なお、ご記入いただきました調査票は、同封の返信用封筒で月 日までにご返送いただけますようお願い申し上げます。

この調査へのお問い合わせ、ご意見につきましては、下記にご連絡下さい。

〒187-8553 東京都小平市小川東町4-1-1

国立精神・神経センター精神保健研究所 成人精神保健部

中島 聡美

TEL 042-346-1983, FAX 042-346-1986

E-mail:nakajima@ncnp-k.go.jp

交通事故被害者遺族自助グループに関するアンケート

調査票は全部で3ページございます。ご記入には10分程度かかります。

以下の問いで、当てはまる番号に○をつけていただくか、当てはまる数字や内容をお書き下さい。

問1.あなたの性別をお書きください
問2.現在の年齢をご記入ください。

( )歳

問3.ご家族の方が事故で亡くなられました日をお書きください

西暦  年 月 日

問4.記入されている方にとって故人がどのような関係であるかあてはまる番号に○をおつけください

(例:記入者がお子様をなくされている場合 (4).子ども)

  1. 配偶者
  2. きょうだい
  3. 子ども
  4. その他(具体的に
問5.自助グループに最初に参加された年月をお書き下さい

はじめて参加した日:西暦  年  月

問6.今までに自助グループに参加された回数をお書き下さい。

   回

問7.この自助グループを知ったきっかけであてはまるものに○をおつけ下さい。
  1. 被害者援助センターからの紹介
  2. 警察からの紹介
  3. 自分でインターネットで探した
  4. その他のメディア(テレビ・書籍・新聞)で知った
  5. その他(具体的に
問8.この自助グループに参加されることに決めた理由やきっかけについて自由にお書き下さい。

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問9.自助グループに参加してお気持ちや感じ方に変化があったかをお尋ねします。以下の問いで、一番自分の考えにあてはまると思われる回答の番号に○をつけて下さい。

(以下の問いで「前より」とあるのは、ご家族の方が事故でなくなられてから自助グループに参加する前のことをさしています。)

1.自助グループに参加してから、お気持ちのつらさや悲しみに変化はありましたか?
  1. 前よりとても悪い
  2. 前より少し悪い
  3. 前と変わらない
  4. 前より少しよい
  5. 前よりとてもよい
2.自助グループに参加してから、孤立感や孤独感に変化はありましたか?
  1. 前よりとても悪い
  2. 前より少し悪い
  3. 前と変わらない
  4. 前より少しよい
  5. 前よりとてもよい
3.自助グループに参加してから、自分の考えや行動に対する自信に変化はありましたか?
  1. 前よりとても減った
  2. 前より少し減った
  3. 前と変わらない
  4. 前より少し増えた
  5. 前よりとても増えた
4.自助グループに参加してから、他人に対する信頼感に変化はありましたか?
  1. 前よりとても減った
  2. 前より少し減った
  3. 前と変わらない
  4. 前より少し増えた
  5. 前よりとても増えた
5.自助グループに参加してから、社会や世の中に対する安全感や信頼感に変化はありましたか?
  1. 前よりとても減った
  2. 前より少し減った
  3. 前と変わらない
  4. 前より少し増えた
  5. 前よりとても増えた
6.自助グループに参加してから、外出や他の人と交流する機会に変化はありましたか?
  1. 前よりとても減った
  2. 前より少し減った
  3. 前と変わらない
  4. 前より少し増えた
  5. 前よりとても増えた
7.自助グループに参加してから、家族との会話や交流する機会に変化はありましたか?
  1. 前よりとても減った
  2. 前より少し減った
  3. 前と変わらない
  4. 前より少し増えた
  5. 前よりとても増えた
8.自助グループに参加してから楽しみや喜びを感じる時間に変化はありましたか?
  1. 前よりとても減った
  2. 前より少し減った
  3. 前と変わらない
  4. 前より少し増えた
  5. 前よりとても増えた

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問10.自助グループに参加することで何か得られたり、良かったことがありますか?以下の項目であてはまるものにいくつでも○をつけて下さい。
  1. 被害体験を分かち合うことができた
  2. 自分の気持ちを理解してもらうことができた
  3. 事件に関する情報(裁判その他)が得られた
  4. 友人、仲間ができた
  5. 外出する機会が増えた
  6. その他
  7. 得られたり、良かったことは特になかった
問11.自助グループに参加する上で何か困難に感じたり、よくなかったことがありますか?以下の項目で当てはまるもにいくつでも○をつけて下さい。
  1. 人の話を聞いてかえってつらくなった
  2. 自分の気持ちを話したり、表現することが難しかった
  3. 自分の気持ちをわかってもらうことができなかった
  4. 人の状況と比較してつらくなった
  5. 疲れたり、体の調子が悪くなった
  6. その他
  7. 困難に感じることやよくなかったことは特になかった
問12.自助グループに参加されてのご感想や、今後の自助グループのあり方などご自由にお書きください。是非今後の自助グループの活動に反映させていきたいと思います。
問13.自由記述の内容につきまして、自助グループマニュアルへ引用させていただくことは可能でしょうか?
  1. 一切引用してほしくない
  2. 一部なら引用してもよい(引用してもよい問いの番号に○をつけて下さい:問8、問10、問11、問12)
  3. すべて引用してもよい

**最後にご記入漏れがないかご確認下さい。ご協力ありがとうございました。**

VI おわりに

今年度で当事業は3年目を迎え、被害者支援センターにおける自助グループの立ち上げは計6箇所となった。

今年度立ち上げられたあいちと長崎では、支援員に対する事前研修と実際に自助グループに参加してその後のフォローアップを実施した。今後、自助グループ活動を続けていく中で、実際の進め方や活動の方向性等、様々な不安や悩みが出てくることも多いため継続的な支援が必要である。

昨年度までに立ち上げられた各支援センターの自助グループは、被害者遺族及び支援者が被害者支援における自助グループの意義や必要性について認識を深め、自助グループと支援センターとの信頼関係や協力関係を徐々に築き上げながら、それぞれの自助グループ活動を展開しつつある。

被害者支援センターにおける自助グループ活動の意義は、犯罪被害者遺族が安心して感情を吐露し、他の被害者遺族との交流を通して被害からの回復のきっかけを掴む機会となるだけでなく、支援者が被害者の生の声を聴くことで、多様な被害者のニーズを適切に受け止め、効果的な支援活動を行うためのノウハウを得ることができる。また、人としての根元的な問題や人生観を問われるため、支援者自身が自らを振り返る貴重な体験に結びつく効果がある。さらに、支援センターにおいても、被害者遺族と協力して広報啓発活動を行えるため、関係機関や社会からの理解を得やすく、有機的な連携の下で支援活動が実施できる効果もある。

このように、被害者支援の一環として被害者支援センターに付随した自助グループの存在意義は大きく、犯罪被害者遺族の回復と被害者支援の充実のために、自助グループは必要不可欠である。そのため、自助グループを立ち上げた後も、一定期間継続的なフォローアップを行ったり、他の支援センターの支援者と自助グループ活動における意見交換の場を設定する等して、ファシリテーターの質の向上や、その他の支援員に自助グループ活動の意義やあり方等について研修を重ねる自助グループ活動の支援を行う体制整備が望まれる。

今後の課題として、各地の支援センターでは支援員が定着せず、長期にわたって被害者支援に携わる人材が不足しているため、被害者遺族との継続的な関わりから得られる信頼関係も築きづらいという問題がある。したがって、長期に関わる人材の確保と育成を含め、支援センターの活動の充実が急務である。